説明

マスクの製造方法及びそのマスク製品

【課題】 一貫作業でマスクを製造することができるマスクの製造方法及びそのマスク製品の提供を目的とする。
【解決手段】 鼻・口を覆うためのマスク本体部11と、前記マスク本体部11を鼻・口の前に保持するために耳に掛けられる耳掛け部12と、からなるマスクの製造方法において、帯状弾性体を前記耳掛け部12とし、そして、帯状弾性体を、帯状弾性体の両端部の間に折り目をつけ、該両端部が突出するように平面状に折り畳んでから、その両端部を前記マスク本体部11と接合する、マスクの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクの製造方法及びそのマスク製品に関し、特に、鼻・口を覆うためのマスク本体部と、前記マスク本体部を鼻・口の前に保持するために耳に掛けられる耳掛け部と、からなるマスクの製造方法及びそのマスク製品に関する。
【背景技術】
【0002】
市販のマスク9(例えば、特許文献1)は、鼻・口を覆うためのマスク本体部91と、マスク本体部91を鼻・口の前に保持するための耳掛け部92とからなっている(図7参照)。図示のように、マスク本体部91の中央近くには、通常、複数の折り目94が顔の横断方向に沿うように形成されているので、マスク本体部91の中央部を、鼻や顔面上の他の突出部に対応して前方へ膨らませることができる。また、マスク本体部91の上縁部には、顔面の湾曲に対応して変形できる金属片93が包埋されているので、該金属片93を変形させることによってマスクを顔面にフィットさせることができる。
【0003】
また、耳掛け部92は、通常、図示のように、伸縮性のあるゴムひもが使用されている。この、耳掛け部92としてゴムひもが使用されているマスクは、通常、下記の工程で製造される。
【0004】
まず、長条形の、表面層不織布と、ろ過層不織布と、裏面層不織布などを先頭から重ね合わせ、熱圧で接合する。そして、連続した一連のマスク本体部91を続々と作り出し、裁断手段でマスク本体部91を1つずつ裁断する。最後に、その弾性応力によって変形しやすいゴムひもの湾曲を保持しながら、該ゴムひもの両端部をマスク本体部91の所定の接合位置において、バイアステープ95でマスク本体部91に接合すると、マスク9が完成する(図8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】台湾実用新案公告第379567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記裁断までの過程を第1の段階とし、前記裁断後からマスク完成までの過程を第2の段階とした時、第1の段階では、生産速度が100〜120枚/分であるのに対し、第2の段階では、進行前ないし進行中に、ゴムひもの湾曲、特に、ゴムひもの両端の位置を保持しなければならないので、第1の段階に比べて、生産速度が30〜35枚/分ほど遅くなる。よって、両段階の生産速度にズレが生じ、一貫作業で効率よく行うことができない。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、一貫作業でマスクを製造することができるマスクの製造方法及びそのマスク製品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
鼻・口を覆うためのマスク本体部と、前記マスク本体部を鼻・口の前に保持するために耳に掛けられる耳掛け部と、からなるマスクの製造方法において、帯状弾性体を前記耳掛け部とし、その帯状弾性体を、帯状弾性体の両端部の間に折り目をつけ、該両端部が突出するように平面状に折り畳んでから、その両端部を前記マスク本体部と接合する、マスクの製造方法を提供する。
【0009】
また、鼻・口を覆うためのマスク本体部と、前記マスク本体部を鼻・口の前に保持するために耳に掛けられる耳掛け部と、からなっているマスクにおいて、前記耳掛け部が、帯状弾性体で形成されており、且つ、帯状弾性体の両端部の間に折り目がつき、その両端部が突出するように平面状に折り畳まれており、該両端部が前記マスク本体部に接合されているマスクをも提供する。
【発明の効果】
【0010】
上記マスクの製造方法は、まず帯状弾性体を耳掛け部とするので、耳掛け部は折り目をつけて両端部が突出した平面状に折り畳むことができ、また、耳掛け部を平面状に折り畳むことで、耳掛け部がそれ自体の弾性応力によって変形することがなく、特別な保持を必要としない。従って、その第2の段階の速度が速くなるので第1の段階の速度と合わせやすく、一貫作業で効率よく行うことができる。
【0011】
また、上記マスクの製造方法において、裁断工程は、従来のように、連続しているマスク本体部を作り出した直後に行っても良いが、一貫作業を生かすために、耳掛け部を接合してから行っても良い。
【0012】
そして、上記マスクは、上記マスクの製造方法によって簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好ましい実施形態であるマスクの製造方法のフローチャートである。
【図2】図1の工程(D)で得た前後互いに連続している一連のマスク本体部を示す図面である。
【図3】図1の工程(F)での耳掛け部の折り畳み方を示す図面である。
【図4】図1の工程(H)での、一連のマスクをマスク毎に裁断することを示す図面である。
【図5】本発明の製造方法によって製造したマスクを示す図面である。
【図6】本発明の他の実施形態であるマスクの製造方法のフローチャートである。
【図7】従来のマスクを示す図面である。
【図8】図7のマスクを製造する従来のマスク製造法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、図1に示したように、本発明のマスクの製造方法は、不織布層の重ね合わせ工程(A)と、金属片の設置工程(B)と、不織布の折畳み工程(C)と、不織布の上下接合工程(D)と、耳掛け部形成工程(E)と、耳掛け部折畳み熱圧工程(F)と、耳掛け部接合工程(G)と、裁断工程(H)と、からなるものである。そのうち、工程(A)〜(D)は、従来技術の工程と同じマスク本体部形成工程であるので、以下で簡単に説明する。
【0015】
(A)不織布層の重ね合わせ工程
工程(A)は、それぞれ並列している表面層不織布保持ローラ、ろ過層不織布保持ローラ、及び裏面層不織布保持ローラから、それぞれ表面層不織布、ろ過層不織布、及び裏面層不織布が繰り出され、ガイドローラーのガイドで、これらを前記の順に連続的に重ね合わせる工程である。そのうち、裏面層不織布の幅は、表面層不織布及びろ過層不織布の幅よりやや大きいので、両側縁が少々はみ出している。
【0016】
(B)金属片の設置工程
工程(B)は、長条形金属片13を、その長手方向が工程(A)で得たものの表面層不織布の一縁部に沿うように、所定の間隔で一つずつ固定する工程である。
【0017】
(C)不織布の折畳み工程
工程(C)は、工程(B)の後、裏面層不織布の、はみ出している両側縁を表面層不織布の上面に折り返し、上下三層の不織布の中間近くを長手方向に沿って折り畳み3本の折り目14を形成する工程である。この工程により、表面層不織布及びろ過層不織布が互いに重なっている両側縁、及び表面層不織布の上面の一縁部に固定されている金属片13が、すべて裏面層不織布の折り返された縁部にカバーされる(図2参照)。
【0018】
(D)不織布の上下接合工程
工程(D)は、三層の不織布を熱圧又は超音波による溶着で接合して、連続しているマスク本体部11を作り出す工程である。図2に示すように、この工程では、折り返した裏面層不織布及び金属片13が溶着部31に固定され、マスク本体部11がそれぞれ溶着部32で区切られる。
【0019】
(E)耳掛け部形成工程
工程(E)は、弾性付きの帯状弾性体を耳掛け部12として形成する工程である。該耳掛け部12の全長は、マスク本体部11の幅より長い。本実施形態においては、弾性付きの不織布を帯状弾性体として使用する。形成方法は、幅が前記耳掛け部12の全長となる保持ローラに巻き上げられて保持されている弾性付きの不織布を繰り出し、先頭から所定の間隔で裁断し、耳掛け部12を続々と作り出す。つまり、保持ローラに巻き上げられて保持されている状態の弾性付きの不織布の幅は、裁断されて耳掛け部12となった状態の弾性付きの不織布の長さとなる。また、前記裁断の間隔は、裁断されて耳掛け部12となった状態の弾性付きの不織布の幅となる。
【0020】
(F)耳掛け部折畳み熱圧工程
工程(F)は、工程(E)で形成した耳掛け部12に、耳掛け部12の幅の方向に横断する二本の折り目をつけ、耳掛け部12の長さ方向の両端部が折畳み部より突出し、耳掛け部12の全体の長さがマスク本体部11の幅よりやや短い平面状になるようにZ字形に折り畳んでから、熱圧でその平面状態を仮固定する工程である。
【0021】
なお、本実施形態では、工程(E)を工程(F)の前に行うが、工程(F)の後に工程(E)を行っても良い。例えば、幅が前記耳掛け部12の長さと等しい保持ローラに巻かれて保持されている弾性付きの不織布を繰り出し、弾性付きの不織布全体の幅がマスク本体部11の幅よりやや短い平面状になるように、且つ、弾性付きの不織布の幅の方向に横断する二本の折り目でその両端部(即ち、弾性付きの不織布の繰出し方向の両側縁)が折畳み部からはみ出すようにZ字形に折り畳みながら、熱圧でその平面状態を仮固定[工程(F)]し、繰り出した方向に沿って所定の間隔で裁断[工程(E)]しても良い。このような順序で行うことにより、工程(F)及び工程(E)を一工程として、折り畳まれた耳掛け部12を一貫作業で続々と製作することができる。
【0022】
弾性付きの不織布としては、メルトブローン(meltblown)法又はスパンボンド(spunbond)法により製造された不織布、及び一般の不織布と弾性材とを組み合わせた複合不織布が挙げられる。
また、図1に示したように、工程(E)〜(F)は、工程(A)〜(D)と同時に行う。
【0023】
(G)耳掛け部接合工程
工程(G)は、工程(E)及び(F)で得た耳掛け部12の両端部を工程(D)で得た一連のマスク本体部11の所定の接合位置(溶着部32)に合わせて置いてから、耳掛け部12の両端部を熱圧又は超音波による溶着でマスク本体部11に接合する工程である。前記「所定の接合位置」とは、図4に示したように、長方形に区切られている各マスク本体部11の両短辺に近く、両長辺にも近い箇所を言う。即ち、この工程では、図2及び図4に示したように、一連のマスク本体部11を1つずつに区切っている溶着部32に、2つの耳掛け部12を接合する。
【0024】
(H)裁断工程
工程(H)は、図4に示したように、工程(G)で得たものをマスク毎に裁断し、図5に示すような耳掛け部12を完成させる工程である。
【0025】
本実施形態により完成されたマスクは、鼻・口を覆うためのマスク本体部11と、マスク本体部11を鼻・口の前に保持するために耳に掛けられる耳掛け部12と、からなるが、その耳掛け部12は、弾性付きの不織布からなる帯状弾性体で形成され、且つ、平面状に折り畳まれている上、該両端部がマスク本体部11に接合されるものある。
【0026】
なお、本発明により完成したマスクにおける耳掛け部12は、ゴムひもより幅が広い帯状弾性体であり、熱圧で平面状に仮固定されている上、マスクの裏面に折り畳まれているため、マスク1のいずれの縁からも突出せず、マスク1の包装時にも有利である。
【0027】
本実施形態では、図1に示したフローチャートの順序でマスクを製造するが、図6に示した他の実施形態のフローチャートの順序によりマスクを製造することもできる。即ち、図1における工程(H)の裁断工程を工程(D)の直後に行い、図6に示した順序で行う。更に詳しく説明すれば、工程(D)で作り出した一連のマスク本体部11を先にマスク本体部11毎に裁断してから、工程(F)で得た耳掛け部12を接合し、工程(G)を行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のマスクの製造方法は、帯状弾性体を耳掛け部とするので、耳掛け部は折り目をつけて両端部が突出した平面状に折り畳むことができ、また、耳掛け部を平面状に折り畳むことで、耳掛け部がそれ自体の弾性応力によって変形することがなく、特別な保持を必要としない。従って、その第2の段階の速度が速くなるので第1の段階の速度と合わせやすく、一貫作業で効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0029】
1…マスク、11…マスク本体部、12…耳掛け部、13…金属片、14…折り目、31…溶着部、32…溶着部、9…マスク、91…マスク本体部、92…耳掛け部、93…金属片、94…折り目。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻・口を覆うためのマスク本体部と、前記マスク本体部を鼻・口の前に保持するために耳に掛けられる耳掛け部と、からなるマスクの製造方法において、
帯状弾性体を前記耳掛け部とし、
その帯状弾性体を、帯状弾性体の両端部の間に折り目をつけ、該両端部が突出するように平面状に折り畳んでから、その両端部を前記マスク本体部と接合することを特徴とする、マスクの製造方法。
【請求項2】
前記帯状弾性体として、弾性付きの不織布を使用することを特徴とする、請求項1に記載のマスクの製造方法。
【請求項3】
前記帯状弾性体を折り畳んでから熱圧でその平面状を仮固定することを特徴とする、請求項1または2に記載の、マスクの製造方法。
【請求項4】
鼻・口を覆うためのマスク本体部と、前記マスク本体部を鼻・口の前に保持するために耳に掛けられる耳掛け部と、からなるマスクの製造方法において、
前記耳掛け部を、弾性付きの不織布で形成する耳掛け部形成工程と、
前記耳掛け部形成工程で形成した耳掛け部を、両端部が突出し、該両端部の間に折り目をつけるように平面状に折り畳んでから熱圧でその平面状を仮固定する耳掛け部折畳み熱圧工程と、
前記マスク本体部を構成するための複数の層状部材を順に重ね、畳み合わせてから接合するマスク本体部形成工程と、
前記マスク本体部形成工程で形成したマスク本体部の面上に、前記耳掛け部折畳み熱圧工程で得た耳掛け部を、前記両端部が予定の接合位置に合わせてから接合する耳掛け部接合工程と、
からなることを特徴とする、マスクの製造方法。
【請求項5】
鼻・口を覆うためのマスク本体部と、前記マスク本体部を鼻・口の前に保持するために耳に掛けられる耳掛け部と、からなるマスクの製造方法において、
保持ローラから弾性付きの不織布を連続的に繰り出しながら、繰出し方向に沿う両側縁の間に折り目をつけるように平面状に折り畳んでから熱圧でその平面状を仮固定し、該仮固定したものを一つずつ裁断し、折り畳まれた耳掛け部を形成する耳掛け部形成工程と、
前記マスク本体部を構成するための複数の層状部材を順に重ねて畳み合わせてから接合するマスク本体部形成工程と、
前記マスク本体部形成工程で形成したマスク本体部の面上に、前記耳掛け部形成工程で得た耳掛け部を、その両端部が予定の接合位置に合わせてから接合する耳掛け部接合工程と、
からなることを特徴とする、マスクの製造方法。
【請求項6】
前記マスク本体部形成工程は、前記複数の層状部材としてそれぞれ長条形のものを使用して行うことにより、互いに連続しているマスク本体部を続々と形成し、
前記耳掛け部接合工程は、前記マスク本体部形成工程で続々と形成されてくるマスク本体部毎に、すでに折り畳まれた耳掛け部を接合し、
また、前記耳掛け部接合工程の後、更に、該耳掛け部接合工程で得たものをマスク毎に裁断する裁断工程を具えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の、マスクの製造方法。
【請求項7】
前記マスク本体部形成工程は、前記複数の層状部材としてそれぞれ長条形のものを使用して行うことにより、互いに連続しているマスク本体部を続々と形成し、
且つ、前記マスク本体部形成工程と前記耳掛け部接合工程との間に、該マスク本体部形成工程で続々と形成されてくる連続した長条形のマスク本体をマスク本体部毎に裁断する裁断工程を具えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の、マスクの製造方法。
【請求項8】
鼻・口を覆うためのマスク本体部と、前記マスク本体部を鼻・口の前に保持するために耳に掛けられる耳掛け部と、からなっているマスクにおいて、
前記耳掛け部が、帯状弾性体で形成されており、且つ、帯状弾性体の両端部の間に折り目がつき、その両端部が突出するように平面状に折り畳まれており、該両端部が前記マスク本体部に接合されていることを特徴とするマスク。
【請求項9】
前記帯状弾性体として、弾性付きの不織布が使用形成されていることを特徴とする請求項8に記載のマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−56240(P2011−56240A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273109(P2009−273109)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(593026111)康那香企業股▲ふん▼有限公司 (8)
【Fターム(参考)】