説明

マスクを用いた成膜品の製造方法

【課題】開口部を有するマスクを用いて、リードフレームの表面にアルミニウム膜を成膜してなる成膜品の製造方法において、一度使用したマスクを掃除することなく成膜工程に再度使用できるようにする。
【解決手段】成膜材料であるアルミニウムと同一の材料にてマスク100を形成し、溶射によりアルミニウム膜40を形成した後、上面および開口部101の側面に溶射アルミニウム40aが付着したマスク100をリードフレーム40より取り外し、溶射アルミニウム40aとともにプレスすることにより、アルミニウム膜40の成膜工程に再度使用可能な形状に、成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を有するマスクを用いて、被成膜部材の表面に膜を成膜してなる成膜品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の一般的な成膜品としては、セラミックなどよりなる被成膜部材の表面に溶射により膜を形成してなるものが挙げられる(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、上面から下面まで貫通する開口部を有するマスクを用い、このマスクの下面を被成膜部材の表面に対向させつつ、マスクを被成膜部材の表面上に配置する。そして、マスクの上面側から開口部を介して、被成膜部材の表面に成膜材料を供給することにより、成膜材料よりなる膜を成膜する。
【0004】
ここで、成膜後においては、マスクの上面や開口部の側面に成膜材料が付着し、この付着した成膜材料の分、マスクの厚さや開口部の形状・サイズが変化してしまうため、同じマスクを再度、成膜工程に使用しようとしても、マスク精度が保持できないという問題があった。
【0005】
これに対して、上記特許文献1では、使用後のマスクに付着した成膜材料を掃除して除去するようにしているが、そのための大がかりな専用の装置が必要であり、製造コストのアップを招いてしまっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−14708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、開口部を有するマスクを用いて、被成膜部材の表面に膜を成膜してなる成膜品の製造方法において、一度使用したマスクを掃除することなく成膜工程に再度使用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、成膜材料と同一の材料にてマスク(100)を形成し、成膜材料によって膜(40)を形成した後、上面および開口部(101)の側面に成膜材料が付着したマスク(100)を被成膜部材(40)より取り外し、成膜材料とともにプレスすることにより、膜(40)の成膜工程に再度使用可能な形状に、成形することを特徴とする。
【0009】
それによれば、マスク(100)と成膜材料とを同一にすることで、一度使用した後の成膜材料が付着したマスク(100)を、プレスによって加工精度良く成形して、成膜工程に使用可能な形状にすることができるため、一度使用したマスク(100)を掃除することなく成膜工程に再度使用することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の成膜品の製造方法において、プレスによる成形は、成膜材料が付着したマスク(100)に対して、上面と下面との間の厚さ寸法を整えるとともに、開口部(101)の孔形状を整えるように行うものであることを特徴とする。
【0011】
それによれば、成膜材料が付着したマスク(100)を再度使用可能な形状へと適切に成形することができる。
【0012】
ここで、請求項3に記載の発明のように、成膜材料は、金属であるものにでき、請求項4に記載の発明のように、膜(40)の成膜は、溶射により行うものにできる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の成膜品の製造方法において、マスク(100)において、成膜が行われる開口部(101)を第1の開口部としたとき、マスク(100)には、上面から下面へ貫通する第2の開口部(102)を設け、プレスによる成形のときに、マスク(100)の上面に付着している成膜材料のうち当該プレスにより押し広げられた部分を、第2の開口部(102)内へ入り込ませるようにしたことを特徴とする。
【0014】
それによれば、プレス時におけるマスク(100)の上面の成膜材料の逃げ場所として、第1の開口部(101)だけでなく、第2の開口部(102)も加わるため、プレスの荷重を低く抑えることが可能となる。結果、プレスの装置コストの低減などが図れる。
【0015】
さらに、請求項6に記載の発明のように、請求項5に記載の成膜品の製造方法においては、第2の開口部(102)は、平面的に複数個設けられたものであり、マスク(100)において各第2の開口部(102)の間にて残された部分の幅が、マスク(100)の全体に渡って均一の大きさとされているものとしてもよい。
【0016】
それによれば、マスク(100)において各第2の開口部(102)の間の部分である残し部の幅を均一にすることで、プレスの荷重を低く抑えるために好ましいマスク構成が実現される。
【0017】
また、請求項7に記載の発明のように、請求項5または6に記載の成膜品の製造方法においては、被成膜部材(10)を、被成膜部材(10)を支持する台座(200)上に搭載し、マスク(100)を被成膜部材(10)の表面上に配置するときは、マスク(100)における第1の開口部(101)以外の部位が台座(200)と重なるように、マスク(100)を配置するものであり、第2の開口部(102)は、マスク(100)のうち台座(200)と重なる部位に設けられており、台座(200)のうち第2の開口部(102)に対応する部位を、貫通孔(201)としてもよい。
【0018】
それによれば、溶射にて成膜する際のガスの流れが安定化し、膜厚ばらつきが抑制されるというメリットが期待される。
【0019】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体モジュールの概略断面図である。
【図2】第1実施形態の半導体モジュールの製造方法を示す工程図である。
【図3】図2に続く製造方法を示す工程図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る成膜品の製造方法の要部を示す工程図であり、(a)はマスクの上面図、(b)は(a)中のB−B概略断面図、(c)は(a)中のC−C概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体モジュールS1の概略断面構成を示す図である。本実施形態の半導体モジュールS1は、大きくは、リードフレーム10と、リードフレーム10の上面(図1中の上面)に搭載された回路素子20と、リードフレーム10の上面側にてリードフレーム10および回路素子20を封止する樹脂30とを備えて構成されている。
【0023】
リードフレーム10は回路素子20を搭載する素子搭載部および回路素子20の熱を放熱するヒートシンクとして機能するものである。このリードフレーム10は、板状をなす金属部11と、金属部11に設けられたセラミック膜12とよりなる。
【0024】
金属部11は、銅や鉄などの金属よりなる板状のものであり、リードフレーム10の本体を構成するものである。たとえば、金属部11は純銅よりなり、□20mm、厚さ2mmの矩形板状のものである。そして、金属部11の一方の板面がリードフレーム10の上面であり、回路素子20が搭載される素子搭載面として構成されている。
【0025】
また、セラミック膜12は金属部11の他方の板面にて、当該他方の板面を被覆するように設けられている。そして、このセラミック膜12により、リードフレーム10の下面(図1中の下面)が構成されている。
【0026】
ここでは、図1に示されるように、金属部11の他方の板面の端部は、当該他方の板面側から金属部11の一方の板面側に向かって拡がるテーパ形状の部位とされており、セラミック膜12はこのテーパ部にも形成されている。
【0027】
このセラミック膜12は、溶射により形成されたアルミナなどの電気絶縁性の膜であり、たとえば厚さ0.15mm程度のものである。そして、本実施形態では、このセラミック膜12付きの金属部11、すなわち、リードフレーム10が被成膜部材として構成されている。
【0028】
そして、この被成膜部材の表面すなわちリードフレーム10の下面であるセラミック膜12の表面には、被成膜部材の表面に成膜された膜としてのアルミニウム膜40が、当該セラミック膜12を被覆するように設けられている。
【0029】
このアルミニウム膜40は溶射により形成された膜であり、たとえばその厚さは0.3mm程度である。また、ここでは、アルミニウム膜40は、セラミック膜12の外郭よりも多少内側の領域に形成されており、たとえばアルミニウム膜40の外郭はセラミック膜12の外郭よりも1mm程度内側に位置している。
【0030】
このアルミニウム膜40は、セラミック膜12の電気絶縁特性を評価するための検査電極となる一方、セラミック膜12は耐衝撃性が低いため、その保護膜として機能するものである。そして、本実施形態では、このアルミニウム膜40付きのリードフレーム10が成膜品として構成されている。
【0031】
回路素子20は、リードフレーム10の上面に、はんだ50を介して搭載され、はんだ接合されている。この回路素子20としては、たとえば駆動時に発熱するパワー素子や駆動用ICなどが挙げられる。回路素子20の一例としては、□10mmで厚さ0.2mmの正方形板状をなすIGBTが挙げられる。
【0032】
また、リードフレーム10の上面には、回路素子20と外部との電気的接続を行うための外部接続用端子60が設けられている。図1中の左側の外部接続用端子60は、回路素子20とアルミニウムなどよりなるボンディングワイヤ70を介して電気的に接続され、図1中の右側の外部接続用端子60は、リードフレーム10とはんだ50を介して電気的に接続されている。なお、図1中の左側の外部接続用端子60も、図示しない適所にて、はんだ接合されて支持されている。
【0033】
そして、リードフレーム10の上面側では、リードフレーム10の上面、回路素子20、ワイヤ70、および外部接続用端子60が、樹脂30によって包み込まれるように封止されている。
【0034】
この樹脂30としては、一般的なモールド材料が採用でき、たとえば、シリカよりなるフィラーが含有されたエポキシ樹脂などの樹脂材料よりなる。そして、このような樹脂30は、たとえば金型を用いたトランスファーモールド法などにより成形される。
【0035】
ここで、外部接続用端子60の一部は、外部との接続を行うために、樹脂30より突出し外部に露出している。また、図1に示されるように、リードフレーム10の下面のセラミック膜12側は樹脂30で被覆されずに、アルミニウム膜40は樹脂30より露出している。これにより、回路素子20から発生する熱は、このアルミニウム膜40にて放熱されるようになっている。
【0036】
次に、本実施形態の半導体モジュールS1の製造方法について述べる。図2、図3は、本製造方法のうち成膜品であるアルミニウム膜40付きのリードフレーム10の製造方法を示す工程図である。図2(a)、(b)、(d)および図3(a)〜(d)は、各ワークを断面的に示したものであり、図2(d)は図2(c)のA−A断面図である。つまり、図2(c)は図2(d)の上面図である。
【0037】
この成膜品は、大きくは、リードフレーム10におけるセラミック膜12の表面に、成膜用のマスク100を配置し、そのマスク100の開口部101を介して、溶射によりセラミック膜12の表面にアルミニウム膜40を成膜するものである。
【0038】
具体的に、成膜品の製造方法においては、まず、図2(a)に示されるように、エッチングやプレスなどにより上記図1に示される板状に形成された金属部11を用意し、図2(b)に示されるように、この金属部11の他方の板面に、溶射によりセラミック膜12を成膜する。これにより被成膜部材としてのリードフレーム10ができあがる。
【0039】
次に、リードフレーム10におけるセラミック膜12の表面に、溶射によりアルミニウム膜40を成膜する。この溶射に用いられるマスク100について、図2(c)、(d)を参照して述べる。
【0040】
マスク100は成膜材料と同一の材料にて形成されたものである。すなわち、ここでは、被成膜部材10の表面に成膜される膜としてのアルミニウム膜40の成膜材料であるアルミニウムによりマスク100が形成されている。
【0041】
このマスク100は、上面(図2(d)中の上面)から下面(図2(d)中の下面)まで貫通する開口部101を有するものである。図2に示される例では、マスク100は矩形枠状の板形状をなしており、その中空部が矩形状の開口形状をなす開口部101とされている。ここで、マスク100における上面と下面との間の厚さ寸法は、たとえば2mmである。
【0042】
そして、図2(c)、(d)に示されるように、被成膜部材であるリードフレーム10は、その金属部11の素子搭載面側を台座200に接触させた状態で、台座200上に支持される。
【0043】
そして、この状態で、マスク100の下面をリードフレーム10におけるセラミック膜12の表面に対向させて、当該セラミック膜12の表面上に、マスク100を配置する。このとき、リードフレーム10以外の部分では、マスク100における開口部101以外の部位すなわちマスク100の枠部が、台座200と重なるようにして、マスク100を台座200に支持させる。
【0044】
次に、この状態にて、マスク100の上面側(図2(d)中の上方側)から開口部101を介して、リードフレーム10の表面に、溶射によって成膜材料であるアルミニウムを供給する。それにより、アルミニウムよりなるアルミニウム膜40を成膜する。こうして、成膜品としてのアルミニウム膜40付きのリードフレーム10ができあがる。
【0045】
さらに、本実施形態の成膜品の製造方法においては、この使用後のマスク100をアルミニウム膜40の成膜工程で再使用するために、当該マスク100の整形工程を行う。この整形工程は図3に示される。
【0046】
図3(a)に示されるように、アルミニウム膜40を形成した後、成膜材料の供給側に位置するマスク100の上面、および、マスク100の開口部101の側面には、成膜材料である溶射されたアルミニウム40a(以下、溶射アルミニウム40aという)が付着している。
【0047】
そこで、整形工程では、まず、図3(b)に示されるように、マスク100をリードフレーム10より取り外す。そして、図3(c)、(d)に示されるように、成膜材料である溶射アルミニウム40aとともに、マスク100をプレスすることにより、アルミニウム膜40の成膜工程に再度使用可能な形状となるようにマスク100を成形する。
【0048】
具体的には、このプレスによる整形工程としては、図3(c)に示されるように、溶射アルミニウム40aが付着したマスク100に対して、上面と下面との間の厚さ寸法を整えるようにプレスする第1の工程と、この後、図3(d)に示されるように、開口部101の孔形状を整えるようにプレスする第2の工程とを行う。
【0049】
使用後のマスク100において、上面と下面との間の厚さ寸法については、上面に付着した溶射アルミニウム40aの厚さ分だけ、実質的なマスク100の厚さ寸法が大きくなっている。
【0050】
そこで、具体的に第1の工程では、図3(c)に示されるように、マスク100の上面と下面にそれぞれ第1の金型300を設け、これら第1の金型300によりマスク100を挟むようにプレスする。
【0051】
つまり、当該第1の金型300により、成膜材料である溶射アルミニウム40aとともにマスク100を、その厚さ方向にプレスすることでマスク100を当該厚さ方向に圧縮変形させる。それにより、上面に付着した溶射アルミニウム40aを含むマスク100の変形後における上記厚さ寸法を、使用前のマスク100と同一厚さ、たとえば2mmの厚さとする。
【0052】
また、使用後のマスク100において、開口部101については、開口部101の側面に成膜材料である溶射アルミニウム40aが付着している。そのため、その付着した溶射アルミニウム40aの厚さ分だけ、開口部101の開口面積が実質的に小さくなっており、初期の開口部101に対して孔形状が崩れたものとなっている。
【0053】
また、上記第1の工程後においては、マスク100の上面に付着している溶射アルミニウム40aのうち第1の工程のプレスにより押し広げられた部分は、開口部101に入り込む。そのため、当該開口部101の側面に付着する溶射アルミニウム40aの厚さは、いっそう大きくなる。
【0054】
そこで、具体的に第2の工程では、図3(d)に示されるように、使用前の開口部101の開口形状と同一の形状を有する第2の金型400を用い、この第2の金型400を、使用後のマスク100の開口部101に挿入するようにプレスする。
【0055】
それにより、開口部101の側面に付着した溶射アルミニウム40aが第2の金型400によって、そぎ落とされるか、もしくは、当該溶射アルミニウム40aが開口部101の側面に付着したまま、開口面積が広がるように開口部101が変形する。これにより、開口部101は初期の形状となる。こうして、整形工程によって、成膜材料が付着したマスク100は、再度使用可能な形状へと適切に成形されるのである。
【0056】
ところで、上述したように、本実施形態の成膜品の製造方法によれば、成膜材料であるアルミニウムによってアルミニウム膜40を形成した後、上面および開口部101の側面に当該成膜材料が付着したマスク100を被成膜部材であるリードフレーム10より取り外し、当該成膜材料とともにプレスにより成形することにより、当該成形されたマスク100をアルミニウム膜40の成膜工程におけるマスク100として再度用いるようにしている。
【0057】
それによれば、マスク100と成膜材料とを同一にすることで、一度使用した後の成膜材料が付着したマスク100を、プレスによって加工精度良く成形して、成膜工程に使用可能な形状にすることができる。
【0058】
これは、マスク100と成膜材料とを同一材料とすることで、機械物性が同じとなり、プレス時の変形も同等なものとなるためである。そのため、本実施形態によれば、一度使用したマスク100を掃除することなく成膜工程に再度使用することができる。
【0059】
なお、一方で、できあがった上記成膜品としてのアルミニウム膜40付きのリードフレーム10に対しては、当該リードフレーム10の上面に回路素子20および外部接続用端子60を、はんだ50を介して搭載し、はんだ接合する。
【0060】
このはんだ50としては、たとえばSn−Cu系のはんだ材料を用い、はんだ50中のボイド率を軽減するため、真空リフロー槽を用いてはんだ接合する。また、リードフレーム10上にて必要部分にワイヤボンディングを行う。
【0061】
そして、このものを樹脂30により封止する。こうして、本実施形態の半導体モジュールS1ができあがる。以上が、本実施形態の半導体モジュールS1の製造方法である。
【0062】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る成膜品の製造方法の要部を示す工程図であり、本実施形態のマスク100を被成膜部材であるリードフレーム10の表面、すなわち、リードフレーム10におけるセラミック膜12の表面上に配置した状態を示す図である。
【0063】
ここで、図4において、(a)はマスク100の上面図、(b)は(a)中のB−B概略断面図、(c)は(a)中のC−C概略断面図である。なお、図4(a)においては、マスク100の上面に便宜上、点ハッチングを施し、マスク100の各開口部101、102との識別の容易化を図っている。本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、マスク100の構成を一部変形したことが相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0064】
図4に示されるように、本実施形態では、マスク100において、アルミニウム膜40の成膜が行われる開口部101を第1の開口部101としたとき、当該マスク100には、マスク100の上面から下面へ貫通する第2の開口部102を設けている。つまり、本実施形態では、第1の開口部101の周りのマスク100の枠部に、さらに第2の開口部102を設けている。
【0065】
それにより、上記プレスによる成形工程における第1の工程のときに、マスク100の上面に付着している溶射アルミニウム40aのうち当該プレスにより押し広げられた部分を、第2の開口部102内へ入り込ませるようにしている。
【0066】
なお、この第1の工程におけるプレスでは、マスク100の上面に付着している溶射アルミニウム40aのうち当該プレスにより押し広げられた部分は、第2の開口部102だけでなく、上記第1実施形態と同様に、第1の開口部101内へも入り込む。
【0067】
つまり、マスク100の上面に付着している溶射アルミニウム40aのうち第1の開口部101の近傍のものは、プレスにより押し広げられて第1の開口部101に入り込み、第2の開口部102の近傍のものは、プレスにより押し広げられて第2の開口部102に入り込むのである。
【0068】
このように本実施形態によれば、当該プレス時におけるマスク100の上面の溶射アルミニウム40aの逃げ場所として、第1の開口部101だけでなく、第2の開口部102も加わるため、当該プレスの荷重を低く抑えることが可能となる。
【0069】
たとえば、この第2の開口部102が無い場合、当該プレスによるマスク100の変形時の溶射アルミニウム40aの逃げ場所は、第1の開口部101以外には、マスク100端部の外側しかない。その場合、マスク100における第1の開口部101以外の部位、具体的には枠部の面積が大きいものであると、プレスの荷重もかなり大きいものになってしまう。
【0070】
その点、当該溶射アルミニウム40aの逃げ場所として、マスク100に、さらに第2の開口部102を設けることにより、プレスの荷重の増大化を抑制することが可能となる。そして、その結果、当該プレスの装置コストの低減などが図れる。
【0071】
また、本実施形態では、図4に示されるように、第2の開口部102は、マスク100のうち第1の開口部101の周囲の枠部にて平面的に複数個設けられている。そして、マスク100において各第2の開口部102の間にて残された部分の幅、すなわち、隣り合う第2の開口部102に位置する残し部の幅が、マスク100の全体に渡って均一の大きさとされている。
【0072】
このように、残し部の幅を均一にすることで、プレスの荷重を低く抑えるために好ましいマスク構成が実現される。もし、マスク100全体において当該残し部の幅の大小のばらつきが大きいと、幅の大きな部位の存在によって、プレスの荷重が狙いの値よりも大きくなってしまう。その点、当該残し部の幅をマスク100全体に渡って均一の大きさとすれば、プレスの荷重を狙いの値に制御し、適切に低く抑えることが可能となる。
【0073】
また、図4に示されるように、本実施形態においても、被成膜部材であるリードフレーム10を台座200上に搭載して支持する。そして、マスク100をリードフレーム10の表面上に配置するときは、マスク100における第1の開口部101以外の部位すなわち枠部が台座200と重なるように、マスク100を台座200上に配置する。
【0074】
このとき、本実施形態では、第2の開口部102は、マスク100のうち台座200と重なる部位に設けられることになる。ここでは、好ましい形態として、図4(b)に示されるように、さらに、台座200のうち第2の開口部102に対応する部位を、貫通孔201としている。
【0075】
この貫通孔201は、第2の開口部102に正対する台座200の部分にて、マスク100の上面から下面に向かう第2の開口部102の貫通方向、すなわちマスク100の厚さ方向に沿って貫通する孔である。台座200に貫通孔201を設けることにより、マスク100の第2の開口部102に成膜材料である溶射アルミニウム40aが堆積するのを防止できる。
【0076】
また、溶射にて成膜する際に、大量のガスの流れが成膜場所に吹き付けられると、マスク100が大きい場合、不安定になり易いが、さらに、このようにマスク100の第2の開口部102に対応する台座200の部分に貫通孔201を設ければ、そのガスの流れが安定化し、成膜される膜の膜厚ばらつきが抑制されるというメリットも発生する。
【0077】
(他の実施形態)
なお、被成膜部材としては、上記リードフレーム10以外にも、その表面に溶射などによって膜を成膜できるものならば、上記各実施形態に述べた成膜品の製造方法は、広く適用することができる。
【0078】
また、成膜材料としては、金属が好ましいが、上述したアルミニウム以外にも、銅やニッケルなどでもよい。また、マスク100を用いて膜の成膜が行われるものであり、且つ、マスク100を形成できるものであるならば、成膜材料としては、金属に限定されるものではない。
【0079】
また、膜の成膜としては、上記した溶射に限定されるものではなく、たとえばAD(エアロゾルデポジション)法による成膜などにも、上記各実施形態に述べた成膜品の製造方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 被成膜部材としてのリードフレーム
40 アルミニウム膜
100 マスク
101 開口部
102 第2の開口部
200 台座
201 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面から下面まで貫通する開口部(101)を有するマスク(100)を、当該マスク(101)の下面を被成膜部材(10)の表面に対向させて、前記被成膜部材(10)の表面上に配置し、前記マスク(100)の上面側から前記開口部(101)を介して、前記被成膜部材(10)の表面に成膜材料を供給することにより、前記成膜材料よりなる膜(40)を成膜してなる成膜品を製造する成膜品の製造方法において、
前記成膜材料と同一の材料にて前記マスク(100)を形成し、
前記成膜材料によって前記膜(40)を形成した後、前記上面および前記開口部(101)の側面に前記成膜材料が付着した前記マスク(100)を前記被成膜部材(40)より取り外し、前記成膜材料とともにプレスすることにより、前記膜(40)の成膜工程に再度使用可能な形状に、成形することを特徴とする成膜品の製造方法。
【請求項2】
前記プレスによる成形は、前記成膜材料が付着した前記マスク(100)に対して、前記上面と前記下面との間の厚さ寸法を整えるとともに、前記開口部(101)の孔形状を整えるように行うものであることを特徴とする請求項1に記載の成膜品の製造方法。
【請求項3】
前記成膜材料は、金属であることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜品の製造方法。
【請求項4】
前記膜(40)の成膜は、溶射により行うものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の成膜品の製造方法。
【請求項5】
前記マスク(100)において、前記成膜が行われる開口部(101)を第1の開口部としたとき、前記マスク(100)には、前記上面から前記下面へ貫通する第2の開口部(102)を設け、
前記プレスによる成形のときに、前記マスク(100)の上面に付着している前記成膜材料のうち当該プレスにより押し広げられた部分を、前記第2の開口部(102)内へ入り込ませるようにしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の成膜品の製造方法。
【請求項6】
前記第2の開口部(102)は、平面的に複数個設けられたものであり、前記マスク(100)において各第2の開口部(102)の間にて残された部分の幅が、前記マスク(100)の全体に渡って均一の大きさとされていることを特徴とする請求項5に記載の成膜品の製造方法。
【請求項7】
前記被成膜部材(10)を、前記被成膜部材(10)を支持する台座(200)上に搭載し、
前記マスク(100)を前記被成膜部材(10)の表面上に配置するときは、前記マスク(100)における前記第1の開口部(101)以外の部位が前記台座(200)と重なるように、前記マスク(100)を配置するものであり、
前記第2の開口部(102)は、前記マスク(100)のうち前記台座(200)と重なる部位に設けられており、
前記台座(200)のうち前記第2の開口部(102)に対応する部位を、貫通孔(201)としたことを特徴とする請求項5または6に記載の成膜品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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