説明

マッサージ機

【課題】被施療者の要求に応じて多彩なマッサージを行うことができるものとする。
【解決手段】上下に回動自在に支持されている上下一対のアーム4b,4aの各先端に施療子2b,2aが配設され、両施療子を接近離間する方向に駆動するアクチュエータ26,27と、所定範囲内で上下に回動自在である上記一対のアームを付勢することで一方のアームの先端に配した施療子のみを被施療者に接触させることができる状態に保持する他のアクチュエータ28と、施療子にかかる圧力を検出する圧力センサと、該圧力センサで検出された圧力に基づいて少なくとも後者のアクチュエータを動作させる制御部CUとを備える。施療子にかかる圧力に応じて、上下で対をなす施療子の被施療者への当たり方を変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機、殊に上下で対をなす施療子を備えるとともにこの対の施療子の間隔を変化させることができるマッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
揉みマッサージや指圧マッサージ等を行うことができるマッサージ機は従来から存在しているが、近年、これらのマッサージに加えて掴みマッサージも行うことができるマッサージ機が提供されている。特許文献1などに示されたこの種のマッサージ機では、上下に回動自在に支持されている上下一対のアームの各先端に施療子を配設するとともに、両施療子を接近離間する方向に駆動するアクチュエータを設けることで掴みマッサージを実現しているが、上下で対をなす二つの施療子を離間させたままの状態で被施療者を押圧する時と、上記両施療子を接近させた状態で被施療者を押圧する時とでは、被施療者にしてみれば後者の方が高い面圧を受けることになる。
【0003】
つまり、上下で対をなす二つの施療子の間隔を変えることで異なった感覚のマッサージを行うことができる。しかし、従来のマッサージ機では、上記機構は掴みマッサージのためのものとして提供されていて上記の2つの状態を選択的に保った状態でマッサージを行うことができるようにはなっていなかった。
【特許文献1】特開2004−357938公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みて発明したものであって、被施療者の要求に応じて多彩なマッサージを行うことができるマッサージ機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係るマッサージ機は、上下に回動自在に支持されている上下一対のアームの各先端に施療子が配設されているとともに、両施療子を接近離間する方向に駆動するアクチュエータと、所定範囲内で上下に回動自在である上記一対のアームを付勢することで一方のアームの先端に配した施療子のみを被施療者に接触させることができる状態に保持する他のアクチュエータとを備えたマッサージ機であり、施療子にかかる圧力を検出する圧力センサと、該圧力センサで検出された圧力に基づいて上記両アクチュエータのうちの少なくとも後者のアクチュエータを動作させる制御部とを備えていることに特徴を有している。施療子にかかる圧力に応じて、上下で対をなす施療子の被施療者への当たり方を変えるようにしたものである。
【0006】
この時、制御部は圧力センサで検出された圧力から求めた所定時間内の平均値を設定値と比較してアクチュエータを動作させるものであっても、圧力センサで検出された圧力から求めた所定時間内の平均値の変化率を設定値と比較してアクチュエータを動作させるものであってもよい。
【0007】
制御部は該圧力センサで検出された圧力に基づいて上記両アクチュエータのうちの少なくとも後者のアクチュエータを動作させる自動切換モードに加えて、操作器から入力される操作に基づいて上記両アクチュエータのうちの少なくとも後者のアクチュエータを動作させる手動切換モードを備えたものとするのも好ましい。被施療者が動作を選択することもできるものとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、施療子にかかる圧力に応じて、上下で対をなす施療子の被施療者への当たり方を変えるようにしたものであり、被施療者にしてみれば、より多彩なマッサージを受けることができるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。まず、上下で対をなす施療子2b,2aを備えて、これら施療子2b,2aの被施療者への当たり方を変えられるようにしたマッサージ機の機構的なことから説明すると、図14〜図17において、図中33は掴みマッサージを可能としているマッサージ機構であり、椅子の背もたれ内に自走自在な状態で配設されるマッサージ機構33は、フレームを構成する幅方向両端の側板11,11の間に、上下駆動軸12と強弱駆動軸(図示せず)が架設されるとともに、可動ユニット14が配設されている。図中5は施療子下方カバーである。
【0010】
上記の上下駆動軸12は、一方の側板11に固定された上下駆動用モータ15にて回転駆動されるもので、その両端にはころ16とピニオン17が夫々取り付けられている。ころ16は背もたれ内に配設されたレールを転動し、ピニオン17は上記レールに付設されているラックと噛合することから、上下駆動用モータ15の駆動によってマッサージ機構は背もたれ内においてレールに沿って上下に自走する。また、強弱駆動軸は他方の側板11に固定された強弱用モータにて回転駆動されるもので、可動ユニット14を回転させるためのギアが取り付けられている。
【0011】
可動ユニット14は図15に示すように左右一対のギアプレート19,19間に幅駆動軸20や2本のスライドガイド軸21,21を架設し、左右一対の施療子ユニット7(図14及び図15では一方の施療子ユニット7のみを示している)を取り付けたもので、両ギアプレート19,19に対して軸回りの回転が自在となっている幅駆動軸20の両端が、上記マッサージ機構の一対の側板11,11で回転自在に支持されることで側板11,11間に配設されている。そして上記ギアプレート19の外周面の歯部19aが前記強弱駆動軸のギアに噛合しており、強弱駆動軸が回転する時、可動ユニット14は幅駆動軸20の軸回りに回転し、施療子ユニット7に設けた施療子2b,2aの背もたれ前面側への突出量を変化させる。なお、上記幅駆動軸20は一方の側板11に固定された幅駆動用モータにて回転駆動される。
【0012】
施療子ユニット7は図16に示すように、施療子支持部材としてのアームペースプレート22、先端部に施療子2bを取り付けた上アーム4b、先端に施療子2aを取り付けた下アーム4a等からなるもので、上アーム4b及び下アーム4aの基端部を支軸23によって回転自在に支持している上記アームベースプレート22は、上記幅駆動軸20のねじ部に螺合する送りナット24と、上記スライドガイド軸21,21にスライド自在に嵌合するスライダー25,25とを備えて、幅駆動軸20の回転によって幅駆動軸20及びスライドガイド軸21の軸方向位置を変化させるものであり、また、幅駆動軸20に形成されたねじ部は、一対の施療子ユニット7,7の送りナット24,24が噛合する左右のうちの一方が逆ねじで形成されていることから、左右一対の施療子ユニット7,7における各アームベースプレート22は幅駆動軸20の回転によって互いに接近したり離れたりする。
【0013】
上下駆動用モータ15で上下駆動軸12を駆動する時、マッサージ機構33は前述のように背もたれ内を上下に自走して施療子2b,2aの位置を上下に変更する。また強弱駆動用モータで強弱駆動軸を駆動すれば、前述のように可動ユニット14が幅駆動軸20の軸回りに回転するために、幅駆動軸20から見た施療子2bの背もたれ前方への突出量、つまりは施療子2bが人体を押圧する強さが変化する。また、幅駆動用モータで幅駆動軸20を駆動することで、左右一対の施療子ユニット7,7は幅駆動軸20の軸方向である左右方向において接近離反して、左右の施療子2b,2aの間隔を変更する。
【0014】
このマッサージ機では、上記3つのモータによる上記各動作を組み合わせることで、施療子2b,2aに三次元的な複合動作を行わせて、いわゆる揉みマッサージを実現しているものであり、このような駆動制御を可能とするために、上下位置や突出量(強弱)や幅位置等を検出するセンサを設けてフィードバック制御を行っている。
【0015】
また、上アーム4b及び下アーム4aの間に掴みマッサージ用のアクチュエータであるエアバッグ26,27が設けられている。エアバッグ26はエアの供給で膨張する時、図17に示すように両アーム4b,4a先端の施療子2b,2aを互いに接近させる方向にアーム4a,4bを支軸23を中心に回転させ、エアバッグ27はその膨張時に逆に施療子2b,2aが遠ざかる方向にアーム4a,4bを回転させる。上下方向に間隔をおいて配置されている対の施療子2b,2aのエアバッグ26,27による接近離反動作により、施療子2b,2aで人体に対して掴みマッサージを行うことができるものである。
【0016】
更に、上下で対になっている施療子2b,2aが左右一対設けられているとともに、施療子2b,2aは上アーム4b及び下アーム4aがアームベースプレート22に対して可動範囲が制限された状態で回動自在に枢支されているために、上記可動範囲内において回動することで上下の施療子2b,2aが共に人体背面に接触する状態を保つようになっているわけであるが、上アーム4bとアームベースプレート22間に設けたアクチュエータであるフロートロック用エアバッグ28を膨張させた時には、上アーム4b(と下アーム4a)はアームベースプレート22に対して支軸23を中心に回動して施療子2bを背もたれの前面側に押し出すために、上方側の施療子2bのみが人体に接触する状態を得ることができるものであり、また空気ばねとして機能することになるエアバッグ28の膨張による上アーム4bの付勢力の増大により、アームベースプレート22に対する上アーム4b及び下アーム4aの回動自在な領域が狭められることになるとともに、エアバッグ28を最大限に膨張させた時には上記回動範囲が実質的にゼロとなる。ただし、大きな荷重が施療子2bにかかった時にはエアバッグ28が縮むことで、人体に対する負荷が過大になり過ぎることはない。
【0017】
上記の各動作は図6に示す制御部CUの制御下に行われる。図中の上下センサや強弱位置センサ、幅位置センサ、上下回転センサ、強弱回転センサ及び幅回転センサは、上下モーターと強弱モーターと幅モーターの駆動制御のためのものであり、図中AUはエアバッグ26〜28に対するエアの給排のためのエアポンプ及び電磁弁からなるエア駆動ユニットである。
【0018】
ここにおいて、図1(a)に示すように上下で対をなす施療子2b,2aを離間させた状態で揉みマッサージ動作を行う時と、図1(b)に示すように上下で対をなす施療子2b,2aをエアバッグ26を膨張させることで力F1を加えて接近させた状態で揉みマッサージ動作を行う時と、図1(c)に示すようにエアバッグ28を膨張させることで力F2を加えて施療子2bのみが被施療者に接する状態で揉みマッサージ動作を行う時とでは、図1(a)に示す状態をA、図1(b)に示す状態をB、図1(c)に示す状態をCとする時、被施療者が受ける押し圧力(面圧)はCの時に最も大きくなり、Aの時が最も小さくなる。
【0019】
本発明はこの点を利用して揉みマッサージの際に被施療者が受けるマッサージ感覚をより多彩にするとともに、上記ABCの状態が施療子2b,2aにかかる圧力に応じて自動的に切り替わるようにしたもので、このために上記制御部CUには、施療子2b,2aにかかる圧力を測定する圧力センサSを接続している。なお、この圧力センサSには特開2007−357944公報に示されたものや、各アーム4b,4aに施療子2b,2aを取り付けている軸に取り付けられて軸の歪みを測定するもの等を用いることができる。
【0020】
そして上記制御部Cは図19に示す「もみ手変化オートスイッチ」SWaがオンとなっている状態で揉みマッサージを実行する際、圧力センサSで測定される圧力Pの所定時間内の平均値を所定値と比較することで、エアバッグ26,27やエアバッグ28を動作させることで、上記ABCの3状態を切り換える。
【0021】
たとえば図2及び図3に示すように、A状態にある時に圧力P(平均値)が所定値Pb以上となればB状態に切り換え、B状態にある時に圧力P(平均値)が所定値Pc以上となればC状態に、所定値Pa以下となればA状態に切り換え、更にC状態にある時に圧力P(平均値)が所定値Pd以下となればB状態に切り換えるのである。図6はこの動作のフローチャートを示している。なお、上記各所定値Pa〜Pdは夫々任意の値を用いることができ、Pb<Pdである必要はなく、PbとPa、Pc<Pdの大小関係も問わない。また、ここでは平均値を用いるものを示したが、揉み動作に伴って変化する圧力Pの最大値や最小値を用いてもよい。
【0022】
いずれにせよ、被施療者がピンポイント的なマッサージを望む時には、体を施療子2b,2aに押し付けると、検出される圧力Pが高くなるために、より面圧が高くなる状態に、つまりはA状態からB状態、あるいはB状態からC状態に切り替わるものであり、逆にもっと穏やかなマッサージを望む時には、施療子2b,2aから体を離せば、検出される圧力Pが低下するために、より面圧が低くなる状態に、つまりはC状態からB状態、あるいはB状態からA状態に切り替わるものであり、揉みマッサージ動作そのものは同じであるにもかかわらず、異なる面圧のマッサージを得ることができる。
【0023】
圧力変化率の値に応じて切り換えたり、平均値と変化率とを共に用いて切り換えを行うようにしてもよい。図5〜図7は圧力Pの時間T1内の平均値と時間T2内の平均値とから求めた変化率+ΔP,−ΔPを用いた場合の例を示しており、A状態にある時に変化率+ΔPが所定値+ΔS以上となればB状態に切り換え、B状態にある時に変化率+ΔPが所定値+ΔS以上となればC状態に切り換え、C状態にある時に変化率−ΔPが所定値−ΔS以下となればB状態に切り換え、B状態にある時に変化率−ΔPが所定値−ΔS以下となればA状態に切り換えるものを示している。
【0024】
また、上記3状態のうち、A状態とC状態の間で切り換えを行うものであってもよく、この場合、エアバッグ28のみで切り換えを行うことができるために、応答性が良くなる。ちなみに、図8〜図10は圧力Pの平均値に基づいてA状態とC状態とを切り換える場合を、図11〜図13は圧力Pの変化率に基づいてA状態とC状態とを切り換える場合を示している。
【0025】
自動での切り替えの他に、図19に示すように操作器に「もみ手変化スイッチ」の手動操作スイッチSWmを設けて、このスイッチSWmの操作に応じて、上記ABCの3状態が切り換えられるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)(b)(c)は本発明の本発明の実施の形態の一例における施療子の各状態を示す概略説明図である。
【図2】(a)(b)(c)は夫々同上の動作説明図である。
【図3】同上の状態遷移を示す説明図である。
【図4】同上のフローチャートである。
【図5】(a)(b)(c)は夫々他例の動作説明図である。
【図6】同上の状態遷移を示す説明図である。
【図7】同上のフローチャートである。
【図8】(a)(b)は夫々更に他例の動作説明図である。
【図9】同上の状態遷移を示す説明図である。
【図10】同上のフローチャートである。
【図11】(a)(b)は夫々別の例の動作説明図である。
【図12】同上の状態遷移を示す説明図である。
【図13】同上のフローチャートである。
【図14】本発明に係るマッサージ機構の一例の斜視図である。
【図15】同上の可動ユニットの斜視図である。
【図16】同上の施療子ユニットの分解斜視図である。
【図17】同上の掴みマッサージ動作を示す側面図である。
【図18】同上のブロック回路図である。
【図19】同上の操作器の正面図である。
【符号の説明】
【0027】
2b,2a 施療子
4b,4a アーム
26、27,28 エアバッグ(アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に回動自在に支持されている上下一対のアームの各先端に施療子が配設されているとともに、両施療子を接近離間する方向に駆動するアクチュエータと、所定範囲内で上下に回動自在である上記一対のアームを付勢することで一方のアームの先端に配した施療子のみを被施療者に接触させることができる状態に保持する他のアクチュエータとを備えたマッサージ機であり、施療子にかかる圧力を検出する圧力センサと、該圧力センサで検出された圧力に基づいて上記両アクチュエータのうちの少なくとも後者のアクチュエータを動作させる制御部とを備えていることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
制御部は圧力センサで検出された圧力から求めた所定時間内の平均値を設定値と比較してアクチュエータを動作させるものであることを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項3】
制御部は圧力センサで検出された圧力から求めた所定時間内の平均値の変化率を設定値と比較してアクチュエータを動作させるものであることを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項4】
制御部は該圧力センサで検出された圧力に基づいて上記両アクチュエータのうちの少なくとも後者のアクチュエータを動作させる自動切換モードに加えて、操作器から入力される操作に基づいて上記両アクチュエータのうちの少なくとも後者のアクチュエータを動作させる手動切換モードを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−167463(P2007−167463A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371069(P2005−371069)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】