説明

マッサージ機

【課題】 マッサージやストレッチを行うだけでなく、施療者の筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させ、歩行能力などの改善を図る。
【解決手段】 施療子、エアバッグ9a、9b…10b’などによって、人体に対してマッサージ動作を行うマッサージ機である。足関節、膝関節、股関節のうち1つまたは複数の関節において、左右の関節を独立に伸展または屈曲させることができる手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機に関し、詳しくは、マッサージやストレッチを行うだけでなく、施療者の筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させ、歩行能力などの改善を図ろうとする技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマッサージ機では、例えば、特許文献1に記載されているような、エアバッグによりアキレス腱をストレッチする機構が考えられているが、左右両足を同時にストレッチするような構成となっている。また、特許文献2に記載されているような機構も同様に、左右両足を同時にストレッチするような構成となっている。このように、従来の特許文献1及び2などにおいては、両足を同時にストレッチするものであった。
【0003】
このような従来の技術では、両足を同時に伸展・屈曲させる動作であったため、単なるストレッチ効果しかなく、施療者の筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させ、歩行能力などの改善を図ることができなかった。
【特許文献1】特開2004−89672号公報
【特許文献2】特開平7−184968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、マッサージやストレッチを行うだけでなく、施療者の筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させ、歩行能力などの改善を図ることができるマッサージ機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、施療子、エアバッグ9a、9b…10b’などによって、人体に対してマッサージ動作を行うマッサージ機であって、足関節、膝関節、股関節のうち1つまたは複数の関節において、左右の関節を独立に伸展または屈曲させることができる手段を備えたことを特徴とするものである。
【0006】
このような構成によれば、マッサージ機に足・膝・股関節のうち1つまたは複数の関節に対して、伸展・屈曲運動を左右独立に行う手段を備え、足・膝・股関節の伸展・屈曲運動を左右独立に行うことにより、単にマッサージやストレッチを行うだけでなく、施療者の筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させることができ、歩行能力などの改善を図ることできるものである。
【0007】
因みに、高齢者では、運動不足や加齢などの影響により、筋力や、筋−神経系の疎通性が衰えやすいものであり、普段、あまり使用していない(動かすことが少ない)筋肉に対して刺激を与えることで、高齢者であっても筋力の回復が見られることが知られている。
【0008】
そこで、請求項1に係る発明においては、上述のように、マッサージだけでなく、施療者の筋肉に刺激を加える動作、例えば、歩行動作を模した下腿の動きを施療者に体験させるなどの動作を行うことで、施療者の筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上することで、歩行能力などの改善を図ることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係る発明においては、請求項1の構成に加えて、右足関節伸展・屈曲機構52と左足関節伸展・屈曲機構53とを備え、右足関節伸展・屈曲機構52と左足関節伸展・屈曲機構53とを独立に動かす左右足関節独立動作制御部Aを備え、左右足関節独立動作制御部Aにより、左右の足関節のうち一方の足関節が伸展状態になるときは、他方の足関節が屈曲状態になる動作を行う手段を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
このような構成によれば、請求項1の作用効果に加えて、左右足関節独立動作制御部Aにより、左右の足関節のうち一方の足関節が伸展状態になるときは、他方の足関節が屈曲状態になる動作を行うことができ、左右の足関節を交互に伸展及び屈曲することができ、左右の足関節のストレッチ、筋力回復、及び、筋−神経系の疎通性を向上させることができ、歩行能力などの改善を図ることができる。
【0011】
請求項3に係る発明においては、請求項1の構成に加えて、右膝関節伸展・屈曲機構62と左膝関節伸展・屈曲機構63とを備え、右膝関節伸展・屈曲機構62と左膝関節伸展・屈曲機構63とを独立に動かす左右膝関節独立動作制御部Bを備え、左右膝関節独立動作制御部Bにより、左右の膝関節のうち一方の膝関節が伸展状態になるときは、他方の膝関節が屈曲状態になる動作を行う手段を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
このような構成によれば、請求項1の作用効果に加えて、左右膝関節独立動作制御部Bにより、左右の膝関節のうち一方の膝関節が伸展状態になるときは、他方の膝関節が屈曲状態になる動作を行うことができ、左右の膝関節を交互に伸展及び屈曲することができ、左右の膝関節のストレッチ、筋力回復、及び、筋−神経系の疎通性を向上させることができ、歩行能力などの改善を図ることができる。
【0013】
請求項4に係る発明においては、請求項1の構成に加えて、右足関節伸展・屈曲機構52と左足関節伸展・屈曲機構53とを備え、右足関節伸展・屈曲機構52と左足関節伸展・屈曲機構53とを独立に動かす左右足関節独立動作制御部Aを備え、更に、右膝関節伸展・屈曲機構62と左膝関節伸展・屈曲機構63とを備え、右膝関節伸展・屈曲機構62と左膝関節伸展・屈曲機構63とを独立して動かす左右膝関節独立動作制御部Bを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
このような構成によれば、請求項1の作用効果に加えて、左右足関節独立動作制御部A及び左右膝関節独立動作制御部Bによって、請求項2及び請求項3の作用効果に加えて、左右足関節独立動作制御部A及び左右膝関節独立動作制御部Bによる動きの組み合わせによって多様な動きができる。
【0015】
請求項5に係る発明においては、請求項4の構成に加えて、左右膝関節独立動作制御部Bにより左右の膝関節のうち一方の膝関節が伸展状態になるときは、他方の膝関節が屈曲状態になるとともに、伸展状態にある膝関節側の足関節が左右足関節独立動作制御部Aにより伸展状態になるように、かつ、屈曲状態にある膝関節側の足関節が左右足関節独立動作制御部Aにより屈曲状態になる動作を行う手段を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
このような構成によれば、請求項4の作用効果に加えて、伸展状態にある膝関節側の足関節が伸展状態になるように、屈曲状態にある膝関節側の足関節が屈曲状態になる動作を行うことができ、膝関節及び足関節を共に伸展させ、共に屈曲させることができ、膝関節及び足関節のストレッチ、筋力回復、及び、筋−神経系の疎通性を向上させることができ、歩行能力などの改善を図ることができる。
【0017】
請求項6に係る発明においては、請求項4の構成に加えて、左右膝関節独立動作制御部Bにより左右の膝関節のうち一方の膝関節が伸展状態になるときは、他方の膝関節が屈曲状態になるとともに、伸展状態にある膝関節側の足関節が左右足関節独立動作制御部Aにより屈曲状態になるように、屈曲状態にある膝関節側の足関節が左右足関節独立動作制御部Aにより伸展状態になる動作を行う手段を備えていることを特徴とするものである。
【0018】
このような構成によれば、請求項4の作用効果に加えて、伸展状態にある膝関節側の足関節が屈曲状態になり、屈曲状態にある膝関節側の足関節が伸展状態になる動作を行うことができ、膝関節及び足関節のストレッチ、筋力回復、及び、筋−神経系の疎通性を向上させることができ、歩行能力などの改善を図ることができる。
【0019】
請求項7に係る発明においては、請求項4の構成に加えて、左右膝関節独立動作制御部Bにより左右の膝関節のうち一方の膝関節が伸展状態になるときは、他方の膝関節が屈曲状態になるとともに、伸展状態にある膝関節側の足関節、及び、屈曲状態にある膝関節側の足関節は共に、左右足関節独立動作制御部Aにより伸展状態または屈曲状態になる動作を行う手段を備えていることを特徴とするものである。
【0020】
このような構成によれば、請求項4の作用効果に加えて、伸展状態にある膝関節側の足関節、及び、屈曲状態にある膝関節側の足関節は共に、伸展状態または屈曲状態になる動作を行うことができ、膝関節及び足関節のストレッチ、筋力回復、及び、筋−神経系の疎通性を向上させることができ、歩行能力などの改善を図ることができる。
【0021】
請求項8に係る発明においては、請求項1の構成に加えて、右股関節伸展・屈曲機構72と左股関節伸展・屈曲機構73とを備え、右股関節伸展・屈曲機構72と左股関節伸展・屈曲機構73とを独立に動かす左右股関節独立動作制御部Cを備え、左右股関節独立動作制御部Cにより、左右の股関節のうち一方の股関節が伸展状態になるときは、他方の股関節が屈曲状態になる動作を行う手段を備えていることを特徴とするものである。
【0022】
このような構成によれば、請求項1の作用効果に加えて、左右股関節独立動作制御部Cにより、左右の股関節のうち一方の股関節が伸展状態になるときは、他方の股関節が屈曲状態になる動作を行うことができ、左右の股関節のストレッチ、筋力回復、及び、筋−神経系の疎通性を向上させることができ、歩行能力などの改善を図ることができる。
【0023】
請求項9に係る発明においては、請求項1の構成に加えて、右足関節伸展・屈曲機構52と左足関節伸展・屈曲機構53とを備え、右足関節伸展・屈曲機構52と左足関節伸展・屈曲機構53とを独立に動かす左右足関節独立動作制御部Aを備え、右膝関節伸展・屈曲機構62と左膝関節伸展・屈曲機構63とを備え、右膝関節伸展・屈曲機構62と左膝関節伸展・屈曲機構63とを独立して動かす左右膝関節独立動作制御部Bを備え、更に、右股関節伸展・屈曲機構72と左股関節伸展・屈曲機構73とを備え、右股関節伸展・屈曲機構72と左股関節伸展・屈曲機構73とを独立に動かす左右股関節独立動作制御部Cを備えたことを特徴とするものである。
【0024】
このような構成によれば、請求項1の作用効果に加えて、左右足関節独立動作制御部A、左右膝関節独立動作制御部B、及び、左右股関節独立動作制御部Cにより、足関節、膝関節、及び、股関節の動き、更に、足関節、膝関節、及び、股関節の各動きを組み合わせて多様な動きを行うことができ、足関節、膝関節、及び、股関節のストレッチ、筋力回復、及び、筋−神経系の疎通性を向上させることができ、歩行能力などの改善を図ることができる。
【0025】
請求項10に係る発明においては、左右股関節独立動作制御部Cにより、左右の股関節のうち一方の股関節が伸展状態にあるときは、他方の股関節が屈曲状態にあるとともに、足関節、膝関節のうち1つまたは複数の関節において、左右の関節が独立に伸展または屈曲状態になる動作を行う手段を備えたことを特徴とするものである。
【0026】
このような構成によれば、左右の股関節のうち一方の股関節が伸展状態にあるときは、他方の股関節が屈曲状態になるようにしながら、足関節、膝関節のうち1つまたは複数の関節において、左右の関節が独立に伸展または屈曲状態になる動作を行うことができ、股関節、足関節、及び、膝関節のストレッチ、筋力回復、及び、筋−神経系の疎通性を向上させることができ、歩行能力などの改善を図ることができる。
【0027】
請求項11に係る発明においては、請求項1〜10のいずれかに記載の構成に加えて、足裏に刺激を与える複数の施療子またはエアバッグ10b、10b’を備え、踵からつま先にかけて、あるいは、つま先から踵にかけて順次足裏を刺激する手段を備えていることを特徴とするものである。
【0028】
このような構成によれば、請求項1〜10のいずれかに記載の作用効果に加えて、踵からつま先にかけて、あるいは、つま先から踵にかけて順次足裏を刺激することができ、筋−神経系の疎通性を、一層、向上させることができる。
【発明の効果】
【0029】
要するに本発明は、足・膝・股関節の伸展・屈曲運動を左右独立に行うことにより、マッサージやストレッチに加えて、施療者の筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させ、歩行能力などの改善を図ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基いて説明する。図1は本発明の実施形態に係るマッサージ機の概略正面図である。図2は概略側面図である。図4はエアバッグの制御ブロック図である。
(第1の実施形態)
図1に示す椅子式のマッサージ機1は、施療子やエアバッグなどを駆動及び膨張収縮させてマッサージをおこなうマッサージ機構を内蔵する背もたれ部2と、座部3と、肘掛け部4とが備えられ、座部3の前端部に足載台5が起倒自在に連結されたものである。足載台5に下腿(ふくらはぎ)や足先のマッサージを行うマッサージ機構が内蔵されている。
足載台5は左脚載台51と右脚載台51’に分割され、左右脚載台51、51’が独立して動作できるようにしている。左右足載台51、51’は、それぞれ下腿用で左右の上部足載台61、61’と足用の左右の下部足載台71、71’とからなり、図2に示すように、上下足載台61、71:61’、71’がそれぞれ枢軸S、Sによって回動自在に連結されて、下部足載台71、71’が上部足載台61、61’に対して上下方向に回動自在となっている。座部3の下部のベース部に駆動部が内蔵されて座部3に対して左右の上部足載台61、61’を上下に回動駆動できるようにしている。
【0031】
図3に示すように、左上部足載台61と左下部足載台71とをリンク機構にて連結し、図示しないモータでねじ軸を回転駆動し、ねじ軸に螺合しているナット体を移動させてリンク機構を介して左上部足載台61に対して左下部足載台71を枢軸Sの回りに上下方向に回動駆動するようにしている。このような回動機構は電動伸縮機構8と総称し、周知のものである。同様に、右上部足載台61’に対して右下部足載台71’が回動駆動自在になっている。
【0032】
図3(a)に示すように、電動伸縮機構8により左下部足載台71が上方向に回動駆動する場合は、足関節の伸展(背屈)運動を、図3(b)に示すように、電動伸縮機構8により左下部足載台71が下方向に回動駆動する場合は、足関節の屈曲(底屈)運動を施すことができる。右下部足載台71’においても同様である。
【0033】
図1に示すように、左上部足載台61は、両側に側壁61a,61bを備え、側壁61a,61bには軟質材料で、気密性を有し、膨張・収縮が可能で、横断面が略C字状となったエアバッグ9a,9b,9cが配設されている。右上部足載台61’においても同様に側壁61a’、61b’、エアバッグ9a’、9b’、9c’が配設されている。
これらのエアバッグ9a、9b、9c、9a’、9b’、9c’の膨張・収縮によって、側壁61a、61b、61a’、61b’間に入れた下腿部を押圧してマッサージするようになっている。また、膨張させることで下腿部を拘束するようにもなっている。
【0034】
図1に示したように、左下部足載台71は、両側に側壁71a、71bを備え、側壁71a、71bには軟質材料で、気密性を有し、膨張・収縮が可能で、横断面が略C字状となったエアバッグ10aが配設されている。右下部足載台71’においても同様に側壁71a’、71b’、エアバッグ10a’が配設されている。これらのエアバッグ10a、10a’の膨張・収縮によって、側壁71a、71b:71a’、71b’間に入れた足部を両側から押圧してマッサージするようになっている。また、膨張させることで足部を拘束するようにもなっている。
【0035】
左右の下部足載台71、71’の底壁71c,71c’にエアバッグ10b、10b’が配設されており、このエアバッグ10b、10b’によって足部の裏側を押圧してマッサージするようになっている。
【0036】
図4に示すように、左足用のエアバッグ9a,9b、…10bおよび右足用のエアバッグ9a’、9b’、…10b’は、それぞれ配管11を介してエアポンプ12に接続してあり、各エアバッグ9a…、9a’…を個別に、さらには、左足用と右足用のエアバッグ9a…、9a’…を独立して膨張・収縮させることができるように給排気用の電磁弁のような給排気弁装置13が設けてある。エアポンプ12、各給排気弁装置13は入力手段14から入力された入力信号に基づき制御部15からの制御信号により制御されるようになっている。
【0037】
制御部15は、CPUやROM、RAM等の電子部品で構成された既知のものであり、施療者が各種マッサージ動作を指示することによって、背もたれ部2内に配設したマッサージ機構の動作、および足載台5に配置した各エアバッグ9a…、9a’…への給排気動作を予め設定した各種マッサージ動作に応じて制御する。
(動作)
図5(a)は動作を開始する前の状態を示す。左右の足載台51、51’が上下方向で同じ位置にある。図示しない操作機から、足関節歩行動作が選択指示されたときは、制御部15によって、予め設定された動作手段に従って各エアバッグ9a、9b…10b:9a’、9b’…10b’への給排気動作および足載台51、51’の駆動手段の動作が制御され、一連の歩行動作中に含まれる足関節の屈曲・伸展を模した動作が行われる。
【0038】
詳しくは、足関節歩行動作が選択指示されると、制御部15からの駆動信号によってエアポンプ12、給排気弁装置13が駆動され、拘束手段としての左右の上部足載台61、61’のエアバッグ9a、9b、9c:9a’、9b’、9c’および左右の下部足載台71、71’のエアバッグ10a、10b:10a’、10b’に圧縮空気が給気され、エアバッグ9a…10a:9a’…10a’が膨張を開始する。エアバッグ9a…10a:9a’…10a’に所定の圧縮空気が給気されるとエアポンプ12が停止し、電磁弁のような給排気装置13が閉じられてエアバッグ9a…10a:9a’…10a’の膨張状態が保持される。この状態では、エアバッグ9a…10a:9a’…10a’が膨張しており、施療者の下腿部および足部がエアバッグ9a…10a:9a’…10a’によって両側から挟みこまれて拘束される。
【0039】
以上のようにして、施療者の下腿部および足部をエアバッグ9a…10a:9a’…10a’によって拘束した後に、制御部15からの駆動信号によって駆動手段が駆動され、図5(b)に示すように、左足用の下部足載台71を初期位置から上方向に所定量回動駆動させるとともに、右足用の下部足載台71’を初期位置から下方向に所定量回動駆動させ、次に、図5(c)に示すように、左足用の下部足載台71を下方向に所定量回動駆動させるとともに、右足用の下部足載台71’を上方向に所定量回動駆動させるといった動作を所定時間あるいは所定回数繰り返す。このように、下腿部および足部を各エアバッグ9a…10a:9a’…10a’で拘束した状態で、左右の下部足載台71、71’を左右交互に上下方向に回動駆動することによって、施療者の左右の足関節が交互に伸展(背屈)、屈曲(底屈)される動作が繰り返される。このように、右と左の足関節を独立して伸展・屈曲する構成を右足関節伸展・屈曲機構52と左足関節伸展・屈曲機構53と総称する。また、右と左の足関節を独立して伸展・屈曲する制御部を左右足関節独立制御部Aと総称する。左右足関節独立制御部Aはプログラムされて制御部15に入力しておくとよい。
【0040】
以上の動作を所定時間あるいは所定回数繰り返した後は、制御部15からの駆動信号によって給排気弁装置13が開駆動されて、エアバッグ9a…10a:9a’…10a’内の空気を排気して各エアバッグ9a…10a:9a’…10a’を収縮させ、下腿部および足部の拘束を開放する。下腿部および足部の拘束を開放した後に、制御部15からの駆動信号によって、駆動手段が駆動され、左右の下部足載台71、71’を左右とも所定位置に至るまで回動駆動し、一連の足関節歩行動作を終了する。
【0041】
以上のように、施療者の足関節を左右同時に伸展または屈曲させるのではなく、左右交互に伸展・屈曲動作を行うことにより、筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させることができ、歩行能力などを改善させることが可能である。
【0042】
なお、上記のマッサージ機1では、左右の足載台51、51’が下腿用の上部足載台61、61’と足用の下部足載台71、71’に分割され、また、左右独立に構成されるものであったが、足載台5が上部と下部、あるいは左右独立に分割されていなくても、左右の足関節を独立に伸展または屈曲させることが可能である。例えば、図6に示すように、足載台5が上下に分かれておらず一体型として構成されるものであっても、左右の足載台51、51’の底壁にそれぞれ複数のエアバッグ100、101、102を記設し、各エアバッグ100、101、102への給気量を独立に制御できるように構成すれば良い。
【0043】
詳しくは、操作機から、足関節歩行動作が選択指示されたときに、一方の足の方には、図6(b)に示すように、足裏に配設したエアバッグ100、101、102の膨張量がエアバッグ102からエアバッグ100にかけて順次大きくなるような給気動作を行い、他方の足の方には、逆に、図6(c)に示すように、エアバッグ100からエアバッグ102にかけて膨張量が順次大きくなるような給気動作を行うことによって、足関節を左右交互に伸展・屈曲させることが可能である。なお、図6(b)(c)に示す給気動作を行うときは、足首に配設されたエアバッグ9c(または9c’)を予め膨張させておくことにより、足首がエアバッグ9c(または9c’)によって位置固定され、足が上方側に逃げることなく効果的に足関節の伸展動作を行うことが可能である。また、図6(b)に示す給気動作を行うときは、足の甲側に向けて膨張するように足載台の側壁に配設されたエアバッグ9d(または9d’)を予め膨張させておくことにより、足先が上方側に逃げることなく、より効果的に足関節の屈曲動作を行うことが可能である。
【0044】
本発明は、以上のように、左右独立に足関節を動かすことができる手段を備えていて、足関節を左右独立に行うことにより、単にマッサージやストレッチを行うだけでなく、施療者の筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させることができ、歩行能力などの改善を行うことできるものである。
なお、第1の実施形態において、マッサージ機1の使い方の一例として左右の足関節を同時に伸展または屈曲させる動作を行わせても良い。
(第2の実施形態)
本実施形態においては、マッサージ機1の基本構成は第1の実施形態と同一であり、同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0045】
本実施形態では、図7(a)に示すように、下腿部および足部を載せる足載台5が左足載台51と右足載台51’に分割され、左右独立して動作できるようにしている。左右の足載台51、51’は、座部3と回動自在に連結されており、第1の実施形態と同様の電動伸縮機構(図示せず)により左右の足載台51、51’を回動駆動して左右の膝関節を伸展・屈曲できるようにしている。
【0046】
左足載台51は、両側に側壁51a、51bを備え、側壁51a、51bには軟質材料で、気密性を有し、膨張・収縮可能で、略C字状のエアバッグ9a、9b、9c、10aが配設されている。右足載台51’の側壁51a’、51b’に同様のエアバッグ9a’、9b’、9c’、10a’が配設されている。これらのエアバッグ9a…:9a’…の膨張・収縮によって、下腿部および足部を両側から押圧してマッサージするようになっている。また、これらエアバッグ9a…:9a’…が膨張して下腿部および足部を両側から挟みこむことによって下腿部および足部を拘束するようになっている。
左右足載台51、51’の底壁51c、51c’にエアバッグ10b、10b’が配設されており、エアバッグ10b、10b’によって足部の裏側を押圧してマッサージするようになっている。
【0047】
(動作)
図示しない操作機から、膝関節歩行動作が選択指示されたときは、制御部15によって、予め設定された動作手段に従って各エアバッグ9a…:9a’…への給排気動作および左右足載台51、51’の駆動手段の動作が制御され、一連の歩行動作中に含まれる膝関節の屈曲・伸展を模した動作が行われる。
【0048】
詳しくは、施療者の下腿部および足部を膨張したエアバッグ9a…:9a’…によって拘束した後に、制御部15からの駆動信号によって駆動手段が駆動され、図7(b)に示すように、左用の足載台51を初期位置から下方向に所定量回動駆動させるとともに、右用の足載台51’を初期位置から上方向に所定量回動駆動させる。そして、次に、図7(c)に示すように、左用の足載台51を上方向に所定量回動駆動させるとともに、右用の足載台51’を下方向に所定量回動駆動させる。第1の実施形態で述べた動作と同様に、上記の左右独立した動作を所定時問あるいは所定回数繰り返す。このように、下腿部および足部を各エアバッグ9a…:9a’…で拘束した状態で、左右の足載台51、51’を左右交互に上下方向に回動駆動することによって、施療者の左右の膝関節が交互に伸展、屈曲される動作が繰り返され、歩行動作を模した膝関節の動きを施療者に行わせる。
以上のように、右と左の下腿部及び足部を拘束して膝関節を伸展・屈曲する構成を右膝関節伸展・屈曲機構62と左足関節伸展・屈曲機構63と総称し、また、左右の膝関節を独立して伸展・屈曲する制御部を左右膝関節独立制御部Bと総称する。左右膝関節独立制御部Bはプログラムされて制御部15に入力しておくとよい。
【0049】
以上のように、施療者の膝関節を左右交互に伸展・屈曲させることにより、筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させることができ、歩行能力などを改善させることが可能である。
【0050】
(第3の実施形態)
本実施形態においても、マッサージ機1の基本構成については、第1の実施形態と同一であり、同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0051】
図8に示すように、本実施形態では、分割された左右足用の下部足載台71、71’が上下方向に回動自在となっているのに加えて、分割された左右下腿用の上部足載台61、61’も上下方向に回動自在となっていることを特徴とするものである。
下腿用の左右の上部足載台61、61’は座部3と回動自在に連結されており、第1の実施形態で述べた下部足載台71、71’を回動駆動するための駆動手段と同様の電動伸縮機構(図示せず)により左右の上部足載台61、61’を上下方向に回動駆動させる機構を備えている。
【0052】
このように、足関節に対して左右独立に伸展・屈曲動作を行うことが可能なだけでなく、膝関節も左右独立に伸展・屈曲動作を行うことが可能な手段を設けたことにより、筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させるのに、更に効果的な動作を行うことが可能である。
【0053】
(動作)
歩行動作については、以下の参考文献1に記載されているように、股・膝・足の関節は歩行周期の各位相でそれぞれ屈曲と伸展の運動を行い、その組み合わせは複雑であるが、正常者の歩行は規則性をもった定型的なパターンを示している。その定型的なパターンを以下に述べる。
【0054】
股関節は1回の歩行周期(踵が接地して、次に同側の踵が再び接地するまでの一連の動作)に伸展と屈曲を各1回行う。踵接地後、支持脚の股関節は伸展を続けて、体幹は前方に移動する。対側脚が着地して支持脚になると、遊脚相(足指が床面を離れて振り出されている)への準備として屈曲を始める。遊脚相に入ると急速に屈曲して、下腿は前方に振り出される。
【0055】
膝関節は1回の歩行周期に伸展と屈曲を各2回行う。支持脚は踵接地後、ただちに軽く屈曲する。立脚相(地面についている)後半に体幹が支持脚より前方に移動すると、膝は伸展する。対側脚が着地すると、再び膝は屈曲し、屈曲速度を増して遊脚相となる。遊脚相の後半では、急速に伸展する。
【0056】
足関節は1回の歩行周期に伸展(背屈)と屈曲(底屈)を各2回行う。踵接地では足関節は軽度伸展しているが、次に屈曲して足底接地になり、直ちに屈曲から伸展へと変化する。この伸展は体幹が支持脚の前方に移動するまで続いている。その後、再び足関節は屈曲して踵離地となり、足指離地後は急速に伸展に変わる。
【0057】
そして、例えば、足関節と膝関節の動きには密接な関係があり、踵接地時期には膝関節は完全に伸展し、足関節は伸展している。逆に膝関節が屈曲しているとき、足関節は屈曲している。
[参考文献1] 中村隆一、齋藤宏:基礎運動学 第5版、医歯薬出版、2000
以上の参考文献1を踏まえ歩行動作を模した本実施形態の動作の一例について説明する。
【0058】
図示しない操作機から、足・膝関節歩行動作が選択指示されたときは、制御部15によって、予め設定された動作手段に従って各エアバッグ9a…:9a’…への給排気動作および左右上下足載台61、61’、71、71’の駆動手段の動作が制御され、一連の歩行動作中に含まれる足・膝関節の屈曲・伸展を模した動作が行われる。
【0059】
施療者の下腿部および足部をエアバッグ9a…:9a’…によって拘束した後に、制御部15からの駆動信号によって駆動手段が駆動され、図8(a)に示すように、左下腿用の上部足載台61を初期位置(破線部分)から下方向に所定量回動駆動させるとともに、左足用の下部足載台71を足関節が屈曲するように所定一量回動駆動させる。また、それと同時に、右下腿用の上部足載台61’を初期位置(破線部分)から上方向に所定量回動駆動させるとともに、右足用の下部足載台71’を足関節が伸展するように所定量回動駆動させる。そして、次に、図8(b)に示すように、左下腿用の上部足載台61を上方向に所定量回動駆動させるとともに、左足用の下部足載台71を足関節が伸展するように所定量回動駆動させ、右下腿用の上部足載台61’を下方向に所定量回動駆動させるとともに、右足用の下部足載台71’を足関節が屈曲するように所定量回動駆動させる。前記第1の実施形態で述べた動作と同様に、上記の左右独立した動作を所定時間または所定回数繰り返す。このように、下腿部および足部を各エアバッグ9a…:9a’…で拘束した状態で、左右の下部足載台71、71’および上部足載台61、61’を左右交互に上下方向に回動駆動することによって、施療者の左右の足および膝関節が交互に伸展、屈曲される動作が繰り返され、歩行動作を模した足・膝関節の動きを施療者に行わせる。
【0060】
以上の動作を所定時間あるいは所定回数繰り返した後は、制御部15からの駆動信号によって給排気弁装置13が開駆動されて、エアバッグ9a…:9a’…内の空気を排気して各エアバッグ9a…:9a’…を収縮させて、下腿部および足部の拘束を開放する。下腿部および足部の拘束を開放した後に、制御部15からの駆動信号によって、駆動手段が駆動されて、下部足載台71、71’および上部足載台61、61’を左右とも所定位置に至るまで回動駆動し、一連の足・膝関節歩行動作を終了する。
【0061】
以上のように、左右膝関節独立動作制御部Bにより、施療者の左右の膝関節のうち一方の膝関節を伸展動作させるときに、他方の膝関節を屈曲動作させるとともに、伸展動作にある膝関節側の足関節を足関節伸展・屈曲機構52(53)により伸展動作させ、屈曲動作にある膝関節側の足関節を足関節伸展・屈曲機構53(52)により屈曲させることにより、足関節のみ左右交互に伸展・屈曲動作を行うよりも、歩行動作により近い動作を施療者に行わせることが可能であり、筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させるのに、更に効果的な動作を行うことが可能である。
【0062】
また、施療者に、歩行動作以外の関節の動きもさせてやれば、歩行能力に限らず、下腿の運動能力を高めることができる。
【0063】
なお、上記の実施形態では、上部足載台61、61’と下部足載台71、71’が同時に動作するものであったが、例えば、まず下部足載台71、71’が左右で上下逆方向に所定量回動した後に、上部足載台61、61’が左右で上下逆方向に所定量回動するような動作でも良い。
【0064】
(第4の実施形態)
本実施形態においては、マシサージ機1の構成は第3の実施形態と同一であり、同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0065】
本実施形態においては、図9(a)に示すように、左下腿用の上部足載台61を初期位置(破線部分)から上方向に所定量回動駆動させるとともに、左足用の下部足載台71を足関節が屈曲するように所定量回動駆動させ、右下腿用の上部足載台61’を初期位置(破線部分)から下方向に所定量回動駆動させるとともに、右足用の下部足載台71’を足関節が伸展するように所定量回動駆動させる。次に、図9(b)に示すように、左下腿用の上部足載台61を下方向に所定量回動駆動させるとともに、左足用の下部足載台71を足関節が伸展するように所定量回動駆動させ、右下腿用の上部足載台61’を上方向に所定量回動駆動させるとともに、右足用の下部足載台71’を足関節が屈曲するように所定量回動駆動させる。第3の実施形態で述べた動作と同様に、上記の左右独立した動作を所定時間または所定回数繰り返す。
【0066】
以上のように、左右膝関節独立動作制御部Bにより、施療者の左右の膝関節のうち一方の膝関節を伸展動作させるときに、他方の膝関節を屈曲動作させるとともに、伸展動作にある膝関節側の足関節を一方の足関節伸展・屈曲機構52(53)により屈曲動作させ、屈曲動作にある膝関節側の足関節を他方の足関節伸展・屈曲機構53(52)により伸展させることにより、足関節と膝関節の動作関係が、通常の歩行を模した動作とは異なる動作を、施療者に与えることで、大脳への刺激をより高め、筋−神経系の疎通性を更に高めることができる。
【0067】
(第5の実施形態)
本実施形態においては、マッサージ機1の構成は第3の実施形態と同一であり、同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0068】
本実施形態においては、図10(a)に示すように、左下腿用の上部足載台61を初期位置(破線郡分)から下方向に所定量回動駆動させるとともに、左足用の下部足載台71を足関節が屈曲するように所定量回動駆動させ、右下腿用の上部足載台61’を初期位置(破線部分)から上方向に所定量回動駆動させるとともに、右足用の下部足載台71’を足関節が屈曲するように所定量回動駆動させる。次に、図10(b)に示すように、左足用の下部足載台71を足関節が屈曲するように所定量回動駆動させたまま、左下腿用の上部足載台61を上方向に所定量回動駆動させるとともに、右足用の下部足載台71’を足関節が屈曲するように所定量回動駆動させたまま、右下腿用の上部足載台61’を下方向に所定量回動駆動させる。第3の実施形態で述べた動作と同様に、左右独立した動作を所定時間または所定回数繰り返す。
【0069】
または、図11(a)に示すように、左下腿用の上部足載台61を初期位置(破線部分)から下方向に所定量回動駆動させるとともに、左足用の下部足載台71を足関節が伸展するように所定量回動駆動させ、右下腿用の上部足載台61’を初期位置(破線部分)から上方向に所定量回動駆動させるとともに、右足用の下部足載台71’を足関節が伸展するように所定量回動駆動させる。次に、図11(b)に示すように、左足用の下部足載台71を足関節が伸展するように所定量回動駆動させたまま、左下腿用の上部足載台61を上方向に所定量回動駆動させるとともに、右足用の下部足載台71’を足関節が伸展するように所定量回動駆動させたまま、右下腿用の上部足載台61’を下方向に所定量回動駆動させる。第3の実施形態で述べた動作と同様に、左右独立した動作を所定時間または所定回数繰り返す。
【0070】
以上のように、左右膝関節独立動作制御部Bにより、施療者の左右の膝関節のうち一方の膝関節を伸展動作させるときに、他方の膝関節を屈曲動作させるとともに、伸展動作にある膝関節側の足関節、屈曲動作にある膝関節側の足関節ともに、足関節伸展・屈曲機構52、53により伸展または屈曲させることにより、通常の歩行を模した動作とは異なる動作を、施療者に与えることで、大脳への刺激をより高め、筋−神経系の疎通性を更に高めることができる。
【0071】
なお、上記の実施形態では、左右の下部足載台71、71’は、動作開始直後に回動し、その後の左右の繰り返し動作中は回動しなかったが、繰り返し動作中に下部足載台71、71’が回動動作しても良い。
【0072】
(第6の実施形態)
本実施形態においても、マッサージ機1の基本構成については、第1及び第2の実施形態と同一であり、同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0073】
本実施形態では、図12(a)、(b)に示すように、座部3が腰を載せる腰載台31と左右の大腿部を載せる大腿部載台32、32’とに分割され、左右の大腿部載台32、32’は左右独立に動作できるように構成されている。
【0074】
左右に分割された大腿部載台32、32’には、左右の大腿部載台32、32’を上下方向に回動自在とするための駆動手段が取り付けられている。大腿部載台32、32’は枢軸S1(図13)によって腰載台31に連結されて、左右の大腿部載台32、32’に接続された既知の電動伸縮機構により、上下方向に回動自在となっている。
【0075】
(動作)
図示しない操作機から、股関節歩行動作が選択指示されたときは、制御部15によって、大腿部載台32、32’の駆動手段の動作が制御される。制御部15からの駆動信号によって駆動手段が駆動され、図13(a)に示すように、左大腿用の大腿部載台32を初期位置(破線部分)から上方向に所定量回動駆動させるとともに、右大腿用の大腿部載台32’を初期位置(破線部分)から下方向に所定量回動駆動させる。次に、図13(b)に示すように、左大腿用の大腿部載台32を下方向に所定量回動駆動させるとともに、右大腿用の大腿部載台32’を上方向に所定量回動駆動させる。第1及び第2の実施形態で述べた動作と同様に、上記の左右独立した動作を所定時間あるいは所定回数繰り返す。このように、左右の大腿部載台32、32’を左右交互に上下方向に回動駆動することによって、施療者の左右の股関節が交互に伸展、屈曲される動作が繰り返され、歩行動作を模した股関節の動きを施療者に行わせる。
このように、左右の股関節を独立して伸展・屈曲させる構成を右股関節伸展・屈曲機構72と左足関節伸展・屈曲機構73と総称し、また、左右の股関節を独立して伸展・屈曲する制御部を左右股関節独立制御部Cと総称する。左右股関節独立制御部Cはプログラムされて制御部15に入力しておくとよい。
【0076】
以上のように、足関節または膝関節の左右交互動作と同じように、施療者の股関節を左右交互に伸展・屈曲させることにより、筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させることができ、歩行能力などを改善させることが可能である。
(第7の実施形態)
本実施形態においても、マッサージ機1の基本構成については、第1及び第6の実施形態と同一であり、同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分を説明する。
本実施形態では、図14(a)、(b)に示すように、左右足用の下部足載台71、71’が左右下腿用の上部足載台61、61’に上下方向に回動自在となっているのに加えて、左右大腿用の大腿部載台32、32’も上下方向に回動自在となっていることを特徴とする。
【0077】
このように、足関節および膝関節部を左右独立に伸展・屈曲動作を行うことが可能なだけでなく、股関節部も左右独立に伸展・屈曲動作を行うことが可能な手段を設けたことにより、筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させるのに、更に効果的な動作を行うことが可能である。
【0078】
(動作)
図示しない操作機から、足・膝・股関節歩行動作が選択指示されたときは、制御部15によって、予め設定された動作手段に従って各エアバッグ9a…、9a’…への給排気動作および足載台61、71、61’、71’及び大腿部載台32、32’の駆動手段の動作が制御され、一連の歩行動作中に含まれる足・膝・股関節の屈曲・伸展を模した動作が行われる。
【0079】
施療者の下腿部および足部を膨張したエアバッグ9a…、9a’…によって拘束した後に、制御部15からの駆動信号によって駆動手段が駆動され、図15(a)に示すように、まず背もたれ部2が施療者の後方に向かって倒れた後、右大腿用の大腿部載台32’を、初期位置(破線部分)から下方向に所定量回動駆動させるとともに、右下腿用の上部足載台61’を膝関節が屈曲するように所定量目動駆動させ、右足用の下部足載台71’を足関節が屈曲するように所定量回動駆動させる。それと同時に、左大腿用の大腿部載台32を、初期位置(破線部分)から上方向に所定量回動駆動させるとともに、左下腿用の上部足載台61を膝関節が伸展するように所定量回動駆動させるとともに、左足用の下部足載台71を足関節が伸展するように所定量回動駆動させる。次に、図15(b)に示すように、右大腿用の大腿部載台32’を、上方向に所定量回動駆動させるとともに、右下腿用の上部足載台61’を膝関節が伸展するように所定量回動駆動させ、右足用の下部足載台71’を足関節が伸展するように所定量回動駆動させる。それと同時に、左大腿用の大腿部載台32を、下方向に所定量回動駆動させるとともに、左下腿用の上部足載台61を膝関節が屈曲するように所定量回動駆動させるとともに、左足用の下部足載台71を足関節が屈曲するように所定量回動駆動させる。第1の実施形態で述べた動作と同様に、左右独立した動作を所定時問または所定回数繰り返す。このように、下腿部および足部を各エアバッグ9a…、9a’…で拘束した状態で、左右の下部足載台71、71’、上部足載台61、61’および左右の大腿部載台32、32’を左右交互に上下方向に回動駆動することによって、施療者の左右の足、膝、および股関節が交互に伸展、屈曲される動作が繰り返され、歩行動作を模した足関節の動きを施療者に行わせる。
【0080】
以上の動作を所定時問あるいは所定回数繰り返した後は、制御部15からの駆動信号によって給排気弁装置13が開駆動されて、エアバッグ9a…、9a’…内の空気を排気して各エアバッグ9a…、9a’…を収縮させて、下腿部および足部の拘束を開放する。下腿部および足部の拘束を開放した後に、制御部15からの駆動信号によって、駆動手段が駆動されて、下部足載台71、71’、上部足載台61、61’および大腿部載台32,32’を左右とも所定位置に至るまで回動駆動し、一連の足・膝・股関節歩行動作を終了する。
【0081】
以上のように、左右股関節独立動作制御部Bにより、左右の股関節のうち一方の股関節を伸展動作させるときに、他方の股関節を屈曲動作させるとともに、屈曲動作にある股関節側の膝関節を膝関節伸展・屈曲機構62(63)により伸展動作させるとともに屈曲動作にある股関節側の足関節を足関節伸展・屈曲機構52(53)により伸展動作させ、伸展動作にある股関節側の膝関節を膝関節伸展・屈曲機構63(62)により屈曲動作させるとともに伸展動作にある股関節側の足関節を足関節伸展・屈曲機構53(52)により屈曲動作させることにより、股関節と膝関節と足関節に歩行動作を模した動作を施療者に行わせることが可能であり、筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させるのに、更に効果的な動作を行うことが可能である。なお、上記の実施形態では、下部足載台71、71’、上部足載台61、61’、大腿部載台32、32’が同時に回動するものであったが、例えば、下部足載台71、71’と大腿部載台32、32’のみが回動するような動作でも良い。
【0082】
(第8の実施形態)
本実施形態においても、マッサージ機1の基本構成については、第1の実施形態と同一であり、同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0083】
本実施形態では、図16に示すように、左右の下部足載台71、71’の底壁に、歩行時の着地感覚を足裏に疑似体験させるのに適した大きさ、配置で、踵の中心から親指にかけて刺激するようにエアバッグ110、111、112、113が配設されている。また、各エアバッグ110、111、112、113は独立して給排気動作を行えるように構成されている。
【0084】
(動作)
図17(a)(b)(c)(d)に示すように、踵側に位置するエアバッグ113から、つま先例に位置するエアバッグ110に向かうように(エアバッグ113→112→111→110)、順次圧縮空気を給気させ、所定量の圧縮空気が給気されたエアバッグ113…は、つま先のエアバッグ110が給気されて膨張するまで、給排気弁装置13を閉じて膨張状態が保持される。このような動作により、施療者の足裏に歩行着地感覚を体験させる。
【0085】
以上のように、足裏に複数のエアバッグ110、111、112、113を備え、踵からつま先にかけて順次刺激することにより、歩行着地感覚を疑似体験させることができ、筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させるのに、効果的な動作を行うことが可能である。
【0086】
また、踏み出し時に足裏が床から離れる時の感覚を疑似体験させるために、膨張した各エアバッグ110、111、112、113を、踵側からつま先例に向かうように順次収縮させると、より効果的に歩行時の感覚を体験させることが可能となる。
【0087】
なお、本動作は、単独で左右交互に行っても効果があるが、前記の各実施形態のように、足関節、膝関節、股関節の伸展・屈曲動作と組み合わせると、一連の歩行動作に更に近い動作を施療者に行わせることができ、筋力回復や筋−神経系の疎通性を向上させるのに非常に効果的である。例えば、施療者の足関節が伸展した状態から屈曲して行く動作に併せて、本足裏の刺激動作を行うとより効果的であり、そのとき、膝と股関節も同時に動作するようにすれば、更に効果的である。単に下半身の動きを歩行動作に近づけるだけでなく、歩行着地感覚を疑似体験させることが可能である。
【0088】
また、足裏の刺激手段としては、上記のエアバッグ110、111、112、113の大きさ・配置に限定されたものではなく、また、エアバッグ110、111、112、113による刺激に限定されたものではなく、例えば、下部足載台71、71’の底壁そのものが、踵からつま先にかけて複数に分割されて構成されており、分割された底壁が、踵からつま先にかけて順次足裏を刺激するように持ち上がる機構であっても良い。
【0089】
なお、以上の実施形態においては、特に効果の高い特徴的な、足関節と膝関節と股関節の動作の組み合わせについてのみを述べたが、関節の動きには様々な組み合わせが考えられるものであるから、上記実施形態の動作に限定されるものでなく、他の組み合わせによる動作であっても良い。また、左右の動作が時間的に同期していなくても良く、例えば、左右のうち一方の関節が伸展する動作を開始して、所定時間経過した後に、他方の関節が屈曲する動作を開始しても良い。左右で動作のタイミングを異なったものとすることにより、より複雑な動作を行うことが可能である。また、左右を独立に動作させる機構についても、上記実施形態に限定されるものでなく、他の機構であっても良い。
【0090】
また、安全面だけでなく、効果の面からも、動作量が少なく動作スピードが遅い状態から初め、順に負荷を上げていくことが望ましい。また、上記各実施形態のうちの単一の動作だけでなく、複数の動作を組み合わせることも、筋−神経系に様々な刺激を与えることになり効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施形態の一例の正面図である。
【図2】同上の側面図である。
【図3】同上の足関節の伸展・屈曲動作を説明する側面図であり、(a)は足関節の伸展動作、(b)は屈曲動作を示す。
【図4】同上のエアバッグの制御ブロック図である。
【図5】同上の足関節の伸展・屈曲動作を示す側面図であり、(a)は初期位置、(b)は左足関節が伸展動作で右足関節が屈曲動作、(c)は左足関節が屈曲動作で右足関節が伸展動作を示す。
【図6】同上の足関節の伸展・屈曲動作を示す他の側面図であり、(a)は初期位置、(b)は足関節の伸展動作、(c)は屈曲動作を示す。
【図7】同上の正面図および膝関節の伸展・屈曲動作を示す側面図であり、(a)は正面図、(b)は左膝関節が屈曲動作で右膝関節が伸展動作、(c)は左膝関節が伸展動作で右膝関節が屈曲動作を示す。
【図8】同上の足および膝関節の伸展・屈曲動作を示す側面図であり、(a)は左足・膝関節が屈曲動作で右足・膝関節が伸展動作、(b)は左足・膝関節が伸展動作で右足・膝関節が屈曲動作を示す。
【図9】同上の足および膝関節の伸展・屈曲動作を示す側面図であり、(a)は左足関節が屈曲・左膝関節が伸展動作で右足関節が伸展・右膝関節が屈曲動作で、(b)は左足関節が伸展・左膝関節が屈曲動作で右足関節が屈曲・右膝関節が伸展動作を示す。
【図10】同上の足および膝関節の伸展・屈曲動作を示す側面図であり、(a)は左足・膝関節が屈曲で右足関節が屈曲・右膝関節が伸展動作で、(b)は左足関節が屈曲・左膝関節が伸展動作で、右足・膝関節が屈曲動作を示す。
【図11】同上の足および膝関節の伸展・屈曲動作を示す側面図であり、(a)は左足関節が伸展・左膝関節が屈曲で右足・膝関節が伸展動作で、(b)は左足・膝関節が伸展で右足関節が伸展・右膝関節が屈曲動作を示す。
【図12】(a)は正面図、(b)は上面図を示す。
【図13】同上の股関節の伸展・屈曲動作を示す側面図であり、(a)は左股関節が屈曲動作で右股関節が伸展動作、(b)は左股関節が伸展動作で右股関節が屈曲動作を示す。
【図14】(a)は正面図、(b)は上面図を示す。
【図15】同上の足、膝および股関節の伸展・屈曲動作を示す側面図であり、(a)は左足・膝関節が伸展で左股関節が屈曲動作、右足・膝関節が屈曲動作で右股関節が伸展動作、(b)は左足・膝関節が屈曲動作で左股関節が伸展動作、右足・膝関節が伸展動作で右股関節が屈曲動作示す。
【図16】同上の上面図を示す。
【図17】(a)(b)(c)(d)は同上の足裏のエアバッグの動作を示す断面図と足裏におけるエアバッグの位置および足裏刺激の順番を示す説明図である。
【符号の説明】
【0092】
1 マッサージ機
2 背もたれ部
3 座部
4 肘掛け部
5 足載台
51 左足載台
51’ 右足載台
61 左上部足載台
61’ 右上部足載台
71 左下部足載台
71’ 右下部足載台
9a エアバッグ
9a’ エアバッグ
9b エアバッグ
9b’ エアバッグ
9c エアバッグ
9c’ エアバッグ
10a エアバッグ
10a’エアバッグ
10b エアバッグ
10b’エアバッグ






【特許請求の範囲】
【請求項1】
施療子、エアバッグなどによって、人体に対してマッサージ動作を行うマッサージ機であって、足関節、膝関節、股関節のうち1つまたは複数の関節において、左右の関節を独立に伸展または屈曲させることができる手段を備えたことを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
右足関節伸展・屈曲機構と左足関節伸展・屈曲機構とを備え、右足関節伸展・屈曲機構と左足関節伸展・屈曲機構とを独立に動かす左右足関節独立動作制御部を備え、左右足関節独立動作制御部により、左右の足関節のうち一方の足関節が伸展状態になるときは、他方の足関節が屈曲状態になる動作を行う手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
右膝関節伸展・屈曲機構と左膝関節伸展・屈曲機構とを備え、右膝関節伸展・屈曲機構と左膝関節伸展・屈曲機構とを独立に動かす左右膝関節独立動作制御部を備え、左右膝関節独立動作制御部により、左右の膝関節のうち一方の膝関節が伸展状態になるときは、他方の膝関節が屈曲状態になる動作を行う手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項4】
右足関節伸展・屈曲機構と左足関節伸展・屈曲機構とを備え、右足関節伸展・屈曲機構と左足関節伸展・屈曲機構とを独立に動かす左右足関節独立動作制御部を備え、更に、右膝関節伸展・屈曲機構と左膝関節伸展・屈曲機構とを備え、右膝関節伸展・屈曲機構と左膝関節伸展・屈曲機構とを独立して動かす左右膝関節独立動作制御部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項5】
左右膝関節独立動作制御部により左右の膝関節のうち一方の膝関節が伸展状態になるときは、他方の膝関節が屈曲状態になるとともに、伸展状態にある膝関節側の足関節が左右足関節独立動作制御部により伸展状態になるように、かつ、屈曲状態にある膝関節側の足関節が左右足関節独立動作制御部により屈曲状態になる動作を行う手段を備えていることを特徴とする請求項4に記載のマッサージ機。
【請求項6】
左右膝関節独立動作制御部により左右の膝関節のうち一方の膝関節が伸展状態になるときは、他方の膝関節が屈曲状態になるとともに、伸展状態にある膝関節側の足関節が左右足関節独立動作制御部により屈曲状態になるように、屈曲状態にある膝関節側の足関節が左右足関節独立動作制御部により伸展状態になる動作を行う手段を備えていることを特徴とする請求項4に記載のマッサージ機。
【請求項7】
左右膝関節独立動作制御部により左右の膝関節のうち一方の膝関節が伸展状態になるときは、他方の膝関節が屈曲状態になるとともに、伸展状態にある膝関節側の足関節、及び、屈曲状態にある膝関節側の足関節は共に、左右足関節独立動作制御部により伸展状態または屈曲状態になる動作を行う手段を備えている請求項4に記載のマッサージ機。
【請求項8】
右股関節伸展・屈曲機構と左股関節伸展・屈曲機構とを備え、右股関節伸展・屈曲機構と左股関節伸展・屈曲機構とを独立に動かす左右股関節独立動作制御部とを備え、左右股関節独立動作制御部により、左右の股関節のうち一方の股関節が伸展状態になるときは、他方の股関節が屈曲状態になる動作を行う手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項9】
右足関節伸展・屈曲機構と左足関節伸展・屈曲機構とを備え、右足関節伸展・屈曲機構と左足関節伸展・屈曲機構とを独立に動かす左右足関節独立動作制御部を備え、右膝関節伸展・屈曲機構と左膝関節伸展・屈曲機構とを備え、右膝関節伸展・屈曲機構と左膝関節伸展・屈曲機構とを独立して動かす左右膝関節独立動作制御部を備え、更に、右股関節伸展・屈曲機構と左股関節伸展・屈曲機構とを備え、右股関節伸展・屈曲機構と左股関節伸展・屈曲機構とを独立に動かす左右股関節独立動作制御部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項10】
左右股関節独立動作制御部により、左右の股関節のうち一方の股関節が伸展状態にあるときは、他方の股関節が屈曲状態にあるとともに、足関節、膝関節のうち1つまたは複数の関節において、左右の関節が独立に伸展または屈曲状態になる動作を行う手段を備えたことを特徴とする請求項9に記載のマッサージ機。
【請求項11】
足裏に刺激を与える複数の施療子またはエアバッグを備え、踵からつま先にかけて、あるいは、つま先から踵にかけて順次足裏を刺激する手段を備えていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のマッサージ機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate