説明

マットレスおよびその制御方法

【課題】高精度な体圧分散制御を可能とすると共に、セルの傾斜を解消して傾斜セルから加えられるせん断力による褥瘡の発生を有利に防止することができる、新規な構造のマットレスおよびその制御方法を提供すること。
【解決手段】セル24に加わる体圧に基づき、該セル24の傾斜の補正を行うセル傾斜補正領域102を設定するセル傾斜補正領域設定工程(S11、S12、S41)と、該セル傾斜補正領域102の外周エリアから中央エリアに向かって順次にセル24の圧抜と再圧入を行なうセル圧抜再圧入工程(S41、S42、S43)を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護用ベッド等に用いられるマットレスおよびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、介護用ベッド等における人体の支持部分には、クッション作用を有するマットレスが採用されており、人体を弾性的に支持することで寝心地の改善が図られている。
【0003】
ところで、寝返りをすることが困難な使用者等が、一般的なマットレスを長期に亘って連続的に使用すると、体圧(人体の荷重による圧力)の反力が使用者の局所に連続して作用することから、血流の悪化等に起因する褥瘡が生じるおそれがある。そこで、褥瘡の発生を防止するために、流体の圧力を利用して使用者の体圧の作用位置を変化させて、実質的に使用者に作用する体圧の反力を分散させることが可能なマットレスが提案されている。例えば、特開2000−189472号公報(特許文献1)には、マットレスの内部に荷重センサシートを配設する一方、人体を支持する基体の体圧作用面(人体の支持部分)を複数のセルで構成して、各セルの流体室に外部から空気等の流体を送入/排出することによりセルの内圧を調節可能とした構造が開示されている。このような従来構造のマットレスにおいては、高い荷重圧力が測定されたセルの流体を排出する一方、低い荷重圧力が測定されたセルに流体を送入することで、定期的にセルの内圧を変化させて、使用者の体の一部が体圧の作用で長期に亘って圧迫されるのを防ぐようになっている。
【0004】
ところが、特許文献1のマットレスのように、人体を支持する基体の体圧作用面(人体の支持部分)を複数のセルで構成した場合には、各セルの内圧を調整することで、使用者の体圧作用部は分散させることが容易になる一方で、各セルが相互に独立していることにより、各セルが傾斜しやすいという問題があった。例えば、使用者の臀部等、各セルに支持される人体の外面は丸みを帯びた凸状となっていることから、複数のセルで構成された体圧作用面が凹状に変形させられる。このように、体圧作用面が凹まされる際には、体圧作用面を構成する各セルが中央に向かって傾斜する場合が多い。そして、中央に向かって傾斜した各セルが、正規の立設状態に戻ろうとする力が、人体の外面にせん断力として作用することにより、人体の皮膚を圧迫し褥瘡を発生させるおそれがあった。
【0005】
このような傾斜セルの発生部位は、高精度な体圧分散制御を実現すべくセルの数を増やすほど、増加するものと考えられるが、高精度な体圧分散制御が可能なセルを使用したマットレスにおいて、傾斜セルにより人体に加えられるせん断力の問題の指摘やそれに対する対策は何らなされていないのが、現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−189472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、高精度な体圧分散制御を可能とすると共に、セルの傾斜を解消して傾斜セルから加えられるせん断力による褥瘡の発生を有利に防止することができる、新規な構造のマットレスおよびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
マットレスの制御方法に関する本発明の第1の態様は、人体を支持する基体の体圧作用面に複数のセルが配設されていると共に、該セルの内部に形成された流体室の圧力を調節する圧力調節手段と、該セルに加わる体圧を測定する体圧測定手段が設けられているマットレスの制御方法であって、前記体圧測定手段により各前記セルに加わる体圧を測定する体圧測定工程と、測定された各前記セルに加わる体圧に基づき、前記セルの傾斜の補正を行うセル傾斜補正領域を設定するセル傾斜補正領域設定工程と、設定された前記セル傾斜補正領域の外周エリアから中央エリアに向かって順次に各前記セルの圧抜と再圧入を前記圧力調節手段を用いて行うセル圧抜再圧入工程とを含むことを、特徴とする。
【0009】
本発明に従うマットレスの制御方法によれば、体圧作用面を複数のセルで構成して、各セルの内圧を調節することによって、体圧作用面を人体の外面形状により精度良く近づけることが出来て、高精度な体圧分散制御を行なうことが出来る。そして、体圧作用面の中央に向けて傾斜されたセルの内圧を一旦減圧して人体から離した後に再び加圧して人体を支持し直すことによって、セルの傾斜を解消することが出来る。これにより、人体に作用するせん断力を解消することが出来て、せん断力に起因する褥瘡の発生を有利に防止することが出来る。
【0010】
特に本発明によれば、セル傾斜補正領域設定工程において、セルに加わる体圧に基づいて、傾斜の補正を行うセルの範囲が決定される。これにより、体圧が作用しているセルを特定して効率良く且つ効果的なせん断力の解消を行なうことが出来る。
【0011】
そして、体圧が作用しているセル傾斜補正領域は、複数のセルで構成された体圧作用面が凹状に変形されている。従って、セル傾斜補正領域の中央側に位置するセルは、その外周側に隣接するセルも中央側に傾斜していることが考えられる。それ故、セル傾斜補正領域の中央側に位置するセルから圧抜と再圧入の傾斜補正を行なうと、外周側に隣接して中央側に傾斜しているセルが干渉して、傾斜補正を行ったセルが再度傾斜するおそれが考えられる。これに対して、本発明によれば、セル圧抜再圧入工程において、セル傾斜補正領域の外周側に位置するセルから中央側に位置するセルに向けて傾斜補正を行なうようにした。セル圧抜再圧入工程の初期段階において、セル傾斜補正領域内で最も外周エリアに位置するセルの圧抜と再圧入を行なう際には、その外側に隣接するセルは、セル傾斜補正領域から外れて位置していることから、体圧が殆ど作用しておらず、傾斜が無いか殆ど生じていない。従って、セル傾斜補正領域内で最も外周エリアに位置するセルは、外側のセルの影響を受けることなく傾斜を確実に解消することが出来る。そして、セル傾斜補正領域の外周エリアに位置するセルから中央エリアに位置するセルに向けて順次に圧抜と再圧入を行なうことによって、セル傾斜補正領域内のセルの傾斜を、外側に隣接するセルの傾斜に干渉されることなく確実に解消することが出来る。
【0012】
マットレスの制御方法に関する本発明の第2の態様は、前記第1の態様に記載のものにおいて、前記セル傾斜補正領域設定工程において、前記セルに加わる体圧が中央から周囲に向かって小さくなっている領域をセル傾斜補正領域に設定するものである。
【0013】
中央部分のセルに大きな体圧が加わっており、周辺に行くに連れてセルに加わる体圧が小さくなっている領域は、マットレスが凹む際に各セルが中央部分に向けて傾斜している場合が多い。そこで、そのような領域をセル傾斜補正領域として設定することによって、傾斜が生じているセルを確実に特定して効率良く傾斜を解消することが出来る。
【0014】
マットレスの制御方法に関する本発明の第3の態様は、前記第1の態様に記載のものにおいて、前記セル傾斜補正領域設定工程において、隣接する前記セルとの体圧差又は体圧から導き出される高さの差の最大値が所定値以上となる前記セルを前記セル傾斜補正領域に設定する一方、前記セル圧抜再圧入工程において、前記最大値が小さいセルから順次に圧抜と再圧入を行うものである。
【0015】
隣接するセルとの間で、体圧差又は体圧から導き出される高さの差が大きいセルには、傾斜が生じていると考えられる。そこで、そのようなセルをセル傾斜補正領域に設定することによって、傾斜が生じているセルを確実に特定することが出来る。なお、体圧差、高さの差の最大値の所定値としては、例えば実測等により、当該所定値以上の差が生じた場合に、セルに傾斜が生じてせん断力が生じる大きさの値が採用され得る。そして、セル傾斜補正領域は人体の外面形状に沿って、中央に向けて窄む凹状に湾曲変形されていることから、セル傾斜補正領域の外周エリアに位置するセルは比較的傾斜量が小さく、隣接するセルとの体圧の差又は高さの差の最大値が小さい。一方、中央エリアに位置するセルは傾斜量が大きく、最大値が大きくなる。そこで、隣接するセルとの体圧差又は高さの差の最大値が小さいセルから圧抜と再圧入を行うことによって、セル傾斜補正領域の外周エリアに位置するセルから中央エリアに位置するセルに向けてセルの傾斜を順次に解消するセル圧抜再圧入工程を有利に実行することが出来る。
【0016】
マットレスの制御方法に関する本発明の第4の態様は、前記第3の態様に記載のものにおいて、予め記憶された前記セルの内圧と、前記セルに加わる体圧と前記セルの高さとの関係から、前記体圧測定工程で測定された前記セルの体圧から前記セルの高さを求めるセル高さ取得工程を含むものである。
【0017】
本態様によれば、セルの高さをより精度良く検出して、セル傾斜補正領域をより精度良く設定することが出来る。即ち、セルの内圧が同じ場合でも、セルに加わる体圧が大きい場合にはセルの高さは小さく、セルに加わる体圧が小さい場合にはセルの高さは大きくなる。そこで、所定内圧で所定の体圧が及ぼされた場合のセルの高さを予め記憶して、セルに加わる体圧をも考慮することによって、所定内圧で所定の体圧が及ぼされた場合のセルの高さをより精度良く求めることが出来る。その結果、隣接するセルとの高さの差をより精度良く得ることが出来て、セル傾斜補正領域を傾斜補正が必要なセルに特定してより精度良く設定することが出来る。
【0018】
マットレスに関する本発明は、人体を支持する基体の体圧作用面に複数のセルが配設されていると共に、該セルの内部に形成された流体室の圧力を調節する圧力調節手段と、該セルに加わる体圧を測定する体圧測定手段が設けられているマットレスにおいて、前記体圧測定手段により測定された各前記セルに加わる体圧に基づき、前記セルの傾斜の補正を行うセル傾斜補正領域を設定するセル傾斜補正領域設定手段と、設定された前記セル傾斜補正領域の外周エリアから中央エリアに向かって順次に各前記セルの圧抜と再圧入を前記圧力調節手段を用いて行うセル圧抜再圧入制御手段とを含むことを、特徴とする。
【0019】
本発明に従う構造とされたマットレスによれば、体圧作用面を複数のセルで構成して、各セルの内圧を調節することによって、体圧作用面を人体の外面形状により精度良く近づけることが出来て、高精度な体圧分散制御を行なうことが出来る。そして、セルの内圧を一旦減圧して人体から離した後に再び加圧して人体を支持し直すセル圧抜再圧入制御手段を設けたことから、傾斜が生じているセルの傾斜を解消することが出来る。その結果、人体に作用するせん断力を解消することが出来て、せん断力に起因する褥瘡の発生を有利に防止することが出来る。
【0020】
特に、セル傾斜補正領域設定手段によって、セル圧抜再圧入制御手段で圧抜と再圧入を行なうセルを、セルに加わる体圧に基づいて決定するようにした。これにより、傾斜が生じているセルを特定して効率良く且つ効果的なせん断力の解消を行なうことが出来る。更に、セル圧抜再圧入制御手段により、セル傾斜補正領域設定手段で設定されたセル傾斜補正領域の外周エリアに位置するセルから中央エリアに位置するセルに向けて順次に圧抜と再圧入を行なうようにした。これにより、セル傾斜補正領域の外側のセルの傾斜が解消された後に、中央側のセルの圧抜と再圧入が行なわれる。その結果、外側に隣接するセルに干渉されることなく、セルの圧抜と再圧入を行なうことが可能であり、セルの傾斜を確実に解消することが出来る。
【発明の効果】
【0021】
本発明に従うマットレスおよびその制御方法によれば、人体を支持する基体の体圧作用面を複数のセルで構成した。これにより、体圧作用面を人体の外面形状により精度良く近づけることが出来て、高精度な体圧分散制御を行なうことが出来る。更に、セルの傾斜の補正を行うセル傾斜補正領域を、セルに加わる体圧に基づいて設定することから、傾斜の補正を行なうセルを体圧が作用しているセルに特定して、効率的な傾斜の補正を行うことが出来る。そして、セル傾斜補正領域の外周側に位置するセルから中央側に位置するセルに順次に圧抜と再圧入を行なって、外側のセルから順に傾斜を解消することによって、外側のセルに干渉されることなく、セルの圧抜と再圧入を行なうことが出来る。これにより、セルの傾斜を確実に解消することが出来て、人体に作用するせん断力を自動的に解消することが出来る。その結果、人体に及ぼされるせん断力に起因する褥瘡の発生を有利に防止することが出来る。更に、せん断力を解消するために、介護者が一旦使用者の身体を持ち上げてマットレスとの間に手を入れる等の重労働を軽減することが出来ると共に、手を入れることで使用者の褥瘡部位に一時的に触れて傷つけてしまう等のおそれを回避することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のマットレスを備えたベッドの斜視組立図。
【図2】本発明のマットレスの上面図。
【図3】図2におけるIII−III断面図。
【図4】セルの斜視図。
【図5】図4に示したセルの断面図。
【図6】本発明のマットレスのシステム構成の説明図。
【図7】体圧センサの上面図。
【図8】図7におけるVIII−VIII断面図。
【図9】本発明の制御方法を示すフローチャート。
【図10】第一の実施形態における体圧分散制御を示すフローチャート。
【図11】図10における内圧調節工程を示すフローチャート。
【図12】図11におけるグループ内圧微調節工程を示すフローチャート。
【図13】本発明の制御方法を説明するための説明図。
【図14】本発明の第一の実施形態における背抜き制御を示すフローチャート。
【図15】セルに及ぼされる体圧と、セルの内圧と、セルの高さの関係を示すグラフ。
【図16】本発明の第二の実施形態における体圧分散制御を示すフローチャート。
【図17】本発明の第二の実施形態における背抜き制御を示すフローチャート。
【図18】頭部載置部位における各セルの高さを説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
先ず、図1に、本発明に従う構造とされたマットレス10を備えたベッド12を示す。ベッド12は、ベッド本体14における床板16の上面にマットレス10が載置された構造とされている。マットレス10は、マットレス本体18と、天部マット20を含んで構成されている。
【0025】
図2および図3に、マットレス10を示す。なお、図2においては、天部マット20を透視して図示する。マットレス本体18は、箱状の筐体部22と、筐体部22に収容された複数のセル24とを備えている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、鉛直上下方向である図3中の上下方向をいう。
【0026】
筐体部22は、全体が弾性を有するクッション材で形成されており、枠体26の下側開口部に基体としての底部マット28が嵌め込まれていると共に、枠体26の上側開口部にクッション層としての天部マット20が嵌め込まれて形成されている。
【0027】
枠体26は、全体が多孔質のウレタンフォームで形成された弾性を有する部材であって、互いに平行をなすように配置された頭部側ブロック30と脚部側ブロック32が一対の側方ブロック34,34で連結された構造とされて、上下方向で矩形枠状を呈している。なお、枠体26の形成材料は特に限定されるものではなく、発泡性材料にも限定されないが、人体への接触や背上げを行う場合の変形追従性等を考慮すると、ウレタンフォームのような弾性を有する材料で形成されていることが望ましい。
【0028】
底部マット28は、枠体26に比して上下方向で薄肉とされた矩形板状の部材であって、本実施形態では多孔質のウレタンフォームによって形成されている。また、底部マット28は、上下方向視の形状が枠体26の開口部と対応している。このような底部マット28が枠体26の下側開口部に嵌め込まれることによって、枠体26の内部に収容空所36が形成されている。
【0029】
収容空所36には、複数のセル24が収容配置されている。図4および図5に示されているように、セル24は例えばウレタンフィルム等から形成されており、平面視(高さ方向視)で角部が円弧状に丸められた略矩形(角丸矩形状)を呈する袋状乃至は風船状とされている。より詳細には、セル24は、開口部を有する略きん着形状とされた上側袋状部38と下側袋状部40が、互いの開口部を相互に固着することで形成されている。
【0030】
セル24の内部には、流体室42が形成されている。流体室42は、上側袋状部38の内部空間と下側袋状部40の内部空間が、それらの開口部を利用した連通部43を通じて相互に連通されることで形成されている。流体室42は外部から略密閉されており、セル24の底部に貫設された筒状のポート44を通じて外部に連通されている。そして、ポート44を通じて流体室42内に空気等の流体が給排されることにより、流体室42の内圧が調節されて、セル24が膨張および収縮されるようになっている。なお、セル24に給排される流体は、空気等の気体に限定されるものではなく、例えば、水等の液体を用いることも出来る。
【0031】
セル24の高さ方向中間部分には、括れ部46が形成されている。即ち、上側袋状部38と下側袋状部40が何れも開口部に向かって次第に窄む形状とされていることにより、上側袋状部38と下側袋状部40との固着部分(開口部)に括れ部46が形成されている。これにより、セル24は、括れ部46の設けられた高さ方向中間部分において細くなっており、膨張時の縦断面において略8の字形乃至は瓢箪形を呈する2段構造とされている。
【0032】
このようなセル24は、図3に示したように、底部マット28の上面に配設されており、底面が中央部分(ポート44の周囲)において底部マット28に固着されて、底部マット28に対して傾動可能に支持されている。これにより、複数のセル24が、筐体部22の収容空所36内に収容されている。
【0033】
図6に概略的に示すように、マットレス10の横方向(図2中、横方向)に7つのセル24が隣接して配設されており、これら7つのセル24と、1つの子制御機48を含んで、1つのセルユニット50が構成されている。このようなセルユニット50が、マットレス10の縦方向(図2中、縦方向)で21組並設されることによって、筐体部22には、合計147個(7個×21組)のセル24が配設されている。
【0034】
セルユニット50には、サブ管路52と、サブ管路52から各セル24毎に分岐してセル24のポート44と接続された分岐管路54が設けられている。図示は省略するが、セル24のポート44が底部マット28を貫通して配設されており、分岐管路54がポート44に接続されている。各分岐管路54上には、セル駆動バルブ56が設けられている。セル駆動バルブ56は例えば電磁バルブであり、子制御機48と電気的に接続されて、子制御機48からの制御信号に基づいて、分岐管路54の連通と遮断を選択的に切り替えられるようになっている。なお、詳細な図示は省略するが、子制御機48は、マットレス10の側方に配設される。そして、セル駆動バルブ56は、マットレス10の下方の例えばベッド本体14内に配設しても良いが、分岐管路54を長くすることによって、子制御機48と共に7つのセル駆動バルブ56をマットレス10の側方に集中して配設する等しても良い。
【0035】
これらセルユニット50のサブ管路52は、ポンプ装置58から延出されたメイン管路60と接続されている。ポンプ装置58には例えば電磁バルブからなる給気バルブ62および排気バルブ64が設けられており、メイン管路60と接続されている。給気バルブ62はポンプ装置58に設けられたポンプ66と接続されている。一方、排気バルブ64は大気中に連通されている。更に、ポンプ装置58には圧力計68が設けられており、メイン管路60と接続されている。
【0036】
また、ポンプ装置58には、親制御機70が設けられている。親制御機70は給気バルブ62および排気バルブ64、ポンプ66と電気的に接続されており、後述する制御装置74からの制御信号に基づいて、これらの作動を制御するようになっている。更にまた、親制御機70は圧力計68と電気的に接続されており、メイン管路60の内圧を測定可能とされている。更に、親制御機70は各セルユニット50の子制御機48と電気的に接続されており、各子制御機48に制御信号を送信することにより、それぞれのセルユニット50における各セル駆動バルブ56の作動を制御するようになっている。更にまた、ポンプ装置58には電源装置72が設けられている。電源装置72は各セルユニット50の子制御機48に接続されており、子制御機48およびセル駆動バルブ56の駆動電源を供給するようになっている。
【0037】
このようなポンプ装置58の親制御機70は、制御装置74と電気的に接続されている。制御装置74は、CPU(Central Processing Unit)76と、ROM(Read Only Memory)78と、RAM(Random Access Memory)80と、駆動回路82と、後述する電源回路100を備えている。ROM78には後述する制御方法に基づく制御プログラム等が記憶されている。RAM80には、制御プログラムの演算値や圧力計68からの計測値等が一時的に格納される。そして、CPU76がROM78に記憶された制御プログラムに基づいて、駆動回路82を通じてポンプ装置58の親制御機70に制御信号を送信することによって、メイン管路60への空気の給排と各セル駆動バルブ56の作動が制御されるようになっている。
【0038】
これにより、例えば制御装置74からの制御信号に基づいて、給気バルブ62を開放してポンプ66からメイン管路60に空気を送入すると共に、複数のセル駆動バルブ56の内の幾つかを選択的に開放して、セル24の流体室42をメイン管路60と連通することにより、メイン管路60と連通された特定のセル24の流体室42の圧力のみを高くして、セル24の高さを高くすることが出来る。また、排気バルブ64を開放してメイン管路60を大気と連通すると共に、特定のセル駆動バルブ56のみを選択的に開放してセル24の流体室42をメイン管路60と連通することにより、メイン管路60と接続された特定のセル24の流体室42の圧力のみを低くして、セル24の高さを低くすることが出来る。このように、本実施形態においては、制御装置74、ポンプ装置58、および各セルユニット50の子制御機48およびセル駆動バルブ56を含んで、セル24の流体室42の圧力を調節する圧力調節手段が構成されている。
【0039】
そして、図3に示したように、収容空所36に複数のセル24を収容した枠体26の上側開口部に、天部マット20が嵌め込まれて、収容空所36内のセル24に重ね合わされている。天部マット20は、上下方向視の形状が底部マット28と略同一とされると共に、底部マット28よりも厚肉の矩形板状を呈している。天部マット20は、それぞれが多孔質のウレタンフォームで形成された第1クッション層としての表層部84と、第2クッション層としての裏層部86とを有する積層構造とされている。なお、表層部84と裏層部86は同一の材料で形成されていても良いが、弾性係数等が異なる材料で形成することで、より優れた寝心地が発揮され得る。
【0040】
天部マット20において、表層部84と裏層部86の間には、体圧測定手段としての体圧センサ88が設けられている。体圧センサ88としては、歪ゲージや磁歪体を用いたロードセル等を用いることも可能であるが、本実施形態においては、体圧センサ88として、シート状の静電容量型センサが用いられている。このような静電容量型センサとしては、従来公知のものが適宜に採用可能であることから、以下、概略を説明するに留める。
【0041】
図7および図8に、体圧センサ88を概略的に示す。なお、図7においては、後述する誘電層90および表側基材92を透視して図示すると共に、後述する検出部A0101〜A2107にハッチングを施して示す。
【0042】
体圧センサ88は、誘電層90と、第一電極膜としての表側電極01X〜21Xと、第二電極膜としての裏側電極01Y〜07Yと、表側配線01x〜21xと、裏側配線01y〜07yと、表側基材92と、裏側基材94と、表側配線用コネクタ96と、裏側配線用コネクタ98と、制御装置74と、を備えている。なお、後述する検出部A0101〜A2107の符号「A○○△△」中、上二桁の「○○」は、表側電極01X〜21Xに対応している。下二桁の「△△」は、裏側電極01Y〜07Yに対応している。
【0043】
誘電層90は、エラストマーとしてのウレタン発泡体製であって、四角形板状のシート状を呈し、弾性変形可能とされている。誘電層90は、枠体26の上側開口部と略等しい大きさとされている。
【0044】
表側基材92は、ゴム製であって、四角形板状を呈している。表側基材92は、誘電層90の上方(表側)に積層されている。裏側基材94は、ゴム製であって、四角板形状を呈している。裏側基材94は、誘電層90の下方(裏側)に積層されている。
【0045】
図8に示すように、表側基材92の外縁と裏側基材94の外縁とは接合されており、表側基材92と裏側基材94が、袋状に貼り合わされている。誘電層90は、当該袋内に収容されている。誘電層90の上面四隅は、表側基材92の下面四隅に、スポット的に接着されている。また、誘電層90の下面四隅は、裏側基材94の上面四隅に、スポット的に接着されている。このように、誘電層90は、表側基材92および裏側基材94に、使用時にシワがよらないように、位置決めされている。ただし、誘電層90は、四隅が接着された状態で、表側基材92および裏側基材94に対して、水平方向(前後左右方向)に弾性変形可能である。
【0046】
表側電極01X〜21Xは、誘電層90の上面に、合計21本配置されている。表側電極01X〜21Xは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。表側電極01X〜21Xは、各々、帯状を呈しており、柔軟に伸縮可能に形成されている。表側電極01X〜21Xは、各々、横方向(図7中、左右方向)に延在している。表側電極01X〜21Xは、縦方向(図7中、上下方向)に、セル24の縦方向(図2中、上下方向)の配列ピッチと略等しい間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。
【0047】
表側配線01x〜21xは、誘電層90の上面に、合計21本配置されている。表側配線01x〜21xは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。表側配線01x〜21xは、各々、線状を呈している。表側配線用コネクタ96は、表側基材92および裏側基材94の隅部に配置されている。表側配線01x〜21xは、各々、表側電極01X〜21Xの端部と表側配線用コネクタ96と、を接続している。
【0048】
裏側電極01Y〜07Yは、誘電層90の下面に、合計7本配置されている。裏側電極01Y〜07Yは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。裏側電極01Y〜07Yは、各々、帯状を呈しており、柔軟に伸縮可能に形成されている。裏側電極01Y〜07Yは、各々、縦方向(図7中、上下方向)に延在している。裏側電極01Y〜07Yは、横方向(図7中、左右方向)に、セル24の横方向(図2中、左右方向)の配列ピッチと略等しい間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。このように、表側電極01X〜21Xと裏側電極01Y〜07Yとは、上方または下方から見て、互いに直交する格子状に配置されている。
【0049】
裏側配線01y〜07yは、誘電層90の下面に、合計7本配置されている。裏側配線01y〜07yは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。裏側配線01y〜07yは、各々、線状を呈している。裏側配線用コネクタ98は、表側基材92および裏側基材94の隅部に配置されている。裏側配線01y〜07yは、各々、裏側電極01Y〜07Yの端部と裏側配線用コネクタ98と、を接続している。
【0050】
検出部A0101〜A2107は、図7にハッチングで示すように、表側電極01X〜21Xと、裏側電極01Y〜07Yと、が上下方向に交差する部分(重複する部分)に配置されている。検出部A0101〜A2107は、各々、表側電極01X〜21Xの一部と、裏側電極01Y〜07Yの一部と、誘電層90の一部と、を備えている。検出部A0101〜A2107は、筐体部22の収容空所36内に収容されたセル24と同数の、合計147個(=7個×21個)配置されている。検出部A0101〜A2107は、誘電層90の略全面に亘って、均等に配置されている。
【0051】
図7に示すように、制御装置74は、表側配線用コネクタ96、裏側配線用コネクタ98と、電気的に接続されている。制御装置74には、電源回路100が設けられている。電源回路100は、検出部A0101〜A2107に、周期的な矩形波電圧を走査的に順番に印加する。ROM78には、予め、検出部A0101〜A2107に構成されたコンデンサの静電容量と体圧(荷重)との対応を示すマップが格納されている。一方、RAM80には、表側配線用コネクタ96、裏側配線用コネクタ98から入力される検出部A0101〜A2107の静電容量が一時的に格納される。そして、CPU76が、RAM80に格納された検出部A0101〜A2107の静電容量から、ROM78に記憶されたマップに基づいて、検出部A0101〜A2107に作用している体圧を検出するようになっている。
【0052】
図3に示したように、このような体圧センサ88を備えた天部マット20が、枠体26の上側開口部に嵌め込まれて、枠体26の収容空所36内に収容された複数のセル24に重ね合わされる。これにより、体圧センサ88が複数のセル24を介して底部マット28に沿って広げられると共に、図2に示したように、体圧センサ88の各検出部A0101〜A2107が、それぞれ、各セル24に重ね合わされる。その結果、各セル24に加わる体圧を体圧センサ88で検出することが可能とされている。
【0053】
このような構造とされたマットレス10は、図1に示したように、ベッド本体14の床板16上に重ね合わされている。そして、マットレス10上に使用者が横たわると、天部マット20と複数のセル24と底部マット28に使用者の体圧が作用して、ベッド本体14の床板16で支持されるようになっている。そして、使用者に作用する重力に基づいた体荷重(体圧)が、下方に向かって作用することにより、天部マット20、セル24、底部マット28、床板16の各上面が、それぞれ体圧作用面とされる。
【0054】
次に、マットレス10における、セル24の内圧を調節する制御方法について説明する。図9に、制御装置74のCPU76の処理内容を示す。本実施形態において、CPU76は、S1において、マットレスの形状を使用者の体表面に沿う形状に変形する体圧分散制御を行った後に、S2において、セル24の傾斜を補正する背抜き制御を行うようになっている。
【0055】
先ず、制御装置74のROM78には、表1に示す、グループ情報テーブルが記憶されている。グループ情報テーブルには、複数(本実施形態においては、グループ1〜グループ6の6グループ)の各グループに対応する、セル24に加わる体圧の大きさと、目標内圧が記憶されている。なお、表1において、体圧中の「p」および目標内圧中の「a」は所定の定数値である。本実施形態におけるグループ情報テーブルには、グループ1から順に、セル24に加わる体圧が小さいものから割り当てられている。また、セル24に加わる体圧が最も小さいグループ1には目標内圧は設定されておらず、内圧の調節が行われないようになっている。
【0056】
【表1】

【0057】
図10に、制御装置74のCPU76が行う体圧分散制御の処理内容を示す。先ず、CPU76は、S11において、体圧センサ88から、全てのセル24について、セル24に加わる体圧を測定する体圧測定工程としての第一体圧測定工程を実施する。
【0058】
次に、S12において、CPU76は、全てのセル24について、S11で得られた体圧と、表1に示したグループ情報テーブルに基づいて、各セル24をグループ1〜グループ6の何れか対応するグループに割り当ててRAM80に記憶するグループ化工程を実施する。例えば、特定のセル24について、S11で得られた体圧が17p(mmHg)であった場合には、グループ情報テーブルに基づいて、当該セル24をグループ3に割り当ててRAM80に記憶する。このように、本実施形態においては、ROM78に記憶されたグループ情報テーブル、S12を含んで、グループ化手段が構成されている。
【0059】
次に、S13において、CPU76は、全てのセル24について、セル24が割り当てられたグループと、表1に示したグループ情報テーブルに基づいて、セル24の目標内圧を取得してRAM80に記憶する目標内圧設定工程を実施する。例えば、グループ3に割り当てられたセル24は、グループ情報テーブルに基づいて、目標内圧として2a(Pa)が設定される。このことから明らかなように、グループ毎に目標内圧が定められており、同一グループのセル24には、同一の目標内圧が設定される。このように、本実施形態においては、ROM78に記憶されたグループ情報テーブル、S13を含んで、目標内圧設定手段が構成されている。
【0060】
続いて、S14において、CPU76は、各セル24について、グループ毎に内圧を調節する内圧調節工程を実施する。グループ毎にセル24の内圧を調節する際には、調節対象のグループに割り当てられたセル24のセル駆動バルブ56を開放する一方、その他のグループに割り当てられたセル24のセル駆動バルブ56を閉鎖する。これにより、調節対象のグループに割り当てられた複数のセル24の流体室42がサブ管路52とメイン管路60を通じて相互に連通される。その結果、相互に連通されたセル24の内圧は平衡して特定の平衡内圧となる。そして、圧力計68で平衡内圧を測定して、目標内圧が平衡内圧よりも高い場合には、給気バルブ62を開放して流体室42をポンプ66と連通することにより、流体室42内を加圧する。一方、目標内圧が平衡内圧よりも低い場合には、排気バルブ64を開放して流体室42を大気と連通することにより、流体室42内を減圧する。
【0061】
ここにおいて、S14における内圧調節工程は、各グループ毎に順番に、或るグループの内圧の調節が完了した後に次のグループの内圧を調節するようにしても良いが、図11に示すように、各グループのそれぞれにおける内圧の調節を、複数段階のグループ内圧微調節工程(S22〜S26)に分けて、各グループのグループ内圧微調節工程(S22〜S26)をグループ6からグループ2の順で繰り返して行なうことが好ましい。
【0062】
図11に示す内圧調節工程を実施するために、RAM80には、グループ2〜グループ6のそれぞれに対応して、グループ完了フラグとしてのグループ2完了フラグ〜グループ6完了フラグがそれぞれ記憶されている。これらグループ完了フラグは、対応するグループのセル24の内圧の調節が完了したか否かを示すフラグであり、グループ完了フラグがONの場合には、対応するグループのセル24の内圧の調節が完了している(目標内圧に設定されている)ことを示し、グループ完了フラグがOFFの場合には、対応するグループのセル24の内圧の調節が完了していない(目標内圧に設定されていない)ことを示す。そして、CPU76は、S21において、初期化処理として、グループ2〜グループ6のグループ完了フラグを全てOFFに設定する。
【0063】
次に、S22において、CPU76は、セル24に加わる体圧の最も大きなグループ6に割り当てられたセル24について、内圧を微調節して目標内圧に近づけるグループ内圧微調節工程を実施する。図12に、グループ内圧微調節工程を示す。先ず、CPU76は、S31において、RAM80に記憶されたグループ6完了フラグがONである場合(S31=Yes)には、グループ6の内圧調節は既に完了しているものとして、グループ6のグループ内圧微調節工程(S22)を終了する。一方、RAM80に記憶されたグループ6完了フラグがOFFである場合(S31=No)には、CPU76は、S32において、グループ6に割り当てられたセル24のセル駆動バルブ56を開放して、グループ6のセル24の流体室42を相互に連通した状態で、圧力計68により、グループ6に割り当てられたセル24の内圧を測定する。
【0064】
次に、CPU76は、S33において、S32で測定したグループ6のセル24の内圧と、前記目標内圧設定工程(S13、図10参照)で設定した目標内圧とを比較して、セル24の内圧が目標内圧よりも高い場合(S33=Yes)には、CPU76は、S34において、グループ6のセル24の流体室42を相互に連通した状態で、排気バルブ64を駆動して、予め設定した例えば1秒や2秒等の所定時間:tの間だけセル24の流体室42から空気を排出して、流体室42を減圧する。一方、セル24の内圧が目標内圧よりも低い場合(S33=No)には、CPU76は、S35において、グループ6のセル24の流体室42を相互に連通した状態で、給気バルブ62とポンプ66を駆動して、所定時間:tの間だけセル24の流体室42に空気を供給して、流体室42を加圧する。
【0065】
そして、CPU76は、S36において、圧力計68により、グループ6に割り当てられたセル24の内圧を測定して、セル24の内圧が目標内圧になった場合(S36=Yes)には、S37において、グループ6のグループ完了フラグをONにして、グループ6についてのグループ内圧微調節工程(S22)を終了する。一方、セル24の内圧が目標内圧になっていない場合(S36=No)には、グループ完了フラグを変更することなく、グループ6についてのグループ内圧微調節工程(S22)を終了する。なお、S36における、セル24の内圧が目標内圧になったか否かの判断は、目標内圧から適当な許容範囲を設定して、セル24の内圧が目標内圧からの許容範囲内に入った場合に、セル24の内圧が目標内圧になったものと判断しても良い。また、S34およびS35による加減圧中に圧力計68でセル24の内圧を監視することにより、セル24の内圧が目標内圧に達した場合には、S34およびS35における所定時間:tが経過する前に加減圧を終了する等しても良い。
【0066】
続いて、図11におけるS23〜S26において、セル24に加わる体圧の大きなグループ5からグループ2の順で、前記S22におけるグループ6と同様に、グループに割り当てられたセル24の内圧を微調節して目標内圧に近づけるグループ内圧微調節工程(図12参照)を実施する。そして、S27において、グループ2〜グループ6の全てのグループのグループ完了フラグがONになった場合(S27=Yes)には、全てのグループのセル24が目標内圧に設定されたものとして、内圧調節工程(S14)を終了する。一方、ONでないグループ完了フラグが1つでも残っている場合(S27=No)には、S22以降の処理を繰り返し、目標内圧に設定されていないグループのセル24について、内圧の微調節を繰り返す。要するに、セル24に加わる体圧の大きなグループ6からグループ2の順で、グループ内圧微調節工程(S22〜S26)を繰り返し実行することにより、所定時間の微小な加圧又は減圧を繰り返してセル24の内圧を目標内圧に次第に近づけて、グループ2〜グループ6の全てのグループのセル24が目標内圧に設定された段階で、内圧調節工程(S14)を完了する。
【0067】
以上により、各セル24の内圧が目標内圧に調節されて、セル24に加わる体圧に応じてセル24の高さが設定される。その結果、天部マット20が使用者の体表面に沿う形状とされて、より広い面積で使用者の体を支持することにより、体圧を分散することが出来る。
【0068】
なお、より良好な体圧分散効果を得るためには、セル24の内圧を低くして、使用者の体表面とマットレスとの接触面積をより広くすることが好ましい。そこで、本実施形態では、S15以降で、セル24の内圧を減圧する。具体的には、CPU76は、目標内圧が設定されたグループ2〜グループ6毎に、S15において、体圧センサ88から、セル24に加わる体圧を測定する第二体圧測定工程を実施する。
【0069】
次に、CPU76は、S16において、グループ2〜グループ6のセル24について、各グループ毎にセル24の内圧を減圧する排出工程を実施する。排出工程において、グループ2〜グループ6のセル24は、各グループ毎にセル駆動バルブ56が開放されて、同一グループのセル24の流体室42が相互に連通された状態で、排気バルブ64が開放されて流体室42内の空気が大気中に排出されることによって内圧が減圧される。
【0070】
排出工程(S16)による流体室42からの空気の排出中に、CPU76は、S17において、体圧センサ88から、排出工程が実施されているグループのセル24について、セル24に加わる体圧を測定する第三体圧測定工程を実施する。そして、CPU76は、S18において、第二体圧測定工程(S15)の測定結果の体圧を比較測定結果として、該比較測定結果よりも第三体圧測定工程(S17)の測定結果の体圧の方が小さい場合(S18=Yes)には、セル24を減圧することによって加わる体圧が減少しており、体圧分散効果が向上されていると考えられることから、まだセル24の内圧を小さくして体圧分散効果を向上する余地があると考えられる。そこで、S16に戻って排出工程を継続してセル24の減圧を継続しつつ、S17において第三体圧測定工程を実行する。そして、S18において、前回の第三体圧測定工程(S17)の測定結果の体圧を比較測定結果として、該比較測定結果よりも今回の第三体圧測定工程(S17)の測定結果の体圧の方が小さい場合(S18=Yes)には、排出工程(S16)と第三体圧測定工程(S17)を繰り返し実行する。
【0071】
一方、第二体圧測定工程(S15)又は前回の第三体圧測定工程(S17)の測定結果の体圧を比較測定結果として、該比較測定結果と、今回の第三体圧測定工程(S17)の測定結果の体圧が同じ場合(S18=No)には、セル24を減圧してもそれ以上の体圧分散効果の向上が図れないものとして、S19以降の処理を実行する。また、第二体圧測定工程(S15)又は前回の第三体圧測定工程(S17)の測定結果の体圧を比較測定結果として、該比較測定結果よりも今回の第三体圧測定工程(S17)の測定結果の体圧の方が大きい場合(S18=No)には、セル24を減圧するに従ってセル24に加わる体圧が増加していることから、セル24が潰れきった所謂「底付状態」になったものとして、S19以降の処理を実行する。要するに、CPU76は、S16〜S18において、排出工程(S16)中のセル24に加わる体圧の変化を監視して、セル24に加わる体圧が減少している間(S18=Yes)は排出工程(S16)を継続する一方、セル24に加わる体圧が減少しなくなった時点(S18=No)で、排出工程(S16)を終了してS19以降の処理を実施する。
【0072】
そして、CPU76は、S19において、全セル24のセル駆動バルブ56を閉鎖して、全セル24の流体室42を相互に独立させる独立工程を実施する。これにより、各セル24の内圧を固定して、体圧分散制御(S1、図9参照)を完了する。このように、本実施形態においては、各セル24の流体室42をグループ毎に相互に連通/独立させる連通/独立手段が、セル駆動バルブ56、サブ管路52、およびメイン管路60を含んで構成されている。
【0073】
体圧分散制御(S1)が完了することにより、図13(a)に示すように、各セル24の高さが調節されて、天部マット20が凹状に変形される。そして、凹状に変形された位置を支持するセル24は、凹状の中心に向けて傾斜されている。なお、図13の各セル24に記載の「GrX」の「X」は、当該セル24が割り当てられたグループの番号を示している。
【0074】
このような体圧分散制御(S1)を完了した後に、CPU76は、傾斜しているセル24の傾斜を解消する背抜き制御(S2)を実施する。図14に、背抜き制御を示す。先ず、CPU76は、S41において、グループ2〜グループ6のうち、セル24に加わる体圧の最も小さなグループ2に割り当てられたセル24の1つ(図13中、セル24b)を選択する。なお、同一グループに割り当てられた複数のセル24の中から1つを選択するには、ランダムに選択しても良いし、例えば同一グループに割り当てられた複数のセル24の中からラスタ走査順に選択したり、同一グループに割り当てられた複数のセル24の中で、よりグループ番号の小さな(例えば、グループ2に対するグループ1)に割り当てられたセル24に近いものから選択する等しても良い。そして、選択したセル24のセル駆動バルブ56のみを開放して、圧力計68によってセル24の内圧を測定し、測定したセル24の内圧をRAM80に記憶する。
【0075】
次に、CPU76は、S42において、排気バルブ64を開放して、選択したセル24の内圧を所定量だけ圧抜する。選択したセル24の圧抜の所定量は、天部マット20の追従性等を考慮して、当該所定量だけ圧抜した場合に、セル24が天部マット20から離れるような大きさに設定される。具体的には、例えば実測等によって予め設定した固定の所定量だけ内圧を減少するようにしても良いし、セル24の内圧が予め設定した大きさ(例えば、0.5a(「a」は定数値)Pa)になるまで減圧しても良い。或いは、S41で測定した内圧の1/3等、動的に決定するようにしても良い。これにより、図13(b)に示すように、選択されたセル24の内圧が減少されて高さが低くなり、セル24が天部マット20から一旦離れて、天部マット20からの拘束力が解除される。その結果、セル24の傾斜が解消される。
【0076】
続いて、CPU76は、S43において、排気バルブ64を閉鎖すると共に、給気バルブ62を開放して、S41で記憶した内圧になるまでポンプ66からセル24に空気を送入してセル24を再圧入する。これにより、図13(c)に示したように、選択されたセル24(図中におけるセル24b)が、傾斜が解消された直立状態で天部マット20に接触して、再び天部マット20を支持する。このように、本実施形態においては、S41,S42,S43を含んでセル圧抜再圧入工程が構成されており、制御装置74,S41,S42,S43を含んでセル圧抜再圧入制御手段が構成されている。
【0077】
次に、CPU76は、S44において、グループ2に割り当てられた全てのセル24について圧抜と再圧入が完了したか否かを判定し、全てのセル24について圧抜と再圧入が完了していない場合(S44:No)には、S41に戻り、未だ圧抜と再圧入が完了していないセル24について、S42〜S43の処理を実行する。そして、グループ2に割り当てられた全てのセル24について圧抜と再圧入が完了した場合(S44:Yes)には、CPU76は、S45において、グループ3〜グループ6に割り当てられた全てのセル24について、グループ3からグループ6の順で、S41〜S44と同様の処理を実行する。これにより、図13(d)〜図13(e)にグループ4に割り当てられたセル24cを例に示すように、グループ2〜グループ6の順で、各グループに割り当てられたセル24の圧抜と再圧入が行なわれて、圧抜によってセル24が一旦天部マット20から離されて傾斜が解消された後に、再圧入によって直立状態で天部マット20に再び接触される。その結果、図13(f)に示したように、グループ2〜グループ6に割り当てられた全てのセル24の傾斜が解消されて、天部マット20を直立状態で支持するようにされる。
【0078】
本実施形態に従う構造とされたマットレス10およびその制御方法によれば、体圧分散制御(S1)において、複数のセル24を加えられる体圧の大きさによりグループ分けして、グループ毎に一括して同時に内圧を調節するようにした。これにより、各セル24の内圧を個別に制御する場合に比して、より速やかにセル24の内圧調節を行うことが出来る。また、セル24に加わる体圧の大きなグループ6から順にセル24の内圧調節が行なわれるようになっている。これにより、セル24に加わる体圧が大きくなる頭部や臀部等を支持するセル24から先に内圧調節が行なわれて、頭部や臀部等から先にマットレス10に沈み込まされる。これにより、頭部や臀部の周辺とマットレス10との接触面積が速やかに増大されて、体圧分散効果が速やかに発現され得る。更に、各グループの内圧調節を一度に完了するのではなく、段階的に各グループ毎に順次に実施することにより、グループ間でのセル24の高さが大きく異なることを回避して、マットレス10の形状を全体的に少しずつ変化させることが出来る。その結果、使用者に大きな違和感を与えることなくマットレス形状を変化させることが出来る。また、排出工程(S16、図10参照)を設けたことにより、使用者の体圧分布に応じてマットレス10の表面形状を変化させた後に、セル24の内圧を下げることが出来る。これにより、より優れた体圧分散効果を得ることが出来る。
【0079】
そして、体圧分散制御(S1)でマットレス10を使用者の体表面に沿う形状に変化させて体圧を分散した後に、背抜き制御(S2)で、体圧が及ぼされているセル24を圧抜して一旦天部マット20から離した後に、再び圧入するようにされている。これにより、セル24の傾斜を解消して、直立状態で天部マット20を支持することが出来る。その結果、セル24の傾斜に起因する使用者へのせん断力を解消することが出来て、せん断力に起因する褥瘡の発生を有利に防止することが出来る。
【0080】
さらに、S41(図14参照)において、グループ2〜グループ6に割り当てられたセル24についてのみ圧抜と再圧入が行なわれるようになっている。このように、本実施形態においては、体圧が及ぼされてグループ2〜グループ6に割り当てられたセル24が、傾斜を補正するセル傾斜補正領域102として設定されるようになっている。そして、加えられる体圧を測定すると共に、測定された体圧に基づいてセル24をグループ2〜グループ6に割り当てるS11、S12(図10参照)と、グループ2〜グループ6に割り当てられたセル24のみを圧抜と再圧入の対象(セル傾斜補正領域102)に選択するS41(図14参照)を含んでセル傾斜補正領域設定工程が構成されており、制御装置74、S11、S12、S41を含んで、セル傾斜補正領域設定手段が構成されている。このように、グループ2〜グループ6に割り当てられたセル24をセル傾斜補正領域102に設定して、体圧が作用して傾斜していると推測されるセル24を特定することによって、効率的なせん断力の解消が可能とされている。
【0081】
加えて、セル24の圧抜と再圧入が、作用している体圧の小さなグループ2から順に行なわれるようになっている。図13(a)に示したように、天部マット20は、使用者の体圧が作用することにより凹状に変形されており、セル傾斜補正領域102の中央エリアに位置するセル24は、比較的及ぼされている体圧が大きいのに対して、外周エリアに位置するセル24は、比較的及ぼされている体圧が小さい。そこで、及ぼされている体圧が小さなグループ2のセル24から圧抜と再圧入を行なうことにより、セル傾斜補正領域102の外周エリアに位置するセル24から中央エリアに位置するセル24に向けて傾斜補正を行なうことが出来る。そして、セル圧抜再圧入工程の初期段階において傾斜補正が行われる、グループ2に割り当てられてセル傾斜補正領域102の外周エリアに位置するセル24の外側のセル24(図13におけるセル24a)は、体圧が殆ど作用していないことから、殆ど傾斜が生じていない。そこで、グループ2に割り当てられたセル24は、外側のセル24の傾斜の影響を殆ど受けることなく、圧抜と再圧入によって、確実に直立状態にして、天部マット20へのせん断力を解消することが出来る。そして、グループ2に割り当てられて、セル傾斜補正領域102の外周エリアに位置するセル24の傾斜を解消した後に、内側に位置するグループ4に割り当てられたセル24(図13のセル24c)の圧抜と再圧入を行ない、グループ6に割り当てられたセル24までセル傾斜補正領域102の外周エリアに位置するセル24から順に圧抜と再圧入を行なうことによって、各セル24の圧抜と再圧入を、外側に位置するセル24の傾斜の影響を受けることなく行なうことが出来る。これにより、セル傾斜補正領域102の全てのセル24の傾斜を確実に解消して、天部マット20延いては使用者へのせん断力を確実に解消することが出来る。
【0082】
次に、本発明の第二の実施形態としてのマットレスおよびその制御方法について説明する。第二の実施形態は、前記第一の実施形態における体圧分散制御(S1)および背抜き制御(S2)(図9参照)の処理内容が異なるのみであり、マットレスの構造は同一のものであることから、前記第一の実施形態と同一のものについては同一の符号を用いて説明する。
【0083】
先ず、第二の実施形態における制御装置74のROM78には、図15に示す、セル24の内圧(Pc)と、セル24に加わる体圧(Pb)と、セル24の高さ(H)との関係が、表2に示すセル内圧/高さ関係テーブルとして記憶されている。なお、図15および表2において、体圧中の「pb」、内圧中の「pc」、高さ中の「h」は所定の定数値である。図15における体圧Pb1〜Pb3は、Pb3>Pb2>Pb1である。図15から明らかなように、セル24は、内圧(Pc)が同じでも、及ぼされる体圧(Pb)が異なれば高さ(H)が異なる。即ち、同じ内圧(Pc)でも、体圧(Pb)が大きい場合には高さ(H)は小さく、体圧(Pb)が小さい場合には高さ(H)は大きくなる。このようなセル内圧/高さ関係テーブルは、予め実測等によって得られたデータから作成される。
【0084】
【表2】

【0085】
本実施形態における体圧分散制御(S1、図9参照)を、図16に示す。制御装置74のCPU76は、先ず、S51において、体圧測定工程を実施する。体圧測定工程において、CPU76は、体圧センサ88から、セル24に加わる体圧(Pbn)を測定する。
【0086】
次に、S52において、CPU76は、セル高さ取得工程を実施する。セル高さ取得工程において、CPU76は、セル24の目標高さ(Ht)を設定する。目標高さ(Ht)は、例えば、セル24に及ぼされる体圧(Pbn)と、該体圧(Pbn)に対応する目標高さ(Ht)を予めデータマップとしてROM78に記憶しておき、該データマップを用いて、S51で得られた体圧(Pbn)に対応する目標高さ(Ht)を取得する等して設定される。このように、本実施形態においては、ROM78とS52を含んで、セル高さ取得手段が構成されている。
【0087】
次に、S53において、CPU76は、目標内圧設定工程を実施する。目標内圧設定工程において、CPU76は、表2に示したセル内圧/高さ関係テーブルに基づいて、S52において設定した目標高さ(Ht)と、S51において測定した体圧(Pbn)に対応する目標内圧(Pct)を取得して設定する。なお、セル内圧/高さ関係テーブル内に測定値が存しない場合には、測定値に近い値を使用する。例えば、S52において目標高さ(Ht)が7h(mm)に設定されて、S51において測定された体圧(Pbn)が2pb(mmHg)であった場合には、表2に示したセル内圧/高さ関係テーブルに基づいて、目標内圧(Pct)=15pc(kPa)を取得して設定する。このように、本実施形態においては、ROM78とS53を含んで、目標内圧設定手段が構成されている。
【0088】
次に、S54において、CPU76は、内圧制御工程を実施する。内圧制御工程において、CPU76は、駆動回路82を通じてセル24の内圧を、S53で設定した目標内圧(Pct)となるように調節する。即ち、圧力計68によってセル24の内圧を測定し、得られたセル24の内圧(Pcn)が目標内圧(Pct)よりも低い場合には、セル24の流体室42にポンプ66から空気を送入して加圧する。一方、セル24の内圧(Pcn)が目標内圧(Pct)よりも高い場合には、排気バルブ64を開放してセル24の流体室42を大気中に連通して減圧する。
【0089】
続いて、CPU76は、S55において、セル24の現状の体圧(Pbn+1)を測定し、S51で測定した時点での体圧(Pbn)との差がΔPbt以上か否かを判定する。即ち、例えばセル24の高さが変化することにより、使用者の体圧分布が変化することから、セル24に及ぼされる現状の体圧(Pbn+1)が、初期のS51の時点で測定した体圧(Pbn)から大きく離れる可能性があり、初期の体圧(Pbn)に基づいて設定された目標内圧(Pct)では、現状の体圧(Pbn+1)が作用している状態下で目的高さ(Ht)を実現できなくなるおそれがある。
【0090】
そこで、S55において、CPU76は、セル24の内圧を調節した結果の現状体圧(Pbn+1)と初期の体圧(Pbn)の差が、予め設定した所定のΔPbt以上か否かを判定する。なお、ΔPbtは、例えば目標高さ(Ht)を実現出来ない程度の圧力差を実測等により求めて予め固定値として設定しておいても良いし、各セル24毎に、初期の体圧(Pbn)の2/10等、動的に決定する等しても良い。そして、現状体圧(Pbn+1)と初期の体圧(Pbn)の差がΔPbt以上(S55=Yes)の場合には、S56において、S53と同様に、セル内圧/高さ関係テーブル(表2参照)から、現状体圧(Pbn+1)で目標高さ(Ht)を実現する目標内圧(Pct+1)を再度取得して再設定して、S57に進む。一方、現状体圧(Pbn+1)と初期の体圧(Pbn)の差がΔPbt以上でない(S55=No)場合には、S57に進む。
【0091】
次に、S57において、CPU76は、圧力計68によってセル24の内圧を測定して、その測定結果に基づいて、セル24の内圧(Pcn)が目標内圧(Pct)になったか否かを判定する。セル24の内圧(Pcn)が目標内圧(Pct)になっていない場合には、S54以降の処理を繰り返す。一方、セル24の内圧(Pcn)が目標内圧(Pct)になった場合は、処理を終了する。
【0092】
以上のようにして、セル24の高さが目標高さ(Ht)に設定される。このようなセル24の高さ制御を全てのセル24について実施する。その結果、天部マット20が使用者の体表面に沿う形状とされて、より広い面積で使用者の体を支持することにより、体圧を分散することが出来る。
【0093】
このような体圧分散制御(S1、図9参照)を完了した後に、CPU76は、傾斜しているセル24の傾斜を解消する背抜き制御(S2)を実施する。図17に、背抜き制御を示す。先ず、CPU76は、S61において、全ての各セル24について、隣接する8つのセル24との高さの差を算出して、その中の最大値を記憶する。図18に例えば頭部が載置されているセル24を例示するように、各セル24の右下に記載されている数字が当該セル24の高さ(mm)、各セル24の中央に記載されている「ΔX」の「X」が隣接するセル24との高さの差の最大値である。なお、図18中、セル24の高さ中の「h」は定数値であり、高さの差の最大値(「ΔX」)においては、図面を見易くするために省略している。
【0094】
そして、CPU76は、S62において、隣接するセル24との高さの差の最大値(図18中のΔX)が、予め設定した閾値以上のセル24を、セル傾斜補正領域102として設定する。例えば本実施形態においては、予め設定した閾値がΔ2に設定されており、隣接するセル24との高さの差の最大値がΔ2以上のセル24が、図18において点線で囲んだセル傾斜補正領域102に設定される。このように、本実施形態においては、セル24に及ぼされる体圧を測定するS51と、測定された体圧に基づいて目標高さを設定するS52、およびS62を含んで、セル傾斜補正領域設定工程が構成されていると共に、制御装置74、S51、S52、S62を含んで、セル傾斜領域設定手段が構成されている。即ち、セル傾斜補正領域102には、使用者の体圧が及ぼされたセル24が選択されており、セル傾斜補正領域102は、全体として中央が最も窪んだ凹状に変形されることから、セル傾斜補正領域102の外周エリアは、隣接するセル24との高さの差の最大値が比較的小さく、セル傾斜補正領域102の中央エリアは、高さの差が比較的大きくなっている。なお、セル傾斜補正領域102を設定するに際して、隣接するセル24との高さの差の最大値が閾値以上のセル24を特定した後に、最大高さ(図18においては12h)を有するセル24は、人体が載っていないものとして、セル傾斜補正領域102から外す工程を設けても良い。
【0095】
次に、CPU76は、S63において、セル傾斜補正領域102に設定したセル24のうち、隣接するセル24との高さの差の最大値が最も小さいセル24を1つ選択(例えば、図18におけるセル24a)する。なお、隣接するセル24との高さの最大値が等しいセル24が複数存する場合には、例えばラスタ走査順に選択しても良しい、内圧を測定して内圧が高いものや低いものから順に選択する等しても良い。そして、CPU76は、S64において、選択したセル24のセル駆動バルブ56を開放すると共に、排気バルブ64を開放して、選択したセル24の内圧を所定量だけ圧抜する。これにより、セル24が天部マット20から一旦離れて、傾斜が解消される。その後、CPU76は、S65において、排気バルブ64を閉鎖すると共に、給気バルブ62を開放して、圧抜前の内圧になるまでポンプ66からセル24に空気を送入してセル24を再圧入する。これにより、選択されたセル24が、傾斜が解消された直立状態で天部マット20に接触して、再び天部マット20を支持する。
【0096】
そして、CPU76は、S66において、選択したセル24をセル傾斜補正領域102から除外して、S67において、セル傾斜補正領域102のセル24の数が0になったか否かを判定し、セル傾斜補正領域102のセル24の数が0でない場合(S67=No)には、残りのセル傾斜補正領域102のセル24について、S63以降の処理を繰り返す。そして、セル傾斜補正領域102の全てのセル24の圧抜と再圧入が完了して、セル傾斜補正領域102のセル24の数が0になった場合(S67=Yes)には、CPU76は、背抜き制御(S2、図9参照)を完了する。
【0097】
第二の実施形態に従う構造とされたマットレス10およびその制御方法によれば、セル24の高さを調節するに際して、表2に示したセル内圧/高さ関係テーブルから、セル24に及ぼされる体圧(Pbn)をも考慮して、目的とする高さ(Ht)を実現する目標内圧(Pct)を設定するようにした。これにより、セル24の高さを目的とする目標高さ(Ht)に精度良く確実に設定することが出来て、より優れた使用感や体圧分散効果を得ることが出来る。特に、追加内圧制御工程(S55、S56)によって、セル24の内圧を調節する過程で、内圧調節前に及ぼされていた体圧(Pcn)と現状の体圧(Pcn+1)との差をチェックし、差が大きい場合には目標内圧(Pcn+1)を再設定するようにした。これにより、セル24に及ぼされる体圧の変化に追従して目標内圧を変更設定することによって、セル24を目標高さ(Ht)により正確に設定することが出来る。
【0098】
そして、背抜き制御(図17参照)において、隣接するセル24との高さの差の最大値が閾値以上のセル24をセル傾斜補正領域102に設定するようにした。これにより、セル傾斜補正領域102を閾値以上の傾斜が生じているセル24に限定して、効率的なせん断力の解消を行うことが出来る。更に、セル傾斜補正領域102に設定されたセル24のうち、隣接するセル24との高さの差の最大値が小さいセル24から順に圧抜と再圧入が行われるようになっている。セル傾斜補正領域102は中央に窄んだ凹形状とされていることから、セル傾斜補正領域102の外周エリアに位置するセル24は、隣接するセル24との高さの差の最大値が比較的小さい。従って、隣接するセル24との高さの差の最大値が小さいセル24から順に圧抜と再圧入を行うことにより、セル傾斜補正領域102の外周エリアに位置するセル24から傾斜の補正を行うことが可能とされており、外側に位置するセル24の影響を受けることなく、傾斜を解消して直立状態に設定することが出来る。このように、本実施形態においては、S63〜S65を含んでセル圧抜再圧入工程が構成されており、制御装置74、S63〜S65を含んでセル圧抜再圧入制御手段が構成されている。そして、本実施形態によれば、表2に示したセル内圧/高さ関係テーブルに基づいて、セル24の内圧のみならず、セル24に及ぼされる体圧をも考慮してセル24の高さが設定されていることから、セル24の高さをより正確に得ることが出来て、セル傾斜補正領域102をより精度良く設定することが出来る。
【0099】
なお、前記第二の実施形態においては、隣接するセル24との高さの差に基づいてセル傾斜補正領域102が設定されていたが、例えば、本発明の第三の実施形態として、隣接するセル24との高さの差に代えて、隣接するセル24に加えられた体圧差に基づいて、セル傾斜補正領域102を設定するようにしても良い。本実施形態は、前記第二の実施形態におけるセル24の高さをセル24に加えられた体圧に代えて、同様の処理手順で実現することが可能である。具体的には、図17におけるS61において、全セル24について、体圧センサ88の測定結果から加えられている体圧を測定して、隣接する8つのセル24との体圧差の最大値をRAM80に記憶する。次に、S62において、隣接するセル24との体圧差の最大値が、予め設定した閾値以上のセル24をセル傾斜補正領域102として設定する。なお、閾値としては、例えば実測データに基づいて、セル24が天部マット20にせん断力を及ぼす程度に傾斜を生じる体圧差等が適宜に採用され得る。そして、セル傾斜補正領域102に設定されたセル24について、前記第二の実施形態と同様にS63以降の処理を行って圧抜と再圧入を行うことにより、セル24の傾斜を解消することが出来る。このように、本実施形態においては、隣接するセル24との体圧差に基づいてセル傾斜補正領域102を設定するS61、S62を含んでセル傾斜補正領域設定工程が構成されていると共に、制御装置74およびS61、S62を含んで、セル傾斜領域設定手段が構成されている。また、前記第二の実施形態と同様、S63〜S65を含んでセル圧抜再圧入工程が構成されており、制御装置74、S63〜S65を含んでセル圧抜再圧入制御手段が構成されている。
【0100】
第三の実施形態においては、隣接するセル24との体圧差に基づいて、セル傾斜補正領域102が設定される。セル傾斜補正領域102は使用者の体表面に沿う凹状に変形されて、使用者の体圧が分散されていることから、セル傾斜補正領域102の外周エリアに位置するセル24は、及ぼされる体圧が比較的小さく、隣接するセル24との体圧差の最大値が比較的小さい。そこで、隣接するセル24との体圧差の最大値が小さいセル24から順に圧抜と再圧入を行うことにより、セル傾斜補正領域102の外周エリアに位置するセル24から傾斜の補正を行うことが可能とされており、外側に位置するセル24の影響を受けることなく、傾斜を解消して直立状態に設定することが出来る。そして、本実施形態によれば、セル傾斜補正領域102を設定するに際して、体圧センサ88の実測値を用いることにより、傾斜が生じているセル24をより正確に特定することが出来る。
【0101】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、セルの具体的形状はあくまでも例示であって、各種の形状が適宜に採用可能である。従って、セルとしては、前記実施形態の如き2段形状ではなく、単一の袋状体のもの等も採用可能である。
【0102】
また、前記実施形態においては、21個全てのセルユニット50が、ポンプ装置58に設けられた1つの給気バルブ62やポンプ66、排気バルブ64を共通して用いるようにされていたが、例えば、各セルユニット50毎に給気バルブやポンプ、排気バルブを設けて、各セルユニット50間で同時に作動させても良い。更に、各セル24に設けられたセル駆動バルブ56に代えて、各セル24毎に給気バルブやポンプ、排気バルブを設ける等しても良い。
【0103】
更にまた、前記各実施形態における背抜き制御(図14、図17参照)においては、セル傾斜補正領域102の外周エリアに位置するセル24から、1つずつ圧抜と再圧入が行われるようにされていたが、例えば複数のセル24の圧抜と再圧入を同時に行なう等しても良く、複数のセル24のセル駆動バルブ56を同時に開放および閉鎖することによって、圧抜と再圧入を同時に行うことが可能である。例えば、前記第一の実施形態において、グループ2〜グループ6の同一グループに割り当てられたセル24の圧抜と再圧入を同時に行ったり、前記第二の実施形態および前記第三の実施形態において、隣接するセル24との高さの差又は体圧差の最大値が同一のセル24の圧抜と再圧入を同時に行う等しても良い。
【0104】
また、前記各実施形態においては、マットレス10の形状を使用者の体表面に沿う形状に変形させる体圧分散制御(S1、図9参照)を実施した後に、セル24の傾斜を解消する背抜き制御(S2)が実施されるようになっていたが、これら体圧分散制御と背抜き制御に各別にタイマを設けて異なる時間間隔で実行したり、異なる実行契機を設定することによって、互いに異なるタイミングで実施するようにしても良い。
【0105】
更にまた、各実施形態における体圧分散制御(S1)は、本発明において必ずしも必須のものではなく、あくまでも例示である。例えば、前記第一の実施形態の体圧分散制御において、複数のセル24のグループ分けとして、マットレス10に設けられた全てのセル24に加わる体圧を測定して、相対的に体圧の大きなセル24上には臀部や頭部、相対的に体圧の小さなセル24上には腕部や脚部が存するものと推測して、体圧の分布から頭部や脚部等の人体の各部位にグループ分けして内圧調節する等しても良い。また、前記第二の実施形態および第三の実施形態の体圧分散制御においては、セルの内圧(Pc)と、セルに加わる体圧(Pb)と、セルの高さ(H)との関係が、予めセル内圧/高さ関係テーブル(表2参照)としてROM78内に記憶されていたが、セル内圧/高さ関係テーブルに代えて、これらの関係を所定の計算式でROM78内に記憶しておいて、必要に応じて目標内圧(Pct)を算出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0106】
10:マットレス、20:天部マット、24:セル、28:底部マット(基体)、42:流体室、56:セル駆動バルブ、58:ポンプ装置、62:給気バルブ、64:排気バルブ、66:ポンプ、68:圧力計、74:制御装置、88:体圧センサ(体圧測定手段)、102:セル傾斜補正領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を支持する基体の体圧作用面に複数のセルが配設されていると共に、該セルの内部に形成された流体室の圧力を調節する圧力調節手段と、該セルに加わる体圧を測定する体圧測定手段が設けられているマットレスの制御方法であって、
前記体圧測定手段により各前記セルに加わる体圧を測定する体圧測定工程と、
測定された各前記セルに加わる体圧に基づき、前記セルの傾斜の補正を行うセル傾斜補正領域を設定するセル傾斜補正領域設定工程と、
設定された前記セル傾斜補正領域の外周エリアから中央エリアに向かって順次に各前記セルの圧抜と再圧入を前記圧力調節手段を用いて行うセル圧抜再圧入工程とを含むことを特徴とするマットレスの制御方法。
【請求項2】
前記セル傾斜補正領域設定工程において、前記セルに加わる体圧が中央から周囲に向かって小さくなっている領域をセル傾斜補正領域に設定する請求項1に記載のマットレスの制御方法。
【請求項3】
前記セル傾斜補正領域設定工程において、隣接する前記セルとの体圧差又は体圧から導き出される高さの差の最大値が所定値以上となる前記セルを前記セル傾斜補正領域に設定する一方、
前記セル圧抜再圧入工程において、前記最大値が小さいセルから順次に圧抜と再圧入を行う請求項1に記載のマットレスの制御方法。
【請求項4】
予め記憶された前記セルの内圧と、前記セルに加わる体圧と前記セルの高さとの関係から、前記体圧測定工程で測定された前記セルの体圧から前記セルの高さを求めるセル高さ取得工程を含む請求項3に記載のマットレスの制御方法。
【請求項5】
人体を支持する基体の体圧作用面に複数のセルが配設されていると共に、該セルの内部に形成された流体室の圧力を調節する圧力調節手段と、該セルに加わる体圧を測定する体圧測定手段が設けられているマットレスにおいて、
前記体圧測定手段により測定された各前記セルに加わる体圧に基づき、前記セルの傾斜の補正を行うセル傾斜補正領域を設定するセル傾斜補正領域設定手段と、
設定された前記セル傾斜補正領域の外周エリアから中央エリアに向かって順次に各前記セルの圧抜と再圧入を前記圧力調節手段を用いて行うセル圧抜再圧入制御手段と
を含むことを特徴とするマットレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−70912(P2013−70912A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213886(P2011−213886)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】