マルチノズルを有する連続吐出型インクジェット装置
【課題】不規則に飛翔する液滴による電極汚染を防ぐインクジェット装置を提供する。
【解決手段】直進液滴回収装置と偏向液滴回収装置を持ち、直進液滴回収装置はノズル下方の液滴飛翔方向と平行に移動し、回収口とノズル口が密着一致する構成とする。この状態で吐出開始および停止を行うことで、不規則飛翔液滴を外部に漏らすことなく回収することができる。さらに、直進液滴回収装置は洗浄液供給装置を有し、ノズル近傍の吐出液体の詰まりや固着を洗浄除去する。
【解決手段】直進液滴回収装置と偏向液滴回収装置を持ち、直進液滴回収装置はノズル下方の液滴飛翔方向と平行に移動し、回収口とノズル口が密着一致する構成とする。この状態で吐出開始および停止を行うことで、不規則飛翔液滴を外部に漏らすことなく回収することができる。さらに、直進液滴回収装置は洗浄液供給装置を有し、ノズル近傍の吐出液体の詰まりや固着を洗浄除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット装置に関わり、特にマルチノズルを有する連続吐出型インクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続吐出型インクジェット装置は、長寿命や高い信頼性が必要である産業用マーキングや各種材料の塗布装置として広く利用されている。
【0003】
現在、産業用マーキング装置に用いられている連続吐出型インクジェット装置の多くは、単一の吐出ノズルから吐出される液滴の偏向量を制御して画像等を形成する方式であるため、その利用範囲は限られている。そのような中で、長寿命や高い信頼性を有する連続吐出型インクジェット装置の特徴を、限られた大きさのマーキング技術分野に止めることなく、広領域への一括マーキングによるスループット向上を実現し、また大面積インク塗布やパターニングといった幅広い産業分野で活用することが期待されている。
【0004】
ここで、印字領域の拡大や高スループット実現のためには、ノズルを複数設けるマルチノズル化が必須である。更に、マルチノズルから吐出した液滴を任意位置に着弾させるためには、複数の飛翔液滴を個々に任意のタイミングで帯電する帯電電極と、帯電された液滴を電界の付与により同時に偏向する偏向電極等のマルチノズル対応の構成が必要となる。このとき、より高解像度のマーキングに対応するためには液滴列間隔をできるだけ狭める必要があり、これによりノズルや各電極の構成は特に複雑な構成となる。
【0005】
連続吐出型インクジェット装置は、ノズルから液滴を吐出した直後に液滴が直進飛翔せず前後左右にぶれる挙動がみられる。同様な吐出方向のブレは液滴停止時にも見られる。これは、液滴吐出開始・停止時には液圧が低下し液滴吐出速度が少ない領域を経るため、吐出力の低下や外乱の影響により液滴飛翔の直進性が確保されないためと考えられる。また、吐出開始に際し、ノズル内流路の残存空気が十分に除かれていない場合にも同様の現象が発生する。さらに、同様の現象はノズルが詰まったりノズル近傍に異物が固着したりすることでも発生する。
【0006】
このように、吐出液滴が一時的にでも直進性を失うことで、直後に設けられた帯電電極や偏向電極表面に付着し悪影響をもたらす電極汚染が発生する。電極汚染は、液滴に所望の帯電供給や偏向電界提供ができなくなり正確な液滴ハンドリングができなくなるだけでなく、例えば数KV以上の高圧が印加される偏向電極間や偏向電極と帯電電極を架橋するような付着をした場合、リークによりシステムが作動しなくなるだけでなく、火災や感電などの事故原因ともなりうる。これらは、シングルノズルおよびマルチノズルに限らず発生するが、特にマルチノズルにおいては、(1)ヘッドが大きく液滴が安定に直進する時間が長い、(2)ノズル数が多く詰まり発生率が高い、(3)ノズル間隔が狭いため1つが直進性を失うとその液滴列の影響で近傍液滴列の直進性も低下する、(4)マルチノズル対応のため複数の帯電電極が微細ピッチで配置されており、かつ電極構成がシングルノズルに比べ混み合っているために電極汚染率が高いといった課題が懸念される。また、本方式におけるインクジェット装置用液体では特に金属のような非浸透性の材料面に瞬時に着弾し強固に固着する特徴があるため、汚染した電極の洗浄は容易ではなく非常に煩雑な作業となる。
【0007】
ここで、特許文献1では、ノズル直近に帯電電極とともに広い開口部を有する回収用の室を設け、吐出停止時に不規則飛翔液滴が発生した場合、帯電電極を退避させると同時に開口部を液滴飛翔領域に移動し不規則飛翔液滴を物理的に遮断して、吐出停止時の液滴電極に対する汚染を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭50−23936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されている方式は、吐出停止時における液滴飛翔からの電極汚染防止には有効であるが、例えば吐出開始直後の不規則飛翔液滴に対しては電極汚染防止策としては機能できない。すなわち、吐出開始時の不規則飛翔液滴を開口部を有する室で回収しながら直進性を確保できるまで待っても、開口部が退避し帯電電極が定位置に移動する際に開口部の端部や壁面への直進液滴の衝突は避けられず、これにより派生した液滴しぶきによりさらに電極を汚染してしまう。また、不規則飛翔液滴がノズル詰まりやノズルへの異物付着による場合には問題を解消することができない。
【0010】
マルチノズルを有するインクジェット装置においては2つの印字方法がある。その第1は、液滴への所望の帯電量を全ての液滴に荷電し、偏向量を制御しながら偏向液滴所定位置へ着弾マーキングさせるマルチ偏向によるものである。しかしこの方法は電極構成および各信号の制御が非常に複雑になるだけでなく、偏向飛翔液滴の着弾によるマーキングのため精度確保が難しい課題がある。
【0011】
第2は、印字に必要な液滴のみを帯電させずに直進させて印字を行い、他の液滴を帯電偏向して回収するバイナリ偏向によるものである。この方法では、帯電量の詳細な制御が必要なく電極構成および制御方法を比較的簡素化でき、かつ直進液滴を使うため着弾精度も向上するメリットがある。
【0012】
しかしながら、偏向液滴回収装置はバラツキのある偏向飛翔液滴を回収するため偏向経路に特化した形状であり、液滴飛翔開始時や停止時の不規則飛翔液滴、および信号印加トラブルなどにより偏向されない直進飛翔液滴を、印字面を汚染しないように回収するには回収が困難であった。これに対応するため回収口を拡大する構成なども提案されているが、構成が微細で複雑になる課題がある。さらに、偏向液滴回収装置は、回収用の開口部をノズル近傍まで移動し、ノズル口に開口部を密着させる構成にするのは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、複数個のノズルから一連の液滴からなる液滴列を同時に吐出するマルチノズルヘッドと、前記ノズルから吐出された飛翔液滴を任意の帯電量に帯電する前記液滴列近傍に設けた帯電電極と、帯電された液滴を電極間に形成した電界で偏向して回収する偏向電極を有するインクジェット装置において、少なくとも吐出開始または吐出終了時に直進する液滴を回収する直進液滴回収装置と、偏向した液滴を回収する偏向液滴回収装置を、前記ノズルと前記帯電電極および偏向電極の液滴吐出方向下流に各々独立して設け、前記直進液滴回収装置を液滴吐出方向に対し平行方向および直交方向に移動する移動装置を設けたことを特徴とする。
【0014】
また、直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置は、吐出液滴を回収する回収口とこれに連続する回収通路とを有することを特徴とする。
【0015】
また、直進液滴回収装置は、液滴吐出方向と平行にノズルヘッド方向に近接移動した時に、前記ノズルヘッドのノズルと前記直進液滴回収装置の回収口位置が一致することを特徴とする。
【0016】
また、直進液滴回収装置は、液滴吐出方向と平行にノズルヘッド方向に近接移動した時に、前記ノズルヘッドのノズルと前記直進液滴回収装置の回収口位置が密着することを特徴とする。
【0017】
また、帯電電極および偏向電極の少なくとも一部は、前記直進液滴回収装置の回収口が前記ノズルに密着し、あるいは前記直進液滴回収装置が液滴吐出方向下流領域を液滴吐出方向と平行にノズルヘッドと離隔する方向に移動する際に、前記直進液滴回収装置との干渉を避けて前記マルチノズルヘッドの吐出方向下流領域から移動退避することを特徴とする。
【0018】
また、直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置の回収口は、複数個のノズルから同時に液滴を回収する細長いスリット状の開口形状を持つことを特徴とする。
【0019】
また、直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置の少なくとも一方に回収流路内に液滴の有無を検出する液滴センサを有し、該液滴センサにより液滴回収の有無を判断することを特徴とする。
【0020】
また、直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置の回収流路は、少なくとも表面に導電性材料層が設けられ、該導電性材料層が接地されていることを特徴とする。
【0021】
また、直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置は回収流路内の液滴状態を観察可能な透明材料から形成されていることを特徴とする。
【0022】
また、直進液滴回収装置は、前記ノズルに洗浄液を供給する洗浄液供給装置を有することを特徴とする。
【0023】
さらに、直進液滴回収装置が直進液滴を回収しながらマルチノズルヘッドにおけるノズルから離れて位置し、前記帯電電極、偏向電極は前記ノズル吐出方向下流領域外に退避している状態において、前記ノズルから吐出される液滴形状および液滴切断位置形状を観測する液滴観測装置を設け、前記観測情報をもとに液滴形成条件を変更する制御装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、マルチノズルヘッドと、前記ノズルから吐出された飛翔液滴を帯電する帯電電極と、偏向電極を有するインクジェット装置において、少なくとも吐出開始または吐出終了時に直進する液滴を回収する直進液滴回収装置と、偏向した液滴を回収する偏向液滴回収装置を、前記ノズルと前記帯電電極および偏向電極の液滴吐出方向下流に各々独立して設け、前記直進液滴回収装置を液滴吐出方向に対し平行方向および直交方向に移動する移動装置を設けたことにより、インクジェットヘッドノズルからの液滴吐出時に発生する不規則飛翔液滴による各電極表面の汚染を確実に防止することができる。
【0025】
また、ノズルにおける異物詰まりや付着物などの洗浄も同時に行うことができ、メンテナンス性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明実施例におけるインクジェット装置の動作プロセスを示す説明図。
【図2】本発明実施例の回収装置と電極群を示す概略図。
【図3A】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図3B】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図3C】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図3D】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図3E】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図3F】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図3G】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図3H】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図4】本発明実施例の回収装置と電極群を示す斜視図。
【図5A】本発明実施例の電極群の退避方法を示す斜視図。
【図5B】本発明実施例の電極群の退避方法を示す斜視図。
【図5C】本発明実施例の電極群の退避方法を示す斜視図。
【図5D】本発明実施例の電極群の退避方法を示す斜視図。
【図5E】本発明実施例の電極群の退避方法を示す斜視図。
【図5F】本発明実施例の電極群の退避方法を示す斜視図。
【図6】本発明実施例のインクジェット装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施例を図面について説明する。
【実施例】
【0028】
本発明の説明にあたり、バイナリ偏向マルチノズルを有する連続吐出型インクジェット装置を実施例として、以下図面に従って説明する。
【0029】
図1に本発明のバイナリ偏向マルチノズルを有する連続吐出型インクジェット装置におけるマルチノズルヘッド、帯電・偏向電極、回収装置の概略構成、および液滴飛翔状態と各構成の可動状態の概略を示す。
【0030】
本発明実施例における連続吐出型インクジェット装置は、液滴9を吐出するノズル7を有するマルチノズルヘッド1、各ノズル毎に形成した液滴を個別に帯電する複数の帯電電極2、帯電した液滴を電界により偏向する接地した偏向電極3および高圧偏向電極4、高圧偏向電極4の電界の帯電電極2への影響を防ぐ接地された遮蔽電極5、直進した液滴9を回収する回収流路11を有する直進液滴回収装置10、および偏向した液滴9を回収する回収流路13を有する偏向液滴回収装置12を備えている。ここで、直進液滴回収装置10は、図示しない移動装置により液滴吐出方向に対し平行方向および直交方向に移動できるように保持される。帯電電極2は絶縁材料6を介して偏向電極3に取り付けられている。
【0031】
まず、液滴吐出開始時に発生が懸念されるマルチノズルヘッド1からの不規則飛翔液滴による電極汚染を防止しながら吐出を行う構成を、図1に示す動作ステップ(a)〜(f)の順に説明する。
【0032】
液滴吐出直前は直進液滴回収装置10の回収口Pはマルチノズルヘッド1のノズル7に密着一致している状態とする。このとき、直進液滴回収装置10の回収口Pはマルチノズルヘッド1のノズル7およびその周辺が密着できるように、回収口側口径がノズル7口径よりも大きいことが必要である。
【0033】
また、マルチノズルを有するインクジェット装置の場合にはノズル7が複数あるが、直進液滴回収装置10の回収口Pは例えばスリット状の開口形状を有し、液滴列を一括して回収する構成とする。直進液滴回収装置10の回収口Pとノズル7付近が密着し液漏れが発生しないように、直進液滴回収装置10の回収口P周りには例えばゴム部材のようなシール部材を設ける。ここで帯電電極2および偏向電極3は、直進液滴回収装置10の移動時に干渉しないように印字時の定位置である液滴列近傍から退避している必要がある。
〔電極群の退避〕
図1では、液滴偏向方向と反対側に位置する帯電電極2と接地側の帯電電極3のみが、ステップ(a)〜(c)に示す様にマルチノズルヘッド1側に退避する構成としている(図3A)。この他に、帯電電極2、3と偏向電極4からなる電極群18には図3B〜図3H、図5A〜図5Fに示すように、種々の退避構造が考えられる。図2は回収装置と電極群を示す概略図である。図4は回収装置と電極群を示す斜視図である。
【0034】
例えば電極群18を同時にヘッド上方に退避させてもよく(図3B)、ヘッド下方に退避させてもよい(図3C、図3D)。この場合は、退避スペースが少なくて済む。また、電極接地定位置に対して90℃回動して退避させてもよく(図3E、図3F、図3G、図3H)、この場合はピボット構造により構成が簡単になる。さらに、退避方向は手前もしくは奥側にスライドしてもよく(図5A、図5B、図5C、図5D)、一部固定された部分を軸としてノズル列方向手前あるいは奥側に回転退避する構成であってもよい(図5E、図5F)。
【0035】
このように電極の退避位置および退避方法は直進液滴回収装置10の移動に干渉しなければ特に限定されないが、液滴の帯電および偏向時には電極との間隔の影響が大きく寄与するので、図3A、図5A、図5B、図5Eのように片側のみの電極群18が移動するか、または図5C、図5D、図5Fのように電極間の位置関係を保った状態で退避する方がより好ましい。
〔液滴吐出〕
図1のステップ(b)で、マルチノズルヘッド1のノズル7より液柱8を吐出させ、振動により液滴9を形成する。液柱8および液滴9は直進液滴回収装置10の回収口P及び回収流路11内で形成されるため、初期に発生する不規則飛翔液滴は電極等を汚染することなくすべて回収される。このとき直進液滴回収装置10の回収流路11内は図示しないポンプにより負圧15を与える。また、直進液滴回収装置10はプラスチック等の透明部材により構成されており、回収流路11内を目視的に確認して液滴飛翔の直進性を確認する事が出来る。
【0036】
次に、ステップ(c)で、初期吐出による液滴9を十分に回収し直進性を確保した後に、直進液滴回収装置10を液滴列飛翔方向と平行に、マルチノズルヘッド1の吐出面から離れる方向に液滴9を回収しながら、偏向液滴回収装置12に隣接する位置まで離隔移動させる。このとき電極類はまだ退避位置にあり、それにより確保されたスペースに液滴形状、液滴切断位置、および切断形状を観測する液滴観測装置を移動設置することができる。インクジェット装置は観測された液滴形状情報に応じて、液圧、液速度、励振電圧、励振周波数、液体粘度などを調整して、液滴形状を最適化する制御装置を有する。
【0037】
次に、ステップ(d)で、直進液滴回収装置10の移動に伴い退避していた帯電電極2および偏向電極3を飛翔液滴列と平行な位置に移動させる。このとき、各液滴列の液滴切断位置が帯電電極2上に位置することが必要である。また、各液滴列は帯電効率向上とクロストーク防止のためマルチ帯電電極2の各帯電電極幅の中心を通る構成であることが好ましい。
【0038】
次にステップ(e)で、帯電電極2に電圧を印加して飛翔液滴9をすべて帯電し、同時に偏向電極3、高圧偏向電極4に電圧を印加して、液滴9をすべて偏向して偏向液滴14とし、直進液滴回収装置10から偏向液滴回収装置12による回収に移行する。このとき、偏向液滴回収装置12の回収流路13内は図示しないポンプにより負圧15が与えられる。また、マルチノズルヘッド1のノズル7からの複数液滴列(偏向後)を一括で回収できるようにその回収口は直進液滴回収装置10の回収口と同様にスリット状の開口形状であることが好ましい。
【0039】
ステップ(f)で、偏向液滴回収装置12に隣接した直進液滴回収装置10は回収対象である直進液滴がなくなったことを確認次第、偏向液滴回収装置12位置と反対側に退避する。これにより実際の印字や塗布に用いられる直進する液滴16の通過スペースを確保する。
【0040】
直進液滴回収装置10から偏向液滴回収装置12への回収の移行、またはその逆の回収の移行が確実に完了していることを確認するために、直進液滴回収装置10および偏向液滴回収装置12のいずれかの回収流路内またはその近傍に、液滴の有無を検知するセンサを設ける。Sは直進液滴回収装置10に設けられた液滴センサである。これによると、例えばマルチノズルの直進液滴をすべて偏向状態に移行する際に、一部の液滴列の偏向が不良であった場合に液滴センサSによりすべての液滴が偏向できていないことを検出でき、直進液滴回収装置10を退避させずに偏向不良液滴を回収して印字面の汚染を防ぐことが可能になる。
【0041】
液滴の検知に用いられる液滴センサSは、液滴の衝突衝撃、重量、粘度、熱、帯電など、いずれかの物理量を検知できるものとする。また、液滴センサSは単一でも複数設けていてもよい。また液滴センサSは、直進液滴回収装置10と偏向液滴回収装置12の両方に設けることが好ましいが、本実施例のようにどちらか一方にのみ設ける構成でもよい。
【0042】
また、直進液滴回収装置10、および偏向液滴回収装置12は、回収流路を含む液滴通過面が外界の影響により帯電した場合、液滴をひきつけ直進性を低下させることにより印字精度低下を招く原因となるので、少なくとも表層が導電性材料により構成されており、さらにその導電性材料層は接地状態であることが好ましい。上記(a)〜(f)のステップにそって、印字可能状態に移行することで、液滴吐出開始時の不規則飛翔液滴による電極汚染を防止することができる。
【0043】
また、不規則飛翔液滴による電極汚染は、液滴吐出停止時にも発生するが、これによる電極汚染を防止するには、上記した液滴化吐出開始時のステップの逆、すなわち図1の(f)から(a)のステップ順に沿って液滴吐出停止動作を行う。
〔直進液滴の回収〕
以下に、インクジェット装置の、直進液滴回収装置10の上記の吐出開始・停止に伴う不規則飛翔液滴による汚染防止以外の使用方法について記述する。
【0044】
帯電、偏向電圧信号のトラブルなどが発生して適正に液滴の帯電偏向がされない場合には液滴はすべて直進してしまい、偏向液滴回収装置12で液滴を回収することができず印字面を過剰の液滴付着により汚染してしまう。これを防止するために、正常印字中は退避して使用されない直進液滴回収装置10を、液滴通過領域に緊急移動して直進液滴を回収できるよう動作させることができる。
〔マルチノズルヘッドの洗浄〕
また、直進液滴回収装置10は負圧15により液滴を回収するだけでなく、洗浄液供給手段により洗浄液を供給することができる構成とする。前述した図1のステップ(a)において、マルチノズルヘッド1のノズル7と直進液滴回収装置10の回収口Pが密着した状態で洗浄液供給を行うと、ノズル詰まりや、ノズル近傍への異物付着を除去することができる。これにより、電極群を汚染する不規則飛翔液滴発生原因であるノズル詰まりや付着異物を除去できるだけでなく、洗浄時に洗浄液自体が近傍の電極群18を汚染することがない。このように、ノズルや電極群を分解する煩雑な作業を経ることなくノズルを洗浄することができるためメンテナンス性が向上する。洗浄液は印字用液体の希釈用溶媒を用いることが出来る。
【0045】
上記の洗浄工程において、洗浄液をノズル7からノズル内に供給するだけでなく、定期的に負圧を与えて洗浄液を回収する
洗浄液供給→負圧による洗浄液回収→洗浄液供給→負圧による洗浄液回収
というサイクルを繰り返すことで、より洗浄効果が高くなり短時間で少量の洗浄液で詰まりや異物付着の除去を実現できる。ここで、マルチノズルヘッド1はインクの流入路とは別に、過剰のインクや空気を排出するためのインク流出路を具備し、弁などで任意に開閉できる構成であることが好ましく、さらに洗浄工程時に洗浄液はノズル7からマルチノズルヘッド1のインク室内に逆流する状態となるので、洗浄液が流出路側に流れる構成であることが好ましい。
〔インクジェット装置〕
本発明のマルチノズル、回収装置及び電極を具備したインクジェットヘッド部22を搭載したインクジェット装置全体構成について、図6を用いて説明する。インクジェット装置は、インクジェット駆動部とインク濃度制御部と記録媒体搬送制御部からなる。
【0046】
インクジェット駆動部は、インクジェットヘッド部22および液体タンク33とともに、液滴吐出用の圧電素子に交流電圧を供給する交流電源37、帯電電極および偏向電極に電圧を供給する電極用電源23、インクジェットヘッド部22に液体を供給し回収する液体供給ポンプ36、液体回収ポンプ26およびそれらを制御するメイン制御装置27からなる。
【0047】
ここで、直進液滴回収装置10および偏向液滴回収装置12は液体回収ポンプ26を共有することが部材の低減、省スペース化の観点から好ましい。ただし、直進液滴回収装置10は液滴回収時、および洗浄時に洗浄液としての溶媒を供給する溶媒タンク31から溶媒を供給する際に同じ流路を利用するため、電磁弁40により流路をスイッチングする。
【0048】
インク濃度制御部は、マルチノズルヘッド1を有するインクジェットヘッド部22に供給する液体タンク33内の液体濃度を調整するものであり、液体タンク33内の液体濃度を測定する液体濃度測定手段30と、液体タンク33内の液体を希釈する溶媒を貯蔵する溶媒タンク31、溶媒タンク31の溶媒をインクジェット駆動部の液体タンク33に供給する溶媒供給ポンプ32およびそれらを制御するインク濃度制御装置29からなる。
【0049】
記録媒体搬送制御部は、記録媒体の搬送機構35および搬送制御装置34からなる。インクジェット駆動部のメイン制御装置27は、記録するパターンデータ28を受信すると、液体回収ポンプ26、液体供給ポンプ36、圧電素子駆動電源37、制御電圧電源23を制御することで、記録パターンデータ28に従って帯電電極信号電圧24を帯電電極2に、偏向電極信号電圧25を高圧偏向電極4に入力して液体吐出を制御する。液体吐出の制御は、帯電電極3の印加電圧条件を吐出ノズルごとに、制御することで行なわれる。
【0050】
メイン制御装置27は、記録媒体搬送制御部の搬送制御装置34と通信することで、印写記録媒体19のハンドリングを行う。さらに、メイン制御装置27は、インク濃度制御部のインク濃度制御装置29と通信を行い、液体タンク33内の液体濃度が既定の濃度であることを確認するとともに、既定濃度の液体をインクジェットヘッド部22に供給するように制御する。
【0051】
また、マルチノズルヘッド1のインク液滴形成領域に液滴観測装置17を設置し、得られた液滴情報をメイン制御装置27にフィードバックし、この情報を元に算出した適正な補正制御入力値を圧電素子に入力して、正常な液滴が均一に吐出するよう吐出安定化を図る。
【0052】
これら濃度制御方式、搬送制御方式およびインクジェットヘッド部の駆動制御などの詳細は、吐出する液体およびパターン記録条件により異なり、適正な条件設定が必要となる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
一般に、インクジェット装置は、着色インクをパターニングすることで、文字や画像形成などに用いられる。本発明の、マルチノズル連続吐出型インクジェット装置は、一般的インクジェット装置に比較して、高信頼性・高メンテナンス性を有した高安定な液滴吐出装置である。このため、本発明の装置は、マーキング分野だけでなく、高信頼性・高メンテナンス性・高安定性が要求される液体を利用した機能性インク塗布やパターニングが必要な電子機器などの製造装置にも応用が可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 マルチノズルヘッド
2 帯電電極
3 接地偏向電極
4 高圧偏向電極
7 ノズル
9、16 液滴
10 直進液滴回収装置
11、13 回収流路
12 偏向液滴回収装置
14 偏向液滴
17 液滴観測装置
18 電極群
22 インクジェットヘッド部
27 メイン制御装置
P 回収口
S 液滴センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット装置に関わり、特にマルチノズルを有する連続吐出型インクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続吐出型インクジェット装置は、長寿命や高い信頼性が必要である産業用マーキングや各種材料の塗布装置として広く利用されている。
【0003】
現在、産業用マーキング装置に用いられている連続吐出型インクジェット装置の多くは、単一の吐出ノズルから吐出される液滴の偏向量を制御して画像等を形成する方式であるため、その利用範囲は限られている。そのような中で、長寿命や高い信頼性を有する連続吐出型インクジェット装置の特徴を、限られた大きさのマーキング技術分野に止めることなく、広領域への一括マーキングによるスループット向上を実現し、また大面積インク塗布やパターニングといった幅広い産業分野で活用することが期待されている。
【0004】
ここで、印字領域の拡大や高スループット実現のためには、ノズルを複数設けるマルチノズル化が必須である。更に、マルチノズルから吐出した液滴を任意位置に着弾させるためには、複数の飛翔液滴を個々に任意のタイミングで帯電する帯電電極と、帯電された液滴を電界の付与により同時に偏向する偏向電極等のマルチノズル対応の構成が必要となる。このとき、より高解像度のマーキングに対応するためには液滴列間隔をできるだけ狭める必要があり、これによりノズルや各電極の構成は特に複雑な構成となる。
【0005】
連続吐出型インクジェット装置は、ノズルから液滴を吐出した直後に液滴が直進飛翔せず前後左右にぶれる挙動がみられる。同様な吐出方向のブレは液滴停止時にも見られる。これは、液滴吐出開始・停止時には液圧が低下し液滴吐出速度が少ない領域を経るため、吐出力の低下や外乱の影響により液滴飛翔の直進性が確保されないためと考えられる。また、吐出開始に際し、ノズル内流路の残存空気が十分に除かれていない場合にも同様の現象が発生する。さらに、同様の現象はノズルが詰まったりノズル近傍に異物が固着したりすることでも発生する。
【0006】
このように、吐出液滴が一時的にでも直進性を失うことで、直後に設けられた帯電電極や偏向電極表面に付着し悪影響をもたらす電極汚染が発生する。電極汚染は、液滴に所望の帯電供給や偏向電界提供ができなくなり正確な液滴ハンドリングができなくなるだけでなく、例えば数KV以上の高圧が印加される偏向電極間や偏向電極と帯電電極を架橋するような付着をした場合、リークによりシステムが作動しなくなるだけでなく、火災や感電などの事故原因ともなりうる。これらは、シングルノズルおよびマルチノズルに限らず発生するが、特にマルチノズルにおいては、(1)ヘッドが大きく液滴が安定に直進する時間が長い、(2)ノズル数が多く詰まり発生率が高い、(3)ノズル間隔が狭いため1つが直進性を失うとその液滴列の影響で近傍液滴列の直進性も低下する、(4)マルチノズル対応のため複数の帯電電極が微細ピッチで配置されており、かつ電極構成がシングルノズルに比べ混み合っているために電極汚染率が高いといった課題が懸念される。また、本方式におけるインクジェット装置用液体では特に金属のような非浸透性の材料面に瞬時に着弾し強固に固着する特徴があるため、汚染した電極の洗浄は容易ではなく非常に煩雑な作業となる。
【0007】
ここで、特許文献1では、ノズル直近に帯電電極とともに広い開口部を有する回収用の室を設け、吐出停止時に不規則飛翔液滴が発生した場合、帯電電極を退避させると同時に開口部を液滴飛翔領域に移動し不規則飛翔液滴を物理的に遮断して、吐出停止時の液滴電極に対する汚染を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭50−23936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されている方式は、吐出停止時における液滴飛翔からの電極汚染防止には有効であるが、例えば吐出開始直後の不規則飛翔液滴に対しては電極汚染防止策としては機能できない。すなわち、吐出開始時の不規則飛翔液滴を開口部を有する室で回収しながら直進性を確保できるまで待っても、開口部が退避し帯電電極が定位置に移動する際に開口部の端部や壁面への直進液滴の衝突は避けられず、これにより派生した液滴しぶきによりさらに電極を汚染してしまう。また、不規則飛翔液滴がノズル詰まりやノズルへの異物付着による場合には問題を解消することができない。
【0010】
マルチノズルを有するインクジェット装置においては2つの印字方法がある。その第1は、液滴への所望の帯電量を全ての液滴に荷電し、偏向量を制御しながら偏向液滴所定位置へ着弾マーキングさせるマルチ偏向によるものである。しかしこの方法は電極構成および各信号の制御が非常に複雑になるだけでなく、偏向飛翔液滴の着弾によるマーキングのため精度確保が難しい課題がある。
【0011】
第2は、印字に必要な液滴のみを帯電させずに直進させて印字を行い、他の液滴を帯電偏向して回収するバイナリ偏向によるものである。この方法では、帯電量の詳細な制御が必要なく電極構成および制御方法を比較的簡素化でき、かつ直進液滴を使うため着弾精度も向上するメリットがある。
【0012】
しかしながら、偏向液滴回収装置はバラツキのある偏向飛翔液滴を回収するため偏向経路に特化した形状であり、液滴飛翔開始時や停止時の不規則飛翔液滴、および信号印加トラブルなどにより偏向されない直進飛翔液滴を、印字面を汚染しないように回収するには回収が困難であった。これに対応するため回収口を拡大する構成なども提案されているが、構成が微細で複雑になる課題がある。さらに、偏向液滴回収装置は、回収用の開口部をノズル近傍まで移動し、ノズル口に開口部を密着させる構成にするのは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、複数個のノズルから一連の液滴からなる液滴列を同時に吐出するマルチノズルヘッドと、前記ノズルから吐出された飛翔液滴を任意の帯電量に帯電する前記液滴列近傍に設けた帯電電極と、帯電された液滴を電極間に形成した電界で偏向して回収する偏向電極を有するインクジェット装置において、少なくとも吐出開始または吐出終了時に直進する液滴を回収する直進液滴回収装置と、偏向した液滴を回収する偏向液滴回収装置を、前記ノズルと前記帯電電極および偏向電極の液滴吐出方向下流に各々独立して設け、前記直進液滴回収装置を液滴吐出方向に対し平行方向および直交方向に移動する移動装置を設けたことを特徴とする。
【0014】
また、直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置は、吐出液滴を回収する回収口とこれに連続する回収通路とを有することを特徴とする。
【0015】
また、直進液滴回収装置は、液滴吐出方向と平行にノズルヘッド方向に近接移動した時に、前記ノズルヘッドのノズルと前記直進液滴回収装置の回収口位置が一致することを特徴とする。
【0016】
また、直進液滴回収装置は、液滴吐出方向と平行にノズルヘッド方向に近接移動した時に、前記ノズルヘッドのノズルと前記直進液滴回収装置の回収口位置が密着することを特徴とする。
【0017】
また、帯電電極および偏向電極の少なくとも一部は、前記直進液滴回収装置の回収口が前記ノズルに密着し、あるいは前記直進液滴回収装置が液滴吐出方向下流領域を液滴吐出方向と平行にノズルヘッドと離隔する方向に移動する際に、前記直進液滴回収装置との干渉を避けて前記マルチノズルヘッドの吐出方向下流領域から移動退避することを特徴とする。
【0018】
また、直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置の回収口は、複数個のノズルから同時に液滴を回収する細長いスリット状の開口形状を持つことを特徴とする。
【0019】
また、直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置の少なくとも一方に回収流路内に液滴の有無を検出する液滴センサを有し、該液滴センサにより液滴回収の有無を判断することを特徴とする。
【0020】
また、直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置の回収流路は、少なくとも表面に導電性材料層が設けられ、該導電性材料層が接地されていることを特徴とする。
【0021】
また、直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置は回収流路内の液滴状態を観察可能な透明材料から形成されていることを特徴とする。
【0022】
また、直進液滴回収装置は、前記ノズルに洗浄液を供給する洗浄液供給装置を有することを特徴とする。
【0023】
さらに、直進液滴回収装置が直進液滴を回収しながらマルチノズルヘッドにおけるノズルから離れて位置し、前記帯電電極、偏向電極は前記ノズル吐出方向下流領域外に退避している状態において、前記ノズルから吐出される液滴形状および液滴切断位置形状を観測する液滴観測装置を設け、前記観測情報をもとに液滴形成条件を変更する制御装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、マルチノズルヘッドと、前記ノズルから吐出された飛翔液滴を帯電する帯電電極と、偏向電極を有するインクジェット装置において、少なくとも吐出開始または吐出終了時に直進する液滴を回収する直進液滴回収装置と、偏向した液滴を回収する偏向液滴回収装置を、前記ノズルと前記帯電電極および偏向電極の液滴吐出方向下流に各々独立して設け、前記直進液滴回収装置を液滴吐出方向に対し平行方向および直交方向に移動する移動装置を設けたことにより、インクジェットヘッドノズルからの液滴吐出時に発生する不規則飛翔液滴による各電極表面の汚染を確実に防止することができる。
【0025】
また、ノズルにおける異物詰まりや付着物などの洗浄も同時に行うことができ、メンテナンス性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明実施例におけるインクジェット装置の動作プロセスを示す説明図。
【図2】本発明実施例の回収装置と電極群を示す概略図。
【図3A】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図3B】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図3C】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図3D】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図3E】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図3F】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図3G】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図3H】本発明実施例の電極群の退避方法を示す概略図。
【図4】本発明実施例の回収装置と電極群を示す斜視図。
【図5A】本発明実施例の電極群の退避方法を示す斜視図。
【図5B】本発明実施例の電極群の退避方法を示す斜視図。
【図5C】本発明実施例の電極群の退避方法を示す斜視図。
【図5D】本発明実施例の電極群の退避方法を示す斜視図。
【図5E】本発明実施例の電極群の退避方法を示す斜視図。
【図5F】本発明実施例の電極群の退避方法を示す斜視図。
【図6】本発明実施例のインクジェット装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施例を図面について説明する。
【実施例】
【0028】
本発明の説明にあたり、バイナリ偏向マルチノズルを有する連続吐出型インクジェット装置を実施例として、以下図面に従って説明する。
【0029】
図1に本発明のバイナリ偏向マルチノズルを有する連続吐出型インクジェット装置におけるマルチノズルヘッド、帯電・偏向電極、回収装置の概略構成、および液滴飛翔状態と各構成の可動状態の概略を示す。
【0030】
本発明実施例における連続吐出型インクジェット装置は、液滴9を吐出するノズル7を有するマルチノズルヘッド1、各ノズル毎に形成した液滴を個別に帯電する複数の帯電電極2、帯電した液滴を電界により偏向する接地した偏向電極3および高圧偏向電極4、高圧偏向電極4の電界の帯電電極2への影響を防ぐ接地された遮蔽電極5、直進した液滴9を回収する回収流路11を有する直進液滴回収装置10、および偏向した液滴9を回収する回収流路13を有する偏向液滴回収装置12を備えている。ここで、直進液滴回収装置10は、図示しない移動装置により液滴吐出方向に対し平行方向および直交方向に移動できるように保持される。帯電電極2は絶縁材料6を介して偏向電極3に取り付けられている。
【0031】
まず、液滴吐出開始時に発生が懸念されるマルチノズルヘッド1からの不規則飛翔液滴による電極汚染を防止しながら吐出を行う構成を、図1に示す動作ステップ(a)〜(f)の順に説明する。
【0032】
液滴吐出直前は直進液滴回収装置10の回収口Pはマルチノズルヘッド1のノズル7に密着一致している状態とする。このとき、直進液滴回収装置10の回収口Pはマルチノズルヘッド1のノズル7およびその周辺が密着できるように、回収口側口径がノズル7口径よりも大きいことが必要である。
【0033】
また、マルチノズルを有するインクジェット装置の場合にはノズル7が複数あるが、直進液滴回収装置10の回収口Pは例えばスリット状の開口形状を有し、液滴列を一括して回収する構成とする。直進液滴回収装置10の回収口Pとノズル7付近が密着し液漏れが発生しないように、直進液滴回収装置10の回収口P周りには例えばゴム部材のようなシール部材を設ける。ここで帯電電極2および偏向電極3は、直進液滴回収装置10の移動時に干渉しないように印字時の定位置である液滴列近傍から退避している必要がある。
〔電極群の退避〕
図1では、液滴偏向方向と反対側に位置する帯電電極2と接地側の帯電電極3のみが、ステップ(a)〜(c)に示す様にマルチノズルヘッド1側に退避する構成としている(図3A)。この他に、帯電電極2、3と偏向電極4からなる電極群18には図3B〜図3H、図5A〜図5Fに示すように、種々の退避構造が考えられる。図2は回収装置と電極群を示す概略図である。図4は回収装置と電極群を示す斜視図である。
【0034】
例えば電極群18を同時にヘッド上方に退避させてもよく(図3B)、ヘッド下方に退避させてもよい(図3C、図3D)。この場合は、退避スペースが少なくて済む。また、電極接地定位置に対して90℃回動して退避させてもよく(図3E、図3F、図3G、図3H)、この場合はピボット構造により構成が簡単になる。さらに、退避方向は手前もしくは奥側にスライドしてもよく(図5A、図5B、図5C、図5D)、一部固定された部分を軸としてノズル列方向手前あるいは奥側に回転退避する構成であってもよい(図5E、図5F)。
【0035】
このように電極の退避位置および退避方法は直進液滴回収装置10の移動に干渉しなければ特に限定されないが、液滴の帯電および偏向時には電極との間隔の影響が大きく寄与するので、図3A、図5A、図5B、図5Eのように片側のみの電極群18が移動するか、または図5C、図5D、図5Fのように電極間の位置関係を保った状態で退避する方がより好ましい。
〔液滴吐出〕
図1のステップ(b)で、マルチノズルヘッド1のノズル7より液柱8を吐出させ、振動により液滴9を形成する。液柱8および液滴9は直進液滴回収装置10の回収口P及び回収流路11内で形成されるため、初期に発生する不規則飛翔液滴は電極等を汚染することなくすべて回収される。このとき直進液滴回収装置10の回収流路11内は図示しないポンプにより負圧15を与える。また、直進液滴回収装置10はプラスチック等の透明部材により構成されており、回収流路11内を目視的に確認して液滴飛翔の直進性を確認する事が出来る。
【0036】
次に、ステップ(c)で、初期吐出による液滴9を十分に回収し直進性を確保した後に、直進液滴回収装置10を液滴列飛翔方向と平行に、マルチノズルヘッド1の吐出面から離れる方向に液滴9を回収しながら、偏向液滴回収装置12に隣接する位置まで離隔移動させる。このとき電極類はまだ退避位置にあり、それにより確保されたスペースに液滴形状、液滴切断位置、および切断形状を観測する液滴観測装置を移動設置することができる。インクジェット装置は観測された液滴形状情報に応じて、液圧、液速度、励振電圧、励振周波数、液体粘度などを調整して、液滴形状を最適化する制御装置を有する。
【0037】
次に、ステップ(d)で、直進液滴回収装置10の移動に伴い退避していた帯電電極2および偏向電極3を飛翔液滴列と平行な位置に移動させる。このとき、各液滴列の液滴切断位置が帯電電極2上に位置することが必要である。また、各液滴列は帯電効率向上とクロストーク防止のためマルチ帯電電極2の各帯電電極幅の中心を通る構成であることが好ましい。
【0038】
次にステップ(e)で、帯電電極2に電圧を印加して飛翔液滴9をすべて帯電し、同時に偏向電極3、高圧偏向電極4に電圧を印加して、液滴9をすべて偏向して偏向液滴14とし、直進液滴回収装置10から偏向液滴回収装置12による回収に移行する。このとき、偏向液滴回収装置12の回収流路13内は図示しないポンプにより負圧15が与えられる。また、マルチノズルヘッド1のノズル7からの複数液滴列(偏向後)を一括で回収できるようにその回収口は直進液滴回収装置10の回収口と同様にスリット状の開口形状であることが好ましい。
【0039】
ステップ(f)で、偏向液滴回収装置12に隣接した直進液滴回収装置10は回収対象である直進液滴がなくなったことを確認次第、偏向液滴回収装置12位置と反対側に退避する。これにより実際の印字や塗布に用いられる直進する液滴16の通過スペースを確保する。
【0040】
直進液滴回収装置10から偏向液滴回収装置12への回収の移行、またはその逆の回収の移行が確実に完了していることを確認するために、直進液滴回収装置10および偏向液滴回収装置12のいずれかの回収流路内またはその近傍に、液滴の有無を検知するセンサを設ける。Sは直進液滴回収装置10に設けられた液滴センサである。これによると、例えばマルチノズルの直進液滴をすべて偏向状態に移行する際に、一部の液滴列の偏向が不良であった場合に液滴センサSによりすべての液滴が偏向できていないことを検出でき、直進液滴回収装置10を退避させずに偏向不良液滴を回収して印字面の汚染を防ぐことが可能になる。
【0041】
液滴の検知に用いられる液滴センサSは、液滴の衝突衝撃、重量、粘度、熱、帯電など、いずれかの物理量を検知できるものとする。また、液滴センサSは単一でも複数設けていてもよい。また液滴センサSは、直進液滴回収装置10と偏向液滴回収装置12の両方に設けることが好ましいが、本実施例のようにどちらか一方にのみ設ける構成でもよい。
【0042】
また、直進液滴回収装置10、および偏向液滴回収装置12は、回収流路を含む液滴通過面が外界の影響により帯電した場合、液滴をひきつけ直進性を低下させることにより印字精度低下を招く原因となるので、少なくとも表層が導電性材料により構成されており、さらにその導電性材料層は接地状態であることが好ましい。上記(a)〜(f)のステップにそって、印字可能状態に移行することで、液滴吐出開始時の不規則飛翔液滴による電極汚染を防止することができる。
【0043】
また、不規則飛翔液滴による電極汚染は、液滴吐出停止時にも発生するが、これによる電極汚染を防止するには、上記した液滴化吐出開始時のステップの逆、すなわち図1の(f)から(a)のステップ順に沿って液滴吐出停止動作を行う。
〔直進液滴の回収〕
以下に、インクジェット装置の、直進液滴回収装置10の上記の吐出開始・停止に伴う不規則飛翔液滴による汚染防止以外の使用方法について記述する。
【0044】
帯電、偏向電圧信号のトラブルなどが発生して適正に液滴の帯電偏向がされない場合には液滴はすべて直進してしまい、偏向液滴回収装置12で液滴を回収することができず印字面を過剰の液滴付着により汚染してしまう。これを防止するために、正常印字中は退避して使用されない直進液滴回収装置10を、液滴通過領域に緊急移動して直進液滴を回収できるよう動作させることができる。
〔マルチノズルヘッドの洗浄〕
また、直進液滴回収装置10は負圧15により液滴を回収するだけでなく、洗浄液供給手段により洗浄液を供給することができる構成とする。前述した図1のステップ(a)において、マルチノズルヘッド1のノズル7と直進液滴回収装置10の回収口Pが密着した状態で洗浄液供給を行うと、ノズル詰まりや、ノズル近傍への異物付着を除去することができる。これにより、電極群を汚染する不規則飛翔液滴発生原因であるノズル詰まりや付着異物を除去できるだけでなく、洗浄時に洗浄液自体が近傍の電極群18を汚染することがない。このように、ノズルや電極群を分解する煩雑な作業を経ることなくノズルを洗浄することができるためメンテナンス性が向上する。洗浄液は印字用液体の希釈用溶媒を用いることが出来る。
【0045】
上記の洗浄工程において、洗浄液をノズル7からノズル内に供給するだけでなく、定期的に負圧を与えて洗浄液を回収する
洗浄液供給→負圧による洗浄液回収→洗浄液供給→負圧による洗浄液回収
というサイクルを繰り返すことで、より洗浄効果が高くなり短時間で少量の洗浄液で詰まりや異物付着の除去を実現できる。ここで、マルチノズルヘッド1はインクの流入路とは別に、過剰のインクや空気を排出するためのインク流出路を具備し、弁などで任意に開閉できる構成であることが好ましく、さらに洗浄工程時に洗浄液はノズル7からマルチノズルヘッド1のインク室内に逆流する状態となるので、洗浄液が流出路側に流れる構成であることが好ましい。
〔インクジェット装置〕
本発明のマルチノズル、回収装置及び電極を具備したインクジェットヘッド部22を搭載したインクジェット装置全体構成について、図6を用いて説明する。インクジェット装置は、インクジェット駆動部とインク濃度制御部と記録媒体搬送制御部からなる。
【0046】
インクジェット駆動部は、インクジェットヘッド部22および液体タンク33とともに、液滴吐出用の圧電素子に交流電圧を供給する交流電源37、帯電電極および偏向電極に電圧を供給する電極用電源23、インクジェットヘッド部22に液体を供給し回収する液体供給ポンプ36、液体回収ポンプ26およびそれらを制御するメイン制御装置27からなる。
【0047】
ここで、直進液滴回収装置10および偏向液滴回収装置12は液体回収ポンプ26を共有することが部材の低減、省スペース化の観点から好ましい。ただし、直進液滴回収装置10は液滴回収時、および洗浄時に洗浄液としての溶媒を供給する溶媒タンク31から溶媒を供給する際に同じ流路を利用するため、電磁弁40により流路をスイッチングする。
【0048】
インク濃度制御部は、マルチノズルヘッド1を有するインクジェットヘッド部22に供給する液体タンク33内の液体濃度を調整するものであり、液体タンク33内の液体濃度を測定する液体濃度測定手段30と、液体タンク33内の液体を希釈する溶媒を貯蔵する溶媒タンク31、溶媒タンク31の溶媒をインクジェット駆動部の液体タンク33に供給する溶媒供給ポンプ32およびそれらを制御するインク濃度制御装置29からなる。
【0049】
記録媒体搬送制御部は、記録媒体の搬送機構35および搬送制御装置34からなる。インクジェット駆動部のメイン制御装置27は、記録するパターンデータ28を受信すると、液体回収ポンプ26、液体供給ポンプ36、圧電素子駆動電源37、制御電圧電源23を制御することで、記録パターンデータ28に従って帯電電極信号電圧24を帯電電極2に、偏向電極信号電圧25を高圧偏向電極4に入力して液体吐出を制御する。液体吐出の制御は、帯電電極3の印加電圧条件を吐出ノズルごとに、制御することで行なわれる。
【0050】
メイン制御装置27は、記録媒体搬送制御部の搬送制御装置34と通信することで、印写記録媒体19のハンドリングを行う。さらに、メイン制御装置27は、インク濃度制御部のインク濃度制御装置29と通信を行い、液体タンク33内の液体濃度が既定の濃度であることを確認するとともに、既定濃度の液体をインクジェットヘッド部22に供給するように制御する。
【0051】
また、マルチノズルヘッド1のインク液滴形成領域に液滴観測装置17を設置し、得られた液滴情報をメイン制御装置27にフィードバックし、この情報を元に算出した適正な補正制御入力値を圧電素子に入力して、正常な液滴が均一に吐出するよう吐出安定化を図る。
【0052】
これら濃度制御方式、搬送制御方式およびインクジェットヘッド部の駆動制御などの詳細は、吐出する液体およびパターン記録条件により異なり、適正な条件設定が必要となる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
一般に、インクジェット装置は、着色インクをパターニングすることで、文字や画像形成などに用いられる。本発明の、マルチノズル連続吐出型インクジェット装置は、一般的インクジェット装置に比較して、高信頼性・高メンテナンス性を有した高安定な液滴吐出装置である。このため、本発明の装置は、マーキング分野だけでなく、高信頼性・高メンテナンス性・高安定性が要求される液体を利用した機能性インク塗布やパターニングが必要な電子機器などの製造装置にも応用が可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 マルチノズルヘッド
2 帯電電極
3 接地偏向電極
4 高圧偏向電極
7 ノズル
9、16 液滴
10 直進液滴回収装置
11、13 回収流路
12 偏向液滴回収装置
14 偏向液滴
17 液滴観測装置
18 電極群
22 インクジェットヘッド部
27 メイン制御装置
P 回収口
S 液滴センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のノズルから一連の液滴からなる液滴列を同時に吐出するマルチノズルヘッドと、前記ノズルから吐出された飛翔液滴を任意の帯電量に帯電する前記液滴列近傍に設けた帯電電極と、帯電された液滴を電極間に形成した電界で偏向して回収する偏向電極を有するインクジェット装置において、
少なくとも吐出開始または吐出終了時に直進する液滴を回収する直進液滴回収装置と、偏向した液滴を回収する偏向液滴回収装置を、前記ノズルと前記帯電電極および偏向電極の液滴吐出方向下流に各々独立して設け、前記直進液滴回収装置を液滴吐出方向に対し平行方向および直交方向に移動する移動装置を設けたことを特徴とするインクジェット装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置は、吐出液滴を回収する回収口とこれに連続する回収通路とを有することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置は、液滴吐出方向と平行にノズルヘッド方向に近接移動した時に、前記ノズルヘッドのノズルと前記直進液滴回収装置の回収口位置が一致することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置は、液滴吐出方向と平行にノズルヘッド方向に近接移動した時に、前記ノズルヘッドのノズルと前記直進液滴回収装置の回収口位置が密着することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット装置において、前記帯電電極および偏向電極の少なくとも一部は、前記直進液滴回収装置の回収口が前記ノズルに密着し、あるいは前記直進液滴回収装置が液滴吐出方向下流領域を液滴吐出方向と平行にノズルヘッドと離隔する方向に移動する際に、前記直進液滴回収装置との干渉を避けて前記マルチノズルヘッドの吐出方向下流領域から移動退避することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置の回収口は、複数個のノズルから同時に液滴を回収する細長いスリット状の開口形状を持つことを特徴とするインクジェット装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置の少なくとも一方に回収流路内に液滴の有無を検出する液滴センサを有し、該液滴センサにより液滴回収の有無を判断することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置の回収流路は、少なくとも表面に導電性材料層が設けられ、該導電性材料層が接地されていることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置は回収流路内の液滴状態を観察可能な透明材料から形成されていることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置は、前記ノズルに洗浄液を供給する洗浄液供給装置を有することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置が直進液滴を回収しながらマルチノズルヘッドにおけるノズルから離れて位置し、前記帯電電極、偏向電極は前記ノズル吐出方向下流領域外に退避している状態において、前記ノズルから吐出される液滴形状および液滴切断位置形状を観測する液滴観測装置を設け、前記観測情報をもとに液滴形成条件を変更する制御装置を有することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項1】
複数個のノズルから一連の液滴からなる液滴列を同時に吐出するマルチノズルヘッドと、前記ノズルから吐出された飛翔液滴を任意の帯電量に帯電する前記液滴列近傍に設けた帯電電極と、帯電された液滴を電極間に形成した電界で偏向して回収する偏向電極を有するインクジェット装置において、
少なくとも吐出開始または吐出終了時に直進する液滴を回収する直進液滴回収装置と、偏向した液滴を回収する偏向液滴回収装置を、前記ノズルと前記帯電電極および偏向電極の液滴吐出方向下流に各々独立して設け、前記直進液滴回収装置を液滴吐出方向に対し平行方向および直交方向に移動する移動装置を設けたことを特徴とするインクジェット装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置は、吐出液滴を回収する回収口とこれに連続する回収通路とを有することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置は、液滴吐出方向と平行にノズルヘッド方向に近接移動した時に、前記ノズルヘッドのノズルと前記直進液滴回収装置の回収口位置が一致することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置は、液滴吐出方向と平行にノズルヘッド方向に近接移動した時に、前記ノズルヘッドのノズルと前記直進液滴回収装置の回収口位置が密着することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット装置において、前記帯電電極および偏向電極の少なくとも一部は、前記直進液滴回収装置の回収口が前記ノズルに密着し、あるいは前記直進液滴回収装置が液滴吐出方向下流領域を液滴吐出方向と平行にノズルヘッドと離隔する方向に移動する際に、前記直進液滴回収装置との干渉を避けて前記マルチノズルヘッドの吐出方向下流領域から移動退避することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置の回収口は、複数個のノズルから同時に液滴を回収する細長いスリット状の開口形状を持つことを特徴とするインクジェット装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置の少なくとも一方に回収流路内に液滴の有無を検出する液滴センサを有し、該液滴センサにより液滴回収の有無を判断することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置の回収流路は、少なくとも表面に導電性材料層が設けられ、該導電性材料層が接地されていることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置および偏向液滴回収装置は回収流路内の液滴状態を観察可能な透明材料から形成されていることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置は、前記ノズルに洗浄液を供給する洗浄液供給装置を有することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載のインクジェット装置において、前記直進液滴回収装置が直進液滴を回収しながらマルチノズルヘッドにおけるノズルから離れて位置し、前記帯電電極、偏向電極は前記ノズル吐出方向下流領域外に退避している状態において、前記ノズルから吐出される液滴形状および液滴切断位置形状を観測する液滴観測装置を設け、前記観測情報をもとに液滴形成条件を変更する制御装置を有することを特徴とするインクジェット装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6】
【公開番号】特開2011−101953(P2011−101953A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256755(P2009−256755)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】
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