説明

マルチパラメトリック細胞同定・選別法および対応の装置

【課題】本発明は、特に細胞選別器で実行するための、生体粒子(48,49)を分析する方法、ならびに対応の分析装置に関する。
【解決手段】この分析方法は、以下の方法段階、すなわち、分析される粒子(48,49)を少なくとも1つの担体流に挿入すること、担体流と共に移動する粒子(48,49)の少なくとも第1の分析を実行すること、この第1の分析の結果に従って少なくとも1つの粒子(48,49)を選別すること、選別された粒子(48,49)を減速すること、および選別された粒子(48,49)の少なくとも第2の分析を、減速された状態で実行すること、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の、好ましくは生体粒子のための、特に、細胞選別器で生体細胞を分析するための分析方法ならびに請求項14に記載の対応の分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
T・ミュラー等『A 3-D microelrctrode system for handling and caging single cells and particles』、Biosensors and Bioelectrics 14 (1999)、247ないし256頁からは、生体細胞のための分析方法が公知である。この分析方法では、分析される細胞が、流体状のマイクロシステムの担体流中に懸濁されており、誘電泳動的に操作および選別される。担体流では、分析される細胞が、まず、漏斗状の、誘電泳動的な電極装置(英語では、「Funnel」)によって並べられ、続いて、誘電泳動的なかご(英語では、「Cage」)に抑えられる。その目的は、かごにある細胞を、静止状態で分析することができるためである。この目的のために、微視的な、分光学的なまたは蛍光学的な測定法を用いることができる。誘電泳動的なかごに捕捉された細胞の分析に従って、これらの細胞を続いて選別することができる。この目的のために、操作者は、担体流中で誘電泳動的なかごの下流方向後方に設けられた誘電泳動的な電極装置からなる選別手段を起動する。
【0003】
前記分析方法の欠点は、サンプル中の分析される細胞がしばしば非常に異なっていることである。非常に不均一なサンプルから例えば所定の標的細胞を或る方法によって同定し、次にこれらの標的細胞を分離することが意図される。これらのサンプルの場合、標的細胞は、しばしば、サンプル全体の極僅かな割合に過ぎない。他の細胞は所望の特性を有しないか、最早生きておらず、従って既に死んでいる。更に、細胞が完全には個別化されておらず、幾つかの細胞が、2つまたはそれより多い細胞の凝集体として、システムを通過することがしばしば生じる。これは望ましくない結果である。しかし、場のかごの中の個々の細胞または凝集体の詳しい分析は、時間のかかるプロセスである。それ故に、場のかごの中の細胞サンプル全体の分析は非常に長く続行するであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、前記の公知の分析方法を、重要でない生体細胞(例えば死んだ細胞)または細胞の屑の、誘電泳動的なかごの中での分析を防止することができるように、改善するという課題が、本発明の基礎になっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、明細書導入部に記載の公知の分析方法を前提として、請求項1の特徴によっておよび、対応の分析装置に関しては、請求項14の特徴によって解決される。
【0006】
本発明は、担体流に懸濁されている粒子の、誘電泳動的なかごの中での分析の前に、まず、担体流と共に移動する粒子の前分析を実行し、続いて、他の分析にとって重要な粒子を誘電泳動的なかごに捕捉しかつ分析することができるという、一般的な技術的教示を有する。
【0007】
前分析は、例えば、蛍光の強度、細胞の生命力および/または個々の細胞または凝集体であるかの問題に該当することができる。更に、前分析の際に、細胞であるか、形状および大きさにおいて詳しい分析の主要細胞ではない物質、例えば不純物または他の細胞であるかが、これらの細胞が標的細胞と区別される限りで、検出されることができる。
【0008】
本発明に係わる分析方法の場合、まず、担体流中に懸濁されている粒子の前分析および前分析の結果に応じた所定の粒子の選別がなされる。他方、実際の主分析は、予め選別された粒子のためにのみ実行される。このような粒子は、粒子の移動によって困難にされるだろう情報提供可能な主分析を可能にするために、減速される。
【0009】
本発明の枠内では、前分析に従って選別された粒子が例えば誘電泳動的なかごの中で捕捉されるので、これらの粒子を主分析の前に完全に停止させることは必ずしも必要ではない。本発明の枠内では、むしろ、前分析に従って選別された粒子が、粒子の情報の多い分析が可能である限りのみ、担体流内で減速されることも可能である。
【0010】
更に、本発明の枠内で用いられる、粒子の概念が一般的な意味を有するのであって、個々の生体粒子に限定されないことに言及することができる。むしろ、この概念は合成粒子または生体粒子を含む。特別な利点が生じるのは、粒子が、生体物質、従って例えば生体粒子、細胞群、細胞成分、または生物学的に重要な分子を、夫々、場合によっては他の生体粒子または合成担体粒子との組合せで有するときである。合成粒子は、個体粒子、液状粒子、懸濁媒体から分離されている粒子、また、担体流中の懸濁媒体に対し分相を形成する多相粒子を含んでもよい。
【0011】
前分析に従って選別され、続いて主分析の枠内で詳細に分析された粒子を、主分析の結果に従って選別および/または処理することは好ましい。例えば、主分析の際に、種々の細胞型を区別し、続いて、それに対応して選別することができる。しかし、前分析の枠内で選別された粒子を、主分析の結果に応じて複数の誘電泳動的要素によって操作することも可能である。この場合、T・ミュラー等の、明細書導入部に記載された刊行物に記載された誘電泳動的要素を用いることができる。
【0012】
前分析の枠内で、例えば、透過光測定、蛍光測定および/またはインピーダンス分光法を行なうことができる。しかし、本発明の好ましい実施の形態では、まず、透過光測定および続いて蛍光測定を行なう。透過光測定および蛍光測定を、空間的に分離された分析窓(英語では、「Religion of Interest」)で行なうことは好ましい。透過光測定は、例えば、生きている生体細胞と死んだ生体細胞との区別を可能にし、他方、蛍光測定は、担体流中に懸濁されている粒子が蛍光マーカーを有するか否かを分析するために、用いられることができる。
【0013】
前分析の枠内で透過光測定および蛍光測定を、空間的に分離された分析窓で行なうとき、担体流中の透過光のための分析窓が、蛍光測定のための分析窓の上流方向手前に位置していることは好都合である。しかし、その代わりに、担体流中の透過光のための分析窓が、蛍光測定のための分析窓の下流方向後方に設けられていることも可能である。
【0014】
担体流と共に移動する粒子の前分析の枠内で、光学画像が撮像されるのは好ましい。このことは、粒子を分類するためのディジタル式の画像評価を可能にする。この場合、例えば、個々の生体細胞を細胞塊と区別することができるために、粒子を形態的に分析することは好ましい。本明細書の枠内で用いられる、光学画像の概念は、一般的な意味を有し、従来の語義での2次元画像に限定されない。むしろ、本発明の意味する光学画像の概念は、担体流の、または、担体流中に懸濁されている粒子の、点状のまたは線状のスキャンをも含む。例えば、個々の粒子を検出しかつ分類するために、担体流に対し直角の線に沿って輝度を積分することができる。
【0015】
前分析の枠内での、生きている細胞と死んだ細胞との区別は、透過光測定の際に、撮像された光学画像における強度分布の評価によってなされることができる。前記特性を有するこの透過光測定の特殊な原理は、例えば、位相差照明である。かくて、生きている生体細胞は、透過光測定で比較的明るい縁部と、より暗い中心点とを有する環状構造を有する。これに対し、死んだ生体細胞は、透過光測定の際に、ほぼ一様な輝度を有し、背景に比較して暗く見える。
【0016】
粒子の主分析の際に、例えば、所定の分子を、1つの細胞内に局在化することができる。例えば、主分析の枠内で、蛍光染料で標識化されている分子を、1つの細胞内に局在化することができる。蛍光染料は、例えば、分子生物学的に生成された、「緑色蛍光タンパク質」の「標識」およびこれら標識の誘導体、他の自己蛍光性のタンパク質であってもよい。しかし、蛍光染料としては、細胞の分子に共有または非共有結合する蛍光染料も適切である。更に、蛍光染料としては、細胞の酵素から蛍光生成物に変換されるフッ素物質またはいわゆるFRET(Fluoreszenz Resonanz Energietransfer)対も用いることができる。用いられる蛍光染料の状態を、例えば、そのスペクトル特性に基づいてまたは生体発光によって区別することができる。
【0017】
1つの細胞内での分子の局在化によって、分子の構造および機能を算出することもできる。この場合、例えば、原形質膜、細胞質ゾル、ミトコンドリア、ゴルジ装置、エンドソーム、リソゾーム、細胞核、紡錘装置、細胞骨格内での存否に基づき、アクチン、チューブリンとの共局在化を区別することができる。
【0018】
更に、主分析および/または前分析の枠内で、或る細胞の形態を定めることができる。この場合、染料も用いることができる。
【0019】
更に、主分析および/または前分析の枠内で、或る細胞集団の2つまたはそれより多い状態も区別することができる。
【0020】
更に、主分析の枠内で、蛍光マーカーを有する分子のトランスロケーションに基づいて、細胞シグナルを、細胞の信号、例えば、受容体インターナリゼーションに従う受容体活性化、アレスチンの結合に従う受容体凝集、原形質膜から細胞質ゾルへの、細胞質ゾルから原形質膜への、細胞質ゾルから細胞核へのまたは細胞核から細胞質ゾルへの分子の転移を測定することが可能である。
【0021】
更に、主分析および/または前分析の枠内で、2つの分子の相互作用を測定する
ことができる。相互作用する分子のうちの少なくとも1が蛍光マーカーを有することは好ましく、例えば、2つの蛍光染料の共局在化による、FRETによる、または蛍光の寿命の変化による相互作用が示される。
【0022】
しかし、主分析および/または前分析の枠内で、或る細胞周期内の或る細胞の状態を測定することができる。細胞の形態または細胞の染色質の染色が評価されることは好ましい。
【0023】
主分析および/または前分析のための他の可能性は、或る細胞の膜電位を測定することにあり、膜電位に敏感な染料を用いることは好ましい。この場合、原形質膜電位および/またはミトコンドリアの膜電位に対し敏感である染料を用いることは好ましい。
【0024】
更に、主分析および/または前分析の枠内で、或る細胞の生命力も算出することができる。この細胞の形態を評価しおよび/または生きている細胞と死んだ細胞を区別することができるフッ素物質を用いることは好ましい。
【0025】
更に、主分析および/または前分析の際に、細胞毒性の効果を分析しおよび/または細胞のpH値を測定することができる。
【0026】
主分析および/または前分析の枠内で、或る細胞内の1つまたは複数のイオンの濃度を測定することも可能である。
【0027】
実際また、主分析および/または前分析の際に、細胞内の酵素の活性を算出することができる。フッ素物質または呈色物質、特にキナーゼ、ホスファターゼまたはプロテイナーゼを用いることができる。
【0028】
更に、主分析および/または前分析の際に、生体物質、例えばタンパク質、ペプチド、抗体、炭水化物または脂肪を生産する細胞の、その増殖力を測定することができる。この場合、前記方法を用いることができる。
【0029】
最後に、主分析の枠内で、細胞・ストレス経路、代謝経路、細胞成長経路、細胞分裂経路および他のシグナル導入経路を測定することができる。
【0030】
更に、本発明は、前記分析方法を実施するための対応の分析装置を含む。
【0031】
本発明に係わる分析装置が、粒子の画像を撮像するために、レンズを有することは好ましい。
【0032】
本発明に係わる分析装置のレンズを、倍率、焦点および/または視野を調整するためにまたは所定の光学フィルタを選択するために、調整することができることは好ましい。レンズの調整は操作部(例えば電動機)によってなされることができる。
【0033】
粒子の減速が、知られている誘電泳動的なかごによってなされることは既に前に記述した。しかし、本発明の実施の形態では、誘電泳動的なかごが、詳細な分析のための懸濁されている粒子を減速するためにのみ用いられるのではなくて、スイッチ(英語では「switch」)または転轍器の機能をも果たすのは、懸濁されている粒子を、詳細な分析に従って、かごにより、複数の排出管のうちの1に供給することによってである。この目的のために、誘電泳動的なかごの個々の電極を互いに別々に起動することができることは好ましい。更に、誘電泳動的なかごは、このために、排出管のうちの分岐点に設けられていることは好ましい。
【0034】
更に、複数の排出管のうちの1または複数には、漏斗状の電極装置(英語では「Funnel」)が設けられていてもよい。その目的は、懸濁されている粒子の、排出管における沈下を阻止するためである。このことは好都合である。何故ならば、担体流は、排出管で、以下の速度分布を有するからである。この速度分布は、壁付近で、遅い流速のみを示すので、排出管における粒子の沈下が、壁付近の沈殿をもたらすであろう。
【0035】
更に、懸濁されている粒子が、共通の担体流用導管に合流する2つの分離された担体流用導管を通って、供給されるという可能性が存する。この場合、2つの担体流用導管の合流点の領域では、共通の担体流用導管に、隔壁が設けられていてもよい。この隔壁は、共通の担体流用導管においても、2つの分離される部分流を互いに分離する。2つの部分流を分析に晒すことができる。この分析の結果に従って、次に、2つの部分流に懸濁されている粒子を、集めることができる。次に、集められた粒子を、次に、前記の如く、誘電泳動的なかごに固定し、詳細な分析に晒すことができる。最後に、誘電泳動的なかごによって解放された細胞を、次に、詳細な分析の結果に従って、複数の排出管のうちの1に供給することができる。
【0036】
細胞を、菌の少ない、無菌の条件下で分析し、それに応じて分離することができることは、本発明の特別な利点である。
【0037】
本発明の他の好都合な改善は、従属請求項に特徴付けられている。以下、これらの改善を、本発明の好ましい実施の形態の記述と共に、図面を参照して詳述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1の略図は、微小流体状の選別チップ1によって生体細胞を誘電泳動で選別する、本発明に係わる細胞選別器を示している。
【0039】
生体細胞に誘電泳動で影響を及ぼす技術は、例えば、T・ミュラー等『A 3-D microelectrode system for handing and caging single cells and particles』、Biosensors & Bioelectrics 14 (1999)、247ないし256頁に記載されている。それ故、以下に、選別チップ1における誘電泳動法の詳述を省略し、前記の刊行物を参照するよう指摘する。
【0040】
選別チップ1は、流体の接触のために、複数の接続部2−6を有する。接続部2−6における流体の接触は、DE 102 13 272に記載されている。この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0041】
選別チップ1の接続部2は、選別される生体細胞を有する担体流を収容するために用いられる。これに対し、選別チップ1の接続部3は、選別チップ1上でこれ以上分析されない選別除外された生体細胞を搬出するために用いられる。選別除外された生体細胞は、吸引用シリンジ7によって捕らえられることができる。吸引用シリンジは、選別チップ1の接続部3に接続されることができる。これに対し、選別チップ1の出口5は、重要な生体細胞を搬出するために用いられる。これらの生体細胞は、続けて、更に加工または分析されることができる。
【0042】
更に、選別チップ1の接続部4および6は、いわゆる被覆流(Huellstrom)の供給のために用いられる。被覆流は、選別された生体細胞を選別チップ1の接続部5に供給する課題を有する。被覆流の機能法に関して、ドイツ特許出願DE 100 05 735を参照されたい。それ故に、以下、被覆流の機能法の詳述を省略することができる。
【0043】
選別チップの接続部4および6は、2つの被覆流用導管8,9、Y継手10および4方向弁11を介して、圧力容器12に接続されている。圧力容器には、被覆流のための培養媒体がある。
【0044】
圧力容器12は、圧縮空気用導管13を介して、過剰圧力下に置かれる。それ故に、圧力容器12に存する緩衝液(例えば、培養媒体)が、4方向弁11の適切な位置で、Y継手10および被覆流用導管8,9を介して、選別チップ1の接続部4,6に流れる。
【0045】
しかし、その代わりに、被覆流を、緩衝液の入った圧力容器12とは異なる原理、例えば、シリンジ型ポンプまたは蠕動性のポンプによっても、実現化することができる。
【0046】
これに対し、選別チップ1の接続部2は、担体流用導管14を介して、粒子用インジェクタ15に接続されている。
【0047】
上流では、粒子用インジェクタ15は、T継手16を介して、担体流用シリンジ17に接続されている。担体流用シリンジは機械式に駆動され、担体流の所定の液流を注入する。
【0048】
更に、T継手16は、上流で、他の4方向弁18および被覆流用導管19を介して、3方向弁20に接続されている。3方向弁20は、被覆流用導管8,9および担体用導管14を、実際の作動前に洗浄をすることができる。
【0049】
この目的のために、3方向弁20は、上流で、蠕動性ポンプ21を介して、3つの3方向弁22.1ないし22.3に接続されている。これらの3方向弁には、夫々シリンジ型リザーバ23.1ないし23.3が接続されている。この場合、シリンジ型リザーバ23.1ないし23.3は、実際の作動前に流体システム全体を洗浄するための充填剤流を供給するために用いられる。シリンジ型リザーバ23.1は、例えば70%のエタノールを有し、これに対し、シリンジ型リザーバ23.2は、充填剤流用物質として、好ましくは蒸留水を有する。シリンジ型リザーバ23.3は、充填剤流用物質として、例えば緩衝液を有する。
【0050】
更に、細胞選別器は過剰な被覆流のための受器27および過剰な充填剤流のための受け器28を有する。
【0051】
以下、まず、洗浄工程を記述する。この洗浄工程は、被覆流用導管8,9、担体流用導管14および細胞選別器の残りの流体システムの気泡および不純物を取り除くために、細胞選別器の実際の作動前に実行される。
【0052】
この目的のために、まず、3方向弁22.1が開かれ、エタノールがシリンジ型リザーバ23.1によって充填剤流として注入される。この場合、エタノールは蠕動性ポンプ21によってまず3方向弁20へ運ばれる。エタノールは、(無菌の分析・選択工程を調整するための)システム内の細菌の数を減らすためのみならず、空気を流体状のシステムから完全に除去するためにも用いられる。
【0053】
洗浄工程中に、3方向弁20は、蠕動性ポンプ21によって運ばれる充填剤流の一部が、被覆流用導管19を介して、更に導かれ、他方、蠕動性ポンプ21によって運ばれる充填剤流の残り部分が4方向弁11に達するように、調整されている。2つの4方向弁11,18は、同様に、充填剤流が、被覆流用導管8,9および担体流用導管14を通って導かれるように、調整されている。更に、培養媒体は、これらの導管に短時間に媒体を注入するために、圧力容器12から受け器27へ流れる。
【0054】
エタノールによる細胞選別器の前記洗浄の後に、同様に、蒸留水または緩衝液による洗浄もなされる。その時々に、3方向弁22.2または22.3が開かれる。
【0055】
前記洗浄工程中に、過剰の充填剤流が、4方向弁18から受け器28へ導かれることができる。
【0056】
洗浄工程後に、3方向弁22.1ないし22.3が閉じられ、蠕動性ポンプ21が締め切られる。
【0057】
選別駆動を起動するために、4方向弁11は、圧力容器12がY継手10に接続されるので、圧力容器12にある培養媒体が、圧力容器12に支配的な過剰圧力の故に、被覆流用導管8,9へ押し入れられるように、調整されている。
【0058】
更に、選別駆動中に、4方向弁18は、流れの接続がT継手16と4方向弁18との間に存在しないように、調整されている。
【0059】
担体流用シリンジ17によって注入される担体流は、T継手16を介して、粒子用インジェクタ15に流れ、他の注入用シリンジ29によって生体細胞が担体流に注入される。続いて、担体流は、注入された生体細胞と共に、粒子用インジェクタ15から担体流用導管14を通って選別チップの接続部2へと流れる。
【0060】
更に、粒子用インジェクタ15には、粒子用インジェクタ15の温度Tを測定するために、温度センサ30が取着されていることが述べられねばならない。
【0061】
更に、粒子用インジェクタ15のみならず選別チップ1のための収容部にも、ペルチエ素子の形の温度調素子31がある。その目的は、粒子用インジェクタ15および選別チップ1を加熱または冷却することができるためである。
【0062】
この場合、加熱・冷却エネルギQは、温度調節器32によって事前設定される。この温度調節器は、入力側で、温度センサ30に接続されており、粒子用インジェクタ15の温度Tを、所定の目標値に調整する。
【0063】
以下、図2を参照して、担体流路33を説明する。この担体流路は、細胞選別器の選別チップ1に設けられており、2つの排出管34,35に分岐されている。排出管34は選別チップ1の接続部5に接続されており、プラスに選択された粒子を更に導くために用いられ、他方、排出管35は選別チップ1の接続部3に接続されており、選別除外された粒子の搬出のために用いられる。
【0064】
担体流路33では、選別チップ1の接続部2の下流方向後方に、漏斗状の、誘電泳動的な電極装置36が設けられている。この電極装置は、担体流に懸濁されている粒子を担体流路33内で連続的に並べるという課題を有する。電極装置36の正確な技術的構成および機能方法は、ミュラー等の、明細書導入部に記載の刊行物に記載されている。この刊行物の内容は本明細書に組み込まれるので、以下、電極装置36の詳述を省略することができる。
【0065】
電極装置36の下流後方には、担体流路33で、誘電泳動的なかご(dielektrophoretischer Kaefig)37が設けられている。このかごは、担体流33に懸濁されている粒子を捕捉し、正確な分析のために分析窓UFに固定することを可能にする。誘電泳動的なかご37の構造および機能に関しては、同様に、ミュラー等の、明細書導入部に引用された刊行物を参照するよう指摘する。それ故に、このことに関しては、詳述を省略することができる。
【0066】
誘電泳動的なかご37の下流後方における、担体流路33の分岐領域には、誘電泳動的な電極装置38からなる選別手段がある。この選別手段は誘電泳動的な電極装置38からなる。電極装置38の構造および機能に関しては、同様に、ミュラー等の、明細書導入部に引用された刊行物を参照するよう指摘する。電極装置38は、担体流に懸濁されている粒子を排出管34または排出管35に選別する。選択は、更に詳述するように、かご37に固定された粒子で実行された主分析に従って、なされる。
【0067】
更に、担体流用導管33の分岐領域には、流れ誘導手段が設けられている。この流れ誘導手段は、同様に、誘電泳動的な電極装置39からなり、排出管35から排出管34への粒子の逆流を防止するという課題を有する。この目的のために、電極装置39はV字形に形成されており、2つの脚部を有する。電極装置39の一方の脚部は排出管34に突入し、電極装置39の他方の脚部は排出管35に突入している。
【0068】
以下、図2および3を参照して、選別チップ1内の担体流に懸濁している粒子が如何に分析されるかを説明する。
【0069】
粒子の前分析の枠内で、まず、分析窓ROI1(region of interest 1)における透過光測定ならびに他の分析窓ROI2(region of interest 2)における蛍光測定がなされる。分析窓ROI1は、担体流路33で、蛍光測定のための分析窓ROI2の下流手前に設けられている。
【0070】
この場合、透過光測定のみならず蛍光測定も、図3に略示された検出ユニットDによってなされる。この検出ユニットは、画像検出のために、CCDカメラ40を有する。このCCDカメラは、選別チップ1の下方に設けられており、反射鏡41へ整列されている。
【0071】
選別チップ1の上方には、透過光測定のための光源として、発光ダイオード42が設けられている。発光ダイオード42と選別チップ1との間には、コンデンサ43があり、このコンデンサは例えば位相差絞りを有してもよい。
【0072】
選別チップ1の下方では、コンデンサ43の光路に、対物レンズ44が設けられている。
【0073】
透過光測定の際には、CCDカメラ40は、反射鏡41および対物レンズ44によって、分析窓ROI1の画像を撮像する。
【0074】
更に、検出ユニットDは、複数の電動の操作部45.1ないし45.3を有する。これらの操作部は、対物レンズ44の、フィルタブロック47のおよび反射鏡41の調整を可能にする。この場合、対物レンズ44の調整は倍率のおよび焦点の変更を可能にする。これに対し、フィルタブロック47を調整することができるのは、種々のフィルタを選択するためである。これに対し、反射鏡41の調整は、担体流路33での万が一の堆積を認識するために、視野を担体流路33に沿って移動するという目的を有する。
【0075】
蛍光測定の際に蛍光を励起するために、検出ユニットDは光源46(例えばレーザ)を有する。この光源は、フィルタブロック47によって、担体流路33に懸濁されている生体細胞の蛍光励起を可能にする。このとき、CCDカメラ40は対応の蛍光画像を撮像する。
【0076】
以下、図4を参照して、X線写真での生体細胞の種々の相を記述する。図4の例は、上方領域に、生きている細胞48および死んだ細胞49を示し、下方領域に、X線写真での強度曲線50,51を示す。このことから、生きている細胞48が比較的暗い核を有し、これに対し、死んだ細胞49の内部は、均等に照明されていることが認められる。このことは、これから詳述するように、生きている細胞48と死んだ細胞49との相違を可能にする。
【0077】
以下、図5Aないし5Eに示した流れ図を参照して、本発明に係わる分析法を説明する。
【0078】
方法の始めに、まず、担体流用導管14および被覆流用導管8,9を、70%のエタノール溶液で、続いて蒸留水で、最後に緩衝液で洗浄する。その目的は、細胞選別器の流体システムを清浄し、特に気泡および不純物を除去するためである。
【0079】
続いて、次に、担体流を担体流用シリンジ17から担体流用導管14に注入する。被覆流の供給後に、後述のように、分析される生体細胞を、粒子用インジェクタ15に設けられた注入用シリンジ29によって担体流に注入する。
【0080】
更に、被覆流のための、圧力容器12にある培養媒体を、圧縮空気用導管13を通って供給される圧縮空気によって、圧力容器12から被覆流用導管8,9に押し入れる。被覆流用導管は、選別チップ1の接続部4または6に通じており、選別チップ1において選別される粒子を、選別チップ1の接続部5を通って、送ることを支援する。
【0081】
選別チップ1の担体流路33では、破線矢印で略示されているように、懸濁されている粒子を、まず、電極装置36によって、流れ方向に連続的に並べる。
【0082】
続いて、分析窓ROI1では、時間的に連続的に,複数の位相差画像B,..,Bを撮像する。その目的は、以下に詳述するように、懸濁されている粒子の運動速度を算出し、生きている細胞を死んだ細胞から区別するためである。
【0083】
懸濁されている粒子の運動速度を測定するために、位相差画像B,...,Bの各々に対し、各々の強度信号I,...,Iを算出するのは、位相差画像B,...,Bにおける画像強度を、カラムごとに、すなわち、流れ方向に直角に積分することによってである。個々の強度信号I,...,Iは、夫々、生体細胞の位置で、信号のピークを有する。信号のピークは、複数の細胞の運動速度に対応する強度信号I,...,Iと、これらの強度信号I,...,Iの時間間隔との間で移動する。
【0084】
続いて、時間的に連続する強度信号I,Ii+1に関して、相互相関関数φを計算する。相互相関関数φの計算は、選別チップ1の担体流路33での細胞の運動速度を測定するために用いられる。その目的は、所定の細胞を捕捉すべく、誘電泳動的なかご37を正しい時点で起動させることができるためである。
【0085】
続いて、担体流路33の長手方向における移動xに従う個々の相互相関関数φ(x)に関して、最大値を計算する。
【0086】
このことから、担体流路33での細胞の運動速度は、相互相関関数の最大値の平均値と、連続する位相差画像B,...,Bの間の時間間隔とのからなる商として生じる。
【0087】
細胞の運動速度vを、フィードバックの枠内で、ポンプ制御のために、すなわち、計算されたポンピング速度と実際のポンピング速度が一致するか否かおよび場合によっては実際のポンピング速度が如何に再調整されねばならないかを制御するために、用いることができる。特に、細胞が余りに緩慢に流れる(詰まり)か、止まっているか、逆流さえする元になる故障が、システムにあるか否かを、運動速度vに基づいて、認識することができる。これらの妨害はかくして認識され、例えばシステムの洗浄によって除去されることができる。
【0088】
しかし、その代わりに、細胞の運動速度vの前記測定を、分析窓ROI1,ROI2の外側で行なうことができる。原理的には、細胞の運動の追跡(英語では、「Cell Tracking」)は、担体流路33全体または担体流路33の任意な領域内でも可能である。
【0089】
更に、強度信号I,...,Iの信号形状が、粒子の寸法および凝集体の万が一の形成に関する情報を提供する。引っ括れば、強度信号の評価は、すべてのユニットの、すなわち、ポンプの、誘電泳動的な電極要素(例えば何時「ケージング」がなされ、何時「スイッチング」がなされるか)の、かご37内の詳細な撮像およびサンプルの堆積の、制御および自動化にとって重要である。
【0090】
第2段階では、次に、捕捉時点tを計算する。この捕捉時点で、かご37を起動しなければならない。その目的は、続きの主分析のための分析された粒子を、分析窓UFに捕捉するためである。この場合、捕捉時点tは、1つの粒子の運動速度vと、かご37からの間隔とから生じる。
【0091】
更に、他の段階では、複数の隣り合った粒子の間の粒子間隔dを算出する。このことは、これから詳述するように、個々の細胞と細胞凝集体との間の区別にとって重要となる。
【0092】
以下、死んだ細胞と生きている細胞との区別がなされる、図5Cに記した方法段階を説明する。この目的のためには、その都度、位相差画像における強度が所定の境界値をITHを越えてなる細胞周辺定点x,xを算出する。
【0093】
続いて、細胞周辺定点xとxとの間に強度最大値があるか否かを検査する。このことが当て嵌まり、最小強度が存する場合には、図4から明らかなように、細胞は生きている細胞である。これに対し、異なる場合には、細胞を、死んだものと分類する。その目的は、これから詳述するように、以下に、適切な選別を行なうためである。
【0094】
死んだ細胞と生きている細胞との間の前記区別の後に、図5Dの方法段階で、個々の細胞の輝度Lを算出するのは、1つの細胞の強度Iを、細胞周辺定点xとxとの間に積分することによってである。
【0095】
続いて、細胞の、かように算出された輝度Lを、最小値Lminおよび最大値Lmaxと比較する。
【0096】
細胞の算出された輝度がこの窓内部にある場合には、透過照明をオフにし、光源46により蛍光の励起をオンにする。続いて、次に、蛍光画像を分析窓ROI2において撮像し、細胞の蛍光Iを測定する。
【0097】
しかし、蛍光の励起が永続的に起動されていることも可能である。但し、細胞の算出された輝度が前記窓の内側にあるとき、透過照明はオフにされる。
【0098】
細胞の測定された蛍光Iが所定の境界値Iminを越えるとき、このことは、当該の細胞が蛍光マーカーを有することを示す。
【0099】
これに対し、測定された蛍光Iが所定の境界値Iminを下回るとき、当該の細胞が蛍光マーカーを有しないことを前提とすることができる。
【0100】
図5Eに示した方法段階で、次に、所定の細胞を選別する。生きている細胞と死んだ細胞との区別および蛍光マーカーの有無の検査を考慮する。例えば、生きておりかつ蛍光マーカーを有する細胞を選別することができる。これに対し、他の細胞を選別除外する。
【0101】
他の段階で、次に、一方では個々の細胞と、他方では細胞凝集体との区別を、予め算出された粒子間隔dを所定の最小値dMINと比較することによって、行なう。最小値dMINを下回るときは、粒子が細胞凝集体であるので、工程が終了されることを前提とする。これに対し、粒子間隔dが所定の最小値dMINを上回るときは、粒子が個々の細胞であり、工程が、以下に記述する段階によって続行されることを前提とする。
【0102】
かように選別された細胞を、次に、所定の捕捉時点tで、誘電泳動的なかご37に捕捉し、このことによって固定する。それ故に、続いて、解像度が高まりかつ照射時間が長くなるに連れて、捕捉された細胞の主分析が可能である。
【0103】
選別された細胞、すなわち、通常は、生きておりかつ蛍光マーカーを有する細胞を、次に、電極装置38によって排出管34へ送り込み、これに対し、選別除外された細胞(例えば、死んだ細胞)を排出管35に運ぶ。
【0104】
分析窓UFでの主分析は、蛍光励起を有する画像である。1つまたは複数の励起波長は同時にまたは時間的にずれて用いられる。この目的のために、フィルタブロック47に、適切なダイクロイック・ミラーが用いられる。この場合、1つまたは複数の波長の蛍光が、同時に、1つまたは複数のカメラへ導かれる。この目的のために、フィルタブロック47に、適切な発光フィルタ要素または適切な発光分割器が用いられる。かくて、複数の蛍光色の場合に、選別された細胞の複数の画像を同時にまたは順番に形成することが可能である。更に、白光の位相差照明の場合に、選別された細胞の1つの画像を形成することも可能である。このことは、蛍光マーカーを有する細胞に、なお1つのまたは複数の蛍光マーカーを有しない細胞が付着しているか否かを確認するために必要である。付着は、蛍光マーカーを有するこの細胞の、通常は望ましくない汚染をもたらす。
【0105】
図6に示した実施の形態は、図2に示した実施の形態とかなり一致している。それ故に、繰返しを避けるために、前記記述を参照するよう指摘する。以下、対応の構成部材に関しては、区別のために単にダッシュが付されている参照符号を用いる。
【0106】
この実施の形態の特殊性は、担体流路33´で入口側に設けられており、かつ担体流に懸濁されている粒子を担体流路33´に連続的に並べる誘電泳動的な電極装置36´の、より単純な構造にある。
【0107】
この実施の形態の他の特殊性は、担体流路33´で、電極装置36´の下流方向後方には、鉤状の電極装置52´が設けられていることにある。この電極装置は、その形状に応じて、「フック」とも呼ばれ、粒子を捕まえておき、いわば止めておくという課題を有する。電極装置52´の正確な構造および機能方法は、例えば、Bioworld 2-2002に所収のT・ミュラー等『Life Cells in Cellprocessors』に記載されている。それ故に、ここでは、電極装置52´の詳述を省略することができ、前記刊行物の内容を、本明細書に全面的に組み込むことができる。
【0108】
担体流路33´では、電極装置52´と誘電泳動的なかご37´との間に、分析窓53´が設けられている。その目的は、分析窓ROI1およびROI2に関して前記した予備分析を実行するためである。
【0109】
この場合、他の分析窓54´は、誘電泳動的なかご37´にある。それ故に、誘電泳動的なかご37´で、減速された粒子の分析を実行することができる。
【0110】
この実施の形態の他の特殊性は、プラスに選択された粒子のための排出管34´には、電極装置36´に対応する機能を有する漏斗状の電極装置55´が設けられていることにある。この電極装置は、粒子を排出管34´に位置決めする課題を有する。このことは好都合である。何故ならば、排出管34´内の粒子は、沈下の傾向を有し、従って、流速が低い壁付近に、堆積することがあるからである。電極装置55´は、粒子のこのような沈下を防止し、このことによって、粒子を、排出管34´の中央に保つ。そこでは、流速が最大である。
【0111】
更に、電極装置36´,52´並びに誘電泳動的なかご37´が担体流路33´に偏心的に設けられていることに言及しなければならない。このことは、結果として、電極装置38´が起動されないとき、担体流路33´に含まれている粒子が、誘電泳動的なかご37´による解放後に、マイナスに選別された粒子のための排出管35´に自動的に達することを伴う。このことは、プラスに選別されるべき粒子が担体流に極僅か含まれているときにのみ、電極装置38´が起動されればよいという利点をもたらす。
【0112】
図7に示した代替の実施の形態は、図6に示した前記の実施の形態にかなり一致している。それ故に、繰返しを避けるために、前記記述を参照するよう指摘する。以下、対応の構成部材に関しては、区別のためにツーダッシュが付されている参照符号を用いる。
【0113】
この実施の形態の特殊性は、誘電泳動的なかご37´´が、担体流路33´´が2つの排出管34´´,35´´に分岐している位置に、設けられていることにある。更に、この場合、誘電泳動的なかご37´´の個々の電極が、別々に起動されることができる。それ故に、誘電泳動的なかご37´´は、2つの機能、すなわち、一方では、かご(英語では「Cage」)の機能と、他方では、スイッチ(英語では「Switch」または転轍器の機能を果たすことができる。誘電泳動的なかご37´´は、一方では分析窓54´´での分析のために、粒子を、担体流に固定し、他方では、粒子を2つの排出管34´´,35´´の一方に供給することができる。
【0114】
分岐点に関する、本明細書の枠内で用いられる概念は、一般的な意味を有し、排出管の幾何学的交点に限定されない。むしろ、かご37´´または転轍器がこれらの排出管の上流方向手前に設けられていることも可能である。例えば、分岐点の概念は、いわゆる「セパラトリックス」を含む。このセパラトリックスは、担体流路における層流の分割線である。
【0115】
更に、電極装置36´´,52´´、かご37´´および測定点(Messstationen)53´´,54´´は、ここではおよび以下の実施の形態で、担体流路33´´で中央に設けられている。
【0116】
図8に示した実施の形態は、図7に示した前記の実施の形態にかなり一致している。それ故に、繰返しを避けるために、前記記述を参照するよう指摘する。以下、対応の構成部材に関しては、区別のためにスリーダッシュが付されている参照符号を用いる。
【0117】
この実施の形態の特殊性は、誘電泳動的なかご37´´´の構造的形態にある。このかごはここでは6つの空間的に設けられた電極からなる。個々の電極は別々に起動されることができる。その目的は、かご37´´´がスイッチまたは転轍器としてあるいはかごとして選択的に機能することができるためである。
【0118】
図9は、最後に、選別チップの可能な配列の他の実施の形態を示す。ここでは、2つの担体流用導管56,57は共通の担体流用導管58に通じている。2つの担体流用導管56,57を通って、夫々、懸濁されている粒子が供給される。
【0119】
2つの担体流用導管56,57には、夫々、漏斗状の電極装置59,60が設けられている。その目的は、2つの担体流用導管56,57の担体流に含まれている粒子を位置決めするためである。
【0120】
共通の担体流路58では、2つの担体流用導管56,57の上流方向合流点に、隔壁61がある。それ故に、2つの担体流用導管56,57の担体流に懸濁されている粒子が、担体流路58内で、まず相並んで平行におよび互いに分離して送られる。
【0121】
隔壁61の領域では、担体流路58内に、2つの分析窓62,63がある。その目的は、懸濁されている粒子を、傍らを流れる間に、前分析に晒すためである。前分析は、例えば、図2に関し前述のように、なされることができる。
【0122】
2つの分析窓62,63の下流方向後方には、担体流用導管58に、漏斗状の電極装置64が設けられている。この電極装置は、2つの部分流で隔壁61の両側に懸濁されている粒子を位置決めし、それを誘電泳動的なかご65に供給する。このかごは、分析のための粒子を、他の分析窓66に固定することができる。
【0123】
誘電泳動的なかご65の下流方向後方に、他の電極装置67がある。この電極装置は、担体流に懸濁されている粒子を、かご65による解放後に、分析窓66での分析の結果に応じて、3つの排出管68,69,70のうちの1に供給する。この場合、排出管68,70は、マイナスに選別された粒子を運び出すために用いられる。これに対し、排出管69はプラスに選別された粒子を更に導くために用いられる。従って、マイナスに選別された粒子のための排出管68,70に粒子を搬送することが意図されるとき、電極装置67はアクティブに起動される必要がある。これに対し、プラスに選別された粒子のために起動はなされない。従って、この電極装置は、特に、極僅かの粒子がマイナスに選別される分析の場合に、適切である。
【0124】
本発明は前記の好ましい実施の形態に限定されない。むしろ、同様に本発明の思想を用いるので、保護範囲に含まれる多数の変更の実施の形態が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】選別チップを有する、本発明に係わる細胞選別器の、その流れ図を示す。
【図2】複数の誘電泳動的な要素を有する選別チップの担体流路を示す。
【図3】図1の細胞選別器の分析用レンズの略図を示す。
【図4】死んだ生体細胞と生きている生体細胞の区別を明示するためのグラフを示す。
【図5A】流れ図の形の、本発明に係わる分析方法の、実施の形態を示す。
【図5B】流れ図の形の、本発明に係わる分析方法の、他の実施の形態を示す。
【図5C】流れ図の形の、本発明に係わる分析方法の、他の実施の形態を示す。
【図5D】流れ図の形の、本発明に係わる分析方法の、他の実施の形態を示す。
【図5E】流れ図の形の、本発明に係わる分析方法の、他の実施の形態を示す。
【図6】複数の誘電泳動的な要素を有する選別チップの、その担体流路の代替の実施の形態を示す。
【図7】複数の誘電泳動的な要素を有する選別チップの、その担体流路の他の代替の実施の形態を示す。
【図8】複数の誘電泳動的な要素を有する選別チップの、その担体流路の他の代替の実施の形態を示す。
【図9】複数の誘電泳動的な要素を有する選別チップの、その担体流路の他の代替の実施の形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子(48,49)のための、特に生体粒子(48,49)のための分析方法であって、
分析される前記粒子(48,49)を少なくとも1つの担体流に挿入する工程と、
前記担体流と共に移動する前記粒子(48,49)の少なくとも第1の分析を実行する工程と、
この第1の分析の結果に従って少なくとも1つの粒子(48,49)を選別する工程と、
前記選別された粒子(48,49)を減速する工程と、
前記選別された粒子(48,49)の少なくとも第2の分析を、減速された状態で実行する工程とを具備する分析方法。
【請求項2】
前記選別された粒子(48,49)を、前記第2の分析の結果に応じて選別および/または処理することを特徴とする請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
前記第1の分析の枠内でおよび/または前記第2の分析の枠内で透過光測定および蛍光測定を行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の分析方法。
【請求項4】
前記透過光測定は、第1の分析窓(ROI1)で、前記蛍光測定は第2の分析窓(ROI2)で実行され、前記2つの分析窓(ROI1,ROI2)は空間的に互いに分離されていることを特徴とする請求項3に記載の分析方法。
【請求項5】
前記第1の分析の枠内で前記粒子(48,49)の少なくとも1つの光学画像を撮像することを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の分析方法。
【請求項6】
前記第1の分析の枠内で、電気的なおよび/または電磁的な分析を行なうことを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の分析方法。
【請求項7】
前記第1の分析の枠内で、インピーダンス分析を行なうことを特徴とする請求項6に記載の分析方法。
【請求項8】
前記粒子(48,49)を、前記第1の分析の際におよび/または前記第2の分析の際に、形態学的におよび/または大きさに関して分析することを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の分析方法。
【請求項9】
前記第1の分析の際に、前記担体流中の前記粒子(48,49)が、その都度、個々の生体細胞からなるか、複数の生体細胞からなるか否かが検査され、前記第2の分析のために、唯一の生体細胞からなる粒子(48,49)が選別されることを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の分析方法。
【請求項10】
前記第1の分析の際に、前記担体流中の前記粒子(48,49)が、生きた細胞(48)であるか、死んだ細胞(49)であるか否かが検査されることを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の分析方法。
【請求項11】
前記第1の分析の枠内で、前記粒子(48,49)の透過光測定がなされ、前記粒子(48,49)の光学画像が撮像され、前記粒子(48,49)の前記画像での強度分布(50,51)が評価されることを特徴とする請求項10に記載の分析方法。
【請求項12】
蛍光測定による前記第1の分析の際に、前記担体流中の前記粒子(48,49)が、蛍光マーカーに関する所定の閾値を越えるか否かが、検査されることを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の分析方法。
【請求項13】
前記第1の分析によって選別された前記粒子(48,49)は、減速のために、場のかご(37,37´,37´´,37´´´,65)に固定されおよび/または前記担体流は減速されることを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の分析方法。
【請求項14】
粒子(48,49)、特に生体粒子(48,49)を分析するための分析装置であって、
懸濁されている前記粒子(48,49)を有する担体流を収容する担体流路(33,33´,33´´,33´´´,58)と、
前記担体流と共に移動する前記粒子(48,49)の第1の分析を実行するための第1の測定点(ROI1,ROI2,53´,53´´,53´´´,62,63)と、
前記第1の分析の結果に応じて前記粒子を選別するための選別ユニット(37,37´,37´´.37´´´,65)と、
前記選別された粒子(48,49)の第2の分析を減速された状態で実行するための第2の測定点(UF,54´,54´´,54´´´,66)とを具備し、
前記選別ユニット(37,37´,37´´.37´´´,65)は、前記選別された粒子(48,49)を減速するための減速手段(37,37´,37´´.37´´´,65)を有する。
【請求項15】
前記第2の測定点(UF,54´,54´´,54´´´,66)は、前記第1の測定点(ROI1,ROI2,53´,53´´,53´´´)の下流方向後方に設けられていることを特徴とする請求項14に記載の分析装置。
【請求項16】
前記第2の測定点(UF,54´,54´´,54´´´,66)の下流方向後方には、前記選別された粒子(48,49)を、前記第1のおよび/または第2の分析の結果に応じて処理および/または選別するために、処理手段および/または選別手段(38,38´,67)が設けられていることを特徴とする請求項14または15に記載の分析装置。
【請求項17】
前記担体流路(33,33´,33´´,33´´´,58)は、前記第2の測定点(UF,54´,54´´,54´´´,66)の下流方向後方で、少なくとも2つの流路(34,34´,34´´,34´´´,35,35´,35´´,35´´´)に分岐されており、前記選別手段(38,38´,37´´,37´´´)は、前記担体流路(33,33´,33´´,33´´´,58)の分岐領域に設けられていることを特徴とする請求項16に記載の分析装置。
【請求項18】
前記選別手段(38)は、前記担体流路(33,33´,33´´,33´´´,58)の分岐領域に設けられている誘電的な転轍器を有することを特徴とする請求項17に記載の分析装置。
【請求項19】
前記担体流路(33,33´,33´´,33´´´,58)の分岐領域には、前記2つの流路(34,35)の一方から他方の流路(34,35)への前記担体流および/または前記粒子(48,49)の逆流を阻止するために、流れ案内手段(39)が設けられていることを特徴とする請求項17または18に記載の分析装置。
【請求項20】
前記流れ案内手段(39)は電極を有することを特徴とする請求項19に記載の分析装置。
【請求項21】
前記流れ案内手段(39)の電極は実質的にV字形に形成されており、2つの脚部を有し、これらの脚部は、実質的に、前記2つの分岐する流路(34,35)の方向に延びていることを特徴とする請求項20に記載の分析装置。
【請求項22】
前記減速手段(37,37´,37´´.37´´´,65)は誘電的なかごを有することを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の分析装置。
【請求項23】
前記担体流路(33,33´,33´´,33´´´,58)では、前記第1の測定点(ROI1,ROI2)の上流方向手前に、複数の集束電極(36)が設けられていることを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の分析装置。
【請求項24】
前記第1の測定点(ROI1,ROI2,53´,53´´,53´´´,62,63)および/または前記第2の測定点(UF,54´,54´´,54´´´)は、画像を撮像するために、レンズ(44)を有することを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の分析装置。
【請求項25】
前記レンズ(44)は、前記画像を、少なくとも、前記担体流路(33,33´,33´´,33´´´,58)に沿って、移動させるために、可動であることを特徴とする請求項24に記載の分析装置。
【請求項26】
前記レンズ(44)は、画像の移動のために、電気機械式の操作部(45)に接続されていることを特徴とする請求項25に記載の分析装置。
【請求項27】
請求項14ないし26のいずれか1に記載の分析装置の、医学的および/または薬学的研究でのおよび/または診断でのおよび/または法医学での使用。
【請求項28】
請求項14ないし26のいずれか1に記載の分析装置の、種々の細胞型、特に消滅状態のおよび壊死性の細胞、異なった発現パターンを有する細胞および/または親細胞を分離するための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−517292(P2006−517292A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501735(P2006−501735)
【出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001034
【国際公開番号】WO2004/070362
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505296751)エボテック・テヒノロギーズ・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】