説明

マルチフィラメントヤーンを溶融紡糸し延伸し巻き取る方法ならびにマルチフィラメントヤーンを溶融紡糸し延伸し巻き取る方法を実施する装置

本発明は、マルチフィラメントヤーンを溶融紡糸し延伸し巻き取りFDY糸を形成する方法ならびにこの方法を実施する装置に関する。先ず、熱可塑性の溶融物から多数のフィラメントが押し出され、熱可塑性材料のガラス転移温度を下回る温度に冷却され、最大で8%の水含有率を有する準備処理油が供給され、フィラメントがまとめられ、フィラメント束が形成される。次いで、被駆動のゴデットローラの選択的に加熱されるガイド被覆体においてフィラメント束を1重に部分的に巻き掛けることにより、フィラメント束は、1200m/minを上回る引取速度で引き取られる。延伸し次いで弛緩するために、フィラメント束は、3500m/minを上回る延伸速度で、被駆動のゴデットローラの加熱された別のガイド被覆体の周りに1重に部分的に巻き掛けてガイドされる。このために本発明による装置は、被駆動の複数のゴデットローラを有する2つのゴデット群を備え、第1のゴデット群は、フィラメント束を、引き取りかつ/または加熱するために1重に部分的に巻き掛けてガイドし、第2のゴデット群は、フィラメント束を、延伸するために1重に部分的に巻き掛けてガイドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチフィラメントヤーンを溶融紡糸し延伸し巻き取りFDY糸を製造する方法ならびに請求項9の前提部に記載の方法を実施する装置に関する。
【0002】
冒頭で言及するマルチフィラメントヤーンを溶融紡糸し延伸し巻き取る方法ならびに冒頭で言及するマルチフィラメントヤーンを溶融紡糸し延伸し巻き取る方法を実施する装置は、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第2118316号明細書において公知である。
【0003】
特に繊維分野で利用するための合成糸を製造する際に、一般的に、マルチフィラメントヤーンを、溶融紡糸後に製造しようとする糸種に応じて多少延伸することが公知である。延伸の程度に応じて、いわゆるPOYヤーンFDY糸との間で区別が行われる。POY糸(Pre Oriented Yarn;前配向糸)は、前配向されるが不完全に延伸された構造を有し、通常、第2のプロセスステップで、たとえば仮撚り加工で、最終的な糸に後続加工される。これに対してFDY糸(Full Drawn Yarn;完全延伸糸)は、完全に延伸されていて、直接、面状の繊維製品の後加工に使用される。
【0004】
合成糸の延伸は、複数のゴデットローラにおける被駆動のガイド被覆体により行われ、その際、糸は、ガイド被覆体の周囲に接触しながらガイドされる。ゴデットローラのガイド被覆体は、糸を延伸または弛緩する目的で温めるために、少なくとも部分的に加熱される。一方では、強い延伸がゴデットローラのガイド被覆体の間の大きな速度差に基づいて行われ、他方では、糸の温めが加熱されたガイド被覆体による接触により行われるので、高速では、糸を温めるためのガイド被覆体と糸との間の大きな接触長さが要求される。このような理由から、合成糸を引き取り延伸して完全に延伸された糸を製造するために、通常、ゴデット対偶が用いられ、ゴデット対偶は、同一の周速度で駆動される2つのガイド被覆体を備え、糸を多重に(つまり複数のローラに)巻き掛けてガイドする。このような方法および装置は、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第2118316号明細書において公知である。
【0005】
公知の方法および公知の装置では、フィラメントは、エクストルーダから供給されたあとで、僅かな水分しか含まない平滑剤で処理され、次いで複数のゴデット対偶により引き取られ延伸される。このために各ゴデット対偶は、被駆動の2つのガイド被覆体を備えており、ガイド被覆体に、フィラメント束が多重に巻き掛けられながらガイドされる。これに関して、フィラメント束に熱処理を行いかつフィラメント束に引取りまたは延伸のための糸張力を形成するために、ガイド被覆体は、ゴデット対偶の1つと協働する。ガイド被覆体における巻掛の数は、速度に関して、ガイド被覆体からフィラメント束が繰り出されたあとで糸に所望の延伸温度および要求される張力が達成されるように、選択されている。通常、フィラメント束とガイド面との間に接触するたびに、フィラメント束のマルチフィラメント構造に基づいて個々のフィラメントに不規則性を及ぼし得る摩擦作用が生じる。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3146054号明細書において、マルチフィラメントヤーンを引き取り延伸する方法および装置が公知であり、そこでは、引き取られるまえにフィラメント束に市販の準備処理剤が付与され、フィラメント束は、1重の(つまり1つのローラに)巻掛で引き出すために1つのゴデットローラのガイド被覆体にガイドされる。ガイド被覆体は温められないので、糸は、後続の域で低温で延伸される。FDY糸に関して、ボイルオフ収縮(Kochschrumpf)を調節するための一般的な熱後処理は、後続のゴデット対偶における多重に巻き掛けられたゴデットローラにより行われる。このような冷間延伸された糸の一般的な欠点によれば、特に平行にガイドされる複数のフィラメント束を製造する際に多大な問題をもたらすことがある極めて高い延伸力を形成する必要がある。さらにフィラメント束の十分な加熱を保証するために、熱後処理のための長い片持ちのゴデットローラが必要とされる。
【0007】
また、従来技術において、放射加熱装置を用いて糸の加熱を非接触式に行う方法および装置も公知である。国際公開第2007/115703号パンフレットにおいて、マルチフィラメントヤーンを引き取り延伸する方法および装置が記載されており、そこでは、フィラメント束は、1重の巻掛でゴデットローラのガイド被覆体にガイドされている。その際、ガイド被覆体の間に自由な処理域が形成されており、処理域は、放射加熱器を用いてフィラメント束を加熱するために用いられる。このような方法および装置では、高い速度で十分な温度調整を実現するために、比較的大きなフィラメント束の自由なガイド区間が要求される。
【0008】
したがって本発明の課題は、糸を溶融紡糸し延伸し巻き取りFDY糸を製造する方法ならびにこのような方法を実施する装置を改良して、フィラメント束の全てのフィラメントをできるだけ均一に処理しながら、完全に延伸するためのフィラメント束のガイドおよび加熱をできるだけソフトに行うものを提供することである。
【0009】
本発明の別の課題は、冒頭で述べたような方法および装置を改良して、できるだけコンパクトな配置で、平行に紡糸された複数のフィラメント束が製造可能であるものを提供することである。
【0010】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の構成を有する方法ならびに請求項9の特徴部に記載の構成を有する方法を実施する装置により解決される。
【0011】
本発明の好適な別の態様は、各従属請求項に記載の構成および各構成の組み合わせにより規定される。
【0012】
本発明の思想によれば、マルチフィラメントヤーンを加熱する際に、糸材料のみならず準備処理流体も均等に加熱する必要がある。したがって準備処理された糸を加熱するまえに、先ず水分が蒸発し、フィラメント束から分離される。ドイツ連邦共和国特許出願公開第2118316号明細書の思想において、水含有量の減少がフィラメント束の延伸にとって好適であることが看取されるが、依然としてゴデット対偶の多重の巻掛による従来慣用の糸ガイドが要求される。
【0013】
この解決するための手段を見出す過程において、差し当たり厳しい条件が存在する。一般的に公知であるように、フィラメント束を完全に延伸するためには、フィラメント束とガイド被覆体との間の収縮を回避するために、ゴデットローラのガイド被覆体に極めて大きな引張力を作用させる必要がある。したがって特にFDY糸を製造する際に、ゴデットローラに、多重の巻掛を必要とする巻掛角度が形成される。
【0014】
本発明により明らかであるように、フィラメント束の加熱は、最大で8%の準備処理油における水含有量の制限やゴデットローラのガイド被覆体におけるフィラメント束の交互の接触により、極めて強くすることができる。したがってたとえば高温延伸では、ネックポイント(Versteckpunkt(Neck point)、延伸点、ボトルネック;フィラメント束が延伸されて細長くなる箇所)の位置は、厳しく制限して形成されており、このことは必要な延伸力に好適に働く。とりわけ本発明によればゴデットローラの1重に巻き掛けられるガイド被覆体により行われる低温延伸または高温延伸で、ボイルオフ収縮を調節する熱後処理が特に好適である。さらにゴデットローラのガイド被覆体に交互に接触する糸ガイドにより、個々のガイド被覆体に大きな巻掛角度を形成する構成が提供される。したがって1重に巻き掛けられるガイド被覆体でも、不都合な収縮発生のない比較的高い延伸力を形成することができるので、複数の糸を平行に相並んで低温状態で延伸することもできる。本発明によれば、フィラメント束は、最大で8%の水含有量を有する準備処理油を付与したあとで、被駆動の複数のゴデットローラの選択的に加熱されるガイド被覆体にフィラメント束を1重に部分的に巻き掛けることにより、1200m/minを上回る速度で引き取られる。延伸段階において3500m/minを上回る延伸速度でのフィラメント束の延伸は、同様に、下流側に配置された被駆動の複数のゴデットローラのガイド被覆体にフィラメント束を1重に部分的に巻き掛けることにより行われ、その際、ガイド被覆体は、弛緩および収縮を調節するために加熱されて構成されている。
【0015】
このような糸ガイドのさらなる利点によれば、フィラメント束のフィラメントは、物理的な性質において極めて高い均一性を有している。したがってフィラメント束を交互に巻き掛けることにより、殆ど全てのフィラメントがガイド被覆体の1つに接触させられるので、フィラメントは、摩擦力結合および熱結合に関して同一の過程を有している。
【0016】
マルチフィラメントヤーンを溶融紡糸し延伸し巻き取る方法を実施するために、本発明による装置によれば、フィラメント束を引き取るための被駆動のゴデットローラのガイド被覆体が、第1のゴデット群を形成しており、ガイド被覆体は、糸走行経路において、1重に部分的に巻き掛けて配置されていて、かつ選択的に加熱可能であり、延伸するための被駆動のゴデットローラのガイド被覆体が、第2のゴデット群を形成しており、加熱されるガイド被覆体は、糸走行経路において、1重に部分的に巻き掛けて配置されており、両方のゴデット群の間に延伸域が形成されている。これにより、特に多数の糸をガイドするために適切な、延伸しかつ弛緩するための極めてコンパクトな装置が実現される。したがって極めて短いガイド被覆体に、複数の糸を平行に相並んで1重に巻き掛けてガイドすることができる。
【0017】
フィラメントを引き取り延伸する際に、一方では十分な糸張力を形成し、他方ではゴデットローラのガイド被覆体におけるフィラメント束の収縮のないガイドを保証するために、特に好適な方法では、ゴデットローラのガイド被覆体においてそれぞれ180°を上回る巻掛角度でフィラメント束がガイドされる。
【0018】
このためにゴデットローラのガイド被覆体は、糸走行経路において、それぞれ180°を上回る巻掛角度で1重に部分的に巻き掛けて配置されており、その際、隣接するゴデットローラは、好適には逆向きに駆動されるガイド被覆体を備えている。これにより特にゴデットローラの1つのガイド被覆体に交互に巻き掛けられる糸ガイドが実現される。
【0019】
準備処理油における水分は主に準備処理油を希薄しかつ準備処理油の流れ特性を改善するために用いられるので、8%を下回る水含有量を有する準備処理油は比較的高い粘性を有している。さらにフィラメントおよびフィラメント束の湿潤(オイリング、油剤付与)に関する流れ特性を改善するために、本発明による好適な方法では、準備処理油は、フィラメントに付与されるまえに加熱される。
【0020】
本発明による装置によれば、準備処理油を加熱するための準備処理装置に対応して配置された加熱手段が設けられている。その際、調量ポンプを介して供給される調量された準備処理油量は、好適には油剤付与の直前に加熱される。
【0021】
一方では準備処理油の均一化を達成して、他方ではフィラメント束の内側でフィラメントのできるだけ帯状の広がりを形成するために、本発明の好適な態様によれば、フィラメント束は、糸ブレーキを通ってガイドされる。このために糸ブレーキは、第1のゴデット群のゴデットローラの直前に配置されている。
【0022】
比較的小さな糸番手を有する、繊維技術に使用するためのFDY糸を製造するために、格別な方法によれば、フィラメント束を加熱するかまたは加熱せずに引き取るために、糸が、第1のゴデット対偶の2つのガイド被覆体にS字状またはZ字状に部分的に巻き掛けて接触しながらガイドされる。
【0023】
このために本発明による装置によれば、第1のゴデット群が設けられており、第1のゴデット群は、選択的に加熱される2つのガイド被覆体を備えた第1のゴデット対偶により構成される。
【0024】
フィラメント束を延伸しかつ弛緩するために熱後処理が行われ、糸が第2のゴデット対偶の加熱される2つのガイド被覆体にS字状またはZ字状に部分的に巻き掛けて接触させながらガイドされる方法が好適である。これに関して、引き取り延伸するためのゴデットローラの数は、1重の部分巻掛で最小限に抑えられる。ゴデット対偶のガイド被覆体は、互いに逆向きに回動する電気駆動装置により駆動される。
【0025】
特に延伸後の高い糸速度でフィラメント束の十分な弛緩を行うために、本発明による方法によれば、フィラメント束が、追加的に非接触式に放射加熱器の熱放射により加熱される。
【0026】
このために少なくとも1つの放射加熱器が、第2のゴデット群のゴデットローラの1つに対応して配置されるか、またはゴデットローラの1つの傍に配置される。
【0027】
糸を後続処理するために、フィラメント束は十分な糸結合部を有する必要があり、糸結合部は、通常、いわゆる交絡結節部により形成され、交絡結節部は、フィラメント束の交絡する際に形成される。フィラメント束において、特に先行のプロセスステップおよび後続のプロセスステップとは無関係である、交絡にとって最適な糸張力を調節するために、本発明の好適な方法によれば、フィラメント束は、巻き取るまえに、被駆動の2つのゴデットローラの間で緊張した糸部分で交絡され、その際、交絡により、1mの糸長さあたり少なくとも10の交絡結節部が形成される。両方のゴデットローラの速度差の調節により、交絡にとって最適な糸張力が形成される。後続のプロセスステップ、たとえば巻取は、これとは無関係な巻取張力で実施することができる。
【0028】
糸を巻き取るまえの糸結合部の形成は、本発明による装置によれば、巻取装置の上流側に配置された交絡装置により行われ、その際、それぞれ進入側および繰出側で、交絡装置に対応して被駆動のゴデットローラが配置されている。これにより所望の糸張力が、ゴデットの個々の駆動装置の制御により調節される。
【0029】
糸結合を、巻取前に、糸をさらに油剤付与することにより改善することもできる。このために本発明による装置の別の態様が適切であり、そこでは、準備処理装置が、フィラメント束を準備処理するための個別の2つの準備処理ステーションを備えており、その際、第1の準備処理ステーションは、糸収集ガイドに対応して配置されており、第2の準備処理ステーションは、第2のゴデット群と巻取装置との間に配置されている。準備処理剤量は、これにより複数の部分準備処理剤付与で糸に供給される。したがって第1の準備処理剤は、紡糸直後で延伸前にフィラメント束に供給することができる。その際、糸ガイドおよびガイド被覆体における糸の走行特性を改善するために極めて少量の準備処理剤が用いられる。糸の後処理に必要な油剤付与は、延伸後で巻取前に第2の部分準備処理で行われる。
【0030】
以下に、本発明による方法ならびに本発明による方法を実施する装置を、添付の図面を用いながら本発明による装置の1つの実施の態様に基づいて詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による方法を実施するための本発明による装置の1態様を示す側面図である。
【0032】
図1には、FDY糸を製造するための本発明による方法を実施する本発明による装置の1態様を示している。
【0033】
マルチフィラメントヤーンを溶融紡糸するために、加熱可能な紡糸ビーム1が設けられており、紡糸ビーム1は、その下面に、多数の口金開口を有する紡糸口金3を備え、上面に、溶融物供給部2を備えている。溶融物供給部2は、図示していない溶融物源、たとえばエクストルーダと連結されている。紡糸ビーム1の内側には、溶融物をガイドして溶融物を搬送する別の構成要素が配置可能であり、この構成要素についてはここでは詳説しない。
【0034】
紡糸ビーム1は、その下面に、同時に複数の糸を相互に平行に紡糸するために複数の紡糸口金3を備えている。紡糸ビーム1は、図平面に対して横向きに整列されているので、図1からは1つの紡糸口金3しか看取されない。後続の装置およびアセンブリについては、糸走行経路に従って詳説する。原則として、相互に平行に形成される全部で5本の各糸は、それぞれ同一に加工処理される。
【0035】
紡糸ビーム1の下側に冷却装置6が設けられており、冷却装置6は、冷却筒8と送風装置7とから構成されている。冷却筒8は、紡糸口金3を通って押し出される多数のフィラメント4が冷却筒8を通過するように、紡糸口金3の下側に配置されている。送風装置7を介して冷却空気流が形成され、冷却空気流は、冷却筒8に導入されるので、紡糸口金3を通って押し出されたフィラメント4は、冷却空気流により均一に冷却される。
【0036】
冷却筒8の下側に、フィラメント4をまとめてフィラメント束5にガイドするための糸収集ガイド9および準備処理装置16が設けられている。このために糸収集ガイド9は、紡糸口金3の中央下側に配置されているので、フィラメント4は、糸収集ガイド9において均一にまとめられる。その際、フィラメントに準備処理油が供給され、これによりフィラメント束5の内側で全フィラメントの均一な油剤付与が得られる。準備処理油は、好適には8%を下回る極めて僅かな水含有率を有している。準備処理油が90cS〜100cS(センチストーク)の範囲の比較的高い粘度を有しているのにもかかわらず、フィラメント束5の内側で均一な分配を得るために、準備処理油は、本態様では、油剤付与のまえに加熱される。準備処理装置16は、調量ライン19を介して、調量ポンプ17と接続されており、調量ポンプ17により、タンク(図示していない)から吸い込まれた準備処理油が準備処理装置16に供給される。調量ポンプ17と準備装置16との間には、準備処理油を加熱するための加熱装置18が設けられている。加熱された準備処理油は、比較的小さな粘度を有し、フィラメント束に直に油剤付与することができる。
【0037】
準備処理剤を複数に分けた部分準備処理で相互に無関係に付与してもよく、先ず極めて少量が紡糸後のフィラメント束に供給可能である。図1の態様では、個別の2つの準備処理ステーション16.1,16.2を破線で示しており、その際、第1の準備処理ステーション16.1は、糸収集ガイド9に対応して配置されており、第2の準備処理ステーション16.2は、第2のゴデット群13.2と巻取装置23との間に配置されている。これにより、準備処理量を複数の部分的な付与で糸に供給することができる。したがって第1の部分準備処理量を紡糸直後で延伸前にフィラメント束に供給することができる。その際、糸ガイドおよびガイド被覆体における糸の走行特性を改善するために、極めて少量の準備処理剤が用いられる。糸の後処理に必要な油剤付与は、延伸後で巻取前に第2の部分着けで行うことができる。その際、原則として、著しく高い水含有率を有する準備処理剤を用いてもよい。
【0038】
冷却筒8の下側に、これに隣接して、出口側に配置された進入糸ガイド11を備えた紡糸筒10が配置されている。紡糸筒10の内側で、フィラメント束5は、紡糸口金3の間隔により規定される紡糸間隔から出発して、処理間隔にまとめられる。このためにフィラメント束5は、先ず進入糸ガイド11を通って相互に処理間隔にもたらされるので、フィラメント束5は、3mm〜8mmの範囲の短い間隔で平行に相並んでガイド可能である。紡糸筒10の下側には、被駆動の複数のゴデットローラ20.1,20.2を備えた第1のゴデット群13.1が配置されている。ゴデット群13.1のゴデットローラ20.1,20.2は、2つのガイド被覆体14.1,14.2を備えたゴデット対偶として構成されている。ゴデット対偶13.1は、同一の周速度で駆動される2つのガイド被覆体14.1,14.2を備えている。ゴデット対偶13.1のガイド被覆体14.1,14.2は、相互に上下に配置されていて、それぞれ個別の電動モータ(図示していない)により駆動される。ガイド被覆体14.1の電動モータは、左回りに構成されていて、ガイド被覆体14.1を反時計回り方向に駆動する。ガイド被覆体14.2の電動モータは、右回りに構成されていて、ガイド被覆体14.2を時計回り方向に駆動する。したがってガイド被覆体14.1,14.2は、互いに逆向きに回転する。高温延伸の場合、各ガイド被覆体14.1,14.2は、ガイド被覆体14.1,14.2を加熱するための図示していない加熱装置を備えている。
【0039】
紡糸域からフィラメント束5を引き取るために、糸走行経路において第1のゴデット群13.1の上流側に糸ブレーキ12が配置されている。糸ブレーキ12は、本態様では、自由に回動可能に支承された複数の変向ローラにより構成されている。フィラメント束5は、それぞれ部分的に巻き掛けて変向ローラにガイドされ、その際、フィラメント束5のフィラメントは、帯状に配置されて存在する。これによりフィラメントにおける油剤付与は均一に行うことができ、さらに帯状に配置されたフィラメントを有するフィラメント束5は、第1のゴデット群13.1のガイド被覆体14.1に向かってガイドされる。これによりガイド被覆体14.1の表面においてフィラメントの均一な接触が保証される。
【0040】
第1のゴデット群13.1は、フィラメント束5を引き取るために用いられる。このためにフィラメント束5は、1重の部分巻掛でゴデットローラ20.1,20.2のガイド被覆体14.1,14.2にガイドされる。フィラメント束5は、ガイド被覆体14.1,14.2に、交互にS字の糸走行経路を成すように巻き掛けられる。ガイド被覆体14.1,14.2は、それぞれ糸走行経路上でガイド被覆体14.1,14.2に180°を上回る巻掛角度が形成されるように、配置されている。
【0041】
糸走行経路上で、第1のゴデット群13.1の下流側に、フィラメント束5を延伸するための被駆動の複数のゴデットローラ20.3,20.4を備えた第2のゴデット群13.2が配置されており、その際、ゴデット群13.1とゴデット群13.2との間に、延伸域が形成されている。第2のゴデット群13.2は、本態様では、同様に被駆動のゴデットローラ20.3,20.4を備えたゴデット対偶により形成されている。その際、第2のゴデット対偶13.2は、第1のゴデット群13.1と同一に構成されている。ガイド被覆体15.1,15.2は、個別の電動モータにより駆動される。ガイド被覆体15.1の電動モータは、左回りに構成されていて、ガイド被覆体15.1を反時計回り方向に駆動する。ガイド被覆体15.2の電動モータは、右回りに構成されていて、ガイド被覆体15.2を時計回り方向に駆動する。したがってゴデット対偶13.2の両方のガイド被覆体15.1,15.2も同様にそれぞれ逆向きに駆動される。各ガイド被覆体15.1,15.2に対応して個別の加熱装置(図示していない)が配置されているので、ガイド被覆体15.1,15.2は、異なる温度で加熱することができる。
【0042】
ゴデット群13.1,13.2は、ゴデットボックス21の内側に配置されている。このためにフィラメント束5は、ゴデットボックス21の入口とゴデットボックス21の出口とを介してガイドされる。
【0043】
第1のゴデット対偶13.1のガイド被覆体14.1,14.2と第2のゴデット対偶13.2のガイド被覆体15.1,15.2とを駆動するために、それぞれ対応して配置された電動モータは、個別の2つのモータ制御装置(図示していない)により制御される。各ゴデット対偶13.1,13.2に対応して1つのモータ制御装置が配置されている。したがってガイド被覆体14.1,14.2を駆動するための左回りの電動モータおよび右回りの電動モータは、まとめて、モータ制御装置を介して、同一の駆動回転数で運転される。ガイド被覆体14.1,14.2が同一サイズの外径を有している場合、ガイド被覆体14.1,14.2は、同一の周速度で駆動される。
【0044】
ここで言及しておくと、ゴデット対偶の構造は例示したものでしかない。原則として、ガイド被覆体を駆動して加熱するために別の構造原理を用いてもよい。したがって少なくとも1つのガイド被覆体の加熱は、受動的に熱対流および熱放射により外側から行ってよい。したがってゴデット対偶は、特に熱損失を回避するために、ゴデットボックス21内に配置されている。能動的に加熱されるガイド被覆体に基づいてゴデットボックス21の内側で形成される熱エネルギは、隣接する非能動的に加熱されるガイド被覆体を加熱するために利用可能である。さらにゴデットボックスの内側で追加的な熱源、たとえば赤外線放射器を配置してもよく、赤外線放射器は、直接にガイド被覆体の表面に位置する1本または複数の糸を加熱する。このような熱源は、図1に破線で示していて、符号32を設けている。
【0045】
ゴデットボックス21の下側には、別の被駆動のゴデットローラ20.5が配置されており、ゴデットローラ20.5は、巻取装置23の上側に配置されたゴデットローラ20.6と協働する。第2のゴデットローラ20.6も同様に駆動装置と連結されている。ゴデットローラ20.5とゴデットローラ20.6との間で、緊張した糸部分に、交絡結節部を形成することにより糸22に糸結合部(糸集束部)を形成するための交絡装置33が配置されている。そこでは、糸22を絡ませるための糸張力は、好適にはゴデットローラ20.5とゴデットローラ20.6との間で調節された速度差により決定される。
【0046】
ゴデットローラ20.5,20.6の下側に、巻取装置23が配置されている。巻取装置23は、本態様では、いわゆるボビンリボルバにより構成されており、ボビンリボルバは、片持ち式の2つのボビンスピンドル27.1,27.2を有する回動可能なスピンドル支持体29を備えている。スピンドル支持体29は、機械フレーム30に支承されている。ボビンスピンドル27.1,27.2は、交互に、ボビンに巻き取るための作動域とボビンを交換するための交換域とにガイドされる。機械フレームには、糸34をボビン28に巻き取るための綾振り装置25と圧着ローラ26とが設けられている。圧着ローラ26は、ボビン28の表面に接触している。綾振り装置25は、各糸に1つの綾振りユニットを備えており、綾振りユニットでは、糸が、綾巻きパッケージを形成するために往復ガイドされる。綾振り装置の上側には、ヘッド糸ガイド24が設けられており、ヘッド糸ガイド24を介して巻成箇所への糸の進入がガイドされている。本態様では、ヘッド糸ガイド24は、自由に回動可能な変向ローラにより形成されており、ガイドゴデットローラ20.6から繰り出される糸が、略水平の分配平面から巻成箇所へ変向される。したがって、糸は通常ゴデットローラにおいて狭い糸幅でガイドされるので、両方の巻成箇所に向かう糸の広がりを回避することができる。
【0047】
FDY糸を製造するために、図1に示す態様では、たとえばポリエステルまたはポリアミドから成るポリマ溶融物が紡糸ビーム1に供給される。紡糸口金3の内側で、ポリマ溶融物は、圧力を掛けられながら紡糸口金13の下面に形成された口金孔を通って押し出され、これにより多数のフィラメントが押し出される。冷却筒8の内側で、フィラメントは、熱可塑性材料のガラス転移温度を下回る温度に冷却されるので、フィラメントの硬化および前配向が行われる。フィラメント4の冷却後に、フィラメント4は、フィラメント束5にまとめられ、その際、最大で8%の水含有率を有する準備処理油が供給されるので、フィラメント束5のフィラメント4はまとめて保持される。
【0048】
マルチフィラメントヤーンを紡糸装置から引き取り、高温延伸により延伸してFDY糸を形成するために、フィラメント束5は、先ず、ゴデット対偶13.1のガイド被覆体14.1により引き取られて、S字状の糸走行経路を成してガイド被覆体14.1とこれに隣接するガイド被覆体14.2との周りをガイドされる。フィラメント束5は、1重の巻き掛けで、先ず内側面で、ガイド被覆体14.1に接触しながらガイドされ、次いで、巻掛方向の変化により、外側面で、ガイド被覆体14.2の表面に接触しながらガイドされる。これによりフィラメント束5の内側に位置するフィラメントおよび外側に位置するフィラメントは、交互に、直接にガイド被覆体14.1,14.2の加熱された表面に接触させられる。
【0049】
本態様では、ガイド被覆体14.1,14.2はそれぞれ同じ大きさの外径を有して構成されており、ゴデット群13.1,13.2の配置は、ガイド被覆体14.1,14.2におけるフィラメント束5の巻掛角度がそれぞれ180°を上回るように、選択されている。原則として、ゴデットの配置に応じて様々な巻掛角度をガイド被覆体14.1,14.2に形成することができる。さらに鏡像的な糸ガイドでは、ガイド被覆体14.1,14.2のZ字状の巻掛を実現することもできる。
【0050】
糸材料を、ガラス転移温度を上回る温度に加熱するために、ガイド被覆体14.1,14.2は、本態様では、80℃〜200℃の範囲にある同一の表面温度で加熱されている。たとえばポリエステルのガラス転移温度は、約80℃である。
【0051】
さらにガイド被覆体14.1,14.2の表面温度を異なるように調節することもできる。このことは、とりわけたとえばガイド被覆体における異なる直径またはガイド被覆体における異なる巻掛角度に基づいてガイド被覆体14.1,14.2におけるフィラメント束5の1重の巻掛により異なる長さが存在する場合に要求される。
【0052】
低温延伸の場合、第1のゴデット群13.1のガイド被覆体14.1,14.2は、加熱されない。フィラメント束5のガイドは同一であり、ここでは前述の記載が当てはまる。
【0053】
第2のゴデット群13.2は、高温延伸または低温延伸とは無関係に、第1のゴデット群13.1の直ぐ横に配置されており、フィラメント束5は、ガイド被覆体14.2から繰り出された直後にゴデット対偶13.2の下側のガイド被覆体15.1に向かってガイドされる。したがって第1のゴデット対偶13.1のガイド被覆体14.2と第2のゴデット対偶13.2のガイド被覆体15.1との間に延伸域が形成され、そこでフィラメント束5が延伸される。このために第2のゴデット群13.2のガイド被覆体15.1,15.2は、第1のゴデット対偶13.1のガイド被覆体14.1,14.2よりも高い周速度で駆動される。フィラメント束5は、S字状に巻き掛けられながら、第2のゴデット対偶13.2のガイド被覆体15.1,15.2の周りをガイドされるので、フィラメント束5は、総じて、ゴデット配置構造において1重に巻き掛けてガイド可能である。したがってゴデット群13.1,13.2においてコンパクトで短いガイド被覆体が実現可能である。
【0054】
ゴデット対偶13.2は、ゴデット対偶13.1と実質的に同一に構成されているので、ガイド被覆体15.1,15.2は、同じ大きさの外径を有している。その際、各ガイド被覆体15.1,15.2に、通常180°を上回る巻掛角度が形成される。直接第2のゴデット群13.2において延伸された糸を熱後処理するために、ガイド被覆体15.1,15.2は、80℃〜200℃の範囲の表面温度に加熱される。本態様では、表面温度は同じ高さに調節されている。原則として、たとえば糸とガイド被覆体との間の接触長さを補整するために、ガイド被覆体15.1,15.2に異なる表面温度を形成してもよい。通常、ガイド被覆体15.1,15.2の表面温度は、ガイド被覆体14.1,14.2の表面温度よりも高く調節されている。このことは、糸固有のプロセスを実行するために異なる温度が要求され、ガイド被覆体15.1,15.2の周速度がガイド被覆体14.1,14.2の周速度よりも著しく高いことに起因するものであり、その結果としてガイド被覆体の表面において比較的短い滞留時間が達成される。したがってゴデット対偶13.1は、好適には、1200m/min〜3500m/minの範囲のガイド速度で駆動される。第2のゴデット対偶13.2は、3500m/min〜6000m/minの範囲のガイド速度にある。
【0055】
糸の延伸後に収縮処理するために、好適には、ガイド被覆体15.1とガイド被覆体15.2との間の速度差が調節され、これは、同一の駆動回転数で異なる直径により実現されるか、または択一的に、割り当てられた電動モータの異なる駆動回転数により調節される。
【0056】
集中的な熱後処理を極めて高い速度でも実施するために、フィラメント束5は、追加的に1つまたは複数の放射加熱器により非接触式に加熱される。放射加熱器は、第2のゴデット群のゴデットローラ20.3,20.4のうちの1つまたは糸走行経路上でゴデットローラ20.3,20.4の傍に配置することができる。図1には、ゴデットボックス21の内側でゴデット群13.2の直ぐ横に放射加熱器32を破線で例示している。フィラメント束5は、ゴデットローラ20.4のガイド被覆体15.2から繰り出されたあとで保温するかまたはさらに加熱することができる。
【0057】
延伸された糸22を巻き取るまえに、糸結合部は、交絡装置33により固化され、そこでは、多数の交絡結節部が糸22に形成される。そうしてFDY糸に、走行する1メートルの糸長さあたり最小で10の節が形成される。
【0058】
巻取装置23では、同時平行に製造された複数の糸と共に糸22がボビンに巻き取られて、パッケージ28が形成されており、パッケージ28は、ボビンスピンドルの1つに相並んで保持されている。
【0059】
本発明による方法および装置は、その格別な特徴として、糸の延伸を実行するための僅かなエネルギ消費量を有している。したがってフィラメント束は、6000m/min以上の一般的に高い生産速度でも、短時間かつ僅かなエネルギで延伸温度に加熱される。
【0060】
ここで言及しておくと、フィラメント束を引き取り延伸しFDY糸を形成するためのゴデット対偶としてのゴデット群の構成は例示したものに過ぎない。ゴデット群の内側に3つ以上のゴデットローラを配置してもよい。ここで重要な点は、1つの構成群内のゴデットローラのガイド被覆体が実質的に同一の周速度で駆動されることである。
【符号の説明】
【0061】
1 紡糸ビーム、 2 溶融物供給部、 3 紡糸口金、 4 フィラメント、 5 フィラメント束、 6 冷却装置、 7 送風装置、 8 冷却筒、 9 糸収集ガイド、 10 紡糸筒、 11 進入糸ガイド、 12 糸ブレーキ、 13.1,13.2 ゴデット群、ゴデット対偶、 14.1,14.2 ガイド被覆体、 15.1,15.2 ガイド被覆体、 16 準備処理装置、 16.1,16.2 準備書リステーション、 17 調量ポンプ、 18 加熱手段、 19 調量ライン、 20.1−20.6 ゴデットローラ、 21 ゴデットボックス、 22 糸、 23 巻取装置、 24 ヘッド糸ガイド、 25 綾振り装置、 26 圧着ローラ、 27.1,27.2 ボビンスピンドル、 28 ボビン、 29 スピンドル支持体、 30 機械フレーム、 32 放射加熱器、 33 交絡装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィラメントヤーンを溶融紡糸し延伸し巻き取りFDY糸を形成する方法において、以下のステップ:
1.1 熱可塑性の溶融物から多数のフィラメントを押し出し、
1.2 冷却空気流により、熱可塑性材料のガラス転移温度を下回る温度にフィラメントを冷却し、
1.3 最大で8%の水含有率を有する準備処理油を供給して、フィラメントをまとめてフィラメント束を形成し、
1.4 被駆動のゴデットローラの選択的に加熱される少なくとも1つのガイド被覆体においてフィラメント束を1重に部分的に巻き掛けることにより、フィラメント束を加熱するためのエネルギを供給するかまたは供給せずに、1200m/minを上回る引取速度でフィラメント束を引き取り、
1.5 延伸段階で、ゴデットローラの加熱されるガイド被覆体によりフィラメント束を弛緩するための熱エネルギを供給して、被駆動の複数のゴデットローラのガイド被覆体にフィラメント束を1重に部分的に巻き掛けることにより、3500m/minを上回る延伸速度でフィラメント束を延伸し、
1.6 糸を巻き取り、パッケージを形成する、
ステップを有することを特徴とする、マルチフィラメントヤーンを溶融紡糸し延伸し巻き取りFDY糸を形成する方法。
【請求項2】
ゴデットローラのガイド被覆体においてそれぞれ180°を上回る巻掛角度でフィラメント束をガイドする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
準備処理油を、フィラメント束に付与するまえに加熱する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
油剤付与を均等化するために、準備処理油を付与したあとでフィラメント束を糸ブレーキを通ってガイドする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
フィラメント束を加熱するかまたは加熱せずに引き取るために、延伸するまえに、糸を、第1のゴデット対偶の選択的に加熱される2つのガイド被覆体にS字状またはZ字状に部分的に巻き掛けて接触させながらガイドする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
フィラメント束を延伸して弛緩するために、糸を、第2のゴデット対偶の加熱される2つのガイド被覆体にS字状またはZ字状に部分的に巻き掛けて接触させながらガイドする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
フィラメント束を、追加的に非接触式に放射加熱器の熱放射により加熱する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
フィラメント束を、巻き取るまえに、被駆動の2つのゴデットローラの間で緊張した糸部分で交絡し、1m糸長さあたり少なくとも10の交絡結節部によりフィラメント束をまとめて糸を形成する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を実施する装置であって、
複数のフィラメント(4)を押し出す紡糸口金(3)を備え、フィラメント(4)を冷却する冷却装置(6)を備え、フィラメント(4)に準備処理油を付与する準備処理装置(16)を備え、フィラメント(4)をまとめてフィラメント束(5)を形成する糸収集ガイド(9)を備え、フィラメント束(5)を引き取り加熱し延伸する部分的に加熱されるガイド被覆体(14.1,14.2,15.1,15.2)を有する被駆動の複数のゴデットローラ(20.1,20.2,20.3,20.4)を備え、巻取装置(3)を備えるものにおいて、
フィラメント束を引き取りかつ/または加熱する被駆動のゴデットローラ(20.1,20.2)のガイド被覆体(14.1,14.2)が、第1のゴデット群(13.1)を形成し、該ガイド被覆体(14.1,14.2)は、糸走行経路において、フィラメント束を1重に部分的に巻き掛けて配置されていて、かつ選択的に加熱可能であり、延伸しかつ弛緩する被駆動のゴデットローラ(20.3,20.4)のガイド被覆体(15.1,15.2)が、第2のゴデット群(13.2)を形成し、該ガイド被覆体(15.1,15.2)は、加熱可能であり、糸走行経路において、1重に部分的に巻き掛けて配置されており、両方のゴデット群(13.1,13.2)の間に延伸域が形成されていることを特徴とする、マルチフィラメントヤーンを溶融紡糸し延伸し巻き取りFDY糸を形成する方法を実施する装置。
【請求項10】
ゴデットローラ(20.1,20.2,20.3,20.4)のガイド被覆体(14.1,14.2,15.1,15.2)は、糸走行経路において、それぞれ180°を上回る巻掛角度で1重に部分的に巻き掛けて配置され、隣接するゴデットローラ(20.1,20.2)は、好適には相互に逆向きに駆動されるガイド被覆体(14.1,14.2)を備える、請求項9記載の装置。
【請求項11】
準備処理装置(16)は、加熱手段(18)を備え、該加熱手段(18)により、準備処理油が、フィラメント(4)に付与されるまえに加熱可能である、請求項9または10記載の装置。
【請求項12】
糸走行経路において第1のゴデット群(13.1)のゴデットローラ(20.1,20.2)の上流側に糸ブレーキ(12)が配置される、請求項9または10記載の装置。
【請求項13】
第1のゴデット群は、選択的に加熱されるガイド被覆体(14.1,14.2)を備えた第1のゴデット対偶(13.1)により形成され、第2のゴデット群は、加熱される2つのガイド被覆体(15.1,15.2)を備えた第2のゴデット対偶(13.2)により形成され、フィラメント束(5)は、S字状またはZ字状の糸走行経路においてゴデット対偶(13.1,13.2)のガイド被覆体(14.1,14.2,15.1,15.2)にガイド可能である、請求項9から12までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つの放射加熱器(32)が設けられ、該放射加熱器(32)は、ゴデットローラ(20.3,20.4)の間に配置されるか、またはゴデットローラの1つ(20.4)に対応して配置される、請求項9から13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
糸走行経路において第2のゴデット群(13.2)の下流側に交絡装置(33)が配置され、該交絡装置(33)は、被駆動の2つのゴデットローラ(20.5,20.6)の間に保持される、請求項9から14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
準備処理装置(16)は、フィラメント束を準備処理する個別の2つの準備処理ステーション(16.1,16.2)を備え、第1の準備処理ステーション(16.1)は、糸収集ガイド(9)に対応して配置され、第2の準備処理ステーション(16.2)は、第2のゴデット群(13.2)と巻取装置(32)との間に配置される、請求項9から15までのいずれか1項記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2013−500402(P2013−500402A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520915(P2012−520915)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062643
【国際公開番号】WO2011/009498
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】