説明

マルチフィラメント糸を溶融紡糸し、延伸しかつ巻き上げる方法並びにこの方法を実施する装置

本発明は、マルチフィラメント糸を溶融紡糸し、延伸しかつ巻き上げて、FDY糸を形成する方法、並びにこの方法を実施する装置に関する。本発明では最初に、熱可塑性の溶融物から多数のフィラメントを押し出し、押し出されたフィラメントを、熱可塑性材料のガラス転移温度を下回る温度に冷却し、準備処理液の供給なしにフィラメント束にまとめる。次いでフィラメント束を1500m/分を上回る範囲の引出し速度で引き出し、夏か組成材料のガラス転移温度を上回る温度に加熱し、4000m/分を上回る延伸速度で延伸する。無接触式に加熱するために、フィラメント束は加熱管の高温空気雰囲気内において案内される。次に、フィラメント束の準備処理を準備処理液によって行い、糸をスプールに巻き上げる。本発明による装置では、そのために準備処理装置が糸走行路において加熱装置に後置されており、加熱装置は、フィラメント束を無接触式に加熱するために高温空気雰囲気を有する加熱管として、引出しゴデットと延伸ゴデットとの間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチフィラメント糸を溶融紡糸し、延伸しかつ巻き上げて、完全に延伸された糸(FDY)を形成する方法、並びに請求項7の上位概念部に記載した形式の、前記方法を実施する装置に関する。
【0002】
このような形式の、マルチフィラメント糸を溶融紡糸し、延伸しかつ巻き上げる方法並びにこの方法を実施する装置は、例えばDE3146054A1に基づいて公知である。
【0003】
合成糸を製造する場合、糸の内部におけるポリマ材料の分子連鎖の配向の程度に関連して、いわゆるPOY糸とFDY糸とが区別される。予備配向された糸(Pre Oriented Yarn)であるPOY糸は、まだ完全には延伸されていない、予備配向された構造を有している。このような糸は有利には、延伸テクスチャード過程においてさらに処理される。これに対して、完全に延伸された糸(Full Drawn Yarn)であるFDY糸は、完全に延伸された配向された構造を有している。このような糸は従って、さらなる処理なしに直に面状製品へと加工することができる。
【0004】
いわゆるFDY糸を単段過程において製造できるようにするために、押し出されたばかりのフィラメントは、1つの糸にまとめられた後で完全に延伸され、次いでスプールに巻き上げられる。このようなFDY糸を製造する方法は、例えばDE3146054A1に開示されている。最初に、例えばポリエステル又はポリアミドであるポリマ溶融物から、多数のフィラメントが押し出される。これらのフィラメントは次いで、ポリマ材料を硬化させるためもしくは結晶化させるために冷却される。そのためには通常、冷却空気流がフィラメントに吹き付けられ、その結果糸材料はガラス転移温度を下回る温度に冷却される。この冷却の後でフィラメント束のフィラメントは、準備処理液を用いてまとめられ、これにより次いでゴデット装置によって延伸されることができる。この場合通常、糸は所定の延伸ポイントを得るために、延伸の前に加熱される。糸の加熱は公知の方法及び公知の装置では、引出しゴデットの加熱されたゴデット周壁によって行われ、このゴデット周壁において糸は部分巻掛けによって案内される。4000m/分を上回る通常の高い延伸速度に基づいて、引出しゴデットに糸が部分的に巻き掛けられている場合には、極めて短い接触長さしか生ぜず、糸を十分に加熱することができない。従って、延伸ポイント得るために必要な糸材料のガラス転移温度を得るために、糸は有利には複数回引出しゴデットに巻き掛けられ、その結果引出しゴデットのみならず、それに加えて引出しゴデットのそばにオーバフローローラ(Ueberlaufrolle)を配置するが必要になる。
【0005】
EP0731196A1に基づいて公知の、合成糸を溶融紡糸し、延伸しかつ巻き上げる方法では、特に低収縮の糸を得るために、糸に複数回加熱処理が施される。糸には延伸のため及び延伸後にその都度熱処理が施され、各熱処理の際に糸は無接触式に、加熱された表面によって加熱される。そのために糸は、引出しゴデットと延伸ゴデットとの間に配置された加熱プレートの加熱表面に対して間隔をおいて案内される。糸のこのような延伸を助成するために、冷却装置と引出しゴデットとの間に配置された加熱管を付加的に使用することが可能であり、この加熱管内において糸は実質的に無接触式に加熱される。これによって糸は既に予備延伸されることになり、この予備延伸には、ゴデット間において行われる第2の後延伸が重畳される。EP0731169B1に基づいて公知の方法及び公知の装置は、従って、特殊糸を複数回の加熱処理によって製造するためにしか適していない。糸の案内はこの場合常に、駆動されるゴデットとオーバフローローラとによって形成されているゴデット装置によって実施される。そして完全に延伸された糸を製造するためには、装置設備に関して高いコストが必要である。
【0006】
WO99/29935に基づいて公知の別の方法及び別の装置では、フィラメント束は冷却なしに直に、紡糸ゾーンから延伸される。そのためにフィラメント束は、紡糸ノズルに直接接続する複数の加熱ゾーンにおいて加熱される。例えば第1の加熱ゾーンは紡糸ノズルの直ぐ下に形成されている。フィラメント束の引出しは、別の加熱ゾーンを形成している複数の加熱されたゴデットを介して行われる。これらの加熱されたゴデットには1つの加熱管が続き、この加熱管によってさらに別の加熱ゾーンが形成されている。この加熱ゾーンの終端部には、糸を延伸するために1つのゴデットが設けられている。WO99/29935に基づいて公知の方法及び公知の装置は、フィラメント束のフィラメントにおいて、純粋に、応力誘導された結晶が形成される、ということに基づいている。そして冷却ひいては熱による結晶化は回避される。
【0007】
EP0731196A1及びWO99/29935に基づいて公知の方法は、従って、1つの延伸段階において完全に延伸された糸を製造するためには、条件付きでしか適していない。さらに公知の方法及び公知の装置は、糸の延伸を実施するために、多くのエネルギ及び材料の使用を要する。
【0008】
ゆえに本発明の課題は、冒頭に述べた形式の、糸を溶融紡糸し、延伸しかつ巻き上げる方法、並びにこの方法を実施する装置を改良して、完全な延伸のための糸の加熱を、1つの延伸段階において可能な限り僅かなエネルギ消費によって可能にすることである。
【0009】
本発明の別の課題は、冒頭に述べた形式の方法及び装置を改良して、互いに平行にもしくは並列的に紡糸された複数のフィラメント束を可能な限りコンパクトな構造形式で製造できるようにすることである。
【0010】
上記課題を解決するために本願発明の方法では、マルチフィラメント糸を溶融紡糸し、延伸しかつ巻き上げて、完全に延伸された糸(FDY)を形成する方法であって、次のステップ、すなわち、
1.1 熱可塑性の溶融物から多数のフィラメントを押し出し、
1.2 押し出されたフィラメントを、熱可塑性材料のガラス転移温度を下回る温度に冷却し、
1.3 流体の供給なしに、集合位置ガイドにおける接触によってフィラメントをまとめてフィラメント束を形成し、
1.4 フィラメント束を、引出しゴデットによって1500m/分を上回る範囲の引出し速度で引き出し、
1.5 フィラメント束を、加熱管の高温空気雰囲気内において無接触式に、熱可塑性材料のガラス転移温度を上回る糸温度に加熱し、フィラメント束を、少なくとも1つの延伸ゴデットによって3500m/分を上回る延伸速度、有利には4000m/分を上回る延伸速度で延伸し、
1.6 フィラメント束を準備処理液によって準備処理し、
1.7 糸をスプールに巻き上げる、
というステップを有するようにした。
【0011】
また前記課題を解決するために本発明の装置では、上記方法を実施する装置であって、複数のフィラメントを押し出すための紡糸ノズルと、フィラメントを冷却するための冷却装置と、複数のフィラメントを1つのフィラメント束にまとめるための集合糸ガイドと、フィラメント束を引き出すための引出しゴデットと、フィラメント束を延伸するための少なくとも1つの延伸ゴデットと、糸を巻き上げるための巻上げ装置とが設けられており、前記ゴデットに、フィラメント束を準備処理するための準備処理装置とフィラメント束を加熱するための加熱装置とが配属されている形式のものにおいて、
準備処理装置が、糸走行路において加熱装置に後置されており、該加熱装置が、フィラメント束を無接触式に加熱するための高温空気雰囲気を有する加熱管として、引出しゴデットと延伸ゴデットのうちの1つの延伸ゴデットとの間に配置されている。
【0012】
本発明による別の有利な構成は、特許請求の範囲の従属請求項に記載されている。
【0013】
本発明は、留保条件(Vorbehalt)に起因する2つの作用が互いに、フィラメント束の延伸のためにポジティブに作用し合うという、驚くべき認識に基づいている。例えば一般的に、複数のフィラメントから成るフィラメント束は表面が互いに接触した場合に静電荷され、これによりフィラメント束はコントロールされずに広がってしまう。このような拡開作用は、特に糸速度の高まりと共に激しくなる。従って従来技術においては、フィラメントを冷却後に準備処理液による湿潤によってまとめることが一般的である。
【0014】
また他方において良く知られているように、比較的高い糸速度に基づいて糸の延伸時には、フィラメントを十分に加熱するために、加熱装置とフィラメント束との間において強力な熱交換が必要である。延伸ゾーン内で、高速で案内されるフィラメント束において、熱可塑性材料のガラス転移温度を上回る糸温度を得るためには、加熱管の高温空気雰囲気は条件付きでしか適していない。
【0015】
このような留保条件にもかかわらず、本発明は完全に新たな道を選択しており、すなわち本発明では、糸の準備処理が延伸の後で初めて行われ、その結果フィラメント束は実質的に乾燥状態において冷却後に紡糸ゾーンから引き出される。そして、乾燥状態においてまとめられたフィラメント束のフィラメントは、これによって静電荷され、これにより引出しゴデットからの糸の走出時にフィラメント束は拡開してしまう。この拡開作用はしかしながら、加熱管の高温空気雰囲気内においてフィラメント束を加熱する場合には有利に働く。つまりこのようになっていると、高温空気雰囲気は、拡開されたフィラメント束の個々のフィラメントにおいて直に作用し、高い延伸速度においても、所望の糸温度を得ることができる。
【0016】
本発明の別の利点としては、糸の加熱時に、準備処理剤を気化させるための付加的なエネルギが不要である、ということが挙げられる。フィラメント束のフィラメントは、高い効果をもって、加熱管の高温空気雰囲気内において処理されることができる。
【0017】
延伸ゴデットの周囲におけるフィラメント束の確実な案内を可能にするために、本発明の有利な方法では、フィラメント束を加熱の直後に、2つのゴデットの間において緊張させられた糸部分において準備処理する。このようにすると、後続の案内時においてフィラメント束が不都合に電荷されることを回避することができ、かつ糸を巻き上げるまでの確実な糸結合部を保証することができる。
【0018】
高い糸走行速度で乾燥したフィラメント束を引き出しかつ延伸するために、本発明の有利な方法では、フィラメント束を、駆動されるゴデットの周囲に90°を上回る範囲で単純に部分巻掛けして案内するようにした。特に、複数のフィラメント束を相互に狭い糸間隔をおいて引出しゴデットのガイド周壁において案内する場合には、ガイド周壁がフィラメント束毎にガイド溝を有していて、該ガイド溝においてフィラメントが案内されるようになっていてもよい。
【0019】
フィラメント束のフィラメント材料に応じてかつ糸の番手範囲に応じて、延伸ポイントの十分な安定化を達成するために、本発明の別の有利な方法では、加熱管の内部における高温空気雰囲気が120℃〜240℃の間の温度に温度調整される。この場合加熱管は800mm〜2500mmの範囲の長さを有しており、これによって極めて高い糸速度においても十分か温度調整が可能になる。
【0020】
熱による結晶化のために必要なフィラメント束の冷却は、本発明による別の方法では、冷却空気流によって生ぜしめられ、この冷却空気流は、外側から内側に向かって又は内側から外側に向かって、フィラメント束に作用する。これによって横方向流吹き付け、半径方向吹き付け又はブローキャンドルを有利に使用することができる。
【0021】
リラクゼーション処理のために有利な方法では、準備処理された糸が後処理のために、100℃〜180℃の範囲における表面温度を有する、1つの延伸ゴデットの周囲において加熱される。このような後処理は特に細い番手の場合に、スプール形成に対して有利な効果がある。
【0022】
糸をさらに処理するためには、糸が十分な糸結合部を有していることが必要であり、この糸結合部は通常、フィラメント束の交絡時に発生する交絡結節部によって生ぜしめられる。特に先行するプロセスステップ及び後続のプロセスステップとは無関係な、交絡のために有利な糸緊張を、糸において調節できるようにするために、本発明の別の有利な方法では、糸が巻上げの前に、駆動される2つのゴデットの間において緊張させられた糸部分において交絡させられ、この際に交絡によって、糸長さ1メートル当たり少なくとも10の交絡結節部が生ぜしめられる。これにより、両方のゴデットの間における速度差を調節することによって、交絡のために最適な糸緊張を調節することができる。例えば巻上げのような後続のプロセスステップは、それとは無関係な巻上げ緊張によって実施することができる。
【0023】
本発明による方法を実施するための本発明の装置は、準備処理装置が、糸走行路において加熱装置に後置されており、該加熱装置が、フィラメント束を無接触式に加熱するための高温空気雰囲気を有する加熱管として、引出しゴデットと延伸ゴデットのうちの1つの延伸ゴデットとの間に配置されている。本発明による装置は次のような特別な利点を有している。すなわち本発明の装置では、乾燥したフィラメント束の引出しによってフィラメントにおいて生じる静電荷を、加熱管の高温空気雰囲気内におけるフィラメント束の均一かつ強力な加熱を得るために、利用することができる。加熱管内における案内にはさらに次のような利点、すなわちフィラメント束の拡開にもかかわらず、フィラメント束の延伸時における確実な案内が保証されている、という利点を有している。さらに別の利点としては、糸材料がすべてのフィラメントにおいて同じ距離区間内で、ガラス転移温度を上回る糸温度に加熱され、その結果延伸ポイントの位置がフィラメント束の各フィラメントにおいてほぼ等しくなる、ということが挙げられる。これにより延伸の高い均一性が得られ、ひいてはフィラメントにおいて生じる物理的特性の均一性が得られる。
【0024】
本発明による装置の別の有利な構成では、準備処理装置が、糸走行路において2つのゴデットの間に配置されている。これにより糸の準備処理を延伸ゾーンにおいて直に実施することができる。しかしながらまた択一的に、準備処理に合わせられた最適な糸緊張を調節することも可能であり、その結果ゴデットは個別駆動装置を介して所定の速度差をもって運転される。
【0025】
フィラメント束を延伸するための装置を可能な限り単純かつ安価に構成するために、ゴデットはそれぞれ1つの駆動されるガイド周壁を有しており、該ガイド周壁を通してフィラメント束は、90°を上回る範囲で単純に部分巻掛けされて案内されている。このようになっていると、単数又は複数の糸を互いに平行に並べて案内することができる、短くてコンパクトなガイド周壁を形成することができる。
【0026】
例えばポリエステル、ポリアミド又はポリプロピレンのような可能な限り普通の糸材料を、かつ大きな範囲の糸番手を延伸できるようにするために、本発明の別の有利な構成では加熱管が、800mm〜2500mmの範囲の長さをもって形成されている。このようになっていると、プロセス及び糸材料へのそれぞれの適合が可能である。
【0027】
押出し後にフィラメントを硬化させるため及び熱により結晶化させるために、冷却装置は有利にはブロー装置によって形成され、このブロー装置によって冷却空気流が、フィラメント束の内側から外側に向かって又は外側から内側に向かって生ぜしめられる。これによって、フィラメント束毎における多数のフィラメントを、強力かつ均一に冷却することができる。
【0028】
糸のさらなる加工のためにフィラメント束を確実にまとめるために、本発明の別の有利な構成では、糸走行路において巻上げ装置に交絡装置が前置されており、該交絡装置は糸走行路において2つのゴデットの間に配置されている。このように構成されていると、後続又は先行のプロセスステップの影響なしに、交絡時における個々の糸緊張を調節することができる。
【0029】
実地においては通常、1つの紡糸ポジションにおいて複数の糸が同時に、紡糸され、延伸され、かつ巻き上げられる。1つの紡糸ポジションにおいて例えば8つ、10、12又はそれ以上の糸を同時に製造することができる。可能な限りコンパクトな構造を得るために、本発明の有利な構成では、引出しゴデットが、1グループの紡糸ノズルに配置されている集合糸ガイドのそばにおいて側方に配置されている。そしてフィラメント束は集合糸ガイドにおいて、等しく方向付けられていてそれぞれ45°を上回る部分巻掛けによって案内され、かつ引出しゴデットの周囲において互いに平行に処理間隔をおいて並んで受容されている。
【0030】
引出しゴデットの周囲において案内されているフィラメント束のグループは、互いに密な間隔をおいて並んで、複数の加熱管によって案内される。これらの加熱管はそのために有利には加熱ボックス内において並んで位置するように形成されており、該加熱ボックスは鉛直方向に又は水平方向に位置付けられて引出しゴデットに後置されている。特に、水平方向に方向付けられていることによって、構造高さが低いことによって傑出している極めてコンパクトな延伸フィールドを形成することができる。
【0031】
挿通及び加熱管のクリーニングを可能にするために、本発明の有利な構成では、加熱ボックスは加熱管を開放するために2部分から形成されていて、両部分のうちの1つが、少なくとも1つの可動のカバープレートである。
【0032】
装置全体のコンパクトさをさらに改善するために、本発明の別の有利な構成では、巻上げ装置が巻成箇所毎にそれぞれ1つの分配ローラを有していて、該分配ローラによって、最後のゴデットから走出する糸がそれぞれの巻成箇所に向かって分離されるようになっている。このように構成されていると、鉛直平面からの拡開が回避され、糸は引出しゴデットから、ほぼ水平な平面を起点として個々の巻成箇所に分配されることができる。
【0033】
次に図面を参照しながら、本発明による方法及びこの方法を実施する本発明による装置の実施例について詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による方法を実施する本発明による装置の第1実施例を示す図である。
【図2】本発明による方法を実施する本発明による装置の別の実施例を示す図である。
【図3】本発明による方法を実施する本発明による装置のさらに別の実施例を示す図である。
【0035】
図1には、FDY糸を製造するための本発明による方法を実施する、本発明による装置の第1実施例が示されている。マルチフィラメント糸を溶融紡糸するためには、加熱可能な紡糸ヘッド1が設けられており、この紡糸ヘッド1はその下側に、多数のノズル開口を備えた紡糸ノズル3を有し、かつ上側に溶融物供給路2を有している。この溶融物供給路2は、図示されていない溶融物源、例えば押出し機と連結されている。紡糸ヘッド1の内部には、溶融物を案内しかつ溶融物を搬送する別の部材が配置されていてもよいが、これらの部材については、ここでは触れない。
【0036】
紡糸ヘッド1はその下側に図示の実施例ではただ1つの紡糸ノズル3を有している。しかしながら実際には、このような紡糸ヘッドは、一列に配置さえた複数の紡糸ノズルを備えていて、同時に複数の糸を互いに平行に並んで生ぜしめることができる。しかしながら糸の数は、本発明による方法及び本発明による装置に対して何ら影響を及ぼすものではないので、図示の実施例ではただ1つの糸走路だけが示されている。
【0037】
紡糸ヘッド1の下には冷却装置6が設けられており、この冷却装置6は冷却空気流を生ぜしめるブロー装置7を有している。このブロー装置7は冷却ダクト8と共働し、この冷却ダクト8は紡糸ノズル3の直ぐ下において鉛直方向に延びており、その結果フィラメント束5の、紡糸ノズル3から押し出されたフィラメント4は、冷却ダクト8を通過する。ブロー装置7は、この実施例では横方向流吹出し装置によって形成されていて、この横方向流吹出し装置は冷却空気流を生ぜしめ、この冷却空気流は側部から冷却ダクト内に導入され、外側からフィラメント束5に向けられている。これにより、紡糸ノズル3から押し出されたフィラメント4は均一に冷却される。
【0038】
冷却ダクト8の下には、多数のフィラメント4を1つのフィラメント束5にまとめるために、集合糸ガイド9が設けられている。この集合糸ガイド9はそのために紡糸ノズル3の真下に配置されており、これによってフィラメント4は集合糸ガイド9において均一にまとめられる。この実施例では集合糸ガイド9は変向ローラ25として形成されており、この変向ローラ25の周面にフィラメント4は接触して変向される。このような変向ローラ25はそのために有利にはガイド溝を有しており、このガイド溝は、変向ローラ25の周面に形成されていて、フィラメントが1つに集まることを容易にする。
【0039】
フィラメント束5を紡糸ゾーンから引き出すため、及び次いで延伸するために、集合糸ガイド9の下には引出しゴデット10と、この引出しゴデット10と共働する延伸ゴデット11とが配置されている。引出しゴデット10は集合糸ガイド9のそばにおいて側部に配置されており、フィラメント束5は引出しゴデット10のガイド周壁32に部分的に巻き掛けられて案内されている。引出しゴデット10のガイド周壁32は、ゴデット駆動装置13.1によって所定の引出し速度によって駆動される。引出しゴデット10のガイド周壁32は、この実施例では、フィラメント束5を冷たい状態で延伸ゾーンにおいて案内するために、加熱されていない。
【0040】
延伸ゾーンにおいて引出しゴデット10と延伸ゴデット11との間には、加熱管14として形成された加熱手段が配置されている。この加熱管14は縦長の処理通路15を有しており、この処理通路15を通してフィラメント束5は案内される。加熱管14は加熱可能に形成されているので、処理通路15の内部においては高温空気雰囲気が生ぜしめられる。フィラメント束5のフィラメント4は、加熱管14の処理通路15を貫通走行する場合に、延伸ポイント(Streckpunkt)を喚起するために糸材料のガラス転移温度を上回る温度である糸温度に加熱される。
【0041】
延伸のためにフィラメント束は、延伸ゴデット11によって加熱管14から引き出される。そのために延伸ゴデット11のガイド周壁は、ゴデット駆動装置13.2によって延伸速度で駆動され、この延伸速度は、引出しゴデット10の引出し速度を上回る速度を有している。フィラメント4の完全な延伸を実施できるようにするために、少なくとも4000m/分の延伸速度が延伸ゴデット11において調節される。
【0042】
フィラメント束をさらに案内する際にフィラメント4が静電荷によって拡開することを回避するために、加熱管14と延伸ゴデット11との間には準備処理装置16が配置されている。この準備処理装置16はフィラメント束5に湿潤(Benetzung)を与え、その結果糸結合部(Fadenschluss)が形成され、フィラメント束5は糸33として案内可能となる。フィラメント束5の湿しもしくは湿潤は、フィラメント4の表面に均一に付着する準備処理液によって行われる。
【0043】
糸におけるフィラメント4の糸結合部を改善するために、延伸ゴデット11には交絡装置17が後置されており、この交絡装置17において糸33は、強力な糸結合部を交絡結節部(Verflechtungsknote)の形成によって得る。この場合交絡装置17には走出ゴデット12が後置されており、その結果糸33を交絡させるのに有利な糸緊張が調節可能である。そのために走出ゴデット12によって、延伸ゴデット11に対して所望の差速度を調節することができる。走出ゴデット12はゴデット駆動装置13.3を介して駆動される。
【0044】
走出ゴデット12の下には巻上げ装置18が配置されている。この巻上げ装置18は図示の実施例では、いわゆるスプールリボルバ機によって形成され、このスプールリボルバ機は、片持ち式に張り出した2つの巻管スピンドル22.1,22.2を備えた回転可能なスピンドル保持体24を有している。このスピンドル保持体24は機械フレーム34に支承されている。この場合巻管スピンドル22.1と22.2とは交互に、スプールを巻成するための運転領域と、スプールを交換するための交換領域とに案内されることができる。機械フレームには、糸33をスプール23に巻成するために、綾振り装置20と圧着ローラ21とが設けられている。この場合圧着ローラ21は、スプール23の表面に接触して位置している。綾振り装置20の上にはヘッド糸ガイド19が設けられており、このヘッド糸ガイド19を通して巻成箇所への糸の走入が案内されている。
【0045】
完全に延伸された糸を製造するために、図1に示された実施例では、例えばポリエステル又はポリアミドから成るポリマ溶融物が紡糸ヘッド1に供給される。紡糸ノズル3の内部においてポリマ溶融物は、圧力下で、紡糸ノズル3の下側に形成されたノズル孔を通して押し出され、これによって多数のフィラメント4を押し出すことができる。冷却ダクト8の内部においてフィラメント4は、ブロー装置7を介して冷却ダクトに導入される冷却空気流によって、熱可塑性材料のガラス転移温度を下回る温度に冷却され、その結果フィラメント4は熱による結晶化によって硬化され、かつ予備配向(Vororientierung)される。フィラメント4の冷却後にフィラメント4は、集合糸ガイド9との接触によってフィラメント束5にまとめられるが、しかしながらその際には準備処理液は供給されないので、フィラメント束5のフィラメント4は、異物なしに乾燥状態においてまとめられる。次いでフィラメント束5はまとめられた後で、乾燥状態において1500m/分を上回る引出し速度で引き出され、延伸される。引出し速度はそのために引出しゴデット10によって規定されており、この引出しゴデット10のガイド周壁においてフィラメント束5は90°の範囲にわたる一回の部分巻掛けによって案内される。集合糸ガイド9及び引出しゴデット10とのフィラメント束5の接触によって、フィラメント4においてそれぞれ静電荷が発生し、これによって引出しゴデット10のガイド周壁32の表面からのフィラメント束5の走出時に、フィラメント4は互いに逆向きに突き放される。そしてフィラメント4間におけるこの相互作用によって、フィラメント束5は拡開する。
【0046】
フィラメント束5は拡開した状態で、加熱管14の処理通路15内に案内される。フィラメント束5を加熱するために糸材料及び糸番手に応じて、処理通路15の内部における熱空気雰囲気は120℃〜240℃の範囲の温度に調節される。この場合加熱管14の処理通路15は、800mm〜2500mmの範囲の長さを有している。これによって、フィラメント4から成るフィラメント束5を、熱可塑性材料のガラス転移温度を上回る温度に十分に加熱することができる。例えばポリエステルのガラス転移温度は80℃の範囲にある。
【0047】
加熱管14の処理通路15の内部における熱空気雰囲気は、この場合加熱管14の加熱によってか、又は処理通路15内への熱空気の導入によって生ぜしめることができる。この際に重要なことは、フィラメント束5のフィラメント4が無接触式に案内されていて、もっぱら熱空気雰囲気によって加熱されることである。
【0048】
フィラメント束5の完全な延伸、ひいてはフィラメント4における糸材料の分子構造の完全な配向を達成するために、フィラメント束5は3500m/分を上回る延伸速度、有利には4000m/分を上回る延伸速度で延伸される。この延伸速度は図示の実施例では後置された延伸ゴデット11によって生ぜしめられ、この延伸ゴデット11においては同時に、フィラメント束5におけるリラクゼーションの後処理を実施することができる。
【0049】
リラクゼーションのために延伸ゴデット11のガイド周壁は有利には、100〜180℃の範囲の表面温度に加熱される。このような後処理は、糸33内部におけるさらなる収縮を減じることができ、このような収縮の減少は、特に細い番手においてスプールのスプール構造において有利に作用する。
【0050】
フィラメント束5が完全に延伸された後で、フィラメント束5の糸結合部、ひいては糸33を形成するために、準備処理が行われる。フィラメント束5はそのために延伸ゴデット11への乗上げの前に準備処理される。フィラメント束5の内部において準備処理液を可能な限り均一に分配させるために、付加的な装置が準備処理装置と組み合わせられて設けられていてもよい。
【0051】
完全に延伸された糸33を巻き上げる前に、糸結合部は交絡装置17によってさらに固定され、この際に糸33には多数の交絡結節部が生ぜしめられる。このようにしてFDY糸においては、走行する糸長さ1m当たり最低でも10の結節部が生ぜしめられる。
【0052】
本発明による方法及び本発明による装置は特に、糸の延伸を実施するために使用されるエネルギが僅かである点で傑出している。そして乾燥したフィラメント束を、6000m/分までもしくはそれ以上の通常の高い生産速度を保ちつつ、最短時間でかつ僅かなエネルギで延伸温度に加熱することができる。
【0053】
図2には、完全に延伸された糸をFDY糸に製造する本発明による方法を実施する本発明による装置の別の実施例が示されている。この実施例では図2から分かるように、複数の糸が互いに平行に並んで紡糸され、延伸され、巻き上げられる。図2に示された装置全体は、糸の処理に関して、図1に示された上記実施例と実質的に同じであるので、以下においては両実施例における相違についてだけ述べる。
【0054】
図2に示された装置では防止ヘッド1はその下側に複数の紡糸ノズル3を有しており、これらの紡糸ノズル3は、列状配置形式で互いに並んで保持されている。これらの紡糸ノズル3は溶融物供給路2と接続されており、各紡糸ノズル3には、図示されていない紡糸ポンプが配属されている。図示の実施例では4つの紡糸ノズルが示されている。紡糸ポジションにおいて保持されている紡糸ノズルの数は、一例である。基本的には、4つよりも多くの紡糸ノズルが紡糸ヘッド1の内部に並んで保持されていることができる。
【0055】
紡糸ノズル3の下には冷却ダクト8が形成されており、この冷却ダクト8はブロー装置7と共働する。冷却ダクト8の下において、図示されていないブロー装置によって生ぜしめられた冷却空気をフィラメント4に導くために、各紡糸ノズル3の下には各1つのスクリーンシリンダ27が配置されており、このスクリーンシリンダ27は、通気性の壁を有していて、それぞれ1つの紡糸ノズル3からのフィラメント4を取り囲んでいる。これによって、外側から内側に向かってフィラメント束5に作用する冷却空気流の特に均一な分配を得ることができる。
【0056】
各紡糸ノズル3には冷却ダクト8の下において集合糸ガイド9が配属されており、この集合糸ガイド9はこの実施例においても同様に各1つの変向ローラ25によって形成されている。集合糸ガイド9の横に並んで引出しゴデット10が配置されている。この引出しゴデット10はこの実施例では、周囲に複数の環状のガイド溝26を備えたガイド周壁32を有している。各ガイド溝26内においては各1つのフィラメント束5が案内されている。ガイド周壁32はゴデット駆動装置13.1によって、1500m/分を上回る範囲の引出し速度で駆動される。フィラメント束5はこのようにして、紡糸ノズル3及び紡糸ゾーンから一緒に引き出されることができる。
【0057】
延伸を実施するために引出しゴデット10の下には、加熱ボックス28が配置されている。この加熱ボックス28はフィラメント束5毎に、処理通路15を備えた各1つの加熱管14を有しているので、フィラメント束5は互いに無関係に独立して別体の処理通路15によって加熱可能である。加熱ボックス28は加熱管14を形成するために、保持プレート29とカバープレート30との2部分から形成されている。カバープレート30は保持プレート29に旋回可能に配置されている。加熱管14も同様に2部分から形成されており、この場合定置の部分は保持プレート29に配属されていて、可動の部分はカバープレート30と結合されている。従ってカバープレート30の開放によって、加熱管14のすべての処理通路を開放することができる。加熱ボックス28のこのような構成は、プロセス開始時にフィラメント束5を個々の処理通路15内に入れるのに特に有利である。また同様に、処理通路15はカバープレート30の開放状態において加熱ボックス28の内部を容易にクリーニングすることができる。
【0058】
フィラメント束5をプロセス開始時に個々の装置内にあてがうことができるようにするために、集合糸ガイド9に1つの切換え可能な準備処理装置を配属させることも可能であり、この準備処理装置は、フィラメント束5があてがわれる段階においてだけ、準備処理液をフィラメント4にもたらす。フィラメント束5の挿通及び割り当てが実施された後で、集合糸ガイド9に配属された準備処理装置は遮断され、その結果フィラメント束5は乾燥状態において引出しゴデット10によって引き出される。
【0059】
図2に示された実施例では加熱ボックス28は鉛直方向に方向付けられて、引出しゴデット10の下に配置されており、その結果ほぼ鉛直方向に方向付けられた延伸ゾーンが形成されている。加熱ボックス28の出口側には準備処理装置16が配置されており、この準備処理装置16によってフィラメント束5はそれぞれ1つの糸33にまとめられる。準備処理装置16はそのためにそれぞれ全部で4つの湿し装置を有しており、これらの湿し装置はそれぞれフィラメント束5に配属されている。
【0060】
巻上げ装置18の上には走出ゴデット12が、巻上げ装置18の1つの端面に保持されている。この走出ゴデット12は駆動装置13.3と連結されている。走出ゴデット12と延伸ゴデット11との間には、緊張させられた糸区間に交絡装置17が配置されており、これによって糸33は互いに平行に並んだ状態で、それぞれ個々の交絡通路において交絡結節部を形成するために交絡させられる。
【0061】
この実施例において巻上げ装置18の各巻成箇所には、それぞれヘッド糸ガイド19が配属されており、これらのヘッド糸ガイド19は、自由回転可能な分配ローラ35によって形成されている。そして走出ゴデット12から走出する糸33は、ほぼ水平な分配平面から巻成箇所へと変向されることができる。例えば図1の配置形式において生じるおそれのある、巻成箇所への糸の拡開は、これによって回避することができる。
【0062】
巻上げ装置18は図1に示された実施例におけるとほぼ同じであり、巻管スピンドル22.1,22.2はそれぞれ4つの糸を同時に巻き上げてスプールを巻成する。
【0063】
従って図2に示した実施例は同様に、FDY糸を製造するための本発明による方法を実施するために、適している。フィラメント束及び糸を引き出し、延伸しかつ案内するゴデットは、それぞれ部分的に巻き掛けられ、この場合特に引出しゴデットは、フィラメント束を案内するための環状のガイド溝を有している。
【0064】
図3には、本発明による方法を実施する本発明による装置のさらに別の実施例が示されている。この実施例は図2に示した実施例とほぼ同じなので、以下においては相違点についてだけ述べる。
【0065】
図3に示された実施例では、フィラメント4を冷却するためのブロー装置7はブローチューブ31によって形成されている。そのために各紡糸ノズル3にはそれぞれブローチューブ31が配属されており、これらのブローチューブ31はそれぞれ所属の紡糸ノズル3に対して同心的に保持されており、その結果ブローチューブ31の周壁から生じた冷却空気流は、フィラメント4を内側から外側に向かって貫流する。
【0066】
フィラメント束を引き出しかつ延伸する別の装置は、図2に示した実施例と同じである。しかしながら図3の実施例では加熱管を備えた加熱ボックス28は、冷却ダクト8の下において水平方向に方向付けられて配置されており、この配置形態によって引出しゴデット10においては、180°の範囲におけるフィラメント束の大きな巻掛け角度を実現することができる。そしてこれにより大きな引出し力及び延伸力を生ぜしめることができる。
【0067】
延伸ゴデット11はこの実施例では、冷却ダクト8の下において引出しゴデット10と向かい合って反対側に配置されている。このような配置形式によって、紡糸ノズル3の紡糸ノズル列に対して平行に延在する極めてコンパクトな延伸ゾーンが得られる。
【0068】
延伸ゴデット11の下には、走出ゴデット12と巻上げ装置18とが配置されている。走出ゴデット12と延伸ゴデット11との間には交絡装置17が設けられている。この配置形式は既に述べた実施例と同じなので、説明の繰り返しは省く。
【0069】
図3に示した実施例は特に、本発明による方法を、複数の糸のために装置の極めてコンパクトな配置形態によって実施するのに適している。
【符号の説明】
【0070】
1 紡糸ヘッド、 2 溶融物供給路、 3 紡糸ノズル、 4 フィラメント、 5 フィラメント束、 6 冷却装置、 7 ブロー装置、 8 冷却ダクト、 9 集合糸ガイド、 10 引出しゴデット、 11,11.1,11.2 延伸ゴデット、 12 走出ゴデット、 13.1,13.2,13.3 駆動装置、 14 加熱管、 15 処理通路、 16 準備処理装置、 17 交絡装置、 18 巻上げ装置、 19 ヘッド糸ガイド、 20 綾振り装置、 21 圧着ローラ、 22.1,22.2 巻管スピンドル、 23 スプール、 24 スピンドル保持体、 25 変向ローラ、 26 ガイド溝、 27 スクリーンシリンダ、 28 加熱ボックス、 29 保持プレート、 30 カバープレート、 31 ブローチューブ、 32 ガイド周壁、 33 糸、 34 機械フレーム、 35 分配ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィラメント糸を溶融紡糸し、延伸しかつ巻き上げて、完全に延伸された糸(FDY)を形成する方法であって、次のステップ、すなわち、
1.1 熱可塑性の溶融物から多数のフィラメントを押し出し、
1.2 押し出されたフィラメントを、熱可塑性材料のガラス転移温度を下回る温度に冷却し、
1.3 流体の供給なしに、集合位置ガイドにおける接触によってフィラメントをまとめてフィラメント束を形成し、
1.4 フィラメント束を、引出しゴデットによって1500m/分を上回る範囲の引出し速度で引き出し、
1.5 フィラメント束を、加熱管の高温空気雰囲気内において無接触式に、熱可塑性材料のガラス転移温度を上回る糸温度に加熱し、フィラメント束を、少なくとも1つの延伸ゴデットによって3500m/分を上回る延伸速度、有利には4000m/分を上回る延伸速度で延伸し、
1.6 フィラメント束を準備処理液によって準備処理し、
1.7 糸をスプールに巻き上げる、
というステップを有することを特徴とする、マルチフィラメント糸を溶融紡糸し、延伸しかつ巻き上げて完全に延伸された糸(FDY)を形成する方法。
【請求項2】
フィラメント束を加熱後に、2つのゴデットの間において緊張させられた糸部分において準備処理する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
引出し及び延伸のためにフィラメント束を、複数のゴデットの駆動されるガイド周壁の周囲に90°を上回る範囲でそれぞれ単純に部分巻掛けして案内する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
フィラメント束を加熱するために、高温空気雰囲気を120℃〜240℃の間の温度に温度調整し、フィラメント束を、800mm〜2500mmの範囲の長さを有する加熱管を通して案内する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
フィラメント束を冷却するために、冷却空気流を外側から内側に向かって又は内側から外側に向かって、フィラメント束に作用させる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
準備処理された糸を後処理のために、100℃〜180℃の範囲における表面温度を有する、1つの延伸ゴデットの周囲において加熱する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
糸を巻き上げる前に、2つのゴデットの間において緊張させられた糸部分において交絡させ、交絡によって、糸長さ1メートル当たり少なくとも5つの交絡結節部を生ぜしめる、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法を実施する装置であって、複数のフィラメント(4)を押し出すための紡糸ノズル(3)と、フィラメント(4)を冷却するための冷却装置(6)と、複数のフィラメント(4)を1つのフィラメント束(5)にまとめるための集合糸ガイド(9)と、フィラメント束(5)を引き出すための引出しゴデット(10)と、フィラメント束(5)を延伸するための少なくとも1つの延伸ゴデット(11)と、糸(33)を巻き上げるための巻上げ装置(18)とが設けられており、前記ゴデットに、フィラメント束(5)を準備処理するための準備処理装置(16)とフィラメント束を加熱するための加熱装置(14)とが配属されている形式のものにおいて、
準備処理装置(16)が、糸走行路において加熱装置(14)に後置されており、該加熱装置が、フィラメント束(5)を無接触式に加熱するための高温空気雰囲気を有する加熱管(14)として、引出しゴデット(10)と延伸ゴデット(11)のうちの1つの延伸ゴデットとの間に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項9】
準備処理装置(16)が、糸走行路において2つのゴデット、つまり引出しゴデット(10)と延伸ゴデット(11)との間に配置されている、請求項8記載の装置。
【請求項10】
引出しゴデット(10)と延伸ゴデット(11)とがそれぞれ、駆動されるガイド周壁を有していて、該ガイド周壁を通してフィラメント束(5)が、90°を上回る範囲で単純に部分巻掛けされて案内されている、請求項8又は9記載の装置。
【請求項11】
加熱管(14)が、800mm〜2500mmの範囲の長さを有している、請求項8から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
冷却装置(6)が少なくとも1つのブロー装置(7)を有していて、該ブロー装置(7)によって冷却空気流が、フィラメント束(5)の内側から外側に向かって又は外側から内側に向かって生ぜしめられる、請求項8から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
糸走行路において巻上げ装置(18)に交絡装置(17)が前置されており、該交絡装置(17)は糸走行路において2つのゴデット(11,12)の間に配置されている、請求項8から12までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
複数の紡糸ノズル(3)と複数の集合糸ガイド(9)とが、1グループのフィラメント束(5)を紡糸するために設けられており、引出しゴデット(10)が集合糸ガイド(9)のそばにおいて側方に配置されており、フィラメント束(5)が集合糸ガイド(9)において、等しく方向付けられていてそれぞれ45°を上回る部分巻掛けによって案内され、かつ引出しゴデット(10)の周囲においては互いに平行に処理間隔をおいて並んで案内されている、請求項8から12までのいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
複数の加熱管(14)が1つの加熱ボックス(28)内において並んで位置するように形成されており、該加熱ボックス(28)は鉛直方向に又は水平方向に位置付けられて引出しゴデット(10)に後置されている、請求項14記載の装置。
【請求項16】
加熱ボックス(28)が加熱管(14)を開放するために2部分から形成されていて、両部分のうちの1つが、少なくとも1つの可動のカバープレート(30)である、請求項15記載の装置。
【請求項17】
巻上げ装置(19)が巻成箇所毎にそれぞれ1つの分配ローラ(35)を有していて、該分配ローラ(35)によって、最後のゴデット(12)から走出する糸がそれぞれの巻成箇所に向かって分離される、請求項12から15までのいずれか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−500909(P2012−500909A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524303(P2011−524303)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060246
【国際公開番号】WO2010/023081
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】