説明

マルチモード無線受信機のマルチバンドミキサ及び直交位相信号発生器

【課題】多大なハードウェアの複製を必要とせずに多数の周波数帯域の信号を受信する受信機システムを提供する。
【解決手段】バンドパスフィルタ212aとバンドパスフィルタ212bとにより出力されたフィルタリング済みの信号群が、無線通信システムの所望の動作周波数帯域を選択する為に、マルチ入力の直並列インタフェースgm段235に供給される。gm段235がSPI制御部250からの適用された制御信号に応えて、帯域経路(BPF群212からの2つの出力のうち一方)をミキサコア240とミキサコア241への出力用に選択する。ミキサ240,241は、gm段235から受信した信号群と、直交位相信号発生器245により出力された直交位相信号群とを混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、多数の帯域(マルチバンド)無線通信の装置とシステムとに関する。また特に、本発明は、無線通信装置のマルチバンド無線受信機に有用なマルチバンドミキサと直交位相信号発生器とに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の分野が急速に発展し続けているため、使用するシステム及び周波数帯域の数が増大する結果となり、消費者への無線通信の配信が更に複雑になってきている。多くの場合、一つの特定の周波数帯域でサービスを提供しているネットワークオペレータは、無線サービスの顧客需要に対応すべく付加的な帯域のサービスを付加する必要がある。更に、通信事業者は、規格の異なる多数の無線通信システムを配置する必要がある。従って、セルラ無線電話機などの進歩した通信装置が遭遇しうる多様な無線通信システムで通信が可能となる多数の規格に準じた多数の周波数で、その装置が通信できなくてはならない
【0003】
異なる無線通信システムが異なるキャリア周波数又は周波数帯域で動作し、同一の変調方式とベースバンド処理方式とを用いる場合は、デュアルバンド電話機又はマルチバンド電話機が特に望ましい。このような類似点を共有しているのは、例えば、周知のGSM(登録商標)(移動通信グローバルシステム、Global System for Mobile Communication)、パーソナル通信サービス(PCS)、デジタル通信システム(DCS)のシステムである。なおまた、今日のデジタル移動無線システムでは、RF(無線周波数)送信に2つ以上の周波数帯域を使用可能である。例として、欧州のGSM(登録商標)は2つの周波数帯域を用いており、これらはそれぞれ900MHz(GSM(登録商標)900)と1800MHz(GSM(登録商標)1800)とを中心とした25MHzの帯域幅であり、これらの周波数帯域の各々には、アップリンク(移動局から基地局への情報転送)の周波数帯域とダウンリンク(基地局から移動局への情報転送)の周波数帯域とがある。米国では、これら2つのGSM(登録商標)周波数帯域の中心はそれぞれ850MHzと1900MHzである。GSM(登録商標)では更に、アップリンク帯域及びダウンリンク帯域の各々に、複数の周波数分割多重(FDM)サブバンドRFチャネルがあり、各帯域幅は200kHZである。従って、デュアルバンドのGSM(登録商標)移動電話は、GSM(登録商標)900帯域及びGSM(登録商標)1800帯域の両方を送受信できる。
【0004】
図1に模範的な先行技術のデュアルバンド無線受信機が示されており、基地局から送信されたRF信号群がアンテナ10で受信機に受信され、このアンテナ10がRF信号群を帯域スプリッタ30へと通し、この帯域スプリッタ30が受信した信号群を第1及び第2(又はそれ以上)の帯域に分ける。第1のバンドパスフィルタ(BPF)12aと第2のバンドパスフィルタ(BPF)12bとが、分けられた信号群をそれぞれ第1の帯域と第2の帯域とにフィルタリングし、これで2つの別個の通信帯域各々で受信機が受信できる。BPF12aとBPF12bとが出力したフィルタリング済みの信号群がそれぞれ直交位相復調(demod)ユニット32a〜32bに供給され、これらのユニットが、バンドパスでフィルタリングされた信号群を、更なる処理の為に同相ベースバンド信号(I信号)と直交位相ベースバンド信号(Q信号)とに変換する。直交位相復調ユニット32a〜bには、低雑音の増幅器(LNA)34a〜bと、分割器20a〜bと、ミキサ40a〜bとがある。分割器20a〜bが局部発振器(LO)36a〜bから受信した中間周波数信号を分割して、位相差が90°の中間の1/2信号と1/4信号を作る。生成されたLO信号群と増幅された受信信号群とを、第1のミキサ(ミキサ対40a、41a)と第2のミキサ(対40b、41b)とで混合して、Iベースバンド信号とQベースバンド信号を生成し、これらの信号をそれぞれ同相ローパスフィルタ42aと直交位相ローパスフィルタ42bでローパスフィルタリングする。次にフィルタリング済みのI信号及びQ信号はベースバンド処理回路44へと進み、このベースバンド処理回路44は、当該分野で周知のように、従来のベースバンド処理回路である。
【0005】
図1の受信機を参照して分かるように、多くの受信機のハードウェアコンポーネント群を複製せずに多数の周波数の信号群を処理するマルチモード無線受信機を提供するのは困難である。先行技術では、受信機の設計に、バンドパスフィルタと、分割器と、局部発振器と、ミキサと、ローパスフィルタとを、提供される周波数帯域毎に別個に盛り込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許5926751
【特許文献2】米国特許6029052
【特許文献3】米国特許US2004/0097210A1
【特許文献4】米国特許US2004/0253938A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
消費電力と受信機のハードウェアの複製を最小に抑えながらも多数の周波数帯域の信号を受信する能力のある無線通信装置の受信機が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様では、受信機が、複数の入力を持つマルチプレクサ回路を備え、この複数の入力の各入力が複数の信号経路の別個の信号経路に結合され、各信号経路が別個の周波数帯域の複数のRF信号の中から所定のRF信号を受信する。このマルチプレクサ回路が、複数の入力のうちの所定の入力で受信したRF信号をマルチプレクサ回路の所定の出力に選択的に送信する。受信機にはマルチプレクサ回路に結合されたミキサもあり、このミキサが、選択的に送信されたRF信号と所定の基準信号群とを受信し、所定の出力信号群を生成する為に、選択的に送信されたRF信号と基準信号とを組み合わせる。
【0009】
本発明の別の態様では、複数の周波数帯域の通信信号群を受信する通信装置が、所定の複数の周波数帯域の通信信号群を受信するアンテナ回路と、前記複数の周波数帯域のうちの第1の周波数帯域の通信信号群を受信する為にアンテナ回路に結合された第1の信号経路と、前記複数の周波数帯域のうちの第2の周波数帯域の通信信号群を受信する為にアンテナ回路に結合された第2の信号経路と、第1の信号経路と第2の信号経路とに結合された信号経路信号回線とを備え、第1の信号経路又は第2の信号経路のどちらかで検出された通信信号群が信号経路信号回線の所定の出力に転送される。通信装置には更に、所定の基準信号群を生成する信号発生器と、信号経路信号回線の出力に結合されたミキサとがあり、このミキサが、信号経路信号回線に転送された通信信号群を受信し、所定の出力通信信号群を生成するよう基準信号群と組み合わせる。
本発明の更なる別の態様では、複数の周波数帯域の通信信号群を受信する方法が、所定の複数の周波数帯域のうち所定の一つの周波数帯域の通信信号群を受信する工程と、この通信信号は所定の帯域幅を持ち、複数の周波数帯域のうちの第1の周波数帯域の通信信号群を第1の信号経路に結合する工程と、複数の周波数帯域のうちの第2の周波数帯域の通信信号群を第2の信号経路に結合する工程と、第1の信号経路又は第2の信号経路のうち一方のアサートされた通信信号群をミキサの第1の入力に結合する工程と、所定の局部発振器信号群をミキサの第2の入力に結合する工程と、を含む。本方法は、ミキサの出力を生成する為に、局部発振器信号群と前記アサートされた通信信号群とを第1の周波数帯域又は第2の周波数帯域のどちらかで混合する工程で締めくくられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、マルチバンド受信機を提供するよう一つの高利得のマルチバンドミキサを備え、帯域選択のために直並列インタフェース(SPI)を選択可能な段を独自に構成することにより、電力削減とコスト削減がもたらされる。帯域ごとの個々のミキサをなくし、低雑音増幅器(LNA)入力段を不要にすることで、集積回路のダイ面積及び電流の消耗を実質的に低減させる。更に、直交位相信号発生器の各々に必要とされる入力バッファ及びバイアス回路が一つだけなので、ダイ面積及び電流の消耗を更に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】先行技術のデュアルバンド無線受信機。
【図2】本発明が組み込まれたセルラ無線電話機などの無線通信装置のブロック図
【図3】本発明の好適な実施形態に従って、マルチバンド受信機能を無線通信装置提供するよう動作可能な受信機のブロック図。
【図4】本発明の好適な実施形態に係るスイッチ及びミキサの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、以下の説明の好適な実施形態で記載され、本説明は、以下のとおりに、同じ数字が同一の又は同様な要素を表す図面に関する。
本発明の模範的な実施形態の以下の詳細な記述では、その実施形態の一部を成す添付の図面について述べられており、これらの図面では、本発明を実践し得る特殊な模範的実施形態実例として示されている。
【0013】
本発明に係るマルチバンド高利得ミキサと直交位相信号発生器とによって、受信機システムが多大なハードウェアの複製を必要とせずに多数の周波数帯域の信号を受信することが可能になる。この成果を達成する為に、好適な実施形態の単一のミキサが、DCS、PCS、UMTS(Universal Mobile Telecommunication System))(UMTSの日本の800MHz帯域やUMTSの米国の800MHz帯域などを含む)のいずれかを、増幅せず直接的に受信でき、RF入力を単一の局部発振器信号と混合してマルチモードの受信機から共通のIF出力を生成できる。先行技術に見られる全ての低雑音増幅器(LNA)と複製ミキサとをなくすことにより、ダイ面積と電流の消耗とが著しく低減された無線受信機が得られる。
【0014】
ここで図2を参照すると、描写されているのは、本発明が組み込まれた、セルラ無線電話機などの無線通信装置100のブロック図である。好適な実施形態では、フレーム生成ASIC101とマイクロプロセッサ103とを組み合わせて、セルラ通信システムでの動作に必要な通信プロトコルを生成する。マイクロプロセッサ103が使用するメモリ104にはRAM105とFLASH107とROM109とがあり、これらは好ましくは1つのパッケージ111に統合されており、プロトコルを生成する為に必要な工程を実行し、無線通信装置100の他の機能を行い、これらの機能は例えば、ディスプレイ113への書き込みや、キーパッド115からの情報の受け取りや、コネクタ116を介した入力/出力(I/O)情報の受け取りや、周波数シンセサイザ125の制御や、本発明の方法に従う信号の増幅に必要な工程を行うことなどである。マイクロプロセッサ103は更に、マイクロホン117から入り音声回路119により変形された音声を処理してスピーカ121に送る。無線通信装置100には任意選択でメッセージ受信機及び記憶装置130があってもよく、これには例えばデジタル留守電装置やページング受信機として使用されるデジタル信号処理手段などがある。
【0015】
無線通信装置100の無線周波数の信号をトランシーバ122が処理する。中でも特に、送信機123が周波数シンセサイザ125により作られたキャリア周波数を用いアンテナ129を介して送信を行う。アンテナ129が受信した情報信号は、受信機127に入り、周波数シンセサイザ125によるキャリア周波数を用い復調される。その結果として生じたベースバンド信号が、当該分野で周知のように、ベースバンド処理の為にマイクロプロセッサ103へと送出される。
【0016】
図3が示すのは、本発明の好適な実施形態に従って、マルチバンド受信機能を無線通信装置100に提供するよう動作可能な受信機127のブロック図である。この実施形態では、無線通信装置100により提供されたデュアルバンドの受信信号群を混合するのは、単一のマルチバンド高利得ミキサ(Iチャネルのミキサコア要素240とQチャネルのミキサコア要素241と多入力の相互コンダクタンス(gm)段235とが含まれる)である。基地局又は他のRF送信機から送信されたRF信号を受信する為に受信機127がアンテナ129に結合されている。この受信した信号を、アンテナ129に結合された帯域スプリッタ(band splitter)230が第1及び第2(又はそれ以上)の帯域又は経路に分け、帯域スプリッタ230に結合されたバンドパスフィルタ(BPF)212a及び212bへの出力とする。バンドスプリッタ230は、選択した周波数帯域のみがBPF212へと進むよう、マイクロプロセッサ103により選択可能である。他の実施形態では、所望の周波数帯域の選択にソフトウェア又はフィルタリングの構成要素が使用できる。動作周波数帯域を選択する信号がマイクロプロセッサ103又はシンセサイザ125から出力され、例えば、無線通信デバイス100が現在受信中の周波数帯域を示す。この帯域選択は、当該加入者によって確認されてもよいし、受信した通信信号と共に供給された制御信号によって確認されてもよい。
【0017】
分けられた信号群を、それぞれ第1の周波数帯域と第2の周波数帯域に第1のバンドパスフィルタ(BPF)212aと第2のバンドパスフィルタ(BPF)212bとがフィルタリングするので、受信機127が所望の受信する通信帯域を選択できる。例えば、バンドパスフィルタ群212を、UMTS2100帯域及びDCS1800帯域の各々の帯域幅をフィルタリングするよう構成してもよい。バンドパスフィルタ212は周波数(帯域)に特定のものであり、受信機の直線性が相対的に高い場合は省いてもよい。代案として、高品質のバンドパスフィルタが用いられている場合は帯域スプリッタ230を省いてもよい。たいていの場合、消費電力を最小にするにはバンドパスフィルタ212が望ましい。更なる代案としては、帯域スプリッタとバンドパスフィルタを、一つの入力と多数の出力(帯域ごとに1出力)とを有した単一のマルチバンドフィルタ(図示せず)と取り替えてもよい。
【0018】
バンドパスフィルタ212aとバンドパスフィルタ212bとにより出力されたフィルタリング済みの信号群が、無線通信システムの所望の動作周波数帯域を選択する為に、マルチ入力の直並列インタフェース(SPI)を選択可能なgm段235に供給される。gm段235がBPF212群からフィルタリング済みの帯域幅の各々を入力として受信し、SPI制御部250からの適用された制御信号に応えて、帯域経路(BPF群212からの2つの出力のうち一方)をミキサコア240とミキサコア241への出力用に選択する。RF信号のアサートされた帯域経路が選択されてミキシング回路への出力となり、信号のアサートされていない帯域経路は遮断され受信機127の電流を消耗しない。
【0019】
選択した周波数帯域の受信した信号群の同相成分(I信号)と直交成分(Q信号)とを、直交位相復調ユニット248が生成する。直交位相復調ユニット248に含まれるのは、単一のマルチバンド高利得ミキサ243(ミキサコア要素240、ミキサコア要素241、gm段235)であり、このミキサ243は、スイッチ235から受信した信号群と、直交位相信号発生器245により出力された直交位相信号群とを混合する。直交位相信号発生器245には電圧制御発振器(VCO)236があり、このVCO236はこれに結合されたバッファ237の入力に局部発振器信号(LO)を生成する。VCO236の帯域幅は相対的に大きく、受信機が受信できる周波数帯域の全てを十分包含するか、代案としてVCO236が周波数の多数の発振を切替可能であってもよい。増幅された発振器信号がバッファ237から出力され、同相成分(I)と直交成分(Q)とに分離される(即ち、信号群の位相が90°だけ離される)よう、バッファ237に結合されたハイバンド直交位相発生器238及びローバンド直交位相発生器239の各々へと入力される。直交位相生成器238は1/2直交位相生成器であり、相対的に高い帯域、例えば、PCS1900、DCS1800、UMTS2100向けである。直交位相生成器239は1/4直交位相生成器であり、相対的に低い帯域、例えば、GSM(登録商標)の800MHz、900MHz、日本及び米国のW−CDMAの800MHzの直交位相信号群を生成する。従って、直交位相生成器238と直交位相生成器239とが、バッファ237から受信した中間周波数LO信号を、受信した帯域に依存して、半分に分割(1/2直交位相生成)又は四半分に分割(1/4直交位相生成)し、それによってLO信号群が、それぞれ半分又は四半分の周波数となり、直交位相信号発生器245の出力の(IとQとの)位相差が90°となる。直交位相生成器238と直交位相生成器239とが同一の入力バッファを利用し同一のバイアス回路を共有するので、集積回路のダイ面積が低減される。
【0020】
代わりの方法では、直交位相信号発生器238と直交位相信号発生器239を、VCO236により生成された発振信号から直交位相の局部発振器(LO)信号群を生成する周波数分割器と取り替えてもよい。信号の周波数を2で分割することで、2つの直交位相信号を生成することが可能になる。周波数2fの差分信号が2で分割され、各信号の立ち上がりエッジが分割された信号のエッジを制御する。2fの1/2波長が周波数fの波長の1/4に等しいので、その結果として生じた信号は直交位相信号である。周波数分割器を用いるには、VCO236が所望の周波数の適切な倍数で動作する必要がある。例えば、1つ又は2つの周波数で動作する際には、周波数分割器はそれぞれ2で又は2と4で分割する。
【0021】
直交位相信号発生器245からの局部発振器I信号及び局部発振器Q信号を、単一のミキサ243(ミキサコア240と、ミキサコア241と、gm段235とから成る)が、ミキサコア240及びミキサコア241のLO入力で受信し、更に、RF信号群をgm段235からの入力で受信し、このgm段235は出力に際して電圧を電流に変換する。ミキサコア240とミキサコア241とが、受信したRF入力を、それぞれ対応したI信号群及びQ信号群と混合して、同相成分を持つIF出力と直交成分を持つIF出力とを生成する。もちろん、直交位相復調を用いて単一のRF信号を復調する為にもミキサコア240とミキサコア241は必要なので、単一のミキサ243の重要な要素である。他の復調技術を利用する代替の好適な実施形態では、例えば、同相成分信号のみを用いる場合に、任意のRF信号を復調する必要があるのはミキサコアの一方(即ち、ミキサコア240又はミキサコア241のどちらか)だけである。ミキサ243からのI信号出力とQ信号出力が、それぞれ同相ローパスフィルタ242aと直交位相ローパスフィルタ242bに結合される。ローパスフィルタ242aとローパスフィルタ242bは好ましくは、異なる帯域幅を持つ二つ以上の帯域に受信機127が対応できるようプログラム可能な帯域幅を持つ。次にフィルタリング済みのI信号及びQ信号は、当該分野で周知のように、ベースバンド処理の為にベースバンド処理回路へと進む。
【0022】
ここで図4を参照すると、本発明の好適な実施形態に係るgm段235及びミキサ243の回路図が示されている。ある実施形態で実施される際には、受信機127がトリプルバンド受信機であり、3つの別個の周波数帯域、例えば、UMTS、PCS、日本及び米国のWCDMA800を支持できる。これらの3つの入力帯域からのRF入力信号の各々が、図4の実施形態では、差動入力のRF入力1、RF入力2、RF入力3として示されている。RF入力1、2、3は、SPIを選択可能なgm段235への入力として、それぞれ402、404、406で結合されている。各gm段402、404、406には、それぞれ、n型の金属酸化物半導体(MOS)トランジスタ対402a〜b、404a〜b、406a〜bがある。トランジスタ対402a〜b、404a〜b、406a〜bのゲートに帯域の異なるRF信号群が入力され、トランジスタ対402a〜b、404a〜b、406a〜bの出力群が連結され、I及びQのチャネルミキサコア240及び241へと進む。よってgm段とミキサコア群とが同一の電流を共有する。トランジスタの対402a〜b、404a〜b、406a〜bのソースが、それぞれ、差動インダクタ420a、420b、420cに結合されている。差動インダクタの中心は接地されている。性能改善の為に、gm段235とマルチバンド高利得ミキサ243と直交位相信号発生器245の、MOSデバイスに関しては本体とソースとが連結され、デバイスの電流の消耗を増加させずに入力基準3次インターセプトポイント(IIP3)を改善する。gm段402がRF入力1を受信したときは、他のgm段404とgm段406とがSPI制御部250により遮断される。代案として、gm段406を省いて受信機127の動作に影響を及ぼさずに受信機127をデュアルバンド受信機として実施してもよい。gm段402〜406の出力群がミキサ243の差動入力群と並列に結合されている。g−m段235は、SPI制御部250の制御により、ミキサ243へのRF入力群のマルチプレクサの入力として一緒に動作する。gmの段の出力群が並列に連結されておりミキサ及び負荷が一つだけになるので、ミキサセルのダイ面積と負荷とが低減される。
【0023】
ミキサ243の各ミキサコア240、241が4個のn型のバイポーラトランジスタそれぞれトランジスタの対408a〜bとトランジスタの対410a〜bと確認される)を用いて相互に接続され、周知の「ギルバートセル」ミキサ構成を形成している。ギルバートセルは無線電話機及び他のRF応用例に用いられるミキサ構成であり、その設計及び動作は当業者に周知なので、詳細には説明しない。ミキサコア240が、ミキサ240と負荷抵抗器412との間のノードと、ミキサ240と負荷抵抗器414との間のノードで生成するのは、gm段235からの選択したRF入力と直交位相生成器245から受信した差動同相LO信号群(lo_I、lo_Ix)とを混合することによりもたらされる差動同相(I)信号出力(I_out、Ix_out)である。ミキサコア241が、ミキサ241と負荷抵抗器416との間のノードと、ミキサ241と負荷抵抗器418との間のノードで生成するのは、gm段235からの選択したRF入力と直交位相生成器245から受信した差動直交位相LO信号群(lo_Q、lo_Qx)とを混合することによりもたらされる、差動直交位相(Q)信号出力(Q_out、Qx_out)である。図4に示された回路では、インダクタ420a〜cの中心に接地接続(gnd_mix)があり、負荷抵抗器412〜418の終端にチップ電源(vcc_mix)がある。当業者には明らかなように、受信した周波数帯域を選択するとき、ミキサコアのバイアス電流と、帯域選択段と、直交位相信号発生器とが、トランシーバの直線性と、ゲインと、雑音指数とを最適化するようSPIを選択可能である。
【0024】
本発明の好適な実施形態がデュアルバンド(図3)受信機とトリプルバンド(図4)受信機として記載されたが、当然のことながら、本発明はこれらの実施形態に制限されておらず、記載した好適な実施形態を修正して、他の通信システムの信号を受信するようgm段235の入力に付加的なRF経路を備え、クワッドバンド又はマルチバンド(4つより多くの帯域)の受信機としても実施可能である。これらの好適な実施形態は、差動RF入力に付加的なRF入力の各々を送信することにより実施され、付加的なgm段の出力がミキサ243の入力でgm段402〜406に並列して接続されている。例えば、無線通信装置100を、gm段235に向かう第4のRF経路でGSM(登録商標)の900メガヘルツの信号群を受信するよう適応させられる。よって、もちろん、本実施形態では3つの差動RF入力が示されているが、所望の受信する周波数帯域数に依存して付加的な段を必要に応じて使用可能である。
【0025】
示してきた通り、本発明は、マルチバンド受信機を提供するよう一つの高利得のマルチバンドミキサを備え帯域選択の為にSPIを選択可能な段を独自に構成することにより、電力とコストについての大きな利点がもたらされる。帯域ごとの個々のミキサをなくしLNA入力段を不要にすることで、集積回路のダイ面積及び電流の消耗を実質的に低減させる。更に、直交位相信号発生器の各々に必要とされる入力バッファ及びバイアス回路が一つだけなので、ダイ面積及び電流の消耗を更に低減できる。
【0026】
本発明が図面の上記の記述により記載され図示されたが、この記述が単に例としてなされたものであり、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく非常に多くの変更及び修正が当業者には可能であるということが分かる。例えば、特殊な受信帯域を持つ特殊な無線電話システムが記載された。しかし、他の規格や周波数帯域を用いた他のシステムを本発明により検討できる。なおまた、本発明は持ち運びできるセルラ無線電話機の特定の応用例を見出したが、本発明は、ページャ、電子手帳、コンピュータ、ゲームなど、任意の無線通信装置に適用可能である。本発明を好適な実施形態に関して特に示され記載したが、当業者には明らかなように、本発明のシステム精神及び範囲から逸脱することなく形式及び詳細に関し種々の変更が本発明になされてよい。記載した実施形態に対し、あらゆる変形、修正、付加、改善が可能であり、以下の請求項に詳述した本発明の範囲内にある。
【符号の説明】
【0027】
100…無線通信装置。125…周波数シンセサイザ。127…受信機システム。129…アンテナ。212…バンドパスフィルタ。230…帯域スプリッタ。235、240、241…ミキサ。236…電圧制御発振器(VCO)。237…バッファ。238、239…直交位相信号発生器。242…低域フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力を有し、同複数の入力の各入力が複数の信号経路の各信号経路に結合され、各信号経路がそれぞれの周波数帯域の複数のRF信号の中から所定のRF信号を受信し、前記複数の入力のうちの所定の入力で受信したRF信号を選択回路の出力に選択的に送信する前記選択回路と、
前記選択回路に結合され、前記選択的に送信されたRF信号と基準信号群とを受信して
組み合わせることによって出力信号群を生成するミキサコアと、
を備える受信機。
【請求項2】
前記基準信号を構成する、少なくとも1つの同相基準信号と少なくとも1つの直交位相基準信号とを生成する直交位相信号発生器を更に備えた請求項1に記載の受信機。
【請求項3】
前記直交位相信号発生器が、前記ミキサの入力と並列に接続された、ハイバンド直交位相発生器とローバンド直交位相発生器とを備えた請求項2に記載の受信機。
【請求項4】
前記直交位相信号発生器の入力に、局部発振器信号を出力する電圧制御発振器を更に備えた請求項2に記載の受信機。
【請求項5】
前記直交位相信号発生器が二つ以上の周波数帯域の基準信号群を生成し、前記基準信号の周波数帯域が前記選択的に送信されたRF信号の周波数帯域の関数として決定される請求項2に記載の受信機。
【請求項6】
前記直交位相信号発生器が、受信された局部発振器信号を分割する少なくとも一つの周波数分割手段を備える請求項2に記載の受信機。
【請求項7】
前記選択的に送信されたRF信号が、前記受信機が受信した複数の周波数帯域の中から選択された周波数帯域にある請求項1に記載の受信機。
【請求項8】
前記ミキサコアが2つのミキサコアを備え、各ミキサコアが、前記基準信号を構成する同相基準信号及び直交位相基準信号の一方を混合する請求項1に記載の受信機。
【請求項9】
前記選択回路が第1の複数のトランジスタを備え、各トランジスタが前記複数のRF信号の中からそれぞれのRF信号を所定の制御ノードで受信し、受信したRF信号を電流電極で出力し、全てのトランジスタの電流電極が並列に接続された請求項1に記載の受信機
【請求項10】
前記ミキサコアが、一つ以上のギルバートセルミキサを構成するために相互に接続された第2の複数のトランジスタを備え、該ギルバートセルミキサ構成が前記並列接続の電極に結合された請求項9に記載の受信機。
【請求項11】
複数の周波数帯域の通信信号群を受信する通信装置であって、同通信装置が、
複数の周波数帯域の通信信号群を受信するアンテナ回路と、
前記複数の周波数帯域のうちの第1の周波数帯域の通信信号群を受信するために前記アンテナ回路に結合された第1の信号経路と、
前記複数の周波数帯域のうちの第2の周波数帯域の通信信号群を受信するために前記アンテナ回路に結合された第2の信号経路と、
前記第1の信号経路と前記第2の信号経路とに結合されて、前記第1の信号経路又は前記第2の信号経路のどちらかで検出された通信信号群を信号経路選択回路の出力に転送する前記信号経路選択回路と、
基準信号群を生成する信号発生器と、
前記信号経路選択回路に転送された通信信号群を受信し、前記基準信号と組み合わせて出力通信信号群を生成するための、前記信号経路選択回路の出力に結合されたミキサコアと、
を備える通信装置。
【請求項12】
受信した通信信号群が前記信号経路選択回路により増幅される請求項11に記載の通信装置。
【請求項13】
前記出力通信信号群が同相出力信号群及び直交位相出力信号群である、請求項11に記載の通信装置。
【請求項14】
前記信号発生器が直交位相局部発振信号群を生成する直交位相信号発生器である請求項11に記載の通信装置。
【請求項15】
前記アンテナと信号経路選択回路との間に直列に結合された第1のフィルタを更に備え、同第1のフィルタが、前記第1の周波数帯域内の通信信号群を通す請求項11に記載の通信装置。
【請求項16】
複数の周波数帯域の通信信号群を受信する方法であって、前記方法が、
複数の周波数帯域のうちの一つの周波数帯域の、帯域幅を有する通信信号群を受信する工程と、
前記複数の周波数帯域のうちの第1の周波数帯域の通信信号群を第1の信号経路に結合する工程と、
前記複数の周波数帯域のうちの第2の周波数帯域の通信信号群を第2の信号経路に結合する工程と、
前記第1の信号経路又は前記第2の信号経路のうち一方のアサートされた通信信号群をミキサの第1の入力に結合する工程と、
局部発振器信号群を前記ミキサの第2の入力に結合する工程と、
前記ミキサの出力を生成するために、前記局部発振器信号と前記アサートされた通信信号とを、前記第1の周波数帯域又は前記第2の周波数帯域のどちらかで混合する工程と、を含む方法。
【請求項17】
前記局部発振器信号が同相信号群と直交位相信号群とからなる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アサートされた通信信号が増幅されずに前記ミキサに結合される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記局部発振器信号が低帯域同相フィルタと低帯域直交位相フィルタとにより生成され、前記フィルタが、異なる帯域幅の通信信号群に対応するよう変更されるプログラム可能な帯域幅を有する請求項16に記載の方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法であって、
第1の発振器信号を生成する工程と、
同相発振器信号と直交位相発振器信号とを生成するために前記第1の発振器信号を分周する工程とを更に備え、前記局部発振器信号が前記同相発振器信号と前記直交位相発振器信号を含んでいる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−165461(P2012−165461A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−106291(P2012−106291)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【分割の表示】特願2006−96226(P2006−96226)の分割
【原出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
【出願人】(503260918)アップル インコーポレイテッド (568)
【Fターム(参考)】