マルチユーザ通信システムにおける計算量管理
本発明は、干渉が存在するマルチアクセス/ユーザ通信システムにおける受信機の計算量管理に関する。例えば、符号分割多元接続DS/CDMAシステムのアップリンクにおける受信機でのマルチユーザ検出である。本発明は、電力管理および復号スケジュール最適化の方法を提供するが、これは干渉キャンセラおよび複数のデコーダについての外部情報伝達(EXIT)関数を導出し、導出されたEXIT関数に基づいて複数のユーザそれぞれの電力レベルを決定し、導出されたEXIT関数および決定された電力レベルに基づいて複数のデコーダの復号スケジュールを導出することによって行われる。本発明の利点の1つは、最適化が2つの部分に分割されることである。コンピュータの計算量(反復数)と、所与の信号対雑音比におけるビットエラーレート性能の改善との間のトレードオフはない。本発明を用いて、受信機感度とコンピュータの計算量とにおいて、大きな利得が同時に達成され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉が存在するマルチアクセス/ユーザ通信システムにおける、受信機の計算量(complexity)管理に関する。限定ではないが例えば、符号分割多元接続DS/CDMAシステムのアップリンクにおける受信機でのマルチユーザ検出である。本発明の態様は、方法、基地局受信機、およびソフトウェアを含む。
【背景技術】
【0002】
近年、マルチユーザセルラーシステムと、コーデッド符号分割多元接続(CDMA)システムのための受信機設計とに、多くの関心が持たれている。
【0003】
反復符号化を伴うCDMAシステムの性能を予測することは、ユーザが少数であっても計算的に大きな負担を要する。外部情報伝達(EXIT、extrinsic information transfer)チャート分析は、計算的に大きな負担を要するシミュレーションを必要とせずに収束挙動を記述および視覚化するのに、うまく使用されてきた。
【0004】
反復マルチユーザ検出器(IMUD)受信機中での復号は、コンポーネントデコーダおよび干渉キャンセラ(IC)のアクティブ化のスケジュールに従って続行する。従来のIMUD受信機は、固定の(静的な)復号スケジュールに従う。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、ワイヤレスネットワーク中で複数のユーザと通信する基地局における電力管理および復号スケジュール最適化の方法を提供する。この方法は、
(i)基地局において干渉キャンセラおよび複数のデコーダについて外部情報伝達(EXIT)関数を導出するステップであって、各デコーダが1ユーザに関連しているステップと、
(ii)導出されたEXIT関数に基づいて複数のユーザそれぞれの電力レベルを決定するステップと、次いで、
(iii)導出されたEXIT関数および決定された電力レベルに基づいて複数のデコーダの復号スケジュールを導出するステップとを含む。
【0006】
電力と復号スケジュールとの同時最適化は法外に複雑であり、したがって本発明の利点の1つは、最適化が2つの部分に分割されることである。まず各ユーザの電力レベルが最適化され、次いで、最適化された電力レベルを使用した復号スケジュールが決定される。この結果、コンピュータの計算量(反復数)と、所与の信号対雑音比におけるビットエラーレート性能の改善との間のどんなトレードオフもなくて済む。本発明を用いて、受信機感度(すなわち電力効率および/またはスペクトル効率、したがってユーザ端末からの干渉低減)と、コンピュータの計算量とにおいて、大きな利得が同時に達成され得る。
【0007】
EXIT関数は、電力、符号レート、または変調の異なるユーザのグループの伝達関数を表すことができる。有効EXIT関数を、基地局の干渉キャンセラについて決定することができる。有効EXIT関数を、モンテカルロシミュレーションを使用してターボデコーダ(TD)について決定することができる。EXIT関数は、相互情報量を入力とすることができる。
【0008】
ステップ(i)は、全てのユーザグループに関する所定のまたは動的な復号統計に基づくことができる。
【0009】
ステップ(ii)は、電力最適化されたEXITチャートを生み出すことができ、これは次いでステップ(iii)で使用される。
【0010】
ステップ(ii)は、EXITチャートの収束分析に基づくことができ、この収束分析は、ユーザ間の電力配分を最適化することによって、総電力が与えられた場合のしきい値を最小化するものである。特に、この最適化は、非線形制約関数を使用して電力割振りを導出することを含むことができ、これはEXITチャート出力の使用を含む。
【0011】
ユーザは複数のグループに分割することができ、グループの各メンバは等しい電力を有する。この方法はさらに、グループを単一ユーザとして扱うことを含むことができる。
【0012】
ステップ(iii)は、オフライン初期化とオンラインビタビ探索との両方を使用することができる。
【0013】
オフライン初期化は、デコーダEXIT曲線と干渉キャンセラEXIT曲線との交差点である収束点を決定してから収束ビットエラーレート
【0014】
【数1】
【0015】
を決定することを含むことができる。ここで、Pは最適化された電力プロファイルであり、Q(.)は正規化されたガウス分布の裾確率(tail probability)であり、J()は相互情報量を分散の関数として記述し、
【0016】
【数2】
【0017】
は収束点である。
【0018】
ビタビ探索は、ビットエラーレートを維持しながら復号の計算量および遅延(デコーダ反復の総数)が最小化されるように、復号スケジュールを最適化することができる。
【0019】
ステップ(iii)の計算量は、以下のいずれか1つまたは複数を実施することによって低減することができる。
ビタビ探索のトレリスをトリミングする。
ビタビ探索の生き残り経路の数を削減する。
許容されるデコーダ反復の数を切り捨てる。
ステップ(iii)を受信機の反復ごとよりも低頻度で実施する。
【0020】
復号スケジュールを導出するステップは、最初に、または干渉キャンセラが所定回数アクティブ化された後で実施することができる。
【0021】
ステップ(iii)は、静的と動的の両方のスケジューリングプロセスを含むことができる。動的復号スケジュール最適化は、受信機の反復ごとに最適スケジュールを導出して、最小数のデコーダ反復を使用して目標ビットエラーレートを達成することを含むことができる。従来技術では、無限ブロック長に基づくEXITチャート分析は、有限ブロック長にわたってシミュレートされた軌跡からの不一致となる。これは[4]で観測されており、反復を経るにつれて軌跡の一致が劣化することがわかった。[7]では、Li他は、信頼区間を含むEXITチャートを示し、同様に[8]では、著者らは、単一の伝達曲線の代わりに伝達特性帯域を使用した収束分析ツールを提案している。軌跡の不一致は、高いSNRにおいては収束にクリティカルではなく、むしろ、EXITチャート中のトンネルが狭くなっている収束しきい値付近で動作するときに、よりクリティカルであることに留意されたい。この動的スケジューリング方法は、復号軌跡の不一致を補償することができる。
【0022】
ステップ(i)はさらに、チャネル推定器についてEXIT関数を導出することを含むことができる。ステップ(iii)の復号スケジュールはさらに、チャネル推定器についてのものとすることができる。
【0023】
本発明の少なくとも1つの実施形態の最適化された受信機は、従来の受信機よりも、収束しきい値が低く、収束の達成に要する反復が少ない。さらに、本発明の少なくとも1つの実施形態では、より一貫したサービス品質(QoS)となる。
【0024】
本発明の少なくとも1つの実施形態の利点の1つは、動的スケジューリングを用いた電力最適化されたシステムが、大きな計算量節減を伴って、従来の受信機と同様のビットエラーレート性能を達成することである。さらに、パケット当たりのビットエラーレートの分散を低減することにより、静的に導出された最適スケジュールの性能をしのぐ。
【0025】
第2の態様では、本発明は、ワイヤレスネットワーク中で複数のユーザと通信する、電力および復号スケジュール最適化のための基地局を提供する。この基地局は、
干渉キャンセラと、
それぞれが1ユーザに関連する複数のデコーダと、
基地局において干渉キャンセラおよび複数のデコーダについて外部情報伝達(EXIT)関数を導出するための処理手段と、
導出されたEXIT関数に基づいて複数のユーザそれぞれの電力レベルを決定するための電力最適化モジュールと、
導出されたEXIT関数および決定された電力レベルに基づいて複数のデコーダの復号スケジュールを決定するためのスケジュール最適化モジュールとを備える。
【0026】
基地局はさらに、それぞれが分解可能経路に関連する複数のチャネル推定器を備えることができる。処理手段はさらに、チャネル推定器についてEXIT関数を導出するように動作することができ、スケジュール最適化モジュールは、導出されたEXIT関数および決定された電力レベルに基づいて、チャネル推定器についても復号スケジュールを決定することができる。
【0027】
第3の態様では、本発明は、インストールされたときに前述の方法を基地局に実施させることのできるソフトウェアを提供する。
【0028】
第4の態様では、本発明は、前述の方法に従って導出された復号スケジュールを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1a】制御ブロック(電力およびスケジュール最適化)を有する反復マルチユーザ検出器(IMUD)受信機の概略図である。
【図1b】本発明の方法の例を示す流れ図である。
【図1c】干渉キャンセラと、複数のチャネルデコーダと、複数のチャネル推定器とで構成される受信機の概略図である。
【図2】ランダムな始点に対する電力最適化アルゴリズム軌跡(ブルートフォース探索を使用)を示すグラフである。
【図3】Pref/N0 = 1.06および3.95dBにおける、K = [20, 20, 20]、N = 30、P = [1, 1.5381, 2.3917]の電力最適化されたシステムのEXITチャートと、Pref/N0 = 3.95dBにおけるスナップショット軌跡とを示すチャートである。
【図4】2つのグループの場合の復号トレリスを示す概略図であって、各状態が受信機コンポーネント(ICまたはTDk,i、kは電力レベルグループでありiは反復数)のアクティブ化に対応する図である。
【図5】Pref/N0 = 9.15および17dB(4回目の反復のしきい値)における、K = 60、N = 30の均等電力システムのEXITチャートを示すグラフである。
【図6】動的、静的、および完全な復号スケジュールに従うIMUD受信機の場合の、K = [20, 20, 20]、P = [1, 1.5381, 2.3917]、N = 30の不均等電力CDMAシステムのBER性能を示すグラフである。
【図7】動的、静的、および完全な復号スケジュールに従うIMUD受信機の場合の、K = [20, 20, 20]、P = [1, 1.5381, 2.3917]、N = 30の不均等電力CDMAシステムの計算量を示すグラフである。
【図8】10-4の目標BERを用いた、電力とスケジュール(および電力/スケジュールの組合せ)の最適化についての、平均SNRと総計算量とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、以下の図面を参照しながら本発明の一例について述べる。
なお、表1は、K = [20, 20, 20]、N = 30、P = [1, 1.5381, 2.3917]のサンプルルックアップテーブルであり、各スケジュールが図4のトレリスの中を通る経路を表すテーブルである。
【0031】
この例の反復受信機は、ターボ符号化マルチユーザDS-CDMAシステムである。基本的なシステムモデルについては、[11]を参照されたい。
【0032】
ターボ符号化される独立データシンボルxk∈{-1, 1}を生成する、K個の送信機がある。ターボ符号は3GPPに準拠し、全てのユーザに共通であり、生成多項式(Gr, G) = (015, 013)を伴う対称並列連結8状態畳み込み符号からなる。トレリスはエンコーダ中で終端し、全符号レートはR = 1/3(パンクチャリングなし)であり、情報ブロック長は40から5114ビットまでの範囲である[12]。この記述における全てのシミュレーションでは、3856ビットを使用する。符号化済みデータdk∈{-1, 1}は、インタリーブされ、直接シーケンス拡散器
【0033】
【数3】
【0034】
によって拡散され、ここでNは処理利得(拡散係数)である。出力はBPSKシンボル上にマッピングされるが、本明細書におけるこの作業は、より高次の変調にも同様に適用することができる。受信信号は以下のとおりである。
【0035】
【数4】
【0036】
ここで、Pkはユーザkの電力であり、nは分散N0/2を伴うAWGN雑音である。本明細書に述べる最適化技法は、一般的であり、マルチパスフェーディングチャネルに拡張することができる。
【0037】
図1aに示すIMUD受信機16は、IC18およびK個のTD20で構成され、最初に[11]で畳み込み符号に関して記述された。ターボデコーダの優れた記述については[4]を参照されたい。IC18は、チャネル値yおよび(K人のユーザのそれぞれ(k = 1, 2, ..., K)からの)事前情報aICkを入力とし、(ユーザごとの符号化ビットに関する)外部情報
【0038】
【数5】
【0039】
を出力する。この外部情報は、デインタリーブされて、ユーザkに関するTD20への事前入力
【0040】
【数6】
【0041】
になる。受信機の最初の反復時は、IC18への事前入力は0である。K個のTD20のそれぞれは、(符号化ビットに関する)外部情報
【0042】
【数7】
【0043】
および(情報ビットに関する)事後出力
【0044】
【数8】
【0045】
を出力する。
【0046】
【数9】
【0047】
は、インタリーブされてソフトビット
【0048】
【数10】
【0049】
に変換される。硬判定が
【0050】
【数11】
【0051】
に対して行われる。大文字記号を使用して対数尤度比(LLR)を示し、小文字記号を使用してソフトビットを示す。
【0052】
図1cに、受信機の完全バージョンを示す。この受信機は、干渉キャンセラ80、複数のデコーダ(すなわちターボデコーダ)82、および複数のチャネル推定器84で構成される。外部情報が干渉キャンセラ80とターボデコーダ82との間で交換されるのに加えて、検出または推定された情報
【0053】
【数12】
【0054】
が、この3つの構成単位80、82、および84の間で交換される。
【0055】
この例では、複数のフェーディングチャネルにわたる包括的チャネル推定器に対して、明示的な外部情報伝達(EXIT)関数が派生するが、ここで明示的とは、出力ECEが入力
【0056】
【数13】
【0057】
および
【0058】
【数14】
【0059】
の関数であるようにチャネル推定器EXITが作成されることを意味する。チャネル推定器EXITチャートは、マルチユーザ検出器16およびデコーダ82からの事前情報に対してパラメータ化される。チャネル推定器EXIT関数は、時間的に変化するチャネルにわたるチャネル推定の信頼性を示す。動的復号スケジュールは、チャネル推定器EXITを動的スケジューリングに含めて、
異なる復号反復におけるチャネル推定にチャネル復号情報を含めることによって反復性能を最適化し、
各復号反復においてチャネル推定を実施するかどうか決定して、性能と計算量との最適なトレードオフを達成することができる。
【0060】
受信機16のブロック図はまた、制御ブロック(電力最適化22、スケジュール最適化24、および全体制御ブロック26)も含み、全体制御ブロック26は、ユーザ数や拡散係数などの情報を各受信機ブロックに渡す。事前および外部データについては下付き文字kを省略してあり、またIC18とTD20との間のインタリーバ/デインタリーバは図示していないことに留意されたい。電力最適化モジュール22は、最適化された電力プロファイルPを送信機およびスケジュール最適化モジュール24に渡す。スケジュール最適化モジュール24によって生成された最適スケジュール情報Sが、受信機28に渡される。
【0061】
次に、図1bのフローチャートを参照しながら、電力管理および復号スケジュール最適化(チャネル推定を含まない)の方法について述べる。
【0062】
最初に、基地局30における処理手段によって、IC18および複数のデコーダ20のEXIT関数が導出される(40)。各デコーダ20はユーザkに関連する。
【0063】
次に、EXIT関数に基づいて、ユーザKそれぞれの電力レベルが電力最適化モジュールによって決定される(42)。各入力データブロックごとに、電力レベルが負荷およびチャネル条件に対して最適化される。雑音を含む送信データは、チャネルを介して送信された後、IC18に供給される。
【0064】
次に、導出されたEXIT関数および決定された電力レベルに基づいて、複数のデコーダ20の復号スケジュールがスケジュール最適化モジュールによって決定される(44)。すなわち、干渉キャンセルの後、後述する動的スケジュールアルゴリズムが実行されて、受信機EXITチャート上で復号が現在位置する(推定)点が与えられた場合の最適な復号スケジュールが推定される。
【0065】
次いで、後続のICアクティブ化があればその後で、軌跡の不一致の程度に応じてスケジューリングアルゴリズムを呼び出すことができる。静的スケジューリングに勝る動的スケジューリングの主な利点は、この方法が、複数の復号ブロックにわたるチャネル条件の差、または復号軌跡の差のせいで予想(平均)よりも良い(悪い)性能を、補償することである。動的スケジューリングを使用することにより、同様の計算量でより信頼性のある受信機が得られる。
【0066】
次に、EXITチャート分析について詳細に論じる。電力レベルの異なるL個のグループを含むCDMAシステムを考えてみる。K = [K1, K2, ..., KL]およびP = [P1, P2, ..., PL]を定義し、ここで、KkおよびPkはそれぞれ、k = 1, 2, ..., Lとした場合の、グループk中のユーザ数およびユーザの送信電力である。システム中のユーザ総数は、以下によって得られる。
【0067】
【数15】
【0068】
分散および外部情報伝達(EXIT)関数を使用して、受信機ブロックをモデル化する。不均等電力のCDMAシステム中では、ユーザはその電力レベルに従ってグループ化される。ある電力グループ内の全てのユーザは本質的に同一であると仮定し、したがって各グループを(仮想の)単一ユーザと考える。収束分析では、不均等電力条件下のシステムの挙動を反映するように、従来のEXITチャートを調整する必要がある[9]、[14]。以下では、受信機ブロックの入力および出力の確率密度関数がガウシアンであると仮定する。
【0069】
相互情報量を分散の関数として記述するJ関数を利用すると共に、[4]から、ここで、
【0070】
【数16】
【0071】
であり、εはΛのサンプルである。
【0072】
【数17】
【0073】
および
【0074】
【数18】
【0075】
であって、ここで
【0076】
【数19】
【0077】
はソフト情報λの分散であることに留意されたい。
【0078】
有効EXIT関数とは、複数のユーザからなるシステムに対して定義された単一のEXIT関数を指す。元々のEXIT関数は、ユーザごとに導出することができる。(全てのユーザに対する)複数のEXIT関数ではなく1つの有効EXIT関数を使用することの利益は、検討される問題の次元を低減することである。干渉キャンセラについては、有効EXIT関数は、
【0079】
【数20】
【0080】
である[6]。
【0081】
ここで
【0082】
【数21】
【0083】
は、ICへの有効な前の相互情報量(TDからの外部情報)であり、
【0084】
【数22】
【0085】
は有効ユーザ数であり、Prefは、何らかの任意の基準電力レベル(特に指定がない限りPref = P1 = Eb)であり、Nは処理利得であり、Rは符号レートであり、T(.)は[15]からの伝達関数であり、この伝達関数は、相互情報量Iを忠実度
【0086】
【数23】
【0087】
の関数として記述する。
I = T(M)≒0.74M + 0.26M2 ・・・(5)
【0088】
【数24】
【0089】
は、以下を使用してIC出力からオンラインで推定される[14]、[15]。
【0090】
【数25】
【0091】
ここで、
【0092】
【数26】
【0093】
は、ICのソフト出力の分散である。TDに渡されるLLRは、
【0094】
【数27】
【0095】
として生成されることに留意されたい。
【0096】
Pref = 1とするモンテカルロシミュレーションを使用して、TDについてのEXITチャート
【0097】
【数28】
【0098】
を生成する。この場合、電力Pkのグループkについての有効EXIT関数は以下のとおりである。
【0099】
【数29】
【0100】
ここで、
【0101】
【数30】
【0102】
は、TDへの有効な前の相互情報量である。
【0103】
【数31】
【0104】
および
【0105】
【数32】
【0106】
を、以下を使用してオンラインで推定する[16]。
【0107】
【数33】
【0108】
ここで、ΛはEまたはDである。K個のTDの外部出力の有効相互情報量は以下のように計算される[6]。
【0109】
【数34】
【0110】
次に、(7)および(9)を使用して、有効TD EXITチャートを以下のように表す。
【0111】
【数35】
【0112】
【数36】
【0113】
回の反復についてTDのEXITチャートを導出し、ここで
【0114】
【数37】
【0115】
はTD反復の最大数であることに留意されたい。また、ビットエラーレート(BER)推定に使用する、E(s)で示されるシステマティックビットのみを考慮して、TDのEXIT関数を導出する。
【0116】
【数38】
【0117】
と
【0118】
【数39】
【0119】
との間に小さい差が観測された。
【0120】
本明細書では、不均等電力CDMAに焦点を合わせる。しかし、述べる技法は、適応変調符号化、MIMO、IDMA、OFDM、およびOFDMAを利用するシステムに拡張することができる。例えば[17]中では、EXITチャートが不規則な符号に対して使用されており、この場合、種々のレートの符号の集団から符号を選択することによってシステムが最適化された。[18]では、EXITチャートを使用して、ビットインタリーブド符号化不規則変調が最適化された。鍵となる概念は、単一のEXIT関数である有効EXIT関数を構築して、電力、符号レート、または変調の異なるグループユーザの伝達関数を表すことができる能力である。
【0121】
各ユーザの電力レベルを決定するステップ42は、EXIT関数に基づいて実施される。移動システムオペレータにとって、電力最適化は以下の利益を有する。
- ユーザ端末におけるバッテリ寿命がより長い。
- 干渉がより少なく、それによりセルサイズをより大きくすることができる。
- 1セル当たりのユーザ数がより多い。
【0122】
したがって、全てのユーザの合計電力を最小化することが望まれ、このセクションではこのことに対処する。マルチユーザCDMAシステム中では、収束しきい値、すなわち全てのユーザがうまく復号できるときのSNRは、ユーザの電力プロファイルに依存する。我々は、ユーザをその電力レベルに従ってグループ化することのできる3GPP準拠システムを考える。拡散係数をNとしたL個のグループ中のユーザ数K = [K1, K2, ..., KL]が与えられた場合に、システムが収束しなければならないという制約下で総電力を最小化する方法を提案する。この手法は本質的に、グループ間の電力配分を最適化することによって、総電力が与えられた場合の収束しきい値を最小化する。
【0123】
有効EXITチャートを使用してIMUD受信機がモデル化されると、各ユーザグループの電力レベルを最適化することができる。ベクトルZ = [0, δ, ..., 1-δ, 1]を定義すると共に、δ≪1は分解能に対して任意に選択され、Zのエントリは
【0124】
【数40】
【0125】
に対応し、したがって
【0126】
【数41】
【0127】
である。
【0128】
ここで、MIは相互情報量であり、z∈Zである。(11)および(12)を使用して、伝達チャートの(予測)収束プロパティを観測することができる。すなわち、
【0129】
【数42】
【0130】
を使用して、伝達曲線が交差するかどうか判定することができ、
【0131】
【数43】
【0132】
を使用して、トンネルの幅を計算することができる。この最適化は、全てのマルチアクセス干渉(MAI)が除去されるまで反復復号が続行することができるように、EXITチャート中でトンネルが開いていなければならないものとして、総送信電力を最小化する電力割振りを決定する。
【0133】
費用関数を
【0134】
【数44】
【0135】
として定義するが、最適化の目標は、F(P)を最小化することである。すなわち、
【0136】
【数45】
【0137】
を条件として
【0138】
【数46】
【0139】
である。
【0140】
ここで、blおよびbuは、(それぞれ)受信機によって最適化変数Pに課される下限および上限であり、c(P)は、非線形制約関数
【0141】
【数47】
【0142】
である。
【0143】
ここで、Δは、2つの伝達曲線間の開いたトンネルを表す任意のスカラである。図2に、3電力グループ(K = [20, 20, 20]およびN = 30)のシステムの場合の、全ての可能な電力プロファイルにわたるブルートフォース探索(brute-force search)を通して得られる最適化空間のマップを示す。ここで、P1 = Pref = 1である。傾斜面は、電力プロファイルが復号成功を可能にする点の集合を表す(EXITチャート中の開いたトンネル)。また、内部反射ニュートン法(interior-reflective Newton method) [19]、[20]に基づく最適化アルゴリズムを使用した電力最適化(ランダムな始点を使用する)のアルゴリズムの軌跡も示してあり、最適化が2つの解に収束することがわかる。
【0144】
図3に、K = [20, 20, 20]およびN = 30である電力最適化された不均等電力CDMAシステムのEXITチャートを示す。EXIT曲線がかなり近く一致することがわかる。平均SNRである
【0145】
【数48】
【0146】
は、破線(IC)および実線(TD)で示される解P' = [1, 1.5381, 2.3917]において、2.95dB (Pref/N0 = 1.06dB)である。
【0147】
次に、復号スケジュールを決定するステップ44についてより詳細に述べる。受信機コンポーネントのアクティブ化順序またはスケジューリングは、複数の連結コンポーネントを含む反復受信機の設計において極めて重要である。我々は、トレリスベースのビタビ探索最適化アルゴリズムを不均等電力CDMAに適応させて、BER性能を維持しながら復号の計算量および遅延(TD反復の総数)が最小化されるように、復号スケジュールを最適化する。探索アルゴリズムは、連結された全ての受信機中で使用されるように一般化される。というのは、任意の始点
【0148】
【数49】
【0149】
を反映することができ費用関数が2次元だからである。図4に、2つのグループを含むCDMAシステムについての復号トレリスを示す。各グループは、1回または6回のTD反復を実行することができる。TDk,i中の下付き文字は、電力レベルグループ(k)およびターボ復号反復の数(i)を示す。トレリス中の各状態は、その状態によって表されるコンポーネントのアクティブ化に対応する。
【0150】
このトレリスは完全に接続させることができるが、図4のトレリスは、スケジューリングアルゴリズムの計算量を低減するためにトリミングされていることに留意されたい。状態1から状態1(IC-IC)のような冗長なエッジは、手動で除去してある。これらの冗長エッジは、MIにおける利得を達成せず、アルゴリズム自体によって除去されることになる。受信機の各反復時に最適スケジュールを導出して、予測EXITチャート軌跡と実際のEXITチャート軌跡との差を補償する。
【0151】
A.静的スケジューリング
Pref/N0の値の範囲にわたってオフラインで最適スケジュールが導出される場合、復号スケジュールは以下の2つの方法で決定することができる。
- 全てのSNRについて収束しきい値における最適スケジュールを使用する。
- SNRをオンラインで推定し、ルックアップテーブルを使用して最適スケジュールを選択する。
【0152】
最初のオプションは、システム構成(K、N、およびP)がわかっているとだけ仮定する。後者は、SNRが推定されるという追加要件を有する。スケジュールルックアップテーブルの例については、表Iを参照されたい。(4)で、IC EXITチャートを導出するのにSNRが必要であることに留意し、AWGN CDMAチャネル中のSNRを推定する新規な方法を提案する。まず、ICが最初にアクティブ化された後で、(6)を使用して、ICの出力
【0153】
【数50】
【0154】
におけるMIを推定する。ICの最初のアクティブ化がキャンセレーションを伴わず、EICが単にマッチフィルタリング済みチャネル出力であることに留意されたい。次いで、SNRを以下のように推定することができる。
【0155】
【数51】
【0156】
これは(4)を使用して得られたものである。
【0157】
【表1】
【0158】
B.動的スケジューリング
別法として、スケジュールを動的に導出して、復号軌跡の変動を補償することができる。EXITチャートはインタリーバ深度が深いと仮定すると、したがって、小さいブロック長が使用されるときは、予想軌跡とシミュレートされた軌跡との間に不一致がある[4]。スケジュールは、x回のICアクティブ化ごとに動的に導出することができる。スケジュール精緻化の頻度は、復号軌跡の変動の程度に依存する。何らかの決定基準を使用して、スケジュールの精緻化を必要とするのに十分な不一致かどうか判定することができる。例えば、予想IDからの偏差を使用することができ、この場合、
【0159】
【数52】
【0160】
を尺度として使用して、現在の復号方式に対する修正が必要かどうか判定することができる。
【0161】
C.表記
mがトレリス遷移を表すものとする。各グループは、
【0162】
【数53】
【0163】
回の反復が許可される。状態nに入る経路はPr = (p1, p2, ..., pm)として定義され、ここで、r∈[0, ∞]は経路番号であり、1≦j≦m-1として
【0164】
【数54】
【0165】
であり、pm = nである。対応する経路についてのメトリックは、V = (ν1, ν2,..., ν2L+4)として表され、これを以下のように定義する。
【0166】
【数55】
【0167】
ここで、計算量CICは受信機反復(ICアクティブ化)の数であり、CTDはTD反復の総数である。計算量は以下のように更新される。
【0168】
【数56】
【0169】
ここで、idはTD反復の数である。受信機は、
【0170】
【数57】
【0171】
回の反復が許可される。
【0172】
計算量メトリックは、[5]における1次元とは対照的に、2次元であることに留意されたい。これは、irに対する我々の制約のせいである。
【0173】
ID,kが、TDグループkからの事後出力の相互情報量を示すものとする。これは、以下のように計算することができる。
【0174】
【数58】
【0175】
ここで、A(s)およびE(s)はそれぞれ、システマティックビットの事前および外部相互情報量を示す。以下のように、(20)中の式を使用して、グループkのBERを推定することができる[4]。
【0176】
【数59】
【0177】
これは、(17)中の最初のL個の要素である。
【0178】
【数60】
【0179】
なので、経路軌跡が終了するEXITチャート上の点は、(16)中のIDによって記述され、これを単一メトリックとして使用して、以下のシミュレーション結果において述べる計算量節減技法における経路性能を測定することができる。(16)中の収束点
【0180】
【数61】
【0181】
を単一メトリックとして使用して、やはり以下のシミュレーション結果において述べる計算量節減技法における経路性能を測定することができる。収束点
【0182】
【数62】
【0183】
は、ICとTDのEXIT関数が交差する点であり、対応するBERは
【0184】
【数63】
【0185】
であり、ここで、Pは最適化された電力プロファイルであり、Q(.)は正規化されたガウス分布の裾確率であり、J()は、(3)に定義された分散の関数として相互情報量を記述し、
【0186】
【数64】
【0187】
は収束点である。
【0188】
生き残り経路の集合およびメトリックの集合は、それぞれPmおよびVmとして示される。Pm,n⊆PmおよびVm,n⊆Vmは、m回のトレリス遷移後に状態nで終わる経路およびメトリックの集合である。現在の(遷移mにおける)最適経路P*は、メトリックV*を有する。Pm中の経路の数はRで示される。
【0189】
アルゴリズムの始点は、メトリック初期化関数
【0190】
【数65】
【0191】
を使用して決定され、ここで、
【0192】
【数66】
【0193】
は、(6)を使用して更新され、
【0194】
【数67】
【0195】
および
【0196】
【数68】
【0197】
は(8)を使用して更新され、
【0198】
【数69】
【0199】
は(9)を使用して更新される。これは、ICのアクティブ化後に、現在の
【0200】
【数70】
【0201】
、
【0202】
【数71】
【0203】
、および
【0204】
【数72】
【0205】
を使用してオンラインで行われる。アルゴリズムの性能は、復号経路の開始位置であるEXITチャート上の点を定義するfinitの出力の信頼性に大きく依存することに留意されたい。finitが相互情報量を多く見積もり過ぎる場合は、スケジュールは十分な反復を割り振らないことになり、またその逆でもある。
【0206】
各状態nに対するメトリック更新関数
【0207】
【数73】
【0208】
[5]が、状態nに入る全ての経路について、(4)、(7)、(9)、(21)、および(19)を使用して、V中の2L + 4個の要素を更新するために使用される。この関数は、(受信機ブロックEXIT関数の)ルックアップテーブルを使用して、トレリスの中を通る遷移に対応するEXITチャート上の経路の軌跡を推定する。
【0209】
[5]におけるように支配を定義するが、この場合、それぞれq = L+3, L+4, ..., 2L+4に関して、外部相互情報量νqがν'qよりも多く、q = L+1, L+2に関して、計算量νqがν'q以下の場合にのみ、メトリックVはV'を支配する。目標BER Ptargetを、各ユーザグループの所望BERとして定義する。
【0210】
D.アルゴリズム
アルゴリズムは、オフライン初期化とオンラインビタビ探索の2つの部分に分割される。初期化手順は以下のとおりである。
【0211】
1)上記の結果を使用して、当該の負荷/電力/SNR構成についてEXITチャートを導出する(モンテカルロシミュレーションを使用してIE = fdec(IA)を生成しなければならないことに留意されたい)。
2)(
【0212】
【数74】
【0213】
回の反復についての)TD EXIT曲線と干渉キャンセラ曲線との交差点である、収束点
【0214】
【数75】
【0215】
を決定する。
3)収束BER
【0216】
【数76】
【0217】
を計算する。
【0218】
ビタビ探索アルゴリズムは以下のとおりである。
【0219】
1)m = 1とする。1つの経路しか含まないように経路集合P = {(1)}に初期化し、対応するメトリック集合Vm = {finit}に初期化する。P* = 1および
【0220】
【数77】
【0221】
に初期化する。
2)m = m + 1とする。Pm中の経路Rの数を計算する。各状態n'につき、状態n'で終わる各経路P'rを、トレリスで定義される遷移n'→nに沿って延長し、Pm,n中の新しい経路PR+1を生み出す。v = fn(v')を使用してVm,n中のメトリックを更新し、Rをインクリメントする。
3)現在の最適経路P*の計算量以上の計算量を有する全ての経路を除去する。
4)目標BER(νq≦Ptarget、∀q = 1, 2, ..., L)、収束点
【0222】
【数78】
【0223】
、または
【0224】
【数79】
【0225】
回の受信機反復に達した経路について、メトリックの集合V*を定義する。V*中に複数の経路がある場合は、計算量の最も低い経路で候補経路P*を置き換える。
5)各状態につき、支配されるメトリックおよびそれらに対応する経路を除去する。P* < Ptargetの場合、全ての
【0226】
【数80】
【0227】
であるV*中の経路を除去する。
6)Vm中に経路が残っていない場合は、候補経路P*が最適経路である。そうでない場合はステップ2に進む。
【0228】
E.計算量
考慮すべき要素の1つは、実現される計算量節減と比較した、スケジューリングアルゴリズムの計算量である。グループ数NKが多くTD反復数(id)が多いと、トレリス中の状態数および生き残り経路数が多くなる可能性がある。アルゴリズム中の生き残り経路が指数関数的に増加することはあり得るが、これは実際には観測されていない。
【0229】
トレリス中の状態数は
【0230】
【数81】
【0231】
であり、ここで、
【0232】
【数82】
【0233】
は、許容されるTD反復の数idであり(例えば、id∈{1, 2, ..., 5, 6}のとき
【0234】
【数83】
【0235】
)、トレリス遷移の数NTは
【0236】
【数84】
【0237】
である。スケジューリングアルゴリズムの計算量は、最悪のシナリオでは、すなわち支配ステップでどの経路も除去されないと仮定した場合には、およそ以下のとおりである。
【0238】
【数85】
【0239】
典型的なパラメータ
【0240】
【数86】
【0241】
およびNK = 3の場合、スケジューリングアルゴリズムは、次数1020の計算量を有する。支配ステップは一般に、計算量が指数関数的に多くならないことを保証するが、スケジューリングアルゴリズムの計算量は課題であり、以下の対策が、計算量の問題を解決する助けとなることができる。
- トレリスをトリミングする(冗長エッジを除去する)。
- T-BCJRアルゴリズム[21]におけるように、生き残り経路の数を削減する(例えば、x∈{0, 1}として
【0242】
【数87】
【0243】
である経路のみを保持する)。
- M-BCJRアルゴリズム[21]におけるように、生き残り経路の数を制限する(例えばID(16)の順にランク付けされた最良のx個の経路のみを保持する)。
- 許容されるTD反復の数idを、idの何らかの部分集合に切り捨てる。
- x回(x > 1)の受信機反復ごとにスケジューリングアルゴリズムを実行する。
【0244】
本明細書の全ての作業では、図4に示すようなトリミングされたトレリスを利用する。このトレリスでは、冗長エッジが除去されており、システムは順番に(すなわちグループ1, 2, ..., NKの順に)TDをアクティブ化するよう強いられる。この手法は、グループが独立しているためアルゴリズムに有害な影響を及ぼさないので、この手法のみを使用する。既知の方法では、最適には及ばないスケジュールが選択されることになる場合がある。T-BCJRアルゴリズムは、最適に近い性能を提供することが知られているが、最悪の場合の計算量を低減することができず、M-BCJRアルゴリズムは、最悪の場合の計算量を低減するが、性能劣化を被る[22]。トリミングされたトレリスを使用すると、計算量はおよそ以下のとおりである。
【0245】
【数88】
【0246】
ここで、
【0247】
【数89】
【0248】
である。KTシステム中でのいくらかの慎重なトリミングにより、エッジ数を
【0249】
【数90】
【0250】
から39に削減することができ、スケジューリングアルゴリズムの計算量を次数105に低減することができる。これでもなお最悪の場合(支配によって経路が除去されない場合)であり、したがって実際には、スケジューリングアルゴリズムの計算量はこれよりも低いことに留意されたい。完全に接続されたトレリス(すなわち最悪の場合)では、BCJRアルゴリズムは、以下の次数の計算量を有する。
O(η2K) ・・・(25)
【0251】
ここで、ηは、3GPP畳み込み符号トレリス中の状態の数であり、Kは、トレリス遷移の数である。我々の3GPP準拠システム中では、トレリス中に1状態当たり2つのエッジがあり、したがって、BCJRアルゴリズムは計算量O(2ηK)を有する。η= 8でありK = 3856なので、図1のCDMA中のMAPデコーダは、次数104の計算量を有する。提案するスケジューリングアルゴリズムは(最悪の場合)、デコーダ中でBCJRアルゴリズムを1回アクティブ化する計算量よりも1桁多い計算量を有する。1回のTD反復が2回のBCJRアルゴリズムのアクティブ化を必要とすることを想起すると、最悪の場合では、スケジューリングアルゴリズムが少なくとも5回のTD反復を節減できれば、節減がコストに勝る。
【0252】
次に、IMUD受信機のシミュレーション結果について述べる。
【0253】
特に指定がない限り、全てのBER値はシステム平均であり、以下のように計算される。
【0254】
【数91】
【0255】
ここで、
【0256】
【数92】
【0257】
は、グループkの推定BERである。KT = 60ユーザであり拡散係数N = 30である2つのシステムをシミュレートしたが、最初に均等電力(すなわち最適化されていない)で、次いで前述のようにNK = 3電力グループについて最適化済み電力レベルでシミュレートした。4回の受信機反復内での収束を可能にするのに必要とされるSNRとして、4反復しきい値を定義する。最適化アルゴリズムおよびしきい値は、全てのユーザグループが目標BERを達成するように定義されることに留意されたい。
【0258】
一般にPref = P1であることを想起されたい。平均SNRは、以下のように計算される。
【0259】
【数93】
【0260】
ここで、Pref/N0の単位はdBである。これを使用して、異なる電力プロファイルPを有するシステムを比較する。
【0261】
A.均等電力のシステム
負荷の重い(K = [60]、P = [1]、N = 30)均等電力のシステムについて考える。図5のEXITチャート分析は、収束しきい値(破線)が
【0262】
【数94】
【0263】
のSNRにおいて生じ、4反復しきい値(鎖線)が17dBで生じることを示す。TDのEXIT特性が、この均等電力システム中でボトルネックを引き起こすことが観測される。復号が狭いトンネルの中を通って進行すると、受信機は、反復を経るにつれてBERの急な下落を呈することになる。
【0264】
B.最適化されたシステム
ターボ符号化不均等電力CDMAシステムを、K = [20, 20, 20]ユーザ、拡散係数N = 30、および最適化済み電力P = [1, 1.5381, 2.3917]でシミュレートした。図3のEXITチャート分析によれば、このシステムの収束しきい値はPref/N0 = 1.06dB(平均SNRが
【0265】
【数95】
【0266】
)であり、4反復しきい値はPref/N0 = 3.95dBである。このシステムを、4反復しきい値の領域中のSNRの範囲にわたってシミュレートした。4回の受信機反復内で収束できるほどPが十分に大きくなるように、Pが(14)中のΔに対する制約を伴って最適化された場合、同じ相対的結果P'が得られるが、より高いP1 = Prefが得られ、したがって上記のようにPref/N0 = 3.95dBとなることに留意されたい。(27)を使用すると、4反復しきい値における平均SNRは、
【0267】
【数96】
【0268】
であり、これは、均等電力システムに勝る8.46dB利得に対応する。
【0269】
[5]に示唆されているように、シミュレーションでは、全てのPref/N0に対して、収束しきい値における最適スケジュールを選択した。このスケジュールを、静的(最適)スケジュールと呼ぶことにする。全てのグループが6回のTD反復および4回の受信機反復を実行するものとして、完全復号スケジュールを設定する。
【0270】
対応するEXITチャートスナップショット軌跡を、図3のPref/N0 =3.95dBに示す。これらのスナップショット軌跡は両方とも、EXITチャート分析と極めて近く一致する。前述のEXIT関数が大規模システム(MAIのPDFがほぼガウシアン)を想定しており、ブロック長が有限なので、このシステムと予想漸近性能との間にいくらかの性能差が予想される。
【0271】
図6に、BER性能がSNRに対してプロットされているが、この図では、動的スケジュールのBER性能が、収束しきい値までは完全復号スケジュールのBER性能とよく似ていることがわかる。目標BER Ptargetは10-4であり、したがって、動的スケジューリングは、収束しきい値よりも高いSNRに対して、Ptargetよりも低いエラーフロアを示す。エラーフロアはPtargetとちょうど等しくはないことに留意されたい。これはTD EXIT関数の形状のせいである。図3に見られるように、TD EXIT関数は、高い値の
【0272】
【数97】
【0273】
にほぼ水平に近づき、したがって、高いBERから非常に低いBERへの非常に急な落下がある。
【0274】
静的スケジュールが収束しきい値のみに対して最適化されるにもかかわらず、静的スケジューリングもまた、よく似たBER性能を達成することが観測される。このことは、図3のEXITチャート、および低い
【0275】
【数98】
【0276】
におけるTDのEXIT関数を使用することで容易に理解できる。低いSNRでは、ICとTDのEXIT関数は、低い
【0277】
【数99】
【0278】
で交差し、この領域では、TD EXIT関数は全てのidについてよく似ている。したがってシステムは、ほぼどんなスケジュールに従っても収束点に近くなることになる。EXITチャートBER等高線プロット[4]を考えた場合、低い値のMIでは、BER等高線は広く間隔が空き、すなわちMIにおける大きい利得はわずかなBER改善しか達成せず、したがって、これらの場合は、スケジュール間にごくわずかなBERの差しか見られないことになる。高いSNRでは、EXIT関数間のトンネルはさらに開き、したがって、低いSNR(すなわち狭いトンネル)に対して最適化されたどんなスケジュールに従った復号も、容易にトンネルの中を進むことになる。このことは、より少ないTD/受信機反復で同様のBER性能を達成することができるので非効率的であり、そして、なぜ動的スケジューリングが高いSNRで計算量を大きく低減するのかを説明する。これを図7に見ることができるが、図7には、図6からの対応するBERを達成するのに必要とされる計算量を示す。静的スケジュールは、完全スケジュールとしての同様のBER性能に対して、およそ45%の計算量低減を達成する。動的スケジューリングを使用すれば、さらに計算量節減が達成され、節減は、SNRに伴って、4.2dBにおける完全スケジュールと比較して64%まで増加する。以下では、収束しきい値動的スケジューリングは、静的スケジュールよりも多くのTD反復を使用することに留意されたい。これは単に、静的スケジュールが収束しきい値において導出されることによるものである。
【0279】
パケットを廃棄することによってP* > Ptargetの場合にパケットについて計算量がさらに低減される可能性があるので、この作業の可能な拡張として、ARQ方式を検討することができる。動的スケジューリングでは、Eb/N0≧4dB(すなわち収束しきい値よりも高い)でエラーフロアが存在することに留意されたい。これは、スケジューリングアルゴリズム中で定義された目標BERのせいである。エラーフロアは、ほぼPtargetに等しい。
【0280】
図6で、動的および静的スケジューリングのBER性能がほぼ等しいことに留意する。しかし、平均BERは等しくても、分散は動的スケジューリングの方が少ない。この結果、動的スケジューリングを使用すると、目標BERを達成できないパケット(データブロック)がより少なくなる。具体的には、例えば4dBでは、96.5%のパケットが目標を達成したが、静的スケジューリングは、86.9%のパケットにおいてしか目標を達成しなかった。
【0281】
C.電力対計算量
図8に、KT = 60ユーザであり処理利得N = 30であるCDMAシステム中で10-4の目標BER Ptargetを達成するのに必要とされる計算量を示す。このグラフにより、ユーザは、計算量対電力のトレードオフを選択することができる。
【0282】
平均SNRが低下するにつれて、収束を達成するのにより多くの反復が必要とされ、またその逆でもある。図8には、以下の4つの場合を示す。
- 最適化なし:均等電力、スケジューリングなし。id = 6であり、BERがそれ以上低下しなくなるまで受信機を反復する。
- 電力最適化あり:P = P'、スケジューリングなし。id = 6であり、BERがそれ以上低下しなくなるまで受信機を反復する。
- スケジュール最適化あり:均等電力、動的スケジューリング。
- 電力+スケジュール最適化あり:P = P'、動的スケジューリング。
【0283】
総計算量はy軸上に示されており、総計算量は以下のように計算される。
【0284】
【数100】
【0285】
ここで、前述の結果を使用してφ = 5が得られる。鎖線で示す、最適化なしの場合(K = [60]、P = [1])は、収束しきい値が、
【0286】
【数101】
【0287】
の平均SNRにおいて生じ、計算量Ctotalが多いことがわかる。上記のようにユーザが3つの等しいサイズのグループに分割され電力レベルが最適化される場合(K = [20, 20, 20]およびP = [1, 1.5381, 2.3917])には、図8の点線が得られる。収束しきい値は、
【0288】
【数102】
【0289】
の平均SNRにおいてPtargetが達成されるように低減される。しかし計算量は多いままである。
【0290】
あるいはスケジュールが最適化される場合、破線で示すように計算量を50%よりも大きく低減することができる。各ユーザが等しい電力を有するので、収束しきい値は、最適化なしの場合から不変のままである。実線は、電力およびスケジュールが最適化された受信機の性能を示すが、これは、従来の受信機に勝る大きな計算量利得および電力利得を有することがわかる。計算量と電力との間にもたらされるトレードオフがないことに留意されたい。受信機は、図8の左下領域でより効率的に動作することができる。
【0291】
収束しきい値は、各曲線の左への垂直漸近線であり、計算量は無限へと増大する。図8の各漸近線の平均SNRは、2つのコンポーネントEXIT関数がEXITチャート中で交差する位置のSNRに対応する。図8の最適化なし曲線(鎖線)の左上端は、図5の下方のTD EXIT関数に対応する。復号成功は可能だが、トンネルは狭く、収束を達成するのに多数の反復が必要とされる。同様に、電力最適化されたシステム(点線)では、曲線の左上端は、図3の下方のTD EXIT関数に対応する。
【0292】
図8の水平の線は4反復しきい値に対応し、正規化された計算量はCtotal = 1440回のTD反復と等しく、id = 6およびir = 4であり、これらは実際のシステムに鑑みて妥当な値と想定される。図5の上方のTD EXIT関数によれば、均等電力システム中では、4反復しきい値は17dBにおいて生じる。これは、
【0293】
【数103】
【0294】
において4反復しきい値と交差する最適化曲線がない点に対応する。電力最適化されたシステムは、
【0295】
【数104】
【0296】
の平均SNRにおいて4回の受信機反復で目標BER Ptargetを達成するが、これは、図8で、電力最適化あり曲線が、水平の4反復しきい値線を横切る位置で見られる。この点は、図3の上方のTD EXIT関数によって表される。スケジュール最適化あり曲線の場合、計算量は総平均受信機計算量を表し、irおよびidがアルゴリズムによって動的に割り振られるので受信機反復の数を推論することは不可能である。
【0297】
広範に述べた本発明の範囲を逸脱することなく、特定の実施形態に示した本発明に多くの変形および/または修正を加えることができることは、当業者には理解されるであろう。
【0298】
例えば、本発明は、多入力多出力(MIMO)システム、直交周波数分割多重(OFDM)、直交周波数分割多元接続(OFDMA)、およびインタリーブ分割多元接続(IDMA)に限定されない多くの他のシステムにも適用することができる。
【0299】
したがって、本実施形態は、あらゆる点において例示的であり限定的ではないものと考えるべきである。
【0300】
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[19] T. F. Coleman and Y. Li, "An interior, trust region approach for nonlinear minimization subject to bounds," SIAM Journal on Optimization, vol. 6, pp. 418-445, 1996.
[20] T. F. Coleman and Y. Li, "On the convergence of reflective newton methods for large-scale nonlinear minimization subject to bounds," Mathematical Programming, vol. 67, no. 2, pp. 189-224, 1996.
[21] V. Franz and J. B. Anderson, "Concatenated decoding with a reduced-search BCJR algorithm," IEEE Journal on Selected Areas in Communications, vol. 16, no. 2, pp. 186-195, February 1998.
[22] U. Dasgupta and K. R. Narayanan, "Parallel decoding of turbo codes using soft output T-algorithms," IEEE Commun. Lett., vol. 5, no. 8, pp. 352-354, August 2001.
【符号の説明】
【0301】
16 IMUD受信機、マルチユーザ検出器
18 干渉キャンセラ
20 ターボデコーダ
22 電力最適化モジュール
24 スケジュール最適化モジュール
26 全体制御ブロック
28 受信機
30 基地局
80 干渉キャンセラ
82 ターボデコーダ
84 チャネル推定器
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉が存在するマルチアクセス/ユーザ通信システムにおける、受信機の計算量(complexity)管理に関する。限定ではないが例えば、符号分割多元接続DS/CDMAシステムのアップリンクにおける受信機でのマルチユーザ検出である。本発明の態様は、方法、基地局受信機、およびソフトウェアを含む。
【背景技術】
【0002】
近年、マルチユーザセルラーシステムと、コーデッド符号分割多元接続(CDMA)システムのための受信機設計とに、多くの関心が持たれている。
【0003】
反復符号化を伴うCDMAシステムの性能を予測することは、ユーザが少数であっても計算的に大きな負担を要する。外部情報伝達(EXIT、extrinsic information transfer)チャート分析は、計算的に大きな負担を要するシミュレーションを必要とせずに収束挙動を記述および視覚化するのに、うまく使用されてきた。
【0004】
反復マルチユーザ検出器(IMUD)受信機中での復号は、コンポーネントデコーダおよび干渉キャンセラ(IC)のアクティブ化のスケジュールに従って続行する。従来のIMUD受信機は、固定の(静的な)復号スケジュールに従う。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、ワイヤレスネットワーク中で複数のユーザと通信する基地局における電力管理および復号スケジュール最適化の方法を提供する。この方法は、
(i)基地局において干渉キャンセラおよび複数のデコーダについて外部情報伝達(EXIT)関数を導出するステップであって、各デコーダが1ユーザに関連しているステップと、
(ii)導出されたEXIT関数に基づいて複数のユーザそれぞれの電力レベルを決定するステップと、次いで、
(iii)導出されたEXIT関数および決定された電力レベルに基づいて複数のデコーダの復号スケジュールを導出するステップとを含む。
【0006】
電力と復号スケジュールとの同時最適化は法外に複雑であり、したがって本発明の利点の1つは、最適化が2つの部分に分割されることである。まず各ユーザの電力レベルが最適化され、次いで、最適化された電力レベルを使用した復号スケジュールが決定される。この結果、コンピュータの計算量(反復数)と、所与の信号対雑音比におけるビットエラーレート性能の改善との間のどんなトレードオフもなくて済む。本発明を用いて、受信機感度(すなわち電力効率および/またはスペクトル効率、したがってユーザ端末からの干渉低減)と、コンピュータの計算量とにおいて、大きな利得が同時に達成され得る。
【0007】
EXIT関数は、電力、符号レート、または変調の異なるユーザのグループの伝達関数を表すことができる。有効EXIT関数を、基地局の干渉キャンセラについて決定することができる。有効EXIT関数を、モンテカルロシミュレーションを使用してターボデコーダ(TD)について決定することができる。EXIT関数は、相互情報量を入力とすることができる。
【0008】
ステップ(i)は、全てのユーザグループに関する所定のまたは動的な復号統計に基づくことができる。
【0009】
ステップ(ii)は、電力最適化されたEXITチャートを生み出すことができ、これは次いでステップ(iii)で使用される。
【0010】
ステップ(ii)は、EXITチャートの収束分析に基づくことができ、この収束分析は、ユーザ間の電力配分を最適化することによって、総電力が与えられた場合のしきい値を最小化するものである。特に、この最適化は、非線形制約関数を使用して電力割振りを導出することを含むことができ、これはEXITチャート出力の使用を含む。
【0011】
ユーザは複数のグループに分割することができ、グループの各メンバは等しい電力を有する。この方法はさらに、グループを単一ユーザとして扱うことを含むことができる。
【0012】
ステップ(iii)は、オフライン初期化とオンラインビタビ探索との両方を使用することができる。
【0013】
オフライン初期化は、デコーダEXIT曲線と干渉キャンセラEXIT曲線との交差点である収束点を決定してから収束ビットエラーレート
【0014】
【数1】
【0015】
を決定することを含むことができる。ここで、Pは最適化された電力プロファイルであり、Q(.)は正規化されたガウス分布の裾確率(tail probability)であり、J()は相互情報量を分散の関数として記述し、
【0016】
【数2】
【0017】
は収束点である。
【0018】
ビタビ探索は、ビットエラーレートを維持しながら復号の計算量および遅延(デコーダ反復の総数)が最小化されるように、復号スケジュールを最適化することができる。
【0019】
ステップ(iii)の計算量は、以下のいずれか1つまたは複数を実施することによって低減することができる。
ビタビ探索のトレリスをトリミングする。
ビタビ探索の生き残り経路の数を削減する。
許容されるデコーダ反復の数を切り捨てる。
ステップ(iii)を受信機の反復ごとよりも低頻度で実施する。
【0020】
復号スケジュールを導出するステップは、最初に、または干渉キャンセラが所定回数アクティブ化された後で実施することができる。
【0021】
ステップ(iii)は、静的と動的の両方のスケジューリングプロセスを含むことができる。動的復号スケジュール最適化は、受信機の反復ごとに最適スケジュールを導出して、最小数のデコーダ反復を使用して目標ビットエラーレートを達成することを含むことができる。従来技術では、無限ブロック長に基づくEXITチャート分析は、有限ブロック長にわたってシミュレートされた軌跡からの不一致となる。これは[4]で観測されており、反復を経るにつれて軌跡の一致が劣化することがわかった。[7]では、Li他は、信頼区間を含むEXITチャートを示し、同様に[8]では、著者らは、単一の伝達曲線の代わりに伝達特性帯域を使用した収束分析ツールを提案している。軌跡の不一致は、高いSNRにおいては収束にクリティカルではなく、むしろ、EXITチャート中のトンネルが狭くなっている収束しきい値付近で動作するときに、よりクリティカルであることに留意されたい。この動的スケジューリング方法は、復号軌跡の不一致を補償することができる。
【0022】
ステップ(i)はさらに、チャネル推定器についてEXIT関数を導出することを含むことができる。ステップ(iii)の復号スケジュールはさらに、チャネル推定器についてのものとすることができる。
【0023】
本発明の少なくとも1つの実施形態の最適化された受信機は、従来の受信機よりも、収束しきい値が低く、収束の達成に要する反復が少ない。さらに、本発明の少なくとも1つの実施形態では、より一貫したサービス品質(QoS)となる。
【0024】
本発明の少なくとも1つの実施形態の利点の1つは、動的スケジューリングを用いた電力最適化されたシステムが、大きな計算量節減を伴って、従来の受信機と同様のビットエラーレート性能を達成することである。さらに、パケット当たりのビットエラーレートの分散を低減することにより、静的に導出された最適スケジュールの性能をしのぐ。
【0025】
第2の態様では、本発明は、ワイヤレスネットワーク中で複数のユーザと通信する、電力および復号スケジュール最適化のための基地局を提供する。この基地局は、
干渉キャンセラと、
それぞれが1ユーザに関連する複数のデコーダと、
基地局において干渉キャンセラおよび複数のデコーダについて外部情報伝達(EXIT)関数を導出するための処理手段と、
導出されたEXIT関数に基づいて複数のユーザそれぞれの電力レベルを決定するための電力最適化モジュールと、
導出されたEXIT関数および決定された電力レベルに基づいて複数のデコーダの復号スケジュールを決定するためのスケジュール最適化モジュールとを備える。
【0026】
基地局はさらに、それぞれが分解可能経路に関連する複数のチャネル推定器を備えることができる。処理手段はさらに、チャネル推定器についてEXIT関数を導出するように動作することができ、スケジュール最適化モジュールは、導出されたEXIT関数および決定された電力レベルに基づいて、チャネル推定器についても復号スケジュールを決定することができる。
【0027】
第3の態様では、本発明は、インストールされたときに前述の方法を基地局に実施させることのできるソフトウェアを提供する。
【0028】
第4の態様では、本発明は、前述の方法に従って導出された復号スケジュールを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1a】制御ブロック(電力およびスケジュール最適化)を有する反復マルチユーザ検出器(IMUD)受信機の概略図である。
【図1b】本発明の方法の例を示す流れ図である。
【図1c】干渉キャンセラと、複数のチャネルデコーダと、複数のチャネル推定器とで構成される受信機の概略図である。
【図2】ランダムな始点に対する電力最適化アルゴリズム軌跡(ブルートフォース探索を使用)を示すグラフである。
【図3】Pref/N0 = 1.06および3.95dBにおける、K = [20, 20, 20]、N = 30、P = [1, 1.5381, 2.3917]の電力最適化されたシステムのEXITチャートと、Pref/N0 = 3.95dBにおけるスナップショット軌跡とを示すチャートである。
【図4】2つのグループの場合の復号トレリスを示す概略図であって、各状態が受信機コンポーネント(ICまたはTDk,i、kは電力レベルグループでありiは反復数)のアクティブ化に対応する図である。
【図5】Pref/N0 = 9.15および17dB(4回目の反復のしきい値)における、K = 60、N = 30の均等電力システムのEXITチャートを示すグラフである。
【図6】動的、静的、および完全な復号スケジュールに従うIMUD受信機の場合の、K = [20, 20, 20]、P = [1, 1.5381, 2.3917]、N = 30の不均等電力CDMAシステムのBER性能を示すグラフである。
【図7】動的、静的、および完全な復号スケジュールに従うIMUD受信機の場合の、K = [20, 20, 20]、P = [1, 1.5381, 2.3917]、N = 30の不均等電力CDMAシステムの計算量を示すグラフである。
【図8】10-4の目標BERを用いた、電力とスケジュール(および電力/スケジュールの組合せ)の最適化についての、平均SNRと総計算量とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、以下の図面を参照しながら本発明の一例について述べる。
なお、表1は、K = [20, 20, 20]、N = 30、P = [1, 1.5381, 2.3917]のサンプルルックアップテーブルであり、各スケジュールが図4のトレリスの中を通る経路を表すテーブルである。
【0031】
この例の反復受信機は、ターボ符号化マルチユーザDS-CDMAシステムである。基本的なシステムモデルについては、[11]を参照されたい。
【0032】
ターボ符号化される独立データシンボルxk∈{-1, 1}を生成する、K個の送信機がある。ターボ符号は3GPPに準拠し、全てのユーザに共通であり、生成多項式(Gr, G) = (015, 013)を伴う対称並列連結8状態畳み込み符号からなる。トレリスはエンコーダ中で終端し、全符号レートはR = 1/3(パンクチャリングなし)であり、情報ブロック長は40から5114ビットまでの範囲である[12]。この記述における全てのシミュレーションでは、3856ビットを使用する。符号化済みデータdk∈{-1, 1}は、インタリーブされ、直接シーケンス拡散器
【0033】
【数3】
【0034】
によって拡散され、ここでNは処理利得(拡散係数)である。出力はBPSKシンボル上にマッピングされるが、本明細書におけるこの作業は、より高次の変調にも同様に適用することができる。受信信号は以下のとおりである。
【0035】
【数4】
【0036】
ここで、Pkはユーザkの電力であり、nは分散N0/2を伴うAWGN雑音である。本明細書に述べる最適化技法は、一般的であり、マルチパスフェーディングチャネルに拡張することができる。
【0037】
図1aに示すIMUD受信機16は、IC18およびK個のTD20で構成され、最初に[11]で畳み込み符号に関して記述された。ターボデコーダの優れた記述については[4]を参照されたい。IC18は、チャネル値yおよび(K人のユーザのそれぞれ(k = 1, 2, ..., K)からの)事前情報aICkを入力とし、(ユーザごとの符号化ビットに関する)外部情報
【0038】
【数5】
【0039】
を出力する。この外部情報は、デインタリーブされて、ユーザkに関するTD20への事前入力
【0040】
【数6】
【0041】
になる。受信機の最初の反復時は、IC18への事前入力は0である。K個のTD20のそれぞれは、(符号化ビットに関する)外部情報
【0042】
【数7】
【0043】
および(情報ビットに関する)事後出力
【0044】
【数8】
【0045】
を出力する。
【0046】
【数9】
【0047】
は、インタリーブされてソフトビット
【0048】
【数10】
【0049】
に変換される。硬判定が
【0050】
【数11】
【0051】
に対して行われる。大文字記号を使用して対数尤度比(LLR)を示し、小文字記号を使用してソフトビットを示す。
【0052】
図1cに、受信機の完全バージョンを示す。この受信機は、干渉キャンセラ80、複数のデコーダ(すなわちターボデコーダ)82、および複数のチャネル推定器84で構成される。外部情報が干渉キャンセラ80とターボデコーダ82との間で交換されるのに加えて、検出または推定された情報
【0053】
【数12】
【0054】
が、この3つの構成単位80、82、および84の間で交換される。
【0055】
この例では、複数のフェーディングチャネルにわたる包括的チャネル推定器に対して、明示的な外部情報伝達(EXIT)関数が派生するが、ここで明示的とは、出力ECEが入力
【0056】
【数13】
【0057】
および
【0058】
【数14】
【0059】
の関数であるようにチャネル推定器EXITが作成されることを意味する。チャネル推定器EXITチャートは、マルチユーザ検出器16およびデコーダ82からの事前情報に対してパラメータ化される。チャネル推定器EXIT関数は、時間的に変化するチャネルにわたるチャネル推定の信頼性を示す。動的復号スケジュールは、チャネル推定器EXITを動的スケジューリングに含めて、
異なる復号反復におけるチャネル推定にチャネル復号情報を含めることによって反復性能を最適化し、
各復号反復においてチャネル推定を実施するかどうか決定して、性能と計算量との最適なトレードオフを達成することができる。
【0060】
受信機16のブロック図はまた、制御ブロック(電力最適化22、スケジュール最適化24、および全体制御ブロック26)も含み、全体制御ブロック26は、ユーザ数や拡散係数などの情報を各受信機ブロックに渡す。事前および外部データについては下付き文字kを省略してあり、またIC18とTD20との間のインタリーバ/デインタリーバは図示していないことに留意されたい。電力最適化モジュール22は、最適化された電力プロファイルPを送信機およびスケジュール最適化モジュール24に渡す。スケジュール最適化モジュール24によって生成された最適スケジュール情報Sが、受信機28に渡される。
【0061】
次に、図1bのフローチャートを参照しながら、電力管理および復号スケジュール最適化(チャネル推定を含まない)の方法について述べる。
【0062】
最初に、基地局30における処理手段によって、IC18および複数のデコーダ20のEXIT関数が導出される(40)。各デコーダ20はユーザkに関連する。
【0063】
次に、EXIT関数に基づいて、ユーザKそれぞれの電力レベルが電力最適化モジュールによって決定される(42)。各入力データブロックごとに、電力レベルが負荷およびチャネル条件に対して最適化される。雑音を含む送信データは、チャネルを介して送信された後、IC18に供給される。
【0064】
次に、導出されたEXIT関数および決定された電力レベルに基づいて、複数のデコーダ20の復号スケジュールがスケジュール最適化モジュールによって決定される(44)。すなわち、干渉キャンセルの後、後述する動的スケジュールアルゴリズムが実行されて、受信機EXITチャート上で復号が現在位置する(推定)点が与えられた場合の最適な復号スケジュールが推定される。
【0065】
次いで、後続のICアクティブ化があればその後で、軌跡の不一致の程度に応じてスケジューリングアルゴリズムを呼び出すことができる。静的スケジューリングに勝る動的スケジューリングの主な利点は、この方法が、複数の復号ブロックにわたるチャネル条件の差、または復号軌跡の差のせいで予想(平均)よりも良い(悪い)性能を、補償することである。動的スケジューリングを使用することにより、同様の計算量でより信頼性のある受信機が得られる。
【0066】
次に、EXITチャート分析について詳細に論じる。電力レベルの異なるL個のグループを含むCDMAシステムを考えてみる。K = [K1, K2, ..., KL]およびP = [P1, P2, ..., PL]を定義し、ここで、KkおよびPkはそれぞれ、k = 1, 2, ..., Lとした場合の、グループk中のユーザ数およびユーザの送信電力である。システム中のユーザ総数は、以下によって得られる。
【0067】
【数15】
【0068】
分散および外部情報伝達(EXIT)関数を使用して、受信機ブロックをモデル化する。不均等電力のCDMAシステム中では、ユーザはその電力レベルに従ってグループ化される。ある電力グループ内の全てのユーザは本質的に同一であると仮定し、したがって各グループを(仮想の)単一ユーザと考える。収束分析では、不均等電力条件下のシステムの挙動を反映するように、従来のEXITチャートを調整する必要がある[9]、[14]。以下では、受信機ブロックの入力および出力の確率密度関数がガウシアンであると仮定する。
【0069】
相互情報量を分散の関数として記述するJ関数を利用すると共に、[4]から、ここで、
【0070】
【数16】
【0071】
であり、εはΛのサンプルである。
【0072】
【数17】
【0073】
および
【0074】
【数18】
【0075】
であって、ここで
【0076】
【数19】
【0077】
はソフト情報λの分散であることに留意されたい。
【0078】
有効EXIT関数とは、複数のユーザからなるシステムに対して定義された単一のEXIT関数を指す。元々のEXIT関数は、ユーザごとに導出することができる。(全てのユーザに対する)複数のEXIT関数ではなく1つの有効EXIT関数を使用することの利益は、検討される問題の次元を低減することである。干渉キャンセラについては、有効EXIT関数は、
【0079】
【数20】
【0080】
である[6]。
【0081】
ここで
【0082】
【数21】
【0083】
は、ICへの有効な前の相互情報量(TDからの外部情報)であり、
【0084】
【数22】
【0085】
は有効ユーザ数であり、Prefは、何らかの任意の基準電力レベル(特に指定がない限りPref = P1 = Eb)であり、Nは処理利得であり、Rは符号レートであり、T(.)は[15]からの伝達関数であり、この伝達関数は、相互情報量Iを忠実度
【0086】
【数23】
【0087】
の関数として記述する。
I = T(M)≒0.74M + 0.26M2 ・・・(5)
【0088】
【数24】
【0089】
は、以下を使用してIC出力からオンラインで推定される[14]、[15]。
【0090】
【数25】
【0091】
ここで、
【0092】
【数26】
【0093】
は、ICのソフト出力の分散である。TDに渡されるLLRは、
【0094】
【数27】
【0095】
として生成されることに留意されたい。
【0096】
Pref = 1とするモンテカルロシミュレーションを使用して、TDについてのEXITチャート
【0097】
【数28】
【0098】
を生成する。この場合、電力Pkのグループkについての有効EXIT関数は以下のとおりである。
【0099】
【数29】
【0100】
ここで、
【0101】
【数30】
【0102】
は、TDへの有効な前の相互情報量である。
【0103】
【数31】
【0104】
および
【0105】
【数32】
【0106】
を、以下を使用してオンラインで推定する[16]。
【0107】
【数33】
【0108】
ここで、ΛはEまたはDである。K個のTDの外部出力の有効相互情報量は以下のように計算される[6]。
【0109】
【数34】
【0110】
次に、(7)および(9)を使用して、有効TD EXITチャートを以下のように表す。
【0111】
【数35】
【0112】
【数36】
【0113】
回の反復についてTDのEXITチャートを導出し、ここで
【0114】
【数37】
【0115】
はTD反復の最大数であることに留意されたい。また、ビットエラーレート(BER)推定に使用する、E(s)で示されるシステマティックビットのみを考慮して、TDのEXIT関数を導出する。
【0116】
【数38】
【0117】
と
【0118】
【数39】
【0119】
との間に小さい差が観測された。
【0120】
本明細書では、不均等電力CDMAに焦点を合わせる。しかし、述べる技法は、適応変調符号化、MIMO、IDMA、OFDM、およびOFDMAを利用するシステムに拡張することができる。例えば[17]中では、EXITチャートが不規則な符号に対して使用されており、この場合、種々のレートの符号の集団から符号を選択することによってシステムが最適化された。[18]では、EXITチャートを使用して、ビットインタリーブド符号化不規則変調が最適化された。鍵となる概念は、単一のEXIT関数である有効EXIT関数を構築して、電力、符号レート、または変調の異なるグループユーザの伝達関数を表すことができる能力である。
【0121】
各ユーザの電力レベルを決定するステップ42は、EXIT関数に基づいて実施される。移動システムオペレータにとって、電力最適化は以下の利益を有する。
- ユーザ端末におけるバッテリ寿命がより長い。
- 干渉がより少なく、それによりセルサイズをより大きくすることができる。
- 1セル当たりのユーザ数がより多い。
【0122】
したがって、全てのユーザの合計電力を最小化することが望まれ、このセクションではこのことに対処する。マルチユーザCDMAシステム中では、収束しきい値、すなわち全てのユーザがうまく復号できるときのSNRは、ユーザの電力プロファイルに依存する。我々は、ユーザをその電力レベルに従ってグループ化することのできる3GPP準拠システムを考える。拡散係数をNとしたL個のグループ中のユーザ数K = [K1, K2, ..., KL]が与えられた場合に、システムが収束しなければならないという制約下で総電力を最小化する方法を提案する。この手法は本質的に、グループ間の電力配分を最適化することによって、総電力が与えられた場合の収束しきい値を最小化する。
【0123】
有効EXITチャートを使用してIMUD受信機がモデル化されると、各ユーザグループの電力レベルを最適化することができる。ベクトルZ = [0, δ, ..., 1-δ, 1]を定義すると共に、δ≪1は分解能に対して任意に選択され、Zのエントリは
【0124】
【数40】
【0125】
に対応し、したがって
【0126】
【数41】
【0127】
である。
【0128】
ここで、MIは相互情報量であり、z∈Zである。(11)および(12)を使用して、伝達チャートの(予測)収束プロパティを観測することができる。すなわち、
【0129】
【数42】
【0130】
を使用して、伝達曲線が交差するかどうか判定することができ、
【0131】
【数43】
【0132】
を使用して、トンネルの幅を計算することができる。この最適化は、全てのマルチアクセス干渉(MAI)が除去されるまで反復復号が続行することができるように、EXITチャート中でトンネルが開いていなければならないものとして、総送信電力を最小化する電力割振りを決定する。
【0133】
費用関数を
【0134】
【数44】
【0135】
として定義するが、最適化の目標は、F(P)を最小化することである。すなわち、
【0136】
【数45】
【0137】
を条件として
【0138】
【数46】
【0139】
である。
【0140】
ここで、blおよびbuは、(それぞれ)受信機によって最適化変数Pに課される下限および上限であり、c(P)は、非線形制約関数
【0141】
【数47】
【0142】
である。
【0143】
ここで、Δは、2つの伝達曲線間の開いたトンネルを表す任意のスカラである。図2に、3電力グループ(K = [20, 20, 20]およびN = 30)のシステムの場合の、全ての可能な電力プロファイルにわたるブルートフォース探索(brute-force search)を通して得られる最適化空間のマップを示す。ここで、P1 = Pref = 1である。傾斜面は、電力プロファイルが復号成功を可能にする点の集合を表す(EXITチャート中の開いたトンネル)。また、内部反射ニュートン法(interior-reflective Newton method) [19]、[20]に基づく最適化アルゴリズムを使用した電力最適化(ランダムな始点を使用する)のアルゴリズムの軌跡も示してあり、最適化が2つの解に収束することがわかる。
【0144】
図3に、K = [20, 20, 20]およびN = 30である電力最適化された不均等電力CDMAシステムのEXITチャートを示す。EXIT曲線がかなり近く一致することがわかる。平均SNRである
【0145】
【数48】
【0146】
は、破線(IC)および実線(TD)で示される解P' = [1, 1.5381, 2.3917]において、2.95dB (Pref/N0 = 1.06dB)である。
【0147】
次に、復号スケジュールを決定するステップ44についてより詳細に述べる。受信機コンポーネントのアクティブ化順序またはスケジューリングは、複数の連結コンポーネントを含む反復受信機の設計において極めて重要である。我々は、トレリスベースのビタビ探索最適化アルゴリズムを不均等電力CDMAに適応させて、BER性能を維持しながら復号の計算量および遅延(TD反復の総数)が最小化されるように、復号スケジュールを最適化する。探索アルゴリズムは、連結された全ての受信機中で使用されるように一般化される。というのは、任意の始点
【0148】
【数49】
【0149】
を反映することができ費用関数が2次元だからである。図4に、2つのグループを含むCDMAシステムについての復号トレリスを示す。各グループは、1回または6回のTD反復を実行することができる。TDk,i中の下付き文字は、電力レベルグループ(k)およびターボ復号反復の数(i)を示す。トレリス中の各状態は、その状態によって表されるコンポーネントのアクティブ化に対応する。
【0150】
このトレリスは完全に接続させることができるが、図4のトレリスは、スケジューリングアルゴリズムの計算量を低減するためにトリミングされていることに留意されたい。状態1から状態1(IC-IC)のような冗長なエッジは、手動で除去してある。これらの冗長エッジは、MIにおける利得を達成せず、アルゴリズム自体によって除去されることになる。受信機の各反復時に最適スケジュールを導出して、予測EXITチャート軌跡と実際のEXITチャート軌跡との差を補償する。
【0151】
A.静的スケジューリング
Pref/N0の値の範囲にわたってオフラインで最適スケジュールが導出される場合、復号スケジュールは以下の2つの方法で決定することができる。
- 全てのSNRについて収束しきい値における最適スケジュールを使用する。
- SNRをオンラインで推定し、ルックアップテーブルを使用して最適スケジュールを選択する。
【0152】
最初のオプションは、システム構成(K、N、およびP)がわかっているとだけ仮定する。後者は、SNRが推定されるという追加要件を有する。スケジュールルックアップテーブルの例については、表Iを参照されたい。(4)で、IC EXITチャートを導出するのにSNRが必要であることに留意し、AWGN CDMAチャネル中のSNRを推定する新規な方法を提案する。まず、ICが最初にアクティブ化された後で、(6)を使用して、ICの出力
【0153】
【数50】
【0154】
におけるMIを推定する。ICの最初のアクティブ化がキャンセレーションを伴わず、EICが単にマッチフィルタリング済みチャネル出力であることに留意されたい。次いで、SNRを以下のように推定することができる。
【0155】
【数51】
【0156】
これは(4)を使用して得られたものである。
【0157】
【表1】
【0158】
B.動的スケジューリング
別法として、スケジュールを動的に導出して、復号軌跡の変動を補償することができる。EXITチャートはインタリーバ深度が深いと仮定すると、したがって、小さいブロック長が使用されるときは、予想軌跡とシミュレートされた軌跡との間に不一致がある[4]。スケジュールは、x回のICアクティブ化ごとに動的に導出することができる。スケジュール精緻化の頻度は、復号軌跡の変動の程度に依存する。何らかの決定基準を使用して、スケジュールの精緻化を必要とするのに十分な不一致かどうか判定することができる。例えば、予想IDからの偏差を使用することができ、この場合、
【0159】
【数52】
【0160】
を尺度として使用して、現在の復号方式に対する修正が必要かどうか判定することができる。
【0161】
C.表記
mがトレリス遷移を表すものとする。各グループは、
【0162】
【数53】
【0163】
回の反復が許可される。状態nに入る経路はPr = (p1, p2, ..., pm)として定義され、ここで、r∈[0, ∞]は経路番号であり、1≦j≦m-1として
【0164】
【数54】
【0165】
であり、pm = nである。対応する経路についてのメトリックは、V = (ν1, ν2,..., ν2L+4)として表され、これを以下のように定義する。
【0166】
【数55】
【0167】
ここで、計算量CICは受信機反復(ICアクティブ化)の数であり、CTDはTD反復の総数である。計算量は以下のように更新される。
【0168】
【数56】
【0169】
ここで、idはTD反復の数である。受信機は、
【0170】
【数57】
【0171】
回の反復が許可される。
【0172】
計算量メトリックは、[5]における1次元とは対照的に、2次元であることに留意されたい。これは、irに対する我々の制約のせいである。
【0173】
ID,kが、TDグループkからの事後出力の相互情報量を示すものとする。これは、以下のように計算することができる。
【0174】
【数58】
【0175】
ここで、A(s)およびE(s)はそれぞれ、システマティックビットの事前および外部相互情報量を示す。以下のように、(20)中の式を使用して、グループkのBERを推定することができる[4]。
【0176】
【数59】
【0177】
これは、(17)中の最初のL個の要素である。
【0178】
【数60】
【0179】
なので、経路軌跡が終了するEXITチャート上の点は、(16)中のIDによって記述され、これを単一メトリックとして使用して、以下のシミュレーション結果において述べる計算量節減技法における経路性能を測定することができる。(16)中の収束点
【0180】
【数61】
【0181】
を単一メトリックとして使用して、やはり以下のシミュレーション結果において述べる計算量節減技法における経路性能を測定することができる。収束点
【0182】
【数62】
【0183】
は、ICとTDのEXIT関数が交差する点であり、対応するBERは
【0184】
【数63】
【0185】
であり、ここで、Pは最適化された電力プロファイルであり、Q(.)は正規化されたガウス分布の裾確率であり、J()は、(3)に定義された分散の関数として相互情報量を記述し、
【0186】
【数64】
【0187】
は収束点である。
【0188】
生き残り経路の集合およびメトリックの集合は、それぞれPmおよびVmとして示される。Pm,n⊆PmおよびVm,n⊆Vmは、m回のトレリス遷移後に状態nで終わる経路およびメトリックの集合である。現在の(遷移mにおける)最適経路P*は、メトリックV*を有する。Pm中の経路の数はRで示される。
【0189】
アルゴリズムの始点は、メトリック初期化関数
【0190】
【数65】
【0191】
を使用して決定され、ここで、
【0192】
【数66】
【0193】
は、(6)を使用して更新され、
【0194】
【数67】
【0195】
および
【0196】
【数68】
【0197】
は(8)を使用して更新され、
【0198】
【数69】
【0199】
は(9)を使用して更新される。これは、ICのアクティブ化後に、現在の
【0200】
【数70】
【0201】
、
【0202】
【数71】
【0203】
、および
【0204】
【数72】
【0205】
を使用してオンラインで行われる。アルゴリズムの性能は、復号経路の開始位置であるEXITチャート上の点を定義するfinitの出力の信頼性に大きく依存することに留意されたい。finitが相互情報量を多く見積もり過ぎる場合は、スケジュールは十分な反復を割り振らないことになり、またその逆でもある。
【0206】
各状態nに対するメトリック更新関数
【0207】
【数73】
【0208】
[5]が、状態nに入る全ての経路について、(4)、(7)、(9)、(21)、および(19)を使用して、V中の2L + 4個の要素を更新するために使用される。この関数は、(受信機ブロックEXIT関数の)ルックアップテーブルを使用して、トレリスの中を通る遷移に対応するEXITチャート上の経路の軌跡を推定する。
【0209】
[5]におけるように支配を定義するが、この場合、それぞれq = L+3, L+4, ..., 2L+4に関して、外部相互情報量νqがν'qよりも多く、q = L+1, L+2に関して、計算量νqがν'q以下の場合にのみ、メトリックVはV'を支配する。目標BER Ptargetを、各ユーザグループの所望BERとして定義する。
【0210】
D.アルゴリズム
アルゴリズムは、オフライン初期化とオンラインビタビ探索の2つの部分に分割される。初期化手順は以下のとおりである。
【0211】
1)上記の結果を使用して、当該の負荷/電力/SNR構成についてEXITチャートを導出する(モンテカルロシミュレーションを使用してIE = fdec(IA)を生成しなければならないことに留意されたい)。
2)(
【0212】
【数74】
【0213】
回の反復についての)TD EXIT曲線と干渉キャンセラ曲線との交差点である、収束点
【0214】
【数75】
【0215】
を決定する。
3)収束BER
【0216】
【数76】
【0217】
を計算する。
【0218】
ビタビ探索アルゴリズムは以下のとおりである。
【0219】
1)m = 1とする。1つの経路しか含まないように経路集合P = {(1)}に初期化し、対応するメトリック集合Vm = {finit}に初期化する。P* = 1および
【0220】
【数77】
【0221】
に初期化する。
2)m = m + 1とする。Pm中の経路Rの数を計算する。各状態n'につき、状態n'で終わる各経路P'rを、トレリスで定義される遷移n'→nに沿って延長し、Pm,n中の新しい経路PR+1を生み出す。v = fn(v')を使用してVm,n中のメトリックを更新し、Rをインクリメントする。
3)現在の最適経路P*の計算量以上の計算量を有する全ての経路を除去する。
4)目標BER(νq≦Ptarget、∀q = 1, 2, ..., L)、収束点
【0222】
【数78】
【0223】
、または
【0224】
【数79】
【0225】
回の受信機反復に達した経路について、メトリックの集合V*を定義する。V*中に複数の経路がある場合は、計算量の最も低い経路で候補経路P*を置き換える。
5)各状態につき、支配されるメトリックおよびそれらに対応する経路を除去する。P* < Ptargetの場合、全ての
【0226】
【数80】
【0227】
であるV*中の経路を除去する。
6)Vm中に経路が残っていない場合は、候補経路P*が最適経路である。そうでない場合はステップ2に進む。
【0228】
E.計算量
考慮すべき要素の1つは、実現される計算量節減と比較した、スケジューリングアルゴリズムの計算量である。グループ数NKが多くTD反復数(id)が多いと、トレリス中の状態数および生き残り経路数が多くなる可能性がある。アルゴリズム中の生き残り経路が指数関数的に増加することはあり得るが、これは実際には観測されていない。
【0229】
トレリス中の状態数は
【0230】
【数81】
【0231】
であり、ここで、
【0232】
【数82】
【0233】
は、許容されるTD反復の数idであり(例えば、id∈{1, 2, ..., 5, 6}のとき
【0234】
【数83】
【0235】
)、トレリス遷移の数NTは
【0236】
【数84】
【0237】
である。スケジューリングアルゴリズムの計算量は、最悪のシナリオでは、すなわち支配ステップでどの経路も除去されないと仮定した場合には、およそ以下のとおりである。
【0238】
【数85】
【0239】
典型的なパラメータ
【0240】
【数86】
【0241】
およびNK = 3の場合、スケジューリングアルゴリズムは、次数1020の計算量を有する。支配ステップは一般に、計算量が指数関数的に多くならないことを保証するが、スケジューリングアルゴリズムの計算量は課題であり、以下の対策が、計算量の問題を解決する助けとなることができる。
- トレリスをトリミングする(冗長エッジを除去する)。
- T-BCJRアルゴリズム[21]におけるように、生き残り経路の数を削減する(例えば、x∈{0, 1}として
【0242】
【数87】
【0243】
である経路のみを保持する)。
- M-BCJRアルゴリズム[21]におけるように、生き残り経路の数を制限する(例えばID(16)の順にランク付けされた最良のx個の経路のみを保持する)。
- 許容されるTD反復の数idを、idの何らかの部分集合に切り捨てる。
- x回(x > 1)の受信機反復ごとにスケジューリングアルゴリズムを実行する。
【0244】
本明細書の全ての作業では、図4に示すようなトリミングされたトレリスを利用する。このトレリスでは、冗長エッジが除去されており、システムは順番に(すなわちグループ1, 2, ..., NKの順に)TDをアクティブ化するよう強いられる。この手法は、グループが独立しているためアルゴリズムに有害な影響を及ぼさないので、この手法のみを使用する。既知の方法では、最適には及ばないスケジュールが選択されることになる場合がある。T-BCJRアルゴリズムは、最適に近い性能を提供することが知られているが、最悪の場合の計算量を低減することができず、M-BCJRアルゴリズムは、最悪の場合の計算量を低減するが、性能劣化を被る[22]。トリミングされたトレリスを使用すると、計算量はおよそ以下のとおりである。
【0245】
【数88】
【0246】
ここで、
【0247】
【数89】
【0248】
である。KTシステム中でのいくらかの慎重なトリミングにより、エッジ数を
【0249】
【数90】
【0250】
から39に削減することができ、スケジューリングアルゴリズムの計算量を次数105に低減することができる。これでもなお最悪の場合(支配によって経路が除去されない場合)であり、したがって実際には、スケジューリングアルゴリズムの計算量はこれよりも低いことに留意されたい。完全に接続されたトレリス(すなわち最悪の場合)では、BCJRアルゴリズムは、以下の次数の計算量を有する。
O(η2K) ・・・(25)
【0251】
ここで、ηは、3GPP畳み込み符号トレリス中の状態の数であり、Kは、トレリス遷移の数である。我々の3GPP準拠システム中では、トレリス中に1状態当たり2つのエッジがあり、したがって、BCJRアルゴリズムは計算量O(2ηK)を有する。η= 8でありK = 3856なので、図1のCDMA中のMAPデコーダは、次数104の計算量を有する。提案するスケジューリングアルゴリズムは(最悪の場合)、デコーダ中でBCJRアルゴリズムを1回アクティブ化する計算量よりも1桁多い計算量を有する。1回のTD反復が2回のBCJRアルゴリズムのアクティブ化を必要とすることを想起すると、最悪の場合では、スケジューリングアルゴリズムが少なくとも5回のTD反復を節減できれば、節減がコストに勝る。
【0252】
次に、IMUD受信機のシミュレーション結果について述べる。
【0253】
特に指定がない限り、全てのBER値はシステム平均であり、以下のように計算される。
【0254】
【数91】
【0255】
ここで、
【0256】
【数92】
【0257】
は、グループkの推定BERである。KT = 60ユーザであり拡散係数N = 30である2つのシステムをシミュレートしたが、最初に均等電力(すなわち最適化されていない)で、次いで前述のようにNK = 3電力グループについて最適化済み電力レベルでシミュレートした。4回の受信機反復内での収束を可能にするのに必要とされるSNRとして、4反復しきい値を定義する。最適化アルゴリズムおよびしきい値は、全てのユーザグループが目標BERを達成するように定義されることに留意されたい。
【0258】
一般にPref = P1であることを想起されたい。平均SNRは、以下のように計算される。
【0259】
【数93】
【0260】
ここで、Pref/N0の単位はdBである。これを使用して、異なる電力プロファイルPを有するシステムを比較する。
【0261】
A.均等電力のシステム
負荷の重い(K = [60]、P = [1]、N = 30)均等電力のシステムについて考える。図5のEXITチャート分析は、収束しきい値(破線)が
【0262】
【数94】
【0263】
のSNRにおいて生じ、4反復しきい値(鎖線)が17dBで生じることを示す。TDのEXIT特性が、この均等電力システム中でボトルネックを引き起こすことが観測される。復号が狭いトンネルの中を通って進行すると、受信機は、反復を経るにつれてBERの急な下落を呈することになる。
【0264】
B.最適化されたシステム
ターボ符号化不均等電力CDMAシステムを、K = [20, 20, 20]ユーザ、拡散係数N = 30、および最適化済み電力P = [1, 1.5381, 2.3917]でシミュレートした。図3のEXITチャート分析によれば、このシステムの収束しきい値はPref/N0 = 1.06dB(平均SNRが
【0265】
【数95】
【0266】
)であり、4反復しきい値はPref/N0 = 3.95dBである。このシステムを、4反復しきい値の領域中のSNRの範囲にわたってシミュレートした。4回の受信機反復内で収束できるほどPが十分に大きくなるように、Pが(14)中のΔに対する制約を伴って最適化された場合、同じ相対的結果P'が得られるが、より高いP1 = Prefが得られ、したがって上記のようにPref/N0 = 3.95dBとなることに留意されたい。(27)を使用すると、4反復しきい値における平均SNRは、
【0267】
【数96】
【0268】
であり、これは、均等電力システムに勝る8.46dB利得に対応する。
【0269】
[5]に示唆されているように、シミュレーションでは、全てのPref/N0に対して、収束しきい値における最適スケジュールを選択した。このスケジュールを、静的(最適)スケジュールと呼ぶことにする。全てのグループが6回のTD反復および4回の受信機反復を実行するものとして、完全復号スケジュールを設定する。
【0270】
対応するEXITチャートスナップショット軌跡を、図3のPref/N0 =3.95dBに示す。これらのスナップショット軌跡は両方とも、EXITチャート分析と極めて近く一致する。前述のEXIT関数が大規模システム(MAIのPDFがほぼガウシアン)を想定しており、ブロック長が有限なので、このシステムと予想漸近性能との間にいくらかの性能差が予想される。
【0271】
図6に、BER性能がSNRに対してプロットされているが、この図では、動的スケジュールのBER性能が、収束しきい値までは完全復号スケジュールのBER性能とよく似ていることがわかる。目標BER Ptargetは10-4であり、したがって、動的スケジューリングは、収束しきい値よりも高いSNRに対して、Ptargetよりも低いエラーフロアを示す。エラーフロアはPtargetとちょうど等しくはないことに留意されたい。これはTD EXIT関数の形状のせいである。図3に見られるように、TD EXIT関数は、高い値の
【0272】
【数97】
【0273】
にほぼ水平に近づき、したがって、高いBERから非常に低いBERへの非常に急な落下がある。
【0274】
静的スケジュールが収束しきい値のみに対して最適化されるにもかかわらず、静的スケジューリングもまた、よく似たBER性能を達成することが観測される。このことは、図3のEXITチャート、および低い
【0275】
【数98】
【0276】
におけるTDのEXIT関数を使用することで容易に理解できる。低いSNRでは、ICとTDのEXIT関数は、低い
【0277】
【数99】
【0278】
で交差し、この領域では、TD EXIT関数は全てのidについてよく似ている。したがってシステムは、ほぼどんなスケジュールに従っても収束点に近くなることになる。EXITチャートBER等高線プロット[4]を考えた場合、低い値のMIでは、BER等高線は広く間隔が空き、すなわちMIにおける大きい利得はわずかなBER改善しか達成せず、したがって、これらの場合は、スケジュール間にごくわずかなBERの差しか見られないことになる。高いSNRでは、EXIT関数間のトンネルはさらに開き、したがって、低いSNR(すなわち狭いトンネル)に対して最適化されたどんなスケジュールに従った復号も、容易にトンネルの中を進むことになる。このことは、より少ないTD/受信機反復で同様のBER性能を達成することができるので非効率的であり、そして、なぜ動的スケジューリングが高いSNRで計算量を大きく低減するのかを説明する。これを図7に見ることができるが、図7には、図6からの対応するBERを達成するのに必要とされる計算量を示す。静的スケジュールは、完全スケジュールとしての同様のBER性能に対して、およそ45%の計算量低減を達成する。動的スケジューリングを使用すれば、さらに計算量節減が達成され、節減は、SNRに伴って、4.2dBにおける完全スケジュールと比較して64%まで増加する。以下では、収束しきい値動的スケジューリングは、静的スケジュールよりも多くのTD反復を使用することに留意されたい。これは単に、静的スケジュールが収束しきい値において導出されることによるものである。
【0279】
パケットを廃棄することによってP* > Ptargetの場合にパケットについて計算量がさらに低減される可能性があるので、この作業の可能な拡張として、ARQ方式を検討することができる。動的スケジューリングでは、Eb/N0≧4dB(すなわち収束しきい値よりも高い)でエラーフロアが存在することに留意されたい。これは、スケジューリングアルゴリズム中で定義された目標BERのせいである。エラーフロアは、ほぼPtargetに等しい。
【0280】
図6で、動的および静的スケジューリングのBER性能がほぼ等しいことに留意する。しかし、平均BERは等しくても、分散は動的スケジューリングの方が少ない。この結果、動的スケジューリングを使用すると、目標BERを達成できないパケット(データブロック)がより少なくなる。具体的には、例えば4dBでは、96.5%のパケットが目標を達成したが、静的スケジューリングは、86.9%のパケットにおいてしか目標を達成しなかった。
【0281】
C.電力対計算量
図8に、KT = 60ユーザであり処理利得N = 30であるCDMAシステム中で10-4の目標BER Ptargetを達成するのに必要とされる計算量を示す。このグラフにより、ユーザは、計算量対電力のトレードオフを選択することができる。
【0282】
平均SNRが低下するにつれて、収束を達成するのにより多くの反復が必要とされ、またその逆でもある。図8には、以下の4つの場合を示す。
- 最適化なし:均等電力、スケジューリングなし。id = 6であり、BERがそれ以上低下しなくなるまで受信機を反復する。
- 電力最適化あり:P = P'、スケジューリングなし。id = 6であり、BERがそれ以上低下しなくなるまで受信機を反復する。
- スケジュール最適化あり:均等電力、動的スケジューリング。
- 電力+スケジュール最適化あり:P = P'、動的スケジューリング。
【0283】
総計算量はy軸上に示されており、総計算量は以下のように計算される。
【0284】
【数100】
【0285】
ここで、前述の結果を使用してφ = 5が得られる。鎖線で示す、最適化なしの場合(K = [60]、P = [1])は、収束しきい値が、
【0286】
【数101】
【0287】
の平均SNRにおいて生じ、計算量Ctotalが多いことがわかる。上記のようにユーザが3つの等しいサイズのグループに分割され電力レベルが最適化される場合(K = [20, 20, 20]およびP = [1, 1.5381, 2.3917])には、図8の点線が得られる。収束しきい値は、
【0288】
【数102】
【0289】
の平均SNRにおいてPtargetが達成されるように低減される。しかし計算量は多いままである。
【0290】
あるいはスケジュールが最適化される場合、破線で示すように計算量を50%よりも大きく低減することができる。各ユーザが等しい電力を有するので、収束しきい値は、最適化なしの場合から不変のままである。実線は、電力およびスケジュールが最適化された受信機の性能を示すが、これは、従来の受信機に勝る大きな計算量利得および電力利得を有することがわかる。計算量と電力との間にもたらされるトレードオフがないことに留意されたい。受信機は、図8の左下領域でより効率的に動作することができる。
【0291】
収束しきい値は、各曲線の左への垂直漸近線であり、計算量は無限へと増大する。図8の各漸近線の平均SNRは、2つのコンポーネントEXIT関数がEXITチャート中で交差する位置のSNRに対応する。図8の最適化なし曲線(鎖線)の左上端は、図5の下方のTD EXIT関数に対応する。復号成功は可能だが、トンネルは狭く、収束を達成するのに多数の反復が必要とされる。同様に、電力最適化されたシステム(点線)では、曲線の左上端は、図3の下方のTD EXIT関数に対応する。
【0292】
図8の水平の線は4反復しきい値に対応し、正規化された計算量はCtotal = 1440回のTD反復と等しく、id = 6およびir = 4であり、これらは実際のシステムに鑑みて妥当な値と想定される。図5の上方のTD EXIT関数によれば、均等電力システム中では、4反復しきい値は17dBにおいて生じる。これは、
【0293】
【数103】
【0294】
において4反復しきい値と交差する最適化曲線がない点に対応する。電力最適化されたシステムは、
【0295】
【数104】
【0296】
の平均SNRにおいて4回の受信機反復で目標BER Ptargetを達成するが、これは、図8で、電力最適化あり曲線が、水平の4反復しきい値線を横切る位置で見られる。この点は、図3の上方のTD EXIT関数によって表される。スケジュール最適化あり曲線の場合、計算量は総平均受信機計算量を表し、irおよびidがアルゴリズムによって動的に割り振られるので受信機反復の数を推論することは不可能である。
【0297】
広範に述べた本発明の範囲を逸脱することなく、特定の実施形態に示した本発明に多くの変形および/または修正を加えることができることは、当業者には理解されるであろう。
【0298】
例えば、本発明は、多入力多出力(MIMO)システム、直交周波数分割多重(OFDM)、直交周波数分割多元接続(OFDMA)、およびインタリーブ分割多元接続(IDMA)に限定されない多くの他のシステムにも適用することができる。
【0299】
したがって、本実施形態は、あらゆる点において例示的であり限定的ではないものと考えるべきである。
【0300】
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[13] D. P. Shepherd, Z. Shi, M. Anderson, and M. C. Reed, "EXIT chart analysis of an iterative receiver with channel estimation," in IEEE Global Telecommunications Conference, 2007.
[l4] Z. Shi and C. Schlegel, "Performance analysis of iterative detection for unequal power coded CDMA systems," in Proc. IEEE Globecom, December 2003, vol. 3, pp. 1537-1542.
[15] D. P. Shepherd, F, Brannstrom, and M, C. Reed, "Fidelity charts and stopping/termination criteria for iterative multiuser detection," 4th International Symposium on Turbo Codes and Related Topics, 2006.
[16] F. Brannstrom, Convergence Analysis and Design of Multiple Concatenated Codes, Ph.D. thesis, Chalmers University of Technology, Goteborg, Sweden, 2004.
[l7] M. Tuchler and J. Hagenauer, "EXIT charts of irregular codes," in Conf. Information Sciences and Systems, 2002.
[18] F. Schreckenbach and G. Bauch, "Bit-interleaved coded irregular modulation," European Transactions on Telecommunications, 2006.
[19] T. F. Coleman and Y. Li, "An interior, trust region approach for nonlinear minimization subject to bounds," SIAM Journal on Optimization, vol. 6, pp. 418-445, 1996.
[20] T. F. Coleman and Y. Li, "On the convergence of reflective newton methods for large-scale nonlinear minimization subject to bounds," Mathematical Programming, vol. 67, no. 2, pp. 189-224, 1996.
[21] V. Franz and J. B. Anderson, "Concatenated decoding with a reduced-search BCJR algorithm," IEEE Journal on Selected Areas in Communications, vol. 16, no. 2, pp. 186-195, February 1998.
[22] U. Dasgupta and K. R. Narayanan, "Parallel decoding of turbo codes using soft output T-algorithms," IEEE Commun. Lett., vol. 5, no. 8, pp. 352-354, August 2001.
【符号の説明】
【0301】
16 IMUD受信機、マルチユーザ検出器
18 干渉キャンセラ
20 ターボデコーダ
22 電力最適化モジュール
24 スケジュール最適化モジュール
26 全体制御ブロック
28 受信機
30 基地局
80 干渉キャンセラ
82 ターボデコーダ
84 チャネル推定器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスネットワーク中で複数のユーザと通信する基地局における電力および復号スケジュール最適化の方法であって、
(i)前記基地局において干渉キャンセラおよび複数のデコーダについて外部情報伝達(EXIT)関数を導出するステップであって、各デコーダが1ユーザに関連しているステップと、
(ii)前記導出されたEXIT関数に基づいて前記複数のユーザそれぞれの電力レベルを決定するステップと、次いで、
(iii)前記導出されたEXIT関数および前記決定された電力レベルに基づいて前記複数のデコーダの復号スケジュールを導出するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記EXIT関数が、電力、符号レート、または変調の異なるユーザのグループの伝達関数を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有効EXIT関数が前記基地局の干渉キャンセラについて決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
有効EXIT関数が、モンテカルロシミュレーションを使用してターボデコーダについて決定される、請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(i)が、全てのユーザグループに関する所定のまたは動的な復号統計に基づく、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(ii)が、電力最適化されたEXITチャートを生み出し、前記EXITチャートが次いでステップ(iii)で使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(ii)が前記EXITチャートの収束分析に基づき、前記収束分析が、前記ユーザ間の電力配分を最適化することによって、総電力が与えられた場合のしきい値を最小化するものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ユーザが複数のグループに分割され、前記グループの各メンバが等しい電力を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(iii)が、オフライン初期化とオンラインビタビ探索との両方を使用する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
オフライン初期化が、デコーダEXIT曲線と干渉キャンセラEXIT曲線との交差点である収束点を決定してから収束ビットエラーレート
【数1】
を決定することを含み、ここで、Pは最適化された電力プロファイルであり、Q(.)は正規化されたガウス分布の裾確率であり、J()は相互情報量を分散の関数として記述し、
【数2】
は収束点である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ビタビ探索のトレリスをトリミングすること、
ビタビ探索の生き残り経路の数を削減すること、
許容されるデコーダ反復の数を切り捨てること、および、
ステップ(iii)を受信機の反復ごとよりも低頻度で実施すること、のうちのいずれか1つまたは複数を実施することによってステップ(iii)の計算量を低減することができる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(iii)が、最初に、または干渉キャンセラが所定回数アクティブ化された後で実施される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(iii)が、静的と動的の両方のスケジューリングプロセスを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記動的復号スケジュール最適化が、受信機の反復ごとに最適スケジュールを導出して、最小数のデコーダ反復を使用して目標ビットエラーレートを達成することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(i)の前記EXIT関数の導出が、さらにチャネル推定器のためのものであり、ステップ(iii)の前記復号スケジュールが、さらに前記チャネル推定器のためのものである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ワイヤレスネットワーク中で複数のユーザと通信する、電力および復号スケジュール最適化のための基地局であって、
干渉キャンセラと、
それぞれが1ユーザに関連する複数のデコーダと、
前記基地局において前記干渉キャンセラおよび前記複数のデコーダについて外部情報伝達(EXIT)関数を導出するための処理手段と、
前記導出されたEXIT関数に基づいて前記複数のユーザそれぞれの電力レベルを決定するための電力最適化モジュールと、
前記導出されたEXIT関数および前記決定された電力レベルに基づいて前記複数のデコーダの復号スケジュールを決定するためのスケジュール最適化モジュールとを備える基地局。
【請求項17】
インストールされたときに請求項1から15のいずれか一項に記載の方法を前記基地局に実施させることのできるソフトウェア。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法に従って導出された復号スケジュール。
【請求項1】
ワイヤレスネットワーク中で複数のユーザと通信する基地局における電力および復号スケジュール最適化の方法であって、
(i)前記基地局において干渉キャンセラおよび複数のデコーダについて外部情報伝達(EXIT)関数を導出するステップであって、各デコーダが1ユーザに関連しているステップと、
(ii)前記導出されたEXIT関数に基づいて前記複数のユーザそれぞれの電力レベルを決定するステップと、次いで、
(iii)前記導出されたEXIT関数および前記決定された電力レベルに基づいて前記複数のデコーダの復号スケジュールを導出するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記EXIT関数が、電力、符号レート、または変調の異なるユーザのグループの伝達関数を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有効EXIT関数が前記基地局の干渉キャンセラについて決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
有効EXIT関数が、モンテカルロシミュレーションを使用してターボデコーダについて決定される、請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(i)が、全てのユーザグループに関する所定のまたは動的な復号統計に基づく、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(ii)が、電力最適化されたEXITチャートを生み出し、前記EXITチャートが次いでステップ(iii)で使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(ii)が前記EXITチャートの収束分析に基づき、前記収束分析が、前記ユーザ間の電力配分を最適化することによって、総電力が与えられた場合のしきい値を最小化するものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ユーザが複数のグループに分割され、前記グループの各メンバが等しい電力を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(iii)が、オフライン初期化とオンラインビタビ探索との両方を使用する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
オフライン初期化が、デコーダEXIT曲線と干渉キャンセラEXIT曲線との交差点である収束点を決定してから収束ビットエラーレート
【数1】
を決定することを含み、ここで、Pは最適化された電力プロファイルであり、Q(.)は正規化されたガウス分布の裾確率であり、J()は相互情報量を分散の関数として記述し、
【数2】
は収束点である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ビタビ探索のトレリスをトリミングすること、
ビタビ探索の生き残り経路の数を削減すること、
許容されるデコーダ反復の数を切り捨てること、および、
ステップ(iii)を受信機の反復ごとよりも低頻度で実施すること、のうちのいずれか1つまたは複数を実施することによってステップ(iii)の計算量を低減することができる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(iii)が、最初に、または干渉キャンセラが所定回数アクティブ化された後で実施される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(iii)が、静的と動的の両方のスケジューリングプロセスを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記動的復号スケジュール最適化が、受信機の反復ごとに最適スケジュールを導出して、最小数のデコーダ反復を使用して目標ビットエラーレートを達成することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(i)の前記EXIT関数の導出が、さらにチャネル推定器のためのものであり、ステップ(iii)の前記復号スケジュールが、さらに前記チャネル推定器のためのものである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ワイヤレスネットワーク中で複数のユーザと通信する、電力および復号スケジュール最適化のための基地局であって、
干渉キャンセラと、
それぞれが1ユーザに関連する複数のデコーダと、
前記基地局において前記干渉キャンセラおよび前記複数のデコーダについて外部情報伝達(EXIT)関数を導出するための処理手段と、
前記導出されたEXIT関数に基づいて前記複数のユーザそれぞれの電力レベルを決定するための電力最適化モジュールと、
前記導出されたEXIT関数および前記決定された電力レベルに基づいて前記複数のデコーダの復号スケジュールを決定するためのスケジュール最適化モジュールとを備える基地局。
【請求項17】
インストールされたときに請求項1から15のいずれか一項に記載の方法を前記基地局に実施させることのできるソフトウェア。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法に従って導出された復号スケジュール。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1b】
【図1c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2011−520342(P2011−520342A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506534(P2011−506534)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000528
【国際公開番号】WO2009/132385
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(507074133)ナショナル・アイシーティ・オーストラリア・リミテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000528
【国際公開番号】WO2009/132385
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(507074133)ナショナル・アイシーティ・オーストラリア・リミテッド (10)
【Fターム(参考)】
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