説明

マルチ画面表示装置

【課題】複数の映像表示装置の画面間における輝度のばらつきを容易に抑制することができるマルチ画面表示装置を提供する。
【解決手段】マルチ画面表示装置10は、複数の映像表示装置1a〜1dの画面2a〜2dを組み合わせて構成されるマルチ画面20に映像を表示する。複数の映像表示装置1a〜1dのうち、マスター装置1aは、自装置の光源3aに予め定める電流が供給されたときの画面2の輝度値である標準輝度値と、通信手段を介して得られるスレーブ装置1b〜1dの前記標準輝度値とに基づいて、目標輝度値を決定する。各映像表示装置1a〜1dは、目標輝度値に対応する自装置の輝度センサー3fの出力値を目標輝度出力値としてメモリ回路4dから読み出し、自装置の輝度センサー3fの出力値が目標輝度出力値に略等しくなるように、自装置の光源3aに供給される電流を光源ドライバ3bによって制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の映像表示装置の画面を組み合わせて1つの画面を構成して映像を表示するマルチ画面表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な画面に映像を表示する装置として、マルチ画面表示装置がある。マルチ画面表示装置は、複数の映像表示装置の画面を組み合わせて1つの大規模な画面を構成して、映像を表示する。マルチ画面表示装置を構成する映像表示装置としては、たとえば投射型映像表示装置がある。
【0003】
投射型映像表示装置は、映像表示デバイスに光源の光を照射して、スクリーンの背面から映像を投射することによって、スクリーンの表面の画面に映像を表示する。光源としては、たとえば、高電圧放電ランプ、または半導体発光素子である発光ダイオード(Light Emitting Diode;略称:LED)などが用いられている。
【0004】
高電圧放電ランプおよびLEDなどのデバイスには、製造上のばらつきがある。このばらつきによって、複数の投射型映像表示装置同士の間で、画面の輝度にばらつきが生じることがある。マルチ画面表示装置では、複数の投射型映像表示装置の画面が組み合わされて、1つの画面(以下「マルチ画面」という場合がある)が構成されるので、前述のような輝度のばらつきが存在すると、画面間の輝度差が目立ってしまい、マルチ画面の一体感を損なうことがある。
【0005】
マルチ画面表示装置において、マルチ画面を構成する画面間の輝度のばらつきを補正する技術が、たとえば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される技術では、マルチ画面表示装置を設置した後、作業者が目視で、画面間の輝度が合うように調整する。また特許文献1には、作業者が、目視に代えて、輝度計などの計測器を使用して調整値を求め、求めた調整値を用いて画面間の輝度を調整することによって、画面間の輝度のばらつきを抑制する方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3287007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されるようにマルチ画面表示装置を設置した後に、作業者が目視または計測器を用いて輝度を調整する方法では、輝度の測定および調整に多くの時間を要する。また設置場所およびマルチ画面を構成する画面の数によっては、目視または計測器による調整が困難な場合がある。また目視による調整では、作業者の技術のばらつきによって、調整後のマルチ画面の輝度にばらつきが生じることがある。
【0008】
また、階調を表す映像信号のレベルを調整して、輝度の調整および色度の補正を行う場合、映像信号のレベルを調整した後のマルチ画面表示装置の各投射型映像表示装置において、階調表現レベルが損なわれることがある。また、たとえば光源としてLEDが用いられる場合に、単にLEDの起動電流を調整して光源の出力を調整しても、色度を補正することはできない。
【0009】
本発明の目的は、複数の映像表示装置の画面間における輝度のばらつきを容易に抑制することができるマルチ画面表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のマルチ画面表示装置は、投射型の複数の映像表示装置を備え、入力される映像信号に基づいて、前記複数の映像表示装置の画面を組み合わせて構成されるマルチ画面に映像を表示するマルチ画面表示装置であって、前記複数の映像表示装置は、通信手段によって通信可能に接続され、各映像表示装置は、自装置の画面上の映像の輝度値に対応する出力値を出力する輝度検出手段と、供給される電流に応じた強度の光を前記画面への映像投射用に出力する光源と、前記光源に供給する電流を制御する電流制御手段と、前記画面上の映像の輝度値に対応する前記輝度検出手段の出力値を記憶する記憶手段とを備え、前記複数の映像表示装置のうち、いずれかの映像表示装置は、自装置の光源に予め定める値の電流が供給されたときの前記画面上の映像の輝度値である標準輝度値と、前記通信手段を介して得られる自装置以外の映像表示装置の前記標準輝度値とに基づいて、共通の目標となる目標輝度値を決定し、前記各映像表示装置は、(a)前記目標輝度値に対応する自装置の前記輝度検出手段の出力値を、目標輝度出力値として、自装置の前記記憶手段から読み出し、(b)自装置の前記輝度検出手段の出力値が、前記目標輝度出力値に略等しくなるときに自装置の前記光源に供給される電流の値を、最適制御電流値として決定し、(c)自装置の前記光源に供給される電流の値が、前記最適制御電流値となるように、自装置の前記電流制御手段によって制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマルチ画面表示装置によれば、複数の映像表示装置のいずれかが目標輝度値を決定し、複数の映像表示装置がそれぞれ、目標輝度値に対応する輝度検出手段の出力値が得られるように、電流制御手段によって最適制御電流値の電流を光源に供給する。これによって、従来技術に比べて、複数の映像表示装置の画面間における輝度のばらつきを容易に抑制することができるマルチ画面表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるマルチ画面表示装置10を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す投射型映像表示装置1の構成を示すブロック図である。
【図3】スクリーン2上の映像の輝度値と、それに対応するR輝度センサー3faの出力値との関係を表す輝度−センサー出力特性を示すグラフである。
【図4】スクリーン2上の映像の輝度値と、それに対応するG輝度センサー3fbの出力値との関係を表す輝度−センサー出力特性を示すグラフである。
【図5】スクリーン2上の映像の輝度値と、それに対応するB輝度センサー3fbの出力値との関係を表す輝度−センサー出力特性を示すグラフである。
【図6】本発明の第1の実施の形態であるマルチ画面表示装置10のマスター装置1aにおける輝度の補正処理に関するマイコン回路4cの処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態であるマルチ画面表示装置10の第1〜第3スレーブ装置1b,1c,1dにおける輝度の補正処理に関するマイコン回路4cの処理手順を示すフローチャートである。
【図8】制御電流値と色度値との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第2の実施の形態であるマルチ画面表示装置のマスター装置1aにおける輝度および色度の補正処理に関するマイコン回路4cの処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図9のステップc13においてマスター装置1aが目標色度値を決定するときに用いる色度図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態であるマルチ画面表示装置の第1〜第3スレーブ装置1b〜1dにおける輝度および色度の補正処理に関するマイコン回路4cの処理手順を示すフローチャートである。
【図12】本発明の前提技術のマルチ画面表示装置50を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<前提技術>
本発明のマルチ画面表示装置について説明する前に、本発明の前提技術のマルチ画面表示装置について説明する。図12は、本発明の前提技術のマルチ画面表示装置50を示す図である。マルチ画面表示装置50は、図12に示すように、複数、ここでは4つの投射型映像表示装置51a〜51dを備えて構成される。
【0014】
各投射型映像表示装置51a〜51dは、スクリーン52a〜52dに映像を投射可能に構成される。図12では、各投射型映像表示装置51a〜51dの構成のうち、スクリーン52a〜52dのみを示し、他の構成については記載を省略する。マルチ画面表示装置50は、複数の投射型映像表示装置51a〜51dのスクリーン52a〜52dを組み合わせて構成される大規模な画面(以下「マルチ画面」という場合がある)53に、映像を表示することが可能となっている。
【0015】
このようなマルチ画面表示装置50が製造後、初めて使用されるときには、各投射型映像表示装置51a〜51dの製造上のばらつきによって、スクリーン52a〜52d同士の間に輝度のばらつきが生じることがある。その結果、たとえば、各投射型映像表示装置51a〜51dが、全白映像信号に基づいて、各スクリーン52a〜52dの全体に白色を表示すると、図12に示すように、スクリーン52a〜52d同士の間に輝度差が生じて、マルチ画面53の一体感を損なうことがある。
【0016】
このように投射型映像表示装置51a〜51dのスクリーン52a〜52d同士の間に輝度差が生じるような場合、前提技術のマルチ画面表示装置50では、たとえば、作業者が目視または計測器を用いて各投射型映像表示装置51a〜51dの輝度を調整することによって、輝度差の抑制が図られる。
【0017】
しかし、この方法では、輝度の測定および調整に多くの時間を要する。またマルチ画面表示装置50の設置場所、およびマルチ画面53を構成する画面の数によっては、目視または計測器を用いて各投射型映像表示装置51a〜51dの輝度を調整する作業が困難な場合がある。また目視による調整では、作業者の技術のばらつきによって、調整後のマルチ画面53の輝度にばらつきが生じることがある。
【0018】
また、階調を表す映像信号のレベルを調整して、輝度の調整および色度の補正を行う場合、調整後のマルチ画面表示装置50の各投射型映像表示装置51a〜51dにおいて、階調表現レベルが損なわれることがある。また、光源として発光ダイオード(LED)が用いられる場合に、単にLEDの起動電流を調整して光源の出力を調整しても、色度を補正することはできない。
【0019】
そこで、本発明のマルチ画面表示装置では、以下の各実施の形態に示す構成を採用している。
【0020】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態であるマルチ画面表示装置10を模式的に示す図である。マルチ画面表示装置10は、複数の投射型の映像表示装置である投射型映像表示装置を備えて構成される。本実施の形態では、マルチ画面表示装置10は、4つの投射型映像表示装置1a〜1dを備えて構成される。各投射型映像表示装置1a〜1dは、スクリーン2a〜2dに映像を投射することが可能に構成される。図1では、理解を容易にするために、各投射型映像表示装置1a〜1dの構成のうち、スクリーン2a〜2dのみを示し、その他の構成については図示を省略する。スクリーン2a〜2dのうち、映像が表示される部分を、投射型映像表示装置1a〜1dの画面という。本実施の形態では、スクリーン2a〜2d全体が画面となる。
【0021】
以下の説明において、スクリーン2a〜2dを、画面2a〜2dという場合がある。また「投射型映像表示装置」を、単に「映像表示装置」という場合がある。図1では、4つの映像表示装置1を区別するために、映像表示装置の参照符号「1」に添え字「a」,「b」,「c」,「d」を付して、「第1映像表示装置1a」、「第2映像表示装置1b」、「第3映像表示装置1c」および「第4映像表示装置1d」として示している。4つの映像表示装置1を区別する必要が無い場合には、映像表示装置の参照符号「1」の添え字「a」〜「d」を省略して示す。
【0022】
マルチ画面表示装置10では、4つの映像表示装置1a〜1dのスクリーンである画面2a〜2dを組み合わせて1つの大規模な画面(以下「マルチ画面」という場合がある)20を構成し、そのマルチ画面20に映像を表示することが可能となっている。図1では、各映像表示装置1のスクリーンである画面2を、その映像表示装置1を示す添え字「a」,「b」,「c」,「d」を付して、第1画面2a、第2画面2b、第3画面2cおよび第4画面2dとして示している。本実施の形態では、マルチ画面表示装置10の表示画面であるマルチ画面20は、第1〜第4画面2a〜2dを行列状に配列して構成されている。
【0023】
マルチ画面表示装置10では、映像表示装置1a〜1d間で通信を行うために、第1〜第4映像表示装置1a〜1d間を、通信手段である通信ケーブル7によって接続している。図1に示す例では、第1映像表示装置1aと第2映像表示装置1bとを通信ケーブル7によって接続し、第2映像表示装置1bと第3映像表示装置1dとを通信ケーブル7によって接続し、第3映像表示装置1dと第4映像表示装置1cとを通信ケーブル7によって接続している。このようにマルチ画面表示装置10を構成する4つの映像表示装置1a〜1dは、通信ケーブル7によって通信可能に接続されている。
【0024】
各映像表示装置1a〜1dには、重複しない固有のID(Identification)番号が割り当てられる。図1に示す例では、第1〜第4映像表示装置1a〜1dのID番号をそれぞれID1,ID2,ID3,ID4とする。また、第1〜第4映像表示装置1a〜1dは、第1〜第4映像表示装置1a〜1d間で通信を行うときに第1〜第4映像表示装置1の制御を統括するマスター装置と、マスター装置によって制御されるスレーブ装置とに振分けられる。各映像表示装置1a〜1dをマスター装置として使用するのか、またはスレーブ装置として使用するのかは、たとえばユーザによって設定される。
【0025】
本実施の形態では、ID番号としてID1が割り当てられた第1映像表示装置1aをマスター装置とし、ID番号としてID2〜ID4が割り当てられた第2〜第4映像表示装置1b〜1dをスレーブ装置とする。したがって図1に示す例では、マスター装置である第1映像表示装置1aが、スレーブ装置である第2〜第4映像表示装置1b〜1dを制御する。以下の説明では、第1映像表示装置1aを「マスター装置1a」といい、第2〜第4映像表示装置1b〜1dをそれぞれ、「第1スレーブ装置1b」、「第2スレーブ装置1c」、「第3スレーブ装置1d」という場合がある。
【0026】
図2は、図1に示す投射型映像表示装置1の構成を示すブロック図である。投射型映像表示装置1であるマスター装置1aおよびスレーブ装置1b〜1dの構成は、ほぼ同じであるので、マスター装置1aおよびスレーブ装置1b〜1dの区別をせずに、投射型映像表示装置1の構成を説明する。
【0027】
投射型映像表示装置1は、前述のスクリーン2、投射ユニット3および電気回路ユニット4を備えて構成される。投射ユニット3は、光源3a、光源ドライバ3b、光源合成装置3c、映像表示デバイス3d、輝度センサー3fおよび投射レンズ3eを備える。電気回路ユニット4は、映像入力回路4a、映像処理回路4b、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)回路4cおよびメモリ回路4dを備える。
【0028】
電気回路ユニット4の映像入力回路4aは、映像表示装置1の外部に設置される映像ソース5と接続されている。映像ソース5は、アナログ形式の映像信号を出力する。映像ソース5から出力されたアナログ形式の映像信号は、映像入力回路4aに入力される。映像入力回路4aは、入力された映像ソース5からのアナログ形式の映像信号を受信してデジタル形式の映像信号(以下「デジタル映像信号」という場合がある)に変換し、デジタル映像信号を映像処理回路4bに与える。
【0029】
映像処理回路4bは、映像入力回路4aから与えられたデジタル映像信号に、その映像信号が表す映像の画質を調整する処理(以下「画質調整処理」という場合がある)を施す。その後、映像処理回路4bは、画質調整処理後のデジタル映像信号を、投射ユニット3の映像表示デバイス3dが必要とするデジタル信号フォーマットに変換して、映像表示デバイス3dに与える。
【0030】
ここで、映像処理回路4bが行う画質調整処理について説明する。映像処理回路4bは、映像入力回路4aから与えられたデジタル映像信号が表す光の三原色の信号レベル、すなわち赤色(Red;略称:R)、緑色(Green;略称:G)、青色(Blue;略称:B)の各信号レベルを、画面の画素毎、かつ原色毎に独立して増減させる画質調整処理を施す。本実施の形態では、映像処理回路4bは、画質調整処理として、映像入力回路4aから与えられたデジタル映像信号に、以下の式(1)で示される3×3のマトリックス演算を行う演算機能を有している。映像処理回路4bは、3×3のマトリックス演算を行うことによって画質調整を行う。
【0031】
【数1】

【0032】
式(1)において、Ri,Gi,Biは、入力信号、すなわち映像処理回路4bが映像入力回路4aから与えられたデジタル映像信号が示すR,G,Bの各信号レベルを示す。またRR,RG,RB,GR,GG,GB,BR,BG,BBは補正係数を示し、Ro,Go,Boは、映像処理回路4bから投射ユニット3に与えられる補正後の映像信号が示すR,G,Bの各信号レベルを示す。
【0033】
式(1)の演算によれば、たとえば、Roの信号レベルは、Riの信号レベルを増減したものに、GiおよびBiの信号レベルを少し加算したものとなる。映像処理回路4bは、このような演算を行うことによって、前述の画質調整処理として、R単色の輝度および色度の調整、主に色度の調整を行う。同様に、映像処理回路4bは、G単色およびB単色について、それぞれ輝度および色度の調整、主に色度の調整を行う。
【0034】
投射ユニット3の光源3aは、供給される電流に応じた強度の光を、画面であるスクリーン2への映像投射用に出力する。本実施の形態では、光源3aは、たとえばLEDなどの半導体発光素子によって構成される三原色の光源である。光源3aは、光の三原色にそれぞれ対応する光を画面2への映像投射用に出力する複数の光源3ac,3ab,3acを備える。具体的には、光源3aは、赤色(R)の光を発する赤色光源(以下「R光源」という場合がある)3aaと、緑色(G)の光を発する緑色光源(以下「G光源」という場合がある)3abと、青色(B)の光を発する青色光源(以下「B光源」という場合がある)3acとを備える。R光源3aa、G光源3abおよびB光源3acは、色光源に相当する。
【0035】
投射ユニット3の光源ドライバ3bは、電流制御手段に相当し、光源3aに供給する電流を制御する。本実施の形態では、光源ドライバ3bは、光源3aが発光するための制御電流(以下「ドライブ電流」という場合がある)を、光源3aに与える。光源ドライバ3bが、制御電流を時分割で光源3aに与えることによって、光源3aの発光、すなわち光源3aからの出力光が時分割で制御される。
【0036】
投射ユニット3の輝度センサー3fは、輝度検出手段に相当する。輝度センサー3fは、スクリーン2に投射される光量、換言すれば、画面であるスクリーン2に表示される映像の輝度値(以下「スクリーン2上の映像の輝度値」という場合がある)を検出し、検出した輝度値を電気回路ユニット4のマイコン回路4cに出力する。本実施の形態では、輝度センサー3fは、スクリーン2上の映像の輝度値を直接検出して出力するのではなく、その輝度値に対応する出力値を出力する。
【0037】
具体的に述べると、投射ユニット3内において、光源3aから発せられ、光源合成装置3cを介して映像表示デバイス3dへ照射された光のうち、スクリーン2に投射されない光(以下「不要光」という場合がある)は、映像表示デバイス3dによって輝度センサー3fに導かれる。輝度センサー3fは、映像表示デバイス3dから導かれた不要光を受け取り、不要光の光量を検出する。
【0038】
輝度センサー3fは、検出した不要光の光量を表すデータ(以下「光量データ」という)をマイコン回路4cに出力する。不要光の光量を表す光量データは、スクリーン2上の映像の輝度値に対応する出力値に相当する。マイコン回路4cは、輝度センサー3fから出力された光量データに基づいて、光源3aからスクリーン2に投射される光量、換言すればスクリーン2上の映像の輝度値を擬似的に検出する。
【0039】
輝度センサー3fは、赤色(R)の光を検出する赤色輝度センサー(以下「R輝度センサー」という)3faと、緑色(G)の光を検出する緑色輝度センサー(以下「G輝度センサー」という)3fbと、青色(B)の光を検出する青色輝度センサー(以下「B輝度センサー」という)3fcとを備える。
【0040】
図2では、映像表示デバイス3dにおいてスクリーン2へ投射されない不要光を輝度センサー3fで検出することによって、光源3aからスクリーン2に投射される光量を検出して、スクリーン2上の映像の輝度値を擬似的に検出する例を示している。これに限定されず、たとえば映像表示装置1が液晶映像表示装置によって実現される場合には、光源であるバックライトから出力される光の光量を輝度センサー3fで検出し、検出された光量に基づいて、スクリーン2上の映像の輝度値を擬似的に検出してもよい。この場合、輝度センサー3fで検出される光量は、スクリーン2上の映像の輝度値に対応する出力値に相当する。
【0041】
光源合成装置3cは、光源3aのR光源3aa、G光源3ab、B光源3acからそれぞれ出力される光を合成して、映像表示デバイス3dに与える。映像表示デバイス3dは、たとえば、デジタルミラーデバイス(Digital Mirror Device;略称:DMD)によって実現される。映像表示デバイス3dは、映像処理回路4bから与えられたデジタル映像信号に基づいて、光源合成装置3cから与えられた光を強度変調して映像光を生成する。映像表示デバイス3dは、生成した映像光を、投射レンズ3eを介してスクリーン2の表面に投射する。これによって、スクリーン2に、映像処理回路4bから与えられたデジタル映像信号が表す映像が表示される。
【0042】
電気回路ユニット4のマイコン回路4cは、映像表示装置1の外部に設置される外部制御装置6と接続されている。マイコン回路4cは、外部制御装置6から与えられる制御信号などに基づいて、映像表示装置1の各構成要素を統括的に制御する。具体的には、マイコン回路4cは、光源ドライバ3bを介して光源3aへ与える制御電流値を制御することによって、光源3aの輝度を制御する。また、マイコン回路4cは、スクリーン2上の映像の輝度値に対応する、R,G,B毎の輝度センサー3fの出力値を含む各種制御データをメモリ回路4dに書き込む処理、およびメモリ回路4dから前記各種制御データを読み出す処理を行う。メモリ回路4dは、記憶手段に相当し、スクリーン2上の映像の輝度値に対応する輝度センサー3fの出力値を記憶する。
【0043】
図3は、スクリーン2上の映像の輝度値と、それに対応するR輝度センサー3faの出力値との関係を表す輝度−センサー出力特性を示すグラフである。図4は、スクリーン2上の映像の輝度値と、それに対応するG輝度センサー3fbの出力値との関係を表す輝度−センサー出力特性を示すグラフである。図5は、スクリーン2上の映像の輝度値と、それに対応するB輝度センサー3fbの出力値との関係を表す輝度−センサー出力特性を示すグラフである。図3〜図5において、横軸は、スクリーン2上の映像の輝度値を表す。図3の縦軸は、R輝度センサー3faから出力されるセンサー出力値を表す。図4の縦軸は、G輝度センサー3fbから出力されるセンサー出力値を表す。図5の縦軸は、B輝度センサー3fcから出力されるセンサー出力値を表す。
【0044】
図3に示すグラフに基づいて、R輝度センサー3faの出力値SRTから、スクリーン2上の映像におけるR信号の輝度値YRTを求めることができる。図4に示すグラフに基づいて、G輝度センサー3fbの出力値SGTから、スクリーン2上の映像におけるG信号の輝度値YGTを求めることができる。図5に示すグラフに基づいて、B輝度センサー3fcの出力値SBTから、スクリーン2上の映像におけるB信号の輝度値YBTを求めることができる。
【0045】
本実施の形態では、図3〜図5に示すスクリーン2上の映像の輝度値と、それに対応するセンサー出力値との関係を表す輝度−センサー出力特性が、予めメモリ回路4dに記憶されている。メモリ回路4dが前記輝度−センサー出力特性を記憶することは、メモリ回路4dが、スクリーン2上の映像の輝度値に対応するセンサー出力値を記憶することに相当する。
【0046】
またマイコン回路4cは、光源3aに予め定める値(以下「既定の制御電流値」という)の電流を与えた場合のスクリーン2上の映像のR,G,B毎の輝度値(以下「標準輝度値」という場合がある)をメモリ回路4dに書き込む処理、およびメモリ回路4dから標準輝度値を読み出す処理を行うことが可能となっている。
【0047】
マスター装置1aのマイコン回路4cと、スレーブ装置1b〜1dのマイコン回路4cとは、通信ケーブル7および不図示の通信インタフェースを介して、情報を互いに送受信可能となっている。たとえば、マスター装置1aのマイコン回路4cは、通信ケーブル7を介して、各スレーブ装置1b〜1dのマイコン回路4cに制御命令を送信する。マスター装置1aのマイコン回路4cは、マスター装置1aと通信ケーブル7で直接接続されていないスレーブ装置1b〜1dのマイコン回路4cに対しては、マスター装置1aに通信ケーブル7で直接接続されているスレーブ装置1b〜1dのマイコン回路4cを介して、制御命令を送信する。
【0048】
図6は、本発明の第1の実施の形態であるマルチ画面表示装置10のマスター装置1aにおける輝度の補正処理に関するマイコン回路4cの処理手順を示すフローチャートである。図7は、本発明の第1の実施の形態であるマルチ画面表示装置10の第1〜第3スレーブ装置1b,1c,1dにおける輝度の補正処理に関するマイコン回路4cの処理手順を示すフローチャートである。
【0049】
図6および図7に示すフローチャートの処理の前提として、各映像表示装置1が工場から出荷される前に、R,G,B毎に、光源3aに供給される制御電流値を徐々に変更して、スクリーン2上の輝度値と、それに対応する輝度センサー3fから出力されるセンサー出力値とを求めた結果を、メモリ回路4dに記憶しているものとする。つまり、各映像表示装置1のメモリ回路4dが、前述の図3〜図5に示すような、スクリーン2上の輝度値と、それに対応する輝度センサー3fから出力されるセンサー出力値との関係を表す輝度−センサー出力特性を予め記憶しているものとする。また、光源3aに既定の制御電流値を入力した場合のスクリーン2上のR,G,B毎の輝度値を表す標準輝度値が、メモリ回路4dに記憶されているものとする。
【0050】
図6に示すフローチャートの各処理は、マスター装置1aのマイコン回路4cによって実行される。図6に示すフローチャートの処理は、マスター装置として設定された映像表示装置1aに電源が投入されるか、または映像表示装置1aが外部制御装置6からマスター指示信号を受信することによってマスター装置に設定されると開始され、ステップa1に移行する。
【0051】
ステップa1において、マスター装置1aは、輝度の補正処理を開始する命令(以下「補正開始命令」という)を全てのスレーブ装置に送信する。本実施の形態では、マスター装置1aは、第1〜第3スレーブ装置1b〜1dに補正開始命令を送信する。補正開始命令は、マスター装置と通信ケーブル7で直接接続されていないスレーブ装置には、マスター装置に通信ケーブル7で直接接続されたスレーブ装置を介して与えられる。
【0052】
たとえば図1に示すように、マスター装置1aと第1スレーブ装置1bとが接続され、第1スレーブ装置1bと第3スレーブ装置1dとが接続され、第3スレーブ装置1dと第2スレーブ装置1cとが接続されている場合、第3スレーブ装置1dには、第1スレーブ装置1bを介して、補正開始命令が与えられる。また第2スレーブ装置1cには、第1スレーブ装置1bおよび第3スレーブ装置1dを介して、補正開始命令が与えられる。このようにして補正開始命令を送信すると、マスター装置1aは、ステップa2に移行する。
【0053】
ステップa2において、マスター装置1aは、R,G,Bの各光源3aa,3ab,3acに既定の制御電流値IREF、たとえば20Aを与えたときのスクリーン2上の輝度値である標準輝度値YREFを、メモリ回路4dから読み出す。本実施の形態では、マスター装置1aは、R光源3aaの制御電流値が規定の制御電流値IREFと等しい値IRnであるときの輝度値YRREFnと、G光源3abの制御電流値が規定の制御電流値IREFと等しい値IGnであるときの輝度値YGREFnと、B光源3acの制御電流値が規定の制御電流値IREFと等しい値IBnであるときの輝度値YBREFnとを読み出す。
【0054】
ここで、nは、自然数であり、映像表示装置1毎に付される番号を示す。nが付された値は、nで示される番号が付された映像表示装置1が読み出した値および算出した値などを意味する。本実施の形態では、nで示される番号として、マスター装置1aには「1」が付され、第1スレーブ装置1bには「2」が付され、第2スレーブ装置1cには「3」が付され、第3スレーブ装置1dには「4」が付される。
【0055】
したがって、nとして「1」が付された値は、マスター装置1aが読み出した値または算出した値などを意味する。nとして「2」が付された値は、第1スレーブ装置1bが読み出した値または算出した値などを意味する。nとして「3」が付された値は、第2スレーブ装置1cが読み出した値または算出した値などを意味する。nとして「4」が付された値は、第3スレーブ装置1dが読み出した値または算出した値などを意味する。
【0056】
ステップa3において、マスター装置1aは、各スレーブ装置1b〜1dに、メモリ回路4dから読み出した標準輝度値YRREFn,YGREFn,YBREFn(n=2〜4)を送信させる命令(以下「輝度値送信命令」という)を、通信ケーブル7を介して送信する。
【0057】
ステップa4において、マスター装置1aは、後述する図7のステップb4で各スレーブ装置1b〜1dから送信される標準輝度値を受信したか否かを判断する。ステップa4において、マスター装置1aは、各スレーブ装置1b〜1dから送信される標準輝度値を受信したと判断した場合には、ステップa5に移行し、受信していないと判断した場合には、受信するまで待機する。
【0058】
ステップa5において、マスター装置1aは、ステップa2でメモリ回路4dから読み出した自装置の標準輝度値YRREFn,YGREFn,YBREFn(n=1)と、ステップa4で通信ケーブル7を介して受信した各スレーブ装置1b〜1dの標準輝度値YRREFn,YGREFn,YBREFn(n=2〜4)とに基づいて、マルチ画面表示装置10が出力可能な共通の目標輝度値を決定する。目標輝度値は、マルチ画面表示装置10を構成する複数の映像表示装置1の共通の目標となる輝度値である。
【0059】
本実施の形態では、マスター装置1aは、赤色(R)の目標輝度値YRT=Min(YRREF1,YRREF2,YRREF3,YRREF4)とし、緑色(G)の目標輝度値YGT=Min(YGREF1,YGREF2,YGREF3,YGREF4)とし、青色(B)の目標輝度値YBT=Min(YBREF1,YBREF2,YBREF3,YBREF4)とする。つまり、マスター装置1aは、R,G,Bの各色について、自装置であるマスター装置1aの標準輝度値、および自装置以外の映像表示装置1である第1〜第3スレーブ装置1b〜1dの標準輝度値のうち、最も小さい標準輝度値を、目標輝度値YRT,YGT,YBTとして決定する。
【0060】
ステップa6において、マスター装置1aは、ステップa5で決定した目標輝度値YRT,YGT,YBTを、通信ケーブル7を介して各スレーブ装置1b〜1dに送信する。
【0061】
ステップa7において、マスター装置1aは、メモリ回路4dに記憶されている前述の図3〜図5に示す輝度−センサー出力特性から、目標輝度値YRT,YGT,YBTに対応する輝度センサー出力値SRTn(n=1),SGTn(n=1),SBTn(n=1)を、目標輝度センサー出力値として読み出す。目標輝度センサー出力値は、目標輝度出力値に相当する。
【0062】
ステップa8において、マスター装置1aは、輝度センサー3fの出力値を監視しながら、光源ドライバ3bの設定を変更して、光源3aに与える制御電流値を増減させる。そしてマスター装置1aは、目標輝度センサー出力値SRTn(n=1),SGTn(n=1),SBTn(n=1)に略等しくなるときに光源3aに供給される電流の値である制御電流値を、最適制御電流値IRTn(n=1),IGTn(n=1),IBTn(n=1)として決定する。ここで、「略等しい」は、「等しい」を含む。
【0063】
具体的には、マスター装置1aは、目標輝度センサー出力値SRTn(n=1),SGTn(n=1),SBTn(n=1)と一致するか、または目標輝度センサー出力値SRTn(n=1),SGTn(n=1),SBTn(n=1)に最も近くなるときの制御電流値を、最適制御電流値IRTn(n=1),IGTn(n=1),IBTn(n=1)として決定する。
【0064】
ステップa9において、マスター装置1aは、ステップa8で決定した最適制御電流値IRTn(n=1),IGTn(n=1),IBTn(n=1)を光源ドライバ3bに設定する。これによって、マスター装置1aは、光源3aに与えられる制御電流値が、ステップa8で決定した最適制御電流値IRTn(n=1),IGTn(n=1),IBTn(n=1)となるように、光源ドライバ3bによって制御する。このようにして、マスター装置1aは、光源3aに与えるべき制御電流値を、目標輝度センサー出力値に基づいて変更する。ステップa9の処理を終了した後は、全ての処理手順を終了する。
【0065】
以上に述べたマスター装置1aによる図6に示すフローチャートの処理と並行して、図7に示すフローチャートの処理が、スレーブ装置において行われる。図7に示すフローチャートの各処理は、スレーブ装置のマイコン回路4cによって実行される。複数のスレーブ装置が設置される場合には、図7に示すフローチャートの各処理は、各スレーブ装置のマイコン回路4cによって実行される。本実施の形態では、第1〜第3スレーブ装置1b〜1dの3つのスレーブ装置が設置されるので、図7に示すフローチャートの各処理は、第1〜第3スレーブ装置1b〜1d、すなわち第2〜第4映像表示装置1b〜1dのマイコン回路4cによって、それぞれ実行される。
【0066】
図7に示すフローチャートの処理は、第1〜第3スレーブ装置1b〜1dに設定された第2〜第4映像表示装置1b〜1dに電源が投入されるか、または第2〜第4映像表示装置1b〜1dが、外部制御装置6からスレーブ指示信号を受信することによってスレーブ装置に設定されると開始され、ステップb1に移行する。
【0067】
ステップb1において、各スレーブ装置1b〜1dは、図6のステップa1でマスター装置1aから送信される補正開始命令を受信したか否かを判断する。ステップb1において、各スレーブ装置1b〜1dは、補正開始命令を受信したと判断した場合には、ステップb2に移行し、受信していないと判断した場合には、受信するまで待機する。
【0068】
ステップb2において、各スレーブ装置1b〜1dは、R,G,Bの各光源3aa,3ab,3acに既定の制御電流値IREF、たとえば20Aを与えたときのスクリーン2上の輝度値である標準輝度値YREFを、メモリ回路4dから読み出す。本実施の形態では、各スレーブ装置1b〜1dは、R光源3aaの制御電流値が規定の制御電流値であるIREFと等しい値IRnであるときの輝度値YRREFnと、G光源3abの制御電流値が規定の制御電流値IREFと等しい値IGnであるときの輝度値YGREFnと、B光源3acの制御電流値が規定の制御電流値IREFと等しい値IBnであるときの輝度値YBREFnとを読み出す。
【0069】
前述のように、nは、映像表示装置1毎に付される番号を示す。nとして「2」が付された値は、第1スレーブ装置1bが読み出した値または算出した値などを意味する。nとして「3」が付された値は、第2スレーブ装置1cが読み出した値または算出した値などを意味する。nとして「4」が付された値は、第3スレーブ装置1dが読み出した値または算出した値などを意味する。
【0070】
ステップb3において、各スレーブ装置1b〜1dは、図6のステップa3でマスター装置1aから送信される輝度値送信命令を受信したか否かを判断する。ステップb3において、各スレーブ装置1b〜1dは、輝度値送信命令を受信したと判断した場合には、ステップb4に移行し、輝度値送信命令を受信していないと判断した場合には、受信するまで待機する。
【0071】
ステップb4において、各スレーブ装置1b〜1dは、ステップb2でメモリ回路4dから読み出した標準輝度値YRREFn,YGREFn,YBREFn(n=2〜4)を、通信ケーブル7を介して、マスター装置1aに送信する。
【0072】
ステップb5において、各スレーブ装置1b〜1dは、図6のステップa6でマスター装置1aから送信される目標輝度値を受信したか否かを判断する。ステップb5において、各スレーブ装置1b〜1dは、目標輝度値を受信したと判断した場合には、ステップb6に移行し、目標輝度値を受信していないと判断した場合には、受信するまで待機する。
【0073】
ステップb6において、各スレーブ装置1b〜1dは、メモリ回路4dに記憶されている前述の図3〜図5に示す輝度−センサー出力特性から、目標輝度値YRT,YGT,YBTに対応する輝度センサー出力値SRTn(n=2〜4),SGTn(n=2〜4),SBTn(n=2〜4)を、目標輝度センサー出力値として読み出す。
【0074】
ステップb7において、各スレーブ装置1b〜1dは、輝度センサー3fの出力値を監視しながら、光源ドライバ3bの設定を変更して、光源3aに与える制御電流値を増減させる。そして各スレーブ装置1b〜1dは、目標輝度センサー出力値SRTn(n=2〜4),SGTn(n=2〜4),SBTn(n=2〜4)に略等しくなるときに光源3aに供給される電流の値である制御電流値を、最適制御電流値IRTn(n=2〜4),IGTn(n=2〜4),IBTn(n=2〜4)として決定する。
【0075】
具体的には、各スレーブ装置1b〜1dは、目標輝度センサー出力値SRTn(n=2〜4),SGTn(n=2〜4),SBTn(n=2〜4)と一致するか、または目標輝度センサー出力値SRTn(n=2〜4),SGTn(n=2〜4),SBTn(n=2〜4)に最も近くなるときの制御電流値を、最適制御電流値IRTn(n=2〜4),IGTn(n=2〜4),IBTn(n=2〜4)として決定する。
【0076】
ステップb8において、各スレーブ装置1b〜1dは、ステップb7で決定した最適制御電流値IRTn(n=2〜4),IGTn(n=2〜4),IBTn(n=2〜4)を光源ドライバ3bに設定する。これによって、各スレーブ装置1b〜1dは、光源3aに与えられる制御電流値が、ステップb7で決定した最適制御電流値IRTn(n=2〜4),IGTn(n=2〜4),IBTn(n=2〜4)となるように、光源ドライバ3bによって制御する。このようにして各スレーブ装置1b〜1dは、光源3aに与えるべき制御電流値を、目標輝度センサー出力値に基づいて変更する。ステップb8の処理を終了した後は、全ての処理手順を終了する。
【0077】
以上のように本実施の形態のマルチ画面表示装置10によれば、複数の映像表示装置1のいずれかが目標輝度値を決定し、複数の映像表示装置1がそれぞれ、目標輝度値に対応する輝度センサー3fの出力値が得られるように、光源ドライバ3bによって最適制御電流値の電流を光源3aに供給する。これによって、従来技術に比べて、複数の映像表示装置1の画面2間における輝度のばらつきを容易に抑制することができるマルチ画面表示装置10を得ることができる。したがって、マルチ画面表示装置10におけるマルチ画面20の一体感を向上させることができる。
【0078】
また本実施の形態のマルチ画面表示装置によれば、目標輝度値を決定する映像表示装置であるマスター装置1aは、自装置の標準輝度値、および、自装置以外の映像表示装置1b〜1dの標準輝度値のうち、最も低い標準輝度値を、目標輝度値として決定する。これによって、光源3aに供給するべき最適制御電流値を可及的に小さくすることができるので、前述のように画面2間の輝度のばらつきを抑制するとともに、消費電力を低減することができる。
【0079】
また本実施の形態では、光源3aに供給する制御電流値によって輝度値を調整するので、映像処理回路4bでの画質調整値によって輝度値を調整する場合に比べて、光源3aに供給する制御電流の値を小さくすることができる。したがって、消費電力を低減することができる。
【0080】
また本実施の形態では、前述のように、マスター装置1aは、最も低い標準輝度値を目標輝度値として決定する。このようにマスター装置1aが最も低い標準輝度値を目標輝度値として決定することは、輝度のばらつきを抑制する効果を得る上では必須ではない。各映像表示装置1a〜1dが出力可能な共通の輝度値が目標輝度値として決定されれば、上記以外の決定方法であっても、輝度のばらつきを抑制する効果を得ることができる。
【0081】
また、輝度センサー3fの出力値には、各デバイス単位でのばらつきなどがあるので、輝度センサー3fの出力値のみを基準として輝度調整を行った場合は、厳密な調整が行えない。これに対し、本実施の形態のマルチ画面表示装置10では、スクリーン2上の映像の輝度値と輝度センサー3fの出力値との関係を表す輝度−センサー出力特性をメモリ回路4dに記憶しているので、正確な輝度調整を行うことができる。
【0082】
本実施の形態では、メモリ回路4dは、スクリーン2上の映像の輝度値に対応する輝度センサー3fの出力値との関係を表す輝度−センサー出力特性として、図3などに示すような輝度−センサー出力特性を記憶している。メモリ回路4dに記憶される輝度−センサー出力特性の形態としては、スクリーン2上の映像の輝度値と輝度センサー3fの出力値との対応表であってもよいし、スクリーン2上の映像の輝度値と輝度センサー3fの出力値との関係式であってもよい。スクリーン2上の映像の輝度値と輝度センサー3fの出力値との対応表の場合には、輝度値の読み出しが容易となるという効果を得ることができる。また、スクリーン2上の映像の輝度値と輝度センサー3fの出力値との関係式の場合には、メモリ回路4dの記憶容量を低減することができるという効果を得ることができる。
【0083】
<第2の実施の形態>
前述の第1の実施の形態のマルチ画面表示装置10は、複数の投射型映像表示装置1同士の間の輝度のばらつきを抑制可能な構成となっている。しかし、光源3aとしてLEDが用いられる場合、制御電流値に対応するLEDの色度値、すなわちLEDの色度特性は、製造ばらつきなどによって、LED毎に異なる。また第1の実施の形態のマルチ画面表示装置10は、色度を考慮して制御電流値を決定する構成ではないので、第1の実施の形態のマルチ画面表示装置10では、色度が多少ばらついているおそれがある。
【0084】
そこで、本発明の第2の実施の形態のマルチ画面表示装置では、輝度のばらつきだけでなく、色度のばらつきも抑制可能な構成にしている。以下に、本実施の形態のマルチ画面表示装置について説明する。本実施の形態のマルチ画面表示装置は、前述の第1の実施の形態のマルチ画面表示装置10と構成が同一であるので、対応する部分については同一の参照符を付して、共通する説明を省略する。
【0085】
マイコン回路4cは、第1の実施の形態と同様に、各種制御データをメモリ回路4dに書き込む処理、およびメモリ回路4dから前記各種制御データを読み出す処理を行うことが可能となっている。本実施の形態では、前記各種制御データは、前述の図3〜図5に示す輝度−センサー出力特性だけでなく、R,G,Bの各光源3aの制御電流値に対応する色度値を表す色度特性と、映像処理回路4bにおけるR,G,Bの輝度値および色度値の画質調整値、すなわち前記式(1)に示す補正係数とをさらに含む。
【0086】
本実施の形態では、前記式(1)に示す補正係数は、マイコン回路4cにおいて算出される。映像処理回路4bは、マイコン回路4cによって算出された補正係数を前記式(1)に用いる。映像処理回路4bは、画質調整処理後のデジタル映像信号を、投射ユニット3の映像表示デバイス3dが必要とするデジタル信号フォーマットに変換して、映像表示デバイス3dに与える。
【0087】
図8は、制御電流値と色度値との関係を示すグラフである。図8に示す座標系は、CIE表色系のxy座標系に対応している。図8に示す縦軸のy軸は、輝度を表す。図8には、R,G,Bの各光源3aの制御電流値に対応する色度値を表す色度特性が示されている。本実施の形態では、図8に示す色度特性が、予めメモリ回路4dに記憶されている。メモリ回路4dが前記色度特性を記憶することは、メモリ回路4dが、R,G,Bの各光源3aに供給される電流の値である制御電流値に対応する、各光源3aの色度値を記憶することに相当する。
【0088】
図8において、「IRT」は、R光源3aaの最適制御電流値を示し、「IRmin.」は、R光源3aaの制御電流値の最小値を示し、「IRmax.」は、R光源3aaの制御電流値の最大値を示す。ここで、R光源3aaに最適制御電流値が与えられるときの色度値の色度座標xをxR0とし、色度座標yをyR0とする。
【0089】
また図8において、「IGT」は、G光源3abの最適制御電流値を示し、「IGmin.」は、G光源3abの制御電流値の最小値を示し、「IGmax.」は、G光源3abの制御電流値の最大値を示す。ここで、G光源3abに最適制御電流値が与えられるときの色度値の色度座標xをxG0とし、色度座標yをyG0とする。
【0090】
また図8において、「IBT」は、B光源3acの最適制御電流値を示し、「IBmin.」は、B光源3acの制御電流値の最小値を示し、「IBmax.」は、B光源3acの制御電流値の最大値を示す。ここで、B光源3acに最適制御電流値が与えられるときの色度値の色度座標xをxB0とし、色度座標yをyB0とする。
【0091】
図9は、本発明の第2の実施の形態であるマルチ画面表示装置のマスター装置1aにおける輝度および色度の補正処理に関するマイコン回路4cの処理手順を示すフローチャートである。図10は、図9のステップc13においてマスター装置1aが目標色度値を決定するときに用いる色度図である。図11は、本発明の第2の実施の形態であるマルチ画面表示装置の第1〜第3スレーブ装置1b〜1dにおける輝度および色度の補正処理に関するマイコン回路4cの処理手順を示すフローチャートである。
【0092】
図9および図11に示すフローチャートの処理の前提として、各映像表示装置1が工場から出荷される前に、R,G,B毎に、光源3aに供給される制御電流値を徐々に変更して、スクリーン2上の映像の輝度値すなわち輝度特性と、それに対応する輝度センサー3fのセンサー出力値および色度値すなわち色度特性とを求め、メモリ回路4dに記憶しているものとする。つまり、各映像表示装置1のメモリ回路4dが、前述の図3〜図5に示す輝度−センサー出力特性に加えて、図8に示すような、光源3aの三原色個別の制御電流値に対応する色度値を表す色度特性を記憶しているものとする。以下の説明では、図8に示す制御電流値に対応する色度値を表す色度特性を「電流−色度特性」という場合がある。
【0093】
図9に示すフローチャートの各処理は、マスター装置1aのマイコン回路4cによって実行される。図9に示すフローチャートの処理は、マスター装置に設定された映像表示装置1aに電源が投入されるか、または映像表示装置1aが、外部制御装置6からマスター指示信号を受信することによってマスター装置に設定されると開始され、ステップc1に移行する。
【0094】
ステップc1〜ステップc9の各処理は、前述の図6に示すフローチャートのステップa1〜ステップa9の各処理と同一であるので、処理の説明を省略する。ステップc9の処理を終了した後は、ステップc10に移行する。
【0095】
ステップc10において、マスター装置1aは、メモリ回路4dに記憶されている電流−色度特性から、ステップc8で決定されたR光源3aaの最適制御電流値IRTn(n=1)に対応する色度値xR0n,yR0n(n=1)を読み出す。同様に、マスター装置1aは、ステップc8で決定されたG光源3abの最適制御電流値IGTn(n=1)に対応する色度値xG0n,yG0n(n=1)と、ステップc8で決定されたB光源3acの最適制御電流値IBTn(n=1)に対応する色度値xB0n,yB0n(n=1)とを読み出す。
【0096】
ステップc11において、マスター装置1aは、各スレーブ装置1b〜1dに、メモリ回路4dから読み出した色度値xR0n,yR0n,xG0n,yG0n,xB0n,yB0n(n=2〜4)を送信させる命令(以下「色度値送信命令」という)を、通信ケーブル7を介して送信する。
【0097】
ステップc12において、マスター装置1aは、各スレーブ装置1b〜1dから送信される色度値を受信したか否かを判断する。ステップc12において、マスター装置1aは、色度値を受信したと判断した場合には、ステップc13に移行し、色度値を受信していないと判断した場合には、受信するまで待機する。
【0098】
ステップc13において、マスター装置1aは、ステップc10でメモリ回路4dから読み出した自装置の最適制御電流値IRTn,IGTn,IBTn(n=1)に対応する前述の色度値と、ステップc12で通信ケーブル7を介して受信した各スレーブ装置1b〜1dの最適制御電流値IRTn,IGTn,IBTn(n=2〜4)に対応する前述の色度値とに基づいて、本実施の形態のマルチ画面表示装置が再現可能な共通の目標色度値を決定する。このようにしてマスター装置1aは、色毎に、マルチ画面表示装置10を構成する複数の映像表示装置1の共通の目標となる目標色度値を決定する。
【0099】
前述のように、図10は、図9のステップc13においてマスター装置1aが目標色度値を決定するときに用いる色度図である。図10において、実線、破線、1点鎖線および2点鎖線で示される4つの三角形は、マスター装置1aおよび第1〜第3スレーブ装置1b〜1dの4つに対応している。各線種によって示される三角形の各頂点は、R光源3aaの色度値xR0n,yR0n(n=1〜4)と、G光源3abの色度値xG0n,yG0n(n=1〜4)と、B光源3acの色度値xB0n,yB0n(n=1〜4)とに対応している。本実施の形態では、マスター装置1aは、図10において、4つの三角形が重なる領域内にあり、かつ、それらの三角形の頂点に近い3つの点を、それぞれR光源3aaの目標色度値xRT,yRTと、G光源3abの目標色度値xGT,yGT、およびB光源3acの目標色度値xBT、yBTとして決定する。
【0100】
図9に戻って、ステップc14において、マスター装置1aは、ステップc13で決定した目標色度値xRT,yRT,xGT,yGT,xBT,yBTを、通信ケーブル7を介して各スレーブ装置1b〜1dに送信する。
【0101】
ステップc15において、マスター装置1aは、ステップc13で決定された目標色度値に基づいて、自装置に入力される映像信号のレベルを補正する補正係数を算出する。具体的には、マスター装置1aは、まず、以下に示す式(2)に、ステップc5で決定された目標輝度値YRT,YGT,YBTと、ステップc10で読み出した色度値xR0n,yR0n,xG0n,yG0n,xB0n,yB0n(n=1)とを代入して、R,G,Bの3刺激値のうちのXおよびZの値XR0n,ZR0n,XG0n,ZG0n,XB0n,ZB0n(n=1)を算出する。
【0102】
【数2】

【0103】
また、マスター装置1aは、前記式(2)と実質的に同じ式である以下に示す式(3)に、ステップc5で決定された目標輝度値YRT,YGT,YBTと、ステップc13で決定された目標色度値xRT,yRT,xGT,yGT,xBT,yBTとを代入して、R,G,Bの3刺激値のうちのXおよびZの目標となる値XRT,ZRT,XGT,ZGT,XBT,ZBTを算出する。
【0104】
【数3】

【0105】
ここで、映像表示装置1の入力映像信号Ri,Gi,Biに対する3刺激値Xn,Yn,Zn(n=1)は、以下に示す式(4)によって表される。この式(4)と前記式(1)とから、以下に示す式(5)が得られる。式(5)において、RRn,RGn,RBn,GRn,GGn,GBn,BRn,BGn,BBnは、補正係数を示す。
【0106】
【数4】

【0107】
【数5】

【0108】
マスター装置1aは、前記式(5)に、ステップc5で決定された目標輝度値YRT,YGT,YBTと、先に算出したR,G,Bの3刺激値のうちのXおよびZの値XR0n,ZR0n,XG0n,ZG0n,XB0n,ZB0n(n=1)と、先に算出したR,G,Bの3刺激値のうちのXおよびZの目標となる値XRT,ZRT,XGT,ZGT,XBT,ZBTとを代入する。そして、マスター装置1aは、代入して得られた式から、補正係数RRn,RGn,RBn,GRn,GGn,GBn,BRn,BGn,BBn(n=1)を算出する。このようにして、マスター装置1aは、前述の目標色度値に基づいて、自装置に入力される映像信号のレベルを補正する補正係数を算出する。
【0109】
ステップc16において、マスター装置1aは、ステップc15で算出された補正係数が映像処理回路4bで用いられるように設定する。これによってマスター装置1aは、目標色度値に基づいて、自装置に入力される映像信号のレベルを補正する。ステップc16の処理を終了した後は、全ての処理手順を終了する。
【0110】
以上に述べたマスター装置1aによる図9に示すフローチャートの処理と並行して、図11に示すフローチャートの処理が、スレーブ装置において行われる。図11に示すフローチャートの各処理は、スレーブ装置のマイコン回路4cによって実行される。複数のスレーブ装置が設置される場合には、図11に示すフローチャートの各処理は、各スレーブ装置のマイコン回路4cによって実行される。本実施の形態では、第1〜第3スレーブ装置の3つのスレーブ装置が設置されるので、図11に示すフローチャートの各処理は、第1〜第3スレーブ装置1b〜1d、すなわち第2〜第4映像表示装置1b〜1dのマイコン回路4cによって、それぞれ実行される。
【0111】
図11に示すフローチャートの処理は、第1〜第3スレーブ装置1b〜1dに設定された第2〜第4映像表示装置1b〜1dに電源が投入されるか、または第2〜第4映像表示装置1b〜1dが、外部制御装置6からスレーブ指示信号を受信することによってスレーブ装置に設定されると開始され、ステップd1に移行する。
【0112】
ステップd1〜ステップd8の各処理は、前述の図7に示すフローチャートのステップb1〜ステップb8の各処理と同一であるので、処理の説明を省略する。ステップd8の処理を終了した後は、ステップd9に移行する。
【0113】
ステップd9において、各スレーブ装置1b〜1dは、メモリ回路4dに記憶されている電流−色度特性から、ステップd7で決定されたR光源3aaの最適制御電流値IRTn(n=2〜4)に対応する色度値xR0n,yR0n(n=2〜4)を読み出す。同様に、各スレーブ装置1b〜1dは、ステップd7で決定されたG光源3abの最適制御電流値IGTn(n=2〜4)に対応する色度値xG0n,yG0n(n=2〜4)と、ステップd7で決定されたB光源3acの最適制御電流値IBTn(n=2〜4)に対応する色度値xB0n,yB0n(n=2〜4)とを読み出す。
【0114】
ステップd10において、各スレーブ装置1b〜1dは、図9のステップc11でマスター装置1aから送信される色度値送信命令を受信したか否かを判断する。ステップd10において、各スレーブ装置1b〜1dは、色度値送信命令を受信したと判断した場合には、ステップd11に移行し、色度値送信命令を受信していないと判断した場合には、受信するまで待機する。
【0115】
ステップd11において、各スレーブ装置1b〜1dは、ステップd9で読み出した色度値を、通信ケーブル7を介して、マスター装置1aに送信する。
【0116】
ステップd12において、各スレーブ装置1b〜1dは、図9のステップc14でマスター装置1aから送信される目標色度値を受信したか否かを判断する。ステップd12において、各スレーブ装置1b〜1dは、目標色度値を受信したと判断した場合には、ステップd13に移行し、受信していないと判断した場合には、受信するまで待機する。
【0117】
ステップd13において、各スレーブ装置1b〜1dは、前述の図9に示すステップc15におけるマスター装置1aの処理と同様にして、ステップd12で受信した目標色度値に基づいて、自装置に入力される映像信号のレベルを補正する補正係数を算出する。
【0118】
具体的には、各スレーブ装置1b〜1dは、まず、前記式(2)に、ステップd5で受信した目標輝度値YRT,YGT,YBTと、ステップd9で読み出した色度値xR0n,yR0n,xG0n,yG0n,xB0n,yB0n(n=2〜4)とを代入して、R,G,Bの3刺激値のうちのXおよびZの値XR0n,ZR0n,XG0n,ZG0n,XB0n,ZB0n(n=2〜4)を算出する。
【0119】
また、各スレーブ装置1b〜1dは、前記式(2)と実質的に同じ式である前記式(3)に、ステップd5で受信した目標輝度値YRT,YGT,YBTと、ステップd12で受信した目標色度値xRT,yRT,xGT,yGT,xBT,yBTとを代入して、R,G,Bの3刺激値のうちのXおよびZの目標となる値XRT,ZRT,XGT,ZGT,XBT,ZBTを算出する。
【0120】
次いで、各スレーブ装置1b〜1dは、前記式(5)に、ステップd5で受信した目標輝度値YRT,YGT,YBTと、先に算出したR,G,Bの3刺激値のうちのXおよびZの値XR0n,ZR0n,XG0n,ZG0n,XB0n,ZB0n(n=2〜4)と、先に算出したR,G,Bの3刺激値のうちのXおよびZの目標となる値XRT,ZRT,XGT,ZGT,XBT,ZBTとを代入する。そして、各スレーブ装置1b〜1dは、代入して得られた式から、補正係数RRn,RGn,RBn,GRn,GGn,GBn,BRn,BGn,BBn(n=2〜4)を算出する。このようにして、各スレーブ装置1b〜1dは、前述の目標色度値に基づいて、自装置に入力される映像信号のレベルを補正する補正係数を算出する。
【0121】
ステップd14において、各スレーブ装置1b〜1dは、ステップd13で算出された補正係数が映像処理回路4bで用いられるように設定する。これによって各スレーブ装置1b〜1dは、目標色度値に基づいて、自装置に入力される映像信号のレベルを補正する。ステップd14の処理を終了した後は、全ての処理手順を終了する。
【0122】
以上のような本実施の形態のマルチ画面表示装置によれば、第1の実施の形態のマルチ画面表示装置10と同様の動作を行うので、前述のように複数の映像表示装置1の画面2間における輝度のばらつきを抑制することができる。また、本実施の形態のマルチ画面表示装置によれば、複数の映像表示装置1のいずれかが目標色度値を決定し、複数の映像表示装置1がそれぞれ、目標色度値に基づいて、映像信号のレベルを補正するための補正係数を算出し、その補正係数によって映像信号のレベルを補正する。したがって、複数の映像表示装置1の画面2間における色度のばらつきも抑制することができる。
【0123】
ここで、映像信号のレベルの補正だけを行うことによって、輝度調整および色度補正の両方を行うと、各映像表示装置1での階調表現レベルが損なわれることがある。これに対し、本実施の形態では、輝度のばらつきに対しては制御電流値を調整して抑制し、色度のばらつきに対しては映像信号のレベルを補正して抑制するので、映像信号に基づいて画面2に表示される映像のデジタル表現階調が損なわれることを抑制することができる。したがって、中間階調を多く使用する自然画などの映像表示において特に有効である。
【符号の説明】
【0124】
1 投射型映像表示装置、1a マスター装置(第1映像表示装置)、1b 第1スレーブ装置(第2映像表示装置)、1c 第2スレーブ装置(第3映像表示装置)、1d 第3スレーブ装置(第4映像表示装置)、2 スクリーン(画面)、2a 第1スクリーン(第1画面)、2b 第2スクリーン(第2画面)、2c 第3スクリーン(第3画面)、2d 第4スクリーン(第4画面)、3 投射ユニット、3a 光源、3aa R光源、3ab G光源、3ac B光源、3b 光源ドライバ、3c 光源合成装置、3d 映像表示デバイス、3e 投射レンズ、3f 輝度センサー、3fa R輝度センサー、3fb G輝度センサー、3fc B輝度センサー、4 電気回路ユニット、4a 映像入力回路、4b 映像処理回路、4c マイコン回路、4d メモリ回路、5 映像ソース、6 外部制御装置、7 通信ケーブル、10 マルチ画面表示装置、20 マルチ画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射型の複数の映像表示装置を備え、入力される映像信号に基づいて、前記複数の映像表示装置の画面を組み合わせて構成されるマルチ画面に映像を表示するマルチ画面表示装置であって、
前記複数の映像表示装置は、通信手段によって通信可能に接続され、
各映像表示装置は、
自装置の画面上の映像の輝度値に対応する出力値を出力する輝度検出手段と、
供給される電流に応じた強度の光を前記画面への映像投射用に出力する光源と、
前記光源に供給する電流を制御する電流制御手段と、
前記画面上の映像の輝度値に対応する前記輝度検出手段の出力値を記憶する記憶手段とを備え、
前記複数の映像表示装置のうち、いずれかの映像表示装置は、自装置の光源に予め定める値の電流が供給されたときの前記画面上の映像の輝度値である標準輝度値と、前記通信手段を介して得られる自装置以外の映像表示装置の前記標準輝度値とに基づいて、共通の目標となる目標輝度値を決定し、
前記各映像表示装置は、
(a)前記目標輝度値に対応する自装置の前記輝度検出手段の出力値を、目標輝度出力値として、自装置の前記記憶手段から読み出し、
(b)自装置の前記輝度検出手段の出力値が、前記目標輝度出力値に略等しくなるときに自装置の前記光源に供給される電流の値を、最適制御電流値として決定し、
(c)自装置の前記光源に供給される電流の値が、前記最適制御電流値となるように、自装置の前記電流制御手段によって制御することを特徴とするマルチ画面表示装置。
【請求項2】
各映像表示装置の前記光源は、光の三原色にそれぞれ対応する光を前記画面への映像投射用に出力する複数の色光源を備え、
各映像表示装置の前記記憶手段は、各色光源に供給される電流の値に対応する各色光源の色度値をさらに記憶し、
前記複数の映像表示装置のうち、いずれかの映像表示装置は、色毎に、自装置の前記光源における前記最適制御電流値に対応する前記色度値と、前記通信手段を介して得られる自装置以外の映像表示装置の前記光源における前記最適制御電流値に対応する前記色度値とに基づいて、共通の目標となる目標色度値を決定し、
前記各映像表示装置は、前記目標色度値に基づいて、自装置に入力される前記映像信号のレベルを補正することを特徴とする請求項1に記載のマルチ画面表示装置。
【請求項3】
前記目標輝度値を決定する映像表示装置は、自装置の前記標準輝度値、および、自装置以外の映像表示装置の前記標準輝度値のうち、最も低い前記標準輝度値を、前記目標輝度値として決定することを特徴とする請求項1または2に記載のマルチ画面表示装置。
【請求項4】
前記複数の映像表示装置は、
マスター装置として予め定められる1つの映像表示装置と、
前記マスター装置を除く残余の映像表示装置であって、前記通信手段を介して、前記マスター装置によって制御されるスレーブ装置とを含み、
前記目標輝度値は、前記マスター装置によって決定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のマルチ画面表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−222637(P2012−222637A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87107(P2011−87107)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】