説明

マンコンベアの移動手摺駆動装置

【課題】コンパクトで強固、保守管理が簡易なマンコンベアの移動手摺駆動装置の提供。
【解決手段】駆動力伝達スプロケットからの駆動力を手摺駆動ローラに伝えて移動手摺を駆動する手摺駆動チェーンの緩みを吸収する緩み防止機構が、バネにより手摺駆動チェーンに押圧されるアイドルスプロケットを備えたマンコンベアの移動手摺駆動装置。緩み防止機構の構成部品であるバネ、アイドルスプロケット、リンク機構が全て、マンコンベアの主枠に単一の取付ブラケット上に直接あるいは間接に支持されている。
【効果】機構がコンパクトで取付けが簡易で、既存のマンコンベアに容易に追加できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はマンコンベアの移動手摺駆動装置に関し、特に手摺駆動チェーンの張力を適正に保持する自動緩み防止装置を備えたマンコンベアの移動手摺駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマンコンベアの移動手摺駆動装置は、手摺駆動チェーンの張力を適正に保持するために、バネにより手摺駆動チェーンにローラを押し付けてチェーンの適正な張力を維持する自動緩み防止装置を備えている。或る提案によれば、マンコンベアの手摺駆動装置には、駆動スプロケットからの駆動力が伝達される駆動力伝達スプロケットと、移動手摺に沿うように配置された複数の駆動ローラと、移動手摺を挟んで駆動ローラと対向する位置に配置された複数の加圧ローラと、駆動力伝達スプロケットと複数の駆動ローラとの間に巻き掛けられ、複数の駆動ローラにより移動手摺を駆動する手摺駆動チェーンと、駆動力伝達スプロケットの両側からそれぞれ両外側の駆動ローラまで延びている手摺駆動チェーンを外方から内方に向かって内方向に所定の張力で回転可能に押し付ける自動撓み防止機構とが設けられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−327756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の自動緩み防止機構においては、V字状に配置された手摺駆動チェーンを外方から内方に押し付け力を発生させるアイドルスプロケットが設けられている。このアイドルスプロケットは、一端がトラスの固定部に回転可能に枢支されたリンクに取付けられており、リンクの枢支端を手摺駆動装置の両端部近くのトラスに設ける必要があった。そのため取付けスペースを多くとる必要があり、省スペース化を阻害する要因となっていた。また、2本のリンクを別々に取付ける必要があり、取付性が悪いという問題があった。その他にも押し付け力を発生させているバネが2本のリンクを内方に引っ張る引張りバネであるために、押し付け力の調整が困難であり、また引張バネ取付け部の強度にも問題があった。
【0005】
従ってこの発明の目的は、コンパクトで強固な構成を持ち、保守管理が簡易な、マンコンベアの移動手摺駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のマンコンベアの移動手摺駆動装置は、マンコンベアの主枠に取り付けられ、駆動源からの駆動力を受けて回転する駆動力伝達スプロケットと、マンコンベアの主枠に取り付けられ、移動手摺を駆動する手摺駆動ローラと、上記駆動力伝達スプロケットおよび上記手摺駆動ローラに巻き掛けられていて、上記駆動力伝達スプロケットから上記手摺駆動ローラに駆動力を伝達する手摺駆動チェーンと、上記手摺駆動チェーン上を転動し得るアイドルスプロケットをバネにより上記手摺駆動チェーンに押圧させて上記手摺駆動チェーンの緩みを吸収させる緩み防止機構とを備えたマンコンベアの移動手摺駆動装置において、上記緩み防止機構の構成部品が全て、上記主枠に取り付けられる単一の取付ブラケットによって直接あるいは間接に支持されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明のマンコンベアの移動手摺駆動装置によれば、部品が全て一体組付けできるので、全て組付けた状態でアーム取付ブラケットをトラスに固定することにより、自動緩み防止機能を付加させることができる。またこの構成により、自動緩み防止機構を省スペースな構成とすることもでき、取付け性も簡易化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明のマンコンベアの移動手摺駆動装置の一実施形態を示す概略平面図であり、図2は図1に示すマンコンベアの移動手摺駆動装置の概略側面図である。図1および2において、この発明のマンコンベアの移動手摺駆動装置は、マンコンベアのトラス構造でできた主枠1に取り付けられ、図示してない電動機等の駆動源からの駆動力を受けて回転する駆動力伝達スプロケット2と、マンコンベアの主枠1に取り付けられ、移動手摺3を駆動する手摺駆動ローラ4と、駆動力伝達スプロケット2および手摺駆動ローラ4に巻き掛けられていて、駆動力伝達スプロケット2から手摺駆動ローラ4に駆動力を伝達する手摺駆動チェーン5とを備えている。
【0009】
駆動力伝達スプロケット2は主軸6を軸受7によって回転可能に支持されていて、軸受7はボルト・ナットである締結具8によって主枠1に取り付けられている。手摺駆動ローラ4は、移動手摺3に沿って複数個(図示の場合4個)配置されており、対応する加圧ローラ9との間に移動手摺3を挟持して、手摺駆動チェーン5によってそれぞれのスプロケット10を介して駆動されて摩擦により移動手摺3を駆動する。駆動力伝達スプロケット2と手摺駆動ローラ4とは、全体として駆動力伝達スプロケット2が二等辺三角形の頂点となるような3角形状に配置されている。このため、手摺駆動チェーン5は、駆動力伝達スプロケット2の前後、即ち手摺駆動チェーン5の進行方向に見て駆動力伝達スプロケット2の前方および後方に向かってV字型に延びている。手摺駆動チェーン5の張力を調整すると共に手摺駆動ローラ4のスプロケット10との間の係合部分長さを十分大きくするために、張力調整スプロケット11が設けられている。
【0010】
マンコンベアの移動手摺駆動装置はまた、手摺駆動チェーン5の緩みを自動的に吸収する緩み防止機構12を備えている。緩み防止機構12は、手摺駆動チェーン5上を転動し得るアイドルスプロケット13をバネ14により手摺駆動チェーン5に押圧させて手摺駆動チェーン5の緩みを吸収するものである。緩み防止機構12は、それぞれ独立して作用できるものが2組あり、共通の単一の取付ブラケット15に取り付けられており、取付ブラケット15は主枠1に取り付けられている。
【0011】
取付ブラケット15は、駆動力伝達スプロケット2の主軸6を支持する軸受7を主枠1に取り付ける締結具8であるボルト・ナットによって、軸受7と共に主枠1に固定されている。従って取付ブラケット15を主枠1に固定するための特別の締結具が不要である。取付ブラケット15は、断面L字型の板部材であって、締結具8で固定するための貫通穴を持ち、主枠1に取り付けられる取付板16と、取付板16から直角に図で下方に延びて緩み防止機構12を支持する支持板17と、取付板16および支持板17の両方に対して中央から直角に立ち上がって、取付板16および支持板17によって画定される空間を2つに仕切る当て板18とを持っている。
【0012】
取付ブラケット15の支持板17には、当て板18の両側にそれぞれ中空円筒形の軸受19が設けられていて、当て板18の両側に緩み防止機構12のそれぞれの構成部品が直接間接に支持されているが、2組の緩み防止機構12の構造は同じで図1において左右対称であるので、ここでは図1において右側の緩み防止機構12についてだけ説明する。
【0013】
取付ブラケット15に設けられた軸受19には軸20が回転可能に挿入されていて、軸20の図1において取付ブラケット15の向こう側、図2において左側の端部にはリンク21の一端が固着されている。リンク21の他端は上方に延びて駆動力伝達スプロケット2よりも高く、駆動力伝達スプロケット2と手摺駆動ローラ4との間で手摺駆動チェーン5に接触できる位置で、アイドルスプロケット13を軸22回りに回転可能に支持している。リンク21が軸20回りに図1において反時計方向に回動すると、アイドルスプロケット13は、この位置で手摺駆動チェーン5を図1において左方向に押圧して手摺駆動チェーン5の緩みを無くす。
【0014】
軸20の図1において取付ブラケット15の手前、図2において右側の端部には、断面がL字型のレバー23が固着されている。レバー23と当て板18との間には、先に説明したバネ14が圧縮状態で設けられていて、レバー23を軸22回りに常時反時計方向に回転させるように偏倚している。バネ14と当て板18との間にはバネ受け24が設けられていて、バネ受け24からはバネ14の中心を軸方向に延びてレバー23を貫通してストッパナット25が嵌められているネジロッド26が設けられている。
【0015】
当て板18とバネ14との間にバネ受け24を配置することにより、それぞれのバネ14のバネカを調整することが可能になる。調整方法としては、バネ受け24と当て板18との間にスペーサを挿入する、バネ受け24の厚さを変える、当て板18に固定されたネジロッド26に対するバネ受け24の取付け位置を変えるなどの方法をとることができる。この構成により、バネ14にて左右のアイドルスプロケット13に個別に押し付け力を作用させることができ、作用力も個別に設定することができる。また、押し付け力の調整も平易な方法で調整可能となる。
【0016】
このように、互いに軸20によって結合され、取付ブラケット15上に軸受19によって回転可能に支持されたリンク21とレバー23とは、バネ14の作用力をアイドルスプロケット13に伝達するリンク機構27(20、21、23)を構成しており、リンク機構27の動作範囲は、バネ14の両端に設けられたバネ受け24、ストッパナット25およびネジロッド26で構成された調整機構28(25、26、27)によって調整することができる。
【0017】
以上説明したように、この発明のマンコンベアの移動手摺駆動装置によれば、緩み防止機構12の構成部品が全て、主枠1に取り付けられる単一の取付ブラケット15によって直接あるいは間接に支持されている。従って、部品を全て一体組付けできるので、全て組付けた状態で取付ブラケット15を主枠1のトラスに固定することにより、自動緩み防止機能を既設のマンコンベアに付加装備することができる。またこの構成により、自動緩み防止機構12をコンパクトで省スペースな構成とすることもでき、取付け性も簡易化を図かることができる。
【0018】
また、緩み防止機構12が2組あり、共に取付ブラケット15に取り付けられており、手摺駆動チェーン5の進行方向に見て駆動力伝達スプロケット2の前後の位置に一組ずつ、手摺駆動チェーン5に対して配置されていて、互いに独立している。従って、自動緩み防止機構12のバネ14によって、左右のアイドルスプロケット13に個別に押し付け力を作用させることができ、作用力も個別に設定することができる。押し付け力の調整も簡易な方法で調整可能となる。
【0019】
また、緩み防止機構12は、バネ14の作用力をアイドルスプロケット13に伝達するリンク機構27を備えている。従って、自動緩み防止機構を省スペースな構成とすることもでき、取付け性も簡易化を図ることができ、押しバネにて左右のアイドルスプロケット13に個別に押し付け力を作用させることができ、作用力も個別に設定することができる。また、押し付け力の調整も簡易な方法で調整可能となる。
【0020】
また、バネ14は、取付ブラケット15とリンク機構27との間に設けられていて、リンク機構27の作動範囲の調節機構が設けられている。従って、緩み防止機能の動作範囲を制限することができる。更に手摺駆動チェーンの伸び状態を把握し、張力調整を実施でき、保守管理の簡易化を図ることもできる。レバー23は主軸6などの他の部品との干渉を起こすことが考えられるため緩み防止機能の動作範囲は制限する必要がある。この制限方法として、当て板18に固定されたネジロッド26にストッパであるストッパナット25を取付け、規定以上レバー23が回転するとストッパナット25に当たりそれ以上の回転を規制することで、緩み防止機能の範囲を制限することができる。また、レバー23とストッパナット25との間の寸法を管理することにより、手摺駆動チェーン5の伸び状態を把握することができる。この管理により、保守員はチェーン張力調整用の張力調整スプロケット11により手摺駆動チェーン5の張力調整を実施することになり、保守管理の簡易化も図れる。
【0021】
更に、取付ブラケット15は、主枠1に取り付けられ得るものである。従って、自動緩み防止機構12を省スペースな構成とすることもでき、取付けも簡易かつ確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明のマンコンベアの移動手摺駆動装置の一実施形態を示す概略平面図である。
【図2】図1に示すマンコンベアの移動手摺駆動装置の概略側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 主枠、2 駆動力伝達スプロケット、3 移動手摺、4 手摺駆動ローラ、 5 手摺駆動チェーン、12 緩み防止機構、13 アイドルスプロケット、14 バネ、15 取付ブラケット、27 リンク機構、28 調節機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンコンベアの主枠に取り付けられ、駆動源からの駆動力を受けて回転する駆動力伝達スプロケットと、
上記主枠に取り付けられ、移動手摺を駆動する手摺駆動ローラと、
上記駆動力伝達スプロケットおよび上記手摺駆動ローラに巻き掛けられていて、上記駆動力伝達スプロケットから上記手摺駆動ローラに駆動力を伝達する手摺駆動チェーンと、
上記手摺駆動チェーン上を相対的に転動し得るアイドルスプロケットをバネにより上記手摺駆動チェーンに押圧させて上記手摺駆動チェーンの緩みを吸収させる緩み防止機構とを備えたマンコンベアの移動手摺駆動装置において、
上記緩み防止機構の構成部品が全て、上記主枠に取り付けられる単一の取付ブラケットによって直接あるいは間接に支持されていることを特徴とするマンコンベアの移動手摺駆動装置。
【請求項2】
上記緩み防止機構が2組あり、共に上記取付ブラケットに取り付けられており、上記手摺駆動チェーンの進行方向に見て上記駆動力伝達スプロケットの前後の位置に一組ずつ、上記手摺駆動チェーンに対して配置されていて、互いに独立していることを特徴とする請求項1に記載のマンコンベアの移動手摺駆動装置。
【請求項3】
上記緩み防止機構が、上記バネの作用力を上記アイドルスプロケットに伝達するリンク機構を備えていることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のマンコンベアの移動手摺駆動装置。
【請求項4】
上記バネが上記取付ブラケットと上記リンク機構との間に設けられていて、上記リンク機構の作動範囲の調節機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のマンコンベアの移動手摺駆動装置。
【請求項5】
上記取付ブラケットが、上記主枠に取り付けられ得るものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のマンコンベアの移動手摺駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−18425(P2010−18425A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182780(P2008−182780)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】