マンホール補修方法
【課題】マンホール補修材とグラウト材とで強固な補修用ライニング層を構成できる、安価に実施可能なマンホール補修方法を提供する。
【解決手段】円柱外面を有する金型55に、ガラス繊維強化ビニルエステル樹脂57をハンドレイアップ法により積層し、ビニルエステル樹脂が未硬化の状態で、隙間形成用リブ39、41に、プレート片49を押し付けて貼り付ける。プレート片49をマンホール補修材1と同一の材質であるガラス繊維強化ビニルエステル樹脂製とする。ビニルエステル樹脂が硬化したら型抜きを行ない、アンカ構造を一体的に有するFRP製のマンホール補修材1を構成する。
【解決手段】円柱外面を有する金型55に、ガラス繊維強化ビニルエステル樹脂57をハンドレイアップ法により積層し、ビニルエステル樹脂が未硬化の状態で、隙間形成用リブ39、41に、プレート片49を押し付けて貼り付ける。プレート片49をマンホール補修材1と同一の材質であるガラス繊維強化ビニルエステル樹脂製とする。ビニルエステル樹脂が硬化したら型抜きを行ない、アンカ構造を一体的に有するFRP製のマンホール補修材1を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマンホール内壁面をライニングして補修するマンホール補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンホールは一般的にコンクリート製であり、長い間には地中管、特に下水管内で発生する硫化水素や雨水中の硫黄酸化物によって内壁面が腐食する。また、マンホールの多くは公道に埋設されているために車両の振動によって内壁面に亀裂が発生する場合もある。マンホールの内壁面の腐食が進行したり、内壁面に亀裂が生じたりすると地下水が地中管内に侵入し、下水管の場合には侵入した地下水により下水量が増大し、下水処理工数の増加をまねく可能性もある。この状態をさらに放置すればマンホールの崩壊のおそれもあるので、適当な時期にマンホールの内壁面を補修しなければならない。
【0003】
マンホールの内壁面の補修方法としては、例えば特許文献1乃至特許文献3に記載されているように、マンホールの内壁面を隙間を有して覆うようにプラスチック製のマンホール補修材をマンホール内に配置し、内壁面とマンホール補修材との間に形成されている隙間に硬化性材料を充填して硬化させ、内壁面に補修用ライニング層を形成するといったものが知られている。ここで使用されるマンホール補修材の外面には、補修材がマンホールの内壁面に接近しすぎたり、接触したりすることを防止し、所定の寸法の隙間が確実に形成されるようにするための突起部又は突部が形成される。
【0004】
このような補修方法を用いれば、内壁面が激しく腐食していたり、内壁面から地下水が漏出していたりする場合にも、十分な補修効果を有し、しかも内面が平滑である補修用ライニング層を短時間で形成することが可能となる。
【0005】
ところで、マンホールの内壁面とマンホール補修材との間の隙間に充填される硬化性材料として、エポキシ樹脂等の樹脂材料を用いる場合には、樹脂材料の優れた接着性により、プラスチック製のマンホール補修材は、マンホールの内壁面に、硬化した樹脂材料を介して強固に接着される。したがって、マンホール補修材と樹脂材料により、しっかりとした補修用ライニング層が形成されることとなる。しかしながら、樹脂材料は高価であり、硬化性材料として樹脂材料を用いると、補修コストが高くなってしまう。補修コストを下げようとすれば、硬化性材料としてセメント系のグラウト材を用いることとなるが、セメント系のグラウト材は接着性が高くないので、プラスチック製のマンホール補修材が硬化しているグラウト材から簡単に剥がれてしまい、補修効果が早期に低下するおそれがある。
【0006】
硬化性材料又は充填材としてグラウト材を用い、しかもマンホール補修材をグラウト材に強固に接着するためには、例えば特許文献4乃至6に記載されているように、マンホール補修材の外面側に、抜け止め効果をもってグラウト材に埋め込まれる突起(隙間形成用の突起部又は突部である場合もある)を形成しておくことが考えられる。しかしながら、このような抜け止め機能を持った突起を有するマンホール補修材の形成工程は煩雑であり、したがって、こういった補修材を用いてマンホールの補修を行なうと、結果的にやはりコスト高となってしまう。
【0007】
【特許文献1】特公平7−23618号公報
【特許文献2】特許第2641713号公報
【特許文献3】特許第2687096号公報
【特許文献4】特公平7−115365号公報
【特許文献5】特開平8−158389号公報
【特許文献6】特開2001−248177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、マンホール補修材とグラウト材とで強固な補修用ライニング層を構成できる、安価に実施可能なマンホール補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するための本発明のマンホール補修方法は、マンホール内壁面をライニングして補修するマンホール補修方法であって、ライニング用のマンホール補修材を成形するための成形型に積層されている、補強母材に液状の硬化性樹脂を含浸させた補修材用成形材を準備する第1の工程と、硬化性樹脂が半硬化状態となった段階で、あるいは硬化性樹脂が未硬化の状態で、補修材用成形材の外面に、この補修材用成形材と同一の材質のアンカ部材を押し付けて貼り付ける第2の工程と、未硬化の硬化性樹脂を硬化させ、補修材用成形材を成形型から外して、外面にアンカ部材が固定されたマンホール補修材を構成又は準備する第3の工程と、マンホール内壁面を隙間を有して覆うように、マンホール補修材をマンホール内に配置する第4の工程と、マンホール内壁面及びマンホール補修材の間の隙間にグラウト材を注入して硬化させ、アンカ部材がグラウト材に抜け止め状態で埋め込まれた補修用ライニング層を形成する第5の工程と、を備えるものである。補修用ライニング層はマンホール補修材と硬化したグラウト材とにより形成される。アンカ部材の抜け止め効果によって、マンホール補修材とグラウト材はしっかりと接着又は固着し、マンホール内壁面に強固な補修用ライニング層が形成される。しかも、ここで使用するマンホール補修材のアンカ構造は、補修材用成形材の未硬化の硬化性樹脂の接着性を利用し、マンホール補修材の成形過程で、特別の接着材を用いることなく、基本的には補修材用成形材にアンカ部材を押し付けて貼り付けるだけで形成されるものなので、簡単且つ安価にマンホール補修材を構成することができる。また、アンカ部材(予め成形された成形体)は、補修材用成形材と同一の材質であるから、補修材用成形材との接着性に優れ、マンホール補修材に強固に固定されることとなる。ここで、補修材用成形材と同一の材質であるとは、アンカ部材が補修材用成形材と同一の樹脂材から形成されていること、あるいは、補修材用成形材と同一の樹脂材及び補強母材から形成されていることを意味する。グラウト材はセメントを主体とした裏込材であり、必要に応じて樹脂などが混合される。マンホール補修材は、例えば、マンホール内壁面に沿って全周にわたって配置できるような又はマンホール内壁面を覆うような形状に形成されるものであり、例えば、筒状体又は環状体として形成することができる。
【0010】
補修材用成形材の外面に隙間形成用突部を形成する場合には、この隙間形成用突部にアンカ部材としてのプレート片を貼り付け、かつ、このプレート片が隙間形成用突部の周辺位置、例えば下側周辺位置まで延びるようにして、アンカ構造を構成することができる。隙間形成用突部を越えて延びるプレート片の部分と隙間形成用突部の周辺部分との間にグラウト材が入り込んで硬化することにより、プレート片は抜け止め効果を有することとなる。
【0011】
また、マンホール補修材の外面に沿って延びる貫通孔が形成されるように、マンホール補修材の外面にアンカ部材を固定してアンカ構造を構成することができる。貫通孔にグラウト材が入り込んで硬化することにより、アンカ部材は抜け止め効果を有することとなる。
【0012】
なお、マンホール補修材の外面全体に、未硬化の常温硬化性樹脂材からなる接着材を塗布して接着層を形成し、この接着層(未硬化)に粒状物を撒くようにして付着させ、接着層を硬化させることにより、マンホール補修材の外面に粒状物層を形成し、グラウト材とマンホール補修材との接着強度が増すように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマンホール補修方法は、簡単に実施できるものでありながら、強度の高い補修用ライニング層の形成に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明に係るマンホール補修方法で用いられるマンホール補修材の斜視図である。
【0016】
プラスチック製の円筒状体であり、約1.3mmの厚さを有するマンホール補修材1、3は、積み重ねられてマンホール内壁面5の直壁部7を覆うものであり(図3参照)、上端部分に円筒状部分9を備えた斜円錐台状部(より具体的には、一方の側辺及び下底のなす角度が直角である台形の断面を有する円錐台状部)11及び下端部の円筒状部13から一体的に形成され、やはり約1.3mmの厚さを有するプラスチック製のマンホール補修材15は、マンホール補修材3上に積まれてマンホール内壁面5の斜壁部17を覆うものである(図3参照)。マンホール補修材1、3、15のそれぞれは、周方向1箇所が全長(縦方向全長)にわたって切断されていて、それぞれの切断箇所19、21、23の両端部19a・19b、21a・21b、23a・23bは重なった状態となっている(図はマンホール内壁面5に押し付けた状態を示す)。切断箇所19、21、23の外側端部19b,21b,23bは、周方向の幅約100mmにわたって外方向に膨らむように形成されているので、外側端部19b,21b,23bの内径は内側端部19a、21a、23aを収めるように大径に形成され、したがって切断箇所19、21、23の内側には重なりによる段差は生じていない。重なり幅は通常80mm乃至100mmであるが、マンホール内壁面5の腐食が激しい場合には、マンホール補修材1、3、15がより大きく拡径されるので、重なり幅は30mm程度になることもある。この場合には、切断個所19、21、23の内側に、縦方向に延びる細い凹部が形成されることとなる。
【0017】
マンホール補修材1、3の上端部25、27は外方向に拡がるように構成されているので(外方向に拡がるように構成されている上端部25、27の高さは約100mmである)、上端部25、27の内径は、マンホール補修材3の下端部29、マンホール補修材15の円筒状部13(下端部)を収めるように大径に形成されていて、したがって積み重ね箇所(嵌め込み箇所)の内側には重なりによる段差は生じない。マンホール補修材1、3の上端部25、27にはまた、マンホール補修材3、15の外側端部21b、23bを収容するための外側への膨らみ31、33が形成されている。なお、マンホール補修材1の下端は、マンホールの底部外縁に沿うようなプロフィールを有するように、かつ、下水管口35(図3参照)上側に沿うような凹んだ管口部37を有するように加工されている。
【0018】
マンホール補修材1、3、15の外周面には、外側に膨らませることにより内側が凹状となった多数の小さな突部である隙間形成用リブ39、41が設けられている(マンホール補修材15にはリブ41は形成されていない)。リブ39の外側への突出量(高さ)は約10mmであり、リブ41の外側への突出量は約3mmであるが、切断箇所19、21、23の外側端部19b,21b,23b上に設けられたリブ39の外側への突出量は約7mmとすることが好ましい。マンホール内壁面5とマンホール補修材1、3、15との隙間は5mm以上20m以下であるのが効果的である。なぜならば、隙間が5mm未満であるとグラウト材を充填しにくく、空気留まりが発生したり、グラウト材が下端まで行き届かないおそれもあるからであり、逆に20mmを超えると、補修後のマンホール内が狭くなりすぎるおそれがあるからである。なお、内面の平滑性を重視する場合には、リブ39、41の内側凹部や切断個所19、21、23の内側に生じた凹部を硬化性樹脂などで埋める仕上げ処理を行うこととなる。また、図中43、45、47は吊り下げ孔である。
【0019】
隙間形成用リブ39、41はそれぞれ、背の低い角錐台状に形成され、この隙間形成用リブ39、41の一部のものには、アンカ部材が固定されている。アンカ部材はプレート片49として形成されていて、このプレート片49の一端側は隙間形成用リブ39、41の外面に固定用片51で押えられて固定され、他端側は、隙間形成用リブ39、41を越えて隙間形成用リブ39、41の下側周辺位置まで延びている。したがって、プレート片49の他端側(下端側)とマンホール補修材1、3、15の外面との間には、隙間凹部(グラウト材が入り込んで硬化する隙間又は空間)53(図7参照)が形成されることとなる。
【0020】
図2はマンホール補修材1の形成工程を説明するための図である。
【0021】
マンホール補修材1を形成するにはまず、円柱外面を有する金型(金型の外面は補修すべきマンホール内壁面5と対応するように形成され、かつ、リブ39等の形成用突部などを有している)55に、例えばガラス繊維強化ビニルエステル樹脂(補修材用成形材)57をハンドレイアップ法により積層する(図2a)。次に、ビニルエステル樹脂が未硬化の状態で(具体的には半硬化状態となったときに)、ガラス繊維強化ビニルエステル樹脂57の隙間形成用リブ39、41(隙間形成用リブ39、41として成形されるべき部分)に、プレート片49を押し付けて貼り付ける(図2b)。ここでは、プレート片49の固定強度を高めるために、プレート片49を押えるように固定用片51をガラス繊維強化ビニルエステル樹脂57の外面に貼り付けている。プレート片49はマンホール補修材1と同一の材質であって、ガラス繊維強化ビニルエステル樹脂製である。固定用片51もマンホール補修材1と同一の材質であって、ガラス繊維強化ビニルエステル樹脂製であるが、ビニルエステル樹脂は未硬化であり、貼り付け時には可撓性を有している。そして、ビニルエステル樹脂が硬化して補修材用成形材57及び固定用片51が成形されたら、型抜きを行ない、得られた円筒状体の周方向1箇所を縦方向に切断し、かつ、下端を所定のプロフィールに加工して、アンカ構造を一体的に有するFRP製のマンホール補修材1を構成する(図1)。マンホール補修材3、15も、マンホール補修材1と同様に構成するが、マンホール補修材15の場合には、上端及び下端に円筒外面を備えた斜円錐台外面を有する金型(金型の外面は補修すべきマンホール内壁面5と対応するように形成され、かつ、リブ39等の形成用突部などを有している)を使用する。なお、切断箇所19、21、23は成形時に形成してもよい。
【0022】
マンホール補修材1、3、15の成形材料としては、ビニルエステルの他に不飽和ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリアミド等の熱可塑性プラスチックや、アクリル、エポキシ等の熱硬化性プラスチックを用いることもできる。いずれの材料を用いる場合にも、マンホール補修材1、3、15は、曲げ弾性率が少なくとも31.6MPaであるような(曲げ弾性率が31.6MPa以上であるような)強度を有する必要がある(なお、本明細書では、曲げ弾性率はJIS K 6911(1995)に準拠して測定されている)。
【0023】
図3及び図4はマンホール内へのマンホール補修材1の配置過程を説明するための図であり、図3はマンホール補修材1を入れる前のマンホール内を示す図、図4はマンホール補修材1をマンホール内に入れ、マンホール内壁面5に押し付けてマンホール内に配置した状態を示す図である。
【0024】
マンホールの内壁面5は高圧水を吹き付けられて洗浄されているが、汚れが激しい場合には回転ブラシによる洗浄も行われる。そしてステップ58が切断されてから、マンホール補修材1が、例えば紐などで縛ることにより図1の仮想線で示すような態様でオーバーラップ状態となるように縮径され、マンホールの入口59からマンホール内に入れられる。挿入作業は、マンホール補修材1の吊り下げ孔43に、吊り下げ紐61を接続してこのマンホール補修材1を下降させることにより行われる(図3)。マンホール内に入れられたマンホール補修材1は、オーバーラップ状態を解除され、底部上に、底部外縁に沿って、かつ、管口部37が下水管口35に一致するように載せられる。
【0025】
マンホール補修材1のオーバーラップ状態を解除した後に、拡径具63をマンホール補修材1内に入れて拡径工程を行う。拡径具63は、例えば、一箇所切断されたばね鋼製のリング体の径をラック−ピニオン機構(図示せず)を用いて変化させることができるように構成したもので、この拡径具63によって、マンホール補修材1のリブ39、41がマンホール内壁面5の直壁部7に押し付けられるまで内面を押圧してマンホール補修材1を拡径させる(図4参照)。
【0026】
次に、マンホール補修材1の切断箇所19を2液硬化型シリコーン樹脂65でシールするとともに、マンホール補修材1の管口部37と下水管口35との間、およびマンホール補修材1の下端と底部外縁との間をそれぞれ水中硬化エポキシパテ67でシールする。そして、マンホール補修材1の外側の隙間に少量の止水用硬化性樹脂(図示せず)を注入して硬化させ、マンホール補修材1の下側に大きな液圧に耐え得る十分な止水構造を構成する。
【0027】
図5は他のマンホール補修材3、15をマンホール内に入れ、マンホール内壁面5に押し付けてマンホール内に配置した状態を示す図である。
【0028】
マンホール補修材3、15の曲げ弾性率は約169MPaであり(マンホール補修材1の曲げ弾性率も約169MPa)、マンホール補修材1と同様にオーバーラップ状態となるように縮径され、吊り下げ孔45、47(図1参照)に接続された吊り下げ紐61(図3参照)に吊り下げられてマンホール内に入れられる。マンホール内に挿入されたマンホール補修材3はオーバーラップ状態を解除され、下端部29がマンホール補修材1の上端部25内に収まるように、かつ、下端部29のプレート片49がマンホール補修材1の上端部25外側に引っかかるように積み重ねられる。続いてマンホール補修材3内に拡径具63を入れ、マンホール補修材1の場合と同様にしてリブ39、41(リブ39、41上の固定用片51の場合もある)がマンホール内壁面5の直壁部7に押し付けられるまでマンホール補修材3を拡径させ、切断箇所21(図1参照)及び積み重ね箇所69を2液硬化型シリコーン樹脂71でシールする。次ぎにマンホール補修材15がマンホール内に入れられ、円筒状部13のプレート片49がマンホール補修材3の上端部27外側に引っかかり、円筒状部13が上端部27内に収まってから、リブ39(リブ39上の固定用片51の場合もある)がマンホール内壁面5の斜壁部17及び直壁部7上端に押し付けられるまで拡径具63によりマンホール補修材15を拡径させる。マンホール補修材15の拡径に用いられる拡径具63は、外面がマンホール補修材15の斜円錐台状部に対応するように形成されている。そして、切断箇所23及び積み重ね箇所73を2液硬化型シリコーン樹脂75でシールしてマンホール補修材1、3、15の設置又は配置を完了する。積み重ねにあたっては、切断箇所21が膨らみ31(図1参照)に、切断箇所23が膨らみ33(図1参照)に一致するように作業を遂行することとなる。
【0029】
図6はグラウト材を注入して充填し、補修作業を完了した状態を示す図である。
【0030】
マンホール補修材1、3、15の設置完了後に、グラウト材(流動性を有するグラウト材)77をマンホール補修材1、3、15とマンホール内壁面5との隙間79(図5参照)全体に上方から充填して硬化させ、補修用ライニング層を構成する。
【0031】
グラウト材77が硬化したら、拡径具63を取り外し、ステップ(図示せず)を新たに取り付ける。そして、外観仕上げ等を行って補修作業を完了する。グラウト材77は図7に示すように、プレート片49の下端側とマンホール補修材1、3、15の外面との間の隙間凹部53内にも入り込んで硬化し、マンホール補修材1、3、15とともに効果的な補修用ライニング層を構成する。すなわち、グラウト材77は、プレート片49の下端側の裏側53に入り込んでいる。
【0032】
図8は別のマンホール補修材を示す斜視図、図9は別のマンホール補修材の製造工程を説明するための図、図10は別のアンカ部材を示す図である。
【0033】
別のマンホール補修材81は、リブ39、41、プレート片49及び固定用片51を備えず、また、その代りに別のアンカ部材が設けられているが、その他の構成についてはマンホール補修材1と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
別のマンホール補修材81は、外面に固定された、断面半円状の全長にわたる溝83を有する断面半円状(半割筒状)のアンカ部材85を備えていて、アンカ部材85の半円状の溝83とマンホール補修材81の外面との間には、マンホール補修材81の外面に沿って縦方向に延びる貫通孔87が形成されている。このようなマンホール補修材81を形成するにはまず、円柱外面を有する金型(金型の外面は補修すべきマンホール内壁面5と対応するように形成されている)89に、例えばガラス繊維強化ビニルエステル樹脂(補修材用成形材)91をハンドレイアップ法により積層する(図9a)。次に、ビニルエステル樹脂が未硬化の状態で(具体的には半硬化状態となったときに)、外面の適所にアンカ部材85を押し付けて貼り付ける(図9b)。アンカ部材85はマンホール補修材81と同一の材質であって、ガラス繊維強化ビニルエステル樹脂製である。また、アンカ部材85は、必要に応じて、10mmの高さのものと7mmの高さのものとが用いられる。そして、ビニルエステル樹脂が硬化して補修材用成形材91が成形されたら、型抜きを行ない、得られた円筒状体の周方向1箇所を縦方向に切断し、かつ、下端を所定のプロフィールに加工して、アンカ部分85を一体的に有するFRP製のマンホール補修材81を構成する(図8)。別のマンホール補修材81を用いる場合には、マンホール補修材3、15も、リブ39、41、プレート片49及び固定用片51を備えず、また、その代りに別のアンカ部材85が設けられるように変更される。そして、マンホール補修材3、15を変更したマンホール補修材も、別のマンホール補修材81と同様にして製造される。なお、図10に示すように、アンカ部材として、断面三角形状の全長にわたる溝93を有する断面三角形状のアンカ部材95(図10a)、または、断面四角形状の全長にわたる溝97を有する断面四角形状のアンカ部材99(図10b)を用いることもできる。アンカ部材95、99は、アンカ部材85と同一の材質であり、溝93、97を有することにより、アンカ部材85と同様に、マンホール補修材の外面に沿って縦方向に延びる貫通孔を形成することとなる。アンカ部材85、95、99は、貫通孔にグラウト材が入り込んで硬化することにより、抜け止め効果を有することとなる。そして、アンカ部材85、95、99は、リブ39、41と同じように、隙間形成用突部として機能する。
【0035】
図11はさらに別のマンホール補修材を示す斜視図である。
【0036】
さらに別のマンホール補修材101は、別のマンホール補修材81の外面に粒状物層(ここでは3号(平均粒径1.2〜0.6mm)又は4号(平均粒径0.6〜0.3mm)の珪砂を用いた珪砂層)103を固着して構成されたものなので、マンホール補修材81部分の説明は省略する。さらに別のマンホール補修材101は、図12に示すように、アンカ部材85を一体的に有するFRP製のマンホール補修材81を得た後に(図8参照)、マンホール補修材81を平板状に展開し、外面全体にエポキシ樹脂常温硬化性接着材105をローラや刷毛などで塗布し、接着層107を形成する(図12a)。続いて、接着層107が未硬化のうちに、3号又は4号珪砂109を接着層107上に全体的に撒いて珪砂層103を形成する(図12b)。そして、接着層107が硬化し、珪砂層103が接着層107に固着されることによって図11のマンホール補修材101が形成される。さらに別のマンホール補修材101を用いる場合には、マンホール補修材3、15も、マンホール補修材101と同様の態様で変更される。そして、マンホール補修材3、15を変更したマンホール補修材も、さらに別のマンホール補修材101と同様の方法で製造される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明したように、本発明のマンホール補修方法はマンホールの内壁面の補修に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るマンホール補修方法で用いられるマンホール補修材の斜視図である。
【図2】マンホール補修材の形成工程を説明する図である。
【図3】マンホール内へのマンホール補修材の配置過程を説明するための図であり、マンホール補修材を入れる前のマンホールを示す図である。
【図4】マンホール内へのマンホール補修材の配置過程を説明するための図であり、マンホール補修材をマンホール内に入れ、マンホール内壁面に押し付けてマンホール内に配置した状態を示す図である。
【図5】他のマンホール補修材をマンホール内に入れ、マンホール内壁面に押し付けてマンホール内に配置した状態を示す図である。
【図6】グラウト材を注入して充填し、補修作業を完了した状態を示す図である
【図7】補修用ライニング層を示す図である。
【図8】別のマンホール補修材を示す斜視図である。
【図9】別のマンホール補修材の製造工程を説明するための図である。
【図10】別のアンカ部材を示す図である。
【図11】さらに別のマンホール補修材を示す斜視図である。
【図12】さらに別のマンホール補修材の製造過程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0039】
1、3、15 マンホール補修材
5 マンホール内壁面
49 プレート片
77 グラウト材
79 隙間
85、95、99 アンカ部材
【技術分野】
【0001】
本発明はマンホール内壁面をライニングして補修するマンホール補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンホールは一般的にコンクリート製であり、長い間には地中管、特に下水管内で発生する硫化水素や雨水中の硫黄酸化物によって内壁面が腐食する。また、マンホールの多くは公道に埋設されているために車両の振動によって内壁面に亀裂が発生する場合もある。マンホールの内壁面の腐食が進行したり、内壁面に亀裂が生じたりすると地下水が地中管内に侵入し、下水管の場合には侵入した地下水により下水量が増大し、下水処理工数の増加をまねく可能性もある。この状態をさらに放置すればマンホールの崩壊のおそれもあるので、適当な時期にマンホールの内壁面を補修しなければならない。
【0003】
マンホールの内壁面の補修方法としては、例えば特許文献1乃至特許文献3に記載されているように、マンホールの内壁面を隙間を有して覆うようにプラスチック製のマンホール補修材をマンホール内に配置し、内壁面とマンホール補修材との間に形成されている隙間に硬化性材料を充填して硬化させ、内壁面に補修用ライニング層を形成するといったものが知られている。ここで使用されるマンホール補修材の外面には、補修材がマンホールの内壁面に接近しすぎたり、接触したりすることを防止し、所定の寸法の隙間が確実に形成されるようにするための突起部又は突部が形成される。
【0004】
このような補修方法を用いれば、内壁面が激しく腐食していたり、内壁面から地下水が漏出していたりする場合にも、十分な補修効果を有し、しかも内面が平滑である補修用ライニング層を短時間で形成することが可能となる。
【0005】
ところで、マンホールの内壁面とマンホール補修材との間の隙間に充填される硬化性材料として、エポキシ樹脂等の樹脂材料を用いる場合には、樹脂材料の優れた接着性により、プラスチック製のマンホール補修材は、マンホールの内壁面に、硬化した樹脂材料を介して強固に接着される。したがって、マンホール補修材と樹脂材料により、しっかりとした補修用ライニング層が形成されることとなる。しかしながら、樹脂材料は高価であり、硬化性材料として樹脂材料を用いると、補修コストが高くなってしまう。補修コストを下げようとすれば、硬化性材料としてセメント系のグラウト材を用いることとなるが、セメント系のグラウト材は接着性が高くないので、プラスチック製のマンホール補修材が硬化しているグラウト材から簡単に剥がれてしまい、補修効果が早期に低下するおそれがある。
【0006】
硬化性材料又は充填材としてグラウト材を用い、しかもマンホール補修材をグラウト材に強固に接着するためには、例えば特許文献4乃至6に記載されているように、マンホール補修材の外面側に、抜け止め効果をもってグラウト材に埋め込まれる突起(隙間形成用の突起部又は突部である場合もある)を形成しておくことが考えられる。しかしながら、このような抜け止め機能を持った突起を有するマンホール補修材の形成工程は煩雑であり、したがって、こういった補修材を用いてマンホールの補修を行なうと、結果的にやはりコスト高となってしまう。
【0007】
【特許文献1】特公平7−23618号公報
【特許文献2】特許第2641713号公報
【特許文献3】特許第2687096号公報
【特許文献4】特公平7−115365号公報
【特許文献5】特開平8−158389号公報
【特許文献6】特開2001−248177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、マンホール補修材とグラウト材とで強固な補修用ライニング層を構成できる、安価に実施可能なマンホール補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するための本発明のマンホール補修方法は、マンホール内壁面をライニングして補修するマンホール補修方法であって、ライニング用のマンホール補修材を成形するための成形型に積層されている、補強母材に液状の硬化性樹脂を含浸させた補修材用成形材を準備する第1の工程と、硬化性樹脂が半硬化状態となった段階で、あるいは硬化性樹脂が未硬化の状態で、補修材用成形材の外面に、この補修材用成形材と同一の材質のアンカ部材を押し付けて貼り付ける第2の工程と、未硬化の硬化性樹脂を硬化させ、補修材用成形材を成形型から外して、外面にアンカ部材が固定されたマンホール補修材を構成又は準備する第3の工程と、マンホール内壁面を隙間を有して覆うように、マンホール補修材をマンホール内に配置する第4の工程と、マンホール内壁面及びマンホール補修材の間の隙間にグラウト材を注入して硬化させ、アンカ部材がグラウト材に抜け止め状態で埋め込まれた補修用ライニング層を形成する第5の工程と、を備えるものである。補修用ライニング層はマンホール補修材と硬化したグラウト材とにより形成される。アンカ部材の抜け止め効果によって、マンホール補修材とグラウト材はしっかりと接着又は固着し、マンホール内壁面に強固な補修用ライニング層が形成される。しかも、ここで使用するマンホール補修材のアンカ構造は、補修材用成形材の未硬化の硬化性樹脂の接着性を利用し、マンホール補修材の成形過程で、特別の接着材を用いることなく、基本的には補修材用成形材にアンカ部材を押し付けて貼り付けるだけで形成されるものなので、簡単且つ安価にマンホール補修材を構成することができる。また、アンカ部材(予め成形された成形体)は、補修材用成形材と同一の材質であるから、補修材用成形材との接着性に優れ、マンホール補修材に強固に固定されることとなる。ここで、補修材用成形材と同一の材質であるとは、アンカ部材が補修材用成形材と同一の樹脂材から形成されていること、あるいは、補修材用成形材と同一の樹脂材及び補強母材から形成されていることを意味する。グラウト材はセメントを主体とした裏込材であり、必要に応じて樹脂などが混合される。マンホール補修材は、例えば、マンホール内壁面に沿って全周にわたって配置できるような又はマンホール内壁面を覆うような形状に形成されるものであり、例えば、筒状体又は環状体として形成することができる。
【0010】
補修材用成形材の外面に隙間形成用突部を形成する場合には、この隙間形成用突部にアンカ部材としてのプレート片を貼り付け、かつ、このプレート片が隙間形成用突部の周辺位置、例えば下側周辺位置まで延びるようにして、アンカ構造を構成することができる。隙間形成用突部を越えて延びるプレート片の部分と隙間形成用突部の周辺部分との間にグラウト材が入り込んで硬化することにより、プレート片は抜け止め効果を有することとなる。
【0011】
また、マンホール補修材の外面に沿って延びる貫通孔が形成されるように、マンホール補修材の外面にアンカ部材を固定してアンカ構造を構成することができる。貫通孔にグラウト材が入り込んで硬化することにより、アンカ部材は抜け止め効果を有することとなる。
【0012】
なお、マンホール補修材の外面全体に、未硬化の常温硬化性樹脂材からなる接着材を塗布して接着層を形成し、この接着層(未硬化)に粒状物を撒くようにして付着させ、接着層を硬化させることにより、マンホール補修材の外面に粒状物層を形成し、グラウト材とマンホール補修材との接着強度が増すように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマンホール補修方法は、簡単に実施できるものでありながら、強度の高い補修用ライニング層の形成に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明に係るマンホール補修方法で用いられるマンホール補修材の斜視図である。
【0016】
プラスチック製の円筒状体であり、約1.3mmの厚さを有するマンホール補修材1、3は、積み重ねられてマンホール内壁面5の直壁部7を覆うものであり(図3参照)、上端部分に円筒状部分9を備えた斜円錐台状部(より具体的には、一方の側辺及び下底のなす角度が直角である台形の断面を有する円錐台状部)11及び下端部の円筒状部13から一体的に形成され、やはり約1.3mmの厚さを有するプラスチック製のマンホール補修材15は、マンホール補修材3上に積まれてマンホール内壁面5の斜壁部17を覆うものである(図3参照)。マンホール補修材1、3、15のそれぞれは、周方向1箇所が全長(縦方向全長)にわたって切断されていて、それぞれの切断箇所19、21、23の両端部19a・19b、21a・21b、23a・23bは重なった状態となっている(図はマンホール内壁面5に押し付けた状態を示す)。切断箇所19、21、23の外側端部19b,21b,23bは、周方向の幅約100mmにわたって外方向に膨らむように形成されているので、外側端部19b,21b,23bの内径は内側端部19a、21a、23aを収めるように大径に形成され、したがって切断箇所19、21、23の内側には重なりによる段差は生じていない。重なり幅は通常80mm乃至100mmであるが、マンホール内壁面5の腐食が激しい場合には、マンホール補修材1、3、15がより大きく拡径されるので、重なり幅は30mm程度になることもある。この場合には、切断個所19、21、23の内側に、縦方向に延びる細い凹部が形成されることとなる。
【0017】
マンホール補修材1、3の上端部25、27は外方向に拡がるように構成されているので(外方向に拡がるように構成されている上端部25、27の高さは約100mmである)、上端部25、27の内径は、マンホール補修材3の下端部29、マンホール補修材15の円筒状部13(下端部)を収めるように大径に形成されていて、したがって積み重ね箇所(嵌め込み箇所)の内側には重なりによる段差は生じない。マンホール補修材1、3の上端部25、27にはまた、マンホール補修材3、15の外側端部21b、23bを収容するための外側への膨らみ31、33が形成されている。なお、マンホール補修材1の下端は、マンホールの底部外縁に沿うようなプロフィールを有するように、かつ、下水管口35(図3参照)上側に沿うような凹んだ管口部37を有するように加工されている。
【0018】
マンホール補修材1、3、15の外周面には、外側に膨らませることにより内側が凹状となった多数の小さな突部である隙間形成用リブ39、41が設けられている(マンホール補修材15にはリブ41は形成されていない)。リブ39の外側への突出量(高さ)は約10mmであり、リブ41の外側への突出量は約3mmであるが、切断箇所19、21、23の外側端部19b,21b,23b上に設けられたリブ39の外側への突出量は約7mmとすることが好ましい。マンホール内壁面5とマンホール補修材1、3、15との隙間は5mm以上20m以下であるのが効果的である。なぜならば、隙間が5mm未満であるとグラウト材を充填しにくく、空気留まりが発生したり、グラウト材が下端まで行き届かないおそれもあるからであり、逆に20mmを超えると、補修後のマンホール内が狭くなりすぎるおそれがあるからである。なお、内面の平滑性を重視する場合には、リブ39、41の内側凹部や切断個所19、21、23の内側に生じた凹部を硬化性樹脂などで埋める仕上げ処理を行うこととなる。また、図中43、45、47は吊り下げ孔である。
【0019】
隙間形成用リブ39、41はそれぞれ、背の低い角錐台状に形成され、この隙間形成用リブ39、41の一部のものには、アンカ部材が固定されている。アンカ部材はプレート片49として形成されていて、このプレート片49の一端側は隙間形成用リブ39、41の外面に固定用片51で押えられて固定され、他端側は、隙間形成用リブ39、41を越えて隙間形成用リブ39、41の下側周辺位置まで延びている。したがって、プレート片49の他端側(下端側)とマンホール補修材1、3、15の外面との間には、隙間凹部(グラウト材が入り込んで硬化する隙間又は空間)53(図7参照)が形成されることとなる。
【0020】
図2はマンホール補修材1の形成工程を説明するための図である。
【0021】
マンホール補修材1を形成するにはまず、円柱外面を有する金型(金型の外面は補修すべきマンホール内壁面5と対応するように形成され、かつ、リブ39等の形成用突部などを有している)55に、例えばガラス繊維強化ビニルエステル樹脂(補修材用成形材)57をハンドレイアップ法により積層する(図2a)。次に、ビニルエステル樹脂が未硬化の状態で(具体的には半硬化状態となったときに)、ガラス繊維強化ビニルエステル樹脂57の隙間形成用リブ39、41(隙間形成用リブ39、41として成形されるべき部分)に、プレート片49を押し付けて貼り付ける(図2b)。ここでは、プレート片49の固定強度を高めるために、プレート片49を押えるように固定用片51をガラス繊維強化ビニルエステル樹脂57の外面に貼り付けている。プレート片49はマンホール補修材1と同一の材質であって、ガラス繊維強化ビニルエステル樹脂製である。固定用片51もマンホール補修材1と同一の材質であって、ガラス繊維強化ビニルエステル樹脂製であるが、ビニルエステル樹脂は未硬化であり、貼り付け時には可撓性を有している。そして、ビニルエステル樹脂が硬化して補修材用成形材57及び固定用片51が成形されたら、型抜きを行ない、得られた円筒状体の周方向1箇所を縦方向に切断し、かつ、下端を所定のプロフィールに加工して、アンカ構造を一体的に有するFRP製のマンホール補修材1を構成する(図1)。マンホール補修材3、15も、マンホール補修材1と同様に構成するが、マンホール補修材15の場合には、上端及び下端に円筒外面を備えた斜円錐台外面を有する金型(金型の外面は補修すべきマンホール内壁面5と対応するように形成され、かつ、リブ39等の形成用突部などを有している)を使用する。なお、切断箇所19、21、23は成形時に形成してもよい。
【0022】
マンホール補修材1、3、15の成形材料としては、ビニルエステルの他に不飽和ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリアミド等の熱可塑性プラスチックや、アクリル、エポキシ等の熱硬化性プラスチックを用いることもできる。いずれの材料を用いる場合にも、マンホール補修材1、3、15は、曲げ弾性率が少なくとも31.6MPaであるような(曲げ弾性率が31.6MPa以上であるような)強度を有する必要がある(なお、本明細書では、曲げ弾性率はJIS K 6911(1995)に準拠して測定されている)。
【0023】
図3及び図4はマンホール内へのマンホール補修材1の配置過程を説明するための図であり、図3はマンホール補修材1を入れる前のマンホール内を示す図、図4はマンホール補修材1をマンホール内に入れ、マンホール内壁面5に押し付けてマンホール内に配置した状態を示す図である。
【0024】
マンホールの内壁面5は高圧水を吹き付けられて洗浄されているが、汚れが激しい場合には回転ブラシによる洗浄も行われる。そしてステップ58が切断されてから、マンホール補修材1が、例えば紐などで縛ることにより図1の仮想線で示すような態様でオーバーラップ状態となるように縮径され、マンホールの入口59からマンホール内に入れられる。挿入作業は、マンホール補修材1の吊り下げ孔43に、吊り下げ紐61を接続してこのマンホール補修材1を下降させることにより行われる(図3)。マンホール内に入れられたマンホール補修材1は、オーバーラップ状態を解除され、底部上に、底部外縁に沿って、かつ、管口部37が下水管口35に一致するように載せられる。
【0025】
マンホール補修材1のオーバーラップ状態を解除した後に、拡径具63をマンホール補修材1内に入れて拡径工程を行う。拡径具63は、例えば、一箇所切断されたばね鋼製のリング体の径をラック−ピニオン機構(図示せず)を用いて変化させることができるように構成したもので、この拡径具63によって、マンホール補修材1のリブ39、41がマンホール内壁面5の直壁部7に押し付けられるまで内面を押圧してマンホール補修材1を拡径させる(図4参照)。
【0026】
次に、マンホール補修材1の切断箇所19を2液硬化型シリコーン樹脂65でシールするとともに、マンホール補修材1の管口部37と下水管口35との間、およびマンホール補修材1の下端と底部外縁との間をそれぞれ水中硬化エポキシパテ67でシールする。そして、マンホール補修材1の外側の隙間に少量の止水用硬化性樹脂(図示せず)を注入して硬化させ、マンホール補修材1の下側に大きな液圧に耐え得る十分な止水構造を構成する。
【0027】
図5は他のマンホール補修材3、15をマンホール内に入れ、マンホール内壁面5に押し付けてマンホール内に配置した状態を示す図である。
【0028】
マンホール補修材3、15の曲げ弾性率は約169MPaであり(マンホール補修材1の曲げ弾性率も約169MPa)、マンホール補修材1と同様にオーバーラップ状態となるように縮径され、吊り下げ孔45、47(図1参照)に接続された吊り下げ紐61(図3参照)に吊り下げられてマンホール内に入れられる。マンホール内に挿入されたマンホール補修材3はオーバーラップ状態を解除され、下端部29がマンホール補修材1の上端部25内に収まるように、かつ、下端部29のプレート片49がマンホール補修材1の上端部25外側に引っかかるように積み重ねられる。続いてマンホール補修材3内に拡径具63を入れ、マンホール補修材1の場合と同様にしてリブ39、41(リブ39、41上の固定用片51の場合もある)がマンホール内壁面5の直壁部7に押し付けられるまでマンホール補修材3を拡径させ、切断箇所21(図1参照)及び積み重ね箇所69を2液硬化型シリコーン樹脂71でシールする。次ぎにマンホール補修材15がマンホール内に入れられ、円筒状部13のプレート片49がマンホール補修材3の上端部27外側に引っかかり、円筒状部13が上端部27内に収まってから、リブ39(リブ39上の固定用片51の場合もある)がマンホール内壁面5の斜壁部17及び直壁部7上端に押し付けられるまで拡径具63によりマンホール補修材15を拡径させる。マンホール補修材15の拡径に用いられる拡径具63は、外面がマンホール補修材15の斜円錐台状部に対応するように形成されている。そして、切断箇所23及び積み重ね箇所73を2液硬化型シリコーン樹脂75でシールしてマンホール補修材1、3、15の設置又は配置を完了する。積み重ねにあたっては、切断箇所21が膨らみ31(図1参照)に、切断箇所23が膨らみ33(図1参照)に一致するように作業を遂行することとなる。
【0029】
図6はグラウト材を注入して充填し、補修作業を完了した状態を示す図である。
【0030】
マンホール補修材1、3、15の設置完了後に、グラウト材(流動性を有するグラウト材)77をマンホール補修材1、3、15とマンホール内壁面5との隙間79(図5参照)全体に上方から充填して硬化させ、補修用ライニング層を構成する。
【0031】
グラウト材77が硬化したら、拡径具63を取り外し、ステップ(図示せず)を新たに取り付ける。そして、外観仕上げ等を行って補修作業を完了する。グラウト材77は図7に示すように、プレート片49の下端側とマンホール補修材1、3、15の外面との間の隙間凹部53内にも入り込んで硬化し、マンホール補修材1、3、15とともに効果的な補修用ライニング層を構成する。すなわち、グラウト材77は、プレート片49の下端側の裏側53に入り込んでいる。
【0032】
図8は別のマンホール補修材を示す斜視図、図9は別のマンホール補修材の製造工程を説明するための図、図10は別のアンカ部材を示す図である。
【0033】
別のマンホール補修材81は、リブ39、41、プレート片49及び固定用片51を備えず、また、その代りに別のアンカ部材が設けられているが、その他の構成についてはマンホール補修材1と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
別のマンホール補修材81は、外面に固定された、断面半円状の全長にわたる溝83を有する断面半円状(半割筒状)のアンカ部材85を備えていて、アンカ部材85の半円状の溝83とマンホール補修材81の外面との間には、マンホール補修材81の外面に沿って縦方向に延びる貫通孔87が形成されている。このようなマンホール補修材81を形成するにはまず、円柱外面を有する金型(金型の外面は補修すべきマンホール内壁面5と対応するように形成されている)89に、例えばガラス繊維強化ビニルエステル樹脂(補修材用成形材)91をハンドレイアップ法により積層する(図9a)。次に、ビニルエステル樹脂が未硬化の状態で(具体的には半硬化状態となったときに)、外面の適所にアンカ部材85を押し付けて貼り付ける(図9b)。アンカ部材85はマンホール補修材81と同一の材質であって、ガラス繊維強化ビニルエステル樹脂製である。また、アンカ部材85は、必要に応じて、10mmの高さのものと7mmの高さのものとが用いられる。そして、ビニルエステル樹脂が硬化して補修材用成形材91が成形されたら、型抜きを行ない、得られた円筒状体の周方向1箇所を縦方向に切断し、かつ、下端を所定のプロフィールに加工して、アンカ部分85を一体的に有するFRP製のマンホール補修材81を構成する(図8)。別のマンホール補修材81を用いる場合には、マンホール補修材3、15も、リブ39、41、プレート片49及び固定用片51を備えず、また、その代りに別のアンカ部材85が設けられるように変更される。そして、マンホール補修材3、15を変更したマンホール補修材も、別のマンホール補修材81と同様にして製造される。なお、図10に示すように、アンカ部材として、断面三角形状の全長にわたる溝93を有する断面三角形状のアンカ部材95(図10a)、または、断面四角形状の全長にわたる溝97を有する断面四角形状のアンカ部材99(図10b)を用いることもできる。アンカ部材95、99は、アンカ部材85と同一の材質であり、溝93、97を有することにより、アンカ部材85と同様に、マンホール補修材の外面に沿って縦方向に延びる貫通孔を形成することとなる。アンカ部材85、95、99は、貫通孔にグラウト材が入り込んで硬化することにより、抜け止め効果を有することとなる。そして、アンカ部材85、95、99は、リブ39、41と同じように、隙間形成用突部として機能する。
【0035】
図11はさらに別のマンホール補修材を示す斜視図である。
【0036】
さらに別のマンホール補修材101は、別のマンホール補修材81の外面に粒状物層(ここでは3号(平均粒径1.2〜0.6mm)又は4号(平均粒径0.6〜0.3mm)の珪砂を用いた珪砂層)103を固着して構成されたものなので、マンホール補修材81部分の説明は省略する。さらに別のマンホール補修材101は、図12に示すように、アンカ部材85を一体的に有するFRP製のマンホール補修材81を得た後に(図8参照)、マンホール補修材81を平板状に展開し、外面全体にエポキシ樹脂常温硬化性接着材105をローラや刷毛などで塗布し、接着層107を形成する(図12a)。続いて、接着層107が未硬化のうちに、3号又は4号珪砂109を接着層107上に全体的に撒いて珪砂層103を形成する(図12b)。そして、接着層107が硬化し、珪砂層103が接着層107に固着されることによって図11のマンホール補修材101が形成される。さらに別のマンホール補修材101を用いる場合には、マンホール補修材3、15も、マンホール補修材101と同様の態様で変更される。そして、マンホール補修材3、15を変更したマンホール補修材も、さらに別のマンホール補修材101と同様の方法で製造される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明したように、本発明のマンホール補修方法はマンホールの内壁面の補修に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るマンホール補修方法で用いられるマンホール補修材の斜視図である。
【図2】マンホール補修材の形成工程を説明する図である。
【図3】マンホール内へのマンホール補修材の配置過程を説明するための図であり、マンホール補修材を入れる前のマンホールを示す図である。
【図4】マンホール内へのマンホール補修材の配置過程を説明するための図であり、マンホール補修材をマンホール内に入れ、マンホール内壁面に押し付けてマンホール内に配置した状態を示す図である。
【図5】他のマンホール補修材をマンホール内に入れ、マンホール内壁面に押し付けてマンホール内に配置した状態を示す図である。
【図6】グラウト材を注入して充填し、補修作業を完了した状態を示す図である
【図7】補修用ライニング層を示す図である。
【図8】別のマンホール補修材を示す斜視図である。
【図9】別のマンホール補修材の製造工程を説明するための図である。
【図10】別のアンカ部材を示す図である。
【図11】さらに別のマンホール補修材を示す斜視図である。
【図12】さらに別のマンホール補修材の製造過程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0039】
1、3、15 マンホール補修材
5 マンホール内壁面
49 プレート片
77 グラウト材
79 隙間
85、95、99 アンカ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール内壁面をライニングして補修するマンホール補修方法であって、
ライニング用のマンホール補修材を成形するための成形型に積層されている、補強母材に液状の硬化性樹脂を含浸させた補修材用成形材を準備する第1の工程と、
前記硬化性樹脂が半硬化状態となった段階で、前記補修材用成形材の外面に、この補修材用成形材と同一の材質のアンカ部材を押し付けて貼り付ける第2の工程と、
未硬化の前記硬化性樹脂を硬化させ、前記補修材用成形材を前記成形型から外して、外面に前記アンカ部材が固定されたマンホール補修材を構成する第3の工程と、
前記マンホール内壁面を隙間を有して覆うように、前記マンホール補修材をマンホール内に配置する第4の工程と、
前記マンホール内壁面及び前記マンホール補修材の間の前記隙間にグラウト材を注入して硬化させ、前記アンカ部材が前記グラウト材に抜け止め状態で埋め込まれた補修用ライニング層を形成する第5の工程と、
を備えることを特徴とするマンホール補修方法。
【請求項2】
前記第1の工程で準備された前記補修材用成形材には、外面に隙間形成用突部が形成されていて、前記アンカ部材は、前記隙間形成用突部に貼り付けられ、かつ、この隙間形成用突部からマンホール補修材の外面との間に隙間凹部を形成する位置まで延びるプレート片である、ことを特徴とする請求項1記載のマンホール補修方法。
【請求項3】
前記マンホール補修材の外面に固定された前記アンカ部材は、この外面に沿って延びる貫通孔を形成している、ことを特徴とする請求項1記載のマンホール補修方法。
【請求項1】
マンホール内壁面をライニングして補修するマンホール補修方法であって、
ライニング用のマンホール補修材を成形するための成形型に積層されている、補強母材に液状の硬化性樹脂を含浸させた補修材用成形材を準備する第1の工程と、
前記硬化性樹脂が半硬化状態となった段階で、前記補修材用成形材の外面に、この補修材用成形材と同一の材質のアンカ部材を押し付けて貼り付ける第2の工程と、
未硬化の前記硬化性樹脂を硬化させ、前記補修材用成形材を前記成形型から外して、外面に前記アンカ部材が固定されたマンホール補修材を構成する第3の工程と、
前記マンホール内壁面を隙間を有して覆うように、前記マンホール補修材をマンホール内に配置する第4の工程と、
前記マンホール内壁面及び前記マンホール補修材の間の前記隙間にグラウト材を注入して硬化させ、前記アンカ部材が前記グラウト材に抜け止め状態で埋め込まれた補修用ライニング層を形成する第5の工程と、
を備えることを特徴とするマンホール補修方法。
【請求項2】
前記第1の工程で準備された前記補修材用成形材には、外面に隙間形成用突部が形成されていて、前記アンカ部材は、前記隙間形成用突部に貼り付けられ、かつ、この隙間形成用突部からマンホール補修材の外面との間に隙間凹部を形成する位置まで延びるプレート片である、ことを特徴とする請求項1記載のマンホール補修方法。
【請求項3】
前記マンホール補修材の外面に固定された前記アンカ部材は、この外面に沿って延びる貫通孔を形成している、ことを特徴とする請求項1記載のマンホール補修方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−243083(P2009−243083A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88948(P2008−88948)
【出願日】平成20年3月29日(2008.3.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000219668)東海化成工業株式会社 (39)
【出願人】(592185666)管清工業株式会社 (12)
【出願人】(000227124)日曹商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月29日(2008.3.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000219668)東海化成工業株式会社 (39)
【出願人】(592185666)管清工業株式会社 (12)
【出願人】(000227124)日曹商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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