説明

マーキングフィルム

【課題】汚れの付着や水垢の跡の発生を抑制することができ、新しい下地フィルムを重ね貼りした際に、該下地フィルム表面へのマーキングフィルムの形状の浮き上がりを抑え、且つ優れた粘着力を有する、マーキングフィルムを提供する。
【解決手段】基材11と粘着剤層12とを有するマーキングフィルム1aであって、貼り付け後の該フィルムの総厚が25μm以下であり、前記基材の厚みに対する前記粘着剤層の厚みの比〔粘着剤層/基材〕が0.02〜0.85である、マーキングフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、看板等に使用されるマーキングフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粘着シート(粘着テープも含む、以下同じ)は、多くの分野において幅広く用いられるようになってきた。例えば、包装・結束用、事務・家庭用、接合用、塗装マスキング用、表面保護用、シーリング用、防食・防水用、電気絶縁用、電子機器用、医療・衛生材料用、表示・標識用、装飾用、ラベル用等として使用されている。
【0003】
一方、最近の上記用途の中で、表示・標識用粘着シートや装飾用粘着シート等のマーキングフィルムの分野においては、塗装製品の生産性の向上や製造コストの低減を図るために、塗装代替用として、このマーキングフィルムの需要が増加してきている。
表示・標識用として、例えば、危険表示用テープ、ラインテープ、マーキングテープ等が用いられ、また装飾用として、看板、ショーウインドや建造物の内外装、マーキングシート・ステッカーによる車やオートバイの装飾等にマーキングフィルムが用いられている。
このようなマーキングフィルムが適用される被着体としては、様々なものがあるが、例えば、金属板、塗装金属板、ガラス、セラミックス、石材、木質材料、プラスチック、紙類等が挙げられる。
【0004】
ところで、これらマーキングフィルムは、その貼付製品は屋外で使用されることが多く、そのマーキングフィルムを構成する基材及び粘着剤に対しては、優れた耐候性を有することが求められる。そのため、粘着剤としては、通常、耐候性が良好なアクリル系粘着剤が用いられ、基材としては、塩化ビニル系樹脂、ポリアクリレート、熱可塑性ポリウレタン等からなるフィルム基材が用いられている。このようなマーキングフィルムとしては、例えば、特許文献1及び2に記載のものが知られている。
【0005】
このようなマーキングフィルムを看板等の装飾用で用いる場合、通常、下地となる着色マーキングフィルム(以下、「下地フィルム」ともいう)を被着体の全面に貼り、その下地フィルム上に、会社名等の文字や図案等の意匠の形状となるように切り抜かれた着色マーキングフィルムを貼って装飾が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−265123号公報
【特許文献2】特開2001−271045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2等に記載のマーキングフィルムでは、下地フィルムや被着体に貼り合わせた際、マーキングフィルムと下地フィルム等との段差が大きく、その段差部分に汚れの付着しやすく、また水垢の跡も発生しやすい。特に、文字や意匠の形状が形成されたマーキングフィルムを貼り付けた場合、汚れの付着や水垢の跡の発生はより顕著に現れる。
また、看板等に対して新しい装飾を施したい場合、既に貼り付けられている装飾用のマーキングフィルムを剥さず、その古いマーキングフィルムの上に、新しい下地フィルムを重ね貼りすることがある。この場合、その古いマーキングフィルムが、通常のものであると、新しい下地フィルムを重ね貼りしても、下に位置する古いマーキングフィルムの形状が、下地フィルムの表面に浮き上がってしまう。そのため、下に位置する古いマーキングフィルムを剥がさなければならず、コストや作業性の面の問題がある。
【0008】
本発明は、汚れの付着や水垢の跡の発生を抑制することができ、更に下地フィルムを重ね貼りした際に、該下地フィルム表面へのマーキングフィルムの形状の浮き上がりを抑え、且つ優れた粘着力を有する、マーキングフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、貼り付け後のマーキングフィルムの総厚、及びマーキングフィルムを構成する基材に対する粘着剤層の厚みの比を調整することで、上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[11]を提供するものである。
[1]基材と粘着剤層とを有するマーキングフィルムであって、貼り付け後の該フィルムの総厚が25μm以下であり、前記基材の厚みに対する前記粘着剤層の厚みの比〔粘着剤層/基材〕が0.02〜0.85である、マーキングフィルム。
[2]前記粘着剤層を構成する粘着剤が、(A)架橋性官能基を有するアクリル系共重合体と、(B)ウレタン樹脂と、(C)架橋剤とを含有するものである、上記[1]に記載のマーキングフィルム。
[3](B)ウレタン樹脂が、(b1)ジオールと(b2)多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、(b3)鎖延長剤を反応させて得られるものであり、(b3)鎖延長剤が、(b4)水酸基及び/又はアミノ基を2つ有する化合物、及び(b5)水酸基及び/又はアミノ基を3つ以上有する化合物であり、(b4)成分と(b5)成分との質量比〔(b4)/(b5)〕が、70/30〜100/0である、上記[2]に記載のマーキングフィルム。
[4](b4)成分が水酸基及びアミノ基を有する、上記[3]に記載のマーキングフィルム。
[5](b1)ジオールが、重量平均分子量1,000〜3,000のグリコールである、上記[3]又は[4]に記載のマーキングフィルム。
[6](A)成分の架橋性官能基が、エチレン性不飽和カルボン酸又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル由来のものである、上記[2]〜[5]のいずれかに記載のマーキングフィルム。
[7](A)アクリル系共重合体と(B)ウレタン樹脂との質量比〔(A)/(B)〕が、1/99〜40/60である、上記[2]〜[6]のいずれかに記載のマーキングフィルム。
[8](A)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)が、30万〜150万である、上記[2]〜[7]のいずれかに記載のマーキングフィルム。
[9]粘着剤層の厚みが0.5〜10μmであり、基材の厚みが1〜20μmである、上記[1]〜[8]のいずれかに記載のマーキングフィルム。
[10]前記マーキングフィルムが、屋外で使用されるものであって、文字又は意匠の形状に形成されたものである、上記[1]〜[9]のいずれかに記載のマーキングフィルム。
[11]前記マーキングフィルムは、更に別のマーキングフィルムにより重ね貼りされるものである、上記[1]〜[10]のいずれかに記載のマーキングフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマーキングフィルムは、下地フィルムとの段差が小さいため、汚れの付着や水垢の跡の発生を抑制することができ、新しい下地フィルムを重ね貼りした際に、該フィルム表面へのマーキングフィルムの形状の浮き上がりを抑え、且つ、優れた粘着力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のマーキングフィルムの構成の一態様を示す、該フィルムの断面図である。
【図2】本発明のマーキングフィルムの使用態様を示す、該フィルムの断面図である。
【図3】従来のマーキングフィルムの使用態様を示す、該フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のマーキングフィルムは、基材と粘着剤層とを有するものであれば、特に限定はされない。図1は、本発明のマーキングフィルムの構成の一態様を示す図である。本発明のマーキングフィルムの構成は、図1(a)のように、基材11上に粘着剤層12を有するマーキングフィルム1aに限られない。例えば、図1(b)のように、更に、粘着剤層12上に剥離材13を有するマーキングフィルム1bとすることもできる。また、図1(c)のように、更に、基材11の粘着剤層12が形成された面とは反対側に、コーティング層(防汚層)14を有するマーキングフィルム1cとすることもできる。
【0013】
なお、本発明において「貼り付け後のフィルムの総厚」とは、剥離材14等も含めたマーキングフィルム全体の総厚から、貼り付け時に、除かれる剥離材等の厚みを除いたマーキングフィルムの厚みを意味する。例えば、図1に示されたマーキングフィルム1a、1bでは、基材11と粘着剤層12との厚みの合計(図1のZa、Zbで示す厚み)を指し、マーキングフィルム1cでは、基材11、粘着剤層12、及びコーティング層(防汚層)14の厚みの合計(図1のZcで示す厚み)を指す。
なお、本発明のマーキングフィルムの各層の厚みは、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0014】
本発明において、貼り付け後のフィルムの総厚は、25μm以下に調整されるが、好ましくは3〜23μm、より好ましくは5〜20μm、更に好ましくは7〜18μmである。
該総厚が25μmを超えると、下地フィルム等と段差が大きいために、汚れの付着や水垢の跡の発生を抑えることが難しくなる。また、新しい下地フィルムを重ね貼りした際に、該フィルム表面に、本発明のマーキングフィルムの形状の浮き上がりが目立つために好ましくない。
また、該総厚を3μm以上とすれば、基材及び粘着剤層ともに十分な厚みを有するため、耐候性に優れ、十分な粘着力を有するマーキングフィルムとすることができる。
【0015】
また、本発明のマーキングフィルムは、基材の厚みに対する粘着剤層の厚みの比〔粘着剤層/基材〕が、0.02〜0.85であり、好ましくは0.15〜0.85、より好ましくは0.20〜0.83、より好ましくは0.25〜0.83、更に好ましくは0.30〜0.80である。当該比が0.02未満であると、粘着剤層の厚みが不十分であるため、マーキングフィルムの粘着力が劣るため好ましくない。一方、当該比が0.85を越えると、基材の厚みが不十分であるため、マーキングフィルムの耐候性が劣る。また、マーキングフィルムの製造工程や貼り付け作業の際に、しわや弛みを制御することが難しくなる。
【0016】
本発明のマーキングフィルムの基材及び粘着剤層の厚みは、上記要件を満たすように調整される限り、特に制限されないが、以下の範囲とすることが好ましい。
つまり、粘着剤層の厚みは、十分な粘着力を付与すると共に、貼り付け後の下地フィルム等との段差を小さくする観点から、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜8μm、更に好ましくは2〜6μmである。
また、基材の厚みは、十分な耐候性を付与し、しわや弛みを制御し易くすると共に、貼り付け後の下地フィルム等との段差を小さくする観点から、好ましくは1〜20μm、より好ましくは点から3〜16μm、更に好ましくは5〜12μmである。
【0017】
[粘着剤層]
本発明で用いる粘着剤層を構成する粘着剤としては、粘着剤層を薄膜化しても十分な粘着力を有するものであれば特に制限はされないが、(A)架橋性官能基を有するアクリル系共重合体と、(B)ウレタン樹脂と、(C)架橋剤とを含有するものが好ましい。また、必要に応じて、その他の添加剤、有機溶媒等を含有してもよい。以下、当該粘着剤中に含まれる各成分について説明する。
【0018】
<(A)アクリル系共重合体>
本発明で用いる粘着剤は、様々なものが使用できるが、粘着剤層を薄膜化、十分高い粘着力を得る観点から、(A)架橋性官能基を有するアクリル系共重合体(以下、単に「(A)アクリル系共重合体」又は「(A)成分」ともいう)を含有することが好ましい。本発明において、「架橋性官能基を有するアクリル系共重合体」は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、(C)架橋剤と反応する架橋性官能基含有モノマーを含む単量体混合物を原料として、重合反応を経て得られるアクリル系共重合体である。そのため、用いる(A)アクリル系共重合体は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位と、架橋性官能基含有モノマー由来の構成単位を含む。
なお、以下の記載において、例えば「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味し、他の類似用語も同様である。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量は、薄膜化しても十分な粘着力を得る観点から、(A)成分の全構成単位中、好ましくは70〜99.9質量%、より好ましくは80〜99.5質量%、更に好ましくは85〜99質量%、より好ましくは88〜95質量%である。
架橋性官能基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、薄膜化しても十分な粘着力を得る観点から、(A)成分の全構成単位中、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%、更に好ましくは1〜12質量%である。
なお、(A)アクリル系共重合体の共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0020】
(A)アクリル系共重合体が有する架橋性官能基とは、(C)成分の架橋剤と反応し得る官能基であって、カルボキシ基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。これらの中でも、(C)成分の架橋剤との反応性の観点から、カルボキシ基及び水酸基が好ましく、より高い粘着力を得られるという観点から、カルボキシ基がより好ましい。
また、(A)アクリル系共重合体が有する架橋性官能基は、反応性の観点、及び粘着剤層を薄膜化しても十分に高い粘着力を得る観点から、エチレン性不飽和カルボン酸又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル由来のものが好ましく、エチレン性不飽和カルボン酸由来のものがより好ましい。
【0021】
上記アクリル系共重合体の主成分モノマーである(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの中でも、粘着剤層を薄膜化しても十分な粘着力を得る観点から、(メタ)アクリル酸ブチルが好ましい。
【0022】
これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、2種以上併用する場合、粘着剤層を薄膜化しても十分な粘着力を得る観点から、(メタ)アクリル酸ブチルの含有量が、用いる(メタ)アクリル酸エステル中、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%である。
(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、粘着剤層を薄膜化した場合でも十分な粘着力を得る観点から、アクリル系共重合体の原料である単量体混合物中、好ましくは70〜99.9質量%、より好ましくは80〜99.5質量%、更に好ましくは85〜99質量%、より更に好ましくは88〜95質量%である。
【0023】
架橋性官能基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸及びフマル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル等を挙げられる。なお、これらの単量体は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、架橋剤との反応性の観点、及び粘着剤層を薄膜化しても十分に高い粘着力を得る観点から、エチレン性不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましく、エチレン性不飽和カルボン酸がより好ましい。
【0024】
架橋性官能基を有する単量体の含有量は、粘着剤層を薄膜化した場合でも十分な粘着力を得る観点から、アクリル系共重合体の原料である単量体混合物中、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%、更に好ましくは1〜12質量%である。
【0025】
なお、(A)アクリル系共重合体は、構成単位として、上記以外の他の単量体由来の構成単位を含んでもよい。
他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、ビニリデンクロリド等のハロゲン化オレフィン類、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系単量体、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体等が挙げられる。これらの単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
これらの単量体混合物から(A)アクリル系共重合体を得る方法は、特に限定されず、溶媒の存在下又は不存在下で、公知の重合方法により行うことができる。用いる溶媒としては、例えば、酢酸エチル、トルエン等を挙げられる。
また、重合反応に際し、重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等を挙げられる。これらの重合開始剤の配合量としては、単量体混合物100質量部に対し、好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.1〜0.5質量部である。
また、重合条件としては、特に限定されないが、重合温度50〜90℃で、反応時間2〜30時間の条件で行われることが好ましい。
【0027】
このようにして得られる(A)アクリル系共重合体の重量平均分子量としては、粘着性能等の向上の観点から、好ましくは30万〜150万、より好ましくは40万〜100万、更に好ましくは50万〜80万である。30万以上であれば、粘着剤層の凝集力が向上し、十分な粘着力が得られる。また、150万以下であれば、粘着剤層の弾性率が高くなりすぎず、粘着力の低下を抑えることができる。
なお、本発明において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値を意味し、具体的には実施例に記載の方法により測定された値を示す(以下同じ)。
【0028】
<(B)ウレタン樹脂>
本発明で用いる粘着剤は、(B)ウレタン樹脂(以下、単に「(B)成分」ともいう)を含有することが好ましい。(B)ウレタン樹脂を含有することで、粘着剤層を薄膜化しても十分に高い粘着力を得ることができる。
本発明において、(A)アクリル系共重合体と(B)ウレタン樹脂との質量比〔(A)/(B)〕は、適度な弾性率を有する粘着剤を得て、粘着剤層を薄膜化しても十分な粘着力を得る観点から、好ましくは1/99〜40/60、より好ましくは5/95〜30/70、更に好ましくは10/90〜25/75である。(B)成分に対する(A)成分の割合を示す当該質量比が1/99以上であれば、弾性率が低くなりすぎることによる粘着力の低下を回避することができ、40/60以下であれば、弾性率が高くなりすぎることによる粘着力の低下を回避することできる。
【0029】
本発明で用いる(B)ウレタン樹脂としては、(b1)ジオールと(b2)多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、(b3)鎖延長剤を反応させて得られるウレタン樹脂が好ましい。
【0030】
(b1)ジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール等のアルカンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。なお、これらの(b1)ジオールは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの(b1)ジオールの中でも、得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーと(b3)鎖延長剤との反応においてゲル化を抑制する観点から、重量平均分子量1000〜3000程度の中分子量のグリコールが好ましい。
【0031】
(b2)多価イソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
なお、これらの(b2)多価イソシアネート化合物は、上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、イソシアヌレート環を含有させたイソシアヌレート型変性体であってもよい。
【0032】
これらの(b2)多価イソシアネート化合物の中でも、粘着剤の物性が優れている観点から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)及びこれらの変性体から選ばれる1種以上が好ましく、耐候性の観点から、HMDI、IPDI及びこれらの変性体から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0033】
末端イソシアネートウレタンプレポリマーの調製方法としては特に制限されず、例えば、(b1)及び(b2)成分と、必要に応じて添加されるウレタン化触媒と、必要に応じて用いられる溶剤とを反応器に仕込んで反応させる方法等が挙げられる。
(b1)と(b2)成分の配合比は、末端にイソシアネート基が残るようにする観点から、NCO基/OH基(モル比)が、好ましくは1.1〜3.0、より好ましくは1.2〜2.5となるように配合して反応させることが好ましい。1.1以上であれば、ゲル化を避けることができるため、増粘する傾向を抑制することができる。一方、3.0以下であれば、末端イソシアネートウレタンプレポリマー中の未反応多価イソシアネート化合物濃度が高くなり過ぎず、後述する(b3)鎖延長剤との反応をスムーズに進行させることができる。
【0034】
また、使用する(b1)及び(b2)成分の反応性や、(b3)鎖延長剤の配合量によって異なるが、末端イソシアネートウレタンプレポリマー中のイソシアネート基含有量(NCO%)は、JIS K 1603に準じて測定された値において、好ましくは0.5〜12質量%、より好ましくは1〜4質量%である。0.5質量%以上であれば、(b3)鎖延長剤との反応を十分に進行させることができ、12質量%以下であれば、(b3)鎖延長剤との反応を十分に制御することができる。
【0035】
末端イソシアネートウレタンプレポリマー生成反応において使用される触媒としては、特に制限はないが、3級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
3級アミン系化合物としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)等が挙げられる。
有機金属系化合物としては、錫系化合物、非錫系化合物が挙げられる。
錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロリド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロミド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルフィド、トリブチル錫スルフィド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキシド、トリブチル錫エトキシド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロリド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
非錫系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロリド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロリド等のチタン系化合物、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛系化合物、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネート等の鉄系化合物、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系化合物、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系化合物、ナフテン酸ジルコニウム等が挙げられる。
これらの触媒の中でも、DBTDL、2−エチルヘキサン酸錫、テトラブチルチタネートが好ましい。なお、これらの触媒は、単独で又は2種以上併用して用いてもよい。
【0036】
当該反応において用いる触媒の添加量としては、反応性の観点から、(b1)成分100質量部に対して、好ましくは0.0001〜1質量部、より好ましくは0.005〜0.1質量部である。
【0037】
また、当該反応において必要に応じて用いられる溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上併用して用いてもよい。
【0038】
当該反応における反応温度としては、好ましくは120℃以下、より好ましくは70〜100℃である。120℃以下であれば、アロハネート反応が進行を抑制し、所定の分子量と構造を有する末端イソシアネート基プレポリマーを合成することでき、また、反応速度を十分制御することができる。なお、当該反応における反応時間は、例えば、反応温度を70〜100℃にした場合、好ましくは2〜20時間である。
【0039】
以上のようにして得た末端イソシアネートウレタンプレポリマーは、(b3)鎖延長剤との鎖延長反応により、ウレタン樹脂となる。
(b3)鎖延長剤としては、特に制限はないが、(b4)水酸基及び/又はアミノ基を2つ有する化合物、(b5)水酸基及び/又はアミノ基を3つ以上有する化合物を用いることが好ましい。
【0040】
(b4)成分としては、水酸基及び/又はアミノ基を2つ有する化合物であれば特に制限はないが、粘着力の低下をより防止できる観点から、脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、アルカノールアミン、ビスフェノール、芳香族ジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール等のアルカンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコールが挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等が挙げられる。
アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン等が挙げられる。
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールA等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、例えば、ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0041】
(b5)成分としては、水酸基及び/又はアミノ基を3つ以上有する化合物であれば特に制限はないが、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオール、1−アミノ−2,3−プロパンジオール、1−メチルアミノ−2,3−プロパンジオール、N−(2−ヒドロキシプロピルエタノールアミン)等のアミノアルコール、テトラメチルキシリレンジアミンのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0042】
上記(b4)及び(b5)成分におけるアミノ基及び/又は水酸基は、イソシアネート基との反応性の観点から、1級アミノ基、2級アミノ基、又は1級水酸基であることが好ましい。
配合する(b4)成分と(b5)成分との質量比〔(b4)/(b5)〕は、好ましくは70/30〜100/0、より好ましくは75/25〜95/5、更に好ましくは80/20〜90/10である。(b5)成分に対する(b4)成分の割合を示す当該質量比が70/30以上であれば、粘着剤層を薄膜化しても、粘着力の低下を抑えることができ、また、ウレタン樹脂を得る鎖延長反応の際、ゲル化を回避でき、所望の粘着剤を得ることができる。
【0043】
鎖延長反応としては、例えば、(1)イソシアネート基末端プレポリマーの溶液を反応器に仕込み、その反応器に鎖延長剤を滴下して反応させる方法、(2)鎖延長剤を反応器に仕込み、イソシアネート基末端プレポリマーの溶液を滴下して反応させる方法、(3)イソシアネート基末端プレポリマーの溶液を溶剤で希釈した後、その反応器に鎖延長剤を所定量一括投入して反応させる方法が挙げられる。イソシアネート基が徐々に減少するため均一な樹脂を得やすいことから、(1)又は(3)の方法が好ましい。
溶剤としては、末端イソシアネート基末端プレポリマー生成反応に用い得るものと同様の溶剤を使用することができる。
【0044】
鎖延長剤の添加量((b4)及び(b5)成分の合計添加量)は、イソシアネート基末端プレポリマーのNCO基の含有量により異なるが、鎖延長後のウレタン樹脂のNCO基が、好ましくは0.01〜1.0モル%、より好ましくは0.05〜0.2モル%となる量である。0.01モル%以上であれば、鎖延長を十分に行うことができ、所望の分子量のウレタン樹脂が得られる。また、1.0モル%以下であれば、鎖延長反応時に急激に増粘してゲル化する現象を抑えることができる。
【0045】
鎖延長反応における反応温度は、好ましくは20〜80℃である。20℃以上であれば、鎖延長反応を十分な速度で進行させることができる。一方、80℃以下であれば、反応速度を十分に制御することができ、所望の分子量と構造を有するウレタン樹脂が得られる。なお、溶剤存在下で鎖延長反応を行う場合には、反応温度は、溶媒の沸点以下が好ましく、特にMEK、酢酸エチルの存在下では40〜60℃が好ましい。
なお、鎖延長反応における反応時間は、例えば、反応温度を40〜80℃にした場合、好ましくは1〜20時間である。
【0046】
なお、鎖延長反応の停止のために末端停止剤を使用してもよい。
末端停止剤としては、例えば、イソシアネート基と反応可能な水素を1つだけ有する化合物又はアミノ基を1つだけ有する化合物が挙げられる。
イソシアネート基と反応可能な水素を1つだけ有する化合物としては、例えば、メタノール、エタノール等のモノオール化合物が挙げられる。
アミノ基を1つだけ有する化合物としては、1級アミノ基又は2級アミノ基を有する化合物を使用することができ、例えば、ジエチルアミン、モルホリン等が挙げられる。
1級アミノ基を1つ有する化合物は、反応可能な水素を2つ有しているが、1つの反応可能な水素が反応した後に残った反応可能な水素は反応性が低いので、実質的に単官能と同等となる。
末端停止剤の添加量は、鎖延長反応後に残存する末端イソシアネート基の1モルに対して、好ましくは1〜2モル、より好ましくは1.1〜1.8モルとなる割合で添加する。末端停止剤の添加量が1モル以上であれば、停止反応後にイソシアネート基が残らないため、得られるウレタン樹脂が安定である。一方、末端停止剤の添加量が2モル以下であれば、低分子量のウレタン樹脂の生成を抑えることができる。
【0047】
(B)ウレタン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1万〜30万、より好ましくは3万〜25万、更に好ましくは5万〜20万である。1万以上であれば、粘着特性、特に保持力が向上する傾向にあるため好ましく、30万以下であれば、ゲル化を回避することができる。
【0048】
<(C)架橋剤>
本発明で用いる粘着剤は、凝集力を高めて所望の粘着力を得る観点から、(A)成分中の架橋性官能基と反応しうる架橋剤を含有する。
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤及びアミン系架橋剤、アミノ樹脂系架橋剤等を挙げられる。
【0049】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、リジンイソシアネート等の多価イソシアネート化合物が挙げられる。
なお、多価イソシアネート化合物は、上記化合物のトリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、イソシアヌレート環を含むイソシアヌレート型変性体であってもよい。
【0050】
エポキシ系架橋剤としては、分子中に2個以上のエポキシ基又はグリシジル基を有するものであれば、特に限定されないが、分子中に2個以上のグリシジル基を含む多官能性エポキシ化合物が好ましい。
分子中に2個以上のグリシジル基を含む多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸グリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル及びポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ又はトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジ又はトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン等のジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0051】
アジリジン系架橋剤としては、特に限定はされないが、その具体例として、1,1’−(メチレン−ジ−p−フェニレン)ビス−3,3−アジリジニル尿素、1,1’−(ヘキサメチレン)ビス−3,3−アジリジニル尿素、2,4,6−トリアジリジニル−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパン−トリス−(2−アジリジニルプロピオネート)等が挙げられる。
【0052】
金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属にアセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物等が挙げられる。
【0053】
アミン系架橋剤としては、ポリアミン、例えば脂肪族ポリアミン(例えばトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、エチレンジアミン、N,N−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、エタノールアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサ−2−スピロ[5.5]ウンデカン等)ならびにこれらの塩;芳香族ポリアミン(例えばジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0054】
アミノ樹脂系架橋剤としては、例えば、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロールN,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミン等が挙げられるが、好ましくはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、及びメチロール化ベンゾグアナミン等を挙げることができる。
【0055】
これらの中でも、粘着剤層を薄膜化した場合でも高い粘着力を得る観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。なお、上記の架橋剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0056】
架橋剤の含有量は、粘着剤層を薄膜化しても高い粘着力を得る観点から、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜8質量部、より好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜3質量部である。
【0057】
<その他の成分>
本発明で用いる粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を配合することができる。その他の成分としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、粘着付与剤、可塑剤、消泡剤及び濡れ性調整剤等が挙げられる。
【0058】
[基材]
本発明で用いる基材としては、本発明のマーキングフィルムが塗装代替用としても使用されるため、収縮率が小さく、かつ貼付作業性の面から、あまり硬質でないものが好ましい。
そのような基材としては、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、非晶質ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、及びこれらの混合物等を含む樹脂組成物を用いて、フィルム状の成形した基材フィルム等が挙げられる。
【0059】
また、当該樹脂組成物には、基材に着色することを目的として、染料や顔料等を配合してもよい。染料や顔料等の配合量としては、上記樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜40質量部、より好ましくは10〜35質量部、更に好ましくは15〜30質量部である。
【0060】
これらの基材フィルムには、その上に設けられる粘着剤層やコーティング層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。
酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。
また、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
これらの表面処理法は、基材の種類に応じて適宜選ばれるが、粘着剤層等の密着性の向上効果と操作性の観点から、コロナ放電処理法が好ましい。また、基材の片面又は両面にプライマー処理を施したものも用いることができる。
【0061】
[剥離材]
本発明のマーキングフィルムにおいて、更に、粘着剤層上に剥離材を有していてもよい。
用いる剥離材としては、特に制限が無いが、取り扱い易さの観点から、基材上に剥離剤を塗布した剥離シートが好ましい。剥離シートは、基材の片面のみに剥離剤が塗布され剥離処理がされたものでもよく、基材の両面に剥離剤が塗布され剥離処理がされたものでもよい。
剥離シートの基材としては、例えば、グラシン紙、コート紙、キャストコート紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、又はポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。
剥離剤としては、例えばシリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0062】
剥離シートの厚さとしては、特に制限はないが、通常20〜200μm、好ましくは25〜150μmである。
その剥離シートの剥離剤からなる層の乾燥後の厚さとしては、特に限定されないが、剥離剤を溶液状態で塗布する場合は、好ましくは0.01〜2.0μm、より好ましくは0.03〜1.0μmである。
剥離シートの基材の厚さとしては、基材としてプラスチックフィルムを用いる場合、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜40μmである。
【0063】
[コーティング層(防汚層)]
本発明のマーキングフィルムにおいて、更に、基材の粘着剤層が形成された面とは反対側の面にコーティング層や防汚層を有していてもよい。
コーティング層や防汚層としては、例えば、多価アルコール、多塩基酸及び各々に対応する変性剤の縮合反応によって得られる油脂変性アルキッド樹脂、脂肪酸変性アルキッド樹脂又はシリコーン変性アルキッド樹脂の架橋物等から形成することができる。
これらの層を設ける場合、その層の厚さとしては、貼り付け時のマーキングフィルムの総厚が25μm以下となるように調整する必要がある。具体的な層の厚さとしては、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜5μmである。
【0064】
[マーキングフィルムの製造方法]
本発明のマーキングフィルムの製造方法は、特に限定されない。
例えば、図1(a)に示すマーキングフィルム1aであれば、基材11の一方の面上に、粘着剤を塗布、乾燥させて粘着剤層12を形成して作製することができる。
また、図1(b)に示すマーキングフィルム1bであれば、剥離材13の面上に、粘着剤を塗布、乾燥させて粘着剤層12付きの剥離材を作製した後、該粘着剤層12と基材11とを貼り合わせて作製することができる。なお、更にその剥離材を除去して、図1(a)のマーキングフィルム1aとすることもできる。
さらに、マーキングフィルム1bの基材11の粘着剤層12が形成された反対側の面に、コーティング剤を塗布、乾燥させてコーティング層(防汚層)14を形成し、図1(c)のマーキングフィルム1cとすることもできる。
なお、コーティング層(防汚層)14の形成は、上記のように基材11に直接コーティング剤を塗布して形成してもよいし、剥離材にコーティング剤を塗布、乾燥させてコーティング層(防汚層)14を形成した後、該コーティング層(防汚層)14と基材11とを貼り合わせて形成してもよい。
【0065】
(粘着剤層の形成)
粘着剤を基材や剥離材に塗布する際、厚みの薄い粘着剤層を形成しやすくするために、粘着剤を有機溶媒で希釈して粘着剤溶液とすることが好ましい。
用いる有機溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらの有機溶媒を配合して、適度な固形分濃度の粘着剤溶液とすることで、厚みの薄い粘着剤層を容易に形成することができる。
粘着剤溶液の固形分濃度としては、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜40質量%である。5質量%以上であれば、溶剤の使用量としては十分であり、60質量%以下であれば、適度な粘度となり粘着剤溶液を塗布するに際して作業性が良好となる。
なお、上記粘着剤中に含まれる樹脂の調製に際し、該樹脂が有機溶媒に含有された状態で調製された場合、樹脂の調製で用いた有機溶媒と同じものを用いて、上記固形分濃度になるように希釈してもよい。
【0066】
基材上又は剥離材上に粘着剤層を形成する方法は、特に制限はなく、例えば、上記の有機溶媒を配合した粘着剤(溶液)を公知の塗布方法により形成する方法が挙げられる。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の方法が挙げられる。
また、溶剤や低沸点成分の残留を防ぐと共に、架橋剤が配合されている場合には架橋(反応)を進行させて所定の粘着性を発現させるために、基材や剥離材に塗布した後、加熱処理をすることが好ましい。
加熱処理の温度条件としては、好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜120℃である。加熱処理の処理時間としては、好ましくは30秒〜5分間、より好ましくは40〜180秒間である。
【0067】
(基材フィルムの形成)
基材としては、市販品でもよいが、顔料等を加えて着色した基材フィルムを作製し用いてもよい。
着色した基材フィルムの作製方法としては、例えば、上述の塩化ビニル系樹脂等の基材用樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶媒に溶解して分散させ、ポリエステルやジオクチルフタレート等と有機溶媒によりペースト化した顔料等を加えて、基材用樹脂組成物の溶液を作製し、該溶液を上述の塗布方法により剥離フィルム等に塗布し、乾燥後、剥離フィルムを取り除いて作製する方法が挙げられる。
【0068】
[マーキングフィルムの特性・用途]
本発明のマーキングフィルムの粘着力は、23℃、50%RH(相対湿度)の条件下で、好ましくは5.0N/25mm以上、より好ましくは6.0N/25mm以上、更に好ましくは6.5N/25mm以上である。なお、本発明において、上記粘着力の値は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0069】
本発明のマーキングフィルムは、屋内でも屋外でも使用することができるが、耐候性が優れており、汚れや水垢等がつきにくいため、屋外での使用により適している。
また、本発明のマーキングフィルムの形状は、特に限定されず、長方形や円等の形状でもよく、フィルムを文字や図案の形に切り抜いて、文字や意匠を形成したものであってもよい。ただ、本発明のマーキングフィルムは、厚さが非常に薄いため、被着体に貼り付けた際に下地との段差が小さく、マーキングフィルムの端部に発生しやすい汚れや水垢を抑えることができる。そのため、本発明のマーキングフィルムが文字や意匠が形成された形状である場合、その形状の端部に発生しやすい汚れや水垢を抑えるという効果をより発揮し易い。
【0070】
更に、本発明のマーキングフィルムは、厚さが非常に薄いため、本発明のマーキングフィルム上に、更に下地フィルムを重ね貼りしても、下に位置する本発明のマーキングフィルムの形状が、下地フィルムの表面に浮き上がることを抑制することができる。その効果について、図2及び図3を用いて詳細に説明する。
【0071】
図3は、従来のマーキングフィルムの使用態様を示す、該フィルムの断面図である。図3(a)は、基材110と粘着剤層120とを有する従来のマーキングフィルム100を、看板等の被着体21の上に、粘着剤層120が被着体21の表面に重なるように貼り合わせた状態を示している。そして、図3(b)に示すように、当該マーキングフィルム100の上から下地フィルム22を重ね貼りしたとき、下地フィルム22の表面に、マーキングフィルム100の形状の浮き上がり部分22aが見られる。この浮き上がり部分22aの厚みYbは、マーキングフィルム100を構成する基材110及び粘着剤層120の厚みに依存する。従来のマーキングフィルム100では、有する基材110及び粘着剤層120が厚いため、浮き上がり部分22aの厚みYbが大きく、下地フィルムの表面へのマーキングフィルム100の形状の浮き上がりが目立つ傾向にある。
【0072】
一方、図2は、本発明のマーキングフィルムの使用態様を示す、該フィルムの断面図である。図2(a)に示すように、基材11と粘着剤層12とを有する本発明のマーキングフィルム1aを、看板等の被着体21の上に、粘着剤層12が被着体21の表面と重なるように貼り合わせ、更にその上から下地フィルム22を重ね貼りした場合(図2(b))を考える。本発明のマーキングフィルム1aは、有する基材11及び粘着剤層12が非常に薄いため、図2(b)に示すように、更に下地フィルム22を重ね貼りした場合、下地フィルム22の表面へのマーキングフィルム1aの形状の浮き上がり部分22aの厚みYaは非常に小さい。図2(b)中の厚みYaは、図3(b)中の厚みYbに比べて非常に小さいため、下地フィルム22の表面へのマーキングフィルム1aの形状の浮き上がりは、抑制され目立たない。
そのため、本発明のマーキングフィルムは、本発明のマーキングフィルム上に、更に下地フィルムを重ね貼りしても、該下地フィルム表面へのマーキングフィルムの形状の浮き上がりを抑えることができる。
【0073】
他にも、表面に汚れの付着を防止するために、マーキングフィルムの上から、防汚フィルムをラミネートする場合がある。一般的なマーキングフィルムを用いる場合、フィルムを文字や図案の形状を有するマーキングフィルムを、貼り付けた後、そのフィルムの上からラミネートを行うと、下地フィルム等との段差が大きく、大きな隙間が発生する。ラミネート作業の際に、その隙間から空気が入ってしまい、上手くラミネートできない場合がある。
一方、本発明のマーキングフィルムであれば、貼り付けた後の下地フィルム等との段差が小さいため、隙間が生じにくく、ラミネート作業の際の空気の侵入を防止することができる。
【実施例】
【0074】
以下の実施例の記載において示された重量平均分子量(Mw)、及び、マーキングフィルムの各層の厚みは、以下のとおり測定した値である。
(1)重量平均分子量(Mw)
下記の装置及び条件にて測定し、標準ポリスチレン換算にて求めた値である。
装置名:「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製)
カラム:「TSKgelGMHXL」、「TSKgelGMHXL」、及び「TSKgel2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
展開溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:80μl
測定温度:40℃
流速:1.0mL/min
検出器:示差屈折計
(2)厚み測定
マーキングフィルムの各層の厚み、及び貼り付け後のフィルムの総厚は、JIS K7130に準じて、定圧厚さ測定器(テクロック社製、製品名「PG−02」)を用いて測定した。
【0075】
製造例1
(アクリル系共重合体(A1)の溶液の調製)
単量体成分として、アクリル酸ブチル95質量部、及びアクリル酸5質量部、溶剤として、酢酸エチル200質量部、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を反応器に入れ混合した。4時間窒素ガスで脱気を行い、60℃まで徐々に昇温した後、24時間撹拌しながら重合反応を行ない、重量平均分子量が65万のアクリル系共重合体(A1)の溶液(固形分濃度:約33質量%)を得た。
【0076】
製造例2
(アクリル系共重合体(A2)の溶液の調製)
単量体成分として、アクリル酸ブチル90質量部、及びアクリル酸10質量部、溶剤として、酢酸エチル200質量部、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を反応器に入れ混合した。4時間窒素ガスで脱気を行い、60℃まで徐々に昇温した後、24時間撹拌しながら重合反応を行ない、重量平均分子量が65万のアクリル系共重合体(A2)の溶液(固形分濃度:約33質量%)を得た。
【0077】
製造例3
(ウレタン樹脂(B1)の溶液の調製)
(b1)ジオールとして、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量:2000)100質量部、(b2)多価イソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネート10.1質量部(NCO基/OH基(モル比)=1.2)、触媒として、ジブチル錫ジラウレート0.01質量部を混合し、85℃まで徐々に昇温した後、2時間撹拌し、末端イソシアネートウレタンプレポリマーを得た。
得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、トルエン110質量部を加え室温まで除冷した後に、鎖延長剤として、(b4)成分にあたる2−アミノエタノール0.40質量部を滴下し、70℃まで徐々に昇温した後、2時間撹拌し、重量平均分子量が14万のウレタン樹脂(B1)の溶液(固形分濃度:約50.2質量%)を得た。
【0078】
製造例4
(ウレタン樹脂(B2)の溶液の調製)
(b1)ジオールとして、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量:2000)100質量部、(b2)多価イソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネート10.1質量部(NCO基/OH基(モル比)=1.2)、触媒として、ジブチル錫ジラウレート0.01質量部を混合し、85℃まで徐々に昇温した後、2時間撹拌し、末端イソシアネートウレタンプレポリマーを得た。
得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、トルエン110質量部を加え室温まで除冷した後に、鎖延長剤として、(b4)成分にあたる1,4−ブタンジオール0.48質量部を滴下し、さらに(b5)成分にあたるトリメチロールプロパン0.12質量部を滴下し、70℃まで徐々に昇温した後、2時間撹拌し、重量平均分子量が14万のウレタン樹脂(B2)の溶液(固形分濃度:約50.2質量%)を得た。
【0079】
実施例1
(1)粘着剤の調製
(A)アクリル系共重合体として、製造例1で調製したアクリル系共重合体(A1)の酢酸エチル溶液10質量部(固形分)、(B)ウレタン樹脂として、製造例2で調製したウレタン樹脂(B1)のトルエン溶液90質量部(固形分)、(C)架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL」、トリレンジイソシアネートの変性体(トリメチロールプロパン付加物)の酢酸エチル溶液(固形分75質量%))2.25質量部(固形分)の混合物を、固形分が10質量%となるようにトルエンで希釈し、粘着剤の溶液を調製した。
【0080】
(2)基材の作製
(塩化ビニルフィルムの作製)
塩化ビニル樹脂(B.F.グッドリッチ社製、商品名「Geon178」、重量平均重合度1800、樹脂微粒子の形状は球形)100質量部、アジピン酸ポリエステル系可塑剤(大日精化社製、商品名「ファインサイザーNS−4070」、重量平均分子量:4000)9質量部、バリウム亜鉛系熱安定剤(金属セッケン系熱安定剤、勝田加工社製、商品名「SB−9301」)4質量部、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(サイテック社製、商品名「サイアソーブUV−531」)1質量部、無機・有機顔料トナー(前記可塑剤と顔料の混練トナー(大日精化社製、商品名「VTカラーグレー」)31.3質量部(可塑剤23.27質量部相当を含む)、分散溶媒(ゴードー溶剤社製、商品名「ブチルセロソルブ」、グリコールエーテル類、沸点166〜173℃)24.2質量部、及び希釈分散溶媒(ゴードー溶剤社製、商品名「SS−100」、芳香族炭化水素系溶剤、沸点160〜169℃)24.2質量部を混合して、塩化ビニル樹脂からなる基材用樹脂組成物の溶液を得た。
この基材作製用樹脂組成物の溶液を、アルキッド処理された剥離フィルム(リンテック社製、製品名「SP−PET75 AL−5」)上に、乾燥後の基材の厚みが10μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥した後に、剥離フィルムを剥がし、基材となる塩化ビニルフィルムを作製した。
【0081】
(3)マーキングフィルムの作製
上記の粘着剤の溶液を、シリコーン処理された38μmポリエステルフィルム(リンテック社製、商品名「SP−PET381031」)に、乾燥後の粘着剤層の厚さが5μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥した後に、粘着シートを作製した。
この粘着シートの粘着層面と上記塩化ビニルフィルムの表面とを貼り合わせ、マーキングフィルム1を作製した。
【0082】
実施例2
乾燥後の基材の厚みを15μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、マーキングフィルム2を作製した。
【0083】
実施例3
乾燥後の粘着剤層の厚みを8μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、マーキングフィルム3を作製した。
【0084】
実施例4
(ウレタンアクリレートフィルムの作製)
ポリカーボネートジオール(日本ポリウレタン社製、製品名「N−983」)150質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン製、製品名「コロネートHL」)40質量部と及びジブチル錫ジラウレート0.05質量部をトルエン200質量部に加え、窒素雰囲気下80℃で反応させてウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂組成物に、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのカプロラクトン付加体(ダイセル化学工業社製、製品名「FM−3」)10質量部を反応させ、ウレタンプレポリマー溶液を得た。
このウレタンプレポリマー溶液200質量部に、トルエン125質量部、イソプロピルアルコール75質量部、メチルメタクリレート100質量部及びベンゾイルパーオキサイド5質量部を混合した液を、窒素雰囲気下100℃において、3時間かけて滴下して反応させ、目的とするウレタンプレポリマー由来部分と(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来部分の質量比率が50:50であるウレタン−アクリル共重合体を得た。
上記にて得られたウレタン−アクリル共重合体100質量部に対して、更に希釈溶剤としてイソプロピルアルコール10質量部を混合攪拌した後、6時間以上放置して自然脱泡させ、溶液状のウレタンアクリレート樹脂からなる基材用樹脂組成物の溶液を得た。
この基材作製用樹脂組成物の溶液を、アルキッド処理された剥離フィルム(リンテック社製、製品名「SP−PET75 AL−5」)上に、乾燥後の基材の厚みが10μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥した後に、剥離フィルムを剥がし、基材となるウレタンアクリレートフィルムを作製した。
そして、厚みが10μmの上記「ウレタンアクリレートフィルム」を基材として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マーキングフィルム4を作製した。
【0085】
実施例5
厚みを15μmに調整した上記「ウレタンアクリレートフィルム」を基材として用い、粘着剤として「アクリル系粘着剤(リンテック社製、製品名「PK」)」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マーキングフィルム5を作製した。
【0086】
実施例6
(A)アクリル系共重合体として、製造例2で調製したアクリル系共重合体(A2)を10質量部(固形分)用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マーキングフィルム6を作製した。
【0087】
実施例7
(A)アクリル系共重合体として、製造例1で調製したアクリル系共重合体(A1)を20質量部(固形分)、(B)ウレタン樹脂として、製造例4で調製したウレタン樹脂(B2)を80質量部(固形分)用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マーキングフィルム7を作製した。
【0088】
比較例1
乾燥後の基材の厚みを50μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、マーキングフィルム8を作製した。
【0089】
比較例2
乾燥後の基材の厚みを25μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、マーキングフィルム9を作製した。
【0090】
比較例3
乾燥後の粘着剤層の厚みを15μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、マーキングフィルム10を作製した。
【0091】
以上のようにして作製したマーキングフィルム1〜10について、以下の試験を行って評価した。その評価結果を表1に示す。なお、基材フィルム面及び粘着剤層面に剥離フィルムが付いている場合、適当な時機に、該剥離フィルムを剥がして、試験を行った。
(試験1)汚れ付着性試験
鉄板に対して、下地フィルムとなるマーキングフィルム(リンテック社製、製品名「ビューカル9002」、100mm×100mm)を鉄板の全面に貼付した。そして、実施例及び比較例で作製した各マーキングフィルムを、漢字の「田」の字(田の字の外側の一片の長さが50mm)の形状を有するように切り抜き、「田」の字の形状を有する各マーキングフィルムを、下地フィルムの上に貼り付け、24時間放置した。
その後、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機社製)に投入し、3000時間後の「田」の字の形状を有する各マーキングフィルムの端部の汚れの付着の有無と水垢の跡の有無を目視により確認した。表1には、それらが無かった場合は「○」、有ることが確認された場合は「×」と記載している。
【0092】
(試験2)浮き上がり性試験
試験1で作製した「田」の字の形状を有する各マーキングフィルムの上に、更に、市販のマーキングフィルム(リンテック社製、製品名「ビューカル9002」、100mm×100mm)を全面に貼付し、「田」の字の浮き上がりの有無を目視により確認した。表1には、浮き上がりが無かった場合は「○」、有ることが確認された場合は「×」と記載している。
【0093】
(試験3)粘着力測定
マーキングフィルム作製後、23℃、50%RH(相対湿度)環境下で、25mm×300mmにカットしたマーキングフィルムの試験片を被着体(SUS304鋼板)に貼付して、試験サンプルとした。JIS Z0237:2000に基づき、貼付後24時間時点の粘着力を180°引き剥がし法による引張り速度300mm/分にて測定した。
【0094】
【表1】

【0095】
表1より、本発明の実施例1〜7で作製したマーキングフィルム1〜7は、端部の汚れ及び水垢の跡が確認されず、「田」の字の形状の浮き上がりも見られなかった。また、粘着力も優れていることが分かる。
一方、比較例1〜3で作製したマーキングフィルム8〜10は、端部の汚れや水垢の跡が有ることが確認され、「田」の字の形状の浮き上がりも見られた。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のマーキングフィルムは、汚れの付着や水垢の跡の発生を抑制することができ、新しい下地フィルム等を重ね貼りした際に、該下地フィルム表面へのマーキングフィルムの形状の浮き上がりを抑え、かつ優れた粘着力を有する。そのため、当該マーキングフィルムは、主に屋外で使用する看板等の装飾の用途に好適である。
【符号の説明】
【0097】
1a、1b、1c マーキングフィルム
11 基材
12 粘着剤層
13 剥離材
14 コーティング層(防汚層)
21 被着体
22 下地フィルム
22a (下地フィルムの)浮き上がり部分
100 従来のマーキングフィルム
110 (従来のマーキングフィルムの)基材
120 (従来のマーキングフィルムの)粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と粘着剤層とを有するマーキングフィルムであって、
貼り付け後の該フィルムの総厚が25μm以下であり、前記基材の厚みに対する前記粘着剤層の厚みの比〔粘着剤層/基材〕が0.02〜0.85である、マーキングフィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層を構成する粘着剤が、(A)架橋性官能基を有するアクリル系共重合体と、(B)ウレタン樹脂と、(C)架橋剤とを含有するものである、請求項1に記載のマーキングフィルム。
【請求項3】
(B)ウレタン樹脂が、(b1)ジオールと(b2)多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、(b3)鎖延長剤を反応させて得られるものであり、(b3)鎖延長剤が、(b4)水酸基及び/又はアミノ基を2つ有する化合物、及び(b5)水酸基及び/又はアミノ基を3つ以上有する化合物であり、(b4)成分と(b5)成分との質量比〔(b4)/(b5)〕が、70/30〜100/0である、請求項2に記載のマーキングフィルム。
【請求項4】
(b4)成分が水酸基及びアミノ基を有する、請求項3に記載のマーキングフィルム。
【請求項5】
(b1)ジオールが、重量平均分子量1,000〜3,000のグリコールである、請求項3又は4に記載のマーキングフィルム。
【請求項6】
(A)成分の架橋性官能基が、エチレン性不飽和カルボン酸又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル由来のものである、請求項2〜5のいずれかに記載のマーキングフィルム。
【請求項7】
(A)アクリル系共重合体と(B)ウレタン樹脂との質量比〔(A)/(B)〕が、1/99〜40/60である、請求項2〜6のいずれかに記載のマーキングフィルム。
【請求項8】
(A)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)が、30万〜150万である、請求項2〜7のいずれかに記載のマーキングフィルム。
【請求項9】
粘着剤層の厚みが0.5〜10μmであり、基材の厚みが1〜20μmである、請求項1〜8のいずれかに記載のマーキングフィルム。
【請求項10】
前記マーキングフィルムが、屋外で使用されるものであって、文字又は意匠の形状に形成されたものである、請求項1〜9のいずれかに記載のマーキングフィルム。
【請求項11】
前記マーキングフィルムは、更に別のマーキングフィルムにより重ね貼りされるものである、請求項1〜10のいずれかに記載のマーキングフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−72064(P2013−72064A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214213(P2011−214213)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】