説明

ミシン釜の給油装置

【課題】ミシン釜に供給される潤滑油量の調整幅を拡大することができるミシン釜の給油装置を提供することをその目的とする。
【解決手段】給油装置20は、潤滑油を貯留するオイルタンク21と、オイルタンク21から釜軸台33に潤滑油を導く給油経路22と、給油経路22を介してオイルタンク21から釜軸台33に潤滑油を送る給油ポンプ27と、釜機構30に供給された潤滑油のほぼ全体をオイルタンク21に導く還流経路23と、還流経路23を介して釜機構30からオイルタンク21に潤滑油を送る還流ポンプ28とを備えている。
また、給油装置20は、給油経路22の、給油ポンプ27より下流部分から潤滑油の一部をオイルタンク21に導く排油経路24と、上記給油ポンプ27から搬送される潤滑油を釜軸台33側及びオイルタンク21側に分配する分配器25と、排油経路24への潤滑油の流量を調節する流量調節手段たる流量調節ねじ26とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン釜の給油装置に関し、特に、オイルパンを使用せず、潤滑油を貯留するオイルタンクを備えたオイルタンク方式によるミシン釜の給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
釜機構に潤滑油を供給するミシン釜の給油装置は、ミシン底部に配置された皿状のオイルパンに余剰のオイルを集めて循環させるオイルパン方式に替わり、近年のオイルタンク方式化に伴い、潤滑油を貯留するオイルタンクと、該オイルタンク内の潤滑油をミシン釜に導くホースやチューブ等の給油経路と、ミシン釜を潤滑した後の潤滑油を再び上記オイルタンクに戻すための還流経路とを備えている。また、潤滑油の供給側に、当該潤滑油を強制的に搬送するためのポンプを備えたミシン釜の給油装置等が知られている。また、例えば、オイルタンクが高位置に配置された場合などは、潤滑油の循環を良好に行うために還流側にもポンプが設けられていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−168688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のミシン釜の給油装置においては、釜軸台に供給される潤滑油の供給量の増減すなわち調整範囲が狭く、種々の縫製条件に応じたミシン釜の回転数の変化に対応することができないという問題があった。これは、オイルタンク方式化に伴い、ミシン釜の下流側にホースやチューブ等が接続されると共に、特にミシン釜と同等或いはそれよりも高い位置にオイルタンクを設けたミシンにおいては、当該ミシン釜の下流に還流ポンプが設けられ、還流経路として閉じたループすなわち潤滑油の循環経路が形成されることにより、ミシン釜を通過する潤滑油の排出圧力又は排出流量によって供給流量や供給圧力が制限されることに起因するものである。オイルパンに余剰のオイルを放出する旧来のミシンでは、釜機構への給油に際して該釜機構の下流側の圧力の制限はあまり受けないが、上記ミシンにあっては、オイルパンレス化として還流経路を設けてオイルの殆ど全てをオイルタンクに戻すという閉じたループを形成するため、釜機構の上流側と下流側との圧力差を大きく取ることができず、釜機構でのオイルの供給量の調整範囲(調整幅)が制限されるという問題があった。
【0004】
本発明は、ミシン釜に供給される潤滑油量の調整幅を拡大(向上)することができるミシン釜の給油装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ミシン釜を支持する釜軸台を有する釜機構に供給する潤滑油を貯留するオイルタンクと、前記オイルタンクから前記釜軸台に潤滑油を導く給油経路と、前記給油経路を介して前記オイルタンクから前記釜軸台に潤滑油を送る給油ポンプと、前記釜機構に供給された潤滑油のほぼ全体を前記オイルタンクに導く還流経路と、前記還流経路を介して前記釜機構から前記オイルタンクに潤滑油を送る還流ポンプと、を備え、前記釜軸台は、前記給油経路を介して前記オイルタンクから供給される潤滑油の量を調節する油量調節手段を備えているミシン釜の給油装置において、前記給油経路の、前記給油ポンプより下流部分から潤滑油の一部を前記オイルタンクに導く排油経路と、前記排油経路への潤滑油の流量を調節する流量調節手段と、を備えていることを特徴とするミシン釜の給油装置である。
ここで、「釜機構に供給された潤滑油のほぼ全体」とは、上流側から釜機構に供給されるオイルのうち、当該釜機構の摺動部の潤滑により消費される一部のオイルを除く全体をいうものであって、摺動部を潤滑した後に再び流路に戻され、排出されるオイルと、摺動部に供給されることなくそのまま通過するオイルとの合計量をいうものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のミシン釜の給油装置において、2つの前記釜機構を備えると共に、当該2つの釜機構は、前記給油経路と前記還流経路とにより形成される循環経路内において並列に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、給油経路における給油ポンプの下流部分から潤滑油の一部をオイルタンクに導く排油経路を設けたことにより、釜機構への給油に際して余分となる潤滑油を釜機構よりも上流側においてオイルタンクに戻すことができる。また、この排油経路に分流する潤滑油の流量を調節可能な流量調節手段を設けたことにより、給油経路側に分流される潤滑油の流量を調節することができ、該給油経路を介して釜機構に供給される潤滑油の量を適宜調節することができる。したがって、還流側の流量や圧力にかかわらず、排油経路側に流す流量に応じて供給経路側の流量又は圧力を自在に調節することができ、釜軸台に供給される潤滑油の供給量の調整範囲を従来よりも大幅に拡大することができ、種々の縫製条件に応じたミシン釜の回転数の変化に応じて適切な量の潤滑油を供給することが可能となる。また、これにより、釜機構部分における潤滑油の飛散や漏洩を防止することができ、製品である被縫製物への潤滑油の付着を防止することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果を得ることができる他、特に、ミシン釜の給油装置には、2つの釜機構が設けられており、これらの釜機構は給油経路と還流経路とにより形成される循環経路において並列に配設されているため、排油経路に分流される潤滑油の流量を調節する流量調節手段に加えて、それぞれの釜機構に分配される潤滑油の流量を調節することにより、各釜機構に対して個別に供給量の調節をすることができる。これにより、各釜機構に供給される潤滑油の供給量の調節範囲をより一層拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係るミシン釜の給油装置の実施形態について図面を参照して詳しく説明する。本実施形態たるミシン釜の給油装置20(以下、給油装置20)は、図示しない一対の針棒を有するとともに互いにほぼ平行となる縫目を形成する2本針本縫いミシン100(以下、ミシン100)に搭載されている。
【0010】
(実施形態の全体構成)
図1に示すように、ミシン100は、該ミシン100の外形の大部分を形成するミシン機枠10と、このミシン機枠10を構成するベッド部13の内部に配設された二つの釜機構30と、釜機構30に潤滑油を供給する本実施形態たる給油装置20とを備えている。
なお、ミシン100は、本実施形態においては詳述しないが、図示しない針を上下に駆動する針駆動機構(図示省略)、ミシン機枠10のベッド部13の針板上に載置される被縫製物を搬送する送り機構(図示省略)、ミシン100の各機構部に駆動力を付与するミシンモータ(図示省略)、該ミシンモータの駆動力を各機構部に伝達する上軸(図示省略)、上軸から駆動力を得るとともに釜機構30及び図示しない送り機構に駆動力を伝達する下軸5等、被縫製物に本縫いを施すミシンとしての基本構成を具備しているものである。
【0011】
ミシン機枠10は、ミシン100の下方側に配設されたベッド部13と、ベッド部13の長手方向の一端側から上方に立設された縦胴部12と、縦胴部12の上端側からベッド部13の上方にかけて該ベッド部13と略平行に延出されたアーム部11とを備えており、側面視にて略コ字状を呈する形状となっている(図1参照)。
ベッド部13の長手方向の一端部(縦胴部12と逆側の端部)には釜機構30が内蔵されている。また、ベッド部13の下方側には、該釜機構30や図示しない送り機構と作業者との接触と、該釜機構30から漏洩するオイルの落下とを防止するためのボトムカバー14が設けられている。
なお、このボトムカバー14は、オイルパンと異なり、オイルを貯留するためのものではなく、ベッド部13の底部を覆うためのカバーである。
【0012】
釜機構30は、外釜及び該外釜に内嵌された内釜とで構成される周知のミシン釜(水平釜)31を備えている。ミシン釜31の下方側には釜軸台33が配設されており、ミシン釜31は、垂直な釜軸を介してこの釜軸台33により回転自在に支持されている。
釜軸台33には、後述する給油経路22を介してオイルタンク21から供給されるオイルを導く流路が形成されており、当該流路は、ミシン釜31側へと後述する還流経路23側へと分岐しており、還流経路23側への分岐路の途中には、潤滑油の量を調節する油量調節手段たる油量調節ねじ34が設けられている(図4参照)。また、2本針で縫製が行われる本実施形態においては、ベッド部13の長手方向に並んで2つの釜機構30、30が配設されており、これら釜機構30、30は、図示しない釜軸ギヤを介して下軸5と連結されている。これにより、下軸5から釜軸ギヤを介して各ミシン釜31、31が回転駆動されるようになっている。
また、釜機構30、30は、後述する給油装置20の給油経路22と還流経路23とによって形成される循環経路内において並列に配置されている(図2参照)。すなわち、後述する給油経路22は釜機構30の手前で二又に分岐されており、各釜機構30、30には二手に分岐されたオイルがそれぞれ供給されるものである。また、各釜機構30、30から排出されたオイルは、一本の流路すなわち還流経路23となってオイルタンク21に還流されるようになっている。
そして、釜機構30、30の摺動部には、該摺動部の摩擦を低減する潤滑油たるオイルが供給可能となっており、オイルは後述する給油装置20のオイルタンク21に貯留されている。
【0013】
(給油系統)
本実施形態たる給油装置20は、ミシン釜31を支持する釜軸台33を有する上記釜機構30に供給する潤滑油を貯留するオイルタンク21と、オイルタンク21から釜軸台33に潤滑油を導く給油経路22と、給油経路22を介してオイルタンク21から釜軸台33に潤滑油を送る給油ポンプ27と、釜機構30に供給された潤滑油のほぼ全体をオイルタンク21に導く還流経路23と、還流経路23を介して釜機構30からオイルタンク21に潤滑油を送る還流ポンプ28とを備えている。
また、本実施形態たる給油装置20は、給油経路22の、給油ポンプ27より下流部分から潤滑油の一部をオイルタンク21に導く排油経路24と、上記給油ポンプ27から搬送される潤滑油を釜軸台33側及びオイルタンク21側に分配する分配器25と、排油経路24への潤滑油の流量を調節する流量調節手段たる流量調節ねじ26と前述した各釜軸台33、33に設けられた油量調節手段としての油量調節ねじ34とを備えている。
【0014】
オイルタンク21は、流入口と流出口とを備える容器であり、本実施形態におけるオイルタンク21は、縦胴部12の内部に配設されており、給油装置20の他の構成や供給先である釜機構30の構成よりも上方に配置されている。このオイルタンク21の内部にはミシン100の各機構部に供給されるオイルが貯留されている。そして、このオイルタンク21から後述する給油経路22を介して釜機構30にオイルが供給されるようになっている。また、オイルタンク21が釜機構30よりも上方に設けられていることから、後述する還流経路23には、潤滑油をオイルタンク21まで引き上げるため、下軸5によって駆動される還流ポンプ28が設けられている。
【0015】
給油経路22は、ホースやチューブ或いは配管等の組み合わせによって構成されており、オイルタンク21から各釜機構30にオイルを搬送するための流路を形成するものである。
本実施形態における給油経路22は、オイルタンク21と給油ポンプ27とを連結する給油経路22a、給油ポンプ27と分配器25とを連結する給油経路22b、分配器25と釜機構30とを連結する給油経路22cにより構成されている。すなわち、オイルタンク21と釜機構30、30との間には給油ポンプ27が配設されており、更に給油ポンプ27と釜機構30、30との間には分配器(分流器)25が配設されている(図2参照)。
【0016】
給油ポンプ27は、ミシン100の縫製動作に連動して回転駆動される前述した下軸5に連動して駆動されるプランジャーポンプである。即ち、給油ポンプ27は、ミシン100の縫製動作中は下軸5に連動して常に駆動され、その回転に比例した流量で水平釜31を支持する釜軸台33に対して十分な量のオイルを供給することができるようになっている。この給油ポンプ27の下流には分配器25が配設されている。
【0017】
分配器25は、一つの流入口と二つの流出口とを備えており、流出口には給油経路22bが接続され、流出口には給油経路22cと排油経路24とがそれぞれ接続されている。そして、上記給油ポンプ27から送り出されたオイルを2方向に分配することが可能となっている。また、分流された一方の流出口(排油経路24と接続された流出口)側の経路には、流量調節手段として流量調節ねじ26が設けられている。
流量調節ねじ26は、先端がテーパ状即ち略円錐状に形成されており、分配器25の内部に形成された一方の流出口側の流路に対して外部から螺入可能となっている(図3参照)。即ち、流量調節ねじ26の回転操作量によって一方の流出口から排出されるオイルの流量をゼロから全開まで調節することができるようになっている。また、これにより、他方の流出口から排出されるオイルの量を相対的(間接的)に調節することが可能となっている。つまり、流量調節ねじ26を操作して一方の流出口すなわち排油経路24側に排出されるオイルの量をゼロから全開まで調節することにより、他方すなわち給油経路22c側に流出されるオイルの流量を、給油ポンプ27によって分配器25に流入されるオイルのうち、半分程度ないし全部の範囲で調節することが可能となっている。
【0018】
排油経路24は、上記給油経路22と同様にホースやチューブからなっており、一端が上記分配器25に形成された2つの流出口のうち、流量調節ねじ26が設けられている側の流出口に連結されるとともに、他端がオイルタンク21に連結されている。従って、上記給油ポンプ27の駆動によりオイルタンク21から搬送され、分配器25に流入されたオイルの一部を、釜機構30の上流即ち給油経路22の途中で選択的にオイルタンク21に戻すことが可能となっている。
【0019】
還流経路23は、上記給油経路22と同様に、ホースやチューブ或いは配管等の組み合わせによって構成されており、釜機構30を通過したオイルのほぼ全体をオイルタンク21に戻すための流路を形成している。
ここで、釜機構30を通過したオイルのほぼ全体とは、上流側から釜機構30に供給されたオイルのうち、当該釜機構30の摺動部の潤滑により消費される一部のオイルを除く全体をいうものであって、摺動部を潤滑した後に再び流路に戻され、排出されるオイルと、摺動部に供給されることなくそのまま通過するオイルとの合計量をいうものである。
本実施形態における還流経路23の途中には、釜機構30を通過したオイルを上記オイルタンク21に送るための還流ポンプ28が設けられており、該還流経路23は、釜機構30と還流ポンプ28とを連結する還流経路23a、還流ポンプ28とオイルタンク21とを連結する還流経路23bにより構成されている。
【0020】
還流ポンプ28は、上記給油ポンプ27と同様に、下軸5に連動して駆動されるプランジャーポンプとなっている。すなわち、上記給油ポンプ27及び還流ポンプ28は、共に下軸5を回転軸とする同軸2連ポンプとなっており、下軸5の回転により、オイルを搬送するための駆動力を得るものである。
【0021】
次に、本実施形態に係るミシンの給油装置20の作用について、図面を参照して詳しく説明する。
製動作の開始に伴い図示しないミシンモータが駆動されると、上軸、プーリ及びベルト等を介して下軸5が回転され、下軸5の回転に伴い、水平釜が駆動されると共に、給油ポンプ27及び還流ポンプ28が駆動される。
給油ポンプ27の駆動により、給油経路22aを介してオイルタンク21内のオイルが強制的に吸い出され、給油ポンプ27を通過した後、給油経路22bを通過して分配器25に流入される。
ここで、流量調節ねじ26が緩められていると、排油経路24側の流路が全開となり、流入口から分配器25内に流入されたオイルは給油経路22cと排油経路24とにほぼ同量ずつ分配される。そして、一方で排油経路24側に分配されたオイルは該排油経路24に案内されてオイルタンク21に還流される。そして、流量調節ねじ26を回転させると、その回転量に応じて、排油経路24側への流入が徐々に低減し、他方、釜機構30側への供給流量は上昇する。
また、他方で給油経路22c側に排出されたオイルは、該給油経路22cに案内されて釜機構30、30の釜軸台33、33に供給される。ここにおいて、流量調節ねじ26の操作により上述した流量調節ねじ26が完全に閉じている状態から全開状態まで調節することで釜機構30側へのオイルの流量は2倍近くの流量調節が可能となる。
そして釜軸台33、33に供給されたオイルは、各釜軸台33、33の油量調節ねじ34、34の回転操作量により、適宜分配され、二つの釜機構30、30の釜軸台33、33にそれぞれ供給される。
釜軸台33、33の内側では、上述の場合と同様に、上流側から流入したオイルが下流側に向かって釜軸台33内を通過する途中で、排出側に設けられた油量調節ねじ34のねじ込み具合による釜軸台33内の圧力に応じてその一部が油芯35を通過し、ミシン釜31に供給され、それ以外のオイルはそのまま釜軸台33から排出される。
そして、釜軸台33、33から排出されたオイルは、還流ポンプ28により強制的に搬送され、還流経路23a、23bを通過してオイルタンク21に戻されるものである。
【0022】
以上のように、本実施形態に係るミシン100によれば、給油経路22における給油ポンプ27の下流部分から潤滑油の一部をオイルタンク21に導く排油経路24を設けたことにより、釜機構30への給油に際して余分となる潤滑油を釜機構30よりも上流側においてオイルタンク21に戻すことができる。また、この排油経路24に分流するオイルの流量を調節可能な流量調節手段として、流量調節ねじ26を設けたことにより、給油経路22c側に分流されるオイルの流量を相対的(間接的)に調節することができ、該給油経路を22c介して釜機構30に供給されるオイルの量を適宜調節することができる。したがって、釜機構30よりも上流側の給油経路22に分配器25および流量調節ねじ26を設けたことにより、釜軸台33に供給されるオイルの供給量の調整範囲を従来よりも大幅に拡大することができ、種々の縫製条件に応じたミシン釜31の回転数の変化に応じて適切な量のオイルを供給することが可能となる。また、これにより、釜機構30におけるオイルの飛散や漏洩を防止することができ、製品となる被縫製物へのオイルの付着を防止することができる。
また、ミシン釜の給油装置20には、二つの釜機構30が設けられており、これらの釜機構30は給油経路22と還流経路23とにより形成される循環経路において並列に配設されているため、排油経路24側に分流されるオイルの流量を調節する流量調節ねじ26に加えて、それぞれの釜機構30、30に分配されるオイルの流量を調節することにより、各釜機構30、30に対して個別にオイルの供給量を調節することができる。これにより、各釜機構30、30に供給されるオイル量の調節範囲をより一層拡大することが可能となる。
なお、流量調節手段たる流量調節ねじ26は、本実施形態では分配器25に形成された二つの流出口のうち、オイルタンク21と連結される流出口側にのみ設ける構成としたが、必ずしもこれに限定されるものではない。すなわち釜機構30と連結される流出口側にのみ設ける構成としてもよいし、また、何れの流出口にも設ける構成としてもよい。
また、本発明たるミシン釜の給油装置20は、本実施形態では2本針本縫いミシンを例に挙げて説明したが、二つ以上の釜機構30を備えるミシンであっても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係るミシン釜の給油装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係るミシン釜の給油装置における給油回路の全体を示す模式図である。
【図3】本実施形態における分配器(分流器)25を示す模式図である。
【図4】本実施形態における釜機構30の内部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
5 下軸
10 ミシン機枠
11 アーム部
12 縦胴部
13 ベッド部
14 ボトムカバー
20 給油装置
21 オイルタンク
22 給油経路
23 還流経路
24 排油経路
25 分配器(分流器)
26 流量調節ねじ(テーパ)
27 給油ポンプ(プランジャーポンプ)
28 還流ポンプ( 〃 )
30 釜機構
31 ミシン釜(水平釜)
33 釜軸台
34 油量調節ねじ
35 油芯
100 ミシン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン釜を支持する釜軸台を有する釜機構に供給する潤滑油を貯留するオイルタンクと、
前記オイルタンクから前記釜軸台に潤滑油を導く給油経路と、
前記給油経路を介して前記オイルタンクから前記釜軸台に潤滑油を送る給油ポンプと、
前記釜機構に供給された潤滑油のほぼ全体を前記オイルタンクに導く還流経路と、
前記還流経路を介して前記釜機構から前記オイルタンクに潤滑油を送る還流ポンプと、
前記釜軸台に設けられ、前記給油経路を介して前記オイルタンクから供給される潤滑油の量を調節する油量調節手段と、を備えているミシン釜の給油装置において、
前記給油経路の、前記給油ポンプより下流部分から潤滑油の一部を前記オイルタンクに導く排油経路と、
前記排油経路への潤滑油の流量を調節する流量調節手段と、を備えていることを特徴とするミシン釜の給油装置。
【請求項2】
2つの前記釜機構を備えると共に、当該2つの釜機構は、前記給油経路と前記還流経路とにより形成される循環経路内において並列に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のミシン釜の給油装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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