説明

ミスト測定装置

【課題】視認性が向上しかつ高精度に検出できるミスト測定装置を提供する。
【解決手段】ハウジング30と、このハウジング30に設けられ、ミスト状切削剤1に光を出射する光源15とを備えたミスト測定装置において、ハウジング30が、ミスト状切削剤1の噴出部10aの周囲に設けられており、光源15から出射される光が可視光線であり、ハウジング30に、ミスト状切削剤1からの散乱光を観察するための観察部33が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト測定装置に関し、より詳細には、工作機械に使用されるミスト状の切削剤を、目視により測定可能なミスト測定装置及びミスト量を自動測定可能なミスト測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械で、例えば、自動車部品を切削加工する際には、切削剤が供給されるが、この切削剤の量を必要最小限とするMQL(Minimum
Quantity Lubrication:最小量潤滑)という手法がある。MQLによってミスト状の切削剤を供給すると、使用される切削剤の量が少ないので、環境負荷が低下したり、コストが低減したりするなど、様々な利点がある。したがって、MQLでは、切削剤の供給量はできるだけ少ないほうがよい。
【0003】
一方、工具の寿命や加工精度の観点からは、切削剤は十分に供給されているほうがよいので、MQLで加工する際は刃具の近傍、刃具とワークが接触する部分に、効率よく安定してミスト状の切削剤(以下、ミスト状の切削剤を「ミスト」という)を供給することが必要である。
そのためには、刃具近傍の油孔、例えば、ドリル自体に設けられた油孔から噴出するミストの状態や量を自動測定し、工作機械にフィードバックさせ過不足なくミストを噴出させなければならない。
この場合、ミストの量を肉眼で視認し、ミストの噴出状態が一目で確認できると、便利である。
【0004】
しかし、ミストの量は微量であるので、そのままでは視認できない。また、切削剤の噴出量の計測を、噴出前に切削剤が貯められている透明管の目盛りで行っても、ミストの消費量は微量であるために、細かな検出はできない。その上、ミストが液状になるなどの噴出不良がある場合は、透明管におけるミスト量の減少分と実際のミスト量とが一致しない。
さらに、切削加工設備のオートメーション化の観点からは、ミストの量を自動的に検出し、この検出量に基づいてミストの量が自動的に調整され、噴出不良を防止することが期待される。
【0005】
特許文献1では、非磁性体からなる本体の外周部に磁気センサが配設され、本体の内部にクーラントの通路を備え、磁性流体を含有させたミスト状のクーラントの流動状態を磁気センサで検出し、この検出出力に基づいて、クーラントの量を制御する方法が提案されている。
【0006】
特許文献2では、エアロゾル(ミスト)の割合を光学的に検出し、このエアロゾルが通る通路の内側に沈殿する潤滑剤膜の流量は重量で検出することによって、エアロゾルと沈殿状態との潤滑剤の流量を別々に測定する装置が提案されている。この光センサには、適切な光が測定装置内のエアロゾルの流れに向けられるタイプと、測定装置から光センサに向かって気流が流れ、その気流でエアロゾルが運ばれるタイプとの2つのタイプがある。
【0007】
特許文献3では、投光器の光を霧状潤滑剤の噴出箇所へ投射し、噴射状態の濃淡で決まる透過率を受光器で検出する工作機械用潤滑剤噴出状態検出装置と、投光器の光を霧状潤滑剤の噴出箇所へ投射し、霧状潤滑剤からの反射光を受光器で検出する工作機械用潤滑剤噴出状態検出装置とが提案されている。この工作機械用潤滑剤噴出状態検出装置では、霧状切削剤の透過光と反射光とを受光器で受光するので、投光器、噴出箇所、受光器は直線状に位置している。
【0008】
【特許文献1】特開2000−141162号公報
【特許文献2】米国出願公開US2006/0171788A1
【特許文献3】特開2003−53644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のクーラントの検出器では、クーラントがミスト状の極めて小さな微粒子からなるために、クーラントを目視することはできない。
また、クーラントに磁性体(磁性粒子)を含有させる必要があるので、作業工程が増えると共に、コストアップとなる。さらに、磁性体を含有させることで、金属加工、とりわけ磁性体を加工する際においては検出精度や切削精度が低下する。例えば、ワークが磁性体であると、クーラントと金属との間に磁力が働くために、切削剤の流れが悪くなったり、留まったりして、この状態で磁気センサを用いて切削剤に含まれる磁性粒子を検出しても、噴出量の時間的な変化を検出することはできない。
【0010】
特許文献2に記載の潤滑剤測定装置では、レーザは指向性が高すぎるために、狭い範囲だけしか出射できない。例えば、比較的安価な半導体レーザの場合では、波長が比較的長く、全く視認できないか、視認できても非常に視認しづらい。したがって、この潤滑剤測定装置では、光エアロゾルの噴出状態全体を直接視認することは略不可能である。
【0011】
さらに、光センサを利用して、潤滑剤の量を測定しているが、適切な光が測定装置内のエアロゾルの流れに向けられるタイプでは、光の方向を変化させており、エアロゾル全体の噴出状態を検出することはできない。
測定装置から光センサに向かって気流が流れ、その気流でエアロゾルが運ばれるタイプでは、気流によってエアロゾルが運ばれる途中で、沈殿したり、方向が変わったり、刃具とワークとの接触部分で直接測定ができない。また、重量測定では、沈殿したエアロゾルの量を測定することはできても、噴出状態の時間的な変化は捉えづらい。
【0012】
特許文献3に記載の工作機械用霧状潤滑剤検出装置は、本発明の出願人と一部同一の出願人によるものであり、本発明は、特許文献3に記載の発明とは別の検出方法を利用することによって、ミストの噴出状態を視認できるようにするとともに、光センサにおける霧状潤滑剤の検出に改良を加えたミスト測定装置である。
特許文献3では、投光器、噴出箇所、受光器は直線状に位置し、噴出箇所の透過光や反射光を測定しているが、ミスト(霧)状の切削剤に光を投射すると、光は一方向に行くわけではない。
ミスト状の切削剤に光が入射すると、光は一方向に反射したり、透過したりせずに、ミストの粒子で多方向に反射し、この反射を粒子間で何度も繰り返すことが多い。すなわち、ミスト状の切削剤に光が入射すると、その光は散乱する。したがって、反射光や透過光を測定するよりも散乱光を測定するほうが、微量な光を検出するのに効果的であり、また、透過光や反射光で、ミストを観察しようとしても、投光器からミストへ向かう光が目に入ってしまい直接視認することが難しい。
【0013】
本発明は、このような実情に鑑み、散乱光を目視で観察することによってミスト状切削剤の視認性が向上したミスト測定装置と、散乱光を光センサで検出できる高精度なミスト測定装置と、視認性が向上し、かつ光センサで高精度に検出できるミスト測定装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成すべく本発明は次の技術的手段を講じた。
第1の発明に係るミスト測定装置では、ハウジングと、ハウジングに設けられミスト状切削剤に光を出射する光源とを備えたミスト測定装置において、ハウジングが、ミスト状切削剤の噴出部の周囲に設けられ、光源の光が、可視光線であり、ハウジングに、ミスト状切削剤からの散乱光を観察するための観察部が設けられている。
【0015】
このようにすると、光源から出射された光が、ミストで散乱し、その散乱状態を目視で観察することができる。この場合、ハウジングが外光を遮断しており、光が可視光線であるので、このハウジングに設けられた観察部からミストの散乱光を観察すると、暗室に散乱光が浮かび上がるような状態になり、ミストの量や状態を視認することができる。
すなわち、切削剤がミスト状であるために光源から出射された光は、ミストの粒子間で何度も乱反射を繰り返し、散乱する。したがって、この散乱光を見ると、ミストの噴出状態を目視で観察することができる。
また、散乱光を見ると、光源からの出射光が直接目に入らないので、噴出状態を視認しやすい。
【0016】
第1の発明に係るミスト測定装置では、光源から出射される光の波長が、490nm以上550nm以下であることがさらに好ましい。
このようにすると、可視光線の中でも、視認性がよい略緑色の波長を利用するので、より明確に視認することができる。
【0017】
第1の発明に係るミスト測定装置では、光源からミスト状切削剤への光路に、内面が反射面になっている筒状の反射防止器が設けられていることが好ましい。
このようにすると、光源からのミストへの光が、観察部の向きに曲がらず、光源からの光が直接観察部で視認されにくくなる。また、効率よくミストに光が出射されるので、ミストの噴出状態の視認性が向上する。
【0018】
第2の発明に係るミスト測定装置では、ハウジングと、このハウジングに設けられ、ミスト状切削剤に光を出射する光源と、ハウジングに設けられ、ミスト状切削剤からの光を受光する光センサとを備え、この光センサの受光量に基づいてミスト状切削剤の噴出量を測定するミスト測定装置において、光センサが、ミスト状切削剤からの散乱光を受光し、ハウジングが、前記ミスト状切削剤の噴出部の周囲に設けられている。
【0019】
このように散乱光を光センサで受光すると、ミスト量が検出できる。
つまり、反射光や透過光でなく、散乱光を検出する。また、ミスト噴出部に設けられたハウジングで、外光を遮断しているので、センサの感度が高い。
なお、この場合、光源の波長を短くすると、光源からの出射光のエネルギーが増大する。したがって、ミストでの散乱光のエネルギーも増大し、光センサでの感度が向上するので、高精度にミスト量を観察することができる。また、視認しやすい波長の光であると、ミストの噴出状態が目視で確認することができる。
【0020】
第2の発明に係るミスト測定装置では、光センサで測定された噴出量に応じて、噴出されるミスト状切削剤の量を自動調整するミスト調整部を備えることが好ましい。
このようにすると、光センサで測定された光量、つまりミスト量に基づいて、噴出されるミスト量が調整されるので、MQLのオートメーション化をすることでき、人手がかからず、コストが低減する。
【0021】
第2の発明に係るミスト測定装置では、光センサが、複数設けられていることが好ましい。
このようにすると、ミストからの検出できる散乱光の光量が大きくなり、ミスト測定装置の精度が向上する。また、多方向から検出するので、刃具に光が遮られて検出される散乱光が小さくなる可能性が低くなるとともに、ミストの状態を多方向からより具体的に測定できる。
【0022】
第2の発明に係るミスト測定装置では、光源からミスト状切削剤への光路に、内面が反射面になっている筒状の反射防止器が設けられ、ミスト状切削剤から光センサへの光路に、集光レンズが設けられていることが好ましい。
このように、反射防止器が設けられていると、光源からの光が、光センサの向きに曲がらず、光源からミスト状切削剤への光が、直接光センサに入射することが低減する。また、効率よくミストに光が出射されるので、ミストの検出の感度が向上する。
また、ミストから光センサへの光路に集光レンズが設けられていると、ミストからの散乱光が集光されて、光センサに入射するので光センサの感度が向上し、ミストの状態を精度よく検出することができる。
【0023】
第2の発明に係るミスト測定装置では、光源の波長が、490nm以下であってもよい。
このようにすると、波長が490nm以下の光は、エネルギーが強いので、光センサの感度が向上し、光センサにおける電気的な検出精度が向上する。
【0024】
第2の発明に係るミスト測定装置では、光源の光が、可視光線であり、ハウジングに、ミスト状切削剤からの散乱光を観察するための観察部が設けられていてもよい。
このようにすると、光源の光が可視光線であるので、観察部からミストの状態を視認することができる。
【0025】
第2の発明に係るミスト測定装置では、光源が、波長が490nm未満の光源と、波長が490nm以上810nm以下の光源とを備え、ハウジングに、ミスト状切削剤からの散乱光を観察するための観察部が設けられていてもよい。
このように波長の異なる光源を備え、この2つの波長の光源を併用すると、波長が短いほど、光のエネルギーは高くなるので、波長が490nm未満の光は、エネルギーが強いために、光センサの感度が向上し、光センサにおける電気的な検出精度が向上する。
また、例えば、緑色、黄色などの波長が490nm以上810nm以下の光は、暗室下つまり黒地に対し、視認性がよいので、ミストの視認性が向上する。
【0026】
第2の発明に係るミスト測定装置では、光源が、波長が490nm未満の光源と、波長が490nm以上550nm以下の光源とを備え、ハウジングに、ミスト状切削剤からの散乱光を観察するための観察部が設けられていてもよい。
このように波長の異なる光源を備え、この2つの波長の光源を併用すると、波長が490nm未満の光は、エネルギーが強いので、光センサの感度が向上し、光センサでの電気的な検出精度が向上するとともに、波長が490nm以上550nm以下の光は、特に視認性がよいので、より明確に観察することができる。
以上のように2つの波長の光を併用することで、光センサでの感度がよく、かつ視認性も良いミスト測定装置を得ることができる。
この場合、波長が異なる2つの光源を同時に使用してもよく、必要に応じ光源を切り換えて使用してもよい。
【0027】
本発明に係るミスト測定装置では、光源に発光ダイオードが使用されていることが好ましい。
このようにすると、発光ダイオードは、様々な波長の光を出射できるので、前述のような、波長が490nm未満の光と、490nm以上550nm以下の光とを出射することができる。また、発光ダイオードは応答速度も速いので、自動制御の追従も速くできる。さらに、価格も安価で、ミスト全体を照らすのに適度な指向性がある。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、散乱光を目視で観察することによってミスト状切削剤の視認性が向上したミスト測定装置と、散乱光を光センサで検出できる高精度なミスト測定装置と、視認性が向上し、かつ光センサで高精度に検出できるミスト測定装置とを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、ミスト測定装置の全体図である。
このミスト測定装置100では、切削剤2が透明管3に満たされており、この切削剤2が計量ポンプ4により送出される。計量ポンプ4は空圧駆動のプランジャー式であり、切削剤用ソレノイドバルブ13の動作に従い、切削剤2の吐出を行なう。
【0030】
計量ポンプ4の動作頻度を制御することによって、切削剤2の噴出量を調節し、また、透明管3に設けられた目盛りを読むことによって、切削剤2の全消費量を求める。なお、この透明管3における目盛りでの検出は、ミスト噴出量の総量を測定するために行い、この検出量が、微量の検出が必要なミスト噴出の制御に使用されることはない。
【0031】
さらに、この切削剤2は複流路回転継手5を介して、回転側である工作機械の主軸6内部における先端部の刃具10近傍に設けられたミキシングノズル8に搬送される。
ミキシングノズル8の内部では、空気22と切削剤2が混合されて、切削剤2がミスト状にされる(以下、ミスト状の切削剤2を便宜上「ミスト1」という)。
そして、ミスト測定部11の内部に刃具10の先端が挿入され、このミスト測定部11内部で、ミスト1の噴出状態とミスト量とが測定される。この刃具10には、ドリルが使用されており、他の形状の刃具と交換自在に工具ホルダ9に取り付けられている。刃具10の先端には、ミスト1の噴出部10aが設けられている。
【0032】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るミスト測定部を示す図であり、図3は、図2のA−A’線断面図である。図4は、ミストの噴出状態の模式図である。
図2及び図3に示すように、このミスト測定部11は、箱形であり、その箱内部の上方に光源である発光ダイオード15が設けられている。そして、発光ダイオード15からの光の出射方向と、ミスト1の噴出方向(図3で紙面に垂直な方向)との双方に対して垂直にフォトトランジスタ16が設けられている。
また、ミスト測定部11におけるフォトトランジスタ16の反対面に透明な窓からなる観察部33が設けられている。したがって、観察部33も、フォトトランジスタ16と同様に、発光ダイオード15の出射方向とミスト1の噴出方向の双方に対して垂直である。
【0033】
そして、発光ダイオード15から出射された光が、ミスト1で散乱され、散乱光をフォトトランジスタ16で検出することにより、図1のミスト1での散乱光を検出する。
そして、この得られた散乱光の光量に基づいて、図1のミスト調整部26で、噴出されるミストの量を調整する。
フォトトランジスタ16からのアナログ電気信号は、図1に示す増幅器17で増幅された後、A/D変換器18を通ることによってデジタル信号に変換され、PLC(Programmable
Logic Controller)19に入力される。なお、検出されたミスト1は、その後、真空ポンプからなる排出装置25を通ってミスト測定部11の外部に放出される。
【0034】
PLC19では、ミスト1に対してCNC(Computer
Numeral Control、コンピュータ数値制御)が行われ、光センサからのデータを解析し、ミスト量に換算する。そして、ミスト量が設定量を超えたり、設定量に満たなかったりする場合は、異常メッセージを出すとともに、空気用ソレノイドバルブ20、切削剤用ソレノイドバルブ13及び計量ポンプ4に制御信号を送り、ミスト量を調整する。
【0035】
空気用ソレノイドバルブ20と切削剤用ソレノイドバルブ13は、空気源21に接続されており、空気源21から送られる圧縮空気に対する電磁弁の役割を果たす。
以上のように、ミスト測定装置100は、ミスト1の噴出状態を自動的に検出し、その検出状態に応じ、ミスト1の噴出量を自動的に調整する。
【0036】
以下、ミスト測定部11でのミスト1の検出を詳細に説明する。
図3、図4に示すように、ミスト測定部11におけるハウジング30の挿入口から刃具10が挿入され、この刃具10先端の噴出部10aからミスト1が噴射される。このハウジング30には、光源である発光ダイオード15が、発光ダイオード固定部31によって取り付けられ、この発光ダイオード15の光の出射方向には、筒状であって、内面が反射面32aとなっている反射防止器32が設けられている。
【0037】
また、前述のように、ハウジング30には、光源である発光ダイオード15に対して垂直方向に、透明な窓状の観察部33が設けられており、光センサであるフォトトランジスタ16も、発光ダイオード15に対して垂直に取り付けられている。なお、このフォトトランジスタ16はフォトトランジスタ固定部34によってハウジング30に固定される。
フォトトランジスタ16への受光路には、筒状の受光路管35と、集光レンズである非球面コンデンサレンズ36が取り付けられている。以上のような、ミスト測定部11でミスト1の測定が行われる。
【0038】
まず、発光ダイオード15の出射光は、ミスト1に向けて出射される。そして、その出射光が、反射防止器32を通って、ミスト1で散乱する。
図5は、ミストでの散乱状態を示す図である。
図5に示すように、発光ダイオード15からの光は、ミスト1の粒子1aに当たると、散乱する。すなわち、一方向に反射したり、透過したりせずに、様々な方向に反射し、この乱反射をミスト1の粒子1a間で何度も繰り返す。
【0039】
したがって、この散乱光を観察部33で、目視すれば、ミスト1の噴出状態を視認することができる。なお、ハウジング30は、外光を遮断するため、ミスト測定部11内部は暗室になるので、より明確に噴出状態を視認できる。そして、光源に対して、観察部33は垂直に設けられているので、散乱光以外の光を視認することが低減されている。
【0040】
この場合、発光ダイオード15が出射する光は、視認を重視する場合、波長が490nm以上550nm以下であると略緑色であるので、視認しやすい。また、指向性も適度であり、各種のダイオードを噴出状態に応じて選択できる。
【0041】
また、散乱光は、光センサであるフォトトランジスタ16で検出される。この場合、ミスト1からの散乱光は、受光路管35を通り、非球面コンデンサレンズ36で集光された後、フォトトランジスタ16で検出される。フォトトランジスタ16も、発光ダイオード15の出射光に対して垂直であるので、散乱光以外の光を受光することが低減されている。
【0042】
反射防止器32は、内面に反射面32aを有し、この反射面32aで発光ダイオード15の出射光が反射されることによって、発光ダイオード15の出射光の範囲をミスト1に合わせて調整することができる。また、受光路管35があるので、フォトトランジスタ16に、発光ダイオード15からミスト1への出射光が入射することが少ない。さらに、フォトトランジスタ16への入射光は非球面コンデンサレンズ36で集光されているので、フォトトランジスタ16の散乱光に対する感度が高まり、高精度にミスト量を測定することができる。
【0043】
発光ダイオード15が出射する光は、フォトトランジスタ16での検出を重視する場合、波長が490nm未満であると、光のエネルギーが高い。また、前述のように、波長が490nm以上550nm以下であると視認しやすい。
【0044】
本実施形態のミスト測定装置100を用いて、吐出容量が異なる3種類の計量ポンプ4を交換することによって、この計量ポンプ4の動作頻度を0.2〜4.2Hzに変化させて実験を行った。
図6は、第1の実施形態での実験条件である。
図6に示すように実験時の発光ダイオード15の波長は520nmであり、視認しやすく、比較的エネルギーも高い光である。
ドリルの回転数は、フォトトランジスタ16で検出する場合が5617rpmであり、その他の場合では0rpmである。
【0045】
目視にて観察した結果、光源がOFFの場合と、光源がONしても、切削剤が噴出していない場合(ミスト1を0ml/hで噴出)とでは、観察部33から観察しても暗い状態であるが、ミスト1を15ml/hで噴出すると、観察部33から、内部がやや明るい状態が観察でき、ミスト1が75ml/hで噴出すると、全体が明るい状態になり、ミスト部分が極めて明るく、図4のハッチングに示すようなミスト1の噴出状態が、はっきりと確認できた。
【0046】
また、図1に示すオシロスコープ27で、ポンプ駆動命令の信号と、増幅器17で増幅後のフォトトランジスタ16の出力信号を観察することによって、このミスト測定装置100の性能確認実験を行なった。
図7〜図11が、ポンプ駆動命令と、出力信号の測定結果である。図7は、空気のみ噴出している状態であり、図8がスモールポンプを使用してポンプ駆動命令をパルス状に変化させた場合、図9がミディアムポンプを使用してポンプ駆動命令をパルス状に変化させた場合、図10がラージポンプを使用してポンプ駆動命令をパルス状に変化させた場合を夫々示す。図8、図9、図10における切削剤2の供給量はいずれも15ml/hである。なお、図7〜図10では、ポンプ駆動命令と、フォトトランジスタ16の出力信号(実際には増幅器17で増幅後の出力信号)を同一の図に記載しているが、図7ではポンプ駆動命令はゼロであり、図8〜図10において、ポンプ駆動命令をパルス状に変化させている場合であっても、ポンプ駆動命令がLOWの場合はゼロを意味する。
【0047】
図7に示すように、ミスト1を噴出しないで、空気のみを噴出している場合は、フォトトランジスタ16の出力信号はゼロである。そして、図8、図9、図10に示すように、いずれのポンプを使用した場合であっても15ml/hの噴出量に対して、検出量の平均は5mV程度であり、噴出パターンの影響を受けることなく、噴出量に対して検出量が追従している。
この場合、ミディアムポンプによる15ml/hの噴出は、通常のMQLドリル加工で使用される一般的な条件であり、実用性を満たしている。
【0048】
図11は、切削剤供給量と平均出力信号を示す図である。
図11に示すように、切削剤供給量を変化させても、平均出力との関係は、略線形であり、良好な結果が得られた。
以上のように、光散乱方式により、ミスト1の噴出状態が視認でき、かつ光センサで噴出量が検出できることを実験的に確認した。その結果、光散乱方式によるミスト1の検出が、十分実用性を有することが確認できた。
【0049】
図12は、本発明の第2の実施形態に係るミスト測定部を示す図である。
第2の実施形態では、光源である発光ダイオード15を、ミスト1の噴出方向に対して、斜め上方向から光を出射するように配置している。
ミスト1に対して斜め方向に、発光ダイオード15から光を出射すると、出射光が刃具10に遮られることも少なく、ミスト全体に行き渡り、ミスト1での散乱光が大きくなる。
【0050】
また、光センサであるフォトトランジスタ16が3つ(16a〜16c)設けられており、1つのフォトトランジスタ16aは、光源である発光ダイオード15の出射方向に対し、垂直な方向で受光し、残り2つのフォトトランジスタ16b、16cは、ミスト測定部11の上部と下部に設けられている。このように、フォトトランジスタ16を多数設けることで、検出できる散乱光が増大し、ミスト測定部11の感度が高まり、高精度にミスト1の状態を検出できる。また、多方向から散乱光を検出しているので、ミスト1の噴出状態を把握することもできる。また、観察部33から、ミスト1の噴出状態を視認することができる。
この第2の実施形態においてもミスト1での散乱光を利用することで、ミスト1を視認できるとともに、フォトトランジスタ16で高精度に検出することができる。
【0051】
図13は、本発明の第3の実施形態に係るミスト測定部を示す図である。
第3の実施形態では、ミスト1の噴出方向に対して、2つの発光ダイオード15で、斜め上方向と斜め下方向から光を出射している。そして、フォトトランジスタ16は第2の実施形態と同様に、3つ設けられている。そして、観察部33から、ミスト1の噴出状態を視認することができる。
この場合、発光ダイオード15の波長は、一方が、490nm未満である。波長が490nm未満であると、エネルギーの高い光であり、フォトトランジスタ16の感度が向上する。
また、他方の発光ダイオード15は、波長が490nm以上810nm以下、望ましくは波長が490nm以上550nm以下の略緑色の光を出射する光源である。このように、略緑色の光を出射することで視認性が向上する。
【0052】
本発明は、以上のような実施形態に限られない。
ハウジング30は、暗室の機能、および光源や光センサの固定部材の機能を果たすものであれば、図示したような形状、配置でなくてもよく、また、暗室としての機能と、固定部材としての機能とが、別の部材で構成されていてもよい。同様に、光源や光センサの位置も変更可能である。
また、発光ダイオード15を1つしか図示していない第1の実施形態や第2の実施形態のミスト測定部11に、視認しやすい光と、エネルギーの高い光との2波長を有する2素子内蔵型の発光ダイオード15を設けてもよく、略同一の位置で近傍に2素子の発光ダイオード15を設けてもよい。以上のように、光源は、可視光線の波長(人により異なるが、波長が360nm程度〜810nm程度)、視認しやすい波長、エネルギーの高い波長(紫外線等の非可視光線を含む比較的短い波長)が区別されて使用されるものであれば、その波長や個数は適宜変更可能である。
そして、発光ダイオード15は、前述のように1素子であっても、2素子が内蔵されたワンパッケージ品であっても、2素子が別々に配置されていてもよく、その他3素子、4素子であってもよい。
【0053】
光センサも、散乱光を検出できるものであれば、フォトダイオード等の他の光センサや、紫外線センサ等の非可視光線に対するセンサも含み、その数も問わない。また、観察部33も散乱光が見易い位置に配置されていれば、その位置や形状は適宜変更してもよい。
また、以上の本実施形態では、刃具10の先端にミスト噴出部10aが設けられているが、刃具10とは、別の場所からミスト1が噴出していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ミスト測定装置の全体図である。
【図2】第1の実施形態に係るミスト測定部を示す図である。
【図3】図2のA−A’線断面図である。
【図4】ミストの噴出状態の模式図である。
【図5】ミストでの散乱状態を示す図である。
【図6】第1の実施形態での実験条件である。
【図7】空気のみのポンプ駆動命令と、出力信号の測定結果である。
【図8】スモールポンプを使用した場合のポンプ駆動命令と、出力信号の測定結果である。
【図9】ミディアムポンプを使用した場合のポンプ駆動命令と、出力信号の測定結果である。
【図10】ラージポンプを使用した場合のポンプ駆動命令と、出力信号の測定結果である。
【図11】切削剤供給量と平均出力信号を示す図である。
【図12】第2の実施形態に係るミスト測定部を示す図である。
【図13】第3の実施形態に係るミスト測定部を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ミスト
2 切削剤
10 刃具
10a 噴出部
11 ミスト測定部
15 発光ダイオード
16 フォトトランジスタ
26 ミスト調整部
30 ハウジング
32 反射防止器
32a 反射面
33 観察部
35 受光路管
36 非球面コンデンサレンズ
100 ミスト測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに設けられミスト状切削剤に光を出射する光源とを備えたミスト測定装置において、
前記ハウジングが、前記ミスト状切削剤の噴出部の周囲に設けられ、
前記光源の光が、可視光線であり、
前記ハウジングに、前記ミスト状切削剤からの散乱光を観察するための観察部が設けられていることを特徴とするミスト測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のミスト測定装置において、
前記光源から出射される光の波長が、490nm以上550nm以下であることを特徴とするミスト測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のミスト測定装置において、
前記光源から前記ミスト状切削剤への光路に、内面が反射面になっている筒状の反射防止器が設けられていることを特徴とするミスト測定装置。
【請求項4】
ハウジングと、前記ハウジングに設けられ、ミスト状切削剤に光を出射する光源と、前記ハウジングに設けられ、前記ミスト状切削剤からの光を受光する光センサとを備え、前記光センサの受光量に基づいてミスト状切削剤の噴出量を測定するミスト測定装置において、
前記光センサが、前記ミスト状切削剤からの散乱光を受光し、
前記ハウジングが、前記ミスト状切削剤の噴出部の周囲に設けられていることを特徴とするミスト測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載のミスト測定装置において、
前記光センサで測定された前記噴出量に応じて、
噴出される前記ミスト状切削剤の量を自動調整するミスト調整部を備えることを特徴とするミスト測定装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のミスト測定装置において、
前記光センサが、複数設けられていることを特徴とするミスト測定装置。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれかに記載のミスト測定装置において、
前記光源から前記ミスト状切削剤への光路に、内面が反射面になっている筒状の反射防止器を備え、前記ミスト状切削剤から前記光センサへの光路に、集光レンズを備えることを特徴とするミスト測定装置。
【請求項8】
請求項4ないし7のいずれかに記載のミスト測定装置において、
前記光源の波長が、490nm以下であることを特徴とするミスト測定装置。
【請求項9】
請求項4ないし7のいずれかに記載のミスト測定装置において、
前記光源の光が、可視光線であり、
前記ハウジングに、前記ミスト状切削剤からの前記散乱光を観察するための観察部が設けられていることを特徴とするミスト測定装置。
【請求項10】
請求項4ないし7のいずれかに記載のミスト測定装置において、
前記光源が、波長が490nm未満の光源と、波長が490nm以上810nm以下の光源とを備え、
前記ハウジングに、前記ミスト状切削剤からの前記散乱光を観察するための観察部が設けられていることを特徴とするミスト測定装置。
【請求項11】
請求項4ないし7のいずれかに記載のミスト測定装置において、
前記光源が、波長が490nm未満の光源と、波長が490nm以上550nm以下の光源とを備え、
前記ハウジングに、前記ミスト状切削剤からの前記散乱光を観察するための観察部が設けられていることを特徴とするミスト測定装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載のミスト測定装置において、
前記光源に発光ダイオードが使用されていることを特徴とするミスト測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−232723(P2008−232723A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70606(P2007−70606)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年9月20日〜22日 社団法人精密工学会主催の「2006年度精密工学会秋季大会」において文書をもって発表
【出願人】(591059445)ホーコス株式会社 (39)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】