説明

ミスフォールドタンパク質エピトープを予測するための方法およびシステム

タンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定する方法およびシステムが提供される。前記タンパク質の構造を表わすモデルから、1または複数のアミノ酸残基のセットが選択され;各セットのアンフォールディングの自由エネルギーが決定され;アンフォールディングの全確率が最小の確率を上回るか、またはアンフォールディングの自由エネルギーが最小のエネルギーを下回るセットからエピトープが同定される。他の態様において、本発明は、疾患を診断および治療し、また、エピトープ予測法により同定されるエピトープの存在について試料をスクリーニングするための、このようなエピトープおよび関連抗体の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピトープを同定する方法およびシステムを提供する。より具体的に述べると、本発明は、タンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定する方法およびシステムを提供する。
【背景技術】
【0002】
小胞体(ER)は、その中で、真核生物ゲノムによりコードされるタンパク質のほぼ3分の1が、内腔分泌タンパク質または膜貫通タンパク質として移行し、フォールディングする、フォールディングに特化した環境である。タンパク質は、ゴルジ体へとカーゴを送達するための輸送媒体を生成させるコンカタマー複合体II(COPII)機構により、ERから移出される(非特許文献1)。ER関連フォールディング(ERAF)経路はまた、ミスフォールドタンパク質を細胞質内プロテアソーム系への移行の標的とする、ER関連分解(ERAD)経路とも連携する(非特許文献2;非特許文献3)。細胞質タンパク質には、分子シャペロン、ならびにユビキチン−プロテアソーム(proteosomal)経路、および自己貪食性分解経路を伴う、タンパク質フォールディングの品質管理系も存在する(Kubota、J. Biochem.(2009年))。
【0003】
細胞表面上、細胞外環境、または細胞質において発現した正常フォールドタンパク質が病理学的状態のためにミスフォールディングすると、多くのミスフォールディング病が発生し、その結果、ミスフォールド凝集物がもたらされる。アルツハイマー病(AD)、筋委縮性側索硬化症(ALS)、およびパーキンソン病/レビー小体病(PD、LBD)などの神経変性疾患は、ADにおけるアミロイド前駆体タンパク質(APP)のタウ断片およびAβ断片;ALSにおけるスーパーオキシドディスムターゼ1(SOD1);ならびにPDおよびLBDにおけるα−シヌクレインを含めた、正常タンパク質のミスフォールド凝集物による神経細胞内沈着物と関連する。
【0004】
神経系および他の組織で発現する細胞表面の糖タンパク質である、細胞プリオンタンパク質のミスフォールディングは、孤発性および家族性の原因を有するクロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー症候群(GSS)、クールー病、および致死性家族性不眠症(FFI)に関与する。正常にフォールディングしたプリオンタンパク質(PrPと称する)は、鋳型指向ミスフォールディングと称する過程において、疾患によりミスフォールディングしたプリオンタンパク質(総称的にPrPScと称する)と物理的に接触することにより誘導される、病理学的にミスフォールディングした立体構造を取りうる。PrPScの三次構造および二次構造は、PrPの三次構造および二次構造とは実質的に異なり、これにより、それまでは包埋されていた残基が溶媒に露出し、本発明ではこれを、一方から他方を区別するための根拠として用いる。ミスフォールディング過程を誘発する、ミスフォールディングしたプリオンタンパク質の元になる凝集物は、孤発性CJDにおける通り、内因的に発生する場合もあり、変異性CJDおよび乳腺刺激性CJDにおける通り、別の動物またはヒトに由来する感染病原体として獲得される場合もある。前者の場合、プリオンタンパク質遺伝子(PRNP)によりコードされる配列の特定の遺伝性突然変異は、個体にPrPのミスフォールディングに対する素因を与え、プリオン病の臨床的発現を誘発する。現在のところ、プリオン病を治癒させる治療は存在せず、その結果、死亡率は100%となっている(非特許文献4)。プリオンタンパク質は、動物の疾患にも関与している。経済的利害を伴う疾患には、畜牛のウシ海綿状脳症(BSE)、ヒツジのスクラピー、およびシカの慢性消耗性疾患である。ヒト疾患の場合と同様、動物のプリオン病にも、有効な治療またはワクチンによる予防が存在しない。
【0005】
タンパク質ミスフォールディング病は、中枢神経系の疾患に限定されない。甲状腺ホルモンのキャリアタンパク質であるトランスサイレチン(TTR)のミスフォールディングおよび凝集が、家族性アミロイド性多発性神経障害、および老人性全身性アミロイドーシスに関与している(非特許文献5)。腎不全のために長年にわたり血液透析を受ける患者は、体内の大半の細胞上に存在する1型主要組織適合性複合体(MHC)の構成要素である、腎内におけるβミクログロブリンアミロイド沈着物の蓄積を患う場合がある(非特許文献6)。
【0006】
タンパク質凝集による疾患は、大きな2つのクラス:天然では構造化されていないタンパク質またはペプチド(例えば、それぞれ、アルファシヌクレインおよびAβ)を伴う疾患と、構造化されたドメインを保有するタンパク質(例えば、PrPおよびTTR)を伴う疾患とにおいて考えることができる。1つの仮説によれば、天然において構造化されているタンパク質は、進化により、生理学的条件において可溶性を維持するように選択されていると考えられている、すなわち、それらは、自発的には凝集しない。
【0007】
タンパク質のミスフォールディングはまた、フォールディングの忠実性が全体的に低下する結果、ミスフォールドタンパク質が細胞表面に常在する(resident)に至る、癌性細胞においても生じる。癌細胞では、細胞周期制御が調節異常を来す結果、それらが制御不能な形で増殖するに至る。抑制されずに、転移を介してこれらの細胞が増殖および分散すれば、内臓の解剖学的および機能的な障害が引き起こされ、死活的栄養物についての競合が生じる。正常なヒト細胞は、組織修復または組織再生に必要な場合を除き、分裂を防止する多くのシグナル伝達機構により、注意深い調節的制御下にある。癌性細胞では、これらのシグナルに対するそれらの感受性を失わせる体細胞突然変異が蓄積される。これらおよび他の突然変異の帰結は、タンパク質フォールディングの品質管理の低下である:健康な細胞は、適正にフォールディングされずに合成されたタンパク質を認識および破壊することが可能であるが、一部の癌細胞は、フォールディングの忠実性およびモニタリングの低下を示し、これにより、細胞膜内へのミスフォールドタンパク質の組込みがもたらされうる(Nature、426巻、6968号、883〜909頁において総説されている)。正常時には分子内に包埋されている、これらのミスフォールドタンパク質の細胞外ドメインは、タンパク質表面上において細胞外環境へと露出し、それ自体としてエピトープを提示して選択的に同定される。したがって、ミスフォールディングした細胞表面タンパク質は、癌性細胞と、それらの適正なタンパク質フォールディング機構を保持する正常細胞とを識別するための診断ツールおよび治療的標的化をもたらしうる。
【0008】
フォールディングの忠実性は、選択された腫瘍細胞が、特定のタンパク質を過剰発現させることにより、特に損なわれると予測される。どの膜タンパク質が過剰発現するかは、癌の形態に依存する。例えば、一部の侵襲性乳癌が、HER2を過剰発現させる(Milaneziら、Expert Rev Mol Diagn、8巻(4号)、417頁(2008年))のに対し、一部の肺癌および結腸癌は、EGFRを過剰発現させる(CiardielloおよびTortora、N Engl J Med、358巻(11号)、1160頁(2008年))。機能不明の膜貫通タンパク質であるCD20は、B細胞リンパ腫細胞、毛様細胞白血病細胞、およびB細胞性慢性リンパ球性白血病細胞上において発現する。CD38が、白血病および骨髄腫と関連するのに対し、CD44は、結腸癌転移に関与する表面糖タンパク質である。これらの多様な受容体を標的とすることにより、癌性細胞を同定し、細胞傷害性治療をそれらへと方向づける機構がもたらされる。
【0009】
癌性細胞上におけるアポトーシス促進性シグナル伝達経路の活性化は、癌根絶の促進に関連する方法である。Fas受容体(FasR)は、細胞内シグナル伝達カスケードを介してアポトーシスの誘発に関与し、このため、FasRにアゴニストが結合すると、細胞死が誘発されうる(DanielおよびWilson、Curr Cancer Drug Targets、8巻(2号)、124頁(2008年))。非特異的にFasを活性化させると、一般に、Fas受容体を発現する健常細胞のアポトーシスがもたらされるため、この機構を治療戦略として利用する1つの手法は、癌性細胞上においてFas受容体を選択的に活性化させることでありうる。Notchシグナル伝達経路は、細胞運命の決定に関与し、細胞表面における調節異常的な形でのNotch受容体、Notchリガンド、およびNotch標的の発現は、子宮頚癌、頭頚部癌、子宮内膜癌、腎癌、肺癌、および乳癌、胸膜中皮腫、および悪性黒色腫のほか、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞非ホジキンリンパ腫、ならびに一部の急性骨髄性白血病、およびB細胞性慢性リンパ球性白血病に関与している(Nickoloffら、Oncogene、22巻、6598頁(2003年))。Notchタンパク質の細胞外ドメインを阻害することにより、癌性細胞上におけるNotchシグナル伝達を遮断すれば、制御不能の増殖の持続に必要とされる刺激を緩和する方策が与えられる。他の非悪性細胞もNotchシグナル伝達を用いるので、この阻害を癌性細胞に限定することが理想的である。健常細胞がミスフォールドNotchを細胞外環境へと提示することはないので、ミスフォールディングしたNotch受容体を特異的に標的とするならこれが達成されるであろう。加えて、細胞表面上におけるミスフォールディングしたNotch受容体タンパク質の存在を、悪性腫瘍の指標として用いることができれば、Notchに対する、ミスフォールディングした立体構造に特異的な抗体を投与することにより、ミスフォールドNotchを発現する悪性腫瘍細胞に対する免疫反応を誘導することができる。
【0010】
特定の癌細胞において予測される、過剰発現およびフォールディングの忠実性の障害は、構造化されたタンパク質ドメインの部分的なアンフォールディングを伴う可能性が高い。
【0011】
タンパク質のアンフォールディング過程は、タンパク質における自由エネルギーの変化を調べることにより説明することができる。ギブスの自由エネルギーは、定圧で生じる自発的反応に対して最小化される熱力学量である(Atkinsおよびde Paula、「Physical Chemistry」、第7版(2002年))。化学過程におけるその変化ΔGは、反応エンタルピーの変化ΔH、反応エントロピーの変化ΔS、および反応温度Tの関数:
【0012】
【化1】

である。
【0013】
代替的に、タンパク質のアンフォールディングでは、これに伴うタンパク質系の容量変化が小さいため、ヘルムホルツの自由エネルギーの変化ΔF=ΔU−TΔS[式中、エンタルピーの変化は、内部エネルギーの変化ΔUにより置き換えられる]もほぼ等価であり、これもまた計算することができる。タンパク質のアンフォールディング過程の場合、ΔHおよびΔSは、水素結合のネットワーク、フォールディングの形状、溶媒との相互作用、翻訳後修飾の存在を含めた、タンパク質構造についての多くのパラメータに依存する複雑な関数である。ギブスの自由エネルギーの変化は、平衡におけるアンフォールディング定数K:
【0014】
【化2】

により、平衡におけるフォールド状態およびアンフォールド状態の占有と関連する。
【0015】
タンパク質の部分アンフォールド状態についての占有の自由エネルギーがわかれば、すべての部分アンフォールド状態にわたるボルツマン因子の和として、分配関数Z:
【0016】
【化3】

を構築することができる。
【0017】
よって、所与の部分アンフォールド状態iについての平衡における占有確率は、
【0018】
【化4】

である。
【0019】
正常フォールドタンパク質とミスフォールドタンパク質との立体構造の違いにより、疾患特異的エピトープ(ミスフォールド形態において固有の形で溶媒に露出するタンパク質領域)の概念が導入される。したがって、このエピトープに対して作製される抗体は、もっぱら該ミスフォールドタンパク質だけに結合する能力を有し、これは、患者標本中におけるミスフォールドタンパク質の存在を同定することを介して、診断に用いられる。疾患特異的エピトープに対する抗体の治療への適用は、疾患の状況に依存する:ミスフォールドタンパク質を提示する癌細胞の場合、それらは、免疫系により破壊される癌性細胞をマークしうる;アミロイドーシスの場合、アミロイド原線維へのさらなるミスフォールド単量体の動員を阻害することにより、ミスフォールドタンパク質をマークし、免疫を介して貪食および破壊することにより、またおそらくは、正常フォールドタンパク質に対するミスフォールドタンパク質の結合を遮断することを介して、鋳型指向ミスフォールディングを防止することによりそれらは作用する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Leeら、Annu. Rev Cell Dev. Biol.(2004年)20巻、87頁
【非特許文献2】Wegeleら、Rev Physiol Biochem Pharmacol(2004年)151巻、1頁
【非特許文献3】Youngら、Trends Biochem. Sci.(2003年)28巻、541頁
【非特許文献4】Prusiner、Ann Rev Microbiol(1994年)48巻、655頁
【非特許文献5】BensonおよびKincaid、Muscle Nerve(2007年)36巻(4号)、411頁
【非特許文献6】Winchesterら、Adv Ren Replace Ther(2003年)10巻(4号)、279頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
有用な疾患特異的エピトープを同定する目的で、ミスフォールドタンパク質凝集物の高分解能構造は、合理的な予測の出発点をもたらしうる。残念ながら、技術的限界のために、PrPSc、Aベータからなるアミロイド、TTR、もしくはThy−1、または癌細胞上における任意のミスフォールドタンパク質についての、このような原子レベルの構造が有用となることはなく、安定的な不連続エピトープ、または構造化された立体構造エピトープの叙述も不要である。この手法のさらなる限界は、ミスフォールドタンパク質が、互換的形態の集団内に存在しうることであり、安定的な立体構造エピトープの形成は、普遍的でない可能性が高い。タンパク質内に含有されるすべての可能なエピトープに対して抗体を作製し、ミスフォールド形態に対する選択的反応性についてそれらをスクリーニングするステップを含む網羅的方法により、実験的に、ミスフォールディング特異的な直鎖状エピトープを同定することもまた、原理的には可能である。しかし、中程度のサイズのタンパク質において重複する何千もの直鎖状エピトープの場合、この「ショットガン法」は、高価で、手間がかかり、また時間浪費的である可能性が高い。したがって、タンパク質当たりの候補エピトープを、迅速かつ合理的な形で10種または数種に限定し、次いで、これを、治療標的または診断標的としての適性について厳密に特徴づけうることが望ましい。
【0022】
診断的観点および治療的観点からすると、タンパク質のミスフォールディングによりもたらされる疾患関連エピトープを同定することが重要である。現行の戦略は、全ミスフォールドタンパク質を免疫原として用いて、ミスフォールディング特異的抗体を調製することに焦点を当てている。この手法は、いくつかの欠点を有する。in vitroにおけるミスフォールディング機構と、in vivoにおけるミスフォールディング機構との差違により、組換えミスフォールドタンパク質は、疾患関連エピトープを露出させない場合がある。さらに、ミスフォールディング特異的エピトープは、全タンパク質環境ではよく認識されず(PrPScなど)、全タンパク質による免疫化では、自己免疫性を誘発しうる天然の表面エピトープを免疫的に認識するリスクが生じる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
その態様のうちの1つにおいて、本発明は、対象とするタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定するシステムを動作する方法であって、該システムが、入力ユニット、候補選択ユニット、自由エネルギー計算ユニット、およびエピトープ同定ユニットを含み、該方法は:
(a)該入力ユニットにより、該対象とするタンパク質の構造の少なくとも一部を表わすモデルを受け取るステップと;
(b)該候補選択ユニットにより、該モデルから、1または複数のセットを選択するステップであって、各セットは1または複数のアミノ酸残基を含む、ステップと;
(c)該自由エネルギー計算ユニットにより、各セットのアンフォールディングの自由エネルギーを決定するステップと;
(d)該エピトープ同定ユニットにより、該エピトープを、
(i)孤立した該セットの1または複数のアンフォールディングの自由エネルギーに基づき各セットのアンフォールディングの全確率を決定し、アンフォールディングの全確率が最小の確率を上回るセットからエピトープを同定すること;
(ii)アンフォールディングの自由エネルギーが最小のエネルギーを下回るセットからエピトープを同定すること
によって同定するステップと
を含む方法を提供する。
【0024】
該方法は、
(a)該方法が、該入力ユニットにより、モデル内の領域の選択されたものを受け取るステップをさらに含み;
(b)候補選択ユニットにより選択された該1または複数のセットの各々が、該領域内における少なくとも1つの残基を含む
ように適用することができる。
【0025】
モデルは、対象とするタンパク質の少なくとも一部の構造でありうる。モデルはまた、対象とするタンパク質の少なくとも一部の予測された構造でもありうる。予測された構造は、対象とするタンパク質、またはその一部の一次配列から予測されうるか、あるいは該対象とするタンパク質に対して相同的な、1もしくは複数の他のタンパク質、またはその一部の構造から予測される。
【0026】
候補選択ユニットにより、モデルから1または複数のセットを選択するステップは、該モデル内の1または複数の連続するアミノ酸残基の配列を含みうるすべてのセットを選択するステップを含む。候補選択ユニットにより、モデルから1または複数のセットを選択するステップはまた、該モデル内の1または複数の連続する残基の配列を含み、各セットが該領域内の少なくとも1つのアミノ酸残基を含む、すべてのセットを選択するステップも含む。候補選択ユニットにより、モデルから1または複数のセットを選択するステップはまた、該モデル内の1または複数の連続するアミノ酸残基の、2つ以上の連続しない配列を含むすべてのセットを選択するステップも含む。候補選択ユニットにより、モデルから1または複数のセットを選択するステップはまた、該モデル内の1または複数のアミノ酸残基の、2つ以上の連続しない配列を含み、各セットが該領域内の少なくとも1つのアミノ酸残基を含む、すべてのセットを選択するステップも含む。さらに、各配列は、最小の長さと最大の長さとの間の長さを含みうる。
【0027】
自由エネルギー計算ユニットにより、各セットのアンフォールディングの自由エネルギーを決定するステップは、該セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップを含む。該セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップはまた、
(a)(i)該セット内の少なくとも1つの極性原子を含み、(ii)モデルのアミノ酸配列中において1つより多いアミノ酸残基分、離れており、(iii)互いからカットオフ距離内にある、該モデル内の極性原子対の総数を決定するステップと;
(b)該セットのアンフォールディングのエンタルピーを、(a)で決定された該対の総数に、一定の相互作用エネルギーをかけた積として決定するステップと
も含む。
【0028】
該セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップはまた、
(a)(i)極性原子または非極性原子を含み、(ii)該セット内の少なくとも1つの原子を含み、(ii)モデルのアミノ酸配列中において1つより多いアミノ酸残基分、離れており、(iii)互いからカットオフ距離内にある、該モデル内の原子対の総数を決定するステップと;
(b)該セットのアンフォールディングのエンタルピーを、(a)で決定された該対の総数に、一定の相互作用エネルギーをかけた積として決定するステップと
も含む。
【0029】
カットオフ距離は、約2オングストローム〜約7オングストロームでありうる。一定の相互作用エネルギーは、約0.5kcal/mol/相互作用〜約2kcal/mol/相互作用でありうる。
【0030】
セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップはまた、該セット内の少なくとも1つの原子を含む、モデル内の各極性原子対について、以下の式:
【0031】
【化5】

[式中、
ΔHは、該極性原子対のアンフォールディングのエンタルピーであり;
【0032】
【化6】

は、フィッティングパラメータであり;
θは、該極性原子に関与する炭素に対する共有結合の間の角度であり;
rは、該極性原子対の間の距離であり;
βは、フィッティングパラメータである]
を解いた結果を合計するステップも含みうる。
【0033】
セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップはまた、(i)該セット内の少なくとも1つの原子を含み、(ii)極性原子または非極性原子を含む、モデル内の各原子対について、以下の式:
【0034】
【化7】

[式中、
ΔHは、該極性原子対のアンフォールディングのエンタルピーであり;
【0035】
【化8】

は、フィッティングパラメータであり;
θは、該原子に関与する炭素に対する共有結合の間の角度であり;
rは、該原子対の間の距離であり;
βは、フィッティングパラメータである]
を解いた結果を合計するステップも含みうる。
【0036】
セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップはまた、
(a)モデル内のアミノ酸残基を含む、極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積を決定するステップ;
(b)該セットを除去した、モデル内のアミノ酸残基を含む、極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積を決定するステップ;
(c)孤立した該セット内のアミノ酸残基を含む、極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積を決定するステップ;
(d)(a)で決定された極性官能基の溶媒露出表面積を差し引いた、(b)および(c)で決定された極性官能基の溶媒露出表面積の和を決定するステップ;
(e)(a)で決定された非極性官能基の溶媒露出表面積を差し引いた、(b)および(c)で決定された非極性官能基の溶媒露出表面積の和を決定するステップ;
(f)(a)で決定されたヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積を差し引いた、(b)および(c)で決定されたヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積の和を決定するステップ;
(g)以下の式:
【0037】
【化9】

[式中、
ΔHは、該セットのアンフォールディングのエンタルピーの変化であり;
Tは、温度であり;
ΔASA極性は、(d)で決定される非極性官能基の溶媒露出表面積の変化であり;
ΔASA非極性は、(e)で決定される非極性官能基の溶媒露出表面積の変化であり;
ΔASAヒドロキシルは、(f)で決定されるヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積の変化である]
を解くことにより、該セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップ
も含みうる。
【0038】
孤立した該セットの、極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積を決定するステップは、
(a)対象とするタンパク質のN末端またはC末端に位置しない、該セット内の各アミノ酸残基について、
(i)該アミノ酸残基と、対象とするタンパク質のアミノ酸配列内のアミノ酸残基に最も近接する第1の数のアミノ酸残基とにより形成されるポリペプチドを選択するステップ;
(ii)分子動力学シミュレーションにおいて該孤立ポリペプチドの運動をシミュレートすることにより、該ポリペプチドの複数の構造を得るステップ;
(iii)各構造の極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積を決定するステップ;ならびに
(iv)該すべての構造にわたり、極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積の各々を平均するステップ;
(b)対象とするタンパク質のN末端またはC末端に位置する、該セット内の各アミノ酸残基について、
(i)該アミノ酸残基と、対象とするタンパク質のアミノ酸配列内のアミノ酸残基に最も近接する第2の数の近傍アミノ酸残基とにより形成されるポリペプチドを選択するステップ;
(ii)分子動力学シミュレーションにおいて該孤立ポリペプチドの運動をシミュレートすることにより、該ポリペプチドの複数の構造を得るステップ;
(iii)各構造の極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積を決定するステップ;ならびに
(iv)該すべての構造にわたり、極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積の各々を平均するステップ
を含みうる。
【0039】
第1の数は2でありえ、第2の数は1でありうる。
【0040】
自由エネルギー計算ユニットにより、セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップは、
(a)分子動力学シミュレーションにおいて、モデルの運動をシミュレートするステップと;
(b)各対が該セット内の少なくとも1つのアミノ酸を含む、該モデル内のすべてのアミノ酸残基対間の相互作用エネルギーを合計するステップと;
(c)分子動力学シミュレーションにおいて、該セットがアンフォールド状態にある該モデルの運動をシミュレートするステップと;
(d)該アンフォールド状態にある該セット内のすべてのアミノ酸残基対間の相互作用エネルギーを合計するステップと;
(e)(b)において決定された相互作用エネルギーから、(d)において決定された相互作用エネルギーを差し引くステップと
を含みうる。
【0041】
自由エネルギー計算ユニットにより、各セットのアンフォールディングの自由エネルギーを決定するステップは、該セットをアンフォールディングさせることにより、モデル内の1または複数の塩橋を切断する自由エネルギーを決定するステップを含みうる。
【0042】
セットをアンフォールディングさせることにより、モデル内の1または複数の塩橋を切断する自由エネルギーを決定するステップは、互いからカットオフ距離内にあり、該セット内の少なくとも1つのアミノ酸を含む、モデル内の、正反対に荷電したアミノ酸残基の各対間において、タンパク質内の一定の誘電率を仮定して決定される、クーロンエネルギーの和を決定するステップを含む。カットオフ距離は、約7オングストロームでありうる。一定の誘電率は、約4〜約20でありうる。
【0043】
セットをアンフォールディングさせることにより、モデル内の1または複数の塩橋を切断する自由エネルギーを決定するステップはまた、該セット内の少なくとも1つのアミノ酸を含む、該モデル内のアミノ酸残基の各対間において、タンパク質内の一定の誘電率を仮定して決定される、クーロンエネルギーの和を決定するステップも含む。一定の誘電率は、約4〜約20でありうる。
【0044】
各セットのアンフォールディングの自由エネルギーを決定するステップは、以下の式:
【0045】
【化10】

[式中、
ΔGptmは、該アンフォールディングの自由エネルギーに対するグリカンの影響であり;
Rは、理想気体定数であり;
Tは、温度であり;
aは、該グリカンの半径であり;
は、該グリカンの中心から測定した、該グリカンの周囲にある該セットの開始位置であり;
erfは、誤差関数であり;
bは、該アンフォールドセットの持続長であり;
nは、該アンフォールドセット内の残基数である]
を解くことにより、該自由エネルギーに対する1または複数のグリカンの影響を決定するステップを含みうる。
【0046】
セットのうちの1または複数のアンフォールディングの自由エネルギーに基づき各セットのアンフォールディングの全確率を決定するステップは、各セットについて、該セットのアミノ酸残基の配列を含む、すべてのセットのアンフォールディングの平衡確率(equilibrium probability)の和を決定するステップを含む場合があり、各セットのアンフォールディングの平衡確率は、該セットのアンフォールディングの自由エネルギーに基づき決定される。
【0047】
最小の確率は、同じ長さを有するすべてのセットのアンフォールディングの平均確率の倍数でありうる。該倍数は、少なくとも10でありうる。該倍数はまた、少なくとも100でありうる。
【0048】
最小のエネルギーは、同じ長さを有するすべてのセットのアンフォールディングの平均自由エネルギーより小さい、一定の量でありうる。該一定の量は、少なくとも1.4kcal/molでありうる。該最小のエネルギーは、8kcal/mol以下でありうる。
【0049】
別の態様において、本発明は、タンパク質の天然フォールド形態と比べて、該タンパク質のミスフォールド形態に選択的に結合する抗体を作製するのに有用な免疫原を得るための方法であって、
(a)上記で説明した、対象とするタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定するシステムを動作する方法を適用して、前記タンパク質のミスフォールド形態により固有に提示されるエピトープを同定するステップと;
(b)前記タンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを含むペプチドを含む免疫原を作製するステップと
を含む方法を提示する。
【0050】
別の態様において、本発明は、場合を問わず、前出の方法により作製される免疫原を提供する。
【0051】
別の態様において、本発明は、タンパク質の天然フォールド形態と比べて、該タンパク質のミスフォールド形態に選択的に結合する抗体を得るための方法であって、
(a)上記で説明した、対象とするタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定するシステムを動作する方法を適用して、前記タンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定するステップと;
(b)前記エピトープに選択的に結合する抗体を作製し、これにより、前記タンパク質の前記ミスフォールド形態に選択的に結合する抗体を得るステップと
を含む方法を提示する。
【0052】
別の態様において、本発明は、場合を問わず、前出の方法により調製される抗体を提供する。
【0053】
別の態様において、本発明は、タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患を示す被験体を処置するのに有用な医薬組成物を得るための方法であって、薬学的に許容される担体を、該タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのミスフォールド形態に固有のエピトープに結合し、また、上記で説明した、対象とするタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定するシステムを動作する方法を用いて同定された、医療的に有用な量の抗体またはその結合断片と組み合わせるステップを含む方法を提供する。
【0054】
別の態様において、本発明は、タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患を示す被験体を処置するための方法であって、該被験体に、該タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのミスフォールド形態に固有のエピトープに選択的に結合する、有効量の抗体またはその結合断片を含む医薬組成物を投与するステップを含み、該エピトープが、上記で説明した、対象とするタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定するシステムを動作する方法を適用することにより同定された方法を提供する。
【0055】
別の態様において、本発明は、タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患を示す被験体を処置するための方法であって、該被験体に、該タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのミスフォールド形態に固有のエピトープを含むペプチドを組み込む免疫原を含む、有効量のワクチンを含む医薬組成物を投与するステップを含み、該エピトープが、上記で説明した、対象とするタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定するシステムを動作する方法を適用することにより同定された方法を提供する。
【0056】
別の態様において、本発明は、試料中におけるタンパク質のミスフォールド形態を検出するための方法であって、
(a)該タンパク質のミスフォールド形態を含有することが疑われる試料を、そのタンパク質の天然フォールド形態と比べて、該ミスフォールドタンパク質により固有に提示されるエピトープに選択的に結合する抗体または結合断片により処理し、前記エピトープが、上記で説明した、対象とするタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定するシステムを動作する方法を適用することにより同定されているステップと;
(b)抗原:抗体複合体が形成されているかどうかを決定し、その形成により、該試料中における、前記タンパク質のミスフォールド形態の存在が示されるステップと
を含む方法を提供する。
【0057】
別の態様において、本発明は、タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患を診断する方法であって、
(a)被験体から得られ、また、該タンパク質の該ミスフォールド形態を含有することが疑われる試料を、そのタンパク質の天然フォールド形態と比べて、該ミスフォールドタンパク質により固有に提示されるエピトープに選択的に結合する抗体または結合断片により処理し、前記エピトープが、上記で説明した、対象とするタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定するシステムを動作する方法を適用することにより同定されているステップと;
(b)抗原:抗体複合体が形成されているかどうかを決定し、その形成により、前記タンパク質のミスフォールド形態が該試料中に存在することが示されるステップと
を含む方法を提供する。
【0058】
別の態様において、本発明は、タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのタンパク質のミスフォールド形態に選択的に結合する抗体を得るための方法であって、
(a)ペプチドが配列番号5、7、27〜40、または76の配列を有さないという条件で、配列番号1〜80のうちの1つを有するペプチド内に常在する、任意の3つの連続するアミノ酸を含む免疫原を得るステップと;
(b)該免疫原を用いて、前記エピトープに選択的に結合する抗体を作製し、これにより、前記タンパク質の前記ミスフォールド形態に選択的に結合する抗体を得るステップと
を含む方法を提供する。
【0059】
別の態様において、本発明は、配列番号1〜4、6、8〜26、28、29、31〜36、41〜75、および77〜80を有するペプチド内に常在する少なくとも3つの連続するアミノ酸を包含するエピトープに結合する抗体を提供する。
【0060】
別の態様において、本発明は、治療有効量の前出の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0061】
別の態様において、本発明は、タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患を示すか、またはそのリスクを有する被験体を処置するための方法であって、それを必要とする被験体に、該タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープに選択的に結合する、抗体またはその結合断片を含む有効量の医薬組成物を投与するステップを含み、該抗体が結合する該ミスフォールドタンパク質が、タウ、Aベータ、SOD1 α−シヌクレイン、PrP、TTR、β2−ミクログロブリン、EGFR、CD20、CD38、CD44、FasR、およびNotch1から選択される方法を提供する。抗体が結合するエピトープは、配列番号1〜4、6、8〜26、28、29、31〜36、41〜75、および77〜80のうちのいずれか1つを有するペプチド内に常在する少なくとも3つの連続するアミノ酸を含みうる。抗体および処置される疾患は、
(a)CJDまたは関連のプリオン病に罹患した被験体を処置するための、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、また特に、3、4、6、7、8、9、または10により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(b)家族性アミロイド性多発性神経障害もしくは老人性全身性アミロイドーシス、またはミスフォールドTTRの存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号16、17、18、19、20、21、または22により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(c)β2ミクログロブリンアミロイド沈着物の腎臓での蓄積、またはミスフォールドβ2ミクログロブリンの存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号23、24、25、または26により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(d)筋委縮性側索硬化症(ALS)またはミスフォールドSOD1の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40、また特に、28、29、31、32、33、34、35、および36により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(e)白血病もしくは骨髄腫、またはミスフォールドCD38の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号41、42、43、44、または45により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(f)結腸癌転移またはミスフォールドCD44の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号46、47、48、49、または50により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(g)Fas受容体が関与する癌に罹患した被験体を処置するための、配列番号51、52、53、54、または55により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(h)子宮頚癌(cervical carcinoma)、頭頚部癌(head and neck carcinoma)、子宮内膜癌(endometrial carcinoma)、肺癌(lung carcinoma)および乳癌(breast carcinoma)、胸膜中皮腫、悪性黒色腫、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞非ホジキンリンパ腫を含めた癌、または特定の急性骨髄性白血病およびB細胞型慢性リンパ球性白血病を含めた、ミスフォールドNOTCH1の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号56、57、58、59、または60により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(i)Fas受容体の活性化が関与する癌に罹患した被験体を処置するための、配列番号61、62、63、64、または65により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(j)ミスフォールドEGFRが関与する特定の癌および関連障害に罹患した被験体を処置するための、配列番号76を除外するという任意選択の条件で、配列番号66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と
から選択することができる。
【0062】
別の態様において、本発明は、タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患を示すか、またはそのリスクを有する被験体を処置するための方法であって、該被験体に、該タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを構成するペプチドを組み込む免疫原を含むワクチンを投与するステップを含み、該エピトープが、配列番号1〜4、6、8〜26、28、29、31〜36、41〜75、および77〜80のうちのいずれか1つを有するペプチド内に常在する少なくとも3つの連続するアミノ酸を含む方法を提供する。ワクチンおよび処置される疾患は、
(a)CJDまたは関連のプリオン病に罹患した被験体を処置するための、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、また特に、3、4、6、7、8、9、または10により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(b)BSEまたは関連のプリオン病のリスクを有する被験体、特に畜牛における予防のための、配列番号11、12、13、14、または15により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(c)家族性アミロイド性多発性神経障害もしくは老人性全身性アミロイドーシス、またはミスフォールドTTRの存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号16、17、18、19、20、21、または22により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(d)β2ミクログロブリンアミロイド沈着物の腎臓での蓄積、またはミスフォールドβ2ミクログロブリンの存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号23、24、25、または26により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(e)筋委縮性側索硬化症(ALS)またはミスフォールドSOD1の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40、また特に、28、29、31、32、33、34、35、および36により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(f)白血病もしくは骨髄腫、またはミスフォールドCD38の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号41、42、43、44、または45により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(g)結腸癌転移またはミスフォールドCD44の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号46、47、48、49、または50により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(h)Fas受容体の活性化が関与する癌に罹患した被験体を処置するための、配列番号51、52、53、54、または55により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(i)子宮頚癌、頭頚部癌、子宮内膜癌、肺癌および乳癌、胸膜中皮腫、悪性黒色腫、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞非ホジキンリンパ腫を含めた癌、または特定の急性骨髄性白血病およびB細胞型慢性リンパ球性白血病を含めた、ミスフォールドNOTCH1の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号56、57、58、59、または60により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(j)Fas受容体の活性化が関与する癌に罹患した被験体を処置するための、配列番号61、62、63、64、または65により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(k)ミスフォールドEGFRが関与する特定の癌および関連障害に罹患した被験体を処置するための、配列番号76を除外するという任意選択の条件で、配列番号66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと
から選択することができる。
【0063】
別の態様において、本発明は、配列番号1〜80のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、単離形態のペプチドを提供する。ペプチドはまた、アミノ酸置換を含みうる。ペプチドはまた、アミノ酸欠失により、7残基を超えない長さまで短縮した変異体でもありうる。ペプチドはまた、少なくとも7残基の長さまでのアミノ酸付加により伸長した変異体でもありうる。
【0064】
別の態様において、本発明は、タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定するための、上記で説明した、対象とするタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定するシステムを動作する方法の使用を提供する。
【0065】
別の態様において、本発明は、対象とするタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープに選択的に結合する抗体を作製するための、上記で説明した、前記エピトープを同定するシステムを動作する方法により同定されるエピトープの使用を提供する。
【0066】
別の態様において、本発明は、それに固有のエピトープを提示する対象とするタンパク質のミスフォールド形態を検出するための、上記で説明した、前記エピトープを同定するシステムを動作する方法により同定されるエピトープに結合する抗体の使用を提供する。
【0067】
別の態様において、本発明は、それに固有のエピトープを提示する対象とするタンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患または障害を処置するための、上記で説明した、前記エピトープを同定するシステムを動作する方法により同定されるエピトープに結合する抗体の使用を提供する。
【0068】
別の態様において、本発明は、それに固有のエピトープを提示する対象とするタンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患または障害を処置するワクチンを作製するための、上記で説明した、前記エピトープを同定するシステムを動作する方法により同定されるエピトープの使用を提供する。
【0069】
他の態様において、本発明は、疾患を診断および治療し、また、エピトープ予測法により同定されるエピトープの存在について試料をスクリーニングするための、このようなエピトープおよび関連抗体の使用を提供する。
【0070】
特に、さらなる態様において、本発明は、タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのタンパク質のミスフォールド形態に選択的に結合する抗体を作製するのに有用な免疫原を得るための方法であって、
i)エピトープ予測法を適用して、前記タンパク質のミスフォールド形態により固有な形で提示されるエピトープを同定するステップと、
ii)前記タンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを含むペプチドを含む免疫原を作製するステップと
を含む方法を提供する。
【0071】
関連する態様において、本発明は、治療される被験体において、または作製宿主において、内因的に抗体をもたらすのに有用な免疫原であって、タンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを含む免疫原を提供する。
【0072】
他の関連する態様において、本発明は、試料中におけるミスフォールドタンパク質を検出するか、またはミスフォールドタンパク質による疾患を有する被験体を処置するのに有用な抗体であって、タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープに選択的に結合する抗体を提供する。実施形態において、抗体は、治療有効量の抗体を含む医薬組成物として提供される。別の実施形態において、抗体または結合断片は、試料中におけるミスフォールドタンパク質を検出するためのコンジュゲート標識と共に提供される。
【0073】
その別の態様において、本発明は、ミスフォールドタンパク質を検出するか、またはこれらのタンパク質と関連する疾患を示す被験体を処置するのに有用な特異的配列を有するペプチド、また、これと選択的に結合する抗体を提供する。
【0074】
実施形態において、ペプチドは単離形態で提供され、配列番号1〜80のうちのいずれかにおいて示されるアミノ酸配列を有する。
【0075】
実施形態において、本発明のエピトープ、ペプチド、および抗体は、それらのミスフォールド状態において疾患と関連するタンパク質であって、これらには、タウ、Aベータ、SOD1、α−シヌクレイン、PrP、TTR、β2−ミクログロブリン、EGFR、CD20、CD38、CD44、FasR、およびNotch1が含まれるタンパク質に由来するか、またはこれらに結合する。
【0076】
実施形態において、免疫原および対応する抗体は、ヒトタンパク質、また特に、疾患と関連するヒトタンパク質を標的として、その検出または治療に有用な診断剤または治療剤として用いるように選択される。
【0077】
一部において、本発明は、部分的または完全にアンフォールディングする傾向にあり、このために分子間相互作用および凝集を受けやすい、構造化されたタンパク質ドメインの領域またはエピトープを同定する方法を提供する。代替的な実施形態において、本発明は、癌細胞において部分的にアンフォールディングする傾向にある、構造化されたタンパク質ドメインを同定する方法を提供する。
【0078】
本発明の一態様では、該方法により、タンパク質の任意の領域のアンフォールディングの確率を同定し、そのタンパク質の原子分解能構造、または該対象とするタンパク質の原子分解能構造が求められない場合には、該対象とするタンパク質に構造が類似すると考えられる、高度の配列類似性を有する関連タンパク質の原子分解能構造を入力として受け取る。
【0079】
本発明の別の態様では、該方法により、タンパク質のミスフォールディングおよび癌と関連する疾患を診断および治療するのに用いうる、タンパク質中の疾患特異的エピトープを予測する。本発明のさらに別の態様では、アンフォールディングの確率が比較的高く、抗体を発生させるためのエピトープとして用いられることが判明している領域の免疫原性を同定し、また、アンフォールド状態またはミスフォールド状態だけにおいて免疫反応性であることが予測されるエピトープを単離する方法が説明される。
【0080】
代替的な態様では、コンピュータ、例えば、入力デバイス、プロセッサー、および出力デバイスを含めたコンピュータを用いて、本発明による方法を実施することができる。代替的な実施形態において、本発明は、部分的もしくは完全にアンフォールディングする傾向にある、構造化されたタンパク質ドメインの領域またはエピトープを同定するか、またはタンパク質中の疾患特異的エピトープを予測する、コンピュータで読み取り可能な媒体上に常在するコンピュータプログラムを、コンピュータについての指示書と共に包含する。代替的な実施形態において、本発明は、計算プラットフォームを実装するソフトウェア、専用ハードウェア、およびファームウェアを含めた、プログラム可能な汎用コンピュータのうちの1または複数を含めた計算システムを提供する。
【0081】
代替的な態様では、本明細書で説明する方法により同定されるミスフォールディング特異的エピトープのほか、ミスフォールティング特異的エピトープに対して免疫反応性の抗体も、本発明の範囲内に包含される。このようなエピトープは、タンパク質のミスフォールディング、細胞増殖、および他の疾患を管理するための診断ツールおよび治療ツールとして有用でありうる。
【0082】
この「発明の概要」は、本発明のすべての特徴を必ずしも説明するものではない。本発明の特定の実施形態についての以下の説明をよく検討すれば、当業者には、本発明の他の態様および特徴が明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従い、アンフォールディングする傾向にあるタンパク質の領域内におけるエピトープを同定し、このようなエピトープに対する抗体を作製する方法についてのフローチャートである。
【図2】図2は、ヒトプリオンタンパク質について、例示的なアンフォールディングのエネルギーランドスケープについての2つのグラフを提示する図である。
【図3】図3は、ミスフォールディング疾患および癌に関与する9つのタンパク質について同定される、例示的なアンフォールディング特異的エピトープについての図示である。
【図4】図4は、本発明の別の実施形態に従う、アンフォールディングする傾向にあるタンパク質の領域内におけるエピトープを同定するためのシステムについてのシステムダイアグラムである。
【図5】図5は、B16−F10腫瘍細胞を保有するマウスに対する、PrP YML反応性1A1抗体による治療の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0084】
本明細書で説明される本発明をより完全に理解しうるために、以下の説明を記載し、用語を定義する。本明細書で直接的に定義されない用語は、本発明の技術分野内で理解される通り、それらと通常関連する意味を有すると理解されたい。
【0085】
アンフォールディングの自由エネルギー関数
本発明の構成要素は、タンパク質の1または複数のアミノ酸残基のセットのアンフォールディングについて、自由エネルギーの変化を計算することである。「背景技術」で説明した通り、自由エネルギーの変化は、タンパク質の構造パラメータおよび溶媒和パラメータについての複雑な関数である。本発明によるエピトープ予測法では、アンフォールディングの自由エネルギーに対する寄与を対象とし、これは、
・ΔH:部分的に、溶媒との水素結合が破壊されること、また、それらが再形成されることから、また、天然タンパク質の立体構造内において接触し合う疎水性基間のファンデルワールス相互作用が、アンフォールディング時において破壊されることから生じる、アンフォールディングのエンタルピー;
・ΔS溶媒和:新たに溶媒に露出するアミノ酸またはタンパク質の残基の周囲に構造化される溶媒和殻の形成から生じる、アンフォールディングの溶媒和エントロピー;
・ΔS立体配置:アンフォールディング時において、タンパク質のアンフォールド領域の立体構造の自由度が増大することから生じる、アンフォールディングの立体配置エントロピー;
・ΔG塩橋:天然構造において存在した塩橋を切断する自由エネルギー;
・ΔG電荷移動:タンパク質内の荷電基を、フォールドタンパク質の低誘電率環境と、遊離溶媒水の高誘電率環境との間で移動させるときの自由エネルギー;
・ΔGpH:アンフォールディングの結果として、タンパク質の酸性側鎖または塩基性側鎖のpKa、ならびにタンパク質のN末端およびC末端のpKaを変化させるときの自由エネルギー;ならびに
・ΔGPTM:フォールド状態およびアンフォールド状態の安定性に対する、グリカンを含めた翻訳後修飾の効果
を包含する。
【0086】
エピトープ予測法は、タンパク質の原子分解能構造(例えば、核磁気共鳴、X線結晶構造解析、電子顕微鏡法、または当技術分野で公知の他の方法により決定される)のほか、本明細書でさらに説明される他の構造を入力として受け取りうる。エピトープ予測法では、例えば、以下:
ΔGアンフォールディング=ΔH−TΔS溶媒和−TΔS立体配置+ΔG塩橋+ΔG電荷移動+ΔGpH+ΔGPTM
の通りにこれらの寄与の値を解析することにより、タンパク質に由来するアミノ酸残基のセットをアンフォールディングさせるときの自由エネルギーを正確に決定することができる。
【0087】
上記で説明したアンフォールディングの自由エネルギーに対する寄与は例示的であり、アンフォールディングの自由エネルギーを計算する際に網羅的であるか、または必要であることを意図するものではないことを理解されたい。したがって、アンフォールディングの自由エネルギーの計算から、上記で説明した寄与のうちの1もしくは複数を除外することもでき、かつ/またはアンフォールディングの自由エネルギーの計算に、当技術分野で公知の1もしくは複数の他の寄与を追加することもできるが、なお、本発明の範囲内に収まる。
【0088】
アンフォールディングのエンタルピー
アンフォールディングのエンタルピーは、水素結合(タンパク質内における水素結合、および溶媒との水素結合の両方の)エネルギー、ファンデルワールスエネルギー、および陽イオン−パイエネルギーの変化を含め、タンパク質構造の一部がアンフォールディングすることから生じる、内部エネルギーおよび系の圧力と容量との積の変化を記述する。アンフォールディングのエンタルピーは、いくつかの方法で計算することができるが、これらに限定されない。
【0089】
セットのアンフォールディングのエンタルピーは、アンフォールディングにより破壊される水素結合対間における個別の相互作用を同定することにより決定することができる。各相互作用には、その結合を切断するのに必要なエネルギーとしてのポテンシャルエネルギーを割り当てることができる。距離に依存しない手法では、互いからカットオフ距離rcrit内に存在することが見出され、セット内の少なくとも1つの原子を有する任意の極性原子(例えば、N、O、またはS)に、約1〜約2kcal/mol/相互作用でありうる一定の相互作用エネルギーεを割り当てる(Nichollsら、Proteins、11巻(4号)、281〜296頁(1991年))。代替的に、該一定の相互作用は、約0.5kcal/mol/相互作用〜約2kcal/mol/相互作用でもありうる。
【0090】
次いで、アンフォールディングするセットのアミノ酸配列内の各極性原子を考察し、また、rcrit内にあるタンパク質のアミノ酸配列内の、該セットから1残基を超えて離れた残基に属するすべての極性原子を同定することにより、該セットのアンフォールディングの総エンタルピーを決定することができる。重複する相互作用は除外することができ(そうしなければ、アンフォールディングするセット内の残基間における相互作用を2度ずつ数えることになる)、また、この相互作用数にεを乗じて、アンフォールディングの総エンタルピーを決定することができる。代替法では、上記で説明した、距離に依存しない手法を、極性原子および非極性原子を含む原子対に適用することができる。
【0091】
カットオフ距離は、約4.8オングストロームでありうる。代替的に、カットオフ距離は、約2オングストローム〜約7オングストローム、または約3〜約5オングストロームなど、その間の(1または複数の)任意の値でありうる。一定の相互作用エネルギーεは、上記で説明した方法によりタンパク質を完全にアンフォールディングさせる場合に、実験によって決定されるタンパク質の安定性を再現するように選択することができる。アンフォールディングするセットのアミノ酸配列内の各極性原子を考察し、また、rcrit内にあるタンパク質のアミノ酸配列内の、該セットから3残基を超えて離れた残基に属するすべての極性原子および/または非極性原子を同定することにより、該セットのアンフォールディングの総エンタルピーを決定することができる。
【0092】
相互作用エネルギーは、2つの極性原子の分離距離rが変化するのに応じて、それらの間における相互作用エネルギーが変化するように距離依存的でありうる。この距離依存性は、2つの極性原子を分離するエネルギーが、
【0093】
【化11】

により表わされるように、水素結合による相互作用をモデル化するのに用いられる「10乗/12乗」ポテンシャル(Gordon D Bら、Curr Op Struct Biol、9巻、509頁(1999年))の形態を取りうる。
【0094】
この式において、θは、隣接する炭素原子に対する極性原子の共有結合間の角度であり、rは、極性原子間の分離距離である。角度θを、水素結合が存在するかどうかを決定する際のカットオフ角度に限定することができる。カットオフ角度が小さくなるほど、水素結合の数は少なくなる。一実施形態において、カットオフ角度は、約20度でありうる。代替的に、カットオフ角度は、約15〜約35度でありうる。定数ε’およびβは、水素結合1個当たりの平均相互作用エネルギーが、約1〜約2kcal/molであるように選択することができる。一実施形態では、約5〜約6の値を有するようにβをとる。代替的な実施形態では、水素結合1個当たりの平均相互作用エネルギーが、約0.5〜約2kcal/molであるように、定数ε’およびβを選択することができる。さらなる代替法では、上記で説明した距離法を、極性原子および非極性原子を含む原子対に適用することができる。
【0095】
別の実施形態では、溶媒露出表面積(ASA)を用いて、アンフォールディング時におけるエンタルピー変化を記述することができる。アンフォールディング時において表面積を露出させるエンタルピー変化は、実験的に決定されている(MurphyおよびFriere、Adv Protein Chem、43巻、313頁(1992年))。このエンタルピー変化は、残基の極性特徴、非極性特徴、またはヒドロキシル特徴に依存する。それは、
【0096】
【化12】

の通り、摂氏温度TにおけるASAの変化との関連で与えられる。
【0097】
ヒドロキシルであると考えうる、トレオニン残基、セリン残基、およびチロシン残基のヒドロキシル基内の酸素を除き、構造内の窒素原子、酸素原子、および硫黄原子は、極性と考えることができる。炭素原子は、非極性と考えることができ、水素は、それらが結合する原子に従って分類することができる:炭素上の水素は非極性と考えることができ、極性原子上の水素は極性と考えることができ、また、ヒドロキシル酸素上における水素は、ヒドロキシルと考えることができる。構造内の各原子のASAは、1.4オングストロームのプローブ半径を用いる水プローブスウィーピング法(LeeおよびRichands、J Mol Biol、55巻(3号)、379頁(1971年))、または当技術分野で公知の、他の任意の適切な方法により計算することができる。アンフォールディング時における、対象とするタンパク質のアミノ酸残基セットのASA変化は、該セットがアンフォールディングしたときのタンパク質と、天然に構造化されたタンパク質とのASAの差違を求めることにより、例えば:
1.アンフォールディングすると考えられるセットを該タンパク質の構造から消去し、該部分構造内の極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基のASAを計算するステップ;
2.該アンフォールドセット内の残基を取り、該アンフォールドセット内の各残基が1つのトリペプチドの中央位置に配置されるトリペプチドとして、タンパク質配列のトリプレットを分離するステップ。これにより、各トリペプチドを、全原子分子動力学シミュレーションで用いて、遊離トリペプチドの運動を決定することができる。シミュレーション時において、該トリペプチドの複数の構造を収集し、各構造について、極性基、非極性基、およびヒドロキシル基のASAを計算し、該構造間の平均を求めることができる。該アンフォールドセット内の各残基について、遊離トリペプチドの平均ASA値を合計すると、該タンパク質の遊離部分の全ASAを求めることができる;
3.完全な天然タンパク質構造内の極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基のASAを計算するステップ;
4.ステップ(3)において計算されたASAをとり、これを、(1)および(2)において見出される溶媒露出表面積の総和(SASA)値から差し引くステップ
により計算することができる。
【0098】
この差違を求める結果として得られるSASA値を、上記の実験によるエンタルピー変化の式に代入することにより、アンフォールディング時におけるエンタルピー変化が求められる。
【0099】
代替的に、上記で説明した方法の第2のステップを改変して、3残基を超えるかまたはこれ未満の長さのポリペプチドを用いることもできる。
【0100】
さらなる代替法では、対象とするタンパク質のN末端またはC末端に位置するセット内のアミノ酸残基に対して、異なる形で該方法を適用することもできる。例えば、対象とするタンパク質のN末端またはC末端に位置しないセット内の各アミノ酸残基の場合、該アミノ酸残基と、該対象とするタンパク質のアミノ酸配列内のアミノ酸残基に最も近接する第1の数のアミノ酸残基とを含むポリペプチドを選択することができる。対象とするタンパク質のN末端またはC末端に位置するセット内の各アミノ酸残基の場合、該アミノ酸残基と、対象とするタンパク質のアミノ酸配列内のアミノ酸残基に最も近接する第2の数の近傍アミノ酸残基とを含むポリペプチドを選択することができる。一実施形態において、該ポリペプチドはトリペプチドであることが可能であり、該第1の数は2であり、該第2の数は1でありうる。代替的な実施形態において、該第1の数および第2の数は同様の場合もあり、同様でない場合もあり、また、ゼロから対象とするタンパク質の長さから1を減じた値までの範囲でありうる。
【0101】
さらに別の実施形態では、フォールド状態およびアンフォールド状態にあるタンパク質に対する、全原子分子動力学シミュレーション、または粗視化分子動力学シミュレーションにより、該エンタルピー変化を計算することもできる。例えば:
1.経時的に反復する形でニュートンの運動方程式を解いて系の時間発展を決定することにより、ヒトの生理学的状態を表わす圧力および密度下にある水分子からなる溶媒により取り囲まれた該タンパク質を含有する系内におけるフォールドタンパク質の運動をシミュレートするステップ。反復間の時間は、約1〜2フェムト秒とすることができ、系の温度は、最も一般的には摂氏37度である、タンパク質が由来する生物の生理学的温度と等しくすることができる。代替的な実施形態において、時間ステップは、約0.1フェムト秒〜約10フェムト秒であり、系の温度は、タンパク質のアンフォールディング温度未満の任意の温度でありうる。シミュレーションは、タンパク質がその平衡運動をサンプリングするまで、最も一般的には、約20〜約40ナノ秒にわたり継続される。最新のポテンシャルエネルギー関数(Brooks, J、Comp Chem、30巻、1545頁(2009年))を用いて、シミュレーションから天然状態にある残基間における対エネルギーを抽出し、これをシミュレーション全体で平均することができる;
2.まず、超生理学的温度を用いるか、またはタンパク質の2つ以上の構造要素に外力を直接に適用して、タンパク質をその天然の立体構造からアンフォールディングさせることにより、水分子からなる溶媒により取り囲まれたタンパク質を含有する系内におけるアンフォールドタンパク質の運動をシミュレートするステップ。系の温度を周期的に冷ましてそれを生理学的温度に戻すことで、シミュレーションからポテンシャルエネルギーを抽出することが可能となる。ポテンシャルエネルギーの情報を抽出した後では、系を超生理学的温度に戻して、異なる形でアンフォールディングした立体構造へとより急速に時間発展させることが可能となりうる。シミュレーションでは、セットに付加する立体構造を増加させても、平均の対エネルギーが、最も一般的には1kcal/molである、所望の精度を超える量で変化することはない場合に確立される、対象とするタンパク質のアンフォールディングした立体構造を表わすセットをサンプリングしなければならない。一実施形態では、超生理学的温度と生理学的温度とを1000回にわたり交代させることができる。代替的には、10回だけ交代させることもできる。したがって、交代は、約10〜約1000回の範囲でありうる。さらなる代替法において、交代は、計算システムによりシミュレートすることが可能な任意の値でありうる;
3.ステップ(1)および(2)から、タンパク質のアミノ酸残基の所与のセットについて、アンフォールディングの自由エネルギーを計算するステップ。これは、アンフォールドセット内のすべての残基対間における、ステップ(2)による相互作用エネルギーを足し合わせ、この和から、アンフォールドセットおよび全タンパク質内のすべての残基対間における、ステップ(1)による相互作用エネルギーを差し引くステップを包含する;
により、該エンタルピー変化を計算することができる。
【0102】
代替的に、ステップ(1)および(2)を、同等の粗視化シミュレーションにより置き換えることもでき、この場合、タンパク質および溶媒の詳細な原子構造は、系のパラメータ化された記述により置き換えられ、そこで、各タンパク質残基および溶媒分子は、内部自由度を有さない均一の実体として処理される。さらなる代替法では、各タンパク質残基を、そのペプチド骨格および側鎖を個別に表わす実体へと分割することもできる。またさらなる代替法では、タンパク質−溶媒系内において、該系を、他の形で原子総数未満の任意の数の対象へと分割する適用も可能である。またさらなる代替法では、タンパク質を取り囲む溶媒を、該タンパク質の運動に対する溶媒分子の効果を近似する陰伏的な力の場により置き換えることもできる。
【0103】
溶媒和エントロピー
溶媒和エントロピーは、新たに露出する基の周囲における溶媒ケージの形成を伴う可能性があり、これにより、溶媒運動の自由度を低下させうる、タンパク質内の官能基の露出の変化に起因して溶媒が取りうるミクロ状態の数の変化を記述する。ヒドロキシル基を含めた極性基の溶媒和エントロピーが0となるのは一般に、335Kの温度であり、非極性基の溶媒和エントロピーが0となるのは一般に、385Kである(Baldwin、Proc Natl Acad Sci、83巻、8069頁(1986年))。この結果、また、例えば、「アンフォールディングのエンタルピー」の表題下で説明した通りに計算されるSASAの変化を用いて、任意の温度Tにおける溶媒和エントロピーを計算することができる。
【0104】
本発明の代替的な実施形態では、ポアソン−ボルツマンの式を解いて、総極性溶媒和エネルギーを決定することにより、総溶媒和エントロピーを計算することができる(Baker NAら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、98巻、10037頁(2001年))。
【0105】
立体配置エントロピー
立体配置エントロピーは、アンフォールドセグメントに対する立体拘束性の低下に起因する、アンフォールディング時におけるタンパク質のミクロ状態数の変化を記述する。タンパク質をその天然状態へとフォールディングさせると、タンパク質の骨格および側鎖の可動性は拘束される。したがって、タンパク質の天然状態は、その部分的なアンフォールド状態において存在する場合と比較して、立体配置エントロピーが低く、この場合、アミノ酸残基のアンフォールドセットは、はるかに多数の配置を取ることが自由であるが、該タンパク質の、なおもフォールディングしている部分との連続性により、該アンフォールドセットの開始位置および終止位置が固定される制限の下にあるほか、該タンパク質の該フォールド部分および該アンフォールド鎖自体の立体排除容量に起因する制約の下にもある。
【0106】
タンパク質の完全なアンフォールディング時における、立体配置エントロピーの変化に対する各アミノ酸の寄与は公知であり(例えば、D’Aquinoら、Proteins、25巻、143頁(1996年)を参照されたい)、例えば、該アンフォールドセットに関与する各アミノ酸についての値を合計することにより、これを、本発明によるエピトープ予測法へと組み込むことができる。アンフォールディング時における、溶媒に対する側鎖の露出と関連する立体配置エントロピー変化の成分は、側鎖が完全に包埋された天然構造にある残基はこの寄与を100%受け取り、側鎖が完全に露出した残基はこれをまったく受け取らないように、天然構造内に存在する側鎖の溶媒露出度に基づいて、これをあらかじめ評価することができる。
【0107】
部分的アンフォールディングの場合、タンパク質の、なおもフォールディングしている部分が存在することにより、アンフォールドセットの立体配置の総自由度は低下する。アンフォールドポリマー鎖についての拡散方程式モデルを用いて、この効果を処理することができ、この場合、タンパク質の残余部分は、平面的な吸収限界として処理することができる。これにより、なおもフォールディングしているタンパク質の残余部分による立体拘束性に起因する状態の減少を説明することができる。タンパク質の半径は一般に、ポリマーの典型的な溶融鎖による旋回半径より大きいので、平面限界による近似は、初期のアンフォールディングイベントにとって望ましい。吸収限界の存在下において、距離rで空間容量Δτ内へと伝搬するランダムウォーク系の確率分布pは、
【0108】
【化13】

[式中、bは、タンパク質のアルファ炭素間の距離(3.4オングストローム)であり、zは、吸収限界から、残基のランダムウォークの終点までの距離であり、nは、ランダムウォークする残基数である]により与えることができる。
【0109】
塩橋エネルギー
塩橋エネルギーは、アンフォールディングのエンタルピーの、別個に計算される成分を記述する。それは、天然構造内の完全電荷と部分電荷とにおけるクーロン相互作用の破壊から生じ、また、誘電環境が、タンパク質内の環境から水中の環境へとシフトするのに応じて、各電荷を取り囲む誘電体の分極変化から生じる。アンフォールディングするアミノ酸残基のセット内の残基に関与する塩橋の破壊は、エネルギーの損失を負わせる。タンパク質内に存在するすべての荷電残基を考察することにより、この効果に対処することができる。各荷電残基について、約7オングストローム未満の距離でタンパク質内に存在する正反対に荷電残基を同定することができ、重複しない各正反対に荷電残基対により、既存の塩橋が同定される。代替法では、約3〜約10オングストロームの塩橋カットオフ距離を用いることができる。距離rにより分離される2つの電荷qとqとにおける塩橋のクーロンエネルギーEは、E=1/(4πκε)×q1q/r[式中、εは、自由空間の誘電率であり、タンパク質の内部に特徴的な一定の誘電率κを約10〜約20と仮定する]によるクーロンの関係を用いて計算することができる。代替的に、κは、約2〜約20でありうる。部分的なアンフォールディングにより破壊されるこれらの塩橋のエネルギーを合計すると、セットのアンフォールディングに関与する塩橋の総エネルギー変化が求められる。
【0110】
代替法では、正反対に荷電であれ、同符号荷電であれ、すべての荷電粒子対間の相互作用を同定し、クーロンポテンシャルに基づくエネルギーを割り当てることができる。塩橋エネルギーの変化が、アンフォールドセットのメンバーに関与する相互作用エネルギーの和であるように、これらの相互作用は、アンフォールディング時において消失したとみなされる。さらなる代替法では、タンパク質の内部および周囲における静電環境を記述する、局所的に変化する誘電関数を用いてポアソン−ボルツマンの式を解くことにより、すべての荷電粒子対間の相互作用を計算することができる。
【0111】
電荷移動エネルギー
荷電残基を含有するタンパク質のアンフォールディング部分は、誘電環境間において、エネルギーを変化させながら、それらの荷電基を移動させる。エネルギー変化ΔG電荷移動は、
【0112】
【化14】

に従い、それぞれ、フォールド状態およびアンフォールド状態にある荷電基周囲の誘電環境である、εフォールドおよびεアンフォールドと、周囲の誘電環境からの荷電基の分離距離rとに依存する。
【0113】
本発明では、タンパク質内部については、誘電率の平均である10〜20により、また、水については、溶媒に対する荷電基の露出により重みづけした78の比誘電率により、εフォールドを決定する。アンフォールド時の誘電率εアンフォールドは、バルク水の誘電率である78とし、rは、イオン半径に水分子の半径を加えた値、すなわち、2.8〜3オングストロームであるとする。代替的に、εフォールドは、約2〜約10とすることもできる。アンフォールドセット内の各荷電基の移動エネルギーを合計すると、アンフォールディングの総移動エネルギーを得ることができる。
【0114】
代替的な実施形態では、周囲残基の分極率、およびドバイの式(Onsager L J.、Am. Chem Soc、58巻、1486〜1493頁(1936年))、またはカークウッド−フレーリッヒ(Frohlich)の式を用いて、各荷電基のフォールド状態における誘電率を計算することができる。
【0115】
pH効果
プロトン化エネルギーは、タンパク質内の酸性基および塩基性基上における水素の占有確率の変化に起因するエネルギー変化を記述する。アンフォールディング時には、酸性基および塩基性基の周囲の静電環境が変化するのに応じて、それらのプロトン化エネルギーが変化する。フォールディング時における酸性基および塩基性基のpKaは、天然タンパク質の構造から計算することができる(例えば、Hui Liら、Proteins(2005年)、61巻、704〜721頁; Hilserら、米国特許第7,027,969号を参照されたい)。この情報を用いて、アンフォールド状態における酸性残基または塩基性残基のpKaが、遊離アミノ酸の場合と同じであるとすると、アンフォールドセット内の残基について、アンフォールディング時におけるプロトン化の自由エネルギーの変化を計算することができる。
【0116】
グリカンを含めた翻訳後修飾
翻訳後修飾エネルギーは、ジスルフィド結合、グリカン、GPIアンカー、および関連する現象が存在することに起因する、エネルギー/エントロピーを組み合わせた項を記述する。タンパク質の安定性に対するグリカンの主要な影響は、立体構造エントロピーを低下させることにより、アンフォールド状態の自由エネルギーを上昇させることである。その容量がグリカンの容量と等しい球体による立体拘束性と符合する、ランダムウォーク成分についての解析的表現を用いることにより、骨格エントロピーの低下に対処することができる。エントロピー喪失ΔGPTMに対する表式は、
【0117】
【化15】

である。
【0118】
この表式において、Rは、理想気体定数であり、Tは、対象とする温度(一般に摂氏37度)であり、aは、有効グリカン球面の半径であり、rは、該有効球面の中心から骨格Cアルファ原子までの距離であり、bは、アンフォールドタンパク質の持続長(2〜3残基)であり、nは、持続長数である。官能基の位置から伸びる各タンパク質鎖(のN末端およびC末端)について、エントロピー喪失を合計することができる。
【0119】
エネルギー関数の使用
a)組合せによるアンフォールディング
上記で説明したエネルギー関数を適用して、対象とするタンパク質の1または複数のアミノ酸残基セットについて、アンフォールディングの自由エネルギーを計算することができる。セットは、対象とするタンパク質のモデル内の任意の数のアミノ酸残基による任意の選択を含みうる。セットはまた、対象とするタンパク質のアミノ酸残基による特定種類の部分配列に、また、該対象とするタンパク質の1または複数の指定された領域内にも制約することができる。例えば、セットの種類は、モデル内の1もしくは複数の連続するアミノ酸残基の配列を含むすべてのセット;モデル内の1もしくは複数の連続するアミノ酸残基の配列を含むすべてのセットであって、各セットが領域内において少なくとも1つの残基を含むセット;モデル内の1もしくは複数の連続するアミノ酸残基の、2つ以上の連続しない配列を含むすべてのセット;モデル内の1もしくは複数のアミノ酸残基による2つ以上の連続しない配列を含むすべてのセットであって、各セットが領域内の少なくとも1つのアミノ酸残基を含むセット;最小の長さと最大の長さとの間の長さを有するアミノ酸残基配列に限定されるセット;または前出のセットの任意の組合せを含みうる。
【0120】
最小の長さおよび最大の長さは、所望される候補エピトープのアミノ酸残基配列の長さに基づいて選択することができる。対象とするタンパク質の全長以下である任意の長さを選択することができる。例えば、最小の長さおよび最大の長さは、約3〜約20でありうる;代替的に、最小の長さおよび最大の長さは、約5〜約15でありうる。
【0121】
特定の一実施形態では、タンパク質の1または複数のアミノ酸による連続する部分配列を、一度に1つずつ、繰り返しアンフォールディングさせることにより、複数のアミノ酸残基のセットを形成することができ、該セットを、アンフォールディング率およびフォールディング機構が予測される環境に適用する。アンフォールディングさせる部分配列は、1残基から、タンパク質中における総残基数までの長さで、また、第1の残基から、[最後の残基からアンフォールド領域内の残基数を差し引いて1を加えた残基]の位置で変化しうる。例えば、長さ100残基のタンパク質の場合、この結果、該タンパク質の5050の部分アンフォールド状態を表わす、5050セットの集団が得られる。各セットについて、上記で説明した通りに、アンフォールディングの自由エネルギーを計算することができる。これらのセットの自由エネルギーは、該セットの中央残基の位置がx軸上で表わされ、アンフォールド領域の長さがy軸上で表わされ、アンフォールディングの自由エネルギーがz軸上で表わされる、3次元のグラフ上で表わすことができる。タンパク質の連続する部分配列を一度に1つずつアンフォールディングさせうる、上述の単一配列による近似に合わせて、このグラフを、単一配列によるエネルギーランドスケープと称することができる。例えば、図2として、ヒトプリオンタンパク質の単一配列によるエネルギーランドスケープを示す例示的な2つのグラフを示す。同じ範囲のアンフォールドタンパク質に対応するすべての立体配置状態が、同じ総エネルギーを有することを近似して、これらのセットを集団として処理すると、各セットについてのボルツマン因子を、「背景技術」で説明した分配関数で除することにより、各セットについてのアンフォールディングの平衡確率を計算することができる。次いで、これらの平衡確率を、アンフォールディング配列の位置および長さの関数としてプロットすることができる。残基のアンフォールディングの全確率を求めるには、アンフォールディングした立体配置内においてこの残基を含有する、すべてのセットの平衡確率を合計することができる。すべての残基についてこのようにして求められるアンフォールディングの全確率を、タンパク質内の残基番号の関数としてプロットすることができる。
【0122】
アンフォールディングの全確率が最も高いタンパク質の領域を同定することは、エネルギーランドスケープ内の極小点を見出すことと等価であり、これは、まず、結果の目視により行うことができ、次いでまた、該自由エネルギーランドスケープ上の谷の深さを検討することにより精緻化することができる。一定の長さのアミノ酸残基配列を含むセットのアンフォールディングの平均自由エネルギーを計算することができ、また、アンフォールディングの自由エネルギーが、該平均エネルギーより量Eだけ少ない、同じ一定の長さのアミノ酸残基配列を含むすべてのセットを同定することができる。対象とするすべての部分配列長について、この計算を繰り返すことができる。アンフォールディングの平均エネルギーから量Eを減じた量を、「最小のエネルギー」と称することができ、それが計算される各部分配列の長さに応じて変化しうる。一実施形態において、Eは、アンフォールディングの平均自由エネルギーを有するセットに対して、アンフォールディングの確率が10倍に増大することに対応する、1.4kcal/mol以上の場合もあり;代替的に、Eは、アンフォールディングの全確率が100倍に増大することに対応する、3kcal/mol以上の場合もある。候補エピトープについて、アンフォールディングする傾向にある領域を選択する目的では、約3〜約20のアンフォールド配列長に対応する極小点が許容される場合もあり;代替的に、アンフォールド配列の長さが、約5〜約15の場合もある。一実施形態では、長さ100残基のタンパク質の場合、単一配列によるランドスケープ内の、5カ所を超えない最も顕著な極小点、また、これらに対応する候補エピトープを、さらなる解析のために選択する。代替的な実施形態では、5カ所を超えるかまたは5カ所未満の最も顕著な極小点を、さらなる解析のために選択することができる。
【0123】
別の実施形態では、タンパク質の、2つの連続しない部分配列または連続する部分配列をアンフォールディングさせることによりセットを形成し、この結果、二重配列によるエネルギーランドスケープと称する5次元オブジェクトを得る。これは、残基指標をx軸上に示し、アンフォールド残基の総数をy軸上に示し、また、アンフォールディングの自由エネルギーまたは確率をz軸上に示す、3次元グラフへと投影することができる。二重配列によるエネルギーランドスケープは、異なる部位におけるアンフォールディングイベント間の相互作用を同定するのに有用な場合があり、また、タンパク質の一部がアンフォールディングすると、該タンパク質の別の部分が、どのくらいアンフォールディングを受けやすくなりうるかを説明しうる。したがって、フォールド構造の残余部分において候補エピトープ領域をアンフォールディングさせることの構造的帰結を決定することができる。加えて、または代替的に、単一配列によるエネルギーランドスケープからは明らかでないさらなる候補エピトープを示唆する、相関的かつ協同的なアンフォールディング挙動を決定することもできる。
【0124】
さらに別の実施形態では、対象とするタンパク質の、可能なすべての数の連続する部分配列または連続しない部分配列によるすべてのセットについて、アンフォールディングのエネルギーを計算することができ、これにより、多次元のエネルギーランドスケープがもたらされる。これにより、部分アンフォールド状態についての網羅的な集団がもたらされる。しかし、この手法は計算が面倒であり、したがって、例えば、タンパク質のアンフォールディング機構を構築するのに、すべての部分アンフォールド状態を完全に開示することが望ましい場合に用いることができる。この方法では、上記で説明したエネルギー関数を用いて、タンパク質内のすべての可能な残基セットについて、アンフォールディングの自由エネルギーを計算する。アミノ酸残基のセットは、もはや連続する必要がない。極小のアンフォールディングの自由エネルギーを同定し、対応するアミノ酸残基の部分配列(各部分アンフォールド構造に由来する1または複数の配列)を、候補エピトープとして選択する。この方法では、単一の連続鎖のアンフォールディングからは明らかとならない場合がある、不安定な領域の組合せが網羅的に検索される。
【0125】
さらにまた代替的な実施形態では、アンフォールディングの全確率が最小の確率を上回るセットからエピトープを同定する。セットは、所望に応じて、連続するアミノ酸残基配列または連続しないアミノ酸残基配列の任意の変化を含みうる。エピトープのアンフォールディングの全確率は、該エピトープのアミノ酸残基配列を含む、すべてのセットのアンフォールディングの平衡確率の和として決定される。次いで、さらなる解析のために、アンフォールディングの全確率が「最小の確率」を上回るエピトープを同定する。最小の確率は、考察されるエピトープの長さに応じて変化する場合があるが、タンパク質内の、連続するアミノ酸残基の部分配列が同じ長さである、すべてのセットのアンフォールディングの全確率の平均の倍数として定義することができる。アンフォールディングの全確率が、所望の最小の確率を上回るエピトープを選択する目的で、任意の値の倍数を選択することができる。一実施形態において、該倍数は、10以上でありうる。代替的な実施形態において、該倍数は100以上でありうる。
【0126】
エピトープ予測法は、入力として、核磁気共鳴、もしくはX線結晶構造解析、もしくは電子顕微鏡法、または他の方法などの高分解能法により決定される、対象とするタンパク質またはその一部(タンパク質のドメインまたは断片など)の原子分解能構造を受け取りうる。該構造は、分解能が約10オングストローム以下の場合もあり、分解能が約5オングストローム以下の場合もある。対象とするタンパク質の原子分解能構造は、直接求められる場合もあり、アミノ酸配列が対象とするタンパク質に類似する別の(1または複数の)タンパク質または(1または複数の)ポリペプチドの原子分解能構造に基づいて決定する場合もある。例えば、ヒトTNF受容体の構造は、PDB(IDコード:1TNR)から得ることができ、直接用いることができる。代替的に、fasの構造は、構造予測プログラムであるLOMETSまたはI−TASSER(Yang Zhang、「I−TASSER server for protein 3D structure prediction」、BMC Bioinformatics、9巻、40頁(2008年)、(http://zhang.bioinformatics.ku.edu/LOMETS/))の後、分子動力学(MD)法により20ナノ秒にわたって平衡化/最小化することにより決定される、1TNRに対する相同性モデリングに基づいて決定することもできる。PDB内の関連構造に従い、ペプチドの番号付けを割り当てることができる。さらなる代替法では、原子解像能を有さない対象とするタンパク質の構造も、入力として受け取ることができる。例えば、残基解像能を有する対象とするタンパク質の構造が、入力となりうる。
【0127】
対象とするタンパク質の構造が、いまだ十分正確には解明されていない場合は、対象とするタンパク質に対して高度の配列相同性を有することが公知であるタンパク質の構造をその代わりに用いることができ、その自由エネルギーランドスケープの極小点を、本方法の最初の2つの構成要素により決定することができる。例えば、高度の配列相同性は、別のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一であるかまたは類似の場合もあり、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一であるかまたは類似の場合もあるアミノ酸配列を包含する。「類似の」とは、対象とするタンパク質のアミノ酸配列が、最適な形で整列された場合に、別のアミノ酸配列と、「保存的アミノ酸(conserved amino acids)」または「保存的アミノ酸(conservative amino acids)」だけ異なることを意味する。保存的アミノ酸の分類は、親水性もしくは疎水性、サイズもしくは容量、または電荷に基づきうる。アミノ酸は、主にアミノ酸側鎖の特性に応じて、疎水性または親水性として特徴づけうることが一般的である。Eisenbergら(J. Mol. Bio.、179巻、125〜142頁、1984年)により標準化されたコンセンサスの疎水性スケールに基づくと、疎水性アミノ酸は、ゼロを超える疎水性を示し、親水性アミノ酸は、ゼロ未満の疎水性を示す。疎水性アミノ酸には、Gly、Ala、Phe、Val、Leu、Ile、Pro、Met、およびTrpが含まれ、親水性アミノ酸には、Thr、His、Glu、Gln、Asp、Arg、Ser、およびLysが含まれる。
【0128】
一部の実施形態において、「保存的アミノ酸(conserved amino acids)」または「保存的アミノ酸(conservative amino acids)」とは、同様の親水性値(例えば、プラスもしくはマイナス2.0、またはプラスもしくはマイナス1.5、またはプラスもしくはマイナス1.0、またはプラスもしくはマイナス0.5の範囲内の値)を有するアミノ酸を指し、この場合、Tyr(−1.3)またはPro(−1.6)など、ハイドロパシー指数が約−1.6である以下:Arg(+3.0);Lys(+3.0);Asp(+3.0);Glu(+3.0);Ser(+0.3);Asn(+0.2);Gln(+0.2);Gly(0);Pro(−0.5);Thr(−0.4);Ala(−0.5);His(−0.5);Cys(−1.0);Met(−1.3);Val(−1.5);Leu(−1.8);Ile(−1.8);Tyr(−2.3);Phe(−2.5);およびTrp(−3.4)のアミノ酸は、アミノ酸残基に割り当てられる(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,554,101号で詳述される)。
【0129】
代替的な実施形態において、保存的アミノ酸とは、同様のハイドロパシー指数(例えば、プラスもしくはマイナス2.0、またはプラスもしくはマイナス1.5、またはプラスもしくはマイナス1.0、またはプラスもしくはマイナス0.5の範囲内の値)を有するアミノ酸を指す。このような実施形態では、以下:Ile(+4.5);Val(+4.2);Leu(+3.8);Phe(+2.8);Cys(+2.5);Met(+1.9);Ala(+1.8);Gly(−0.4);Thr(−0.7);Ser(−0.8);Trp(−0.9);Tyr(−1.3);Pro(−1.6);His(−3.2);Glu(−3.5);Gln(−3.5);Asp(−3.5);Asn(−3.5);Lys(−3.9);およびArg(−4.5)の通り、その疎水性および電荷特徴に基づき、各アミノ酸残基にハイドロパシー指数を割り当てることができる。
【0130】
代替的な実施形態において、保存的アミノ酸は、以下:非極性:Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Pro、Met;酸性:Asp、Glu;塩基性:Lys、Arg、His;中性:Gly、Ser、Thr、Cys、Asn、Gln、Tyrの通り、非極性クラス、酸性クラス、塩基性クラス、および中性クラスに分類される。
【0131】
疎水性アミノ酸または親水性アミノ酸は、それらの側鎖の特徴に基づき、さらに細分化することができる。例えば、芳香族アミノ酸とは、側鎖が、少なくとも1つの芳香環またはヘテロ芳香環を含有する疎水性アミノ酸である。芳香族アミノ酸には、Phe、Tyr、およびTrpが含まれる。非極性アミノ酸とは、生理学的pHでは荷電せず、また、2つの原子により共有される電子対が、一般に、該2つの原子の各々により同等に保持される結合を有する側鎖を伴う(すなわち、側鎖が極性でない)疎水性アミノ酸である。非極性アミノ酸には、Gly、Leu、Val、Ile、Ala、およびMetが含まれる。非極性アミノ酸をさらに細分化して、脂肪族の炭化水素側鎖を有する疎水性アミノ酸である、脂肪族アミノ酸を包含させることができる。脂肪族アミノ酸には、Ala、Leu、Val、およびIleが含まれる。
【0132】
極性アミノ酸とは、生理学的pHでは荷電しないが、2つの原子により共有される電子対が、該原子のうちの一方により緊密に保持される1つの結合を有する側鎖を伴う親水性アミノ酸である。遺伝子によりコードされる極性アミノ酸には、Ser、Thr、Asn、およびGlnが含まれる。酸性アミノ酸とは、側鎖のpKa値が7未満の親水性アミノ酸である。酸性アミノ酸は、水素イオンの喪失により、生理学的pHでは負に荷電した側鎖を有することが典型的である。酸性アミノ酸には、AspおよびGluが含まれる。塩基性アミノ酸とは、側鎖のpKa値が7を超える親水性アミノ酸である。塩基性アミノ酸は、ハイドロニウムイオンとの会合により、生理学的pHでは正に荷電した側鎖を有することが典型的である。塩基性アミノ酸には、Arg、Lys、およびHisが含まれる。
【0133】
上記の分類は絶対的なものではなく、アミノ酸は、複数のカテゴリーに分類されうることを、当業者は理解するであろう。加えて、アミノ酸は、公知の挙動、および、特定のアッセイに基づくか、または既に同定されたアミノ酸と比較される、特徴的な化学的特性、物理的特性、または生物学的特性に基づいて分類することもできる。
【0134】
公知の構造を有するが、対象とする配列、すなわち、最高度の配列相同性を有するタンパク質に構造的に整列される配列も有する、仮説的タンパク質内においてアンフォールディングする可能性が高い領域を検討することにより、候補エピトープを見出すことができる。その構造が、候補エピトープの局所的安定性など、さらなる情報をもたらすと判定されている配列について、これらを、候補エピトープと比較することができる。
【0135】
代替的に、タンパク質の一次配列に基づく非経験的予測により、構造を決定することもできる。
【0136】
b)アンフォールディングの解析モデル
アミノ酸がフォールディングまたはアンフォールディングしている、モデルの二状態性により、イジング様モデルへの対応づけが可能となる。イジング様モデルは、タンパク質フォールディングに導入されており(MunozおよびEaton、Proc Natl Acad Sci USA、96巻、11311頁(1999年))、本発明に適合させて、アンフォールディングおよびミスフォールディングをモデル化することができる。統計力学ツールと併せて上記で説明したエネルギー関数を用いると、1または複数の配列鎖が溶融した、部分アンフォールドタンパク質についての分配関数を見出すことができる。
【0137】
イジングモデルのフォーマリズムにおいて、エネルギー関数は、配列的には隔たっているが空間的には近接して相互作用し合うアミノ酸を表わす、非局所的相互作用を含有する。状態全体にわたり解析的に実行される部分トレースは、本方法の組合せ構成要素の有効性をしのぎ、多数の連続配列を同時にアンフォールディングさせうる。本方法の組合せ構成要素は、適切な場合、統計力学ツールと共に部分トレースを伴う解析的方法により置き換えることができる。
【0138】
c)エネルギーランドスケープによる候補に基づくエピトープの選択
エネルギーランドスケープを検討することにより選択したミスフォールディング特異的な候補エピトープを精緻化して、ミスフォールドタンパク質には高アフィニティーで選択的に結合するが、正常フォールドタンパク質にも、該生物のプロテオーム内の他のタンパク質にも結合しないエピトープを、さらなる開発のために選択することができる。この目的で、一連のスクリーニングステップを、本発明の第3の構成要素として実装することができる:
・候補エピトープが、それに対して作製される抗体にとって十分に免疫原性である可能性を増大させるため、おそらくは疎水性残基より一般に免疫原性である親水性残基(すなわち、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、メチオニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、およびチロシン)が十分な数だけ存在するかどうかについて、その配列を検討することができる。B細胞反応により抗体を生成させるエピトープの免疫原性を推定する手法は、別所(Roggen、Immunogenicity of Biopharmaceuticals、8巻、75頁(2008年))で開発されており、これを用いて、候補エピトープを、それらが頑健な抗体生成を誘発する可能性について評価することができる。
【0139】
・候補エピトープが、天然の立体構造内においてそれを含有するタンパク質に対して免疫反応性でない可能性を減少させるため、該天然構造内における、溶媒に対するエピトープの露出を調べることができる。溶媒に対する露出は、ミスフォールディング時における選択的な免疫反応性の可能性を増大させるため、天然構造内のエピトープは、これを最小化させうる。しかし、エピトープの重要な部分、特に、親水性基および荷電基は、フォールド状態においても溶媒に露出することがしばしば起こる。遊離ペプチドを再現しうる形で露出する親水性基または荷電基を有する候補エピトープは棄却されるが、同じ配列の遊離ペプチドにより再現されない立体構成を有する候補エピトープは保持される。例えば、親水性基または極性基が、天然構造内のタンパク質の別個の側面上において露出し、抗体により同時に認識されることがない場合にこれは生じうる。タンパク質の構造セットを求めることができる場合は、該タンパク質内のすべての領域についての二乗平均平方根偏差を計算し、これを用いてエピトープの選択を精緻化することができる。フォールド状態においてRMSDが大きな領域は、これが、より大きな運動性の指標であるため、エピトープとしてはあまり望ましくない。
【0140】
・候補エピトープが、標的生物の他のタンパク質内に存在しない可能性を減少させるため、例えば、該生物のプロテオーム内の類似の配列を同定しうるタンパク質BLASTにより、エピトープ配列の検索を実施することができる。これらの類似の配列は、候補エピトープを標的とする薬剤に対して曝露されると、その診断的有用性または治療的有用性を損なう、有害な交差反応を引き起こしうる。一般に、正常状態にある候補配列は、プロテオーム内の他の配列と共有するその残基が80%未満であるものとする;極めて異なるエピトープが示す類似性は最小限であり、例えば、ゲノム内の他のタンパク質配列との共有は50%未満であるとする。
【0141】
次いで、上記で列挙した基準のうちの1または複数を満たす候補エピトープを、ミスフォールディング特異的エピトープとして受け取ることができる。
【0142】
したがって、一実施形態において、本方法は、以下の部分を含むがこれらに限定されない。
【0143】
a)二次構造または三次構造を有するタンパク質のアミノ酸配列内に含有される、1または複数のアミノ酸残基の任意のセットについて、アンフォールディングのギブスの自由エネルギーまたはヘルムホルツの自由エネルギーを決定するためのエネルギー関数。この自由エネルギー関数は、以下で詳細に説明される複数の形態を取りうるが、最も一般的には、アンフォールディングの自由エネルギーに対する以下のエネルギー寄与:エンタルピーの変化、溶媒和エントロピーの変化、立体構成エントロピーの変化、塩橋の切断エネルギー、酸性残基および塩基性残基のpHに依存するイオン化エネルギー、誘電環境間における荷電基の移動エネルギー、ならびにグリカンおよび/またはジスルフィド結合の安定化エネルギー(対象とするタンパク質が、これらの構造要素を含有する場合)のすべてを考慮に入れる。
【0144】
b)対象とするタンパク質の1または複数のアミノ酸のすべてまたは複数のセットについて、アンフォールディングの自由エネルギーおよびアンフォールディングの全確率を計算するのに自由エネルギー関数を適用し、結果として得られるエネルギーを解釈に適する形で表示する方法。本発明の特定の場合において、これは、タンパク質の配列内に含有されるアミノ酸残基のすべての連続する部分配列のセットについて、アンフォールディングの自由エネルギーを計算するステップと、アンフォールディングの自由エネルギーまたは全確率をアンフォールド配列の長さおよびタンパク質配列内における位置の関数として示す、3次元表面プロット上において該自由エネルギーを表示するステップとを伴う。本発明の別の特定の場合は、2つのアンフォールディングする部分配列を含有する、すべての部分アンフォールド状態の自由エネルギーを計算するステップを伴う(タンパク質フォールディングの分野では、「二重配列による近似」として公知である)。アンフォールディングのエネルギーランドスケープ表面上における極小点に対応するアンフォールド配列を、最もアンフォールディングする可能性が高い領域として同定し、したがって、ミスフォールディング特異的エピトープの候補として同定する。
【0145】
c)部分b)で定義した、ミスフォールディング特異的な候補エピトープを取り、それらの免疫原性、タンパク質のフォールド形態において免疫反応性である傾向、また、プロテオームの他のタンパク質内における発生を解析するステップ。免疫原性であり、対象とするタンパク質がそのフォールド形態にある場合は抗体に対して非反応性であり、また、他の細胞表面または細胞外タンパク質において交差反応性を引き起こす可能性が高い形では存在しない候補エピトープだけを選択する。
【0146】
d)タンパク質内に含有される、配列が連続するすべての可能な候補エピトープについてアンフォールディングの自由エネルギーを計算することに基づき、タンパク質におけるミスフォールディング特異的エピトープを予測する方法。該方法では、相対的に確率の高いアンフォールディングイベントが自由エネルギー表面上の極小点または谷に位置する、アンフォールディングイベントの自由エネルギーランドスケープを作製することによりこれらの領域を同定する。該方法ではまた、これらの極小点の周囲にエネルギー等高線を描くことが可能であり、これにより、所与のアンフォールディングイベントが、他のより広範なアンフォールディングイベントの素因を示す確率が決定される。
【0147】
e)アンフォールディングの確率が相対的に高いことが判明している領域の免疫原性を同定して、抗体を開発するためのエピトープとして用い、また、アンフォールド状態またはミスフォールド状態だけにおいて免疫反応性であることが予測されるエピトープを単離する方法。この手法の顕著で実際的な利点は、免疫原およびスクリーニング標的内では二次構造または三次構造が欠如するために、該方法により規定される遊離ペプチドに対して作製される抗体は、部分的に変性した親タンパク質内において伸長した同一の直鎖状アンフォールド配列を特異的に認識する可能性が極めて高いということである。
【0148】
図1として、本方法の一実施形態のステップを説明するフローチャートを示す。
【0149】
エピトープを同定するためのシステム
代替的な実施形態では、上記で説明したエピトープ予測法を、タンパク質中のミスフォールド形態内に存在するエピトープを同定するシステムにおいて実装する。図4として、入力ユニット101、候補選択ユニット103、自由エネルギー計算ユニット105、およびエピトープ同定ユニット107を含むシステム100を示す。
【0150】
本実施形態において、システム100は、プロセッサーおよびメモリーを有するコンピュータ(図示しない)を含む。メモリーは、プロセッサーにより実行されると、本明細書で説明される、入力ユニット101、候補選択ユニット103、自由エネルギー計算ユニット105、およびエピトープ同定ユニット107の機能性をもたらす、その上に記録されたステートメントおよびインストラクションを含有する。代替的な実施形態において、入力ユニット101、候補選択ユニット103、自由エネルギー計算ユニット105、およびエピトープ同定ユニット107は、1または複数のネットワークを介して通信し合う1または複数の地点に位置する、1または複数のプロセッサーおよびメモリーを含みうる。プロセッサーは、1または複数のコンピュータ上において、アプリケーション専用回路、プログラマブル論理制御装置、フィールドプログラマブルゲートアレイ、マイクロコントローラー、マイクロプロセッサー、仮想マシン、電子回路、また当業者に公知の他のプロセッシングデバイスを含みうる。さらに、メモリーは、1または複数のランダムアクセスメモリー、フラッシュメモリー、読み取り専用メモリー、ハードディスクドライブ、光学ドライブおよび光学ドライブ用メディア、フラッシュドライブ、また、当業者に公知の、コンピュータにより読み取り可能な他の保存用メディアを含みうる。
【0151】
入力ユニット101は、タンパク質の構造を表わすモデルを受け取るように構成される。上記で説明した通り、入力ユニット101は、核磁気共鳴、X線結晶構造解析、電子顕微鏡法、または当技術分野で公知の他の方法などの技法を用いることにより得られるタンパク質の原子モデルを受け取りうる。加えて、入力ユニット101はまた、アンフォールドタンパク質のエピトープについて評価されるモデル化されたタンパク質の領域、選択される領域内のアミノ酸セットの種類、また、上記で説明したアンフォールディングの自由エネルギー関数のパラメータを含め、システム100の動作を定義する動作パラメータを受け取るようにも構成される。本実施形態において、入力ユニット101は、システム100のメモリー内に保存された構成データを読み取ることにより、タンパク質モデルおよび動作パラメータを受け取る。代替的な実施形態において、入力ユニット101は、例えば、キーボードによる手動入力など、当技術分野で公知の任意の手段を介して、タンパク質を表わすモデル、および動作パラメータ、またはリモートサーバー内のアクセスデータを受け取りうる。さらに代替的な実施形態において、入力ユニット101は、タンパク質を表わす1または複数のモデル、上記で説明した動作パラメータ、また、当業者に明らかな他の動作パラメータを受け取りうる。
【0152】
候補選択ユニット103は、モデルから、1または複数のアミノ酸残基による1または複数のセットを選択するように構成される。選択されるセットの種類を指定するパラメータは、入力ユニット101により候補選択ユニット103へと与えられる。セットの種類は、モデル内の位置、長さ、アミノ酸残基の連続しない配列の数について選択することができる。例えば、セットの種類は、モデル内の1もしくは複数の連続するアミノ酸残基の配列を含むすべてのセット;モデル内の1もしくは複数の連続するアミノ酸残基の配列を含むすべてのセットであって、各セットが領域内において少なくとも1つの残基を含むセット;モデル内の1もしくは複数の連続するアミノ酸残基の、2つ以上の連続しない配列を含むすべてのセット;モデル内の1もしくは複数のアミノ酸残基による2つ以上の連続しない配列を含むすべてのセットであって、各セットが領域内の少なくとも1つのアミノ酸残基を含むセット;最小の長さと最大の長さとの間の長さを有するアミノ酸残基配列に限定されるセット;または前出のセットの任意の組合せを含みうる。
【0153】
代替的な実施形態では、選択されるセットの種類、および/または評価される領域を指定するパラメータが入力ユニット101によっては受け取られず、候補選択ユニット103は、特定の種類のセットおよび/または特定の領域を選択するようにあらかじめ構成される。例えば、候補選択ユニット103は、全モデル内の1または複数の連続するアミノ酸残基の配列を含む、すべてのセットを選択するように構成することができる。
【0154】
自由エネルギー計算ユニット105は、上記で説明した、アンフォールディングの自由エネルギー関数を適用することにより、候補選択ユニット103により選択された各セットについて、アンフォールディングの自由エネルギーを決定するように構成される。本実施形態において、自由エネルギー計算ユニット105は、エンタルピーの変化については、全原子分子動力学、または溶媒露出表面積の変化、または空間的に近接する水素以外の原子数の変化;溶媒和エントロピーの変化については、溶媒露出表面積の変化;立体配置エントロピーの変化、および翻訳後修飾効果については、解析的拡散モデル;塩橋エネルギーおよび電荷移動エネルギーについては、誘電率を一定とするか、または空間的に変化させる、ポアソン−ボルツマンの式、またはクーロンの式を用いて、アンフォールディングの自由エネルギー関数の各要素を決定するように構成される。代替的な実施形態において、自由エネルギー計算ユニット105は、各要素を決定するための、上記で説明した方法のうちの1つ、またはそのうちの2つ以上による平均を用いて、アンフォールディングの自由エネルギー関数の各要素を決定しうる。
【0155】
エピトープ同定ユニット107は、2つの方法のうちの1つにより、タンパク質のミスフォールド形態において存在する1または複数のエピトープを同定するように構成される。(a)領域内の各残基についてアンフォールディングの全確率を決定し、アンフォールディングの全確率が最小の確率を上回るセットからエピトープを同定することによるか、または(b)アンフォールディングの自由エネルギーが最小のエネルギーを下回るセットからエピトープを同定することにより、エピトープを同定することができる。エピトープ同定ユニット107は、エピトープについて記載するデータを、システム100のメモリー内に保存することにより、エピトープを同定する。代替的な実施形態において、エピトープは、ディスプレイまたは印刷媒体上におけるグラフ表示または数値表示を提示することにより同定することができる。
【0156】
動作中において、アンフォールドタンパク質のエピトープについて評価されるタンパク質モデル、および動作パラメータは、構成データとして、システム100のメモリー内に保存される。入力ユニット101が、メモリーから構成データを読み取ることにより、タンパク質モデルおよび動作パラメータを受け取る。次いで、候補選択ユニット103が、入力ユニット101により受け取られた動作パラメータにより指定された特徴を有する、モデル内のアミノ酸残基のセットを選択する。次いで、自由エネルギー計算ユニット105が、候補選択ユニット103により選択された各セットについて、アンフォールディングの自由エネルギーを決定する。自由エネルギー計算ユニット105により各セットについて決定されたアンフォールディングの自由エネルギーに基づき、(a)領域内の各残基についてアンフォールディングの全確率を決定し、アンフォールディングの全確率が最小の確率を上回るセットからエピトープを同定することによるか、または(b)アンフォールディングの自由エネルギーが最小のエネルギーを下回るセットからエピトープを同定することにより、エピトープ同定ユニット107が、エピトープを同定する。次いで、エピトープ同定ユニット107が、エピトープについて記載するデータを、システム100のメモリーに保存する。
【0157】
例示的な実施形態
本発明者らは、本明細書で説明されるエピトープ予測法を用いて、ヒトプリオンタンパク質、ウシプリオンタンパク質、ヒトスーパーオキシドディスムターゼ1、ヒトトランスサイレチン、ヒトβ2ミクログロブリン、ヒトNotch受容体、ヒトCD38、ヒトCD44、ヒト腫瘍壊死因子受容体、ヒトFAS受容体、およびヒト上皮成長因子受容体のミスフォールディング特異的エピトープを同定した。本発明者らは、「発明を実施するための形態」で説明した上記のステップを実装して、図3に示し、また、以下の表1に列挙する配列を得た。
【0158】
【表1−1】

【0159】
【表1−2】

表1に列挙されるペプチドは、それらの単離形態、すなわち、これらの配列が常在する親ペプチドから取り出された形態、また好ましくは、他のすべてのペプチドが本質的に不在である形態において、本発明の重要な実施形態を構成する。
【0160】
表1をよく検討すると、本発明に従う方法により、対象とするタンパク質内における大量の潜在的エピトープを取り出し、それらを、100、50、20、10以下のミスフォールディング特異的エピトープへと減少させうることが理解されるであろう。
【0161】
これらのエピトープは、疾患特異的エピトープを同定するための本発明の効能を示す例であることを意図する。本発明のエピトープ予測法をタンパク質に対して用いて同定されるすべてのエピトープ、また、それらに対して免疫反応性であるように作製された抗体は、本発明の態様であると考えられる。
【0162】
本発明に従うエピトープ予測法を適用することにより、他の既存の特許においてミスフォールディング特異的エピトープとして既に特許請求されているエピトープを同定しうることは、注目に値する。したがって、本発明者らは、PCT出願第PCT/CA2007/0000346号、ならびに米国特許第US20080206251A1号および同第US20070292410A1号で既に特許請求されている、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)1エピトープなど、本発明により同定されるが、他の手段によっても同定され、また、ミスフォールドタンパク質を選択的に同定する目的で既に特許請求されているエピトープを、本特許の特許請求の範囲から除外する。
【0163】
本発明は、タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのタンパク質のミスフォールド形態により「固有の形で」提示されるエピトープに関する。エピトープを提示することにより、タンパク質の2つの形態を区別するための根拠が得られ、ミスフォールドタンパク質を標的とすることが可能となり、また、天然フォールドタンパク質は、本発明の治療的適用および診断的適用における複雑化因子として実質的に除去される。原理的に述べると、エピトープは、ミスフォールドタンパク質のエピトープに結合する抗体または他のリガンドが、そのタンパク質の天然フォールド形態に結合しないか、またはこれに対する結合を著明に低下させる場合、そのタンパク質に固有である。結合の差違が、識別可能な検査結果、または治療結果をもたらすのに有効であれば、該結合の差違の具体的な大きさはそれほど重要でない。したがって、本エピトープ、また、それらを同定するのに用いられる方法は、同じタンパク質のミスフォールド形態と天然フォールド形態とを区別するための根拠を提供する。
【0164】
本明細書の文脈において、タンパク質のミスフォールド形態は、天然フォールドタンパク質においては見出されないエピトープを提示する形態として特徴づけられる。これは、異なる環境条件(例えば、システインの酸化)、タンパク質フォールディングの監視における欠陥(例えば、シャペロン機能の無効性)、翻訳後修飾の異常(例えば、グリコシル化の成熟欠損)、別のタンパク質との相互作用異常(例えばPrP−PrPSc間相互作用)、または遺伝子における突然変異の結果としてもたらされる、異なる立体構造を取るタンパク質から生じることが典型的である。ミスフォールディングの結果として、タンパク質は、まれで望ましくない凝集状態を取りうる。代替的に、ミスフォールドタンパク質は、他のタンパク質と会合しない状態を保ちうるが、その正常状態と比べて、異なる免疫原性を示しうる。タンパク質のミスフォールド形態には、例えば、該タンパク質が、ミスフォールディング時、また、場合によって凝集時において、部分的にアンフォールディングした立体構造を取る場合の、一過性のミスフォールド状態が含まれることを理解されたい。
【0165】
本明細書で用いられる「エピトープ」という用語は、B細胞受容体もしくはT細胞受容体、または抗体もしくはその結合断片により認識されるタンパク質の領域を指し、本明細書では、該エピトープが常在する親タンパク質内において見出されるアミノ酸配列を有する直鎖状ペプチドにより表わされる。本発明によるエピトープには、例えば、タンパク質が、ミスフォールディング時、また、場合によって凝集時において、部分的にアンフォールディングした立体構造を取る場合に一過性で露出しうる、該タンパク質内のエピトープが含まれることを理解されたい。本明細書の上記で述べた通り、エピトープは通常、抗体の結合に必要な最小限のドメインを表わす、少なくとも3つの連続する残基を含む。しかし、エピトープは、5残基、典型的に、一般的な抗体生成宿主内における最小限の免疫原性に必要な長さである7残基、10残基、15残基、20残基以上など、より多数の連続する残基を包含しうることが理解されるであろう。最も重要なことは、抗体結合ドメインを保有するエピトープを提供することである。したがって、また、表1を参照すると、具体的に列挙されたペプチドは、特に、7残基未満からなるペプチドの場合、それ自体がエピトープとして用いられることに加え、それらの片側または両側において、付加的アミノ酸残基をさらに含むことを理解されたい。付加的残基は、親タンパク質の環境において、該ペプチドと通常会合する残基でありうる。逆に、とりわけ、ペプチドが7を超える残基からなる場合、該ペプチドの短縮形態もまた、エピトープとして用いうることを理解されたい。短縮の範囲は、所与のペプチドの実際の長さに応じて変化しうる。列挙されたペプチド内における、任意の連続する7残基は、それ自体免疫原性であると予測することができ、また、任意の3、4、5、6、または7以上の連続する残基は、抗体が結合するエピトープとして有用であると予測することができる。
【0166】
例えば、ヒトPrPタンパク質にエピトープ予測法を適用すると、予測される両方のペプチドである、LGGYMLおよびGGYMLGS(それぞれ、配列番号1および2)に共通の配列であるYMLにより表わされるベータ鎖1内においてエピトープを提示する、アンフォールディングイベントが予測される。上記の議論から、これらもまたYMLを含み、また、親タンパク質の配列にも基づく、特異的ペプチドによる変異体も、本発明の実施形態に包含されることが理解されるであろう。このようなペプチドには、例えば、GGYMLGS(配列番号81)、GGYMLG(配列番号82)、GYMLGS(配列番号83)、GGYML(配列番号84)、YMLGS(配列番号85)、GYML(配列番号86)、YMLG(配列番号87)、およびYML(配列番号88)が含まれうる。
【0167】
標準的な実施法に従う固相合成または液相合成により、本明細書で言及されるエピトープおよび他の遊離ペプチドを調製することができ、また、確立された手順に従い、これらを単離し、また場合によって精製しうることも理解されるであろう。
【0168】
これらのエピトープ内における特定のアミノ酸を置換しても、該エピトープに対する免疫反応性には影響しないことが、当業者には明らかである。例えば、イソロイシンまたはバリンによるロイシンの置換、およびこれらのすべての組合せは、このエピトープに対して作製された抗体の感受性を変化させる可能性が低い。したがって、ミスフォールド特異的タンパク質を同定する目的で、上記に列挙したエピトープに対して反応性である抗体を生成することが可能なすべてのエピトープは、本発明の態様である。
【0169】
場合によっては、エピトープ内に存在するアミノ酸を誘導体化して、ミスフォールド形態に対してより頑健な免疫反応、またはより選択的な反応性を得ることが望ましい。例えば、SOD1に由来するエピトープであるFGDNTAGCTSA(配列番号32)は、SOD1がミスフォールディングすると、酸化により、システインスルフィン酸またはシステインスルホン酸(システイン酸)へと誘導体化されうるシステインを含有する。したがって、例えば、システインの代わりにシステイン酸残基を含有する遊離ペプチドに対する抗体は、該タンパク質のミスフォールド形態に対して、潜在的により特異的である。一般に、本明細書で説明する方法に従い同定され、また、それらの構成要素であるアミノ酸の誘導体を含有する候補エピトープは、本発明の態様である。
【0170】
プロリンを含有するエピトープの場合、cis立体構成またはtrans立体構成に固定されるプロリン類似体を含有する抗原ペプチドを調製することが望ましい場合がある。このような類似体は、既に説明されている(Scheragaら、J Am Chem Soc、121巻(49号)、11558頁(1999年); Wangら、J Org Chem、68巻(6号)、2343頁(2002年))。cisアミド結合による立体異性体と、transアミド結合による立体異性体とで極めて大きなエネルギー差が存在する他のアミノ酸と異なり、構造化されないペプチド内におけるプロリンは、比較的急速な時間スケールにおける、cis形態とtrans形態との相互転換が可能である。プロリンがフォールドタンパク質内へと組み込まれる場合、立体相互作用により、それは、2つの可能な立体構造体のうちの一方だけに固定されるが、アンフォールディング時において、それは、自由にラセミ体化する。天然構造において存在する立体化学反応性とは反対の立体化学反応性を示すプロリン類似体を組み込むペプチドに対する抗体を作製することにより、アンフォールド状態に対する抗体の選択性がはるかに上昇する。したがって、本方法により予測され、プロリンのcis類似体またはtrans類似体を組み込むエピトープペプチドは、本発明の態様である。
【0171】
したがって、上記の表1において例示した、本発明の方法により予測されるエピトープは、少なくとも3つの連続する残基を含み、最大20以上の残基を含むことが理解されるであろう。エピトープ内の残基は、親抗体内においてそれ自体として表わされる場合もあり、1つ、2つ、または3つの残基が、該親タンパク質内では見出されない残基により置換されている、その変異体の場合もある。置換アミノ酸は、IleまたはValによるLeuの置換など、保存的アミノ酸置換の場合もあり、酸化形態、ニトロ化形態、もしくはカルボキシル化形態など、元のアミノ酸の化学改変形態、または特定の光学異性代替物の場合もある。
【0172】
したがって、表1を具体的に参照すると、本発明のエピトープの実施形態には、7残基より長いペプチドは、残基数を7まで減少させるのに有効な任意の数の残基だけ短縮し、7残基より短いペプチドは、親タンパク質内に存在する、これを挟み込む残基を包含するように伸長させた変異体と、別のアミノ酸により1つ、2つ、または3つの残基が置換された類似体とが含まれる。
【0173】
例えば、表1に列挙したペプチドに対する、それらの短縮形態または伸長形態において有用なエピトープを同定するため、厳密性をより高いレベルまたはより低いレベルに設定し、これにより、特定のエピトープを構成するペプチドを指定する場合に適用される基準を緩和または強化して、エピトープ予測法を適用または再適用することができる。
【0174】
エピトープを構成するアミノ酸配列を含むペプチドは、選択された抗体生成宿主内において抗体を作製するのに必要な免疫原性を、それら自体が付与されている場合は、それらに特異的に結合する抗体を作製するのに、それら自体有用でありうる。このような免疫原性を欠くエピトープの場合、該エピトープ配列を含有する免疫原を供給することが望ましい。本明細書で用いられる「免疫原」とは、該エピトープを含むペプチドまたは他の分子の免疫原性形態を指し、それ自体で免疫原性である場合に該ペプチド自体により表わされるか、または、免疫原性増強剤と組み合わせたペプチドにより表わされる。任意の確立された薬剤をこの目的で用いることができる。これらの薬剤には、アミド結合を介するなど直接的に、あるいはカルボジイミドなどの化学リンカー、システイン、または、グリシンもしくはGly4−Sを含めたグリシン−セリン配列など、任意のペプチドスペーサー配列を介して間接的にエピトープに連結させうる担体タンパク質が含まれることが典型的である。例えば、所与のエピトープを含む単離ペプチドは、MAP抗原にコンジュゲートさせることもでき、スカシガイヘモシアニン(KLH)にコンジュゲートさせることもできる。そのサイズが大きいために、KLHは極めて免疫原性であり、また、コンジュゲーションに用いうるリシン残基の数が多いため、KLHは、ポリペプチドに結合させるのに極めて有用である。エピトープに対応するペプチドは、同じペプチドまたは異なるエピトープに対応する、同じであるかまたは異なるペプチドの別のコピーに、該ペプチドを繰り返し連結するのに有効なリンカーをさらに含みうる。別の実施形態において、ペプチドは、その免疫原性または溶解性を増強する付加的アミノ酸を含みうる。一実施形態において、付加的アミノ酸の数は、1〜約10、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜5である。付加的残基は、ペプチドの立体構造に物質的な影響を及ぼさないことが重要である。
【0175】
したがって、それ自体免疫原性でなく、また、免疫原を構成しないエピトープも免疫原とすることができ、また、それらとコンジュゲートさせるか、または共有結合させた、免疫性増強剤を組み込むことにより、免疫原として提供することができる。
【0176】
選択された宿主内において抗体を作製する目的で、免疫原を適切な媒体と組み合わせることにより、免疫原を含む組成物を調製することができる。このような媒体には、フロイントの完全アジュバント、または適切な生理食塩液もしくはリン酸緩衝生理食塩液(0.05〜1.0%)が含まれる。
【0177】
次いで、これらのエピトープが構造化されない状態にある場合に、これらに対して反応する抗体を調製する。言及した通り、各ペプチドをKLHなどの担体タンパク質にコンジュゲートさせて免疫原を形成し、これを、場合によって、フロイントの完全アジュバントなどのアジュバントと組み合わせて、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、またはヤギなど、哺乳動物の生成宿主内へと注入し、該ペプチドに対する抗体を生成する免疫反応を惹起する。標準的な免疫化プロトコールを用いることができ、本明細書で例示する通り、免疫化剤に対して濃縮することにより、血液から抗体を回収することができる。
【0178】
ミスフォールディング特異的エピトープに選択的に結合する抗体は、IgGクラスまたはIgMクラスのポリクローナル抗体の場合もあり、モノクローナル抗体の場合もあり、また、任意の哺乳動物、特に、ヤギ、ウサギ、またはマウスに由来する場合もあり、組換え法による場合もある。より一般的に、本発明において有用な抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、また、キメラ抗体、ヒト化抗体のほか、完全ヒト抗体を含めた組換え抗体を含め、各種の完全形態が含まれる。キメラ抗体は、特定の種に由来する抗体内における対応する配列と相同であるか、または特定の抗体クラスもしくは抗体サブクラスに属する重鎖および/もしくは軽鎖の一部を含む一方で、該(1または複数の)鎖の残余部分は、別の種に由来する対応する配列と相同であるか、または異なる抗体クラスに属する。ヒト化抗体は、非ヒト抗体に由来する最小限の配列を含むキメラ抗体であり、通常、非ヒト抗体に由来するCDRを、ヒト抗体フレームワーク内へと組込み、これを、抗原結合を保持および増強する非ヒト残基を組み込むようにさらに改変することができる。「完全」ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーの使用を介することを含め、現在確立されている各種の技法を用いて、また特に、ヒト免疫グロブリンの遺伝子座を、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活化されているマウスなど、トランスジェニック動物内へと導入することにより、非ヒト宿主内において作製することができる。感作すると、遺伝子再配置、遺伝子アセンブリー、および抗体レパートリーの使用を介することを含め、ヒトにおいて見られる抗体に多くの点で酷似するヒト抗体が作製される。抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMを含めた任意の有用なクラスであることが可能であり、また、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含めたアイソタイプでありうる。エフェクター機能の改変をもたらし、これにより、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性および/または補体依存性細胞傷害(CDC)活性を増強するように、抗体の定常領域(Fc)もまた操作するか、またはこれにコンジュゲートさせることができる。
【0179】
好ましい実施形態において、抗体は、標的エピトープを構成する配列に選択的に結合する。選択的結合剤とは、それらが異なる、非関連のエピトープに結合する場合のアフィニティーより少なくとも1桁大きい(例えば、少なくとも2、3、4、または5桁大きい)アフィニティーで標的エピトープに結合し、また、溶媒に露出する配向性において該標的エピトープを提示するタンパク質に結合する薬剤である。例えば、癌細胞上におけるEGFRに結合する抗体の結合アフィニティーは、正常組織上におけるEGFRに対するその結合アフィニティーより、少なくとも1桁大きいことが好ましい。当技術分野ではこの目的で十分に確立されていることが一般的なアッセイおよび技法に基づき、相対的結合アフィニティーを決定することができ、また、このようにして抗体を選択することができる。
【0180】
一部の適用において、抗体は、Fab断片、Fab’ 断片、F(ab’)2断片、およびFv断片を含め、これらもまた標的エピトープに結合するその断片により、または、抗体断片から形成される、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子、および多重特異性抗体により置換しうることが理解されるであろう。Fc領域を組み込む抗体断片はまた、エフェクター機能の改変を提供し、これにより、ADCC活性および/またはCDC活性を増強するように操作するか、またはこれにコンジュゲートさせることができる。
【0181】
タンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープに選択的に結合する抗体は、ハイスループット法を用いて、相補性決定領域(CDR)または標的エピトープに結合する他の配列を同定する、ファージディスプレイシステムおよび他のシステムの適用を介するなど、免疫化以外の技法により作製しうることもまた理解されるであろう。結果として得られる抗体が、in vivoにおいて初めて作製されたということは本質的でない。
【0182】
実施形態において、抗体は、配列番号1〜4、6、8〜26、28〜36、41〜75、および77〜80で示されるエピトープを提示するミスフォールドタンパク質に選択的に結合する抗体である。
【0183】
エピトープ予測法を用いて同定されるエピトープに結合する、ミスフォールド特異的抗体を用いると、タンパク質ミスフォールディング病および癌における診断的有用性および治療的有用性が潜在的に大きい。CJD、BSE、GSS、FFI、クールー病、ALS、アレクサンダー病、家族性アミロイド性多発性神経障害、老人性全身性アミロイドーシス、およびミクログロブリン(microglobin)アミロイドーシスを含めたタンパク質ミスフォールディング病の場合、それら各々の1または複数の原因タンパク質に対するミスフォールディング特異的抗体により、患者試料におけるミスフォールドタンパク質を同定することにより該疾患の診断を施し、また、さらなるミスフォールディングを選択的に阻害し、ミスフォールディングしたタンパク質複合体を免疫的に標的化して破壊することにより毒性が最小限の治療を施す。白血病、骨髄腫、および腺癌を含めた癌の場合、組織標本に対してミスフォールド特異的抗体を適用することにより、癌性細胞の表面上において選択的に存在するミスフォールドタンパク質の存在または不在を判定する。こうして、それらの表面上においてミスフォールドタンパク質を実際に発現する癌は、該ミスフォールドタンパク質に対して抗体を注入することによる治療を受けやすい。本発明は、それらのエピトープがエピトープ予測法により同定される、ミスフォールドタンパク質を認識する抗体を組み込むことにより、タンパク質ミスフォールディング病または癌のための診断検査および治療手順を、それ自体製品として提供する。
【0184】
より具体的に述べると、本発明は、診断用もしくは治療用のエピトープ、またはそれらにより作製されたミスフォールディング特異的抗体の使用を提供する。
【0185】
治療的使用の場合、エピトープまたはそれらに選択的に結合する抗体を用いて、該エピトープがそれに対して固有であるタンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患を示すか、またはそのリスクを有する、患者または被験体を処置することができる。「治療する」、「治療」、「治療すること」、「治療的使用」、または「治療レジメン」という用語は、本発明による組成物を投与する場合の予防的様態、緩和的様態、および治療的様態を包含し、また、炎症に基づく病態、感染性疾患、アレルギー反応、免疫亢進反応、または治療される他の症状を含め、タンパク質のミスフォールド形態により直接的もしくは間接的に引き起こされるか、またはこれと直接的もしくは間接的に関連する、疾患状態(disease state)、状態(condition)、症状、徴候、または障害を改善するか、あるいはこれと関連する症状、徴候、状態(conditions)、または障害の進行を防止するか、阻害するか、遅延させるか、または可逆化する、本製品の任意およびすべての使用を包含する。
【0186】
「被験体」または「患者」という用語は一般に、ヒトおよび他の霊長動物、ネコ、イヌ、げっ歯動物、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、アメリカアカシカ、または他の有蹄動物、ヤギ、家禽などが含まれるがこれらに限定されない愛玩動物、動物園動物、および農場動物を含めた、哺乳動物および他の動物を指す。被験体は、所与のミスフォールドタンパク質標的と関連する疾患または障害を予測、評価、または診断するために検査を受ける被験体、またはこのために検査を受けた被験体を包含する。被験体は、現在臨床的に実施されている方法など、他の方法を用いて既に評価または診断されている場合もあり、一般的集団の一部(対照の被験体)として選択される場合もある。被験体は、とりわけミスフォールド形態にある標的タンパク質を生成するか、またはその発現を欠いているトランスジェニック動物、例えば、マウス(例えば、「ノックアウト」マウス)などのげっ歯動物でありうる。例えば、被験体は、標的タンパク質の正常形態を過剰発現するトランスジェニックマウスの場合もあり、該標的タンパク質のミスフォールド形態を感染させた野生型のマウスまたはハムスターの場合もある。
【0187】
治療するには、能動的免疫化に用いられる免疫原、また、受動的免疫化に用いられる抗体などの有効成分を「有効量」で用いる。これらは、治療レジメンにおいて、内因性のミスフォールドタンパク質の影響を低減するのに有用な量である。本発明が、多種多様な疾患に適用可能であり、また、内因性タンパク質の影響を低減するのに有効な特定の量および特定の治療レジメンが、各疾患について確立された臨床的実施法に従い、各疾患に応じて変化することは明らかであろう。
【0188】
一実施形態において、本発明は、タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患を示す被験体を処置するように、該タンパク質のそのミスフォールド形態に固有のエピトープの任意の免疫原性形態を含むワクチンを治療用に提供する。治療するには、毎日1回〜毎週1回、毎月1回、毎年1回、10年ごとに1回の範囲で変化しうるスケジュールで被験体を免疫化する。典型的なレジメンには、免疫化の後、6週間ごとの間隔で追加投与の注射を行う。別のレジメンは、免疫化の後、1、2、および12カ月後に追加投与の注射を行う。代替的に、追加投与の注射は、被験体の免疫反応および生理学的状態に応じて変化する。免疫化するには、治療1回当たり約0.0001マイクログラム〜10グラム、約0.01マイクログラム〜約1グラム、約1マイクログラム〜約1mg、および約100〜250マイクログラムの範囲の用量で、エピトープを含有する免疫原を投与することができる。一実施形態において、治療を投与する時期は、以下:0カ月後、2カ月後、6カ月後、9カ月後、および/または12カ月後のうちの1または複数である。1つのレジメンにおいて、投与は、最初の免疫化の2、6、9、および12カ月後である。別のレジメンにおいて、投与は、最初の免疫化の2および4週間後であり、次いで、その後は毎月である。代替的なレジメンにおいて、投与は、被験体の生理学的状態、および/または以前の免疫化に対する被験体の応答に応じて変化する。投与経路には、場合によって、筋肉内注射および腹腔内注射が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、組成物は、三角筋内へと注射される。
【0189】
ワクチン組成物はそれ自体、アジュバントをさらに含みうる。非経口免疫化のためのアジュバントには、アルミニウム化合物(水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、およびヒドロキシリン酸アルミニウムなど)が含まれる。標準的なプロトコールに従い、抗原を、アルミニウム化合物により沈殿させることもでき、これに吸着させることもできる。非経口投与では、RIBI(マサチューセッツ州、ハミルトン、ImmunoChem社製)など、他のアジュバントも用いることができる。
【0190】
本発明の実施形態において、疾患の治療において有用なワクチンには、以下:
a)CJDまたは関連のプリオン病に罹患した被験体を処置するための、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、また特に、3、4、6、7、8、9、または10により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
b)BSEまたは関連のプリオン病のリスクを有する被験体、特に畜牛における予防のための、配列番号11、12、13、14、または15により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
c)家族性アミロイド性多発性神経障害もしくは老人性全身性アミロイドーシス、またはミスフォールドTTRの存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号16、17、18、19、20、21、または22により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
d)β2ミクログロブリンアミロイド沈着物の腎臓での蓄積、またはミスフォールドβ2ミクログロブリンの存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号23、24、25、または26により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
e)筋委縮性側索硬化症(ALS)またはミスフォールドSOD1の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40、また特に、28、29、31、32、33、34、35、および36により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
f)白血病もしくは骨髄腫、またはミスフォールドCD38の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号41、42、43、44、または45により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
g)結腸癌転移またはミスフォールドCD44の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号46、47、48、49、または50により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
h)Fas受容体が関与する癌に罹患した被験体を処置するための、配列番号51、52、53、54、または55により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
i)子宮頚癌、頭頚部癌、子宮内膜癌、肺癌および乳癌、胸膜中皮腫、悪性黒色腫、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞非ホジキンリンパ腫を含めた癌、または特定の急性骨髄性白血病およびB細胞型慢性リンパ球性白血病を含めた、ミスフォールドNOTCH1の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号56、57、58、59、または60により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
j)Fas受容体の活性化が関与する癌に罹患した被験体を処置するための、配列番号61、62、63、64、または65により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
k)ミスフォールドEGFRが関与する特定の癌および関連障害に罹患した被験体を処置するための、配列番号76を除外するという任意選択の条件で、配列番号66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと
が含まれる。
【0191】
上記で言及したワクチンは、上記で指定したエピトープの代わりに、1、2、または3カ所のアミノ酸付加、アミノ酸置換、またはアミノ酸欠失を組み込むその変異体を含みうることが理解されるであろう。特に、エピトープは、6つ、7つ、または8つのアミノ酸、好ましくは7つのアミノ酸からなるように短縮するかまたは伸長させ、また、例えば、アミノ酸が、その酸化形態またはその光学異性代替物により置換される、最大2カ所であり、通常1カ所のアミノ酸置換を組み込む変異体でありうる。
【0192】
このようなワクチンに加え、本発明は、所与のミスフォールドタンパク質の存在が関連する状態/疾患を含め、上記で言及した状態を示す被験体の治療における抗体の治療的使用を提供する。治療するには、標的エピトープに選択的に結合する抗体を、抗体および薬学的に許容される担体を剤形中に含む医薬組成物として投与する。
【0193】
剤形は、場合によって、液体の剤形である。抗体溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と混合することが適切な水中において調製することができる。グリセロール、液体のポリエチレングリコール、アルコールを伴うかまたは伴わないDMSOおよびその混合物中、また、油中における分散液もまた調製することができる。通常の保管条件下および使用条件下において、これらの調製物は、微生物の増殖を防止する防腐剤を含有する。適切な製剤を選択および調製するための従来の手順および成分については、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(2003年、第20版);および「The United States Pharmacopeia: The National Formulary」(USP 24 NF19)、1999年刊行において説明されている。製剤は、場合によって、緩衝剤、抗酸化剤、安定化剤、担体、希釈剤、およびpH調節剤が含まれるがこれらに限定されない賦形剤を含有する。注射用に適する医薬形態には、水性の滅菌溶液または滅菌分散液、および滅菌注射液または滅菌分散液を即席で調製するための滅菌粉末が含まれる。
【0194】
治療において、抗体の用量は、場合によって、被験体の体重当たり約0.0001mg/kg〜約100mg/kg、約0.01mg/kg〜約5mg/kg、約0.15mg/kg〜約3mg/kg、0.5mg/kg〜約2mg/kg、および約1mg/kg〜約2mg/kgの範囲である。他の実施形態において、用量は、被験体の体重当たり約100mg/kg〜約5g/kg、約500mg/kg〜約2mg/kg、および約750mg/kg〜約1.5g/kgの範囲である。
【0195】
本発明による抗体の治療的使用は、細胞または体液が、該抗体により標的とされるエピトープを提示する疾患、すなわち、ミスフォールディングした標的タンパク質が存在する疾患を示す被験体へと、注射または注入により抗体を投与することを伴う。以下で論じる通り、抗体により標的とされるエピトープを提示する細胞を同定する組織試料または体液の検討と併せて、それらの臨床症状により、治療から利益を得る被験体を同定することができる。
【0196】
本発明の実施形態において、疾患を治療するのに有用な抗体組成物には、以下:
a)CJDまたは関連のプリオン病に罹患した被験体を処置するための、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、また特に、3、4、6、7、8、9、または10により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
b)家族性アミロイド性多発性神経障害もしくは老人性全身性アミロイドーシス、またはミスフォールドTTRの存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号16、17、18、19、20、21、または22により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
c)β2ミクログロブリンアミロイド沈着物の腎臓での蓄積、またはミスフォールドβ2ミクログロブリンの存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号23、24、25、または26により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
d)筋委縮性側索硬化症(ALS)またはミスフォールドSOD1の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40、また特に、28、29、31、32、33、34、35、および36により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
e)白血病もしくは骨髄腫、またはミスフォールドCD38の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号41、42、43、44、または45により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
f)結腸癌転移またはミスフォールドCD44の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号46、47、48、49、または50により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
g)Fas受容体が関与する癌に罹患した被験体を処置するための、配列番号51、52、53、54、または55により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
h)子宮頚癌、頭頚部癌、子宮内膜癌、肺癌および乳癌、胸膜中皮腫、悪性黒色腫、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞非ホジキンリンパ腫を含めた癌、または特定の急性骨髄性白血病およびB細胞型慢性リンパ球性白血病を含めた、ミスフォールドNOTCH1の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号56、57、58、59、または60により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
i)Fas受容体の活性化が関与する癌に罹患した被験体を処置するための、配列番号61、62、63、64、または65により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
j)ミスフォールドEGFRが関与する特定の癌および関連障害に罹患した被験体を処置するための、配列番号76を除外するという任意選択の条件で、配列番号66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と
を組み込む組成物が含まれる。
【0197】
上記で言及した抗体組成物は、抗体として、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、またはヒト化抗体である抗体を含むことが可能であり、また、完全なFc領域または機能的に同等なその変異体により付与される活性エフェクター機能を含むことが望ましいことが理解されるであろう。
【0198】
本発明の抗体組成物またはワクチン組成物による治療の候補者である被験体を同定する一助とするため、本発明は、in vitroまたはin vivoにおける診断法によるエピトープの検出をさらに提供する。
【0199】
所与の任意の試料中におけるミスフォールドタンパク質の存在を検出するため、本発明は、該ミスフォールドタンパク質を含有することが疑われる試料を、そのタンパク質の天然フォールド形態と比べて、該ミスフォールドタンパク質により固有に提示されるエピトープに選択的に結合する抗体または結合断片により処理し、抗原:抗体複合体が形成されたかどうかを判定し、その形成により、試料中における、前記タンパク質のミスフォールド形態の存在が示される検出法を提供する。一実施形態において、エピトープは、本エピトープ予測法を適用することにより同定されたエピトープである。別の実施形態において、エピトープは、配列番号1〜80のうちのいずれか1つを有するペプチドであるエピトープであるか、または配列番号1〜80のうちのいずれか1つを有するペプチド内に含まれるエピトープである。さらなる実施形態において、抗体は、それが配列番号1、5、7、27、30、37〜40、または76ではないという条件で、配列番号1〜80のうちのいずれか1つを有するペプチドに選択的に結合する抗体である。
【0200】
in vitroにおいて適用される場合、検出法は、被験体、通常はミスフォールディングした内因性の標的タンパク質を有することが疑われる被験体に由来する体液試料もしくは組織試料、または内臓試料の解析を伴う。例えば、生物学的試料は、脳脊髄液、血液、血漿、リンパ液、血清、尿、または唾液などの体液でありうる。固体または半固体の組織または内臓から得られる試料などの組織試料または内臓試料は、消化するか、抽出するか、または他の形で液体形態にすることができる(このような組織または内臓の例には、それらの癌性形態を含めた、培養細胞、血液細胞、脳、神経組織、皮膚、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、ランゲルハンス島、骨髄、血液、血管、心弁、肺、小腸、大腸、脾臓、膀胱、陰茎、顔面、手掌、骨、筋肉、脂肪、角膜などが含まれる)。1または複数の生物学的試料は、被験体が、タンパク質のミスフォールディングと関連する疾患または障害を有すると診断されるか、またはこれを有することが疑われる以前、その疾患または障害の症状を治療または改善するための治療レジメン期間、被験体の死後(死因または推定死因を問わない)を含めた、任意の適切な時点において、該被験体から採取することができる。代替的に、生物学的試料は、一元化された血液供給機構または血液供給機関に委託された場合の血液、血漿、または血小板など、提供された体液または組織を含みうる。代替的に、生物学的試料は、例えば、食肉処理場における屠殺時に採取された、食用動物に由来する食肉、血液、または組織を含みうる。
【0201】
抗体が、検出可能な抗原:抗体複合体を形成すれば、試料中においてミスフォールディングした標的タンパク質の存在が確認される。このような複合体の形成は、ELISA、RIA、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、免疫組織化学などを含めた、多種多様なプロトコールを用いて判定することができる。該複合体、またこれにより、試料中におけるエピトープの存在を明らかにするために、目視または測定器の補助により検出可能な薬剤にコンジュゲートさせるかまたは連結することにより、抗体を、標識化抗体として提供することが望ましい。該薬剤または標識は、直接的または間接的に検出可能なシグナルをもたらすことが可能である。例えば、標識は、放射線不透過性物質、もしくはH、14C、32P、35S、123I、125I、131Iなどの放射性同位体;イソチオシアン酸フルオレセイン、ロダミン、もしくはルシフェリンなどの蛍光(フルオロフォア)化合物もしくは化学発光(発色団)化合物;アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、もしくは西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素;イメージング剤;または金属イオンでありうる。代替的に、エピトープ抗体に結合して、エピトープの存在を間接的に明らかにする標識化抗体など、エピトープ抗体に結合する二次的な標識化試薬を用いて、エピトープを明らかにすることもできる。抗体:抗原複合体の存在は、該2つの試薬が溶液中に存在することを必要としない間接的な手段により検出することができる。例えば、抗体が、完全細胞の表面上に存在するエピトープに結合し、これと共に抗体:抗原複合体を形成するフローサイトメトリーを用いると、該複合体が間接的に検出できる。エピトープの細胞表面形態を検出するために抗体を適用することは、特に、このようなエピトープを提示する癌細胞を検出するのに極めて有用な、本発明の実施形態である。癌細胞を含めたこのような細胞の検出は、十分に確立されたフローサイトメトリー法を用いて達成することができる。抗原:抗体複合体はまた、電気泳動、クロマトグラフィー、質量分析など、サイズ、電荷、および移動性に基づきタンパク質を分類する方法を含めた、抗体ベースではない方法によっても同定しうることもまた理解されるであろう。
【0202】
関連の実施形態では、本発明の標識化抗体、またはその結合断片の標識化形態をin vivoで用いて、該抗体が結合するミスフォールドタンパク質の存在を画像化することができる。この目的で、本発明は、テクネシウム、ガドリニウムなどの同位体など、in vivoにおける画像化に有用な薬剤に連結した形態にある抗体または断片を提供する。
【0203】
本発明はまた、本発明の診断法および治療法を実施するのに有用な構成要素を含む製品ならびにキットも包含する。製品は、包装材料と、タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープに選択的に結合する抗体または抗血清を含む組成物とを含む。組成物は、生理学的または薬学的に許容される賦形剤を包含し、包装材料は、該組成物の有効成分(例えば、抗血清または抗体)を表示するラベルを包含しうる。ラベルは、例えば、本明細書に記載のキットと共に用いられる診断用試薬としての、組成物の用途をさらに包含しうる。
【0204】
包装材料と、本明細書に記載のペプチドまたは1もしくは複数のペプチドを含む組成物とを含む製品もまた提供される。組成物は、生理学的または薬学的に許容される賦形剤を包含し、包装材料は、該組成物の有効成分(例えば、ペプチド)を表示するラベルを包含しうる。ラベルは、例えば、治療的試薬もしくは予防的試薬としての、または本明細書に記載のキットと共に用いられる、哺乳動物のPrPScに対して特異的な抗血清もしくは抗体を生成する目的で、被験体において免疫反応を誘導する組成物としての組成物の用途をさらに包含しうる。
【0205】
さらなる実施形態では、ミスフォールドタンパク質を同定するための抗体を作製またはスクリーニングするための化合物または組成物の使用についての指示書と共に、本明細書に記載の1または複数のペプチドを含む組成物を含むキットが提供される。キットは、PrPSc特異的抗体またはPrPSc特異的抗血清の作製および/または同定に有用でありえ、指示書は、例えば、投与濃度、投与間隔、好ましい投与方法、免疫学的スクリーニングまたは免疫学的検査のための方法などを包含しうる。
【0206】
別の実施形態では、その使用についての指示書と共に、本明細書に記載の1または複数のペプチドを含む組成物を含む医薬を調製するためのキットが提供される。指示書は、それが投与される被験体において、治療的免疫反応または予防的免疫反応を誘導するのに有用な医薬を調製するための一連のステップを含みうる。キットは、タンパク質のミスフォールディングと関連するか、またはタンパク質のミスフォールディングが関与する、疾患または障害の1または複数の症状を治療、予防、または改善するための処置における医薬の使用についての指示書をさらに含む場合があり、また、例えば、投与濃度、投与間隔、好ましい投与方法などをさらに包含しうる。
【0207】
別の実施形態では、タンパク質のミスフォールディングと関連する疾患または障害を診断するためのキットが提供される。キットは、その使用についての指示書と共に、本明細書に記載の1または複数のミスフォールドタンパク質に対して選択的な抗体または抗血清を含む。抗体は、検出用試薬にさらに連結されうる。検出用試薬の例には、抗マウス抗体、抗ウサギ抗体などの二次抗体が含まれる。このような二次抗体は、適切な基質と共に供給されると検出可能な熱量測定反応または化学発光反応をもたらす酵素と連結されうる。キットは、プロテイナーゼKなどの酵素、ブロッキング緩衝液、ホモジナイゼーション緩衝液、抽出緩衝液、希釈緩衝液などを含め、検出反応を実施するための試薬をさらに含みうる。
【0208】
別の実施形態では、生物学的試料中におけるミスフォールドタンパク質の存在を検出するためのキットが提供される。キットは、その使用についての指示書と共に、ミスフォールドタンパク質に特異的に結合する、1または複数の抗体または抗血清を含む。抗体は、検出用試薬にさらに連結されうる。検出用試薬の例には、抗マウス抗体、抗ウサギ抗体などの二次抗体が含まれる。このような二次抗体は、適切な基質と共に供給されると検出可能な熱量測定反応または化学発光反応をもたらす酵素と連結されうる。キットは、プロテイナーゼKなどの酵素、ブロッキング緩衝液、ホモジナイゼーション緩衝液、抽出緩衝液、希釈緩衝液などを含め、検出反応を実施するための試薬をさらに含みうる。
【実施例】
【0209】
(実施例1)
hSOD1
WO2007/098607で説明される通り、Cashmanらは、本エピトープ予測法により、アンフォールディングする傾向を有するhSOD1エピトープを構成するものとして本質的に予測される領域である、hSOD1の35〜45領域に対してもたらされるhSOD1抗体の作製について教示している。予測される35〜41の配列は、本質的に、公表されている抗体により標的とされる35〜45領域の短縮形である。この特許出願で公表されている抗体の作製および試験作業を以下で再現する。
【0210】
抗体の作製には、まず、フロイントの完全アジュバント中において、N末端に付加したシステインとジスルフィド結合を形成することによりKLHへと連結された、ペプチドC−IKGLTEGLHGF(配列番号89;hSOD1の残基35〜45に対応する)を含む、25μgの免疫原を伴う腹腔内注射により、4匹の雌BALB/cマウスを免疫化した。その後、フロイントの不完全アジュバントと共に、3週間の間隔をあけて、上記の通りに4回の追加投与を行った。ELISAにより決定される血清力価が、前免疫化血清試料の10倍を超えて上昇した場合は、最も高度に反応したマウス2匹各々の静脈内に、100μlの滅菌PBS pH7.4中において10μgずつのタンパク質抗原を追加投与した。3日後、ドナーマウスを屠殺し、脾臓細胞を収集しプールした。ハイブリドーマのワンステップ選択およびクローニングを、Clone EZ培地中において実施したことを除き、SP2/0 BALB/c親骨髄腫細胞との脾臓細胞の融合は、上記の実施例1において既に説明されている通りに実施した。この半固体培地により、単一のステップにおけるHAT選択およびクローニングが可能となり、また、増殖の速い、おそらくは望ましくないハイブリドーマの増殖が、増殖の遅い、望ましいクーロンの増殖を凌駕することがなくなる。融合の11日後にクローンを採取し、96ウェル組織培養プレートウェル内において、20%のウシ胎仔血清を含有する、200μlのD−MEM培地(Invitrogen社製)中に再懸濁させた。4日後、間接的ELISAにより、1μg/ウェルのタンパク質抗原によりコーティングされたプレート上における抗体活性について上清をスクリーニングした。
【0211】
ELISAの条件:
スクリーニングおよび試験についての条件:dHO中1μg/ウェルのHSOD1−BSA抗原をプレート上へとコーティングし、37℃で一晩にわたり乾燥させた。
【0212】
陰性対照抗原に対する試験についての条件:50μL/ウェルのdHO中0.5μg/ウェルのHT(ヒトトランスフェリン)抗原をプレート上へとコーティングし、37℃で一晩にわたり乾燥させた。
【0213】
ブロッキング:100μL/ウェルのPBS(pH7.4)中3%のスキムミルク粉末によりプレートをブロッキングし、室温で1時間にわたりインキュベートした。
【0214】
一次抗体:マウス抗HSOD1ハイブリドーマの組織培養物上清、およびマウスモノクローナル抗体対照を、ウェル当たりそのまま100μLずつ添加し、スクリーニングおよび試験を行った。マウス抗DSE−1a免疫血清と、SP2/0組織培養物上清中において1/800に希釈したマウス前免疫化血清とを100μL/ウェルずつ添加し、振とうしながら、室温で1時間にわたりインキュベートした。
【0215】
スクリーニングおよび試験に用いた二次抗体:HRPをコンジュゲートさせた1/10000のヤギ抗マウスIgG Fcを用いた。PBS−Tween(pH7.4)中において二次抗体を希釈し、100μL/ウェルで添加し、振とうしながら、37℃で1時間にわたりインキュベートした。
【0216】
基質:TMB緩衝液(BioFx社製;型番TMBW−1000−01)を、ウェル当たり50μLずつ添加し、暗所中室温でインキュベートした。15分後に、ウェル当たり50μLずつの1M HClにより反応を停止させ、OD450nmでリーディングを行った。
【0217】
表2は、配列番号30のエピトープIKGLTEGの伸長体である、hSOD1エピトープ(IKGLTEGLHGF;配列番号89)を指向する抗体のためのハイブリドーマクローンに対するELISAスクリーニングを示す。該ハイブリドーマクローンのうちのいくつかにより生成される抗体は、該エピトープに対応するペプチドに対して高度に特異的であり、対照抗原であるHT(ヒトトランスフェリン)を検出可能な形で認識することはなかった。これらの結果は、SOD1のミスフォールド形態上において選択的に提示されるか、または結合可能であるものとして同定されるエピトープに対応するペプチドに対して、モノクローナル抗体を作製しうることを示す。
【0218】
【表2】

(実施例2)
EGFR
本明細書の表1で言及した通り、ヒト上皮成長因子受容体(hEGFR)の構造に本エピトープ予測法を適用することにより、アンフォールディングする傾向を有するエピトープが残基288〜301に常在し、ペプチド配列GADSYEMEEDGVRK(配列番号76)を有することが示される。EGFR自体は、市販されている(Erbitux(登録商標)として市販されているセツキシマブ、Vectibix(登録商標)として市販されているパニツムマブ)か、または臨床開発中である(ニモツズマブ)、各種の抗体により治療的介入の標的とされるタンパク質である。これらの抗体は、頭頚部の充実性腫瘍のほか、小児性神経膠腫を含めた、各種の充実性腫瘍を治療するのに有効である。ニモツズマブを例外として、EGFRを標的とする抗体は、ケラチノサイトとのそれらの相互作用と特に関連する、著明な毒性をもたらす(腫瘍増殖の静止または退縮において改善が示されうる一方、レシピエントは、重篤な発疹を含めた各種の皮膚障害を示す)。これは、該抗体が、癌細胞により提示されるEGFRだけでなく、皮膚細胞および他の細胞により提示されるEGFRにも非選択的に結合することから生じる。本エピトープ予測法を適用することにより、他の細胞と比べて癌細胞に固有のエピトープを同定することは、疾患細胞に対して選択的なEGFR標的化薬を開発するのに極めて有用でありうる。
【0219】
本エピトープ予測法が、そのミスフォールド状態にあるEGFRに結合する有用な標的を予測する能力は、上記で言及したペプチド288〜301と実質的に同じ配列を有するペプチドに対する抗体を作製することにより裏付けられている。特に、Garrettら(PNAS、2009年、106巻(13号)、5082〜5087頁(参照により本明細書に組み込まれる))は、残基287〜302を含む、EGFRの細胞外ドメイン内における短いシステインループに結合する抗体の作製および試験について説明している。言い換えれば、この抗体(IgG2bであるmAb806)は、本エピトープ予測法により予測される、EGFRの領域288〜301に結合する。Garrettらにより示される通り、mAb806が正常細胞に対して示す結合は無視しうるものであり、EGFRを過剰発現および/または活性化した腫瘍細胞に対して示す結合は、実質的により高度のレベルにある。さらに、Garrettらによる研究は、前立腺細胞株であるDU145に対して調べた場合における、該抗体の殺腫瘍効果を裏付けている。したがって、本発明のエピトープ予測法は、治療的目的で通常標的とされうるエピトープを同定するのに有用であることが理解されるであろう。
【0220】
(実施例3)
さらなるEGFRエピトープ
本エピトープ予測法により、アンフォールディングする傾向を有すると予測されたEGFRペプチドによりウサギを免疫化し、固有のエピトープ(表1を参照されたい)を提示させた。簡便のため、8つのペプチド、すなわち、配列番号67、69、70、72、73、75、および78を有するペプチドにより、ウサギE1を免疫化した。ウサギE2は、7つのペプチド、すなわち、配列番号66、71、74、76、77、79、および80を有するペプチドにより免疫化した。
【0221】
これらのウサギに由来する抗血清を、それらが1つの正常細胞(HUVEC)および14の腫瘍細胞に結合する能力について調べた。前免疫化ウサギ血清を、結合についての対照として用いた。アイソタイプの対照抗体と比較される、市販の抗EGFR抗体を用いて、各細胞を、そのEGFR発現レベルについても評価した。
【0222】
結果を解析したところ、正常細胞(HUVEC)が発現するEGFRレベルは低く、ウサギE1またはE2に由来する抗血清には結合しないことが観察された。被験対象の腫瘍のうちの2つ(ヒトGI間質性結腸癌細胞であるLTL−257、およびヒト子宮頚癌細胞株であるSiHa)は、EGFRを発現するが、ウサギE1またはE2に由来する抗血清のいずれにも結合しない。被験対象の腫瘍のうちの3つ(マウス神経芽腫細胞株であるNSc34、マウス黒色腫細胞株であるB16、およびヒト骨髄細胞株であるHL60)は、EGFRを発現せず、ウサギE1またはE2に由来する抗血清のいずれにも結合しない。被験対象の腫瘍のうちの6つ(ヒト前立腺癌細胞であるLTL−220a、ヒト肺癌細胞であるLTL−657、ヒト結腸腺癌細胞であるLTL−289、ヒト黒色腫細胞であるLTL−323、ヒト膵臓癌細胞であるLTL−249、およびヒト肺癌細胞であるLTL−618)は、EGFRを発現し、ウサギE1およびE2のいずれに由来する抗血清にも結合する。被験対象の腫瘍のうちの3つ(ヒト希突起膠細胞株であるMo3.13、ヒト卵巣癌細胞であるLTL−321、およびヒトリンパ腫細胞であるLTL−013)は、EGFRを発現し、ウサギE2に由来する抗血清には結合するが、ウサギE1に由来する抗血清には結合しない。
【0223】
これらのデータは、EGFRが、選択されたヒト腫瘍細胞およびマウス腫瘍細胞の細胞表面においてミスフォールディングするが、正常細胞(HUVEC)上ではミスフォールディングしないことを示す。被験対象である、免疫化したウサギによる2つの血清との、腫瘍による免疫反応性の差違は、異なる腫瘍の細胞表面において、特定のパターンのEGFRミスフォールディングが提示されうることを示唆する;これらの差違は、免疫化したウサギから派生するモノクローナル抗体により確認し、特徴づけすることができる。このようにして派生するモノクローナル抗体は、特定の腫瘍の種類に対する診断用試薬として用いることができ、また、該当する腫瘍に対する受動的免疫療法用にヒト化することができる。
【0224】
(実施例4)
ヒトPrP−YYR
本エピトープ予測法により、ミスフォールドPrP上においては固有の形で露出するが、天然に構造化されたPrP上では露出しないエピトープは、ペプチドRYYRENMHおよびQVYYRPV(それぞれ、配列番号5および7)内に常在することが予測されている。上記で述べた、YYRと称する3アミノ酸のエピトープが、これらのペプチドの各々の内に常在する。PrPのYYRエピトープに対する抗体は、Cashmanによる文献(参照により本明細書に組み込まれるUS7,041,807を参照されたい)中で説明されている。この研究は、以下で再現される。「結果」において言及される通り、YYRに対する抗体は、疾患によるPrPのミスフォールド形態には選択的に結合するが、天然フォールド形態には結合しない。
【0225】
ミスフォールドPrPにより提示されるが、天然フォールドPrPによっては提示されないYYRエピトープに対する抗体を開発するため、アミノ酸配列アセチル−Cys−Tyr−Tyr−Arg−NH2(YYR)を有するペプチドを合成し、KLHにコンジュゲートさせ、周知の技法を用いてウサギへと筋肉内注射した。該ペプチドのアミノ末端にはシステイン残基を付加して、該ペプチドを、タンパク質担体とコンジュゲートさせた。該ペプチドのアミノ基はアセチル化により保護し、そのカルボキシル基はアミド化により保護した。
【0226】
手動または自動(Advanced ChemTech社製、MPS396型ペプチド合成器)による固相ペプチド合成法を用いて、ペプチドを合成した。アミノ酸残基の連結は、Fmoc基によるペプチド合成化学反応(Fieldsら、1990年、IJPPR 35巻、161頁)を用いて達成した。合成は、Wang樹脂またはアミドRink樹脂上において、アミノ酸側鎖を完全に保護して実施した。アミノ酸のアルファ−NH2基は、Fmoc基により保護したので、三官能性アミノ酸の側鎖には、以下の保護基:
システイン:5−トリフェニルメチル(Trt)
アルギニン:2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5スルホニル(Pbf)
チロシン:tert−ブチルエーテル(tBu)
を選択した。
【0227】
連結反応の化学的内容および難度に応じて、BOP、PyBOP、またはTBTUを活性化剤として用いた。すべての化学物質は、Advanced Chem Tech社、Bachem社、およびCalbiochem/NovaBiochem社から購入した。3〜6倍超過の連結試薬を用いることにより、また、いわゆる二重連結により、配列の残基間における各ペプチド結合の形成を確実なものとした;これは、伸長するペプチド鎖に付加される各アミノ酸について、連結反応が繰り返されたことを意味する。
【0228】
合成後、試薬K:水(2.5%)、TIS(2.5%)、EDT(2.5%)、TFA(92.5%)を切断用混合物として用いて、ペプチドを樹脂から切断した。次いで、ペプチドを、低温のジエチルエーテルにより沈殿させた。沈殿物を遠心分離し、ジエチルエーテルにより3回にわたり洗浄し、20%〜50%のAcCN/水混合物中において溶解させ、凍結乾燥させた。分析用RP−HPLCおよびエレクトロスプレーMSを用いて、粗生成物に対する解析を実施した。
【0229】
215nmおよび254nmのUVによりモニタリングしながら、0.06%TFAを伴う水中に10〜50%アセトニトリルの直線勾配(1%/分の勾配、10ml/分の流速)を用いる、2.5×25cmのVydac C18カラム上におけるRp−HPLC(逆相高速液体クロマトグラフィー)により、粗ペプチドを精製した。分析用HPLCを用いて、画分の純度を評価した。分析用HPLC(Vydac C18、0.46×25cm、水、0.1%TFA中の直線勾配が10〜60%のアセトニトリル、1%/分、1MLl/分の流速、215nmおよび254nmにおけるUV吸収による検出)により推定される、少なくとも95%の純度を有する凍結乾燥ペプチドとして、最終生成物を得た。標準的な手順に従い、SCIEX API III質量分析器を用いる、分子量解析により、純粋なペプチドを同定した。
【0230】
RP−HPLC上におけるペプチドの保持時間は、21.215分間であった。ペプチドの理論的分子量は、644.74と計算され、実際の分子量は、分子量解析により、646.5(MW+H)であることが判明した。
【0231】
ペプチドは、担体、この場合、スカシガイヘモシアニン(KLH)へと連結した。このような連結に有用な他の担体には、アルブミン、もしくはオボアルブミン、8map、またはライソザイムが含まれるがこれらに限定されない。連結は、システインのメルカプト基へのチオエーテル結合により実施した。この種の結合は、ペプチドが、明確な形で担体タンパク質へと連結される利点を有する。
【0232】
KLHへの連結は、以下の通りに実施した。10mgのペプチドを、2mlのリン酸緩衝液(1倍濃度のPBS)中に溶解させた。1mlのKLH(pierce社製;型番77100)を、該ペプチド溶液に添加し、撹拌した(1モルのペプチド/50アミノ酸)。KLH濃度は、10mg/mlであった。20ulのグルタルアルデヒド(25%水溶液)を、一定速度で撹拌しながらペプチド/担体溶液に添加し、1時間にわたりインキュベートした後で、グリシンによる停止溶液を添加した。PBSに対する透析により、ペプチドから、ペプチド/担体コンジュゲートを分離した。
【0233】
標準的な方法、例えば、本明細書で説明する方法に従い、さらなるYYRペプチド(例えば、CYYRRYYRYYおよびCKYEDRYYRE;配列番号90および91)を合成することができる。上記で説明した合成法を適切な形で改変することにより、他の合成ペプチドを調製することができる。当技術分野で知られる標準的な方法(例えば、本明細書で説明する方法)のうちのいずれかを用いて、このようなペプチドもまた特徴づけることができる。
【0234】
標準的な方法に従いポリクローナル抗体を調製し、3〜8週間の間隔で、追加投与の注射を繰り返すことにより、免疫反応を増強した。ウェスタンブロットもしくはELISA、またはこれらの両方において抗体の濃度を決定することにより、免疫化の成功を検証した。より具体的に述べると、ミスフォールドPrP(またはPrPSc)に対するポリクローナル抗体を作製するため、164日間にわたる免疫化レジメンに従い、KLHにコンジュゲートさせたトリペプチドYYRを、ウサギへと注射した後で、特異的抗体を生成した動物から採血した。
【0235】
免疫化前の血清をサンプリングするため、ウサギ1匹当たり10mlずつの血液を、前免疫化対照として採取した。初回の免疫化は、フロイントの完全アジュバントにより実施し、その後の追加投与は、フロイントの不完全アジュバント(IFA0(ウサギ1匹当たり1ml、大腿筋1カ所当たり0.5ml))により実施した。各注射は、約200ugの精製ペプチドからなった。21、42、および70日目には、IFAにより追加投与の注射を施した。31、42、および80日目には、耳介中心動脈から10mlずつの血液を採取し、力価の決定(6ml/kg/ウサギ1匹)を行った。80日目に、血清の力価を確認し、4週間間隔でさらに3回の注射を施し(IFA)、その10日後に血液サンプリングを行った。最終回の追加投与の10日後において、安楽死させたウサギを、心臓穿刺により放血させ、抗血清を採取した。
【0236】
標準的な方法に従い、ヤギポリクローナル抗体を作製した。以下の通りに、3頭のヤギを免疫化した。1日目に、すべてのヤギに、フロイントの完全アジュバント中に1mgのYYR−KLHコンジュゲートによる初回免疫化を施した。3頭のヤギのうち2頭に対して、フロイントの不完全アジュバント中に1mgのYYR−KLHを注射することにより追加投与を行う一方、3頭目のヤギには、フロイントの不完全アジュバント中1mgのYYR−8mapコンジュゲートを施した。ELISAにより、3つの採取血の各々に由来する血清試料を、YYR−BSAコンジュゲートに対する反応性について調べた。硫酸アンモニウム沈殿により、採取血の第3のセットから全IgGを精製し、YYRアフィニティーカラムを用いて、YYR反応性IgGを精製した。本明細書で説明する通りに、IgG画分を、PrPScに対する反応性について調べた。正確な免疫化のスケジュールは、以下の通りであった:1日目:初回の免疫化;21日目:初回の追加投与による免疫化;30日目:初回の採血;46日目:2回目の追加投与による免疫化;53日目:2回目の追加投与による免疫化;60日目:2回目の採血;76日目:3回目の追加投与による免疫化;83日目:3回目の追加投与による免疫化;および90日目:3回目の採血。
【0237】
代替的に、本明細書および標準的なハイブリドーマ法(例えば、Kohlerら、Nature、256巻、1975年; Kohlerら、Eur. J. Immunol.、6巻:511頁、1976年; Kohlerら、Eur. J. Immunol.、6巻:292頁、1976年; Hammerlingら、「Monoclonal Antibodies and T Cell Hydridomas」、ニューヨーク、Elsevier社、1981年; Ausubelら、1999年、「Current Protocols in Molecular Biology」、ニューヨーク、Wiley Interscience社を参照されたい)で説明される合成ペプチドを用いて、モノクローナル抗体を調製することもできる。作製したら、免疫沈降およびウェスタンブロット解析により、モノクローナル抗体もまた、特異的なPrP認識について調べることができる。
【0238】
モノクローナル抗体の作製は、以下の通りに実施した。フロイントの完全アジュバント中にマウスPrP−AP融合タンパク質を含有するバキュロウイルス上清によりマウスを免疫化し、次いで、フロイントの不完全アジュバント中の同じ抗原により、2週間後に追加投与を行った。この免疫化の2週間後、PrP−AP上清に、100ugのKLH−CYYRRYYRYY(配列番号90)コンジュゲート、および10ugのKLH−CKYEDRYYRE(配列番号91)コンジュゲートを加えた混合物により、マウスに追加投与を施した。これらのマウスに由来する脾臓細胞を、FOマウスのB細胞株(ATCC CRL−1646)と融合させて、特異的なハイブリドーマクローンを作製した。ELISAにより、ハイブリドーマ上清をスクリーニングした。YYR−8mapコンジュゲートに対して反応性のクローンは存在したが、PrP−APまたはCKYEDRYYRE(配列番号91)配列に対して反応性の上清は存在しなかった。
【0239】
製造元の推奨に従い、Pharmacia社製のプロテインA HiTrapカラムを用いて、血清から全ウサギIgGを精製した。略述すると、3カラム容量の開始緩衝液(0.2Mのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0)により、HiTrapカラムを平衡化した。ルアーアダプターを介するシリンジを用いて、血清をカラム上へと適用した。その後、5mlの開始緩衝液によりカラムを洗浄した。0.1Mグリシン、pH3.0により、結合したタンパク質を溶出させ、1Mトリスph8.0(50ul/試料500ul)を含有するエッペンドルフ管内に回収した。SDS−PAGE(SDA−PAGE)により、画分を解析した。
【0240】
上記で説明した通りに、血清試料からヤギポリクローナル抗体を精製した。
【0241】
マウスモノクローナル抗体は、腹水として作製し、製造元の指示書に従い、プロテインAカラムキット(Pierce社製)を用いて精製した。
【0242】
略述すると、腹水試料を、結合緩衝液により、1:1の最終比率で希釈した。次いで、試料を、結合緩衝液によりあらかじめ平衡化しておいたカラムの上部に添加し、マトリックス中にこれを流過させた。流過物を回収し、カラム5本分の容量の結合緩衝液によりカラムを洗浄した。軽度の溶出緩衝液をカラムに添加し、結合したIgGをマトリックスから放出した。IgG溶出緩衝液へと切り替えることにより、他の抗体アイソタイプを回収した。1mlの画分にすべての抗体を回収し、BCAによりこれを解析し、総タンパク質含量を決定し、SDS−PAGE電気泳動により、抗体純度を確立した。D−塩カラム(Pierce社製)中にそれを通過させることにより、大半のIgG収量を含有する画分を脱塩化した。抗体画分の位置を特定し、PBS中−80℃で保管した。
【0243】
その後、上述の手順を用いて作製した抗体を、以下の通りに、高アフィニティー結合について調べた。
【0244】
10ulの脳抽出物を、950ulの免疫沈降緩衝液(PBS、3%NP−40、3%Tween−20)に添加し、37℃で30または60分間にわたりインキュベートした。ビーズとのPrP27〜30コンジュゲートの反応性を評価する実験を行うため、インキュベーションの前に、50ulの1mg/mlプロテイナーゼKを添加した。プロテイナーゼKにより処理しなかった試料もやはり、37℃で、適切な時間にわたりインキュベートした。インキュベーション後、60ulの100mM PMSF溶液を、両方の試験管セットに添加した。次いで、再懸濁させたビーズコンジュゲート100ulを混合物に添加し、回転させながら室温で2時間にわたりインキュベートした。洗浄緩衝液(PBS、2%NP−40、2%Tween−20)により3回にわたりビーズを洗浄し、各洗浄後にボルテックスにより再懸濁させた。最後の洗浄後に、2倍濃度のローディング緩衝液(100mMトリスpH6.8、4%SDS、0.015%ブロムフェノールブルー、20%グリセロール)20ul中にビーズを再懸濁させ、95℃で3分間にわたり加熱した。
【0245】
標準的な方法に従うウェスタンブロット法により、脳ホモジネートのPrPSc含量を決定した。タンパク質試料を、1:1の比率で、2倍濃度の試料緩衝液と共に混合し、100℃で5分間にわたり煮沸した。標準的な方法に従い、SDS−PAGE解析を実施した。あらかじめ染色された分子量マーカー(Biorad社製)と共に、試料を、15%プレキャストアクリルアミドゲル(Biorad社製)へと適用した。ブロモフェノールブルー色素がゲルの底部に達するまで、100Vでゲルを泳動させた。次いで、分離されたタンパク質を、100Vで1時間にわたり、PVDF膜上へと転写した。上記で説明した通りに膜を洗浄した後、アルカリホスファターゼをコンジュゲートさせたヤギ抗マウスIgG二次抗体(TBST中において1:5000)と共に、室温で1時間にわたりインキュベートした。洗浄後、化学発光基質であるCDP−starによりシグナルを発生させ、x線フィルムへと露光した。
【0246】
ワイヤーメッシュ中に組織を通すことにより、Balb/cマウスから、脾臓細胞懸濁液を調製した。Ca2+またはMg2+を伴わない低温のダルベッコPBSにより細胞を1回洗浄し、Lympholyte(Cedarlane社製)および1300gで20分間にわたる遠心分離により、細胞懸濁液の下層を層別化することにより、生細胞を単離した。Ca2+またはMg2+を伴わない低温のダルベッコPBS、2.5%ウシ胎仔血清により細胞を1回洗浄し、丸底の96ウェルプレート内に、ウェル当たり0.5×10個の細胞をアリコートした。細胞を遠心分離し、氷上のCa2+またはMg2+を伴わない低温のダルベッコPBS、2.5%ウシ胎仔血清中に1/10の最終濃度の抗体−FITCコンジュゲート50ul中において、15分間にわたり再懸濁させた。次いで、Ca2+またはMg2+を伴わない低温のダルベッコPBS、2.5%ウシ胎仔血清により細胞を2回にわたり洗浄し、1ug/mlのヨウ化プロピジウムを含有する同じ培地中に再懸濁させた。Coulter社製Epicsフローサイトメーター上において細胞を解析し、サイズ、粒度(前方散乱および側方散乱)、および生存能力(ヨウ化プロピジウムによる蛍光発光の除外)によりふるい分けした。
【0247】
製造元の指示書に従い、Fluorotagキット(Sigma社製)を用いることにより、フルオレセイン化mAbを作製した。略述すると、濃縮した重炭酸緩衝液により、0.5mgの各抗体をpH9とし、FITC原液を添加して、FITC:抗体比を20:1とした。次いで、バイアルを、室温で2時間にわたりインキュベートした。Sephadex G−25Mカラム上に混合物を通過させることにより、遊離FITCから標識化抗体を分離した。LJL Biosystems社製のAnalystを用いて、35nmにおけるそれらのFITC発光を測定することにより、コンジュゲートした抗体をフルオレセイン化の成功について調べ、ELISAにより、YYR−8mapコンジュゲートに対するそれらの結合活性の保持について抗体を調べた。
【0248】
ウシ脳抽出物に由来するPrPScを特異的に認識するのに、組換えPrP(rbPrP)を用いるPrPCと比較して、pAbC2が有用であるかどうかを判定するため、ELISA法を用いた。脳抽出物を含有するPrPScまたはrbPrPのプールを用いて、PrPScに対するpAbC2の特異性を調べた。50mMトリス、pH7.5、150mM NaCl(NaC1)、1mM CaCl2(CaC12)を含有するTBS緩衝液中に培養物上清を含有するPC2により、Immunolon ELISAプレート(Dynex社製)のウェルを、4℃で一晩にわたりコーティングした。BSE脳抽出物実験では、Mek−4を含有する上清により対照ウェルをコーティングし、rbPrP実験では、ミルクを対照として用いて、ウェルに対する抗体の非特異的結合を決定した。可溶性PC2によるELISAプレートのコーティングは、抗PC2モノクローナル抗体により確認した。0.05%Tween 20を含有するTBSを伴う、SLT社製の「Columbus」マイクロプレート洗浄機(Tecan社製)を用いて、4回にわたりウェルを洗浄し、TBST中に0.2%のI−Block(Tropix社製)でウェルを満たすことによりブロッキングし、37℃で1時間にわたりプレートをインキュベートした。プレートを洗浄し、ウシ脳ホモジネート(TBS中において1%W/vまで希釈した)、またはrbPrPを、指定されたウェルに添加し、室温で1時間にわたりインキュベートした。TBSTにより4回にわたりウェルを洗浄した。適切なウェルにpAbC2を添加し、室温で1時間にわたりインキュベートした後、1%脱脂乳を含有するTBST中に100ulの抗ウサギIgGまたは抗マウスIgG/西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(1:5000)と共に、さらに45分間にわたりインキュベートした。TBSTにより4回にわたりウェルを洗浄した。ペルオキシダーゼに対する基質としてのTMB/H2O2により、シグナルを発生させた。15分後において、100ulの2Mリン酸を添加することにより、反応を停止させた。SLT社製のマイクロプレートリーダーを用いて、620nmを基準とする450nmでシグナルをモニタリングした。PC2に対するPrPの結合を、陰性対照であるMek−4またはミルクに対するPrPの結合と比較することにより、特異的な陽性シグナルを決定した。前免疫化対照は、結合を示さなかった。
【0249】
したがって、まず、本エピトープ予測法を適用して有用なエピトープを同定し、次いで、これらの目的で十分に確立されている標準的な実施法に従い、これらのエピトープに対する抗体を作製することにより、ミスフォールドPrP(本明細書の上記では、PrPScとして公知の凝集形態を用いて示す)に固有のYYRエピトープを認識し、これに選択的に結合する各種の抗体を得られることが理解されるであろう。
【0250】
(実施例5)
ヒトPrP−YML
表1に示す通り、本エピトープ予測法により、それぞれ、配列番号1および2のペプチドLGGYMLおよびGGYMLGSにより示される、YMLと称するエピトープを含有する領域である、ヒトプリオンタンパク質PrP内のベータ鎖1領域のアンフォールディングが予測される。以下の実験では、抗原/免疫原として、配列GGYMLGS(N末端およびC末端を挟み込む2つの残基を伴うベータ鎖1;配列番号2)を有するペプチドを用いて、YMLエピトープに対して特異的なモノクローナルIgM抗体1A1を作製する。
【0251】
一般的な参考文献:263Kハムスター適合型プリオンは、Kimberlinら、1978年により説明されている。RMLマウス適合型プリオンは、Chandler,R.L.(1961年)(Lancet、1巻、1378〜1379頁)により説明されている。これらは、当技術分野で公知の方法、例えば、Bueler Hら、1993年(Cell、73巻:1339〜1347頁);Oldstoneら、2002年;またはMeade−Whiteら、2009年による方法を用いて、マウスまたはハムスターに感染させるのに用いることができる。Boltonら、1987年は、スクラピー病原体の単離および精製に用いうる方法について説明している。Carlsonら、1986年(Cell、46巻:503〜511頁)は、マウスおよびハムスターにおけるスクラピーの臨床診断に用いうる方法について説明している。PrPを過剰発現するか、部分発現するか、またはその発現を欠く、各種のトランスジェニックマウスは、Fischerら、1996年(EMBO J、15巻:1255〜1264頁);およびWeissmannら、2003年(British Medical Bulletin、66巻:43〜60頁)により説明されている。
【0252】
脳および脾臓のホモジネート調製物
Fischerら、2000年(Nature、408巻:479〜483頁)から改変した方法の通りに、脳組織(正常マウスまたは正常ハムスター、およびスクラピー感染したマウスまたはハムスター)を加工および分析した。略述すると、PBS、0.5%デオキシコール酸(Sigma社製)、0.5%NP−40中に10%のホモジネートを作製した。BCAアッセイ(Pierce社製)によりホモジネート中の総タンパク質濃度を決定し、ホモジナイゼーション緩衝液により5mg/mlへと調整した。PK耐性物質を検出するために、1.5μlのホモジネートを、0.15μgのPK(Sigma社製)を伴うかまたは伴わずに、37℃で60分間にわたりインキュベートした。20mM PMSF(Sigma社製)を添加することにより、消化を停止させた。
【0253】
磁気ビーズによる抗体のコンジュゲーションおよび免疫沈降
抗体を磁気ビーズにコンジュゲートさせ、Paramithiotis、2003年から改変した方法の通りに、免疫沈降実験に用いた。略述すると、製造元の指示書に従い、7×10個の磁気ビーズ(1mlのPBS中)(ニューヨーク州、レイクサクセス、Dynal社製)を、1A1、8B4、4E4、またはIgMアイソタイプ対照へと連結した。製造元の推奨に従い、コンジュゲートさせたビーズを洗浄およびブロッキングし、次いで、1mlのPBS中に再懸濁させた。
【0254】
抗体を連結したビーズ10μLを、6%洗浄剤(PBS中における3%Tween20および3%NP40)中に1μLの10%脳ホモジネートと共に、室温で3時間にわたりインキュベートした。磁石により捕捉した免疫複合体を、4%洗浄剤(PBS中における2%Tween 20および2%NP40)により3回にわたり洗浄し、4%SDS中において薬剤を還元せずに煮沸し、15%トリスグリシンまたは4〜12%ビス−トリスアクリルアミドゲル(Invitrogen社製)上において分解した。
【0255】
免疫ブロッティング
説明される通り(Paramithiotisら、2003年)に、免疫ブロッティングを実施した。タンパク質を、PVDF膜(Invitrogen社製)上に転写した。5%(w/v)脱脂粉乳により、膜をブロッキングした。TBST(25mMトリス−HCl、0.2M NaCl、0.5%Tween−20)中において、すべてのインキュベーションを行った。化学発光、増強ECL(Amersham社製)、またはsuperWest Dura(イリノイ州、ロックフォード、Pierce社製)により、ペルオキシダーゼ活性を検出した。
【0256】
PrPScの免疫沈降
一次抗体としての6D11−ビオチン(1:5000)、および二次抗体としてのStrep−HRP(1:5000)を伴うウェスタンブロット法(図1)により、免疫沈降させた試料を解析した。8B4−ビーズを陽性対照として作用させたが、これにより、PrPノックアウトマウス(K/O)を除き、すべての脳ホモジネート試料から、PrPを免疫沈降させることができた。ビーズだけ、IgMアイソタイプ−ビーズ、および4E4−ビーズを陰性対照として作用させたところ、また、予測される通り、4E4により免疫沈降した、RMLレーンおよび263Kレーン内における2つの極めて希薄なバンドを除き、PrPは免疫沈降しなかった。PrPのベータ1鎖に対して作製されたIgM抗体である1A1により、RML(マウススクラピー細胞株)および263K(ハムスタースクラピー細胞株)の両方に由来するスクラピープリオンタンパク質を免疫沈降させることができた。このPrnpを過剰発現するトランスジェニックマウスの脳内における、小含量のミスフォールドPrPにおそらく起因して、Tg20レーン内には希薄なバンドが見られた。本発明者らのデータは、1A1により認識できるのはスクラピーPrPだけであり、マウス脳およびハムスター脳のいずれにおいても、野生型PrPは認識できないことを示した。
【0257】
(実施例6)
腫瘍細胞表面上における、また、癌免疫療法の治療標的としてのYML露出
それが正常細胞および腫瘍細胞の両方に結合する能力について、1A1抗体を調べた。対照としては、抗PrPC抗体である6D11を用いて、各細胞型上におけるPrPの発現レベルを同定した。細胞に結合する抗体の能力は、HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)を正常細胞型として用いるフローサイトメトリーにより観察した。8つの腫瘍細胞型に対する結合について、データを示す。被験癌細胞のうちの5つは、マウスに由来する不死化細胞株(B16:黒色腫細胞株、NSC324:運動ニューロン/神経芽腫細胞のハイブリッド)、およびヒトに由来する不死化細胞株(HL60:前骨髄球性(promylocytic)白血病細胞株、MO3.13:希突起膠細胞/筋細胞のハイブリッド、SiHa:子宮頚癌細胞株)である。残りの被験癌細胞は、カナダブリティッシュコロンビア州癌研究所内の生体腫瘍研究所(LTL)が増殖させた原発性腫瘍細胞である。知財化された技法を用いて、免疫欠損マウスの腎被膜下において、原発性ヒト腫瘍を増殖させた。これにより、本来の腫瘍構造および腫瘍表現型が、採取時本来の腫瘍との一致を保つことが可能となる。1A1抗体に対する結合について調べた3つの腫瘍は、LTL−013(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、LTL−257(結腸直腸肉腫)、およびLTL−323(黒色腫)である。
【0258】
フローサイトメトリーによれば、1A1 YMLモノクローナル抗体は、アイソタイプのIgM対照と比較して、正常HUVEC細胞に対して示す結合が微弱である。1A1はまた、アイソタイプのIgM対照と比較して、HL60骨髄性白血病細胞に対する検出可能な結合を示さない。HUVEC細胞およびHL60細胞が、それぞれ、6D11に対して中レベルおよび高レベルの免疫反応性を示すことは、YMLの露出が、プリオンタンパク質発現の単純な関数ではないことを示す。1A1抗体はまた、他の7つのヒト腫瘍細胞株およびマウス腫瘍細胞株、ならびにLTLヒト腫瘍に対する検出可能な結合も示し、これらのすべてはまた、細胞表面における6D11プリオンタンパク質に対する検出可能な免疫反応性も示す。
【0259】
腫瘍モデルにおける抗体の有効性
抗DSE抗体により、in vivoにおける腫瘍増殖を変化させうるかどうかを判定するため、1A1抗体を、それが、雌C57Bl/6マウスにおけるマウス黒色腫(B16)細胞の増殖を変化させる能力について調べた。試験の0日目において、マウス12匹の脇腹に、3×10個の腫瘍細胞を皮下移植した。マウスは、2つの治療群に無作為に割りつけた。第1群は、PBSにより治療した。第2群は、10mg/kgの1A1抗体により治療した。マウスは、−1、2、および5日目に治療した。
【0260】
2日目以降、カリパーで腫瘍の大きさを測定することにより、腫瘍増殖をモニタリングした。腫瘍の長さおよび幅の測定値を得、また、式L×W/2[式中、長さ(mm)とは、腫瘍の長軸である]に従い、腫瘍容量を計算した。標準的な動物保護手順に従い、腫瘍負荷が高度となったら、マウスを屠殺した。図5は、両方の治療群における腫瘍増殖の進行を示すが、この場合、終了前の腫瘍容量を、終了時まで持ち越した。2つの群間では腫瘍増殖に有意差が見られた(対応のあるt検定=0.012;ウィルコクソン検定=0.007)ことは、1A1抗体の治療効果が生じたことを示す。
【0261】
すべての引用は、各個別の刊行物が、参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に指示されたと仮定した場合と同様に、また、それが、本明細書において完全に記載されたと仮定した場合と同様に、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における参考文献の引用は、このような参考文献が、本発明に対する先行技術であることの容認として解釈されるものでも、そのようなものとして考えられるものでもない。
【0262】
例を目的として、本発明の1または複数の実施形態について説明してきた。本発明は、本明細書の前述において、また、実施例および図面を参照しながら実質的に説明した、すべての実施形態、改変、および変更を包含する。特許請求の範囲において規定される本発明の範囲から逸脱しない限りにおいて、多数の変更および改変を行いうることは、当業者に明らかであろう。このような改変の例には、実質的に同じ方法で同じ結果を達成することを目的とする、本発明の任意の態様について公知の同等物による置換が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とするタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定するシステムを動作する方法であって、前記システムは、入力ユニット、候補選択ユニット、自由エネルギー計算ユニット、およびエピトープ同定ユニットを含み、前記方法は:
(a)前記入力ユニットにより、前記対象とするタンパク質の構造の少なくとも一部を表わすモデルを受け取るステップと;
(b)前記候補選択ユニットにより、前記モデルから、1または複数のセットを選択するステップであって、各セットは1または複数のアミノ酸残基を含む、ステップと;
(c)前記自由エネルギー計算ユニットにより、各セットのアンフォールディングの自由エネルギーを決定するステップと;
(d)前記エピトープ同定ユニットにより、前記エピトープを
(i)孤立した前記セットの1または複数のアンフォールディングの自由エネルギーに基づき各セットのアンフォールディングの全確率を決定し、アンフォールディングの全確率が最小の確率を上回るセットから前記エピトープを同定すること;または
(ii)アンフォールディングの自由エネルギーが最小のエネルギーを下回るセットから前記エピトープを同定すること
によって同定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
(a)前記方法が、前記入力ユニットにより、前記モデル内の領域の選択されたものを受け取るステップをさらに含み;
(b)前記候補選択ユニットにより選択された前記1または複数のセットの各々が、前記領域内における少なくとも1つの残基を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モデルが、前記対象とするタンパク質の少なくとも一部の構造である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モデルが、前記対象とするタンパク質の少なくとも一部の予測された構造である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記予測された構造が、前記対象とするタンパク質、またはその一部の一次配列から予測されるか、あるいは前記対象とするタンパク質に対して相同的な、1もしくは複数の他のタンパク質、またはその一部の構造から予測される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記候補選択ユニットにより、前記モデルから1または複数のセットを選択するステップが、前記モデル内の1または複数の連続するアミノ酸残基の配列を含む、すべてのセットを選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記候補選択ユニットにより、前記モデルから1または複数のセットを選択するステップが、前記モデル内の1または複数の連続する残基の配列を含む、すべてのセットを選択するステップを含み、各セットが前記領域内の少なくとも1つのアミノ酸残基を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記候補選択ユニットにより、前記モデルから1または複数のセットを選択するステップが、前記モデル内の1または複数の連続するアミノ酸残基の、2つ以上の連続しない配列を含む、すべてのセットを選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記候補選択ユニットにより、前記モデルから1または複数のセットを選択するステップが、前記モデル内の1または複数のアミノ酸残基の、2つ以上の連続しない配列を含む、すべてのセットを選択するステップを含み、各セットが前記領域内の少なくとも1つのアミノ酸残基を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
各配列が、最小の長さと最大の長さとの間の長さを含む、請求項6、7、8、または9に記載の方法。
【請求項11】
前記自由エネルギー計算ユニットにより、各セットのアンフォールディングの自由エネルギーを決定するステップが、前記セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップが、
(a)(i)前記セット内の少なくとも1つの極性原子から構成され、(ii)前記モデルのアミノ酸配列中において1つより多いアミノ酸残基分、離れており、かつ(iii)互いからカットオフ距離内にある、前記モデル内の極性原子対の総数を決定するステップと;
(b)前記セットのアンフォールディングのエンタルピーを、(a)で決定された前記対の総数に、一定の相互作用エネルギーをかけた積として決定するステップと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップが、
(a)(i)極性原子または非極性原子から構成され、(ii)前記セット内の少なくとも1つの原子から構成され、(ii)前記モデルのアミノ酸配列中において1つより多いアミノ酸残基分、離れており、かつ(iii)互いからカットオフ距離内にある、前記モデル内の原子対の総数を決定するステップと;
(b)前記セットのアンフォールディングのエンタルピーを、(a)で決定された前記対の総数に、一定の相互作用エネルギーをかけた積として決定するステップと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記カットオフ距離が、約2オングストローム〜約7オングストロームである、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記一定の相互作用エネルギーが、約0.5kcal/mol/相互作用〜約2kcal/mol/相互作用である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
前記セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップが、前記セット内の少なくとも1つの原子から構成される、前記モデル内の各極性原子対について、以下の式:
【化16】

を解いた結果を合計するステップを含み、ここで、式中、
ΔHは、前記極性原子対のアンフォールディングのエンタルピーであり;
【化17】

は、フィッティングパラメータであり;
θは、前記極性原子に関与する炭素に対する共有結合の間の角度であり;
rは、前記極性原子対の間の距離であり;
βは、フィッティングパラメータである、
請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップが、(i)前記セット内の少なくとも1つの原子から構成され、(ii)極性原子または非極性原子から構成される、前記モデル内の各原子対について、以下の式:
【化18】

を解いた結果を合計するステップを含み、ここで式中、
ΔHは、前記極性原子対のアンフォールディングのエンタルピーであり;
【化19】

は、フィッティングパラメータであり;
θは、前記原子に関与する炭素に対する共有結合の間の角度であり;
rは、前記原子対の間の距離であり;
βは、フィッティングパラメータである、
請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップが、
(a)前記モデル内のアミノ酸残基を含む、極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積を決定するステップ;
(b)前記セットを除去した、前記モデル内のアミノ酸残基を含む、極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積を決定するステップ;
(c)孤立した前記セットのアミノ酸残基を含む、極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積を決定するステップ;
(d)(a)で決定された極性官能基の溶媒露出表面積を差し引いた、(b)および(c)で決定された極性官能基の溶媒露出表面積の和を決定するステップ;
(e)(a)で決定された非極性官能基の溶媒露出表面積を差し引いた、(b)および(c)で決定された非極性官能基の溶媒露出表面積の和を決定するステップ;
(f)(a)で決定されたヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積を差し引いた、(b)および(c)で決定されたヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積の和を決定するステップ;
(g)以下の式:
【化20】

を解くことにより、前記セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップであって、ここで式中、
ΔHは、前記セットのアンフォールディングのエンタルピーの変化であり;
Tは、温度であり;
ΔASA極性は、(d)で決定される非極性官能基の溶媒露出表面積の変化であり;
ΔASA非極性は、(e)で決定される非極性官能基の溶媒露出表面積の変化であり;
ΔASAヒドロキシルは、(f)で決定されるヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積の変化である、
ステップ、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
孤立した前記セットの、極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積を決定するステップが、
(a)前記対象とするタンパク質のN末端またはC末端に位置しない、前記セット内の各アミノ酸残基について、
(i)前記アミノ酸残基と、前記対象とするタンパク質のアミノ酸配列内のアミノ酸残基に最も近接する第1の数のアミノ酸残基とにより形成されるポリペプチドを選択するステップ;
(ii)分子動力学シミュレーションにおいて孤立した前記ポリペプチドの運動をシミュレートすることにより、前記ポリペプチドの複数の構造を得るステップ;
(iii)各構造の極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積を決定するステップ;ならびに
(iv)すべての前記構造にわたり、極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積の各々を平均するステップ;
(b)前記対象とするタンパク質のN末端またはC末端に位置する、前記セット内の各アミノ酸残基について、
(i)前記アミノ酸残基と、前記対象とするタンパク質のアミノ酸配列内のアミノ酸残基に最も近接する第2の数の近傍アミノ酸残基とにより形成されるポリペプチドを選択するステップ;
(ii)分子動力学シミュレーションにおいて孤立した前記ポリペプチドの運動をシミュレートすることにより、前記ポリペプチドの複数の構造を得るステップ;
(iii)各構造の極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の溶媒露出表面積を決定するステップ;ならびに
(iv)すべての前記構造にわたり、極性官能基、非極性官能基、およびヒドロキシル官能基の決定された溶媒露出表面積の各々を平均するステップ
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の数が2であり、前記第2の数が1である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記自由エネルギー計算ユニットにより、前記セットのアンフォールディングのエンタルピーを決定するステップが、
(a)分子動力学シミュレーションにおいて、前記モデルの運動をシミュレートするステップと;
(b)前記モデル内のすべてのアミノ酸残基対間の相互作用エネルギーを合計するステップであって、各対が前記セット内の少なくとも1つのアミノ酸を含む、ステップと;
(c)分子動力学シミュレーションにおいて、前記セットがアンフォールド状態にある前記モデルの運動をシミュレートするステップと;
(d)前記アンフォールド状態にある前記セット内のすべてのアミノ酸残基対間の相互作用エネルギーを合計するステップと;
(e)(b)において決定された相互作用エネルギーから、(d)において決定された相互作用エネルギーを差し引くステップと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記自由エネルギー計算ユニットにより、各セットのアンフォールディングの自由エネルギーを決定するステップが、前記セットをアンフォールディングさせることにより、前記モデル内の1または複数の塩橋を切断する自由エネルギーを決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記セットをアンフォールディングさせることにより、前記モデル内の1または複数の塩橋を切断する自由エネルギーを決定するステップが、互いからカットオフ距離内にある、前記モデル内の、正反対に荷電したアミノ酸残基の各対間においてクーロンエネルギーの和を決定するステップを含み、ここで、各対は、前記セット内の少なくとも1つのアミノ酸を含み、前記クーロンエネルギーは、前記タンパク質内の一定の誘電率を仮定して決定される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記カットオフ距離が、約7オングストロームである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記一定の誘電率が、約4〜約20である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記セットをアンフォールディングさせることにより、前記モデル内の1または複数の塩橋を切断する自由エネルギーを決定するステップが、前記モデル内のアミノ酸残基の各対間において、クーロンエネルギーの和を決定するステップを含み、ここで、各対は、前記セット内の少なくとも1つのアミノ酸を含み、前記クーロンエネルギーは、前記タンパク質内の一定の誘電率を仮定して決定される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記一定の誘電率が、約4〜約20である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
各セットのアンフォールディングの自由エネルギーを決定するステップが、以下の式:
【化21】

を解くことにより、前記自由エネルギーに対する1または複数のグリカンの影響を決定するステップを含み、ここで式中、
ΔGptmは、アンフォールディングの前記自由エネルギーに対するグリカンの影響であり;
Rは、理想気体定数であり;
Tは、温度であり;
aは、前記グリカンの半径であり;
は、前記グリカンの中心から測定した、前記グリカンの周囲にある前記セットの開始位置であり;
erfは、誤差関数であり;
bは、アンフォールドされた前記セットの持続長であり;
nは、アンフォールドされた前記セット内の残基数である、
請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記セットのうちの1または複数のアンフォールディングの自由エネルギーに基づき各セットのアンフォールディングの全確率を決定するステップが、各セットについて、前記セットのアミノ酸残基の配列を含む、すべての前記セットのアンフォールディングの平衡確率の和を決定するステップを含み、各セットのアンフォールディングの平衡確率が、前記セットのアンフォールディングの自由エネルギーに基づき決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項30】
前記最小の確率が、同じ長さを有するすべてのセットのアンフォールディングの平均確率の倍数である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記倍数が、少なくとも10である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記倍数が、少なくとも100である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記最小のエネルギーが、同じ長さを有するすべてのセットのアンフォールディングの平均自由エネルギーより小さい、一定の量である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項34】
前記一定の量が、少なくとも1.4kcal/molである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記最小のエネルギーが、8kcal/mol以下である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項36】
タンパク質の天然フォールド形態と比べて、前記タンパク質のミスフォールド形態に選択的に結合する抗体を作製するのに有用な免疫原を得るための方法であって、前記方法は:
(a)請求項1から31のいずれかに記載の方法を適用して、前記タンパク質のミスフォールド形態により固有に提示されるエピトープを同定するステップと;
(b)前記タンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを含むペプチドを含む免疫原を作製するステップと
を含む、方法。
【請求項37】
場合を問わず、請求項36に記載の方法により作製される免疫原。
【請求項38】
タンパク質の天然フォールド形態と比べて、前記タンパク質のミスフォールド形態に選択的に結合する抗体を得るための方法であって、前記方法は:
(a)請求項1から31のいずれかに記載の方法を適用して、前記タンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定するステップと;
(b)前記エピトープに選択的に結合する抗体を作製し、これにより、前記タンパク質の前記ミスフォールド形態に選択的に結合する抗体を得るステップと
を含む、方法。
【請求項39】
場合を問わず、請求項40に記載の方法により調製される抗体。
【請求項40】
タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患を示す被験体を処置するのに有用な医薬組成物を得るための方法であって、前記方法は、薬学的に許容される担体と、前記タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのミスフォールド形態に固有のエピトープに結合し、また、請求項1から31のいずれかに記載の方法を用いて同定された、医療的に有用な量の抗体またはその結合断片とを組み合わせるステップを含む、方法。
【請求項41】
タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患を示す被験体を処置するための方法であって、前記方法は、前記被験体に、前記タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのミスフォールド形態に固有のエピトープに選択的に結合する、有効量の抗体またはその結合断片を含む医薬組成物を投与するステップを含み、前記エピトープが、請求項1から31のいずれかに記載の方法を適用することにより同定された、方法。
【請求項42】
タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患を示す被験体を処置するための方法であって、前記方法は、前記被験体に、前記タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのミスフォールド形態に固有のエピトープを含むペプチドを組み込む免疫原を含む、有効量のワクチンを含む医薬組成物を投与するステップを含み、前記エピトープが、請求項1から31のいずれかに記載の方法を適用することにより同定された、方法。
【請求項43】
試料中におけるタンパク質のミスフォールド形態を検出するための方法であって、前記方法は、
(a)前記タンパク質のミスフォールド形態を含有することが疑われる試料を、そのタンパク質の天然フォールド形態と比べて、前記ミスフォールドタンパク質により固有に提示されるエピトープに選択的に結合する抗体または結合断片により処理するステップであって、前記エピトープが、請求項1から31のいずれかに記載の方法を適用することにより同定されている、ステップと;
(b)抗原:抗体複合体が形成されているかどうかを決定し、その形成により、前記試料中における、前記タンパク質のミスフォールド形態の存在が示されるステップと
を含む、方法。
【請求項44】
タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患を診断する方法であって、前記方法は、
(a)被験体から得られ、また、前記タンパク質の前記ミスフォールド形態を含有することが疑われる試料を、そのタンパク質の天然フォールド形態と比べて、前記ミスフォールドタンパク質により固有に提示されるエピトープに選択的に結合する抗体または結合断片により処理するステップであって、前記エピトープが、請求項1から31のいずれかに記載の方法を適用することにより同定されている、ステップと;
(b)抗原:抗体複合体が形成されているかどうかを決定し、その形成により、前記試料中における、前記タンパク質のミスフォールド形態の存在が示されるステップと
を含む、方法。
【請求項45】
タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのタンパク質のミスフォールド形態に選択的に結合する抗体を得るための方法であって、前記方法は、
(a)ペプチドが配列番号5、7、27〜40、または76の配列を有さないという条件で、配列番号1〜80のうちの1つを有するペプチド内に常在する、任意の3つの連続するアミノ酸を含む免疫原を得るステップと;
(b)前記免疫原を用いて、前記エピトープに選択的に結合する抗体を作製し、これにより、前記タンパク質の前記ミスフォールド形態に選択的に結合する抗体を得るステップと
を含む、方法。
【請求項46】
配列番号1〜4、6、8〜26、28、29、31〜36、41〜75、および77〜80を有するペプチド内に常在する、少なくとも3つの連続するアミノ酸を包含するエピトープに結合する抗体。
【請求項47】
治療有効量の請求項46に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項48】
タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患を示すか、またはそのリスクを有する被験体を処置するための方法であって、処置を必要とする被験体に、前記タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープに選択的に結合する、抗体またはその結合断片を含む有効量の医薬組成物を投与するステップを含み、前記抗体が結合する前記ミスフォールドタンパク質が、タウ、Aベータ、SOD1 α−シヌクレイン、PrP、TTR、β2−ミクログロブリン、EGFR、CD20、CD38、CD44、FasR、およびNotch1から選択される方法。
【請求項49】
前記抗体が結合するエピトープが、配列番号1〜4、6、8〜26、28、29、31〜36、41〜75、および77〜80のうちのいずれか1つを有するペプチド内に常在する、少なくとも3つの連続するアミノ酸を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体および処置される疾患が、
(a)CJDまたは関連のプリオン病に罹患した被験体を処置するための、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、また特に、3、4、6、7、8、9、または10により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(b)家族性アミロイド性多発性神経障害もしくは老人性全身性アミロイドーシス、またはミスフォールドTTRの存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号16、17、18、19、20、21、または22により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(c)β2ミクログロブリンアミロイド沈着物の腎臓での蓄積、またはミスフォールドβ2ミクログロブリンの存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号23、24、25、または26により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(d)筋委縮性側索硬化症(ALS)またはミスフォールドSOD1の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40、また特に、28、29、31、32、33、34、35、および36により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(e)白血病もしくは骨髄腫、またはミスフォールドCD38の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号41、42、43、44、または45により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(f)結腸癌転移および/またはミスフォールドCD44の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号46、47、f8、49、または50により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(g)Fas受容体が関与する癌に罹患した被験体を処置するための、配列番号51、52、53、54、または55により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(h)子宮頚癌、頭頚部癌、子宮内膜癌、肺癌および乳癌、胸膜中皮腫、悪性黒色腫、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞非ホジキンリンパ腫を含めた癌、または特定の急性骨髄性白血病およびB細胞型慢性リンパ球性白血病を含めた、ミスフォールドNOTCH1の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号56、57、58、59、または60により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(i)Fas受容体の活性化が関与する癌に罹患した被験体を処置するための、配列番号61、62、63、64、または65により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と;
(j)ミスフォールドEGFRが関与する特定の癌および関連障害に罹患した被験体を処置するための、配列番号76を除外するという任意選択の条件で、配列番号66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80により指定されるエピトープに選択的に結合する抗体と
から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患を示すか、またはそのリスクを有する被験体を処置するための方法であって、前記方法は、前記被験体に、前記タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを構成するペプチドを組み込む免疫原を含むワクチンを投与するステップを含み、前記エピトープが、配列番号1〜4、6、8〜26、28、29、31〜36、41〜75、および77〜80のうちのいずれか1つを有するペプチド内に常在する、少なくとも3つの連続するアミノ酸を含む、方法。
【請求項52】
前記ワクチンおよび前記処置される疾患が、
(a)CJDまたは関連のプリオン病に罹患した被験体を処置するための、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、また特に、3、4、6、7、8、9、または10により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(b)BSEまたは関連のプリオン病のリスクを有する被験体、特に畜牛における予防のための、配列番号11、12、13、14、または15により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(c)家族性アミロイド性多発性神経障害もしくは老人性全身性アミロイドーシス、またはミスフォールドTTRの存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号16、17、18、19、20、21、または22により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(d)β2ミクログロブリンアミロイド沈着物の腎臓での蓄積、またはミスフォールドβ2ミクログロブリンの存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号23、24、25、または26により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(e)筋委縮性側索硬化症(ALS)またはミスフォールドSOD1の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40、また特に、28、29、31、32、33、34、35、および36により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(f)白血病もしくは骨髄腫、またはミスフォールドCD38の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号41、42、43、44、または45により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(g)結腸癌転移および/またはミスフォールドCD44の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号46、47、48、49、または50により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(h)Fas受容体の活性化が関与する癌に罹患した被験体を処置するための、配列番号51、52、53、54、または55により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(i)子宮頚癌、頭頚部癌、子宮内膜癌、肺癌および乳癌、胸膜中皮腫、悪性黒色腫、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞非ホジキンリンパ腫を含めた癌、または特定の急性骨髄性白血病およびB細胞型慢性リンパ球性白血病を含めた、ミスフォールドNOTCH1の存在と関連する疾患に罹患した被験体を処置するための、配列番号56、57、58、59、または60により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(j)Fas受容体の活性化が関与する癌に罹患した被験体を処置するための、配列番号61、62、63、64、または65により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと;
(k)ミスフォールドEGFRが関与する特定の癌および関連障害に罹患した被験体を処置するための、配列番号76を除外するという任意選択の条件で、配列番号66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80により指定されるエピトープを含む免疫原を組み込むワクチンと
から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
配列番号1〜80のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する、単離形態のペプチド。
【請求項54】
アミノ酸置換を含む、請求項53に記載のペプチド。
【請求項55】
アミノ酸欠失により、7残基を超えない長さまで短縮した変異体である、請求項53に記載のペプチド。
【請求項56】
少なくとも7残基の長さまでのアミノ酸付加により伸長した変異体である、請求項53に記載のペプチド。
【請求項57】
タンパク質の天然フォールド形態と比べて、そのタンパク質のミスフォールド形態に固有のエピトープを同定するための、請求項1から31のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項58】
抗体を作製するための、請求項1から31のいずれかに記載の方法により同定されるエピトープの使用であって、前記抗体は前記エピトープに選択的に結合する、使用。
【請求項59】
タンパク質のミスフォールド形態を検出するための、請求項1から31のいずれかに記載の方法により同定されるエピトープに結合する抗体の使用であって、前記タンパク質は、前記エピトープを提示する、使用。
【請求項60】
タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患または障害を処置するための、請求項1から31のいずれかに記載の方法により同定されるエピトープに結合する抗体の使用であって、前記タンパク質は、前記エピトープを提示する、使用。
【請求項61】
タンパク質のミスフォールド形態と関連する疾患または障害を処置するワクチンを作製するための、請求項1から31のいずれかに記載の方法により同定されるエピトープの使用であって、前記タンパク質は、前記エピトープを提示する、使用。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−504801(P2012−504801A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529431(P2011−529431)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001413
【国際公開番号】WO2010/040209
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(502087932)ザ ユニヴァーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア (10)
【Fターム(参考)】