説明

ミトコンドリア透過性転移の阻止方法

本発明は、ミトコンドリア透過性転移を軽減または阻止する方法を提供する。該方法は、少なくとも1個の正味正電荷;最低で4個のアミノ酸;最大で約20個のアミノ酸;正味正電荷の最低数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の、3Pmが、r + 1以下である最大数である関係;および、芳香族基の最低数(a)と正味正電荷の総数(Pt)との間の、2aが、aが1でありPtも1である場合を除いて、Pt + 1以下である最大数である関係を有する有効量の芳香族カチオン性ペプチドを投与することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願との相互参照等)
本発明は、2003年2月4日に出願された米国仮出願第60/444,777号および2004年1月8日に出願された米国仮出願第60/535,690号に対する優先権を主張する。米国仮出願第60/444,777号および米国仮出願第60/535,690号の明細書は、参考として本明細書に合体させる。
本発明は、米国薬害研究所(National Institute on Drug Abuse)からの政府支援により、認可番号PO1 DA08924-08号としてなされた。米国政府は、本発明においてある種の権利を有する。
【0002】
(背景技術)
ミトコンドリアは、事実上全ての真核細胞内に存在し、酸化性リン酸化を介してアデノシントリホスフェート(ATP)を産生させることにより細胞生存にとって不可欠である。この生存機能の遮断は、細胞死に至り得る。
また、ミトコンドリアは、カルシウム(Ca2+)を蓄積することによって細胞内カルシウム調節における重要な役割も奏する。カルシウムの蓄積は、膜電位駆動性ユニポーターによりミトコンドリアマトリックス内で生じる。
カルシウムの取込みは、ミトコンドリアデヒドロゲナーゼ類を活性化させ、エネルギー生産および酸化性リン酸化を持続させるのに重要であり得る。さらに、ミトコンドリアは、過剰の細胞質内Ca2+の吸込み点としても作用し、それによって細胞をCa2+過負荷および壊死から保護する。
虚血または低血糖症は、ATP加水分解およびCa2+過負荷のようなミトコンドリア機能障害に至り得る。この機能障害は、ミトコンドリア透過性転移(MPT)を引起す。MPTは、酸化性リン酸化の脱共役(uncoupling)、ミトコンドリア膜電位の喪失、内部膜の透過性増大、および膨化に特徴を有する。
【0003】
さらに、ミトコンドリア膜間スペースは、アポトーシス誘発性たんぱく質の貯蔵所である。従って、ミトコンドリア電位の喪失およびMPTは、アポトーシス誘発性たんぱく質の細胞質への放出をもたらし得る。驚くには当らないが、MPTが壊死性およびアポトーシス性細胞死に関与するという蓄積された証拠が存在する(Crompton, Biochem J. 341:233-249, 1999)。細胞損傷の軽微な形成は、壊死よりはむしろアポトーシスに至り得る。
サイクロスポリンは、MPTを抑制し得る。サイクロスポリンAによるMPTの阻害は、虚血、低酸素症、Ca2+過負荷および酸化性ストレスを受けている細胞のような数種の細胞タイプにおけるアポトーシスを抑制する(Kroemer et al., Annu Rev Physiol. 60:619-642, 1998)。
しかしながら、サイクロスポリンAは、壊死性およびアポトーシス性細胞死に対する治療薬としては、最適よりは低い。例えば、サイクロスポリンAは、ミトコンドリアを特異的にはターゲットしない。さらに、サイクロスポリンAは、脳への伝達に乏しい。さらにまた、サイクロスポリンAの利用性は、その免疫抑制活性によって低下している。
テトラペプチド[Dmt1]DALDA (2',6'-ジメチルチロシン-D-Arg-Phe-Lys-NH2; SS-02)は、640の分子量を有し、生理学的pHにおいて正味の3個の正電荷を有する。[Dmt1]DALDAは、数種の哺乳動物細胞タイプの原形質膜にエネルギー依存性の形で容易に浸透し(Zhao et al., J Pharmacol Exp Ther. 304:425-432, 2003)、また、血液脳障壁に浸透する(Zhao et al., J Pharmacol Exp Ther. 302:188-196, 2002)。[Dmt1]DALDAは、強力なmu-オピオイドレセプター作用薬であることが証明されているものの、その利用は、MPTの抑制を含むまでには拡大していない。
【0004】
(発明の開示)
(発明が解決しようとする課題)
即ち、虚血-再灌流、低酸素症、低血糖症、並びにミトコンドリア膜の透過性転移の結果として病理学的変化をもたらす他の疾患および症状のような状態におけるMPTを抑制することが求められている。そのような疾患および症状としては、多くの一般的な神経変性疾患がある。
【0005】
(課題を解決するための手段)
これらおよび他の目的は、ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させる必要があるか又はミトコンドリア透過性転移を阻止する必要があるあらゆる哺乳類において、ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させるか、又はミトコンドリア透過性転移を阻止する方法を提供する本発明によって達成される。本発明の方法は、上記哺乳類に、
(a) 少なくとも1個の正味正電荷;
(b) 最低で3個のアミノ酸;
(c) 最大で約20個のアミノ酸;
(d) 正味正電荷の最低数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係であって、3Pmが最大数であり且つr + 1以下である関係;および、
(e) 芳香族基の最低数(a)と正味正電荷の総数(Pt)との間の関係であって、2aが最大数であり且つPt + 1以下であるが、aが1のときPtも1である場合を除く関係;
を有する芳香族カチオン性ペプチドの有効量を投与することを特徴とする。
【0006】
別の実施態様において、本発明は、ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させる必要があるか又はミトコンドリア透過性転移を阻止する必要があるあらゆる哺乳類の摘出した臓器において、ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させるか、又はミトコンドリア透過性転移を阻止する方法を提供する。本発明の方法は、該哺乳類の摘出した臓器に、
(a) 少なくとも1個の正味正電荷;
(b) 最低で3個のアミノ酸;
(c) 最大で約20個のアミノ酸;
(d) 正味正電荷の最低数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係であって、3Pmが最大数であり且つr + 1以下である関係;および、
(e) 芳香族基の最低数(a)と正味正電荷の総数(Pt)との間の関係であって、2aが最大数であり且つPt + 1以下であるが、aが1のときPtも1である場合を除く関係;
を有する芳香族カチオン性ペプチドの有効量を投与することを含む。
【0007】
さらに別の実施態様において、本発明は、ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させる必要があるか又はミトコンドリア透過性転移を阻止する必要があるあらゆる哺乳類において、ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させるか、又はミトコンドリア透過性転移を阻止する方法を提供する。本発明の方法は、該哺乳類に、
(a) 少なくとも1個の正味正電荷;
(b) 最低で3個のアミノ酸;
(c) 最大で約20個のアミノ酸;
(d) 正味正電荷の最低数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係であって、3Pmが最大数であり且つr + 1以下である関係;および、
(e) 芳香族基の最低数(a)と正味正電荷の総数(Pt)との間の関係であって、3aが最大数であり且つPt + 1以下であるが、aが1のときPtも1である場合を除く関係;
を有する芳香族カチオン性ペプチドの有効量を投与することを含む。
【0008】
さらに別の実施態様において、本発明は、ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させる必要があるか又はミトコンドリア透過性転移を阻止する必要があるあらゆる哺乳類の摘出した臓器において、ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させるか、又はミトコンドリア透過性転移を阻止する方法を提供する。本発明の方法は、該哺乳類の摘出した臓器に、
(a) 少なくとも1個の正味正電荷;
(b) 最低で3個のアミノ酸;
(c) 最大で約20個のアミノ酸;
(d) 正味正電荷の最低数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係であって、3Pmが最大数であり、且つr + 1以下である関係;および、
(e) 芳香族基の最低数(a)と正味正電荷の総数(Pt)との間の関係であって、3aが、最大数であり、且つPt + 1以下であるが、aが1のときPtも1である場合を除く関係;
を有する芳香族カチオン性ペプチドの有効量を投与することを含む。
【0009】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明は、ある種の芳香族カチオン性ペプチド類がミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を有意に低減させる、或いはミトコンドリア透過性転移を完全に阻止さえするという本発明者等による驚くべき発見に基づく。MPTを受けているミトコンドリア数を減じること或いはMPTを阻止することは、MPTが哺乳類における幾つかの一般的な疾患および症状に関連しているので重要である。さらに、哺乳類の摘出した臓器は、MPTに対して感受性である。これらの疾患および症状は、生涯におけるある段階において大割合のヒト集団を苦しめるので、とりわけ臨床的重要性を有する。
ペプチド類
本発明において有用な芳香族カチオン性ペプチド類は、水溶性で高度に極性である。これらの性質にもかかわらず、これらのペプチドは、細胞膜に容易に浸透し得る。
本発明において有用な芳香族カチオン性ペプチド類は、ペプチド結合により共有結合した、最低で3個のアミノ酸を含み、好ましくは最低で4個のアミノ酸を含む。本発明の芳香族カチオン性ペプチド類中に存在するアミノ酸の最大数は、ペプチド結合により共有結合した約20個のアミノ酸である。好ましくは、アミノ酸の最大数は、約12個、より好ましくは約9個、最も好ましくは約6個である。最適には、上記ペプチド中に存在するアミノ酸数は4個である。
本発明において有用な芳香族カチオン性ペプチド類のアミノ酸は、任意のアミノ酸であり得る。本明細書において使用するとき、用語“アミノ酸”は、少なくとも1個のアミノ基と少なくとも1個のカルボキシル基を含有する任意の有機分子を称するのに使用する。好ましくは、少なくとも1個のアミノ基は、カルボキシル基に対してα位置にある。
【0010】
上記アミノ酸類は、天然産であり得る。天然産アミノ酸類としては、例えば、哺乳動物たんぱく質において通常見出される20種の最も一般的な左旋性(L)アミノ酸類、即ち、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Glu)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ileu)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、およびバリン(Val)がある。
他の天然産アミノ酸としては、例えば、たんぱく質合成には関連しない代謝過程において合成されるアミノ酸類がある。例えば、これらアミノ酸類のオルニチンおよびシトルリンは、尿素産生中の哺乳動物代謝において合成される。
【0011】
本発明において有用なペプチド類は、1個以上の非天然産アミノ酸を含有し得る。非天然産アミノ酸類は、L-、右旋性(D)、またはこれらの混合物であり得る。最適には、該ペプチドは、天然産のアミノ酸類を有さない。
非天然産アミノ酸類は、典型的には生きている生物体内の通常の代謝過程において合成されず且つたんぱく質中に天然には産生されないアミノ酸類である。さらに、本発明において有用な非天然産アミノ酸類は、好ましくは、共通プロテアーゼによって認識されることもない。
上記非天然産アミノ酸は、ペプチド中の任意の位置に存在し得る。例えば、上記非天然産アミノ酸は、N-末端、C-末端、またはN-末端とC-末端の間の任意の位置に存在し得る。
上記非天然アミノ酸類は、例えば、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基を含み得る。アルキルアミノ酸類の幾つかの例としては、α-アミノ酪酸、β-アミノ酪酸、γ-アミノ酪酸、δ-アミノ吉草酸、およびε-アミノカプロン酸がある。アリールアミノ酸類の幾つかの例としては、オルソ-、メタ-およびパラ-アミノ安息香酸がある。アルキルアリールアミノ酸類の幾つかの例としては、オルソ-、メタ-およびパラ-アミノフェニル酢酸、並びにγ-フェニル-β-アミノ酪酸がある。
【0012】
また、非天然産アミノ酸類は、天然産アミノ酸類の誘導体も含む。天然産アミノ酸類の誘導体は、例えば、当該天然産アミノ酸への1個以上の化学基の付加を含む。
例えば、1個以上の化学基は、フェニルアラニンまたはチロシン残基の芳香環の2'、3'、4'、5'または6'位置或いはトリプトファン残基のベンゾ環の4'、5'、6'または7'位置の1ヶ所以上に付加させ得る。上記の基は、芳香環に付加させ得る任意の化学基であり得る。そのような基の幾つかの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはt-ブチルのような枝分れまたは枝分れしていないC1〜C4アルキル、C1〜C4アルキルオキシ(即ち、アルコキシ)、アミノ、C1〜C4アルキルアミノおよびC1〜C4ジアルキルアミノ(例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ)、ニトロ、ヒドロキシル、ハロ(即ち、フルオロ、クロロ、ブロモまたはイオド)がある。天然産アミノ酸類の非天然産誘導体の幾つかの特定の例としては、ノルバリン(Nva)、ノルロイシン(Nle)、およびヒドロキシプロリン(Hyp)がある。
本発明の方法において有用なペプチド中のアミノ酸修飾のもう1つの例は、当該ペプチドのアスパラギン酸またはグルタミン酸残基のカルボキシル基の誘導化である。誘導化の1つの例は、アンモニアによる或いは第1級または第2級アミン、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、またはジエチルアミンによるアミド化である。誘導化のもう1つの例は、例えば、メチルまたはエチルアルコールによるエステル化である。
もう1つのそのような修飾としては、リシン、アルギニンまたはヒスチジン残基のアミノ基の誘導化がある。例えば、そのようなアミノ基は、アシル化し得る。幾つかの適切なアシル基としては、例えば、アセチルまたはプロピオニル基のような、上述の任意のC1〜C4アルキル基を含むベンゾイル基またはアルカノイル基がある。
【0013】
上記非天然産アミノ酸類は、共通プロテアーゼ類に対し、好ましくは抵抗性、より好ましくは非感受性である。プロテアーゼ類に対して抵抗性または非感受性である非天然産アミノ酸類の例としては、上述の天然産L-アミノ酸類の右旋(D-)形、並びにL-および/またはD-非天然産アミノ酸類がある。D-アミノ酸類は、たんぱく質中で通常は産生しないが、細胞の通常のリボソームたんぱく質合成機構以外の手段により合成されたある種のペプチド抗生物質中に見出されている。本明細書において使用するとき、D-アミノ酸は、非天然産アミノ酸類であるとみなす。
プロテアーゼ感受性を最低にするためには、本発明の方法において有用なペプチド類は、アミノ酸類が天然産または非天然産であるの如何にかかわらず、5個未満、好ましくは4個未満、より好ましくは3個未満、最も好ましくは2個未満の共通プロテアーゼによって認識される連続L-アミノ酸を有するべきである。最適には、上記ペプチドは、D-アミノ酸のみを有し、L-アミノ酸を有しない。
上記ペプチドがプロテアーゼ感受性のアミノ酸配列を含有する場合、アミノ酸の少なくとも1個は、好ましくは、非天然産D-アミノ酸であり、それによってプロテアーゼ抵抗性を付与させる。プロテアーゼ感受性配列の例としては、エンドペプチダーゼ類およびトリプシンのような共通プロテアーゼにより容易に開裂される2個以上の連続塩基性アミノ酸がある。塩基性アミノ酸類の例には、アルギニン、リシンおよびヒスチジンがある。
【0014】
上記芳香族カチオン性ペプチド類は、当該ペプチド中のアミノ酸残基の総数と比較して、生理学的pHにおいて最低数の正味正電荷を有することが重要である。生理学的pHにおいての最低数の正味正電荷は、以下、(Pm)と称する。ペプチド中のアミノ酸残基の総数は、以下、(r)と称する。
以下で説明する最低数の正味正電荷は、全て生理学的pHにおいてである。本明細書において使用するときの用語“生理学的pH”とは、哺乳動物体の組織および臓器の細胞中の正常pHを称する。例えば、ヒトの生理学的pHは通常約7.4であるが、哺乳類における正常な生理学的pHは、約7.0〜約7.8の任意のpHであり得る。
【0015】
本明細書において使用するときの“正味電荷”とは、ペプチド中に存在するアミノ酸類が担持する正電荷数と負電荷数のバランスを称する。本明細書においては、正味電荷は生理学的pHにおいて測定するものと理解されたい。生理学的pHにおいて正荷電する天然産アミノ酸類としては、L-リシン、L-アルギニンおよびL-ヒスチジンがある。生理学的pHにおいて負荷電する天然産アミノ酸類としては、L-アスパラギン酸およびL-グルタミン酸がある。
典型的には、ペプチドは、正荷電N-末端アミノ基と負荷電C-末端カルボキシル基を有する。各電荷は、生理学的pHにおいて互いに相殺し合う。正味電荷の算出例としては、ペプチドTyr-Arg-Phe-Lys-Glu-His-Trp-Argは、1個の負荷電アミノ酸(即ち、Glu)と4個の正荷電アミノ酸(即ち、2個のArg残基、1個のLysおよび1個のHis)を有する。従って、上記ペプチドは、3個の正味正電荷を有する。
本発明の1つの実施態様においては、上記芳香族カチオン性ペプチド類は、生理学的pHにおける正味正電荷の最低数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の、3Pmが、r + 1以下である最大数である関係を有する。この実施態様においては、正味正電荷の最低数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係は、下記のとおりである:
【0016】

【0017】
もう1つの実施態様においては、上記芳香族カチオン性ペプチド類は、正味正電荷の最低数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の、2Pmが、r + 1以下である最大数である関係を有する。この実施態様においては、正味正電荷の最低数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係は、下記のとおりである:
【0018】

【0019】
1つの実施態様においては、正味正電荷の最低数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)は、等しい。もう1つの実施態様においては、上記ペプチド類は、3個または4個のアミノ酸残基と、最低で1個の正味正電荷、好ましくは最低で2個の正味正電荷、より好ましくは最低で3個の正味正電荷とを有する。
【0020】
また、上記芳香族カチオン性ペプチド類は、正味正電荷の総数(Pt)に比較して、最低数の芳香族基を有することが重要である。芳香族基の最低数は、以下、(a)と称する。
芳香族基を有する天然産アミノ酸類としては、該アミノ酸類のヒスチジン、トリプトファン、チロシンおよびフェニルアラニンがある。例えば、ヘキサペプチドLys-Gln-Tyr-Arg-Phe-Trpは、2個の正味正電荷(リシンおよびアルギニン残基が寄与する)と3個の芳香族基(チロシン、フェニルアラニンおよびトリプトファン残基が寄与する)を有する。
本発明の1つの実施態様においては、本発明の方法において有用な芳香族カチオン性ペプチド類は、芳香族基の最低数(a)と生理学的pHにおける正味正電荷の総数(Pt)との間の、3aが、Ptが1でありaも1である場合を除いて、Pt + 1以下である最大数である関係を有する。この実施態様においては、芳香族基の最低数(a)と正味正電荷の総数(Pt)との関係は、下記のとおりである:
【0021】

【0022】
本発明のもう1つの実施態様においては、上記芳香族カチオン性ペプチド類は、芳香族基の最低数(a)と正味正電荷の総数(Pt)との間の、2aが、Pt + 1以下である最大数である関係を有する。この実施態様においては、芳香族アミノ酸残基の最低数(a)と正味正電荷の総数(Pt)との関係は、下記のとおりである:
【0023】

【0024】
もう1つの実施態様においては、芳香族基の数(a)と正味正電荷の総数(Pt)は、等しい。
C-末端アミノ酸のカルボキシル基、とりわけ末端カルボキシル基は、好ましくは、例えば、アンモニアによりアミド化してC-末端アミドを形成させる。また、C-末端アミノ酸の末端カルボキシル基は、任意の第1級または第2級アミンによりアミド化し得る。第1級または第2級アミンは、例えば、アルキル、とりわけ枝分れもしくは枝分れしていないC1〜C4アルキルアミン、またはアリールアミンであり得る。従って、上記ペプチドのC-末端のアミノ酸は、アミド、N-メチルアミド、N-エチルアミド、N,N-ジメチルアミド、N,N-ジエチルアミド、N-メチル-N-エチルアミド、N-フェニルアミドまたはN-フェニル-N-エチルアミド基に転化させ得る。
本発明の芳香族カチオン性ペプチドのC-末端においては産生されないアスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸およびグルタミン酸残基の遊離カルボキシレート基も、これらアミノ酸残基が当該ペプチド内で産生する場合にはアミド化し得る。これら内部位置でのアミド化は、アンモニアまたは上述した任意の第1級または第2級アミンによりアミド化し得る。
1つの実施態様においては、本発明の方法において有用な芳香族カチオン性ペプチドは、2個の正味正電荷と少なくとも1個の芳香族アミノ酸を有するトリペプチドである。特定の実施態様においては、本発明の方法において有用な芳香族カチオン性ペプチドは、2個の正味正電荷と2個の芳香族アミノ酸を有するトリペプチドである。
【0025】
本発明の方法において有用な芳香族カチオン性ペプチドとしては、限定するものではないが、以下のペプチド例がある:
Lys-D-Arg-Tyr-NH2
Phe-D-Arg-His、
D-Tyr-Trp-Lys-NH2
Trp-D-Lys-Tyr-Arg-NH2
Tyr-His-D-Gly-Met、
Phe-Arg-D-His-Asp、
Tyr-D-Arg-Phe-Lys-Glu-NH2
Met-Tyr-D-Lys-Phe-Arg、
D-His-Glu-Lys-Tyr-D-Phe-Arg、
Lys-D-Gln-Tyr-Arg-D-Phe-Trp-NH2
Phe-D-Arg-Lys-Trp-Tyr-D-Arg-His、
Gly-D-Phe-Lys-Tyr-His-D-Arg-Tyr-NH2
Val-D-Lys-His-Tyr-D-Phe-Ser-Tyr-Arg-NH2
Trp-Lys-Phe-D-Asp-Arg-Tyr-D-His-Lys、
Lys-Trp-D-Tyr-Arg-Asn-Phe-Tyr-D-His-NH2
Thr-Gly-Tyr-Arg-D-His-Phe-Trp-D-His-Lys、
Asp-D-Trp-Lys-Tyr-D-His-Phe-Arg-D-Gly-Lys-NH2
D-His-Lys-Tyr-D-Phe-Glu- D-Asp-D-His-D-Lys-Arg-Trp-NH2
Ala-D-Phe-D-Arg-Tyr-Lys-D-Trp-His-D-Tyr-Gly-Phe、
Tyr-D-His-Phe-D-Arg-Asp-Lys-D-Arg-His-Trp-D-His-Phe、
Phe-Phe-D-Tyr-Arg-Glu-Asp-D-Lys-Arg-D-Arg-His-Phe-NH2
Phe-Try-Lys-D-Arg-Trp-His-D-Lys-D-Lys-Glu-Arg-D-Tyr-Thr、
Tyr-Asp-D-Lys-Tyr-Phe-D-Lys-D-Arg-Phe-Pro-D-Tyr-His-Lys、
Glu-Arg-D-Lys-Tyr-D-Val-Phe-D-His-Trp-Arg-D-Gly-Tyr-Arg-D-Met-NH2
Arg-D-Leu-D-Tyr-Phe-Lys-Glu-D-Lys-Arg-D-Trp-Lys-D-Phe-Tyr-D-Arg-Gly、
D-Glu-Asp-Lys-D-Arg-D-His-Phe-Phe-D-Val-Tyr-Arg-Tyr-D-Tyr-Arg-His-Phe-NH2
Asp-Arg-D-Phe-Cys-Phe-D-Arg-D-Lys-Tyr-Arg-D-Tyr-Trp-D-His-Tyr-D-Phe-Lys-Phe、
His-Tyr-D-Arg-Trp-Lys-Phe-D-Asp-Ala-Arg-Cys-D-Tyr-His-Phe-D-Lys-Tyr-His-Ser-NH2
Gly-Ala-Lys-Phe-D-Lys-Glu-Arg-Tyr-His-D-Arg-D-Arg-Asp-Tyr-Trp-D-His-Trp-His-D-Lys-Asp、および、
Thr-Tyr-Arg-D-Lys-Trp-Tyr-Glu-Asp-D-Lys-D-Arg-His-Phe-D-Tyr-Gly-Val-Ile-D-His-Arg-Tyr-Lys-NH2
【0026】
1つの実施態様においては、本発明の方法において有用なペプチド類は、mu-オピオイドレセプター作用薬活性を有する(即ち、mu-オピオイドレセプターを活性化させる)。mu-オピオイドレセプターの活性化は、鎮痛効果を典型的に引き出す。
ある場合には、mu-オピオイドレセプター活性を有する芳香族カチオン性ペプチドが好ましい。例えば、急性疾患または症状におけるような短時間治療においては、mu-オピオイドレセプターを活性化させる芳香族カチオン性ペプチドを使用するのが有益であり得る。そのような急性疾患および症状は、多くの場合、中度または重篤な疼痛を伴う。これらの場合、上記芳香族カチオン性ペプチドの鎮痛効果は、患者または他の哺乳類の治療処方において有益であり得る;但し、mu-オピオイドレセプターを活性化させない芳香族カチオン性ペプチドも、臨床的条件に応じて鎮痛剤と一緒にまたは鎮痛剤を使用しないで使用し得る。
【0027】
また、他の場合には、mu-オピオイドレセプター活性を有しない芳香族カチオン性ペプチドが好ましい。例えば、慢性疾患状態または症状におけるような長期の治療においては、mu-オピオイドレセプターを活性化させる芳香族カチオン性ペプチドの使用は、禁忌であり得る。これらの場合、上記芳香族カチオン性ペプチドの潜在的な有害または毒性作用によって、ヒト患者または他の哺乳類の治療処方におけるmu-オピオイドレセプターを活性化させる芳香族カチオン性ペプチドの使用は排除され得る。
潜在的な有害作用としては、鎮痛作用、便秘および呼吸抑制がある。そのような場合、mu-オピオイドレセプターを活性化させない芳香族カチオン性ペプチドが適切な治療であり得る。
急性症状の例としては、心臓発作、卒中および外傷がある。外傷には、外傷性脳および脊髄損傷があり得る。
慢性疾患または症状の例としては、後述するような、冠状動脈疾患および神経変性障害のいずれかがある。
【0028】
mu-オピオイドレセプター活性を有する本発明の方法において有用なペプチド類は、典型的には、N-末端(即ち、1番目のアミノ酸位置)においてチロシン残基またはチロシン誘導体を有するペプチド類である。チロシンの好ましい誘導体としては、2'-メチルチロシン(Mmt);2',6'-ジメチルチロシン(2',6'Dmt);3',5'-ジメチルチロシン(3',5'Dmt);N, 2',6'-トリメチルチロシン(Tmt);および2'-ヒドロキシ-6'-メチルチロシン(Hmt)がある。
とりわけ好ましい実施態様においては、mu-オピオイドレセプター活性を有するペプチドは、式 Tyr-D-Arg-Phe-Lys-NH2 (便宜上、頭文字:DALDAにより表示し、これを、本明細書においては、SS-01と称する)。DALDAは、アミノ酸類チロシン、アルギニンおよびリシンが寄与する3個の正味正電荷を有し、且つアミノ酸類フェニルアラニンおよびチロシンが寄与する2個の芳香族基を有する。DALDAのチロシンは、チロシンの修飾誘導体、例えば、式2',6'-Dmt-D-Arg-Phe-Lys-NH2 (即ち、Dmt1-DALDA、これを本明細書においてはSS-02と称する)を生成させる2',6'-ジメチルチロシンで有り得る。
mu-オピオイドレセプター活性を有しないペプチド類は、N-末端(即ち、アミノ酸位置1)においてチロシン残基またはチロシン誘導体を一般に有しない。N-末端のアミノ酸は、チロシン以外の任意の天然産または非天然産アミノ酸類であり得る。
【0029】
1つの実施態様においては、N-末端のアミノ酸は、フェニルアラニンまたはその誘導体である。フェニルアラニンの好ましい誘導体としては、2'-メチルフェニルアラニン(Mmp)、2',6'-ジメチルフェニルアラニン(Dmp)、N, 2',6'-トリメチルフェニルアラニン(Tmp)、2'-ヒドロキシ-6'-メチルフェニルアラニン(Hmp)がある。
mu-オピオイドレセプター活性を有しない他の芳香族カチオン性ペプチドは、式Phe-D-Arg-Phe-Lys-NH2 (即ち、Phe1-DALDA、これを本明細書においてはSS-20と称する)。また、N-末端フェニルアラニンは、2',6'-ジメチルフェニルアラニン(2',6'Dmp)のようなフェニルアラニンの誘導体であり得る。2',6'-ジメチルフェニルアラニンをアミノ酸位置1において含有するDALDAは、式 2',6'-Dmp-D-Arg-Phe-Lys-NH2 (即ち、2'6'Dmp1-DALDA)を有する。
【0030】
好ましい実施態様においては、Dmt1-DALDA (SS-02)のアミノ酸配列は、DmtがN-末端に存在しないように再配列させる。1例としてのmu-オピオイドレセプター活性を有しないそのような芳香族カチオン性ペプチドは、式 D-Arg-2'6'Dmt-Lys-Phe-NH2 (本明細書においてはSS-31と称する)を有する。
DALDA、Phe1-DALDA、SS-31およびそれらの誘導体は、機能性アナログ類をさらに含み得る。ペプチドは、そのアナログがDALDA、Phe1-DALDAまたはSS-31と同じ機能性を有する場合に、DALDA、Phe1-DALDAまたはSS-31の機能性アナログとみなす。当該アナログは、例えば、1個以上のアミノ酸が他のアミノ酸によって置換されているようなDALDA、Phe1-DALDAまたはSS-31の置換変異体で有り得る。
DALDA、Phe1-DALDAまたはSS-31の適切な置換変異体は、同類アミノ酸置換基を含み得る。アミノ酸類は、物理化学特性に従い下記のように分類し得る:
(a) 非極性アミノ酸類:Ala(A) Ser(S) Thr(T) Pro(P) Gly(G);
(b) 酸性アミノ酸類:Asn(N) Asp(D) Glu(E) Gln(Q);
(c) 塩基性アミノ酸類:His(H) Arg(R) Lys(K);
(d) 疎水性アミノ酸類:Met(M) Leu(L) Ile(I) Val(V);および、
(e) 芳香族アミノ酸類:Phe(F) Tyr(Y) Trp(W) His (H)。
同じ群の他のアミノ酸によるペプチド中のアミノ酸の置換は、同類置換と称し、元のペプチドの物理化学的特性を保存し得る。対照的に、異なる群の他のアミノ酸によるペプチド中のアミノ酸の置換は、一般に、元のペプチドの特性を大幅に変えるようである。
mu-オピオイドレセプターを活性化させる本発明の実施において有用なアナログ類の例としては、限定するものではないが、下記の表1に示す芳香族カチオン性ペプチド類がある。
【0031】
【表1】



【0032】
【表2】




【0033】
【表3】



【0034】
【表4】

【0035】
Dab = ジアミノ酪酸;Dap = ジアミノプロピオン酸;Dmt = ジメチルチロシン;Mmt = 2'-メチルチロシン;Tmt = N,2',6'-トリメチルチロシン;Hmt = 2'-ヒドロキシ-6'-メチルチロシン;dnsDap = β-ダンシル-L-α,β-ジアミノプロピオン酸;antDap = β-アンスラニロイル-L-α,β-ジアミノプロピオン酸;Bio = ビオチン。
【0036】
mu-オピオイドレセプターを活性化させない本発明の実施において有用なアナログ類の例としては、限定するものではないが、下記の表2示す芳香族カチオン性ペプチド類がある。
【0037】
【表5】

【0038】
Cha = シクロヘキシル
表1および2に示したペプチド類中のアミノ酸類は、L-またはD-構造のいずれかであり得る。
【0039】
治療方法
上述のペプチド類は、MPTに関連するあらゆる疾患または症状の治療において有用である。そのような疾患および症状としては、限定するものではないが、組織または臓器の虚血および/または再灌流、低酸素症並びに多数の神経変性症のいずれかがある。MPTの治療または予防の必要な哺乳類は、これらの疾患または症状を患っている哺乳類である。
哺乳類の組織または臓器の虚血は、酸素欠乏(低酸素症)および/またはグルコース(例えば、基質)欠乏によって生ずる多因子的な病理学症状である。組織または臓器の細胞中の酸素および/またはグルコース欠乏は、エネルギー発生能力の低下または全体的喪失および結果としての細胞膜を通過する活性イオン輸送機能の喪失に至る。また、酸素および/またはグルコース欠乏は、ミトコンドリア膜中の透過性転移のような他の細胞膜における病理学的変化ももたらす。さらに、通常はミトコンドリア内に区分化されているアポトーシス性たんぱく質のような他の分子が細胞質中に漏出し、アポトーシス性細胞死を起こし得る。重度の虚血は、壊死性細胞死をもたらし得る。
特定の組織または臓器内の虚血または低酸素症は、その組織または臓器への血液供給の喪失または重度の低下により生じ得る。血液供給の喪失または重度の低下は、例えば、血栓塞栓性卒中、冠状動脈硬化症または末梢血管疾患により得る。虚血または低酸素症が影響を与える組織は、典型的には、心筋、骨格筋または平滑筋のような筋肉である。
【0040】
虚血または低酸素症が影響を与える臓器は、虚血または低酸素症を被るあらゆる臓器であり得る。虚血または低酸素症が影響を与える臓器としては、脳、心臓、腎臓および前立腺がある。例えば、心筋虚血または低酸素症は、心臓動脈および毛管血液供給による心臓組織への酸素伝達の低下または喪失をもたらす動脈硬化性または血栓性の閉塞によって一般的に生ずる。そのような心臓虚血または低酸素症は、疼痛および影響を受けた心筋の壊死を生じ得、究極的には心不全に至り得る。
骨格筋または平滑筋内の虚血または低酸素症は、同様な原因から生じ得る。例えば、腸平滑筋または四肢の骨格筋内の虚血または低酸素症も、動脈硬化性または血栓性の閉塞によって生じ得る。
再灌流は、血液流が低減または遮断されているどこかの臓器または組織への血液流の回復である。例えば、血液流は、虚血または低酸素症が影響を与えているどこかの組織または臓器に回復させ得る。血液流の回復(再灌流)は、当業者にとって公知の任意の方法によって生じ得る。例えば、虚血心臓組織の再灌流は、血管形成、冠状動脈バイパス移植または血栓溶解薬の使用により生じ得る。
【0041】
また、本発明の方法は、MPTに関連する神経変性疾患の治療または予防にも使用し得る。MPTに関連する神経変性疾患としては、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病および筋萎縮性側索硬化症(ALS、Lou Gherig's病としても知られている)がある。本発明の方法は、MPTに関連するこれらおよび他の神経変性疾患の発症を遅延させまたはその進行を遅延させるのに使用し得る。本発明の方法は、MPTに関連する早期段階の神経変性疾患を患っているヒトの治療において、さらに、これらの疾患にかかりやすいヒトにおいてとりわけ有用である。
本発明において有用なペプチド類は、移植前の哺乳類の臓器を保存するのにも使用し得る。例えば、摘出した臓器は、血液流が無いために、MPTに対し感受性であり得る。従って、上記ペプチドは、摘出した臓器中のMPTを阻止するのに使用し得る。
摘出した臓器は、当該技術において一般的に使用されるもののような標準の緩衝溶液中に置くことができる。例えば、摘出した心臓は、上述のペプチドを含有する心筋保護溶液中に入れることができる。上記標準緩衝溶液中のペプチド類の濃度は、当業者であれば、容易に決定し得ることである。そのような濃度は、例えば、約0.1nM〜約10μM、好ましくは約1μM〜約10μMであり得る。
上記ペプチド類は、症状または疾患を治療するための薬物を服用中の哺乳類にも投与し得る。上記薬物の副作用がMPTを含む場合、そのような薬物を服用中の哺乳類は、本発明のペプチド類から大いに利益を得るであろう。
MPTを生じさせることによって細胞毒性を誘発する薬物の例は、化学療法薬であるアドリアマイシンである。
【0042】
ペプチド類の合成
本発明の方法において有用なペプチド類は、当該技術において周知の任意の方法によって化学合成し得る。上記ペプチド類を合成する適切な方法は、例えば、"Solid Phase Peptide Synthesis," Second Edition, Pierce Chemical Company (1984)、および “Solid Phase Peptide Synthesis,” Methods Enzymol. 289, Academic Press, Inc, New York (1997)にStuartおよびYoungによって開示されている方法である。
投与方法
本発明の方法において有用なペプチド類は、哺乳類に、MPTを受けているミトコンドリア数を低減する或いはMPTを阻止するのに有効な量で投与する。該有効量は、前臨床試験および臨床試験において、医師および臨床医が精通している方法によって決定する。
本発明の方法において有用なペプチドのとりわけ製薬組成物中の有効量は、その必要のある哺乳類に、医薬化合物を投与するための多くの周知の方法のいずれかの方法によって投与し得る。
上記ペプチドは、全身または局所投与し得る。1つの実施態様においては、上記ペプチドは、静脈内投与する。例えば、本発明の方法において有用な芳香族カチオン性ペプチド類は、急速静脈内ボーラス注入により投与し得る。しかしながら、好ましくは、該ペプチドは、一定速度の静脈内輸注として投与する。
上記ペプチドは、例えば、血管形成または冠状バイパス手術中の冠状動脈中に直接注入し得、或いは冠状ステント上に塗布し得る。
【0043】
また、上記ペプチドは、経口、局所、鼻腔内、筋肉内、皮下または経皮投与することもできる。好ましい実施態様においては、本発明の方法による芳香族カチオン性ペプチドの経皮投与は、荷電ペプチドを電流により皮膚を通して伝達させるイオントフォレーゼによる。
他の投与経路は、脳室内または髄腔内を含む。脳室内とは、脳の脳室系への投与を称する。髄腔内とは、脊髄のくも膜下の空間中への投与を称する。即ち、脳室内または髄腔内投与は、中枢神経系の器官または組織に影響を与える疾患および症状に対して好ましくあり得る。好ましい実施態様においては、髄腔内投与は、外傷性脊髄損傷において使用する。
また、本発明の方法において有用なペプチド類は、哺乳類に、当該技術においてしられているように、持続性放出によっても投与し得る。持続性放出投与は、所定の薬物レベルを特定の期間に亘って達成させる薬物伝達方法である。その量は、典型的には、血清または血漿濃度によって測定する。
【0044】
製薬技術において公知の任意の製剤が、本発明の方法において有用な芳香族カチオン性ペプチドの投与に適している。経口投与においては、液体または固形製剤を使用し得る。製剤類の幾つかの例としては、錠剤、ゼラチンカプセル剤、ピル剤、トローチ剤、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ剤、ウェーハ剤、チューインガム剤等がある。上記ペプチド類は、当業者によって理解されているような適切な製薬用担体(ビヒクル)または賦形剤と混合し得る。担体および賦形剤の例としては、澱粉、ミルク、砂糖、ある種のタイプのクレー、ゼラチン、乳酸、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウムもしくはカルシウムのようなその塩類、タルク、植物油脂類、ガム類およびグリコール類がある。
全身、脳室内、髄腔内、局所、鼻腔内、皮下または経皮投与においては、本発明の方法において有用な芳香族カチオン性ペプチド類の製剤は、当該技術において公知であるような通常の希釈剤、担体または賦形剤を使用し得、これらのペプチド類を伝達させるのに使用し得る。例えば、これらの製剤は、以下の1種以上を含み得る:安定剤、界面活性剤、好ましくはノニオン系界面活性剤、および必要に応じての塩および/または緩衝剤。上記ペプチドは、水溶液形または凍結乾燥形であり得る。
安定剤は、例えば、例えばグリシンのようなアミノ酸;例えば、スクロース、テトラロース、ラクトースまたはデキストランのようなオリゴ糖であり得る。また、安定剤は、例えばマンニトールのような糖アルコールまたはその組合せであり得る。好ましくは、安定剤または安定剤混合物は、上記ペプチドの質量に対して約0.1質量%〜約10質量%を構成する。
【0045】
界面活性剤は、好ましくはポリソルベートのようなノニオン系界面活性剤である。適切な界面活性剤の幾つかの例としては、約0.001%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)のTween20、Tween80;ポリエチレングリコールまたはPluronic F-68のようなポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールがある。
塩または緩衝剤は、それぞれ、例えば、塩化ナトリウムまたはリン酸ナトリウム/カリウムのような任意の塩または緩衝剤であり得る。好ましくは、緩衝剤は、上記製薬組成物のpHを約5.5〜約7.5の範囲に維持する。また、塩および/または緩衝剤は、浸透圧をヒトまたは動物への投与に適するレベルに維持するのにも有用である。好ましくは、塩および/または緩衝剤は、約150mM〜約300mMのおよそ等張濃度で存在する。
本発明の方法において有用なペプチド類の製剤は、1種以上の通常の添加剤をさらに含有し得る。そのような添加剤の幾つかの例としては、例えば、グリセリンのような可溶化剤;例えば、ベンズアルコニウムクロライド(第4級アンモニウム化合物の混合物、“クォーツ(quats)”として知られている)、ベンジルアルコール、クロレトンまたはクロロブタノールのような酸化防止剤;例えば、モルヒネ誘導体のような麻酔薬;または上述したような等張剤等がある。酸化または他の損傷に対するさらなる注意としては、上記製薬組成物は、非浸透性のストッパーによって密閉したバイアル中で窒素ガス下に保存し得る。
哺乳類は、例えば、ヒツジ、ブタ、ウシおよびウマのような農場動物;イヌおよびネコのようなペット動物;ラット、マウスおよびウサギのような実験動物のような任意の哺乳類であり得る。好ましい実施態様においては、哺乳類はヒトである。
【0046】
(実施例)
実施例1
[Dmt1]DALDAは、細胞膜を透過する
[3H][Dmt1]DALDAの細胞取込みを、ヒト腸上皮細胞系(Caco-2)を使用して試験し、SH-SY5Y (ヒト神経芽細胞腫細胞)、HEK293 (ヒト胚腎細胞)およびCRFK細胞(腎臓上皮細胞)によって確認した。各細胞単分子層をコラーゲンでコーティーングした12ウェルプレート(5×105細胞/ウェル)上で3日間増殖させた。4日目で各細胞を予め温めたHBSSで2回洗浄し、その後、37℃または4℃のいずれかで250nMの[3H][Dmt1]DALDAを含有する0.2mlのHBSSと一緒に1時間までの種々の時間でインキュベートした。
[3H][Dmt1]DALDAは5分ほどの早期に細胞溶解物中で観察され、定常状態レベルは30分で達成された。1時間インキュベーション後の細胞溶解物中で回収した[3H][Dmt1]DALDAの合計量は、総薬物の約1%を示していた。[3H][Dmt1]DALDAの取込みは、37℃に比較して4℃での方が遅かったが、45分で76.5%、1時間で86.3%に達していた。[3H][Dmt1]DALDAの内在化は、Caco-2細胞に限定されず、SH-SY5Y、HEK293およびCRFK細胞においても観察された。[Dmt1]DALDAの細胞内濃度は、細胞外濃度よりも約50倍高いと推定した。
別の試験において、細胞を、ある範囲の[Dmt1]DALDA濃度(1μM〜3mM)で、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション期間終了時に、細胞をHBSSで4回洗浄し、1%のSDSを含む0.2mlの0.1 N NaOHを各ウェルに添加した。その後、細胞内容物をシンチレーションバイアルに移し、放射能を計数した。内在化放射能と表面結合放射能を識別するために、酸洗浄工程を含ませた。細胞溶解前に、細胞を0.2mlの0.2M 酢酸/0.05M NaClと一緒に5分間氷上でインキュベートした。
Caco-2細胞中への[Dmt1]DALDAの取込みは、[Dmt1]DALDAの蛍光アナログ(Dmt-D-Arg-Phe-dnsDap-NH2;dnsDap = β-ダンシル-l-α,β-ジアミノプロピオン酸)を使用して、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)により確認した。細胞を上述のようにして増殖させ、(35mm)ガラス底皿(MatTek社、マサチューセッツ州アシュランド)上に2日間塗抹した。その後、培地を除去し、細胞を、0.1μM〜1.0μMの上記蛍光ペプチドアナログを含有する1mlのHBSSと一緒に37℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を氷冷HBSSで3回洗浄し、200μlのPBSで覆い、顕微鏡観察を、C-Apochromat 63x/1.2W補正対物レンズを備えたNikon共焦点レーザー顕微鏡を使用して、室温にて10分以内で行った。励起を340nmでUVレーザーにより行い、発光を520nmで測定した。Z-方向での光区分化において、2.0μmを有する5〜10のフレームを作成した。
CLSMにより、蛍光Dmt-D-Arg-Phe-dnsDap-NH2のCaco-2細胞中への取込みを、0.1μMの[Dmt1,DnsDap4]DALDAと一緒の37℃で1時間のインキュベーション後に確認した。上記蛍光ペプチドの取込みは、37℃と4℃で同じようであった。蛍光は、細胞質全体に亘って散乱しているようであったが、核心からは完全に除外されていた。
【0047】
実施例2
[Dmt1]DALDAのミトコンドリアへのターゲッティング
[Dmt1]DALDAの小細胞分布を検証するために、蛍光アナログ[Dmt1,AtnDap4]DALDA (Dmt-D-Arg-Phe-atnDap-NH2;atn = β-アンスラニロイル-l-α,β-ジアミノプロピオン酸)を調製した。このアナログは、位置4のリシン残基の代りにβ-アンスラニロイル-l-α,β-ジアミノプロピオン酸を含有していた。細胞を実施例1に記載したようにして増殖させ、(35mm)ガラス底皿(MatTek社、マサチューセッツ州アシュランド)上に2日間塗抹した。その後、培地を除去し、細胞を、0.1μMの[Dmt1,AtnDap4]DALDAを含有する1mlのHBSSと一緒に37℃で15分〜1時間インキュベートした。
また、細胞をミトコンドリア染色用の染料であるテトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM、25nM)と一緒に37℃で15分間インキュベートした。次いで、細胞を氷冷HBSSで3回洗浄し、200μlのPBSで覆い、顕微鏡観察を、C-Apochromat 63x/1.2W補正対物レンズを備えたNikon共焦点レーザー顕微鏡を使用して、室温にて10分以内で行った。
[Dmt1,AtnDap4]DALDAにおいては、励起を350nmでUVレーザーにより行い、発光を520nmで測定した。TMRMにおいては、励起を536nmで行い、発光を560nmで測定した。
CLSMは、蛍光[Dmt1,AtnDap4]DALDAのCaco-2細胞への取込みを37℃で15分ほどの短時間インキュベーション後に示していた。染料の取込みは核心から完全に除外されていたが、青色染料は細胞質内でむらのある分布を示していた。ミトコンドリアは、TMRMにより赤色ラベル化されていた。[Dmt1,AtnDap4]DALDAのミトコンドリアへの分布は、[Dmt1,AtnDap4]DALDA分布とTMRM分布の重なり合いにより実証されていた。
【0048】
実施例3
[Dmt1]DALDAのミトコンドリアへの取込み
ミトコンドリアをマウス肝臓から分離するために、マウスを断頭術により殺処分した。肝臓を摘出し、急いで冷却肝臓均質化培地中に入れた。肝臓を、ハサミを使用して微細に細片化し、その後、ガラスホモジナイザーを使用し手で均質化した。
均質化物を4℃にて1000×gで10分間遠心分離した。上清を吸引し、ポリカーボネートチューブに移し、4℃にて3000×gで10分間再度遠心分離した。得られた上清を除去し、チューブ側壁の脂肪脂質を注意深く拭き取った。
ペレットを肝臓均質物培地に再懸濁させ、均質化を2回繰り返した。最終精製ミトコンドリアペレットを培地に再懸濁させた。ミトコンドリア調製物中のたんぱく質濃度は、ブラッドフォード(Bradford)手順により測定した。
400μlの緩衝液中のおよそ1.5mgのミトコンドリアを[3H][Dmt1]DALDAと一緒に37℃で5〜30分間インキュベートした。その後、ミトコンドリアを遠心分離し、放射能量をミトコンドリア画分および緩衝液画分において測定した。0.7μl/mgたんぱく質のミトコンドリアマトリックス容量(Lim et al., J Physiol 545:961-974, 2002)を想定すると、ミトコンドリア中の[3H][Dmt1]DALDAの濃度は、緩衝液中におけるよりも200倍高いことが判明した。即ち、[Dmt1]DALDAは、ミトコンドリア中で濃縮されている。
これらのデータに基づき、分離したモルモット心臓を[Dmt1]DALDAにより潅流させたときのミトコンドリア中の[Dmt1]DALDA濃度は、以下のように推定し得る:
冠状潅流液中の[Dmt1]DALDA濃度 0.1μM
筋細胞中の[Dmt1]DALDA濃度 5μM
ミトコンドリア中の[Dmt1]DALDA濃度 1.0mM
【0049】
実施例4
分離したミトコンドリアによる[Dmt1]DALDAの蓄積(図1)
[Dmt1]DALDAがミトコンドリアに選択的に分布することをさらに実証するために、[Dmt1,AtnDap4]DALDAおよび[3H][Dmt1]DALDAの分離マウス肝臓ミトコンドリア中への取込みを試験した。[Dmt1,AtnDap4]DALDAの急速な取込みが、ミトコンドリア添加時のその蛍光の即時の失活として観察された(図1A)。FCCP (カルボニルシアニドp-(トリフルオロメトキシ)-フェニルヒドラゾン)、即ち、ミトコンドリアの即時の脱分極をもたらす脱共役剤によるミトコンドリアの事前処理は、[Dmt1,AtnDap4]DALDA取込みを<20%減少させただけであった。即ち、[Dmt1,AtnDap4]DALDAの取込みは、電位依存性ではなかった。
ミトコンドリアターゲッティングがフルオロフォアの所産でないことを確認するために、[3H][Dmt1]DALDAのミトコンドリア取込みも試験した。分離ミトコンドリアを[3H][Dmt1]DALDAと一緒にインキュベートし、放射能をミトコンドリアペレットと上清中で測定した。ペレット中の放射能量は、2分〜8分では変化しなかった。FCCPによるミトコンドリアの処理は、ミトコンドリアペレットと結合した[3H][Dmt1]DALDAの量を約20%減少させただけであった(図1B)。
[Dmt1]DALDA取込みに対するFCCPの最小の効果は、[Dmt1]DALDAがマトリックス中によりはむしろミトコンドリア膜と或いは膜間スペース内に結合しているであろうことを示唆していた。次に、ミトコンドリア中の[Dmt1,AtnDap4]DALDA蓄積に対するミトコンドリア膨化効果を、アラメチシンを使用して外膜の膨化と破裂を誘発させることによって試験した。TMRMと異なり、[Dmt1,AtnDap4]DALDAの取込みは、ミトコンドリア膨化により僅かに部分的にしか逆転しなかった(図1C)。即ち、[Dmt1]DALDAは、ミトコンドリア膜と結合している。
【0050】
実施例5
[Dmt1]DALDAはミトコンドリア呼吸作用および電位を変化させない(図1D)
[Dmt1]DALDAのミトコンドリア中での蓄積は、ミトコンドリア機能を変化させてなかった。分離マウス肝臓ミトコンドリアの100μMの[Dmt1]DALDAと一緒のインキュベーションは、状態3または状態4中の酸素消費量、即ち、呼吸比(状態3/状態4) (6.2対6.0)を変化させてなかった。ミトコンドリア膜電位は、TMRMを使用して測定した(図1D)。ミトコンドリアの添加は、TMRMシグナルの即時の失活をもたらし、この失活はFCCPの添加により容易に逆転し、ミトコンドリア脱分極を示唆していた。Ca2+ (150μM)の添加は、即時の脱分極を、その後、MPTを指標し得る進行性の失活喪失をもたらした。[Dmt1]DALDA単独の添加は、200μMにおいてさえも、ミトコンドリア脱分極またはMPTを生じさせていなかった。
【0051】
実施例6
[Dmt1]DALDAはCa2+および3-ニトロプロピオン酸により誘発させたMPTを防御している(図2)
ミトコンドリア電位に対する直接の効果を有しない以外に、[Dmt1]DALDAは、Ca2+ 過負荷によって誘発されたMPTを防御し得ていた。Ca2+添加前の分離ミトコンドリアの[Dmt1]DALDA (10μM)による2分間の事前処理は、一過性の脱分極をもたらしただけで、MPTの発症を阻止していた(図2A)。[Dmt1]DALDAは、漸増Ca2+誘発試験に対してミトコンドリアの耐性を投与量依存的に増大させていた。図2Bは、[Dmt1]DALDAが、分離ミトコンドリアがMPT前に耐え得たCa2+添加回数を増大させたことを示している。
3-ニトロプロピオン酸(3NP)は、電子輸送連鎖の複合体IIにおけるスクシネートデヒドロゲナーゼの不可逆的インヒビターである。3NP (1 mM)の分離ミトコンドリアへの添加は、ミトコンドリア電位の損失およびMPTの発症を生じさせていた。[Dmt1]DALDAによるミトコンドリアの事前処理は、3NPにより誘発させたMPTの発症を投与量依存的に遅延させていた(図2C)。
[Dmt1]DALDAが細胞膜を透過して3NPにより誘発させたミトコンドリア脱分極を防御し得ることを実証するために、Caco-2細胞を、[Dmt1]DALDA (0.1μM)の不存在または存在下に、3NP (10mM)で4時間処理し、その後、TMRMと一緒にインキュベートし、LSCM下に試験した。対照細胞においては、ミトコンドリアは、細胞質全体に亘る微細な縞として明らかに可視化できる。3NPで処理した細胞においては、TMRM蛍光はかなり減じられており、汎発性の脱分極を示唆していた。対照的に、[Dmt1]DALDAによる同時処理は、3NPによって生じるミトコンドリア脱分極を防御していた。
【0052】
実施例7
[Dmt1]DALDAはミトコンドリア膨化およびシトクロムc放出を防御する
MPT開孔は、ミトコンドリア膨化をもたらす。ミトコンドリア膨化に対する[Dmt1]DALDAの効果を、540nmでの吸光度(A540)の低下を測定することによって試験した。その後、ミトコンドリア懸濁液を遠心分離し、ミトコンドリアペレットおよび上清中のシトクロムcを商業的に入手し得るELISAキットにより測定した。分離ミトコンドリアのSS-02による事前処理は、Ca2+過負荷により誘発される膨化(図3A)およびシトクロムc放出(図3B)を抑制していた。Ca2+過負荷により誘発されるMPTを阻止する以外に、SS-02は、MPP+ (1-メチル-4-フェニルピリジウムイオン)、即ち、ミトコンドリア電子輸送連鎖の複合体Iのインヒビターによって誘発されるミトコンドリア膨化も阻止していた(図3C)。
実施例8
D-Arg-Dmt-Lys-Phe-NH2 (SS-31)はMPT、ミトコンドリア膨化およびシトクロムc放出を防御し得る
非オピオイドペプチドSS-31は、Ca2+により誘発されるMPT(図4A)、ミトコンドリア膨化(図4B),およびシトクロムc放出(図4C)を防御する同じ能力を有する。試験のための各方法は、SS-02について上述したとおりである。この実施例においては、ミトコンドリア膨化は、570nmでモニターした光散乱を使用して測定した。
【0053】
実施例9
[Dmt1]DALDA (SS-02)およびD-Arg-Dmt-Lys-Phe-NH2 (SS-31)は虚血-再灌流誘発性ミトコンドリア衝撃を防御する
モルモット心臓を急いで分離し、大動脈にその場でカニューレ挿入し、34℃の酸素化Krebs-Henseleit溶液(pH 7.4)により逆流方式で潅流させた。その後、心臓を切除し、修正Langendorff潅流装置上に取付け、一定圧(3.92 kPa (40cmH2O))で潅流させた。収縮力を、左心室の先端および力変位変換器にきつく連結させた絹結紮子中に挿入した小ホックにより測定した。冠状流は、肺動脈流出物の時限収集により測定した。
心臓を、緩衝液、[Dmt1]DALDA (SS-02) (100nM)またはD-Arg-Dmt-Lys-Phe-NH2 (SS-31) (1nM)で30分潅流させ、その後、30分の全体的虚血に供した。再灌流は、虚血前に使用したのと同じ溶液で実施した、
2元ANOVAにより、収縮力(P<0.001)、心拍(P=0.003)および冠状流(P<0.001)の有意差が上記3つの治療群間で明らかになった。緩衝液群においては、収縮力は、虚血前と比較して、再灌流中は有意に低かった(図5)。SS-02およびSS-31治療心臓の双方は、緩衝液治療心臓よりもはるかに良好に虚血に耐えていた。とりわけ、SS-31は、心臓衝撃(stunning)の完全抑制を示していた。さらに、冠状流は再灌流全体に亘って良好に維持され、心拍の低下はなかった。
【0054】
実施例10
[Dmt1]DALDA (SS-02)は臓器保存性を増強する
心臓移植においては、ドナー心臓は、輸送中、心筋保護溶液中で保存される。保存溶液は、心臓鼓動を効率的に停止させエネルギーを節約する高カリウムを含有する。しかしながら、分離した心臓の生存時間は、依然として全く限られている。
[Dmt1]DALDAが臓器の生存を延長させるかどうかを試験した。この試験においては、[Dmt1]DALDAを一般的に使用される心筋保護溶液(St, Thomas)に添加し、[Dmt1]DALDAが長期の虚血後の心臓の生存を増強させるかどうか(生体外臓器生存のモデル)を判定した。
分離モルモット心臓を34℃の酸素化Krebs-Henseleit溶液により逆流方式で潅流させた。安定化の30分後、各心臓を、100nMの[Dmt1]DALDAを含むまたは含まない心筋保護溶液CPS (St. Thomas)で3分間潅流させた。その後、全体的虚血を冠状潅流の完全遮断により90分間誘発させた。続いて、再灌流を酸素化Krebs-Henseleit溶液で60分間実施した。収縮力、心拍および冠状流を試験全体に亘って連続的にモニターした。
[Dmt1]DALDAの心筋保護溶液への添加は、長期虚血後の収縮力を有意に増強していた(図6)。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】ミトコンドリア中での[Dmt1]DALDA (SS-02)の細胞内在化および蓄積を示す。(A) SS-19のミトコンドリア取込みを、蛍光分光分析法(ex/em = 320/420 nm)を使用して測定した。分離したマウス肝臓ミトコンドリア(0.35mg/ml)の添加は、SS-19蛍光強度の直の失活をもたらした(灰色線)。FCCP (1.5μM)によるミトコンドリアの事前処理は、<20%まで失活を減じた(黒線)。(B) 分離したミトコンドリアを[3H]SS-02と一緒に37℃で2分間インキュベートした。取込みを4℃で5分間の遠心分離(16000×g)により停止させ、放射能をペレット中で測定した。FCCPによるミトコンドリアの事前処理は、[3H]SS-02取込みを約20%抑制していた。データは、平均±s.e.で示している;n = 3。*スチューデントt-検定により、P<0.05。(C) 分離したミトコンドリアによるTMRMの取込みは、アラメチシンにより誘発させたミトコンドリア膨化時に喪失し、一方、SS-19の取込みは、大いに保持されている。黒線、TMRM;赤線、SS-19。(D) 分離したミトコンドリアへのSS-02 (200μM)の添加は、TMRM蛍光により測定したとき、ミトコンドリア電位を変化させなかった。FCCP (1.5μM)の添加は即時の脱分極を生じさせたが、Ca2+ (150μM)は脱分極および進行性のMPT発症をもたらした。
【図2】[Dmt1]DALDA (SS-02)が、Ca2+過負荷および3-ニトロプロピオン酸(3NP)によって誘発されるミトコンドリア透過性転移(MPT)を防御することを示す。(A) 分離したミトコンドリアの10μMのSS-02による事前処理(下向き矢印によって示す添加)は、Ca2+過負荷(上向き矢印)によって誘発させたMPTの発症を阻止していた。黒線、緩衝液;赤線、SS-20。(B) 分離したミトコンドリアのSS-02による事前処理は、MPTの発症前の複数回のCa2+添加ミトコンドリア耐性を増大させた。矢印は、緩衝液またはSS-02の添加を示す。線1、緩衝液;線2、50μM SS-02;線3、100μM SS-02。(C) SS-02は、1mMの3NPによって生ずるMPT発症を投与量依存的に遅延させた。矢印は、緩衝液またはSS-02の添加を示す。線1、緩衝液;線2、0.5μM SS-02;線3、5μM SS-02;線4、50μM SS-02。
【図3】[Dmt1]DALDA (SS-02)がミトコンドリア膨化およびシトクロムc放出を抑制することを示す。(A) 分離したミトコンドリアのSS-02による事前処理は、投与量依存的な形での200μMのCa2+により誘発させたミトコンドリア膨化を投与量依存的に抑制した。膨化は、540 nmでの吸光度により測定した。(B) SS-02は、分離したミトコンドリアからのCa2+誘発シトクロムc放出を抑制していた。放出シトクロムcの量は、ミトコンドリア中の総シトクロムcのパーセントとして示している。データは、平均±s.e.で示している;n = 3。(C) また、SS-02は、MPP+ (300μM)により誘発させたミトコンドリア膨化も抑制した。
【図4】D-Arg-Dmt-Lys-Phe-NH2 (SS-31)がミトコンドリア膨化およびシトクロムc放出を抑制することを示す。(A) 分離したミトコンドリアのSS-02 (10μM)による事前処理は、Ca2+により誘発させたMPTの発症を阻止している。灰色線、緩衝液;赤線、SS-31。(B) ミトコンドリアのSS-31 (50μM)による事前処理は、200mMのCa2+により誘発させたミトコンドリア膨化を抑制した。膨化は、570nmで測定した光散乱により測定した。(C) Ca2+により誘発させたミトコンドリア膨化およびシトクロムc放出の抑制におけるSS-02およびSS-31とサイクロスポリン(CsA)との比較を示す。放出シトクロムcの量は、ミトコンドリア中の総シトクロムcのパーセントとして示す。データは、平均±s.e.で示している;n = 3。
【図5】[Dmt1]DALDA (SS-02)およびD-Arg-Dmt-Lys-Phe-NH2 (SS-31)が、分離した潅流モルモット心臓の虚血-再灌流中の心筋収縮力を防御することを示す。心臓を緩衝液またはSS-02 (100nM)もしくはSS-31 (1nM)を含有する緩衝液で30分間潅流させ、その後、30分間の全体的虚血に供した。再灌流は、同じ潅流溶液を使用して実施した。有意差は、3つの治療群間で見出された(2元ANOVA、p<0.001)。
【図6】心筋保護溶液への[Dmt1]DALDAの添加が、分離した潅流モルモット心臓内の長時間の虚血後に、収縮機能を有意に増強したことを示す。30分の安定化後に、心臓をSt. Thomas心筋保護溶液(CPC)または[Dmt1]DALDAを100nMで含有するCPSで3分間潅流させた。その後、全体的虚血を、90分間の冠状動脈潅流の完全遮断により誘発させた。続いて、再灌流を酸素富化Krebs-Henseleit溶液により60分間実施した。虚血後収縮力は、[Dmt1]DALDAを受けた群において有意に改善されていた(P<0.001)。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図4A】

【図4B】

【図4C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させる必要があるか又はミトコンドリア透過性転移を阻止する必要がある哺乳類に、
(a) 少なくとも1個の正味正電荷;
(b) 最低で4個のアミノ酸;
(c) 最大で約20個のアミノ酸;
(d) 正味正電荷の最低数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係であって、3Pmが最大数であり且つr + 1以下である関係;および、
(e) 芳香族基の最低数(a)と正味正電荷の総数(Pt)との間の関係であって、2aが最大数であり且つPt + 1以下であるが、aが1のときPtも1である場合を除く関係;
を有する芳香族カチオン性ペプチドの有効量を投与することを含む、該哺乳類において、ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させるか又はミトコンドリア透過性転移を阻止する方法。
【請求項2】
2Pmが、r + 1以下である最大数である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
aがPtに等しい、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ペプチドが最低で2個の正電荷を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ペプチドが最低で3個の正電荷を有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ペプチドが水溶性である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記ペプチドが1個以上のD-アミノ酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記アミノ酸のC-末端のC-末端カルボキシル基がアミド化されている、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ペプチドが1個以上の非天然産アミノ酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記ペプチドが最低で4個のアミノ酸を有する、請求項1記載の方法
【請求項11】
前記ペプチドが最大で約12個のアミノ酸を有する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記ペプチドが最大で約9個のアミノ酸を有する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記ペプチドが最大で約6個のアミノ酸を有する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記ペプチドがmu-オピオイドレセプター作用薬活性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記ペプチドがmu-オピオイドレセプター作用薬活性を有しない、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記ペプチドが式 D-Arg-Dmt-Lys-Phe-NH2を有する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記ペプチドがN-末端でチロシン残基を含む、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチドがN-末端で2',6'-ジメチルチロシン残基を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記ペプチドがN-末端でD-アルギニン残基を含む、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記ペプチドがN-末端でフェニルアラニン残基を含む、請求項15記載の方法。
【請求項21】
前記ペプチドがN-末端で2',6'-ジメチルフェニルアラニン残基を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記ペプチドが式 Tyr-D-Arg-Phe-Lys-NH2 (DALDA)を有する、請求項17記載の方法。
【請求項23】
前記ペプチドが式 2',6'-Dmt-D-Arg-Phe-Lys-NH2 (Dmt1-DALDA)を有する、請求項18記載の方法。
【請求項24】
前記ペプチドが式 Phe-D-Arg-Phe-Lys-NH2 (Phe1-DALDA)を有する、請求項20記載の方法。
【請求項25】
前記ペプチドが式 2',6'-Dmp-D-Arg-Phe-Lys-NH2 (Dmp1-DALDA)を有する、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記ペプチドを経口投与する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記ペプチドを局所投与する、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記ペプチドを鼻腔内投与する、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記ペプチドを全身投与する、請求項1記載の方法。
【請求項30】
前記ペプチドを静脈内投与する、請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記ペプチドを皮下投与する、請求項1記載の方法。
【請求項32】
前記ペプチドを筋肉内投与する、請求項1記載の方法。
【請求項33】
前記ペプチドを脳室内投与する、請求項1記載の方法。
【請求項34】
前記ペプチドを髄腔内投与する、請求項1記載の方法。
【請求項35】
前記ペプチドを経皮投与する、請求項1記載の方法。
【請求項36】
前記経皮投与がイオントフォレーゼによる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記哺乳類が虚血を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項38】
前記哺乳類が再灌流を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項39】
前記哺乳類が低酸素症を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項40】
前記虚血が卒中による、請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記虚血が腸虚血である、請求項37記載の方法。
【請求項42】
前記虚血が筋肉組織中に存在する、請求項37記載の方法。
【請求項43】
前記筋肉組織が心臓筋肉組織である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記筋肉組織が骨格筋組織である、請求項42記載の方法。
【請求項45】
前記筋肉組織が平滑筋組織である、請求項42記載の方法。
【請求項46】
前記哺乳類が低酸素症を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項47】
前記哺乳類が神経変性疾患または症状を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項48】
前記神経変性疾患または症状がパーキンソン病である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記神経変性疾患または症状がアルツハイマー病である、請求項47記載の方法。
【請求項50】
前記神経変性症または症状がハンチントン病である、請求項47記載の方法。
【請求項51】
前記神経変性症または症状が筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、請求項47記載の方法。
【請求項52】
前記哺乳類は薬物誘発性MPTを患っている、請求項1記載の方法。
【請求項53】
前記哺乳類がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項54】
ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させる必要があるか又はミトコンドリア透過性転移を阻止する必要がある哺乳類の摘出した臓器に、
(a) 少なくとも1個の正味正電荷;
(b) 最低で4個のアミノ酸;
(c) 最大で約20個のアミノ酸;
(d) 正味正電荷の最低数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係であって、3Pmが最大数であり且つr + 1以下である関係;および、
(e) 芳香族基の最低数(a)と正味正電荷の総数(Pt)との間の関係であって、2aが最大数であり且つPt + 1以下であるが、aが1のときPtも1である場合を除く関係;
を有する芳香族カチオン性ペプチドの有効量を投与することを含む、該哺乳類の摘出した臓器において、ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させるか又はミトコンドリア透過性転移を阻止する方法。
【請求項55】
ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させる必要があるか又はミトコンドリア透過性転移を阻止する必要がある哺乳類に、
(a) 少なくとも1個の正味正電荷;
(b) 最低で3個のアミノ酸;
(c) 最大で約20個のアミノ酸;
(d) 正味正電荷の最低数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係であって、3Pmが最大数であり且つr + 1以下である関係;および、
(e) 芳香族基の最低数(a)と正味正電荷の総数(Pt)との間の関係であって、3aが最大数であり且つPt + 1以下であるが、aが1のときPtも1である場合を除く関係;
を有する芳香族カチオン性ペプチドの有効量を投与することを含む、該哺乳類において、ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させるか又はミトコンドリア透過性転移を阻止する方法。
【請求項56】
ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させる必要があるか又はミトコンドリア透過性転移を阻止する必要がある哺乳類の摘出した臓器に、
(a) 少なくとも1個の正味正電荷;
(b) 最低で3個のアミノ酸;
(c) 最大で約20個のアミノ酸;
(d) 正味正電荷の最低数(Pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間の関係であって、3Pmが最大数であり、且つr + 1以下である関係;および、
(e) 芳香族基の最低数(a)と正味正電荷の総数(Pt)との間の関係であって、3aが、最大数であり、且つPt + 1以下であるが、aが1のときPtも1である場合を除く関係;
を有する芳香族カチオン性ペプチドの有効量を投与することを含む、該哺乳類の摘出した臓器において、ミトコンドリア透過性転移(MPT)を受けているミトコンドリア数を低減させるか又はミトコンドリア透過性転移を阻止する方法。
【請求項57】
配列 D-Arg-Dmt-Lys-Phe-NH2を有するペプチド。

【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−516652(P2006−516652A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503317(P2006−503317)
【出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/003193
【国際公開番号】WO2004/070054
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505294425)コーネル リサーチ ファウンデイション インコーポレイテッド (11)
【出願人】(505294610)クリニカル リサーチ インスティテュート オブ モントリオール (2)
【Fターム(参考)】