説明

ミネラルウール、絶縁製品及び製造方法

本発明の目的は、ミネラル繊維と有機結合材を含むミネラルウールの製造方法であって、前記ミネラル繊維が形成され、前記有機結合材と少なくとも一つの樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む化合物が、前記ミネラル繊維の表面の少なくとも一部上に添加されるものであり、撥水剤も前記ミネラル繊維の表面の少なくとも一部上に添加されることを特徴とする方法である。本発明の目的はこの方法により得ることができるミネラルウールでもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工ミネラルウールの分野に関する。本発明は、より特別には、熱及び/又は音響絶縁材料に組み込まれるためのグラスウールに関する。
【0002】
ミネラルウールは、直径及び/又は長さに関する一定の幾何学的基準を満たすと、呼吸により体内へ、特に肺内へ、時々は、はるか肺胞に取り入れられることがある。体内へのあり得る蓄積に結び付く任意の病原性リスクを防止するために、繊維が低い「生体内存続性」(即ち、体から容易に迅速に除去できること)を有することを確実にするることが必要になってきた。繊維の化学的組成は、生理学的媒体中での繊維の溶解速度に重要な役割を果たすことから、体から迅速に除去されるこの能力に影響する主なパラメーターである。生理学的媒体中への高い溶解速度を有するミネラルウール(「生溶解性(biosoluble)ミネラルウール」)は、それゆえ、先行技術において開発され、説明されてきた。
【0003】
しかしながら、主な困難は、最終製品の良好な作業性、特に、湿気への暴露中での機械的強度及び機械的強度の安定性を保持しながら、生理学的媒体中への繊維の溶解速度を増加させることである。後者の点は特に重要で扱いにくい、というのは、湿潤強度と生溶解性の2つの基準は、主として水性媒体中で溶解する能力に共に関連するので、多くの面で両立しないからである。
【0004】
湿潤強度に関する要請は、数多くの用途で、特に建築要素を製造するために使用されるグラスウールの分野で、特に、ミネラルウールが2枚の金属面材(例えば、鋼若しくはアルミニウム面材)間の絶縁芯を構成する、「サンドイッチ」パネルで、ますます厳しくなってきている。これらの建築要素は、屋根や屋根外装、壁外装や外部壁外装、壁、仕切り壁、建屋内部に位置する天井に主に使用される。それらが被り得る多様な機械的応力を考慮すると、非常に良好な圧縮強度、断烈強度、せん断強度特性が要求される。更に、周囲湿気に晒されるこれら製品の機械的強度及び特に断烈強度は、長期に亘りあまりにも顕著に低下しないことが重要であり、これは、本明細書の以降において、「湿潤環境下での耐老化性」として理解されるものである。これら種々の要請は、特に標準案prEN 14509「自己支持性2重外装金属対向絶縁サンドイッチパネル-工場生産品-仕様」で特定されている。
【0005】
湿潤環境下での耐老化性は、他の型の製品、特に、屋根テラスの絶縁と不透性若しくはファサードの外部絶縁のために使用されるミネラルウールパネルに対する厳格な要請でもある。
【0006】
本発明の目的は、生理学的媒体に溶解することができるミネラルウールの湿潤環境下での耐老化性を改善することである。
【0007】
この目的のために、本発明者は、樹脂酸またはその誘導体が湿潤環境下での老化後のミネラルウールの機械的特性を改善する利点を有することに気づいた。
【0008】
繊維の互いの接着を提供する役割を有する有機結合剤に対する添加剤としてトール油を添加することが知られていた。例えば、US 3,932,334は、シラン、ミネラルフィラー、粘度調節剤等を含む添加剤のリストに言及している。
【0009】
文献US 2,584,300自身は、主成分がトール油、カルボン酸エステル及びポリオールの混合物であるミネラルウールのための結合剤を記載している。
【0010】
「クラフト」プロセスによる紙の製造の副産物であるトール油は、その組成の殆ど半分は、脂肪酸と結合した樹脂酸を含む。
【0011】
文献SU 1470708は、ミネラルウールフレークとキシレン中でロジンにより変性されたホルムアルデヒドと有機溶剤とを含む混合物の射出と、絶縁被覆を硬化するために後者の二成分が次いで蒸発により除去される管のための絶縁被覆の製造を記載している。樹脂は、大部分は、樹脂酸を含んでいる。
【0012】
しかしながら、湿潤環境下での老化後の機械的特性を改善することに存するこれら樹脂酸或いはその誘導体の技術的作用は、先行文献には記載されていない。
【0013】
したがって、本発明の一つの目的は、湿潤環境下での老化後のミネラルウールの機械的特性を改善するために十分な量で、樹脂酸或いはその誘導体から選ばれる少なくとも一つの有機化合物を使用することである。
【0014】
しかしながら、本発明者は、樹脂酸或いはその誘導体を含む有機化合物は、特に、水中エマルジョンの形であると、製品による水の吸収を非常に実質的に増加するという欠点を有することを見出した。この現象は、湿潤環境下での耐老化性と低水分吸収は相関があり、水を少ししか吸収しない製品は本来的により良好な抵抗性を与えることができるということが、これまでは通常考えられていたことから、特に驚くべきことである。
【0015】
したがって、本発明の別の目的は、ミネラル繊維と有機結合材を含むミネラルウールを得るための方法であって、前記ミネラル繊維が形成され、前記有機結合材と少なくとも一つの樹脂酸或いはその誘導体とを含む化合物とが、前記ミネラル繊維の表面の少なくとも一部上に添加されるものであり、撥水剤も前記ミネラル繊維の表面の少なくとも一部上に添加されることを特徴とする方法である。
【0016】
樹脂酸は、ジテルペンモノカルボン酸、一般的には、一般式C2030の異性体である。その名称「樹脂」は、植物、特に樹脂性植物により合成されるという事実に由来する。それらは、樹脂に含まれ、外部からの攻撃(昆虫、きのこ、傷等)から植物を保護する役割を有する。
【0017】
樹脂酸は、その基本的化学構造に依存して、数種のカテゴリーに分けられる。したがって、次の型の構造が識別される:アビエタン、並んで結合する、6個の炭素原子を含む3個の環を有するピマラン/イソピマランか他にラブダンである。すべては、カルボン酸官能基とアビエタン構造の酸のための2個の共役二重結合を含む少なくとも1つの二重結合、一般的には2或いは3個の二重結合を有する。
【0018】
最も通常の樹脂酸は、
−アビエタンの群:アビエチン酸(CAS No 514-10-3、以下の式Aの構造)、ネオアビエチン酸(CAS No 471-77-2)、パルストリン酸(CAS No 1945-53-5)、レボピマル酸(CAS No 79-54-9)及びデヒドロアビエチン酸(CAS No 1740-19-8)並びに
−ピマランの群:ピマル酸(CAS No 127-27-5、以下の式Bの構造)、イソピマル酸(CAS No 5835-26-7)及びサンダラコピマル酸(CAS No 471-74-9)である。
【化1】

【0019】
樹脂酸は、松油樹脂から直接に得られうる。これは、樹脂酸が松樹脂の主な非揮発性成分であるからである。(テルペン、例えば、α-ピネンのような)その揮発性成分の蒸留による蒸発後、固形化した樹脂或いはロジンは、約90重量%の樹脂酸、主にアビエチン酸(40〜50%)から成る。
【0020】
樹脂酸は、紙製造の「クラフト」プロセスの副産物としても得られうる。それらは、さらにトール油若しくは松油として通常知られるものの、脂肪酸を有する部分である。種々の蒸留が、多少とも精製され、それゆえ多少とも樹脂酸リッチであるトール油を得ることを可能とする。ロジンは、トール油から得ることもでき、さらに大部分はピマラン型の酸を含む。
【0021】
それらを得るために使用される方法が何であれ、これら化合物の構造的類似性を考慮すると単離することが困難である樹脂酸混合物が、一般的に得られる。経済的理由で、本発明により添加される化合物は、好ましくは、樹脂酸の混合物である。したがって、少なくとも一つの樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む化合物は、トール油、ロジン、随意に、後に示される化学的変性物若しくはその混合物から有利に選ばれる。
【0022】
使用されるロジンは、トール油(「松油ロジン」)からか、松樹脂(「松テルペンロジン」)から直接か、他に、古い松の切り株(「ウッドロジン」)から製造され得る。本明細書の以降において、一般用語ロジンは、これら種々の型のロジンを含む。
【0023】
使用されるトール油は、好ましくは、蒸留され、脂肪酸、主にオレイン型酸をも含む。
【0024】
少なくとも一つの樹脂酸を含む化合物は、好ましくは、大部分のアビエチン酸を含む。
【0025】
本発明の文脈内で使用される樹脂酸誘導体は、好ましくは、樹脂酸の塩或いはエステル、樹脂酸とジエノフィル化合物とのジールス-アルダー付加生成物、樹脂酸二量体、異性体及び水添或いは不均化生成物若しくはそれらの混合物から選ばれる。
【0026】
これら誘導体の1つの好ましい入手源は、これら種々のサポニン化、エステル化、付加、異性化、水素化若しくは不均化反応を受けたロジンであり、「化学的に変性されたロジン」という一般用語により示されるだろう。本明細書の以降において、一般用語「樹脂酸」或いは「ロジン」は、特に断らなければ、全てのこれら誘導体をカバーするだろう。
【0027】
種々の対イオンが、樹脂酸のカルボキシル基中の水素に置き代わることができ、そのためにカルボン酸塩(ナトリウム、カリウム、亜鉛、カルシウム他にマグネシウム)を形成することができる。得られた樹脂酸塩は、樹脂「石鹸」として時々知られ、ロジンの中性化若しくはトール油の中性化によるロジン石鹸若しくはトール石鹸に属し得る。
【0028】
樹脂酸エステル或いはロジンエステルは、アルコール、通常は、例えば、グリセロール、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコールのようなポリオールによるカルボキシル基のエステル化により得られる。ポリオールが使用される場合には、エステル化反応は、1以上のアルコール基に作用してもよい。
【0029】
付加生成物は、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸若しくはフマル酸、アクリル酸或いはマレイン酸エステルのようなジエノフィル化合物とのジールス-アルダー反応により得られる。
【0030】
樹脂酸は、主に二量体、より例外的に三量体を形成するために、酸性条件下及び高温で共に反応し得る。
【0031】
ある種の条件下では、樹脂酸は、一般的に二重結合の立体配置の変性により異性化し得る。天然に存在しない樹脂酸は、そこで得られ得る。
【0032】
樹脂酸は、二重結合の数を減少する作用を有する水素化反応または1つの樹脂酸から他への水素原子の移動による不均化反応を受けることもできる。
【0033】
標準NF EN 1609の意味内での最終製品の水分吸収を制限するために、これら化合物に撥水剤を、あるいはサイジン組成物と共に添加することが重要である。これは、樹脂酸或いはその誘導体は、毛管吸収現象を介するこの水分吸収を増加することが明らかになったためである。すでに言及したように、この現象は、湿潤環境中での老化特性を改善する添加剤は、不可避的に水分吸収を減じる特性を有すると、今までは思われていたから、特に驚くべきことである。逆も明らかである、すなわち、製品による水分吸収の減少により、湿潤環境下での老化作用を制限することが可能であるとみなされもした。以下に記載される例により証明されるであろうように、決してそのようなものではなかった。
【0034】
用語「撥水剤」は、特に、標準NF EN 1609により推奨される試験により、或いはより一般的には製品の部分的或いは完全な浸漬後の水分吸収を測定することからなる任意の試験により、製品による毛管水分吸収を減じることを可能とする任意の添加剤を意味するものと、本発明の意味内で解される。
【0035】
撥水剤の添加は、樹脂酸を含む化合物がトール油であるときに、脂肪酸の存在が、繊維製品による水分吸収をかなり増加するようであることから、特に重要である。
【0036】
シリコーン型(ポリシロキサン、特に、ポリジメチルシロキサン或いはPDMS)若しくはパラフィンの撥水剤が、最良の結果を得ることが可能であることから、特に価値があるが、特にシリコーンが、価値がある。本発明により使用されることのできる他の撥水剤は、フッ素樹脂若しくはミネラル或いは有機油を含む。添加量は、ミネラルウールの重量に対する固形物の重量で、好ましくは、0.01%〜1%の間、特に、0.05%〜0.5%の間、更に0.2重量である。撥水剤は、好ましくは、水中エマルジョンの形で添加される。
【0037】
少なくとも一つの樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む化合物は、好ましくは、噴霧することにより、特に有機結合剤と共に添加され、前記化合物は、随意に添加工程以前に前記有機結合材と共に混合される。
【0038】
少なくとも一つの樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む化合物は、好ましくは、水中エマルジョンの形で添加されるか、または、主として有機溶媒中(好ましくは、完全な有機溶媒であるが、水を含むことも可能である)に溶解される。主な有機溶媒は、好ましくは、グリセロールのようなアルコールを含む。
【0039】
少なくとも一つの樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む化合物は、好ましくは、ミネラルウール重量に対して、0.1〜5%重量の固形分含有量で添加される。0.5〜4%の含有量が好ましい。
【0040】
有機結合剤は、好ましくは、フェノールホルムアルデヒド樹脂を含む。
【0041】
本発明の別の目的は、生理学的媒体中に溶解し、本発明の方法によりうることのできるミネラルウールである。
【0042】
本発明の範囲内の特に好ましい繊維組成物は、重量%で、下記の範囲の以下の構成成分を含む。
【0043】
SiO45〜75
Al0〜10
CaO 0〜15
MgO 0〜15
Na 12〜20
0〜10
0〜10
Fe0〜5
0〜3
シリカ(SiO)は、ガラスネットワーク形成成分である。量があまりにも多いと、適正にガラスを溶融し、均質化し、清澄化するガラス粘度よりも高くなりすぎ、一方量があまりにも少ないと、ガラスを熱的に不安定にし(冷却時あまりにも簡単に失透する)、化学的に不安定にする(あまりにも湿分攻撃を受けやすい)。シリカ含量は、有利には、50%若しくは55%若しくは60%以上で、70%以下である。
【0044】
アルミナ(Al)も、ガラスの粘度を顕著に増加することのできるネットワーク形成成分である。量があまりにも多いと、肺胞液での溶解性に悪い影響を与える。その量が少ないと、湿潤強度が大いに減少する。これら種々の理由で、アルミナ含量は、有利には、1%以上で、5%、特に3%以下である。
【0045】
アルカリ土類金属酸化物、主に石灰(CaO)とマグネシア(MgO)は、ガラスの高温粘度を減らすことができ、それゆえ、気体若しくは固体混入物をなくし、ガラス製造のための加工工程を容易にする。アルカリ金属酸化物に対して置換することによって、それらは、ガラスの湿潤強度を著しく改善するが、他方失透を助長し、繊維化工程を困難にする。カルシウム酸化物含量は、それゆえ有利には5%、特に7%以上で、10%以下である。マグネシアについては、その含量は、好ましくは10%、若しくは5%以下で、1%以上、更に、2%である。酸化バリウム(BaO)若しくは酸化ストロンチウム(SrO)のような他のアルカリ土類金属酸化物は、本発明によるミネラルウールに存在してもよい。しかしながら、それらの高コストを考慮すれば、有利には存在しない。(原材料の不可避的不純物に由来する痕跡分は別である。)
アルカリ金属酸化物、主に、酸化ナトリウム(NaO)及び酸化カリウム(KO)は、特にガラスの高温粘度を減らし、耐失透性を増加することに有益である。しかしながら、それらは、湿潤環境下での耐老化性には有害であることが判明した。酸化ナトリウム含量は、その結果、好ましくは18%以下で、14%以上である。酸化カリウム含量は、主に原材料の入手可能性に結びついた理由で、有利には、5%、若しくは2%、更に1%以下である。
【0046】
硼素酸化物(B)は、ガラスの粘度を下げ、繊維の生溶解性を改善するために重要である。更に、その存在は、ミネラルウールの絶縁特性を、特にその放射成分においてその熱伝導係数を下げることにより、改善する傾向にある。更に、その高コストと高温における揮発性、有害な放出物を生み出し、製造現場に煙処理プラントを設置する必要性を考慮すると、硼素酸化物含量は、好ましくは8%、特に6%、更に5%以下である。ある具体例では、零含量が好ましい。
【0047】
酸化鉄含量は、ガラス着色の役割のみならずガラス失透能力から、5%未満に制限される。高い鉄含量は、「ロックウール」型のミネラルウールに非常に耐高温性を付与することを可能にするが、内部遠心技術による繊維化を困難にし、ある場合には不可能にさえする。酸化鉄含量は、好ましくは、3%、更に1%以下である。
【0048】
燐酸化物(P)は、特に、生溶解性に対する有利な作用のために、有利には使用されてもよい。
【0049】
本発明による繊維は、また、3質量%若しくは2質量%また更に1質量%を一般的に超えない他の酸化物をも含んでもよい。これら酸化物の中には、この種工業に使用される天然若しくは人工バッチ材料(例えば、カレットと呼ばれるリサイクルガラス)から一般に生み出される不純物である(中でも最も普通なのは、TiO、MnO、BaO等)。ZrOのような不純物もまた炉建造に使用される耐火材料に由来する化学的成分のガラス中への部分的な溶解により一般に持ち込まれる。ある種の不純物は、また、ガラス精製に使用される化合物に由来し、特に、非常に一般的に使用される硫黄酸化物SOが挙げられる。BaO、SrOのようなアルカリ土類金属酸化物及び/又はLiOのようなアルカリ金属酸化物も、本発明による繊維に自発的に含まれてもよい。しかしながら、それらの高コストを考慮すれば、本発明による繊維はそれらを含まないことが好ましい。これら種々の酸化物は、それらの低含量のゆえに、本発明による繊維が、提起された問題に答える方法を変え得るような如何なる特別な機能を、如何なる場合にも果たさない。
【0050】
本発明の別の主題は、本発明による少なくとも1つのミネラルウールを含む熱及び/又は音響絶縁製品である。特に、ミネラルウールが2枚の金属(例えば、鋼或いはアルミニウム)面材間の絶縁芯を構成する、特に「サンドイッチ」型建築要素であり、これらは場合によっては内壁、外壁、屋根若しくは天井の建築に使用される自己支持型の要素である。この型の用途のためには、本発明による絶縁製品の密度は、好ましくは40〜150kg/m、特に、60〜80kg/mである。(この密度は、ミネラルウールだけを考慮している。)
それらは、以下の用途の絶縁製品でもあり得る。
【0051】
−ファサードの外部絶縁、特に、出願EP 1283196に記載された製品のような60〜100kg/mの間の密度を有する製品、
−平屋根用の絶縁、例えば、屋根テラス、特に鋼製トレー型のレンガ或いは金属構造物、特に、特許出願EP 109879、EP 2848582若しくはEP 1620367に記載された製品のような密度が60kg/m〜200kg/mの間の、好ましくは、80kg/m〜150kg/mの間であり、特にアスファルト含浸ガラスベールに基づく面材で被覆された製品。
【0052】
サンドイッチ型要素の例にしたがって、40kg/mより大な高密度を有することから「重量」製品として知られるこの型の製品は、場合により、高い断烈強度、せん断強度或いは圧縮強度をも有さねばならない。
【0053】
本発明により与えられる利点は、本発明を制限することなく、本発明を実証する以下の例により、より良く評価されるであろう。
【0054】
化学的組成(重量%で表された)が表1で表される溶融ガラス塊は、主エネルギー源として、ガラス浴に浸された電極を使用してガラス化可能なバッチ材料を溶融する方法により得られた。
【表1】

【0055】
この溶融ガラス塊は、その後溶融ガラスを受けるチャンバーを形成するバスケットと多数の穴により貫通された周辺帯金を含むスピナーを使って、内部遠心法により繊維に変換された。スピナーが垂直軸の周りを回転されたために、溶融ガラスは、遠心力の作用のもと排出され、穴から逃れた材料は繊維化ガス流の助けにより単繊維に細められた。
【0056】
サイズ剤噴霧リングは、スピナーの下に置かれ、形成されたばかりのグラスウール上に、均一にサイズ組成物(有機結合剤)を散布した。サイジング組成物は、繊維に噴霧される前に水で希釈された主にフェノール-ホルムアルデヒド樹脂及び尿素樹脂をベースとしている。他の型のサイジング組成物、特にホルムアルデヒドを含まないようなものも単独若しくは混合物で、使用し得る。それらは、例えば、
-グリシジルエーテル型及び非揮発性アミン硬化剤からなるエポキシ樹脂系組成物(出願EP-A-0369848記載)で、イミダゾール、イミダゾリン及びそれらの混合物から選択される促進剤をも含んでもよい。;
-多塩基性カルボン酸及びポリオールを含む組成物、好ましくは、燐含有有機酸型のアルカリ金属塩触媒で結合されたもの(出願EP-A-0990727記載);
-カルボン酸官能基及び/又はβ-ヒドロキシアルキルアミド官能基を組み込んだ1以上の化合物を含む組成物、出願WO-A-93/36368記載);
-カルボン酸及びアルカノールアミン若しくはカルボン酸及びアルカノールアミンから前以って合成された樹脂及びカルボン酸基を含むポリマーを組み込んだ組成物(出願EP-A-1164163記載);
-無水物とアミンを、無水物がアミン中に実質的に溶解し、及び/又はそれと反応するまで反応条件下混合すること、その後水を加え反応を終了させることからなる2段階で調整されるサイジング組成物(出願EP-A-1170265記載);
-第1の無水物を有するアミンとそれとは異なる第2の無水物とのポリマーを含まない反応製品を含む樹脂を含む組成物(出願EP-A-1086932記載);
-少なくとも1つのポリカルボン酸と少なくとも1つのポリアミンを含む組成物;
-カルボン酸と米国出願2005/038193記載のようなアルコール官能基を含むモノマーとの共重合体を含む組成物;
-例えば、特許WO2005/87837若しくはUS6706808記載のようなポリオールとポリ酸若しくはマレイン酸のようなポリ酸無水物を含む組成物
であってよい。
【0057】
アミノプラスト型樹脂(メラミン-ホルムアルデヒド若しくはウレア-ホルムアルデヒド)も、本発明の範囲内で使用されてもよい。
【0058】
少なくとも一つの樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む化合物は、サイジング組成物(有機結合剤)に加えられてもよいが、独立して、第2の噴霧リングを使って噴霧されてもよい。例に使用される種々の燐化合物は、下記のとおりであった。
【0059】
-DRTにより、夫々、Dermulsene RA405(化合物C1、化学変性樹脂)、HBR70(化合物C2、ロジンと石油樹脂に基づく)、DEG(化合物C3、ロジンエステルとポリエチレングリコールに基づく)、222(化合物C4、ロジンエステルとテルペン樹脂に基づく)、RE802(化合物C5、ロジンエステルに基づく)の名で、販売された樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む水性エマルジョン
-脂肪酸と、DRTによりBD2(化合物C6)の名称で販売されたトール油の蒸留により得られた樹脂酸とを含む水性エマルジョン。
【0060】
本発明による例では、撥水剤、特に
−ダウ-コーニングにより販売されたDC1581型のシリコーン(ポリジメチルシロキサンの水性エマルジョン)若しくは
−クラリアントにより商標ペコフォブ(Pekophob)P60の元に販売されたパラフィン(水性エマルジョンの形の)
が添加される。
【0061】
このようにサイズされたミネラルウールは、ミネラルウールをコンベヤ表面上でフェルト若しくは板状に保持することのできる内部吸入箱を装備されたベルトコンベア上に集められた。コンベヤは、その後、オーブンを通過し、そこでサイズ剤樹脂の重縮合が起こった。試験に依存して、製造された絶縁製品は、密度約80kg/m3の(表2)若しくは65kg/m3(表3)のパネルであった。
【0062】
そのようなミネラルウールを含むサンドイッチパネルは、標準案prEN 14509「自己支持性2重外装金属仕上絶縁サンドイッチパネル-工場生産品-仕様」に記載された湿潤環境での老化試験後に、引裂強度試験を受けた。サンドイッチパネルは、65℃で100%の相対湿度の環境の部屋に28日間置かれ、老化後の引裂強度損失が測定された。標準の文脈では、60%以下の損失は満足するものとみなされる。表2と表3は、引裂強度損失(パーセント)の点で表された結果を記載する。
【0063】
製造されたミネラルウールが、標準NF EN 1609に記載されたような、部分的な浸漬試験をも受けた。この試験は、建築作業中の24時間に雨により引き起こされる水吸収をシミュレートしている。表で「水吸収」として知られる水分吸収は、kg/m2で表現されている。1kg/m2以下の値が満足するものとみなされる。
【0064】
使用される樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む化合物の性質に加えて、そのミネラルウール重量に対する固形分の重量含有量及び適切であれば、更に固形物しての撥水剤の性質と重量含有量が、これらの表で示される。
【表2】

【表3】

【0065】
したがって、樹脂酸或いはそのような酸の誘導体の使用は、湿潤環境下でのミネラルウールの耐老化性をかなり改善し、特に「サンドイッチ」型応用に対して、標準案pr EN 14509の要請を、多くの場合満たすことが可能となる。
【0066】
しかしながら、比較例1と例2、4及び5との比較は、樹脂酸或いは樹脂酸誘導体の添加が、製品による水分吸収を、少なくとも5倍と、かなり増加することを示す。
【0067】
撥水剤、特に、シリコーンの添加は、1kg/m以下に近い水分吸収値に戻すことを可能とする。
【0068】
これらの2つの結果は、2つの特性、一方での水分吸収性と他方での湿潤環境下での耐老化性が全く相互に関連しないことをしめすことから、特に驚くべきことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミネラル繊維と有機結合材を含むミネラルウールの製造方法であって、前記ミネラル繊維が形成され、前記有機結合材と少なくとも一つの樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む化合物が、前記ミネラル繊維の表面の少なくとも一部上に添加されるものであり、撥水剤も前記ミネラル繊維の表面の少なくとも一部上に添加されることを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも一つの樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む化合物は、噴霧することにより添加される請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一つの樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む化合物が、有機結合材と共に添加され、前記化合物が、随意に添加工程以前に前記有機結合材と共に混合される請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む化合物が、水中エマルジョンの形で添加されるか、または、主として有機溶媒中、特に、グリセロールのようなアルコールを含む溶媒中に溶解される請求項1〜3何れか1項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む化合物が、トール油、ロジン或いは化学変性ロジン若しくはそれらの混合物から選ばれる請求項1〜4何れか1項記載の方法。
【請求項6】
添加される化合物が、樹脂酸の塩或いはエステル、樹脂酸とジエノフィル化合物とのジールス-アルダー付加生成物、樹脂酸二量体、異性体及び水添或いは不均化生成物から選ばれる少なくとも一つの樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む請求項1〜5何れか1項記載の方法。
【請求項7】
撥水剤が、シリコーン、パラフィン、フッ素樹脂及びミネラル或いは有機油から選ばれる請求項1〜6何れか1項記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一つの樹脂酸或いは樹脂酸誘導体を含む化合物が、ミネラルウール重量に対して0.1〜5%の重量の固形分含有量で添加される請求項1〜7何れか1項記載の方法。
【請求項9】
有機結合材が、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂を含むな請求項1〜8何れか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜8何れか1項記載の方法により得ることのできるミネラルウール。
【請求項11】
繊維が、重量%で、
SiO35〜75
Al0〜12
CaO 0〜30
MgO 0〜20
Na 0〜20
0〜10
0〜10
Fe0〜5
0〜3
の構成成分を含む化学組成を有する請求項1〜10何れか1項記載の方法のミネラルウール。
【請求項12】
請求項1〜11項の何れか1項記載の少なくとも一つのミネラルウールを含む熱及び/又は音響絶縁製品。
【請求項13】
60kg/m〜100kg/mの密度を有するファサードの外部絶縁用、若しくは60kg/m〜200kg/m、特に、80kg/m〜150kg/mの密度を有する平屋根の絶縁用である請求項1〜12項の何れか1項記載の絶縁製品。
【請求項14】
2個の金属面材間の絶縁芯としての請求項1〜13項の何れか1項記載のミネラルウールを含む「サンドイッチ」型建築要素。

【公表番号】特表2009−542934(P2009−542934A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518932(P2009−518932)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051607
【国際公開番号】WO2008/003913
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(501085706)サン−ゴバン・イソベール (46)
【Fターム(参考)】