説明

ミラー取付装置

【課題】構造がシンプルで、かつ工具を用いることなくミラーステーの回動および固定ができるミラー取付装置を提供する。
【解決手段】ミラーを一側部に嵌着したミラーステー22の反対側の端部に、ミラーステー22と同軸の円筒形に形成したドラム31を一体化する。このドラム31の下端面および上端面に、摩擦板としての一方の金属メッシュ製ワッシャ34および他方の金属メッシュ製ワッシャ35をそれぞれ当接する。これらの金属メッシュ製ワッシャ34,35を、3本の6角穴付のねじ36により締着した下方のケース部材37と上方のケース部材38とによって、ドラム31の下端面および上端面に挟圧する。これらのケース部材37,38をL形の取付板54によって、建設機械のキャブを形成するフレームに取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーステーを介しミラーを取付けるミラー取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9に示されるように、油圧ショベルなどの建設機械は、下部走行体11上に上部旋回体12が旋回可能に設けられ、この上部旋回体12にキャブ13および作業装置14などが搭載され、キャブ13のフロント側のフレーム上部には、ミラー15が取付けられている。
【0003】
このような建設機械をトレーラで運搬する際に、キャブ13に取付けられたミラー15がキャブ13の側方へ突出したままであると、そのミラー15が障害物と接触しやすく、接触したミラー15は壊れるおそれがある。
【0004】
図10に示されるように、ミラー15を取付けるミラーステー16は、その基端に一体化されたボス部17を取付ボルト18によって取付板19に固定され、この取付板19を介してキャブ13のフレーム13fに固定されているので、運搬時は、ミラーステー16を固定する取付ボルト18を工具で緩め、ミラーステー16を後側に動かして、ミラー15をキャブ13の内側に収納する作業をしているが、工具による作業は煩雑である。
【0005】
一方、ばねで付勢されたラッチ機構により、ハンドレールや、ミラーを可動式にしたステー取付構造もあるが、構造が複雑になる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−285578号公報(第3−4頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、ミラーステー16を固定する取付ボルト18を工具で緩め、ミラー15をキャブ13の内側に収納するものは、作業が煩雑であり、また、ばねで付勢されたラッチ機構によりステーを可動式にした取付構造は、構造が複雑になる問題がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、構造がシンプルで、かつ工具を用いることなくミラーステーの回動および固定ができるミラー取付装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、ミラーを一側部に嵌着したミラーステーと、このミラーステーの反対側の端部に一体化されミラーステーと同軸の円筒形に形成されたドラムと、このドラムの端面に当接された摩擦板と、この摩擦板をドラムに挟圧するケース部材と、このケース部材を取付対象部に取付ける取付部材とを具備したミラー取付装置であり、そして、ミラーステーに一体化されたドラムとケース部材との間にある摩擦板によって、ドラムに摩擦抵抗力が作用するので、この摩擦抵抗力を上回るトルクをミラーステーに加えることで、工具を用いることなく、ミラーステーを任意の角度まで回動することが可能であり、さらに、摩擦板の摺動抵抗力により、工具を用いることなく、ミラーステーを任意の位置で固定することが可能であり、また、ケース部材により摩擦板をドラムに挟圧することで所定の摩擦抵抗力を得る構造であるから、構造がシンプルである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のミラー取付装置における摩擦板を、金属メッシュ製ワッシャとしたものであり、そして、金属メッシュ製ワッシャにより安定した摩擦抵抗力を確保する。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のミラー取付装置における摩擦板が、ドラムの一端面および他端面にそれぞれ当接された一方の摩擦板と他方の摩擦板とを備え、ケース部材は、ドラム、一方の摩擦板および他方の摩擦板を介して2分割され相互に締着された一方のケース部材と他方のケース部材とを備えたものであり、そして、ミラーステーに一体化されたドラムを一方の摩擦板と他方の摩擦板とで挟み、これらのドラム、一方の摩擦板および他方の摩擦板を、相互に締着された一方のケース部材と他方のケース部材とで挟圧したので、ケース部材間の締着力により、ドラムに作用する摩擦板の摩擦抵抗力を容易に制御し、ミラーステーの回動抵抗トルクを容易に制御することが可能となる。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のミラー取付装置において、ドラムの中心から等距離かつ等ピッチで配置され一方のケース部材と他方のケース部材とを締着する3本のねじを具備したものであり、そして、3本のねじにより一方のケース部材と他方のケース部材とをバランス良く締着して、摩擦板に偏りのない挟圧力を均等に作用させることで、ミラーステーの全回動範囲での回動抵抗トルクの安定性を確保する。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか記載のミラー取付装置における取付対象部は、建設機械のキャブを形成するフレームであり、そして、建設機械を運搬するときは、キャブのフレームに取付けられたミラーステーをキャブ内側に回動して、ミラーをキャブ内側に収納する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、ミラーステーに一体化されたドラムとケース部材との間にある摩擦板によって、ドラムに摩擦抵抗力が作用するので、この摩擦抵抗力を上回るトルクをミラーステーに加えることで、工具を用いることなく、ミラーステーを任意の角度まで回動することができ、さらに、摩擦板の摺動抵抗力により、工具を用いることなく、ミラーステーを任意の位置で固定することができ、また、ケース部材により摩擦板をドラムに挟圧することで所定の摩擦抵抗力を得る構造であるから、構造をシンプルにできる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、金属メッシュ製ワッシャにより安定した摩擦抵抗力を確保できる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、ミラーステーに一体化されたドラムを一方の摩擦板と他方の摩擦板とで挟み、これらのドラム、一方の摩擦板および他方の摩擦板を、相互に締着された一方のケース部材と他方のケース部材とで挟圧したので、ケース部材間の締着力により、ドラムに作用する摩擦板の摩擦抵抗力を容易に制御でき、ミラーステーの回動抵抗トルクを容易に制御することができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、3本のねじにより一方のケース部材と他方のケース部材とをバランス良く締着して、摩擦板に偏りのない挟圧力を均等に作用させることで、ミラーステーの全回動範囲での回動抵抗トルクの安定性を確保できる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、建設機械を運搬するときは、キャブのフレームに取付けられたミラーステーをキャブ内側に回動して、ミラーをキャブ内側に収納できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を、図1乃至図8に示された一実施の形態を参照しながら、詳細に説明する。
【0019】
図7および図8は、ミラー取付装置21を示し、L字形に成形されたミラーステー22の一側部にミラー23が、このミラー23の背面部に設けられたミラー可動部24および挟持型の取付具25を介して嵌着され、また、ミラーステー22の反対側の端部には、ステー可動機構部26が設けられている。
【0020】
図1および図2に示されるように、このステー可動機構部26は、ミラーステー22の端部に、ミラーステー22と同軸の円筒形に形成されたドラム31が、このドラム31の上面に形成された凹部32内の溶接付部33により一体化され、このドラム31の下端面および上端面に、摩擦板としての一方の金属メッシュ製ワッシャ34および他方の金属メッシュ製ワッシャ35がそれぞれ当接され、これらの金属メッシュ製ワッシャ34,35が、ドラム31、一方の金属メッシュ製ワッシャ34および他方の金属メッシュ製ワッシャ35を介して2分割され3本の6角穴付のねじ36により相互に締着された下方のケース部材37と上方のケース部材38とによって、ドラム31の下端面および上端面に挟圧されている。
【0021】
上方のケース部材38は、ケース本体41の中央部にミラーステー22を挿入するステー挿入穴42が設けられ、ケース本体41の3つの角部に凹溝43とねじ挿入穴44とが設けられているので、3本のねじ36は、これらのねじ挿入穴44より挿入して、下方のケース部材37のケース本体45に設けられたねじ穴46に螺合する。このとき、ねじ36の頭部は凹溝43内に収納されている。
【0022】
下方のケース部材37は、ケース本体45から取付固定部51が一体に突設され、この取付固定部51にボルト挿入穴52が穿設され、さらに、取付固定部51からケース本体45にわたる下面に、図5に示されるようにU形の取付板嵌着溝53が成形されている。
【0023】
そして、この取付板嵌着溝53に、このケース部材37を取付対象部としての建設機械のキャブを形成するフレーム(図10における13f)に取付ける取付部材としてのL形の取付板54が嵌着され、ケース部材37のボルト挿入穴52と、この取付板54の対応する位置に穿設されたボルト挿入穴55とに、ワッシャ56を通してボルト57を挿入し、このボルト57にナット58を螺合させて締着することで、取付板54を固定する。この取付板54には、取付穴59が設けられているので、この取付穴59に挿入した取付ボルトにより、建設機械のキャブを形成するフレーム(図10における13f)に取付板54を固定する。
【0024】
図3および図5に示されるように、下方のケース部材37のケース本体45および上方のケース部材38は、ほぼ3角形状に形成され、下方のケース部材37と上方のケース部材38とを締着する3本のねじ36は、ドラム31の中心から等距離かつ等ピッチで配置されている。
【0025】
図4および図5に示されるように、下方のケース部材37のU形の取付板嵌着溝53に嵌着され、ボルト57およびナット58により固定された取付板54の下面には、補強金具61が当接され、2本の6角穴付のねじ62により下方のケース部材37の下面に固定されている。これらの6角穴付のねじ62は、3本のねじ36が螺合するねじ穴46のうち、2つのねじ穴46の下半分を共用して螺合する。
【0026】
図6に示されるように、金属メッシュ製ワッシャ34,35は、例えば青銅などの金属メッシュ63の摺動面を4フッ化エチレンなどの樹脂層でコーティングした複合材(大同メタル工業株式会社製「ダイメッシュ」)を円環状に成形した薄肉のドライワッシャであり、この金属メッシュ製ワッシャ34,35は、薄いもので摺動抵抗が大きいものであれば、他のものでも良い。
【0027】
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0028】
ミラーステー22のドラム31上に上方の金属メッシュ製ワッシャ35を嵌入するとともに、上方のケース部材38を嵌入し、下方のケース部材37のケース本体45内に下方の金属メッシュ製ワッシャ34を嵌着した上で、下方のケース部材37のケース本体45に上方のケース部材38を被嵌するとともにドラム31を嵌着し、そして、上方のケース部材38に挿入した3本のねじ36を下方のケース部材37のねじ穴46に螺入し、これらのねじ36の締着力を調整することにより、ドラム31に対する金属メッシュ製ワッシャ34,35の摩擦抵抗力を調整し、ミラーステー22の回動力または可倒力を制御する。
【0029】
例えば、ミラー23の取付具25で得られるほぼ6〜7Nm程度の回動抵抗トルクが、このステー可動機構部26でも得られるようにすると良い。
【0030】
取付板54は、下方のケース部材37の取付板嵌着溝53に嵌着した上で、ボルト57およびナット58により固定し、補強金具61により取付板54を押えることで固定を確実なものにする。そして、この取付板54を介して、ステー可動機構部26を、建設機械のキャブを形成するフレーム(図10における13f)に取付ける。
【0031】
建設機械を運搬するときは、このキャブのフレームに取付けられたミラーステー22をキャブ内側に回動して、ミラー23をキャブ内側に収納する。
【0032】
このように、ミラーステー22に一体化されたドラム31とケース部材37,38との間にある金属メッシュ製ワッシャ34,35によって、ドラム31に摩擦抵抗力が作用するので、この摩擦抵抗力を上回る回動トルクをミラーステー22に加えることで、工具を用いることなく、ミラーステー22を任意の角度まで回動することができ、さらに、金属メッシュ製ワッシャ34,35の摺動抵抗力により、工具を用いることなく、ミラーステー22を任意の位置で固定することができる。
【0033】
また、ケース部材37,38により金属メッシュ製ワッシャ34,35をドラム31に挟圧することで所定の摩擦抵抗力を得る構造であるから、構造をシンプルにできる。さらに、金属メッシュ製ワッシャ34,35により安定した摩擦抵抗力を確保できる。
【0034】
ミラーステー22に一体化されたドラム31を一方の金属メッシュ製ワッシャ34と他方の金属メッシュ製ワッシャ35とで挟み、これらのドラム31、一方の金属メッシュ製ワッシャ34および他方の金属メッシュ製ワッシャ35を、相互に締着された下方のケース部材37と上方のケース部材38とで挟圧したので、これらのケース部材37,38間の締着力により、ドラム31に作用する金属メッシュ製ワッシャ34,35の摩擦抵抗力を容易に制御でき、ミラーステー22の回動抵抗トルクを容易に制御することができる。
【0035】
その際、3本のねじ36の締め付け具合により摩擦抵抗力を容易に調整できる。さらに、3本のねじ36により下方のケース部材37と上方のケース部材38とをバランス良く締着して、金属メッシュ製ワッシャ34,35に偏りのない挟圧力を均等に作用させることができ、ミラーステー22の全回動範囲での回動抵抗トルクの安定性を確保できる。
【0036】
本発明に係るミラー取付装置は、油圧ショベルのキャブだけでなく、他の建設機械のキャブにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るミラー取付装置の一実施の形態を示す分解斜視図である。
【図2】同上取付装置の一部の断面図である。
【図3】同上取付装置の平面図である。
【図4】同上取付装置の正面図である。
【図5】同上取付装置の底面図である。
【図6】同上取付装置の摩擦板としての金属メッシュ製ワッシャの拡大図である。
【図7】同上取付装置をキャブ内側から見た斜視図である。
【図8】同上取付装置を反対側から見た斜視図である。
【図9】油圧ショベルの側面図である。
【図10】従来のミラー取付状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
13f 取付対象部としてのキャブを形成するフレーム
22 ミラーステー
23 ミラー
31 ドラム
34,35 摩擦板としての金属メッシュ製ワッシャ
36 ねじ
37,38 ケース部材
54 取付部材としての取付板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーを一側部に嵌着したミラーステーと、
このミラーステーの反対側の端部に一体化されミラーステーと同軸の円筒形に形成されたドラムと、
このドラムの端面に当接された摩擦板と、
この摩擦板をドラムに挟圧するケース部材と、
このケース部材を取付対象部に取付ける取付部材と
を具備したことを特徴とするミラー取付装置。
【請求項2】
摩擦板は、金属メッシュ製ワッシャである
ことを特徴とする請求項1記載のミラー取付装置。
【請求項3】
摩擦板は、ドラムの一端面および他端面にそれぞれ当接された一方の摩擦板と他方の摩擦板とを備え、
ケース部材は、ドラム、一方の摩擦板および他方の摩擦板を介して2分割され相互に締着された一方のケース部材と他方のケース部材とを備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載のミラー取付装置。
【請求項4】
ドラムの中心から等距離かつ等ピッチで配置され一方のケース部材と他方のケース部材とを締着する3本のねじ
を具備したことを特徴とする請求項3記載のミラー取付装置。
【請求項5】
取付対象部は、建設機械のキャブを形成するフレームである
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載のミラー取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−182088(P2006−182088A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375424(P2004−375424)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【出願人】(391020355)大東プレス工業株式会社 (7)
【出願人】(502279928)株式会社トモエシステム (3)
【Fターム(参考)】