説明

メタクリル樹脂多層板の製造方法

【課題】膨潤層の発生や着色成分のにじみを良好に抑制するメタクリル樹脂多層板の製造方法を提供すること。
【解決手段】内部の少なくとも一方の面にメタクリル樹脂板が設置されたセルの内に、メタクリル酸メチルを主体とする単量体、メタクリル酸メチルを主体とする重合体及び着色成分を含有するシロップを注液した後、重合反応を行うメタクリル樹脂多層板の製造方法であって、前記シロップにおける前記重合体の含有量が、該シロップ総量100重量%を基準として20〜25重量%であり、かつ、25℃における前記シロップの粘度が100〜400cpsであることを特徴とするメタクリル樹脂多層板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクリル樹脂多層板の製造方法に関する。メタクリル樹脂多層板は、例えば、照明材料、表示材料、建築材料等に利用される。
【背景技術】
【0002】
メタクリル樹脂多層板の製造方法として、内部の少なくとも一方の面にメタクリル樹脂板が設置されたセルの内に、メタクリル酸メチルを主体とする単量体及びメタクリル酸メチルを主体とする重合体を含有するシロップを注液した後、重合反応を行うメタクリル樹脂多層板の製造方法であって、該シロップ中の前記重合体の含有量を5重量%(特許文献1)、15重量%(特許文献2)とする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−344359号公報
【特許文献2】特開2008−93972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法では、着色成分を配合したシロップを使用する場合に、メタクリル樹脂多層板の層間に樹脂が膨潤した中間層(以下、膨潤層ということがある。)が生じ、この膨潤層に着色成分がにじみ出ることがあり、メタクリル樹脂多層板の外観を損ねることがあった。そこで、本発明の目的は、前述した膨潤層の発生や着色成分のにじみを良好に抑制するメタクリル樹脂多層板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、内部の少なくとも一方の面にメタクリル樹脂板が設置されたセルの内に、メタクリル酸メチルを主体とする単量体、メタクリル酸メチルを主体とする重合体及び着色成分を含有するシロップを注液した後、重合反応を行うメタクリル樹脂多層板の製造方法であって、前記シロップにおける前記重合体の含有量が、該シロップ総量100重量%を基準として20〜25重量%であり、かつ、25℃における前記シロップの粘度が100〜400cpsであることを特徴とするメタクリル樹脂多層板の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、膨潤層の発生や着色成分のにじみが良好に抑制されたメタクリル樹脂多層板を製造することができる。該メタクリル樹脂多層板は、照明材料、表示材料、建築材料等に利用することができる。特に、セルの内部に透明なメタクリル樹脂板を設置してメタクリル樹脂多層板を製造すると、該多層板は透明層と着色層とを備える高級感に優れたものとなるため、商品のショーケースや高級宿泊施設の浴室等の内装として好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明では、まず、内部の少なくとも一方の面にメタクリル樹脂板が設置されたセルを準備し、次いで該セル内にメタクリル酸メチルを主体とする単量体、メタクリル酸メチルを主体とする重合体及び着色成分を含有するシロップを注液し、次いで重合反応を行う。セルの内部に設置するメタクリル樹脂板は、メタクリル酸メチルの単独重合体から構成されるものであってもよいし、メタクリル酸メチル50質量%以上とこれ以外の単量体50質量%以下との共重合体から構成されるものであってもよい。
【0008】
前記メタクリル樹脂板が共重合体から構成される場合、その単量体組成は、好ましくはメタクリル酸メチルが65質量%以上、これ以外の単量体が35質量%以下であり、より好ましくはメタクリル酸メチルが80質量%以上、これ以外の単量体が20質量%以下である。また、前記メタクリル樹脂板が共重合体から構成される場合、メタクリル酸メチル以外の単量体としては、例えば、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニルのようなアクリル酸エステル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニルのようなメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、スチレン、シクロヘキシルマレイミド、アクリロニトリル等が挙げられ、必要に応じてこれらの2種以上を用いることもできる。
【0009】
前記メタクリル樹脂板には、必要に応じて、光拡散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、染料、顔料等の添加剤を含有させることができる。
【0010】
前記メタクリル樹脂板の厚みは、通常0.1〜20mm程度であり、フィルム状の薄肉のものから、厚肉のものまで、適宜選択して使用できる。
【0011】
セルの内部に透明なメタクリル樹脂板を設置して製造されるメタクリル樹脂多層板は、透明層と着色層とを備える高級感に優れたものとなるため、使用するメタクリル樹脂板は、透明なものが好ましい。
【0012】
前述したメタクリル樹脂板は所定のセルの内部に設置される。メタクリル樹脂板をセルの内部の片面に設置する場合は、該樹脂板とガラス板やステンレス板等の基板とを、スペーサーを介して間隔を空けて配置することにより、セルを構成すればよい。また、メタクリル樹脂板をセルの内部の両面に設置する場合は、該樹脂板同士を、スペーサーを介して間隔を空けて配置することにより、セルを構成すればよい。
【0013】
前記メタクリル樹脂板と接する基板の表面は鏡面よりもむしろ微細な凹凸がある方が該樹脂板と基板との間に空気溜りの発生を防止する点で好ましい。この微細な凹凸の程度は、表面の十点平均粗さ(Rz)が1〜100μm、好ましくは、5〜50μmである。このRzが1μm未満だと、該樹脂板と該基板の空隙の空気が抜け難く好ましくない。また100μmを超えて粗いと、その凹凸が転写される恐れがあるため好ましくない。
【0014】
セル内の空間の厚み、すなわちシロップの重合により形成されるメタクリル樹脂層の厚みは、通常0.1〜20mm程度である。なお、メタクリル樹脂板をセルの内部の両面に設置する場合、該樹脂板同士は、組成や厚みが互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、このメタクリル樹脂板とシロップの重合により形成されるメタクリル樹脂層とは、組成や厚みが互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0015】
尚、得られるメタクリル樹脂多層板の外観からは、メタクリル樹脂板の片面にシロップの重合によりメタクリル樹脂層が形成されてなるものが好ましく、従って、メタクリル樹脂板をセル内の片面に設置するのが好ましい。
【0016】
上記の如く構成されるセルに、メタクリル酸メチルを主体とする単量体、メタクリル酸メチルを主体とする重合体及び着色成分を含有するシロップを注液した後、重合反応を行う。このシロップは、(ア)メタクリル酸メチルを主体とする単量体、メタクリル酸メチルを主体とする重合体及び着色成分をそれぞれ混合することにより調製してもよいし、(イ)メタクリル酸メチルを主体とする単量体を部分重合させることにより得られる部分重合体に着色成分を添加することにより調製してもよいし、(ウ)さらに前記部分重合体をメタクリル酸メチルを主体とする単量体及び/又はメタクリル酸メチルを主体とする重合体と混合した後、着色成分を添加することにより調製してもよい。
【0017】
なお、メタクリル酸メチルを主体とする単量体に含まれうるメタクリル酸メチル以外の単量体の例は、また、メタクリル酸メチルを主体とする重合体に単量体単位として含まれうるメタクリル酸メチル以外の単量体の例は、先にメタクリル樹脂板を構成するメタクリル樹脂が共重合体である場合において、メタクリル酸メチル以外の単量体の例として挙げたものと同様である。
【0018】
メタクリル酸メチルを主体とする単量体を部分重合させる場合には、通常、該単量体に重合開始剤を添加して重合させる。この重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(4−メチルクモール)、1、1’−アゾビス(4−イソプロピルクモール)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)のようなアゾ系開始剤、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシアセテートのような過酸化物系開始剤等が挙げられる。この重合開始剤の使用量は、メタクリル酸メチルを主体とする単量体に対して、通常5〜100質量ppm程度である。また、部分重合の温度は、単量体や重合開始剤の種類や量等により適宜調整されるが、通常60〜90℃程度である。
【0019】
本発明では、前記シロップにおける前記重合体の含有量(シロップ濃度)が、該シロップ総量100重量%を基準として20〜25重量%であること、及び、25℃における前記シロップの粘度が100〜400cpsであることを特徴とする。このように、所定の粘度を有する所定濃度のシロップを採用することにより、メタクリル樹脂多層板の層間に樹脂が膨潤した中間層(膨潤層)の発生や該膨潤層への着色成分のにじみを良好に抑制することができ、外観に優れたメタクリル樹脂多層板を製造することができる。前記シロップにおける前記重合体の含有量が該シロップ総量100重量%を基準として20重量%未満であったり、25℃における前記シロップの粘度が100cps未満であったりすると、前記膨潤層が発生し、該層に着色成分がにじみも生じてしまう。一方、前記シロップにおける前記重合体の含有量が該シロップ総量100重量%を基準として25重量%を超えたり、25℃における前記シロップの粘度が400cpsを超えたりすると、該シロップのセルへの注液が困難となる。
【0020】
前記シロップに含有される重合体の分子量は、前記シロップの粘度範囲を満たすよう適宜調整されるが、該重合体の粘度平均分子量が1.0×10〜2.0×10(g/mol)であるのが好ましい。なお、かかる粘度平均分子量は、いわゆる粘度法により測定することができる。
【0021】
前記シロップに含有される着色成分としては、メタクリル樹脂層中に均一に分散してこれを着色する従来公知の染料や顔料が挙げられる。
【0022】
染料としては、アントラキノン系化合物、フタロシアニン系化合物、ペリノン系化合物、ジオキサジン系化合物、ベンゾフラン系化合物、チオフェンモノアゾ系化合物、シアニン系化合物、ジインモニウム系化合物等が挙げられる。アントラキノン系化合物の具体例としては、三菱化学社製の「ダイアレジン(登録商標)ブラックB」、「ダイアレジン(登録商標)ブルーN」、「ダイアレジン(登録商標)レッドK」、住化ケムテックス社製の「スミプラスト(登録商標)ブラックH3B」、「スミプラスト(登録商標)レッドHFG」、「スミプラスト(登録商標)バイオレットRR」、有本化学工業社製の「プラストレッド8320」、ランクセス社製の「マクロレックス(登録商標)レッド5BFG」、「マクロレックス(登録商標)バイオレット3RFG」、「マクロレックス(登録商標)グリーン5BFG」等が挙げられ、フタロシアニン系化合物の具体例としては、大日本インキ化学工業社製の「ファンストゲンブルーRRFG」、BASFジャパン社製の「ヘリオゲングリーンK−8730」等が挙げられ、ペリノン系化合物の具体例としては、三菱化学社製の「ダイアレジン(登録商標)オレンジHS」「ダイアレジン(登録商標)レッドHS」、「ダイアレジン(登録商標)レッドA」、ランクセス社製の「マクロレックス(登録商標)オレンジ3G Gran」、「マクロレックス(登録商標)レッドEG Gran」、住化ケムテックス社製の「スミプラスト(登録商標)レッドH3G」等が挙げられる。
【0023】
顔料としては、群青、雲母、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、チタンイエロー、架橋ポリスチレン粒子、シリコン粒子等が挙げられる。その具体例としては、第一化成社製の「群青♯1500」、メルクジャパン社製の「イリオジン(登録商標)7219 ウルトラライラック」、「イリオジン(登録商標)153 フラッシュパール」、三菱化学社製の「カーボンブラックMCF88」、山陽色素社製の「ファインコール カーボンブラックN−29」、「ファインコール ブラウンTG834」、ランクセス社製の「バイフェロックス(登録商標)110M」、日本化学工業社製の「AD硫酸バリウム」、根本特殊化学社製の「ルミパールDSN−30」等が挙げられる。
【0024】
前記シロップにおける着色成分の含有量は、得られるメタクリル樹脂多層板の外観を損ねない範囲で適宜調整しうるが、該シロップ総量100重量%に対して0.0001〜10重量%であるのが好ましく、0.001〜5重量%であるのがより好ましい。
【0025】
前記シロップは、通常、重合開始剤を含み、また、アルキルメルカプタン、テルペノイド化合物、有機ジスルフィド等の重合調節剤を含んでいてもよい。また、先に樹脂板に含まれうる添加剤として挙げたものを含んでいてもよい。
【0026】
重合開始剤の例は、先に部分重合で使用されうる重合開始剤の例として挙げたものと同様であり、その含有量は、メタクリル酸メチルを主体とする単量体及びメタクリル酸メチルを主体とする重合体の合計に対し、通常100〜5000質量ppm、好ましくは500〜2000質量ppmである。
【0027】
アルキルメルカプタンとしては、例えば、1−ラウリルメルカプタン、1−オクチルメルカプタン、1−ドデシルメルカプタン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。アルキルメルカプタンの含有量は、メタクリル酸メチルを主体とする単量体及びメタクリル酸メチルを主体とする重合体の合計に対し、通常500〜3500質量ppm、好ましくは500〜1000質量ppmである。
【0028】
テルペノイド化合物としては、例えば、シクロヘキサン−1−メチル−4−エチリデン、1,4−シクロヘキサジエン、1−メチル−1,4−シクロヘキサジエン、ミルセン、リモネン、α−ピネン、β−ピネン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。テルペノイド化合物の含有量は、メタクリル酸メチルを主体とする単量体及びメタクリル酸メチルを主体とする重合体の合計に対し、通常50〜150質量ppm、好ましくは75〜125質量ppmである。
【0029】
有機ジスルフィドとしては、例えば、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジ−n−プロピルジスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジイソプロピルジスルフィド、ジイソブチルジスルフィド、ジ−sec−ブチルジスルフィド、ジ−tert−ブチルジスルフィド、ジシクロプロピルジスルフィド、ジシクロブチルジスルフィド、ジシクロペンチルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。有機ジスルフィドの使用量は、メタクリル酸メチルを主体とする単量体及びメタクリル酸メチルを主体とする重合体の合計に対し、通常10〜5000質量ppm、好ましくは10〜1000質量ppmである。
【0030】
前述したセル内に前記シロップを注液した後、通常、水又は空気を熱媒とする重合槽中にて加熱することにより、該シロップを重合させる。その際、生産性や未反応単量体を減らすという点から、まず初期重合として、40〜80℃で第1重合を行い、次いで最終重合として、100〜130℃で第2重合を行うのが好ましい。第1重合の重合時間は通常30分〜40時間であり、好ましくは1〜20時間である。第2重合の重合時間は通常20分〜3時間であり、好ましくは30分〜2時間である。
【0031】
かくして、膨潤層の発生や着色成分のにじみが良好に抑制されたメタクリル樹脂多層板を製造することができる。本発明のメタクリル樹脂多層板は、照明材料、表示材料、建築材料等に利用することができる。特に、セルの内部に透明なメタクリル樹脂板を設置してメタクリル樹脂多層板を製造すると、該多層板は透明層と着色層とを備える高級感に優れたものとなるため、商品のショーケースや高級宿泊施設の浴室等の内装として好適に利用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。ポリメタクリル酸メチル(メタクリル酸メチルの重合体)の粘度平均分子量や25℃におけるシロップの粘度は、以下の方法により求めた。
【0033】
<粘度平均分子量>
粘度平均分子量は、下式(1)で求めた。
lnM={ln[η]−ln(4.8×10-5)}/0.8 (1)
(式中、Mは粘度平均分子量を表し、[η]はJIS Z8803に準拠してウベローデ粘度計により測定した極限粘度を表す。)
【0034】
<25℃におけるシロップの粘度>
シロップの粘度は、JIS K7117−2に準拠して、E型粘度計(TOKIMEC(株)製の標準コーンローター)により測定温度25℃で測定した。
【0035】
実施例1
メタクリル酸メチル78重量部、粘度平均分子量が1.1×10(g/mol)であるポリメタクリル酸メチル22重量部、カーボンブラック(C.I. Pigment Black 7)0.1重量部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.08重量部を混合してシロップを調製した。25℃における該シロップの粘度は、170cpsであった。
厚み2mm、100mm×100mmのガラス板の上に、厚み1.5mmの透明メタクリル樹脂板〔住友化学株式会社製「スミペックス000」〕を設置した。このメタクリル樹脂板の上に、塩化ビニル樹脂製ガスケットを介して、厚み2mm、100mm×100mmのガラス板を置き、メタクリル樹脂板とガラスとの間に厚み1.5mmの空間を持つセルを作製した。
次いで、該セルの内部(前記空間)に前記シロップを注液した後、当該セルをエアーオーブンに入れ、72℃で3時間、110℃で1時間加熱して重合反応を行い、透明メタクリル樹脂板/黒色メタクリル樹脂板の2層構造であるメタクリル樹脂多層板を得た。このメタクリル樹脂多層板の全体の厚み及び膨潤層の厚みをノギスにより測定したところ、全体の厚みは3.7mm、膨潤層の厚みは0.7mmであり、全体の厚みに対する膨潤層の厚みは0.19(=0.7mm/3.7mm)であった。また、膨潤層へのカーボンブラックのにじみは観測されなかった。
【0036】
実施例2
メタクリル酸メチル75重量部、粘度平均分子量が1.1×10(g/mol)であるポリメタクリル酸メチル25重量部、カーボンブラック(C.I. Pigment Black 7)0.1重量部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.08重量部を混合してシロップを調製した。25℃における該シロップの粘度は、350cpsであった。
次いで、実施例1と同様のセルを作製し、該セルの内部に前記シロップを注液した後、実施例1と同様に重合反応を行い、透明メタクリル樹脂板/黒色メタクリル樹脂板の2層構造であるメタクリル樹脂多層板を得た。このメタクリル樹脂多層板の全体の厚み及び膨潤層の厚みをノギスにより測定したところ、全体の厚みは3.7mm、膨潤層の厚みは0.7mmであり、全体の厚みに対する膨潤層の厚みは0.19(=0.7mm/3.7mm)であった。また、膨潤層へのカーボンブラックのにじみは観測されなかった。
【0037】
比較例1
メタクリル酸メチル95重量部、粘度平均分子量が1.1×10(g/mol)であるポリメタクリル酸メチル5重量部、カーボンブラック(C.I. Pigment Black 7)0.1重量部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.08重量部を混合してシロップを調製した。25℃における該シロップの粘度は、3cpsであった。
次いで、実施例1と同様のセルを作製し、該セルの内部に前記シロップを注液した後、実施例1と同様に重合反応を行い、透明メタクリル樹脂板/黒色メタクリル樹脂板の2層構造であるメタクリル樹脂多層板を得た。このメタクリル樹脂多層板の全体の厚み及び膨潤層の厚みをノギスにより測定したところ、全体の厚みは3.5mm、膨潤層の厚みは1.4mmであり、全体の厚みに対する膨潤層の厚みは0.40(=1.4mm/3.5mm)であった。また、膨潤層へのカーボンブラックのにじみが観測された。
【0038】
比較例2
メタクリル酸メチル90重量部、粘度平均分子量が1.1×10(g/mol)であるポリメタクリル酸メチル10重量部、カーボンブラック(C.I. Pigment Black 7)0.1重量部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル@重量部を混合してシロップを調製した。25℃における該シロップの粘度は、9cpsであった。
次いで、実施例1と同様のセルを作製し、該セルの内部に前記シロップを注液した後、実施例1と同様に重合反応を行い、透明メタクリル樹脂板/黒色メタクリル樹脂板の2層構造であるメタクリル樹脂多層板を得た。このメタクリル樹脂多層板の全体の厚み及び膨潤層の厚みをノギスにより測定したところ、全体の厚みは3.5mm、膨潤層の厚みは1.3mmであり、全体の厚みに対する膨潤層の厚みは0.37(=1.3mm/3.5mm)であった。また、膨潤層へのカーボンブラックのにじみが観測された。
【0039】
比較例3
メタクリル酸メチル85重量部、粘度平均分子量が1.1×10(g/mol)であるポリメタクリル酸メチル15重量部、カーボンブラック(C.I. Pigment Black 7)0.1重量部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.08重量部を混合してシロップを調製した。25℃における該シロップの粘度は、30cpsであった。
次いで、実施例1と同様のセルを作製し、該セルの内部に前記シロップを注液した後、実施例1と同様に重合反応を行い、透明メタクリル樹脂板/黒色メタクリル樹脂板の2層構造であるメタクリル樹脂多層板を得た。このメタクリル樹脂多層板の全体の厚み及び膨潤層の厚みをノギスにより測定したところ、全体の厚みは3.7mm、膨潤層の厚みは1.1mmであり、全体の厚みに対する膨潤層の厚みは0.30(=1.1mm/3.7mm)であった。また、膨潤層へのカーボンブラックのにじみが観測された。
【0040】
比較例4
メタクリル酸メチル78重量部、粘度平均分子量が4.0×10(g/mol)であるポリメタクリル酸メチル15重量部、カーボンブラック(C.I. Pigment Black 7)0.1重量部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.08重量部を混合してシロップを調製した。25℃における該シロップの粘度は、25088cpsであった。
次いで、実施例1と同様のセルを作製し、該セルの内部に前記シロップを注液しよう試みたが、粘性が高すぎて注液できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の少なくとも一方の面にメタクリル樹脂板が設置されたセルの内に、メタクリル酸メチルを主体とする単量体、メタクリル酸メチルを主体とする重合体及び着色成分を含有するシロップを注液した後、重合反応を行うメタクリル樹脂多層板の製造方法であって、前記シロップにおける前記重合体の含有量が、該シロップ総量100重量%を基準として20〜25重量%であり、かつ、25℃における前記シロップの粘度が100〜400cpsであることを特徴とするメタクリル樹脂多層板の製造方法。
【請求項2】
前記シロップにおける着色成分の含有量が、該シロップ総量に対し、0.0001〜10重量%である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記セルの内部に設置するメタクリル樹脂板が、透明な樹脂板である請求項1又は2記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−46100(P2011−46100A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196537(P2009−196537)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】