説明

メタノールを含有する排ガスの処理装置及び処理方法

【課題】排ガス中のメタノール濃度が一時的に高くなるような場合であっても、触媒が過度に高温になることを防止することのできる排ガス処理装置及び排ガス処理方法を提供する。
【解決手段】排ガス処理装置10は、排ガスに含有されているメタノールを分解するための触媒を有する触媒分解装置12を備えている。触媒分解装置12の前段側に、排ガスに含有されているメタノールを一時的に吸着するための吸着剤14aを有する吸着装置14が設置されている。触媒としては、白金を用いることが好ましい。吸着剤14aとしては、活性炭を用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノールを含有する排ガスを処理するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高分子材料からなる成形体の工場からは、揮発性有機化合物(VOC)の一種であるメタノールを含有する排ガスが排出される。メタノールは可燃性を有しており、人体に悪影響を及ぼすおそれもあることから、このような排ガスは適切に処理されることが望ましい。
【0003】
メタノールを含有する排ガスを処理する方法の1つとして、直接燃焼法が知られている。この方法は、メタノールを含有する排ガスを例えば650〜800℃に加熱することによって、当該排ガスに含まれるメタノールを、水及び二酸化炭素に分解するものである。しかし、この方法を用いた場合、燃料であるLPGが高価であるため、燃料コストが高くつくという問題がある。
【0004】
一方、メタノールを含有する排ガスを処理する方法として、触媒酸化法が知られている(特許文献1を参照)。この方法は、排ガスに含まれるメタノールを、白金やパラジウム等の触媒を用いて、例えば200〜400℃で水及び二酸化炭素に分解するものである。この方法を用いた場合、上記の直接燃焼法に比べて低温で排ガスを処理できるという利点がある。また、メタノールの分解反応が速いために、小型の設備を用いて大量の排ガスを処理できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−110731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、触媒酸化法は、触媒の交換頻度が少なければコストが安く経済的に有利な方法であるといえるが、排ガス中に触媒の被毒物質が含まれることは稀ではなく、その場合、触媒の分解能力がすぐに低下して触媒の交換頻度が高くなるという問題がある。
また、工場から排出される排ガス中のメタノールの濃度は一定であるとは限らないため、排ガス中のメタノールの濃度が一時的に高くなった場合に、反応熱によって触媒が耐熱温度を超えて高温になり、触媒が凝集を起こして失活するなどの問題がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、排ガス中のメタノール濃度が一時的に高くなるような場合であっても、触媒が過度に高温になることを防止することのできる排ガス処理装置及び排ガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、排ガスに含有されているメタノールを分解するための触媒を有する触媒分解装置を備えた排ガス処理装置であって、前記触媒分解装置の前段側に、前記排ガスに含有されているメタノールを一時的に吸着するための吸着剤を有する吸着装置が設置されていることを特徴とする排ガス処理装置である。前記触媒としては、白金を用いることが好ましい。前記吸着剤としては、活性炭を用いることが好ましい。
【0009】
本発明の排ガス処理装置において、前記触媒分解装置から排出される排ガスと、前記触媒分解装置に供給される排ガスとの間で熱交換するための熱交換器を備えることが好ましい。
【0010】
本発明は、排ガスに含有されているメタノールを触媒によって分解する触媒分解工程を有する排ガス処理方法であって、前記触媒分解工程の前に、前記排ガスに含有されているメタノールを吸着剤によって一時的に吸着する吸着工程を有することを特徴とする排ガス処理方法である。前記触媒としては、白金を用いることが好ましい。前記吸着剤としては、活性炭を用いることが好ましい。
【0011】
本発明の排ガス処理方法において、前記触媒を有する触媒分解装置から排出される排ガスと、前記触媒分解装置に供給される排ガスとの間で熱交換する熱交換工程を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排ガス中のメタノール濃度が一時的に高くなるような場合であっても、触媒が過度に高温になることを防止することのできる排ガス処理装置及び排ガス処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】排ガス処理装置のフローシートである。
【図2】実施例における排ガス中のメタノール濃度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は、例えば高分子材料からなる成形体の製造工程などから排出されるメタノールを含有する排ガスを処理するための装置及び方法に関する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る排ガス処理装置10のフローシートである。図1に示すように、本実施形態に係る排ガス処理装置10は、触媒分解装置12、吸着装置14、熱交換器16、加熱装置18、及びブロワ20を備えている。
【0016】
触媒分解装置12は、処理の対象となる排ガス中に含まれるメタノールを触媒によって水及び二酸化炭素に分解するための装置である。触媒は、メタノールを分解できるものであればどのようなものでも使用可能であり、例えば、白金、ロジウム、パラジウム、マンガン、鉄、コバルト、クロム、あるいはこれらの酸化物などを使用可能である。メタノールの分解効率の観点からは、白金またはパラジウムが好ましく、白金が最も好ましい。
【0017】
触媒を担持させる担持体の形状はどのようなものであってもよく、例えば、ハニカム形状、ペレット形状、あるいは金属発泡体形状の担持体を用いることができる。この中では、圧力損失が低く、かつ、高いSV値(空間速度)をとることのできるハニカム形状の担持体を用いることが好ましい。
【0018】
また、担持体の材質はどのようなものであってもよく、例えば、ステンレス製あるいはセラミックス製の担持体を用いることができる。物理的な耐久性の観点からは、ステンレス製の担持体を用いることが好ましい。
【0019】
図1に示すように、白金等の触媒を担持させた担持体12aは、ステンレス等の金属製の板状部材によって中空円筒状あるいは中空角筒状に形成された触媒充填筒12bの内部に設置される。触媒充填筒12bの内部には、排ガス中に含まれるメタノールの濃度や、単位時間当たりに処理する排ガスの流量などに合わせて、1個ないし複数個の担持体12aが設置される。触媒充填筒12bの内部に複数個の担持体12aが設置される場合には、それらは触媒充填筒12bの内部において上下方向に積み重ねた状態で設置されることが好ましい。
【0020】
触媒分解装置12の下部には配管22が接続されており、この配管22によってメタノールを含有する排ガスが触媒分解装置12の内部に供給される。一方、触媒分解装置12によってメタノールが分解された後の排ガスは、触媒分解装置12の上部に接続された配管28によって排出される。
【0021】
吸着装置14は、排ガス中に含まれるメタノールを吸着剤によって一時的に吸着するための装置である。吸着剤は、メタノールを一時的に吸着できるものであればどのようなものでも使用可能であり、物理吸着剤でもよく、化学吸着剤でもよい。後述するように、排ガス中のメタノールの濃度を平準化して触媒分解装置12における触媒の温度が過度に高温になることを防止する観点からは、メタノールを可逆的に吸脱着可能な物理吸着剤を用いることが好ましい。
【0022】
物理吸着剤としては、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ等を使用することができる。この中では、排ガス中に含まれるメタノールを吸脱着できるだけでなく、細孔径が大きく、排ガス中に含まれる環状シロキサンなどの比較的分子径が大きい触媒被毒物質を容易に吸着することのできる活性炭を用いることが好ましい。
【0023】
活性炭の種類や形状は特に制限するものではなく、例えば、繊維状、ハニカム状、円柱ペレット状、破砕状、粒状、あるいは粉末状の活性炭を使用することが可能である。特に、直径が1mm以上、より好ましくは5mm以上の円柱ペレット状の活性炭が、吸着装置14の圧力損失を下げる点において好ましい。また、比表面積が500m/g以上、より好ましくは1000m/g以上の活性炭を用いることが好ましい。
【0024】
図1に示すように、吸着剤14aは、ステンレスやハステロイ等の金属製の板状部材によって中空円筒状あるいは中空角筒状に形成された吸着剤充填筒14bの内部に充填される。吸着剤充填筒14bに充填される吸着剤の量は、排ガス中に含まれるメタノールの濃度や、単位時間当たりに処理する排ガスの流量などに合わせて適宜調節することが好ましい。
【0025】
吸着剤充填筒14bの内部を通過する排ガスの空間速度(SV)は、300〜120000[h−1]が好ましく、3000〜30000[h−1]がより好ましい。
【0026】
吸着剤充填筒14bの下部には配管24が接続されており、この配管24によってメタノールを含有する排ガスが吸着装置14の内部に供給される。一方、吸着剤14aによってメタノールが吸着された排ガスは、吸着装置14の上部に接続された配管26によって排出される。
【0027】
吸着剤充填筒14bの下部に供給される排ガスの温度は、0〜80℃が好ましく、10〜50℃がより好ましい。
高分子材料からなる成形体の製造工程から排出される排ガスの温度が上記の温度範囲から外れている場合には、図示しない熱交換器等によって排ガスを加熱または冷却することによって、吸着剤充填筒14bの下部に供給される排ガスの温度を上記の温度範囲に制御することが好ましい。
【0028】
熱交換器16は、触媒分解装置12の上部から排出される排ガス(放熱側流体)と、触媒分解装置12の下部に供給される排ガス(受熱側流体)との間で熱交換を行うための装置である。熱交換器16の形式はどのようなものであってもよく、例えば、多管式熱交換器(固定管板式、U字管式、遊動頭式など)、二重管式熱交換器、単管式熱交換器、プレートフィン式熱交換器等を使用することができる。この中では、熱交換効率が比較的高いプレートフィン式の熱交換器を用いることが好ましい。熱交換器の伝熱部に使用するフィンやチューブの材質としては、特に制限するものではないが、排ガスに対する耐腐食性や耐熱性の観点から、ステンレス等を使用することが好ましい。
【0029】
加熱装置18は、触媒分解装置12の下部に供給される排ガスを加熱するために、ブロワ20によって送り込まれる排ガスを加熱するための装置である。加熱装置18としては、排ガスを加熱することができるのであればどのような形式でも使用することが可能であり、例えば、電気ヒーター等を使用することができる。
【0030】
ブロワ20は、排ガスを吸引するための装置である。ブロワ20としては、排ガスの総流量、装置の圧力損失、および排ガスの温度を考慮し使用条件に合ったブロワを選定することが好ましい。例えばモーターシャフトとブロワのシャフトをカップリングで直結する形式(モータ直結形)のものを使用できる。
【0031】
次に、排ガス処理装置10の全体的な排ガス処理の流れについて説明する。
まず、高分子材料からなる成形体の製造工程などから排出されるメタノールを含有する排ガスは、配管24を通って吸着装置14の下部に供給される。吸着装置14の下部に供給された排ガスは、当該排ガスに含まれているメタノールの全部または一部が吸着剤14aによって吸着された後に、吸着装置14の上部から排出される。なお、吸着剤14aによって吸着されたメタノールは、所定時間経過後に脱着して排ガス中に再び放出される。つまり、排ガス中に含まれるメタノールは、吸着剤14aによって一時的に吸着される。
【0032】
吸着装置14の上部から排出された排ガスは、配管26を通って熱交換器16の受熱流体側の入口に供給される。これにより、吸着装置14の上部から排出された排ガスは、放熱側流体から熱を受け取ることによって、50〜200℃、より好ましくは70〜150℃に加熱される。
【0033】
熱交換器16によって加熱された排ガスは、配管22を通って触媒分解装置12の下部に供給される。配管22の途中には合流部22aが設けられており、この合流部22aにおいて、熱交換器16によって加熱された排ガスと、加熱装置18によって加熱された排ガスとが合流する。これにより、触媒分解装置12の下部に供給される排ガスの温度が、100〜300℃、より好ましくは150〜250℃に制御される。
【0034】
触媒分解装置12の下部に供給された排ガスは、当該排ガスに含まれるメタノールが担持体12aに担持された白金等の触媒によって分解された後に、触媒分解装置12の上部から排出される。
【0035】
触媒分解装置12の上部から排出された排ガスは、配管28を通って熱交換器16の放熱側流体の入口に供給される。これにより、触媒分解装置12の上部から排出された排ガスと、触媒分解装置12の下部に供給される排ガスとの間で熱交換が行われる。
【0036】
熱交換器16によって冷却された排ガスは、ブロワ20の吸引口に吸引された後に、ブロワ20の吐出口から吐出される。ブロワ20から吐出された排ガスの一部は、配管32を通って加熱装置18に送り込まれる。ブロワ20から吐出された残りの排ガスは、配管34を通って大気中へ放出される。
【0037】
ブロワ20によって加熱装置18に送り込まれた排ガスは、200〜500℃、より好ましくは300〜400℃に加熱された後に、配管36、22を通って触媒分解装置12の下部に供給される。前述したように、加熱装置18の出口側の配管36は、触媒分解装置12の下部に排ガスを供給するための配管22に合流部22aにおいて合流している。
【0038】
また、加熱装置18の入口側の配管32の途中にはダンパ21が設置されており、このダンパ21によって加熱装置18に送り込まれる排ガスの流量が調節可能となっている。
【0039】
上記のように構成された排ガス処理装置10の作用効果について説明する。
上記実施形態の排ガス処理装置10によれば、排ガス中に含まれるメタノールを吸着装置14によって一時的に吸着した後に、その排ガスを触媒分解装置12に供給することができる。これにより、触媒分解装置12に供給される排ガス中に含まれるメタノールの濃度を低下させることができる。
【0040】
また、高分子材料からなる成形体の製造工程から排出される排ガス中に含まれるメタノールの濃度が変動して一時的に高くなるような場合であっても、触媒分解装置12に供給される排ガス中に含まれるメタノールの濃度を平準化することができる。このため、メタノールの分解時の反応熱によって触媒が高温になることを防止することが可能であり、触媒が耐熱温度を超えることによって失活することを防止することができる。
【0041】
また、メタノールの分解時の反応熱によって排ガスが高温になることを防止することができる。このため、触媒分解装置12の下流側の配管28やブロワ20等に耐熱性の高いハステロイ等の高価な材料を用いることが不要になる。
さらに、触媒分解装置12の下流側の配管28に用いられるパッキンやガスケット等に耐熱性の高い材料を用いることが不要になる。その結果、排ガス処理装置10の製造コストを従来よりも安価に抑えることが可能になる。
【0042】
本実施形態の排ガス処理装置10によれば、吸着装置14によって排ガス中に含まれるメタノールを一時的に吸着できるだけでなく、環状シロキサン等の触媒被毒物質を吸着することもできる。これにより、触媒分解装置12に用いる触媒の寿命を延長することが可能となり、排ガス処理装置10のランニングコストを従来よりも安価に抑えることが可能になる。
【0043】
本実施形態の排ガス処理装置10によれば、触媒分解装置12から排出される排ガスから熱交換器16によって熱エネルギーを回収することができる。また、排ガスの一部はブロワ20によって加熱装置18に送り込まれるため、ブロワ20によって送り込まれる排ガスの熱エネルギーをも回収することができる。これにより、省エネルギーを達成できるとともに、加熱装置18に使用する電気の使用量等を抑制することができる。
【0044】
本実施形態の排ガス処理装置10によれば、排ガスを例えば大気等によって希釈することでメタノールの濃度を低下させることが不要になる。このため、ブロワ20によって大気を送り込むことが不要になり、ブロワ20の送風量を小さくできる。その結果、定格能力の小さいブロワ20を用いることが可能となり、その分だけ排ガス処理装置10の製造コストを安価に抑えることが可能になる。
【0045】
なお、本発明は、方法の発明として実施することも可能である。すなわち、本発明は、排ガスに含有されているメタノールを触媒分解装置12によって分解する触媒分解工程と、前記触媒分解工程の前に、前記排ガスに含有されているメタノールを吸着装置14によって一時的に吸着する吸着工程を有する排ガス処理方法の発明として実施することも可能である。
【実施例】
【0046】
上記で説明した排ガス処理装置10を用いて、高分子材料からなる成形体の製造工程から排出されるメタノールを含有する排ガスを処理する試験を行った。試験条件を以下に示す。
【0047】
(排ガス条件)
排ガス(吸着装置入口部)風量 4.5 [m3/min]
排ガス中のメタノール濃度 1.0〜1.5 [vol%]
(排ガスの空間速度)
吸着剤充填筒 2647 [h-1]
触媒充填筒 12739 [h-1]
(排ガス温度)
吸着装置入口部 20〜60℃
触媒分解装置入口部 約200℃
【0048】
(吸着装置仕様)
装置形状 円筒形状
充填剤 活性炭
充填剤形状 円柱ペレット形状(φ9mm)
充填筒直径 φ570mm
充填層高さ 400mm
充填層断面積 0.26m2
充填容量 0.10m3
【0049】
(触媒分解装置仕様)
装置形状 円筒形状
触媒 白金
担持体材質 ステンレス
担持体形状 ハニカム形状(セル密度260 [CPSI])
担持体寸法 高さ300mm
充填層高さ 300mm
充填層断面積 0.07 m2
充填容量 0.02 m3
【0050】
上記の条件にて、吸着装置14の入口部に断続的に約11時間排ガスを供給して排ガス処理を行った。排ガス処理の運転を行う間、吸着装置14の入口部、吸着装置14の出口部、触媒分解装置12の入口部および出口部の4点において、排ガス中のメタノール濃度を測定した。メタノール濃度の測定は、ガス検知器(ドレーゲル社製、品番「X-am」、及び、新コスモス電機社製、品番「XP3169」)を用いて行った。
【0051】
上記の試験の結果、吸着装置14の入口部のメタノール濃度は最大で約12,600ppmであり、出口部のメタノール濃度は最大で約4,680 ppmであった。触媒分解装置12の入口部のメタノール濃度は最大で約2,460 ppmであり、出口部のメタノール濃度は最大でも500 ppm以下であった。そして、触媒分解装置12の入口部の排ガス温度は約200℃であり、出口部の排ガス温度は約290℃であった。
【0052】
また、比較例として、吸着装置14に吸着剤14aを充填しないで、それ以外は上記と同様の条件で試験を行った。
その結果、触媒分解装置12の入口部のメタノール濃度は最大で約7,360ppmであり、出口部のメタノール濃度は最大でも500 ppm以下であった。そして、触媒分解装置12の入口部の排ガス温度は約200℃であり、出口部の排ガス温度は約433℃であった。
上記の実施例及び比較例の結果をまとめたものを、以下の表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1を見れば分かる通り、本実施形態の排ガス処理装置10によれば、吸着装置14によって排ガス中のメタノールを一時的に吸着してその濃度を平準化することによって、触媒分解装置12の入口部に供給される排ガスのメタノール最大濃度を、7,360ppmから2,460 ppmに低下させることができることが判明した。また、触媒分解装置12の出口部の排ガス温度を、約433℃から約290℃に低下させることができることが判明した。白金触媒の場合、高温では触媒の凝集により活性が低下する。このためできるだけ反応熱により高温にならないようにメタノール濃度を低くする方が好ましいが、この方法により白金触媒の凝集による活性低下がなくなった。
【0055】
図2は、実施例における排ガス中のメタノール濃度の測定結果を示すグラフである。
図2を見れば分かるとおり、本実施形態の排ガス処理装置10によれば、吸着装置14の入口部に供給される排ガス中のメタノールの濃度は大きく変動するにも関わらず、吸着装置14の出口部、及び、触媒分解装置12の入口部に供給される排ガス中のメタノールの濃度はあまり変動していなかった。
【0056】
以上より、本実施形態の排ガス処理装置10によれば、触媒分解装置12に供給される排ガス中のメタノールを一時的に吸着してその濃度を平準化することによって、触媒分解装置12における触媒の温度が過度に高温になることを防止できることを実証することができた。
【0057】
以下の表2は、上記の実施例及び比較例における触媒分解装置12の触媒寿命を示している。
【0058】
【表2】

【0059】
表2に示すように、吸着装置14をつけていない(吸着装置14に吸着剤14aを充填していない)比較例においては、触媒分解装置12の触媒が4時間で失活して使い物にならない結果となった。これは、排ガス中に含まれる環状シロキサン等によって触媒が被毒されたためであると考えられる。
【0060】
これに対し、吸着装置14を設置した実施例においては、排ガス処理装置10の運転を開始してから30日以上経過した後も触媒分解装置12の触媒が失活せず、排ガス中に含まれるメタノールを触媒によって分解することができた。これは、触媒分解装置12の前段側に設置されている吸着装置14によって排ガス中に含まれる環状シロキサン等の触媒被毒物質を吸着できたためであると考えられる。
【符号の説明】
【0061】
10 排ガス処理装置
12 触媒分解装置
12b 触媒充填筒
12a 担持体
14a 吸着剤
14b 吸着剤充填筒
14 吸着装置
16 熱交換器
18 加熱装置
20 ブロワ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスに含有されているメタノールを分解するための触媒を有する触媒分解装置を備えた排ガス処理装置であって、
前記触媒分解装置の前段側に、前記排ガスに含有されているメタノールを一時的に吸着するための吸着剤を有する吸着装置が設置されていることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
前記触媒は白金である請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記吸着剤は活性炭である請求項1または請求項2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記触媒分解装置から排出される排ガスと、前記触媒分解装置に供給される排ガスとの間で熱交換するための熱交換器を備える請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
排ガスに含有されているメタノールを触媒によって分解する触媒分解工程を有する排ガス処理方法であって、
前記触媒分解工程の前に、前記排ガスに含有されているメタノールを吸着剤によって一時的に吸着する吸着工程を有することを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項6】
前記触媒は白金である請求項5に記載の排ガス処理方法。
【請求項7】
前記吸着剤は活性炭である請求項5または請求項6に記載の排ガス処理方法。
【請求項8】
前記触媒を有する触媒分解装置から排出される排ガスと、前記触媒分解装置に供給される排ガスとの間で熱交換する熱交換工程を有する請求項5から請求項7のうちいずれか1項に記載の排ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−120995(P2012−120995A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274840(P2010−274840)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】