説明

メタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置及びその運用方法

【課題】メタノールを直接燃料として使用する燃料電池であるDMFC用気液分離装置を提供すること。
【解決手段】スタックから回収された気液混合物が収容されるハウジングと、ハウジング内に回転自在に設置されたローターと、ローターを回転させるモーターと、を備え、ローターが回転すれば、気液混合物中の液体は遠心力によりハウジングの外郭側に集まり、ガスはハウジングの中心側に集まって相分離が起きることを特徴とするDMFC用気液分離装置。これにより、強制回転による遠心力で気液分離作業を行うので、特定ポートを重力方向と一致させる必要がなく、位置が随時変わるモバイル機器にも無難に採用でき、また、経時的に急激に低下するメンブレンを使用しないために、長時間の使用時にも円滑な機能保持を保証できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノールを直接燃料として使用する燃料電池(以下、DMFC(Direct Methanol Fuel Cell)という]において、スタックから回収された未反応メタノールと副産物であるH2Oとを再生するのに使われる気液分離装置とその運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、燃料電池は、燃料が持っている化学エネルギーを化学反応により直接電気エネルギーに変える装置であり、燃料が供給されるかぎり電気を作り続ける一種の発電装置である。このような燃料電池のうちDMFCは、メタノールを直接セルのアノードに燃料として供給して、カソードに供給された酸素との反応で電気を生成させる装置であり、アノードでは下記の化学式1のような反応が起きつつ電子が生成され、その電子は移動経路に沿ってカソードに移動して化学式2の反応を起こす。直ちにその移動経路に負荷をかければ、生成された電気を利用した仕事を行えるようになる。
【0003】
CHOH+HO⇔CO+6H++6e (化学式1)
【0004】
3/2 O+6H+6e⇔3HO・・・(化学式2)
【0005】
一方、メタノールをアノードに供給する方法としては、液体状態のメタノールをポンプで供給する方法もあり、常温で自然気化される性質を利用して気化されたメタノールが自然にアノードへ行くように誘導する方法があるが、後者を受動型、前者は能動型と呼び、ここで説明する構造はこの能動型DMFCに該当する。
【0006】
図1は、このような能動型DMFCの構造を示すブロック図である。
【0007】
まず、上記化学式1、2が進むアノードとカソードとの組立体一つでは十分な電気を得難いため、これを多段で積層したスタック20の形態で使用する。このスタック20内には複数のアノードと複数のカソードとがそれぞれ電解質膜を介して単位セルを形成して積層されており、各単位セルで生成された電気が合わせられて大きい電気に出力される。参照符号60は、カソードに酸素供給源であるエアを送るためのエアポンプを示す。そして、参照符号30は、アノードに供給される燃料であるメタノールを保存したカートリッジを示すが、このカートリッジ30には、高濃度メタノール(例えば、100%メタノール)が保存されている。また、参照符号70は、カートリッジ30から燃料ポンプ40により送られた高濃度メタノールに水を添加して0.5〜2M(モル)程度の低濃度で希釈させた後、供給ポンプ50を通じてスタック20のアノードに送るための貯蔵タンクを示す。参照符号80は、スタック20から排出された気液混合物の温度を低めるための熱交換器を示す。すなわち、この熱交換器80は、スタック20から出た高温状態の気液混合物の温度を低めてガス内部の水蒸気を凝縮させる役割を行う。そして、参照符号10は、スタック20から電気を生産してから出た未反応メタノール及び副産物であるH2Oを再使用するためのリサイクラーを示す。この装置10は、スタック20で反応していないメタノールと副産物である水とを再び回収してガスを分離した後、上記のようなメタノール希釈に再使用する機能があって気液分離装置とも呼ばれる。もちろん、気液分離装置10を別途に設けずにカートリッジ30にはじめから低濃度メタノールを貯蔵してから使用することもできるが、そのようになれば、カートリッジ30の容量があまりにも大きくなるという問題が生じるために、上記のように高濃度メタノールをカートリッジ30に貯蔵してから気液分離装置10に少しずつ供給しつつ希釈させて使用することである。
【0008】
ここで、上記気液分離装置10として、従来には図2Aや図2Bに示したような構造が多く採用された。まず、図2Aは、ガスと液体とを重力を利用して分離する方式であり、相対的に軽いガスは気液分離装置ハウジング11の上側ポート11aに抜け出て、相対的に重い液体はハウジング11の下側ポート11bを通じて抜け出つつ自然に分離させるものである。上記液体には、スタック20で未反応のメタノールと副産物として生成された水、そしてカートリッジ30から補充される高濃度メタノールが含まれ、上記ガスには、スタック20に酸素供給源として供給されたエアと、アノード反応で生成される二酸化炭素などが含まれている。このように分離された液体は、カートリッジ30から供給される高濃度メタノールと適切に混ざってスタック20での発展に必要な適当な低濃度メタノールになり、前述したように供給ポンプ50によりスタック20に再供給される。
【0009】
【特許文献1】特開2002−324561号公報
【特許文献2】特開2003−050114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記構造は重力を利用するために構造が非常に簡単な長所はあるが、液体が出るポート11bを必ず重力作用方向に合せねばならないために、固定型にしか使用できないという制限がある。すなわち、最近には各種モバイル機器に燃料電池を使用しようという趨勢であるが、上記方式を、もしモバイル機器に採用すれば、動く過程で液体用ポート11bが重力作用の逆方向に逆さになる恐れもあるために、気液分離の機能を正常に果たせなくなる。
【0011】
一方、図2Bは、かかる問題を解決できるように提案された気液分離構造を示したものであるが、図面に示したように重力を利用するものではなく、疎水性メンブレン12aと親水性メンブレン12bとをハウジング12の各ポートに設置して、疎水性メンブレン12aにはガスが抜け出て、親水性メンブレン12bには液体が抜け出るようにしたものである。このようにすれば、重力作用方向と関係なく気液分離が進みうるので、モバイル機器にも適用できる。しかし、メンブレン12a、12bは経時的に特性が顕著に劣化し、性能が落ちて漏れが生じるという短所があって、製品化し難い。
【0012】
したがって、このような問題を解決するためには、気液分離作業に方向依存性がなく、メンブレンのように経時的に性能が急激に劣化する部材を使用しなくても円滑な分離作業を進める新たな構造が要求されている。
【0013】
本発明は、上記の必要性に鑑みてなされたものであり、重力方向と関係なく使われ、長時間の使用時に性能を容易に保持できるDMFC用気液分離装置を提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明のDMFC用気液分離装置は、スタックから回収された気液混合物が収容されるハウジングと、上記ハウジング内に回転自在に設置されたローターと、上記ローターを回転させるモーターと、を備え、上記ローターが回転すれば、上記気液混合物中の液体は遠心力により上記ハウジングの外郭側に集まり、上記ガスは上記ハウジングの中心側に集まって相分離が起きることを特徴とする。
【0015】
ここで、上記ハウジングには、上記気液混合物が流入される第1流入ポートと、上記スタックへの燃料補充のために高濃度メタノールを流入するための第2流入ポートと、上記中心側に集まったガスを排出するためのガス排出ポートと、上記外郭側に集まった液体を排出するための液体排出ポートとが備えられうる。
【0016】
上記ガス排出ポートと連結された排出路には、進行方向が折り曲げられる折り曲げ部位が備えられて形成されることが望ましく、上記モーターは、その本体の一部が上記ハウジング内へ挿入されるように設置されることが望ましい。
【0017】
そして、上記ハウジング内壁と上記ローター外周面との間隔は0.2〜1mmほどに十分に狭く形成することが望ましい。
【0018】
上記ローターは、その外周面が上記ハウジング内壁の上下側面にいずれも対向する形態が望ましく、これに加えて、中が空いていて外周面に複数のホールが形成された形態が望ましい。
【0019】
上記ハウジングは、金属材質であることが望ましい。さらに、ハウジングの厚さは0.2〜0.5mmであって薄いほど望ましい。ハウジング外部には、冷却効率を高めるためのフィン及び冷却ファンを備えることができる。これを通じて気液分離装置内部の高温気液混合物の温度を低めて水回収効率を高めることができ、さらに、別途の熱交換器80なしに本発明の気液分離装置単独で気液分離及び熱交換の役割を同時に行える。
【0020】
上記ハウジング内部に、上記液体の程度を測定するためのレベルセンサーと、上記ハウジングに対する重力作用方向を測定するための重力位置検出センサーとがさらに備えられうる。
【0021】
また、上記の目的を達成するための本発明のDMFC用気液分離装置の運用方法は、スタックから回収された気液混合物が収容されるハウジングと、上記ハウジング内に回転自在に設けられたローターと、上記ハウジングに対する重力作用方向を測定するための重力位置検出センサーとを備える気液分離装置を用意するステップと、上記重力位置検出センサーで、上記液体排出ポートの排出方向が重力作用方向と一致するかどうかを確認するステップと、上記液体排出ポートの排出方向が重力作用方向と一致しなければ、上記ローターを作動させて遠心力で気液分離を進めるステップとを含む。
【0022】
そして、上記ハウジング中心部に設けられたガス排出ポートを開放してガスを排出させるステップと、上記ハウジング外郭部に設けられた液体排出ポートを開放して液体を排出させるステップと、をさらに含むことができる。
【0023】
上記ガス排出ポートに抜け出たガスを、上記ハウジング外部に1回以上折り曲げられた排出路に沿って排出させるステップをさらに含むことができる。
そして、上記液体排出ポートを開放する前に、上記ハウジング内部の液体水位を測定するためのレベルセンサーで、上記ハウジング内部の液体が正常運転できる水位であるかどうかを確認するステップをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、重力方向と関係なく使われ、長時間の使用時にも性能を容易に保持できるDMFC用気液分離装置が具現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
以下、添付した図面を参照して本発明の望ましい実施形態について詳細に説明する。
【0027】
図3は、本発明によるDMFC用気液分離装置の構造を理解しやすく概略的に示したものであり、図4A及び図4Bは、実際製品に適用される構造を分離状態と結合状態とでそれぞれ示したものである。
【0028】
図示したように、本発明のDMFC用気液分離装置100は、ハウジング110、ハウジング110中に回転自在に設置されたローター120、そしてローター120を回転させるためのモーター130などを備えている。すなわち、本発明の気液分離装置100は重力やメンブレンではない、ローター120の強制回転で発生する遠心力を利用してガスと液体とに相分離させる原理で構成されている。ここで、モーター130は、その本体一部がハウジング110内へ入っているが、このようにすれば全体装置の体積を縮めることができる。本発明における相分離とは、ガスと液体について、相の異なる2相が分離された状態を指すが、厳密に分離されている状態のみを指すのではなく、一方の相に他方の相の成分が混在することがあってもよい。
【0029】
まず、上記ハウジング110にはスタック20(図1参照)から回収された気液混合物が流入される第1流入ポート111と、スタックに送る燃料を補充するためにカートリッジ30(図1参照)から供給される高濃度メタノール(例えば、100%メタノール)が流入される第2流入ポート112、そして、気液混合物から分離されたガスが抜け出るガス排出ポート114、及び液体が抜け出る液体排出ポート113がそれぞれ設けられている。したがって、第1、2流入ポート111、112を通じてスタックからの気液混合物とカートリッジからの高濃度のメタノールとが流入され、ローター120の回転で遠心分離された液体は液体排出ポート113に、ガスはガス排出ポート114にそれぞれ抜け出るようになる。
【0030】
ここで、上記ローター120とハウジング110内壁との間隔dは0.2〜1mmほどに十分に狭くし、ローター120は、ハウジング110内壁の上面、側面、下面といずれも対向する形態を持つ。間隔(d)とは、より具体的には、図3にあるように、第一流入ポートの出口から、対向するローターの外周面との最短距離を指す。間隔(d)を狭くすることによって、ガス排出ポート114への液体逆流を防止して液体に速かに遠心力を作用するためである。すなわち、スタック20から供給される気液混合物がローター120とハウジング110との間の狭い隙間に注入されて、上記ローター120とハウジング110との間でローターの回転による遠心力を気液混合物中の液体成分に効果的に伝達するためである。これを通じて、気液混合物中の液体成分がローター120の回転外郭方向に速かに分離されてハウジング110の中央のガス排出ポート114に逆流しなくなる。
つまり、スタックにから供給される気液混合物がローターとハウジングとの間の狭い隙間に注入されて、上記ローターとハウジングとの間の摩擦力による遠心力を気液混合物中の液体成分に効果的に伝達するためである。これを通じて、気液混合物中の液体成分がローターの回転外郭方向に速かに分離されて、ハウジング内央のガスポートに逆流しないようにする。
【0031】
そして、上記ローター120の形状は、気液分離装置の方向に関係なく均一な気液分離性能を達成するためのものである。すなわち、気液分離装置の方向に関係なく液体が重力によってハウジング内壁に接触すれば、これと同時にローター120の回転力を伝達されてローター120の回転外郭方向に液体が移動する。また、ローター120は、図4Aのように中が空いていて外周面にホールが多く形成された構造になっているが、このようにすれば、ハウジング110内の液体収容容量をさらに大きくすることができる。
【0032】
そして、上記ハウジング110は、熱伝導率の優れたな金属材質で作ることが望ましい。なぜなら、スタックから流入される気液混合物は通常60〜65℃程度の温度になるが、温度が高ければ、ガス中に液体が含まれやすくて、ガスと共にガス排出ポート114に出てしまう液体、すなわち、燃料が多くなるためである。したがって、ハウジング110を金属材質で作って容易に放熱可能にすれば、気液混合物の温度も低くなるので、ガス中に液体が含まれる量も減少し、したがって、ガスと共に除去される燃料量も低減させることができる。また、上記金属材質はメタノールと反応してはならない。さらに、ハウジングの厚さは0.2〜0.5mm厚であって、薄いほど望ましい。ハウジング外部には、冷却効率を高めるためのフィンと冷却ファンとを備えることができる。これを通じて、気液分離装置内部の高温気液混合物の温度を低めて水回収効率を高めることができ、さらに別途の熱交換器80(図1)なしに本発明の気液分離装置単独で気液分離及び熱交換の役割を同時に行える。
【0033】
参照符号140は、ハウジング110内の液体の程度、すなわち水位を測定するためのレベルセンサーを示す。このレベルセンサー140は、重力方向に配されたものではなく、ローター120の半径方向に配されている。すなわち、液体は遠心力によりハウジング110の外郭側から満たされるため、液体水位が低い場合にはレベルセンサー140の外郭側のみに液体が感知され、程度が高くなれば中心側でも液体が感知される。
【0034】
参照符号150は、重力作用方向を感知するための重力位置検出センサーを示す。これは、節電機能のために備えられたものであるが、その詳細な使用方法については後述する。
【0035】
かかる構成の気液分離装置100を駆動すれば、上記第1、2流入ポート111、112を通じてスタックからの気液混合物とカートリッジからの高濃度メタノールとがハウジング110に流入され、同時にローター120は、モーター130により回転し始める。それにより、流体がローター120の回転に沿って回り始め、遠心力により相対的に重い液体はハウジング110の外郭側に、相対的に軽いガスはハウジング110の中心側に集まる。この状態で供給ポンプ50を駆動すれば、ガスと分離された液体、すなわち、メタノールと水とが適切に混合された低濃度メタノールが液体排出ポート113を通じてスタック20に送られ、液体と分離されたガスはガス排出ポート114を通じてハウジング110の外に抜け出る。かかる分離作業は、ローター120の強制回転による遠心力を利用するものであるため、ハウジング110の位置が逆さになるか、立てられるなど位置変化があっても異常なしに進みうる。
【0036】
一方、ハウジング110の位置があっちこっち変わるうちに、液体排出ポート113の排出方向が重力作用方向と一致する場合がありうる。この時には敢えてローター120を回転させなくても、図2Aの構造のように重力による自然な相分離が進みうる。したがって、この時、ローター120を停止させれば、それほど電力消耗を減らすことができるので、節電機能が具現される。上記重力位置検出センサー150は、直ちにこの機能のために、重力作用方向が液体排出ポート113の排出方向と一致するかどうかを調べるのに使われるものである。この重力位置検出センサー150を利用した節電機能は、図5に示したフローチャートのように進みうる。
【0037】
まず、上記のようにハウジング110内でローター120の遠心力で気液分離を行い、重力位置検出センサー150が装着された気液分離装置を用意する。つまり、気液分離装置を作動可能な状態にする(S1)。そして、本格的な気液分離作業に入る前に、ローター120を回転させつつ、上記レベルセンサー140でハウジング110内部の液体水位を先ず測定する(S2)。なぜなら、ハウジング110の液体水位があまりにも低い状態でスタック20に向かう液体排出ポート113を開けば、スタック20の機能に悪影響を及ぼすガスが多量入る恐れがあって、それを防止するためである。したがって、程度を測定して正常運転の可能な水位であるかどうかを先ず確認し(S3)、もし、不可能であればローター120を停止させ(S4)、水位不足アラーム灯をオンさせる(S5)。
【0038】
もし、上記S3ステップで水位が正常運転できると確認されれば、次いで、上記重力位置検出センサー150で、現在重力作用方向が液体排出ポート113の排出方向と一致するかどうかを測定する(S6)。この時の一致如何は正確に一致する場合のみならず、例えば、30゜以内の差ならば一致すると見なすように設定できる。ここで正常運転できる状態とは、容器の2/3の容量まで液体が満たされた状態を指す。
【0039】
測定結果、重力作用方向と液体排出ポート113の排出方向とが一致しなければ、重力を利用した気液分離は期待できないので、前述したようにローター120を回転させれば、遠心力でガスと液体とを分離させる(S7)。
【0040】
しかし、測定結果、重力作用方向と液体排出ポート113の排出方向とが一致すれば、ローター120を回転させずに重力による相分離を起こす(S8)。この時にはモーター130の駆動が停止するので、気液分離装置での電力消耗はなくなる。したがって、それほど電力消耗を低減させることができる。
【0041】
モバイル機器の場合には、ハウジング110の位置が随時変わりうので、以後にも重力作用方向を測定し続けて、ローター120を回転させるかどうかを決定すればよい。
【0042】
一方、上記のようにローター120を回転させずに重力で相分離を進めている最中に、突然ハウジング110の位置が変われば、重力位置感知センサー150がその変化を感知して、ローター120を回転させるまでにかかる時間の間にガス排出ポート114に多量の液体が流れ出る危険性がある。したがって、これを抑制するためには、ガス排出ポート114と連結された排出路115を、図6のようにハウジング110の周辺を一回りするように折り曲げて、排出方向が少なくとも一回は90度以上折り曲げられるように構成することが望ましい。すなわち、排出進行方向が直線ではなく90度以上折り曲げられるように構成すれば、突然な位置変更時にも多量の液体が一度に流れ出ることは防止することができる。また、装置が停止した状態でユーザーにより移動及び運動される場合に、装置の方向が自在に変わりうるため、この時、ガス排出ポート114に多量の液体が流れ出る危険を防止するためにも、図6のように折り曲げられた排出路115が必要である。
【0043】
以上説明したように本発明によれば、重力方向と関係なく使われ、長時間の使用時にも性能を容易に保持できるDMFC用気液分離装置が具現される。
【0044】
上記本発明のDMFC用気液分離装置は次のような効果を提供する。
【0045】
第1に、強制回転による遠心力で気液分離作業を行うので、特定ポートを重力方向と一致させる必要がなく、位置が随時変わるモバイル機器にも無難に採用できる。
【0046】
第2に、経時的に急激に低下するメンブレンを使用しないために、長時間の使用時にも円滑な機能保持を保証できる。
【0047】
第3に、ガス排出ポートと連結された排出路を折り曲げることによって、予想できなかった液体の漏れを抑制できる。
【0048】
第4に、重力位置感知センサーを装着して液体排出ポートと重力位置が一致する場合には強制回転を停止させ、重力で気液分離を進めるように構成できて節電効果も得ることができる。
【0049】
第5に、気液混合物が分離された後の液体を貯蔵するための別途の貯蔵空間を備えず、気液分離ハウジング自体が保存空間の役割を同時に行えてシステム体積を縮めることができ、構造を簡単にできる。
【0050】
第6に、カートリッジの高濃度メタノールを気液分離装置の内部に注入して、回転するローターによって速かに混ぜることができて、システムに均一な濃度のメタノールを供給できる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、燃料電池関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】一般的なDMFCの構造を示す図面である。
【図2A】図1のDMFCに備えられた気液分離装置の既存例を示す図面である。
【図2B】図1のDMFCに備えられた気液分離装置の既存例を示す図面である。
【図3】本発明による気液分離装置の構造を概略的に示す図面である。
【図4A】図3に示した気液分離装置の製品適用構造を分離状態に示す図面である。
【図4B】図3に示した気液分離装置の製品適用構造を結合状態に示す図面である。
【図5】図3の気液分離装置の運用例を示すフローチャートである。
【図6】図3に示した気液分離装置中のガス排出路の構成例を示す図面である。
【符号の説明】
【0054】
50 供給ポンプ
100 DMFC用気液分離装置
110 ハウジング
111 第1流入ポート
112 第2流入ポート
113 液体排出ポート
114 ガス排出ポート
120 ローター
120a ホール
130 モーター
140 レベルセンサー
150 重力位置検出センサー
200 DMFC用気液分離装置
300 DMFC用気液分離装置
400 DMFC用気液分離装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタックから回収された気液混合物が収容されるハウジングと、
前記ハウジング内に回転自在に設置されたローターと、
前記ローターを回転させるモーターと、
を備え、
前記モーターは、前記ローターを回転させ、前記気液混合物中の液体を遠心力により前記ハウジングの外郭側に集め、前記ガスを前記ハウジングの中心側に集めて相分離を起こさせることを特徴とする、メタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、
前記気液混合物が流入される第1流入ポートと、
前記スタックへの燃料補充のためにメタノールを流入するための第2流入ポートと、
前記中心側に集まったガスを排出するためのガス排出ポートと、
前記外郭側に集まった液体を排出するための液体排出ポートと、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置。
【請求項3】
前記ガス排出ポートと連結されてガスの排出方向を転換させることによって、前記気液混合物から分離された液体を前記ガスと共に排出させないようにする排出路がさらに備えられていることを特徴とする、請求項2に記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置。
【請求項4】
前記排出路は、前記ハウジングを取り囲んで少なくとも一回折り曲げられていることを特徴とする、請求項3に記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置。
【請求項5】
前記モーターの一部が前記ハウジング内へ挿入されるように設置されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置。
【請求項6】
前記ハウジング内壁と前記ローター外周面との間隔は、0.2〜1mmであることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置。
【請求項7】
前記ローターは、その外周面が前記ハウジング内壁に対向する形態であることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置。
【請求項8】
前記ローターには、複数のホールが形成されたことを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置。
【請求項9】
前記ハウジングは、金属材質であることを特徴とする、請求項1〜8の何れかに記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置。
【請求項10】
前記ハウジングの厚さは0.2〜0.5mmであることを特徴とする、請求項1〜9の何れかに記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置。
【請求項11】
前記ハウジング内部に、前記液体の程度を測定するためのレベルセンサーがさらに備えられたことを特徴とする、請求項1〜10の何れかに記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置。
【請求項12】
前記ハウジングへの重力作用方向を測定するための重力位置検出センサーがさらに備えられたことを特徴とする、請求項1〜11の何れかに記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置。
【請求項13】
前記重力位置検出センサーが、前記液体排出ポートが重力方向に配されていると検出する場合、前記ローターは回転しないことを特徴とする、請求項12に記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置。
【請求項14】
前記ハウジングに冷却効率を高めるためのフィンがさらに備えられたことを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置。
【請求項15】
スタックから回収された気液混合物が収容されるハウジングを備える気液分離装置を用意するステップと、
前記ハウジングへの重力作用方向を測定するための重力位置検出センサーで、前記気液混合物から分離された液体を排出する液体排出ポートの排出方向が重力作用方向と一致するかどうかを確認するステップと、
液体排出ポートの排出方向が重力作用方向と一致しなければ、前記ローターを作動させて遠心力で気液分離を進めるステップと、を含むメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置の使用方法。
【請求項16】
前記ハウジング中心部に設けられたガス排出ポートを開放してガスを排出させるステップと、
前記ハウジング外郭部に設けられた液体排出ポートを開放して液体を排出させるステップと、をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置の使用方法。
【請求項17】
前記ガス排出ポートに抜け出たガスを、1回以上折り曲げられた排出路に沿って前記ハウジング外部に排出させるステップを含むことを特徴とする、請求項16に記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置の使用方法。
【請求項18】
前記排出路は、前記ハウジングを取り囲んで少なくとも1回以上折り曲げられたことを特徴とする、請求項17に記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置の使用方法。
【請求項19】
前記液体排出ポートを開放する前に、前記ハウジング内部の液体が正常運転できる水位であるかどうかを確認するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項16〜18の何れかに記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置の使用方法。
【請求項20】
前記液体排出ポートが重力方向に配される場合、重力を利用して前記気液混合物から前記液体とガスとを分離するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項15〜19の何れかに記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置の使用方法。
【請求項21】
前記ハウジング内部の液体が正常運転できる水位であるかどうかを決定するために、前記ハウジング内の液体水位を測定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項15〜20の何れかに記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置の使用方法。
【請求項22】
前記液体水位が十分でなければ、前記気液混合物に遠心力を作用させないことを特徴とする、請求項21に記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置の使用方法。
【請求項23】
前記液体水位が十分でなければ、アラームを発生させることを特徴とする、請求項21又は22に記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置の使用方法。
【請求項24】
前記気液混合物に遠心力を作用させるように、前記ハウジングにローターが回転自在に設置されたことを特徴とする、請求項15〜23の何れかに記載のメタノールを直接燃料として使用する燃料電池用気液分離装置の使用方法。
【請求項25】
メタノールと酸素から電気を生成するスタックと、
前記スタックに供給されるメタノールが保存される貯蔵タンクと、
前記貯蔵タンクで混合されるメタノールが保存されるカートリッジと、
前記スタックから出た気液混合物を分離するための気液分離装置と、
を備え、
前記気液分離装置は、
前記スタックから回収された気液混合物が収容されるハウジングと、
前記ハウジング内に回転自在に設置されたローターと、
前記ローターを回転させるモーターと、
を備え、
前記モーターは、前記ローターを回転させ、前記気液混合物中の液体を遠心力により前記ハウジングの外郭側に集め、前記ガスを前記ハウジングの中心側に集めて相分離を起こさせ、
前記気液混合物から分離された液体は、前記貯蔵タンクに供給されることを特徴とするメタノールを直接燃料として使用する燃料電池システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−87927(P2009−87927A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214253(P2008−214253)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】