説明

メタリック樹脂成形金型

【課題】メタリック樹脂を用いた射出成形において、意匠面における不具合の発生を抑制する。
【解決手段】キャビティ1は、意匠成形面11と、この意匠成形面11に対向する非意匠成形面12とを備える。ゲート2は、非意匠成形面12に沿って平坦な状態で連設された第一のゲート内周面13と、この第一のゲート内周面13に対向する第二のゲート内周面14とを備える。ランナー3は、第一のゲート内周面13に沿って平坦な状態で連設された第一のランナー内周面15と、この第一のランナー内周面15に対向する第二のランナー内周面16とを備える。ここで、第一のゲート内周面13と第二のゲート内周面14との離隔距離Bが意匠成形面11と非意匠成形面12との離隔距離Aよりも短く、第一のランナー内周面15と第二のランナー内周面16との離隔距離Cが離隔距離Bよりも長く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタリック樹脂成形における金型構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形品において、高級なメタリック感を与えて意匠性を高めるために、メタリック塗装を行うことがある。しかしながら、メタリック塗装の場合、塗装工程の分だけ時間や経費を要するだけでなく、使用している間に塗装が剥がれてしまう可能性もある。そこで、アルミフレークを樹脂に直接練り込んだ状態で射出成形を行えば(特許文献1参照)、メタリック塗装を行うよりも、時間や経費を削減でき、且つ長期間に亘って意匠性を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−095026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的な顔料や染料にて調色された樹脂を用いるよりも、アルミやパール等のメタリック樹脂を用いると、フローマークやウェルドライン等の不具合が発生しやすいという問題があった。
本発明の課題は、メタリック樹脂を用いた射出成形において、意匠面における不具合の発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、
メタリック樹脂成形品を成形するキャビティと、前記キャビティに連通するゲートと、前記ゲートに連通するランナーと、を備え、前記キャビティは、前記メタリック樹脂成形品の表側に意匠面を成形する意匠成形面と、前記メタリック樹脂成形品の裏側に非意匠面を成形する前記意匠成形面に対向する非意匠成形面と、を備え、前記ゲートは、前記意匠成形面と前記非意匠成形面との間に連通され、前記非意匠成形面に沿って連設された第一のゲート内周面と、前記第一のゲート内周面に対向する第二のゲート内周面と、を備え、前記第一のゲート内周面と前記第二のゲート内周面との離隔距離が前記意匠成形面と前記非意匠成形面との離隔距離よりも短く設定され、前記ランナーは、前記第一のゲート内周面と前記第二のゲート内周面との間に連通され、前記第一のゲート内周面に沿って連設された第一のランナー内周面と、当該第一のランナー内周面に対向する第二のランナー内周面と、を備え、前記第一のランナー内周面と前記第二のランナー内周面との離隔距離が前記第一のゲート内周面と前記第二のゲート内周面との離隔距離よりも長く設定されていることを特徴とする。
【0006】
このように、意匠成形面の側は、ゲート部分で流路断面を絞り、くびれを形成しているので、溶融樹脂が第二のランナー内周面の側から第二のゲート内周面の側へと流れた反動によって、また流速が増加することによって、ゲートを通過した後に意匠成形面の側へと流れる。このとき、溶融樹脂に含有されるアルミフレークが意匠成形面に対して平行に配列されていくことで、意匠面にフローマークやウェルドラインなどの不具合が発生することを抑制することができる。一方、非意匠成形面の側は、この非意匠成形面に沿って第一のゲート内周面と第一のランナー内周面とが連設されるため、非意匠面の側には、フローマークやウェルドラインなどの不具合が発生しやすい。このように、非意匠面の側を犠牲にして、フローマークやウェルドラインなどの不具合を非意匠面に積極的に集めることで、意匠面における不具合の発生を抑制することができる。
【0007】
本発明の他の形態は、
前記ランナーに連通するスプルーを備え、前記第一のランナー内周面及び第二のランナー内周面は、前記スプルーから前記キャビティに向かって広がる扇状に形成されることを特徴とする。
このように、第一のランナー内周面及び第二のランナー内周面を扇状に形成したことで、ゲートの流路面積を大きくできるので、キャビティへの充填性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】金型構造の概略構成図である。
【図2】本発明の実施例を示す図である。
【図3】本発明を適用しなかった場合の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《構成》
図1は、金型構造の概略構成図である。
金型は、メタリック樹脂成形品を成形するキャビティ1と、このキャビティ1に連通するゲート2と、このゲート2に連通するランナー3と、このランナー3に連通するスプルー4と、を備える。
【0010】
メタリック樹脂成形品は、溶融樹脂にメタリック調のアルミフレークを練り込んだ状態で射出成形を行って成形される。
キャビティ1は、略平板状に形状され、メタリック樹脂成形品の表側に意匠面を形成するための意匠成形面11と、メタリック樹脂成形品の裏側に非意匠面を形成するために意匠成形面11に対向する非意匠成形面12と、を備える。ここで、意匠成形面11と非意匠成形面12との離隔距離をAとする。
【0011】
ゲート2は、意匠成形面11と非意匠成形面12との間に連通され、非意匠成形面12に沿って平坦な状態で連設された第一のゲート内周面13と、この第一のゲート内周面13に対向する第二のゲート内周面14と、を備える。ここで、第一のゲート内周面13と第二のゲート内周面14との離隔距離をBとし、この離隔距離Bが離隔距離Aよりも短く設定されている。
【0012】
ランナー3は、第一のゲート内周面13と第二のゲート内周面14との間に連通され、第一のゲート内周面13に沿って平坦な状態で連設された第一のランナー内周面15と、この第一のランナー内周面15に対向する第二のランナー内周面16と、を備える。ここで、第一のランナー内周面15と第二のランナー内周面16との離隔距離をCとし、この離隔距離Cが離隔距離Bよりも長く設定されている。第二のランナー内周面16と第二のゲート内周面14とを連結する側面17は傾斜させている。第二のランナー内周面16と第二のゲート内周面14との段差部が樹脂溜まりとなる。
【0013】
第二のランナー内周面16にスプルー4が連通され、第一のランナー内周面15及び第二のランナー内周面16は、スプルー4からキャビティ1に向かって広がる扇状に形成されている。
【0014】
《実施例》
図2は、本発明の実施例を示す図である。
意匠成形面11と非意匠成形面12との離隔距離Aは2.0mm、第一のゲート内周面13と第二のゲート内周面14との離隔距離Bは1.0mm、第一のランナー内周面15と第二のランナー内周面16との離隔距離Cは5.0mmに設定した。これにより、意匠面にフローマークやウェルドラインなどの不具合が発生することを抑制できた。
【0015】
図3は、本発明を適用しなかった場合の実施例を示す図である。
ここでは、第二のゲート内周面14と第二のランナー内周面16とを平坦な状態で連設する、つまりゲート2での流路断面の絞り、くびれの形成を省略して射出成形を行った。この場合には、意匠面にフローマークやウェルドラインなどの不具合が発生した。
なお、本実施形態では、コールドランナー設定のためスプルー4を設けた構成での実施例を示したが、ホットランナー設定によるスプルー無しでの構成でも同様の結果が得られた。
【符号の説明】
【0016】
1…キャビティ、2…ゲート、3…ランナー、4…スプルー、11…意匠成形面、12…非意匠成形面、13…第一のゲート内周面、14…第二のゲート内周面、15…第一のランナー内周面、16…第二のランナー内周面、17…側面、A…(意匠成形面11と非意匠成形面12との)離隔距離、B…(第一のゲート内周面13と第二のゲート内周面14との)離隔距離、C…(第一のランナー内周面15と第二のランナー内周面16との)離隔距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタリック樹脂成形品を成形するキャビティと、
前記キャビティに連通するゲートと、
前記ゲートに連通するランナーと、を備え、
前記キャビティは、前記メタリック樹脂成形品の表側に意匠面を成形する意匠成形面と、前記メタリック樹脂成形品の裏側に非意匠面を成形する前記意匠成形面に対向する非意匠成形面と、を備え、
前記ゲートは、前記意匠成形面と前記非意匠成形面との間に連通され、前記非意匠成形面に沿って連設された第一のゲート内周面と、前記第一のゲート内周面に対向する第二のゲート内周面と、を備え、前記第一のゲート内周面と前記第二のゲート内周面との離隔距離が前記意匠成形面と前記非意匠成形面との離隔距離よりも短く設定され、
前記ランナーは、前記第一のゲート内周面と前記第二のゲート内周面との間に連通され、前記第一のゲート内周面に沿って連設された第一のランナー内周面と、当該第一のランナー内周面に対向する第二のランナー内周面と、を備え、前記第一のランナー内周面と前記第二のランナー内周面との離隔距離が前記第一のゲート内周面と前記第二のゲート内周面との離隔距離よりも長く設定されていることを特徴とするメタリック樹脂成形金型。
【請求項2】
前記ランナーに連通するスプルーを備え、
前記第一のランナー内周面及び第二のランナー内周面は、前記スプルーから前記キャビティに向かって広がる扇状に形成されることを特徴とする請求項1に記載のメタリック樹脂成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−213031(P2011−213031A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84889(P2010−84889)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】