説明

メタン発酵消化液の高付加価値化の方法およびその装置

【課題】メタン発酵消化液から有機物成分を含まないMAPを回収する。
【解決手段】メタン発酵消化液の高付加価値化装置2は、消化液回収システム3により有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液を回収し、回収された消化液Dg、Lを、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システム4により蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した有機成分を含まない蒸留液L−NHを生成し、生成されたアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHを形成槽5に貯留するようになっている。形成槽5の濃縮蒸留液L−NHに、投入装置6によりリン酸溶出材とマグネシウム塩とが投入されると、形成槽5内にリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)が生成されて沈殿される。沈殿したMAPを回収して乾燥させると、有機物成分を含まないMAPが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン発酵消化液の高付加価値化の方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機性廃棄物を発酵させメタンを生成した後に残留する消化液を肥料として利用するには、消化液を濃縮・減量して、貯蔵や輸送、農地への施用の効率化を図り、季節的にも地域的にも偏在する肥料の需要に応える必要がある。メタン発酵処理を経た有機性廃棄物は消化液として排出される。消化液は窒素、リン、カリウムなどを含有しているので、液肥として利用することが期待されている。しかしながら、消化液は、T−N(総窒素)で、1,000−5,000mg/L、T−P(総リン)で、200−800mg/L、T−K(総カリ)で1,000−4000mg/L程度と肥効成分が薄い。このため、従来、嫌気性発酵工程における消化汚泥を脱水工程に導いて脱水し、脱離液をリン除去工程に導いて晶析法により物理化学的に脱リンすることによって、脱離液中のリン成分をリン酸マグネシウムアンモニウムとして回収する回収方法が知られている(特許文献1参照)。また、有機性汚水を生物処理した処理水に対し、ろ過層を通過させることによって、SS,リンを同時に除去する有機性汚水の処理方法で、粒状ろ材ろ過層の洗浄において、その洗浄排水にNaOHを添加しアルカリ性として洗浄排水中のSSからリンを溶出させた後、固液分離し、その分離液にリン不溶化剤を添加してリンをカルシウム化合物またはマグネシウム化合物として分離回収するようにしたものが知られている(特許文献2参照)。
【0003】
さらに、嫌気性処理槽の嫌気性処理汚泥に、リン酸マグネシウムアンモニウムまたはリン酸マグネシウムまたはリン酸カルシウムの種結晶とリン酸塩及び/又はマグネシウム化合物を添加することにより、アンモニアを固定化する有機性廃棄物の処理方法が知られている(特許文献3参照)。この特許文献3に記載の有機性廃棄物の処理方法では、嫌気性処理槽のpHは、メタン生成菌の活動しやすいpH6〜8になるよう、アルカリ剤や鉱酸で調整するようにしている。一般に、リン酸マグネシウムアンモニウムの生成pHは、8〜9であるが、種結晶が共存することによりやや低いpHでも、リン酸マグネシウムアンモニウムを生成してアンモニアの濃度を低下させることができるようにし、嫌気性処理汚泥に混合された種結晶の表面に形成されたリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を汚泥から分級分離した種結晶とともに肥料として利用するようにしている。
【0004】
また、嫌気性処理後の汚泥を、その一部又は全量にリン酸塩及び/又はマグネシウム化合物を添加して、リン酸マグネシウムアンモニウムを生成させた後、その一部又は全量を固液分離し、この分離液を嫌気性処理に返送する処理方法が知られている(特許文献4参照)。この特許文献4に記載の有機性廃棄物の処理方法では、第1工程で有機性廃棄物を嫌気性処理し、もしくは嫌気性処理後に固液分離し、この嫌気性処理汚泥もしくは嫌気性処理汚泥を固液分離した分離水の一部又は全量を対象に、第2工程で第1工程で生成したアンモニア性窒素を、リン酸塩及びマグネシウム化合物の存在下で、pH調整剤によりpH8〜10、好ましくは8.5〜9.5にし、不溶性のリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)とした後、固液分離し、アンモニアが除去された分離液を第1工程へ送り、この分離液による希釈で嫌気性処理のアンモニア性窒素濃度を下げ、遊離アンモニアによるメタン菌の阻害を抑制し、固液分離で分離されたMAPを含む汚泥をコンポストとして用いるようにしている。
【特許文献1】特開平9−201599号公報(第2−3頁、図1)
【特許文献2】特開平8−24873号公報(第4頁、図1)
【特許文献3】特開2003−94014号公報(第3頁、図2)
【特許文献4】特開2001−47003号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1ないし4に記載の処理方法ではいずれも、回収されたリン酸マグネシウムアンモニウム(以下、MAPと称す)に、有機物や浮遊物質が多量に含まれるため、このMAPを貯蔵して保管したり、運搬する際に有機物成分が腐敗して悪臭を放ったりし、利用者に汚物感を与えるという問題がある。また、MAPを形成する条件として、高アルカリ性にしなければならないので、アルカリ剤を添加してpHを上昇させなければならず、工程の増大による作業効率の低下とコストアップを招くという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、消化液のアンモニア成分を有効に利用し、有機物成分や浮遊物質が含まれないリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収することができ、しかも、高アルカリ条件下におくアルカリ剤添加処理を必要としないメタン発酵消化液の高付加価値化の方法およびその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の方法は、有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液を回収する第1のステップと、この消化液を蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した蒸留液を生成する第2のステップと、第2のステップで生成された蒸留液に、含有されるリン成分が高アルカリ性溶液中で溶出されるリン溶出材とマグネシウム化合物とを投入してリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を生成させ沈殿させて固液分離させる第3のステップと、沈殿したリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収する第4のステップとを有することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項1に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の方法では、有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液を回収する第1のステップと、この消化液を蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した蒸留液を生成する第2のステップと、第2のステップで生成された蒸留液に、含有されるリン成分が高アルカリ性溶液中で溶出されるリン溶出材とマグネシウム化合物とを投入してリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を生成させ沈殿させて固液分離させる第3のステップと、沈殿したリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収する第4のステップとを有するようにしたことにより、第1のステップで、有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液が回収され、第2のステップで、この消化液を蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した蒸留液が生成される。このとき、アンモニア性窒素が濃縮された蒸留液は、蒸留時に浮遊物や有機物が分離・除去され、浮遊物や有機物をほとんど含まない、高濃度のアンモニア性窒素が含まれる蒸留液となっており、pHが高く、高アルカリ性の蒸留液となっている。次に、第3のステップで、上記第2のステップで生成され形成槽に導かれた高アルカリ性蒸留液にリン溶出材とマグネシウム化合物とが投入されると、高アルカリ性蒸留液中で不溶性リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)が生成され沈殿して固液分離され、第4のステップで、沈殿したリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)が回収される。回収されたリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)には、浮遊物や有機物がほとんど含まれていないため、腐敗することがなく、肥効成分である窒素・リンが濃縮され、保管や運搬が容易で肥料として取り扱いし易い。
【0009】
本発明の請求項2に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の方法は、第3のステップで、第2のステップで生成された蒸留液をリン処理槽に導き、リン処理槽に導かれた蒸留液にリン溶出材を投入し、リン成分が溶出されたリン溶出材の沈殿物とアンモニア性窒素およびリン酸態リンを含む溶解液とを生成させて固液分離させた後、分離された溶解液を形成槽に導き、形成槽の溶解液にマグネシウム化合物を投入しリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を生成させ沈殿させて固液分離させることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項2に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の方法では、第3のステップで、第2のステップで生成された蒸留液をリン処理槽に導き、リン処理槽に導かれた蒸留液にリン溶出材を投入し、リン成分が溶出されたリン溶出材の沈殿物とアンモニア性窒素およびリン酸態リンを含む溶解液とを生成させて固液分離させた後、分離された溶解液を形成槽に導き、形成槽の溶解液にマグネシウム化合物を投入しリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を生成させ沈殿させて固液分離させるようにしたことにより、第3のステップで、まず、第2のステップで生成された蒸留液をリン処理槽に導き、リン処理槽に導かれアンモニア性窒素が濃縮されて高濃度のアンモニア及びアンモニウムイオンが含まれる蒸留液に、リン溶出材が投入されるとリンが溶出されて、投入されたリン溶出材の沈殿物とアンモニア性窒素およびリン酸態リンを含む溶解液とが生成され固液分離される。分離された溶解液が形成槽に導かれ、形成槽の溶解液にマグネシウム化合物が投入されると、マグネシウムイオンが反応してリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)が生成され、沈殿分離される。このため、最終的に回収されるリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)には、リン溶出材の沈殿物が含まれることがなく、純度の高いリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)が得られる。
【0011】
本発明の請求項3に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の方法は、リン溶出材が、工業用に製造されたリン酸塩、炭化物、焼却灰、バイオマス由来の炭化物、バイオマス由来の焼却灰のうち少なくともいずれか1であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項3に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の方法では、リン溶出材が、工業用に製造されたリン酸塩、炭化物、焼却灰、バイオマス由来の炭化物、バイオマス由来の焼却灰のうち少なくともいずれか1であることにより、リン溶出材に工業用に製造されたリン酸塩を利用すると、溶出条件に応じて溶出するリン酸の量を正確に予め計算することができる。リン溶出材に炭化物または焼却灰を利用すると、工業用に製造されたリン酸塩より安価に製造することができるとともに、本来廃棄されるべき材料を用いるので、環境負荷を減じることができる。リン溶出材にバイオマス由来の炭化物またはバイオマス由来の焼却灰を利用すると、リン酸だけでなくマグネシウムも含有しているので、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)生成の反応に寄与する。
【0013】
本発明の請求項4に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の装置は、有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液を回収する消化液回収システムと、この消化液回収システムにより回収された消化液を蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した蒸留液を生成するアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムと、このアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムにより生成された蒸留液を貯留し、内部に沈殿物が生成されると生成された沈殿物が分離回収される形成槽と、この形成槽に貯留された蒸留液に、含有されるリン成分が高アルカリ性溶液中で溶出されるリン溶出材とマグネシウム化合物とを投入するリン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段とを備えるとともに、蒸留液が貯留された形成槽にリン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段によりリン溶出材とマグネシウム化合物とを投入し、形成槽内にリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を生成させ沈殿させて回収することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項4に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の装置では、有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液を回収する消化液回収システムと、この消化液回収システムにより回収された消化液を蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した蒸留液を生成するアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムと、このアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムにより生成された蒸留液を貯留し、内部に沈殿物が生成されると生成された沈殿物が分離回収される形成槽と、この形成槽に貯留された蒸留液に、含有されるリン成分が高アルカリ性溶液中で溶出されるリン溶出材とマグネシウム化合物とを投入するリン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段とを備えるとともに、蒸留液が貯留された形成槽にリン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段によりリン溶出材とマグネシウム化合物とを投入し、形成槽内にリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を生成させ沈殿させて回収するようにしたことにより、消化液回収システムにより有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液を回収し、この消化液回収システムにより回収された消化液を、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムにより蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した蒸留液を生成する。このとき生成されたアンモニア性窒素が濃縮された蒸留液は、蒸留時に浮遊物や有機物が除去され、浮遊物や有機物をほとんど含まない、高濃度のアンモニア性窒素が含まれる蒸留液となっており、pHが高く、高アルカリ性の蒸留液となっている。次に、この蒸留液が形成槽に貯留されると、リン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段により、リン溶出材とマグネシウム化合物とが形成槽に貯留された蒸留液に投入される。高アルカリ性蒸留液にリン溶出材とマグネシウム化合物とが投入されると、液中に不溶性リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)が生成され沈殿して固液分離され、沈殿したリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)が回収される。回収されたリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)には、浮遊物や有機物がほとんど含まれていないため、腐敗することがなく、肥料として取り扱いし易い。
【0015】
本発明の請求項5に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の装置は、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムと形成槽との間に設けられ、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムにより生成された蒸留液を貯留するリン処理槽と、このリン処理槽の蒸留液にリン溶出材を投入してリン成分が溶出されたリン溶出材の沈殿物とアンモニア性窒素およびリン酸態リンを含む溶解液とを生成させ固液分離させるリン溶出材投入手段と、リン処理槽内で固液分離された上記沈殿物と上記溶解液とのうち、分離した溶解液を上記形成槽に導く溶解液導入手段とを設けるとともに、リン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段は、溶解液導入手段により形成槽に導かれた上記溶解液にマグネシウム化合物を投入することを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項5に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の装置では、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムと形成槽との間に設けられ、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムにより生成された蒸留液を貯留するリン処理槽と、このリン処理槽の蒸留液にリン溶出材を投入してリン成分が溶出されたリン溶出材の沈殿物とアンモニア性窒素およびリン酸態リンを含む溶解液とを生成させ固液分離させるリン溶出材投入手段と、リン処理槽内で固液分離された上記沈殿物と上記溶解液とのうち、分離した溶解液を上記形成槽に導く溶解液導入手段とを設けるとともに、リン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段は、溶解液導入手段により形成槽に導かれた上記溶解液にマグネシウム化合物を投入するようにしたことにより、まず、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムにより生成された蒸留液をリン処理槽に貯留し、このリン処理槽に貯留されたアンモニア性窒素が濃縮されて高濃度のアンモニア及びアンモニウムイオンが含まれる蒸留液に、リン溶出材投入手段により、リン溶出材が投入されると、リン処理槽内にリン成分が溶出されたリン溶出材の沈殿物とアンモニア性窒素およびリン酸態リンを含む溶解液とが生成され、リン処理槽内で、生成された上記沈殿物と上記溶解液とが固液分離される。次に、溶解液導入手段により、分離した溶解液が形成槽に導かれ、リン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段により、形成槽に貯留された上記溶解液にマグネシウム化合物が投入されると、マグネシウムイオンが反応してリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)が生成され、沈殿分離される。このため、最終的に回収されるリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)には、リン溶出材の沈殿物が含まれることがなく、純度の高いリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)が得られる。
【0017】
本発明の請求項6に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の装置は、リン溶出材が、工業用に製造されたリン酸塩、炭化物、焼却灰、バイオマス由来の炭化物、バイオマス由来の焼却灰のうち少なくともいずれか1であることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項6に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の装置では、リン溶出材が、工業用に製造されたリン酸塩、炭化物、焼却灰、バイオマス由来の炭化物、バイオマス由来の焼却灰のうち少なくともいずれか1であることにより、リン溶出材に工業用に製造されたリン酸塩を利用すると、溶出条件に応じて溶出・溶解するリン酸の量を正確に予め計算することができる。リン溶出材に炭化物または焼却灰を利用すると、工業用に製造されたリン酸塩より安価に製造することができるとともに、本来廃棄されるべき材料を用いるので、環境負荷を減じることができる。リン溶出材にバイオマス由来の炭化物またはバイオマス由来の焼却灰を利用すると、リン酸だけでなくマグネシウムも含有しているので、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)生成の反応に寄与する。
【0019】
本発明の請求項7に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の装置は、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムは、有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液が注入される蒸留タンクと、この蒸留タンクに設けられ内部の消化液を所定の温度で加熱する加熱手段と、この蒸留タンクに連通され蒸留タンクで蒸発した気体を冷却して凝縮させる冷却部と、吸引側が冷却部に接続され装置内の圧力を減圧させる減圧ポンプと、冷却部に連通され、冷却部で冷却された凝縮液を導き入れる第1および第2の受液タンクと、これら第1および第2の受液タンクと冷却部との間に設けられ連通路を切り替える切替弁とを備えた濃縮装置により構成され、蒸留タンク内に注入された消化液を加熱手段で加熱し、蒸発した気体を冷却部で凝縮させ、このアンモニア濃度の高いアンモニア濃縮蒸留液を切替弁を介して第1の受液タンクに導き、蒸留タンク内で蒸発する気体のアンモニア濃度が低下すると切替弁を切り替え、冷却部で凝縮されたアンモニア濃度の低い清浄蒸留液を第2の受液タンクに導き、第1の受液タンクからアンモニア濃縮蒸留液を、第2の受液タンクから清浄蒸留液を、蒸留タンクから消化液の濃縮液をそれぞれ回収することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項7に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の装置では、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムは、有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液が注入される蒸留タンクと、この蒸留タンクに設けられ内部の消化液を所定の温度で加熱する加熱手段と、この蒸留タンクに連通され蒸留タンクで蒸発した気体を冷却して凝縮させる冷却部と、吸引側が冷却部に接続され装置内の圧力を減圧させる減圧ポンプと、冷却部に連通され、冷却部で冷却された凝縮液を導き入れる第1および第2の受液タンクと、これら第1および第2の受液タンクと冷却部との間に設けられ連通路を切り替える切替弁とを備えた濃縮装置により構成され、蒸留タンク内に注入された消化液を加熱手段で加熱し、蒸発した気体を冷却部で凝縮させ、このアンモニア濃度の高いアンモニア濃縮蒸留液を切替弁を介して第1の受液タンクに導き、蒸留タンク内で蒸発する気体のアンモニア濃度が低下すると切替弁を切り替え、冷却部で凝縮されたアンモニア濃度の低い清浄蒸留液を第2の受液タンクに導き、第1の受液タンクからアンモニア濃縮蒸留液を、第2の受液タンクから清浄蒸留液を、蒸留タンクから消化液の濃縮液をそれぞれ回収するようにしたことにより、有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液が注入される蒸留タンクと、この蒸留タンクに設けられ内部の消化液を所定の温度で加熱する加熱手段と、この蒸留タンクに連通され蒸留タンクで蒸発した気体を冷却して凝縮させる冷却部と、吸引側が冷却部に接続され装置内の圧力を減圧させる減圧ポンプと、冷却部に連通され、冷却部で冷却された凝縮液を導き入れる第1および第2の受液タンクと、これら第1および第2の受液タンクと冷却部との間に設けられ連通路を切り替える切替弁とを備え、蒸留タンク内に注入された消化液を加熱手段で加熱し、蒸発した気体を冷却部で凝縮させ、このアンモニア濃度の高いアンモニア濃縮蒸留液を切替弁を介して第1の受液タンクに導き、蒸留タンク内で蒸発する気体のアンモニア濃度が低下すると切替弁を切り替え、冷却部で凝縮されたアンモニア濃度の低い清浄蒸留液を第2の受液タンクに導き、第1の受液タンクからアンモニア濃縮蒸留液を、第2の受液タンクから清浄蒸留液を、蒸留タンクから消化液の濃縮液をそれぞれ回収するようにしたことにより、蒸留タンクに消化液を注入して切替弁を切り替え、第1の受液タンクを冷却部に連通させ、加熱手段により蒸留タンク内の消化液を加熱するとともに、減圧ポンプにより、吸気側が連通する蒸留タンクと冷却部と第1の受液タンクとを常圧または常圧より低い第1の圧力条件下におくと、蒸留タンクの消化液から蒸発したアンモニア濃度の濃い気体は冷却部で冷却されて凝縮し、切替弁を介して第1の受液タンクに集められる。蒸留が継続し時間の経過とともに、蒸留タンク内の消化液中のアンモニア態窒素成分が低下し、凝縮液のアンモニア濃度が低下すると、切替弁を切り替え第2の受液タンクを冷却部に連通させる。アンモニア濃度の低い清浄蒸留液は切替弁を介して第2の受液タンクに集められる。処理が完了すると、蒸留タンクからは残留した消化液濃縮液が、第1の受液タンクからは貯留されたアンモニア濃縮蒸留液が、第2の受液タンクからは貯留された清浄蒸留液がそれぞれ回収される。このため、メタン発酵完了後の消化液に対し酸を添加することなく分離濃縮処理を行うことができる。回収されたアンモニア性窒素が濃縮されたアンモニア濃縮蒸留液は、蒸留時に浮遊物や有機物が分離・除去され、浮遊物や有機物をほとんど含まない、高濃度のアンモニア性窒素が含まれる蒸留液となっており、pHが高く、高アルカリ性の蒸留液となっている。また、回収された消化液濃縮液やアンモニア濃縮液を肥料として用いることができ、回収された清浄蒸留水はアンモニア濃度が低く、他の水質汚濁項目も清浄な値であるため、環境に負荷を与えることなく放流することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の方法では、有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液を回収する第1のステップと、この消化液を蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した蒸留液を生成する第2のステップと、第2のステップで生成された蒸留液に、含有されるリン成分が高アルカリ性溶液中で溶出されるリン溶出材とマグネシウム化合物とを投入してリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を生成させ沈殿させて固液分離させる第3のステップと、沈殿したリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収する第4のステップとを有するようにしたので、有機物成分や浮遊物質等の不純物を含まれないリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収することができ、取り扱いしやすくしかも高品質の肥料を得ることができる。また、高アルカリ条件下におく処理工程もアルカリ調整剤も必要としないので、作業の効率化とコストダウンを図ることができる。
【0022】
本発明に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の装置では、有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液を回収する消化液回収システムと、この消化液回収システムにより回収された消化液を蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した蒸留液を生成するアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムと、このアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムにより生成された蒸留液を貯留し、内部に沈殿物が生成されると生成された沈殿物が分離回収される形成槽と、この形成槽に貯留された蒸留液に、含有されるリン成分が高アルカリ性溶液中で溶出されるリン溶出材とマグネシウム化合物とを投入するリン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段とを備えるとともに、蒸留液が貯留された形成槽にリン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段によりリン溶出材とマグネシウム化合物とを投入し、形成槽内にリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を生成させ沈殿させて回収するようにしたので、簡素な構造で、有機物成分や浮遊物質等の不純物を含まれないリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収することができ、取り扱いしやすくしかも高品質の肥料を得ることができる。また、高アルカリ条件下におく処理工程もアルカリ調整剤も必要としないので、作業の効率化とコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
消化液から有機物成分を含まないリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を生成して回収するという目的を、有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液を回収する消化液回収システムと、この消化液回収システムにより回収された消化液を蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した蒸留液を生成するアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムと、このアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムにより生成された蒸留液を貯留し、内部に沈殿物が生成されると生成された沈殿物が分離回収される形成槽と、蒸留液が貯留された形成槽に、含有されるリン酸成分が高アルカリ性溶液中で溶出されるリン酸溶出材とマグネシウム塩とを投入するリン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段とを備え、消化液回収システムにより、有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液を回収し、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムにより、この消化液を蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した蒸留液を生成し、生成された蒸留液を形成槽に貯留し、リン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段により、形成槽に貯留された蒸留液にリン酸溶出材とマグネシウム塩とを投入してリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を生成させ沈殿分離させ、沈殿したリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収することにより実現した。
【実施例1】
【0024】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1および図2はそれぞれ、本発明の第1の実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の装置のうち、消化液回収システムとアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムとを示す説明図、図3および図4はそれぞれ、上記実施例に係る高付加価値化装置を概念的に示す概念図である。本実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化装置(MAP生成回収システム)2は、有機性廃棄物Mを発酵させてメタン生成後に残留する消化液(ろ液)Lを回収する消化液回収システム3(図1参照)と、この消化液回収システム2により回収された消化液(ろ液)Lを蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した蒸留液L−NHを生成するアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システム4(図2参照)と、このアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システム4により生成された蒸留液L−NHを貯留する形成槽5(図4参照)と、形成槽5に貯留された蒸留液L−NHにリン酸マグネシウムアンモニウム(以下、MAPと称す。)を生成させる材料を投入する投入装置(リン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段)6とを備えて構成される。
【0025】
消化液回収システム3は、図1に示すように、受け入れビット10に受け入れられた有機性廃棄物M(例えば、家畜の糞尿や野菜屑、野菜汁など)を夾雑物脱水機11に投入して夾雑物M1を除去し、夾雑物M1が除去された液分をメタン発酵槽12に導入し、このメタン発酵槽12内で嫌気性処理を行い、発生したバイオガスGをガスエンジン21(図3参照)により利用するようになっている。発酵後、固形分M2を含む消化液Dgは消化液貯留槽13に送られ、さらに、消化液Dgは消化液脱水機14により固形分M2が回収されるとともに、液分が脱水ろ液Lとしてろ液貯留槽15に貯留される。夾雑物M1や固形分M2は、バイオマスボイラ22(図3参照)に送られ、バイオマス由来の炭化物または焼却灰として利用される。こうして、消化液回収システム3は、有機性廃棄物Mを発酵させてメタン生成後に残留する消化液Lを回収するようになっている。なお、本実施例では、この消化液回収システム3を上述のように構成し、消化液Lを回収するようにしているが、これに限られるものではなく、消化液回収システムは、有機性廃棄物Mを発酵させてメタン生成後に残留する消化液(ろ液)Lを回収するものであればよいことはいうまでもない。
【0026】
アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システム4は、図2に示すように、蒸留タンク23と、この蒸留タンク23に連通され、蒸留タンク23で蒸発した気体を冷却して凝縮させる冷却部24と、冷却部24を介して蒸留タンク23に連通され蒸留タンク23内の圧力を減圧させる減圧ポンプ25と、この減圧ポンプ25と冷却部24との間に通路30を介して設けられた切替弁26と、この切替弁26を介して冷却部24にそれぞれ連通可能な第1および第2の受液タンク27、28と、蒸留タンク23に設けられた加熱装置29(ガスエンジン21の加熱部)とを備えている。
【0027】
蒸留タンク23には、上部に導入弁(開閉弁)31が、底部に蒸留タンク排出弁32がそれぞれ設けられる。蒸留タンク23には、導入弁31を介してろ液貯留槽15から消化液(ろ液)Lが注入されるようになっている。蒸留タンク排出弁32は、処理完了後、蒸留タンク23内に残った消化液濃縮液(ろ液濃縮液)を外部に排出するようになっている。加熱装置29は、蒸留タンク23に消化液(ろ液)Lが注入されると、蒸留タンク23を加熱し、内部の消化液Lを設定された所定の減圧下で沸騰させ、蒸発を促すようになっている。消化液Lの蒸発時、気体のみが蒸発し、消化液Lに含まれる浮遊物質や有機物成分は蒸留タンク23の消化液L中に取り残される。切替弁26は、切り替え動作により冷却部24と第1の受液タンク27または第2の受液タンク28のうち一方とを連通させるようになっている。切替弁26は、アンモニア濃縮蒸留液を集める際には、冷却部24と第1の受液タンク27とを連通させ、アンモニア成分の低下した清浄蒸留液を集める際には、冷却部24と第2の受液タンク28とを連通させるようになっている。消化液Lの蒸発促進に加熱装置29を用い、気化した気体の凝縮に冷却部24を用いるのは、アンモニアの、水によく溶け、高温で気化しやすく低温で凝縮しやすい性質を利用したものである。減圧ポンプ25は、蒸留タンク23、冷却部24および切替弁26を介して連通する第1の受液タンク27または第2の受液タンク28のうち一方を、常圧以下の予め設定された圧力P1(P1≦常圧)で減圧するようになっている。減圧ポンプ25は、排気側が外気側に連通し、装置4内で生じるガスを外部に排出するようになっている。
【0028】
第1の受液タンク27には、上部に第1のエア抜き弁33が、底部に第1の排出弁34がそれぞれ設けられる。また、第2の受液タンク28には、上部に第2のエア抜き弁35が、底部に第2の排出弁36がそれぞれ設けられる。各エア抜き弁33、35は、それぞれのタンク27、28に集められた溶液を排出弁34、36を通じて外部に排出する際に開放され、各タンク27、28内を外気に連通させ、溶液を排出しやすくしている。
【0029】
このアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システム4は、蒸留タンク23に消化液Lを一旦注入すると、バッチ処理によりまずアンモニア濃縮蒸留液L−NHを第1の受液タンク27に集め、その後、清浄蒸留液L−Wを第2の受液タンク28に集めるようにしている。処理完了後、蒸留タンク23から減量された消化液の濃縮液Lcを、第1の受液タンク27からアンモニア濃縮蒸留液L−NHを、第2の受液タンク28から清浄蒸留液L−Wをそれぞれ回収するようになっている。このように、第1の受液タンク27には、蒸発と凝縮の過程で、消化液Lに含まれる浮遊物や有機物が除去された濃度の濃いアンモニア性窒素を含む高アルカリ性の濃縮蒸留液L−NHが得られるようになっている。
【0030】
すなわち、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システム4では、蒸留タンク23に消化液Lを注入して切替弁26を切り替え、第1の受液タンク27を冷却部24に連通させ、加熱装置29により蒸留タンク23内の消化液Lを加熱するとともに、減圧ポンプ25により、吸気側が連通する蒸留タンク23と冷却部24と第1の受液タンク27とを常圧または常圧より低い圧力条件下におくと、蒸留タンク23の消化液Lから蒸発したアンモニア濃度の濃い気体は冷却部24で冷却されて凝縮し、切替弁26を介して第1の受液タンク27に集められる。蒸留が継続し時間の経過とともに、蒸留タンク23内の消化液L中のアンモニア態窒素成分が低下し、凝縮液のアンモニア濃度が低下すると、切替弁26を切り替え第2の受液タンク28を冷却部24に連通させるようになっている。アンモニア濃度の低い清浄蒸留液は切替弁26を介して第2の受液タンク28に集められる。処理が完了すると、蒸留タンク23からは残留した消化液濃縮液Lcが、第1の受液タンク27からは貯留されたアンモニア濃縮蒸留液L−NHが、第2の受液タンク28からは貯留された清浄蒸留液L−Wがそれぞれ回収される。このシステム4では、メタン発酵完了後の消化液Lに対し酸を添加することなく分離濃縮処理を行うことができるようになっており、第1の受液タンク27には、浮遊物や有機物等の不純物を含むことのない高アルカリ性のアンモニア濃縮蒸留液L−NHが貯留される。なお、本実施例では、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システム4を上述のように構成し、アンモニア濃縮蒸留液L−NHを得るようにしているが、これに限られるものではなく、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムは、消化液を蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した蒸留液を生成するものであればよい。
【0031】
ところで、本実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化装置2は、図4に示すように、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システム4で得られた高アルカリ性のアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHを形成槽5に導くようになっている。形成槽5にアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHが貯留されると、形成槽5の上方に設けられた投入装置(リン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段)6により、工業用に製造されたリン酸塩(リン成分、リン溶出材)とマグネシウム塩(マグネシウム化合物)とをこの蒸留液L−NHに投入するようになっている。このリン酸塩は固体状のものであってもよいし、リン酸塩を溶解した溶液であってもよいし、また、リン酸塩を液体に混合したスラリー状のものであってもよい。なお、後述する実験では、粉状の試薬を用いて実験を行った。高アルカリ性で純度の高い蒸留液L−NHにリン酸塩とマグネシウム塩とが投入され攪拌されると、蒸留水L−NH中の高濃度のアンモニア及びアンモニウムイオンにリン酸イオンとマグネシウムイオンとが反応し、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)が生成され、生成された不溶性のMAPは形成槽5の底部に沈殿して固液分離する。沈殿されたMAPは、形成槽5から分離した液を排出し抜き取った後、回収される。この回収されたMAPは、消化液Lに含まれる浮遊物質や有機物成分を含むことがないので、腐敗したり悪臭を発することがない。また、蒸留処理されたアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHは、形成槽5に導入される時点ですでに高アルカリ性となっているので、MAP生成のためにアルカリ調整剤を投入する必要がなく、この濃縮蒸留液L−NHが形成槽5に貯留されると、直ちに投入装置6によりリン酸塩とマグネシウム塩との投入を開始することができる。
【0032】
次に、本発明に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の方法について、上記実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化装置2の作用に基づいて説明する。高付加価値化装置2は、消化液回収システム3により、有機性廃棄物Mを発酵槽12で発酵させてメタン生成後に残留する消化液Dgを消化液貯留槽13に導き、さらに、消化液Dgは消化液脱水機14に送られ、固形分M2が回収された液分が脱水ろ液Lとしてろ液貯留槽15に貯留される(第1のステップS1、図5参照)。次に、この消化液Lは、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システム4の蒸留槽23に導かれる。そして、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システム4により、蒸留槽23に貯留された消化液Lは、加熱装置29で加熱され、減圧ポンプ25で所定の減圧下で沸騰させられ、蒸発が促される。消化液Lの蒸発時、水やアンモニアの沸点が低い物質が蒸発し、消化液Lに含まれる浮遊物質や有機物成分は蒸留タンク23の消化液L中に取り残され、冷却部24で凝縮された高濃度のアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHは第1の受液タンク27に集められる(第2のステップS2)。この蒸留処理時に、浮遊物や有機物成分が除去されるので、第1の受液タンク27に集められ貯留されるアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHは、不純物を含まない高アルカリ性の蒸留液となっている。次に、このアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHは形成槽5に導かれる。形成槽5に導かれたアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHに投入装置6によりリン酸塩(リン成分、リン溶出材)とマグネシウム塩とが投入され、攪拌されるとMAPが生成される。MAPは不溶性であるため、攪拌を止めると沈殿し、固液分離する(第3のステップS3)。次に、沈殿されたMAPは、形成槽5から分離した液が排出されて抜き取られた後、回収される(第4のステップS4)。回収されたMAPは、浮遊物質や有機物成分を含んでいないので、腐敗したり悪臭を発することのない高品質の肥料として利用することができ、しかも取り扱いし易い。また、蒸留処理されたアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHは、MAP生成時にすでに高アルカリ性となっているので、MAP生成のためにアルカリ調整剤の投入を必要とせず、作業が効率化、迅速化され、コストダウンを図ることができる。
消化液を単純に蒸留した蒸留液でも、リン処理槽および形成槽の処理によってMAPの形成は可能である。しかし、この場合、形成槽でMAPを固液分離した後の液分(以下、形成槽液分という。)の量が大きい。同液には、MAP反応残の窒素、リン等が残存しそのまま放流できず、消化液の濃縮・減量が果たせない。もちろん、形成槽でのMAP反応を最適にして形成槽液分中の窒素、リン等の残存量を最小にし、放流を可能とすることは技術的には可能である。しかしながら、そのためには、MAP反応に最適なpH値に調整したり、形成槽に導入されるアンモニア性窒素濃縮液のアンモニア性窒素濃度およびリン酸溶出材からのリンの溶出量をモニタリングし、それに応じたマグネシウム化合物の添加制御が必要である。このような制御はpH調整剤を必要とするなどコスト高を招くとともに、リン溶出量が変化しやすい炭化物、焼却灰(バイオマス由来を含む)をリン酸溶出材として用いることはできない。これに対して図2に示すような蒸留法では、アンモニア性窒素濃縮液の生成の段階で消化液の減量が図られており、形成槽液分も先に述べた単純な蒸留に比べて少なくなる。このため、形成槽液分に仮に多量の窒素、リン等が残存しても、液肥としての活用が容易である。特に、図2の蒸留法で同時に生成される濃縮液にはカリウムが濃縮されているので、形成槽液分との併用で、三大肥料成分の窒素、リン、カリウムを施肥できる。
【実施例2】
【0033】
次に、本発明の第2の実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化装置102について説明する。本発明の第2の実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化装置102は、上記第1の実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化装置2が、投入装置6によりリン溶出材として工業用に製造されたリン酸塩とマグネシウム塩とを形成槽5に投入するのに対し、図6に示すように、投入装置(リン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段)106、107は、第1の投入装置106と第2の投入装置107とを備えて構成される。第1の投入装置106はマグネシウム塩を、第2の投入装置107は、工業用リン酸塩に代えてバイオマス由来の炭化物またはバイオマス由来の焼却灰を投入した点が異なる外は上記第1の実施例とほぼ同一の構成を備えている。バイオマス由来の炭化物または焼却灰には、リン成分が含まれ、量は限られるもののマグネシウム成分も含まれている。このバイオマス由来の炭化物または焼却灰は、固体状でも、微粉体状でも、また、固体状のものを液体の混合したスラリー状のものであってもよい。本実施例に係る高付加価値化装置102では、第1の受液タンク27から形成槽5に導入されたアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHに、第2の投入装置107によりバイオマス由来の炭化物または焼却灰を投入するとともに第1の投入装置106により工業用マグネシウム塩を投入するようになっている。このため、形成槽5の蒸留液L−NH中には、バイオマス由来の炭化物または焼却灰からリン酸塩イオンが、厳密には、リン酸イオンとわずかな量のマグネシウムイオンが、マグネシウム塩からマグネシウムイオンが溶出し、MAPが生成されるとともに、リン成分とリン以外の高アルカリ液中で溶け出す他の成分とが溶出した後の炭化物または焼却灰が沈殿物として残る。こうして、第2の実施例に係る高付加価値化装置102では、形成槽5で不溶性のMAPと溶出後の炭化物または焼却灰の沈殿物とが固体成分として処理済み液と固液分離される。形成槽5から処理済み液が排出されると、残った固形分が回収され、乾燥される。このため、回収され乾燥されたMAPには、処理後の炭化物または焼却灰の沈殿物が含まれる。この炭化物または焼却灰の沈殿物にはリン以外のミネラルも含まれており、このミネラルも利用することができる。また、本来廃棄されるべきバイオマス由来の炭化物または焼却灰を利用することにより環境への負荷を軽減することができる。なお、バイオマス由来の炭化物または焼却灰は少なくともどちらか一方であればよく、両方を混合して投入してもよい。
【実施例3】
【0034】
次に、本発明の第3の実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化装置202について説明する。本発明の第3の実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化装置202は、上記第2の実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化装置102が、第1の投入装置106により工業用に製造されたマグネシウム塩を、第2の投入装置107によりリン溶出材としてバイオマス由来の炭化物または焼却灰をそれぞれ形成槽5に投入するのに対し、図7に示すように、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システム4と形成槽5との間に、リン処理槽205を設けるとともに、このリン処理槽205には、バイオマス由来の炭化物または焼却灰を投入するリン処理用投入装置(リン溶出材投入手段)207を設け、第1の受液タンク27に貯留されたアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHを形成槽5に導く前に、このリン処理槽205に導き、リン処理槽205のアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHにリン処理用投入装置207によりバイオマス由来の炭化物または焼却灰を投入して固液分離させ、分離した溶解液を図示しない溶解液導入手段により形成槽5に導入し、導入された溶解液に第1の投入装置106によりマグネシウム塩を投入するようにしている。溶解液導入手段は、ポンプを用いてもよいし、リン処理槽205と形成槽5とに高低差を設け、開閉バルブを備えた連通路で接続し溶解液のみを形成槽5に導くようにしてもよい。
【0035】
第3の実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化装置202は、上述のように構成されているので、図8に示すように、まず、消化液回収システム3により、有機性廃棄物Mを発酵槽12で発酵させてメタン生成後に残留する消化液Dgを回収し、この消化液Dgから固形分M2を除いた脱水ろ液Lをろ液貯留槽15に貯留する(第1のステップS11)。次に、この消化液(ろ液)Lを、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システム4により蒸留し、高濃度のアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHを第1の受液タンク27に貯留する(第2のステップS12)。ここまでの工程は、上記第1および第2の実施例と同様である。
【0036】
次に、第1の受液タンク27からアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHをリン処理槽205に導き、導かれたアンモニア性窒素濃縮蒸留液L−NHに、リン処理用投入装置207によりバイオマス由来の炭化物または焼却灰が投入されると、リン処理槽205では、バイオマス由来の炭化物または焼却灰からリン酸塩イオン(わずかな量のマグネシウムイオンも含む。)が溶出し、アンモニア性窒素およびリン酸態リンの溶解液とリン成分が溶出したバイオマス由来の炭化物または焼却灰の沈殿物とがそれぞれ生成されて固液分離される(第3のステップS13)。次に、固液分離されたアンモニア性窒素およびリン酸態リンの溶解液のみを形成槽5に導入し、導入された溶解液に第1の投入装置106によりマグネシウム塩が投入されると、MAPが生成される。MAPは不溶性であるため、沈殿し、固液分離する(第4のステップS14)。次に、沈殿されたMAPは、液分抜き取り後、回収され乾燥される(第5のステップS15)。回収されたMAPは、浮遊物質や有機物成分を含んでいないので、腐敗したり悪臭を発することのない高品質の肥料として利用することができ、しかも、リン成分が溶出したバイオマス由来の炭化物または焼却灰を含んでいない。このため、純度の高いMAPを回収することができる。
【実施例4】
【0037】
次に、メタン発酵消化液ろ液の蒸留処理で得られたアンモニア濃縮液を用いてMAPを生成した実験結果を示す。
まず、(I)試薬を添加した例1について
(1)メタン発酵消化液ろ液の蒸留処理で得られたアンモニア濃縮液100mlをビーカーに取る。
(2)塩化マグネシウムを添加する。塩化マグネシウムは溶解した。
(3)リン酸2水素カリウムを添加する。白濁を生じた。(但し、リン酸2水素カリウムは水に可溶である。)
(4)攪拌をやめると、白濁物が沈殿した。
pH及びアンモニア性窒素、リン酸態リン及びpHの値の変化は以下の表1の通りである。表1からアンモニア性窒素及びリン酸態リンの濃度の低下並びに沈殿物の形成からMAPの生成と考えられる。
沈殿物の成分を測定したところ、アンモニア性窒素5.3%、リン19%、マグネシウム14%(いずれも沈殿物乾物重さ当たりの重量%)であった。実験に用いたアンモニア性窒素濃縮液のアンモニア性窒素濃度が1160mg/L(≒0.1%)で、沈殿物ではアンモニア性窒素が約50倍に濃縮されている。
【0038】
【表1】

【実施例5】
【0039】
(II)試薬を添加した例2について
(1)メタン発酵消化液ろ液の蒸留処理で得られたアンモニア濃縮液100mlをビーカーに取る。
(2)水酸化マグネシウムを添加する。塩化マグネシウムは溶解しずらく白濁する。
(3)リン酸2水素カリウムを添加する。白濁を生じた。(但し、リン酸2水素カリウ
ムは水に可溶である。)
(4)攪拌をやめると、白濁物が沈殿した。
pH及びアンモニア性窒素、リン酸態リン及びpHの値の変化は以下の表2の通りである。表2からアンモニア性窒素及びリン酸態リンの濃度の低下並びに沈殿物の形成からMAPの生成と考えられる。
【0040】
【表2】

【実施例6】
【0041】
次に、汚泥炭及び汚泥炭焼却灰(以下、焼却灰という)からのリン・マグネシウムの溶出について調べた。
ケース1では、汚泥炭を蒸留水に浸漬した。ケース2では、焼却灰を蒸留水に浸漬した。ケース3では、汚泥炭をアンモニア濃縮液に浸漬した。ケース4では、焼却灰をアンモニア濃縮液に浸漬した。
リンの溶出については、以下の表3に示すように、汚泥炭と焼却灰とを比較すると、汚泥炭からリンの溶出が多いことが判明した。溶媒は蒸留水よりアンモニア濃縮液が有利であることが判明した。
【0042】
【表3】

【0043】
マグネシウムの溶出については、イオンクロマトでマグネシウムイオンの分析を行った。その結果、以下の表4に示すように、リンと同様に汚泥炭と焼却灰とを比較すると、汚泥炭からマグネシウムの溶出が多いことが判明した。ただし、溶媒で見ると、リンと異なり、蒸留水の方がアンモニア濃縮液よりマグネシウムの溶出量が多い。
【0044】
【表4】

【実施例7】
【0045】
次に、汚泥炭/焼却灰及びMgClによるNH4−N濃度及びpHの変化について調べた。以下の表5に示すように、アンモニア性窒素濃度の低下、リンの溶出から汚泥炭・焼却灰によるMAP反応等のアンモニア性窒素の固定化が行われていると考えられる。
【0046】
【表5】

【0047】
なお、上記各実施例について、メタン発酵後の消化液について、消化液Dgから固形分M2を除去したろ液Lについて述べたがこれに限られるものではなく、固形分M2を含む消化液Dgについても適用可能であることは言うまでもない。また、上記第2および第3の実施例では、リン溶出材としてバイオマス由来の炭化物または焼却灰を挙げているがこれに限られるものではなく、リン成分の含まれる炭化物や焼却灰を用いてもよいことはいうまでもない。ただ、バイオマス由来の炭化物または焼却灰は、マグネシウム成分を含むのでMAP生成にはこれらを利用することが好ましい。さらに、リン溶出材は、上記実施例に限られるものではなく、リン成分を含み高アルカリ液中でリン酸イオンを溶出させるものであればよい。また、上記各実施例では、有機物成分や浮遊物を含まないアンモニア濃縮蒸留液L−NHをアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システム4により得るようにしているが、これに限られるものではなく、有機物成分や浮遊物を含まないアンモニア濃縮蒸留液を得られるものであれば他の蒸留液生成システムであってもよいことはいうまでもない。なお、上記各実施例では、リン成分溶出材をリン酸成分溶出材として挙げているがこれに限られるものではなく、すなわち、リン酸成分はリン酸HPOに限られるものではなく、リンを含む材料であればよく、リン化合物、リン酸化合物、リン酸塩鉱物などであってもよく、高アルカリ液中でリン酸イオンやリン酸態リンであればよいことはいうまでもない。同様に、上記実施例では、マグネシウム化合物としてマグネシウム塩を挙げているがこれに限られるものではなく、マグネシウム成分を含む材料であればよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の装置のうち、消化液回収システムを示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化の装置のうち、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムを示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る高付加価値化装置を概念的に示す概念図である。(実施例1)
【図4】本発明の第1の実施例に係る高付加価値化装置を概念的に示す概念図である。
【図5】本発明の第1の実施例に係る高付加価値化装置を用いてMAPを回収する工程を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化装置を概念的に示す概念図である。(実施例2)
【図7】本発明の第3の実施例に係るメタン発酵消化液の高付加価値化装置を概念的に示す概念図である。(実施例3)
【図8】本発明の第3の実施例に係る高付加価値化装置を用いてMAPを回収する工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
2 メタン発酵消化液の高付加価値化装置
3 消化液回収システム
4 アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システム
5 形成槽
6 投入装置(リン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段)
Dg 消化液
L ろ液(消化液)
L−NH アンモニア性窒素濃縮蒸留液(蒸留液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液を回収する第1のステップと、この消化液を蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した蒸留液を生成する第2のステップと、第2のステップで生成された蒸留液に、含有されるリン成分が高アルカリ性溶液中で溶出されるリン溶出材とマグネシウム化合物とを投入してリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を生成させ沈殿させて固液分離させる第3のステップと、沈殿したリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収する第4のステップとを有することを特徴とするメタン発酵消化液の高付加価値化の方法。
【請求項2】
第3のステップで、第2のステップで生成された蒸留液をリン処理槽に導き、リン処理槽に導かれた蒸留液にリン溶出材を投入し、リン成分が溶出されたリン溶出材の沈殿物とアンモニア性窒素およびリン酸態リンを含む溶解液とを生成させて固液分離させた後、分離された溶解液を形成槽に導き、形成槽の溶解液にマグネシウム化合物を投入しリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を生成させ沈殿させて固液分離させることを特徴とする請求項1に記載のメタン発酵消化液の高付加価値化の方法。
【請求項3】
リン溶出材が、工業用に製造されたリン酸塩、炭化物、焼却灰、バイオマス由来の炭化物、バイオマス由来の焼却灰のうち少なくともいずれか1であることを特徴とする請求項1または2に記載のメタン発酵消化液の高付加価値化の方法。
【請求項4】
有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液を回収する消化液回収システムと、この消化液回収システムにより回収された消化液を蒸留処理してアンモニア性窒素を濃縮した蒸留液を生成するアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムと、このアンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムにより生成された蒸留液を貯留し、内部に沈殿物が生成されると生成された沈殿物が分離回収される形成槽と、この形成槽に貯留された蒸留液に、含有されるリン成分が高アルカリ性溶液中で溶出されるリン溶出材とマグネシウム化合物とを投入するリン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段とを備えるとともに、
蒸留液が貯留された形成槽にリン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段によりリン溶出材とマグネシウム化合物とを投入し、形成槽内にリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を生成させ沈殿させて回収することを特徴とするメタン発酵消化液の高付加価値化の装置。
【請求項5】
アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムと形成槽との間に設けられ、アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムにより生成された蒸留液を貯留するリン処理槽と、このリン処理槽の蒸留液にリン溶出材を投入してリン成分が溶出されたリン溶出材の沈殿物とアンモニア性窒素およびリン酸態リンを含む溶解液とを生成させ固液分離させるリン溶出材投入手段と、リン処理槽内で固液分離された上記沈殿物と上記溶解液とのうち、分離した溶解液を上記形成槽に導く溶解液導入手段とを設けるとともに、
リン酸マグネシウムアンモニウム生成材投入手段は、溶解液導入手段により形成槽に導かれた上記溶解液にマグネシウム化合物を投入することを特徴とする請求項4に記載のメタン発酵消化液の高付加価値化の装置。
【請求項6】
リン溶出材が、工業用に製造されたリン酸塩、炭化物、焼却灰、バイオマス由来の炭化物、バイオマス由来の焼却灰のうち少なくともいずれか1であることを特徴とする請求項4または5に記載のメタン発酵消化液の高付加価値化の装置。
【請求項7】
アンモニア性窒素濃縮蒸留液生成システムは、有機性廃棄物を発酵させてメタン生成後に残留する消化液が注入される蒸留タンクと、
この蒸留タンクに設けられ内部の消化液を所定の温度で加熱する加熱手段と、
この蒸留タンクに連通され蒸留タンクで蒸発した気体を冷却して凝縮させる冷却部と、
吸引側が冷却部に接続され装置内の圧力を減圧させる減圧ポンプと、
冷却部に連通され、冷却部で冷却された凝縮液を導き入れる第1および第2の受液タンクと、
これら第1および第2の受液タンクと冷却部との間に設けられ連通路を切り替える切替弁とを備えた濃縮装置により構成され、蒸留タンク内に注入された消化液を加熱手段で加熱し、蒸発した気体を冷却部で凝縮させ、このアンモニア濃度の高いアンモニア濃縮蒸留液を切替弁を介して第1の受液タンクに導き、蒸留タンク内で蒸発する気体のアンモニア濃度が低下すると切替弁を切り替え、冷却部で凝縮されたアンモニア濃度の低い清浄蒸留液を第2の受液タンクに導き、第1の受液タンクからアンモニア濃縮蒸留液を、第2の受液タンクから清浄蒸留液を、蒸留タンクから消化液の濃縮液をそれぞれ回収することを特徴とする請求項4に記載のメタン発酵消化液の高付加価値化の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−126744(P2009−126744A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303417(P2007−303417)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】