説明

メチルメルカプタンを反応ガス混合物から分離する方法

本発明は、メチルメルカプタンをアクロレインで副生成物の存在下にMMPに変換し、このMMPを分離することにより、メチルメルカプタンをメタノールでH2Sの接触変換により得られた反応ガス混合物から分離する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチルメルカプタンを、メタノールでのH2Sの接触変換により得られた反応ガス混合物から分離する方法に関する。
【0002】
メチルメルカプタンは、栄養アミノ酸メチオニンまたはヒドロキシ類似物2−ヒドロキシ−4−メチルメルカプト酪酸(MHA)の合成ならびにジメチルスルホキシドおよびジメチルスルホンの製造にとって工業的に重要な前駆体である。現在、前記メチルメルカプタンは、主にアルミナの触媒上での変換によるメタノールおよび硫化水素から製造される。メチルメルカプタンの合成は、通常、気相中で300〜500℃の温度および14.5〜362.59psi(1〜25バール)の圧力で行なわれる。触媒の活性および選択性を増加させるために、この触媒は、通常、促進剤としてのタングステン酸カリウムで被覆されている。メチルメルカプタンへの硫化水素およびメタノールの変換は、発熱法であり、この場合には、変換されたメタノール1キロモル当たり28500KJが放出される。1つの方法は、例えば欧州特許第850922号明細書中に記載されている。
【0003】
望ましいメチルメルカプタン以外に、合成の生成物のガス混合物は、反応中に形成された水をも含有し、副生成物として硫化ジメチル、ジメチルエーテル、少量のポリ硫化物、例えばジメチルジスルフィド、ならびに変換されていないメタノール、過剰量の硫化水素および不活性ガスの窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、および反応からの水素を含有する。生成物のガス混合物のその成分への分離は、メチルメルカプタンおよびジメチルスルフィドの抽出、水および不活性ガス成分の排出ならびに合成反応器中への未使用のメタノールおよび硫化水素の返送に役立つ。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許第1768826号明細書の記載は、生成物のガス混合物を159.5psi(11バール)以下の圧力および10〜140℃の温度で蒸留することによる分離方法に関する。この蒸留のガス相は、本質的に硫化水素、不活性ガス、ジメチルスルフィドおよびメチルメルカプタンから構成されている。メチルメルカプタンおよび硫化ジメチルは、ガス相からメタノールで逆流で溶離される。残りの硫化水素および不活性ガスは、循環ガスとして合成反応器に返送される。負荷された溶出メタノールは、蒸留による実際に硫化水素不含の塔底物と一緒に蒸留によって再び処理され、また製造工程に返送される。
【0005】
前記物質の個々の流れへの生成物のガス混合物の分離における高度な定義を有する改善された方法は、欧州特許第0885923号明細書(米国特許第5866721号明細書)中に記載されている。
【0006】
高い投資額および処理費用に加えて(232psi(16バール)の公称圧力レベルを有する40段の理論段のカラムが通常必要とされ、この場合この公称圧力レベルは、使用される反応器の安定性の1つの尺度である)、複合体反応混合物の蒸留による前記処理の1つの欠点は、残留物の必然的な形成にあり、その結果として資源の損失の問題を処理しなければならない。付加的に、水と硫黄化合物との2相混合物は、処理中に塔底物中での反応混合物の蒸留により発生する可能性があり、これは、カラムの制御を実質的によりいっそう困難にする。しかし、環境汚染に加えて、前記混合物の分離なしのメチルメルカプタンの後処理は、その後の生成物の生産において実質的な生成物の欠損をまねく可能性があり、したがって分離することは避けられない。
【0007】
本発明の課題は、純粋なメチルメルカプタンを抽出するための高度な蒸留の努力を回避させることができるが、しかし、メタノールとのH2Sの接触変換において得られたメチルメルカプタンは、なお任意の損失なしに付加的な変換になお使用されることができる方法を提供することである。
【0008】
本発明の対象は、
1.1変換されていないH2Sおよびメタノールの成分ならびに反応混合物中で得られた水を分離し、
1.2その後に、得られた粗製メチルメルカプタンを3−メチルメルカプトピオンアルデヒド(MMP)およびアクロレインで変換するかまたは単にアクロレインで触媒の存在下にMMPに変換し、
1.3反応混合物中になお存在するメチルメルカプタン合成からの成分をMMPから蒸留工程で分離することを特徴とする、メチルメルカプタンをメタノールでのH2Sの接触変換で形成される反応混合物から分離する方法である。
【0009】
有利には、前記成分は、不活性の共沸剤を装入することによりストリッピングされる。カラムは、14.5〜72.5psi(1〜5バール)、特に14.5〜43.5psi(1〜3バール)および90〜135℃、特に14.5〜36.25psi(1〜2.5バール)で作業される。
【0010】
窒素、二酸化炭素または蒸気は、共沸剤として特に好適である。
【0011】
メチオニンを製造するためのその後の合成工程とは異なり、MMPおよびアクロレインでのメチルメルカプタンの変換は、メチルメルカプタンの製造による副生成物によって影響を及ぼされない。本発明によれば、前記化合物の複雑な分離(欧州特許第0885923号明細書の記載によれば、蒸留カラム中での理論的な棚段は、約40段である)は、回避されうる。9〜20段の理論的棚段、有利に10〜15段の棚段を有する蒸留カラムは、通常、形成されたアルデヒドMMPおよび場合によっては最初に添加されたアルデヒドMMPから副生成物を分離するのに十分であり、この場合には、87psi(6バール)は、通常、公称圧力レベルとして有利に選択されている。更に、メルカプタンの損失は、回避され、危険物として記録されているメルカプタンの取扱時間は、短縮される。
【0012】
触媒の存在下でのメチルメルカプタンおよびアクロレインからのMMP形成は、純粋な親化合物を使用しながらの2工程法として公知技術水準において公知である(ドイツ連邦共和国特許出願公告第1618884号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公告第2320544号明細書)。
【0013】
例えば、99.5%の純度を有するメルカプタンは、ドイツ連邦共和国特許出願公告第1618884号明細書中で使用されている。しかし、本発明によれば、約93質量%のメチルメルカプタン含量を有し、ジメチルジスルフィド1.5〜5質量%、ジメチルエーテル0.5〜3質量%および水約1質量%および痕跡のメタノールの含量を同時に有する粗製メチルメルカプタンが使用されてもよく、この場合総和は、100%である。
【0014】
この目的のために、メチルメルカプタンは、ガス状または液状で、好ましくは14.5〜145psi(1〜10バール)で、有利に周期的に作業される反応器中でMMP中に装入されてよい。
【0015】
メチルメルカプタンとMMPは、1対少なくとも1、特に1対30のモル比で使用される。
【0016】
ヘミチオアセタールまたはチオアセタールの形成を導く反応温度は、50〜120℃、特に65〜110℃である。その後に、得られた反応性生成物は、触媒の存在下でアクロレインで変換される。
【0017】
適用された反応条件は、実際に第1の工程の場合と同様である。過剰のアクロレインは、有利である。適当な触媒は、公知技術水準で公知である。
【0018】
通常、有機過酸化物、有機塩基、有機酸と有機塩基との混合物、例えば酢酸とピリジンとの混合物が使用される。前記方法は、連続的、半連続的またはバッチ的に作業されてよい。
【0019】
分離法の1つの変法は、適当な触媒混合物を用いてアクロレインとの反応ループで粗製メチルメルカプタンをMMPに変換し、上記の記載と同様にそれぞれの不活性混合物を除去することである。
【0020】
更に、得られた生成物は、直接に例えばメチオニン合成に添加されてもよいし、標準化された燃料供給車中に充填され、通常の燃料貯蔵所に運搬されるかまたは輸送される。
【0021】
実施例
本発明は、次のようにフローチャート(図1)によって記載される。
【0022】
例えば、欧州特許第0850923号明細書の記載により得られた、次の組成:メチルメルカプタン〜93質量%、硫化ジメチル〜4.5質量%、ジメチルエーテル〜1.5質量%、水〜1質量%および痕跡のメタノール、またはメチルメルカプタン〜93質量%、硫化ジメチル〜93質量%、二硫化ジメチル0.2〜1質量%、ジメチルエーテル0.5〜3質量%、水〜1質量%および痕跡のメタノールを有する粗製メチルメルカプタンを、1〜8を介して、14.5〜72.5psi(1〜5バール)の圧力およびドイツ連邦共和国特許第2320544号明細書の記載と同様の50〜120℃の温度でMMPと一緒に、周期的に運転される反応器R1に添加する。MMPへの変換に必要とされるアクロレインの供給は、ストランド2により行なわれ、それぞれの触媒の混合(フランス国特許第1520328明細書の記載と同様にピリジンと酢酸との混合物、または有機塩基と有機酸との混合物)は、3により行なわれる。更に、その後、反応混合物は、14.5〜43.5psi(1/3バール)の圧力および90〜135℃の温度でカラムK2(理論的棚段の数:15段)中で前記アルデヒドの不活性化合物から4を介して分離され、この不活性化合物は、後使用のために5を介して添加される。必要な場合には、望ましくない混合の除去は、不活性の共沸剤、例えば窒素、二酸化炭素または蒸気、好ましくは窒素の付加的な補助によって7を介して得られた生成物は、6を介して後使用のために添加される。使用された粗製メチルメルカプタンに対して、分離収率は、あたかも定量的に、即ち99.9%超である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】メチルメルカプタンを反応ガス混合物から分離する本発明による方法を実施するための装置の1実施例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0024】
1、2、3、8 供給管、 4、5、6、7 導管、 K2 カラム、 R1 周期的に運転される反応器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルメルカプタンをメタノールでのH2Sの接触変換で形成される反応混合物から分離する方法において、
1.1 変換されていないH2Sおよびメタノールに成分、ならびに反応混合物中で得られた水を分離し、
1.2 その後に、得られた粗製メチルメルカプタンを3−メチルメルカプトピオンアルデヒド(MMP)およびアクロレインで変換するかまたは単にアクロレインで触媒の存在下にMMPに変換し、
1.3 反応混合物中になお存在するメチルメルカプタン合成からの成分をMMPから蒸留工程で分離することを特徴とする、メチルメルカプタンを反応混合物から分離する方法。
【請求項2】
成分を不活性の共沸剤によりストリッピングする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
窒素、二酸化炭素または蒸気を不活性の共沸剤として使用する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
成分を14.5〜72.5psi(1〜5バール)の圧力で90〜135℃の温度範囲内で分離する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
20段未満の棚段を有する蒸留塔を使用する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−515416(P2007−515416A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544258(P2006−544258)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013565
【国際公開番号】WO2005/058809
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(501073862)デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】