説明

メチル2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテートの調製方法

(i)ベンズヒドロールのメチルジフェニルメチルチオアセテートへの転換;及び、(ii)酸化によるメチルジフェニルメチルチオアセテートのメチル−2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテートへの転換の工程を含んで成る、メチル2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテート(MDMSA)の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメチル2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテート(MDMSA)の新規な調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MDMSAは、2−[(ジフェニルメチル)スルフィニル]アセトアミドとしても知られるモダフィニルの合成における中間体化合物として開示される。覚醒促進活性を伴う合成アセトアミドであるモダフィニルは、他の障害のなかでもナルコレプシーの処置において有用である。
【発明の開示】
【0003】
発明者はこの度、工業規模において適用可能なMDMSAの合成の新規な経路を発見した。
【0004】
有利には、当該MDMSAは、2又は3の工程において得ることができ、各々は高収率により特徴づけられている。
【0005】
有利な態様において、これらの工程は、同じ反応器、及び同じ溶媒で中間体化合物を単離することなく行うことができる。
【0006】
本発明の目的は、経済的且つ効率的なMDMSAの調製方法を供することである。
【0007】
これらの目的及び他の目的は、以下の工程を含んで成る、メチル2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテートの調製方法に関する本発明により達成される:
(i)ベンズヒドロールのメチルジフェニルメチルチオアセテートへの転換;
及び、
(ii)酸化によるメチルジフェニルメチルチオアセテートのメチル−2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテートへの転換。
【0008】
スキーム1は、当該方法において使用される一般的な工程において説明する:
【化1】

【0009】
当該方法において使用される工程(i)及び(ii)の反応は、当業者によって容易に選ぶことができる溶媒において行うことができ、適当な溶媒が、考慮される反応温度において、開始試薬、中間体、又は生成物に対して非反応性の溶媒に寄与することが理解されており、当該温度は溶媒の凝固点から溶媒の沸点まで変化させることが可能である。
【0010】
与えられた反応は、溶媒中、又はいくつかの溶媒の混合物中で行うことができ、当該溶媒は、一般的に考慮される反応のタイプ、及び後の反応媒体の処理に従い選択される。
【0011】
好ましい態様において、上記溶媒は非プロトン性溶媒である。
【0012】
例としては、本発明に従う方法に適当であろう非プロトン性溶媒を制限することなく、特に塩素系溶媒、芳香族溶媒、炭化水素溶媒、及びエーテル系溶媒を挙げることができる。
【0013】
当該塩素系溶媒には、クロロホルム、ジクロロメタン、又はクロロベンゼンを特に挙げることができる。
【0014】
適当な芳香族溶媒には、例えば、ベンゼン、トルエン、及びクロロベンゼンを挙げることができる。
【0015】
適当な炭化水素溶媒の例としては、シクロヘキサン、ペンタン、及びヘキサンを挙げることができる。
【0016】
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサンのような溶媒が有用である。
【0017】
工程(i)及び(ii)は、特に、異なる溶媒中で、分離して行うことができ、各々の中間体は独立に単離される。
【0018】
有利な態様において、当該反応工程は同じ反応器中で、いずれかの中間体の単離をすることなく行われる。
【0019】
工程i)
好ましい態様において、ベンズヒドロールのメチルジフェニルメチルチオアセテートへの転換は2つの工程を含んで成る:
a1)ベンズヒドロールのベンズヒドリルカルボキシレートへの転換;及び、
b1)ベンズヒドリルカルボキシレートのメチルジフェニルメチルチオアセテートへの転換。
【0020】
スキーム2は、当該方法において使用される一般的な工程a1)及びb1)において説明する:
【化2】

【0021】
工程a1)
ある好ましい態様において、工程a1)は、無機酸の存在下で、適当な溶媒、好ましくは非プロトン性の溶媒中においてベンズヒドロールと酸無水物の反応を含んで成る。
【0022】
本発明の状況において、抽出、低温蒸留、非引火性、化学的中性、及び当該方法の状況において容易に再利用できる能力の有利な特性により、ジクロロメタンが特に好ましい。
【0023】
一般的に、上記酸無水物、及び上記非プロトン性溶媒は、約20℃の温度で反応器に同時に入れられる。
【0024】
当該説明の目的のための酸無水物は、モノカルボン酸の対称性無水物、又はポリカルボン酸の環式無水物のいずれかを表す。
【0025】
本発明に従う工程a1)において適当であろう酸無水物の例として、特に、無水酢酸、無水酪酸、及び無水プロパン酸を挙げることができ、無水酢酸が特に好ましい。
【0026】
好ましい反応条件は、非プロトン性溶媒中のベンズヒドロールに関して当量の酸無水物の使用に供するものである。
【0027】
しかしながら、僅かに過剰量の酸無水物の存在下において手順を行うことが好ましい。極端な過剰量は、当該方法の後の工程において、実際に副産物の形成を誘発するおそれがあるが、一方、極端な少量は、工程(ii)において行われる酸化反応の速度を遅くし得る。従って、酸無水物のモル比は、好ましくは、1から1.2、より好ましくは1から1.1に変化し、有利には1.05であり、クリーンな合成を達成することを可能する酸無水物の最適なモル比である。
【0028】
好ましくは、1.5から5容量まで変化する溶媒の容量の存在下で、最適には約2容量の存在下で行われる。これらの条件下において、もたらされた希釈はカルボキシレートの形成を促進する。
【0029】
同様な好ましい工程a)の変形によれば、使用される無機酸は、塩酸、臭化水素酸、o−リン酸、及び硫酸から選択され、特に96%の水溶液における形態での硫酸が特に好ましい。
【0030】
好ましくは、当該手順は、ベンズヒドロールに対して0.02から0.3モル当量の範囲の無機酸の量の存在下で行うことができ、0.05から0.15当量がより好ましい。
【0031】
安全性に注意するため、反応の発熱性を制御するために、当該無機酸は一般的に約0℃で導入される。
【0032】
それから、十分に速い反応速度を許容する十分な温度であるが、副産物、例えば、ベンズヒドリルエーテルの形成を避けるために高すぎない温度において、ベンズヒドロールを入れる。−5℃から+5℃で、より好ましくは−2℃から+2℃において、45分から2時間の範囲における導入時間で、好ましくは約1時間で当該手順を行うことが特に好ましい。当該導入時間は、実際に、当該反応の発熱性の制御を可能にし、且つ副産物の制限を可能にする。
【0033】
ベンズヒドロールは一般的に、完全な反応を達成するために、十分な接触時間当該温度に保たれるが、ベンズヒドリルカルボキシレートの分解を避けるために高すぎてはならない。本発明の目的のための「完全な反応」の表現は、99.2%以上の、好ましくは99.5%以上の転換比を伴う誘導生成物の産出を導く反応を意味するように理解される。一般的に、完全な反応は、2時間の接触時間後に得られる。
【0034】
得られたベンズヒドリルカルボキシレートは次の工程において、中間体の単離をすることなくすぐに使用することができる。
【0035】
工程a1)は、他のいずれかの適当な方法によっても実現することができる。
【0036】
例として、工程a1)は、ベンズヒドロールとカルボン酸の反応により実現することができる。例えば:
−以下の組み合わせにおける2−メチル酪酸
・ベンゼン中、SOCl2、ピリジン;又は、
・ジクロロメタン中、H2SO4;又は、
・ベンゼン中、TsOH
引例:Fujita S. and al., Bull. Chem. Soc. Jpn 1972, 45 : 2571-2574 において開示されている;
−又は、Strazzoli P. et al., Recl. Trav. Chim. , The Netherlands, 1991 ; 1: 5-12 において開示されている、酢酸とヨウ化カリウムとの組み合わせ。
【0037】
例として、工程a1)はまた、Herzig S. , Justus Liebigs, Ann. Chem.; 1921; 422: 330 において開示されているように、カルボン酸塩、例えば、酢酸ナトリウム塩の反応により実現することができる。
【0038】
例として、工程a1)はまた、Roizel B. and al., Chem. Commun. , 2000,16 : 1507- 1508 において開示されているように、トリエチルアミンの存在下において、ベンズヒドロールと塩化カルボン酸、例えば、塩化アセチルを反応させることにより実現することができる。
【0039】
例として、工程a1)はまた、Ti(OC25)の存在下において、ベンズヒドロールと酢酸エチルエステルの反応により(Schnurrenberger P. and al., Helv. Chim. Acta, 1982,65 (4): 1197-1201); 又は、過塩素酸(ITP)鉄(III )の反応 (Kumar B. and al., Indian J. Chem. Sect. B, 1993,32 (2) : 292-293) ; 又は、Fe(ClO43、SiO2 (Parmar and al., Synth. Commun. , 1999,29 (1) : 139-144) の反応により実現することができる。
【0040】
工程b1)
工程b1)はいずれかの適当な方法により行うことができる。
【0041】
好ましい態様において、工程b1)は工程a1)において得られた溶液をメチルチオグリコレート中に接触させることを含んで成る。
【0042】
メチルチオグリコレートは一般的に、約10分間0℃で、しかし温度制限なしに導入される(それから約9℃まで上昇できる)。それから、反応媒体を、反応速度を操作するために十分に高温に、しかし副産物の形成を避けるために高くなりすぎないように加熱させる。一般的に、当該手順は15℃から25℃、好ましくは18℃から22℃の温度で行い、接触は、副産物をほとんど伴わない完全な反応を得るために十分な時間、一般的には2から3時間好ましくは2時間当該温度を維持する。
【0043】
上記メチルジフェニルチオアセテートは工程(ii)において、中間体を単離することなく使用することができる。
【0044】
他の好ましい態様において、工程i)は2つの工程を含んで成る:
a2)ベンズヒドロールのベンズヒドリルカルボン酸への転換;
b2)ベンズヒドリルカルボン酸のメチルジフェニルメチルチオアセテートへの転換。
【0045】
当該方法はスキーム3により説明される:
【化3】

【0046】
工程a2)
工程a2)は、いずれかの適当な方法に従い、そして特に以下に開示される条件に従い実現することができる:Dahlbom O., Acta Chem. Scand. , 1948, 2 : 856-858; Carceller E. et al., J. Med. Chem. , 1993; 36: 2984-2997; Lisac S. et al., J. Organomet. Chem. 1996,507 : 215-220; Okarvi S. et al., J. Labelled Compd. Radiopharm, 1997,39 : 853-874; Patent Thomae GmbH DE 2812542, 1979, Chem. Abstract 1980; 92; 198165 ; Iskander, Y. et al., J. Chem. Soc., 1961,2397-2402.
【0047】
特定の態様において、工程a2)は、有機酸又は無機酸の存在下において、ベンズヒドロールとチオ酢酸との反応により実現することができる。
【0048】
好ましくは、上記溶媒は、プロトン性溶媒であり、より好ましくは、カルボン酸、特に酢酸である。
【0049】
無機酸又は有機酸は、好ましくは、塩酸、POCl3、トリフルオロ酢酸、臭化水素酸、o−リン酸、硫酸中から選択されることが好ましく、POCl3、及びトリフルオロ酢酸が特に好ましい。
【0050】
好ましくは、上記反応は室温で実現される。
【0051】
工程b2)
工程b2)のエステル化反応は、当業者に既知のいずれかの方法により実現することができる。
【0052】
他の特定の態様において、工程(i)は2つの工程を含んで成る:
a3)ベンズヒドロールのヒドロキシル基の脱離基への転換;
b3)得られた生成物のメチルジフェニルメチルチオアセテートへの転換。
【0053】
当該方法はスキーム4により説明される:
【化4】

【0054】
工程a3)
工程a3)における脱離基は、求核性反応物により容易に除去されることができるいずれかの基を意味する。脱離基は、ハロゲン、例えば、クロロ−及びブロモ−ラジカル、又はスルホニル基、例えば、メタンスルホニル−若しくはp−トルエンスルホニル−ラジカルから成る群から選択することができる。
【0055】
工程a3)は当業者に既知のいずれかの方法により実現することができる。
【0056】
例として、ベンズヒドロールのヒドロキシル基は、ベンズヒドロールと塩化チオニル又は臭化チオニルの反応により転換することができる。
【0057】
例として、ベンズヒドロールのヒドロキシル基は、ベンズヒドロールと、それぞれメタンスルホニルクロリド又はp−トルエンスルホニルクロリドとの反応により、メタンスルホネート基又はp−トルエンスルホネート基に転換することができる。
【0058】
工程b3)
好ましい態様において、工程b3)は工程b1)の条件に従い実現される。
【0059】
工程b3)はまた、他のいずれかの適当な方法により実現することができる。
【0060】
他の好ましい態様において、工程i)は、スキーム5において示されるように、金属触媒の存在下において、ベンズヒドロールとメチルチオグリコレートとの反応を含んで成る:
【化5】

【0061】
好ましくは、上記金属触媒は、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2から選択され、ZnI2が特に好ましい。
【0062】
好ましくは、上記溶媒は、非プロトン性溶媒、より好ましくはハロゲン化溶媒、特には塩素系溶媒、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンから選択される。
【0063】
工程ii)
発明者はこの度、メチルジフェニルメチルチオアセテートのメチル−2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテートへの転換、特に副産物の形成、収率、及び反応速度の制御することを興味深く許容する酸化条件を決定した。
当該反応の効率性に影響し得る工程(ii)において使用される多様なパラメーター、例えば、導入される酸化剤の量、反応媒体の希釈、反応温度、接触時間、及び反応媒体の酸性度は最適化することができる。
【0064】
従って、一般的に、極端に少量の酸化剤は、不完全な反応を意味する。極端な過剰量は、ジオキシ化副産物であるスルホンの形成を促進する。
【0065】
本発明に適当となり得る酸化剤の例は、特に、オキソン、過マンガン酸カリウム、過炭酸ナトリウム、ペルオキシド、例えば、過酸化水素、tert−ブチルヒドロペルオキシド、及びm−クロロペルオキシ安息香酸を挙げることができ、過酸化水素が特に好ましい。
【0066】
好ましい態様において、工程ii)はジクロロメタンによるものが好ましい。
【0067】
好ましい態様に従い、工程(ii)において使用される酸化剤は、好ましくは35%の水溶液の形態における過酸化水素である。実際に、より低い力価は、より高い希釈の原因となり、反応速度を減少し得る。
【0068】
酸化剤の化学量は十分であるが、僅かに過剰量の存在下、好ましくは1から1.1のモル比の存在下での手順において行うことが好ましい。
【0069】
上記媒体の酸性度は、工程(i)の条件の操作によりもたらされる。
【0070】
当該反応温度は、酸化反応の速度に影響し得る。従って、当該温度は28℃から37℃が好ましく、反応速度が特に増加される温度範囲は、媒体の酸性度が考慮される。
【0071】
好ましくは、28℃から32℃の反応温度が好ましい。当該温度は、実際に、当該方法の最適な制御を得ることを可能にし、特に、超酸化を無視できなくなる点を越えて停止する。
【0072】
クリーンな且つ完全な反応を得るための接触時間は、実施のスケールに従い、また、工程b)における反応媒体中に存在する無機酸、特に硫酸の量に従って変化し得る。
【0073】
好ましくは、当該反応は、比率R1=非酸化誘導体/(モノ酸化誘導体+非酸化誘導体)<0.5%である場合、工程(ii)における「完全な」ものとして考えられる。
【0074】
「クリーンな」反応という表現は、当該説明の目的のために、比率R2=ジ酸化誘導体/(モノ酸化誘導体+ジ酸化誘導体+非酸化誘導体)<0.5%である反応を意味するものと理解される。
【0075】
クリーン且つ完全な反応を達成するために必要な接触時間は、反応の進行をモニターすることが可能な慣習的な分析技術、例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、IR(赤外線)、又はNMR(核磁気共鳴)を使用して決定することができる。
【0076】
一般的に、クリーン且つ完全な反応を達成するために必要かつ十分な接触時間は、副産物、例えば、特に、ジフェニルメチルチオ酢酸の形成を避けるために35時間以下、好ましくは33時間以下、且つ20時間以上、好ましくは25時間以上である。
【0077】
当然に、当業者にとって、考慮される操作のスケールにおいて完全な反応を達成するために必要な接触時間を調整することは可能である。
【0078】
反応媒体中の無機酸の量の増加は、やはり酸化反応時間を有意に減少させることができる。
【0079】
如何なる理論も制限することを望むわけではないが、予測できない効果を説明できる仮説は、無機酸が酸化剤として、酸化のメカニズムにおいて触媒の役割を果たすことによるものである。例としては、硫酸の場合、H2SO5型の反応中間体が当該媒体中で形成され、酸素を酸化可能な種に対して直接的に、又は促進された過酢酸の形成により間接的に転移することが想定される。
【0080】
従って、本発明に従う方法の工程(ii)の好ましい変形に従い、無機酸の添加量の、好ましくは0.02から0.3モル当量、そしてより好ましくは0.05から0.15モル当量を、工程b1)における反応媒体に、一般的には、酸化剤の導入前に添加する。それから反応速度の促進を観察する。
【0081】
有利には、工程(ii)における完全且つクリーンな反応を達成するために十分な必要とされる接触時間は、相当に減少され、そして、一般的には10から13時間である。
【0082】
有利には、2箇所の無機酸の導入は、工程a1)及びb1)における反応媒体の酸性度を減少させることができ、そして、このために副産物の形成を制限する。
【0083】
工程(iii )
更なる態様において、本発明に従う方法は、iii )得られたメチル2−ジフェニルスルフィニルアセトレートを回収する追加的な工程を含んで成る。
【0084】
工程(iii )において形成されるMDMSAの単離は、当業者に既知のいずれかの慣習的な方法に従い行うことができる。
【0085】
好ましくは、上記MDMSAは抽出により単離される。
【0086】
それから、当該有機相を混合し、そして、減圧下で、好ましくは70℃の温度において濃縮する。
【0087】
特定の変形に従い、溶媒を乾燥させるために蒸留する。
【0088】
当該生成物は当業者に既知ないずれかの方法、例えば、再結晶又はクロマトグラフィーに従い精製することができる。
【0089】
特定の態様に従い、工程(iii )は直接的にMDMSAの結晶化の工程を含んで成ってよい。
【0090】
当該説明の目的のための「直接的な結晶化」の表現は、適当な溶媒、好ましくは、特に、メタノール、エタノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、及びトルエンから選択される溶媒を添加することにより生じる、非結晶化生成物の結晶化を意味するように理解される。酢酸イソプロピルが特に好ましい。
【0091】
当該状況において、上記結晶化溶媒は、非プロトン性溶媒の実質的な除去後に導入される。
【0092】
有利には、当該直接的な結晶化は、上記方法後において粗生成物をすぐに精製することを可能にし、従って、単離工程及び更にコストを有する次の再処理工程を除くことができる。
【0093】
特に好ましい態様において、当該方法は以下の工程を含んで成る:
i)
a1)無機酸の存在下、且つ適当な非プロトン性溶媒中におけるベンズヒドロールと酸無水物の反応によるベンズヒドロールのベンズヒドリルカルボキシレートへの転換;
b1)上記溶液をメチルチオグリコレートと接触させることによる上記ベンズヒドリルカルボキシレートのメチルジフェニルメチルチオアセテートへの転換;
ii)上記溶液を酸化剤と接触させることによる、ジフェニルメチルチオアセテートのメチル2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテートへの転換;
及び任意的に;
iii )得られたメチル2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテートの回収。
【0094】
当該態様は、スキーム6により説明される:
【化6】

【0095】
有利には、上記MDMSAは、それぞれ高収率により特徴付けられる、3つの連続的な工程において得られる。
【0096】
更には、これらの3つの工程は同じ反応器及び同じ溶媒において中間体化合物を単離することなく行うことができる。
【0097】
有利には、当該方法に従い、所望されない副産物が制限及び制御され、実質的に再加工工程を除くことができる。
【0098】
最終的に、他の有利な観点に従い、当該方法は、特に、使用の容易さ、並びにその高い生産性及び再現性によりMDMSAの製造のコストを減少させることを可能とする。
【0099】
当該方法もまた、本発明の方法により、特に当該方法を実行することにより得られるMDMSAを目的とする:
i)
a1)無機酸の存在下、且つ適当な非プロトン性溶媒中におけるベンズヒドロール及び酸無水物の反応によるベンズヒドロールのベンズヒドリルカルボキシレートへの転換;
b1)上記溶液をメチルチオグリコレートと接触させることによる当該ベンズヒドリルカルボキシレートのメチルジフェニルメチルチオアセテートへの転換;
ii)上記溶液を酸化剤に接触させることによる上記ジフェニルメチルチオアセテートのメチル2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテートへの転換;
及び任意的に;
iii )得られたメチル2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテートの回収。
【0100】
本発明はまた以下の工程を含んで成るモダフィニルの調製のための方法を誘導する:
(i)ベンズヒドロールのメチルジフェニルメチルチオアセテートへの転換;及び、
(ii)酸化によるメチルジフェニルメチルチオアセテートのメチル−2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテートへの転換。
【実施例】
【0101】
実施例1.−ラボラトリースケールにおけるMDMSAの合成(0.5l)
【0102】
a)ベンズヒドリルアセテート
108.3g(1.05mol;1.05eq)の無水酢酸を370mlのジクロロメタン中20℃で希釈する。得られた溶液を、2.8mlの96%硫酸溶液を導入する前に約10分以内に0±2℃に冷却する。約10分間の撹拌後、184.2g(1mol;1eq)のベンズヒドロールを、0℃で60±15分以内に分けながら導入する。当該反応媒体を室温で2時間接触を維持する。
【0103】
b)メチルジフェニルメチルチオアセテート(MDMTA)
108.3g(1.02mol;1.02eq)のメチルチオグリコレートを0℃±2℃で導入し、それから当該反応混合物を20℃±2℃に加熱し、そして当該温度で2時間保つ。
【0104】
c)メチル2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテート(MDMSA)
当該反応媒体を30℃±2℃に加熱し、そして100.5±0.5gの35%過酸化水素溶液を加える。当該酸化反応の進行をHPLCによりモニターする。接触から25時間後、当該反応が完了する(R1及びR2<0.5%)。
【0105】
d)MDMSAの回収
150mlの蒸留水を撹拌する。25%水性アンモニア溶液をpHが8になるように加える。当該水性有機相を分離し、そして当該水相を2×100mlのジクロロメタンで抽出する。それから当該有機相を混合し、そして減圧下70℃において濃縮する。得られた濃縮物を結晶化し、粉砕後、収率98.0±0.5%を伴う白色の粉末を得る。
【0106】
実施例2及び3.−パイロットスケールにおけるMDMSAの合成(100l)
【0107】
実施例2:結晶化MDMSAの合成
【0108】
a)ベンズヒドリルアセテート
塩化メチレン(40l)中、無水酢酸溶液(8.73kg;85.5mol;1.05eq)を20℃±2℃において調製する。それから96%硫酸溶液(225ml;4.1mol;0.05eq)を100回転/分、0℃±5℃で5から10分間撹拌しながら加える。それからベンズヒドロール(15kg;81.4mol、1eq)を0℃±2℃で1.25時間内に導入する。当該反応混合物を2時間撹拌する。
【0109】
b)メチルジフェニルメチルチオアセテート(MDMTA)
メチルチオグリコレート(8.81kg;82.9mol;1.02eq)を0℃±2℃で約10分以内に導入する。当該反応混合物を20℃±2℃にし、そして、100回転/分で撹拌しながら2時間の接触時間当該温度に保つ。
【0110】
c)メチル2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテート(MDMSA)
それから、硫酸(450ml;8.1mol;0.1eq)を導入する前に当該反応媒体を撹拌しながら(100回転/分)、約5から10分以内に30℃±2℃にする。それから、35%過酸化水素溶液(8.19kg;84.3mol;1.035eq)を30℃±2℃で1時間内に導入する。当該接触時間はHPLCによる反応をモニターすることにより決定する(cf.表1)。
【0111】
d)MDMSAの回収
上記混合物を20℃±2℃に冷却し、それから20lの水を導入する。当該反応媒体を、8<pH<9となるように、十分量のNH4OHを添加することにより中和した後、当該水相及び有機相を分離し、そして、水相を10lの塩化メチレンで2回抽出する。当該塩素処理相を10lの水で洗浄する。
【0112】
上記溶媒を大気圧下において、それから減圧下において、70℃のジャケット温度で蒸留する。当該蒸留が完了するときに、酢酸イソプロピル(1.8vol;42l)を加え、そしてその全てを−10℃に冷却する。ドレイン、及び真空下45℃での乾燥後、MDMSAを得る。
【0113】
表1:MDMSA、並びに試験1から4(工程(ii))のための方法により得られた中間体生成物の収率及び質。
【0114】
【表1】

【0115】
これらの結果は、ベンズヒドリルアセテート及びMDMTAの生成物が再現できることを示す。
【0116】
MDMSAの形成は11時間30分以内に起こり、再現性は、酢酸イソプロピルからの結晶化後、90%オーダーの収率を伴う適合した最終生成物(R及びR<0.5%)を与える。
【0117】
実施例3:粗MDMSAの合成
【0118】
a)ベンズヒドリルアセテート
塩化メチレン(40l)中で無水酢酸溶液(8.73kg;85.5mol;1.05eq)を20℃で調製する。それから96%硫酸溶液(225ml;4.1mol;0.05eq)を100回転/分、0℃±5℃で5から10分間撹拌しながら加える。ベンズヒドロール(15kg;8.4mol;1eq)をそれから0℃±2℃で1.25時間内に導入する。当該反応混合物を2時間撹拌する。
【0119】
b)メチルジフェニルメチルチオアセテート(MDMTA)
メチルチオグリコレート(8.81kg;82.9mol;1.02eq)を0℃で約10分以内に導入する。当該反応混合物を20℃±2℃の温度にし、そして100回転/分で撹拌しながら当該温度で2時間の接触時間保つ。
【0120】
c)2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテート(MDMSA)
反応混合物を30℃±2℃にした後、35%過酸化水素溶液(8.19kg;84.3mol;1.035eq)を撹拌(100回転/分)しながら1時間内に導入する。当該接触時間をHPLCによる反応をモニターすることにより決定する(cf.表2)。
【0121】
d)MDMSAの回収
上記混合物を20℃に冷却し、それから20lの水を導入する。当該反応媒体を、8<pH<9となるように、十分量のNH4OHを添加することにより中和した後、当該水相及び有機相を分離し、そして、水相を10lの塩化メチレンで2回抽出する。当該塩素処理相を10lの水で洗浄する。
【0122】
上記溶媒を大気圧下、それから減圧下において、70℃のジャケット温度でMoritz(登録商標)ターボスフェア(turbosphere)中で蒸留する。
【0123】
表2:試験5及び6の最終生成物並びに中間体生成物の収率及び質
【0124】
【表2】

【0125】
これらの結果はベンズヒドリルアセテート及びMDMTAの形成の工程が再現できることを示す。
【0126】
MDMTAの酸化工程は、約33〜35時間の接触時間を必要とし、そして優れた収率(97%オーダー)を伴う適合したMDMSA生成物(R1及びR2<0.5%)を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチル2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテート(MDMSA)の調製方法であって、当該方法が、
(i)ベンズヒドロールのメチルジフェニルメチルチオアセテートへの転換;
及び、
(ii)メチルジフェニルメチルチオアセテートのメチル−2−ジフェニルメチルスルフィニルアセテートへの転換;
の工程を含んで成る方法。
【請求項2】
上記工程(i)が以下の工程:
a1)適当な溶媒中におけるベンズヒドロールのベンズヒドリルカルボキシレートへの転換;及び、
b1)上記ベンズヒドリルカルボキシレートのメチルジフェニルメチルチオアセテートへの転換;
を含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記工程(a1)が、無機酸の存在下、且つ適当な溶媒中におけるベンズヒドロールと酸無水物との反応を含んで成る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記溶媒が非プロトン性溶媒である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記非プロトン性溶媒が、塩素系溶媒、芳香族溶媒、炭化水素溶媒、及びエーテル系溶媒から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記非プロトン性溶媒が塩素系溶媒から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記溶媒がジクロロメタンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記酸無水物が、無水酢酸、無水プロパン酸、及び無水酪酸から選択される、請求項3〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
上記酸無水物が無水酢酸である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記無機酸が、塩酸、酪酸、o−リン酸、及び硫酸から選択される、請求項3〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
上記無機酸が硫酸である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
使用される無機酸の量が、ベンズヒドロールに対して0.02〜0.3モル当量である、請求項3〜11に記載のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
上記工程a)における反応温度が、−5℃〜+5℃である、請求項3〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
上記工程b1)が、工程a)において得られた溶液をメチルチオグリコールに接触させることを含んで成る、請求項2〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
上記工程b1)において使用される接触時間が2〜3時間である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記工程b1)において使用される接触温度が15℃〜25℃である、請求項14〜15に記載の方法。
【請求項17】
上記酸化剤が、オキソン、過マンガン酸カリウム、過炭酸ナトリウム、ペルオキシド、例えば、過酸化水素、tert−ブチルヒドロペルオキシド、及びm−クロロペルオキシ安息香酸から選択される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
上記酸化剤が過酸化水素である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記過酸化水素が、35%水溶液の形態において添加される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記酸化剤が、1〜1.1モル当量において使用される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
上記工程(ii)における反応温度が、28℃〜37℃である、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
添加量の無機酸が工程(ii)において加えられる、請求項3〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
上記添加量の無機酸が0.02〜0.3モル当量である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
上記工程(ii)における接触時間が、10〜13時間である、請求項22及び23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
追加的な工程(iii )得られたメチル2−ジフェニル−メチルスルフィニルアセテートの回収、を含んで成る、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
上記工程(iii )が溶媒の蒸留乾燥を含んで成る、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
上記工程(iii )が直接的な結晶化の工程を含んで成る、請求項25〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
上記結晶化溶媒が、メタノール、エタノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、及びトルエンから選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
上記結晶化溶媒が酢酸イソプロピルである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
上記連続した工程が、同じ反応容器で中間体化合物の単離をすることなく行われる、前期請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜30に記載のMDMSAの調製を含んで成る、モダフィニルの調製方法。

【公表番号】特表2006−516560(P2006−516560A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500269(P2006−500269)
【出願日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000002
【国際公開番号】WO2004/063149
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(505048932)
【Fターム(参考)】