説明

メッシュベルト伸び検出装置及び熱処理装置

【課題】メッシュベルトが所定量を超えて垂れ下がったことを正確に検出し、この検出結果に基づいてメッシュベルトのメンテナンスを適正なタイミングで行うことができるようにする。
【解決手段】伸び検出機構20は、アーム21、錘22、リミットスイッチ23及び表示器を備えている。アーム21は第1の端部21Aと第2の端部21Bとの中間部分を支点21Cとして揺動自在に支持されており、アーム21における支点21Cよりも第1の端部21A側がメッシュベルト2の垂れ下がり部分に下方から対向する。錘22は、第2の端部21Bを下方に付勢する。リミットスイッチ23は、第2の端部21Bの上方への変位を検出して検出信号を出力する。表示器は、リミットスイッチ23から出力される検出信号に基づいてメッシュベルト2のメンテナンスが必要である旨を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ループ状の循環経路を移動してワークを搬送するメッシュベルトの伸びが所定量を超えたことを検出するメッシュベルト伸び検出装置、及び、このメッシュベルト伸び検出装置を備えた熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱処理炉内でワークを加熱する熱処理装置では、ループ状の循環経路を移動するメッシュベルトを備えている。この循環経路には、熱処理炉の外部の供給位置から熱処理炉の内部を経由して熱処理炉の外部の受渡し位置に至るワークの搬送範囲が含まれる。供給位置ではメッシュベルト上にワークが載置され、受渡し位置ではメッシュベルト上からワークが回収される。
【0003】
このような熱処理装置として、例えば連続焼結炉装置のようにワーク搬送範囲が20m〜30m程度の長さに及ぶものがある。メッシュベルトは、比較的長いワーク搬送範囲を含む循環経路を継続して移動するとともに、熱処理炉内でワークとともに加熱される。また、メッシュベルトは、駆動ローラと従動ローラとの間に張架され、駆動ローラと加圧ローラとの間に挟持されて所定の張力下で移動する。
【0004】
このため、メッシュベルトは、移動方向に伸びを生じ易い。メッシュベルトにおける移動方向の伸びは、断線等の損傷の原因となる。メッシュベルトの損傷を放置すると、ワークを適正に搬送することができなくなる。
【0005】
このため、従来の熱処理装置では、メッシュベルトの断線の発生を正確に検出できるようにし、ワークの搬送異常の発生を防止するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、メッシュベルトの伸びの検出については、メッシュベルトの循環経路における駆動ローラ側の下方にピットを形成し、伸びを生じたメッシュベルトがピット内に垂れ下がるようにしている。ピット内におけるメッシュベルトの垂れ下がり量を適宜確認し、垂れ下がり量が所定量を超えた時点でメッシュベルトを切り詰める作業や交換する作業等のメンテナンスが行われる。
【特許文献1】特開2000−229723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、メッシュベルトの伸びの検出は、ピット内におけるメッシュベルトの垂れ下がり量を作業者が目視により確認することで行われているのが現状である。このため、作業者が確認を怠る場合や見誤る場合が考えられ、メッシュベルトの垂れ下がり量が切り詰め作業を行うべき所定量以上となりメッシュベルトに損傷を生じる可能性がある。
【0008】
この発明の目的は、メッシュベルトが所定量を超えて垂れ下がったことを正確に検出し、メッシュベルトのメンテナンスを適正なタイミングで行うことができるメッシュベルト伸び検出装置、及び、このメッシュベルト伸び検出装置を備えた熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のメッシュベルト伸び検出装置は、アーム、付勢部材、検出部及び表示部を備えている。アームは第1の端部と第2の端部との中間部分を支点として揺動自在に支持されており、アームにおける支点よりも第1の端部側がループ状の搬送経路を循環して移動するメッシュベルトの垂れ下がり部分に下方から対向する。付勢部材は、アームの第2の端部を下方に付勢する。検出部は、アームの第2の端部の上方への変位を検出して検出信号を出力する。表示部は、検出部から出力される検出信号に基づいてメッシュベルトのメンテナンスが必要である旨を報知する。
【0010】
この構成においては、付勢部材によって第2の端部が下方に付勢されたアームの第1の端部に、上方からメッシュベルトの垂れ下がり部分が対向する。メッシュベルトの伸びが増加すると垂れ下がり量が増加し、メッシュベルトの垂れ下がり部分がアームの第1の端部を押圧する。これによって、アームの第1の端部が下方に変位すると第2の端部が上方に変位し、この変位が検出部によって検出され、検出部から検出信号が出力されると、表示部がメッシュベルトのメンテナンスが必要である旨を報知する。
【0011】
したがって、付勢部材による付勢力を適に設定することにより、メッシュベルトの伸びが所定量に達したときにメンテナンスが必要である旨が報知され、メッシュベルトのメンテナンスのタイミングが正確かつ確実に認識される。
【0012】
上記の構成において、メッシュベルトの移動方向に平行な軸方向の支点においてアームを揺動自在に支持し、アームの第1の端部に、支点の軸方向に平行な方向に延出した延出部を備え、延出部においてメッシュベルトの垂れ下がり部分に下方から対向させるようにしてもよい。
【0013】
この構成においては、アームの第1の端部からメッシュベルトの移動方向に延出した延出部が、メッシュベルトの垂れ下がり部分に下方から対向する。したがって、メッシュベルトの伸び量の増加にともなって垂れ下がり部分の最も低い位置がメッシュベルトの移動方向に移動した場合にも、垂れ下がり部分が延出部を確実に押圧する。このため、メッシュベルト伸び検出装置の配置位置の自由度が高くなる。
【0014】
この発明の熱処理装置は、熱処理炉、メッシュベルト及びメッシュベルト伸び検出装置を備えている。熱処理炉は、ワークを加熱する。メッシュベルトは、ループ状の循環経路を移動し、熱処理炉の外部の供給位置から熱処理炉の内部を経由して熱処理炉の外部の受渡し位置に至る間にワークを載置して搬送する。メッシュベルト伸び検出装置は、アームにおける支点よりも第1の端部側が熱処理炉の外部においてメッシュベルトの垂れ下がり部分に下方から対向する。
【0015】
この構成においては、供給位置から熱処理炉の内部を経由して受渡し位置に至る間を含む循環経路を移動するメッシュベルトに伸びを生じた際に、メッシュベルトの垂れ下がり部分がアームの第1の端部を押圧する。これによって、アームの第1の端部が下方に変位すると第2の端部が上方に変位し、この変位が検出部によって検出され、検出部から検出信号が出力されると、表示部がメッシュベルトのメンテナンスが必要である旨を報知する。したがって、メッシュベルトの伸びが所定量に達したときにメンテナンスが必要である旨が報知され、メッシュベルトのメンテナンスのタイミングが正確かつ確実に認識される。
【発明の効果】
【0016】
この発明のメッシュベルト伸び検出装置及び熱処理装置によれば、メッシュベルトの伸びによってメッシュベルトの垂れ下がり量が所定量に達したことを簡単な構成で検出し、この検出結果に基づいてメッシュベルトをメンテナンスすべき旨を報知することができ、メッシュベルトのメンテナンスのタイミングを正確かつ確実に認識させることができる。
【0017】
また、アームの第1の端部からメッシュベルトの移動方向に延出した延出部を、メッシュベルトの垂れ下がり部分に下方から対向させることにより、装置の配置位置の自由度を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、この発明の実施形態に係る熱処理装置である連続焼結炉装置10の構成を示す概略の正面図である。連続焼結炉装置10は、焼結炉1、メッシュベルト2、駆動ローラ3、押圧ローラ4、従動ローラ5、ガイドローラ6,7を備えている。
【0019】
焼結炉1は、この発明の熱処理炉であり、ワークに対して所定の加熱処理を行う。メッシュベルト2は、上面にワークを載置して搬送する。メッシュベルト2は、駆動ローラ3、押圧ローラ4、従動ローラ5及びガイドローラ6,7に張架されている。メッシュベルト2は、供給位置8から焼結炉1内を経由して受渡し位置9に至るワークの搬送範囲を含むループ状の循環経路を移動する。
【0020】
供給位置8は、焼結炉1の入口1A側の外部に配置されている。供給位置8において、メッシュベルト2の上面にワークが載置される。受渡し位置9は、焼結炉1の出口1B側の外部に配置されている。受渡し位置9において、メッシュベルト2の上面からワークが回収される。
【0021】
駆動ローラ3、押圧ローラ4及びガイドローラ6,7は、焼結炉1の入口1A側の外部に配置されている。駆動ローラ3は、図示しないモータから回転力を供給されて回転する。押圧ローラ4は、メッシュベルト2を挟んで所定の押圧力で駆動ローラ3に圧接している。メッシュベルト2は、駆動ローラ3と押圧ローラ4とに挟持されている。駆動ローラ2が回転すると、メッシュベルト2に張力が作用し、メッシュベルト2は循環経路に沿って移動する。
【0022】
従動ローラ5は、焼結炉1の出口1B側の外部に配置されている。押圧ローラ4、従動ローラ5及びガイドローラ6,7は、メッシュベルト2の移動にともなって回転する。
【0023】
焼結炉1の入口1A側の外部において、供給位置8の下方には、ピット11が設けられている。メッシュベルト2は、移動方向における押圧ローラ4の下流側でかつガイドローラ6の上流側において、ピット11に対向する。
【0024】
連続焼結炉装置10の使用により、メッシュベルト2に経時的に伸びを生じると、循環経路中において最も張力の弱い押圧ローラ4の下流側でかつガイドローラ6の上流側において下方に垂れ下がる。メッシュベルト2の垂れ下がり部分が、ピット11内に収納される。
【0025】
図2(A)〜(C)は、連続焼結炉装置10の供給位置8近傍の構成を示す平面図、正面図及び側面図である。ピット11の底面には、伸び検出機構20が配置されている。伸び検出機構20は、アーム21、錘22及びリミットスイッチ23を含む。ただし、伸び検出機構20の構成はこれに限るものではない。
【0026】
アーム21は、長手方向をメッシュベルト2の移動方向に直交する方向にして配置されている。第1の端部21Aと第2の端部21Bとの間の中間部分を支点21Cとして揺動自在に支持されている。支点の軸方向は、メッシュベルト2の移動方向に平行にされている。
【0027】
アーム21の第1の端部21Aには、メッシュベルト2の移動方向に平行な方向に延出部24が延出している。したがって、アーム21及び延出部24は、平面視においてL字状を呈している。延出部24は、メッシュベルト2の移動方向については、ピット11の内部に収納されるメッシュベルト2の垂れ下がり部分2Aに略匹敵する長さにされている。
【0028】
錘22は、この発明の付勢部材であり、アーム21における支点21Cと第2の端部21Bとの間に取り付けられている。アーム21の第2の端部21B側は、錘22によって下方に付勢されている。
【0029】
リミットスイッチ23は、この発明の検出部であり、アクチュエータ25を揺動自在に片持ち支持している。リミットスイッチ23は、アクチュエータ25の自由端25Aがアーム21の第2の端部21Bの上面に対向する位置に配置されている。
【0030】
ピット11内に収納されるメッシュベルト2の垂れ下がり部分2Aの長さが所定量を超えると、垂れ下がり部分2Aの下端部が延出部24に当接する。垂れ下がり部分2Aの長さがさらに長くなると、垂れ下がり部分2Aの重量が延出部24に作用し、延出部24は垂れ下がり部分2Aの下端部によって下方に押圧される。
【0031】
錘22の重量は、所定量の長さの垂れ下がり部分2Aの重量よりも軽くされている。垂れ下がり部分2Aの長さが所定量を超えた時に、延出部24がアーム21の第1の端部21Aとともに下方に変位し、アーム21が支点21Cを中心に揺動する。このとき、アーム21の第2の端部21Bが、上方に変位してアクチュエータ25に下方から当接する。これによって、アクチュエータ25が揺動し、第2の端部21Bの上方への変位がリミットスイッチ23によって検出される。
【0032】
図3は、連続焼結炉装置10の制御部30の構成を示すブロック図である。制御部30は、ROM32及びRAM33を備えたCPU31に、リミットスイッチ23、モータドライバ34及び表示器ドライバ35等の入出力機器を接続して構成されている。
【0033】
CPU31は、ROM32に予め書き込まれたプログラムに基づいて各入出力機器を統括して制御し、この間に入出力されるデータをRAM33に格納する。
【0034】
リミットスイッチ23は、アーム21の第2の端部21Bが上方に変位したことの検出信号をCPU31に入力する。
【0035】
モータドライバ34には、駆動ローラ3に回転力を供給するモータ36が接続されている。モータドライバ34は、CPU31から入力される駆動データに基づいてモータ36を駆動する。
【0036】
表示器ドライバ35には、表示器37が接続されている。表示器ドライバ35は、CPU31から入力される表示データに基づいて表示器37を動作させる。
【0037】
CPU31は、リミットスイッチ23から検出信号が入力されると、表示器ドライバ35に表示データを出力し、表示器37にメッシュベルト2のメンテナンスが必要である旨の表示を行う。
【0038】
なお、CPU31は、リミットスイッチ23からの検出信号の入力回数を計数し、入力回数が所定回数に達した時に、メッシュベルト2を交換すべき旨の表示を行うようにしてもよい。
【0039】
以上のようにして、連続焼結炉装置10においては、メッシュベルト2の伸び量が所定量以上になったことを簡単な構成で検出し、この検出結果に基づいてメッシュベルト2のメンテナンスが必要である旨の表示を行うことができ、メッシュベルト2のメンテナンスを適正なタイミングで確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施形態に係る熱処理装置である連続焼結炉装置10の構成を示す概略の正面図である。
【図2】連続焼結炉装置10の供給位置8近傍の構成を示す平面図、正面図及び側面図である。
【図3】連続焼結炉装置10の制御部30の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
1 焼結炉
2 メッシュベルト
3 駆動ローラ
4 押圧ローラ
5 従動ローラ
6,7 ガイドローラ
8 供給位置
9 受渡し位置
11 ピット
20 伸び検出機構
21 アーム
21A 第1の端部
21B 第2の端部
21C 支点
22 錘
23 リミットスイッチ
24 延出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部と第2の端部との中間部分を支点として揺動自在に支持されたアームと、前記アームの前記第2の端部を下方に付勢する付勢部材と、前記アームの前記第2の端部の上方への変位を検出して検出信号を出力する検出部と、前記検出部から出力される検出信号に基づいて警告を報知する表示部と、を備え、
前記アームにおける前記支点よりも前記第1の端部側が、ループ状の経路を循環して移動するメッシュベルトの垂れ下がり部分に下方から対向することを特徴とするメッシュベルト伸び検出装置。
【請求項2】
前記アームの支点の軸方向は、メッシュベルトの移動方向に平行であり、
前記アームの前記第1の端部は、前記支点の軸方向に平行な方向に延出した延出部を備え、前記延出部において前記メッシュベルトの垂れ下がり部分に下方から対向することを特徴とする請求項1に記載のメッシュベルト伸び検出装置。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記アームにおける前記支点よりも前記第2の端部側に取り付けられた錘であることを特徴とする請求項1又は2に記載のメッシュベルト伸び検出装置。
【請求項4】
ワークを加熱する熱処理炉と、ループ状の循環経路を移動するメッシュベルトであって前記熱処理炉の外部の供給位置から前記熱処理炉の内部を経由して前記熱処理炉の外部の受渡し位置に至る間にワークを載置して搬送するメッシュベルトと、を備え、
請求項1乃至3の何れかに記載のメッシュベルト伸び検出装置を、前記アームにおける前記支点よりも前記第1の端部側が前記熱処理炉の外部において前記メッシュベルトの垂れ下がり部分に下方から対向することを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
前記熱処理炉の外部において前記メッシュベルトの垂れ下がり部分が収納されるピットをさらに備え、前記メッシュベルト伸び検出装置を前記ピットの底面に配置したことを特徴とする請求項4に記載の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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