メトキシポリエチレングリコールチオエステルキレートおよびその使用
【課題】放射線もしくは化学療法、または様々な臓器の変性疾患もしくはプロセスに関連したイオン化物質または他の損傷物質の損傷作用に対する、細胞、組織、および臓器の保護に関する。そのイオン化物質または他の損傷物質は、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカルもしくは酸化窒素のようなフリーラジカルもしくはオキシダントの生成、または重金属陽イオンを誘起する。
【解決手段】ある種のメトキシポリエチレングリコールチオエステルキレートメチルエステルは、細胞膜を透過して、フリーラジカルオキシダントから電子を除去し、かつ過酸化物と反応して反応性ヒドロキシルラジカルを生成する重金属を除去するか、または細胞小器官から放出され得るCa++を除去することにより、組織損傷に対する防護剤として有用である。これらのキレートエステルは、緑内障患者の眼内圧の低下において有用である。
【解決手段】ある種のメトキシポリエチレングリコールチオエステルキレートメチルエステルは、細胞膜を透過して、フリーラジカルオキシダントから電子を除去し、かつ過酸化物と反応して反応性ヒドロキシルラジカルを生成する重金属を除去するか、または細胞小器官から放出され得るCa++を除去することにより、組織損傷に対する防護剤として有用である。これらのキレートエステルは、緑内障患者の眼内圧の低下において有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、放射線、化学療法、または細胞損傷を生じる疾患もしくはプロセスに関連したイオン化物質またはラジカルの損傷作用に対する、細胞、組織、臓器、およびヒトを含む生物の保護に関する。それには、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカルもしくは酸化窒素のようなフリーラジカルオキシダントの生成、または重金属陽イオンが関与している。更に詳細に述べると、本発明は、新規メトキシポリエチレングリコールチオエステルキレートエステルに関し、かつ正常なまたは罹患したヒト、動物または植物における生体防護剤として、臓器移植ならびに細胞および組織の貯蔵もしくは保護において、ならびに化学毒性の低下において、単独で、または他の作用物質もしくは療法と共に補助剤として、新規メトキシポリエチレングリコールチオエステルキレートエステルを使用する方法に関する。これらのキレートエステルは、緑内障患者の眼内圧の低下における有用性も有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒトにおいて、電離性放射線への曝露は、天然の線源(例えば太陽、星からの紫外線または他の電磁放射線もしくは宇宙線、または地殻の地球放射線源)を通じて、または様々な人工の線源から生じる。人工の線源からの主な曝露は、診断用X線および放射性核種試験、歯科用X線、および治療的技法(例えば抗癌放射線療法)から、大気圏内原子爆弾試験、原子力発電所からの放射性降下物および職業被爆による比較的低い程度で生じる。電離性放射線は、主に細胞障害効果による、細胞および組織に対する有害作用を有する。ほとんどの形態の電離性放射線が生体分子および細胞を損傷する主要な方式は、毒性のある活性酸素種(OH・、・O2-、またはH2O2)を作り出すための、水との相互作用が関連した間接作用と称されるプロセスによる。直接作用と称される第二の機序は、DNAへの直接作用を伴う。
【0003】
化学防護により電離性放射線の有害作用を減少させることは、宇宙線および地球放射線に曝露される一般的集団、診断用および歯科用X線を投与される患者、照射に曝露された労働者、事故またはテロ行為により放射線に曝露されたグループ、「余分な」宇宙線に曝露される宇宙飛行士および飛行機乗務員、ならびに癌治療のために放射線を投与される患者を含む、多くの多様なグループにとって重要であると考えられる。全ての癌患者の約60%は、自分の療法の一部として放射線を受け、また正常組織への害により、腫瘍に投与され得る放射線線量は制限されることが多い。紫外線照射に関して、メラノーマ、翼状片および白内障の有病率の増加は、これらの問題点を軽減するための予防的方策(measure)の必要性を示唆している。
【0004】
人間を苦しめる多くの変性疾患の病因はフリーラジカル反応を含むという証拠が蓄積されつつある。このような変性疾患の例は、アテローム硬化症、癌、炎症性関節疾患、関節炎、自己免疫疾患、喘息、糖尿病、老人性認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋ジストロフィー、虚血、脳卒中、うっ血性心不全および変性眼疾患を含む。生物学的加齢の過程も、フリーラジカル要素を有する。細胞に対するほとんどのフリーラジカル損傷は、酸素フリーラジカル、またはより一般的には活性化酸素種を含み、これにはフリーラジカルに加え、一重項酸素および過酸化水素のような非ラジカル種が含まれる。
【0005】
眼は、強い活性化酸素種活性を伴う臓器の1つであり、そしてその不飽和脂肪酸を防護するために、高レベルの抗酸化物質を必要とする。緑内障は、網膜細胞の死につながり得る眼の変性疾患の一例である。緑内障は、網膜神経節細胞(RGC)の段階的喪失により最終的には失明につながり得る、病因不明の広く知られた眼疾患である。緑内障患者の大半は、眼内圧(IOP)上昇を有する。βアドレナリン作動性遮断薬、プロスタノイド、カンナビノイドおよび炭酸脱水酵素阻害薬を含むIOP低下が可能な薬物が、本疾患の影響を低下するために、臨床において使用されている。しかし緑内障患者は、著しい割合で、IOP上昇は示さないけれども、依然網膜細胞死に起因した眼機能の段階的低下を示す。最近、全ての緑内障患者に有効である戦略として、網膜細胞の生存を延長するために神経保護剤を使用する試みが注目されている。
【0006】
神経節細胞は、様々なニュートロフィン(eurotrophin)に依存するが、主に脳由来神経栄養因子(BDNF)に依存することが、今や明らかである。成人の神経節細胞は、その各標的ニューロンから分泌されたBDNFを吸収し、それを軸索に沿って網膜内の細胞本体へ輸送する。現在緑内障は、篩板部位での軸索原形質輸送を遮断することにより、このBDNFの逆行性の流れを遮断すると考えられている(Nickells RW., J. Glaucoma 1996; 5:345-356(非特許文献1))。神経節細胞がそのBDNF供給が欠如してどのくらいの期間生存することができるかは、正確には分かっていないが、培養系で行われた試験は、せいぜいわずか数日であることを示唆している。緑内障治療のために考慮された1つの明らかな神経保護戦略は、様々なBDNF供給源を神経節細胞へ提供することである。緑内障に関連した別の損傷を及ぼす刺激は、興奮毒の放出である。これらの分子は、実際には、ニューロンにより神経伝達物質として通常使用される興奮性アミノ酸、例えばグルタミン酸である。しかしこれらの通常は良性の分子は、局所的高濃度で、隣接細胞で高度に毒性の反応を活性化する(従って語句「興奮毒」の語源)。ニューロトロフィンのように、興奮毒は、細胞表面上の受容体と相互作用する。ニューロン上に認められたグルタミン酸受容体の亜型が3種類存在することは分かっているが、興奮毒作用において最大の役割を果たすように思われるものは、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体である。上昇したレベルのグルタミン酸は、ヒト緑内障患者および実験的に緑内障であるのサルの、両方の硝子体において検出されている(Dreyer EB, Zurakowski D, Schumer RA, Podos SM, Lipton SA., Arch. Ophthalmol. 1996; 114:299-305(非特許文献2))。
【0007】
鉄および銅のような遷移金属は、細胞毒フリーラジカルを発生させることが分かっているのに対し、鉄調節タンパク質、例えばトランスフェリン、セルロプラスミンおよびフェリチンなどは、これらの金属の毒性作用と対抗する抗酸化物質として作用することが示されている。鉄および銅の陽イオンは、虚血時および様々な疾患過程に関連して、組織から放出される。血液および酸素が枯渇した組織は、虚血性壊死または梗塞となり、不可逆的な臓器損傷となる可能性がある。例え血流および酸素が臓器または組織に回復(再灌流)されたとしても、この臓器は、直ぐには、正常な虚血前状態には回復しない。虚血後機能障害は、機能不全となった(stunned)臓器における酸素フリーラジカルの発生によることがある。再灌流時の好中球の再侵入は、白血球の亢進反応のために、フリーラジカル損傷を引き起こし得る。鉄および銅の陽イオンは、ヒドロキシフリーラジカル形成を触媒することが分かっている。キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、電離性放射線による脂質過酸化反応を低下させることが分かっている(Ayene-SI;Srivastava-PN Int. J. Radiat. Biol. Relat. Stud. Phys. Chem. Med. 1985 Aug; 48(2):197-205(非特許文献3))。抗酸化物質を提供しかつ虚血性にストレスを受けた組織と同等に低下することは、ミトコンドリアの回復を可能にし、このことは正常なカルシウムホメオスタシスおよび組織機能の回復に重要である。
【0008】
Ca++のような第一遷移系列元素でない金属陽イオンは、体内で重要な機能を発揮するが、虚血および再灌流時に生じる心臓のカルシウム過剰負荷のような、多くの病理発生過程にも関与することが、更に知られている。このような金属陽イオンは、Ca++に高親和性を有するキレート剤によるキレート化に関して、第一遷移系列元素の陽イオンと拮抗することができ、その結果キレート剤による第一遷移系列陽イオンのキレート化を干渉する。更にCa++のような陽イオンのキレート化は、体内でのこれらの陽イオンの正常な機能を損ない得る。従ってキレート剤の使用には、治療される疾患過程における様々な陽イオンの役割の知識、および更なるイオン不均衡を生じることなく障害を起こす(offending)陽イオンを除去するための特異的キレート剤親和性の選択の知識が加味されねばならない。
【0009】
癌性組織への電離性放射線の有効治療線量を依然送達しつつ、正常組織の損傷を軽減する多くの試みが成されている。これらの技術は、近接照射療法、分割および多分割照射、複雑な線量スケジュール(complicated dose scheduling)および送達システム、ならびに線形加速器による高電圧療法を含む。しかしこのような技術は、最も良くて、癌細胞を殺傷する有益な作用と正常組織への放射線の望ましくない作用の間の均衡を取ることができるのみである。腫瘍に対する損傷の測定を正常組織の損傷で除算した割合である治療可能比において、多くの改善の余地がある。
【0010】
鉄および銅の陽イオンと錯体を形成するためにデフェロキサミンのような鉄をキレート化する親鉄剤を投与することによる、これらの陽イオンの触媒有効性を軽減する試みは、インビボにおけるヒドロキシフリーラジカルからの組織損傷を阻害する点で明白には成功していない。デフェロキサミンのような親鉄剤は、銅陽イオンのキレート剤としては不十分である。銅は、鉄よりもはるかに低い濃度で体内に存在するにもかかわらず、ヒドロキシルラジカル形成を触媒する点で鉄よりもより活性がある。
【0011】
ポリエチレングリコール(PEG)およびポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MP)も、組織損傷を低下することが分かっているが、その機序は不明瞭である。PEGは、両親媒性ポリマーH(OCH2CH2)nOHであり、これは類似した分子量範囲を持つホモログの混合物からなる。従って例えば、MP350は、平均分子量350を有し、nが4〜9、中央値がn=7のホモログの混合物からなる。比較的低い分子量のポリマーPEG200-600は、経口的に摂取された場合に、胃腸管を通じて吸収され、尿中に未変化のまま排泄される。PEGは、腸粘膜の細胞膜を通じて水と共に直接吸収される。
【0012】
PEG200-600は無毒かつ生物学的に不活性であり、これは水に不溶性の薬物の投与のためのビヒクルとして使用されることが多い。いくつかの研究において、PEGビヒクルは単独で、著しい生物学的活性を示すことが実験において認められ、このことは低分子量PEGの更なる研究につながった。例えばPEG400は、マウスのx-照射の前または直後のいずれかに腹腔内(IP)投与される場合、致死率および罹患率に有意な保護をもたらした(Shaeffer and Schellenberg, Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 10:2329, 1984(非特許文献4);Shaeffer, et al., Radiat. Res., 107:125, 1986(非特許文献5))。PEG300のIPは、実験的な震盪性脳損傷のCNS続発症を低下することが示された(Clifton, et al., J. Neurotrauma, 6:71, 1989(非特許文献6))。
【0013】
従って分子量約400のPEGは、組織に対する損傷に対し保護的作用を示す、独特な無毒の物質である。しかし700よりも大きい分子量のPEGは、胃腸管を通じて十分には吸収されない。比較的低い分子量のPEGの保護的作用の機構は確立されていないが、恐らくPEGの脂質膜の表面またはタンパク質構成要素との相互作用に関連している。PEGは、細胞膜近傍に凝集し、膜表面で水の極性を低下させ、疎水性相互作用を増加させる(Hoekstra, et al., J. Biol. Chem., 264:6786, 1989(非特許文献7))。
【0014】
ある種のMPキレートは、有効な鉄キレート剤であり得ることは公知である。例えば、MPが、イミノジアセタート(iminodiacetate)末端(MIDA)と連結することができることは公知である。MPで修飾された他のキレートは、分子量550のMPのカルボニルジイミダゾールとの反応、それに続いて、得られたイミダゾールカルボニルエステルのデフェロキサミン塩基との反応による、ウレタン連結の形成により調製される、MP550-デフェロキサミン(フェリオキサミン)を含む。この物質は、腎臓の磁気共鳴造影剤として使用されるガドリニウムのキレートとして作製される(Duewell, et al., Invest. Radiol., 26:50, 1991(非特許文献8))。デフェロキサミンは、第二鉄の有効なキレート剤であることが分かっている。
【0015】
MIDAは、塩化チオニルとの反応により、MP350を塩化物に転換し(Bueckmann et al., Biotechnology & Applied Biochem., 9:258-268, 1987(非特許文献9))、この塩化物のイミノジアセタートナトリウムとの反応により、イミノジアセタートに転換する(Wuenschell et al., J. Chromatog. 543: 345-354, 1991(非特許文献10))ことにより、調製することができる。このメチルエステルは、メタノール性HClにより調製することができる。しかし、より有効なキレート剤でありかつ無毒である代替のMPキレートが、求められている。
【0016】
米国特許第6,020,373号(特許文献1)は、キレートメチルエステルに連結されたポリエチレングリコールが、動物モデルにおいて、放射線障害およびドキソルビシン毒性に対し非常に有効な防護剤であることを開示している。周知の放射線防護剤S-2-[3-アミノプロピルアミノ]エチルホスホロチオアート(WR-2721, Ethyol)であるアミホスチンは、潜在的(potential)チオールを有し、放射線療法および化学療法における正常組織の保護のために、広く臨床において使用されている(Wasserman, T. H., Seminars in Oncology 21(5 Supp. 11): 21-25, 1994(非特許文献11))が、その有効性には限界がある。システインおよびシステアミンのようなスルフヒドリル化合物は、動物において放射線防護を提供することが公知である。チオール基は、水素原子を損傷された分子へ供与することにより、放射線が生じたフリーラジカルを捕捉する。より有効な防護剤を開発しようとする広範な努力にもかかわらず、システアミンより著しく優れているチオールベースの放射線防護剤は見つかっていない。更に放射線障害に対し防護するためのチオール薬物の使用は、そのような化合物の毒性のために制限されている。更に細胞への透過を促進するための極性薬物のエステルの使用が、報告されている(Vos et al, Int. J. Radiat Biol. Relat. Stud. 53:273-81, 1988(非特許文献12))。
【0017】
従って、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカルもしくは酸化窒素のようなフリーラジカルオキシダントの生成、または重金属陽イオンが関与している、放射線もしくは化学療法または疾患もしくは他の状態に関連したイオン化物質の損傷作用に対し、細胞、組織および臓器を保護することが可能である改善された組成物および方法の必要性が明らかに存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第6,020,373号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Nickells RW., J. Glaucoma 1996; 5:345-356
【非特許文献2】Dreyer EB, Zurakowski D, Schumer RA, Podos SM, Lipton SA., Arch. Ophthalmol. 1996; 114:299-305
【非特許文献3】Ayene-SI;Srivastava-PN Int. J. Radiat. Biol. Relat. Stud. Phys. Chem. Med. 1985 Aug; 48(2):197-205
【非特許文献4】Shaeffer and Schellenberg, Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 10:2329, 1984
【非特許文献5】Shaeffer, et al., Radiat. Res., 107:125, 1986
【非特許文献6】Clifton, et al., J. Neurotrauma, 6:71, 1989
【非特許文献7】Hoekstra, et al., J. Biol. Chem., 264:6786, 1989
【非特許文献8】Duewell, et al., Invest. Radiol., 26:50, 1991
【非特許文献9】Bueckmann et al., Biotechnology & Applied Biochem., 9:258-268, 1987
【非特許文献10】Wuenschell et al., J. Chromatog. 543: 345-354, 1991
【非特許文献11】Wasserman, T. H., Seminars in Oncology 21(5 Supp. 11): 21-25, 1994
【非特許文献12】Vos et al, Int. J. Radiat Biol. Relat. Stud. 53:273-81, 1988
【発明の概要】
【0020】
発明の概要
本発明は、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカルもしくは酸化窒素のようなフリーラジカルもしくはオキシダントの生成、または重金属陽イオンを誘起することを特徴とする、放射線もしくは化学療法、もしくは様々な臓器の変性疾患に関連したイオン化物質または他の損傷作用物質の損傷作用に対し、細胞、組織および臓器を保護することが可能な組成物および方法を提供する。より詳細に述べると、本発明は、メトキシポリエチレングリコールチオエステルキレートメチルエステルに関する。これは、細胞膜を透過して、フリーラジカルオキシダントから電子を除去し、かつ過酸化物と反応し反応性ヒドロキシルラジカルを生じる重金属を除去するか、または細胞小器官から放出されるCa++を除去することにより、組織損傷に対し防護剤として有用である。本発明は、緑内障の様々な形において認められる上昇した眼内圧の低下においても有用であると考えられる。
【0021】
従って本発明は、式(I)のメトキシポリエチレングリコールチオエステル化合物に関する:
式中、1つのR1は、式(II)であり
;
残りのR1は各々、式(II)、または-CH2COOH、-CH2COO-Na+、-CH2COO-Ca++/2、-CH2COOCH3、-CH2COOC2H5、および-CH2COOC3H7からなる群より選択され;aは、0〜6であり;各bは独立して、0〜18であり;各cは独立して、3〜10であり;かつ、dは独立して、1〜3である。
【0022】
本発明の1つの態様は、aが0であり、各bが0であり、各cが独立して3〜10であり、dが1であり、かつ3つのR1が-CH2COOCH3である、式(I)の化合物である。1つの例において、本発明は、aが0であり、各bが0であり、各cが独立して7または8であり、dが1であり、かつ3つのR1が-CH2COOCH3である、式(I)の化合物である。
【0023】
別の態様において、本発明は、aが1であり、各bが0であり、各cが独立して3〜10であり、dが1であり、かつ4つのR1が-CH2COOCH3である、式(I)の化合物である。1つの例において、本発明は、aが1であり、各bが0であり、各cが独立して7または8であり、dが1であり、かつ4つのR1が-CH2COOCH3である、式(I)の化合物である。
【0024】
より具体的には、本発明は、下記式を有する化合物に関する:
式中、nは3〜10である。
【0025】
別の態様において、本発明は、下記式を有する化合物に関する:
式中、nは3〜10である。
【0026】
本発明の1つの態様において、式(I)の化合物は、電子を引き抜くことが可能である。本発明の1つの態様において、式(I)の化合物は、重金属またはCa++とキレートを形成することが可能である。
【0027】
本発明は、式(I)の化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体または薬学的に許容される補助剤とを含有する、薬学的組成物にも関する。1つの態様において、本発明は、式(I)の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、任意に少なくとも1種の治療薬とを含有する薬学的組成物に関する。
【0028】
本発明は更に、式(I)の化合物の治療的有効量を患者に投与することを含む、必要とする患者において、放射線に対する曝露に起因する組織損傷を予防する方法に関する。
【0029】
1つの態様において、本発明は、式(I)の化合物の治療的有効量を患者に投与することを含む、必要とする患者において、フリーラジカルオキシダントに起因する変性疾患を予防する方法に関し、ここでフリーラジカルオキシダントは、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、および酸化窒素を含む。
【0030】
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物および少なくとも1種の薬学的に許容される担体または薬学的に許容される補助剤を含有する組成物の治療的有効量を患者へ投与することを含む、必要とする患者において、緑内障に起因する網膜細胞死を治療する方法に関する。
【0031】
更に別の態様において、本発明は、式(I)の化合物の有効量を投与することを含む、必要とする細胞内で、フリーラジカルオキシダントから電子を引き抜く方法に関し、ここでフリーラジカルオキシダントは、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、および酸化窒素を含む。
【0032】
1つの例において、本発明は、式(I)の化合物の有効量を投与することを含む、必要とする細胞内で、重金属によるフリーラジカルオキシダント形成の触媒を防止する方法に関し、ここでフリーラジカルオキシダントは、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、および酸化窒素を含み、ここで化合物は、重金属によりキレートを形成することが可能である。
【0033】
本発明は、少なくとも1種の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、およびそれらの使用説明書を備えるキットにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、薬物がMPチオールへ加水分解され、これはフリーラジカルオキシダントから電子を除去し、その間にキレートは、細胞損傷により生じた重金属を除去する例証的プロセスを図示する。
【図2】図2は、EDTAメチルトリエステルにカップリングされたメトキシポリエチレングリコールチオール(MPSEDE)の代表的質量スペクトルを図示する。
【図3】図3は、放射線防護剤としてのMPチオール化合物の有効性を図示する。
【図4】図4は、局所的眼内投与時のラットにおけるMPDTEの眼球への透過を表している。
【図5】図5は、MPDTEの局所的眼内投与の用量反応を図示している。
【図6】図6は、MPSEDEの局所的眼内投与の用量反応を図示している。
【図7】図7は、30mM MP化合物の局所的眼内投与の平均用量反応を図示している。
【図8】図8は、濃度を増加させたことによるMPSEDEおよびMPDTEの眼内圧に対する作用を図示している。
【図9】図9は、公知の放射線防護剤と一緒のMPDTEにより引き起こされたIOP低下の比較を図示している。
【図10】図10は、MPDTE、MPおよびDTEにより引き起こされたIOP低下の比較を図示している。
【図11】図11は、MP化合物のNMDAとの同時投与後の網膜電図測定の代表的A波成分を図示している。
【図12】図12は、MPG化合物のNMDAとの同時投与後の網膜電図測定の代表的B波成分を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は、フリーラジカル、スーパーオキシドアニオンの生成、または重金属陽イオンを誘起する、放射線もしくは化学療法、または様々な臓器の変性疾患に関連したイオン化物質の損傷作用に対し、細胞、組織、臓器、および生物を保護するために使用する新規化合物を提供する。1つの局面において、本発明は、細胞へのフリーラジカル損傷に対する二重の防護機序を可能にするための、細胞への輸送を促進する両親媒性ポリエチレングリコール尾部と共に、潜在的チオールの潜在的キレートとの組合せに関する。
【0036】
1つの局面において、本発明は、チオエステル連結によるポリマーの非メチル末端上のキレート基の化学結合により修飾された、平均分子量(average weight)200〜600、より好ましくは300〜450、最も好ましくは350(MP350)を有する、新規の両親媒性の細胞透過性メトキシポリエチレングリコール(MP)に関する。
【0037】
本発明のメトキシポリエチレングリコールの修飾に使用することができるキレート基の例は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、および例えばブロモ酢酸または誘導体のエチレンアミン連結を含むトリエチレンテトラミン、ならびに他のより高次のホモログへの反応により形成された類似したキレート基、またはシクロヘキサンジアミン四酢酸およびエチレングリコールアミノエチルエーテル四酢酸(EGTA)のような他のキレート基を含む。
【0038】
本発明の化合物は一般に、下記式を有する:
式中、1つのR1は、式(II)であり
;
残りのR1は各々、式(II)、または-CH2COOH、-CH2COO-Na+または他の一価のイオン、-CH2COO-Ca++/2または他の二価もしくは多価のイオン、-CH2COOCH3、-CH2COOC2H5、および-CH2COOC3H7からなる群より選択され;
aは、0〜6であり;各bは独立して、0〜18であり;各cは独立して、3〜10であり;かつ、dは独立して、1〜3である。
【0039】
本発明の1つの態様は、aが0であり、各bが0であり、各cが独立して3〜10、好ましくは7であり、dが1であり、かつ1つのR1が式(II)であり、3つのR1が-CH2COOCH3である、式(I)の化合物である。
【0040】
本発明の別の態様は、aが1であり、各bが0であり、各cが独立して3〜10、好ましくは7であり、dが1であり、R1の1つが式(II)であり、残りのR1が-CH2COOCH3である、式(I)の化合物である。
【0041】
1つの例において、本発明の化合物は、下記式を有する、エチレンジアミン四酢酸メチルトリエステルのメトキシポリエチレングリコールチオエステル(MPSEDE)である:
式中、nは3〜10であり、好ましくは7である。
【0042】
別の例において、本発明の化合物は、下記式を有する、ジエチレントリアミン五酢酸メチルテトラエステルのメトキシポリエチレングリコールチオエステルである:
式中、nは3〜10であり、好ましくは7である。
【0043】
本発明は更に、先に規定されたような式(I)の化合物の調製法を提供し、これは、塩化チオニルとの反応によりMPを塩化物にまず転換する工程(Bueckmann et al., Biotechnology & Applied Biochem., 9:258-268, 1987)、およびその後この塩化物のチオ尿素との反応によりチオール(MPチオール)に転換する工程(Urquhart et al Organic Syntheses Coll. Vol3;Horning, E. C.; Ed.;Wiley, N. Y., 1955;pp 363-365)を含む。MPチオールは、ジメチルホルムアミド溶媒と共にカップリング剤としてカルボニルジイミダゾールを使用して、チオエステルとしてキレート剤へカップリングされ(Gais, Angew. Chem. Int. Ed. 16:244-246, 1977)、引き続き他方のカルボキシル基がメタノールおよびカルボニルジイミダゾールによりメチルエステル化される。エチレンジアミン四酢酸のメトキシポリエチレングリコールチオエステル(MPSEDE)およびジエチレントリアミン五酢酸のメトキシポリエチレングリコールチオエステル(MPSDTE)は、MPチオールの各々EDTAおよびDTPAとのカップリングにより同様に調製することができる。
【0044】
前述の式(I)の化合物は、それらの薬学的に許容される塩または溶媒和物へ、好ましくは塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩またはパラトルエンスルホン酸塩のような酸付加塩に転換されてよい。
【0045】
式(I)の化合物は、立体異性体型で存在してよい。本発明は、式(I)の化合物の幾何異性体および光学異性体の全て、ならびにラセミ体を含むそれらの混合物の使用を包含することは理解されると考えられる。互変異性体およびそれらの混合物の使用も、本発明の企図された局面を形作る。
【0046】
式(I)の化合物は、他のキレート剤または還元基、例えばキレート剤としてBAPTA、TPEN(テトラキス-(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン)、カルセイン、ならびに還元基としてNADHおよびNAD(P)Hを含んでよい。
【0047】
本発明の化合物の特に重要な特徴は、細胞膜を透過するそれらの能力である。1つの態様において、本発明は、平均分子量200〜600、より好ましくは300〜450、最も好ましくは350(MP350)を有する、新規の両親媒性の細胞透過性メトキシポリエチレングリコール(MP)に関し、これは、セレニウム、スルホキシド、エネジオール基(例えばアスコルビン酸およびジヒドロキシマレイン酸)を含むレダクトン、ヒドロキニーネ、ジヒドロピリジン、トコフェロール環系を含む四置換されたヒドロキノンエーテル、ジヒドロリポ酸を含むジチオール、インドール、およびラジカル還元剤を生じるカロテノイドを含む縮合ポリエンのような官能基を含む、連結によるポリマーの非メチル末端上のキレート基の化学結合により修飾される。他のキレートは、デフェロキサミンを含むカルボキシルの代わりにカルバメート基、ならびにオルトフェナントロリン、1,1-ジピリジル、および8-ヒドロキシキノリンを含む複素環式アミンとのキレートを含んでよい。一例において、本発明の化合物は、MPチオールのカルボニルジイミダゾールを伴うキレートへのカップリングに関連した工程時に、EDTAのシクロヘキサンジアミン四酢酸もしくはEGTAとの置き換えにより合成される、シクロヘキサンジアミン四酢酸およびエチレングリコールアミノエチルエーテル四酢酸(EGTA)のMPチオエステルを含む。
【0048】
作用のいずれか特定の理論に結びつけられることを意図するものではないが、この細胞膜を透過する能力は、恐らく非極性代謝産物のために使用される膜チャネルを介した、両親媒性MPおよび非極性エステル基により付与される非極性の結果、それに続く細胞内エステラーゼによるチオールおよび活性キレートへの迅速な活性化の結果であると考えられる。チオールは、ジスルフィドの形成による、過酸化物、超酸化物、ヒドロキシルラジカル、または酸化窒素のようなフリーラジカルオキシダントからの電子の除去に有効であると考えられる一方で、キレートは、細胞損傷により生成され、過酸化物と反応して反応性ヒドロキシルラジカルを形成する、Fe++、Fe+++もしくはCu++のような重金属を除去するか、または細胞小器官から放出され得るCa++を除去すると考えられる。従って本発明の化合物は、2つの異なる機序により細胞を保護する能力を有する。この過程を、図1に図示している。
【0049】
更なる局面において、本発明は、療法において使用するための薬物の製造における、式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用を提供する。本薬物は、MPエステルまたは塩単独よりもより広範な予防または治療的作用の範囲を可能にする、異なるまたは類似した作用機序を伴う、他の構成要素または薬学的に許容される補助剤を含んでよいことが理解される。「補助剤」という用語は、主要な成分の作用を修飾する成分、または医学的な治療の有効性を増大する成分もしくは抗原に対する免疫応答を増強する成分として解釈されることが意図される。
【0050】
本明細書の文脈において、「療法」という用語は、特に予防を含まないことを具体的に指摘しない限りは、「予防」も含む。「治療的」および「治療的に」という用語は、これに従い解釈されることが意図される。
【0051】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、必要とする患者へ投与することを含む、消耗性神経変性疾患に罹患したかまたはリスクのある患者において、アルツハイマー病を治療する安全かつ有効な方法を提供する。
【0052】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、パーキンソン病に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法も提供する。
【0053】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、多発性硬化症(MS)に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法も提供する。
【0054】
また本発明は更に、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、筋ジストロフィー(MD)に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法も提供する。
【0055】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、それらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、またはそれらの薬学的に許容される補助剤を患者へ投与することにより、必要とする患者において、放射線の損傷を治療しかつ放射線に関連した癌を予防する安全かつ有効な方法を提供する。放射線源は、可視光もしくは紫外線を含む電磁波、またはα、β、γを含む核種、または宇宙線であってもよい。損傷の種類は、日焼け、しみ、およびメラノーマのような皮膚科学的な損傷の様々な形に加え、内部細胞の喪失、嚢胞形成、神経障害、ならびに様々な型の良性および悪性腫瘍を含むが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、それらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、またはそれらの薬学的に許容される補助剤ならびにフリーラジカルおよび/または重金属毒性成分を有する1種または複数の化学物質を患者へ投与することにより、必要とする患者における化学療法から、またはフリーラジカルおよび/もしくは重金属毒性成分を有する化学薬剤の不用意なもしくは意図された投与からの、正常組織に対する毒性を治療する安全かつ有効な方法を提供する。式(I)の化合物は、フリーラジカルおよび/または重金属毒性成分を有する化学物質の投与の前、同時または後に投与されてよい。本発明は、フルオロピリミジン、ピリミジンヌクレオシド、プリン、白金アナログ、アントロアサイクリン(antroacycline)、ポドフィロトキシン、カンプトテシン、ホルモンおよびホルモンアナログ、酵素、タンパク質および抗体、ビンカアルカロイド、タキサンなどを含む、フリーラジカルおよび/または重金属毒性成分を有する化学物質の毒性の低下に有用である。毒性を低下させる本方法は、任意の化学療法薬に適用可能であるが、その一部の例は、イリノテカン、FU、タキソール、シスプラチン、アドリアマイシン、オキサリプラチン、シクロファスファミド、EGFおよびVGF阻害剤、アセマンナン、アセトアミノフェン、アクラルビシン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アルトレタミン、アミホスチン、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、ANCER、アンセスチム、ARGLABIN、三酸化ヒ素、BAM 002(Novelos)、ベキサロテン、ビカルタミド、ブロクスウリジン、カペシタビン、セルモロイキン、セトロレリックス、クラドリビン、クロトリマゾール、シタラビンオクフォスフェート、DA 3030(Dong-A)、ダクリズマブ、デニロイキンディフチトクス、デスロレリン、デキスラゾキサン、ジラゼプ、ドセタキセル、ドコサノール、ドキセルカルシフェロール、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ブロモクリプチン、カルムスチン、シタラビン、フルオロウラシル、HITジクロフェナク、インターフェロンα、ダウノルビシン、トレチノイン、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロルニチン、エミテフル、エピルビシン、エポエチンβ、リン酸エトポシド、エクセメスタン、エクシスリンド、ファドロゾール、フィルグラスチム、フィナステリド、リン酸フルダラビン、ホルメスタン、ホテムスチン、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、ゾガマイシン、ギメラシル/オテラシル/テガフル併用、グリコピン(glycopine)、ゴセレリン、ヘプタプラチン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎児αフェトタンパク質、イバンドロン酸、イダルビシン、(イミキモド、インターフェロンα、インターフェロンα天然、インターフェロンα-2、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα-N1、インターフェロンα-n3、インターフェロンαcon-1、インターフェロンα天然、インターフェロンβ、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b、インターフェロンγ、天然インターフェロンγ-1a、インターフェロンγ-1b、インターロイキン-1β、イオベングアン、イリノテカン、イルソグラジン、ランレオチド、LC 9018(Yakult)、レフルノミド、レノグラスチム、硫酸レンチナン(lentinan sulfate)、レトロゾール、白血球αインターフェロン、ロイプロレリン、レバミソール+フルオロウラシル、リアロゾール、ロバプラチン、ロニダミン、ロバスタチン、マソプロコール、メラルソプロール、メトクロプラミド、ミフェプリストン、ミルテフォシン、ミリモスチム、ミスマッチの二重鎖RNA、ミトグアゾン、ミトラクトール、ミトキサントロン、モルグラモスチム、ナファレリン、ナロキソン+ペンタゾシン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ニルタミド、ノスカピン、新規赤血球生成刺激タンパク質、NSC 631570、オクトレオチド、オプレルベキン、オサテロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸、ペガスパルガーゼ、ペグインターフェロンα-2b、ペントサンポリサルフェートナトリウム、ペントスタチン、ピシバニール、ピラルビシン、ウサギ抗胸腺細胞ポリクローナル抗体、ポリエチレングリコールインターフェロンα-2a、ポルフィマーナトリウム、ラロキシフェン、ラルチトレキセド、ラスブリカーゼ、エチドロン酸レニウムRe186、RIIレチナミド、リツキシマブ、ロムルチド、サマリウム(153Sm)レキシドロナム、サルグラモスチム、シゾフィラン、ソブゾキサン、ソネルミン、ストロンチウム-89クロリド、スラミン、タソネルミン、タザロテン、テガフル、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テトラクロロデカオキシド、サリドマイド、チマルファシン、甲状腺刺激ホルモンα、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ-ヨウ素131、トラスツズマブ、トレオスルファン、トレチノイン、トリロスタン、トリメトレキサート、トリプトレリン、腫瘍壊死因子α、天然、ウベニメクス、膀胱癌ワクチン、丸山ワクチン、メラノーマ溶解産物ワクチン、バルルビシン、ベルテポルフィン、ビノレルビン、VIRULIZIN、ジノスタチンスチマラマー、またはゾレドロン酸;アバレリクス;AE 941(Aeterna)、アンバムスチン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、bcl-2(Genta)、APC 8015(Dendreon)、セツキシマブ、デシタビン、デクスアミノグルテチミド、ジアジクォン(diaziquone)、EL 532(Elan)、EM 800(Endorecherche)、エニルウラシル、エタニダゾール、フェンレチニド、フィルグラスチムSD01(Amgen);フルベストラント、ガロシタビン、ガストリン17免疫原、HLA-B7遺伝子治療(Vical)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ヒスタミンジヒドロクロリド、イブリツモマブチウキセタン、イロマスタット、IM 862(Cytran)、インターロイキン-2、イプロキシフェン(iproxifene)、LDI 200(Milkhaus)、レリジスチム、リンツズマブ、CA 125 MAb(Biomira)、癌MAb(Japan Pharmaceutical Development)、HER-2およびFc MAb(Medarex)、イディオタイプ105AD7 MAb(CRC Technology)、イディオタイプCEA MAb(Trilex)、LYM-1-ヨウ素131 MAb(Techniclone)、多型性上皮ムチン-イットリウム90MAb(Antisoma)、マリマスタット、メノガリル、ミツモマブ、モテクサフィンガドリニウム、MX 6(Galderma)、ネララビン、ノラトレキセド、P30タンパク質、ペグビソマント、ペメトレキセド、ポルフィロマイシン、プリノマスタット、RL 0903(Shire)、ルビテカン、サトラプラチン、フェニル酢酸ナトリウム、スパルホス酸(sparfosic acid)、SRL 172(SR Pharma)、SU 5416(SUGEN)、SU 6668(SUGEN)、TA 077(Tanabe)、テトラチオモリブデン酸、タリブラスチン、トロンボポエチン、スズエチルエチオプルプリン、チラパザミン、癌ワクチン(Biomira)、メラノーマワクチン(New York University)、メラノーマワクチン(Sloan Kettering Institute)、メラノーマ腫瘍崩壊産物ワクチン(New York Medical College)、ウイルス性メラノーマ細胞溶解産物ワクチン(Royal Newcastle Hospital)、またはバルスポダールである。
【0057】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、虚血に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法も提供する。
【0058】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、脳卒中に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法も提供する。
【0059】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、うっ血性心不全に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法も提供する。
【0060】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、必要とする患者へ投与することを含む、眼疾患に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法を更に提供する。他の疾患は、緑内障、黄斑変性、白内障、メラノーマ、翼状片などを含むが、これらに限定されない、医科学において現在公知のものを含むことができる。
【0061】
また本発明は更に、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、神経変性疾患、リウマチ疾患、関節炎または自己免疫疾患に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法も提供する。他の疾患は、様々な型の関節炎、クローン病、線維筋性形成異常などを含むが、これらに限定されない、医科学において現在公知のものを含むことができる。
【0062】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、それが必要な患者における、細胞、組織または臓器の保存のための安全かつ有効な方法も提供する。
【0063】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することによる、それが必要な患者における、鉄または他の重金属または遷移元素の毒性の治療または予防のための安全かつ有効な方法も提供する。
【0064】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を培地内に含むことによる、単離された臓器、組織、血液細胞、精子、植物細胞を含む細胞、抽出物、膜、リポソーム、タンパク質、炭水化物、脂質、DNAまたは他の天然もしくは合成の生物学的物質の保護のための、安全かつ有効な方法を提供する。
【0065】
式(I)の化合物、ならびにそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物は、それ自体で使用されてよいが、一般には式(I)の化合物/塩/溶媒和物(活性成分)が薬学的に許容される補助剤、希釈剤もしくは担体と会合されている薬学的組成物の形態で投与される。投与様式に応じて、本薬学的組成物は、活性成分を0.05〜99重量%、より好ましくは0.05〜80重量%、更により好ましくは0.10〜70重量%、なおより好ましくは0.10〜50重量%含有することが好ましく、全ての重量%は、全組成物を基にしている。
【0066】
本発明は、本明細書に規定されたような、式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、エステル、もしくは溶媒和物を、薬学的に許容される補助剤、希釈剤または担体と会合して含有する、薬学的組成物も提供する。
【0067】
本発明は更に、本明細書に規定されたような、式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、エステル、もしくは溶媒和物を、薬学的に許容される補助剤、希釈剤または担体と混合することを含む、本発明の薬学的組成物の調製法を提供する。担体は、その製剤の他の成分と共存でき、かつそのレシピエントにとって有害でないという意味で「許容され」なければならない。
【0068】
本薬学的組成物は、液剤、懸濁剤、自然の(native)もしくはヘプタフルオロアルカンエアロゾル剤、およびドライパウダー製剤の形で局所的に(例えば、肺および/もしくは気道または皮膚もしくは他の上皮表面へ);または、例えば錠剤、カプセル剤、シロップ剤、散剤もしくは顆粒剤の形での経口投与によるか、または液剤もしくは懸濁剤の形での非経口的投与により全身へ投与されるか、または皮下投与によるか、または坐薬の形で経膣もしくは直腸投与によるか、または経皮的に投与されてよい。
【0069】
本発明の化合物および組成物は、望ましくは、通常の無毒の薬学的に許容される担体、補助剤、およびビヒクルを含む投与単位製剤で、経口、口腔内、耳もしくは鼻腔内、非経口的、吸入スプレーにより、局所適用により、注射により、経皮的、経膣的または経直腸的(例えば坐薬の使用)な送達システムを含むが、これらに限定されるものではない、任意の利用可能でかつ有効な送達システムにより投与することができる。非経口とは、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射、または注入技術を含む。
【0070】
当業者に公知である経皮的な化合物投与は、患者の全身循環への、本化合物の経皮経路を介した薬学的化合物の送達を含む。局所投与は、経皮的貼付剤またはイオン浸透装置のような、経皮的投与の使用も含み得る。その他の成分も、経皮的貼付剤へ混合することができる。例えば組成物および/または経皮的貼付剤は、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、クロロクレゾール、塩化ベンザルコニウムなどを含むが、これらに限定されるものではない、1種または複数の保存剤または静菌剤と共に製剤化することができる。本化合物および組成物の局所投与のための剤形は、クリーム剤、パスタ剤、スプレー剤、ローション剤、ゲル剤、軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤などを含む。このような剤形において、白色の滑らかで均質な不透明のクリーム剤またはローション剤を形成するために、本発明の組成物を、例えば保存剤としてのベンジルアルコール1%または2%(wt/wt)、乳化ワックス、グリセリン、パルミチン酸イソプロピル、乳酸、精製水およびソルビトール溶液と混合することができる。加えて本組成物は、溶媒または吸収変更剤として機能することがある、ポリエチレングリコール400を含有することができる。これらを、軟膏剤を形成するために、例えば保存剤としてのベンジルアルコール2%(wt/wt)、白色ワセリン、乳化ワックス、およびTenoxII(ブチル化されたヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、クエン酸、プロピレングリコール)と混合することができる。液剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤中の組成物を、包帯材料、例えばガーゼの織物パッドまたはロールに含浸させることができるか、または他のそのような形態で、局所的塗布に使用することもできる。本組成物を、本組成物で含浸された樹脂性架橋剤で接着され、非浸透性の裏当てに積層された、アクリル系ベースのポリマーの1つのような、経皮的システムを使用して局所的に塗布することもできる。
【0071】
経口投与用の固形剤形は、カプセル剤、錠剤、発泡錠剤、咀嚼錠剤、丸剤、散剤、サシェ剤、顆粒剤およびゲル剤を含むことができる。このような固形剤形において、本活性化合物は、少なくとも1種の不活性希釈剤、例えばショ糖、乳糖またはデンプンと混合することができる。このような剤形は、通常の実践のように、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤も含むことができる。カプセル剤、錠剤、発泡錠剤および丸剤の場合、これらの剤形は、緩衝剤も含有することができる。軟ゼラチンカプセル剤は、本発明の活性化合物または組成物、および植物油の混合物を含むように調製することができる。硬ゼラチンカプセル剤は、活性化合物の顆粒を、固形の粉状担体、例えば乳糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、アミロペクチン、ゼラチンのセルロース誘導体などと組み合せて含むことができる。錠剤および丸剤は、腸溶性コーティングと共に調製することができる。
【0072】
経口投与のための液体剤形は、当該技術分野において通常使用される水などの不活性希釈剤を含有する、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を含むことができる。このような組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、ならびに甘味剤、矯味矯臭剤および香料のような、補助剤も含有することができる。
【0073】
本発明の化合物および組成物の、膣または直腸投与のための坐薬は、室温では固形であるが体温では液体であり、その結果これらは融解しかつ薬物を放出するカカオバターおよびポリエチレングリコールのような好適な非刺激性賦形剤と、本化合物または組成物を混合することにより調製することができる。
【0074】
注射用調製品、例えば無菌の注射用の水性懸濁液または油性懸濁液は、好適な分散剤、湿潤剤および/または懸濁化剤を使用して、当該技術分野において公知のように製剤化することができる。無菌の注射用調製品は、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液のような、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、無菌の注射用液剤または懸濁剤でもあり得る。中でも使用可能である許容されるビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液である。無菌の不揮発油も、溶媒または懸濁媒として通常使用される。
【0075】
本発明の組成物は更に、従来の賦形剤、すなわち活性化合物と有害に反応しない、非経口適用に適した、薬学的に許容される有機または無機の担体物質を含有することができる。好適な薬学的に許容される担体は、例えば、水、塩溶液、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミラーゼ、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘稠パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、石油エーテル脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどを含む。本薬学的調製品は、滅菌することができ、かつ望ましくは、活性化合物と有害に反応しない助剤、例えば滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、着色剤、矯味矯臭剤および/または芳香物質などと混合することができる。非経口適用に関して、特に好適なビヒクルは、溶液、好ましくは油性または水性溶液に加え、懸濁液、乳液、またはインプラントからなる。水性懸濁液は、懸濁液の粘度を増大する物質を含んでよく、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含有する。任意に懸濁液は、安定剤も含有してよい。
【0076】
本発明の実践に有用な溶媒は、薬学的に許容される、水混和性の、非水性溶媒を含む。本発明の状況において、これらの溶媒は、薬学的用途に一般に許容される、実質的に水混和性および実質的に非水性の溶媒を含むようにしなければならない。好ましくはこれらの溶媒は、フタレート系可塑剤非浸出溶媒であり、その結果医療装置において使用される場合、これらは医療装置に存在し得るフタレート系可塑剤を実質的に浸出しない。より好ましくは、本発明の実践において、有用な薬学的に許容される水混和性の非水性溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP);プロピレングリコール;酢酸エチル;ジメチルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ベンジルアルコール;2-ピロリドン;安息香酸ベンジル;C2〜6アルカノール;2-エトキシエタノール;酢酸2-エトキシエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコールジエチルエーテル、もしくはエチレングリコールジメチルエーテルなどの、アルキルエステル;(S)-(-)-乳酸エチル;アセトン;グリセロール;メチルエチルケトンもしくはジメチルスルホンなどの、アルキルケトン;テトラヒドロフラン;カプロラクタムなどの、環状アルキルアミド;デシルメチルスルホキシド;オレイン酸;N,N-ジエチル-m-トルアミドなどの、芳香族アミン;または、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0077】
本発明の組成物は更に、可溶化剤を含有することができる。可溶化は、溶液の形成を可能にする現象である。これは、両親媒性、すなわち分散媒中に、通常は不溶性であるかまたはわずかに溶ける物質の溶解度を増大する能力を有する溶液中で、極性および非極性の両方である二重特性を有するような分子の存在に関連している。可溶化剤は、界面活性剤特性を有することが多い。それらの機能は、溶媒として作用するよりもむしろ、溶液中の溶質の溶解度を増強することであるが、例外的状況において、単独の化合物が、可溶化および溶媒の両方の特徴を有することがある。本発明の実践において有用な可溶化剤は、トリアセチン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG300、PEG400、またはそれらの3350との混合物など)、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80など)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、ポロキサマー407など)、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシル2セチルエーテル、ポリオキシル10セチルエーテル、およびポリオキシル20セチルエーテル、ポリオキシル4ラウリルエーテル、ポリオキシル23ラウリルエーテル、ポリオキシル2オレイルエーテル、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20オレイルエーテル、ポリオキシル2ステアリルエーテル、ポリオキシル10ステアリルエーテル、ポリオキシル20ステアリルエーテル、ポリオキシル100ステアリルエーテルなど)、ステアリン酸ポリオキシル(例えば、ステアリン酸ポリオキシル30、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシル50、ステアリン酸ポリオキシル100など)、ポリエトキシル化されたステアラート(例えば、ポリエトキシル化された12-ヒドロキシステアラートなど)、ならびにトリブチリンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0078】
本発明の組成物に添加することができる他の物質は、シクロデキストリン、およびシクロデキストリンのアナログおよび誘導体、ならびに本発明の組成物の安定性を増強するか、溶液中に生成物を維持するか、または本発明の組成物の投与に関連した副作用を防止することができる、他の可溶性賦形剤を含む。シクロデキストリンは、Janssen PharmaceuticalsからENCAPSIN(登録商標)として入手可能である。
【0079】
本組成物は、望ましくは、少量の湿潤剤、乳化剤および/またはpH緩衝剤を含有することもできる。本組成物は、液体の液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放製剤、または散剤であり得る。本組成物は、従来の結合剤およびトリグリセリドのような担体と共に、坐薬として製剤化することができる。経口製剤は、標準の担体、例えば医薬等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含有することができる。
【0080】
例えば、リポソーム、超微粒気泡、エマルション、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ナノ粒子などへの封入を含む、様々な送達システムが公知であり、かつ本発明の化合物または組成物を投与するために使用することができる。必要とされる用量を、単一の単位量または徐放型として投与することができる。
【0081】
本組成物のバイオアベイラビリティは、好適な賦形剤またはリン脂質もしくは界面活性剤のような物質の存在下で、粉砕、微粒子化、噴霧乾燥などの、従来の技術を使用する、製剤のマイクロ粒子化により増強することができる。
【0082】
好適な本発明の徐放性剤形は、その中に分散された治療薬を有するマイクロ粒子および/もしくはナノ粒子を含むか、または純粋な、好ましくは結晶質の固形形状で治療薬を含んでよい。徐放性投与に関して、純粋な、好ましくは結晶質の治療薬を含有するマイクロ粒子剤形が好ましい。本発明のこの局面の治療的剤形は、徐放に適した任意の構造(configuration)であってもよい。好ましい徐放性の治療用剤形は、以下の特徴の1つまたは複数を示す:マイクロ粒子(例えば、直径約0.5μm〜約100μm、好ましくは約0.5〜約2μm;もしくは、直径約0.01μm〜約200μm、好ましくは約0.5〜約50μm、より好ましくは約2〜約15μm)またはナノ粒子(例えば、直径約1.0nm〜約1000nm、好ましくは約50〜約250nm;もしくは、直径約0.01nm〜約1000nm、好ましくは約50〜約200nm)、自由流動粉末構造;約0.5〜約180日間、好ましくは約1〜3〜約150日間、より好ましくは約3〜約180日間、最も好ましくは約10〜約21日間の期間にわたり生分解するようにデザインされた、生分解可能な構造;または、約0.5〜約180日間、より好ましくは約30〜約120日間;もしくは、約3〜約180日間、より好ましくは約10〜約21日間の期間にわたる治療薬拡散の発生が可能である、非生分解構造;生体適合性の生分解性製品を得ることを含む、剤形が投与される標的組織および局所的生理的環境との、生体適合性;好ましくは以下の一方または両方の経路により生じる活性治療薬放出を伴う、治療薬-ポリマーマトリクスを形成するための、治療薬の安定でおよび再現可能な分散の促進:(1)剤形を通じた治療薬の拡散(治療薬が、剤形の寸法を規定する成形されたポリマーまたはポリマー混合物中に可溶性である場合);または、(2)剤形の生分解時の治療薬の放出;ならびに/または、標的化された剤形に関して、好ましくは剤形結合(dosage form bond)に対して約1〜約10,000結合タンパク質/ペプチドを有する能力、より好ましくは剤形結合に対して、150平方オングストロームの粒子表面積あたり最大約1個の結合ペプチドを有する能力。剤形結合に対する結合タンパク質/ペプチドの総数は、使用される粒径により左右される。結合タンパク質またはペプチドは、本明細書に説明した共有的リガンドサンドイッチまたは非共有的モダリティを介して、治療的剤形の粒子へカップリングすることが可能である。
【0083】
ナノ粒子の徐放性治療用剤形は、好ましくは生分解性であり、かつ任意に血管平滑筋細胞に結合し、それらの細胞へ、主にエンドサイトーシスにより侵入する。ナノ粒子の生分解は、プレリソソーム小胞(prelysosomic vesicles)およびリソソームにおいて、長期にわたり生じる(例えば30〜120日間;または、10〜21日間)。本発明の比較的大きいマイクロ粒子の好ましい治療用剤形は、その後の標的細胞取り込みのために、治療薬を放出し、わずかな比較的小さいマイクロ粒子はファゴサイトーシスにより細胞へ侵入する。当該技術分野の実践者は、標的細胞が本発明の剤形を同化しかつ代謝する正確な機序は、それらの細胞の形態学、生理学および代謝プロセスにより決まることを認めると考えられる。徐放性治療用剤形の粒子のサイズも、細胞同化の様式に関して重要である。例えばより小さいナノ粒子は、細胞間の間質液と共に流動し、注入された(infused)組織に浸透することができる。より大きいマイクロ粒子は、注入された主要組織中で間質的により容易に捕獲される傾向があり、その結果、抗増殖性治療薬の送達に有用である。
【0084】
好ましい本発明の徐放性剤形は、生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子を含有する。より好ましくは、生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子は、治療薬を放出するために、ランダムで、非酵素性、加水分解性の切断により生分解し、これにより粒子構造内に細孔を形成する、ポリマー含有マトリクスで形成される。
【0085】
本発明の化合物および組成物は、薬学的に許容されるエステルまたは塩として製剤化することができる。薬学的に許容される塩は、例えばアルカリ金属塩および遊離酸または遊離塩基の付加塩を含む。この塩の性質は、それが薬学的に許容されるならば、重要ではない。薬学的に許容される好適な酸付加塩は、無機酸または有機酸から調製されてよい。そのような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸(亜硝酸塩)、硝酸(硝酸塩)、炭酸、硫酸、リン酸などを含むが、これらに限定されるものではない。適当な有機酸は、有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、複素環式、カルボン酸およびスルホン酸の部類、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、サリチル酸、パラヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、ステアリン酸、アルゲン酸(algenic)、β-ヒドロキシ酪酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ガラクタル酸およびガラクツロン酸などを含むが、これらに限定されるものではない。薬学的に許容される好適な塩基付加塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛により生成された金属塩、または第1級、第2級および第3級アミン、環状アミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)およびプロカインなどにより生成された有機塩などを含むが、これらに限定されるものではない。例えば、適当な酸または塩基を、本化合物と反応させることにより、これらの塩は全て、対応する化合物から、通常の手段により調製することができる。
【0086】
個々の必要性は異なるにもかかわらず、本化合物および/または組成物の有効量の最適な範囲の決定は、当該技術分野の技術の範囲内である。一般に、本化合物および組成物の有効量を提供するために必要な用量は、当業者により調節することができ、これはレシピエントの年齢、健康状態、生理的状態、性別、食事、体重、機能障害の程度、治療頻度ならびに機能障害または疾患の性質および範囲、患者の医学的状態、投与経路、使用される特定の化合物の活性、有効性、薬物動態および毒性のプロファイル、薬物送達システムが使用されるかどうか、ならびに化合物が併用薬の一部として投与されるかどうか等の薬理学的考察に応じて変動する。
【0087】
本発明は、以下の投与量で投与することができる:体内(internal)1pg/kg〜10g/kg;即時放出または徐放のための調製品として製剤化され、局所的に0.00001%〜100%。本発明の用法は、1日あたり1〜8回投与の個別の投与、急性単回投与、および慢性多回投与、点滴(一定のIVまたは他の注入)として、またはボーラス投与を含む。本発明は、溶媒および他の作用物質または化合物と共に製剤化されてもよい。
【0088】
本発明は、本明細書に説明された1種または複数の治療薬を含む、本発明の薬学的化合物および/または組成物の1種または複数の成分が充填された、1個または複数の容器を含む薬学的キットも提供する。このようなキットは、例えば、他の化合物および/または組成物(例えば、治療薬、透過性増強剤、滑沢剤など)、化合物および/または組成物の投与のための装置、ならびに薬物または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府の機関により規定された形式の書面による使用説明書も含むことができる。この使用説明書は、ヒト投与に関する製造、使用または販売の機関による承認を反映させることができる。
【実施例】
【0089】
本発明のより完全な理解は、以下の本発明の実践の例証的実施例を参照することにより得ることができるが、これらの実施例は、本発明を限定することを意図するものではない。以下の例証的実施例においては、ワシントン大学(セントルイス)においてMS50-TA 質量分析計上で、ニトロベンジルアルコールのマトリクスならびに試料のイオン化のためにリチウムイオンおよびキセノンガスFABビームを用いて、高速原子衝撃質量スペクトル(FAB MS)を得た。この装置は、最大分解能50,000の3セクターのEBE型である。最大加速電圧(8kV)での質量範囲は、約800ダルトンである。低分解能FABスペクトルは、名目分解能1000で試行し、高分解能スペクトルは、分解能10,000で試行する。正確な質量測定は、参照質量としてアルカリ金属塩イオンを使用するピークマッチング法により実行する。
【0090】
全ての溶媒および市販の試薬は、実験用等級であり、受け取った状態で使用した。MPチオール連結したキレートエステルは、最大耐量(MTD)またはLD50、放射線防護、および緑内障治療のための捕捉化合物として生物学的に試験した。MPチオールは、放射線防護剤として試験した。MPチオールのEDTAまたはDTPAへの結合は、親化合物と同等の毒性のある誘導体を生じる。これらの化合物は、メトキシポリエチレングリコール(MP)、およびキレートEDTAまたはジエチレントリアミン五酢酸(DTP)から、いくつかの工程で調製した。
【0091】
実施例1. メトキシポリエチレングリコールチオールのEDTAとのメチルエステル(MPSEDE)
MPを、塩化チオニルとの反応により塩化物に転換し(Bueckmann et al., Biotech. Appl. Biochem., 9: 258-268, 1987)、その後チオ尿素との反応によりチオールに転換し(Urquhart et al Organic Syntheses Coll. Vol 3;Horning, E. C.; Ed.;Wiley, N. Y., 1955; pp 363-365)、引き続き塩基、酸で処理し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。ジメチルホルムアミド溶媒と共にカップリング剤としてカルボニルジイミダゾールを使用して、このチオールをチオエステルとしてEDTAへカップリングさせ(Gais, Angew. Chem. Int. Ed. 16:244-246, 1977)、引き続きメタノールおよびカルボニルジイミダゾールにより、他方のカルボキシル基をメチルエステル化した。これらの生成物について、酢酸エチルおよびヘプタンの勾配で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、けん化およびピリジルアゾナフトール指示薬を使う塩化銅滴定によるキレートの測定により特徴決定し(Blijenberg et al, Clin. Chim Acta 26:577-579, 1969)、エルマン試薬を使う分光光度法によりチオールを決定し(Riddles et al Meth. Enzymol. 1983, 91, 49-60)、FAB質量分析により分子構造を確認した。全ての分析は、示された構造と一致した。MPSEDEの代表的質量スペクトルを、図2に示す。本生成物は、エトキシ単位数4〜9であるMPチオールにカップリングしたキレートからなり、M+HおよびM+Liピークが示された。
【0092】
実施例2. メトキシポリエチレングリコールチオールのDTPAとのメチルエステル(MPSDTE)
MPを、実施例1に説明されたものと同じプロセスを用い、MPチオールへ転換した。ジメチルホルムアミド溶媒と共にカップリング剤としてカルボニルジイミダゾールを使用して、このチオールをチオエステルとしてDTPAへカップリングさせ(Gais, Angew. Chem. Int. Ed. 16:244-246, 1977)、引き続きメタノールおよびカルボニルジイミダゾールにより、他方のカルボキシル基をメチルエステル化した。これらの生成物について、酢酸エチルおよびヘプタンの勾配で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、けん化およびピリジルアゾナフトール指示薬を使う塩化銅滴定によるキレートの測定により特徴決定し(Blijenberg et al, Clin. Chim Acta 26:577-579, 1969)、エルマン試薬を使う分光光度法によりチオールを決定し(Riddles et al Meth. Enzymol. 1983, 91, 49-60)、FAB質量分析により分子構造を確認した。全ての分析は、示された構造と一致した。
【0093】
毒性試験
全ての生物学的試験に関して、これらの物質を水に溶解し、pH7に調整した。これらの物質のおおよその毒性レベルは、毒性が明らかになるまで、投与量を増加させながら個々のSwiss-Webster雌マウスへの腹腔内(IP)注射することにより、予備決定した。最大耐量(MTD)は、2mmole/kgであり、昏睡、痙攣または死亡のような明確な毒性症状は伴わなかった。
【0094】
放射線防護試験
MPチオール誘導体の、放射線致死率に対する作用を試験した。12匹以上の雌のSwiss-Websterマウスの群に、本誘導体の溶液を、最大耐量の約半分の投与量でIP投与した。10分後、ペントバルビタール(PB)0.262mmole/kgをIP投与し、最初の注射の20分後、頭頚部を、指定された様々な線量で、20分から50分の間照射した。この照射は、下記条件下で操作されるPhilips RT-250ユニットを用いて行った:200kVp、20mA、0.2mm Cu添加されたフィルトレーション、HVL 0.57mm Cu、線量率1.834Gy/分。マウスを、6または12匹の群で照射し、それらの頭部が95%等線量内であるように、それらの頭部を、20x24cmの開口円錐(aperture cone)内に、標的から皮膚までの距離が50cmであるように配置した。X線ユニットの出力は、Capintec PT-06C Farmerチャンバーを用いてキャリブレーションした。対照は、本薬物の代わりに、PBおよび0.4mlの通常の生理食塩水のみを受けさせた。
【0095】
マウスは、全身の状態および生存について試験し、各群について死亡率を記した。これらの条件下で、マウスは、曝露後10〜13日の間に、放射線により死亡した。図3は、MPチオールまたは生理食塩水の投与、それに続く様々な線量の頭頚部への照射後の、これらのマウスの生存率を図示している。MPチオールは、有効な放射線防護剤であることが認められ、アミホスチン(Ethyol)のような公知の放射線防護剤と同等の線量修飾係数を有する。
【0096】
手術により誘導された緑内障に対する作用
緑内障および網膜神経節細胞喪失に対する保護について、ラットにおいてMPSEDEを試験した。
【0097】
ラット高眼内圧モデル:
高眼内圧を、体重400〜500gの9匹の雄のSpragueDawleyラットにおいて誘導した。マレイン酸アセプロマジン(12mg/Kg)およびケタミン(80mg/Kg)のIP、および局所的プロパラカイン(0.5%)による全身麻酔下で、細かく刻み、結膜の切開を行った。再血管形成または新血管形成の刺激を低下するために、右目の切開は、渦静脈の極周囲領域に制限した。4本の渦静脈のうちの3本を露出し、9.0ナイロン製縫合糸を用いて結紮した。本試験への登録の判定基準は、凍結手術ベースラインIOPと比べた場合に、5mmHg以上の眼内圧(IOP)上昇であった。6週間以内に、全ての手術した眼のIOPは、ベースラインに比べ、少なくとも5mmHg上昇した。本試験は、動物の使用と福祉に関する米国の、国立衛生研究所のガイドラインおよび視覚と眼科学研究協会(Association for Research in Vision and Ophthalmology)の陳述に従った。
【0098】
眼内圧(IOP)測定:
処置開始前に、ベースラインIOPを、緑内障ラットモデルにおいて得た。IOPは、特に改良されたGoldmann圧平眼圧計(HAAG-STREIT, ベルン,スイス)において、鎮静下で測定した。測定値は、2回の連続した読み値の平均であり、同時刻および同じ測定者により行った。
【0099】
眼損傷の測定:
スリットランプ(HAAG-STREIT, ベルン, スイス)試験を行い、あらゆる可能性のある眼損傷および前房の変化を決定した。試験は、炎症、結膜浮腫/膨潤、結膜分泌(discharge)、房水フレア、フィブリン、光反射、虹彩、角膜混濁、血管新生および着色(staining)の徴候を記録するように改変し、半定量的スケールで記録した(Samudre, SS, Lattanzio, FA Jr., Williams, PB, and Sheppard, JD, Jr., Comparison of topical steroids for acute anterior uveitis, J. Ocul. Phamacol. Ther. (2004) 20:533-47)。試験前に、ラットを、マレイン酸アセプロマジン(6mg/Kg)、およびケタミン(40mg/Kg)、更には0.5%プロパラカインの局所投与により鎮静させた。試験過程を通じ、本試験は、マスキングされた知識のある観察者の同じ群により行った。
【0100】
共焦点顕微鏡によるインビボ分析:
本技術は、炎症細胞の存在、位置および数に、更にはフィブリン、高屈折体、ならびに上皮細胞、間質細胞および内皮細胞の形態の変化に関する、角膜および前区の繰り返しのインビボ可視化を可能にする。ラットは、アセプロマジン(12mg/Kg)およびケタミン(80mg/Kg)麻酔下、更には0.5%プロパラカインの局所投与して試験し、Advanced Scanning Limited共焦点顕微鏡(ASL 1000, Advanced Scanning Limited, ニューオーリンズ, LA)を用い、CCDカメラ(Kappa Optoelectronics Inc., モンロビア, CA)を用いて記録し、SVO-9500MD VCR(Sony Corporation, 東京, 日本)で記録した。データは、Metamorph(商標)画像システム(Universal Imaging, ダウニングタウン, PA)を用いて解析した。
【0101】
NMDA網膜損傷モデル:
網膜電図(ERG)のA波およびB波の変化は、RGC損傷の指標として用いられている。RGC神経保護を試験するために、正常ラットの一側性に、2週間以内にERGのA波およびB波を変更するのに十分な、10mM NMDAの2ul硝子体内注射をチャレンジし、硝子体内(2mM)または局所的に100mM MPDTE、MPSEDEおよびアミホスチンを同時投与した。局所投与に関して、NMDA投与の前に5日間およびNMDA投与後に3日間、20μl作用物質を、1日3回の頻度で、ラットを、本作用物質で予備処理した。暗順応のERG変化を、正常ラットにおいて測定した。ラットは、少なくとも4時間暗所に馴化させた。眼は、アトロピンで散瞳させ、その後プロパラカインおよびメチルセルロースゲルを局所適用した。特別注文のAgCl電極(64-1317, Warner Instruments, ハムデン, CT)を、角膜の先端に配置した。刺激は、Ganzfieldボウル光刺激装置(Grass Instruments, PS22, クインシー, MA)により発生した減衰しない白色光の10マイクロ秒フラッシュからなった。各眼のデータは、ドライバ増幅器(driver amplifier)(Grass Instruments, モデル7DAF Polygraph, クインシー, MA)により個別に記録した。データは、DASYLab(ベッドフォード, NH)によりデジタルで獲得した。対側の正常眼を、年齢が合致した陰性対照、例えば正常な損傷されない眼における反応として使用した。処置眼と対側眼の間、および処置群間の、A波およびB波の増幅の差を算出した。
【0102】
ラットの手術による緑内障モデルにおけるIOP測定に関するMP化合物の局所適用:
ラットを、MP化合物20μl(0.3〜100mM;n=3〜6)で、手術した眼に局所的に処置した。MP化合物を、フリーラジカル捕捉剤である局所用アミホスチン10または87mMと比較した。MPエステル化されたキレート剤は、ジエチレントリアミン五酢酸(MPDTE)およびMPSEDEであった。
【0103】
MPDTE眼毒性の慢性試験:
2群の正常ラットを、10mM MPDTE(n=3)または87mM MPDTE(n=3)の片眼の局所投与量20μlを、1日3回1ヶ月間で試験した。IOP、スリットランプおよび共焦点試験を薬物投与前に行い、スリットランプ試験を15日目に、およびIOP、スリットランプおよび共焦点試験を、30日後に試験した。
【0104】
薬物動態試験:
MP化合物の局所的吸収および全身分布を決定するために、14C標識したMPDTEを、30mM MPDTEの20μl点眼(drop)で正常ラットに投与した。14C標識は、MP骨格に結合し、偽の交換の機会を低下させた。1時点で2〜6匹の動物で15〜120分後、これらの動物を安楽死させ、血液、尿および組織試料を得た。眼球を摘出し、0.9%生理食塩水で5回洗浄し、吸収されなかった薬物を除去した。試料を可溶化し、液体シンチレーションカウンターで計測し、放射標識されたMPの存在を決定した。
【0105】
データ解析:
一元配置分散分析を用い、IOP、血圧および心拍数のデータを解析した。対比較のためには、対応のあるt-検定を用いた。ノンパラメトリックデータは、符号付き順位検定により解析した。P<0.05の差は、統計学的に有意であるとみなした。全ての値は、特に記さない限りは、平均±SEMで報告した。
【0106】
H9C2細胞におけるドキソルビシン化学毒性試験
H9C2細胞を、ラット横紋筋のモデルとして使用し、これを先に報告された技術を用いて培養した(Lattanzio, FA Jr., Tiangco, D., Osgood, C., Beebe, S., Kerry, J. and Hargrave BY)。コカインは、細胞内カルシウムおよび活性酸素種を増大させ、ミトコンドリアを脱分極し、かつ心不全およびリモデリングに関連した遺伝子を活性化する。Cardiovascular Toxiology(20050 5: 377-389)。蛍光カルシウム指示薬およびROS指示薬を使用し、細胞内カルシウムおよびROS活性の増加が報告されるかどうか、ならびにこれらの変化が2mM MPSEDEまたはMPDTEの存在下で低下するかどうかを決定した。細胞は、Lattanzioらの論文(2005)に説明されたように、Zeiss 510蛍光共焦点顕微鏡を用いて測定した。
【0107】
図4は、MP化合物の局所的眼内投与によるラットの眼球(globe)への浸透を明らかにしているが、未処置の対側の眼または脳へのクロスオーバーはごくわずかであった(脳のデータは示さず)。MPDTEの排泄は、主に尿を介してである。正常ラットの慢性的局所投与は、スリットランプまたは共焦点試験で検出されるように、1ヶ月後にいずれの眼においても、眼毒性を示さず、IOPの残存する変化もなかった。
【0108】
MPDTEおよびMPSEDEの最初の試験は、単回投与量10〜100mMは、IOPを有意に低下したことを明らかにしている(図5、図6、図7)。MPDTEおよびMPSEDEの用量反応曲線は、60分で、局所的MP投与のIOP反応のほとんどピーク近傍であることが、図8において示されている。MPDTEにより引き起こされたIOP低下は、単回投与で〜2時間維持され、図9において実験用カンナビノイド(1%WIN 55,212-2)またはアミホスチンと比較している。10mMまたは87mMアミホスチンでは、IOPの低下は認められなかった。
【0109】
IOP低下の機序は、MP骨格の作用とキレート剤基DTEの作用を個別にまたは一緒にして比較することにより、説明されている。図10に認められるように、MPまたはDTEのいずれかが単独または一緒に投与される場合に、IOP低下は存在するが、IOP低下は、MPDTEほど大きくはない。
【0110】
MPDTEのNMDAとの同時投与は、NMDA単独で認められる低下と比べ、各々、A波(図11)およびB波(図12)の増幅を有意に維持した。MPSEDEは、NMDA損傷を低下する傾向を示したが、これは、試験した投与量では有意ではなかった。MPSEDEまたはMPDTEのいずれかの硝子体内投与および局所投与は両方共、NMDA損傷を有意に低下させた(表1)。
【0111】
【表1】
【0112】
化学防護
ラット筋細胞モデルであるH9C2細胞を、Lattanzioらの論文(2005)に説明された技法を用い、MEMにおいて、集密となるまで培養した。これらの細胞を、蛍光カルシウム指示薬fluo-3 AM 5μMで37℃で30分間処理し、洗浄し、次に2mM MPDTEの30分間の前処置ありまたはなしで、50μMドキソルビシン(超極大毒性量)に曝露した。ドキソルビシンは、フリーラジカル損傷の発生およびそれに続く膜損傷により、カルシウムのホメオスタシスを混乱させることによって、心細胞において、細胞内カルシウムを増大させる。10分間曝露した後、細胞内カルシウムは、未処置の細胞において59.4%増加したが、MPDTE処置細胞においてはわずかに40.2%であった(p<0.001、3回の個別の試験においてn=20細胞)。防護は、フリーラジカル捕捉とカルシウムキレート化の組合せにより生じるであろう。
【0113】
前述の説明から、当業者は、本発明の本質的特徴を容易に確定し、それらの精神および範囲から逸脱しない限りは、様々な用途および条件に本発明を適合するために、本発明を様々に変更および修飾することができる。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、放射線、化学療法、または細胞損傷を生じる疾患もしくはプロセスに関連したイオン化物質またはラジカルの損傷作用に対する、細胞、組織、臓器、およびヒトを含む生物の保護に関する。それには、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカルもしくは酸化窒素のようなフリーラジカルオキシダントの生成、または重金属陽イオンが関与している。更に詳細に述べると、本発明は、新規メトキシポリエチレングリコールチオエステルキレートエステルに関し、かつ正常なまたは罹患したヒト、動物または植物における生体防護剤として、臓器移植ならびに細胞および組織の貯蔵もしくは保護において、ならびに化学毒性の低下において、単独で、または他の作用物質もしくは療法と共に補助剤として、新規メトキシポリエチレングリコールチオエステルキレートエステルを使用する方法に関する。これらのキレートエステルは、緑内障患者の眼内圧の低下における有用性も有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒトにおいて、電離性放射線への曝露は、天然の線源(例えば太陽、星からの紫外線または他の電磁放射線もしくは宇宙線、または地殻の地球放射線源)を通じて、または様々な人工の線源から生じる。人工の線源からの主な曝露は、診断用X線および放射性核種試験、歯科用X線、および治療的技法(例えば抗癌放射線療法)から、大気圏内原子爆弾試験、原子力発電所からの放射性降下物および職業被爆による比較的低い程度で生じる。電離性放射線は、主に細胞障害効果による、細胞および組織に対する有害作用を有する。ほとんどの形態の電離性放射線が生体分子および細胞を損傷する主要な方式は、毒性のある活性酸素種(OH・、・O2-、またはH2O2)を作り出すための、水との相互作用が関連した間接作用と称されるプロセスによる。直接作用と称される第二の機序は、DNAへの直接作用を伴う。
【0003】
化学防護により電離性放射線の有害作用を減少させることは、宇宙線および地球放射線に曝露される一般的集団、診断用および歯科用X線を投与される患者、照射に曝露された労働者、事故またはテロ行為により放射線に曝露されたグループ、「余分な」宇宙線に曝露される宇宙飛行士および飛行機乗務員、ならびに癌治療のために放射線を投与される患者を含む、多くの多様なグループにとって重要であると考えられる。全ての癌患者の約60%は、自分の療法の一部として放射線を受け、また正常組織への害により、腫瘍に投与され得る放射線線量は制限されることが多い。紫外線照射に関して、メラノーマ、翼状片および白内障の有病率の増加は、これらの問題点を軽減するための予防的方策(measure)の必要性を示唆している。
【0004】
人間を苦しめる多くの変性疾患の病因はフリーラジカル反応を含むという証拠が蓄積されつつある。このような変性疾患の例は、アテローム硬化症、癌、炎症性関節疾患、関節炎、自己免疫疾患、喘息、糖尿病、老人性認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋ジストロフィー、虚血、脳卒中、うっ血性心不全および変性眼疾患を含む。生物学的加齢の過程も、フリーラジカル要素を有する。細胞に対するほとんどのフリーラジカル損傷は、酸素フリーラジカル、またはより一般的には活性化酸素種を含み、これにはフリーラジカルに加え、一重項酸素および過酸化水素のような非ラジカル種が含まれる。
【0005】
眼は、強い活性化酸素種活性を伴う臓器の1つであり、そしてその不飽和脂肪酸を防護するために、高レベルの抗酸化物質を必要とする。緑内障は、網膜細胞の死につながり得る眼の変性疾患の一例である。緑内障は、網膜神経節細胞(RGC)の段階的喪失により最終的には失明につながり得る、病因不明の広く知られた眼疾患である。緑内障患者の大半は、眼内圧(IOP)上昇を有する。βアドレナリン作動性遮断薬、プロスタノイド、カンナビノイドおよび炭酸脱水酵素阻害薬を含むIOP低下が可能な薬物が、本疾患の影響を低下するために、臨床において使用されている。しかし緑内障患者は、著しい割合で、IOP上昇は示さないけれども、依然網膜細胞死に起因した眼機能の段階的低下を示す。最近、全ての緑内障患者に有効である戦略として、網膜細胞の生存を延長するために神経保護剤を使用する試みが注目されている。
【0006】
神経節細胞は、様々なニュートロフィン(eurotrophin)に依存するが、主に脳由来神経栄養因子(BDNF)に依存することが、今や明らかである。成人の神経節細胞は、その各標的ニューロンから分泌されたBDNFを吸収し、それを軸索に沿って網膜内の細胞本体へ輸送する。現在緑内障は、篩板部位での軸索原形質輸送を遮断することにより、このBDNFの逆行性の流れを遮断すると考えられている(Nickells RW., J. Glaucoma 1996; 5:345-356(非特許文献1))。神経節細胞がそのBDNF供給が欠如してどのくらいの期間生存することができるかは、正確には分かっていないが、培養系で行われた試験は、せいぜいわずか数日であることを示唆している。緑内障治療のために考慮された1つの明らかな神経保護戦略は、様々なBDNF供給源を神経節細胞へ提供することである。緑内障に関連した別の損傷を及ぼす刺激は、興奮毒の放出である。これらの分子は、実際には、ニューロンにより神経伝達物質として通常使用される興奮性アミノ酸、例えばグルタミン酸である。しかしこれらの通常は良性の分子は、局所的高濃度で、隣接細胞で高度に毒性の反応を活性化する(従って語句「興奮毒」の語源)。ニューロトロフィンのように、興奮毒は、細胞表面上の受容体と相互作用する。ニューロン上に認められたグルタミン酸受容体の亜型が3種類存在することは分かっているが、興奮毒作用において最大の役割を果たすように思われるものは、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体である。上昇したレベルのグルタミン酸は、ヒト緑内障患者および実験的に緑内障であるのサルの、両方の硝子体において検出されている(Dreyer EB, Zurakowski D, Schumer RA, Podos SM, Lipton SA., Arch. Ophthalmol. 1996; 114:299-305(非特許文献2))。
【0007】
鉄および銅のような遷移金属は、細胞毒フリーラジカルを発生させることが分かっているのに対し、鉄調節タンパク質、例えばトランスフェリン、セルロプラスミンおよびフェリチンなどは、これらの金属の毒性作用と対抗する抗酸化物質として作用することが示されている。鉄および銅の陽イオンは、虚血時および様々な疾患過程に関連して、組織から放出される。血液および酸素が枯渇した組織は、虚血性壊死または梗塞となり、不可逆的な臓器損傷となる可能性がある。例え血流および酸素が臓器または組織に回復(再灌流)されたとしても、この臓器は、直ぐには、正常な虚血前状態には回復しない。虚血後機能障害は、機能不全となった(stunned)臓器における酸素フリーラジカルの発生によることがある。再灌流時の好中球の再侵入は、白血球の亢進反応のために、フリーラジカル損傷を引き起こし得る。鉄および銅の陽イオンは、ヒドロキシフリーラジカル形成を触媒することが分かっている。キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、電離性放射線による脂質過酸化反応を低下させることが分かっている(Ayene-SI;Srivastava-PN Int. J. Radiat. Biol. Relat. Stud. Phys. Chem. Med. 1985 Aug; 48(2):197-205(非特許文献3))。抗酸化物質を提供しかつ虚血性にストレスを受けた組織と同等に低下することは、ミトコンドリアの回復を可能にし、このことは正常なカルシウムホメオスタシスおよび組織機能の回復に重要である。
【0008】
Ca++のような第一遷移系列元素でない金属陽イオンは、体内で重要な機能を発揮するが、虚血および再灌流時に生じる心臓のカルシウム過剰負荷のような、多くの病理発生過程にも関与することが、更に知られている。このような金属陽イオンは、Ca++に高親和性を有するキレート剤によるキレート化に関して、第一遷移系列元素の陽イオンと拮抗することができ、その結果キレート剤による第一遷移系列陽イオンのキレート化を干渉する。更にCa++のような陽イオンのキレート化は、体内でのこれらの陽イオンの正常な機能を損ない得る。従ってキレート剤の使用には、治療される疾患過程における様々な陽イオンの役割の知識、および更なるイオン不均衡を生じることなく障害を起こす(offending)陽イオンを除去するための特異的キレート剤親和性の選択の知識が加味されねばならない。
【0009】
癌性組織への電離性放射線の有効治療線量を依然送達しつつ、正常組織の損傷を軽減する多くの試みが成されている。これらの技術は、近接照射療法、分割および多分割照射、複雑な線量スケジュール(complicated dose scheduling)および送達システム、ならびに線形加速器による高電圧療法を含む。しかしこのような技術は、最も良くて、癌細胞を殺傷する有益な作用と正常組織への放射線の望ましくない作用の間の均衡を取ることができるのみである。腫瘍に対する損傷の測定を正常組織の損傷で除算した割合である治療可能比において、多くの改善の余地がある。
【0010】
鉄および銅の陽イオンと錯体を形成するためにデフェロキサミンのような鉄をキレート化する親鉄剤を投与することによる、これらの陽イオンの触媒有効性を軽減する試みは、インビボにおけるヒドロキシフリーラジカルからの組織損傷を阻害する点で明白には成功していない。デフェロキサミンのような親鉄剤は、銅陽イオンのキレート剤としては不十分である。銅は、鉄よりもはるかに低い濃度で体内に存在するにもかかわらず、ヒドロキシルラジカル形成を触媒する点で鉄よりもより活性がある。
【0011】
ポリエチレングリコール(PEG)およびポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MP)も、組織損傷を低下することが分かっているが、その機序は不明瞭である。PEGは、両親媒性ポリマーH(OCH2CH2)nOHであり、これは類似した分子量範囲を持つホモログの混合物からなる。従って例えば、MP350は、平均分子量350を有し、nが4〜9、中央値がn=7のホモログの混合物からなる。比較的低い分子量のポリマーPEG200-600は、経口的に摂取された場合に、胃腸管を通じて吸収され、尿中に未変化のまま排泄される。PEGは、腸粘膜の細胞膜を通じて水と共に直接吸収される。
【0012】
PEG200-600は無毒かつ生物学的に不活性であり、これは水に不溶性の薬物の投与のためのビヒクルとして使用されることが多い。いくつかの研究において、PEGビヒクルは単独で、著しい生物学的活性を示すことが実験において認められ、このことは低分子量PEGの更なる研究につながった。例えばPEG400は、マウスのx-照射の前または直後のいずれかに腹腔内(IP)投与される場合、致死率および罹患率に有意な保護をもたらした(Shaeffer and Schellenberg, Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 10:2329, 1984(非特許文献4);Shaeffer, et al., Radiat. Res., 107:125, 1986(非特許文献5))。PEG300のIPは、実験的な震盪性脳損傷のCNS続発症を低下することが示された(Clifton, et al., J. Neurotrauma, 6:71, 1989(非特許文献6))。
【0013】
従って分子量約400のPEGは、組織に対する損傷に対し保護的作用を示す、独特な無毒の物質である。しかし700よりも大きい分子量のPEGは、胃腸管を通じて十分には吸収されない。比較的低い分子量のPEGの保護的作用の機構は確立されていないが、恐らくPEGの脂質膜の表面またはタンパク質構成要素との相互作用に関連している。PEGは、細胞膜近傍に凝集し、膜表面で水の極性を低下させ、疎水性相互作用を増加させる(Hoekstra, et al., J. Biol. Chem., 264:6786, 1989(非特許文献7))。
【0014】
ある種のMPキレートは、有効な鉄キレート剤であり得ることは公知である。例えば、MPが、イミノジアセタート(iminodiacetate)末端(MIDA)と連結することができることは公知である。MPで修飾された他のキレートは、分子量550のMPのカルボニルジイミダゾールとの反応、それに続いて、得られたイミダゾールカルボニルエステルのデフェロキサミン塩基との反応による、ウレタン連結の形成により調製される、MP550-デフェロキサミン(フェリオキサミン)を含む。この物質は、腎臓の磁気共鳴造影剤として使用されるガドリニウムのキレートとして作製される(Duewell, et al., Invest. Radiol., 26:50, 1991(非特許文献8))。デフェロキサミンは、第二鉄の有効なキレート剤であることが分かっている。
【0015】
MIDAは、塩化チオニルとの反応により、MP350を塩化物に転換し(Bueckmann et al., Biotechnology & Applied Biochem., 9:258-268, 1987(非特許文献9))、この塩化物のイミノジアセタートナトリウムとの反応により、イミノジアセタートに転換する(Wuenschell et al., J. Chromatog. 543: 345-354, 1991(非特許文献10))ことにより、調製することができる。このメチルエステルは、メタノール性HClにより調製することができる。しかし、より有効なキレート剤でありかつ無毒である代替のMPキレートが、求められている。
【0016】
米国特許第6,020,373号(特許文献1)は、キレートメチルエステルに連結されたポリエチレングリコールが、動物モデルにおいて、放射線障害およびドキソルビシン毒性に対し非常に有効な防護剤であることを開示している。周知の放射線防護剤S-2-[3-アミノプロピルアミノ]エチルホスホロチオアート(WR-2721, Ethyol)であるアミホスチンは、潜在的(potential)チオールを有し、放射線療法および化学療法における正常組織の保護のために、広く臨床において使用されている(Wasserman, T. H., Seminars in Oncology 21(5 Supp. 11): 21-25, 1994(非特許文献11))が、その有効性には限界がある。システインおよびシステアミンのようなスルフヒドリル化合物は、動物において放射線防護を提供することが公知である。チオール基は、水素原子を損傷された分子へ供与することにより、放射線が生じたフリーラジカルを捕捉する。より有効な防護剤を開発しようとする広範な努力にもかかわらず、システアミンより著しく優れているチオールベースの放射線防護剤は見つかっていない。更に放射線障害に対し防護するためのチオール薬物の使用は、そのような化合物の毒性のために制限されている。更に細胞への透過を促進するための極性薬物のエステルの使用が、報告されている(Vos et al, Int. J. Radiat Biol. Relat. Stud. 53:273-81, 1988(非特許文献12))。
【0017】
従って、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカルもしくは酸化窒素のようなフリーラジカルオキシダントの生成、または重金属陽イオンが関与している、放射線もしくは化学療法または疾患もしくは他の状態に関連したイオン化物質の損傷作用に対し、細胞、組織および臓器を保護することが可能である改善された組成物および方法の必要性が明らかに存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第6,020,373号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Nickells RW., J. Glaucoma 1996; 5:345-356
【非特許文献2】Dreyer EB, Zurakowski D, Schumer RA, Podos SM, Lipton SA., Arch. Ophthalmol. 1996; 114:299-305
【非特許文献3】Ayene-SI;Srivastava-PN Int. J. Radiat. Biol. Relat. Stud. Phys. Chem. Med. 1985 Aug; 48(2):197-205
【非特許文献4】Shaeffer and Schellenberg, Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 10:2329, 1984
【非特許文献5】Shaeffer, et al., Radiat. Res., 107:125, 1986
【非特許文献6】Clifton, et al., J. Neurotrauma, 6:71, 1989
【非特許文献7】Hoekstra, et al., J. Biol. Chem., 264:6786, 1989
【非特許文献8】Duewell, et al., Invest. Radiol., 26:50, 1991
【非特許文献9】Bueckmann et al., Biotechnology & Applied Biochem., 9:258-268, 1987
【非特許文献10】Wuenschell et al., J. Chromatog. 543: 345-354, 1991
【非特許文献11】Wasserman, T. H., Seminars in Oncology 21(5 Supp. 11): 21-25, 1994
【非特許文献12】Vos et al, Int. J. Radiat Biol. Relat. Stud. 53:273-81, 1988
【発明の概要】
【0020】
発明の概要
本発明は、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカルもしくは酸化窒素のようなフリーラジカルもしくはオキシダントの生成、または重金属陽イオンを誘起することを特徴とする、放射線もしくは化学療法、もしくは様々な臓器の変性疾患に関連したイオン化物質または他の損傷作用物質の損傷作用に対し、細胞、組織および臓器を保護することが可能な組成物および方法を提供する。より詳細に述べると、本発明は、メトキシポリエチレングリコールチオエステルキレートメチルエステルに関する。これは、細胞膜を透過して、フリーラジカルオキシダントから電子を除去し、かつ過酸化物と反応し反応性ヒドロキシルラジカルを生じる重金属を除去するか、または細胞小器官から放出されるCa++を除去することにより、組織損傷に対し防護剤として有用である。本発明は、緑内障の様々な形において認められる上昇した眼内圧の低下においても有用であると考えられる。
【0021】
従って本発明は、式(I)のメトキシポリエチレングリコールチオエステル化合物に関する:
式中、1つのR1は、式(II)であり
;
残りのR1は各々、式(II)、または-CH2COOH、-CH2COO-Na+、-CH2COO-Ca++/2、-CH2COOCH3、-CH2COOC2H5、および-CH2COOC3H7からなる群より選択され;aは、0〜6であり;各bは独立して、0〜18であり;各cは独立して、3〜10であり;かつ、dは独立して、1〜3である。
【0022】
本発明の1つの態様は、aが0であり、各bが0であり、各cが独立して3〜10であり、dが1であり、かつ3つのR1が-CH2COOCH3である、式(I)の化合物である。1つの例において、本発明は、aが0であり、各bが0であり、各cが独立して7または8であり、dが1であり、かつ3つのR1が-CH2COOCH3である、式(I)の化合物である。
【0023】
別の態様において、本発明は、aが1であり、各bが0であり、各cが独立して3〜10であり、dが1であり、かつ4つのR1が-CH2COOCH3である、式(I)の化合物である。1つの例において、本発明は、aが1であり、各bが0であり、各cが独立して7または8であり、dが1であり、かつ4つのR1が-CH2COOCH3である、式(I)の化合物である。
【0024】
より具体的には、本発明は、下記式を有する化合物に関する:
式中、nは3〜10である。
【0025】
別の態様において、本発明は、下記式を有する化合物に関する:
式中、nは3〜10である。
【0026】
本発明の1つの態様において、式(I)の化合物は、電子を引き抜くことが可能である。本発明の1つの態様において、式(I)の化合物は、重金属またはCa++とキレートを形成することが可能である。
【0027】
本発明は、式(I)の化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体または薬学的に許容される補助剤とを含有する、薬学的組成物にも関する。1つの態様において、本発明は、式(I)の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、任意に少なくとも1種の治療薬とを含有する薬学的組成物に関する。
【0028】
本発明は更に、式(I)の化合物の治療的有効量を患者に投与することを含む、必要とする患者において、放射線に対する曝露に起因する組織損傷を予防する方法に関する。
【0029】
1つの態様において、本発明は、式(I)の化合物の治療的有効量を患者に投与することを含む、必要とする患者において、フリーラジカルオキシダントに起因する変性疾患を予防する方法に関し、ここでフリーラジカルオキシダントは、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、および酸化窒素を含む。
【0030】
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物および少なくとも1種の薬学的に許容される担体または薬学的に許容される補助剤を含有する組成物の治療的有効量を患者へ投与することを含む、必要とする患者において、緑内障に起因する網膜細胞死を治療する方法に関する。
【0031】
更に別の態様において、本発明は、式(I)の化合物の有効量を投与することを含む、必要とする細胞内で、フリーラジカルオキシダントから電子を引き抜く方法に関し、ここでフリーラジカルオキシダントは、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、および酸化窒素を含む。
【0032】
1つの例において、本発明は、式(I)の化合物の有効量を投与することを含む、必要とする細胞内で、重金属によるフリーラジカルオキシダント形成の触媒を防止する方法に関し、ここでフリーラジカルオキシダントは、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、および酸化窒素を含み、ここで化合物は、重金属によりキレートを形成することが可能である。
【0033】
本発明は、少なくとも1種の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、およびそれらの使用説明書を備えるキットにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、薬物がMPチオールへ加水分解され、これはフリーラジカルオキシダントから電子を除去し、その間にキレートは、細胞損傷により生じた重金属を除去する例証的プロセスを図示する。
【図2】図2は、EDTAメチルトリエステルにカップリングされたメトキシポリエチレングリコールチオール(MPSEDE)の代表的質量スペクトルを図示する。
【図3】図3は、放射線防護剤としてのMPチオール化合物の有効性を図示する。
【図4】図4は、局所的眼内投与時のラットにおけるMPDTEの眼球への透過を表している。
【図5】図5は、MPDTEの局所的眼内投与の用量反応を図示している。
【図6】図6は、MPSEDEの局所的眼内投与の用量反応を図示している。
【図7】図7は、30mM MP化合物の局所的眼内投与の平均用量反応を図示している。
【図8】図8は、濃度を増加させたことによるMPSEDEおよびMPDTEの眼内圧に対する作用を図示している。
【図9】図9は、公知の放射線防護剤と一緒のMPDTEにより引き起こされたIOP低下の比較を図示している。
【図10】図10は、MPDTE、MPおよびDTEにより引き起こされたIOP低下の比較を図示している。
【図11】図11は、MP化合物のNMDAとの同時投与後の網膜電図測定の代表的A波成分を図示している。
【図12】図12は、MPG化合物のNMDAとの同時投与後の網膜電図測定の代表的B波成分を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は、フリーラジカル、スーパーオキシドアニオンの生成、または重金属陽イオンを誘起する、放射線もしくは化学療法、または様々な臓器の変性疾患に関連したイオン化物質の損傷作用に対し、細胞、組織、臓器、および生物を保護するために使用する新規化合物を提供する。1つの局面において、本発明は、細胞へのフリーラジカル損傷に対する二重の防護機序を可能にするための、細胞への輸送を促進する両親媒性ポリエチレングリコール尾部と共に、潜在的チオールの潜在的キレートとの組合せに関する。
【0036】
1つの局面において、本発明は、チオエステル連結によるポリマーの非メチル末端上のキレート基の化学結合により修飾された、平均分子量(average weight)200〜600、より好ましくは300〜450、最も好ましくは350(MP350)を有する、新規の両親媒性の細胞透過性メトキシポリエチレングリコール(MP)に関する。
【0037】
本発明のメトキシポリエチレングリコールの修飾に使用することができるキレート基の例は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、および例えばブロモ酢酸または誘導体のエチレンアミン連結を含むトリエチレンテトラミン、ならびに他のより高次のホモログへの反応により形成された類似したキレート基、またはシクロヘキサンジアミン四酢酸およびエチレングリコールアミノエチルエーテル四酢酸(EGTA)のような他のキレート基を含む。
【0038】
本発明の化合物は一般に、下記式を有する:
式中、1つのR1は、式(II)であり
;
残りのR1は各々、式(II)、または-CH2COOH、-CH2COO-Na+または他の一価のイオン、-CH2COO-Ca++/2または他の二価もしくは多価のイオン、-CH2COOCH3、-CH2COOC2H5、および-CH2COOC3H7からなる群より選択され;
aは、0〜6であり;各bは独立して、0〜18であり;各cは独立して、3〜10であり;かつ、dは独立して、1〜3である。
【0039】
本発明の1つの態様は、aが0であり、各bが0であり、各cが独立して3〜10、好ましくは7であり、dが1であり、かつ1つのR1が式(II)であり、3つのR1が-CH2COOCH3である、式(I)の化合物である。
【0040】
本発明の別の態様は、aが1であり、各bが0であり、各cが独立して3〜10、好ましくは7であり、dが1であり、R1の1つが式(II)であり、残りのR1が-CH2COOCH3である、式(I)の化合物である。
【0041】
1つの例において、本発明の化合物は、下記式を有する、エチレンジアミン四酢酸メチルトリエステルのメトキシポリエチレングリコールチオエステル(MPSEDE)である:
式中、nは3〜10であり、好ましくは7である。
【0042】
別の例において、本発明の化合物は、下記式を有する、ジエチレントリアミン五酢酸メチルテトラエステルのメトキシポリエチレングリコールチオエステルである:
式中、nは3〜10であり、好ましくは7である。
【0043】
本発明は更に、先に規定されたような式(I)の化合物の調製法を提供し、これは、塩化チオニルとの反応によりMPを塩化物にまず転換する工程(Bueckmann et al., Biotechnology & Applied Biochem., 9:258-268, 1987)、およびその後この塩化物のチオ尿素との反応によりチオール(MPチオール)に転換する工程(Urquhart et al Organic Syntheses Coll. Vol3;Horning, E. C.; Ed.;Wiley, N. Y., 1955;pp 363-365)を含む。MPチオールは、ジメチルホルムアミド溶媒と共にカップリング剤としてカルボニルジイミダゾールを使用して、チオエステルとしてキレート剤へカップリングされ(Gais, Angew. Chem. Int. Ed. 16:244-246, 1977)、引き続き他方のカルボキシル基がメタノールおよびカルボニルジイミダゾールによりメチルエステル化される。エチレンジアミン四酢酸のメトキシポリエチレングリコールチオエステル(MPSEDE)およびジエチレントリアミン五酢酸のメトキシポリエチレングリコールチオエステル(MPSDTE)は、MPチオールの各々EDTAおよびDTPAとのカップリングにより同様に調製することができる。
【0044】
前述の式(I)の化合物は、それらの薬学的に許容される塩または溶媒和物へ、好ましくは塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩またはパラトルエンスルホン酸塩のような酸付加塩に転換されてよい。
【0045】
式(I)の化合物は、立体異性体型で存在してよい。本発明は、式(I)の化合物の幾何異性体および光学異性体の全て、ならびにラセミ体を含むそれらの混合物の使用を包含することは理解されると考えられる。互変異性体およびそれらの混合物の使用も、本発明の企図された局面を形作る。
【0046】
式(I)の化合物は、他のキレート剤または還元基、例えばキレート剤としてBAPTA、TPEN(テトラキス-(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン)、カルセイン、ならびに還元基としてNADHおよびNAD(P)Hを含んでよい。
【0047】
本発明の化合物の特に重要な特徴は、細胞膜を透過するそれらの能力である。1つの態様において、本発明は、平均分子量200〜600、より好ましくは300〜450、最も好ましくは350(MP350)を有する、新規の両親媒性の細胞透過性メトキシポリエチレングリコール(MP)に関し、これは、セレニウム、スルホキシド、エネジオール基(例えばアスコルビン酸およびジヒドロキシマレイン酸)を含むレダクトン、ヒドロキニーネ、ジヒドロピリジン、トコフェロール環系を含む四置換されたヒドロキノンエーテル、ジヒドロリポ酸を含むジチオール、インドール、およびラジカル還元剤を生じるカロテノイドを含む縮合ポリエンのような官能基を含む、連結によるポリマーの非メチル末端上のキレート基の化学結合により修飾される。他のキレートは、デフェロキサミンを含むカルボキシルの代わりにカルバメート基、ならびにオルトフェナントロリン、1,1-ジピリジル、および8-ヒドロキシキノリンを含む複素環式アミンとのキレートを含んでよい。一例において、本発明の化合物は、MPチオールのカルボニルジイミダゾールを伴うキレートへのカップリングに関連した工程時に、EDTAのシクロヘキサンジアミン四酢酸もしくはEGTAとの置き換えにより合成される、シクロヘキサンジアミン四酢酸およびエチレングリコールアミノエチルエーテル四酢酸(EGTA)のMPチオエステルを含む。
【0048】
作用のいずれか特定の理論に結びつけられることを意図するものではないが、この細胞膜を透過する能力は、恐らく非極性代謝産物のために使用される膜チャネルを介した、両親媒性MPおよび非極性エステル基により付与される非極性の結果、それに続く細胞内エステラーゼによるチオールおよび活性キレートへの迅速な活性化の結果であると考えられる。チオールは、ジスルフィドの形成による、過酸化物、超酸化物、ヒドロキシルラジカル、または酸化窒素のようなフリーラジカルオキシダントからの電子の除去に有効であると考えられる一方で、キレートは、細胞損傷により生成され、過酸化物と反応して反応性ヒドロキシルラジカルを形成する、Fe++、Fe+++もしくはCu++のような重金属を除去するか、または細胞小器官から放出され得るCa++を除去すると考えられる。従って本発明の化合物は、2つの異なる機序により細胞を保護する能力を有する。この過程を、図1に図示している。
【0049】
更なる局面において、本発明は、療法において使用するための薬物の製造における、式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用を提供する。本薬物は、MPエステルまたは塩単独よりもより広範な予防または治療的作用の範囲を可能にする、異なるまたは類似した作用機序を伴う、他の構成要素または薬学的に許容される補助剤を含んでよいことが理解される。「補助剤」という用語は、主要な成分の作用を修飾する成分、または医学的な治療の有効性を増大する成分もしくは抗原に対する免疫応答を増強する成分として解釈されることが意図される。
【0050】
本明細書の文脈において、「療法」という用語は、特に予防を含まないことを具体的に指摘しない限りは、「予防」も含む。「治療的」および「治療的に」という用語は、これに従い解釈されることが意図される。
【0051】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、必要とする患者へ投与することを含む、消耗性神経変性疾患に罹患したかまたはリスクのある患者において、アルツハイマー病を治療する安全かつ有効な方法を提供する。
【0052】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、パーキンソン病に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法も提供する。
【0053】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、多発性硬化症(MS)に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法も提供する。
【0054】
また本発明は更に、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、筋ジストロフィー(MD)に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法も提供する。
【0055】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、それらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、またはそれらの薬学的に許容される補助剤を患者へ投与することにより、必要とする患者において、放射線の損傷を治療しかつ放射線に関連した癌を予防する安全かつ有効な方法を提供する。放射線源は、可視光もしくは紫外線を含む電磁波、またはα、β、γを含む核種、または宇宙線であってもよい。損傷の種類は、日焼け、しみ、およびメラノーマのような皮膚科学的な損傷の様々な形に加え、内部細胞の喪失、嚢胞形成、神経障害、ならびに様々な型の良性および悪性腫瘍を含むが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、それらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、またはそれらの薬学的に許容される補助剤ならびにフリーラジカルおよび/または重金属毒性成分を有する1種または複数の化学物質を患者へ投与することにより、必要とする患者における化学療法から、またはフリーラジカルおよび/もしくは重金属毒性成分を有する化学薬剤の不用意なもしくは意図された投与からの、正常組織に対する毒性を治療する安全かつ有効な方法を提供する。式(I)の化合物は、フリーラジカルおよび/または重金属毒性成分を有する化学物質の投与の前、同時または後に投与されてよい。本発明は、フルオロピリミジン、ピリミジンヌクレオシド、プリン、白金アナログ、アントロアサイクリン(antroacycline)、ポドフィロトキシン、カンプトテシン、ホルモンおよびホルモンアナログ、酵素、タンパク質および抗体、ビンカアルカロイド、タキサンなどを含む、フリーラジカルおよび/または重金属毒性成分を有する化学物質の毒性の低下に有用である。毒性を低下させる本方法は、任意の化学療法薬に適用可能であるが、その一部の例は、イリノテカン、FU、タキソール、シスプラチン、アドリアマイシン、オキサリプラチン、シクロファスファミド、EGFおよびVGF阻害剤、アセマンナン、アセトアミノフェン、アクラルビシン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アルトレタミン、アミホスチン、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、ANCER、アンセスチム、ARGLABIN、三酸化ヒ素、BAM 002(Novelos)、ベキサロテン、ビカルタミド、ブロクスウリジン、カペシタビン、セルモロイキン、セトロレリックス、クラドリビン、クロトリマゾール、シタラビンオクフォスフェート、DA 3030(Dong-A)、ダクリズマブ、デニロイキンディフチトクス、デスロレリン、デキスラゾキサン、ジラゼプ、ドセタキセル、ドコサノール、ドキセルカルシフェロール、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ブロモクリプチン、カルムスチン、シタラビン、フルオロウラシル、HITジクロフェナク、インターフェロンα、ダウノルビシン、トレチノイン、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロルニチン、エミテフル、エピルビシン、エポエチンβ、リン酸エトポシド、エクセメスタン、エクシスリンド、ファドロゾール、フィルグラスチム、フィナステリド、リン酸フルダラビン、ホルメスタン、ホテムスチン、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、ゾガマイシン、ギメラシル/オテラシル/テガフル併用、グリコピン(glycopine)、ゴセレリン、ヘプタプラチン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎児αフェトタンパク質、イバンドロン酸、イダルビシン、(イミキモド、インターフェロンα、インターフェロンα天然、インターフェロンα-2、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα-N1、インターフェロンα-n3、インターフェロンαcon-1、インターフェロンα天然、インターフェロンβ、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b、インターフェロンγ、天然インターフェロンγ-1a、インターフェロンγ-1b、インターロイキン-1β、イオベングアン、イリノテカン、イルソグラジン、ランレオチド、LC 9018(Yakult)、レフルノミド、レノグラスチム、硫酸レンチナン(lentinan sulfate)、レトロゾール、白血球αインターフェロン、ロイプロレリン、レバミソール+フルオロウラシル、リアロゾール、ロバプラチン、ロニダミン、ロバスタチン、マソプロコール、メラルソプロール、メトクロプラミド、ミフェプリストン、ミルテフォシン、ミリモスチム、ミスマッチの二重鎖RNA、ミトグアゾン、ミトラクトール、ミトキサントロン、モルグラモスチム、ナファレリン、ナロキソン+ペンタゾシン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ニルタミド、ノスカピン、新規赤血球生成刺激タンパク質、NSC 631570、オクトレオチド、オプレルベキン、オサテロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸、ペガスパルガーゼ、ペグインターフェロンα-2b、ペントサンポリサルフェートナトリウム、ペントスタチン、ピシバニール、ピラルビシン、ウサギ抗胸腺細胞ポリクローナル抗体、ポリエチレングリコールインターフェロンα-2a、ポルフィマーナトリウム、ラロキシフェン、ラルチトレキセド、ラスブリカーゼ、エチドロン酸レニウムRe186、RIIレチナミド、リツキシマブ、ロムルチド、サマリウム(153Sm)レキシドロナム、サルグラモスチム、シゾフィラン、ソブゾキサン、ソネルミン、ストロンチウム-89クロリド、スラミン、タソネルミン、タザロテン、テガフル、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テトラクロロデカオキシド、サリドマイド、チマルファシン、甲状腺刺激ホルモンα、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ-ヨウ素131、トラスツズマブ、トレオスルファン、トレチノイン、トリロスタン、トリメトレキサート、トリプトレリン、腫瘍壊死因子α、天然、ウベニメクス、膀胱癌ワクチン、丸山ワクチン、メラノーマ溶解産物ワクチン、バルルビシン、ベルテポルフィン、ビノレルビン、VIRULIZIN、ジノスタチンスチマラマー、またはゾレドロン酸;アバレリクス;AE 941(Aeterna)、アンバムスチン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、bcl-2(Genta)、APC 8015(Dendreon)、セツキシマブ、デシタビン、デクスアミノグルテチミド、ジアジクォン(diaziquone)、EL 532(Elan)、EM 800(Endorecherche)、エニルウラシル、エタニダゾール、フェンレチニド、フィルグラスチムSD01(Amgen);フルベストラント、ガロシタビン、ガストリン17免疫原、HLA-B7遺伝子治療(Vical)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ヒスタミンジヒドロクロリド、イブリツモマブチウキセタン、イロマスタット、IM 862(Cytran)、インターロイキン-2、イプロキシフェン(iproxifene)、LDI 200(Milkhaus)、レリジスチム、リンツズマブ、CA 125 MAb(Biomira)、癌MAb(Japan Pharmaceutical Development)、HER-2およびFc MAb(Medarex)、イディオタイプ105AD7 MAb(CRC Technology)、イディオタイプCEA MAb(Trilex)、LYM-1-ヨウ素131 MAb(Techniclone)、多型性上皮ムチン-イットリウム90MAb(Antisoma)、マリマスタット、メノガリル、ミツモマブ、モテクサフィンガドリニウム、MX 6(Galderma)、ネララビン、ノラトレキセド、P30タンパク質、ペグビソマント、ペメトレキセド、ポルフィロマイシン、プリノマスタット、RL 0903(Shire)、ルビテカン、サトラプラチン、フェニル酢酸ナトリウム、スパルホス酸(sparfosic acid)、SRL 172(SR Pharma)、SU 5416(SUGEN)、SU 6668(SUGEN)、TA 077(Tanabe)、テトラチオモリブデン酸、タリブラスチン、トロンボポエチン、スズエチルエチオプルプリン、チラパザミン、癌ワクチン(Biomira)、メラノーマワクチン(New York University)、メラノーマワクチン(Sloan Kettering Institute)、メラノーマ腫瘍崩壊産物ワクチン(New York Medical College)、ウイルス性メラノーマ細胞溶解産物ワクチン(Royal Newcastle Hospital)、またはバルスポダールである。
【0057】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、虚血に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法も提供する。
【0058】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、脳卒中に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法も提供する。
【0059】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、うっ血性心不全に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法も提供する。
【0060】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、必要とする患者へ投与することを含む、眼疾患に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法を更に提供する。他の疾患は、緑内障、黄斑変性、白内障、メラノーマ、翼状片などを含むが、これらに限定されない、医科学において現在公知のものを含むことができる。
【0061】
また本発明は更に、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、神経変性疾患、リウマチ疾患、関節炎または自己免疫疾患に罹患したかまたはリスクのある患者において、該疾患を治療する安全かつ有効な方法も提供する。他の疾患は、様々な型の関節炎、クローン病、線維筋性形成異常などを含むが、これらに限定されない、医科学において現在公知のものを含むことができる。
【0062】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することを含む、それが必要な患者における、細胞、組織または臓器の保存のための安全かつ有効な方法も提供する。
【0063】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、患者へ投与することによる、それが必要な患者における、鉄または他の重金属または遷移元素の毒性の治療または予防のための安全かつ有効な方法も提供する。
【0064】
本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を培地内に含むことによる、単離された臓器、組織、血液細胞、精子、植物細胞を含む細胞、抽出物、膜、リポソーム、タンパク質、炭水化物、脂質、DNAまたは他の天然もしくは合成の生物学的物質の保護のための、安全かつ有効な方法を提供する。
【0065】
式(I)の化合物、ならびにそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物は、それ自体で使用されてよいが、一般には式(I)の化合物/塩/溶媒和物(活性成分)が薬学的に許容される補助剤、希釈剤もしくは担体と会合されている薬学的組成物の形態で投与される。投与様式に応じて、本薬学的組成物は、活性成分を0.05〜99重量%、より好ましくは0.05〜80重量%、更により好ましくは0.10〜70重量%、なおより好ましくは0.10〜50重量%含有することが好ましく、全ての重量%は、全組成物を基にしている。
【0066】
本発明は、本明細書に規定されたような、式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、エステル、もしくは溶媒和物を、薬学的に許容される補助剤、希釈剤または担体と会合して含有する、薬学的組成物も提供する。
【0067】
本発明は更に、本明細書に規定されたような、式(I)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、エステル、もしくは溶媒和物を、薬学的に許容される補助剤、希釈剤または担体と混合することを含む、本発明の薬学的組成物の調製法を提供する。担体は、その製剤の他の成分と共存でき、かつそのレシピエントにとって有害でないという意味で「許容され」なければならない。
【0068】
本薬学的組成物は、液剤、懸濁剤、自然の(native)もしくはヘプタフルオロアルカンエアロゾル剤、およびドライパウダー製剤の形で局所的に(例えば、肺および/もしくは気道または皮膚もしくは他の上皮表面へ);または、例えば錠剤、カプセル剤、シロップ剤、散剤もしくは顆粒剤の形での経口投与によるか、または液剤もしくは懸濁剤の形での非経口的投与により全身へ投与されるか、または皮下投与によるか、または坐薬の形で経膣もしくは直腸投与によるか、または経皮的に投与されてよい。
【0069】
本発明の化合物および組成物は、望ましくは、通常の無毒の薬学的に許容される担体、補助剤、およびビヒクルを含む投与単位製剤で、経口、口腔内、耳もしくは鼻腔内、非経口的、吸入スプレーにより、局所適用により、注射により、経皮的、経膣的または経直腸的(例えば坐薬の使用)な送達システムを含むが、これらに限定されるものではない、任意の利用可能でかつ有効な送達システムにより投与することができる。非経口とは、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射、または注入技術を含む。
【0070】
当業者に公知である経皮的な化合物投与は、患者の全身循環への、本化合物の経皮経路を介した薬学的化合物の送達を含む。局所投与は、経皮的貼付剤またはイオン浸透装置のような、経皮的投与の使用も含み得る。その他の成分も、経皮的貼付剤へ混合することができる。例えば組成物および/または経皮的貼付剤は、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、クロロクレゾール、塩化ベンザルコニウムなどを含むが、これらに限定されるものではない、1種または複数の保存剤または静菌剤と共に製剤化することができる。本化合物および組成物の局所投与のための剤形は、クリーム剤、パスタ剤、スプレー剤、ローション剤、ゲル剤、軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤などを含む。このような剤形において、白色の滑らかで均質な不透明のクリーム剤またはローション剤を形成するために、本発明の組成物を、例えば保存剤としてのベンジルアルコール1%または2%(wt/wt)、乳化ワックス、グリセリン、パルミチン酸イソプロピル、乳酸、精製水およびソルビトール溶液と混合することができる。加えて本組成物は、溶媒または吸収変更剤として機能することがある、ポリエチレングリコール400を含有することができる。これらを、軟膏剤を形成するために、例えば保存剤としてのベンジルアルコール2%(wt/wt)、白色ワセリン、乳化ワックス、およびTenoxII(ブチル化されたヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、クエン酸、プロピレングリコール)と混合することができる。液剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤中の組成物を、包帯材料、例えばガーゼの織物パッドまたはロールに含浸させることができるか、または他のそのような形態で、局所的塗布に使用することもできる。本組成物を、本組成物で含浸された樹脂性架橋剤で接着され、非浸透性の裏当てに積層された、アクリル系ベースのポリマーの1つのような、経皮的システムを使用して局所的に塗布することもできる。
【0071】
経口投与用の固形剤形は、カプセル剤、錠剤、発泡錠剤、咀嚼錠剤、丸剤、散剤、サシェ剤、顆粒剤およびゲル剤を含むことができる。このような固形剤形において、本活性化合物は、少なくとも1種の不活性希釈剤、例えばショ糖、乳糖またはデンプンと混合することができる。このような剤形は、通常の実践のように、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤も含むことができる。カプセル剤、錠剤、発泡錠剤および丸剤の場合、これらの剤形は、緩衝剤も含有することができる。軟ゼラチンカプセル剤は、本発明の活性化合物または組成物、および植物油の混合物を含むように調製することができる。硬ゼラチンカプセル剤は、活性化合物の顆粒を、固形の粉状担体、例えば乳糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、アミロペクチン、ゼラチンのセルロース誘導体などと組み合せて含むことができる。錠剤および丸剤は、腸溶性コーティングと共に調製することができる。
【0072】
経口投与のための液体剤形は、当該技術分野において通常使用される水などの不活性希釈剤を含有する、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を含むことができる。このような組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、ならびに甘味剤、矯味矯臭剤および香料のような、補助剤も含有することができる。
【0073】
本発明の化合物および組成物の、膣または直腸投与のための坐薬は、室温では固形であるが体温では液体であり、その結果これらは融解しかつ薬物を放出するカカオバターおよびポリエチレングリコールのような好適な非刺激性賦形剤と、本化合物または組成物を混合することにより調製することができる。
【0074】
注射用調製品、例えば無菌の注射用の水性懸濁液または油性懸濁液は、好適な分散剤、湿潤剤および/または懸濁化剤を使用して、当該技術分野において公知のように製剤化することができる。無菌の注射用調製品は、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液のような、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、無菌の注射用液剤または懸濁剤でもあり得る。中でも使用可能である許容されるビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液である。無菌の不揮発油も、溶媒または懸濁媒として通常使用される。
【0075】
本発明の組成物は更に、従来の賦形剤、すなわち活性化合物と有害に反応しない、非経口適用に適した、薬学的に許容される有機または無機の担体物質を含有することができる。好適な薬学的に許容される担体は、例えば、水、塩溶液、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミラーゼ、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘稠パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、石油エーテル脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどを含む。本薬学的調製品は、滅菌することができ、かつ望ましくは、活性化合物と有害に反応しない助剤、例えば滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、着色剤、矯味矯臭剤および/または芳香物質などと混合することができる。非経口適用に関して、特に好適なビヒクルは、溶液、好ましくは油性または水性溶液に加え、懸濁液、乳液、またはインプラントからなる。水性懸濁液は、懸濁液の粘度を増大する物質を含んでよく、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含有する。任意に懸濁液は、安定剤も含有してよい。
【0076】
本発明の実践に有用な溶媒は、薬学的に許容される、水混和性の、非水性溶媒を含む。本発明の状況において、これらの溶媒は、薬学的用途に一般に許容される、実質的に水混和性および実質的に非水性の溶媒を含むようにしなければならない。好ましくはこれらの溶媒は、フタレート系可塑剤非浸出溶媒であり、その結果医療装置において使用される場合、これらは医療装置に存在し得るフタレート系可塑剤を実質的に浸出しない。より好ましくは、本発明の実践において、有用な薬学的に許容される水混和性の非水性溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP);プロピレングリコール;酢酸エチル;ジメチルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ベンジルアルコール;2-ピロリドン;安息香酸ベンジル;C2〜6アルカノール;2-エトキシエタノール;酢酸2-エトキシエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコールジエチルエーテル、もしくはエチレングリコールジメチルエーテルなどの、アルキルエステル;(S)-(-)-乳酸エチル;アセトン;グリセロール;メチルエチルケトンもしくはジメチルスルホンなどの、アルキルケトン;テトラヒドロフラン;カプロラクタムなどの、環状アルキルアミド;デシルメチルスルホキシド;オレイン酸;N,N-ジエチル-m-トルアミドなどの、芳香族アミン;または、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0077】
本発明の組成物は更に、可溶化剤を含有することができる。可溶化は、溶液の形成を可能にする現象である。これは、両親媒性、すなわち分散媒中に、通常は不溶性であるかまたはわずかに溶ける物質の溶解度を増大する能力を有する溶液中で、極性および非極性の両方である二重特性を有するような分子の存在に関連している。可溶化剤は、界面活性剤特性を有することが多い。それらの機能は、溶媒として作用するよりもむしろ、溶液中の溶質の溶解度を増強することであるが、例外的状況において、単独の化合物が、可溶化および溶媒の両方の特徴を有することがある。本発明の実践において有用な可溶化剤は、トリアセチン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG300、PEG400、またはそれらの3350との混合物など)、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80など)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、ポロキサマー407など)、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシル2セチルエーテル、ポリオキシル10セチルエーテル、およびポリオキシル20セチルエーテル、ポリオキシル4ラウリルエーテル、ポリオキシル23ラウリルエーテル、ポリオキシル2オレイルエーテル、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20オレイルエーテル、ポリオキシル2ステアリルエーテル、ポリオキシル10ステアリルエーテル、ポリオキシル20ステアリルエーテル、ポリオキシル100ステアリルエーテルなど)、ステアリン酸ポリオキシル(例えば、ステアリン酸ポリオキシル30、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシル50、ステアリン酸ポリオキシル100など)、ポリエトキシル化されたステアラート(例えば、ポリエトキシル化された12-ヒドロキシステアラートなど)、ならびにトリブチリンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0078】
本発明の組成物に添加することができる他の物質は、シクロデキストリン、およびシクロデキストリンのアナログおよび誘導体、ならびに本発明の組成物の安定性を増強するか、溶液中に生成物を維持するか、または本発明の組成物の投与に関連した副作用を防止することができる、他の可溶性賦形剤を含む。シクロデキストリンは、Janssen PharmaceuticalsからENCAPSIN(登録商標)として入手可能である。
【0079】
本組成物は、望ましくは、少量の湿潤剤、乳化剤および/またはpH緩衝剤を含有することもできる。本組成物は、液体の液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放製剤、または散剤であり得る。本組成物は、従来の結合剤およびトリグリセリドのような担体と共に、坐薬として製剤化することができる。経口製剤は、標準の担体、例えば医薬等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含有することができる。
【0080】
例えば、リポソーム、超微粒気泡、エマルション、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ナノ粒子などへの封入を含む、様々な送達システムが公知であり、かつ本発明の化合物または組成物を投与するために使用することができる。必要とされる用量を、単一の単位量または徐放型として投与することができる。
【0081】
本組成物のバイオアベイラビリティは、好適な賦形剤またはリン脂質もしくは界面活性剤のような物質の存在下で、粉砕、微粒子化、噴霧乾燥などの、従来の技術を使用する、製剤のマイクロ粒子化により増強することができる。
【0082】
好適な本発明の徐放性剤形は、その中に分散された治療薬を有するマイクロ粒子および/もしくはナノ粒子を含むか、または純粋な、好ましくは結晶質の固形形状で治療薬を含んでよい。徐放性投与に関して、純粋な、好ましくは結晶質の治療薬を含有するマイクロ粒子剤形が好ましい。本発明のこの局面の治療的剤形は、徐放に適した任意の構造(configuration)であってもよい。好ましい徐放性の治療用剤形は、以下の特徴の1つまたは複数を示す:マイクロ粒子(例えば、直径約0.5μm〜約100μm、好ましくは約0.5〜約2μm;もしくは、直径約0.01μm〜約200μm、好ましくは約0.5〜約50μm、より好ましくは約2〜約15μm)またはナノ粒子(例えば、直径約1.0nm〜約1000nm、好ましくは約50〜約250nm;もしくは、直径約0.01nm〜約1000nm、好ましくは約50〜約200nm)、自由流動粉末構造;約0.5〜約180日間、好ましくは約1〜3〜約150日間、より好ましくは約3〜約180日間、最も好ましくは約10〜約21日間の期間にわたり生分解するようにデザインされた、生分解可能な構造;または、約0.5〜約180日間、より好ましくは約30〜約120日間;もしくは、約3〜約180日間、より好ましくは約10〜約21日間の期間にわたる治療薬拡散の発生が可能である、非生分解構造;生体適合性の生分解性製品を得ることを含む、剤形が投与される標的組織および局所的生理的環境との、生体適合性;好ましくは以下の一方または両方の経路により生じる活性治療薬放出を伴う、治療薬-ポリマーマトリクスを形成するための、治療薬の安定でおよび再現可能な分散の促進:(1)剤形を通じた治療薬の拡散(治療薬が、剤形の寸法を規定する成形されたポリマーまたはポリマー混合物中に可溶性である場合);または、(2)剤形の生分解時の治療薬の放出;ならびに/または、標的化された剤形に関して、好ましくは剤形結合(dosage form bond)に対して約1〜約10,000結合タンパク質/ペプチドを有する能力、より好ましくは剤形結合に対して、150平方オングストロームの粒子表面積あたり最大約1個の結合ペプチドを有する能力。剤形結合に対する結合タンパク質/ペプチドの総数は、使用される粒径により左右される。結合タンパク質またはペプチドは、本明細書に説明した共有的リガンドサンドイッチまたは非共有的モダリティを介して、治療的剤形の粒子へカップリングすることが可能である。
【0083】
ナノ粒子の徐放性治療用剤形は、好ましくは生分解性であり、かつ任意に血管平滑筋細胞に結合し、それらの細胞へ、主にエンドサイトーシスにより侵入する。ナノ粒子の生分解は、プレリソソーム小胞(prelysosomic vesicles)およびリソソームにおいて、長期にわたり生じる(例えば30〜120日間;または、10〜21日間)。本発明の比較的大きいマイクロ粒子の好ましい治療用剤形は、その後の標的細胞取り込みのために、治療薬を放出し、わずかな比較的小さいマイクロ粒子はファゴサイトーシスにより細胞へ侵入する。当該技術分野の実践者は、標的細胞が本発明の剤形を同化しかつ代謝する正確な機序は、それらの細胞の形態学、生理学および代謝プロセスにより決まることを認めると考えられる。徐放性治療用剤形の粒子のサイズも、細胞同化の様式に関して重要である。例えばより小さいナノ粒子は、細胞間の間質液と共に流動し、注入された(infused)組織に浸透することができる。より大きいマイクロ粒子は、注入された主要組織中で間質的により容易に捕獲される傾向があり、その結果、抗増殖性治療薬の送達に有用である。
【0084】
好ましい本発明の徐放性剤形は、生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子を含有する。より好ましくは、生分解性マイクロ粒子またはナノ粒子は、治療薬を放出するために、ランダムで、非酵素性、加水分解性の切断により生分解し、これにより粒子構造内に細孔を形成する、ポリマー含有マトリクスで形成される。
【0085】
本発明の化合物および組成物は、薬学的に許容されるエステルまたは塩として製剤化することができる。薬学的に許容される塩は、例えばアルカリ金属塩および遊離酸または遊離塩基の付加塩を含む。この塩の性質は、それが薬学的に許容されるならば、重要ではない。薬学的に許容される好適な酸付加塩は、無機酸または有機酸から調製されてよい。そのような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸(亜硝酸塩)、硝酸(硝酸塩)、炭酸、硫酸、リン酸などを含むが、これらに限定されるものではない。適当な有機酸は、有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、複素環式、カルボン酸およびスルホン酸の部類、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、サリチル酸、パラヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、ステアリン酸、アルゲン酸(algenic)、β-ヒドロキシ酪酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ガラクタル酸およびガラクツロン酸などを含むが、これらに限定されるものではない。薬学的に許容される好適な塩基付加塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛により生成された金属塩、または第1級、第2級および第3級アミン、環状アミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)およびプロカインなどにより生成された有機塩などを含むが、これらに限定されるものではない。例えば、適当な酸または塩基を、本化合物と反応させることにより、これらの塩は全て、対応する化合物から、通常の手段により調製することができる。
【0086】
個々の必要性は異なるにもかかわらず、本化合物および/または組成物の有効量の最適な範囲の決定は、当該技術分野の技術の範囲内である。一般に、本化合物および組成物の有効量を提供するために必要な用量は、当業者により調節することができ、これはレシピエントの年齢、健康状態、生理的状態、性別、食事、体重、機能障害の程度、治療頻度ならびに機能障害または疾患の性質および範囲、患者の医学的状態、投与経路、使用される特定の化合物の活性、有効性、薬物動態および毒性のプロファイル、薬物送達システムが使用されるかどうか、ならびに化合物が併用薬の一部として投与されるかどうか等の薬理学的考察に応じて変動する。
【0087】
本発明は、以下の投与量で投与することができる:体内(internal)1pg/kg〜10g/kg;即時放出または徐放のための調製品として製剤化され、局所的に0.00001%〜100%。本発明の用法は、1日あたり1〜8回投与の個別の投与、急性単回投与、および慢性多回投与、点滴(一定のIVまたは他の注入)として、またはボーラス投与を含む。本発明は、溶媒および他の作用物質または化合物と共に製剤化されてもよい。
【0088】
本発明は、本明細書に説明された1種または複数の治療薬を含む、本発明の薬学的化合物および/または組成物の1種または複数の成分が充填された、1個または複数の容器を含む薬学的キットも提供する。このようなキットは、例えば、他の化合物および/または組成物(例えば、治療薬、透過性増強剤、滑沢剤など)、化合物および/または組成物の投与のための装置、ならびに薬物または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府の機関により規定された形式の書面による使用説明書も含むことができる。この使用説明書は、ヒト投与に関する製造、使用または販売の機関による承認を反映させることができる。
【実施例】
【0089】
本発明のより完全な理解は、以下の本発明の実践の例証的実施例を参照することにより得ることができるが、これらの実施例は、本発明を限定することを意図するものではない。以下の例証的実施例においては、ワシントン大学(セントルイス)においてMS50-TA 質量分析計上で、ニトロベンジルアルコールのマトリクスならびに試料のイオン化のためにリチウムイオンおよびキセノンガスFABビームを用いて、高速原子衝撃質量スペクトル(FAB MS)を得た。この装置は、最大分解能50,000の3セクターのEBE型である。最大加速電圧(8kV)での質量範囲は、約800ダルトンである。低分解能FABスペクトルは、名目分解能1000で試行し、高分解能スペクトルは、分解能10,000で試行する。正確な質量測定は、参照質量としてアルカリ金属塩イオンを使用するピークマッチング法により実行する。
【0090】
全ての溶媒および市販の試薬は、実験用等級であり、受け取った状態で使用した。MPチオール連結したキレートエステルは、最大耐量(MTD)またはLD50、放射線防護、および緑内障治療のための捕捉化合物として生物学的に試験した。MPチオールは、放射線防護剤として試験した。MPチオールのEDTAまたはDTPAへの結合は、親化合物と同等の毒性のある誘導体を生じる。これらの化合物は、メトキシポリエチレングリコール(MP)、およびキレートEDTAまたはジエチレントリアミン五酢酸(DTP)から、いくつかの工程で調製した。
【0091】
実施例1. メトキシポリエチレングリコールチオールのEDTAとのメチルエステル(MPSEDE)
MPを、塩化チオニルとの反応により塩化物に転換し(Bueckmann et al., Biotech. Appl. Biochem., 9: 258-268, 1987)、その後チオ尿素との反応によりチオールに転換し(Urquhart et al Organic Syntheses Coll. Vol 3;Horning, E. C.; Ed.;Wiley, N. Y., 1955; pp 363-365)、引き続き塩基、酸で処理し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。ジメチルホルムアミド溶媒と共にカップリング剤としてカルボニルジイミダゾールを使用して、このチオールをチオエステルとしてEDTAへカップリングさせ(Gais, Angew. Chem. Int. Ed. 16:244-246, 1977)、引き続きメタノールおよびカルボニルジイミダゾールにより、他方のカルボキシル基をメチルエステル化した。これらの生成物について、酢酸エチルおよびヘプタンの勾配で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、けん化およびピリジルアゾナフトール指示薬を使う塩化銅滴定によるキレートの測定により特徴決定し(Blijenberg et al, Clin. Chim Acta 26:577-579, 1969)、エルマン試薬を使う分光光度法によりチオールを決定し(Riddles et al Meth. Enzymol. 1983, 91, 49-60)、FAB質量分析により分子構造を確認した。全ての分析は、示された構造と一致した。MPSEDEの代表的質量スペクトルを、図2に示す。本生成物は、エトキシ単位数4〜9であるMPチオールにカップリングしたキレートからなり、M+HおよびM+Liピークが示された。
【0092】
実施例2. メトキシポリエチレングリコールチオールのDTPAとのメチルエステル(MPSDTE)
MPを、実施例1に説明されたものと同じプロセスを用い、MPチオールへ転換した。ジメチルホルムアミド溶媒と共にカップリング剤としてカルボニルジイミダゾールを使用して、このチオールをチオエステルとしてDTPAへカップリングさせ(Gais, Angew. Chem. Int. Ed. 16:244-246, 1977)、引き続きメタノールおよびカルボニルジイミダゾールにより、他方のカルボキシル基をメチルエステル化した。これらの生成物について、酢酸エチルおよびヘプタンの勾配で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、けん化およびピリジルアゾナフトール指示薬を使う塩化銅滴定によるキレートの測定により特徴決定し(Blijenberg et al, Clin. Chim Acta 26:577-579, 1969)、エルマン試薬を使う分光光度法によりチオールを決定し(Riddles et al Meth. Enzymol. 1983, 91, 49-60)、FAB質量分析により分子構造を確認した。全ての分析は、示された構造と一致した。
【0093】
毒性試験
全ての生物学的試験に関して、これらの物質を水に溶解し、pH7に調整した。これらの物質のおおよその毒性レベルは、毒性が明らかになるまで、投与量を増加させながら個々のSwiss-Webster雌マウスへの腹腔内(IP)注射することにより、予備決定した。最大耐量(MTD)は、2mmole/kgであり、昏睡、痙攣または死亡のような明確な毒性症状は伴わなかった。
【0094】
放射線防護試験
MPチオール誘導体の、放射線致死率に対する作用を試験した。12匹以上の雌のSwiss-Websterマウスの群に、本誘導体の溶液を、最大耐量の約半分の投与量でIP投与した。10分後、ペントバルビタール(PB)0.262mmole/kgをIP投与し、最初の注射の20分後、頭頚部を、指定された様々な線量で、20分から50分の間照射した。この照射は、下記条件下で操作されるPhilips RT-250ユニットを用いて行った:200kVp、20mA、0.2mm Cu添加されたフィルトレーション、HVL 0.57mm Cu、線量率1.834Gy/分。マウスを、6または12匹の群で照射し、それらの頭部が95%等線量内であるように、それらの頭部を、20x24cmの開口円錐(aperture cone)内に、標的から皮膚までの距離が50cmであるように配置した。X線ユニットの出力は、Capintec PT-06C Farmerチャンバーを用いてキャリブレーションした。対照は、本薬物の代わりに、PBおよび0.4mlの通常の生理食塩水のみを受けさせた。
【0095】
マウスは、全身の状態および生存について試験し、各群について死亡率を記した。これらの条件下で、マウスは、曝露後10〜13日の間に、放射線により死亡した。図3は、MPチオールまたは生理食塩水の投与、それに続く様々な線量の頭頚部への照射後の、これらのマウスの生存率を図示している。MPチオールは、有効な放射線防護剤であることが認められ、アミホスチン(Ethyol)のような公知の放射線防護剤と同等の線量修飾係数を有する。
【0096】
手術により誘導された緑内障に対する作用
緑内障および網膜神経節細胞喪失に対する保護について、ラットにおいてMPSEDEを試験した。
【0097】
ラット高眼内圧モデル:
高眼内圧を、体重400〜500gの9匹の雄のSpragueDawleyラットにおいて誘導した。マレイン酸アセプロマジン(12mg/Kg)およびケタミン(80mg/Kg)のIP、および局所的プロパラカイン(0.5%)による全身麻酔下で、細かく刻み、結膜の切開を行った。再血管形成または新血管形成の刺激を低下するために、右目の切開は、渦静脈の極周囲領域に制限した。4本の渦静脈のうちの3本を露出し、9.0ナイロン製縫合糸を用いて結紮した。本試験への登録の判定基準は、凍結手術ベースラインIOPと比べた場合に、5mmHg以上の眼内圧(IOP)上昇であった。6週間以内に、全ての手術した眼のIOPは、ベースラインに比べ、少なくとも5mmHg上昇した。本試験は、動物の使用と福祉に関する米国の、国立衛生研究所のガイドラインおよび視覚と眼科学研究協会(Association for Research in Vision and Ophthalmology)の陳述に従った。
【0098】
眼内圧(IOP)測定:
処置開始前に、ベースラインIOPを、緑内障ラットモデルにおいて得た。IOPは、特に改良されたGoldmann圧平眼圧計(HAAG-STREIT, ベルン,スイス)において、鎮静下で測定した。測定値は、2回の連続した読み値の平均であり、同時刻および同じ測定者により行った。
【0099】
眼損傷の測定:
スリットランプ(HAAG-STREIT, ベルン, スイス)試験を行い、あらゆる可能性のある眼損傷および前房の変化を決定した。試験は、炎症、結膜浮腫/膨潤、結膜分泌(discharge)、房水フレア、フィブリン、光反射、虹彩、角膜混濁、血管新生および着色(staining)の徴候を記録するように改変し、半定量的スケールで記録した(Samudre, SS, Lattanzio, FA Jr., Williams, PB, and Sheppard, JD, Jr., Comparison of topical steroids for acute anterior uveitis, J. Ocul. Phamacol. Ther. (2004) 20:533-47)。試験前に、ラットを、マレイン酸アセプロマジン(6mg/Kg)、およびケタミン(40mg/Kg)、更には0.5%プロパラカインの局所投与により鎮静させた。試験過程を通じ、本試験は、マスキングされた知識のある観察者の同じ群により行った。
【0100】
共焦点顕微鏡によるインビボ分析:
本技術は、炎症細胞の存在、位置および数に、更にはフィブリン、高屈折体、ならびに上皮細胞、間質細胞および内皮細胞の形態の変化に関する、角膜および前区の繰り返しのインビボ可視化を可能にする。ラットは、アセプロマジン(12mg/Kg)およびケタミン(80mg/Kg)麻酔下、更には0.5%プロパラカインの局所投与して試験し、Advanced Scanning Limited共焦点顕微鏡(ASL 1000, Advanced Scanning Limited, ニューオーリンズ, LA)を用い、CCDカメラ(Kappa Optoelectronics Inc., モンロビア, CA)を用いて記録し、SVO-9500MD VCR(Sony Corporation, 東京, 日本)で記録した。データは、Metamorph(商標)画像システム(Universal Imaging, ダウニングタウン, PA)を用いて解析した。
【0101】
NMDA網膜損傷モデル:
網膜電図(ERG)のA波およびB波の変化は、RGC損傷の指標として用いられている。RGC神経保護を試験するために、正常ラットの一側性に、2週間以内にERGのA波およびB波を変更するのに十分な、10mM NMDAの2ul硝子体内注射をチャレンジし、硝子体内(2mM)または局所的に100mM MPDTE、MPSEDEおよびアミホスチンを同時投与した。局所投与に関して、NMDA投与の前に5日間およびNMDA投与後に3日間、20μl作用物質を、1日3回の頻度で、ラットを、本作用物質で予備処理した。暗順応のERG変化を、正常ラットにおいて測定した。ラットは、少なくとも4時間暗所に馴化させた。眼は、アトロピンで散瞳させ、その後プロパラカインおよびメチルセルロースゲルを局所適用した。特別注文のAgCl電極(64-1317, Warner Instruments, ハムデン, CT)を、角膜の先端に配置した。刺激は、Ganzfieldボウル光刺激装置(Grass Instruments, PS22, クインシー, MA)により発生した減衰しない白色光の10マイクロ秒フラッシュからなった。各眼のデータは、ドライバ増幅器(driver amplifier)(Grass Instruments, モデル7DAF Polygraph, クインシー, MA)により個別に記録した。データは、DASYLab(ベッドフォード, NH)によりデジタルで獲得した。対側の正常眼を、年齢が合致した陰性対照、例えば正常な損傷されない眼における反応として使用した。処置眼と対側眼の間、および処置群間の、A波およびB波の増幅の差を算出した。
【0102】
ラットの手術による緑内障モデルにおけるIOP測定に関するMP化合物の局所適用:
ラットを、MP化合物20μl(0.3〜100mM;n=3〜6)で、手術した眼に局所的に処置した。MP化合物を、フリーラジカル捕捉剤である局所用アミホスチン10または87mMと比較した。MPエステル化されたキレート剤は、ジエチレントリアミン五酢酸(MPDTE)およびMPSEDEであった。
【0103】
MPDTE眼毒性の慢性試験:
2群の正常ラットを、10mM MPDTE(n=3)または87mM MPDTE(n=3)の片眼の局所投与量20μlを、1日3回1ヶ月間で試験した。IOP、スリットランプおよび共焦点試験を薬物投与前に行い、スリットランプ試験を15日目に、およびIOP、スリットランプおよび共焦点試験を、30日後に試験した。
【0104】
薬物動態試験:
MP化合物の局所的吸収および全身分布を決定するために、14C標識したMPDTEを、30mM MPDTEの20μl点眼(drop)で正常ラットに投与した。14C標識は、MP骨格に結合し、偽の交換の機会を低下させた。1時点で2〜6匹の動物で15〜120分後、これらの動物を安楽死させ、血液、尿および組織試料を得た。眼球を摘出し、0.9%生理食塩水で5回洗浄し、吸収されなかった薬物を除去した。試料を可溶化し、液体シンチレーションカウンターで計測し、放射標識されたMPの存在を決定した。
【0105】
データ解析:
一元配置分散分析を用い、IOP、血圧および心拍数のデータを解析した。対比較のためには、対応のあるt-検定を用いた。ノンパラメトリックデータは、符号付き順位検定により解析した。P<0.05の差は、統計学的に有意であるとみなした。全ての値は、特に記さない限りは、平均±SEMで報告した。
【0106】
H9C2細胞におけるドキソルビシン化学毒性試験
H9C2細胞を、ラット横紋筋のモデルとして使用し、これを先に報告された技術を用いて培養した(Lattanzio, FA Jr., Tiangco, D., Osgood, C., Beebe, S., Kerry, J. and Hargrave BY)。コカインは、細胞内カルシウムおよび活性酸素種を増大させ、ミトコンドリアを脱分極し、かつ心不全およびリモデリングに関連した遺伝子を活性化する。Cardiovascular Toxiology(20050 5: 377-389)。蛍光カルシウム指示薬およびROS指示薬を使用し、細胞内カルシウムおよびROS活性の増加が報告されるかどうか、ならびにこれらの変化が2mM MPSEDEまたはMPDTEの存在下で低下するかどうかを決定した。細胞は、Lattanzioらの論文(2005)に説明されたように、Zeiss 510蛍光共焦点顕微鏡を用いて測定した。
【0107】
図4は、MP化合物の局所的眼内投与によるラットの眼球(globe)への浸透を明らかにしているが、未処置の対側の眼または脳へのクロスオーバーはごくわずかであった(脳のデータは示さず)。MPDTEの排泄は、主に尿を介してである。正常ラットの慢性的局所投与は、スリットランプまたは共焦点試験で検出されるように、1ヶ月後にいずれの眼においても、眼毒性を示さず、IOPの残存する変化もなかった。
【0108】
MPDTEおよびMPSEDEの最初の試験は、単回投与量10〜100mMは、IOPを有意に低下したことを明らかにしている(図5、図6、図7)。MPDTEおよびMPSEDEの用量反応曲線は、60分で、局所的MP投与のIOP反応のほとんどピーク近傍であることが、図8において示されている。MPDTEにより引き起こされたIOP低下は、単回投与で〜2時間維持され、図9において実験用カンナビノイド(1%WIN 55,212-2)またはアミホスチンと比較している。10mMまたは87mMアミホスチンでは、IOPの低下は認められなかった。
【0109】
IOP低下の機序は、MP骨格の作用とキレート剤基DTEの作用を個別にまたは一緒にして比較することにより、説明されている。図10に認められるように、MPまたはDTEのいずれかが単独または一緒に投与される場合に、IOP低下は存在するが、IOP低下は、MPDTEほど大きくはない。
【0110】
MPDTEのNMDAとの同時投与は、NMDA単独で認められる低下と比べ、各々、A波(図11)およびB波(図12)の増幅を有意に維持した。MPSEDEは、NMDA損傷を低下する傾向を示したが、これは、試験した投与量では有意ではなかった。MPSEDEまたはMPDTEのいずれかの硝子体内投与および局所投与は両方共、NMDA損傷を有意に低下させた(表1)。
【0111】
【表1】
【0112】
化学防護
ラット筋細胞モデルであるH9C2細胞を、Lattanzioらの論文(2005)に説明された技法を用い、MEMにおいて、集密となるまで培養した。これらの細胞を、蛍光カルシウム指示薬fluo-3 AM 5μMで37℃で30分間処理し、洗浄し、次に2mM MPDTEの30分間の前処置ありまたはなしで、50μMドキソルビシン(超極大毒性量)に曝露した。ドキソルビシンは、フリーラジカル損傷の発生およびそれに続く膜損傷により、カルシウムのホメオスタシスを混乱させることによって、心細胞において、細胞内カルシウムを増大させる。10分間曝露した後、細胞内カルシウムは、未処置の細胞において59.4%増加したが、MPDTE処置細胞においてはわずかに40.2%であった(p<0.001、3回の個別の試験においてn=20細胞)。防護は、フリーラジカル捕捉とカルシウムキレート化の組合せにより生じるであろう。
【0113】
前述の説明から、当業者は、本発明の本質的特徴を容易に確定し、それらの精神および範囲から逸脱しない限りは、様々な用途および条件に本発明を適合するために、本発明を様々に変更および修飾することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のメトキシポリエチレングリコールチオエステル化合物:
式中、1つのR1は、式(II)であり
;
残りのR1は各々、式(II)、または-CH2COOH、-CH2COO-Na+、-CH2COO-Ca++/2、-CH2COOCH3、-CH2COOC2H5、および-CH2COOC3H7からなる群より選択され;
aは、0〜6であり;各bは独立して、0〜18であり;各cは独立して、3〜10であり;かつ、dは独立して、1〜3である。
【請求項2】
aが0であり、各bが0であり、各cが独立して3〜10であり、dが1であり、かつ3つのR1が-CH2COOCH3である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
aが1であり、各bが0であり、各cが独立して3〜10であり、dが1であり、かつ4つのR1が-CH2COOCH3である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
各cが独立して7または8である、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
各cが独立して7または8である、請求項3記載の化合物。
【請求項6】
化合物が
であり、式中、nは3〜10である、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
化合物が
であり、式中、nは3〜10である、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
化合物が、電子を引き抜くことが可能である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
化合物が、重金属またはCa++とキレートを形成することが可能である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
請求項1記載の化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体または薬学的に許容される補助剤とを含有する、組成物。
【請求項11】
請求項2、3、6、または7記載の化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体または薬学的に許容される補助剤とを含有する、組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の請求項1記載の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、任意に少なくとも1種の治療薬とを含有する、組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の薬学的に許容される担体または薬学的に許容される補助剤を更に含有する、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
請求項1、2、3、6、または7記載の化合物の治療的有効量を患者に投与することを含む、必要とする患者において、放射線に対する曝露に起因する組織損傷を予防する方法。
【請求項15】
請求項1、2、3、6、または7記載の化合物の治療的有効量を患者に投与することを含む、必要とする患者において、フリーラジカルオキシダントに起因する変性疾患を予防する方法であって、フリーラジカルオキシダントが、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、および酸化窒素を含む、方法。
【請求項16】
請求項10記載の組成物の治療的有効量を患者へ投与することを含む、必要とする患者において、緑内障に起因する網膜細胞死を治療する方法。
【請求項17】
請求項1、2、3、6、または7記載の化合物の少なくとも1種またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、それらの使用に関する指示書とを含むキット。
【請求項18】
請求項1、2、3、6、または7記載の化合物の有効量を投与することを含む、必要とする細胞内で、フリーラジカルオキシダントから電子を引き抜く方法であって、フリーラジカルオキシダントが、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、および酸化窒素を含む、方法。
【請求項19】
請求項1、2、3、6、または7記載の化合物の有効量を投与することを含む、必要とする細胞内で、重金属によるフリーラジカルオキシダント形成の触媒を防止する方法であって、フリーラジカルオキシダントが、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、および酸化窒素を含み、前記化合物が、重金属とキレートを形成することが可能である、方法。
【請求項1】
式(I)のメトキシポリエチレングリコールチオエステル化合物:
式中、1つのR1は、式(II)であり
;
残りのR1は各々、式(II)、または-CH2COOH、-CH2COO-Na+、-CH2COO-Ca++/2、-CH2COOCH3、-CH2COOC2H5、および-CH2COOC3H7からなる群より選択され;
aは、0〜6であり;各bは独立して、0〜18であり;各cは独立して、3〜10であり;かつ、dは独立して、1〜3である。
【請求項2】
aが0であり、各bが0であり、各cが独立して3〜10であり、dが1であり、かつ3つのR1が-CH2COOCH3である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
aが1であり、各bが0であり、各cが独立して3〜10であり、dが1であり、かつ4つのR1が-CH2COOCH3である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
各cが独立して7または8である、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
各cが独立して7または8である、請求項3記載の化合物。
【請求項6】
化合物が
であり、式中、nは3〜10である、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
化合物が
であり、式中、nは3〜10である、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
化合物が、電子を引き抜くことが可能である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
化合物が、重金属またはCa++とキレートを形成することが可能である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
請求項1記載の化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体または薬学的に許容される補助剤とを含有する、組成物。
【請求項11】
請求項2、3、6、または7記載の化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体または薬学的に許容される補助剤とを含有する、組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の請求項1記載の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、任意に少なくとも1種の治療薬とを含有する、組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の薬学的に許容される担体または薬学的に許容される補助剤を更に含有する、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
請求項1、2、3、6、または7記載の化合物の治療的有効量を患者に投与することを含む、必要とする患者において、放射線に対する曝露に起因する組織損傷を予防する方法。
【請求項15】
請求項1、2、3、6、または7記載の化合物の治療的有効量を患者に投与することを含む、必要とする患者において、フリーラジカルオキシダントに起因する変性疾患を予防する方法であって、フリーラジカルオキシダントが、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、および酸化窒素を含む、方法。
【請求項16】
請求項10記載の組成物の治療的有効量を患者へ投与することを含む、必要とする患者において、緑内障に起因する網膜細胞死を治療する方法。
【請求項17】
請求項1、2、3、6、または7記載の化合物の少なくとも1種またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、それらの使用に関する指示書とを含むキット。
【請求項18】
請求項1、2、3、6、または7記載の化合物の有効量を投与することを含む、必要とする細胞内で、フリーラジカルオキシダントから電子を引き抜く方法であって、フリーラジカルオキシダントが、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、および酸化窒素を含む、方法。
【請求項19】
請求項1、2、3、6、または7記載の化合物の有効量を投与することを含む、必要とする細胞内で、重金属によるフリーラジカルオキシダント形成の触媒を防止する方法であって、フリーラジカルオキシダントが、過酸化物、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、および酸化窒素を含み、前記化合物が、重金属とキレートを形成することが可能である、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−31173(P2012−31173A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177877(P2011−177877)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【分割の表示】特願2008−555298(P2008−555298)の分割
【原出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(507136648)イースタン バージニア メディカル スクール (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【分割の表示】特願2008−555298(P2008−555298)の分割
【原出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(507136648)イースタン バージニア メディカル スクール (4)
【Fターム(参考)】
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