メラニン色素排出用組成物
【課題】皮膚のメラニン色素の排出効果を有する新規な組成物を提供すること。
【解決手段】シリコーン化合物を含む液晶を有効成分とするメラニン色素排出用組成物に関する。本発明の組成物は、1種または2種以上のシリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水を含む液晶を含有する。本発明の組成物は、1種または2種以上のシリコーン系界面活性剤を合計5〜95重量%、フェニル変性シリコーン油を0.1〜90重量%、水を0.1〜90重量%含む。
【解決手段】シリコーン化合物を含む液晶を有効成分とするメラニン色素排出用組成物に関する。本発明の組成物は、1種または2種以上のシリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水を含む液晶を含有する。本発明の組成物は、1種または2種以上のシリコーン系界面活性剤を合計5〜95重量%、フェニル変性シリコーン油を0.1〜90重量%、水を0.1〜90重量%含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン化合物を構成成分とする液晶を有効成分とするメラニン色素排出用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンは、無色、無臭であるだけでなく、生理活性が極めて小さい化合物である。シリコーン化合物を皮膚用組成物に添加することで、滑り性の向上や撥水性および光沢の付与、サッパリ感の向上など、顕著な特性の向上を実現することができる。
【0003】
従来、シリコーン系の皮膚用組成物としては、エマルションが知られていた(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1には、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、カルボキシメチルセルロース塩、水および低粘度シリコーン油を含有する高内水相油中水型(W/O型)乳化化粧料が記載されている。特許文献1の化粧料は、架橋型ポリエーテル変性シリコーンおよび低粘度シリコーン油からなるペースト状ポリエーテル変性シリコーン組成物を油相とし、カルボキシメチルセルロース塩の水溶液を水相とすることで、使用時の水のあふれ出し感と輸送時の安定性とを両立している。
【0005】
特許文献2には、4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタン、ベンゾトリアゾール誘導体、シリコーン油、シリコーン系界面活性剤および水を含有する日焼け止め油中水型(W/O型)乳化化粧料が記載されている。特許文献2の日焼け止め化粧料は、衣服に対する染着性を低減させつつ、UV−A領域の紫外線に対する優れた吸収特性を実現している。
【0006】
また、近年、シリコーン系の液晶組成物も開示されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3には、ポリエーテル基を有する三Si−H含有ポリシロキサン、α,ω−エン−インおよび水からシリコーン系液晶を製造する方法が記載されている。また、この方法により製造されたシリコーン系液晶が、薬理学的用途および化粧品用途における活性成分のデリバリー媒体としての使用を含む、様々な用途において使用可能であることも記載されている。
【0007】
なお、現在までに、シリコーン化合物を含む液晶が皮膚のメラニン色素の排出効果を有することは報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−307371号公報
【特許文献2】特開2007−182389号公報
【特許文献3】特表2009−504876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、皮膚のメラニン色素の排出効果を有する新規な組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、シリコーン化合物を利用した新規な組成物を探索する過程で、特定の1種のシリコーン系界面活性剤を使用することによって、または特定のシリコーン系界面活性剤を2種以上組み合わせて使用することによって、シリコーン系界面活性剤と水とから液晶を製造できることを見出した。この液晶は、その構成成分としてフェニル変性シリコーン油をさらに配合することにより、液晶構造内に難溶性の疎水性化合物(例えば、化粧料などに配合される炭化水素油や脂肪酸、エステル油など)を可溶化できるものであり、化粧料等の皮膚用組成物として極めて適合性が高いものであった。
【0011】
本発明者らは今回、上記液晶が、皮膚への塗布時にメラニン色素を排出する効果を発揮することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の特徴を有する。
(1)1種または2種以上のシリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水を含む液晶を有効成分とするメラニン色素排出用組成物。
(2)2種以上のシリコーン系界面活性剤を含み、該2種以上のシリコーン系界面活性剤は2種以上のペンダント型のシリコーン系界面活性剤の組み合わせである、前記(1)に記載の組成物。
(3)1種のシリコーン系界面活性剤を含み、該1種のシリコーン系界面活性剤は、HLB値が4.0〜10.0の範囲内であり、かつ粘度が400mm2/s以上である、前記(1)記載の組成物。
(4)前記フェニル変性シリコーン油は、モノフェニルシリコーン油である、前記(1)に記載の組成物。
(5)炭化水素油、脂肪酸、エステル油またはこれらの組み合わせをさらに含む、前記(1)に記載の組成物。
(6)前記炭化水素油は、スクアランである、前記(5)に記載の組成物。
(7)前記エステル油は、イソオクタン酸セチルである、前記(5)に記載の組成物。
(8)美白用の化粧料、医薬部外品又は医薬品である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の組成物。
(9)美白用化粧料である前記(8)に記載の組成物。
【0013】
本発明によれば、皮膚への塗布時に効果的にメラニン色素を排出することができる新規な組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1Aは、2種類のシリコーン系界面活性剤の混合物を示す写真である。図1Bは、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる組成物を示す写真である。
【図2】図2Aは、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる組成物を偏光板を通して観察した様子を示す写真である。図2Bおよび図2Cは、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる組成物の偏光顕微鏡像である。
【図3】2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる液晶のSAXSによる分析結果を示すグラフである。
【図4】SS−2804、SS−2910および水からなる組成物の室温での相平衡図である。
【図5】2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる液晶において純水の量を変化させた場合の、水の濃度とラメラ液晶の面間隔との関係を示すグラフである。
【図6】2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる液晶に油を加えた場合の、油の可溶化濃度を示すグラフである。
【図7】混合界面活性剤水溶液にモノフェニルシリコーン油またはビフェニルシリコーン油を含む油を加えた場合の、油の可溶化濃度を示すグラフである。
【図8】ペンダント型シリコーン系界面活性剤またはAB型シリコーン系界面剤を含む混合界面活性剤水溶液にSH556を加えた場合の、SH556の可溶化濃度を示すグラフである。
【図9】2種類のペンダント型シリコーン系界面活性剤を含む混合界面活性剤水溶液に油を加えた場合の、油の可溶化濃度を示すグラフである。
【図10】混合界面活性剤水溶液に脂肪酸を含む油を加えた場合の、油の可溶化濃度を示すグラフである。
【図11】混合界面活性剤水溶液にエステル油または炭化水素油を含む油を加えた場合の、油の可溶化濃度を示すグラフである。
【図12】シリコーン系界面活性剤または炭化水素系界面活性剤を含む界面活性剤水溶液にSH556を加えた場合の、SH556の可溶化濃度を示すグラフである。
【図13】メラニン色素誘発モルモットにおける、製剤塗布によるΔL値とΔa値の経時変化を示すグラフである。図中の略号は次の通りである:SiNC(La)、本発明の液晶;DW、精製水。
【図14】製剤塗布後11日目のメラニン色素誘発モルモットの皮膚組織断面の光学顕微鏡観察を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のメラニン色素排出用組成物(以下、「本発明の組成物」とも称する)について説明する。
【0016】
本発明の組成物は、1種または2種以上のシリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水を含む液晶を有効成分とすることを特徴とする。有効成分である液晶の種類は、規則構造を有するものであれば特に限定されない。そのような液晶の例には、ラメラ液晶、キュービック液晶、ヘキサゴナル液晶および逆ヘキサゴナル液晶が含まれる。キュービック液晶の例には、ディスコンティニュアス・キュービック液晶、逆型ディスコンティニュアス・キュービック液晶、バイコンティニュアス・キュービック液晶、逆型バイコンティニュアス・キュービック液晶が含まれる。本発明の組成物が液晶を含んでいることは、偏光顕微鏡で確認することができる。また、小角X線散乱(SAXS)により液晶構造を確認することができる。
【0017】
本発明の組成物の有効成分である液晶(以下、「本発明の液晶」とも称する)は、シリコーン系界面活性剤を含んでいる。シリコーン系界面活性剤を配合することで、皮膚に塗布した際の使用感を向上させることができる。また、シリコーン系界面活性剤を配合することで、他の界面活性剤を配合した場合に比べてフェニル変性シリコーン油の配合量を多くすることもできる(実施例参照)。後述するように、フェニル変性シリコーン油の配合量を多くすることで、炭化水素油や脂肪酸、エステル油などのその他の油の可溶化量を多くすることができる。
【0018】
「シリコーン系界面活性剤」とは、疎水基としてジメチルポリシロキサンおよび親水基としてポリオキシアルキレンモノグリコールエーテル(ポリエーテル)を有する非イオン性界面活性剤をいう。シリコーン系界面活性剤の構造は、特に限定されない。例えば、シリコーン系界面活性剤は、ペンダント型シリコーン系界面活性剤であってもよいし、AB型シリコーン系界面活性剤であってもよい。「ペンダント型シリコーン系界面活性剤」とは、ジメチルポリシロキサン(主鎖)にポリエーテル(側鎖)が結合したグラフト共重合体をいう。また、「AB型シリコーン系界面活性剤」とは、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとが直鎖状に結合したブロック共重合体をいう。シリコーン系界面活性剤の例には、ジメチルポリシロキサンポリエチレングリコール、ジメチルポリシロキサン・(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン)共重合体が含まれる。
【0019】
本発明の液晶に含まれるシリコーン系界面活性剤は、1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0020】
1種類のシリコーン系界面活性剤を配合する場合、シリコーン系界面活性剤は、HLB値が4.0〜10.0の範囲内であり、かつ粘度が400mm2/s以上であることが好ましい。HLB値および粘度がこの範囲内のシリコーン系界面活性剤を使用することで、安定な結晶を容易に形成することができる(実施例参照)。シリコーン系界面活性剤の粘度の上限は、特に限定されないが、例えば20000mm2/sである。
【0021】
2種類以上のシリコーン系界面活性剤を配合する場合、シリコーン系界面活性剤の組み合わせは、特に限定されないが、HLB値が小さいシリコーン系界面活性剤を少なくとも1種類含ませることが好ましい。すべてのシリコーン系界面活性剤のHLB値が大きい場合、安定な液晶を形成しにくくなることがある。ここで「HLB値が大きい」とは、HLB値が13以上であることをいう。また、ペンダント型シリコーン系界面活性剤は、ペンダント型シリコーン系界面活性剤と組み合わされることが好ましい。同様に、AB型シリコーン系界面活性剤は、AB型シリコーン系界面活性剤と組み合わされることが好ましい。構造が異なるシリコーン系界面活性剤を組み合わせた場合、安定な液晶を形成しにくくなることがある。安定な液晶を形成する観点からは、ペンダント型のシリコーン系界面活性剤同士の組み合わせは、AB型シリコーン系界面活性剤同士の組み合わせよりもより好ましい(実施例参照)。
【0022】
シリコーン系界面活性剤の配合濃度は、本発明の液晶の総重量に対し、すべてのシリコーン系界面活性剤の濃度の合計値として5〜95重量%の範囲内が好ましく、25〜95重量%の範囲内がより好ましく、50〜95重量%の範囲内がさらに好ましい。シリコーン系界面活性剤の配合濃度が5重量%未満または95重量%超の場合、二相分離または乳化の発生により液晶を形成するのが困難となる。また、シリコーン系界面活性剤の配合濃度が高い(25重量%以上、好ましくは50重量%以上)ほど、本発明の液晶の油(例えば、炭化水素油や脂肪酸、エステル油など)に対する可溶化能が高まる。
【0023】
本発明の液晶はフェニル変性シリコーン油を含んでいる。フェニル変性シリコーン油を配合することで、本発明の液晶の油に対する可溶化能を高めることができる(実施例参照)。フェニル変性シリコーン油の例には、メチルフェニルポリシロキサンおよびジフェニルポリシロキサンなどが含まれる。本発明の液晶の油に対する可溶化能を向上させる観点からは、フェニル変性シリコーン油は、ビフェニル型のフェニル変性シリコーン油よりもモノフェニル型のフェニル変性シリコーン油が好ましい(実施例参照)。
【0024】
フェニル変性シリコーン油の配合濃度は、本発明の液晶の総重量に対し、0.1〜90重量%の範囲内が好ましい。フェニル変性シリコーン油の配合濃度が0.1重量%未満の場合、本発明の液晶の油に対する可溶化能を十分に向上させることができない。一方、フェニル変性シリコーン油の配合濃度が90重量%超の場合、液晶を形成するのが困難となる。
【0025】
本発明の液晶に含まれる水は、例えば純水や蒸留水などである。水の配合量は、本発明の液晶の総重量に対し、0.1〜90重量%の範囲内が好ましい。水の配合量が0.1重量%未満または90重量%超の場合、液晶を形成するのが困難となる。
【0026】
また、本発明の液晶は、多価アルコールを含んでもよい。多価アルコールを配合することで安定な液晶を容易に形成することができる。多価アルコールの例には、ポリエチレングリコールやポリアルキレングリコールなどのポリアルキレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、ペンタン−1,2−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが含まれる。多価アルコールは、1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。多価アルコールの配合濃度は、本発明の液晶の総重量に対し、1〜55重量%の範囲内が好ましく、3〜52重量%の範囲内がより好ましく、5〜50重量%の範囲内がさらに好ましい。
【0027】
また、本発明の液晶は、補助界面活性剤としてコレステロールなどを含んでもよい。補助界面活性剤を配合することで、安定な液晶を容易に形成することができる。補助界面活性剤の配合濃度は、本発明の液晶の総重量に対し、0.01〜10重量%の範囲内が好ましい。
【0028】
本発明の液晶は、前記必須成分(シリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水)の他に、通常用いられる水性成分および油性成分を本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。付加成分の例には、保湿剤や防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、美容成分、ビタミン類、香料、保香剤、増粘剤、着色顔料、光輝性顔料、有機粉体、金属酸化物、タール色素などが含まれる。
【0029】
本発明の液晶は、その構成成分となるシリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水を、所定の温度において所定の比率で混合することにより調製することができる。シリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水の混合比率は、使用するシリコーン系界面活性剤およびフェニル変性シリコーン油の種類に応じて変化する。当業者は、混合物が液晶相、好ましくは単一の液晶相からなるように混合比率を適宜選択することができる。なお、必要に応じて構成成分を混合する前後に一時的に加温してもよい。
【0030】
こうして調製される本発明の液晶は、難溶性の物質をその液晶構造の中に取り込み、溶媒中に溶解させやすくすることができる。例えば、炭化水素油(例えば、スクアラン)や脂肪酸(例えば、オレイン酸、リポ酸)、エステル油(例えば、イソオクタン酸セチル)などの有機系の油を大量に液晶構造の中に取り込むことができる。したがって、本発明の液晶は皮膚用の化粧料への適合性が極めて高く、また皮膚用の医薬部外品、医薬品にも使用可能な原料ということができる。
【0031】
また、本発明の液晶はメラニン色素の排出効果を有するため(下記実施例参照)、皮膚用の化粧料、医薬部外品又は医薬品に配合することにより、優れた美白効果を有する化粧料、医薬部外品又は医薬品を提供することができる。
【0032】
本発明の美白用化粧料は、種々の形態で提供することができ、これに限定されるものではないが、例えば油/水型、水/油型の乳化化粧料、クリーム、化粧乳液、化粧水、油性化粧料、パック剤、ファンデーション等とすることができる。本発明の美白用化粧料に対する本発明の液晶の配合量は、メラニン色素の排出効果を発揮できる濃度であれば特に制限されず、例えば総重量の0.005〜30重量%の範囲とすることができる。
【0033】
本発明の美白用化粧料は、他の美白成分がさらに配合されていてもよい。そのような美白成分として、これに限定されるものではないが、α‐リポ酸、α‐/β‐アルブチン、ビタミンA、ビタミンA誘導体、ビタミンC、ビタミンC誘導体、トラネキサム酸、ハイドロキノン、リノール酸、ルシノール、コージ酸などを挙げることができる。
【0034】
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【実施例】
【0035】
[実施例1]
本実施例では、2種類のシリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水を用いて本発明の液晶を調製した例を示す。
【0036】
シリコーン系界面活性剤として、SS−2804(ポリエーテル変性シリコーン(ペンダント型)、主成分:PEG−12ジメチコン、HLB:13.0、東レ・ダウコーニング株式会社)と、SS−2910(ポリエーテル変性シリコーン(ペンダント型)、主成分:PEG−10ジメチコン、HLB:4.0、東レ・ダウコーニング株式会社)を準備した。また、フェニル変性シリコーン油として、SH556(フェニルトリメチコン(含有量60重量%以上)、東レ・ダウコーニング株式会社)を準備した。
【0037】
SS−2804(0.8g)、SS−2910(0.8g)および純水(0.4g)を均一になるまで混合して、透明な組成物(80重量%混合界面活性剤水溶液)を調製した。図1Aは、2種類のシリコーン系界面活性剤の混合物を示す写真である。図1Bは、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる組成物を示す写真である。
【0038】
図2Aは、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる組成物を、偏光板を通して観察した様子を示す写真である。図2B,Cは、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる組成物の偏光顕微鏡像である。これらの写真に示されるように、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる組成物を偏光板を通して観察すると、テクスチャーが見られることから、この組成物中に液晶構造が存在することがわかる。
【0039】
図3は、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる液晶のSAXSによる分析結果を示すグラフである。このグラフに示されるように、第1のピークと第2のピークから計算される面間隔比(d1:d2)が1:1/2であることから、この液晶中に存在する液晶構造はラメラ(Lα)液晶であることがわかる。
【0040】
図4は、SS−2804、SS−2910および水からなる組成物の室温での相平衡図である。「Lα」はラメラ液晶、「Lαpresent」はラメラ液晶存在領域、「S」は固相、「W」は水、「2φ」は2相領域、「L1」はミセル水溶液または単分散溶液を示す。この図からも、上記液晶が、ラメラ液晶で構成されていることがわかる。
【0041】
図5は、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる液晶において純水の量を変化させた場合の、水の濃度とラメラ液晶の面間隔との関係を示すグラフである。水の重量分率が大きくなるほどラメラ液晶の面間隔も大きくなっていることから、この液晶はラメラ層の間に少なくとも50重量%の水を包含できることがわかる。
【0042】
次いで、この液晶にSH556(フェニル変性シリコーン油)を加えて、本発明の液晶を調製した。また、比較例として、SH556の代わりにスクアラン(比較例;有機系油)またはSH200C20CS(比較例;非変性シリコーン油;ポリジメチルシロキサン(含有量99重量%以上)、東レ・ダウコーニング株式会社)を加えて、比較例の液晶を調製した。
【0043】
各液晶について、油(SH556、スクアランまたはSH200C20CS)の可溶化濃度を評価した。油の可溶化濃度(可溶化限界濃度)の測定は、目視により白濁または相分離を観察することで行った。
【0044】
図6は、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる液晶に油(SH556、スクアランまたはSH200C20CS)を加えたときの、油の可溶化濃度を示すグラフである。このグラフに示されるように、SH556は液晶に少なくとも25重量%溶解させることができ、SH200C20CSは液晶に3重量%溶解させることができた。一方、スクアランは液晶に溶解させることはできなかった。このグラフから、シリコーン系界面活性剤を含む液晶は、シリコーン油(特にフェニル変性シリコーン油)への親和性が高いことがわかる。
【0045】
次に、本発明の液晶(SH556を3〜20重量%含む)にSH200C20CSまたはスクアランを加えて、油(SH200C20CSまたはスクアラン)の可溶化濃度を調べた。その結果、SH556を20重量%含む本発明の液晶は、SH200C20CSを20重量%まで含有することができた。また、SH556を3.125重量%含む本発明の液晶は、スクアランを3.125重量%まで含有することができた。これらの結果から、フェニル変性シリコーン油を含む本発明の液晶は、フェニル変性シリコーン油を含まない液晶に比べて、非変性シリコーン油や有機系油などの油をより多く溶解させうることがわかる。
【0046】
以上のように、本発明の液晶は、有機系油およびシリコーン油の溶解度が高いため、化粧料等の皮膚用組成物としての適合性が高いことがわかる。
【0047】
[実施例2]
本実施例では、フェニル変性シリコーン油としてモノフェニルシリコーン油またはビフェニルシリコーン油を配合して、本発明の液晶を調製した例を示す。
【0048】
シリコーン系界面活性剤として、前述のSS−2804およびSS−2910を準備した。また、フェニル変性シリコーン油として、前述のSH556(モノフェニルシリコーン油)に加えて、さらにKF50−100CS(ビフェニルシリコーン油;信越化学工業株式会社)を準備した。
【0049】
実施例1と同様の手順で、SS−2804、SS−2910および純水を均一になるまで混合して、80重量%混合界面活性剤水溶液(透明な組成物)を調製した。次いで、混合界面活性剤水溶液に、SH556とスクアランとの混合油またはKF50−100CSとスクアランとの混合油を加えて、本発明の液晶を調製した。各混合油において、フェニル変性シリコーン油(SH556またはKF50−100CS)とスクアランとの重量比は、1:1である。また、比較例として、混合界面活性剤水溶液に、スクアランのみを加えて、比較例の液晶を調製した。
【0050】
各液晶について、油(混合油またはスクアラン)の可溶化濃度を評価した。油の可溶化濃度(可溶化限界濃度)の測定は、目視により白濁または相分離を観察することで行った。
【0051】
図7は、混合界面活性剤水溶液に油(混合油またはスクアラン)を加えたときの、油の可溶化濃度を示すグラフである。図7に示されるように、SH556にはスクアランの可溶化を促進する効果が認められたが、KF50−100CSにはそのような効果は認められなかった。これは、KF50−100CS(粘度:100mm2/s)の分子量がSH556(粘度:22mm2/s)より大きいためであると考えられる。
【0052】
以上の結果から、モノフェニルシリコーン油は、ビフェニルシリコーン油に比べて、スクアランなどの炭化水素油の可溶化能の点でより好ましいことがわかる。
【0053】
[実施例3]
本実施例では、シリコーン系界面活性剤としてペンダント型シリコーン系界面活性剤またはAB型シリコーン系界面剤を配合して、本発明の液晶を調製した例を示す。
【0054】
ペンダント型シリコーン系界面活性剤として、前述のSS−2804およびSS−2910を準備した。また、AB型シリコーン系界面活性剤として、FZ−2222(ポリエーテル変性シリコーン(AB型)、HLB:6.0、東レ・ダウコーニング株式会社)と、FZ−2233(ポリエーテル変性シリコーン(AB型)、HLB:2.5、東レ・ダウコーニング株式会社)を準備した。フェニル変性シリコーン油としては、前述のSH556を準備した。
【0055】
実施例1と同様の手順で、SS−2804、SS−2910および純水を均一になるまで混合して、80重量%混合界面活性剤水溶液を調製した。同様に、FZ−2222、FZ−2233および純水を均一になるまで混合して、80重量%混合界面活性剤水溶液を調製した。各混合界面活性剤水溶液において、2種類の界面活性剤の重量比は、1:1である。次いで、各混合界面活性剤水溶液にSH556を加えて、本発明の液晶を調製した。
【0056】
各液晶について、SH556の可溶化濃度を評価した。SH556の可溶化濃度(可溶化限界濃度)の測定は、目視により白濁または相分離を観察することで行った。
【0057】
図8は、混合界面活性剤水溶液にSH556を加えたときの、SH556の可溶化濃度を示すグラフである。図8に示されるように、ペンダント型シリコーン系界面活性剤を含む液晶(SS−2804/SS−2910水溶液)は、AB型シリコーン系界面活性剤を含む液晶(FZ−2222/FZ−2233水溶液)に比べて、SH556の可溶化能が高かった。
【0058】
以上の結果から、ペンダント型シリコーン系界面活性剤は、AB型シリコーン系界面活性剤に比べて、フェニル変性シリコーン油の可溶化能の点でより好ましいことがわかる。
【0059】
[実施例4]
本実施例では、シリコーン系界面活性剤として2種類のペンダント型シリコーン系界面活性剤を配合して、本発明の液晶を調製した例を示す。
【0060】
以下の表1に示すシリコーン系界面活性剤(いずれもポリエーテル変性シリコーン(ペンダント型)、東レ・ダウコーニング株式会社)を準備した。また、フェニル変性シリコーン油として、前述のSH556(モノフェニルシリコーン油)を準備した。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1と同様の手順で、2種類の界面活性剤(第1の界面活性剤および第2の界面活性剤)および純水を均一になるまで混合して、80重量%混合界面活性剤水溶液を調製した。第1の界面活性剤と第2の界面活性剤の重量比は、1:1である。表2は、2種類の界面活性剤の組み合わせを示す表である。
【表2】
【0063】
次いで、各混合界面活性剤水溶液にSH556とスクアランとの混合油を加えて、本発明の液晶を調製した。混合油におけるSH556とスクアランとの重量比は、1:1である。また、比較例として、混合界面活性剤水溶液に、スクアランのみを加えて、比較例の液晶を調製した。
【0064】
各液晶について、油(SH556とスクアランとの混合油またはスクアラン)の可溶化濃度を評価した。油の可溶化濃度(可溶化限界濃度)の測定は、目視により白濁または相分離を観察することで行った。
【0065】
図9は、混合界面活性剤水溶液に油(SH556とスクアランとの混合油またはスクアラン)を加えたときの、油の可溶化濃度を示すグラフである。図9に示されるように、いずれの混合界面活性剤水溶液を用いて作製された液晶においても、SH556によるスクアランの可溶化を促進する効果が認められた。
【0066】
[実施例5]
本実施例では、本発明の液晶が脂肪酸を可溶化できることを示す。
【0067】
シリコーン系界面活性剤として、前述のSS−2804およびSS−2910を準備した。また、フェニル変性シリコーン油として、前述のSH556(モノフェニルシリコーン油)を準備した。
【0068】
実施例1と同様の手順で、SS−2804、SS−2910および純水を均一になるまで混合して、80重量%混合界面活性剤水溶液(透明な組成物)を調製した。次いで、混合界面活性剤水溶液に、SH556とα−リポ酸との混合油またはSH556とオレイン酸との混合油を加えて、本発明の液晶を調製した。各混合油において、SH556と脂肪酸(α−リポ酸またはオレイン酸)との重量比は、1:1である。また、比較例として、混合界面活性剤水溶液に、α−リポ酸またはオレイン酸のみを加えて、比較例の液晶を調製した。
【0069】
各液晶について、油(SH556とα−リポ酸の混合油、SH556とオレイン酸の混合油、α−リポ酸またはオレイン酸)の可溶化濃度を評価した。油の可溶化濃度(可溶化限界濃度)の測定は、目視により白濁または相分離を観察することで行った。
【0070】
図10は、混合界面活性剤水溶液に油(SH556とα−リポ酸の混合油、SH556とオレイン酸の混合油、α−リポ酸またはオレイン酸)を加えたときの、油の可溶化濃度を示すグラフである。図10に示されるように、SH556を13.1重量%含む本発明の液晶は、α−リポ酸を13.1重量%まで含有することができた。また、SH556を11.7重量%含む本発明の液晶は、オレイン酸を11.7重量%まで含有することができた。
【0071】
以上の結果から、本発明の液晶は、α−リポ酸やオレイン酸などの脂肪酸を可溶化できることがわかる。
【0072】
[実施例6]
本実施例では、本発明の液晶がエステル油および炭化水素油を可溶化できることを示す。
【0073】
シリコーン系界面活性剤として、前述のSS−2804およびSS−2910を準備した。フェニル変性シリコーン油として、前述のSH556(モノフェニルシリコーン油)を準備した。また、エステル油として、イソオクタン酸セチル(CIO;カネダ株式会社)を準備した。炭化水素油として、流動パラフィン(ハイコールK−160;日光ケミカルズ株式会社)を準備した。
【0074】
実施例1と同様の手順で、SS−2804、SS−2910および純水を均一になるまで混合して、80重量%混合界面活性剤水溶液(透明な組成物)を調製した。次いで、混合界面活性剤水溶液に、SH556とイソオクタン酸セチルとの混合油またはSH556と流動パラフィンとの混合油を加えて、本発明の液晶を調製した。各混合油において、SH556とイソオクタン酸セチルまたは流動パラフィンとの重量比は、1:1である。また、比較例として、混合界面活性剤水溶液に、イソオクタン酸セチルまたは流動パラフィンのみを加えて、比較例の液晶を調製した。
【0075】
各液晶について、油(SH556とイソオクタン酸セチルの混合油、SH556と流動パラフィンの混合油、イソオクタン酸セチルまたは流動パラフィン)の可溶化濃度を評価した。油の可溶化濃度(可溶化限界濃度)の測定は、目視により白濁または相分離を観察することで行った。
【0076】
図11は、混合界面活性剤水溶液に油(SH556とイソオクタン酸セチルの混合油、SH556と流動パラフィンの混合油、イソオクタン酸セチルまたは流動パラフィン)を加えたときの、油の可溶化濃度を示すグラフである。図11に示されるように、SH556を12.96重量%含む本発明の液晶は、イソオクタン酸セチルを12.96重量%まで含有することができた。また、SH556を11.54重量%含む本発明の液晶は、流動パラフィンを11.54重量%まで含有することができた。
【0077】
以上の結果から、本発明の液晶は、イソオクタン酸セチルなどのエステル油、流動パラフィンなどの炭化水素油を可溶化できることがわかる。
【0078】
[実施例7]
本実施例では、界面活性剤の中でもシリコーン系界面活性剤がフェニル変性シリコーン油と相性がよいことを示す。
【0079】
界面活性剤として、前述のSS−2804およびSS−2910に加えて、HCO40(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)、AOT(ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム)およびEOD(ポリオキシエチレンオクチルドデキシルエーテル)を準備した。また、フェニル変性シリコーン油として、前述のSH556を準備した。
【0080】
実施例1と同様の手順で、界面活性剤および純水を均一になるまで混合して、80重量%SS−2804/SS−2910水溶液(ラメラ液晶)、70重量%HCO40水溶液(ヘキサゴナル液晶)、70重量%AOT水溶液(ラメラ液晶)および80重量%EOD水溶液(ラメラ液晶)を調製した。SS−2804/SS−2910水溶液における2種類の界面活性剤の重量比は、1:1である。次いで、各界面活性剤水溶液にSH556を加えて、本発明の液晶および比較例の液晶を調製した。
【0081】
各液晶について、SH556の可溶化濃度を評価した。SH556の可溶化濃度(可溶化限界濃度)の測定は、目視により白濁または相分離を観察することで行った。
【0082】
図12は、界面活性剤水溶液にSH556を加えたときの、SH556の可溶化濃度を示すグラフである。図12に示されるように、シリコーン系界面活性剤を含む液晶は、他の炭化水素系界面活性剤を含む液晶よりもSH556をより多く含有することができた。
【0083】
以上の結果から、界面活性剤の中でもシリコーン系界面活性剤がフェニル変性シリコーン油と相性がよいことがわかる。
【0084】
[参考例]
本参考例では、1種または2種以上のシリコーン系界面活性剤を使用して、液晶を形成できることを示す。
【0085】
1.1種類のシリコーン系界面活性剤と水との組み合わせ
前述の表1に示す7種類のシリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーン(ペンダント型)、東レ・ダウコーニング株式会社)、表3に示す1種類のシリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーン(AB型)、東レ・ダウコーニング株式会社)、表4に示す7種類のシリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーン(ペンダント型)、信越化学工業株式会社)を準備した。
【0086】
【表3】
【表4】
【0087】
各シリコーン系界面活性剤に純水を加えて液晶構造が形成されるか否かを観察した。純水の量は、10重量%、30重量%、70重量%または99重量%とした。
【0088】
表5は、1種類の界面活性剤と純水との混合物について、純水の量と液晶構造の有無との関係を示す表である。
【表5】
【0089】
表5から、1種類のシリコーン系界面活性剤と水とを組み合わせる場合、HLBが4.0〜10.0であり、かつ粘度が400mm2/s以上であるシリコーン系界面活性剤を使用することが好ましいことがわかる。
【0090】
2.2種類のシリコーン系界面活性剤と水との組み合わせ
表1の7種類のシリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーン(ペンダント型)、東レ・ダウコーニング株式会社)のうち、2種類の界面活性剤(第1の界面活性剤および第2の界面活性剤)を混合してシリコーン系界面活性剤混合物を調製した。第1の界面活性剤および第2の界面活性剤の量は、いずれも0.8gとした。すなわち、2種類の界面活性剤の混合比率は、1:1(重量比)である。得られたシリコーン系界面活性剤混合物に純水を加えて液晶構造が形成されるか否かを観察した。純水の量は、10重量%または20重量%とした。
【0091】
表6は、2種類の界面活性剤の組み合わせと、液晶構造の有無との関係を示す表である。
【表6】
【0092】
表6から、HLBが大きい界面活性剤同士を組み合わせた場合は、液晶が形成されないことがわかる。一方、HLBが大きい界面活性剤と小さい界面活性剤とを組み合わせた場合、またはHLBが小さい界面活性剤同士を組み合わせた場合は、液晶が形成されることがわかる。
【0093】
以上のように、2種類以上のシリコーン系界面活性剤と水とを組み合わせることで、液晶を形成することができる。
【0094】
[実施例8]
本実施例では、本発明の液晶が皮膚のメラニン色素を排出する効果を有することを示す。
【0095】
本実施例では、シリコーン系界面活性剤としてSS2804とSS2910を、フェニル変性シリコーン油としてSH556をそれぞれ使用し、実施例1と同様の手順に従って調製した液晶を用いた。
【0096】
有色モルモット(東京実験動物、Wiser−Maples、雄、6週齢)の毛刈りした背部にUVAおよびUVBを週5日の頻度で6週間照射し、皮膚のメラニン色素を産生させた。1週間順化した後、モルモット背部に2cm×2cm角のマスを6箇所毛刈りし、上記の液晶、その構成成分であるSS2804、SS2910、SH556及び水、並びにこれら構成成分の混合物(シリコーンComplex;液晶未形成)をそれぞれ指定した箇所に週5日、1日2回の頻度で2週間塗布した。塗布量はそれぞれ30mgとし、各製剤のn数は4とした。
【0097】
メラニン色素排出の評価は、製剤の塗布開始後0、2、4、7日目に色彩色差計(ミノルタ株式会社製、CR−400)を用いて皮膚の明度(L値)を測定し、その経時的変化を追跡することにより行った。なお、L値の増加はメラニン色素量の低下を表している。
【0098】
また、皮膚の赤み(a値)を測定し、炎症惹起の程度を評価した。a値の測定は、L値と同じ時点及び手法で行った。
【0099】
製剤の皮膚付着による影響を解消するため、いずれの測定も測定30分前にモルモット背部を水洗した。
【0100】
測定した各時点におけるL値から初期(0日目)のL値を差し引いてΔL値を求め、Δa値についても同様に求めた。図13にΔL値とΔa値の経時的変化を示す。いずれの構成成分に比較しても液晶群のΔL値増加は高く、この液晶が高いメラニン色素排出効果を有することが分かる。Δa値は、いずれの製剤においても同等であり、本発明の液晶およびこれを構成するシリコーン原料が炎症を惹起しないことが分かる。
【0101】
さらに、液晶又は精製水を塗布した群につき、製剤の塗布開始後11日目に皮膚を採取し、OTCコンパウンドで包埋した皮膚を液体窒素で急速凍結した後、組織切片をヘマトキシリン・エオシン(HE)染色し、表皮肥厚度を評価した。表7は表皮肥厚度の測定値を示し、図14は、皮膚組織断面の光学顕微鏡写真を示している。いずれの結果からも明らかな通り、液晶を塗布した皮膚に表皮肥厚は見られず、精製水を塗布したものと同等であることが分かる。なお、液晶または精製水を塗布した皮膚の表皮肥厚に統計学的有意差はなかった。したがって、本発明の液晶は皮膚のターンオーバーを惹起していないことが分かる。
【表7】
【0102】
以上の結果から、本発明の液晶はメラニン色素排出効果を有し、当該効果の発揮に際して皮膚の炎症及びターンオーバーを引き起こさないことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の液晶は、皮膚に塗布した際に効果的にメラニン色素の排出効果を発揮することができる。また、難溶性の疎水性化合物(例えば、スクワランなどの炭化水素油、オレイン酸やリポ酸などの脂肪酸)を可溶化できる。したがって、本発明の液晶を有効成分とする化粧料は、例えば美白用化粧料として有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン化合物を構成成分とする液晶を有効成分とするメラニン色素排出用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンは、無色、無臭であるだけでなく、生理活性が極めて小さい化合物である。シリコーン化合物を皮膚用組成物に添加することで、滑り性の向上や撥水性および光沢の付与、サッパリ感の向上など、顕著な特性の向上を実現することができる。
【0003】
従来、シリコーン系の皮膚用組成物としては、エマルションが知られていた(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1には、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、カルボキシメチルセルロース塩、水および低粘度シリコーン油を含有する高内水相油中水型(W/O型)乳化化粧料が記載されている。特許文献1の化粧料は、架橋型ポリエーテル変性シリコーンおよび低粘度シリコーン油からなるペースト状ポリエーテル変性シリコーン組成物を油相とし、カルボキシメチルセルロース塩の水溶液を水相とすることで、使用時の水のあふれ出し感と輸送時の安定性とを両立している。
【0005】
特許文献2には、4−(1,1−ジメチルエチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタン、ベンゾトリアゾール誘導体、シリコーン油、シリコーン系界面活性剤および水を含有する日焼け止め油中水型(W/O型)乳化化粧料が記載されている。特許文献2の日焼け止め化粧料は、衣服に対する染着性を低減させつつ、UV−A領域の紫外線に対する優れた吸収特性を実現している。
【0006】
また、近年、シリコーン系の液晶組成物も開示されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3には、ポリエーテル基を有する三Si−H含有ポリシロキサン、α,ω−エン−インおよび水からシリコーン系液晶を製造する方法が記載されている。また、この方法により製造されたシリコーン系液晶が、薬理学的用途および化粧品用途における活性成分のデリバリー媒体としての使用を含む、様々な用途において使用可能であることも記載されている。
【0007】
なお、現在までに、シリコーン化合物を含む液晶が皮膚のメラニン色素の排出効果を有することは報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−307371号公報
【特許文献2】特開2007−182389号公報
【特許文献3】特表2009−504876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、皮膚のメラニン色素の排出効果を有する新規な組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、シリコーン化合物を利用した新規な組成物を探索する過程で、特定の1種のシリコーン系界面活性剤を使用することによって、または特定のシリコーン系界面活性剤を2種以上組み合わせて使用することによって、シリコーン系界面活性剤と水とから液晶を製造できることを見出した。この液晶は、その構成成分としてフェニル変性シリコーン油をさらに配合することにより、液晶構造内に難溶性の疎水性化合物(例えば、化粧料などに配合される炭化水素油や脂肪酸、エステル油など)を可溶化できるものであり、化粧料等の皮膚用組成物として極めて適合性が高いものであった。
【0011】
本発明者らは今回、上記液晶が、皮膚への塗布時にメラニン色素を排出する効果を発揮することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の特徴を有する。
(1)1種または2種以上のシリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水を含む液晶を有効成分とするメラニン色素排出用組成物。
(2)2種以上のシリコーン系界面活性剤を含み、該2種以上のシリコーン系界面活性剤は2種以上のペンダント型のシリコーン系界面活性剤の組み合わせである、前記(1)に記載の組成物。
(3)1種のシリコーン系界面活性剤を含み、該1種のシリコーン系界面活性剤は、HLB値が4.0〜10.0の範囲内であり、かつ粘度が400mm2/s以上である、前記(1)記載の組成物。
(4)前記フェニル変性シリコーン油は、モノフェニルシリコーン油である、前記(1)に記載の組成物。
(5)炭化水素油、脂肪酸、エステル油またはこれらの組み合わせをさらに含む、前記(1)に記載の組成物。
(6)前記炭化水素油は、スクアランである、前記(5)に記載の組成物。
(7)前記エステル油は、イソオクタン酸セチルである、前記(5)に記載の組成物。
(8)美白用の化粧料、医薬部外品又は医薬品である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の組成物。
(9)美白用化粧料である前記(8)に記載の組成物。
【0013】
本発明によれば、皮膚への塗布時に効果的にメラニン色素を排出することができる新規な組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1Aは、2種類のシリコーン系界面活性剤の混合物を示す写真である。図1Bは、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる組成物を示す写真である。
【図2】図2Aは、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる組成物を偏光板を通して観察した様子を示す写真である。図2Bおよび図2Cは、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる組成物の偏光顕微鏡像である。
【図3】2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる液晶のSAXSによる分析結果を示すグラフである。
【図4】SS−2804、SS−2910および水からなる組成物の室温での相平衡図である。
【図5】2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる液晶において純水の量を変化させた場合の、水の濃度とラメラ液晶の面間隔との関係を示すグラフである。
【図6】2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる液晶に油を加えた場合の、油の可溶化濃度を示すグラフである。
【図7】混合界面活性剤水溶液にモノフェニルシリコーン油またはビフェニルシリコーン油を含む油を加えた場合の、油の可溶化濃度を示すグラフである。
【図8】ペンダント型シリコーン系界面活性剤またはAB型シリコーン系界面剤を含む混合界面活性剤水溶液にSH556を加えた場合の、SH556の可溶化濃度を示すグラフである。
【図9】2種類のペンダント型シリコーン系界面活性剤を含む混合界面活性剤水溶液に油を加えた場合の、油の可溶化濃度を示すグラフである。
【図10】混合界面活性剤水溶液に脂肪酸を含む油を加えた場合の、油の可溶化濃度を示すグラフである。
【図11】混合界面活性剤水溶液にエステル油または炭化水素油を含む油を加えた場合の、油の可溶化濃度を示すグラフである。
【図12】シリコーン系界面活性剤または炭化水素系界面活性剤を含む界面活性剤水溶液にSH556を加えた場合の、SH556の可溶化濃度を示すグラフである。
【図13】メラニン色素誘発モルモットにおける、製剤塗布によるΔL値とΔa値の経時変化を示すグラフである。図中の略号は次の通りである:SiNC(La)、本発明の液晶;DW、精製水。
【図14】製剤塗布後11日目のメラニン色素誘発モルモットの皮膚組織断面の光学顕微鏡観察を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のメラニン色素排出用組成物(以下、「本発明の組成物」とも称する)について説明する。
【0016】
本発明の組成物は、1種または2種以上のシリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水を含む液晶を有効成分とすることを特徴とする。有効成分である液晶の種類は、規則構造を有するものであれば特に限定されない。そのような液晶の例には、ラメラ液晶、キュービック液晶、ヘキサゴナル液晶および逆ヘキサゴナル液晶が含まれる。キュービック液晶の例には、ディスコンティニュアス・キュービック液晶、逆型ディスコンティニュアス・キュービック液晶、バイコンティニュアス・キュービック液晶、逆型バイコンティニュアス・キュービック液晶が含まれる。本発明の組成物が液晶を含んでいることは、偏光顕微鏡で確認することができる。また、小角X線散乱(SAXS)により液晶構造を確認することができる。
【0017】
本発明の組成物の有効成分である液晶(以下、「本発明の液晶」とも称する)は、シリコーン系界面活性剤を含んでいる。シリコーン系界面活性剤を配合することで、皮膚に塗布した際の使用感を向上させることができる。また、シリコーン系界面活性剤を配合することで、他の界面活性剤を配合した場合に比べてフェニル変性シリコーン油の配合量を多くすることもできる(実施例参照)。後述するように、フェニル変性シリコーン油の配合量を多くすることで、炭化水素油や脂肪酸、エステル油などのその他の油の可溶化量を多くすることができる。
【0018】
「シリコーン系界面活性剤」とは、疎水基としてジメチルポリシロキサンおよび親水基としてポリオキシアルキレンモノグリコールエーテル(ポリエーテル)を有する非イオン性界面活性剤をいう。シリコーン系界面活性剤の構造は、特に限定されない。例えば、シリコーン系界面活性剤は、ペンダント型シリコーン系界面活性剤であってもよいし、AB型シリコーン系界面活性剤であってもよい。「ペンダント型シリコーン系界面活性剤」とは、ジメチルポリシロキサン(主鎖)にポリエーテル(側鎖)が結合したグラフト共重合体をいう。また、「AB型シリコーン系界面活性剤」とは、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとが直鎖状に結合したブロック共重合体をいう。シリコーン系界面活性剤の例には、ジメチルポリシロキサンポリエチレングリコール、ジメチルポリシロキサン・(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン)共重合体が含まれる。
【0019】
本発明の液晶に含まれるシリコーン系界面活性剤は、1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0020】
1種類のシリコーン系界面活性剤を配合する場合、シリコーン系界面活性剤は、HLB値が4.0〜10.0の範囲内であり、かつ粘度が400mm2/s以上であることが好ましい。HLB値および粘度がこの範囲内のシリコーン系界面活性剤を使用することで、安定な結晶を容易に形成することができる(実施例参照)。シリコーン系界面活性剤の粘度の上限は、特に限定されないが、例えば20000mm2/sである。
【0021】
2種類以上のシリコーン系界面活性剤を配合する場合、シリコーン系界面活性剤の組み合わせは、特に限定されないが、HLB値が小さいシリコーン系界面活性剤を少なくとも1種類含ませることが好ましい。すべてのシリコーン系界面活性剤のHLB値が大きい場合、安定な液晶を形成しにくくなることがある。ここで「HLB値が大きい」とは、HLB値が13以上であることをいう。また、ペンダント型シリコーン系界面活性剤は、ペンダント型シリコーン系界面活性剤と組み合わされることが好ましい。同様に、AB型シリコーン系界面活性剤は、AB型シリコーン系界面活性剤と組み合わされることが好ましい。構造が異なるシリコーン系界面活性剤を組み合わせた場合、安定な液晶を形成しにくくなることがある。安定な液晶を形成する観点からは、ペンダント型のシリコーン系界面活性剤同士の組み合わせは、AB型シリコーン系界面活性剤同士の組み合わせよりもより好ましい(実施例参照)。
【0022】
シリコーン系界面活性剤の配合濃度は、本発明の液晶の総重量に対し、すべてのシリコーン系界面活性剤の濃度の合計値として5〜95重量%の範囲内が好ましく、25〜95重量%の範囲内がより好ましく、50〜95重量%の範囲内がさらに好ましい。シリコーン系界面活性剤の配合濃度が5重量%未満または95重量%超の場合、二相分離または乳化の発生により液晶を形成するのが困難となる。また、シリコーン系界面活性剤の配合濃度が高い(25重量%以上、好ましくは50重量%以上)ほど、本発明の液晶の油(例えば、炭化水素油や脂肪酸、エステル油など)に対する可溶化能が高まる。
【0023】
本発明の液晶はフェニル変性シリコーン油を含んでいる。フェニル変性シリコーン油を配合することで、本発明の液晶の油に対する可溶化能を高めることができる(実施例参照)。フェニル変性シリコーン油の例には、メチルフェニルポリシロキサンおよびジフェニルポリシロキサンなどが含まれる。本発明の液晶の油に対する可溶化能を向上させる観点からは、フェニル変性シリコーン油は、ビフェニル型のフェニル変性シリコーン油よりもモノフェニル型のフェニル変性シリコーン油が好ましい(実施例参照)。
【0024】
フェニル変性シリコーン油の配合濃度は、本発明の液晶の総重量に対し、0.1〜90重量%の範囲内が好ましい。フェニル変性シリコーン油の配合濃度が0.1重量%未満の場合、本発明の液晶の油に対する可溶化能を十分に向上させることができない。一方、フェニル変性シリコーン油の配合濃度が90重量%超の場合、液晶を形成するのが困難となる。
【0025】
本発明の液晶に含まれる水は、例えば純水や蒸留水などである。水の配合量は、本発明の液晶の総重量に対し、0.1〜90重量%の範囲内が好ましい。水の配合量が0.1重量%未満または90重量%超の場合、液晶を形成するのが困難となる。
【0026】
また、本発明の液晶は、多価アルコールを含んでもよい。多価アルコールを配合することで安定な液晶を容易に形成することができる。多価アルコールの例には、ポリエチレングリコールやポリアルキレングリコールなどのポリアルキレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、ペンタン−1,2−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが含まれる。多価アルコールは、1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。多価アルコールの配合濃度は、本発明の液晶の総重量に対し、1〜55重量%の範囲内が好ましく、3〜52重量%の範囲内がより好ましく、5〜50重量%の範囲内がさらに好ましい。
【0027】
また、本発明の液晶は、補助界面活性剤としてコレステロールなどを含んでもよい。補助界面活性剤を配合することで、安定な液晶を容易に形成することができる。補助界面活性剤の配合濃度は、本発明の液晶の総重量に対し、0.01〜10重量%の範囲内が好ましい。
【0028】
本発明の液晶は、前記必須成分(シリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水)の他に、通常用いられる水性成分および油性成分を本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。付加成分の例には、保湿剤や防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、美容成分、ビタミン類、香料、保香剤、増粘剤、着色顔料、光輝性顔料、有機粉体、金属酸化物、タール色素などが含まれる。
【0029】
本発明の液晶は、その構成成分となるシリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水を、所定の温度において所定の比率で混合することにより調製することができる。シリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水の混合比率は、使用するシリコーン系界面活性剤およびフェニル変性シリコーン油の種類に応じて変化する。当業者は、混合物が液晶相、好ましくは単一の液晶相からなるように混合比率を適宜選択することができる。なお、必要に応じて構成成分を混合する前後に一時的に加温してもよい。
【0030】
こうして調製される本発明の液晶は、難溶性の物質をその液晶構造の中に取り込み、溶媒中に溶解させやすくすることができる。例えば、炭化水素油(例えば、スクアラン)や脂肪酸(例えば、オレイン酸、リポ酸)、エステル油(例えば、イソオクタン酸セチル)などの有機系の油を大量に液晶構造の中に取り込むことができる。したがって、本発明の液晶は皮膚用の化粧料への適合性が極めて高く、また皮膚用の医薬部外品、医薬品にも使用可能な原料ということができる。
【0031】
また、本発明の液晶はメラニン色素の排出効果を有するため(下記実施例参照)、皮膚用の化粧料、医薬部外品又は医薬品に配合することにより、優れた美白効果を有する化粧料、医薬部外品又は医薬品を提供することができる。
【0032】
本発明の美白用化粧料は、種々の形態で提供することができ、これに限定されるものではないが、例えば油/水型、水/油型の乳化化粧料、クリーム、化粧乳液、化粧水、油性化粧料、パック剤、ファンデーション等とすることができる。本発明の美白用化粧料に対する本発明の液晶の配合量は、メラニン色素の排出効果を発揮できる濃度であれば特に制限されず、例えば総重量の0.005〜30重量%の範囲とすることができる。
【0033】
本発明の美白用化粧料は、他の美白成分がさらに配合されていてもよい。そのような美白成分として、これに限定されるものではないが、α‐リポ酸、α‐/β‐アルブチン、ビタミンA、ビタミンA誘導体、ビタミンC、ビタミンC誘導体、トラネキサム酸、ハイドロキノン、リノール酸、ルシノール、コージ酸などを挙げることができる。
【0034】
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【実施例】
【0035】
[実施例1]
本実施例では、2種類のシリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水を用いて本発明の液晶を調製した例を示す。
【0036】
シリコーン系界面活性剤として、SS−2804(ポリエーテル変性シリコーン(ペンダント型)、主成分:PEG−12ジメチコン、HLB:13.0、東レ・ダウコーニング株式会社)と、SS−2910(ポリエーテル変性シリコーン(ペンダント型)、主成分:PEG−10ジメチコン、HLB:4.0、東レ・ダウコーニング株式会社)を準備した。また、フェニル変性シリコーン油として、SH556(フェニルトリメチコン(含有量60重量%以上)、東レ・ダウコーニング株式会社)を準備した。
【0037】
SS−2804(0.8g)、SS−2910(0.8g)および純水(0.4g)を均一になるまで混合して、透明な組成物(80重量%混合界面活性剤水溶液)を調製した。図1Aは、2種類のシリコーン系界面活性剤の混合物を示す写真である。図1Bは、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる組成物を示す写真である。
【0038】
図2Aは、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる組成物を、偏光板を通して観察した様子を示す写真である。図2B,Cは、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる組成物の偏光顕微鏡像である。これらの写真に示されるように、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる組成物を偏光板を通して観察すると、テクスチャーが見られることから、この組成物中に液晶構造が存在することがわかる。
【0039】
図3は、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる液晶のSAXSによる分析結果を示すグラフである。このグラフに示されるように、第1のピークと第2のピークから計算される面間隔比(d1:d2)が1:1/2であることから、この液晶中に存在する液晶構造はラメラ(Lα)液晶であることがわかる。
【0040】
図4は、SS−2804、SS−2910および水からなる組成物の室温での相平衡図である。「Lα」はラメラ液晶、「Lαpresent」はラメラ液晶存在領域、「S」は固相、「W」は水、「2φ」は2相領域、「L1」はミセル水溶液または単分散溶液を示す。この図からも、上記液晶が、ラメラ液晶で構成されていることがわかる。
【0041】
図5は、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる液晶において純水の量を変化させた場合の、水の濃度とラメラ液晶の面間隔との関係を示すグラフである。水の重量分率が大きくなるほどラメラ液晶の面間隔も大きくなっていることから、この液晶はラメラ層の間に少なくとも50重量%の水を包含できることがわかる。
【0042】
次いで、この液晶にSH556(フェニル変性シリコーン油)を加えて、本発明の液晶を調製した。また、比較例として、SH556の代わりにスクアラン(比較例;有機系油)またはSH200C20CS(比較例;非変性シリコーン油;ポリジメチルシロキサン(含有量99重量%以上)、東レ・ダウコーニング株式会社)を加えて、比較例の液晶を調製した。
【0043】
各液晶について、油(SH556、スクアランまたはSH200C20CS)の可溶化濃度を評価した。油の可溶化濃度(可溶化限界濃度)の測定は、目視により白濁または相分離を観察することで行った。
【0044】
図6は、2種類のシリコーン系界面活性剤および純水からなる液晶に油(SH556、スクアランまたはSH200C20CS)を加えたときの、油の可溶化濃度を示すグラフである。このグラフに示されるように、SH556は液晶に少なくとも25重量%溶解させることができ、SH200C20CSは液晶に3重量%溶解させることができた。一方、スクアランは液晶に溶解させることはできなかった。このグラフから、シリコーン系界面活性剤を含む液晶は、シリコーン油(特にフェニル変性シリコーン油)への親和性が高いことがわかる。
【0045】
次に、本発明の液晶(SH556を3〜20重量%含む)にSH200C20CSまたはスクアランを加えて、油(SH200C20CSまたはスクアラン)の可溶化濃度を調べた。その結果、SH556を20重量%含む本発明の液晶は、SH200C20CSを20重量%まで含有することができた。また、SH556を3.125重量%含む本発明の液晶は、スクアランを3.125重量%まで含有することができた。これらの結果から、フェニル変性シリコーン油を含む本発明の液晶は、フェニル変性シリコーン油を含まない液晶に比べて、非変性シリコーン油や有機系油などの油をより多く溶解させうることがわかる。
【0046】
以上のように、本発明の液晶は、有機系油およびシリコーン油の溶解度が高いため、化粧料等の皮膚用組成物としての適合性が高いことがわかる。
【0047】
[実施例2]
本実施例では、フェニル変性シリコーン油としてモノフェニルシリコーン油またはビフェニルシリコーン油を配合して、本発明の液晶を調製した例を示す。
【0048】
シリコーン系界面活性剤として、前述のSS−2804およびSS−2910を準備した。また、フェニル変性シリコーン油として、前述のSH556(モノフェニルシリコーン油)に加えて、さらにKF50−100CS(ビフェニルシリコーン油;信越化学工業株式会社)を準備した。
【0049】
実施例1と同様の手順で、SS−2804、SS−2910および純水を均一になるまで混合して、80重量%混合界面活性剤水溶液(透明な組成物)を調製した。次いで、混合界面活性剤水溶液に、SH556とスクアランとの混合油またはKF50−100CSとスクアランとの混合油を加えて、本発明の液晶を調製した。各混合油において、フェニル変性シリコーン油(SH556またはKF50−100CS)とスクアランとの重量比は、1:1である。また、比較例として、混合界面活性剤水溶液に、スクアランのみを加えて、比較例の液晶を調製した。
【0050】
各液晶について、油(混合油またはスクアラン)の可溶化濃度を評価した。油の可溶化濃度(可溶化限界濃度)の測定は、目視により白濁または相分離を観察することで行った。
【0051】
図7は、混合界面活性剤水溶液に油(混合油またはスクアラン)を加えたときの、油の可溶化濃度を示すグラフである。図7に示されるように、SH556にはスクアランの可溶化を促進する効果が認められたが、KF50−100CSにはそのような効果は認められなかった。これは、KF50−100CS(粘度:100mm2/s)の分子量がSH556(粘度:22mm2/s)より大きいためであると考えられる。
【0052】
以上の結果から、モノフェニルシリコーン油は、ビフェニルシリコーン油に比べて、スクアランなどの炭化水素油の可溶化能の点でより好ましいことがわかる。
【0053】
[実施例3]
本実施例では、シリコーン系界面活性剤としてペンダント型シリコーン系界面活性剤またはAB型シリコーン系界面剤を配合して、本発明の液晶を調製した例を示す。
【0054】
ペンダント型シリコーン系界面活性剤として、前述のSS−2804およびSS−2910を準備した。また、AB型シリコーン系界面活性剤として、FZ−2222(ポリエーテル変性シリコーン(AB型)、HLB:6.0、東レ・ダウコーニング株式会社)と、FZ−2233(ポリエーテル変性シリコーン(AB型)、HLB:2.5、東レ・ダウコーニング株式会社)を準備した。フェニル変性シリコーン油としては、前述のSH556を準備した。
【0055】
実施例1と同様の手順で、SS−2804、SS−2910および純水を均一になるまで混合して、80重量%混合界面活性剤水溶液を調製した。同様に、FZ−2222、FZ−2233および純水を均一になるまで混合して、80重量%混合界面活性剤水溶液を調製した。各混合界面活性剤水溶液において、2種類の界面活性剤の重量比は、1:1である。次いで、各混合界面活性剤水溶液にSH556を加えて、本発明の液晶を調製した。
【0056】
各液晶について、SH556の可溶化濃度を評価した。SH556の可溶化濃度(可溶化限界濃度)の測定は、目視により白濁または相分離を観察することで行った。
【0057】
図8は、混合界面活性剤水溶液にSH556を加えたときの、SH556の可溶化濃度を示すグラフである。図8に示されるように、ペンダント型シリコーン系界面活性剤を含む液晶(SS−2804/SS−2910水溶液)は、AB型シリコーン系界面活性剤を含む液晶(FZ−2222/FZ−2233水溶液)に比べて、SH556の可溶化能が高かった。
【0058】
以上の結果から、ペンダント型シリコーン系界面活性剤は、AB型シリコーン系界面活性剤に比べて、フェニル変性シリコーン油の可溶化能の点でより好ましいことがわかる。
【0059】
[実施例4]
本実施例では、シリコーン系界面活性剤として2種類のペンダント型シリコーン系界面活性剤を配合して、本発明の液晶を調製した例を示す。
【0060】
以下の表1に示すシリコーン系界面活性剤(いずれもポリエーテル変性シリコーン(ペンダント型)、東レ・ダウコーニング株式会社)を準備した。また、フェニル変性シリコーン油として、前述のSH556(モノフェニルシリコーン油)を準備した。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1と同様の手順で、2種類の界面活性剤(第1の界面活性剤および第2の界面活性剤)および純水を均一になるまで混合して、80重量%混合界面活性剤水溶液を調製した。第1の界面活性剤と第2の界面活性剤の重量比は、1:1である。表2は、2種類の界面活性剤の組み合わせを示す表である。
【表2】
【0063】
次いで、各混合界面活性剤水溶液にSH556とスクアランとの混合油を加えて、本発明の液晶を調製した。混合油におけるSH556とスクアランとの重量比は、1:1である。また、比較例として、混合界面活性剤水溶液に、スクアランのみを加えて、比較例の液晶を調製した。
【0064】
各液晶について、油(SH556とスクアランとの混合油またはスクアラン)の可溶化濃度を評価した。油の可溶化濃度(可溶化限界濃度)の測定は、目視により白濁または相分離を観察することで行った。
【0065】
図9は、混合界面活性剤水溶液に油(SH556とスクアランとの混合油またはスクアラン)を加えたときの、油の可溶化濃度を示すグラフである。図9に示されるように、いずれの混合界面活性剤水溶液を用いて作製された液晶においても、SH556によるスクアランの可溶化を促進する効果が認められた。
【0066】
[実施例5]
本実施例では、本発明の液晶が脂肪酸を可溶化できることを示す。
【0067】
シリコーン系界面活性剤として、前述のSS−2804およびSS−2910を準備した。また、フェニル変性シリコーン油として、前述のSH556(モノフェニルシリコーン油)を準備した。
【0068】
実施例1と同様の手順で、SS−2804、SS−2910および純水を均一になるまで混合して、80重量%混合界面活性剤水溶液(透明な組成物)を調製した。次いで、混合界面活性剤水溶液に、SH556とα−リポ酸との混合油またはSH556とオレイン酸との混合油を加えて、本発明の液晶を調製した。各混合油において、SH556と脂肪酸(α−リポ酸またはオレイン酸)との重量比は、1:1である。また、比較例として、混合界面活性剤水溶液に、α−リポ酸またはオレイン酸のみを加えて、比較例の液晶を調製した。
【0069】
各液晶について、油(SH556とα−リポ酸の混合油、SH556とオレイン酸の混合油、α−リポ酸またはオレイン酸)の可溶化濃度を評価した。油の可溶化濃度(可溶化限界濃度)の測定は、目視により白濁または相分離を観察することで行った。
【0070】
図10は、混合界面活性剤水溶液に油(SH556とα−リポ酸の混合油、SH556とオレイン酸の混合油、α−リポ酸またはオレイン酸)を加えたときの、油の可溶化濃度を示すグラフである。図10に示されるように、SH556を13.1重量%含む本発明の液晶は、α−リポ酸を13.1重量%まで含有することができた。また、SH556を11.7重量%含む本発明の液晶は、オレイン酸を11.7重量%まで含有することができた。
【0071】
以上の結果から、本発明の液晶は、α−リポ酸やオレイン酸などの脂肪酸を可溶化できることがわかる。
【0072】
[実施例6]
本実施例では、本発明の液晶がエステル油および炭化水素油を可溶化できることを示す。
【0073】
シリコーン系界面活性剤として、前述のSS−2804およびSS−2910を準備した。フェニル変性シリコーン油として、前述のSH556(モノフェニルシリコーン油)を準備した。また、エステル油として、イソオクタン酸セチル(CIO;カネダ株式会社)を準備した。炭化水素油として、流動パラフィン(ハイコールK−160;日光ケミカルズ株式会社)を準備した。
【0074】
実施例1と同様の手順で、SS−2804、SS−2910および純水を均一になるまで混合して、80重量%混合界面活性剤水溶液(透明な組成物)を調製した。次いで、混合界面活性剤水溶液に、SH556とイソオクタン酸セチルとの混合油またはSH556と流動パラフィンとの混合油を加えて、本発明の液晶を調製した。各混合油において、SH556とイソオクタン酸セチルまたは流動パラフィンとの重量比は、1:1である。また、比較例として、混合界面活性剤水溶液に、イソオクタン酸セチルまたは流動パラフィンのみを加えて、比較例の液晶を調製した。
【0075】
各液晶について、油(SH556とイソオクタン酸セチルの混合油、SH556と流動パラフィンの混合油、イソオクタン酸セチルまたは流動パラフィン)の可溶化濃度を評価した。油の可溶化濃度(可溶化限界濃度)の測定は、目視により白濁または相分離を観察することで行った。
【0076】
図11は、混合界面活性剤水溶液に油(SH556とイソオクタン酸セチルの混合油、SH556と流動パラフィンの混合油、イソオクタン酸セチルまたは流動パラフィン)を加えたときの、油の可溶化濃度を示すグラフである。図11に示されるように、SH556を12.96重量%含む本発明の液晶は、イソオクタン酸セチルを12.96重量%まで含有することができた。また、SH556を11.54重量%含む本発明の液晶は、流動パラフィンを11.54重量%まで含有することができた。
【0077】
以上の結果から、本発明の液晶は、イソオクタン酸セチルなどのエステル油、流動パラフィンなどの炭化水素油を可溶化できることがわかる。
【0078】
[実施例7]
本実施例では、界面活性剤の中でもシリコーン系界面活性剤がフェニル変性シリコーン油と相性がよいことを示す。
【0079】
界面活性剤として、前述のSS−2804およびSS−2910に加えて、HCO40(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)、AOT(ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム)およびEOD(ポリオキシエチレンオクチルドデキシルエーテル)を準備した。また、フェニル変性シリコーン油として、前述のSH556を準備した。
【0080】
実施例1と同様の手順で、界面活性剤および純水を均一になるまで混合して、80重量%SS−2804/SS−2910水溶液(ラメラ液晶)、70重量%HCO40水溶液(ヘキサゴナル液晶)、70重量%AOT水溶液(ラメラ液晶)および80重量%EOD水溶液(ラメラ液晶)を調製した。SS−2804/SS−2910水溶液における2種類の界面活性剤の重量比は、1:1である。次いで、各界面活性剤水溶液にSH556を加えて、本発明の液晶および比較例の液晶を調製した。
【0081】
各液晶について、SH556の可溶化濃度を評価した。SH556の可溶化濃度(可溶化限界濃度)の測定は、目視により白濁または相分離を観察することで行った。
【0082】
図12は、界面活性剤水溶液にSH556を加えたときの、SH556の可溶化濃度を示すグラフである。図12に示されるように、シリコーン系界面活性剤を含む液晶は、他の炭化水素系界面活性剤を含む液晶よりもSH556をより多く含有することができた。
【0083】
以上の結果から、界面活性剤の中でもシリコーン系界面活性剤がフェニル変性シリコーン油と相性がよいことがわかる。
【0084】
[参考例]
本参考例では、1種または2種以上のシリコーン系界面活性剤を使用して、液晶を形成できることを示す。
【0085】
1.1種類のシリコーン系界面活性剤と水との組み合わせ
前述の表1に示す7種類のシリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーン(ペンダント型)、東レ・ダウコーニング株式会社)、表3に示す1種類のシリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーン(AB型)、東レ・ダウコーニング株式会社)、表4に示す7種類のシリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーン(ペンダント型)、信越化学工業株式会社)を準備した。
【0086】
【表3】
【表4】
【0087】
各シリコーン系界面活性剤に純水を加えて液晶構造が形成されるか否かを観察した。純水の量は、10重量%、30重量%、70重量%または99重量%とした。
【0088】
表5は、1種類の界面活性剤と純水との混合物について、純水の量と液晶構造の有無との関係を示す表である。
【表5】
【0089】
表5から、1種類のシリコーン系界面活性剤と水とを組み合わせる場合、HLBが4.0〜10.0であり、かつ粘度が400mm2/s以上であるシリコーン系界面活性剤を使用することが好ましいことがわかる。
【0090】
2.2種類のシリコーン系界面活性剤と水との組み合わせ
表1の7種類のシリコーン系界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーン(ペンダント型)、東レ・ダウコーニング株式会社)のうち、2種類の界面活性剤(第1の界面活性剤および第2の界面活性剤)を混合してシリコーン系界面活性剤混合物を調製した。第1の界面活性剤および第2の界面活性剤の量は、いずれも0.8gとした。すなわち、2種類の界面活性剤の混合比率は、1:1(重量比)である。得られたシリコーン系界面活性剤混合物に純水を加えて液晶構造が形成されるか否かを観察した。純水の量は、10重量%または20重量%とした。
【0091】
表6は、2種類の界面活性剤の組み合わせと、液晶構造の有無との関係を示す表である。
【表6】
【0092】
表6から、HLBが大きい界面活性剤同士を組み合わせた場合は、液晶が形成されないことがわかる。一方、HLBが大きい界面活性剤と小さい界面活性剤とを組み合わせた場合、またはHLBが小さい界面活性剤同士を組み合わせた場合は、液晶が形成されることがわかる。
【0093】
以上のように、2種類以上のシリコーン系界面活性剤と水とを組み合わせることで、液晶を形成することができる。
【0094】
[実施例8]
本実施例では、本発明の液晶が皮膚のメラニン色素を排出する効果を有することを示す。
【0095】
本実施例では、シリコーン系界面活性剤としてSS2804とSS2910を、フェニル変性シリコーン油としてSH556をそれぞれ使用し、実施例1と同様の手順に従って調製した液晶を用いた。
【0096】
有色モルモット(東京実験動物、Wiser−Maples、雄、6週齢)の毛刈りした背部にUVAおよびUVBを週5日の頻度で6週間照射し、皮膚のメラニン色素を産生させた。1週間順化した後、モルモット背部に2cm×2cm角のマスを6箇所毛刈りし、上記の液晶、その構成成分であるSS2804、SS2910、SH556及び水、並びにこれら構成成分の混合物(シリコーンComplex;液晶未形成)をそれぞれ指定した箇所に週5日、1日2回の頻度で2週間塗布した。塗布量はそれぞれ30mgとし、各製剤のn数は4とした。
【0097】
メラニン色素排出の評価は、製剤の塗布開始後0、2、4、7日目に色彩色差計(ミノルタ株式会社製、CR−400)を用いて皮膚の明度(L値)を測定し、その経時的変化を追跡することにより行った。なお、L値の増加はメラニン色素量の低下を表している。
【0098】
また、皮膚の赤み(a値)を測定し、炎症惹起の程度を評価した。a値の測定は、L値と同じ時点及び手法で行った。
【0099】
製剤の皮膚付着による影響を解消するため、いずれの測定も測定30分前にモルモット背部を水洗した。
【0100】
測定した各時点におけるL値から初期(0日目)のL値を差し引いてΔL値を求め、Δa値についても同様に求めた。図13にΔL値とΔa値の経時的変化を示す。いずれの構成成分に比較しても液晶群のΔL値増加は高く、この液晶が高いメラニン色素排出効果を有することが分かる。Δa値は、いずれの製剤においても同等であり、本発明の液晶およびこれを構成するシリコーン原料が炎症を惹起しないことが分かる。
【0101】
さらに、液晶又は精製水を塗布した群につき、製剤の塗布開始後11日目に皮膚を採取し、OTCコンパウンドで包埋した皮膚を液体窒素で急速凍結した後、組織切片をヘマトキシリン・エオシン(HE)染色し、表皮肥厚度を評価した。表7は表皮肥厚度の測定値を示し、図14は、皮膚組織断面の光学顕微鏡写真を示している。いずれの結果からも明らかな通り、液晶を塗布した皮膚に表皮肥厚は見られず、精製水を塗布したものと同等であることが分かる。なお、液晶または精製水を塗布した皮膚の表皮肥厚に統計学的有意差はなかった。したがって、本発明の液晶は皮膚のターンオーバーを惹起していないことが分かる。
【表7】
【0102】
以上の結果から、本発明の液晶はメラニン色素排出効果を有し、当該効果の発揮に際して皮膚の炎症及びターンオーバーを引き起こさないことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の液晶は、皮膚に塗布した際に効果的にメラニン色素の排出効果を発揮することができる。また、難溶性の疎水性化合物(例えば、スクワランなどの炭化水素油、オレイン酸やリポ酸などの脂肪酸)を可溶化できる。したがって、本発明の液晶を有効成分とする化粧料は、例えば美白用化粧料として有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または2種以上のシリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水を含む液晶を有効成分とするメラニン色素排出用組成物。
【請求項2】
2種以上のシリコーン系界面活性剤を含み、該2種以上のシリコーン系界面活性剤は2種以上のペンダント型のシリコーン系界面活性剤の組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1種のシリコーン系界面活性剤を含み、該1種のシリコーン系界面活性剤は、HLB値が4.0〜10.0の範囲内であり、かつ粘度が400mm2/s以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記フェニル変性シリコーン油は、モノフェニルシリコーン油である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
炭化水素油、脂肪酸、エステル油またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記炭化水素油は、スクアランである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記エステル油は、イソオクタン酸セチルである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
美白用の化粧料、医薬部外品又は医薬品である請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
美白用化粧料である請求項8に記載の組成物。
【請求項1】
1種または2種以上のシリコーン系界面活性剤、フェニル変性シリコーン油および水を含む液晶を有効成分とするメラニン色素排出用組成物。
【請求項2】
2種以上のシリコーン系界面活性剤を含み、該2種以上のシリコーン系界面活性剤は2種以上のペンダント型のシリコーン系界面活性剤の組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1種のシリコーン系界面活性剤を含み、該1種のシリコーン系界面活性剤は、HLB値が4.0〜10.0の範囲内であり、かつ粘度が400mm2/s以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記フェニル変性シリコーン油は、モノフェニルシリコーン油である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
炭化水素油、脂肪酸、エステル油またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記炭化水素油は、スクアランである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記エステル油は、イソオクタン酸セチルである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
美白用の化粧料、医薬部外品又は医薬品である請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
美白用化粧料である請求項8に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−219029(P2012−219029A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83551(P2011−83551)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(506151235)株式会社ナノエッグ (11)
【出願人】(596165589)学校法人 聖マリアンナ医科大学 (53)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(506151235)株式会社ナノエッグ (11)
【出願人】(596165589)学校法人 聖マリアンナ医科大学 (53)
【Fターム(参考)】
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