説明

メリヤス生地

本発明はアラミドステープル繊維を含んでなるステープル繊維成分Aおよび少なくとも1種の種子繊維、または藻類で富化されたリオセル(lyocell)繊維を引裂きもしくは切断して製造されたステープル繊維、または少なくとも1種の種子繊維と藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断することによって製造されたステープル繊維との混合物を含んでなるステープル繊維成分B、から作られ、ここでAとBはAとBの均質な混合物から製造される混合ステープル繊維ヤーンABを形成し、混合ステープル繊維ヤーンABの少なくとも2本は撚られて撚り糸ZABを形成し、そして撚り糸ZABの少なくとも1本がメリヤス生地Iに加工されている、メリヤス生地に関する。
また、本発明はアラミドステープル繊維および/またはポリオレフィンステープル繊維を含んでなるステープル繊維成分Aおよび少なくとも1種の種子繊維、または藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断することによって製造されたステープル繊維、または少なくとも1種の種子繊維と藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断することで製造されたステープル繊維との混合物、を含んでなるステープル繊維成分Bから作られたメリヤス生地IIであって、ここでAは専らAから製造される純粋ステープル繊維ヤーンRAを形成し、Bは専らBから製造される純粋ステープル繊維RBを形成し、少なくとも2本の純粋ステープル繊維ヤーンRAは撚られて撚り糸ZAを形成し、そして少なくとも2本の純粋ステープル繊維ヤーンRBは撚られて撚り糸ZBを形成し、そしてメリヤス生地IIは、少なくとも1本の撚り糸ZAを少なくとも1本の撚り糸ZBと一緒に編むことによって製造されている、上記メリヤス生地IIに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メリヤス生地、特に着用者を切り傷から護り且つ良好な着心地を持つ布地であるメリヤス生地に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば手袋の形態にある、この種のメリヤス生地は特許文献1に記載されている。そこに記載されたメリヤス生地、特に手袋は普通、肌に直接着用されそして良好な切り傷保護と、着心地の一側面を表わしそして着用者が小さい且つ繊細な成分を注意深く扱わねばならない場合に特に望まれる高い触知性とを一緒に兼ね備える。比較的粗雑な活動中では、メリヤス生地の着用者に合致する着心地は着用者が従事している身体活動に可成りの程度依存する。
着用者が発汗を殆んど伴わない、単なる、穏やかな水準の身体活動に従事している場合には、発生した汗は肌の汗線内で既に蒸発し、その結果肌表面とメリヤス生地の内表面の間の小さな雰囲気中に増加した水蒸気分圧を生ずる。しかしながら、液体水は発生しないので、着用者は肌表面とメリヤス生地の内表面との間の小さな雰囲気中で水蒸気が水に凝縮しない限り着心地が可成り悪化したことに気づかない。
これに対し、着用者が連続して激しい身体活動に従事し多量の発汗を起し、肌表面に液体水が生じる場合には、これは着心地に害を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/017400号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故、本発明の目的は、従来技術に記載されたメリヤス生地と同様に良好な耐切り傷性を有し、しかも着心地を改善したメリヤス生地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、アラミドステープル繊維を含んでなるステープル繊維成分Aおよび少なくとも1種の種子繊維、または藻類で富化されたリオセル(lyocell)繊維を引裂きもしくは切断して製造されたステープル繊維、または少なくとも1種の種子繊維と藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断することによって製造されたステープル繊維との混合物を含んでなるステープル繊維成分B、から作られ、ここでAとBはAとBの均質な混合物から製造される混合ステープル繊維ヤーンABを形成し、混合ステープル繊維ヤーンABの少なくとも2本は撚られて撚り糸ZABを形成し、そして撚り糸ZABの少なくとも1本がメリヤス生地Iに加工されている、メリヤス生地Iによって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
驚いたことに、同等の良好な耐切り傷性を備えた、本発明のメリヤス生地Iは、本発明のメリヤス生地Iと、ヤーンおよびそれの撚り糸がステープル繊維成分Aのみを有し、ステープル繊維成分Bを有さない点で異なる比較メリヤス生地と比較して、より低い水蒸気流れ抵抗の形でより高い着心地を示す。材料の水蒸気流れ抵抗が低いほど、それの、水蒸気を透過させる能力はより大きくなる。水蒸気を透過させる、材料の能力は、同様に、材料の“通気性”とも呼ばれている。すなわち、本発明のメリヤス生地Iは、相当する比較メリヤス生地よりも高い通気性を有している。
【0007】
本発明のメリヤス生地Iの驚くほど増加された通気性は、着用者の穏やかな身体活動のみの間に、肌の汗線から出る水蒸気が比較メリヤス生地によるよりも本発明のメリヤス生地Iによる方が一層速やかに輸送され、そのため本発明のメリヤス生地Iの内表面と肌表面との間の小さな雰囲気中の水蒸気分圧は比較メリヤス生地を着用しているときよりも低くなる、という事実を導く。従って、本発明のメリヤス生地Iはその着用者が比較メリヤス生地の着用者よりも肌がより乾燥し、そのため一層快適な感触を感じるという効果を持つ。
着用者が連続して激しい身体活動に従事するときには、本発明のメリヤス生地Iは着用者が多量に汗をかき、そのため肌表面に液体水が貯まるのを防ぐことができないことは認めざるを得ない。しかしながら、本発明のメリヤス生地Iの驚くほどに増加された通気性は、激しい身体活動から穏やかな身体活動へ推移した後、肌に貯まった液体汗が比較メリヤス生地によるよりも本発明のメリヤス生地Iによって一層速やかに輸送され、そのため本発明のメリヤス生地Iの着用者は比較メリヤス生地の着用者よりも一層速やかに乾燥した肌表面の状態、すなわち着心地が増した状態に到達するという効果を有する。
このように、本発明のメリヤス生地Iは、驚くべきことに、同じ耐切り傷性で着心地を増加させる。
【0008】
本発明のメリヤス生地Iのステープル繊維成分Aはアラミドステープル繊維を含む。好ましくは、本発明のメリヤス生地Iのステープル繊維成分Aはアラミドステープル繊維から作られる。
本発明の文脈によって、“アラミドステープル繊維”という用語はアラミドフィラメントヤーンすなわちフィラメントヤーンを引裂きもしくは切断によって製造されるステープル繊維を意味している。そのフィラメント形成性ポリマーはアラミドすなわちアミド結合(−CO−NH−)の少なくとも85%が2つの芳香環に直接結合している芳香族ポリアミドである。
【0009】
本発明のメリヤス生地Iのアラミドステープル繊維は、好ましくは、p−アラミドステープル繊維、特に好ましくはポリ(p−フェニレンテレフタラミド)ステープル繊維である。このようにステープル繊維はフィラメントヤーンから製造され、そのフィラメント形成性ポリマーはp−フェニレンジアミンとテレフタロイルジクロライドの等モル重合により得られる。さらに、p−アラミドステープル繊維は、p−フェニレンジアミンとテレフタロイルジクロライドの他に、ポリマー鎖中に取り込まれる、少量の他のジアミンおよび/または他のジカルボン酸クロライドを含有する共重合体がそのフィラメント形成性ポリマーである、フィラメントヤーンから製造される本発明のメリヤス生地Iのために好適である。一般則として、p−フェニレンジアミンとテレフタロイルジクロライドに関して、他のジアミンおよび/または他のジカルボン酸クロライドはポリマー鎖中に10モル%以下の量で導入されうることが理解される。
【0010】
本発明のメリヤス生地Iのステープル繊維成分Aのアラミドステープル繊維の長さは、好ましくは20mm〜180mmの範囲、特に好ましくは30mm〜120mmの範囲、さらに特に好ましくは30mm〜100mmの範囲にある。
本発明のメリヤス生地のステープル繊維成分Bは少なくとも1種の種子繊維、または藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断して製造されたステープル繊維、または少なくとも1種の種子繊維と藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断して製造されたステープル繊維との混合物を含有する。
本発明のメリヤス生地Iの好ましい態様において、少なくとも1種の種子繊維はカポック(kapok)繊維、綿繊維、エイコン(akon)繊維、上記した種子繊維の2種もしくは3種の混合物、特にカポック繊維対綿繊維の重量比が好ましくは50:50〜5:95の範囲、特に好ましくは30:70〜5:95の範囲にあるカポック繊維と綿繊維の混合物を含有する。
【0011】
カポック繊維はパンヤ木(kapok tree)から得られ、約15mm〜最大で約40mmの繊維長までの長さ分布を持つセルロース中空繊維である。
綿繊維は栽培されたゴシピウム種(Gossypium types)からの種毛である。この繊維は長さ分布を有し、長さ分布は約10mm〜約55mmの繊維長さに及ぶ。
エイコン繊維はアスクレピイアダシア(Asclepiadaceae)およびアポシナシア(Apocynaceae)の種毛である。この繊維は長さ分布を有し、長さ分布は約10mm〜約30mm、殆んどないが約40mmに及ぶこともある、繊維長さに及ぶ。
【0012】
一実施態様において、本発明のメリヤス生地Iは藻類で富化されたリオセル繊維の引裂きもしくは切断によって製造されたステープル繊維を、ステープル繊維成分B中に含有する。このタイプのステープル繊維は、ドイツ国ルドルスタットのシーセル社(SeaCell GmbH)からシーセル(Seacell、登録商標)の商標名で入手することができる。
リオセル繊維はセルロース合成繊維であり、それは有機溶媒に溶解されたセルロースを繊維形態に再生することによって製造される(人造繊維年鑑(MAN−MADE FIBER YEAR BOOK)1997年9月、ピー、エイ、コッホ“リオセル繊維”による繊維表、41〜47頁参照)。シーセル(登録商標)ステープル繊維の多孔質構造は本発明のメリヤス生地Iにおいてその通気性に寄与しそしてシーセル(登録商標)ステープル繊維に含有される皮膚に好ましい藻類成分例えばカルシウム塩やマグネシウム塩の如き鉱酸塩およびビタミンEの如きビタミン類を、皮膚へ放出するのを促進する。そのためシーセル(登録商標)ステープル繊維を含む本発明のメリヤス生地Iは皮膚栄養と皮膚治療の効果を及ぼし、それによって乾癬や神経皮膚炎の如き皮膚病に対しプラス効果を達成する。さらに、シーセル(登録商標)ステープル繊維に固有の高度の軟らかさは、シーセル(登録商標)ステープル繊維を含む本発明のメリヤス生地Iが着用者の肌に非常に嬉しい感触付与するように寄付する。従って、シーセル(登録商標)ステープル繊維を含む、本発明のメリヤス生地Iは高い着心地を示す。
【0013】
本発明のメリヤス生地Iの一態様で用いられる、藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きまたは切断して製造されたステープル繊維(シーセル(登録商標)ステープル繊維)は、好ましくは20mm〜180mmの範囲、特に好ましくは30mm〜120mmの範囲、さらに特に好ましくは30mm〜100mmの範囲にある長さを有する。
本発明のメリヤス生地Iの好ましい態様において、少なくとも1種の種子繊維と、藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きまたは切断することによって製造されたステープル繊維との混合物は、綿繊維と藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きまたは切断することで製造されたステープル繊維との混合物を包含する。
本発明のメリヤス生地Iのさらに好ましい態様において、綿繊維と、藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きまたは切断することで製造されたステープル繊維との混合物における重量比は、5:95〜95:5の範囲、特に好ましくは20:80〜80:20の範囲にある。
【0014】
本発明のメリヤス生地Iは、ステープル繊維成分Aとステープル繊維成分Bとを、A:Bの重量比で、好ましくは99:1〜50:50の範囲、より好ましくは97:3〜60:40の範囲、さらに特に好ましくは95:5〜70:30の範囲で含有する。この場合、ステープル繊維成分Aのアラミドステープル繊維は新しく製造されたアラミドステープル繊維100重量%からなることができる。あるいは、ステープル繊維成分Aのアラミドステープル繊維はリサイクルされたアラミドステープル繊維100重量%からなることができる。さらに、ステープル繊維成分Aのアラミドステープル繊維は、新しく製造されたアラミドステープル繊維とリサイクルされたアラミドステープル繊維の混合物からなることもできる。
本発明のメリヤス生地Iにおいて、撚り糸ZABは、混合ステープル繊維ヤーンABの少なくとも2本から製造される。ここで、上記ステープル繊維ヤーンABのそれぞれはAとBの均質な混合物から製造される。この場合、“均質な混合物”
という表現は、本質的にAとBの混合物の各容積中に、従って、その均質な混合物から製造された、混合ステープル繊維ヤーンABの各容積中に、A:Bの所定の混合比が存在することを意味する。
【0015】
本発明のメリヤス生地Iの好ましい態様において、混合ステープル繊維ヤーンABは10tex〜1000texの範囲、好ましくは12〜500texの範囲、さらに好ましくは14〜100texの範囲にある線密度を有する。
さらに、本発明のメリヤス生地Iの一つの態様では、混合ステープル繊維ヤーンABの好ましくは2〜10本、特に好ましくは2〜8本が撚られて撚り糸ZABを形成している。
さらに、本発明のメリヤス生地Iの一つの態様では、撚り糸ZABの好ましくは1〜10本、特に好ましくは1〜8本が本発明のメリヤス生地I中に加工される。
本発明のメリヤス生地Iのさらに好ましい態様では、メリヤス生地Iはニードルゲージggで編まれる。このニードルゲージは好ましくは5gg〜18ggの範囲、特に好ましくは7gg〜18ggの範囲にある。
本発明のメリヤス生地Iのさらなる好ましい態様では、メリヤス生地Iは列(course)のメッシュ密度MiRで編まれる。MiRは好ましくは2〜15の範囲、特に好ましくは3〜12の範囲にある。
本発明のメリヤス生地Iのさらなる好ましい態様では、メリヤス生地Iはうね(wale)のメッシュ密度MiSで編まれる。MiSは好ましくは2〜15の範囲、特に好ましくは3〜12の範囲にある。
本発明のメリヤス生地Iの耐切断性と着心地との有利な結合は、本発明のメリヤス生地Iが身体に着用されている、あらゆる型の衣服において顕著である。好ましくは、本発明のメリヤス生地Iは、手袋、保護袖、フードあるいはシャツとして形成される衣服製品である。
【0016】
本発明の基本的目的は、アラミドステープル繊維および/またはポリオレフィンステープル繊維を含んでなるステープル繊維成分Aおよび少なくとも1種の種子繊維、または藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断することによって製造されたステープル繊維、または少なくとも1種の種子繊維と藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断することで製造されたステープル繊維との混合物、を含んでなるステープル繊維成分Bから作られたメリヤス生地IIであって、ここでAは専らAから製造される純粋ステープル繊維ヤーンRAを形成し、Bは専らBから製造される純粋ステープル繊維RBを形成し、少なくとも2本の純粋ステープル繊維ヤーンRAは撚られて撚り糸ZAを形成し、そして少なくとも2本の純粋ステープル繊維ヤーンRBは撚られて撚り糸ZBを形成し、そしてメリヤス生地IIは、少なくとも1本の撚り糸ZAを少なくとも1本の撚り糸ZBと一緒に編むことによって製造されている、によって達成される。
【0017】
驚くべきことに、本発明のメリヤス生地IIは、同様に良好な耐切断性を持ち、本発明のメリヤス生地IIと、ヤーンおよびその撚り糸がステープル繊維成分Aを有するだけで、ステープル繊維成分Bを有さない点でのみ異なる比較メリヤス生地と比較して比較的低い水蒸気流れ抵抗の形で比較的高い着心地を示す。この場合、用語“アラミドステープル繊維”、“種子繊維”および“藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きまたは切断して製造されたステープル繊維”は本発明のメリヤス生地Iの記載で既に説明された意味と同じ意味を有する。
【0018】
本発明の記載において、用語“ポリオレフィンステープル繊維”はポリオレフィンフィラメントヤーン、すなわちフィラメントヤーンを引裂きまたは切断して製造されるステープル繊維を意味する。そのフィラメント形成性ポリマーはポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンおよび特に好ましくはポリエチレンである。それ故、本発明のメリヤス生地IIのポリオレフィンステープル繊維は好ましくはポリプロピレンステープル繊維であり、特に好ましくはポリエチレンステープル繊維である。それによって、本発明の記載では、ポリエチレンは分子量が好ましくは100万より大きくそして少量の鎖分岐剤またはコモノマーを含有することができる、実質的に線状のポリエチレン材料であると理解される。上記少量とは、主鎖中の炭素原子100個当り5個を超えない鎖分岐剤またはコモノマーが存在することを意味すると理解される。線状のポリエチレン材料は、さらに通常配合される、アルケン−1ポリマー、特に低圧ポリエチレン等の如きポリマー添加物の1種またはそれ以上または抗酸化剤、紫外線吸収剤、染料等の低分子量の添加剤を50重量%まで含有することができる。この種のポリエチレン材料は“伸長鎖ポリエチレン”(ECPE)の名で知られている。本発明の記載において、ポリプロピレンは分子量が好ましくは100万以上の実質的に線状ポリプロピレン材料であると理解される。
【0019】
本発明のメリヤス生地IIのステープル繊維成分Aのポリオレフィンステープル繊維の長さは、好ましくは20mm〜180mmの範囲、特に好ましくは30mm〜120mmの範囲、さらに特に好ましくは30mm〜100mmの範囲にある。
本発明のメリヤス生地IIの一つの実施態様において、ステープル繊維成分Aは、アラミドステープル繊維:ポリオレフィンステープル繊維の重量比が95:5〜5:95の範囲、好ましくは80:20〜20:80の範囲にある、アラミドステープル繊維とポリオレフィンステープル繊維からなる。
本発明のメリヤス生地の好ましい実施態様において、ポリオレフィンステープル繊維はポリエチレンステープル繊維である。
本発明のメリヤス生地IIの一つの実施態様において、純粋なステープル繊維ヤーンRAは、好ましくは10tex〜1000texの範囲、特に好ましくは12〜500texの範囲、さらに特に好ましくは14〜100texの範囲の線密度を有する。
さらに、本発明のメリヤス生地IIの一つの実施態様において、純粋なステープル繊維ヤーンRBは、好ましくは10tex〜1000texの範囲、特に好ましくは12〜500texの範囲、さらに特に好ましくは14〜100texの範囲にある線密度を有する。
【0020】
さらに、本発明のメリヤス生地IIの一つの実施態様において、純粋なステープル繊維ヤーンRAの好ましくは2〜10本、特に好ましくは2〜8本が撚られて撚り糸ZAを形成している。
さらに、本発明のメリヤス生地IIの一つの実施態様において、純粋なステープル繊維ヤーンRBの好ましくは2〜10本、特に好ましくは2〜8本が撚られて撚り糸ZBを形成している。
さらに、一つの実施態様において、本発明のメリヤス生地IIは好ましくは撚り糸ZAの1〜8本と好ましくは撚り糸ZBの1〜8本とを編成することによって製造される。この場合、メリヤス生地IIは撚り糸ZAの1〜6本と好ましくは撚り糸ZBの1〜6本とを編成することにより製造されるのが特に好ましい。
さらに好ましい実施態様において、本発明のメリヤス生地IIは、ニードルゲージggで編まれている。この場合、ggは好ましくは5〜18の範囲にあり、特に好ましくは7〜15の範囲にある。
さらに好ましい実施態様において、本発明のメリヤス生地IIは、横の目のメッシュ密度MiRで編まれている。ここで、MiRは好ましくは2〜15の範囲、特に好ましくは3〜12の範囲にある。
【0021】
さらに好ましい実施態様において、本発明のメリヤス生地IIは、縦の目のメッシュ密度MiSで編まれている。ここで、MiSは好ましくは2〜15の範囲、特に好ましくは3〜12の範囲にある。
本発明のメリヤス生地IIが純粋なステープル繊維ヤーンRAが純粋なフィラメントヤーンRA’で置き換えられていることで変更されている場合には、編成されることによって製造され、耐切断性、耐磨耗性および着心地の魅力的な組合わせを持つ、メリヤス生地II’と同様の他の同一構造を生む結果となる。
本発明のメリヤス生地IIの耐切断性と着心地との有利な組合せは本発明のメリヤス生地IIが身体に着用される、あらゆる種類の衣類において著しい。好ましくは、本発明のメリヤス生地IIは、グローブ、保護袖、フードあるいはシャツとして形成される衣服である。
【実施例】
【0022】
本発明を以下の実施例を用いてより詳細に説明する。
【0023】
実施例1
ポリ−p−フェニレンテレフタラミド製の40mm長ステープル繊維(テイジンアラミドGmbHのトワロン1070)がステープル繊維成分Aとして用いられる。約15mmの繊維長から約40mmの繊維長までに亘る長さ分布を持つカポック(kapok)繊維がステープル繊維成分Bとして用いられる。均一なステープル繊維混合物が成分A90wt%と成分B10wt%とから製造される。Nm28すなわち36texの線密度を持つ混合ステープル繊維ヤーンABがこの均一なステープル繊維混合物から製造される。これらの混合されたステープル繊維ヤーンABの2本を撚って撚り糸ZABを形成する。これらの撚り糸ZABの4本を織機中に平行に供給してニードルゲージ7gg、横の目のメッシュ密度MiR3.5および縦の目メッシュ密度MiS3.5の手袋に編んだ。
3個の本発明の手袋1a、1bおよび1cがこのようにして編まれた。耐切断性(切断抵抗)NがISO13997(1999年8月)に従って本発明の手袋1a、1bおよび1cについて測定される。
【0024】
実施例2
ポリ−p−フェニレンテレフタラミド製の40mm長ステープル繊維(テイジンアラミドGmbHのトワロン1070)がステープル繊維成分Aとして用いられる。約15mmの繊維長から約40mmの繊維長までに亘る長さ分布を持つカポック繊維がステープル繊維成分Bとして用いられる。成分Aの90wt%と成分Bの10wt%から均一なステープル繊維混合物が製造される。Nm28すなわち36texの線密度を持つ混合ステープル繊維ヤーンABがこの均一なステープル繊維混合物から製造される。これらの混合ステープル繊維ヤーンABの2本が撚られて撚り糸ZABを形成する。これらの撚り糸ZABの1本が編機中に供給されてニードルゲージ13gg、横の目のメッシュ密度MiR 6.0および縦の目のメッシュ密度Mis 7.5の手袋に編まれる。
3個の本発明の手袋2a、2bおよび2cがこのようにして編まれる。切断抵抗がISO13997(1999年8月)により本発明の手袋2a、2bおよび2cについて測定される。
【0025】
比較例1
ステープル繊維成分Aすなわちポリ−p−フェニレンテレフタラミド製の40mm長ステープル繊維(テイジンアラミドGmbHのトワロン1070)のみが用いられる。Nm28すなわち36texの線密度のステープル繊維ヤーンが成分A100%から製造される。これらのステープル繊維ヤーンの2本を撚って撚り糸を形成する。これらの撚り糸4本を編機中に平行に供給してニードルゲージ7gg、横の目の線密度がMiR3.5および縦の目の線密度MiS3.5の手袋に編まれる。
3個の比較手袋V1a、V1bおよびV1cがこのようにして編まれる。切断抵抗Nがこれらの比較手袋V1a、V1bおよびV1cについて ISO 13997(1999年8月)に従って測定される。
【0026】
比較例2
ステープル繊維成分Aすなわちポリ−p−フェニレンテレフタラミド製の40mm長ステープル繊維(テイジンアラミドGmbHのトワロン1070)のみが用いられる。Nm28すなわち36texの線密度のステープル繊維ヤーンが成分A100%から製造される。これらのステープル繊維ヤーンの2本が撚られて撚り糸を形成する。この撚り糸を編機中に供給してニードルゲージ13gg、横の目のメッシュ密度MiR6.0および縦の目のメッシュ密度MiS8.0の手袋に編まれる。
3個の比較手袋V2a、V2bおよびV2cがこのようにして編まれる。切断抵抗NがISO13997(1999年8月)により比較手袋V2a、V2bおよびV2cについて測定される。
結果を表1にまとめる。
【0027】
【表1】

【0028】
本発明の手袋1a−cと比較手袋V1a−cの比較は本発明の手袋は、カポック繊維の割合が10wt%であるにもかかわらず、同じ単位面積当りの質量について、比較手袋V1a−cの切断抵抗Nと等しく良好な切断抵抗Nを有していることを示している。
本発明の手袋2a−cと比較手袋V2a−cの比較は、本発明の手袋は、カポック繊維の割合が10wt%であるにもかかわらずそして単位面積当りの質量が幾分低いにもかかわらず、比較手袋V2a−cの切断抵抗Nよりも実際幾分良好な切断抵抗Nを有していることを示している。
【0029】
さらなる本発明の手袋1dは手袋1a−cについてと同じ条件を用いて製造される。DIN EN31092(1994年2月)またはISO 11092(1993年10月15日)により、水蒸気流れ抵抗Retは本発明の手袋1aについて測定される。上記引用標準によれば、Retは、単位面積足りの蒸発熱流により除された手袋の2つの表面、すなわち手袋の内側と外側の間の水蒸気分圧差を意味し、水蒸気分圧勾配を与える。
さらなる比較手袋V1dは比較手袋V1a−cについてと同じ条件を用いて製造される。DIN EN31092(1994年2月)またはISO11092(1993年10月15日)によれば、水蒸気流れ抵抗Retは比較手袋V1dについて測定される。
et測定の結果は表2に示されている。
【0030】
【表2】

【0031】
本発明の手袋1dを比較手袋V1dと比較すると、本発明の手袋1dの水蒸気流れ抵抗Retは比較手袋V1dの水蒸気流れ抵抗Retよりも21%低いことがわかる。従って、本発明の手袋1dの通気性は比較手袋V1dの通気性よりも26%大きい。
このように、穏やかな身体活動を装う、DIN EN31092(1994年2月)またはISO11092(1993年10月15日)の条件下で、本発明の手袋1dは、同じ切断抵抗で、比較手袋V1dよりも一段と高い着心地を示している。
着用者の身体活動のない着用試験でも、本発明の手袋1dは、着用者によって比較手袋V1dの着心地よりも一層快適であると記載される着心地を示す。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミドステープル繊維を含んでなるステープル繊維成分Aおよび少なくとも1種の種子繊維、または藻類で富化されたリオセル(lyocell)繊維を引裂きもしくは切断して製造されたステープル繊維、または少なくとも1種の種子繊維と藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断することによって製造されたステープル繊維との混合物を含んでなるステープル繊維成分B、から作られ、ここでAとBはAとBの均質な混合物から製造される混合ステープル繊維ヤーンABを形成し、混合ステープル繊維ヤーンABの少なくとも2本は撚られて撚り糸ZABを形成し、そして撚り糸ZABの少なくとも1本がメリヤス生地Iに加工されている、メリヤス生地。
【請求項2】
アラミドステープル繊維がp−アラミドステープル繊維である、ことを特徴とする請求項1によるメリヤス生地I。
【請求項3】
少なくとも1種の種子繊維がカポック繊維、綿繊維、エイコン繊維またはこれらの種子繊維の2種もしくは3種の混合物からなることを特徴とする請求項1または2によるメリヤス生地I。
【請求項4】
種子繊維の混合物がカポック繊維と綿繊維からなることを特徴とする請求項3によるメリヤス生地I。
【請求項5】
カポック繊維と綿繊維の混合物において、カポック繊維:綿繊維の重量比は50:50〜5:95の範囲にあることを特徴とする請求項4によるメリヤス生地I。
【請求項6】
少なくとも1種の種子繊維と藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断して製造されたステープル繊維との混合物が綿繊維と藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断して製造されたステープル繊維の混合物からなることを特徴とする請求項1によるメリヤス生地I。
【請求項7】
綿繊維と藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断して製造されたステープル繊維の混合物において、綿繊維対藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断して製造されたステープル繊維の重量比が5:95〜95:5の範囲にあることを特徴とする請求項6によるメリヤス生地I。
【請求項8】
メリヤス生地Iがステープル繊維成分Aおよびステープル繊維成分Bを重量比A:Bで含有し、ここでA:Bは99:1〜50:50の範囲にあることを特徴とする請求項1〜7の1つまたはそれ以上によるメリヤス生地I。
【請求項9】
混合ステープル繊維ヤーンABの2〜10本が撚られて撚り糸ZABを形成していることを特徴とする請求項1〜8の1つまたはそれ以上によるメリヤス生地I。
【請求項10】
撚糸ZABの1〜10本がメリヤス生地Iに加工されていることを特徴とする請求項1〜9の1つまたはそれ以上によるメリヤス生地I。
【請求項11】
メリヤス生地Iが手袋、保護袖、フードまたはシャツとして形成される衣類品であることを特徴とする請求項1〜10の1つまたはそれ以上によるメリヤス生地I。
【請求項12】
アラミドステープル繊維および/またはポリオレフィンステープル繊維を含んでなるステープル繊維成分Aおよび少なくとも1種の種子繊維、または藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断することによって製造されたステープル繊維、または少なくとも1種の種子繊維と藻類で富化されたリオセル繊維を引裂きもしくは切断することで製造されたステープル繊維との混合物、を含んでなるステープル繊維成分Bから作られたメリヤス生地IIであって、ここでAは専らAから製造される純粋ステープル繊維ヤーンRAを形成し、Bは専らBから製造される純粋ステープル繊維RBを形成し、少なくとも2本の純粋ステープル繊維ヤーンRAは撚られて撚り糸ZAを形成し、そして少なくとも2本の純粋ステープル繊維ヤーンRBは撚られて撚り糸ZBを形成し、そしてメリヤス生地IIは、少なくとも1本の撚り糸ZAを少なくとも1本の撚り糸ZBと一緒に編むことによって製造されている、上記メリヤス生地II。
【請求項13】
ステープル繊維成分Aがアラミドステープル繊維とポリオレフィンステープル繊維からなり、ここでアラミドステープル繊維対ポリオレフィンステープル繊維の重量比が95:5〜5:95の範囲にあることを特徴とする請求項12によるメリヤス生地II。
【請求項14】
ポリオレフィンステープル繊維がポリエチレンステープル繊維であることを特徴とする請求項12または13によるメリヤス生地II。
【請求項15】
純粋ステープル繊維ヤーンRAの2〜10本が撚られて撚り糸ZAを形成していることを特徴とする請求項12〜14の1つまたはそれ以上によるメリヤス生地II。
【請求項16】
純粋ステープル繊維ヤーンRBの2〜10本が撚られて撚り糸ZBを形成している請求項12〜14の1つまたはそれ以上によるメリヤス生地II。
【請求項17】
メリヤス生地IIが撚り糸ZA1〜8本を撚り糸ZB1〜8本と編むことによって製造されていることを特徴とする請求項12〜16の1つまたはそれ以上によるメリヤス生地II。
【請求項18】
メリヤス生地IIが手袋、保護袖、フードまたはシャツとして形成されている衣類品であることを特徴とする請求項1〜15の1つまたはそれ以上によるメリヤス生地II。



【公表番号】特表2012−511640(P2012−511640A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540045(P2011−540045)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066534
【国際公開番号】WO2010/066681
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(502036011)テイジン・アラミド・ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】