説明

メンブレンスイッチ

【課題】 メンブレンスイッチのステムの押し下げに応じて板ばねに掛かる荷重の増加を抑制して使用者の疲労感を低減する。
【解決手段】 ステム18の押し下げによって押し下げられる自由ばね片28は、板枠24の一辺から延びる延長片26の先端からこの延長片26とは反対方向に延びるように形成され、薄膜回路板の接点部を閉じる押圧部30は、この自由ばね片28の基部に設けられ、自由ばね片28は、薄膜回路板の接点部の押圧後この押圧部30を支点として梃子運動するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コンピュータの如き種々の情報端末機器の入力キーボード等に使用されるのに好適なメンブレンスイッチに関し、特にその内部に設けられる板ばねを改良したメンブレンスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のメンブレンスイッチは、一般に、スイッチ支持部材と、このスイッチ支持部材上に設けられた接点を含む薄膜回路板と、この薄膜回路板を覆うように配置された筐体と、この筐体を貫通して支持されて薄膜回路板に対して進退するステムと、薄膜回路板上に設けられステムによって押圧されて薄膜回路板の接点部を閉じる押圧部を含む板ばねとを備えている(特許文献1乃至3参照)。
【0003】
これらの従来技術のメンブレンスイッチにおいては、板ばねは、四角形の板枠と、この板枠の一辺から板枠の中心に向けて斜め上向きに延びるアームの先端に設けられた自由ばね片とを有し、薄膜回路板の接点を閉じる押圧部は、アームと自由ばね片との境界部分に設けられた突起から成っている。
【0004】
このような板ばねを用いると、1つの板ばねがステムを押し上げる作用と薄膜回路板の接点を閉じる作用とを有するので、コイルばね方式に比べて部品点数が少なくて済む上に、コイルばね方式のように、押し下げ時に荷重が直線的に増加したりばねのぶれを生じたりすることがなく、また、打ち抜きによって製造することができる上に高い耐久性を有するので、特に入力キーボード用の多接点スイッチに好適に使用することができる。
【0005】
しかし、従来技術の板ばね方式のメンブレンスイッチは、自由ばね片が板枠の一辺から延びる片持ち式であるため、ステムを押圧するにつれて荷重が増加する割合が直線的ではないにしても徐々に増加し、操作者が繰り返しスイッチを開閉すると、疲労感を増す欠点があった。
【0006】
【特許文献1】実公平3−387741号公報
【特許文献2】実公平3−387742号公報
【特許文献2】実公平7−343888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ステムの押圧につれて荷重が増加するが、この増加割合があるストローク以上では飽和し、特に繰り返しのスイッチの開閉操作を行っても疲労感を生ずることがないメンブレンスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題解決手段は、スイッチ支持部材と、このスイッチ支持部材上に設けられた接点を含む薄膜回路板と、この薄膜回路板を覆うように配置された筐体と、この筐体を貫通して薄膜回路板に対して進退するステムと、薄膜回路板上に設けられステムによって押圧されて薄膜回路板の接点を閉じる押圧部を含む板ばねとを備えたメンブレンスイッチにおいて、板ばねは、薄膜回路板と筐体との間に挟持される板枠と、この板枠の一辺から水平に延びる延長片と、この延長片の先端から板枠の上記一辺に向けて延びる自由ばね片とから成り、薄膜回路板の接点を閉じる押圧部は、自由ばね片の基部に設けられ、自由ばね片は、ステムの下面に対向するように上向きに傾斜していることを特徴とするメンブレンスイッチを提供することにある。
【0009】
本発明の課題解決手段において、板ばねの延長片は、1対の平行片部とこの1対の平行片部の先端を連結する連結片部とから成り、自由ばね片は、この連結片部から延びている形態とすることができる。
【0010】
また、本発明の課題解決手段において、板ばねの板枠と筐体の薄膜回路板に接合する板壁とは、それぞれ相互に相対的に係入する突部又は溝を有していて板ばねと筐体とを相互に結合しているのが好ましい。
【0011】
本発明の課題解決手段は、隣り合わせて配置された複数のスイッチユニットを含むメンブレンスイッチに適用することができ、この場合、板ばねと筐体の板壁とを相互に結合する突部又は溝は、隣り合うスイッチユニットの境界部に設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ステムによって押圧される板ばねの自由ばね片は、板ばねの板枠の一辺から直接ではなく、この一辺から水平に延びる延長片の先端から板枠の上記一辺に向けて延長片とは反対方向に延びているので、この自由ばね片をステムによって押し下げて接点を閉じると、接点を押圧する押圧部が接点を押圧した後には、自由ばね片の運動は、この押圧部を支点として延長片を持ち上げる梃子運動に変換されるので、押圧部が接点を閉じた後には、板ばねにそれ以上大きな荷重が掛かることがなく、スイッチ操作を小さな荷重で行うことができる。
【0013】
特に、板ばねの延長片が1対の平行片部とこの1対の平行片部の先端を連結する連結片部とから成っていて自由ばね片がこの連結片部から延びていると、自由ばね片の押し下げ運動及び梃子運動は、延長片の1対の平行片部の間で安定して行うことができる。
【0014】
また、板ばねの板枠と筐体の薄膜回路板に接合する板壁とは、それぞれ相互に相対的に係入する突部又は溝を有していて板ばねと筐体とを相互に結合していると、板ばねと筐体との組立を精度よく行うことができ、スイッチの組立が容易となり、特に、多ユニットメンブレンスイッチの組立が一層容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に述べると、図1は、本発明に係わるメンブレンスイッチ10を示し、図示の例では、このメンブレンスイッチ10は、複数の接点部を有する多接点薄膜回路に適用する多ユニットメンブレンッスイッチの形態であるが、1つの接点を有する単接点薄膜回路にも同様に適用することができる。
【0016】
この多ユニットメンブレンスイッチ10は、スイッチ支持部材12と、このスイッチ支持部材12上に設けられた図示しない接点部を含む薄膜回路板14と、この薄膜回路板14を覆うように配置された筐体16と、この筐体16を貫通して薄膜回路板14に対して進退するステム18と、薄膜回路板14上に設けられステム18によって押圧されて薄膜回路板14の接点部を閉じる押圧部30(図2及び図5参照)を含む板ばね22とを備えている。
【0017】
スイッチッ支持部材12は、後に述べるように、板ばね22の一部をこのスイッチ支持部材12に接地するために、鉄板の如き導電板から作られている。筐体16及びステム18は、プラスティックから作られ、また板ばね22は、ステンレスその他の適宜の金属材料から作られる。
【0018】
薄膜回路板14は、その上に板ばね22を介して筐体16の垂直板壁16VWによって押し付けられて保持されている。図示の形態では、2つのスイッチユニット10U1、10U2のみが示されているが、実際には、10U1、10U2の前後及び10U2の右隣り以降に同様のスイッチユニット(以下総体的に符号10Uで示す)が連続している。
【0019】
筐体16は、各スイッチユニット毎にステム18が摺動自在に貫通する筒部16Cを有し、各スイッチユニット10Uのステム18は、この筒部16Cを貫通して各スイッチユニット10U毎に薄膜回路板14と筐体16との間の空間を進退するようになっている。図示の形態では、ステム18は、その頭部に冠状のキートップ18Kを一体に有し、このキートップ18Kの基部18KBと筐体16の筒部16Cとの間に通常ではキートップ18Kを上向きに付勢するようにステム18の貫通部を密封するゴム製の弾性封止部材20が取り付けられている。図1から解るように、この弾性封止部材20の下半部20LHは、筐体16の筒部16Cの小径部16CSを覆うように設けられて小径となっており、上半部20UHは、下半部20LHよりも大きな径となっている。これは、ステム18の押し下げ時に、上半部20UHが下半部20LHの周りに折り畳まれるようにして収縮するのを許すようにするのに役立つ(図5参照)。もちろん、弾性封止部材20は、全長に亘って同じ径を有していてもよく、その場合には、この弾性封止部材20は、例えば、ベローズとするのが好ましい。
【0020】
板ばね22は、図2に示すように、薄膜回路板14と筐体16の垂直板壁16VWとの間に挟持される板枠24と、この板枠24の一辺24Pから水平に延びる延長片26と、この延長片26の先端から板枠24の上記一辺24Pに向けて延長片26とは反対方向に延びる自由ばね片28とから成っている。薄膜回路板14の接点を閉じる押圧部30は、自由ばね片28の基部に設けられ(図2(D)参照)、自由ばね片28は、図1に示すように、ステム18の下面に対向するように上向きに傾斜している。
【0021】
図示の形態では、板ばね22の延長片26は、1対の平行片部26A、26Bとこの1対の平行片部26A、26Bの先端を連結する連結片部26Cとから成り、自由ばね片28は、この連結片部26Cから延びている。
【0022】
また、図1乃至図3に示すように、板ばね22の板枠24は、隣り合うスイッチユニット10Uの境界に突部24PRを有し、筐体16の垂直板壁16VWは、板枠24の突部24PRに対応した位置に溝16Gを有し、板ばね22の突部24PRを筐体16の溝16Gに係入して板ばね22と筐体16とを相互に結合して位置決めしている。図示の形態では、板ばね22に突部24PRを設け、筐体16に溝16Gを設けたが、逆に、板ばね22に溝を設け、筐体16に突部を設けてこれらを相互に係入して板ばね22と筐体16とを相互に結合して位置決めしてもよい。
【0023】
図4に示すように、板ばね22は、各スイッチユニット毎に板枠24の一部に爪22PWを有し、各爪22PWは、同図(B)に示すように、薄膜回路板14から露出するスイッチ支持部材12の部分12aに向けて折り曲げてこの部分12aに食い込ませている。この爪22PWは、各スイッチユニット毎に、板ばね22を接地するためのものである。
【0024】
次に、図示のメンブレンスイッチ10の動作を述べると、この多ユニットメンブレンスイッチ10は、例えば、コンピュータの入力キーボードに用いられ、各スイッチユニット毎に、キートップ18Kを叩いて情報を入力する。キートップ18Kを押し下げていない状態では、図1に示すように、弾性封止部材20がその弾性によってキートップ18Kと共にステム18が押し上げられる。なお、この押し上げ位置は、図1に示すように、ステム18の下端に設けられた肩部18Sが筐体16の筒部16Cの段部16Sに係合して設定される。
【0025】
入力キーボードに情報を入力するために、所定のスイッチユニット10Uのキートップ18Kを押し下げると、ステム18は、弾性密封部材20を折り畳みながら、下降し、先ず、ステム18の下端面が板ばね22の自由ばね片28の上端に係合し、その後は、ステム18は、この自由ばね片28を押し下げる。
【0026】
板ばね22の自由ばね片28が押し下げられると、その基部である押圧部30が薄膜回路板14の接点部を押圧して接点部を閉じるが、それよりも更に自由ばね片28が押し下げられると、図5に示すように、この押圧部30を支点として自由ばね片28が延長片26を持ち上げるように梃子運動する。従って、板ばね22は、薄膜回路板14の接点部を閉じた後に大きな荷重が掛かることがない。
【0027】
図6は、ステム18のストロークに対する板ばね22に掛かる荷重P(板ばね特性)を示し、同図において曲線aは、特許文献1乃至3に示す片持ち式の板ばねの荷重、曲線bは、延長片26と自由ばね片28とを有する本発明による板ばね22の荷重を示す。図6から解るように、従来技術による板ばねの荷重は、ステムのストロークが大きくなるにつれて直線的ではないにしても徐々に大きくなるが、本発明による板ばね22の荷重は、ステム18のストロークが大きくなるにつれて最初は大きくなるが、押圧部30が薄膜回路板14の接点部を押圧すると、その後は、板ばね22に掛かる荷重が増加することがなく飽和状態となる。これは、既に述べたように、押圧部30が接点部を押圧した後は、板ばね2の自由ばね片28がこの押圧部30を支点として梃子運動をするため、自由ばね片28に荷重が掛からないためである。
【0028】
キートップ18Kの押し下げを解放すると、板ばね22の復元力と弾性封止部材20の復元力とによってステム18が上昇し、この上昇は、ステム18の肩部18Sが筐体16の筒部16Cの段部16Sに係合して停止し、次の押し下げに備える。
【0029】
上記実施の形態では、ステム18とキートップ18Kとは一体に形成されているが、これらは別体に形成されて圧力嵌めその他適宜の手段で結合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のメンブレンスイッチは、ステムによって押し下げられる板ばねの自由ばね片が板ばねの板枠から直接延びるのではなく、板枠から延びる延長片にこの延長片とは反対側に延びるように形成しているので、板ばねが薄膜回路板の接点部を押圧した後にはこの板ばねに掛かる荷重が増加することがなく、作業者の疲労感を減少し、産業上の利用性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係わるメンブレンスイッチの垂直断面図である。
【図2】図1のメンブレンスイッチに用いられる板ばねの一部を示し、同図(A)は、その平面図、同図(B)は、更にその一部の平面図、同図(C)は、同図(B)のC−C線断面図、同図(D)は、同図(C)の拡大断面図である。
【図3】図1のメンブレンスイッチの筐体と板ばねとの結合部分の拡大断面図である。
【図4】図1のメンブレンスイッチのスイッチ支持部材と薄膜回路板と板ばねとの関係を示し、同図(A)は、平面図、同図(B)は、同図(A)のB−B線断面図である。
【図5】図1のメンブレンスイッチの押し下げ状態の垂直断面図である。
【図6】図1のメンブレンスイッチの板ばねと従来技術のメンブレンスイッチの板ばねとのばね特性を示す線図である。
【符号の説明】
【0032】
10 メンブレンスイッチ
10U、10U1、10U2 スイッチユニット
12 スイッチ支持部材
12a 露出部分
14 薄膜回路板
16 筐体
16C 筒部
16CS 小径部
16S 段部
16G 溝
16VW 垂直板壁
18 ステム
18K キートップ
18S 肩部
20 弾性封止部材
20LH 下半部
20UH 上半部
22 板ばね
22PW 爪
24 板枠
24PR 突部
26 延長片
26A、26B 平行片部
26C 連結片
28 自由ばね片
30 押圧部




























【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ支持部材と、前記スイッチ支持部材上に設けられた接点部を含む薄膜回路板と、前記薄膜回路板を覆うように配置された筐体と、前記筐体を貫通して前記薄膜回路板に対して進退するステムと、前記薄膜回路板上に設けられ前記ステムによって押圧されて前記薄膜回路板の接点部を閉じる押圧部を含む板ばねとを備えたメンブレンスイッチにおいて、前記板ばねは、前記薄膜回路板と前記筐体との間に挟持される板枠と、前記板枠の一辺から水平に延びる延長片と、前記延長片の先端から前記板枠の前記一辺に向けて延びる自由ばね片とから成り、前記薄膜回路板の接点を閉じる押圧部は、前記自由ばね片の基部に設けられ、前記自由ばね片は、前記ステムの下面に対向するように上向きに傾斜していることを特徴とするメンブレンスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のメンブレンスイッチであって、前記板ばねの延長片は、1対の平行片部と前記1対の平行片部の先端を連結する連結片部とから成り、前記自由ばね片は、前記連結片部から延びていることを特徴とするメンブレンスイッチ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のメンブレンスイッチであって、前記板ばねの板枠と前記筐体の前記薄膜回路板に接合する板壁とは、それぞれ相互に相対的に係入する突部又は溝を有していて前記板ばねと筐体とを相互に結合していることを特徴とするメンブレンスイッチ。
【請求項4】
請求項3に記載のメンブレンスイッチであって、前記メンブレンスイッチは、隣り合わせて配置された複数のスイッチユニットを含み、前記板ばねと前記筐体の板壁とを相互に結合する突部又は溝は、隣り合うスイッチユニットの境界部に設けられていることを特徴とするメンブレンスイッチ。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−107855(P2006−107855A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291017(P2004−291017)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000219808)東海通信工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】