説明

メンブレンスイッチ

【課題】押釦押圧動作が正しく効力を発揮するメンブレンスイッチ構造を提供する。
【解決手段】メンブレンスイッチ1は、ベースシート10に第1接点シート11、第1スペーサシート13、第2接点シート15、第2スペーサシート17、ディスク押さえシート20、第3スペーサシート21、オーバーレイシート22を重ね、第1スペーサシート13に形成した抜き穴14の中で第1接点シート11に形成した接点12と第2接点シート12に形成した接点16を所定間隔で向かい合わせ、抜き穴14と同心をなす形で第2スペーサシート17に形成した抜き穴18の中に形状復元力を備えたドーム型のディスク19を挿入した構造である。第2接点シート15の表面とそれに向き合うディスク19の内面との間の空間には厚み層26が配置される。厚み層26は熱硬化性樹脂を主たる組成物とするペーストを第2接点シート15にスクリーン印刷して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメンブレンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
メンブレンスイッチは、家庭電化製品や、特許文献1に示すパネルコンピュータ、コンピュータ用キーボードなどに広く利用されている。メンブレンスイッチについては、それを確実に動作させるための工夫が種々提案されている。例えば特許文献2に記載されたキー入力装置では、メンブレンスイッチの上に置いたラバーアクチュエータの内面に、狭い範囲に圧力を集中させる突起が形成されている。特許文献3記載のメンブレンスイッチにも、特許文献4記載のキーボードにも、類似の構造が開示されている。
【0003】
メンブレンスイッチの構成例を図3に示す。図3はメンブレンスイッチの模式的垂直断面図である。図3ではメンブレンスイッチ1はスイッチ面を上にして水平に置かれた形で描かれているが、これは説明の便宜のためであり、使用時の姿勢がこのように定まっている訳ではない。スイッチ面を斜めにしたり、垂直に立てたりして使用することもあり得る。本明細書では図3のように置いた状態で各構成要素の配置を説明する。
【0004】
メンブレンスイッチ1は、単層あるいは複層の合成樹脂製シートを複数枚重ねて構成される。一番下に来るのはベースシート10である。ベースシート10の上に重ねられるのは第1接点シート11である。第1接点シート11の片面、ここではベースシート10の方向と反対の方向を向く面(上面)には、接点12と、接点12に接続する配線部(図示せず)が形成されている。第1接点シート11の上には第1スペーサシート13が重ねられる。第1スペーサシート13には接点12を露出させる抜き穴14が形成されている。接点12は抜き穴14の中央に位置する。
【0005】
第1スペーサシート13の上には第2接点シート15が重ねられる。第2接点シート15の片面、ここではベースシート10の方向を向く面(下面)には、接点16と、接点16に接続する配線部(図示せず)が形成されている。接点16も抜き穴14の中央に位置するものであり、抜き穴14を通じて接点12に正面から向き合う。第1スペーサシート13の厚みのため、接点12と接点16は所定の間隔を置いて対峙している。
【0006】
第2接点シート15の上には第2スペーサシート17が重ねられる。第2スペーサシート17には第1スペーサシート13の抜き穴14と同心をなすように整列する抜き穴18が形成される。抜き穴18は抜き穴14よりも大直径であり、その中にドーム状のディスク19が、凹面側をベースシート10の方向に向けて挿入される。ディスク19は形状復元力を有し、上から圧力を加えると凹むが、圧力を解除すれば元の形状に復元する。ディスク19は自身が変形することにより指先の圧力を確実に第2接点シート15に伝える役割を果たす。ディスク19は金属製であることが多いが、他の材料、例えば合成樹脂製であっても構わない。
【0007】
第2スペーサシート17の上にはディスク押さえシート20が重ねられる。ディスク押さえシート20の上には第3スペーサシート21が重ねられ、さらにその上には、メンブレンスイッチ1の最上層をなすオーバーレイシート22が重ねられる。
【0008】
オーバーレイシート22には押すべき箇所を示す目印が形成される。図3では抜き穴18に重なる位置に押釦形状23を浮き出させ、これを目印としている。他の手法、例えば押釦の領域だけを色違いにしたり枠で囲んだりするとか、あるいは単に文字のみを表示するといった手法も採用可能である。
【0009】
これまでに述べたシート群は、重なり合うもの同士接着剤で接着される。ディスク19は抜き穴18に閉じ込められるだけであり、接着されない。
【0010】
第3スペーサシート21には、押釦形状23の下にあたる箇所に抜き溝24が形成されている。抜き溝24は紙面の奥行き方向に延びるものであり、ここに帯状の表示シート25が挿入される。オーバーレイシート22は全体が、あるいは押釦形状23の箇所のみが透明とされ、表示シート25の表面に記された文字や記号を視認できるようになっている。表示シート25を交換すればメンブレンスイッチ1の表示を変えられる。複数のメンブレンスイッチ1が一列に並んでいるときなど、その並びの方向に抜き溝24を形成し、各メンブレンスイッチ1に対応する表示を有する表示シート25をその中に挿入するものとすれば、複数のメンブレンスイッチ1に対する表示を一挙に形成し、また表示を一挙に交換することができる。
【0011】
図3のメンブレンスイッチ1において、押釦形状23を指で押すとその圧力は表示シート25からディスク押さえシート20を介してディスク19に伝わる。ディスク19は変形し、第2接点シート15を圧迫する。これにより第2接点シート15がたわみ、接点16が接点12に接触して電気的な導通が生じると、メンブレンスイッチ1はONとなる。
【特許文献1】特開2002−215330号公報
【特許文献2】特開平7−230349号公報
【特許文献3】特開2000−3633号公報
【特許文献4】特開2003−100173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のようなメンブレンスイッチ1が高温高湿の環境に置かれて長い時間が経過すると、シートが伸縮したり、歪んだりする。第1接点シート11と第2接点シート15に生じる変形は特に深刻である。というのは、それによって接点12、16が勝手に接触してしまうという事態が起こり得るからである。これを避けるにあたっては2種類のアプローチが有効である。第1のアプローチは第1接点シート11及び第2接点シート15の変形量を小さくすることである。第2のアプローチは第1接点シート11または第2接点シート15の伸縮や歪みによる接点12、16の接触を起こりにくくすることである。
【0013】
上記第1、第2のアプローチの対策例を図4に示す。第1のアプローチとしては、抜き穴14の直径を小さくする。これにより、第1接点シート11及び第2接点シート15は変形しにくくなる。第2のアプローチとしては、スペーサシート13の厚みを増して第1接点シート11と第2接点シート15の間隔を広げる。これにより、第1接点シート11または第2接点シート15が伸縮したり歪んだりしても接点12、16の接触は起こりにくくなる。
【0014】
しかしながら、上記第1のアプローチの対策と第2のアプローチの対策を単独で、または併せて実施すると、新たな問題が発生する。それは押釦押圧動作の効きが悪くなることである。つまり、しっかりと押し込まないで軽く押しただけではメンブレンスイッチ1はONにならず、「空打ち」に終わってしまう。
【0015】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、押釦押圧動作が正しく効力を発揮するメンブレンスイッチ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、ベースシートと、片面に形成された接点を前記ベースシートの方向と反対の方向に向けて前記ベースシートに重ねられる第1接点シートと、前記第1接点シートに重ねられ、自身の備える抜き穴より前記接点を露出させる第1スペーサシートと、片面に形成された接点を前記ベースシートの方向に向けて前記第1スペーサシートに重ねられ、前記抜き穴を通じて自身の接点を前記第1接点シートの接点に向かい合わせる第2接点シートと、前記第2接点シートに重ねられ、自身の備える抜き穴を前記第1スペーサシートの抜き穴に整列させる第2スペーサシートと、凹面側を前記ベースシートの方向に向けて前記第2スペーサシートの抜き穴に挿入される、形状復元力を備えたドーム形ディスクと、前記第2スペーサシートに重ねられるディスク押さえシートと、前記ディスク押さえシートに重ねられるオーバーレイシートと、を備えたメンブレンスイッチにおいて、前記第2接点シートの表面とそれに向き合う前記ディスクの内面との間の空間に厚み層を配置したことを特徴としている。
【0017】
この構成によると、厚み層の存在により、ディスクが変形すると第2接点シートが深くまで押し込まれるようになり、接点同士が接触ミスを起こすおそれが軽減される。厚み層という新しい構成要素を付加したとはいえ、構造は堅牢で、不具合を生じるおそれが少ない。特に、特許文献2〜4記載の突起と比較した場合、細い突起だと圧力によって破損する危険性があるのに対し、ある程度の面積を持った厚み層ではそのような危険性は少ない。また、長期間にわたる使用で厚み層にひびが入ったり、一部が欠けたりしたとしても、使用に支障を来すようなことはない。
【0018】
また本発明は、上記構成のメンブレンスイッチにおいて、前記厚み層が前記第2接点シートの表面に付着していることを特徴としている。
【0019】
この構成によると、厚み層の位置が一定なので、第2接点シートに対する力の伝わり方を一定にすることができる。
【0020】
また本発明は、上記構成のメンブレンスイッチにおいて、前記厚み層が前記第2接点シートからも前記ディスクからも分離していることを特徴としている。
【0021】
この構成によると、第2接点シートが変形しても、ディスクが変形しても、厚み層自身は変形しないでいられるので、厚み層の破損の危険性を減少させることができる。
【0022】
また本発明は、上記構成のメンブレンスイッチにおいて、前記厚み層をシルクスクリーン印刷で形成したことを特徴としている。
【0023】
この構成によると、厚み層を能率良く形成することができる。
【0024】
また本発明は、上記構成のメンブレンスイッチにおいて、前記厚み層は熱硬化性樹脂を主たる組成物とすることを特徴としている。
【0025】
この構成によると、高温にさらされたとしても厚み層は変わらぬ形状を保ち、スイッチの操作性に悪影響が生じない。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、押釦押圧動作が簡単な構成で正しく効力を発揮するようになり、高温高湿対策の代償である押釦押圧動作の効きの悪さを克服できる。それによりメンブレンスイッチが脆弱化することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下本発明の第1実施形態を図1に基づき説明する。図1は図3、4と同様のメンブレンスイッチの模式的垂直断面図である。実施形態の構成の中で、図3、4と共通する構成要素には図3、4で用いたのと同じ符号を付し、説明は省略する。
【0028】
本発明に係るメンブレンスイッチ1では、第2接点シート15の表面とそれに向き合うディスク19の内面との間の空間に厚み層26を配置する。第1実施形態では、第2接点シート15の表面に熱硬化性樹脂を主たる組成物とするペーストをシルクスクリーン印刷して厚み層26を形成する。厚み層26は第2接点シート15の表面に付着した状態を保つ。
【0029】
厚み層26の存在により、ディスク19が変形すると第2接点シート15が深くまで押し込まれるようになる。これにより、接点12と接点16が接触ミスを起こすおそれが軽減される。
【0030】
第2接点シート15を深くまで押し込むのに、特許文献2−4に見られるような突起をディスク19の内面(下面)に、例えば合成樹脂のアウトサート成型で形成するという手法も考えられる。しかしながらこの手法では、突起をアウトサート成型するのに新たに金型が必要になり、コストアップを招く。またディスク19自体が小さいので突起も細くせざるを得ず、突起が折損する危険性がある。だからと言って突起を太くすると、今度はディスク19が変形しにくくなり、ディスク19の機能が損なわれてしまう。これに対しある程度の面積に広がる厚み層26を配置するという本発明の構成によれば、細い突起と異なり折損を懸念せずに済む。また、長期間にわたる使用で厚み層26にひびが入ったり、一部が欠けたりしたとしても、使用に支障を来すようなことはない。
【0031】
第1実施形態のように第2接点シート15の表面に厚み層26を付着させておけば、厚み層26の位置が一定なので、第2接点シート15に対する力の伝わり方を一定にすることができる。また厚み層26の形成にスクリーン印刷を採用することにより、金型無しで安価に大量生産することが可能になる。
【0032】
厚み層26は連続して広がっていることを要しない。点状の突起を多数集合させたものであってもよい。またスクリーン印刷でなくフォトエッチングの手法で形成することも可能である。厚み層26の厚みと面積については、実験により最適値を求めることが望ましい。
【0033】
本発明の第2実施形態を図2に示す。図2は図1と同様のメンブレンスイッチの模式的垂直断面図である。
【0034】
第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、厚み層26が第2接点シート15から分離しているということである。厚み層26はディスク19からも分離している。このため、第2接点シート15が変形しても、ディスク19が変形しても、厚み層26自身は変形しないでいられるので、厚み層26の破損の危険性を減少させることができる。このときの厚み層26は、第2接点シート15の表面とそれに向き合うディスク19の内面との間の空間に挿入された独立の部品、例えば合成樹脂片であってもよいし、第2接点シート15の表面に一旦スクリーン印刷され、その後第2接点シート15から分離したものであってもよい。
【0035】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明はメンブレンスイッチに広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係るメンブレンスイッチの模式的垂直断面図
【図2】本発明の第2実施形態に係るメンブレンスイッチの模式的垂直断面図
【図3】従来のメンブレンスイッチの構造例を示す模式的垂直断面図
【図4】従来のメンブレンスイッチの高温高湿対策について説明する模式的垂直断面図
【符号の説明】
【0038】
1 メンブレンスイッチ
10 ベースシート
11 第1接点シート
12 接点
13 第1スペーサシート
14 抜き穴
15 第2接点シート
16 接点
17 第2スペーサシート
18 抜き穴
19 ディスク
20 ディスク押さえシート
21 第3スペーサシート
22 オーバーレイシート
24 抜き溝
26 厚み層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースシートと、
片面に形成された接点を前記ベースシートの方向と反対の方向に向けて前記ベースシートに重ねられる第1接点シートと、
前記第1接点シートに重ねられ、自身の備える抜き穴より前記接点を露出させる第1スペーサシートと、
片面に形成された接点を前記ベースシートの方向に向けて前記第1スペーサシートに重ねられ、前記抜き穴を通じて自身の接点を前記第1接点シートの接点に向かい合わせる第2接点シートと、
前記第2接点シートに重ねられ、自身の備える抜き穴を前記第1スペーサシートの抜き穴に整列させる第2スペーサシートと、
凹面側を前記ベースシートの方向に向けて前記第2スペーサシートの抜き穴に挿入される、形状復元力を備えたドーム形ディスクと、
前記第2スペーサシートに重ねられるディスク押さえシートと、
前記ディスク押さえシートに重ねられるオーバーレイシートと、を備えたメンブレンスイッチにおいて、
前記第2接点シートの表面とそれに向き合う前記ディスクの内面との間の空間に厚み層を配置したことを特徴とするメンブレンスイッチ。
【請求項2】
前記厚み層が前記第2接点シートの表面に付着していることを特徴とする請求項1に記載のメンブレンスイッチ。
【請求項3】
前記厚み層が前記第2接点シートからも前記ディスクからも分離していることを特徴とする請求項1に記載のメンブレンスイッチ。
【請求項4】
前記厚み層をシルクスクリーン印刷で形成したことを特徴とする請求項2に記載のメンブレンスイッチ。
【請求項5】
前記厚み層は熱硬化性樹脂を主たる組成物とすることを特徴とする請求項4に記載のメンブレンスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−80303(P2010−80303A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248154(P2008−248154)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000134109)株式会社デジタル (224)
【Fターム(参考)】