説明

メータガス栓

【課題】 全閉位置を規制すると共にその位置からの回動を防止する機構を簡単な構造でかつ安価に製造できるメータガス栓を提供することを目的とする。
【解決手段】 ガス栓本体2の上部開口縁24に円周方向略180°にわたって突出部25を形成し、ハンドル4には上下動可能な全閉位置規制用ボルト6と略180°離間した対向位置に回動防止用ボルト7をそれぞれ設け、前記全閉位置規制用ボルト6は予め下動させて前記突出部25の一方衝止壁25R又は25Lに突きあたるようになし、栓体3を回動して全閉位置を規制し、このとき回動防止用ボルト7は略180°隔てた他方の衝止壁25Lに位置し、この回動防止用ボルト7を他方の衝止壁25Lに係止するまで移動させることによって栓体3の正逆方向の回動を防止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスメータ配管等に使用され、全閉位置を規制すると共にハンドルがこの位置から回動するのを防止することができるメータガス栓に関するものである。また本発明は、ガス栓本体とハンドルとの間に防水機能を持たせたメータガス栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のメータガス栓としては、例えば図7および図8に示すものがある。図中10はガス栓本体であり、その内部にはガスの流入路10a及び流出路10bが形成されると共にこれら流入路10aと流出路10bとの間にテーパ孔状をなす栓体挿入孔10cが形成されている。この栓体挿入孔10cにはガス通路20aを有する栓体20が回動可能に挿入されており、栓体20を回動させることによりガス通路20aの中心線を流入路10a及び流出路10bと一致させた全開状態(図示の状態)と、ガス通路20aの中心線を流入路10a及び流出路10bに対して直交させた全閉状態とに切り換えられるようになっている。
【0003】
また、栓体20には連結部材30およびキー部材40を介して操作レバー50が回動不能に取り付けられている。また、この操作レバー50にはロックピン60が栓体20の回動軸線方向へ移動可能に設けられている。ロックピン60は全開位置または全閉位置において操作レバー50が不慮の事故やいたずらによって回動させられるのを防止するためのものであり、全開位置においてはガス栓本体10に形成された凹部10dに嵌入し、全閉位置においては凹部10eまたは10fに嵌入するようになっている。そして、ロックピン60をその摘み部60aを持ってコイルばね70に抗して持ち上げ、その状態で操作レバー50を回動させ、いずれかの凹部10d、10e、10fに嵌入させることにより全開位置または全閉位置から操作レバー50が回動するのを防止することができる。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0004】
本発明によるメータガス栓は、全閉位置規制機構と回動防止機構をガス栓本体の上部開口部とハンドルとの2者の間に設けただけのものであるから構造が極めて簡単で部品点数も少なくなった。以上によって、構造簡単で安価に製造できるメータガス栓となった。
また、ガス栓本体とハンドルとの間に防水密封機能を持たせることができたので栓体等が錆びることが無く、回動トルクの安定したメータガス栓となった。

【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のメータガス栓においては、全開位置と全閉位置の位置規制と回動防止が同時に行える点で優れているが、これらの機構はガス栓本体と操作レバー及び連結部材という三部材間にわたって設けられているため、構造が複雑でその加工にも手間が掛かり製造コストが高いという問題がある。
【0006】
また、この種のメータガス栓は戸外に設置されるものであるから栓体に錆が発生することがある。即ち、ガス栓本体とハンドルとの間には通常密封手段が設けられておらず栓体は外気に接した状態になる。この場合、栓体の外周面は栓体挿入孔の内周面と接しているので錆びる虞はほとんど無いが、開口部側に位置する栓体の端面が外気と接することになりその端面に錆が発生する。この錆は端面から徐々に栓体の内部に向かって進行するので、これによって栓体の皮膜が破壊され錆が拡がり栓体が回動不能に陥ったり、回動トルクが極めて高くなるという問題がある。そのため従来、ガス栓本体とハンドルとの間に樹脂製のシート材を介在させたり、ゴム製のOリングを装着したものがあるが、前者では防塵の効果程度で密封性はなく防水の効果はなかった。また後者のものでは製造コストが嵩み、かつ回動トルクが高くなるという問題を有していた。
【0007】
そこで本発明は、まず全閉位置を規制すると共にその位置からの正逆の回動を防止する機構を簡単な構造でかつ安価に製造できるメータガス栓を提供すること。またさらに、ガス栓本体とハンドルとの間に簡単かつ安価にできる防水密封機能を有するメータガス栓を提供することを目的とする。
【発明を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガス栓本体と、このガス栓本体の内部に回動可能に設けられ、全開位置から正または逆方向へそれぞれほぼ90゜回動して全閉状態とする栓体と、この栓体上部に係合し栓体を回動するハンドルとを有するメータガス栓において、前記ガス栓本体の上部開口縁に円周方向ほぼ180゜にわたって突出部を形成し、前記ハンドルには上下動可能な全閉位置規制用ボルトとほぼ180゜離間した対向位置に回動防止用ボルトをそれぞれ設け、前記全閉位置規制用ボルトは予め下動させて前記突出部の一方の衝止壁に突き当たるようになし、栓体を回動して前記全閉位置規制用ボルトが前記衝止壁に突き当たることによって全閉位置を規制し、このとき前記回動防止用ボルトはほぼ180゜隔てた他方の衝止壁に位置し、この回動防止用ボルトを前記他方の衝止壁に係止するまで移動させることによって栓体の正逆方向の回動を防止するようになしたメータガス栓である。
【0009】
ここで、上記全閉位置規制用ボルトおよび/または回動防止用ボルトは、特殊な工具によってのみ上下動できるようになっていることが望ましい。また、上記においてボルトは通常のねじ込み式ボルトの他にばね等を利用した構造によって上下動できるようになしたピン状のロック部材等も含むものとする。
【0010】
このメータガス栓によれば、通常の栓体の回動規制は全閉位置規制用ボルトが突出部の一方の衝止壁に当たって止まることにより全閉位置が規制される。そしてこのとき回動防止用ボルトも他方の衝止壁に当たるまでねじ込むことにより開方向の回動が規制される。すなわち、共通の突出部両端の衝止壁に両ボルトを衝止することにより栓体の正逆の回動が一度に規制できる。これはガス栓本体の上部開口縁に切り欠いて形成した突出部と操作ハンドル側に設けたボルト部材だけによって達成されるので極めて構造が簡単でかつ安価に製造できる。
【0011】
また本発明は、ガス栓本体と、このガス栓本体の内部に回動可能に設けられ、全開位置から正または逆方向へそれぞれほぼ90゜回動して全閉状態とする栓体と、この栓体上部に係合し栓体を回動するハンドルとを有するメータガス栓において、前記ガス栓本体の上部開口縁の外周に鍔部を形成し、一方前記ハンドルの前記ガス栓本体の鍔部に対向する位置に環状の袖部を形成し、当該鍔部と袖部の間に逆皿状の防水カラーを介在させると共に、該防水カラーの側面を前記ハンドルの袖部で押さえることによって防水カラーの下端部を弾性変形せしめ前記鍔部に圧着させて防水密封機能を待たせたメータガス栓である。尚、上記した全閉位置規制のメータガス栓にこの防水密封機能を持たせることもできる。
【0012】
このメータガス栓によれば、ガス栓本体の鍔部とハンドルの袖部との間に介在させた逆皿状の防水カラーによって両者が仕切られる。さらにハンドルの袖部は逆皿状の防水カラーのテーパ側面を上部から押さえることになりその下端面が鍔部に圧着することによって防水密封の性能が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例を図1〜図6の図面を参照して説明する。図1はメータガス栓の組立状態の縦断面図、図2は図1のメータガス栓の上面図、図3はガス栓本体の上面図、図4はガス栓本体の正面図、図5は防水カラーの正面図、図6は防水カラーを取り付けた部分の拡大断面図である。
【0014】
さて、図中符号2はガス栓本体であり、その内部には流入路2a、流出路2b及び栓体挿入部2cが形成されている。栓体挿入部2cには、回動軸線を流入路2a及び流出路2bと直交させ若干のテーパ外面となった円筒状の栓体3が回動自在に設けられている。この栓体3には、その回動軸線と直交するガス通路3aが形成されており、このガス通路3aが流入路2a及び流出路2bと同方向を向いた全開状態(図示の状態)と、ガス通路3aが流入路2a及び流出路2bと直交する方向を向いた全閉状態とに切り換えられるようになっている。
【0015】
また、栓体3の上部にはばね部材5を介して操作ハンドル4が回動不能に取り付けられている。これはハンドル4の下部に設けた嵌合凹部41及び係合用の鍔部42と、栓体3上部の嵌合凸部31及びガス栓本体2の開口部23の凹凸切り欠きによって形成した係合突出部21との組合せによって取り付けられる。すなわち、ガス栓本体側の凹凸切り欠きは図3の22で示す形状をしており、一方ハンドル側の鍔部42もこの形と相似形をしている。よって、この凹凸切り欠き22に沿ってハンドルの鍔部42をばね部材5の力に抗して押し下げて嵌めると、ハンドルの嵌合凹部41と栓体の嵌合凸部31が嵌合し、同時にこの位置からハンドルを90゜回すことにより鍔部42と係合突出部21が互いに引っかかり合ってハンドル4は抜け止めされると共に、栓体3とガス栓本体2に組み付けられる。
【0016】
ガス栓本体2のハンドル4と対向する開口部23の上部外縁24にはほぼ180゜(正確には下記するボルト6、7の半径分だけ小さい範囲である。)にわたって突出部25が形成されている。この突出部25は開口部の上部外縁24を逆にほぼ180゜にわたって削り取ることによって簡単に形成することができる。そしてこのとき突出部25の一方の端部には衝止壁25Rが、また他方の端部には衝止壁25Lが同時に形成されることになる。また、上部外縁24の外側に全周にわたって突出した鍔部26が形成されている。
【0017】
一方、ハンドル4の外周側で上記ガス栓本体の鍔部26に対向する位置には環状の袖部46を形成している。また、ハンドルの上部には一直線上の握り部45が突出形成されており、この握り部45の一端で、かつ前記ガス栓本体2の突出部25の同心円中心線上に全閉位置規制用ボルト6が上下動可能にねじ込まれている。またこの全閉位置規制用ボルト6から180゜離間した対向位置に同じく突出部25の同心円中心線上に上下動可能となした回動防止用ボルト7がねじ込まれている。尚、これらの全閉位置規制用ボルト6および/または回動防止用ボルト7は、ねじ孔43、44にねじ込まれているが通常の+−ドライバーや六角キーレンチ等では回転できないような特殊な形状としており、よってこれに合う特殊な工具を持っていない限りは操作できないようになっている。つまり、いたずら防止が出来ている。
【0018】
以上のメータガス栓1は、ガスメータ配管に取り付けられ通常は全開位置で使用される。そして時として全閉位置に戻して回転規制と誤作動を防止する必要がある。このような場合、図1に示す全開状態からハンドル4を一方向へほぼ90゜回動させると、全閉位置規制用ボルト6は、突出部25の衝止壁に突き当たるように予めねじ込まれているから、この全閉位置規制用ボルト6は一方の衝止壁25R(あるいは25L、以下同じ)に突き当たる。これによりハンドル4の過回動が阻止され、全閉位置が規制される。そして、この状態において回動防止用ボルト7は全閉位置規制用ボルト6に対して180゜離間しているから回動防止用ボルト7は他方の衝止壁25L(25R)の直前に位置していることになる。従って、ここで回動防止用ボルト7をねじ込んで衝止壁25L(25R)に突き当たるようにすれば、これ以上の回動は阻止される。以上により、ハンドル4は全閉位置規制用ボルト6および回動防止用ボルト7によって正逆両方向への回動を阻止され、これによって全閉位置における誤作動が防止される。
【0019】
以上のメータガス栓によれば、ガス栓本体2の上部開口縁24を切り欠いて設けた突出部25は同時に衝止壁25R、25Lを形成するものであり、これらは全閉位置規制用の壁の働きをなすことのみならず回動防止用の壁としても働くから、従来に比べ余分な加工や部品が必要でなく構造が簡単なものとなった。また、この切り欠き突出部25は同一平面でかつ同心円上に形成されることから、ガス栓本体の上部開口外縁部を削り落とす簡単な加工だけで形成できるので安価で手間が掛からない。そして、これらによってメータガス栓全体構造の簡略化とコンパクト化も達成できるようになった。
【0020】
次ぎに、このメータガス栓に設けた防水密封機能について説明する。まず防止カラーは図5に示すように略逆皿状をしており、厚さ0.2mm程度のポリプロピレン樹脂製の薄膜である。その中央部は貫通孔となっており、その外側に平面部81、側面は平行部82とテーパ部83そして下端部84とからなっている。この防水カラー8はグリスを塗り、ガス栓本体の開口縁24部分に平面部81を装着しハンドル4との間に介在させている。そして、ハンドル側の袖部46の内周端面には極小さい面取り47を形成し、ハンドル4をガス栓本体2に装着する際に、この袖部の面取り47によって防水カラー8のテーパー面83が押し付けられるようになっている。よって、この押し付け力によって防水カラー8のテーパ面83が弾性変形し、その下端部84はガス栓本体の鍔部26の上面に圧着し防水密封機能が達成される。
以上によって、外部からの水や塵芥の浸入が完全に阻止されることになり栓体等が錆びるようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示すメータガス栓の組立状態の縦断面図である。
【図2】図1のメータガス栓の上面図である。
【図3】メータガス栓本体の上面図である。
【図4】メータガス栓本体の正面図である。
【図5】防水カラーの正面図である。
【図6】防水カラー装着部の拡大断面図である。
【図7】従来のメータガス栓の一例を示す組立状態の縦断面図である。
【図8】図7のハンドルを取り除いた状態の上面図である。
【符号の説明】
【0022】
1…メータガス栓 2…ガス栓本体
2a…流入路 2b…流出路
2c…栓体挿入部 3…栓体
3a…ガス通路 4…ハンドル
5…ばね部材 6…全閉位置規制用ボルト
7…回動規制用ボルト 8…防水カラー
21…係合突出部 22…凹凸切り欠き
23…本体開口部 24…上部外縁
25…突出部 26…鍔部
25R、25L…衝止壁 31…栓体の凸部
41…ハンドルの凹部 42…ハンドルの鍔部
43、44…ボルト用ねじ孔 45…握り部
46…袖部 47…面取り部
83…防水カラーのテーパ面 84…防水カラーの下端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス栓本体と、このガス栓本体の内部に回動可能に設けられ、全開位置から正または逆方向へそれぞれほぼ90゜回動して全閉状態とする栓体と、この栓体上部に係合し栓体を回動するハンドルとを有するメータガス栓において、前記ガス栓本体の上部開口縁に円周方向ほぼ180゜にわたって突出部を形成し、前記ハンドルには上下動可能な全閉位置規制用ボルトとほぼ180゜離間した対向位置に回動防止用ボルトをそれぞれ設け、前記全閉位置規制用ボルトは予め下動させて前記突出部の一方の衝止壁に突き当たるようになし、栓体を回動して前記全閉位置規制用ボルトが前記衝止壁に突き当たることによって全閉位置を規制し、このとき前記回動防止用ボルトはほぼ180゜隔てた他方の衝止壁に位置し、この回動防止用ボルトを前記他方の衝止壁に係止するまで移動させることによって栓体の正逆方向の回動を防止することを特徴とするメータガス栓。
【請求項2】
前記全閉位置規制用ボルトおよび/または回動防止用ボルトは、特殊な工具によってのみ上下動できるようになっていることを特徴とする請求項1記載のメータガス栓。
【請求項3】
ガス栓本体と、このガス栓本体の内部に回動可能に設けられ、全開位置から正または逆方向へそれぞれほぼ90゜回動して全閉状態とする栓体と、この栓体上部に係合し栓体を回動するハンドルとを有するメータガス栓において、前記ガス栓本体の上部開口縁の外周に鍔部を形成し、一方前記ハンドルの前記ガス栓本体の鍔部に対向する位置に環状の袖部を形成し、当該鍔部と袖部の間に逆皿状の防水カラーを介在させると共に、該防水カラーの側面を前記ハンドルの袖部で押さえることによって防水カラーの下端部を弾性変形せしめ前記鍔部に圧着させたことを特徴とするメータガス栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−283979(P2006−283979A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167399(P2006−167399)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【分割の表示】特願平9−257206の分割
【原出願日】平成9年9月22日(1997.9.22)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(000106298)サンコー瓦斯精機株式会社 (39)
【出願人】(000241902)北海道瓦斯株式会社 (11)
【Fターム(参考)】