モジュラー認識ドメインを介してターゲティングする抗体
特異的部位に抗体をターゲティングさせるために使用される1つまたは複数のモジュラー認識ドメイン(MRD)を含む抗体を記載する。疾患を治療するための1つまたは複数のモジュラー認識ドメインを含む抗体の使用、および1つまたは複数のモジュラー認識ドメインを含む抗体を作製する方法もまた、記載する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、1つまたは複数のモジュラー認識ドメインを含む抗体、およびより具体的には、疾患を治療するための1つまたは複数のモジュラー認識ドメインを含む抗体の使用、ならびに1つまたは複数のモジュラー認識ドメインを含む抗体を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
触媒として活性なモノクローナル抗体(Ab)は、選択的プロドラッグ活性化および化学的変換のために使用され得る。アルドラーゼ活性を有するモノクローナルAbは、いくつかの化学的変換、特にアルドール反応およびレトロアルドール反応のための極めて効率的な触媒として台頭してきた。38C2および93F3などのAbのレトロアルドラーゼ活性のおかげで、研究者らは、レトロアルドール反応によって活性化され得る様々な化学療法剤のプロドラッグを設計、合成、および評価することができるようになった。(38C2の構築は、参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第97/21803号(特許文献1)において説明した)。38C2は、脂肪族ドナーとアルデヒドアクセプター間のアルドール添加反応を触媒する抗体結合部位を含む。神経芽細胞腫の同系マウスモデルにおいて、エトポシドプロドラッグの全身投与および38C2の腫瘍内注射により、腫瘍増殖が阻害された。
【0003】
触媒Abを使用する際の1つの欠点は、触媒Abを悪性細胞にターゲティングさせるための装置を欠いていることである。以前の研究では、抗体指向性酵素プロドラッグ治療法(ADEPT)アプローチまたは抗体指向性アブザイムプロドラッグ治療法(ADAPT)アプローチにおいて、ターゲティング抗体への化学的結合または組換え融合によって酵素または触媒抗体を腫瘍細胞に方向付け得ることが実証された。しかしながら、より効率的な代替方法は、抗体結合部位の外側に位置しているターゲティングペプチドに融合された触媒抗体を使用し、それによって、活性部位をプロドラッグ活性化のために利用可能な状態で残すことであろう。例えば、インテグリンαvβ3結合ペプチドにAb 38C2を融合すると、腫瘍および/または腫瘍血管系に抗体が選択的に局在化され、その部位でプロドラッグ活性化を開始させると思われる。このアプローチの潜在的な治療法は、抗体Fc領域への融合によってペプチドが有効な薬物に変換され得ることを示唆する前臨床データおよび第III相臨床データによって支持されている。
【0004】
2種またはそれ以上の癌標的を同時にターゲティングし、かつ/またはプロドラッグを活性化する二重特異性抗体または多重特異性抗体の開発により、癌および他の疾患を攻撃することに対する新規で有望な解決法が提供される。このような抗体は、本出願の図1に例示される。複数の細胞増殖/生存経路を下方調節するために2種の腫瘍関連抗原(例えば増殖因子受容体)を同時にターゲティングする二重特異性抗体(BsAb)の研究はこのアプローチに裏付けを与えた。二重特異性抗体は伝統的に、2つの異なるモノクローナル抗体を化学的に連結することによって、または2つのハイブリドーマ細胞株を融合してハイブリッドハイブリドーマを作製することによって調製されてきた。二重特異性の四価のIgG様分子または二重可変ドメイン免疫グロブリンは、2つのモノクローナル抗体から人工的に設計された。これらの二重可変ドメイン免疫グロブリンは、血清の存在下で両方の抗原に結合することができる。しかしながら、これらのアプローチには、製造、収率、および純度に関する難問がある。
【0005】
様々な組換え法が、ダイアボディ、ミニボディ、およびFab-scFv融合タンパク質などのBsAb小断片の効率的な作製のために開発されている。これらのBsAb断片の方が、組織侵入に優れ、血液循環からのクリアランスが速いため、腫瘍の放射線画像化およびターゲティングなどのある種の臨床応用のために完全長IgG様分子よりも有利な点をいくつか有し得る。他方、IgG様BsAbの方が、長い血清半減期を与え、かつ抗体依存性細胞障害および補体の媒介による細胞障害などの二次的免疫機能を支援するFcドメインを提供することにより、他のインビボ応用、具体的には腫瘍適用のためには小型BsAb断片より好ましいことが判明する場合もある。しかしながら、それらの断片対応物とは違って、組換えIgG様BsAbの人工的設計および作製は、サイズが大きく(約150〜200kDa)構造が複雑であるため、技術的にかなり難易度が高かった。動物モデルにおける適用の成功に基づいて判断すると、当技術分野における成功は非常に限定されていた。最近、様々な構築物の調査により、哺乳動物細胞におけるBsAb分子を含むFcドメインの効率的な発現はいくらか進歩した。
【0006】
抗体をターゲティングさせるために使用されている別のアプローチは、ペプチボディを用いることによる。ペプチボディは、本質的には、抗体Fc領域とのペプチド融合物である。多種多様の標的に対する高親和性ペプチドリガンドを見出すためのランダムペプチドライブラリーを用いた研究の成功を前提として、抗体Fc領域へのこのようなペプチドの融合により、それらの循環半減期の延長および増えた価数を介した活性の増大によってペプチドを治療的候補にする手段が提供される。
【0007】
他の分子とのタンパク質相互作用は、生化学の基本を成す。タンパク質相互作用には、受容体-リガンド相互作用、抗体-抗原相互作用、細胞同士の接触、および病原体と標的組織との相互作用が含まれる。タンパク質相互作用は、他のタンパク質、炭水化物、オリゴ糖、脂質、金属イオン、および同様の材料との接触を含み得る。タンパク質相互作用の基本単位は、接触および認識に関与しているタンパク質領域であり、結合部位または標的部位と呼ばれる。
【0008】
典型的には、ファージディスプレイライブラリーに由来するペプチドは、他の分子に連結された場合にその結合特徴を保持する。このタイプの特異的ペプチドは、いくつかの所定の標的に対する結合特異性を有する単一のタンパク質を作製するために組み合わせることができるモジュラー特異性ブロックまたは分子認識ドメイン(MRD)として扱うことができる。
【0009】
このような所定の標的部位の例はインテグリンである。インテグリンは、αサブユニットおよびβサブユニットから構成され、細胞外マトリックス内のタンパク質への細胞付着を媒介する膜貫通型細胞接着受容体のファミリーである。現在のところ、18種のαサブユニットおよび8種のβサブユニットが公知である;これらは、様々なECM細胞接着性タンパク質に対して様々な特異性を有する24種の異なるαβヘテロ二量体を形成する。様々なインテグリンに対するリガンドには、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、フォンウィレブランド因子、オステオポンチン、トロンボスポンジン、およびビトロネクチンが含まれ、これらはすべてECMの構成要素である。また、ある種のインテグリンは、フィブリノーゲンのような可溶性リガンドまたは隣接細胞上の他の接着分子に結合することができる。インテグリンは、リガンドに対して異なる親和性を示す独特な活性化状態で存在することが公知である。インテグリンによる可溶性リガンドの認識は、受容体の立体構造の特異的変化に厳密に依存する。これにより、細胞がインテグリン依存的に凝集する能力および血管系の動的流動条件下で停止する能力を制御する分子スイッチが提供される。このメカニズムは、非活性化インテグリンを発現している間、休止状態で血流内を循環する白血球および血小板に関して十分に確立されている。炎症誘発性アゴニストまたは血栓形成促進性アゴニストを介して刺激すると、これらの細胞型は、主要インテグリン、すなわち白血球に対するβ2インテグリンおよび血小板に対するαvβ3インテグリンの「休止」立体構造から「活性化」立体構造へのスイッチを含むいくつかの分子変化で迅速に応答する。これにより、これらの細胞型が血管系内で停止して、細胞粘着を促進し、血栓形成をもたらすことが可能になる。
【0010】
ヒト乳癌細胞の転移性部分集団が、構成的に活性化された形態のインテグリンαvβ3を発現することが実証されている。αvβ3のこの異常発現は、乳癌ならびに前立腺癌、黒色腫、および神経芽細胞腫瘍の転移において役割を果たす。活性化された受容体は、癌細胞遊走を強く促進し、細胞が血流条件下で停止できるようにする。このようにして、αvβ3の活性化は、標的器官への播種および定着の成功に不可欠である可能性が高い重要な特性を転移性細胞に与える。αvβ3マトリックス相互作用は細胞の生存および増殖を促進できるため、標的器官に入ることに成功した腫瘍細胞はさらにαvβ3を利用して、新しい環境で力強く成長し得る。例えば、オステオポンチンにαvβ3が結合すると悪性度が高まり、オステオポンチンレベルの上昇は乳癌の予後不良と相関がある。
【0011】
これらの理由から、および血管新生における確立された役割から、αvβ3インテグリンは、最も幅広く研究されているインテグリンの内の1つである。この分子のアンタゴニストは、ターゲティングドラッグデリバリーにおいて使用するためにかなり有望である。αvβ3インテグリンをターゲティングするのに使用されてきた1つのアプローチは、Arg-Gly-Asp (RGD)配列を含むペプチドのαvβ3に対する高い結合特異性を使用する。細胞外マトリックスタンパク質中に天然に存在するこのトリペプチドは、αvβ3インテグリンの主要な結合部位である。しかしながら、RGDベースのレポータープローブは、血液クリアランスが速いこと、腎臓および肝臓での取込みが多いこと、ならびに腫瘍からのウォッシュアウトが速いことが原因で、問題がある。環化RGDペプチドの化学修飾は、それらの安定性および価数を増大させることが示されている。次いで、これらの修飾ペプチドは放射性同位体(radio-isotpe)に結合され、腫瘍画像化のためまたは腫瘍増殖を阻害するために使用される。
【0012】
インテグリンαvβ3は、最も良く特徴付けられているインテグリンヘテロ二量体の内の1つであり、腫瘍によって誘導される血管新生に関係があるとされているいくつかのヘテロ二量体の内の1つである。成熟血管においては少なめに発現されるものの、αvβ3はインビボにおいて血管新生の間に顕著に上方調節されている。αvβ3の発現は、乳癌および子宮頸癌ならびに悪性黒色腫において疾患の攻撃性と相関している。最近の研究によって、αvβ3がいくつかの腫瘍の診断指標または予後指標として有用であり得ることが示唆されている。インテグリンαvβ3は、細胞分布が比較的限定されているため、治療標的として特に魅力的である。これは通常上皮細胞では発現されず、他の細胞型では最小限に発現される。さらに、環状RGDペプチドおよびモノクローナル抗体の両方を含むαvβ3アンタゴニストは、サイトカインによって誘導される血管新生およびヒヨコ絨毛尿膜上の固形腫瘍の増殖を有意に阻害する。
【0013】
別のインテグリンヘテロ二量体αvβ5は、より広範囲に悪性腫瘍細胞上で発現され、VEGFを介した血管新生に関与している可能性が高い。αvβ3およびαvβ5は別個の経路を介して血管新生を促進することが示されている:
αvβ3はbFGFおよびTNF-aを介し、αvβ5はVEGFおよびTGF-αを介する。また、Srcキナーゼの阻害は、VEGFに誘導される血管新生は妨害できるがFGF2に誘導される血管新生は妨害できないことも示されている。これらの結果から、FGF2およびVEGFが、αvβ3およびαvβ5をそれぞれ必要とする異なる血管新生経路を活性化することが強く暗示される。
【0014】
また、インテグリンは腫瘍転移にも関係があるとされている。転移は、癌において病的状態および死亡の主要な原因である。黒色腫、神経膠腫、卵巣、および乳癌の悪性進行はすべて、インテグリンαvβ3の発現、および場合によってはαvβ5と強く関連付けられている。さらに最近では、インテグリンαvβ3の活性化がヒト乳癌の転移において重要な役割を果たすことが示されている。正常な乳房上皮がαvβ3陰性であり、浸潤性小葉癌の約50%および乳癌の骨転移のほぼすべてがαvβ3を発現するというαvβ3発現と乳癌転移の間の非常に強い相関が注目されている。環状ペプチドによるαvβ3拮抗作用は、乳癌異種移植片を使用する研究において放射免疫療法との相乗作用を示すことが示されている。
【0015】
血管新生、すなわち既存の血管からの新しい血管の形成は、多くの(may)生理学的プロセスおよび病理学的プロセスに不可欠である。通常は、血管新生は血管新生促進因子および抗血管新生因子によってしっかりと調節されているが、癌、眼の血管新生疾患、関節炎、および乾癬などの疾患の場合には、このプロセスはおかしくなり得る。血管新生と疾患が関連しているため、抗血管新生化合物の発見が魅力的になった。Amgen社によって開発された、これまでに説明されている最も有望なファージ由来抗血管新生ペプチドは、血管新生サイトカインAng2を中和する。
【0016】
VEGFおよびそれらの受容体は、血管新生分野において最も大規模にターゲティングされている分子の1つであるが、より最近に発見されたアンジオポエチン-Tie2経路をターゲティングする前臨床的試みが進行中である。どちらのタンパク質ファミリーもリガンド受容体相互作用を伴い、どちらも、出生後に内皮細胞および一部の造血幹細胞系に機能がほとんど限定されるメンバーを含む。Tie-2は、アンジオポエチン-1(Ang1)からアンジオポエチン-4(Ang4)までの4種の公知のリガンドを有する受容体型チロシンキナーゼであり、最も良く研究されているのはAng1およびAng2である。Ang1はTie2のリン酸化を刺激し、Ang2とTie2の相互作用は、Tie2受容体リン酸化を打ち消しもし、刺激もすることが示されている。正常な生後血管新生部位および病理学的生後血管新生部位におけるAng2発現の増大は、Ang2の血管新生促進役割を状況証拠的に暗示する。血管新生に付随する血管選択的Ang2誘導が、癌を含む疾患で実証されてきた。結腸癌患者では、Ang2は腫瘍上皮中の至る所で発現されるのに対し、Ang1の腫瘍上皮中での発現はまれであることが示された。Ang2活性の正味の増大は、腫瘍血管新生の開始因子であることが示唆されている。
【0017】
細胞受容体を対象とする他の融合タンパク質は臨床的評価を受けている最中である。Genentech社によって開発されたHerceptin(ハーセプチン)(Trastuzumab(トラスツズマブ))は、ヒト表皮チロシンキナーゼ受容体2(HER2またはErbB2)の細胞外ドメインを対象とする組換えヒト化モノクローナル抗体である。HER2遺伝子は、浸潤性乳癌の25%で過剰発現されており、予後不良および化学療法剤に対する感受性の変化に関連付けられている。HerceptinはErbB2過剰発現を示す乳癌の増殖を妨害し、現在のところ、ErbB2過剰発現を示す転移性乳癌(MBC)の治療用にFDAによって承認されている唯一のErbB2ターゲティング抗体療法である。正常な成体細胞では、細胞1個当たり約20,000個の少数のErbB2分子しか細胞表面に存在せず、したがって、ヘテロ二量体は少ししか形成されず、増殖シグナルは比較的弱く制御可能である。ErbB2が過剰発現される場合、細胞1個当たり約500,000個の多数のErbB2ヘテロ二量体が形成され、細胞シグナル伝達はより強く、その結果、増殖因子に対する応答性が強くなり、悪性増殖が起こる。ErbB2過剰発現が乳房腫瘍の予後不良の指標であり、治療に対する応答の予測に役立ち得るのは、このためである。
【0018】
ErbB2は、原発腫瘍および転移部位の両方に存在する場合、乳癌の有望かつ有効な標的である。Herceptinは、細胞表面からのErbB2の迅速な除去を誘導し、それによって、ErbB2がヘテロ二量体化し増殖を促進する有効性を低下させる。インビトロおよびインビボの実験モデルで観察されているHerceptinの作用メカニズムには、ErbB2の細胞外ドメインのタンパク分解の阻害、ホスファチジルイノシチオール(phosphatidylinositiol)3-キナーゼ(P13K)カスケードおよびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)カスケードなどの下流のシグナル伝達経路の妨害、GI細胞周期停止、DNA修復の阻害、血管新生の抑制、ならびに抗体依存性細胞障害(ADCC)の誘導が含まれる。しかしながら、Herceptinに最初は応答する転移性乳癌患者の大半は、治療開始から1年以内に疾患の進行を示す。
【0019】
別の標的細胞受容体は、1型インスリン様増殖因子-1受容体(IGF-1R)であり、IGF-1Rは、シグナル伝達細胞の生存および増殖において決定的に重要な役割を果たす受容体型チロシンキナーゼである。IGF系は、IGF-IもしくはIGF-IIおよび/またはIGF-1Rの過剰発現を伴う自己分泌ループの確立によって、癌細胞においてしばしば調節解除される。さらに、疫学的研究により、IGFレベルの上昇と主要なヒト癌、例えば乳癌、結腸癌、肺癌、および前立腺癌の発症との関連が示唆されている。IGFおよびそれらの同族受容体の発現は、病期、生存率の低下、転移発生、および腫瘍の脱分化と相互に関係付けられている。
【0020】
IGF-1Rに加えて、上皮増殖因子受容体(EGFR)もまた、多数の癌の腫瘍形成に関係があるとされている。有効な腫瘍抑制は、いずれかの受容体活性を打ち消すいくつかの戦略を用いて、実験的にも臨床的にも達成されている。腫瘍細胞では増殖シグナル伝達経路が重複しているため、一方の受容体機能(例えばEGFR)を阻害しても、他方の増殖因子受容体(例えばIGF-1R)を介した経路の上方調節によって効果的に埋め合わせられ得る。例えば、最近の研究により、同等のEGFRを発現する悪性神経膠腫細胞株のEGFR阻害に対する感受性が、IGF-1Rおよびその下流のシグナル伝達経路を活性化する能力によって有意に異なることが示された。また、他の研究により、腫瘍細胞におけるIGF-1Rの過剰発現および/または活性化が、化学療法剤、放射線療法、またはHerceptinのような抗体療法に対する耐性に寄与し得ることも実証された。その結果として、IGF-1Rシグナル伝達を阻害すると、Herceptinに対する腫瘍細胞の感受性が高まった。
【0021】
EGFRは、多くの正常組織ならびに大半の器官の新生物性病変において発現される受容体型チロシンキナーゼである。EGFRの過剰発現または変異型EGFRの発現は、多くの腫瘍、特に上皮性腫瘍において観察されており、臨床的予後不良に関連付けられている。この受容体を介したシグナル伝達の阻害により、抗腫瘍効果が誘導される。Erbitux(エルビタックス)としても公知のCetuximab(セツキシマブ)(マウス/ヒトキメラ抗体)が2004年2月にFDAによって承認されたことにより、EGFRは、転移性結腸直腸癌の治療用に承認された抗体薬標的となった。2006年3月に、Erbituxはまた、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)の治療用にFDA承認を受けた。さらに最近では、EGFRを対象とする完全ヒト抗体であるVectibix(ベクチビックス)が転移性結腸直腸癌用に承認された。どちらの薬物も、結腸直腸癌において独立型の作用物質ではない−これらは既存の結腸直腸治療プログラムへの追加物として承認された。結腸直腸癌では、Erbituxは薬物イリノテカンと組み合わせて与えられ、Vectibixは疾患進行の後、またはフルオロピリミジン、オキサリプラチン、およびイリノテカンを含む化学療法治療プログラムの後に投与される。Erbituxは、事前の白金を用いた化学療法が失敗した場合のみ、再発性SCCHNまたは転移性SCCHNにおいて単剤として承認されている。非小細胞肺癌をターゲティングするためにこれらの薬物を使用する進歩した臨床試験が進行中である。ErbituxまたはEGFR抗体の配列は当技術分野において周知である(例えば、参照により本明細書に組み入れられるGoldstein, et al., Clin.Cancer Res. 1:1311, 1995(非特許文献1);米国特許第6,217,866号(特許文献2)を参照されたい)。
【0022】
癌療法において選択的プロドラッグ活性化のために触媒抗体を利用する際の障害は、全身的な腫瘍ターゲティングであった。本発明は、触媒抗体のプロドラッグ活性化能力を保持しつつ腫瘍細胞または可溶性分子を効果的にターゲティングする完全長抗体に融合される、標的結合ペプチドまたはモジュラー認識ドメイン(MRD)の適応に基づいたアプローチを説明する。MRDは、抗体の従来の結合部位への結合を有意に減少させないように抗体に融合されるため、抗体の特異性はMRD付加後も損なわれないままである。
【0023】
図2で説明するように、三角形、円、および四角形で示したMRDは、典型的な抗体の重鎖または軽鎖のどちらかの末端のいずれかに付加され得る。最初の概略図は、FcのC末端に融合されたペプチドを有する単純ペプチボディを表す。このアプローチにより、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、および五重特異性抗体の調製が提供された。IgGの各N末端およびC末端に1つのMRDを提示することにより、MRDの八価の図が提供される。抗体可変ドメインの組合せによる二機能性抗体および多機能性抗体の構築の代替え方法として、ファージディスプレイライブラリーより選択されるかまたは天然リガンドに由来する高親和性ペプチドは、従来の抗体の結合および半減期の利点の両方を保持する多機能性抗体の構築への汎用性が極めて高いモジュラー式のアプローチを与え得る。また、MRDは、非触媒抗体の結合能力を増大させて、特に治療目的のために抗体の結合機能性を増大させるための有効なアプローチを提供し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開公報第97/21803号
【特許文献2】米国特許第6,217,866号
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Goldstein, et al., Clin.Cancer Res. 1:1311, 1995
【発明の概要】
【0026】
概要
本発明は、モジュラー認識ドメイン(MRD)を含む完全長抗体を対象とする。また、MRDを含むこのような抗体の変種および誘導体も本発明に包含される。
【0027】
1つの局面において、抗体およびMRDは、リンカーペプチドを介して機能的に連結される。1つの局面において、リンカーペプチドは、2〜20の間もしくは4〜10の間のペプチド長、または約4〜15ペプチド長である。本発明の1つの局面において、リンカーペプチドは、配列GGGS(SEQ ID NO: 1)、配列
、または配列
を含む。SEQ ID NO: 1に示すコア配列GGGSを含む他のリンカーは、リンカーペプチドが約4〜20アミノ酸長である場合、本明細書に含まれる。
【0028】
本発明の別の態様によれば、MRDは、抗体の重鎖のC末端に機能的に連結される。別の局面において、MRDは、抗体の重鎖のN末端に機能的に連結される。さらに別の局面において、MRDは、抗体の軽鎖のC末端に機能的に連結される。別の局面において、MRDは、抗体の軽鎖のN末端に機能的に連結される。別の局面において、2つまたはそれ以上のMRDは、抗体の任意の末端に機能的に連結される。別の局面において、2つまたはそれ以上のMRDは、抗体の2つまたはそれ以上の末端に機能的に連結される。
【0029】
本発明の1つの態様において、MRDの標的は細胞性抗原である。本発明の1つの態様において、MRDの標的はCD20である。
【0030】
本発明の1つの態様において、MRDの標的はインテグリンである。1つの局面において、インテグリンをターゲティングするMRDのペプチド配列は、YCRGDCT(SEQ ID NO: 3)である。別の局面において、インテグリンをターゲティングするMRDのペプチド配列は、PCRGDCL(SEQ ID NO: 4)である。さらに別の局面において、インテグリンをターゲティングするMRDのペプチド配列は、TCRGDCY(SEQ ID NO: 5)である。別の局面において、インテグリンをターゲティングするMRDのペプチド配列は、LCRGDCF(SEQ ID NO: 6)である。
【0031】
本発明の1つの態様において、MRDの標的は血管新生サイトカインである。1つの局面において、血管新生サイトカインをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。別の局面において、血管新生サイトカインをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。さらに別の局面において、血管新生サイトカインをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。別の局面において、血管新生サイトカインをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。別の局面において、血管新生サイトカインをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。別の局面において、血管新生サイトカインをターゲティングするMRDのペプチド配列は、PXDNDXLLNY(SEQ ID NO: 12)(Xは、20種の天然アミノ酸の内の1つである)である。別の態様において、ターゲティングMRDペプチドは、コア配列MGAQTNFMPMDXn(SEQ ID NO: 56)(Xは任意のアミノ酸であり、nは約0〜15である)を有する。
【0032】
別の態様において、ターゲティングMRDペプチドは、以下より選択されるコア配列を含む:
XnEFAPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 22);
XnELAPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 25);
XnEFSPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 28);
XnELEPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 31);
ならびに
(nは約0〜50個のアミノ酸残基であり、X、X1、およびX2は任意のアミノ酸である)(SEQ ID NO: 57)。
【0033】
このようなコアペプチドを含む例示的なペプチドには、例えば以下のものが含まれる:
。
【0034】
本発明の1つの態様において、MRDの標的はErbB2である。本発明の1つの態様において、MRDの標的はErbB3である。本発明の1つの態様において、MRDの標的は、腫瘍に関連した表面抗原上皮細胞接着分子(Ep-CAM)である。
【0035】
本発明の1つの態様において、MRDの標的はVEGFである。1つの局面において、VEGFをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。
【0036】
本発明の1つの態様において、MRDの標的は、インスリン様増殖因子-I受容体である。1つの局面において、インスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。IGF-1Rをターゲティングする他の例示的なMRDには、例えば、式
(X1はEまたはDであり;X2は任意のアミノ酸であり;X3は任意のアミノ酸であり;X4は任意のアミノ酸であり;X5は任意のアミノ酸である)を有するペプチドが含まれる。
【0037】
この式を含む例示的なペプチドには、
が含まれる。
【0038】
本発明の1つの態様において、MRDの標的は腫瘍抗原である。
【0039】
本発明の1つの態様において、MRDの標的は、上皮増殖因子受容体(EGFR)である。本発明の1つの態様において、MRDの標的は血管新生因子である。本発明の1つの態様において、MRDの標的は血管新生受容体である。
【0040】
本発明の1つの態様において、MRDは血管ホーミングペプチドである。1つの局面において、血管ホーミングペプチドのペプチド配列は、ACDCRGDCFCG(SEQ ID NO: 15)である。
【0041】
本発明の1つの態様において、MRDの標的は神経成長因子である。本発明の1つにおいて、抗体は細胞表面抗原に結合する。
【0042】
本発明の1つの態様において、抗体またはMRDは、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、CD20、インスリン様増殖因子-I受容体、または前立腺特異的膜抗原に結合する。1つの局面において、EGFRをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。1つの局面において、EGFRをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。本発明の1つの局面において、ErbB2をターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。
【0043】
本発明の1つの態様において、抗体は血管新生因子に結合する。
【0044】
本発明の1つの態様において、抗体は血管新生受容体に結合する。
【0045】
本発明はまた、抗体のヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドに関する。本発明の1つの局面において、ベクターはこのポリヌクレオチドを含む。さらに別の局面において、このポリヌクレオチドは、このポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列に機能的に連結される。1つの局面において、宿主細胞はこのポリヌクレオチドまたは子孫を含む。
【0046】
本発明はまた、MRDを含む抗体を投与する段階を含む、それを必要とする対象において疾患を治療する方法に関する。1つの局面において、疾患は癌である。別の局面において、望まれない血管新生が阻害される。さらに別の局面において、血管新生は調整される。さらに別の局面において、腫瘍増殖が阻害される。別の態様において、MRDを含む抗体と共に、追加の治療物質を投与する段階を含む治療方法が説明される。
【0047】
本発明はまた、MRDを含む完全長抗体を作製する方法にも関する。1つの局面において、MRDはファージディスプレイライブラリーに由来する。別の局面において、MRDは天然リガンドに由来する。
【0048】
本発明の1つの態様において、抗体はキメラ抗体またはヒト化抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】四価のIgG様BsAbの様々な設計の概略図を示す。
【図2】図2Aは、FcとのC末端融合物としての典型的なペプチボディを示す。図2Bは、抗体の軽鎖とのC末端MRD融合物を有する抗体を示す。図2Cは、抗体の軽鎖とのN末端MRD融合物を有する抗体を示す。図2Dは、抗体の各末端に融合された独特なMRDペプチドを有する抗体を示す。
【図3】ang-2をターゲティングするMRDに融合された抗インテグリン抗体がインテグリンおよびAng2に結合した場合のELISAの結果を示す。
【図4】ang-2をターゲティングするMRDに融合された抗インテグリン抗体がインテグリンおよびAng2に結合した場合のELISAの結果を示す。
【図5】Ang2をターゲティングするMRDに抗ErbB2抗体が融合された場合のELISAの結果を示す。
【図6】Ang2をターゲティングするMRDが肝細胞増殖因子受容体結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図7】インテグリンをターゲティングするMRDがErbB2結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図8】インテグリンをターゲティングするMRDが肝細胞増殖因子受容体結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図9】インスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDがErbB2結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図10】VEGFをターゲティングするMRDがErbB2結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図11】インテグリンをターゲティングするMRDが触媒抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図12】Ang-2をターゲティングするMRDが触媒抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図13】インテグリンおよびAng-2をターゲティングするMRDがErbB2結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図14】インテグリンをターゲティングするMRDがErbB2結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図15】インテグリン、Ang-2、またはインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDが、短いリンカーペプチドによってErbB2または肝細胞増殖因子受容体結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図16】インテグリン、Ang-2、またはインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDが、長いリンカーペプチドによってErbB2または肝細胞増殖因子受容体結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
発明の詳細な説明
本明細書において使用される「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリン分子を意味し、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、ならびにヒト化抗体を含む。無傷の抗体は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略される)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3種のドメイン、すなわちCH1、CH2、およびCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略される)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1種のドメイン、すなわちCLからなる。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存の程度が高い領域に点在している、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序で配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。
【0051】
「二重特異性抗体」は、二重可変ドメイン免疫グロブリンを含む免疫グロブリン分子を意味するために本明細書において使用され、この二重可変ドメインは任意の2つのモノクローナル抗体から人工的に設計することができる。
【0052】
「抗体結合部位」は、抗原に特異的に結合する(免疫反応する)重鎖および軽鎖の可変領域および超可変領域からなる、抗体分子の構造的部分である。様々な形態の「免疫反応する」という用語は、抗原決定基を含む分子と抗体結合部位を含む分子、例えば全長抗体分子またはその一部分との特異的結合を意味する。
【0053】
「ペプチボディ」という用語は、完全とは言えない無傷の抗体を含むペプチドまたはポリペプチドを意味する。
【0054】
「天然」という用語は、核酸分子、ポリペプチド、および宿主細胞などの生物学的材料に関連して使用される場合、自然界に存在し、ヒトによって改変されていないものを意味する。
【0055】
「モノクローナル抗体」とは、特定のエピトープと免疫反応できる抗体結合部位を1種類だけ含む抗体分子集団を意味する。したがって、モノクローナル抗体は典型的には、免疫反応する任意のエピトープに対して単一の結合親和性を示す。したがって、モノクローナル抗体は、異なるエピトープに対してそれぞれが免疫特異的である複数の抗体結合部位を有する抗体分子、例えば、二重特異性モノクローナル抗体を含んでよい。
【0056】
「モジュラー認識ドメイン」(MRD)または「標的結合ペプチド」は、標的分子に特異的に(ランダムではなく)結合できる分子、例えば、タンパク質および糖タンパク質などである。MRD部位のアミノ酸配列は、ある程度の可変性を許容し、標的分子に結合する能力の程度を引き続き保持することができる。さらに、配列の変化は、予め選択された標的分子と結合部位の間の結合特異性および結合定数の変化をもたらし得る。
【0057】
「細胞表面受容体」とは、シグナルを受け取ること、および細胞の形質膜を通してそのようなシグナルを伝達することができる分子および分子複合体を意味する。本発明の細胞表面受容体の例は、活性化インテグリン受容体、例えば、転移性細胞上の活性化αvβ3インテグリン受容体である。
【0058】
「標的結合部位」または「標的部位」は、予め選択された作用物質に選択的に結合する能力を有する公知またはまだ説明されていない任意のアミノ酸配列である。例示的な参照標的部位は、RGD依存性インテグリンリガンドに由来するもの、すなわちフィブロネクチン、フィブリノーゲン、ビトロネクチン、およびフォンウィレブランド因子など、細胞受容体に由来するもの、例えば、VEGF、ErbB2、血管ホーミングペプチド、または血管新生サイトカイン、タンパク質ホルモン受容体に由来するもの、例えば、インスリン様増殖因子-I受容体および上皮増殖因子受容体など、ならびに腫瘍抗原に由来するものである。
【0059】
「タンパク質」という用語は、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸に由来する単位を含む生物学的高分子と定義される。タンパク質は2つまたはそれ以上の鎖から構成され得る。
【0060】
「融合ポリペプチド」は、少なくとも2つのポリペプチドおよび任意で、それら2つのポリペプチドを機能的に連結して1つのつながったポリペプチドにする連結配列からなるポリペプチドである。融合ポリペプチド中で連結される2つのポリペプチドは典型的には、2つの独立した供給源に由来し、したがって、融合ポリペプチドは、通常は自然界で連結して存在しない2つの連結されたポリペプチドを含む。
【0061】
「リンカー」という用語は、抗体とMRDの間に位置するペプチドを意味する。リンカーは約2〜20個のアミノ酸、通常4〜15個のアミノ酸を有してよい。
【0062】
「標的細胞」は、本発明のMRDを含む抗体によってターゲティングされ得る対象(例えば、ヒトまたは動物)中の任意の細胞を意味する。標的細胞は、活性化インテグリン受容体のような標的結合部位を発現または過剰発現する細胞でよい。
【0063】
「患者」、「対象」、「動物」、または「哺乳動物」は同義的に使用され、ヒト患者および非ヒト霊長類、ならびに実験動物、例えば、ウサギ、ラット、およびマウス、ならびに他の動物などの哺乳動物を意味する。動物には、すべての脊椎動物、例えば、ヒツジ、イヌ、雌ウシ、ニワトリ、両生類、および爬虫類などの哺乳動物および非哺乳動物が含まれる。
【0064】
「治療すること」または「治療」は、疾患の症状、合併症、または生化学的徴候の発生を予防または遅延させて、症状を緩和するか、または疾患、病態、もしくは障害のそれ以上の発達を停止もしくは阻害するための、本発明のMRDを含む抗体の投与を含む。治療は予防的(疾患の発症を予防もしくは遅延させるため、またはその臨床的症状もしくは不顕性症状の発現を予防するため)または疾患発現後の症状の治療的な抑制もしくは軽減でよい。治療は、抗体-MRD組成物のみを用いてもよく、または追加の治療物質と組み合わせて使用してもよい。
【0065】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される」または「生理学的に容認される」という用語およびその文法的変形は、組成物、担体、希釈剤、および試薬に関する場合、同義的に使用され、それらの材料が、悪心、めまい、および胃の不調など望ましくない生理学的作用をもたらすことなくヒトに(to or upon)投与できることを表す。
【0066】
「調整する」とは、大きさ、頻度、程度、または活性の調整または調節を意味する。別の関連する局面において、このような調整は、正に調整されてもよく(例えば、頻度、程度、もしくは活性の増大)または負に調整されてもよい(例えば、頻度、程度、もしくは活性の低減)。
【0067】
「癌」、「腫瘍」、または「悪性腫瘍」は同義語として使用され、細胞の制御不能な異常増殖、罹患細胞が局所的にまたは血流およびリンパ系を介して身体の他の部分に広がる(転移する)能力、ならびにいくつかの特徴的な構造的特徴および/または分子的特徴のいずれかを特徴とするいくつかの疾患のいずれかを意味する。「癌性」、「腫瘍」、または「悪性細胞」は、特定の構造的特性を有し、分化を欠き、かつ浸潤および転移することができる細胞と理解される。癌の例は、乳癌、肺癌、脳癌、骨癌、肝臓癌、腎臓癌、結腸癌、頭頸部癌、卵巣癌、造血系癌(例えば白血病)、および前立腺癌である。
【0068】
「ヒト化抗体」または「キメラ抗体」には、マウスのような別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に接ぎ合わせられている抗体が含まれる。
【0069】
本発明は、触媒抗体のプロドラッグ活性化能力を損なわれないままにしつつ腫瘍細胞または可溶性分子の効果的なターゲティングを提供する、触媒抗体または非触媒抗体への融合物としての標的結合ペプチドまたはモジュラー認識ドメイン(MRD)の適応に基づいたアプローチを説明する。また、MRDは、非触媒抗体の結合能力を増大させて、特に治療目的のために抗体の結合機能性を増大させるための有効なアプローチを提供し得る。
【0070】
本発明の1つの局面は、モジュラー認識ドメイン(MRD)を含む完全長抗体の開発に関する。タンパク質リガンドとその標的受容体部位との相互作用は、比較的広い境界面でしばしば起こる。しかしながら、境界面のごく少数の主要残基だけが結合の大部分に寄与する。したがって、(一般に2〜60アミノ酸)ペプチド長の分子が、所与の大型タンパク質リガンドの受容体タンパク質に結合することができる。本発明のMRDが、関心対象の標的部位に結合し、約2〜60個のアミノ酸であるペプチド配列を含むことが企図される。
【0071】
αvβ3およびαvβ5などのインテグリンの腫瘍関連マーカーとしての役割は十分に実証されている。進行した卵巣癌から樹立した25種の永久ヒト細胞株に関する最近の研究により、すべての株がαvβ5発現に関して陽性であり、多くがαvβ3発現に関して陽性であることが実証された。また、αvβ3およびαvβ5が悪性ヒト子宮頸部腫瘍組織において高発現されていることも研究によって示された。インテグリンはまた、カポジ肉腫、黒色腫、および乳癌の動物モデルにおいても治療的効果を示した。
【0072】
インテグリンαvβ3およびαvβ5のいくつかのアンタゴニストが臨床開発中である。これらには環状RGDペプチドおよび合成低分子RGD模倣体が含まれる。現在、抗体ベースの2種のインテグリンアンタゴニストが癌治療のための臨床試験中である。1つ目はVitaxin(ビタキシン)、すなわちヒト化型のマウス抗ヒトαvβ3抗体LM609である。癌患者における用量漸増第I相試験により、これがヒトにおいて使用するために安全であることが実証された。臨床試験中の別の抗体はCNT095、すなわちαvインテグリンを認識する完全ヒトmAbである。様々な固形腫瘍を有する患者におけるCNT095の第I相試験により、これが十分に許容されることが示された。αvβ3およびαvβ5のペプチドアンタゴニストであるCilengitide(シレンジタイド)もまた、第I相臨床試験において安全が証明された。さらに、これらの受容体に対するリガンドの使用に基づいた多数の薬物ターゲティング研究および薬物画像化研究が実施されている。これらの前臨床的観察結果および臨床的観察結果から、αvβ3およびαvβ5をターゲティングすることの重要性が実証され、この戦略において抗体の使用を含む研究によって、これらのインテグリンを介したターゲティングが安全であることが一貫して報告された。
【0073】
インテグリン結合MRDの例は、RGDトリペプチドを含む結合部位であり、本明細書において説明する一般的方法の例示である。RGDモチーフを最小認識ドメインとして有するリガンドは周知であり、その一部のリストには、フィブロネクチン(α3β1、α5β1、αvβ1、αIIbβ3、αvβ3、およびα3β1)、フィブリノーゲン(αMβ2およびαIIbβ1)、フォンウィレブランド因子(αIIbβ3およびαvβ3)、ならびにビトロネクチン(αIIbβ3、αvβ3、およびαvβ5)が含まれる(括弧内は対応するインテグリン標的)。
【0074】
本発明において有用な、RGDを含むターゲティングMRDの例は、下記に示すアミノ酸残基配列を有する:
YCRGDCT(SEQ ID NO: 3)
PCRGDCL(SEQ ID NO: 4)
TCRGDCY(SEQ ID NO: 5)
LCRGDCF(SEQ ID NO: 6)。
【0075】
インテグリン受容体上の非RGD依存性結合部位を模倣し、選択されたインテグリンを認識する高親和性リガンドの標的結合特異性を有するMRDもまた、本発明において企図される。
【0076】
血管新生は、多くの生理学的プロセスおよび病理学的プロセスに不可欠である。Ang2は血管新生促進分子として作用することが示されている。Ang2選択的阻害物質の投与は、腫瘍血管新生および角膜血管新生の両方を抑制するのに十分である。したがって、単独またはVEGFのような他の血管新生因子の阻害と組み合わせたAng2阻害は、固形腫瘍を有する患者を治療するための有効な抗血管新生戦略になり得る。
【0077】
本発明において有用なMRDには、血管新生受容体、血管新生因子、および/またはAng-2に結合するものが含まれることが企図される。血管新生サイトカインをターゲティングするMRD配列の例を下記に挙げる:
PXDNDXLLNY(SEQ ID NO: 12)(Xは、20種の天然アミノ酸の内の1つである)
コアnEFAPWTn(SEQ ID NO: 22)(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)
XnELAPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸である)(SEQ ID NO: 25);
XnEFSPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸である)(SEQ ID NO: 28);
XnELEPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基であり(SEQ ID NO: 31)、Xは任意のアミノ酸である)
。
【0078】
このようなペプチドは、自然界において同種または異種のいずれかである二量体、三量体、または他の多量体として存在してよいことを理解すべきである。例えば、2×ConFAの場合のように同一のConベース配列を二量体化して同種二量体を提供してもよく、またはConFAがConLAと結合されるようにConペプチドを混合して、配列:
を有するConFA-LAヘテロ二量体を作製してもよい。
【0079】
別のヘテロ二量体は、配列:
を有するConFA-FSを作製するためにConFSと結合されたConFAである。
【0080】
本明細書における教示を考慮すれば、当業者は、他のこのような組合せによって、本明細書において説明するAng2に結合する機能的なMRDが作製されることを理解するであろう。
【0081】
1つの局面において、本発明は、下記の配列を有するペプチドを含む:
(X1はEまたはDであり;X2は任意のアミノ酸であり;X3は任意のアミノ酸であり;X4は任意のアミノ酸であり;X5は任意のアミノ酸である)。
【0082】
本発明はまた、以下より選択されるコア配列を有するペプチドも含む:
XnEFAPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 22);
XnELAPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 25);
XnEFSPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 28);
XnELEPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 31);
または
(nは約0〜50個のアミノ酸残基であり、X、X1、およびX2は任意のアミノ酸である)(SEQ ID NO: 57)。
【0083】
VEGFとの複合体を形成したVEGF中和ペプチドのファージディスプレイ選択および構造研究が報告されている。これらの研究により、ペプチドv114
がVEGF特異的であり、0.2μMの親和性でVEGFに結合し、ヒトさい帯静脈内皮細胞(HUVEC)のVEGFによって誘導される増殖を打ち消すことが明らかにされた。VEGFはホモ二量体であるため、ペプチドはVEGFホモ二量体の両方の末端において2つの同一な部位を占める。VEGFをターゲティングするMRDを含む抗体は、本発明において企図される。抗VEGF抗体は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるCancer Research 57, 4593-4599, Oct. 1997; J Biol Chem 281 :10 6625, 2006において見出すことができる。
【0084】
インスリン様増殖因子-I受容体に特異的なMRDは、本発明において使用され得る。インスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRD配列の1つの例は、
である。
【0085】
その他のIGF-1R MRDには以下のものが含まれる:
。
【0086】
いくつかの研究により、血管ホーミングペプチドをIL-12に似た他のタンパク質または薬物に連結して、生きている動物においてそれらの送達を指示することの有効性が特徴付けられた。したがって、血管ホーミングMRDは、本発明において使用するために企図される。血管ホーミングペプチドであるMRD配列の1つの例はACDCRGDCFCG (SEQ ID NO: 15)である。
【0087】
上皮増殖因子受容体(EGFR)、CD20、腫瘍抗原、ErbB2、ErbB3、ErbB4、インスリン様増殖因子-I受容体、神経成長因子(NGR)、肝細胞増殖因子受容体、および腫瘍に関連した表面抗原上皮細胞接着分子(Ep-CAM)を含む、他の多数の標的結合部位が本発明によって企図される。これらの標的結合部位に向けてMRDを方向付けることができる。
【0088】
EGFRに結合するMRD配列の例を下記に挙げる:
。
【0089】
ErbB2に結合するMRD配列の例を下記に挙げる:
。
【0090】
いくつかの方法で、MRDの配列を決定することができる。MRD配列は天然リガンドに由来してよく、または特異的標的結合部位に結合する公知の配列を使用してもよい。さらに、ファージディスプレイ技術が、標的受容体に結合するペプチドを同定する際の効果的な方法として台頭してきた。ペプチドファージディスプレイライブラリーでは、繊維状ファージのコートタンパク質と融合させることによって、ランダムペプチド配列を提示することができる。ファージディスプレイベクターを用いてポリペプチド上の結合部位を解明するための方法は、特に国際公開公報第94/18221号において以前に説明されている。これらの方法は一般に、関心対象の予め選択された標的部位に結合するポリペプチドをクローニングし発現させるために繊維状ファージ(ファージミド)表面発現ベクター系の使用を伴う。
【0091】
MRDを調製するための本発明の方法は、発現されたディスプレイタンパク質の非常に大きな集団をスクリーニングし、それによって所望の標的結合反応性をコードする1つまたは複数の特定のクローンを位置付けるための手段を提供するという特有の利点があるためファージディスプレイベクターの使用を伴う。MRDの配列が一旦解明されたら、これらのペプチドは当技術分野において開示されている方法のいずれかによって調製することができる。
【0092】
MRDの変異体および誘導体は、本発明の範囲内に含まれる。挿入変異体、欠失変異体、および置換変異体、ならびに本明細書において提示するMRDを含み、約0〜50個、0〜40個、0〜30個、および0〜20個のアミノ酸などを含む追加のアミノ酸をN末端および/またはC末端に有する変異体が、変異体の範囲に含まれる。本発明の具体的なMRDは、1つ、2つ、または3つすべてのタイプの変異体を含んでよいことが理解されよう。挿入変異体および置換変異体は、天然のアミノ酸、従来と異なるアミノ酸、または両方を含んでよい。
【0093】
触媒抗体および非触媒抗体が本発明において使用され得ることが企図される。抗体38C2は、抗体分泌ハイブリドーマであり、国際公開公報第97/21803号において以前に説明されている。38C2は、脂肪族ドナーとアルデヒドアクセプター間のアルドール添加反応を触媒する抗体結合部位を含む。神経芽細胞腫の同系マウスモデルにおいて、エトポシドプロドラッグの全身投与およびAb 38C2の腫瘍内注射により、腫瘍増殖が阻害された。
【0094】
本発明の関心対象の他の抗体には、A33結合抗体が含まれる。ヒトA33抗原は、Igスーパーファミリーの膜貫通型糖タンパク質である。正常結腸組織および悪性結腸組織中のヒトA33抗原の機能はまだ公知ではないが、A33抗原のいくつかの特性から、結腸癌の免疫療法のための有望な標的であることが示唆されている。これらの特性には、(i)著しく限定されたA33抗原発現パターン、(ii)結腸癌細胞における多量のA33抗原発現、(iii)分泌A33抗原または遊離(shed)A33抗原の不在、ならびに(iv)抗体A33がA33抗原に結合した際に、抗体A33は小胞中に内在化され隔離されること、および(v)予備臨床試験における、A33抗原を発現する結腸癌への抗体A33のターゲティング、が含まれる。A33に向けて方向付けられたMRDを触媒抗体または非触媒抗体に融合させると、A33ターゲティング抗体の治療的有効性が高まると思われる。
【0095】
本発明はまた、一重特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、および五重特異性抗体の調製も企図する。本発明において使用される抗体は、当技術分野において公知である任意の方法によって調製され得ることが企図される。
【0096】
本発明に従って調製した抗体-MRD融合分子において、MRDは、ペプチドのN末端またはC末端を介して抗体に結合され得る。MRDは、抗体の重鎖のC末端、抗体の重鎖のN末端、抗体の軽鎖のC末端、または抗体の軽鎖のN末端において抗体に結合され得る。MRDは抗体に直接結合されてもよく、または2〜20の間のペプチド長でよい任意のリンカーペプチドを介して結合されてもよい。リンカーペプチドは、配列GGGS(SEQ ID NO: 1)を有する短いリンカーペプチド、配列
を有する中ぐらいの長さのリンカーペプチド、または配列
を有する長いリンカーペプチドを含んでよい。本発明はまた、抗体の任意の末端に連結されている2つまたはそれ以上のMRDも提供する。また、2つまたはそれ以上のMRDは、抗体の2つまたはそれ以上の末端に直接結合されてもよく、またはリンカーペプチドを介して結合されてもよいことが企図される。複数のMRDは、同じ標的結合部位または2つもしくは複数の異なる標的結合部位をターゲティングしてよい。MRDのインビボでの安定性を高めるために、追加のペプチド配列を付加してもよい。
【0097】
抗体-MRD融合分子は、ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドにコードされ得る。ベクターはこのポリヌクレオチド配列を含んでよい。また、ポリヌクレオチド配列は、宿主細胞においてポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列と連結されてもよい。宿主細胞またはその子孫は、抗体-MRD融合分子をコードするポリヌクレオチドを含んでよい。
【0098】
本発明は、本明細書において説明する治療的方法を実践するために有用な治療的組成物を企図する。本発明の治療的組成物は、活性成分としてその中に溶解または分散された本明細書において説明されるMRDを含む少なくとも1種の抗体と共に、生理学的に容認される担体を含む。好ましい態様において、治療的組成物は、治療目的のためにヒト患者に投与される場合、免疫原性ではない。
【0099】
その中に溶解または分散された活性成分を含む薬理学的組成物の調製は当技術分野において十分に理解されている。典型的には、このような組成物は、水性または非水性の溶液剤または懸濁剤のいずれかとしての無菌注射剤として調製されるが、使用前に液体に溶解または懸濁するのに適した固形形態もまた調製され得る。製剤はまた、乳化されてもよい。したがって、抗体-MRDを含む組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、カプセル剤、徐放製剤、もしくは散剤、または他の組成物形態を取ることができる。
【0100】
活性成分は、薬学的に許容され、活性成分と共存でき、本明細書において説明する治療的方法において使用するのに適した量である賦形剤と混合することができる。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、またはエタノールなど、およびそれらの組合せである。さらに、所望の場合は、組成物は、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、および活性成分の有効性を高める同種のものなど少量の補助物質を含んでよい。
【0101】
本発明の治療的組成物は、構成要素の薬学的に許容される塩をその中に含んでよい。薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、酒石酸、およびマンデル酸などの有機酸と共に形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基と共に形成される)が含まれる。また、遊離のカルボキシル基と共に形成される塩は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、およびプロカインなどの有機塩基に由来し得る。
【0102】
生理学的に容認される担体は当技術分野において周知である。活性成分および水に加えて材料を含まないか、または生理学的pH値のリン酸ナトリウムのような緩衝液、生理食塩水、もしくは両方、例えばリン酸緩衝化生理食塩水を含む無菌水溶液が、液状担体の例である。さらにまた、水性担体は、複数の緩衝塩、ならびに塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどの塩、デキストロース、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および他の溶質も含んでよい。
【0103】
また、液状組成物は、水に加えた、および水を除外する液相を含んでもよい。
【0104】
グリセリン、綿実油のような植物油、オレイン酸エチルのような有機エステル、および水-油乳濁液が、このような追加の液相の例である。
【0105】
治療的組成物は、典型的には治療的組成物総重量当たりの抗体が少なくとも0.1重量パーセントとなる量で、本発明のMRDを含む抗体を含む。重量パーセントは、組成物総量に対する抗体の重量比率である。したがって、例えば、0.1重量パーセントは、100グラムの組成物総量当たり0.1グラムの抗体-MRDである。
【0106】
典型的には、抗体を含む治療的組成物は、組成物体積当たり約10マイクログラム(ug)/ミリリットル(ml)〜約100ミリグラム(mg)/mlの抗体を活性成分として含み、およびより好ましくは、約1mg/ml〜約10mg/ml(すなわち、約0.1〜1重量パーセント)を含む。
【0107】
別の態様において、治療的組成物は、典型的には治療的組成物総重量当たりのポリペプチドが少なくとも0.1重量パーセントとなる量で、本発明のポリペプチドを含む。重量パーセントは、組成物総量に対するポリペプチドの重量比率である。したがって、例えば、0.1重量パーセントは、100グラムの組成物総量当たり0.1グラムのポリペプチドである。
【0108】
好ましくは、ポリペプチドを含む治療的組成物は典型的に、組成物体積当たり約10マイクログラム(ug)/ミリリットル(ml)〜約100ミリグラム(mg)/mlのポリペプチドを活性成分として含み、およびより好ましくは、約1mg/ml〜約10mg/ml(すなわち、約0.1〜1重量パーセント)含む。
【0109】
ヒト患者においてインビボでヒト化抗体またはキメラ抗体を使用する恩恵を考慮すると、本明細書において説明する抗体-MRD分子は、治療的反応物としてインビボで使用するのに特に好適である。この方法は、本発明のMRDを含む抗体を含む生理学的に容認される組成物の治療的有効量を患者に投与する段階を含む。
【0110】
本発明のMRDを含む抗体を投与するための投薬量範囲は、標的分子によってもたらされる疾患症状が寛解する所望の効果をもたらすのに十分な多さの範囲である。投薬量は、過粘稠度症候群、肺水腫、およびうっ血性心不全など有害な副作用を引き起こすほどに多いべきではない。一般に、投薬量は、年齢、病態、性別、および患者の疾患の程度と共に変動し、当業者によって決定され得る。万一任意の合併症が発生したら、個々の医師が投薬量を調整してよい。
【0111】
典型的には、本発明のMRDを含む抗体の治療的有効量は、生理学的に容認される組成物中で投与された場合に約0.1マイクログラム(ug)/ミリリットル(ml)〜約100ug/ml、好ましくは約1ug/ml〜約5ug/ml、および通常約5 ug/mlの血漿中濃度に達するのに十分であるような抗体の量である。別の言い方をすれば、投薬量は、毎日、1日、または数日間、1回または複数回の用量投与で、約0.1mg/kgから約300mg/kgまで、好ましくは約0.2mg/kgから約200mg/kgまで、最も好ましくは約0.5mg/kgから約20mg/kgまで変動し得る。
【0112】
本発明のMRDを含む抗体は、注射によって、またはある期間に渡る徐々の輸注によって非経口的に投与することができる。標的分子は典型的には全身投与によって体内で到達され得、したがってほとんどの場合、治療的組成物の静脈内投与によって処置されるが、標的とされる組織が標的分子を含む可能性がある場合、他の組織および送達手段が企図される。したがって、本発明のMRDを含む抗体は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、体腔内、経皮的に投与することができ、ぜん動手段によって送達することができる。
【0113】
ヒトモノクローナル抗体または本発明のポリペプチドを含む治療的組成物は慣例的に、例えば単位用量を注射することによって静脈内投与される。「単位用量」という用語は、本発明の治療的組成物に関して使用される場合、対象に対する単位投薬量として適切な物理的に別個の単位を意味し、各単位は、必要とされる希釈剤、すなわち担体またはビヒクルと共同して所望の治療的効果をもたらすように算出された所定の量の活性材料を含む。
【0114】
組成物は、投薬製剤に適合した様式で、かつ治療的有効量で投与される。投与される量は、治療される対象、対象の身体が活性成分を利用する能力、および所望の治療的効果の程度に依存する。投与されるのに必要な活性成分の正確な量は、実務者の判断に依存し、各個体に固有である。しかしながら、全身適用のために適切な投薬量範囲は本明細書において開示され、投与経路に依存する。投与のための適切な治療プログラムも多様であるが、初回投与と、それに続く後続の注射または他の投与による1時間または複数時間の間隔の反復投与が典型的である。あるいは、インビボ療法のために指定された範囲で血液中濃度を維持するために十分な持続点滴静注が企図される。
【0115】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するが、本発明を限定することを意図しない。
【実施例】
【0116】
実施例1. インテグリンをターゲティングする抗体-MRD分子
インテグリンαvβ3をターゲティングするペプチドを触媒抗体38C2に融合することによって、新規な抗体-MRD融合分子を調製した。軽鎖のN末端およびC末端ならびに重鎖のC末端における融合が最も効果的であった。フローサイトメトリーを用いて、この抗体結合体がインテグリンαvβ3を発現するヒト乳癌細胞に効率的に結合することを示した。抗体結合体はまた、メソドール(methodol)およびドキソルビシンプロドラッグ活性化によって測定されるように、親触媒抗体38C2のレトロアルドール活性も保持していた。このことから、細胞ターゲティングおよび触媒抗体能力を選択的化学療法のために効率的に組み合わせられることが実証される。
【0117】
実施例2. 血管新生サイトカインをターゲティングする抗体-MRD分子
血管新生サイトカインをターゲティングする抗体-MRD融合分子を構築した。使用した抗体は38C2であり、2×Con4ペプチドを含むMRD
と融合させた。このMRDペプチドは、軽鎖のN末端またはC末端および重鎖のC末端のいずれかに融合させた。同様の結果が他のAng-2 MRDペプチドの場合に見出された。その他のAng-2 MRDペプチドには、
コアXnEFAPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 22)
XnELAPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 25)
XnEFSPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 28)
XnELEPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 31)
が含まれる。
【0118】
このようなペプチドは、自然界において同種または異種のいずれかである二量体、三量体、または他の多量体として存在してよいことを理解すべきである。例えば、2×ConFAの場合のように同一のConベース配列を二量体化して同種二量体を提供してもよく、またはConFAがConLAと結合されるようにConペプチドを混合して、配列:
を有するConFA-LAヘテロ二量体を作製してもよい。
【0119】
別の例示的なヘテロ二量体は、配列:
を有するConFA-FSを作製するためにConFSと結合されたConFAである。
【0120】
本明細書における教示を考慮すれば、当業者は、他のこのような組合せによって、本明細書において説明するAng2に結合する機能的なMRDが作製されることを理解するであろう。
【0121】
実施例3. 非触媒抗体との抗体-MRD融合物
ヒトインテグリンαvβ3を対象とするヒト化マウスモノクローナル抗体LM609は以前に説明されている(Rader, C. et. al., 1998. Rader C, Cheresh DA, Barbas CF 第3版 Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Jul 21;95(15):8910-5)。
【0122】
ヒト非触媒的モノクローナルAbであるJC7Uの軽鎖のN末端またはC末端のいずれかに、2×Con4を含む抗Ang2 MRD
を融合させた。抗体のκ鎖へのN末端融合物(2×Con4-JC7U)として、およびC末端融合物(JC7U-2×Con4)として、2×Con4
を研究した。どちらの融合物もインテグリン結合およびAng2結合を維持した。図3の左のパネルに示すように、両方の抗体構築物(2×Con4-JC7UおよびJC7U-2×Con4)が組換えAng2に特異的に結合することがELISA研究によって実証された。しかしながら、抗体の軽鎖のC末端に2×Con4(SEQ ID NO: 10)が融合したJC7U-2×Con4の方が、Ang2への結合が有意に強い。図3の右のパネルは、Ang2-JC7UおよびJC7U-Ang2のインテグリンαvβ3への結合を示す。これらの結果から、軽鎖のN末端またはC末端のいずれかへの2×Con4(SEQ ID NO: 10)の融合は、インテグリンαvβ3へのmAb JC7U結合に影響を及ぼさないことが示される。図4は、同じ抗体-MRD融合構築物を用いた別のELISA研究を示す。
【0123】
実施例4. Herceptin-MRD融合分子
非触媒抗体へのMRD融合物の別の例は、Herceptin-MRD融合構築物である。Herceptin-MRD融合物は多機能性であり、低分子αvインテグリンアンタゴニストと化学的にプログラムされたインテグリンをターゲティングする抗体の両方が、αvの媒介による細胞接着および増殖の邪魔をすることによって乳癌転移を防止する際に優れた有効性を示す。Herceptin-2×Con4(ErbB2およびang2をターゲティングする)を含むMRD融合物、ならびにHerceptin-V114(ErbB2およびVEGFターゲティングをターゲティングする)を含むMRD融合物、ならびにHerceptin-RGD-4C-2×Con4(ErbB2、ang2、およびインテグリンターゲティングをターゲティングする)を含むMRD融合物が効果的である。
【0124】
実施例5. VEGFをターゲティングする抗体-MRD分子
VEGFをターゲティングするMRDを含む抗体を構築した。v114をターゲティングするMRD(SEQ ID NO: 13)を、長いリンカー配列(SEQ ID NO: 2)を用いて38C2のκ鎖のN末端およびHerceptinに融合させた。得られた抗体-MRD融合構築物の発現および試験により、強いVEGF結合が実証された。
【0125】
実施例6. IGF-1Rをターゲティングする抗体-MRD分子
IGF-1RをターゲティングするMRD
を、長いリンカー配列を連結物として用いて38C2のκ鎖のN末端およびHerceptinに融合させた物質を研究した。得られた抗体-MRD融合構築物の発現および試験により、強いIGF-1R結合が実証された。IGR-1Rへの強い結合を示すその他のクローンもまた、数回の変異誘発およびスクリーニングの後に同定した。下記に挙げる好ましい配列は、インスリン受容体に対して有意な親和性も結合親和性も示さない(表2を参照されたい)。
【0126】
(表1)さらなる変異誘発のための鋳型
【0127】
(表2)
【0128】
実施例7. ErbB2に結合し、Ang-2をターゲティングする抗体-MRD分子
ErbB2に結合する抗体の軽鎖に融合されAng-2をターゲティングするMRD(L17)を含む抗体を構築した。短いリンカー配列、長いリンカー配列、または軽鎖定常領域中の4番目のループのいずれかをリンカーとして使用した。図5は、短いリンカーペプチド(GGGS(SEQ ID NO: 1))によるAng2をターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(L17-sL-Her)、短いリンカーペプチドによるAng2をターゲティングするMRDとErbB2抗体のC末端融合物(Her-sL-L17)、軽鎖定常領域中の4番目のループによるAng2をターゲティングするMRDとErbB2抗体のC末端融合物(Her-lo-L17)、または長いリンカーペプチド
によるAng2をターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(L17-lL-Her)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。すべての構築物が様々な程度でErbB2に結合した。しかしながら、Ang-2にはHer-sL-L17およびL17-lL-Herのみが結合した。
【0129】
実施例8. 肝細胞増殖因子受容体に結合し、Ang-2をターゲティングする抗体-MRD分子
Ang-2をターゲティングするMRD(L17)を、肝細胞増殖因子受容体に結合するMet抗体の軽鎖のN末端またはC末端のいずれかに融合させた。短いリンカー配列または長いリンカー配列のいずれかを連結物として使用した。図6は、短いリンカーペプチド(GGGS(SEQ ID NO: 1))によるAng2をターゲティングするMRDとMet抗体のN末端融合物(L17-sL-Met)、長いリンカーペプチド
によるAng2をターゲティングするMRDとMet抗体のN末端融合物(L17-lL-Met)、および長いリンカーペプチドによるAng2をターゲティングするMRDとMet抗体のC末端融合物(Met-iL-L17)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。得られた抗体-MRD融合構築物の発現および試験により、長いリンカーペプチドを使用した場合の強いAng-2結合が実証された。Ang-2をターゲティングするMRDを抗体の軽鎖C末端に融合した物質の方が、抗体の軽鎖N末端へのAng-2ターゲティングの融合物よりも、Ang-2に対して若干強い結合を示した。
【0130】
実施例9. ErbB2に結合し、インテグリンをターゲティングする抗体-MRD分子
ErbB2に結合する抗体Herceptin(Her)の軽鎖に融合されインテグリンαvβ3をターゲティングするMRD(RGD4C)を含む抗体を構築した。短いリンカー配列、長いリンカー配列、または軽鎖定常領域中の4番目のループのいずれかをリンカーとして使用した。図7は、短いリンカーペプチド(GGGS(SEQ ID NO: 1))によるインテグリンαvβ3をターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(RGD4C-sL-Her)、短いリンカーペプチドによるインテグリンαvβ3をターゲティングするMRDとErbB2抗体のC末端融合物(Her-sL-RGD4C)、軽鎖定常領域中の4番目のループによるインテグリンαvβ3をターゲティングするMRDとErbB2抗体のC末端融合物(Her-lo-RGD4C)、または長いリンカーペプチド
によるインテグリンαvβ3をターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(RGD4C-lL-Her)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。すべての構築物が様々な程度でErbB2に結合した。しかしながら、インテグリンαvβ3にはRGD4C-lL-Herのみが結合した。
【0131】
実施例10. 肝細胞増殖因子受容体に結合し、インテグリンをターゲティングする抗体-MRD分子
肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体(Met)の軽鎖に融合されインテグリンαvβ3をターゲティングするMRD(RGD4C)を含む抗体を構築した。長いリンカー配列を含む抗体-MRD構築物を使用した。図8は、インテグリンαvβ3をターゲティングするMRDと肝細胞増殖因子受容体抗体のN末端融合物(RGD4C-lL-Met)、またはインテグリンαvβ3をターゲティングするMRDと肝細胞増殖因子受容体抗体のC末端融合物(Met-lL-RGD4C)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。RGD4C-lL-Metは、強いインテグリンαvβ3結合を示した。
【0132】
実施例11. ErbB2に結合し、インスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングする抗体-MRD分子
ErbB2に結合する抗体(Her)の軽鎖に融合されインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRD(RP)を含む抗体を構築した。短いリンカーペプチド、長いリンカーペプチド、または軽鎖定常領域中の4番目のループのいずれかをリンカーとして使用した。(Carter et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1992 May 15;89(10):4285-9)。
【0133】
PMID:1350088 [PubMed MEDLINEに収録されている];米国特許第5,677,171号;ATCC寄託10463、すべて参照により本明細書に組み入れられる)。図9は、短いリンカーペプチドによるインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(RP-sL-Her)、短いリンカーペプチドによるインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2抗体のC末端融合物(Her-sL-RP)、軽鎖定常領域中の4番目のループによるインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2抗体のC末端融合物(Her-lo-RP)、長いリンカーペプチドによるインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(RP-lL-Her)、または長いリンカーペプチドによるインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2抗体のC末端融合物(Her-lL-RP)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。すべての構築物が様々な程度でErbB2に結合した。インスリン様増殖因子-I受容体にはRP-lL-Herが結合した。
【0134】
実施例12. ErbB2に結合し、VEGFをターゲティングする抗体-MRD分子
VEGFをターゲティングするMRD(V114)を、ErbB2に結合する抗体(Her)の軽鎖のN末端に融合させた。中ぐらいの長さのリンカーペプチド
を連結物として使用した。図10は、中ぐらいの長さのリンカーペプチドによるVEGFをターゲティングするMRDとErbB2に結合する抗体のN末端融合物(V114-mL-Her)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。得られた抗体-MRD融合構築物の発現および試験により、強いVEGF結合およびErbB2結合が実証された。
【0135】
実施例13. インテグリンをターゲティングする抗体-MRD分子
中ぐらいの長さのリンカーペプチドを連結物として用いた、38C2の軽鎖のN末端へのインテグリンαvβ3をターゲティングするMRD(RGD)の融合を研究した。図11により、得られた抗体-MRD融合構築物の発現および試験により、強いインテグリンαvβ3結合があったことが実証される。
【0136】
実施例14. Ang-2をターゲティングする抗体-MRD分子
短いリンカー配列を連結物として用いた、38C2の軽鎖のC末端へのAng-2をターゲティングするMRD(L17)の融合を研究した。図12により、得られた抗体-MRD融合構築物の発現および試験により、強いAng-2結合があったことが実証される。
【0137】
実施例15. ErbB2に結合し、インテグリンおよびAng-2をターゲティングする抗体-MRD分子
インテグリンαvβ3をターゲティングするMRD(RGD4C)を、中ぐらいの長さのリンカーによって、ErbB2をターゲティングする抗体(Her)の軽鎖のN末端に連結し、Ang-2をターゲティングするMRD(L17)を、短いリンカーによって、ErbB2をターゲティングする同じ抗体のC末端に連結した(RGD4C-mL-Her-sL-L17)。図13により、得られた抗体-MRD融合構築物がインテグリン、Ang-2、およびErbB2に結合したことが実証される。
【0138】
実施例16. ErbB2に結合し、インテグリンをターゲティングする抗体-MRD分子
中ぐらいの長さのリンカーを連結物として用いてErbB2に結合する抗体(Her)の重鎖のN末端に融合されたインテグリンαvβ3をターゲティングするMRD(RGD4C)を含む抗体を構築した(RGD4C-mL-her-重鎖)。図14は、この構築物を用いたELISAの結果を示す。この構築物はインテグリンおよびErbB2の両方に結合した。
【0139】
実施例17. 短いリンカーペプチドを用いた、ErbB2または肝細胞増殖因子受容体に結合し、インテグリン、Ang-2、またはインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングする抗体-MRD分子
ErbB2または肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体を含み、インテグリンαvβ3、Ang-2、またはインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRD領域が短いリンカーペプチドによってその抗体の軽鎖に連結されている抗体-MRD分子を構築した。図15は、ErbB2抗体に融合されAng-2をターゲティングするMRDのN末端融合物(L17-sL-Her)、インテグリンをターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(RGD4C-sL-Her)、インスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2結合抗体のN末端融合物(RP-sL-Her)、Ang-2をターゲティングするMRDと肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体とのC末端融合物(L17-sL-Met)、Ang-2をターゲティングするMRDとErbB2結合抗体のC末端融合物(Her-sL-L17)、インテグリンをターゲティングするMRDとErbB2結合抗体のC末端融合物(Her-sL-RGD4C)、またはインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2結合抗体のC末端融合物(Her-sL-RP)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。肝細胞増殖因子受容に結合する抗体を含む構築物を別として、抗体-MRD構築物は様々な程度でErbB2に結合した。抗原にはHer-sL-L17構築物のみが結合した。
【0140】
実施例18. 長いリンカーペプチドを用いた、ErbB2または肝細胞増殖因子受容体に結合し、インテグリン、Ang-2、またはインスリン様増殖因子-I受容体-をターゲティングする抗体-MRD分子
ErbB2または肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体を含み、インテグリンαvβ3、Ang-2、またはインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRD領域が長いリンカーペプチドによってその抗体の軽鎖に連結されている抗体-MRD分子を構築した。図16は、ErbB2抗体に融合されAng-2をターゲティングするMRDのN末端融合物(L17-lL-Her)、インテグリンをターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(RGD4C-lL-Her)、インスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2結合抗体のN末端融合物(RP-lL-Her)、Ang-2をターゲティングするMRDと肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体とのC末端融合物(L17-lL-Met)、インテグリンをターゲティングするMRDと肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体とのC末端融合物(RGD4C-lL-Met)、Ang-2をターゲティングするMRDとインスリン様増殖因子-I受容体に結合する抗体のC末端融合物(Her-lL-RP)、Ang-2をターゲティングするMRDと肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体とのC末端融合物(Met-lL-L17)、またはインテグリンをターゲティングするMRDと肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体とのC末端融合物(Met-lL-RGD4C)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。図16に示すように、抗体-MRD融合物は抗原およびErbB2に結合するのに効果的である。Lu et al. J Biol Chem. 2005 May 20;280(20):19665-72. 電子出版 2005 Mar 9; Lu et al. J Biol Chem. 2004 Jan 23; 279(4):2856-65. 電子出版2003 Oct 23。
【0141】
上記の実施例を参照して本発明を説明したが、修正および変更は、本発明の精神および範囲内に包含されることが理解されるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、1つまたは複数のモジュラー認識ドメインを含む抗体、およびより具体的には、疾患を治療するための1つまたは複数のモジュラー認識ドメインを含む抗体の使用、ならびに1つまたは複数のモジュラー認識ドメインを含む抗体を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
触媒として活性なモノクローナル抗体(Ab)は、選択的プロドラッグ活性化および化学的変換のために使用され得る。アルドラーゼ活性を有するモノクローナルAbは、いくつかの化学的変換、特にアルドール反応およびレトロアルドール反応のための極めて効率的な触媒として台頭してきた。38C2および93F3などのAbのレトロアルドラーゼ活性のおかげで、研究者らは、レトロアルドール反応によって活性化され得る様々な化学療法剤のプロドラッグを設計、合成、および評価することができるようになった。(38C2の構築は、参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第97/21803号(特許文献1)において説明した)。38C2は、脂肪族ドナーとアルデヒドアクセプター間のアルドール添加反応を触媒する抗体結合部位を含む。神経芽細胞腫の同系マウスモデルにおいて、エトポシドプロドラッグの全身投与および38C2の腫瘍内注射により、腫瘍増殖が阻害された。
【0003】
触媒Abを使用する際の1つの欠点は、触媒Abを悪性細胞にターゲティングさせるための装置を欠いていることである。以前の研究では、抗体指向性酵素プロドラッグ治療法(ADEPT)アプローチまたは抗体指向性アブザイムプロドラッグ治療法(ADAPT)アプローチにおいて、ターゲティング抗体への化学的結合または組換え融合によって酵素または触媒抗体を腫瘍細胞に方向付け得ることが実証された。しかしながら、より効率的な代替方法は、抗体結合部位の外側に位置しているターゲティングペプチドに融合された触媒抗体を使用し、それによって、活性部位をプロドラッグ活性化のために利用可能な状態で残すことであろう。例えば、インテグリンαvβ3結合ペプチドにAb 38C2を融合すると、腫瘍および/または腫瘍血管系に抗体が選択的に局在化され、その部位でプロドラッグ活性化を開始させると思われる。このアプローチの潜在的な治療法は、抗体Fc領域への融合によってペプチドが有効な薬物に変換され得ることを示唆する前臨床データおよび第III相臨床データによって支持されている。
【0004】
2種またはそれ以上の癌標的を同時にターゲティングし、かつ/またはプロドラッグを活性化する二重特異性抗体または多重特異性抗体の開発により、癌および他の疾患を攻撃することに対する新規で有望な解決法が提供される。このような抗体は、本出願の図1に例示される。複数の細胞増殖/生存経路を下方調節するために2種の腫瘍関連抗原(例えば増殖因子受容体)を同時にターゲティングする二重特異性抗体(BsAb)の研究はこのアプローチに裏付けを与えた。二重特異性抗体は伝統的に、2つの異なるモノクローナル抗体を化学的に連結することによって、または2つのハイブリドーマ細胞株を融合してハイブリッドハイブリドーマを作製することによって調製されてきた。二重特異性の四価のIgG様分子または二重可変ドメイン免疫グロブリンは、2つのモノクローナル抗体から人工的に設計された。これらの二重可変ドメイン免疫グロブリンは、血清の存在下で両方の抗原に結合することができる。しかしながら、これらのアプローチには、製造、収率、および純度に関する難問がある。
【0005】
様々な組換え法が、ダイアボディ、ミニボディ、およびFab-scFv融合タンパク質などのBsAb小断片の効率的な作製のために開発されている。これらのBsAb断片の方が、組織侵入に優れ、血液循環からのクリアランスが速いため、腫瘍の放射線画像化およびターゲティングなどのある種の臨床応用のために完全長IgG様分子よりも有利な点をいくつか有し得る。他方、IgG様BsAbの方が、長い血清半減期を与え、かつ抗体依存性細胞障害および補体の媒介による細胞障害などの二次的免疫機能を支援するFcドメインを提供することにより、他のインビボ応用、具体的には腫瘍適用のためには小型BsAb断片より好ましいことが判明する場合もある。しかしながら、それらの断片対応物とは違って、組換えIgG様BsAbの人工的設計および作製は、サイズが大きく(約150〜200kDa)構造が複雑であるため、技術的にかなり難易度が高かった。動物モデルにおける適用の成功に基づいて判断すると、当技術分野における成功は非常に限定されていた。最近、様々な構築物の調査により、哺乳動物細胞におけるBsAb分子を含むFcドメインの効率的な発現はいくらか進歩した。
【0006】
抗体をターゲティングさせるために使用されている別のアプローチは、ペプチボディを用いることによる。ペプチボディは、本質的には、抗体Fc領域とのペプチド融合物である。多種多様の標的に対する高親和性ペプチドリガンドを見出すためのランダムペプチドライブラリーを用いた研究の成功を前提として、抗体Fc領域へのこのようなペプチドの融合により、それらの循環半減期の延長および増えた価数を介した活性の増大によってペプチドを治療的候補にする手段が提供される。
【0007】
他の分子とのタンパク質相互作用は、生化学の基本を成す。タンパク質相互作用には、受容体-リガンド相互作用、抗体-抗原相互作用、細胞同士の接触、および病原体と標的組織との相互作用が含まれる。タンパク質相互作用は、他のタンパク質、炭水化物、オリゴ糖、脂質、金属イオン、および同様の材料との接触を含み得る。タンパク質相互作用の基本単位は、接触および認識に関与しているタンパク質領域であり、結合部位または標的部位と呼ばれる。
【0008】
典型的には、ファージディスプレイライブラリーに由来するペプチドは、他の分子に連結された場合にその結合特徴を保持する。このタイプの特異的ペプチドは、いくつかの所定の標的に対する結合特異性を有する単一のタンパク質を作製するために組み合わせることができるモジュラー特異性ブロックまたは分子認識ドメイン(MRD)として扱うことができる。
【0009】
このような所定の標的部位の例はインテグリンである。インテグリンは、αサブユニットおよびβサブユニットから構成され、細胞外マトリックス内のタンパク質への細胞付着を媒介する膜貫通型細胞接着受容体のファミリーである。現在のところ、18種のαサブユニットおよび8種のβサブユニットが公知である;これらは、様々なECM細胞接着性タンパク質に対して様々な特異性を有する24種の異なるαβヘテロ二量体を形成する。様々なインテグリンに対するリガンドには、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、フォンウィレブランド因子、オステオポンチン、トロンボスポンジン、およびビトロネクチンが含まれ、これらはすべてECMの構成要素である。また、ある種のインテグリンは、フィブリノーゲンのような可溶性リガンドまたは隣接細胞上の他の接着分子に結合することができる。インテグリンは、リガンドに対して異なる親和性を示す独特な活性化状態で存在することが公知である。インテグリンによる可溶性リガンドの認識は、受容体の立体構造の特異的変化に厳密に依存する。これにより、細胞がインテグリン依存的に凝集する能力および血管系の動的流動条件下で停止する能力を制御する分子スイッチが提供される。このメカニズムは、非活性化インテグリンを発現している間、休止状態で血流内を循環する白血球および血小板に関して十分に確立されている。炎症誘発性アゴニストまたは血栓形成促進性アゴニストを介して刺激すると、これらの細胞型は、主要インテグリン、すなわち白血球に対するβ2インテグリンおよび血小板に対するαvβ3インテグリンの「休止」立体構造から「活性化」立体構造へのスイッチを含むいくつかの分子変化で迅速に応答する。これにより、これらの細胞型が血管系内で停止して、細胞粘着を促進し、血栓形成をもたらすことが可能になる。
【0010】
ヒト乳癌細胞の転移性部分集団が、構成的に活性化された形態のインテグリンαvβ3を発現することが実証されている。αvβ3のこの異常発現は、乳癌ならびに前立腺癌、黒色腫、および神経芽細胞腫瘍の転移において役割を果たす。活性化された受容体は、癌細胞遊走を強く促進し、細胞が血流条件下で停止できるようにする。このようにして、αvβ3の活性化は、標的器官への播種および定着の成功に不可欠である可能性が高い重要な特性を転移性細胞に与える。αvβ3マトリックス相互作用は細胞の生存および増殖を促進できるため、標的器官に入ることに成功した腫瘍細胞はさらにαvβ3を利用して、新しい環境で力強く成長し得る。例えば、オステオポンチンにαvβ3が結合すると悪性度が高まり、オステオポンチンレベルの上昇は乳癌の予後不良と相関がある。
【0011】
これらの理由から、および血管新生における確立された役割から、αvβ3インテグリンは、最も幅広く研究されているインテグリンの内の1つである。この分子のアンタゴニストは、ターゲティングドラッグデリバリーにおいて使用するためにかなり有望である。αvβ3インテグリンをターゲティングするのに使用されてきた1つのアプローチは、Arg-Gly-Asp (RGD)配列を含むペプチドのαvβ3に対する高い結合特異性を使用する。細胞外マトリックスタンパク質中に天然に存在するこのトリペプチドは、αvβ3インテグリンの主要な結合部位である。しかしながら、RGDベースのレポータープローブは、血液クリアランスが速いこと、腎臓および肝臓での取込みが多いこと、ならびに腫瘍からのウォッシュアウトが速いことが原因で、問題がある。環化RGDペプチドの化学修飾は、それらの安定性および価数を増大させることが示されている。次いで、これらの修飾ペプチドは放射性同位体(radio-isotpe)に結合され、腫瘍画像化のためまたは腫瘍増殖を阻害するために使用される。
【0012】
インテグリンαvβ3は、最も良く特徴付けられているインテグリンヘテロ二量体の内の1つであり、腫瘍によって誘導される血管新生に関係があるとされているいくつかのヘテロ二量体の内の1つである。成熟血管においては少なめに発現されるものの、αvβ3はインビボにおいて血管新生の間に顕著に上方調節されている。αvβ3の発現は、乳癌および子宮頸癌ならびに悪性黒色腫において疾患の攻撃性と相関している。最近の研究によって、αvβ3がいくつかの腫瘍の診断指標または予後指標として有用であり得ることが示唆されている。インテグリンαvβ3は、細胞分布が比較的限定されているため、治療標的として特に魅力的である。これは通常上皮細胞では発現されず、他の細胞型では最小限に発現される。さらに、環状RGDペプチドおよびモノクローナル抗体の両方を含むαvβ3アンタゴニストは、サイトカインによって誘導される血管新生およびヒヨコ絨毛尿膜上の固形腫瘍の増殖を有意に阻害する。
【0013】
別のインテグリンヘテロ二量体αvβ5は、より広範囲に悪性腫瘍細胞上で発現され、VEGFを介した血管新生に関与している可能性が高い。αvβ3およびαvβ5は別個の経路を介して血管新生を促進することが示されている:
αvβ3はbFGFおよびTNF-aを介し、αvβ5はVEGFおよびTGF-αを介する。また、Srcキナーゼの阻害は、VEGFに誘導される血管新生は妨害できるがFGF2に誘導される血管新生は妨害できないことも示されている。これらの結果から、FGF2およびVEGFが、αvβ3およびαvβ5をそれぞれ必要とする異なる血管新生経路を活性化することが強く暗示される。
【0014】
また、インテグリンは腫瘍転移にも関係があるとされている。転移は、癌において病的状態および死亡の主要な原因である。黒色腫、神経膠腫、卵巣、および乳癌の悪性進行はすべて、インテグリンαvβ3の発現、および場合によってはαvβ5と強く関連付けられている。さらに最近では、インテグリンαvβ3の活性化がヒト乳癌の転移において重要な役割を果たすことが示されている。正常な乳房上皮がαvβ3陰性であり、浸潤性小葉癌の約50%および乳癌の骨転移のほぼすべてがαvβ3を発現するというαvβ3発現と乳癌転移の間の非常に強い相関が注目されている。環状ペプチドによるαvβ3拮抗作用は、乳癌異種移植片を使用する研究において放射免疫療法との相乗作用を示すことが示されている。
【0015】
血管新生、すなわち既存の血管からの新しい血管の形成は、多くの(may)生理学的プロセスおよび病理学的プロセスに不可欠である。通常は、血管新生は血管新生促進因子および抗血管新生因子によってしっかりと調節されているが、癌、眼の血管新生疾患、関節炎、および乾癬などの疾患の場合には、このプロセスはおかしくなり得る。血管新生と疾患が関連しているため、抗血管新生化合物の発見が魅力的になった。Amgen社によって開発された、これまでに説明されている最も有望なファージ由来抗血管新生ペプチドは、血管新生サイトカインAng2を中和する。
【0016】
VEGFおよびそれらの受容体は、血管新生分野において最も大規模にターゲティングされている分子の1つであるが、より最近に発見されたアンジオポエチン-Tie2経路をターゲティングする前臨床的試みが進行中である。どちらのタンパク質ファミリーもリガンド受容体相互作用を伴い、どちらも、出生後に内皮細胞および一部の造血幹細胞系に機能がほとんど限定されるメンバーを含む。Tie-2は、アンジオポエチン-1(Ang1)からアンジオポエチン-4(Ang4)までの4種の公知のリガンドを有する受容体型チロシンキナーゼであり、最も良く研究されているのはAng1およびAng2である。Ang1はTie2のリン酸化を刺激し、Ang2とTie2の相互作用は、Tie2受容体リン酸化を打ち消しもし、刺激もすることが示されている。正常な生後血管新生部位および病理学的生後血管新生部位におけるAng2発現の増大は、Ang2の血管新生促進役割を状況証拠的に暗示する。血管新生に付随する血管選択的Ang2誘導が、癌を含む疾患で実証されてきた。結腸癌患者では、Ang2は腫瘍上皮中の至る所で発現されるのに対し、Ang1の腫瘍上皮中での発現はまれであることが示された。Ang2活性の正味の増大は、腫瘍血管新生の開始因子であることが示唆されている。
【0017】
細胞受容体を対象とする他の融合タンパク質は臨床的評価を受けている最中である。Genentech社によって開発されたHerceptin(ハーセプチン)(Trastuzumab(トラスツズマブ))は、ヒト表皮チロシンキナーゼ受容体2(HER2またはErbB2)の細胞外ドメインを対象とする組換えヒト化モノクローナル抗体である。HER2遺伝子は、浸潤性乳癌の25%で過剰発現されており、予後不良および化学療法剤に対する感受性の変化に関連付けられている。HerceptinはErbB2過剰発現を示す乳癌の増殖を妨害し、現在のところ、ErbB2過剰発現を示す転移性乳癌(MBC)の治療用にFDAによって承認されている唯一のErbB2ターゲティング抗体療法である。正常な成体細胞では、細胞1個当たり約20,000個の少数のErbB2分子しか細胞表面に存在せず、したがって、ヘテロ二量体は少ししか形成されず、増殖シグナルは比較的弱く制御可能である。ErbB2が過剰発現される場合、細胞1個当たり約500,000個の多数のErbB2ヘテロ二量体が形成され、細胞シグナル伝達はより強く、その結果、増殖因子に対する応答性が強くなり、悪性増殖が起こる。ErbB2過剰発現が乳房腫瘍の予後不良の指標であり、治療に対する応答の予測に役立ち得るのは、このためである。
【0018】
ErbB2は、原発腫瘍および転移部位の両方に存在する場合、乳癌の有望かつ有効な標的である。Herceptinは、細胞表面からのErbB2の迅速な除去を誘導し、それによって、ErbB2がヘテロ二量体化し増殖を促進する有効性を低下させる。インビトロおよびインビボの実験モデルで観察されているHerceptinの作用メカニズムには、ErbB2の細胞外ドメインのタンパク分解の阻害、ホスファチジルイノシチオール(phosphatidylinositiol)3-キナーゼ(P13K)カスケードおよびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)カスケードなどの下流のシグナル伝達経路の妨害、GI細胞周期停止、DNA修復の阻害、血管新生の抑制、ならびに抗体依存性細胞障害(ADCC)の誘導が含まれる。しかしながら、Herceptinに最初は応答する転移性乳癌患者の大半は、治療開始から1年以内に疾患の進行を示す。
【0019】
別の標的細胞受容体は、1型インスリン様増殖因子-1受容体(IGF-1R)であり、IGF-1Rは、シグナル伝達細胞の生存および増殖において決定的に重要な役割を果たす受容体型チロシンキナーゼである。IGF系は、IGF-IもしくはIGF-IIおよび/またはIGF-1Rの過剰発現を伴う自己分泌ループの確立によって、癌細胞においてしばしば調節解除される。さらに、疫学的研究により、IGFレベルの上昇と主要なヒト癌、例えば乳癌、結腸癌、肺癌、および前立腺癌の発症との関連が示唆されている。IGFおよびそれらの同族受容体の発現は、病期、生存率の低下、転移発生、および腫瘍の脱分化と相互に関係付けられている。
【0020】
IGF-1Rに加えて、上皮増殖因子受容体(EGFR)もまた、多数の癌の腫瘍形成に関係があるとされている。有効な腫瘍抑制は、いずれかの受容体活性を打ち消すいくつかの戦略を用いて、実験的にも臨床的にも達成されている。腫瘍細胞では増殖シグナル伝達経路が重複しているため、一方の受容体機能(例えばEGFR)を阻害しても、他方の増殖因子受容体(例えばIGF-1R)を介した経路の上方調節によって効果的に埋め合わせられ得る。例えば、最近の研究により、同等のEGFRを発現する悪性神経膠腫細胞株のEGFR阻害に対する感受性が、IGF-1Rおよびその下流のシグナル伝達経路を活性化する能力によって有意に異なることが示された。また、他の研究により、腫瘍細胞におけるIGF-1Rの過剰発現および/または活性化が、化学療法剤、放射線療法、またはHerceptinのような抗体療法に対する耐性に寄与し得ることも実証された。その結果として、IGF-1Rシグナル伝達を阻害すると、Herceptinに対する腫瘍細胞の感受性が高まった。
【0021】
EGFRは、多くの正常組織ならびに大半の器官の新生物性病変において発現される受容体型チロシンキナーゼである。EGFRの過剰発現または変異型EGFRの発現は、多くの腫瘍、特に上皮性腫瘍において観察されており、臨床的予後不良に関連付けられている。この受容体を介したシグナル伝達の阻害により、抗腫瘍効果が誘導される。Erbitux(エルビタックス)としても公知のCetuximab(セツキシマブ)(マウス/ヒトキメラ抗体)が2004年2月にFDAによって承認されたことにより、EGFRは、転移性結腸直腸癌の治療用に承認された抗体薬標的となった。2006年3月に、Erbituxはまた、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)の治療用にFDA承認を受けた。さらに最近では、EGFRを対象とする完全ヒト抗体であるVectibix(ベクチビックス)が転移性結腸直腸癌用に承認された。どちらの薬物も、結腸直腸癌において独立型の作用物質ではない−これらは既存の結腸直腸治療プログラムへの追加物として承認された。結腸直腸癌では、Erbituxは薬物イリノテカンと組み合わせて与えられ、Vectibixは疾患進行の後、またはフルオロピリミジン、オキサリプラチン、およびイリノテカンを含む化学療法治療プログラムの後に投与される。Erbituxは、事前の白金を用いた化学療法が失敗した場合のみ、再発性SCCHNまたは転移性SCCHNにおいて単剤として承認されている。非小細胞肺癌をターゲティングするためにこれらの薬物を使用する進歩した臨床試験が進行中である。ErbituxまたはEGFR抗体の配列は当技術分野において周知である(例えば、参照により本明細書に組み入れられるGoldstein, et al., Clin.Cancer Res. 1:1311, 1995(非特許文献1);米国特許第6,217,866号(特許文献2)を参照されたい)。
【0022】
癌療法において選択的プロドラッグ活性化のために触媒抗体を利用する際の障害は、全身的な腫瘍ターゲティングであった。本発明は、触媒抗体のプロドラッグ活性化能力を保持しつつ腫瘍細胞または可溶性分子を効果的にターゲティングする完全長抗体に融合される、標的結合ペプチドまたはモジュラー認識ドメイン(MRD)の適応に基づいたアプローチを説明する。MRDは、抗体の従来の結合部位への結合を有意に減少させないように抗体に融合されるため、抗体の特異性はMRD付加後も損なわれないままである。
【0023】
図2で説明するように、三角形、円、および四角形で示したMRDは、典型的な抗体の重鎖または軽鎖のどちらかの末端のいずれかに付加され得る。最初の概略図は、FcのC末端に融合されたペプチドを有する単純ペプチボディを表す。このアプローチにより、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、および五重特異性抗体の調製が提供された。IgGの各N末端およびC末端に1つのMRDを提示することにより、MRDの八価の図が提供される。抗体可変ドメインの組合せによる二機能性抗体および多機能性抗体の構築の代替え方法として、ファージディスプレイライブラリーより選択されるかまたは天然リガンドに由来する高親和性ペプチドは、従来の抗体の結合および半減期の利点の両方を保持する多機能性抗体の構築への汎用性が極めて高いモジュラー式のアプローチを与え得る。また、MRDは、非触媒抗体の結合能力を増大させて、特に治療目的のために抗体の結合機能性を増大させるための有効なアプローチを提供し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開公報第97/21803号
【特許文献2】米国特許第6,217,866号
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Goldstein, et al., Clin.Cancer Res. 1:1311, 1995
【発明の概要】
【0026】
概要
本発明は、モジュラー認識ドメイン(MRD)を含む完全長抗体を対象とする。また、MRDを含むこのような抗体の変種および誘導体も本発明に包含される。
【0027】
1つの局面において、抗体およびMRDは、リンカーペプチドを介して機能的に連結される。1つの局面において、リンカーペプチドは、2〜20の間もしくは4〜10の間のペプチド長、または約4〜15ペプチド長である。本発明の1つの局面において、リンカーペプチドは、配列GGGS(SEQ ID NO: 1)、配列
、または配列
を含む。SEQ ID NO: 1に示すコア配列GGGSを含む他のリンカーは、リンカーペプチドが約4〜20アミノ酸長である場合、本明細書に含まれる。
【0028】
本発明の別の態様によれば、MRDは、抗体の重鎖のC末端に機能的に連結される。別の局面において、MRDは、抗体の重鎖のN末端に機能的に連結される。さらに別の局面において、MRDは、抗体の軽鎖のC末端に機能的に連結される。別の局面において、MRDは、抗体の軽鎖のN末端に機能的に連結される。別の局面において、2つまたはそれ以上のMRDは、抗体の任意の末端に機能的に連結される。別の局面において、2つまたはそれ以上のMRDは、抗体の2つまたはそれ以上の末端に機能的に連結される。
【0029】
本発明の1つの態様において、MRDの標的は細胞性抗原である。本発明の1つの態様において、MRDの標的はCD20である。
【0030】
本発明の1つの態様において、MRDの標的はインテグリンである。1つの局面において、インテグリンをターゲティングするMRDのペプチド配列は、YCRGDCT(SEQ ID NO: 3)である。別の局面において、インテグリンをターゲティングするMRDのペプチド配列は、PCRGDCL(SEQ ID NO: 4)である。さらに別の局面において、インテグリンをターゲティングするMRDのペプチド配列は、TCRGDCY(SEQ ID NO: 5)である。別の局面において、インテグリンをターゲティングするMRDのペプチド配列は、LCRGDCF(SEQ ID NO: 6)である。
【0031】
本発明の1つの態様において、MRDの標的は血管新生サイトカインである。1つの局面において、血管新生サイトカインをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。別の局面において、血管新生サイトカインをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。さらに別の局面において、血管新生サイトカインをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。別の局面において、血管新生サイトカインをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。別の局面において、血管新生サイトカインをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。別の局面において、血管新生サイトカインをターゲティングするMRDのペプチド配列は、PXDNDXLLNY(SEQ ID NO: 12)(Xは、20種の天然アミノ酸の内の1つである)である。別の態様において、ターゲティングMRDペプチドは、コア配列MGAQTNFMPMDXn(SEQ ID NO: 56)(Xは任意のアミノ酸であり、nは約0〜15である)を有する。
【0032】
別の態様において、ターゲティングMRDペプチドは、以下より選択されるコア配列を含む:
XnEFAPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 22);
XnELAPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 25);
XnEFSPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 28);
XnELEPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 31);
ならびに
(nは約0〜50個のアミノ酸残基であり、X、X1、およびX2は任意のアミノ酸である)(SEQ ID NO: 57)。
【0033】
このようなコアペプチドを含む例示的なペプチドには、例えば以下のものが含まれる:
。
【0034】
本発明の1つの態様において、MRDの標的はErbB2である。本発明の1つの態様において、MRDの標的はErbB3である。本発明の1つの態様において、MRDの標的は、腫瘍に関連した表面抗原上皮細胞接着分子(Ep-CAM)である。
【0035】
本発明の1つの態様において、MRDの標的はVEGFである。1つの局面において、VEGFをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。
【0036】
本発明の1つの態様において、MRDの標的は、インスリン様増殖因子-I受容体である。1つの局面において、インスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。IGF-1Rをターゲティングする他の例示的なMRDには、例えば、式
(X1はEまたはDであり;X2は任意のアミノ酸であり;X3は任意のアミノ酸であり;X4は任意のアミノ酸であり;X5は任意のアミノ酸である)を有するペプチドが含まれる。
【0037】
この式を含む例示的なペプチドには、
が含まれる。
【0038】
本発明の1つの態様において、MRDの標的は腫瘍抗原である。
【0039】
本発明の1つの態様において、MRDの標的は、上皮増殖因子受容体(EGFR)である。本発明の1つの態様において、MRDの標的は血管新生因子である。本発明の1つの態様において、MRDの標的は血管新生受容体である。
【0040】
本発明の1つの態様において、MRDは血管ホーミングペプチドである。1つの局面において、血管ホーミングペプチドのペプチド配列は、ACDCRGDCFCG(SEQ ID NO: 15)である。
【0041】
本発明の1つの態様において、MRDの標的は神経成長因子である。本発明の1つにおいて、抗体は細胞表面抗原に結合する。
【0042】
本発明の1つの態様において、抗体またはMRDは、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、CD20、インスリン様増殖因子-I受容体、または前立腺特異的膜抗原に結合する。1つの局面において、EGFRをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。1つの局面において、EGFRをターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。本発明の1つの局面において、ErbB2をターゲティングするMRDのペプチド配列は、
である。
【0043】
本発明の1つの態様において、抗体は血管新生因子に結合する。
【0044】
本発明の1つの態様において、抗体は血管新生受容体に結合する。
【0045】
本発明はまた、抗体のヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドに関する。本発明の1つの局面において、ベクターはこのポリヌクレオチドを含む。さらに別の局面において、このポリヌクレオチドは、このポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列に機能的に連結される。1つの局面において、宿主細胞はこのポリヌクレオチドまたは子孫を含む。
【0046】
本発明はまた、MRDを含む抗体を投与する段階を含む、それを必要とする対象において疾患を治療する方法に関する。1つの局面において、疾患は癌である。別の局面において、望まれない血管新生が阻害される。さらに別の局面において、血管新生は調整される。さらに別の局面において、腫瘍増殖が阻害される。別の態様において、MRDを含む抗体と共に、追加の治療物質を投与する段階を含む治療方法が説明される。
【0047】
本発明はまた、MRDを含む完全長抗体を作製する方法にも関する。1つの局面において、MRDはファージディスプレイライブラリーに由来する。別の局面において、MRDは天然リガンドに由来する。
【0048】
本発明の1つの態様において、抗体はキメラ抗体またはヒト化抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】四価のIgG様BsAbの様々な設計の概略図を示す。
【図2】図2Aは、FcとのC末端融合物としての典型的なペプチボディを示す。図2Bは、抗体の軽鎖とのC末端MRD融合物を有する抗体を示す。図2Cは、抗体の軽鎖とのN末端MRD融合物を有する抗体を示す。図2Dは、抗体の各末端に融合された独特なMRDペプチドを有する抗体を示す。
【図3】ang-2をターゲティングするMRDに融合された抗インテグリン抗体がインテグリンおよびAng2に結合した場合のELISAの結果を示す。
【図4】ang-2をターゲティングするMRDに融合された抗インテグリン抗体がインテグリンおよびAng2に結合した場合のELISAの結果を示す。
【図5】Ang2をターゲティングするMRDに抗ErbB2抗体が融合された場合のELISAの結果を示す。
【図6】Ang2をターゲティングするMRDが肝細胞増殖因子受容体結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図7】インテグリンをターゲティングするMRDがErbB2結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図8】インテグリンをターゲティングするMRDが肝細胞増殖因子受容体結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図9】インスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDがErbB2結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図10】VEGFをターゲティングするMRDがErbB2結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図11】インテグリンをターゲティングするMRDが触媒抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図12】Ang-2をターゲティングするMRDが触媒抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図13】インテグリンおよびAng-2をターゲティングするMRDがErbB2結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図14】インテグリンをターゲティングするMRDがErbB2結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図15】インテグリン、Ang-2、またはインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDが、短いリンカーペプチドによってErbB2または肝細胞増殖因子受容体結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【図16】インテグリン、Ang-2、またはインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDが、長いリンカーペプチドによってErbB2または肝細胞増殖因子受容体結合抗体に融合された場合のELISAの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
発明の詳細な説明
本明細書において使用される「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリン分子を意味し、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、ならびにヒト化抗体を含む。無傷の抗体は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略される)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3種のドメイン、すなわちCH1、CH2、およびCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略される)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1種のドメイン、すなわちCLからなる。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存の程度が高い領域に点在している、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序で配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。
【0051】
「二重特異性抗体」は、二重可変ドメイン免疫グロブリンを含む免疫グロブリン分子を意味するために本明細書において使用され、この二重可変ドメインは任意の2つのモノクローナル抗体から人工的に設計することができる。
【0052】
「抗体結合部位」は、抗原に特異的に結合する(免疫反応する)重鎖および軽鎖の可変領域および超可変領域からなる、抗体分子の構造的部分である。様々な形態の「免疫反応する」という用語は、抗原決定基を含む分子と抗体結合部位を含む分子、例えば全長抗体分子またはその一部分との特異的結合を意味する。
【0053】
「ペプチボディ」という用語は、完全とは言えない無傷の抗体を含むペプチドまたはポリペプチドを意味する。
【0054】
「天然」という用語は、核酸分子、ポリペプチド、および宿主細胞などの生物学的材料に関連して使用される場合、自然界に存在し、ヒトによって改変されていないものを意味する。
【0055】
「モノクローナル抗体」とは、特定のエピトープと免疫反応できる抗体結合部位を1種類だけ含む抗体分子集団を意味する。したがって、モノクローナル抗体は典型的には、免疫反応する任意のエピトープに対して単一の結合親和性を示す。したがって、モノクローナル抗体は、異なるエピトープに対してそれぞれが免疫特異的である複数の抗体結合部位を有する抗体分子、例えば、二重特異性モノクローナル抗体を含んでよい。
【0056】
「モジュラー認識ドメイン」(MRD)または「標的結合ペプチド」は、標的分子に特異的に(ランダムではなく)結合できる分子、例えば、タンパク質および糖タンパク質などである。MRD部位のアミノ酸配列は、ある程度の可変性を許容し、標的分子に結合する能力の程度を引き続き保持することができる。さらに、配列の変化は、予め選択された標的分子と結合部位の間の結合特異性および結合定数の変化をもたらし得る。
【0057】
「細胞表面受容体」とは、シグナルを受け取ること、および細胞の形質膜を通してそのようなシグナルを伝達することができる分子および分子複合体を意味する。本発明の細胞表面受容体の例は、活性化インテグリン受容体、例えば、転移性細胞上の活性化αvβ3インテグリン受容体である。
【0058】
「標的結合部位」または「標的部位」は、予め選択された作用物質に選択的に結合する能力を有する公知またはまだ説明されていない任意のアミノ酸配列である。例示的な参照標的部位は、RGD依存性インテグリンリガンドに由来するもの、すなわちフィブロネクチン、フィブリノーゲン、ビトロネクチン、およびフォンウィレブランド因子など、細胞受容体に由来するもの、例えば、VEGF、ErbB2、血管ホーミングペプチド、または血管新生サイトカイン、タンパク質ホルモン受容体に由来するもの、例えば、インスリン様増殖因子-I受容体および上皮増殖因子受容体など、ならびに腫瘍抗原に由来するものである。
【0059】
「タンパク質」という用語は、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸に由来する単位を含む生物学的高分子と定義される。タンパク質は2つまたはそれ以上の鎖から構成され得る。
【0060】
「融合ポリペプチド」は、少なくとも2つのポリペプチドおよび任意で、それら2つのポリペプチドを機能的に連結して1つのつながったポリペプチドにする連結配列からなるポリペプチドである。融合ポリペプチド中で連結される2つのポリペプチドは典型的には、2つの独立した供給源に由来し、したがって、融合ポリペプチドは、通常は自然界で連結して存在しない2つの連結されたポリペプチドを含む。
【0061】
「リンカー」という用語は、抗体とMRDの間に位置するペプチドを意味する。リンカーは約2〜20個のアミノ酸、通常4〜15個のアミノ酸を有してよい。
【0062】
「標的細胞」は、本発明のMRDを含む抗体によってターゲティングされ得る対象(例えば、ヒトまたは動物)中の任意の細胞を意味する。標的細胞は、活性化インテグリン受容体のような標的結合部位を発現または過剰発現する細胞でよい。
【0063】
「患者」、「対象」、「動物」、または「哺乳動物」は同義的に使用され、ヒト患者および非ヒト霊長類、ならびに実験動物、例えば、ウサギ、ラット、およびマウス、ならびに他の動物などの哺乳動物を意味する。動物には、すべての脊椎動物、例えば、ヒツジ、イヌ、雌ウシ、ニワトリ、両生類、および爬虫類などの哺乳動物および非哺乳動物が含まれる。
【0064】
「治療すること」または「治療」は、疾患の症状、合併症、または生化学的徴候の発生を予防または遅延させて、症状を緩和するか、または疾患、病態、もしくは障害のそれ以上の発達を停止もしくは阻害するための、本発明のMRDを含む抗体の投与を含む。治療は予防的(疾患の発症を予防もしくは遅延させるため、またはその臨床的症状もしくは不顕性症状の発現を予防するため)または疾患発現後の症状の治療的な抑制もしくは軽減でよい。治療は、抗体-MRD組成物のみを用いてもよく、または追加の治療物質と組み合わせて使用してもよい。
【0065】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される」または「生理学的に容認される」という用語およびその文法的変形は、組成物、担体、希釈剤、および試薬に関する場合、同義的に使用され、それらの材料が、悪心、めまい、および胃の不調など望ましくない生理学的作用をもたらすことなくヒトに(to or upon)投与できることを表す。
【0066】
「調整する」とは、大きさ、頻度、程度、または活性の調整または調節を意味する。別の関連する局面において、このような調整は、正に調整されてもよく(例えば、頻度、程度、もしくは活性の増大)または負に調整されてもよい(例えば、頻度、程度、もしくは活性の低減)。
【0067】
「癌」、「腫瘍」、または「悪性腫瘍」は同義語として使用され、細胞の制御不能な異常増殖、罹患細胞が局所的にまたは血流およびリンパ系を介して身体の他の部分に広がる(転移する)能力、ならびにいくつかの特徴的な構造的特徴および/または分子的特徴のいずれかを特徴とするいくつかの疾患のいずれかを意味する。「癌性」、「腫瘍」、または「悪性細胞」は、特定の構造的特性を有し、分化を欠き、かつ浸潤および転移することができる細胞と理解される。癌の例は、乳癌、肺癌、脳癌、骨癌、肝臓癌、腎臓癌、結腸癌、頭頸部癌、卵巣癌、造血系癌(例えば白血病)、および前立腺癌である。
【0068】
「ヒト化抗体」または「キメラ抗体」には、マウスのような別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に接ぎ合わせられている抗体が含まれる。
【0069】
本発明は、触媒抗体のプロドラッグ活性化能力を損なわれないままにしつつ腫瘍細胞または可溶性分子の効果的なターゲティングを提供する、触媒抗体または非触媒抗体への融合物としての標的結合ペプチドまたはモジュラー認識ドメイン(MRD)の適応に基づいたアプローチを説明する。また、MRDは、非触媒抗体の結合能力を増大させて、特に治療目的のために抗体の結合機能性を増大させるための有効なアプローチを提供し得る。
【0070】
本発明の1つの局面は、モジュラー認識ドメイン(MRD)を含む完全長抗体の開発に関する。タンパク質リガンドとその標的受容体部位との相互作用は、比較的広い境界面でしばしば起こる。しかしながら、境界面のごく少数の主要残基だけが結合の大部分に寄与する。したがって、(一般に2〜60アミノ酸)ペプチド長の分子が、所与の大型タンパク質リガンドの受容体タンパク質に結合することができる。本発明のMRDが、関心対象の標的部位に結合し、約2〜60個のアミノ酸であるペプチド配列を含むことが企図される。
【0071】
αvβ3およびαvβ5などのインテグリンの腫瘍関連マーカーとしての役割は十分に実証されている。進行した卵巣癌から樹立した25種の永久ヒト細胞株に関する最近の研究により、すべての株がαvβ5発現に関して陽性であり、多くがαvβ3発現に関して陽性であることが実証された。また、αvβ3およびαvβ5が悪性ヒト子宮頸部腫瘍組織において高発現されていることも研究によって示された。インテグリンはまた、カポジ肉腫、黒色腫、および乳癌の動物モデルにおいても治療的効果を示した。
【0072】
インテグリンαvβ3およびαvβ5のいくつかのアンタゴニストが臨床開発中である。これらには環状RGDペプチドおよび合成低分子RGD模倣体が含まれる。現在、抗体ベースの2種のインテグリンアンタゴニストが癌治療のための臨床試験中である。1つ目はVitaxin(ビタキシン)、すなわちヒト化型のマウス抗ヒトαvβ3抗体LM609である。癌患者における用量漸増第I相試験により、これがヒトにおいて使用するために安全であることが実証された。臨床試験中の別の抗体はCNT095、すなわちαvインテグリンを認識する完全ヒトmAbである。様々な固形腫瘍を有する患者におけるCNT095の第I相試験により、これが十分に許容されることが示された。αvβ3およびαvβ5のペプチドアンタゴニストであるCilengitide(シレンジタイド)もまた、第I相臨床試験において安全が証明された。さらに、これらの受容体に対するリガンドの使用に基づいた多数の薬物ターゲティング研究および薬物画像化研究が実施されている。これらの前臨床的観察結果および臨床的観察結果から、αvβ3およびαvβ5をターゲティングすることの重要性が実証され、この戦略において抗体の使用を含む研究によって、これらのインテグリンを介したターゲティングが安全であることが一貫して報告された。
【0073】
インテグリン結合MRDの例は、RGDトリペプチドを含む結合部位であり、本明細書において説明する一般的方法の例示である。RGDモチーフを最小認識ドメインとして有するリガンドは周知であり、その一部のリストには、フィブロネクチン(α3β1、α5β1、αvβ1、αIIbβ3、αvβ3、およびα3β1)、フィブリノーゲン(αMβ2およびαIIbβ1)、フォンウィレブランド因子(αIIbβ3およびαvβ3)、ならびにビトロネクチン(αIIbβ3、αvβ3、およびαvβ5)が含まれる(括弧内は対応するインテグリン標的)。
【0074】
本発明において有用な、RGDを含むターゲティングMRDの例は、下記に示すアミノ酸残基配列を有する:
YCRGDCT(SEQ ID NO: 3)
PCRGDCL(SEQ ID NO: 4)
TCRGDCY(SEQ ID NO: 5)
LCRGDCF(SEQ ID NO: 6)。
【0075】
インテグリン受容体上の非RGD依存性結合部位を模倣し、選択されたインテグリンを認識する高親和性リガンドの標的結合特異性を有するMRDもまた、本発明において企図される。
【0076】
血管新生は、多くの生理学的プロセスおよび病理学的プロセスに不可欠である。Ang2は血管新生促進分子として作用することが示されている。Ang2選択的阻害物質の投与は、腫瘍血管新生および角膜血管新生の両方を抑制するのに十分である。したがって、単独またはVEGFのような他の血管新生因子の阻害と組み合わせたAng2阻害は、固形腫瘍を有する患者を治療するための有効な抗血管新生戦略になり得る。
【0077】
本発明において有用なMRDには、血管新生受容体、血管新生因子、および/またはAng-2に結合するものが含まれることが企図される。血管新生サイトカインをターゲティングするMRD配列の例を下記に挙げる:
PXDNDXLLNY(SEQ ID NO: 12)(Xは、20種の天然アミノ酸の内の1つである)
コアnEFAPWTn(SEQ ID NO: 22)(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)
XnELAPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸である)(SEQ ID NO: 25);
XnEFSPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基であり、Xは任意のアミノ酸である)(SEQ ID NO: 28);
XnELEPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基であり(SEQ ID NO: 31)、Xは任意のアミノ酸である)
。
【0078】
このようなペプチドは、自然界において同種または異種のいずれかである二量体、三量体、または他の多量体として存在してよいことを理解すべきである。例えば、2×ConFAの場合のように同一のConベース配列を二量体化して同種二量体を提供してもよく、またはConFAがConLAと結合されるようにConペプチドを混合して、配列:
を有するConFA-LAヘテロ二量体を作製してもよい。
【0079】
別のヘテロ二量体は、配列:
を有するConFA-FSを作製するためにConFSと結合されたConFAである。
【0080】
本明細書における教示を考慮すれば、当業者は、他のこのような組合せによって、本明細書において説明するAng2に結合する機能的なMRDが作製されることを理解するであろう。
【0081】
1つの局面において、本発明は、下記の配列を有するペプチドを含む:
(X1はEまたはDであり;X2は任意のアミノ酸であり;X3は任意のアミノ酸であり;X4は任意のアミノ酸であり;X5は任意のアミノ酸である)。
【0082】
本発明はまた、以下より選択されるコア配列を有するペプチドも含む:
XnEFAPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 22);
XnELAPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 25);
XnEFSPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 28);
XnELEPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 31);
または
(nは約0〜50個のアミノ酸残基であり、X、X1、およびX2は任意のアミノ酸である)(SEQ ID NO: 57)。
【0083】
VEGFとの複合体を形成したVEGF中和ペプチドのファージディスプレイ選択および構造研究が報告されている。これらの研究により、ペプチドv114
がVEGF特異的であり、0.2μMの親和性でVEGFに結合し、ヒトさい帯静脈内皮細胞(HUVEC)のVEGFによって誘導される増殖を打ち消すことが明らかにされた。VEGFはホモ二量体であるため、ペプチドはVEGFホモ二量体の両方の末端において2つの同一な部位を占める。VEGFをターゲティングするMRDを含む抗体は、本発明において企図される。抗VEGF抗体は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるCancer Research 57, 4593-4599, Oct. 1997; J Biol Chem 281 :10 6625, 2006において見出すことができる。
【0084】
インスリン様増殖因子-I受容体に特異的なMRDは、本発明において使用され得る。インスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRD配列の1つの例は、
である。
【0085】
その他のIGF-1R MRDには以下のものが含まれる:
。
【0086】
いくつかの研究により、血管ホーミングペプチドをIL-12に似た他のタンパク質または薬物に連結して、生きている動物においてそれらの送達を指示することの有効性が特徴付けられた。したがって、血管ホーミングMRDは、本発明において使用するために企図される。血管ホーミングペプチドであるMRD配列の1つの例はACDCRGDCFCG (SEQ ID NO: 15)である。
【0087】
上皮増殖因子受容体(EGFR)、CD20、腫瘍抗原、ErbB2、ErbB3、ErbB4、インスリン様増殖因子-I受容体、神経成長因子(NGR)、肝細胞増殖因子受容体、および腫瘍に関連した表面抗原上皮細胞接着分子(Ep-CAM)を含む、他の多数の標的結合部位が本発明によって企図される。これらの標的結合部位に向けてMRDを方向付けることができる。
【0088】
EGFRに結合するMRD配列の例を下記に挙げる:
。
【0089】
ErbB2に結合するMRD配列の例を下記に挙げる:
。
【0090】
いくつかの方法で、MRDの配列を決定することができる。MRD配列は天然リガンドに由来してよく、または特異的標的結合部位に結合する公知の配列を使用してもよい。さらに、ファージディスプレイ技術が、標的受容体に結合するペプチドを同定する際の効果的な方法として台頭してきた。ペプチドファージディスプレイライブラリーでは、繊維状ファージのコートタンパク質と融合させることによって、ランダムペプチド配列を提示することができる。ファージディスプレイベクターを用いてポリペプチド上の結合部位を解明するための方法は、特に国際公開公報第94/18221号において以前に説明されている。これらの方法は一般に、関心対象の予め選択された標的部位に結合するポリペプチドをクローニングし発現させるために繊維状ファージ(ファージミド)表面発現ベクター系の使用を伴う。
【0091】
MRDを調製するための本発明の方法は、発現されたディスプレイタンパク質の非常に大きな集団をスクリーニングし、それによって所望の標的結合反応性をコードする1つまたは複数の特定のクローンを位置付けるための手段を提供するという特有の利点があるためファージディスプレイベクターの使用を伴う。MRDの配列が一旦解明されたら、これらのペプチドは当技術分野において開示されている方法のいずれかによって調製することができる。
【0092】
MRDの変異体および誘導体は、本発明の範囲内に含まれる。挿入変異体、欠失変異体、および置換変異体、ならびに本明細書において提示するMRDを含み、約0〜50個、0〜40個、0〜30個、および0〜20個のアミノ酸などを含む追加のアミノ酸をN末端および/またはC末端に有する変異体が、変異体の範囲に含まれる。本発明の具体的なMRDは、1つ、2つ、または3つすべてのタイプの変異体を含んでよいことが理解されよう。挿入変異体および置換変異体は、天然のアミノ酸、従来と異なるアミノ酸、または両方を含んでよい。
【0093】
触媒抗体および非触媒抗体が本発明において使用され得ることが企図される。抗体38C2は、抗体分泌ハイブリドーマであり、国際公開公報第97/21803号において以前に説明されている。38C2は、脂肪族ドナーとアルデヒドアクセプター間のアルドール添加反応を触媒する抗体結合部位を含む。神経芽細胞腫の同系マウスモデルにおいて、エトポシドプロドラッグの全身投与およびAb 38C2の腫瘍内注射により、腫瘍増殖が阻害された。
【0094】
本発明の関心対象の他の抗体には、A33結合抗体が含まれる。ヒトA33抗原は、Igスーパーファミリーの膜貫通型糖タンパク質である。正常結腸組織および悪性結腸組織中のヒトA33抗原の機能はまだ公知ではないが、A33抗原のいくつかの特性から、結腸癌の免疫療法のための有望な標的であることが示唆されている。これらの特性には、(i)著しく限定されたA33抗原発現パターン、(ii)結腸癌細胞における多量のA33抗原発現、(iii)分泌A33抗原または遊離(shed)A33抗原の不在、ならびに(iv)抗体A33がA33抗原に結合した際に、抗体A33は小胞中に内在化され隔離されること、および(v)予備臨床試験における、A33抗原を発現する結腸癌への抗体A33のターゲティング、が含まれる。A33に向けて方向付けられたMRDを触媒抗体または非触媒抗体に融合させると、A33ターゲティング抗体の治療的有効性が高まると思われる。
【0095】
本発明はまた、一重特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、および五重特異性抗体の調製も企図する。本発明において使用される抗体は、当技術分野において公知である任意の方法によって調製され得ることが企図される。
【0096】
本発明に従って調製した抗体-MRD融合分子において、MRDは、ペプチドのN末端またはC末端を介して抗体に結合され得る。MRDは、抗体の重鎖のC末端、抗体の重鎖のN末端、抗体の軽鎖のC末端、または抗体の軽鎖のN末端において抗体に結合され得る。MRDは抗体に直接結合されてもよく、または2〜20の間のペプチド長でよい任意のリンカーペプチドを介して結合されてもよい。リンカーペプチドは、配列GGGS(SEQ ID NO: 1)を有する短いリンカーペプチド、配列
を有する中ぐらいの長さのリンカーペプチド、または配列
を有する長いリンカーペプチドを含んでよい。本発明はまた、抗体の任意の末端に連結されている2つまたはそれ以上のMRDも提供する。また、2つまたはそれ以上のMRDは、抗体の2つまたはそれ以上の末端に直接結合されてもよく、またはリンカーペプチドを介して結合されてもよいことが企図される。複数のMRDは、同じ標的結合部位または2つもしくは複数の異なる標的結合部位をターゲティングしてよい。MRDのインビボでの安定性を高めるために、追加のペプチド配列を付加してもよい。
【0097】
抗体-MRD融合分子は、ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドにコードされ得る。ベクターはこのポリヌクレオチド配列を含んでよい。また、ポリヌクレオチド配列は、宿主細胞においてポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列と連結されてもよい。宿主細胞またはその子孫は、抗体-MRD融合分子をコードするポリヌクレオチドを含んでよい。
【0098】
本発明は、本明細書において説明する治療的方法を実践するために有用な治療的組成物を企図する。本発明の治療的組成物は、活性成分としてその中に溶解または分散された本明細書において説明されるMRDを含む少なくとも1種の抗体と共に、生理学的に容認される担体を含む。好ましい態様において、治療的組成物は、治療目的のためにヒト患者に投与される場合、免疫原性ではない。
【0099】
その中に溶解または分散された活性成分を含む薬理学的組成物の調製は当技術分野において十分に理解されている。典型的には、このような組成物は、水性または非水性の溶液剤または懸濁剤のいずれかとしての無菌注射剤として調製されるが、使用前に液体に溶解または懸濁するのに適した固形形態もまた調製され得る。製剤はまた、乳化されてもよい。したがって、抗体-MRDを含む組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、カプセル剤、徐放製剤、もしくは散剤、または他の組成物形態を取ることができる。
【0100】
活性成分は、薬学的に許容され、活性成分と共存でき、本明細書において説明する治療的方法において使用するのに適した量である賦形剤と混合することができる。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、またはエタノールなど、およびそれらの組合せである。さらに、所望の場合は、組成物は、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、および活性成分の有効性を高める同種のものなど少量の補助物質を含んでよい。
【0101】
本発明の治療的組成物は、構成要素の薬学的に許容される塩をその中に含んでよい。薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、酒石酸、およびマンデル酸などの有機酸と共に形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基と共に形成される)が含まれる。また、遊離のカルボキシル基と共に形成される塩は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、およびプロカインなどの有機塩基に由来し得る。
【0102】
生理学的に容認される担体は当技術分野において周知である。活性成分および水に加えて材料を含まないか、または生理学的pH値のリン酸ナトリウムのような緩衝液、生理食塩水、もしくは両方、例えばリン酸緩衝化生理食塩水を含む無菌水溶液が、液状担体の例である。さらにまた、水性担体は、複数の緩衝塩、ならびに塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどの塩、デキストロース、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および他の溶質も含んでよい。
【0103】
また、液状組成物は、水に加えた、および水を除外する液相を含んでもよい。
【0104】
グリセリン、綿実油のような植物油、オレイン酸エチルのような有機エステル、および水-油乳濁液が、このような追加の液相の例である。
【0105】
治療的組成物は、典型的には治療的組成物総重量当たりの抗体が少なくとも0.1重量パーセントとなる量で、本発明のMRDを含む抗体を含む。重量パーセントは、組成物総量に対する抗体の重量比率である。したがって、例えば、0.1重量パーセントは、100グラムの組成物総量当たり0.1グラムの抗体-MRDである。
【0106】
典型的には、抗体を含む治療的組成物は、組成物体積当たり約10マイクログラム(ug)/ミリリットル(ml)〜約100ミリグラム(mg)/mlの抗体を活性成分として含み、およびより好ましくは、約1mg/ml〜約10mg/ml(すなわち、約0.1〜1重量パーセント)を含む。
【0107】
別の態様において、治療的組成物は、典型的には治療的組成物総重量当たりのポリペプチドが少なくとも0.1重量パーセントとなる量で、本発明のポリペプチドを含む。重量パーセントは、組成物総量に対するポリペプチドの重量比率である。したがって、例えば、0.1重量パーセントは、100グラムの組成物総量当たり0.1グラムのポリペプチドである。
【0108】
好ましくは、ポリペプチドを含む治療的組成物は典型的に、組成物体積当たり約10マイクログラム(ug)/ミリリットル(ml)〜約100ミリグラム(mg)/mlのポリペプチドを活性成分として含み、およびより好ましくは、約1mg/ml〜約10mg/ml(すなわち、約0.1〜1重量パーセント)含む。
【0109】
ヒト患者においてインビボでヒト化抗体またはキメラ抗体を使用する恩恵を考慮すると、本明細書において説明する抗体-MRD分子は、治療的反応物としてインビボで使用するのに特に好適である。この方法は、本発明のMRDを含む抗体を含む生理学的に容認される組成物の治療的有効量を患者に投与する段階を含む。
【0110】
本発明のMRDを含む抗体を投与するための投薬量範囲は、標的分子によってもたらされる疾患症状が寛解する所望の効果をもたらすのに十分な多さの範囲である。投薬量は、過粘稠度症候群、肺水腫、およびうっ血性心不全など有害な副作用を引き起こすほどに多いべきではない。一般に、投薬量は、年齢、病態、性別、および患者の疾患の程度と共に変動し、当業者によって決定され得る。万一任意の合併症が発生したら、個々の医師が投薬量を調整してよい。
【0111】
典型的には、本発明のMRDを含む抗体の治療的有効量は、生理学的に容認される組成物中で投与された場合に約0.1マイクログラム(ug)/ミリリットル(ml)〜約100ug/ml、好ましくは約1ug/ml〜約5ug/ml、および通常約5 ug/mlの血漿中濃度に達するのに十分であるような抗体の量である。別の言い方をすれば、投薬量は、毎日、1日、または数日間、1回または複数回の用量投与で、約0.1mg/kgから約300mg/kgまで、好ましくは約0.2mg/kgから約200mg/kgまで、最も好ましくは約0.5mg/kgから約20mg/kgまで変動し得る。
【0112】
本発明のMRDを含む抗体は、注射によって、またはある期間に渡る徐々の輸注によって非経口的に投与することができる。標的分子は典型的には全身投与によって体内で到達され得、したがってほとんどの場合、治療的組成物の静脈内投与によって処置されるが、標的とされる組織が標的分子を含む可能性がある場合、他の組織および送達手段が企図される。したがって、本発明のMRDを含む抗体は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、体腔内、経皮的に投与することができ、ぜん動手段によって送達することができる。
【0113】
ヒトモノクローナル抗体または本発明のポリペプチドを含む治療的組成物は慣例的に、例えば単位用量を注射することによって静脈内投与される。「単位用量」という用語は、本発明の治療的組成物に関して使用される場合、対象に対する単位投薬量として適切な物理的に別個の単位を意味し、各単位は、必要とされる希釈剤、すなわち担体またはビヒクルと共同して所望の治療的効果をもたらすように算出された所定の量の活性材料を含む。
【0114】
組成物は、投薬製剤に適合した様式で、かつ治療的有効量で投与される。投与される量は、治療される対象、対象の身体が活性成分を利用する能力、および所望の治療的効果の程度に依存する。投与されるのに必要な活性成分の正確な量は、実務者の判断に依存し、各個体に固有である。しかしながら、全身適用のために適切な投薬量範囲は本明細書において開示され、投与経路に依存する。投与のための適切な治療プログラムも多様であるが、初回投与と、それに続く後続の注射または他の投与による1時間または複数時間の間隔の反復投与が典型的である。あるいは、インビボ療法のために指定された範囲で血液中濃度を維持するために十分な持続点滴静注が企図される。
【0115】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するが、本発明を限定することを意図しない。
【実施例】
【0116】
実施例1. インテグリンをターゲティングする抗体-MRD分子
インテグリンαvβ3をターゲティングするペプチドを触媒抗体38C2に融合することによって、新規な抗体-MRD融合分子を調製した。軽鎖のN末端およびC末端ならびに重鎖のC末端における融合が最も効果的であった。フローサイトメトリーを用いて、この抗体結合体がインテグリンαvβ3を発現するヒト乳癌細胞に効率的に結合することを示した。抗体結合体はまた、メソドール(methodol)およびドキソルビシンプロドラッグ活性化によって測定されるように、親触媒抗体38C2のレトロアルドール活性も保持していた。このことから、細胞ターゲティングおよび触媒抗体能力を選択的化学療法のために効率的に組み合わせられることが実証される。
【0117】
実施例2. 血管新生サイトカインをターゲティングする抗体-MRD分子
血管新生サイトカインをターゲティングする抗体-MRD融合分子を構築した。使用した抗体は38C2であり、2×Con4ペプチドを含むMRD
と融合させた。このMRDペプチドは、軽鎖のN末端またはC末端および重鎖のC末端のいずれかに融合させた。同様の結果が他のAng-2 MRDペプチドの場合に見出された。その他のAng-2 MRDペプチドには、
コアXnEFAPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 22)
XnELAPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 25)
XnEFSPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 28)
XnELEPWTXn(nは約0〜50個のアミノ酸残基である)(SEQ ID NO: 31)
が含まれる。
【0118】
このようなペプチドは、自然界において同種または異種のいずれかである二量体、三量体、または他の多量体として存在してよいことを理解すべきである。例えば、2×ConFAの場合のように同一のConベース配列を二量体化して同種二量体を提供してもよく、またはConFAがConLAと結合されるようにConペプチドを混合して、配列:
を有するConFA-LAヘテロ二量体を作製してもよい。
【0119】
別の例示的なヘテロ二量体は、配列:
を有するConFA-FSを作製するためにConFSと結合されたConFAである。
【0120】
本明細書における教示を考慮すれば、当業者は、他のこのような組合せによって、本明細書において説明するAng2に結合する機能的なMRDが作製されることを理解するであろう。
【0121】
実施例3. 非触媒抗体との抗体-MRD融合物
ヒトインテグリンαvβ3を対象とするヒト化マウスモノクローナル抗体LM609は以前に説明されている(Rader, C. et. al., 1998. Rader C, Cheresh DA, Barbas CF 第3版 Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Jul 21;95(15):8910-5)。
【0122】
ヒト非触媒的モノクローナルAbであるJC7Uの軽鎖のN末端またはC末端のいずれかに、2×Con4を含む抗Ang2 MRD
を融合させた。抗体のκ鎖へのN末端融合物(2×Con4-JC7U)として、およびC末端融合物(JC7U-2×Con4)として、2×Con4
を研究した。どちらの融合物もインテグリン結合およびAng2結合を維持した。図3の左のパネルに示すように、両方の抗体構築物(2×Con4-JC7UおよびJC7U-2×Con4)が組換えAng2に特異的に結合することがELISA研究によって実証された。しかしながら、抗体の軽鎖のC末端に2×Con4(SEQ ID NO: 10)が融合したJC7U-2×Con4の方が、Ang2への結合が有意に強い。図3の右のパネルは、Ang2-JC7UおよびJC7U-Ang2のインテグリンαvβ3への結合を示す。これらの結果から、軽鎖のN末端またはC末端のいずれかへの2×Con4(SEQ ID NO: 10)の融合は、インテグリンαvβ3へのmAb JC7U結合に影響を及ぼさないことが示される。図4は、同じ抗体-MRD融合構築物を用いた別のELISA研究を示す。
【0123】
実施例4. Herceptin-MRD融合分子
非触媒抗体へのMRD融合物の別の例は、Herceptin-MRD融合構築物である。Herceptin-MRD融合物は多機能性であり、低分子αvインテグリンアンタゴニストと化学的にプログラムされたインテグリンをターゲティングする抗体の両方が、αvの媒介による細胞接着および増殖の邪魔をすることによって乳癌転移を防止する際に優れた有効性を示す。Herceptin-2×Con4(ErbB2およびang2をターゲティングする)を含むMRD融合物、ならびにHerceptin-V114(ErbB2およびVEGFターゲティングをターゲティングする)を含むMRD融合物、ならびにHerceptin-RGD-4C-2×Con4(ErbB2、ang2、およびインテグリンターゲティングをターゲティングする)を含むMRD融合物が効果的である。
【0124】
実施例5. VEGFをターゲティングする抗体-MRD分子
VEGFをターゲティングするMRDを含む抗体を構築した。v114をターゲティングするMRD(SEQ ID NO: 13)を、長いリンカー配列(SEQ ID NO: 2)を用いて38C2のκ鎖のN末端およびHerceptinに融合させた。得られた抗体-MRD融合構築物の発現および試験により、強いVEGF結合が実証された。
【0125】
実施例6. IGF-1Rをターゲティングする抗体-MRD分子
IGF-1RをターゲティングするMRD
を、長いリンカー配列を連結物として用いて38C2のκ鎖のN末端およびHerceptinに融合させた物質を研究した。得られた抗体-MRD融合構築物の発現および試験により、強いIGF-1R結合が実証された。IGR-1Rへの強い結合を示すその他のクローンもまた、数回の変異誘発およびスクリーニングの後に同定した。下記に挙げる好ましい配列は、インスリン受容体に対して有意な親和性も結合親和性も示さない(表2を参照されたい)。
【0126】
(表1)さらなる変異誘発のための鋳型
【0127】
(表2)
【0128】
実施例7. ErbB2に結合し、Ang-2をターゲティングする抗体-MRD分子
ErbB2に結合する抗体の軽鎖に融合されAng-2をターゲティングするMRD(L17)を含む抗体を構築した。短いリンカー配列、長いリンカー配列、または軽鎖定常領域中の4番目のループのいずれかをリンカーとして使用した。図5は、短いリンカーペプチド(GGGS(SEQ ID NO: 1))によるAng2をターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(L17-sL-Her)、短いリンカーペプチドによるAng2をターゲティングするMRDとErbB2抗体のC末端融合物(Her-sL-L17)、軽鎖定常領域中の4番目のループによるAng2をターゲティングするMRDとErbB2抗体のC末端融合物(Her-lo-L17)、または長いリンカーペプチド
によるAng2をターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(L17-lL-Her)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。すべての構築物が様々な程度でErbB2に結合した。しかしながら、Ang-2にはHer-sL-L17およびL17-lL-Herのみが結合した。
【0129】
実施例8. 肝細胞増殖因子受容体に結合し、Ang-2をターゲティングする抗体-MRD分子
Ang-2をターゲティングするMRD(L17)を、肝細胞増殖因子受容体に結合するMet抗体の軽鎖のN末端またはC末端のいずれかに融合させた。短いリンカー配列または長いリンカー配列のいずれかを連結物として使用した。図6は、短いリンカーペプチド(GGGS(SEQ ID NO: 1))によるAng2をターゲティングするMRDとMet抗体のN末端融合物(L17-sL-Met)、長いリンカーペプチド
によるAng2をターゲティングするMRDとMet抗体のN末端融合物(L17-lL-Met)、および長いリンカーペプチドによるAng2をターゲティングするMRDとMet抗体のC末端融合物(Met-iL-L17)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。得られた抗体-MRD融合構築物の発現および試験により、長いリンカーペプチドを使用した場合の強いAng-2結合が実証された。Ang-2をターゲティングするMRDを抗体の軽鎖C末端に融合した物質の方が、抗体の軽鎖N末端へのAng-2ターゲティングの融合物よりも、Ang-2に対して若干強い結合を示した。
【0130】
実施例9. ErbB2に結合し、インテグリンをターゲティングする抗体-MRD分子
ErbB2に結合する抗体Herceptin(Her)の軽鎖に融合されインテグリンαvβ3をターゲティングするMRD(RGD4C)を含む抗体を構築した。短いリンカー配列、長いリンカー配列、または軽鎖定常領域中の4番目のループのいずれかをリンカーとして使用した。図7は、短いリンカーペプチド(GGGS(SEQ ID NO: 1))によるインテグリンαvβ3をターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(RGD4C-sL-Her)、短いリンカーペプチドによるインテグリンαvβ3をターゲティングするMRDとErbB2抗体のC末端融合物(Her-sL-RGD4C)、軽鎖定常領域中の4番目のループによるインテグリンαvβ3をターゲティングするMRDとErbB2抗体のC末端融合物(Her-lo-RGD4C)、または長いリンカーペプチド
によるインテグリンαvβ3をターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(RGD4C-lL-Her)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。すべての構築物が様々な程度でErbB2に結合した。しかしながら、インテグリンαvβ3にはRGD4C-lL-Herのみが結合した。
【0131】
実施例10. 肝細胞増殖因子受容体に結合し、インテグリンをターゲティングする抗体-MRD分子
肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体(Met)の軽鎖に融合されインテグリンαvβ3をターゲティングするMRD(RGD4C)を含む抗体を構築した。長いリンカー配列を含む抗体-MRD構築物を使用した。図8は、インテグリンαvβ3をターゲティングするMRDと肝細胞増殖因子受容体抗体のN末端融合物(RGD4C-lL-Met)、またはインテグリンαvβ3をターゲティングするMRDと肝細胞増殖因子受容体抗体のC末端融合物(Met-lL-RGD4C)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。RGD4C-lL-Metは、強いインテグリンαvβ3結合を示した。
【0132】
実施例11. ErbB2に結合し、インスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングする抗体-MRD分子
ErbB2に結合する抗体(Her)の軽鎖に融合されインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRD(RP)を含む抗体を構築した。短いリンカーペプチド、長いリンカーペプチド、または軽鎖定常領域中の4番目のループのいずれかをリンカーとして使用した。(Carter et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1992 May 15;89(10):4285-9)。
【0133】
PMID:1350088 [PubMed MEDLINEに収録されている];米国特許第5,677,171号;ATCC寄託10463、すべて参照により本明細書に組み入れられる)。図9は、短いリンカーペプチドによるインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(RP-sL-Her)、短いリンカーペプチドによるインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2抗体のC末端融合物(Her-sL-RP)、軽鎖定常領域中の4番目のループによるインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2抗体のC末端融合物(Her-lo-RP)、長いリンカーペプチドによるインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(RP-lL-Her)、または長いリンカーペプチドによるインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2抗体のC末端融合物(Her-lL-RP)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。すべての構築物が様々な程度でErbB2に結合した。インスリン様増殖因子-I受容体にはRP-lL-Herが結合した。
【0134】
実施例12. ErbB2に結合し、VEGFをターゲティングする抗体-MRD分子
VEGFをターゲティングするMRD(V114)を、ErbB2に結合する抗体(Her)の軽鎖のN末端に融合させた。中ぐらいの長さのリンカーペプチド
を連結物として使用した。図10は、中ぐらいの長さのリンカーペプチドによるVEGFをターゲティングするMRDとErbB2に結合する抗体のN末端融合物(V114-mL-Her)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。得られた抗体-MRD融合構築物の発現および試験により、強いVEGF結合およびErbB2結合が実証された。
【0135】
実施例13. インテグリンをターゲティングする抗体-MRD分子
中ぐらいの長さのリンカーペプチドを連結物として用いた、38C2の軽鎖のN末端へのインテグリンαvβ3をターゲティングするMRD(RGD)の融合を研究した。図11により、得られた抗体-MRD融合構築物の発現および試験により、強いインテグリンαvβ3結合があったことが実証される。
【0136】
実施例14. Ang-2をターゲティングする抗体-MRD分子
短いリンカー配列を連結物として用いた、38C2の軽鎖のC末端へのAng-2をターゲティングするMRD(L17)の融合を研究した。図12により、得られた抗体-MRD融合構築物の発現および試験により、強いAng-2結合があったことが実証される。
【0137】
実施例15. ErbB2に結合し、インテグリンおよびAng-2をターゲティングする抗体-MRD分子
インテグリンαvβ3をターゲティングするMRD(RGD4C)を、中ぐらいの長さのリンカーによって、ErbB2をターゲティングする抗体(Her)の軽鎖のN末端に連結し、Ang-2をターゲティングするMRD(L17)を、短いリンカーによって、ErbB2をターゲティングする同じ抗体のC末端に連結した(RGD4C-mL-Her-sL-L17)。図13により、得られた抗体-MRD融合構築物がインテグリン、Ang-2、およびErbB2に結合したことが実証される。
【0138】
実施例16. ErbB2に結合し、インテグリンをターゲティングする抗体-MRD分子
中ぐらいの長さのリンカーを連結物として用いてErbB2に結合する抗体(Her)の重鎖のN末端に融合されたインテグリンαvβ3をターゲティングするMRD(RGD4C)を含む抗体を構築した(RGD4C-mL-her-重鎖)。図14は、この構築物を用いたELISAの結果を示す。この構築物はインテグリンおよびErbB2の両方に結合した。
【0139】
実施例17. 短いリンカーペプチドを用いた、ErbB2または肝細胞増殖因子受容体に結合し、インテグリン、Ang-2、またはインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングする抗体-MRD分子
ErbB2または肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体を含み、インテグリンαvβ3、Ang-2、またはインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRD領域が短いリンカーペプチドによってその抗体の軽鎖に連結されている抗体-MRD分子を構築した。図15は、ErbB2抗体に融合されAng-2をターゲティングするMRDのN末端融合物(L17-sL-Her)、インテグリンをターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(RGD4C-sL-Her)、インスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2結合抗体のN末端融合物(RP-sL-Her)、Ang-2をターゲティングするMRDと肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体とのC末端融合物(L17-sL-Met)、Ang-2をターゲティングするMRDとErbB2結合抗体のC末端融合物(Her-sL-L17)、インテグリンをターゲティングするMRDとErbB2結合抗体のC末端融合物(Her-sL-RGD4C)、またはインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2結合抗体のC末端融合物(Her-sL-RP)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。肝細胞増殖因子受容に結合する抗体を含む構築物を別として、抗体-MRD構築物は様々な程度でErbB2に結合した。抗原にはHer-sL-L17構築物のみが結合した。
【0140】
実施例18. 長いリンカーペプチドを用いた、ErbB2または肝細胞増殖因子受容体に結合し、インテグリン、Ang-2、またはインスリン様増殖因子-I受容体-をターゲティングする抗体-MRD分子
ErbB2または肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体を含み、インテグリンαvβ3、Ang-2、またはインスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRD領域が長いリンカーペプチドによってその抗体の軽鎖に連結されている抗体-MRD分子を構築した。図16は、ErbB2抗体に融合されAng-2をターゲティングするMRDのN末端融合物(L17-lL-Her)、インテグリンをターゲティングするMRDとErbB2抗体のN末端融合物(RGD4C-lL-Her)、インスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDとErbB2結合抗体のN末端融合物(RP-lL-Her)、Ang-2をターゲティングするMRDと肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体とのC末端融合物(L17-lL-Met)、インテグリンをターゲティングするMRDと肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体とのC末端融合物(RGD4C-lL-Met)、Ang-2をターゲティングするMRDとインスリン様増殖因子-I受容体に結合する抗体のC末端融合物(Her-lL-RP)、Ang-2をターゲティングするMRDと肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体とのC末端融合物(Met-lL-L17)、またはインテグリンをターゲティングするMRDと肝細胞増殖因子受容体に結合する抗体とのC末端融合物(Met-lL-RGD4C)を含む構築物を用いたELISAの結果を示す。図16に示すように、抗体-MRD融合物は抗原およびErbB2に結合するのに効果的である。Lu et al. J Biol Chem. 2005 May 20;280(20):19665-72. 電子出版 2005 Mar 9; Lu et al. J Biol Chem. 2004 Jan 23; 279(4):2856-65. 電子出版2003 Oct 23。
【0141】
上記の実施例を参照して本発明を説明したが、修正および変更は、本発明の精神および範囲内に包含されることが理解されるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュラー認識ドメイン(MRD)を含む単離された完全長抗体。
【請求項2】
抗体およびMRDがリンカーペプチドを介して機能的に連結される、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
リンカーペプチドが、2〜20個の間のペプチドである、請求項2記載の抗体。
【請求項4】
リンカーペプチドが、4〜15個の間のペプチドである、請求項2記載の抗体。
【請求項5】
リンカーペプチドが配列GGGS(SEQ ID NO: 1)を含む、請求項2記載の抗体。
【請求項6】
リンカーペプチドが配列
を含む、請求項2記載の抗体。
【請求項7】
リンカーペプチドが配列
を含む、請求項2記載の抗体。
【請求項8】
MRDが抗体の重鎖のC末端に機能的に連結される、請求項1記載の抗体。
【請求項9】
MRDが抗体の重鎖のN末端に機能的に連結される、請求項1記載の抗体。
【請求項10】
MRDが抗体の軽鎖のC末端に機能的に連結される、請求項1記載の抗体。
【請求項11】
MRDが抗体の軽鎖のN末端に機能的に連結される、請求項1記載の抗体。
【請求項12】
2つ以上のMRDが抗体の任意の末端に機能的に連結される、請求項1記載の抗体。
【請求項13】
抗体の2つ以上の末端に機能的に連結された2つ以上のMRDが存在する、請求項1記載の抗体。
【請求項14】
MRDの標的がインテグリンである、請求項1記載の抗体。
【請求項15】
インテグリンをターゲティングするMRDが配列YCRGDCT(SEQ ID NO: 3)を含む、請求項14記載の抗体。
【請求項16】
インテグリンをターゲティングするMRDが配列PCRGDCL(SEQ ID NO: 4)を含む、請求項14記載の抗体。
【請求項17】
インテグリンをターゲティングするMRDが配列TCRGDCY (SEQ ID NO: 5)を含む、請求項14記載の抗体。
【請求項18】
インテグリンをターゲティングするMRDが配列LCRGDCF (SEQ ID NO: 6)を含む、請求項14記載の抗体。
【請求項19】
MRDの標的が血管新生サイトカインである、請求項1記載の抗体。
【請求項20】
血管新生サイトカインをターゲティングするMRDが配列
を含む、請求項19記載の抗体。
【請求項21】
血管新生サイトカインをターゲティングするMRDが配列
を含む、請求項19記載の抗体。
【請求項22】
血管新生サイトカインをターゲティングするMRDが配列
を含む、請求項19記載の抗体。
【請求項23】
血管新生サイトカインをターゲティングするMRDが
からなる群より選択される、請求項19記載の抗体。
【請求項24】
血管新生サイトカインをターゲティングするMRDが配列
を含む、請求項19記載の抗体。
【請求項25】
血管新生サイトカインをターゲティングするMRDが、Xが20種の天然アミノ酸の内の1つより選択される配列PXDNDXLLNY(SEQ ID NO: 12)を含む、請求項19記載の抗体。
【請求項26】
MRDの標的がErbB2である、請求項1記載の抗体。
【請求項27】
MRDの標的がVEGFである、請求項1記載の抗体。
【請求項28】
VEGFをターゲティングするMRDが配列
を含む、請求項27記載の抗体。
【請求項29】
MRDの標的がインスリン様増殖因子-I受容体である、請求項1記載の抗体。
【請求項30】
インスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDが
からなる群より選択される、請求項29記載の抗体。
【請求項31】
MRDの標的が腫瘍抗原である、請求項1記載の抗体。
【請求項32】
MRDの標的がCD20である、請求項1記載の抗体。
【請求項33】
MRDの標的が上皮増殖因子受容体(EGFR)である、請求項1記載の抗体。
【請求項34】
EGFRをターゲティングするMRDが、配列
を含む、請求項33記載の抗体。
【請求項35】
EGFRをターゲティングするMRDが、配列
を含む、請求項33記載の抗体。
【請求項36】
MRDの標的がErbB2受容体である、請求項1記載の抗体。
【請求項37】
ErbB2受容体をターゲティングするMRDが、配列
を含む、請求項36記載の抗体。
【請求項38】
MRDの標的がErbB3受容体である、請求項1記載の抗体。
【請求項39】
MRDの標的が、腫瘍に関連した表面抗原上皮細胞接着分子(Ep-CAM)である、請求項1記載の抗体。
【請求項40】
MRDの標的が血管新生因子である、請求項1記載の抗体。
【請求項41】
EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、CD20、インスリン様増殖因子-I受容体、または前立腺特異的膜抗原からなる群より選択される細胞表面抗原に結合する、請求項40記載の抗体。
【請求項42】
MRDの標的が血管新生受容体である、請求項1記載の抗体。
【請求項43】
EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、CD20、インスリン様増殖因子-I受容体、または前立腺特異的膜抗原からなる群より選択される細胞表面抗原に結合する、請求項42記載の抗体。
【請求項44】
血管新生因子に結合する、請求項42記載の抗体。
【請求項45】
血管新生受容体に結合する、請求項42記載の抗体。
【請求項46】
MRDの標的が細胞表面抗原である、請求項1記載の抗体。
【請求項47】
細胞表面抗原に結合する、請求項46記載の抗体。
【請求項48】
細胞表面抗原が、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、CD20、インスリン様増殖因子-I受容体、または前立腺特異的膜抗原からなる群より選択される、請求項47記載の抗体。
【請求項49】
血管新生因子に結合する、請求項46記載の抗体。
【請求項50】
血管新生受容体に結合する、請求項46記載の抗体。
【請求項51】
MRDが血管ホーミングペプチドである、請求項1記載の抗体。
【請求項52】
血管ホーミングペプチドをターゲティングするMRDが配列ACDCRGDCFCG (SEQ ID NO: 15)を含む、請求項51記載の抗体。
【請求項53】
MRDが神経成長因子(NGF)である、請求項1記載の抗体。
【請求項54】
請求項1記載の抗体のヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項55】
請求項54記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項56】
ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、宿主細胞において該ポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列に機能的に連結されている、請求項54記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項57】
請求項55記載のベクターを含む宿主細胞または該細胞の子孫。
【請求項58】
それを必要とする対象に請求項1記載の抗体を投与する段階を含む、疾患を治療する方法。
【請求項59】
疾患が癌である、請求項58記載の方法。
【請求項60】
追加の治療物質が対象に投与される、請求項58記載の方法。
【請求項61】
それを必要とする対象に請求項1記載の抗体を投与する段階を含む、血管新生を阻害する方法。
【請求項62】
追加の治療物質が対象に投与される、請求項61記載の方法。
【請求項63】
それを必要とする対象に請求項1記載の抗体を投与する段階を含む、血管新生を調整する方法。
【請求項64】
追加の治療物質が対象に投与される、請求項63記載の方法。
【請求項65】
それを必要とする対象に請求項1記載の抗体を投与する段階を含む、腫瘍増殖を阻害する方法。
【請求項66】
追加の治療物質が対象に投与される、請求項65記載の方法。
【請求項67】
MRD結合標的を用いてMRDを選択する段階を含む、1つまたは複数のMRDを含む完全長抗体を作製するための方法であって、該MRDがファージディスプレイライブラリーに由来する方法。
【請求項68】
MRD結合標的を用いてMRDを選択する段階を含む、1つまたは複数のMRDを含む完全長抗体を作製するための方法であって、該MRDが天然リガンドに由来する方法。
【請求項69】
抗体がキメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1記載の抗体。
【請求項70】
X1がEまたはDであり;X2が任意のアミノ酸であり;X3が任意のアミノ酸であり;X4が任意のアミノ酸であり;X5が任意のアミノ酸である、配列
を含む、ペプチド。
【請求項71】
からなる群より選択される、請求項70記載のペプチド。
【請求項72】
より選択されるペプチド。
【請求項73】
nが約0〜50個のアミノ酸残基である、XnEFAPWTXn(SEQ ID NO: 22);
nが約0〜50個のアミノ酸残基である、XnELAPWTXn(SEQ ID NO: 25);
nが約0〜50個のアミノ酸残基である、XnEFSPWTXn(SEQ ID NO: 28);
nが約0〜50個のアミノ酸残基である、XnELEPWTXn(SEQ ID NO: 31);
ならびに
nが約0〜50個のアミノ酸残基であり、X、X1、およびX2が任意のアミノ酸である、
(SEQ ID NO: 57)
からなる群より選択される、ペプチド。
【請求項74】
からなる群より選択される、請求項73記載のペプチド。
【請求項1】
モジュラー認識ドメイン(MRD)を含む単離された完全長抗体。
【請求項2】
抗体およびMRDがリンカーペプチドを介して機能的に連結される、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
リンカーペプチドが、2〜20個の間のペプチドである、請求項2記載の抗体。
【請求項4】
リンカーペプチドが、4〜15個の間のペプチドである、請求項2記載の抗体。
【請求項5】
リンカーペプチドが配列GGGS(SEQ ID NO: 1)を含む、請求項2記載の抗体。
【請求項6】
リンカーペプチドが配列
を含む、請求項2記載の抗体。
【請求項7】
リンカーペプチドが配列
を含む、請求項2記載の抗体。
【請求項8】
MRDが抗体の重鎖のC末端に機能的に連結される、請求項1記載の抗体。
【請求項9】
MRDが抗体の重鎖のN末端に機能的に連結される、請求項1記載の抗体。
【請求項10】
MRDが抗体の軽鎖のC末端に機能的に連結される、請求項1記載の抗体。
【請求項11】
MRDが抗体の軽鎖のN末端に機能的に連結される、請求項1記載の抗体。
【請求項12】
2つ以上のMRDが抗体の任意の末端に機能的に連結される、請求項1記載の抗体。
【請求項13】
抗体の2つ以上の末端に機能的に連結された2つ以上のMRDが存在する、請求項1記載の抗体。
【請求項14】
MRDの標的がインテグリンである、請求項1記載の抗体。
【請求項15】
インテグリンをターゲティングするMRDが配列YCRGDCT(SEQ ID NO: 3)を含む、請求項14記載の抗体。
【請求項16】
インテグリンをターゲティングするMRDが配列PCRGDCL(SEQ ID NO: 4)を含む、請求項14記載の抗体。
【請求項17】
インテグリンをターゲティングするMRDが配列TCRGDCY (SEQ ID NO: 5)を含む、請求項14記載の抗体。
【請求項18】
インテグリンをターゲティングするMRDが配列LCRGDCF (SEQ ID NO: 6)を含む、請求項14記載の抗体。
【請求項19】
MRDの標的が血管新生サイトカインである、請求項1記載の抗体。
【請求項20】
血管新生サイトカインをターゲティングするMRDが配列
を含む、請求項19記載の抗体。
【請求項21】
血管新生サイトカインをターゲティングするMRDが配列
を含む、請求項19記載の抗体。
【請求項22】
血管新生サイトカインをターゲティングするMRDが配列
を含む、請求項19記載の抗体。
【請求項23】
血管新生サイトカインをターゲティングするMRDが
からなる群より選択される、請求項19記載の抗体。
【請求項24】
血管新生サイトカインをターゲティングするMRDが配列
を含む、請求項19記載の抗体。
【請求項25】
血管新生サイトカインをターゲティングするMRDが、Xが20種の天然アミノ酸の内の1つより選択される配列PXDNDXLLNY(SEQ ID NO: 12)を含む、請求項19記載の抗体。
【請求項26】
MRDの標的がErbB2である、請求項1記載の抗体。
【請求項27】
MRDの標的がVEGFである、請求項1記載の抗体。
【請求項28】
VEGFをターゲティングするMRDが配列
を含む、請求項27記載の抗体。
【請求項29】
MRDの標的がインスリン様増殖因子-I受容体である、請求項1記載の抗体。
【請求項30】
インスリン様増殖因子-I受容体をターゲティングするMRDが
からなる群より選択される、請求項29記載の抗体。
【請求項31】
MRDの標的が腫瘍抗原である、請求項1記載の抗体。
【請求項32】
MRDの標的がCD20である、請求項1記載の抗体。
【請求項33】
MRDの標的が上皮増殖因子受容体(EGFR)である、請求項1記載の抗体。
【請求項34】
EGFRをターゲティングするMRDが、配列
を含む、請求項33記載の抗体。
【請求項35】
EGFRをターゲティングするMRDが、配列
を含む、請求項33記載の抗体。
【請求項36】
MRDの標的がErbB2受容体である、請求項1記載の抗体。
【請求項37】
ErbB2受容体をターゲティングするMRDが、配列
を含む、請求項36記載の抗体。
【請求項38】
MRDの標的がErbB3受容体である、請求項1記載の抗体。
【請求項39】
MRDの標的が、腫瘍に関連した表面抗原上皮細胞接着分子(Ep-CAM)である、請求項1記載の抗体。
【請求項40】
MRDの標的が血管新生因子である、請求項1記載の抗体。
【請求項41】
EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、CD20、インスリン様増殖因子-I受容体、または前立腺特異的膜抗原からなる群より選択される細胞表面抗原に結合する、請求項40記載の抗体。
【請求項42】
MRDの標的が血管新生受容体である、請求項1記載の抗体。
【請求項43】
EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、CD20、インスリン様増殖因子-I受容体、または前立腺特異的膜抗原からなる群より選択される細胞表面抗原に結合する、請求項42記載の抗体。
【請求項44】
血管新生因子に結合する、請求項42記載の抗体。
【請求項45】
血管新生受容体に結合する、請求項42記載の抗体。
【請求項46】
MRDの標的が細胞表面抗原である、請求項1記載の抗体。
【請求項47】
細胞表面抗原に結合する、請求項46記載の抗体。
【請求項48】
細胞表面抗原が、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、CD20、インスリン様増殖因子-I受容体、または前立腺特異的膜抗原からなる群より選択される、請求項47記載の抗体。
【請求項49】
血管新生因子に結合する、請求項46記載の抗体。
【請求項50】
血管新生受容体に結合する、請求項46記載の抗体。
【請求項51】
MRDが血管ホーミングペプチドである、請求項1記載の抗体。
【請求項52】
血管ホーミングペプチドをターゲティングするMRDが配列ACDCRGDCFCG (SEQ ID NO: 15)を含む、請求項51記載の抗体。
【請求項53】
MRDが神経成長因子(NGF)である、請求項1記載の抗体。
【請求項54】
請求項1記載の抗体のヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項55】
請求項54記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項56】
ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、宿主細胞において該ポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列に機能的に連結されている、請求項54記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項57】
請求項55記載のベクターを含む宿主細胞または該細胞の子孫。
【請求項58】
それを必要とする対象に請求項1記載の抗体を投与する段階を含む、疾患を治療する方法。
【請求項59】
疾患が癌である、請求項58記載の方法。
【請求項60】
追加の治療物質が対象に投与される、請求項58記載の方法。
【請求項61】
それを必要とする対象に請求項1記載の抗体を投与する段階を含む、血管新生を阻害する方法。
【請求項62】
追加の治療物質が対象に投与される、請求項61記載の方法。
【請求項63】
それを必要とする対象に請求項1記載の抗体を投与する段階を含む、血管新生を調整する方法。
【請求項64】
追加の治療物質が対象に投与される、請求項63記載の方法。
【請求項65】
それを必要とする対象に請求項1記載の抗体を投与する段階を含む、腫瘍増殖を阻害する方法。
【請求項66】
追加の治療物質が対象に投与される、請求項65記載の方法。
【請求項67】
MRD結合標的を用いてMRDを選択する段階を含む、1つまたは複数のMRDを含む完全長抗体を作製するための方法であって、該MRDがファージディスプレイライブラリーに由来する方法。
【請求項68】
MRD結合標的を用いてMRDを選択する段階を含む、1つまたは複数のMRDを含む完全長抗体を作製するための方法であって、該MRDが天然リガンドに由来する方法。
【請求項69】
抗体がキメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1記載の抗体。
【請求項70】
X1がEまたはDであり;X2が任意のアミノ酸であり;X3が任意のアミノ酸であり;X4が任意のアミノ酸であり;X5が任意のアミノ酸である、配列
を含む、ペプチド。
【請求項71】
からなる群より選択される、請求項70記載のペプチド。
【請求項72】
より選択されるペプチド。
【請求項73】
nが約0〜50個のアミノ酸残基である、XnEFAPWTXn(SEQ ID NO: 22);
nが約0〜50個のアミノ酸残基である、XnELAPWTXn(SEQ ID NO: 25);
nが約0〜50個のアミノ酸残基である、XnEFSPWTXn(SEQ ID NO: 28);
nが約0〜50個のアミノ酸残基である、XnELEPWTXn(SEQ ID NO: 31);
ならびに
nが約0〜50個のアミノ酸残基であり、X、X1、およびX2が任意のアミノ酸である、
(SEQ ID NO: 57)
からなる群より選択される、ペプチド。
【請求項74】
からなる群より選択される、請求項73記載のペプチド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2011−509084(P2011−509084A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541504(P2010−541504)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/088337
【国際公開番号】WO2009/088805
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(399038620)ザ スクリプス リサーチ インスティチュート (51)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/088337
【国際公開番号】WO2009/088805
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(399038620)ザ スクリプス リサーチ インスティチュート (51)
【Fターム(参考)】
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