説明

モジュール組み立て性に優れた血液浄化用中空糸膜およびその製造方法

【課題】
モジュール作製時の歩留まりが高い血液浄化用中空糸膜を提供する。
【解決手段】
内径が100〜300μmであり、平均膜厚が10〜50μmであり、細孔内にグリセリンが充填されている血液浄化用中空糸膜であって、該中空糸膜を乾燥状態で原子間力顕微鏡によって測定すると、外表面の平均面粗さ(Ra値)が10nm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュールを組み立てる際に、ケースと中空糸膜のすべり性が高いことにより作製歩留まりが良い、血液浄化用中空糸膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腎不全治療などにおける血液浄化法では、血液中の尿毒素、老廃物を除去する目的で、天然素材であるセルロース、その誘導体であるセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、合成高分子であるポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどの高分子からなる透析膜や限外濾過膜を分離材として用いた血液浄化器が広く使用されている。特に、中空糸型の膜を分離材として用いた血液浄化用中空糸膜モジュールは、体外循環にかかわる循環血液量の低減、血中の物質除去効率の高さ、さらに血液浄化器組み立ての高い生産性などの利点から血液浄化分野での重要度が高い。
【0003】
中空糸膜を用いた血液浄化用中空糸膜モジュールは、紡糸された中空糸膜を束状に巻き取り、巻き取った中空糸膜束をモジュールケースに挿入し、次いで、ケースの端部においてウレタンやエポキシなどの樹脂で中空糸膜束とケースを液密に接着し、その後、内孔が開口するように接着部分を切断することによって行われる。
【0004】
このとき、中空糸膜のすべり性は、モジュール作製時の歩留まりに大きく影響を与える。例えば、巻き取った中空糸膜束をモジュールケースに挿入するときに、ケース内径と中空糸膜束径の差が小さいと、ケース内面と中空糸膜あるいは中空糸膜同士がこすれて糸切れが発生し不良モジュールとなる。
【0005】
モジュール作製の歩留まりを向上させるためには、膜形成時のポリマー濃度を高めたり、中空糸膜の膜厚を厚くすることによって、中空糸膜の強度を高める方法が一般的に採用される。しかし血液浄化に用いられる中空糸膜は、血液から有害物質を取り除く目的で使用されるため、物質透過性を高める必要があり、これらの方法は、性能の向上に不利な傾向につながるため、おのずと限界がある。
【0006】
モジュールケースへの膜束の挿入を容易にした対策としては、外表面中心粗さを15nm以上にし、外表面の開孔率を6〜20%に制御する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法は、中空糸膜の外表面が開孔している場合に孔の割合とそれに付随する表面の凹凸を一定条件に制御することによってモジュールケースへの膜束の充填を行い易くしたものである。
【0007】
また、物理的指標として、中空糸膜対中空糸膜の静止摩擦係数と動摩擦係数を一定の範囲に制御する方法が提案されている(特許文献2参照)。これらの指標は、化学繊維の測定基準にのっとって測定されるものであり、中空糸膜の物理的特性を評価したものである。
【0008】
特許文献1の方法では、外表面が開孔している中空糸膜の場合は、開孔を伴った凹凸の制御でモジュール化におけるケーシングが容易になるが、細孔内にグリセリンが充填されている中空糸膜の場合は、開孔率というパラメータを利用することができない。また、特許文献2の方法は、中空糸膜特有の摩擦係数のみを制御するだけであり、モジュール化ケーシング工程において重要な摩擦係数である膜束とそれに接触するケースとの摩擦係数に関しては何ら考慮されていない。
【0009】
一方、産業用の糸の製造においては、油剤を用いて、糸のすべり性を高めることが古くから行われている。しかし、医療用として血液と直接接触する血液浄化用中空糸膜の製造には、安全上の問題から油剤を使用することはできず、本発明者らが知る限り、血液浄化用中空糸膜の糸すべり性を高める目的で油剤を使用する例は従来から存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−207153号公報
【特許文献2】特開2008−73134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、束状に巻き取られた中空糸膜束をモジュールケースに挿入する際の中空糸膜とモジュールケース内面とのこすれによる糸切れを防止した、すべり性の高い血液浄化用中空糸膜およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、細孔内にグリセリンが充填されている中空糸膜において、原子間力顕微鏡の測定による中空糸膜外表面の乾燥状態における平均面粗さ(Ra値)を小さくすることにより、中空糸膜モジュール組み立ての際に、中空糸膜とモジュールケース内面とのこすれによる中空糸膜の折れなどのダメージが無くなり、作製歩留まりを向上させることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の構成を有するものである。
(1)内径が100〜300μmであり、平均膜厚が10〜50μmであり、細孔内にグリセリンが充填されている血液浄化用中空糸膜であって、該中空糸膜を乾燥状態で原子間力顕微鏡によって測定すると、外表面の平均面粗さ(Ra値)が10nm以下であることを特徴とする血液浄化用中空糸膜。
(2)ポリエチレン製パイプ内に充填率47%で充填された中空糸膜束を、ポリエチレン製パイプから押し出そうとする時にかかる荷重が、20N以下であることを特徴とする(1)に記載の血液浄化用中空糸膜。
(3)(1)または(2)に記載の血液浄化用中空糸膜を組み込んだことを特徴とする血液浄化用中空糸膜モジュール。
【発明の効果】
【0014】
本発明の中空糸膜は、細孔内にグリセリンを充填して外表面が開孔されていない中空糸膜の外表面の平均面粗さを小さくしているので、中空糸膜外表面の糸すべり性がよい。従って、この中空糸膜を束状に巻き取り、これをモジュールケースに挿入したときに、中空糸膜同士のこすれによる糸切れがほとんどないため、不良モジュールがなく、血液浄化中空糸膜モジュールの生産性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の血液浄化用中空糸膜を詳細に説明する。
【0016】
本発明の血液浄化用中空糸膜は、細孔内にグリセリンが充填されたものであり、中空糸膜を乾燥状態で原子間力顕微鏡によって測定すると、外表面の平均面粗さ(Ra値)が10nm以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明者は、細孔内にグリセリンが充填された中空糸膜において、中空糸膜とモジュールケース内面とのこすれ、すなわち、すべり性が、中空糸膜の外表面の平滑性に関係していると考え、中空糸膜の外表面の平滑性がすべり性に及ぼす影響について調査した結果、中空糸外表面の平滑性が低い場合にすべり性が悪くなることを見出した。
【0018】
すべり性を評価する方法としては、ポリエチレン製パイプ内に一定の充填率で充填された中空糸膜束を、ポリエチレン製パイプから押し出そうとする時にかかる荷重の測定を行った。この荷重が小さいほど、中空糸膜のすべり性が良く、中空糸膜外表面の平滑性が高いと考えられる。
【0019】
本発明の中空糸膜は、ポリエチレン製パイプ内に充填率47%で充填された中空糸膜束を、ポリエチレン製パイプから押し出そうとする時にかかる荷重が20N以下であることが好ましい。より好ましくは15N以下である。荷重がかかる範囲であれば、中空糸膜とモジュールケース内面とのこすれが小さく、中空糸膜に対してダメージを与えることが少ない。一方、かかる範囲を超えると、中空糸膜束の外側の中空糸とポリエチレン製パイプとが強くこすれて、糸切れ、糸折れになり易い。
【0020】
また、本発明者は、ポリエチレン製パイプ内に充填された中空糸膜束を、ポリエチレン製パイプから押し出そうとする時の荷重が小さい中空糸膜は、その中空糸膜の外表面の平均面粗さ(Ra値)が小さく、外表面が平滑であることを見出した。外表面の平滑性が高い場合には、粘性の高いグリセリンが外表面に余剰に付くことがなく、摩擦係数が小さくなり、すべり性がよくなると考えられる。かかる観点から、本発明の中空糸膜の外表面の平均面粗さ(Ra値)は、中空糸膜を乾燥状態で原子間力顕微鏡によって測定した場合、10nm以下であることが必要であり、さらには9nm以下であることが好ましい。Ra値がかかる範囲を超える場合には、中空糸膜束の外側の中空糸とポリエチレン製パイプとが強くこすれて、糸切れ、糸折れになり易い。Ra値の下限値は、達成容易性の点で現実的には0.1nmである。
【0021】
中空糸膜の外表面の平均面粗さ(Ra値)は、後述するように、紡糸原液をノズルから吐出させる際の温度(ノズル温度)と、吐出してから次の凝固工程の凝固浴に浸漬する直前の温度(空中走行部温度)との差、すなわち空中走行部分での温度差を制御したり、水洗工程において中空糸膜と洗浄液とを同一方向に走行させて洗浄したり、工程中の中空糸膜にかかる張力をできるだけ少なくしたりすることなどにより、上記の低い値に抑えることができる。
【0022】
本発明の中空糸膜の内径は、100〜300μmであることが必要である。内径が小さすぎると、中空糸膜の中空部を流れる流体の圧力損失が大きくなるため、溶血の恐れがある。また、内径が大きすぎると、中空糸膜の中空部を流れる血液のせん断速度が小さくなるため、血液中のタンパク質が経時的に膜の内面に堆積しやすくなる。中空糸膜内部を流れる血液の圧力損失やせん断速度が適度な範囲となる内径は、特に150〜250μmである。
【0023】
また、本発明の中空糸膜の平均膜厚は、10〜50μmであることが必要である。平均膜厚が大きすぎると、透水性は高くても、中〜高分子量物質の透過性が不足することがある。また、血液浄化器の設計上、膜面積を大きくする際に膜厚が大きいと、血液浄化器の大きさが大きくなってしまい適切ではない。膜厚は薄い方が物質透過性が高まるため好ましく、45μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましい。但し、平均膜厚が薄すぎると、血液浄化器に必要な最低限の膜強度を維持するのが困難になることがある。したがって、平均膜厚は12μm以上が好ましく、14μm以上がより好ましい。ここでいう平均膜厚とは、ランダムにサンプリングした中空糸膜5本を測定したときの平均値である。この時、それぞれの値と平均値との差が、平均値の2割を超えないこととする。
【0024】
本発明における中空糸膜の素材としては、再生セルロース、セルロースアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロース系高分子、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、エチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられるが、高い透水性の中空糸膜を得ることが容易なセルロース系やポリスルホン系が好ましい。特にセルロース系ではセルロースジアセテートやセルローストリアセテート、ポリスルホン系ではポリスルホン、ポリエーテルスルホンが膜厚を薄くすることが容易なため好ましい。
【0025】
本発明の中空糸膜は、後述するような方法によって、内表面に緻密層を有し、これに続いて実質的にボイドがない支持層、さらにこれに続いて細孔径が緻密層より大きく、支持層より小さい外表面層を有する不均一な構造を採る。これによって、高い透水性を達成しながら中空糸膜の強度を向上させることができる。
【0026】
次に、本発明の中空糸膜の製造方法について説明する。150〜1000ml/m/hr/mmHgの高い透水性の中空糸膜を得るためには、紡糸溶液のポリマー濃度は、ポリマーの種類などにもよるが、26質量%以下、より好ましくは25質量%以下とすることが好ましい。紡糸溶液は、紡糸溶液中の不溶成分やゲルを取り除く目的でノズル吐出直前にフィルターにかけることが好ましい。フィルターの孔径は小さい方がよく、具体的には中空糸膜の膜厚以下のものが好ましく、中空糸膜の膜厚の1/2以下がより好ましい。フィルターが無い場合やフィルターの孔径が中空糸膜の膜厚を超える場合、ノズルスリットの一部に詰まりが生じ、偏肉糸の発生を招くことがある。さらに、フィルター無しやフィルター孔径が中空糸膜の膜厚を超えると、紡糸溶液中の不溶解成分やゲルなどの混入が原因で部分的なボイドや、数十μm単位での表面構造のきめの細かさが乱れる(ひきつれたり、部分的にシワがよるなどの)原因となりやすい。高い空孔率を有する中空糸膜において、部分的なボイドの発生は、膜の物理的強度を低下させる原因になり得る。紡糸原液の濾過は、吐出するまでの間に複数回実施してもよく、これによりフィルターの寿命を延ばすことができる。
【0027】
上記のように処理した紡糸原液を、外側に環状部、内側に中空形成材吐出孔を有するチューブインオリフィス型ノズルを用いて吐出する。ノズルのスリット幅(紡糸原液を吐出する環状部の幅)のばらつきを小さくすることで、紡糸された中空糸膜の偏肉を減らすことができる。具体的には、ノズルのスリット幅の最大値と最小値の差を10μm以下にすることが好ましい。ノズルのスリット幅は、用いる紡糸原液の粘度や、得られる中空糸膜の膜厚、中空形成材の種類によって異なるが、このばらつきが大きいと、偏肉を招き、肉厚の薄い部分が裂けたり破裂したりしてリークの原因になる。また、偏肉が顕著である場合、血液浄化膜として適切な強度が得られない原因となる。
【0028】
紡糸原液を吐出する際のノズルの温度は、次工程の凝固浴に入るまでの空中走行部分における効果を十分に得るために、一般的な中空糸膜製造条件より低い温度にすることが好ましい。具体的には、紡糸原液のノズル吐出温度は、50℃〜130℃であることが好ましく、55℃〜125℃以下がより好ましい。ノズル吐出温度が低すぎると、ドープの粘度が高くなるため、ノズルにかかる圧力が高くなり紡糸原液を安定に吐出できないことがある。また、ノズル温度が高すぎると、相分離による膜構成に影響し孔径が大きくなりすぎる可能性がある。
【0029】
吐出した紡糸原液は、空中走行部を経て凝固浴に浸漬される。この時の空中走行部は、外気と遮断する部材(紡糸管)で囲み、紡糸原液の吐出温度(ノズル温度)と凝固浴浸漬直前温度(空中走行部温度)の温度差を60〜120℃、特に95〜120℃になるようにすることが好ましい。凝固浴浸漬直前温度とは、紡糸管内において凝固浴液面よりおよそ1cm程度の高さの位置で測定した温度を指し、空中走行部温度と実質的に同じである。具体的には、凝固浴浸漬直前温度は、実測で15℃以下にすることが好ましく、さらには10℃以下、特に5℃以下にすることが好ましい。空中走行部をこのように低温に制御する方法としては、紡糸管に冷媒を循環させる方法や冷却した風を流し込む方法などが挙げられる。冷媒の冷却や風の冷却は液体窒素やドライアイスなどを用いて制御することが可能であるが、作業性を考慮した場合、空中走行部の温度は−20℃以上であることが好ましい。また、空中走行部の雰囲気は、紡糸原液の相分離に影響を与えるため均一に保たれることが望ましく、囲いなどで覆うことにより温度や風速にムラが生じないようにすることが好ましい。空中走行部の雰囲気、温度、風速にムラがあると、ミクロな膜構造にばらつきができる原因となり、性能発現に問題が生じるため適切でない。
【0030】
空中走行部分の温度や風速にムラが生じないようにする方法としては、空中走行部の囲いに適度な大きさの穴をあけ、冷却した風が均一に流れるようにする方法が挙げられる。空中走行部の囲いにあける穴の数は特に限定されないが、紡糸される中空糸膜が揺れない程度に、全体に風が行き渡る状態になるよう調節することが重要である。また、ノズル出口部分を急激に冷却すると、ノズル出口付近でゲルが形成され易くなり、ノズルが閉塞したりして、中空糸膜の偏肉度が高くなることがある。このような現象を回避するためには、ノズルブロックと空中走行部の囲いとの間に断熱材を入れるのも有効な手段となり得る。断熱材の種類は、熱伝導を遮断できるものであれば特に限定されず、セラミックスやプラスチックなどが利用できる。
【0031】
断熱材の厚さは、5〜20mmであることが好ましい。断熱材の厚みが薄すぎると、熱の遮断が充分でなく、ノズルの断熱効果が十分でないことがある。また、断熱材の厚みが厚すぎると、空中走行部での冷却の効果が中空糸膜形成に反映されない可能性がある。この方法により、ノズルから吐出された直後のドープがノズル出口部分を閉塞する可能性は低下し、真円度の高い中空糸膜を安定に紡糸できるようになる。ノズル温度を適度に低くし、空中走行部の温度を低く保つことで、製膜工程におけるゲル化速度を一定に制御することができる。また、空中走行部を通常より低温に設定することによって、中空糸膜外表面で急激なゲル化が促進されるため、膜の断面構造は中空糸膜の内面、外面がそれぞれ中間部と比較して密な層を有する三層構造を形成することができる。このような三層構造をとることは、中空糸膜の強度を向上させるうえで有効である。
【0032】
中空形成材は、使用する紡糸原液にもよるが、不活性な液体や気体を用いることが好ましい。このような中空形成材の具体例としては、流動パラフィンやミリスチン酸イソプロピル、窒素、アルゴンなどが挙げられる。また、中空糸膜の内表面に緻密層を形成するためには、紡糸原液の調製に用いた溶媒の水溶液や水などを用いることができる。これらの中空形成材には、必要に応じてグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの非溶媒または水などを加えることもできる。
【0033】
空中走行部を経て、ゲル化した膜は、凝固浴中を通過させることにより凝固される。凝固浴は、紡糸原液を調製する際に使用した溶媒の水溶液からなることが好ましい。凝固浴が水である場合には、ゲル化した膜が急激に凝固し、中空糸膜外表面に緻密な層が形成される。急激に凝固した膜の表面は、開孔しない反面、表面粗さの制御が困難である。この場合、凝固浴を溶媒と水との混合液にすることで、凝固時間の制御や中空糸膜の表面粗さを適度に調節しやすくすることができる。凝固浴の溶媒濃度は、70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下がより好ましい。ただし、溶媒濃度が1質量%未満では、紡糸時の濃度制御が困難であるため、溶媒濃度の下限は1質量%以上が好ましい。凝固浴の温度は、凝固速度の制御のため4〜50℃であることが好ましい。より好ましくは10〜45℃である。このように空中走行部と凝固浴で緩やかに中空糸膜を形成することで、細孔の大きさや分布、細孔数が適度な中空糸膜が得られる。凝固浴には、必要に応じてグリセリンやエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの非溶媒、また酸化防止剤や潤滑剤などの添加剤を加えることもできる。
【0034】
凝固浴を経た中空糸膜は、洗浄工程を経て溶媒などの不要な成分を洗い流される。このときに用いる洗浄液は、水が好ましく、その温度は洗浄効果の点で20℃〜80℃が好ましい。20℃未満では洗浄効率が悪く、80℃超では熱効率が悪いことと、中空糸膜への負担が大きく、保存安定性や性能に影響を与えることがある。また、膜は凝固浴工程後も活きており、洗浄浴中で外部から力を加えると膜構造や表面形状、孔形状が変形してしまうことがあるので、洗浄浴を走行する中空糸膜になるべく抵抗がかからないようにすることが好ましい。中空糸膜から溶媒や添加剤等の不要な成分を除去するためには、液更新を高めるのが好ましく、従来は、例えば洗浄液のシャワーの中を中空糸膜を走行させたり、洗浄液の流れと中空糸膜の走行を向流にするなどして洗浄効率を高めていた。しかし、このような洗浄方法を採用すると中空糸膜の走行抵抗が大きくなるため、中空糸膜がひきつれたりゆがんだりすることを防ぐ必要があった。
【0035】
本発明者は、中空糸膜の変形抑制と洗浄性の両立を図るため鋭意検討した結果、洗浄液と中空糸膜を同一方向に並流で流すことが有効であることを見出した。洗浄工程の具体的な態様としては、例えば、洗浄浴に傾きをつけ中空糸膜がその傾斜を下っていくような設備が挙げられる。この場合の浴の傾斜は1〜3度が好ましい。3度を超えると、洗浄液の流速が早くなりすぎ中空糸膜の走行抵抗を抑えることができないことがある。1度未満では、洗浄液の滞留による中空糸膜の洗浄不良が発生することがある。このように洗浄浴での中空糸膜への抵抗を抑制することで、洗浄浴入り口の中空糸膜の走行速度と出口の走行速度をほぼ同じにすることができる。また、洗浄効率をより高めるために、洗浄浴は多段に配置されることが好ましい。段数は、洗浄性との兼合いにより適宜設定する必要があり、例えば、本発明に使用される溶媒、非溶媒、親水化剤等の除去を目的とするのであれば、3〜30段程度あれば足りるといえる。
【0036】
洗浄工程を経た中空糸膜はグリセリン処理を行なうことが必要である。例えば、セルロース系高分子からなる中空糸膜の場合は中空糸膜をグリセリン浴に通過させた後、乾燥工程を経て巻き取る。この場合、グリセリン濃度は30〜80質量%であることが好ましい。グリセリン濃度が低すぎると、乾燥時に中空糸膜が縮み易く、保存安定性が悪くなることがある。また、グリセリン濃度が高すぎると、中空糸膜に余分なグリセリンが付着しやすく、血液浄化器に組み立てる時に中空糸膜端部の接着性が悪くなることがある。グリセリン浴の温度は40〜80℃であることが好ましい。グリセリン浴の温度が低すぎると、グリセリン水溶液の粘度が高く、中空糸膜の細孔の隅々までグリセリン水溶液が行き渡らない可能性がある。グリセリン浴の温度が高すぎると、中空糸膜が熱で変性、変質してしまう可能性がある。
【0037】
紡糸工程全般において、中空糸膜にかかる張力は膜の構造に影響を及ぼすため、膜構造を変化させないために、極力延伸しないことが好ましい。膜は凝固浴工程後も活きており、洗浄浴中で外部からの力をかけると膜構造や表面構造、孔形状が変形してしまうからである。特に延伸は膜の細孔の形状を真円から楕円に変形させてしまうことから、透過性能への影響も大きいため、低い方が好ましい。具体的には、中空糸膜の凝固浴出口の走行速度と、紡糸工程最後の巻き取り速度との比は、1以上1.2未満であることが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の中空糸膜の効果を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0039】
(透水性)
透析器の血液出口部回路(圧力測定点よりも出口側)を鉗子で挟んで封止した。37℃に保温した純水を加圧タンクに入れ、レギュレーターにより圧力を制御しながら、37℃恒温槽で保温した透析器の血液流路側へ純水を送り、透析液側から流出した濾液量を測定した。膜間圧力差(TMP)は
TMP=(Pi+Po)/2
とする。ここでPiは透析器入り口側圧力、Poは透析器出口側圧力である。TMPを4点変化させ濾過流量を測定し、それらの関係の傾きから透水性(mL/hr/mmHg)を算出した。このときTMPと濾過流量の相関係数は0.99以上でなければならない。また、回路による圧力損失誤差を少なくするために、TMPは100mmHg以下の範囲で測定する。中空糸膜の透水性は膜面積と透析器の透水性から算出する。
UFR(H)=UFR(D)/A
ここでUFR(H)は中空糸膜の透水性(mL/m/hr/mmHg)、UFR(D)は透析器の透水性(mL/hr/mmHg)、Aは透析器の膜面積(m)である。
【0040】
(中空糸膜の内径、外径、膜厚)
これらの測定は、中空形成材を洗浄、除去した後、中空糸膜を乾燥させた形態で観察する。乾燥方法は問わないが、乾燥により著しく形態が変化する場合には中空形成材を洗浄、除去したのち、純水で完全に置換した後、湿潤状態で形態を観察する。中空糸膜の内径、外径および膜厚は、中空糸膜をスライドグラスの中央に開けられたφ3mmの孔に中空糸膜が抜け落ちない程度に適当本数通し、スライドグラスの上下面でカミソリによりカットし、中空糸膜断面サンプルを得た後、投影機Nikon−V−12Aを用いて中空糸膜断面の短径、長径を測定することにより得られる。中空糸膜断面1個につき2方向の短径、長径を測定し、それぞれの算術平均値を中空糸膜断面1個の内径および外径とし、膜厚は(外径−内径)/2で算出した。5断面について同様に測定を行い、その平均値を内径、外径、膜厚とした。
【0041】
(平均面粗さ(Ra値))
評価する中空糸膜の外表面を露出させたものを試料とした。原子間力顕微鏡SPI3800(セイコーインスツルメンツ社製)によって形態観察した。この時の観察モードはDFMモード、スキャナーはFS−20A、カンチレバーはDF−3、観測視野は3μm四方である。Ra値は膜表面の凹凸を測定した際の基準点に対する全測定点の凹凸の算術平均を表す。
【0042】
(押し出し荷重)
内径3.4cmのポリエチレン製パイプ内に中空糸膜束を充填率47%で充填した測定用サンプルのパイプ外周部を、その形状が変化しないように固定し、直径2.5cm、厚さ0.5cmのテフロン(登録商標)板を先端に取り付けた棒テンションゲージ(大場計器製作所)を用いて、サンプル端部中央部にあて、パイプ内から中空糸膜束を押し出そうとするときの最大荷重を、押し出し荷重(N)とした。本発明において充填率は、下記式に基づいて求める。
充填率(%)=(中空糸膜1本あたりの外径基準断面積×中空糸膜本数)/パイプ内径断面積×100
例えば、中空糸膜の内径が200×10−4cm、膜厚が15×10−4cmの場合、充填率を47%とするためには、47/100×{π×(3.4/2)}/[π×{(200×10−4+15×10−4×2)/2}]より、およそ10162〜10379本の中空糸膜が必要である。
【0043】
(モジュール作製歩留まり)
ポリエチレン製パイプ内に充填率が47%になるように中空糸膜束を挿入し、これをモジュールケースに挿入する。ポリエチレン製パイプを引き抜いた後、ウレタン樹脂で中空糸膜束とケースを液密に接着する。ウレタン樹脂が硬化した後、中空部が開口するように接着部の一部を切断してモジュールを作製する。このようにして作製した20本のモジュールについて、ケースと中空糸膜の接触部を目視にて観察し、不良糸(折れ、切れ、ねじれ、つぶれ)の有無により、モジュール作製歩留まりを評価する。なお、折れ、ねじれ、つぶれについては、明らかに中空部が閉塞していると思われるものを不良糸と判定し、1本でもそのような中空糸膜が存在すれば不良モジュールとする。本発明を適用することにより、80%以上の合格率を達成することが可能となる。
【0044】
(実施例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)56.7質量%、およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)24.3質量%を加熱して均一に溶解し、次いで得られた紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を孔径10μm、5μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、102℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断され、2℃の均一な雰囲気に調整された70mmの乾式部を通過させた後、40℃の20質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、30℃の水洗浴を経た後、50℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度30m/minで巻き上げた。このとき、紡糸原液の吐出量は0.50ml/min、中空形成材(流動パラフィン)の吐出量は0.96ml/minとした。また、水洗浴は、傾きを2.5度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同一方向に流れる並流とした。水洗浴は5段とした。凝固浴出口の中空糸膜走行速度と、紡糸工程最後の巻き取り速度との比は、1.1であった。
【0045】
得られた中空糸膜の内径は200.5μm、膜厚は15.8μmであった。得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5mとなるように血液浄化器を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
(実施例2)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)56.7質量%、およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)24.3質量%を加熱して均一に溶解し、次いで得られた紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を孔径10μm、5μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、102℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断され、2℃の均一な雰囲気に調整された70mmの乾式部を通過させた後、40℃の20質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、30℃の水洗浴を経た後、50℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度30m/minで巻き上げた。このとき、紡糸原液の吐出量は0.31ml/min、中空形成材(流動パラフィン)の吐出量は0.55ml/minとした。また、水洗浴は、傾きを2.5度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同一方向に流れる並流とした。水洗浴は5段とした。凝固浴出口の中空糸膜走行速度と、紡糸工程最後の巻き取り速度との比は、1.1であった。
【0047】
得られた中空糸膜の内径は151.2μm、膜厚は12.6μmであった。得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5mとなるように血液浄化器を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
(実施例3)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)56.7質量%、およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)24.3質量%を加熱して均一に溶解し、次いで得られた紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を孔径10μm、5μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、102℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断され、2℃の均一な雰囲気に調整された70mmの乾式部を通過させた後、40℃の20質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、30℃の水洗浴を経た後、50℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度30m/minで巻き上げた。このとき、紡糸原液の吐出量は2.00ml/min、中空形成材(流動パラフィン)の吐出量は1.51ml/minとした。また、水洗浴は、傾きを2.5度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同一方向に流れる並流とした。水洗浴は5段とした。凝固浴出口の中空糸膜走行速度と、紡糸工程最後の巻き取り速度との比は、1.1であった。
【0049】
得られた中空糸膜の内径は250.6μm、膜厚は45.3μmであった。得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5mとなるように血液浄化器を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例4)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)18.0質量%、NMP57.4質量%、およびTEG24.6質量%を均一に溶解し、次いで紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を孔径10μm、5μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、120℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断され、3℃の均一な雰囲気に調整された50mmの乾式部を通過された後、40℃の20質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、30℃の水洗浴を経た後、50℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度75m/minで巻き上げた。このとき、紡糸原液の吐出量は1.21ml/min、中空形成材(流動パラフィン)の吐出量は2.40ml/minとした。また、水洗浴は、傾きを1度とし、中空糸膜が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同一方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。凝固浴出口の中空糸膜走行速度と、紡糸工程最後の巻き取り速度との比は、1.08であった。
【0051】
得られた中空糸膜の内径は199.8μm、膜厚は15.4μmであった。得られた中空糸膜を用いて実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0052】
(比較例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0質量%、NMP56.7質量%、およびTEG24.3質量%を加熱して均一に溶解し、次いで紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を孔径20μm、20μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、105℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断され、48℃の均一な雰囲気に調整された70mmの乾式部を通過させた後、40℃の20質量%NMP/TEG(7/3)水溶液中で凝固させ、30℃の水洗浴を経た後、50℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度85m/minで巻き上げた。このとき、紡糸原液の吐出量は1.18ml/min、中空形成材(流動パラフィン)の吐出量は2.40ml/minとした。また、水洗浴は、傾きを0.5度とし、中空糸膜が緩やかに上っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが逆方向に流れる向流とした。水洗浴は7段とした。凝固浴出口の中空糸膜走行速度と、紡糸工程最後の巻き取り速度との比は、1.25であった。
【0053】
得られた中空糸膜の内径は199.8μm、膜厚は15.0μmであった。得られた中空糸膜を用いて実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0054】
(比較例2)
ポリエーテルスルホン(住友化学社製 高重合度ポリエーテルスルホン7300P)16.0質量%、ポリビニルピロリドン(BASF社製 PVP K−90)6.0質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)46.8質量%、およびポリエチレングリコール(PEG200、第一工業製薬製)31.2質量%を加熱して均一に溶解し、次いで紡糸原液の脱泡を行った。得られた紡糸原液を孔径10μm、5μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、80℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)36質量%およびポリエチレングリコール(PEG200、第一工業製薬製)24質量%、および水40質量%とともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断され、43℃の均一な雰囲気に調整された8mmの乾式部を通過させた後、40℃の40質量%NMP/PEG200(6/4)水溶液中で凝固させ、50℃の水洗浴を経た後、50℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度30m/minで巻き上げた。このとき、紡糸原液の吐出量は0.65ml/min、中空形成材(水系内液)の吐出量は0.97ml/minとした。また、水洗浴は、傾きを0.5度とし、中空糸膜が緩やかに上っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが逆方向に流れる向流とした。水洗浴は7段とした。凝固浴出口の中空糸膜走行速度と、紡糸工程最後の巻き取り速度との比は、1.25であった。
【0055】
得られた中空糸膜の内径は201.2μm、膜厚は20.0μmであった。得られた中空糸膜を用いて実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1から明らかなように、Ra値が10nm以下の実施例1〜4は、押し出し荷重が低く、モジュール作製の歩留まりが良好である。特にRa値が低い実施例2,4は結果が極めて良好である。これに対して、Ra値が10nmを越える比較例1,2は、押し出し荷重が高く、結果としてモジュール作製歩留まりが悪い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の血液浄化用中空糸膜は、外表面の平均面粗さを低くすることによりモジュール組み立て時の作製歩留まりを高い水準で維持することができる。従って、本発明の血液浄化用中空糸膜は、経済的にかつ安定して製造することができるという利点を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径が100〜300μmであり、平均膜厚が10〜50μmであり、細孔内にグリセリンが充填されている血液浄化用中空糸膜であって、該中空糸膜を乾燥状態で原子間力顕微鏡によって測定すると、外表面の平均面粗さ(Ra値)が10nm以下であることを特徴とする血液浄化用中空糸膜。
【請求項2】
ポリエチレン製パイプ内に充填率47%で充填された中空糸膜束を、ポリエチレン製パイプから押し出そうとする時にかかる荷重が、20N以下であることを特徴とする請求項1に記載の血液浄化用中空糸膜。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血液浄化用中空糸膜を組み込んだことを特徴とする血液浄化用中空糸膜モジュール。

【公開番号】特開2011−24708(P2011−24708A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171916(P2009−171916)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】