説明

モノエチレングリコールとジエチレントリアミンとを含有する混合物の蒸留分離方法

モノエチレングリコールとジエチレントリアミンを含有する混合物を、モノエチレングリコールを含有し、かつ実質的にジエチレントリアミンを有さない流れ(7)と、ジエチレントリアミンを含有し、かつ実質的にモノエチレングリコールを有さない流れ(8)とに蒸留分離する計画であり、その際、該方法は、分離が、ジエチレントリアミンのための選択的溶剤としてトリエチレングリコールを使用する抽出蒸留によって実施されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノエチレングリコールとジエチレントリアミンとを含有する混合物の蒸留分離方法に関する。
【0002】
モノエチレングリコールとジエチレントリアミンとを含有する混合物は、例えば、エチレンアミン及びエタノールアミンを、触媒の存在下で、モノエチレングリコール(以下:MEG)の水素化アミノ化によって製造する方法で得られる。
【0003】
公知の方法において、エタノールアミンとエチレンアミンとの混合物が、一般に、得られる。その中で、特にエチレンジアミン(以下:EDA)及びジエチレントリアミン(ビス(2−アミノエチル)アミン;以下:DETA)は、重要な価値のある物質であり、それらの物質の使用は、溶剤、安定剤として、キレート剤、合成樹脂、薬剤、阻害剤及び界面活性物質の合成のための使用を含む。
【0004】
EDAは、特に、殺菌剤及び殺虫剤のための原料として使用される。
【0005】
DETAは、特に、染料のための溶剤として使用され、かつイオン交換体、農薬、酸化防止剤、腐食防止剤、錯化剤、織物助剤及び(酸性)ガスのための吸収剤を製造するための出発物質である。
【0006】
エチレンアミンとエタノールアミンとの生成混合物における非線形アミン、特に、環状アミン、主にピペラジン及びピペラジン誘導体は、対照的に、低い評価ないし望ましくない。
【0007】
エチレンアミンの製造のために、多数の方法が、文献中で記載されている。
【0008】
PEP Report No.138、"アルキルアミン"、SRI International、03/1981の、特に、7、8、13〜16、43〜107、113、117頁によると、ジクロロエタンとアンモニアとの、モル比1:15での反応は、20質量%より多い形成されたエチレンアミンの割合を有するDETAをもたらす。しかしながら、EDA40質量%に加えて、高級エチレンアミン40質量%が、得られる。
【0009】
モノエタノールアミン(以下:MEOA)のアンモニアでのアミノ化(例えば、前記のPEP Report、US第4,014,933号(BASF AG)を参照)は、それらの高級エチレンアミン(すなわち、トリエチレンテトラミン(以下:TETA)の沸点より高い沸点を有するエチレンアミン)の形成をEDAに有利なように実質的に抑制することを可能にする。しかしながら、この反応において得られる副産物は、アミノエチルエタノールアミン(以下:AEEA)及びピペラジン(以下:PIP)である。
【0010】
Ind.Eng.Chem.Prod.Res.Dev.1981、20、399〜407頁(C.M.Barnesらによる)は、SiO2−Al23混合担体上のニッケル触媒による、MEOAのEDAへのアンモニア分解を記載している。水及び粉末触媒の添加が、その称するところによれば、有利には、EDAの収率を増加した。
【0011】
US第4,855,505号は、例えばアンモニアで、例えば、ニッケル又はコバルト4〜40質量%と、ハロゲン化ルテニウム溶液として導入されたルテニウム0.1〜5質量%とを含有する少なくとも50質量%の活性アルミナを含有する多孔質の金属酸化物の担体上の触媒の存在下で、モノエチレングリコールをヒドロアミノ化するための方法を開示している。該触媒は、例として、約3mmの長さと直径を有するタブレットの形で使用される。
【0012】
記載されている方法で得られる生成物流は、蒸留によって分離されて、純粋な形における個々の生成物、特に、所望されたEDA及びDETAが得られる。ここでの問題点は、MEG及びDETAが、事実上、圧力に依存せず、及び従って圧力スイング蒸留によって分離されることが出来ない共沸混合物を形成することである。該共沸の組成物は、MEG約44質量%及びDETA56質量%であり、かつ、それぞれの場合において、150mbarより高い圧力での純粋なMEGの沸点144℃及び純粋なDETAの沸点142℃と比較して、150mbarで沸点154℃を有する。
【0013】
従って、本発明の目的は、MEG及びDETAを、それらを含有する混合物からの蒸留によって除去することができる方法を提供することであった。
【0014】
それは、モノエチレングリコールとジエチレントリアミンとを含有する混合物を、モノエチレングリコールを含有し、かつ実質的にジエチレントリアミンを有さない流れと、ジエチレントリアミンを含有し、かつ実質的にモノエチレングリコールを有さない流れとに蒸留分離する方法において、ジエチレントリアミンのための選択的溶剤としてトリエチレングリコールを用いた抽出蒸留によって分離を実施することを含む方法によって解決される。
【0015】
驚くべきことに、トリエチレングリコール(以下:TEG)が、抽出蒸留によるMEG及びDETAの製造のための選択的溶剤として著しく好適であることが、見出されている。
【0016】
特に、DETAのための選択的溶剤としてのTEGの使用は、MEGとDETAとを含有する混合物を、MEGを含有し、かつDETAの割合が、5質量%未満、有利には0.1質量%未満、より有利には10ppm未満である流れと、DETAを含有し、かつMEGの割合が、2質量%未満、有利には0.1質量%未満、より有利には10ppm未満である流れとに分離させることを可能にする。
【0017】
好ましい変法において、MEGとDETAとを含有する混合物は、不均一触媒の存在下で、MEGのアンモニアでの水素化アミノ化の反応混合物から、MEG及びDETAの共沸混合物に対して、より低い沸点の及びより高い沸点の成分を、除去することで得られる。
【0018】
MEGとDETAとを含有する混合物は、特に有利には、エチレンアミン及びエタノールアミンを、不均一触媒の存在下で、MEGとアンモニアとの水素化アミノ化による製造方法から得られ、その際、触媒の活性組成物が、ルテニウムとコバルトを含有するが、第VIII族及び第Ib族のさらなる金属を含有せず、かつそれぞれの場合に、球形又は押出物の形で直径3mm未満を有し、タブレットの形において高さ3mm未満を有し、かつそれぞれの場合において、全ての他の形状の場合には、0.70mm未満の担当直径L=1/a’を有し、その際、a’は、
【数1】

[式中、Apは、成形された触媒体の外表面積(mms2)であり、かつVpは、成形された触媒体の体積(mmp3)である]で示される、単位体積当たりの外表面積(mms2/mmp3)である成形された触媒体として存在する触媒が使用される。
【0019】
特に、最初の分離順序において、まず過剰アンモニア、形成された水及び存在するあらゆる水素が、エチレンアミン及びエタノールアミンを製造するための不均一触媒の存在下で、MEG及びアンモニアの水素化アミノ化において得られる生成混合物から除去される。この目的のために要求される蒸留塔は、当業者によって、特に、多くの分離段、還流比等に関する、当業者によく知られている方法で設計されえる。ここで得られるアンモニア及び/又は得られる水は、有利には、反応中に再循環される。
【0020】
MEGの水素化アミノ化の反応混合物は、そこから過剰アンモニア、形成された水及び存在するあらゆる水素が、有利には最初の分離順序において除去されており、それは、続いて、第二の分離順序において、未転化のMEG、並びにまたMEOA、EDA、PIP、DETA、AEEA及び高級エチレンアミンに分離される。この分離順序において、MEG及びDETAの共沸混合物に対して、より低い沸点の及びより高い沸点の成分が、最初に除去され、そしてMEG及びDETAで濃縮された混合物が、選択的溶剤としてのTEGでの抽出蒸留によって、MEGを含有する流れと、DETAを含有する流れとに分離される。
【0021】
この目的のために、特に、過剰アンモニア、形成された水及び存在するあらゆる水素が、有利には除去されたMEGの水素化アミノ化の反応混合物は、
−第一蒸留装置KI中で、反応混合物のエチレンジアミン及びピペラジン成分を含有する頂部流と、ピペラジンの沸点よりも高い沸点を有する反応混合物の成分を含有する底部流とに分離され、その底部流は、
−第二蒸留塔KIIに供給され、かつその中で、モノエチレングリコール、ジエチレントリアミン及びモノエタノールアミンを含有する頂部流と、モノエチレングリコール及びジエチレントリアミンよりも高い沸点を有する成分を含有する底部流とに分離され、その頂部流は、
−抽出蒸留塔KIIIに供給され、そこに同じ分離段又は同じ高さで、ジエチレントリアミンのための選択的溶剤としてトリエチレングリコールを含有する流れが供給され、その際、前記抽出蒸留塔KIIIにおいては、底部を通ってジエチレントリアミンで負荷された選択的溶剤のトリエチレングリコールを含有する流れが取り出され、かつ頂部を通ってモノエチレングリコールを含有する実質的にジエチレントリアミンを有さない流れが取り出される。
【0022】
DETAで負荷された選択的溶剤を含有する、抽出蒸留塔KIIIからの底部流は、有利には、脱着塔KIVに供給され、かつその中で、DETAを含有する頂部流と、TEGを含有する底部流とに分離される。抽出蒸留塔KIVからのTEG含有底部流が、有利には、抽出蒸留塔KIIIに再循環される。
【0023】
抽出蒸留において分離されるべき流れの、すなわち抽出蒸留塔への供給流の組成は、有利には、MEG60〜90質量%、DETA1.5〜6質量%、MEOA10〜30質量%、及びピペラジン1%未満である。この場合に、MEG及びDETAは、有利には、18:1〜42:1の範囲の質量比で存在する。
【0024】
DETAのための選択的溶剤としてのTEGでの抽出蒸留は、有利には、モノエチレングリコール及びジエチレントリアミンを含有する供給流の質量に対するトリエチレングリコールを含有する1つ又は複数の流れの質量割合が、1.5:1〜10:1の範囲内である方法で操作される。
【0025】
抽出蒸留塔は、有利には、理論段数5〜50、特に理論段数10〜30、より有利には理論段数20で設計され、かつ、60〜200℃、有利には100〜180℃の範囲内の温度、及び0.01〜1bar(絶対)、有利には0.01〜0.5bar(絶対)の圧力で操作される。
【0026】
本発明は、図及び実施例に関して、以下で詳細に説明している。
【0027】
図面において、唯一の図、図1は、本発明による方法を実施するための好適なプラントの図を示す。
【0028】
MEGとDETAとを含有する供給流1は、第一蒸留装置KIに供給され、そしてその中で、特にEDAとPIPとを含有する頂部流2と、PIPの沸点よりも高い沸点を有する成分を含有する底部流3とに分離される。第一蒸留装置KIの底部流3は、第二蒸留装置KIIに供給され、そしてその中で、MEGとDETAとを含有する頂部流4と、MEG及びDETAと比べてより高い沸点の成分、特にAEEA、DEOA、並びに高沸点物を含有する底部流5に分離される。
【0029】
第二蒸留装置KIIからの頂部流4は、抽出蒸留塔に供給され、そこに同じ分離段又はより高くで、DETAのための選択的溶剤としてのTEGを含有する流れ6が供給され、そしてその中でDETAで負荷されたTEGを含有する底部流8と、主にMEG、及び加えてMEOAを含有し、かつ主にDETAを有さない頂部流7とに分離される。
【0030】
抽出蒸留塔KIIIからの底部流8は、脱着塔KIVに供給され、かつその中で、主にDETAを含有する頂部流10と、TEGを含有し、かつ、図示された好ましい変法では、抽出蒸留塔KIIIに再循環される底部流9とに分離される。
【0031】
実施例
不均一触媒の存在下で、MEGのアンモニアでの水素化アミノ化からの反応器排出物は、アンモニア及び水の除去後に、MEG52質量%、MEOA21.5質量%、EDA17質量%、DETA2質量%及びAEEA2質量%、ピペラジン3.5質量%、並びに高沸点物2質量%を含有する。
【0032】
この混合物を、供給流1として、第一蒸留装置KIに供給し、そしてその中で、EDAとPIPとを含有する頂部流2と、PIPと比較してより高い沸点の成分を含有する底部流3とに分離する。第一蒸留装置KIからの底部流3を、第二蒸留装置KIIに供給し、そして、高沸点物を含有する流れ5を、その中で除去し、頂部流4を、供給流として抽出蒸留塔KIII中に供給する。供給流4中のMEGとDETAとの質量比は、28である。抽出蒸留塔KIIIを、圧力40mbar及び還流比1で操作する。抽出蒸留塔KIIIは、理論段数20で設計され、そしてMEGとDETAとを含有する流れ4を、分離段に対しておよそ中間で供給する。
【0033】
DETAのための選択的溶剤、流れ6を、分離される混合物4より理論段数1〜2上で添加する。選択的溶剤TEGを含有する流れ6の、温度25℃での質量流量は、分離された流れ4の3.8倍である。抽出蒸留塔KIIIの頂部で、MEGとMEOAとを含有する流れ7を除去し、その際DETA含量は、10ppm未満である。抽出蒸留塔KIIIの底部で、事実上MEGを有さない(MEG含量10ppm未満)選択的溶剤TEGのDETAで負荷された流れを抜き取る。流れ8は、脱着塔KIV中で、頂部流10を含有するDETAと、選択的溶剤TEGを含有し、かつ抽出蒸留塔KIIIへ再循環される底部流9とに分離する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明による方法を実施するための好適なプラントの図を示す。
【符号の説明】
【0035】
KI 第一蒸留装置、 KII 第二蒸留装置、 KIII 抽出蒸留塔、 KIV 脱着塔、 1 供給流、 2 頂部流、 3 底部流、 4 頂部流、 5 底部流、 6 流れ、 7 頂部流、 8 底部流、 9 底部流、 10 頂部流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノエチレングリコールとジエチレントリアミンを含有する混合物を、モノエチレングリコールを含有し、かつ実質的にジエチレントリアミンを有さない流れ(7)と、ジエチレントリアミンを含有し、かつ実質的にモノエチレングリコールを有さない流れ(8)とに蒸留分離する方法において、ジエチレントリアミンのための選択的溶剤としてのトリエチレングリコールを用いた抽出蒸留によって分離を実施することを含む方法。
【請求項2】
流れ(7)中のジエチレントリアミンの割合が、5質量%未満、有利には0.1質量%未満、より有利には10ppm未満であり、かつ流れ(8)中のモノエチレングリコールの割合が、2質量%未満、有利には0.1質量%未満、より有利には10ppm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モノエチレングリコールとジエチレントリアミンとを含有する混合物が、不均一触媒の存在下で、モノエチレングリコールのアンモニアでの水素化アミノ化の反応混合物から、そこから、モノエチレングリコール及びジエチレントリアミンの共沸混合物に対して、より低い沸点の及びより高い沸点の成分を、除去して得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
過剰アンモニア、形成された水及び存在するあらゆる水素が、有利には除去された、モノエチレングリコール(1)の水素化アミノ化の反応混合物を、
−第一蒸留装置KI中で、反応混合物のエチレンジアミン及びピペラジン成分を含有する頂部流(2)と、ピペラジンの沸点よりも高い沸点を有する反応混合物の成分を含有する底部流(3)とに分離し、その底部流(3)を、
−第二蒸留塔KIIに供給し、かつその中で、モノエチレングリコール、ジエチレントリアミン及びモノエタノールアミンを含有する頂部流(4)と、モノエチレングリコール及びジエチレントリアミンよりも高い沸点を有する成分を含有する底部流(5)とに分離し、その頂部流(4)を、
−抽出蒸留塔KIIIに供給し、そこに同じ分離段又は同じ高さで、ジエチレントリアミンのための選択的溶剤としてトリエチレングリコールを含有する流れ(6)を供給し、その際、前記抽出蒸留塔KIIIにおいては、底部を通ってジエチレントリアミンで負荷された選択的溶剤のトリエチレングリコールを含有する流れ8を取り出し、かつ頂部を通ってモノエチレングリコールを含有する実質的にジエチレントリアミンを有さない流れ(7)を取り出す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
抽出蒸留塔KIIIからの底部流(8)を、脱着塔KIVに供給し、かつその中で、ジエチレントリアミンを含有する頂部流(10)と、トリエチレングリコールを含有する底部流(9)とに分離する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
脱着塔KIVからの底部流(9)を、抽出蒸留塔KIIIに再循環する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
抽出蒸留塔KIIIへの供給流(4)が、モノエチレングリコールとジエチレントリアミンとを18:1〜42:1の範囲の質量比で含有する、請求項4から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
抽出蒸留塔KIIIへの供給流(4)が、モノエチレングリコール60〜90質量%、ジエチレントリアミン1.5〜6質量%、モノエタノールアミン10〜30質量%、及びピペラジン1質量%未満を含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
モノエチレングリコールとジエチレントリアミンとを含有する供給流(4)の質量に対して、トリエチレングリコールを含有する流れ(6)の質量割合、又はトリエチレングリコールを含有する流れ(6)及び(9)の質量割合が、1.5:1〜10:1の範囲内である、請求項4から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
抽出蒸留塔KIIIが、60〜200℃、有利には100〜180℃の範囲の温度、及び0.01〜1bar(絶対)、有利には0.01〜0.5bar(絶対)の圧力で操作され、かつ理論段数5〜50、有利には理論段数10〜30、より有利には理論段数20を有する、請求項4から9までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−526811(P2009−526811A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554748(P2008−554748)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051227
【国際公開番号】WO2007/093555
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】