説明

モノクローナル抗体を分泌する細胞の自動化大スケールスクリーニング

本発明は、関心対象の化合物への親和性を有する少なくとも1種の特異的モノクローナル抗体を分泌する細胞の大スケールインビトロスクリーニングのための自動化方法に関し、この方法は:(10)少なくとも1つの培養プレート上での抗体産生細胞の分配;(12)これらの細胞を培養する工程;(14)関心対象の化合物と相互作用する少なくとも抗体を分泌する細胞のクローニングを用いる、抗体分泌細胞の反復スクリーニング;および(16)この関心対象の化合物への親和性を有する1種の特異的モノクローナル抗体を分泌する少なくとも1つの細胞の選択を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に特異性および親和性による、有利な特性を有するモノクローナル抗体の同定および選択の分野に関する。本発明は、より詳細には、このような抗体をスクリーニングする目的のための有効な手段の手順および製造の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の対象は、関心対象の化合物への親和性を有する少なくとも1つの特異的モノクローナル抗体を分泌する細胞の大スケールインビトロスクリーニングのための自動化方法であり、この抗体は、調査研究、診断、および/または治療の目的のために特に有用である。
【0003】
本発明はまた、動物の免疫応答を刺激することによって、および細胞によって産生され、かつ関心対象の化合物に対する多くの異なる抗体を増加させることによって、関心対象の化合物に対する抗体を産生する細胞の動物による産生を改善するための方法を記載する。
【0004】
抗体は免疫グロブリンファミリーに属する。これらは、Bリンパ球(またはB細胞または代替的に「抗体産生細胞」)によって産生される。
【0005】
抗体は、外来性の化合物に対する宿主生物の防御のために必須の活性手段を提示する。このような化合物は、例えば、寄生生物、ウイルス、細菌、ポリペプチド、ポリサッカリドなどであり得る。
【0006】
使用に従って、上記に引用される外来性化合物は、宿主生物中での免疫応答を誘発可能である「抗原」である。より詳細には、各抗原は、後者の特異的部分からなる1つ以上の「エピトープ」を含み、これは、抗体と反応する。
【0007】
抗原および抗体は、「リガンド−レセプター」型反応に従って結合する。より詳細には、抗体は、その表面に、抗原を認識可能でありかつこの抗原のエピトープの特異的結合のための部位に対応可能である、「パラトープ」と呼ばれる部位を有する。
【0008】
抗原の存在に応答して、身体の免疫系は、抗原中に存在するエピトープと同数の異なる型の抗体を産生することによって反応する。
【0009】
樹状細胞はまた、「前哨細胞」または「抗原提示細胞」と呼ばれる。これらの細胞は、体液性および細胞性の免疫系の刺激を可能にする。
【0010】
感染性抗原または腫瘍抗原を捕捉する際にに存在するプロセス、樹状細胞における後者の分解およびこれらの細胞によるエピトープの提示が知られている(Dendritic cells: biology and clinical applications. Ed. M.T. Lotze, A.W. Thomson, Academic Press, 1999)。手短に述べると、感染性因子または腫瘍因子は、樹状細胞の内部で認識および分解される。次に、このようにして得られたフラグメントは、細胞の表面に提示される。次いで、これらの外来性フラグメントは、リンパ球によって認識される。このように応答する体液性および細胞性の免疫プロセスは、これらの腫瘍および/またはこれらの感染性因子に対する抗体の産生をもたらす。
【0011】
樹状細胞の補充およびエピトープ提示プロセスは、免疫応答における必須の工程である。
【0012】
抗原の存在によって誘導される免疫応答は、Bリンパ球のポリクローナル集団による、多数の抗体(すなわち、いくつかの型のBリンパ球から構成される異種集団)の同時産生を含む。この点に関して、この免疫応答は、これがいくつかの型の抗体の産生から生じ、各々の抗体の型が1つの型のBリンパ球から産生されるという点で、ポリクローナルである。
【0013】
しかし、調査研究または診断の目的のためのポリクローナル抗体の使用は、とりわけ、予防的および/または治療的な処置の状況において、特定の抗原に対する特異性の問題を明らかに引き起こす。
【0014】
これらの問題は、1975年に公開された、KohlerおよびMilsteinによる研究(Nature 256: 495-497)によって今日までに大部分解決された。彼らは、確かに、モノクローナル抗体、換言すると、均質でありかつ規定された特異性の抗体を産生するための技術を開発した。現在では慣用的となっているこの方法および分子生物学的技術によって、無限の量でのテーラーメードモノクローナル抗体の調製が、臨床医学、工業、および科学調査研究において顕著な関心対象である。
【0015】
現在において、以前には想定することが困難であった、任意の型の物質に対するモノクローナル抗体を設計することが理論的に可能である。一般的に、モノクローナル抗体は、特定の抗原に対するそれらの特異性およびそれらの親和性によって、非常に広大な適用の分野:分析的、細胞学的、組織学的、機能的、または生化学的な研究を有する同定ツールを構成する。従って、モノクローナル抗体は、診断において、ならびに医学的および薬学的調査研究において非常に広範に使用されている。これらはまた、治療において新規な使用を見い出す。
【0016】
バイオテクノロジーの企業および研究室は、今日まで、「最高の」モノクローナル抗体、すなわち、所定の疾患の病因論に関与する抗原に対して、最も特異的でありかつ最高の親和性を有するモノクローナル抗体を同定するために、種々のアプローチおよび技術を採用してきた。それゆえに、このようにした同定された最高の抗体は、この疾患の診断、予防、および/または治療の状況において有利に使用され得る。しかし、研究者および技術者らは、化学分子が合成され得るのと同じような方法で抗体を作製しない。実際、彼らの仕事は、ヒトまたは動物の免疫系によって産生される1011通りの型の抗体の中から、問題の抗原に最もよく一致する抗体を決定することにある。それゆえに、このストラテジーは、潜在的な一群の候補の間で最高のモノクローナル抗体の同定および選択に基づく。これは、一般的に「スクリーニング」と呼ばれていることである。
【0017】
モノクローナル抗体の開発に特化したゲノム関連企業は、多数の疾患を治療するための潜在的な候補である抗体ライブラリーを保有している。潜在的な候補の数を減少させるために、ライブラリーのすべての抗体は、抗原と接触される。次に、この抗原について、最高の親和性を示す抗体が選択される。しかし、ライブラリーは、完全な抗体ではなく、抗体フラグメントからなる(いわゆるファージディスプレイ技術)。従って、ほとんどの場合、これらの企業は、関心対象の抗体フラグメントを迅速に同定することに成功している。他方、彼らは、完全な抗体を入手することに関して非常な困難に遭遇している。確かに、抗体フラグメントのライブラリーは、一般的には、生物の免疫系が産生可能である全体の1011通りの型の識別可能な抗体を表していない。従って、遺伝子操作技術によって、不十分な特異性および/または親和性の抗体の構築を生じるかもしれない、選択された抗体フラグメントから完全な抗体を再構築することが必要である。
【0018】
細胞生物学企業は、異なるアプローチを採用してきた。個別化されているかまたはされていない抗原が動物に注射される(ヒト化トランスジェニックマウスまたはラット)。次に、従来的な体細胞ハイブリダイゼーションによってであるがヒト化トランスジェニックマウスまたはラットを使用して、細胞複合体が同定され、この複合体は、とりわけ、注射された抗原の存在下でマウスまたはラットによって産生された抗体を含む。しかし、これらの企業は、免疫系によって産生される関心対象の各々の抗体を同定することを可能にする、迅速かつ安価なスクリーニングを実行するために必要な能力および手段を有していない。確かに、このアプローチが大スケールで使用可能である技術を含まない限りにおいて、これは、潜在的に関心対象であるすべての抗体が単回のスクリーニングによって同定不可能であるという点で必然的に限定される。結果的に、このように同定された候補は、最終的には、特異性および/または親和性に関して最高ではないようである。
【0019】
さらに、これらのアプローチのいずれかに従って、これらのエピトープが前もって同定されることなく、選択された抗体が結合するエピトープを詳細に研究することは、現在不可能である。
【発明の開示】
【0020】
実際、一方では、特異性および/または親和性に関して最高の抗体の同定、ならびに他方では、これらの抗体によって認識されるエピトープの同定を可能にする手順および手段を有することが現在、絶対的に必須である。
【0021】
大部分の工程、およびある場合においてはすべての本質的な工程が自動化され得る本発明の対象である方法は、これが:(i)多数の潜在的な候補の間で最高の抗体の同定および選択を可能にする;(ii)エピトープマッピングを実行することを可能にする;(iii)迅速に実行する;(iv)再現可能な結果を提供する;(v)多数の抗体産生細胞を同時にスクリーニングことを可能にする;(vi)非専門的な職員によって実行され得る;ならびに(vii)調査研究もしくは分析の研究室、病院設備、または産業の必要性に合致するように、日常的なスクリーニング目的のために実行され得るという点において、スクリーニングの鋭敏さ(所定の適用についての最高の抗体を選択すること、および適切な場合、問題のエピトープを同定すること)、合理化、および節約についてのこれらの関心を満足する。
【0022】
このために、本発明に従う方法は、大スケール細胞スクリーニングおよびプロテオミクス技術を組み合わせ、所定の抗体によって認識される抗原および/またはエピトープを正確に同定することを可能にする。
【0023】
この認識によって、本発明は、今や、所定の適用のための最高の抗体の同定によって抗体の最適なスクリーニングを可能にする。従って、スクリーニングの統計学的関連性は、本発明の対象である方法が、スクリーニングに供せられた細胞によって分泌された異なるモノクローナル抗体の量のみならず、特異性および/または親和性に関して、これらの抗体の量もまた増加する限りにおいて改善される。
【0024】
それゆえに、本発明の対象は、関心対象の化合物への親和性を有する少なくとも1つの特異的モノクローナル抗体を分泌する細胞の大スケールインビトロスクリーニングのための自動化方法である。
【0025】
「自動化」とは、本発明に従う方法の必須のすべての工程が、有利に自動化されてもよく、好ましくは有利に自動化されることを意味すると理解されるべきである。さらに、本文の他の箇所で他に言及されない限りは、本発明に従う方法の特定の態様の工程もまた、自動化されてもよいし、好ましくは自動化される。
【0026】
図1によって例証される第1の態様に従って、本発明の方法は、少なくとも以下の工程を含む:
(10)少なくとも1つの培養プレートの少なくとも1つのウェルへの抗体産生細胞の分配;
(12)細胞の増殖を可能にする条件下で、細胞増殖および培養の品質の同時検出を用いて、これらの細胞を培養する工程(プレート培養);
(14)関心対象の化合物と相互作用する少なくとも1種の抗体を分泌する細胞のクローニングを用いる、抗体分泌細胞の反復スクリーニング;および
(16)この関心対象の化合物への親和性を有する1種の特異的モノクローナル抗体を分泌する少なくとも1つの細胞の選択。
【0027】
本発明の目的のために、「関心対象の化合物」は、少なくとも1つのエピトープを含む抗原である。このような化合物は、特に、タンパク質、核酸、ウイルス粒子、合成ペプチド、化学化合物、器官、オルガネラ(例えば、ゴルジ装置、ミトコンドリアなど)、全細胞(例えば、哺乳動物細胞、植物細胞、細菌など)、細胞下断片(例えば、細胞膜のフラグメント、ミトコンドリアなどのフラグメントなど)から選択される。特に、上述の化合物は腫瘍細胞である。このような場合、本発明に従う方法は、関心対象の腫瘍細胞に対して有利に使用され、および並行して、同じ組織に由来する正常細胞(腫瘍細胞に対応する正常細胞)に対して使用される。
【0028】
「培養プレート」、「スクリーニングプレート」(上記に示される反復スクリーニングの工程(14)の間に使用される)、および細胞ライブラリーを構築するための「保存プレート」は、細胞培養のために慣用的に使用される。特に、このようなプレートは、6個、12個、24個、96個、または384個のウェルを含む。好ましくは、これは、96個または384個のウェルを含む。
【0029】
上述の工程(10)の間に得られる培養プレートは、本発明の状況において、「マスター培養プレート」を表す。
【0030】
好ましくは、工程(10)による細胞の分配は、少なくともウェルあたり3×105細胞の量で実行される。
【0031】
工程(12)に従う細胞の「プレート培養」は、慣用的な選択培地(例えば:RPMI培地、ペニシリン/ストレプトマイシンの1%混合物、1%ピルビン酸、2%グルタミン、10%胎仔ウシ血清、1% 8-アザセリン、1% ヒポキサンチン)中で、一般的に少なくとも7日間から最大21日間の期間にわたって実行され、この期間は、好ましくは7日間から15日間の間である。実用上、この期間は、ウェル中の細胞の密度に依存する。一旦培養期間が経過すると、培養培地は自動的に交換される。従って、古い培地は、反復スクリーニングの状況においては収集されかつ使用されるのに対して[工程(14)]、新たな培養培地は、マスタープレートのウェルに加えられる。
【0032】
培養[工程(12)]と同時の「細胞増殖の検出」は、操作者によって手動で実行されてもよい。この場合において、統計学的検定が使用されてもよい。以下の推定量が使用されてもよい。
−推定量c:「ウェルが汚れている」、これは二項法則B(n,p)に従って分布するp(c)を用い、ここでnは資格を与えられた操作者によって観察されたウェルの数であり、pは汚れているウェルについての確率であり;cはウェルが汚れている場合に個別の1の値を取り、または何も異常が観察されない場合には0の値を取る。最大尤度定理に従って、この検定は、n=30である場合に95%信頼度である。それゆえに、操作者は、以下のようにランダムに選択した30の異なるウェルを観察する。ウェルに1からNまで数字を付し、ここで1は、最初の96ウェル培養プレートの最初のウェルについての数字(プレート上の座標:A1)であり、およびNは、最後の96ウェル培養プレートの最後のウェル(プレート上の座標:H12)についての数字である。観察されるウェルについての数字は、乱数発生器(MS Excel)を用いてリストからランダムに選択される。
−推定量c:「観察される少なくとも1つのウェルが汚れている」、これは二項法則B(1,p)に従って分布するP(C)を用い、ここでp、汚れている30ウェルについての確率は、少なくとも1つのウェルが汚れている場合に個別の1の値を取り、または何も異常が観察されない場合には0の値を取る。P(C)=0である場合、すべての培養ウェルが95%信頼度で汚れ含まないと見なされる。平均細胞増殖は、観察される30ウェルに対して操作者によって経験的に評価される。
【0033】
代替的にまたは好ましくは、この検出は、例えば、以下から選択される少なくとも1つの技術を用いて自動化される:
−培養培地のpHの比色分析;
−少なくとも1つの補助測定用電極での、培養培地のpHの測定;
−プレートのウェルの画像の分析;
−微小電極を用いる培養培地の伝導率の測定;
−比濁法;または
−これらの技術の任意の組み合わせ。
【0034】
これらは、当業者に公知である慣用的な技術である。
【0035】
本発明の目的のために、「培養の品質」とは、これらの培養の雑菌混入の非存在をいう。
【0036】
図2によって例証される第2の態様に従って、反復スクリーニングの工程(14)は、少なくとも以下のスクリーニングモジュールを含む:
−少なくとも1つの培養プレート(#n)の少なくとも1つのウェルから収集された培養培地の、少なくとも1つのスクリーニングプレート(#n)の少なくとも1つのウェルへの移動;
−少なくとも1つの所定の選択判断基準について細胞をスクリーニングする工程;
−この判断基準を満足する細胞の、少なくとも1つの新たな培養プレート(#n+1)の少なくとも1つのウェルへの選択的サブクローニング;および
−それらの増殖を可能にする条件下での、細胞増殖および培養の品質の同時検出を伴う、細胞の培養(「プレート培養」)。
【0037】
用語「モジュール」は、ループで、数回反復され得る工程の連続を意味すると本明細書で理解される。従って、1つのモジュールから次のモジュールまで、以下が変化する:
−培養培地(本明細書では「培養上清」とも呼ばれる)がそこから取り出されるかまたは移動される最初の培養プレート(#n);
−スクリーニングプレート(#n);
−選択判断基準;および
−培養プレート(#n+1)。
【0038】
本発明の目的のために、選択判断基準は、以下の判断基準から選択される(図2を参照されたい):抗体の分泌(「プレスクリーニング」);関心対象の化合物と相互作用する抗体の分泌(一次スクリーニング);この関心対象の化合物への特異的なモノクローナル抗体の分泌(「二次スクリーニング」)およびこの関心対象の化合物への親和性を有する特異的モノクローナル抗体の分泌(「三次スクリーニング」)。好ましくは、これらのすべての判断基準が、上記に示される順番で首尾よく適用される。これらの条件下において、上述のモジュールは4回反復される。プレスクリーニング判断基準を省略することは、それにも関わらず可能である。次いで、一次スクリーニングがすぐに実行され、上記のモジュールの反復の回数を3回に減少させる。
【0039】
有利には、一次スクリーニングが実行されるとき、プレスクリーニングが先行するか否かに関わらず、さらなる細胞クローニング工程が、以下に詳述されるように[工程(146);図2もまた参照されたい]実行される。
【0040】
さらに、本発明に従って、三次スクリーニングに相当する、実行される最終モジュールは、プレート上での選択的継代培養および培養の工程を必ずしも含まない。確かに、好ましくは、実際の三次スクリーニングには、モノクローナル抗体を分泌する少なくとも1つの細胞の少なくとも1段階の選択が続き、その関心対象の化合物への特異性および/または親和性は、他の細胞によって分泌されるモノクローナル抗体のそれらよりも高い[工程(16)、図1および2を参照されたい]。
【0041】
用語「細胞の選択的継代培養」は、細胞生物学の分野における通常の意味に対応する。
【0042】
原理的に、反復スクリーニング[工程(14)]の状況において、プレート培養は、標準培地(例えば:RPMI培地、ペニシリン/ストレプトマイシンの1%混合物、1%ピルビン酸、2%グルタミン、10%胎仔ウシ血清)において実行される。工程(14)のための培養時間は、工程(12)の場合において上記に示される期間と同一である。
【0043】
「細胞増殖の検出」は、工程(12)について上記で定義されるものと同様である。
【0044】
最初に、任意のプレスクリーニングモジュールは、少なくとも以下の工程を含む:
(140)少なくとも1つのマスター培養プレート[工程(12)の最後]から収集された培養培地の、少なくとも1つのスクリーニングプレート(スクリーニングプレート#0)への移動;
(141)抗体分泌細胞のプレスクリーニング;
(142)少なくとも1つの培養プレート(培養プレート#1)上での細胞の選択的サブクローニング;および
(143)これらの細胞のプレート培養。
【0045】
工程(141)は、少なくとも以下を含む定量的スクリーニングに対応する:
(1411)抗体の分泌の検出;および
(1412)少なくとも1種の抗体を分泌する細胞の選択。
【0046】
より詳細には、抗体の分泌の検出の工程(1411)は少なくとも以下を含む:
(14111)少なくとも1つの培養上清試料の回収;および
(14112)この試料中での抗体の分泌の検出。
【0047】
代替的には、この工程(1411)は、ウェル中で直接的に抗体の分泌の検出を少なくとも含む。
【0048】
工程(141)、特に上記の工程(1411)に従うプレスクリーニングは、当業者に公知である、「リガンド−レセプター」型結合を検出するための任意の系の補助を伴って実行され得る。例としては、アイソトープまたは酵素を使用する言及される免疫検出系、発光または蛍光の検出に基づく技術、微小プローブを使用する方法などが存在し得る。特に、当業者は、利用可能な従来的なELISA(Enzyme-linked ImmunoSorbent Assayの略)技術、「TopCount」もしくは「Alpha Screen」システム(Perkin Elmer Life Sciences Inc., Boston, MA, United States)、またはFMAT 8100もしくはFAMT 8200システム(Applied Biosystems, Manchester, Great Britain)を持っている。プレスクリーニングの使用は、特に従来的なマイクロテクノロジーまたはナノテクノロジーに基づく手段を含んでもよい。必要とされる試料体積は、この場合においては、有利には10μl未満である。
【0049】
第2に、一次スクリーニングモジュールは、少なくとも以下の工程を含む:
(144)プレスクリーニングが実行された場合には、少なくとも1つの培養プレート#1から、またはそうでない場合には、少なくとも1つのマスター培養プレートから、収集された培養培地の、少なくとも1つのスクリーニングプレート(スクリーニングプレート#1)への移動:
(145)関心対象の化合物と相互作用する少なくとも1つの抗体分泌細胞の一次スクリーニング;
(146)この関心対象の化合物と相互作用する少なくとも1つの抗体を分泌する細胞のクローニング;
(147)少なくとも1つの培養プレート(培養プレート#2)上でのクローニングされた細胞のサブクローニング;および
(148)これらの細胞のプレート培養。
【0050】
スクリーニングプレートのウェルの各々における相互作用の検出は、一次スクリーニング工程(145)に従って、定性的である。この工程(145)は少なくとも以下を含む:
(1451)少なくとも1つの培養上清試料の回収;
(1452)この試料中における関心対象の化合物との抗体の相互作用の検出;および
(1453)この関心対象の化合物と相互作用する少なくとも1種の抗体を分泌する細胞の選択。
【0051】
工程(145)に言及される一次スクリーニングは、プレスクリーニングについて引用されるものと同じ技術の補助を伴って実行されてもよい。ここで再度、一次スクリーニングは、マイクロテクノロジーまたはナノテクノロジーに基づく手段を含んでもよい。従って、試料体積は、有利には10μl未満である。
【0052】
工程(146)の対象であるクローニングは、プレスクリーニングプレートおよび/または一次スクリーニングプレートのウェル中に存在するポリクローナル細胞集団から、モノクローナル細胞集団までを経過することを目的とする。このようなクローニングは、当業者に周知である従来的な方法によって実行され得る。例えば、フローサイトメトリーによる細胞選抜、標準培地中での培養プレート(一般的には96ウェル)上で実行される限界希釈、および寒天培地中でのクローニングが言及され得る。それゆえに、工程(146)の最後に、モノクローナル抗体およびモノ特異的抗体を分泌する細胞が、各ウェルに存在する。
【0053】
第3に、第2のスクリーニングモジュールは、少なくとも以下の工程を含む:
(149)少なくとも1つの培養プレート#2から収集された培養培地の、少なくとも1つのスクリーニングプレート(スクリーニングプレート#2)への移動;
(150)関心対象の化合物に特異的なモノクローナル抗体分泌細胞の二次スクリーニング;
(151)少なくとも1つの培養プレート(培養プレート#3)上での細胞の選択的サブスクリーニング;および
(152)これらの細胞のプレート培養。
【0054】
二次スクリーニング工程(150)は、定性的スクリーニングに再度対応する。この効果のために。この工程(150)は少なくとも以下を含む:
(1501)少なくとも1つの培養上清試料の回収;
(1502)この試料中におけるモノクローナル抗体と関心対象の化合物との間の特異的相互作用の検出;および
(1503)この関心対象の化合物に特異的なモノクローナル抗体を分泌する細胞の選択。
【0055】
この二次スクリーニングは、プレスクリーニングおよび一次スクリーニングについて上記に示された技術の補助を伴って実行されてもよい。特に有利な様式において、必要な試料体積は10μl未満である。
【0056】
「特異性」の概念は、関心対象の化合物の特定のエピトープに関して本明細書で理解されるべきである。2つのシナリオが想定され得る。
(i)関心対象の化合物は腫瘍細胞である。ディファレンシャルな二次スクリーニングがこの場合に実行され、換言すると、「モノクローナル抗体−腫瘍細胞」結合と比較した、「モノクローナル抗体−同じ組織の正常細胞」結合の定量的検出から得られた結果が比較される。この場合、「モノクローナル抗体−腫瘍細胞」結合は、それが検出されるのに対して、有意に弱いか、または非存在でさえある「モノクローナル抗体−同じ組織の正常細胞」結合が検出される場合に、特異性の判断基準を満たすと見なされる。
(ii)関心対象の化合物は腫瘍細胞とは異なる。この場合、エピトープのマッピングを実行すること、および次いで、モノクローナル抗体が特定のエピトープに結合するか否かを定量的に決定することが適切である。後者の条件が満足される場合、抗体とこのエピトープとの間の「特異的結合」が存在するといわれる。
【0057】
関心対象の化合物が腫瘍細胞である場合、当業者は、より良好な結果のために、ディファレンシャルな二次スクリーニング[(i)の場合]をエピトープマッピング[(ii)の場合]と合わせてもよい。
【0058】
第4に、三次スクリーニングモジュールは、ここでは最終モジュールであり、少なくとも以下の工程を含む:
(153)少なくとも1つの培養プレート#3から収集された培養培地の、少なくとも1つのスクリーニングプレート(スクリーニングプレート#3)への移動;および
(154)この関心対象の化合物への親和性を有する特異的モノクローナル抗体分泌細胞の三次スクリーニング。
【0059】
任意に、このモジュールはさらに以下の工程を含む:
(155)少なくとも1つの培養プレート上での細胞の選択的サブクローニング(培養プレート#4);および
(156)これらの細胞のプレート培養。
【0060】
工程(154)の対象である三次スクリーニングは、これが、モノクローナル抗体の親和性および特異性を定量的に比較すること、および適切な場合、関心対象の化合物によって保有されるエピトープのマップを確立することを可能にする。従って、工程(154)は少なくとも以下を含む:
(1541)少なくとも1つの培養上清試料の回収;および
(1542)この関心対象の化合物へのモノクローナル抗体の親和性の測定。
【0061】
より詳細には、上記の工程(1542)は少なくとも以下を含む:
(15421)関心対象の化合物へのモノクローナル抗体の親和性の測定;および
(15422)この関心対象の化合物の少なくとも1つのエピトープの同定および/または位置決め。
【0062】
エピトープの同定および/または位置決め(エピトープマッピング)はまた、本明細書では、用語「エピトープマッピング」により示される。
【0063】
有利には、上述の工程(15421)および(15422)は同時であってもよい。
【0064】
有利には、三次スクリーニング工程(154)はさらに以下を含む:
(1543)関心対象の化合物へのそれらの特異性および/またはそれらの親和性に基づくモノクローナル抗体の分類。
【0065】
抗原−抗体複合体は、2つのパラトープとエピトープとの間の空間的相補性によって、および低エネルギーの結合(水素結合、静電的結合、ファンデルワールス結合、または水素結合など)の確立を介して得られる。これらの相互作用の総和は、エピトープについての抗体の特異性に依存する、多かれ少なかれ強力な全体的な相互作用を表す。実際、抗原−抗体の組み合わせは可逆性であり、1つのエピトープ−パラトープ対から別のその対までで相互作用エネルギーは変化する。
【0066】
1:1反応速度論モデルまたは一価モデルにおいて、2つのパラトープの各々の相互作用エネルギーは考慮されていない。全体の相互作用エネルギー(すなわち、複合体の解離のエネルギー)は、2つのパラトープの相互作用エネルギーの算術的合計よりも大きい。この全体的なエネルギーは、L/モルまたはM-1で表現される「親和性定数」または「解離定数」と呼ばれる平衡定数KDによって、および2つの反応速度論的結合定数および解離定数、それぞれkaおよびkd(M-1または分-1で表現される)によって特徴付けられる。物理学的に、KDは、所定の抗原について平衡にある複合体の形成の反応のために必要である最小抗体濃度の逆数を表す。親和性定数KDは、以下の式によって与えられる:

KD=ka/kd=[Ab-Ag]/([Ab].[Ag])
ここで、[Ab]=抗体濃度
[Ag]=抗原濃度
[Ab-Ag]=抗原−抗体複合体の濃度。
【0067】
実際により近い2:1反応速度論モデルまたは二価モデルにおいて、各パラトープの反応速度論的結合定数および解離定数が考慮される:1つの部位についてka1、kd1、および他方の部位についてka2、kd2である。全体の定数KDの計算はこの場合不可能である。このようなモデルは、1つの部位との相互作用が、エピトープとの接近可能性に依存して、他の部位との相互作用を決定するという事実を考慮に入れる。以下の反応がこの場合に用いられる:

ここで:Ab1:抗体の相互作用の第1の部位(またはパラトープ番号1)
Ab2:抗体の相互作用の第2の部位(またはパラトープ番号2)。
【0068】
次いで、定数ka1、kd1、ka2、kd2は、標準曲線の直線化によってグラフを用いて測定されてもよい。
【0069】
実際上、三次スクリーニングは、特に、Biacore 3000またはBiacore S51型(Biacore AB, Paris, France)のデバイスによって実行されてもよい。これらのデバイスは、抗原と抗体の相互作用の反応速度論、上記のモデルの各々についての結合定数、およびR50、すなわち、結合した抗体の50%について得られるシグナルの測定を可能にする。これを行うために、これらは偏光のビームによって励起される場合に、金属(またはプラズモン)の自由電子雲のエネルギーのバリエーションの測定を使用する。実験の1つのモードに従って、抗体は、レーザー放射に供される金属プレートに結合される。次いで、抗原溶液が注入され、特定の期間の間、既知の流速で、結合した抗体を「通過する」。次いで、装置が、抗原の結合の関数としてのプラズモンエネルギーのバリエーションを測定する。定数の計算は、このようにして得られた実験結果の補助を伴って自動的に実行される。
【0070】
代替的には、1:1反応速度論モデルの場合において、定数KD、R50、ka、kd、または2:1反応速度論モデルの場合において、定数R50、ka1、kd1、ka2、kd2によって表される結合親和性の測定(上記に言及した工程(15421))、およびエピトープマッピング(上述の工程(15422))が、
−RIA試験;
−ELISA試験;
−当業者に公知である従来的なプロテオーム技術;および
−微小プローブの使用
などのリガンド−レセプター相互作用の反応速度論分析のための少なくとも1つの技術によって実行される。
【0071】
より詳細には、エピトープをマッピングするために、従来的なプロテオームプラットフォームが使用される。このようなプラットフォームは、一般的には、二次元電気永劫システムまたはそれらの分子量およびそれらの電荷に従う移動を引き起こすことを可能にする2Dシステムから構成される。例えば、同じ組織の正常細胞に関連する腫瘍細胞の電気泳動的プロフィールを分析するために、これらの細胞の試料を、タンパク質画分を分離するために調製する。次に、試料を、電場の影響下で、ゲル上に配置しかつ移動させる。可視化の間、目視でまたはスキャナーおよび画像分析のためのソフトウェアの補助を用いてのいずれかで、2つの細胞の電気泳動プロフィールを比較すること、および腫瘍細胞に特異的なシグナルまたは「スポット」、または正常細胞と比較して、腫瘍細胞によって過剰発現するかもしくは発現が不足するタンパク質を同定することが可能である。次いで、腫瘍細胞に特異的なスポットが、手動で収集されるか(ゲルから切り出す)、またはその操作が画像のコンピュータ分析に連動しているサンプリングロボットによって収集される。ゲルフラグメント中に包括されたタンパク質は溶液中に再溶解される。それらの配列は、Maldi-Toff型質量分析装置を使用して決定される。次いで、このようにして得られた結果からタンパク質上で同定されたペプチドフラグメントの新たな2D電気泳動を実行すること、およびスクリーニングされた抗体をゲルに加えることによって全体のタンパク質のエピトープをマッピングすることが可能である。関心対象の化合物がタンパク質である場合、この第2の2D電気泳動のみが実行され、エピトープマッピングの代替として、Biacore型デバイス(上記を参照のこと)を使用して実行される。このデバイスを用いる方法は、上記のものと同様である:抗体は、ペプチドフラグメントの芝生を「通過」し(「芝生」あたり単一型のフラグメント)、後者と異なる親和性で相互作用する。この方法は、マッピングに加えて、相互作用の親和性を提供する利点を有する。しかし、2D電気泳動よりも実行することがより冗漫である。
【0072】
第3の態様に従って、細胞ライブラリーは、工程(14)の少なくとも1つのスクリーニングモジュールのために、選択的サブクローニング後に得られる培養プレートから調製される。従って、ライブラリーは、
−後者が使用される際、プレスクリーニングモジュールのための工程(142);および/または
−一次スクリーニングモジュールのための工程(147);および/または
−二次スクリーニングモジュールのための工程(151);および/または
−適切である場合、三次スクリーニングモジュールのための工程(155)
の最後に調製される。
【0073】
好ましくは、細胞ライブラリーは、上記に引用されるスクリーニングモジュールのために調製される。
【0074】
これを行うために、少なくとも1つの培養プレート[工程(142)、(147)、(151)、および(155)]上で継代培養された細胞を、再度、少なくとも1つの保存プレート上で継代培養し、ここで、これらは再度、約7日間の期間にわたって培養される。次に当業者に公知の技術に従って、、細胞が収集され、培養され、および凍結される。
【0075】
本発明の対象である方法の第4の態様に従って、図1および2によって例証されるように、反復スクリーニングの工程(14)に、少なくとも以下が続く:
(16)他の細胞によって分泌されるモノクローナル抗体のそれらよりも高い、関心対象の化合物への特異性および/または親和性を有するモノクローナル抗体を分泌する少なくとも1つの細胞の選択。
【0076】
この工程(16)は、自動化されないことが可能である。
【0077】
図3によって例証される第5の態様に従って、上記に言及された分配工程(10)に、少なくとも以下の予備工程が先行する:
(1)関心対象の化合物を用いる少なくとも1つの動物の免疫;
(2)任意に、この動物の免疫応答の測定;および
(3)抗体産生細胞の回収。
【0078】
代替的には、少なくとも以下の予備工程が分配工程(10)に先行する:
(0)少なくとも1つの樹状細胞(または「抗原提示細胞」)および関心対象の化合物を接触させて、この結果、この樹状細胞がこの関心対象の化合物の少なくとも1つのエピトープを提示する工程;
(1)このエピトープを提示するこの樹状細胞を用いる、少なくとも1つの動物の免疫;
(2)任意に、この動物の免疫応答の測定;および
(3)抗体産生細胞の回収。
【0079】
接触させる工程(0)の最後に、樹状細胞は内在化され、そしてその表面にこの化合物のフラグメントが存在するように関心対象の化合物を切断し、これらの化合物は、適切な場合、問題の化合物の1つまたはそれ以上のエピトープを含む。
【0080】
好ましくは、関心対象の化合物が腫瘍細胞である場合、上記の工程(0)は少なくとも以下を含む:
(01)樹状細胞および腫瘍細胞の融合;および
(02)少なくとも1つのハイブリッド樹状細胞の回収。
【0081】
用語「ハイブリッド樹状細胞」は、腫瘍細胞と融合した樹状細胞を意味すると理解される。このようなハイブリッド細胞は、その表面に腫瘍細胞によって通常提示されるエピトープのみならず、腫瘍細胞によって通常提示されない潜在性のエピトープもまた、有利に提示する。以下の実施例II-1のようなこのような細胞は、通常の環境下において、樹状細胞の特徴を有し、かつ後者よりもより多くの腫瘍細胞のエピトープを提示する利点を有する。
【0082】
免疫工程(1)の間、種々のアジュバント、特に、完全または不完全フロインドアジュバント、またはヒトおよび/もしくは動物において免疫アジュバントとしてのその使用のために当業者に公知であるタンパク質および糖脂質の他のいずれかの混合物が使用されてもよい。
【0083】
いくつかの接種経路が想定され得る。特に、皮下、皮内、静脈内、腹腔内、および脾臓内経路などが言及され得る。
【0084】
接種は、変化してもよい、関心対象の化合物の時間間隔および量のプログラムに従って、単一の関心対象の化合物またはこのような化合物の組み合わせの補助と用いて実行されてもよい。
【0085】
抗体を産生するための免疫技術は、当業者の一般的知識の一部を形成する。
【0086】
上記の任意の工程(2)は、免疫された動物の体液性免疫応答の測定に対応する。この工程(2)は、従来的な方法の補助を用いて有利に実行されてもよい。例えば、血液試料が動物から収集される。次いで、関心対象の化合物の特異的な循環している免疫グロブリンGが、ELISAによってアッセイされる。
【0087】
工程(3)に従う抗体産生細胞の回収は、例えば、その脾臓を収集するために、動物を屠殺することにある。次いで、細胞は通常の様式で解離される。
【0088】
本発明の対象である方法を実行するために適切な抗体産生細胞の例として、マウス、ラット、ウサギ、およびヒトの脾臓細胞が言及され得る。好ましくは、この抗体産生細胞はマウス細胞である。
【0089】
有利な態様に従って、上記の予備工程は、さらに以下を含む(表3を参照されたい):
(4)このように回収された抗体産生細胞の不死化細胞との融合;および
(5)不死化抗体産生細胞の回収。
【0090】
これを行うために、好ましくは、抗体産生細胞は、操作者によって、腫瘍、特にミエローマ細胞と融合される。
【0091】
特定の態様に従って、上記に言及された予備工程[(1)、(2)、(3)、および適切な場合、(4)、(5)]または[(0)、(1)、(2)、(3)、および適切な場合、(4)、(5)]は自動化されない。
【0092】
第6の態様に従って、本発明の対象である方法の各工程は、無菌雰囲気下で実行される。デフォルト設定により、反復スクリーニングモジュールのすべての工程[工程(14)]は、スクリーニングプレートへの培養培地の移動に対応する各モジュールの初期工程[工程(140)、(144)、(149)、および(153)]が滅菌培地中で実行される限り、非無菌雰囲気下で実行されてもよい。従って、スクリーニングプレートのウェルへの試薬の付加、このプレートのインキュベーション、およびスクリーニングの結果の読み取りは、たとえ関心対象の化合物が細胞である場合であっても、非無菌雰囲気下で実行されてもよい。いずれの場合においても、抗体産生細胞を含む本発明の対象である本発明のすべての工程:特に、プレート培養工程(12)、(143)、(148)、(152);移動工程(140)、(144)、(149)、(153);選択的継代培養工程(142)、(147)、(151)、(155);および細胞ライブラリーの調製は、無菌雰囲気下で実行される。
【0093】
上記のような方法を実行するためのデバイスは、
−少なくとも1つのロボットを制御するための少なくとも一部分;および
−データ獲得および加工のための少なくとも一部分
を制御する少なくとも1つの自動化システムを備える。
【0094】
本発明の目的のために、「自動化システム」は、操作者の指示に従って、自動化および制御された仕事の順番を提供するデバイスである。
【0095】
従って、その操作を通して、この自動化システムは、制御されたパラメーター(「自動制御」手段によって、換言すれば、自動システムそれ自体によって生成されるパラメーター)と、制御パラメーター(ここでは、操作者によって生成される指示)の間の逸脱をキャンセルする傾向がある。
【0096】
通常の意味に従って、「ロボット」は、固定化されたか、またはパラメーター設定可能なプログラム従って、対象物を取り扱い、および操作を実行することが可能な自動デバイスである。
【0097】
「プログラム」は、指示の配列であり、この「指示」はプログラミング言語で表現され、その翻訳が特定の基本的操作の実行を生じる。
【0098】
「パラメーター」は、プログラムの実行の間にその値、アドレス、または名称が特定されるのみである変数である。
【0099】
「データ」は、本明細書では、観察または実験の結果を表す。
【0100】
特定の態様に従って、この自動システムは、操作者(操作者の指示)によって、プログラムされ、および/またはパラメーター化される。
【0101】
自動システムは、この場合、少なくとも1つのプログラムおよび/または少なくとも1つのパラメーターが記録されるメモリを好ましく含む。
【0102】
問題のデバイスは、上記の方法の自動化工程およびサブ工程を実行するために必要である指示を生成するようなものである。
【0103】
このデバイスにおいて、少なくとも1つのロボットの制御部分が、自動化機械であるこのロボットによって生成される指示に従って、それ自体を制御する。
【0104】
特に、このようなロボットは以下が可能である:
−少なくとも1つの培養プレート、またはスクリーニングプレート、または保存プレートを、(x、y、z)において、つかみ、移動、および位置決めすること;
ならびに/または
−このプレートを保存すること;および/または
−このプレートの所定の位置(x、y、z)に配置された少なくとも1つのウェルから液体培地を収集すること;および/または
−このウェルを洗浄すること。
【0105】
このデバイス中に存在するデータ獲得および加工部は、自動システムによって生成される指示に従って、培養プレートまたはスクリーニングプレートの少なくとも1つのウェルに存在する細胞の定性的および/または定量的検出をのための少なくとも1つの手段によって提供されるデータを分析する。
【0106】
問題のデバイスにおける使用のために特に適切である検出手段は、特に以下から選択される:
−このウェルを分析するための光度測定ユニット;
−このウェルの画像を分析するためのユニット;
−このウェルの放射能を測定するための少なくとも1つの手段を含むオートラジオグラフィーユニット;
−細胞を分離するための少なくとも1つの手段を含む細胞選別ユニット;および
−Biacore 3000またはBiacore S51型デバイス(上記の記載を参照されたい)。
【0107】
これらのすべての検出手段は、当業者に公知の従来的な技術を含む。
【0108】
このようなデバイスにおいて、抗体産生細胞に対してそれ自体作用する少なくとも一部が無菌雰囲気下にある。従って、反復スクリーニングモジュールの工程[工程(14)]を使用するデバイスの一部が、スクリーニングプレートへの培養培地の移動に対応する各モジュールについての最初の工程[工程(140)、(144)、(149)、および(153)]が滅菌培地中で実行される限り、非無菌雰囲気下に配置されてもよい。
【0109】
さらに、本願は、関心対象の化合物に対する抗体産生細胞の、動物による産生を改善するための方法を開示する。
【0110】
本発明の状況において、この方法は、動物の免疫応答を刺激し、および細胞によって産生され、かつ関心対象の化合物に対する異なる数の抗体を増加させることを可能にする。
【0111】
第1の態様に従って、本明細書に記載される方法は、少なくとも以下の工程を含む:
(20)この樹状細胞が関心対象の化合物の少なくとも1つのエピトープを提示するように、関心対象の化合物と少なくとも1つの樹状細胞を接触させる工程;
(22)このエピトープを提示する樹状細胞を用いて、動物を免疫する工程;
(24)任意に、この動物の免疫応答を測定する工程;および
(26)抗体産生細胞を回収する工程。
【0112】
本明細書でいう「関心対象の化合物」は、上記に与えられる定義に一致する。
【0113】
関心対象の化合物が腫瘍細胞である場合、この方法は、好ましくは、少なくとも以下の工程を含む:
(30)少なくとも1つの樹状細胞およびこの腫瘍細胞の融合;
(32)少なくとも1つのハイブリッド樹状細胞を回収する工程;
(34)このハイブリッド樹状細胞を用いて、動物を免疫する工程;
(36)任意に、この動物の免疫応答を測定する工程;および
(38)抗体産生細胞を回収する工程。
【0114】
本発明に従う方法を実行するために適切である、樹状細胞または抗原提示細胞は、例えばマウス樹状細胞である。
【0115】
工程(20)において言及される接触させる工程は、従来的な様式で、例えば、従来的な培養プレート中で実行される。
【0116】
工程(30)に従う融合は、当業者にとって慣用的な技術を含む。
【0117】
上記で言及される「ハイブリッド樹状細胞」は、上記の定義に一致する。
【0118】
工程(22)、(24)、および(26)または(34)、(36)、および(38)は、上記に定義されるのと同様である。
【0119】
第2の態様に従って、上記に記載される方法は、少なくとも以下の工程をさらに含む:
(40)このように回収した抗体産生細胞の、不死化細胞との融合;および
(42)不死化抗体産生細胞を回収する工程。
【0120】
これらの工程は、上記に与えられた定義に適合している。
【0121】
さらに、本願は、本発明の対象である方法に従って、関心対象の化合物への親和性を有する少なくとも1種の特異的モノクローナル抗体を分泌する細胞の大スケールインビトロスクリーニングに対する、動物による抗体産生細胞の産生の改善のための、上記の方法の適用を開示する。
【0122】
以下の実施例は、本発明の具体的な実施例を説明することを目的としているが、これに限定されるわけではない。
【0123】
実施例
I-スクリーニングの方法
I-1-予備工程
これらの工程は図3において図示されている。
【0124】
A-抗体産生細胞の免疫および回収のための工程[工程(1)および(3)
腫瘍細胞(関心対象の化合物)を用いるマウスの免疫の場合、動物を約60から65日間後に屠殺する。次いで、動物の脾臓を取り出す。次いで、細胞を、当業者に公知の標準的なプロトコールに従って解離させる。
【0125】
B-不死化細胞の細胞融合および回収のための工程[工程(4)および(5)]
解離した細胞をマウスミエローマ細胞に露出させる。融合を、0.001%で見積もった収量でランダムに行う。このようにして生成される不死化抗体産生細胞(またはハイブリッド細胞、またはハイブリドーマ)の数は、3×108細胞である。
【0126】
I-2-スクリーニングの方法
これらの工程は図1および2において図示されている。
【0127】
A-分配工程(10)
抗体産生細胞またはハイブリドーマを、この方法を実行するためのデバイスのロボット形成部分によって、選択培地中で、ウェルあたり約100000細胞の量で96ウェル培養プレートに自動的に分配する。
【0128】
例えば、160個のマスター培養プレートの開始バッチをこのようにして入手する。
【0129】
B-プレート培養工程(12):
マスター培養プレートを毎日インキュベーターから自動的に取り出し、培養培地を自動的に新たな培地で置換する。
【0130】
培養の7日後、培養培地を交換する。
【0131】
この工程は、反復スクリーニング工程(14)をもたらす(図2を参照されたい)。
【0132】
C-プレスクリーニングモジュール
a)移動工程(140):
このように収集した古い培地を、培養プレートによって提示されたのと正確に同じウェルのトポグラフィーに従って、ウェルあたり100μlの量で160個のスクリーニングプレート(スクリーニングプレート#0)に配置する。これらのスクリーニングプレートを、バーコードを使用して、マスタープレートに関する参照によって示す。
【0133】
b)プレスクリーニング工程(141):
ビーズに結合した抗IgG抗体を、このスクリーニングプレート#0のウェルに、ウェルあたり10μlの量で加える。蛍光分子に結合された別の抗体を、ウェルあたり10μlの量で加える。室温で10分間のインキュベーションの後、スクリーニングプレートを、FMAT 8200装置(Applied Biosystems)によって読み取る[ウェル中で直接的に、本実施例に従って実行する工程(1411)]。この検出の方法に従って、蛍光色素は、レーザーで励起される。少なくとも1つのIgG集団が試料中に存在するならば、この装置は、抗体−ビーズ複合体の画像を生成する。特異的シグナルが、解離した試薬によって放射されるシグナルに対応する、バックグラウンドノイズに対して最適化される。
【0134】
各ウェルは、すべての複合体によって、1秒あたりに放射される光子の数と関連する。抗体を含まないウェルは、1に近いシグナル/バックグラウンドノイズ比によって特徴付けられ、そして除外される。同様に、得られるシグナルが、試験の較正の関数としての閾値設定未満の強度を有するウェルもまた、除外される[工程(1412)]。
【0135】
c)サブクローニング工程(142):
これらの結果に依存して、有意なポジティブシグナルがスクリーニングプレート#0の対応するウェル中で検出されたならば、ロボットは、マスター培養プレートのウェルから細胞を選択的に収集する。
【0136】
次いで、考慮されるウェルが合わされ、そして4つのプレートの2つの同一のバッチ(バッチ番号1および2)に分けられる。これらの新たな培養プレート(培養プレート#1)を、バーコードを使用して、マスター培養プレートに関する参照によって示す。
【0137】
d)プレート培養工程(143):
次いで、細胞を、上記の定期的な培地交換プロトコールに従って、7日間、同じ様式で培養する。
【0138】
D-一次スクリーニングモジュール
a)移動工程(144):
培養の7日後、免疫のために使用したものと同じ細胞[関心対象の化合物:上記の工程(1)]を、50μl/ウェルの初期容量のために、ウェルあたり1,00,000細胞の量で4枚のスクリーニングプレート(スクリーニングプレート#1)に自動的に分配する。
【0139】
ハイブリドーマ培養プレート(培養プレート#1)のバッチ番号1のために培養培地を変更する。
【0140】
収集した50μlの古い培地を、正確に同じウェルのトポグラフィーに従って、関心対象の化合物を接種した4枚のスクリーニングプレート(スクリーニングプレート#1)に再配置する。これらのスクリーニングプレート#1を、バーコードを用いて、培養プレート#1に関する参照によって示す。
【0141】
同時に、4枚の培養プレート#1のバッチ番号2を、各ウェルの内容物を12枚の96ウェルプレートの新たなバッチの3ウェルに移すことによって増幅し、かつ7日間培養する。各三連の間で、細胞が最高の増殖を示すウェルを選択し、細胞を、12枚の24ウェルプレートのバッチのウェル中で継代培養する。最後に、培養の7日後、各ウェルの細胞を、288の細胞培養フラスコに移す。7日間の培養後、最初の細胞ライブラリーを構築するために、細胞を収集し、遠心分離し、そして液体窒素(-173℃)中で凍結する。
【0142】
b)一次スクリーニング工程(145):
蛍光分子にカップリングされた10μlの抗IgG抗体を加える。室温における10分間のインキュベーションの後、スクリーニングプレート#1を、FMAT 8200装置によって読み取る[工程(1452)]。蛍光色素はレーザーで励起され、少なくとも1つの特異的抗体集団が試料中に存在するならば、この装置は、標識された細胞の画像を生成する。特異的シグナルは、バックグラウンドノイズに対して区別される。
【0143】
各ウェルは、このように標識されたすべての細胞によって、1秒あたりに放射される光子の数と関連する。エピトープについて特異的な抗体を含まないウェルは、1に近いシグナル/バックグラウンドノイズ比によって特徴付けられ、そして除外される。同様に、得られるシグナルが、試験の較正に従う閾値設定未満の強度を有するウェルもまた、除外される[工程(1453)]。
【0144】
15ウェルである他のものは、1培養プレートの3つのバッチにおいて継代培養される(バッチ番号3、4、および5)。
【0145】
バッチ番号3を、各ウェルの内容物を45ウェルプレートの新たなバッチの3ウェルに移すことによって増幅し、かつ7日間培養する。各三連の間で、細胞が最高の増殖を示すウェルを選択し、細胞を、1枚の24ウェルプレートのバッチのウェル中で継代培養する。最後に、培養の7日後、各ウェルの細胞を、15の細胞培養フラスコに移す。7日間の培養後、第2のライブラリーを構築するために、細胞を収集し、遠心分離し、そして液体窒素(-173℃)中で凍結する。
【0146】
c)クローニング工程(146):
7日間の培養の維持後、バッチ番号2の細胞を、ロボットによってクローニングチューブに移す。
【0147】
蛍光色素[例えば、シアニン(Amersham Biosciences)]にカップリングされた抗IgG抗体を、自動的にウェルに加える。これは、少なくとも1つの細胞の集団(またはクローン)が抗体を分泌するならば、ハイブリドーマの表面の免疫グロブリンに特異的に結合する。
【0148】
10分間のインキュベーションの後、細胞を、ウェルあたり1細胞の量で抗体で標識された細胞を選択的に配置するソーター分析フローサイトメーターの補助を用いて培養プレート中にクローニングする。例えば、7個のポジティブクローンがこのようにして得られる。
【0149】
培養プレート#2[工程(147)]およびプレート培養[工程(148)]に対してクローニングされた細胞を継代培養するための工程は、上記に記載されたものと同一である。
【0150】
E-二次スクリーニングモジュール
a)移動工程(149):
培養の7日後、免疫のために使用したものと同じ細胞[関心対象の化合物:工程(1)]を、50μl/ウェルの初期容量のために、ウェルあたり100,000細胞の量でスクリーニングプレート(スクリーニングプレート#2)に自動的に分配する。
【0151】
2枚のスクリーニングプレート#2の別のバッチに、標的細胞と同じ組織から得られたが、健常な表現型を有する細胞を接種する。これらの細胞を「正常」または「対照」と呼ぶ。
【0152】
ハイブリドーマ培養プレート(培養プレート#2)のバッチ番号1の培養培地を変更する。古い培地を保存する。この培地の50μlを、標的細胞を接種したスクリーニングプレート#2に配置する。別の50μlの古い培地を、正確に同じウェルのトポグラフィーに従って、対照細胞を接種したバッチに配置する。これらのスクリーニングプレート#2を、バーコードを用いて、培養プレート#2に関する参照によって示す。
【0153】
b)二次スクリーニング工程(150)
蛍光分子にカップリングされた10μlの抗IgG抗体を、このスクリーニングプレート#2に加える。
【0154】
室温における10分間のインキュベーションの後、スクリーニングプレート#2を、FMAT 8200装置によって読み取る[工程(1502)]。いずれかの(腫瘍または正常)細胞型に特異的な少なくとも1つの抗体集団が試料中に存在するならば、この装置は、標識された細胞の画像を生成する。特異的シグナルは、バックグラウンドノイズに対して区別される。
【0155】
同じ上清試料を含むウェル間の比較によって、特異的に標的細胞に対する抗体が同定される。これは、例えば、3クローンに一致する[工程(1503)]。
【0156】
培養上清の収集直後、細胞クローンを、各ウェルを21ウェルプレートの新たなバッチの3ウェルに移すことによって増幅し、かつ7日間培養する。
【0157】
各三連について、細胞が最高の増殖を示すウェルを選択し、細胞を、1枚の24ウェルプレートのバッチのウェル中で継代培養する。最後に、培養の7日後、各ウェルの細胞を、7個の細胞培養フラスコに移す。3から7日間の培養後、第3のライブラリーを調製するために、細胞を収集し、遠心分離し、そして液体窒素(-173℃)中で凍結する。
【0158】
培養プレート#3[工程(151)]およびプレート培養[工程(152)]に対する細胞の選択的継代培養の工程は、上記に記載されたものと同一である。
【0159】
F-三次スクリーニングモジュール
a)移動工程(153):
二次スクリーニングの間に同定された3クローンについての培養上清を収集し、スクリーニングプレート#3の3ウェル中に配置する。
【0160】
b)三次スクリーニング工程(154):
抗原についての抗体の親和性を、Biacore 3000型装置を使用して分析する[工程(1542)]。
【0161】
抗体を、得られる親和性および/または反応速度論的定数に従って分類する[工程(1543)]。この段階において、例えば、2種の抗体が残っている。
【0162】
標的細胞の全体の抗原は、プロテオーム技術によって単離され、ウェスタンブロッティングによって固定化される。三次スクリーニングの間に選択される2つの抗体は、このようにして結合したタンパク質上に沈着される。インキュベーション後、蛍光色素(例えば、フルオレセイン)で標識した抗IgG抗体を加える。各抗体に特異的な抗原を、蛍光の検出によって同定する[工程(15422)]。
【0163】
II-抗体産生細胞の産生を改善するための方法
以下の実施例は、考慮される関心対象の化合物が腫瘍細胞である場合を例証する[工程(30)〜(38)]。
【0164】
II-1-材料および方法[工程(30)および(32)]
実験をマウスにおいて、マウス樹状細胞およびマウスミエローマ細胞(SP2/O)を用いて実行した。
【0165】
融合[工程(30)]によって得られたハイブリッド樹状細胞(DH細胞)を分析した。これらは、マウス樹状細胞の特徴を有する(細胞フルオロメトリーにおけるこれらの細胞に特異的な抗体による認識)。さらに、これらは、それらの表面に腫瘍細胞のエピトープ(潜在的エピトープを含む)を有する。後の特徴を、樹状細胞およびミエローマ細胞SP2/Oの融合後に確認し、電子顕微鏡による観察を行う。嚢内A粒子(IAP)の存在は、SP2/O細胞に独占的であり、これはハイブリダイゼーションによって確認した。
【0166】
II-2-免疫工程(34)および次の段階
免疫プロトコールは以下の通りであった。4群の4匹のBalb/cマウスを以下のように処理した:
−A群:4匹のマウスをSP2/O細胞で免疫した;
−B群:4匹のマウスを照射した(UV)SP2/O細胞で免疫した;
−C群:4匹のマウスを非照射DH細胞で免疫した;および
−D群:4匹のマウスを照射したDH細胞で免疫した。
【0167】
最初の接種後の1ヶ月の標準期間にわたって、死亡率を観察した。
【0168】
体液性免疫応答(または免疫レベル)の分析[工程(36)]を、ELISA技術の補助を用いて実行した。未処置の動物の血清中のこれらの細胞の抗原に対する抗体の存在を定性的に評価するために、SP2/O細胞でコートされた96ウェルプレート上で1000倍に希釈した血清試料を使用して、試験を実行した。
【0169】
測定のために採用したスケールは以下であった:
0 応答なし
+ 弱い応答
++ 平均的な応答
+++ 高い応答
++++ 非常に高い応答。
【0170】
得られた結果は以下の通りである:
−A群:予測された通り、転移(腹水)に起因する死亡率は100%であり、平均生存は10〜15日間であった。
−B群:死亡は存在せず、SP2/O細胞に対する免疫応答はほぼ+/-であり、固定されたSP2/O細胞に対して+までの範囲であり得る。
−C群:結果はA群を用いて観察されたものと同様であり、高い死亡率を伴った。
−D群:死亡は存在せず、免疫応答は+++から++++の間であった。
【0171】
B群およびD群は、非照射SP2/O細胞の接種に供した(それゆえに、腹水を伴う腫瘍応答を誘導可能である)。B群において、死亡率は100%であったのに対して、D群においては、マウスは4ヶ月後に良好な健康状態のままである。
【図面の簡単な説明】
【0172】
本発明は、以下の図面によって例証されるが、しかしこれは限定を伴うものではない。
【図1】少なくとも1種のモノクローナル抗体を分泌する細胞をスクリーニングするための本質的に自動化方法の模式図−全体図である。
【図2】図1の工程(14)に従う反復スクリーニングに関連する工程の模式図−詳細図である。点線矢印は任意の工程を示す。
【図3】図1において模式的に提示される方法に関連する予備工程の模式図である。ルートAおよびBは代替的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の工程を含む方法であって、関心対象の化合物への親和性を有する少なくとも1種の特異的モノクローナル抗体を分泌する細胞の大スケールインビトロスクリーニングのための自動化方法:
(10)少なくとも1つの培養プレートの少なくとも1つのウェルへの抗体産生細胞の分配工程;
(12)細胞の増殖を可能にする条件下で、細胞増殖および培養の品質の同時検出を伴う、細胞を培養する工程;
(14)関心対象の化合物と相互作用する少なくとも1種の抗体を分泌する細胞のクローニングを用いる、抗体分泌細胞の反復スクリーニング工程;および、
(16)関心対象の化合物への親和性を有する1種の特異的モノクローナル抗体を分泌する少なくとも1つの細胞の選択工程。
【請求項2】
関心対象の化合物が、少なくとも1つのエピトープを含む抗原であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
抗原が、タンパク質、核酸、ウイルス粒子、合成ペプチド、化学化合物、器官、オルガネラ、全細胞、細胞下断片から選択されることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
抗原が、腫瘍細胞であることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
工程(10)による分配が、少なくともウェルあたり3×105細胞の量で実行されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
各工程が、無菌雰囲気下で実行されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
工程(10)に少なくとも先立ち、以下の予備工程が行われることを特徴とする、請求項1記載の方法:
(1)関心対象の化合物を用いる少なくとも1つの動物の免疫工程;
(2)任意に、動物の免疫応答の測定工程;および
(3)抗体産生細胞の回収工程。
【請求項8】
工程(10)に少なくとも先立ち、以下の予備工程が行われることを特徴とする、請求項1記載の方法:
(0)少なくとも1つの樹状細胞と関心対象の化合物を接触させる工程であって、その結果、樹状細胞が関心対象の化合物の少なくとも1つのエピトープを提示する工程;
(1)エピトープを提示する樹状細胞を用いる、少なくとも1つの動物の免疫工程;
(2)任意に、動物の免疫応答の測定工程;および
(3)抗体産生細胞の回収工程。
【請求項9】
関心対象の化合物が腫瘍細胞である場合、工程(0)が少なくとも
(01)樹状細胞と腫瘍細胞の融合;および
(02)少なくとも1つのハイブリッド樹状細胞の回収
を含むことを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
予備工程が、
(4)不死化細胞と抗体産生細胞の融合;および
(5)不死化抗体産生細胞の回収
をさらに含むことを特徴とする、請求項7または8記載の方法。
【請求項11】
抗体産生細胞が、マウス、ラット、ウサギ、またはヒト細胞から選択されることを特徴とする、請求項7または8記載の方法。
【請求項12】
抗体産生細胞が、マウス細胞であることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
予備工程が、自動化されていないことを特徴とする、請求項7から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
反復スクリーニング工程(14)が、反復されてもよい以下のスクリーニングモジュールを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法:
少なくとも1つの培養プレートの少なくとも1つのウェルから収集された培養培地の、少なくとも1つのスクリーニングプレートの少なくとも1つのウェルへの移動;
少なくとも1つの所定の選択判断基準について細胞をスクリーニングする工程;
判断基準を満足する細胞の、少なくとも1つの新たな培養プレートの少なくとも1つのウェルへの選択的継代培養;および
細胞の増殖を可能にする条件下での、細胞増殖および培養の品質の同時検出を伴う細胞の培養。
【請求項15】
工程(14)が、選択判断基準が抗体の分泌である以下のプレスクリーニングモジュールを含むことを特徴とする、請求項14記載の方法:
(140)少なくとも1つのスクリーニングプレートの少なくとも1つのウェルへの培養培地の移動;
(141)抗体分泌細胞のプレスクリーニング;
(142)少なくとも1つの培養プレート上での少なくとも1つの抗体を分泌する細胞の選択的継代培養;および
(143)細胞の培養。
【請求項16】
工程(14)が、選択判断基準が関心対象の化合物と相互作用する抗体の分泌である以下の一次スクリーニングモジュールを含むことを特徴とする、請求項14記載の方法:
(144)少なくとも1つのスクリーニングプレートの少なくとも1つのウェルへの培養培地の移動:
(145)関心対象の化合物と相互作用する少なくとも1つの抗体分泌細胞の一次スクリーニング;
(146)関心対象の化合物と相互作用する少なくとも1つの抗体を分泌する細胞のクローニング;
(147)少なくとも1つの培養プレート上でのクローニングされた細胞の継代培養;および
(148)細胞の培養。
【請求項17】
一次スクリーニングモジュールが、請求項15記載のプレスクリーニングモジュールの後使用されることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
工程(14)が、選択判断基準が関心対象の化合物に特異的なモノクローナル抗体の分泌である、以下の二次スクリーニングモジュールをさらに含むことを特徴とする、請求項16または17記載の方法:
(149)少なくとも1つのスクリーニングプレートの少なくとも1つのウェルへの培養培地の移動;
(150)関心対象の化合物に特異的なモノクローナル抗体分泌細胞の二次スクリーニング;
(151)少なくとも1つの培養プレート上での関心対象の化合物に特異的なモノクローナル抗体を分泌する細胞の選択的継代培養;および
(152)細胞の培養。
【請求項19】
工程(14)が、選択判断基準が関心対象の化合物への親和性を有する特異的モノクローナル抗体の分泌である以下の三次スクリーニングモジュールをさらに含むことを特徴とする、請求項18記載の方法:
(153)少なくとも1つのスクリーニングプレートの少なくとも1つのウェルへの培養培地の移動;
(154)関心対象の化合物への親和性を有する特異的モノクローナル抗体分泌細胞の三次スクリーニング;および
(155)任意に、少なくとも1つの培養プレート上で関心対象の化合物への親和性を有する特異的モノクローナル抗体を分泌する細胞の選択的継代培養;および
(156)任意に、細胞の培養。
【請求項20】
工程(16)が、他の細胞によって分泌されるモノクローナル抗体よりも高い、関心対象の化合物への特異性および/または親和性を有するモノクローナル抗体を分泌する少なくとも1つの細胞の選択工程(16)を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項21】
培養が少なくとも7日間から最大21日間の間の期間にわたって実行され、好ましくは7日間から15日間の間であることを特徴とする、請求項1または14記載の方法。
【請求項22】
細胞ライブラリーが、少なくとも1つのスクリーニングモジュールのために準備されることを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項23】
工程(141)が、少なくとも、
(1411)抗体の分泌の検出工程、および
(1412)少なくとも1種の抗体を分泌する細胞の選択工程
を含むことを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項24】
工程(1411)が少なくとも、
(14111)少なくとも1つの培養上清試料の回収工程、および
(14112)試料中での抗体の分泌の検出工程
を含むことを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項25】
工程(1411)が、少なくとも、ウェル中で直接的に抗体の分泌の検出工程を含むことを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項26】
工程(145)が、少なくとも、
(1451)少なくとも1つの培養上清試料の回収工程、
(1452)試料中における関心対象の化合物との抗体の相互作用の検出工程、および
(1453)関心対象の化合物と相互作用する少なくとも1種の抗体を分泌する細胞の選択工程
を含むことを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項27】
工程(150)が、少なくとも、
(1501)少なくとも1つの培養上清試料の回収工程、
(1502)試料中におけるモノクローナル抗体と関心対象の化合物との間の特異的相互作用の検出工程、および
(1503)関心対象の化合物に特異的なモノクローナル抗体を分泌する細胞の選択工程
を含むことを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項28】
工程(154)が少なくとも、
(1541)少なくとも1つの培養上清試料の回収工程、および
(1542)関心対象の化合物へのモノクローナル抗体の親和性の測定工程
を含むことを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項29】
工程(1542)が少なくとも、
(15421)関心対象の化合物へのモノクローナル抗体の親和性の測定工程、および
(15422)関心対象の化合物の少なくとも1つのエピトープの同定および/または位置決め工程
を含むことを特徴とする、請求項28記載の方法。
【請求項30】
工程(15421)および(15422)が、同時であることを特徴とする、請求項29記載の方法。
【請求項31】
工程(154)が:
(1543)関心対象の化合物への抗体の特異性および/または抗体の親和性に基づくモノクローナル抗体の分類工程
をさらに含むことを特徴とする、請求項28記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−527591(P2006−527591A)
【公表日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516293(P2006−516293)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001482
【国際公開番号】WO2005/003379
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505464844)
【Fターム(参考)】