説明

モノクローナル抗体

本発明は、フィブリンまたはフィブリノゲンのγCドメインに結合する単離抗体を提供する。様々な態様において、この抗体は、フィブリンもしくはフィブリノゲンのγCドメインへのミクログリア接着を阻害し、フィブリンもしくはフィブリノゲンのγCドメインへのMac−1結合を阻害し、かつ/または実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の臨床症状を抑制する。抗体、医薬組成物、キット、ベクター、これらのベクターを含む細胞を用いる様々な方法、および抗体作製法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年10月2日に出願した米国特許仮出願第61/248,014号の利益を請求し、これは参照によりその全体が本明細書に組込まれる。
【0002】
米国連邦政府によって援助された研究または開発に関する記載
本発明は、米国国立衛生研究所の助成金NS052189の下、一部、政府の援助で行われた。政府は、本発明の特定の権利を有する。
【0003】
コンピューター上に提出された試料の参照による組込み
本開示の一部である配列表には、米国特許商標局(U.S.Patent&Trademark Office)のPatentln Version 3.5ソフトウェアによって作成された「RUC110WO_ST25」というタイトルの試料に提供され、本発明のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列含む配列が含まれる。この配列表の主題は、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。
【0004】
本発明は、一般的に、モノクローナル抗体の作製、特に、フィブリンγCドメインを認識するモノクローナル抗体、および治療薬としてこれらのモノクローナル抗体を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0005】
多発性硬化症は、免疫系が脳および脊髄を攻撃する時に生じ、神経線維を遮断して保護するミエリンに損傷を与える。ミクログリアとして知られる脳細胞がこの攻撃に関与し、血液脳関門(BBB)、すなわち、侵入物から脳を保護すべき細胞の裏打ちが破壊される時、活性化される。このBBBが破壊される時、フィブリノゲンと呼ばれる血液タンパク質が脳内に漏出する。血液凝固におけるその既知の役割に加えて、フィブリノゲンはミクログリア細胞を活性化するので、多発性硬化症の動物モデルにおける炎症反応を増強する。さらに、フィブリノゲンは、特定の癌、関節リウマチおよび他の疾患の発病、ならびに組織損傷が起きることによってフィブリノゲンが漏出する病態に関与することが判明している。例えば、Akassoglou et al.,2002,Neuron,33:861−875;Akassoglou et al.,2004,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,101:6698−6703;Adams et al.,2007,J.Exp.Med.,35:2428−34を参照されたい。フィブリノゲンがこれらの作用を媒介するのに利用する特異的受容体Mac−1は、フィブリノゲンの有益な凝固特性に関与しないことも判明している。しかし、今日まで、フィブリノゲン/Mac−1結合の特異的阻害剤は開発されていない。
【0006】
したがって、必要とされているものは、対象の脳および他の場所におけるフィブリノゲンの炎症促進性作用を低下させ、同時に、血液凝固におけるフィブリノゲンの有益な作用を保有しているフィブリノゲン/Mac−1結合の特異的阻害剤である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、フィブリンまたはフィブリノゲンのγCドメインに結合する単離抗体を提供する。本発明の特定の態様において、この抗体は、フィブリンまたはフィブリノゲンのγCドメインへのミクログリア接着の20%を超える阻害を示す。別の態様において、この抗体は、フィブリンまたはフィブリノゲンのγCドメインへのMac−1結合の50%を超える阻害を示す。さらに別の態様において、この抗体は、再発時に、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の臨床症状を抑制する。
【0008】
様々な実施形態において、この抗体は、フィブリンまたはフィブリノゲンのγCドメインのγ377−395エピトープに結合する。あるいは、本発明の抗体は、フィブリンまたはフィブリノゲンのγCドメインのγ190−202エピトープに結合することができる。かかる抗体はモノクローナル抗体であり、様々な態様において、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0009】
本発明の様々な態様において、この抗体は、RSSKSLLHSSGITYLS(配列番号2)、QMSNLAS(配列番号3)、およびAQNLELPLT(配列番号4)を含むアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する軽鎖を含む。様々な態様において、この抗体は、GYTFTSYWIH(配列番号6)、LIDPSDSYTNYNQKFRG(配列番号7)、およびSDPTGC(配列番号8)を含むアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する重鎖を含む。特定の場合において、この抗体は、RSSKSLLHSSGITYLS(配列番号2)、QMSNLAS(配列番号3)、およびAQNLELPLT(配列番号4)を含むアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する軽鎖、ならびにGYTFTSYWIH(配列番号6)、LIDPSDSYTNYNQKFRG(配列番号7)、およびSDPTGC(配列番号8)を含むアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する重鎖を含む。
【0010】
様々な態様において、上記の抗体は、配列番号1の軽鎖可変アミノ酸配列を含む。様々な態様において、上記の抗体は、配列番号5の重鎖可変アミノ酸配列を含む。さらに別の態様において、上記の抗体は、配列番号1の軽鎖可変アミノ酸配列と配列番号5の重鎖可変アミノ酸配列の両方を含む。
【0011】
本発明のさらに別の態様において、上記の抗体は、それぞれ、RSSKSLLHSSGITYLS(配列番号2)、QMSNLAS(配列番号3)、およびAQNLELPLT(配列番号4)を含む配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する軽鎖、ならびにGYTFTSYWIH(配列番号6)、LIDPSDSYTNYNQKFRG(配列番号7)、およびSDPTGC(配列番号8)を含む配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する重鎖を含み、その際、この軽鎖の相補性ドメインおよび重鎖の相補性ドメインはMac−1結合能を保有する。
【0012】
本発明のさらに別の態様において、上記の抗体は、それぞれ、RSSKSLLHSSGITYLS(配列番号2)、QMSNLAS(配列番号3)、およびAQNLELPLT(配列番号4)を含む配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する軽鎖、ならびにGYTFTSYWIH(配列番号6)、LIDPSDSYTNYNQKFRG(配列番号7)、およびSDPTGC(配列番号8)を含む配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する重鎖を含み、その際、軽鎖の相補性ドメインおよび重鎖の相補性ドメインはMac−1結合能を保有する。
【0013】
本発明のさらに別の態様において、上記の抗体は、それぞれ、RSSKSLLHSSGITYLS(配列番号2)、QMSNLAS(配列番号3)、およびAQNLELPLT(配列番号4)を含む配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する軽鎖、ならびにGYTFTSYWIH(配列番号6)、LIDPSDSYTNYNQKFRG(配列番号7)、およびSDPTGC(配列番号8)を含む配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する重鎖を含み、その際、軽鎖の相補性ドメインおよび重鎖の相補性ドメインはMac−1結合能を保有する。
【0014】
本発明のさらに別の態様において、上記の抗体は、それぞれ、RSSKSLLHSSGITYLS(配列番号2)、QMSNLAS(配列番号3)、およびAQNLELPLT(配列番号4)を含む配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する軽鎖、ならびにGYTFTSYWIH(配列番号6)、LIDPSDSYTNYNQKFRG(配列番号7)、およびSDPTGC(配列番号8)を含む配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する重鎖を含み、その際、軽鎖の相補性ドメインおよび重鎖の相補性ドメインはMac−1結合能を保有する。
【0015】
フィブリンへのMac−1結合またはフィブリノゲンとのMac−1結合と関連する病態の症状を緩和するための方法も提供し、この方法は、請求項1に記載の抗体をかかる緩和が望まれる対象に、該対象における病態の症状を緩和するのに十分な量で投与することを含む。
本方法の様々な態様において、この対象はヒトである。様々な態様において、この病態には、多発性硬化症、脊髄損傷、アルツハイマー病、脳卒中、関節リウマチおよび癌が含まれる。
【0016】
上記の抗体および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。別の態様において、上記の抗体を含むキットを提供する。さらに別の態様において、フィブリンγ377−395エピトープCKKTTMKIIPFNRLTIG(配列番号18)、またはその生物学的に活性のある誘導体をコードする核酸配列を含むベクターを提供する。別の態様において、このベクターを含む細胞を提供する。
【0017】
本発明のさらに別の態様において、フィブリンγ377−395エピトープ、またはその生物学的に活性のある誘導体に免疫特異的に結合する抗体を作製する方法を提供し、この方法は、請求項23に記載の細胞の第1の投与量を対象に投与することを含み、その際、この第1の投与量は、前記対象において免疫反応を起こすのに十分である。様々な態様において、この方法は、さらに、前記細胞の第2の投与量を前記対象に投与するステップを含むことができ、その際、前記第2の投与量は、前記対象における免疫反応を起こすのに十分である。様々な態様において、産生される抗体は、前記対象においてフィブリン/Mac−1結合を阻害する。
【0018】
別の態様において、Mac−1受容体に結合し、Mac-1受容体活性を調節するリガンドをスクリーニングする方法を提供し、この方法は、(a)請求項1に記載の抗体を提供すること;(b)フィブリンγ377−395エピトープCKKTTMKIIPFNRLTIG(配列番号18)、またはその生物学的に活性のある誘導体を接触させ、抗体/ポリペプチド複合体を形成させること;(c)この抗体/ポリペプチド複合体を、候補化合物を含む組成物と接触させること;および(d)この候補化合物がこのモノクローナル抗体に結合するか否かを決定することを含み、それによって、この候補化合物の結合が、前記候補化合物はMac−1受容体活性を調節するリガンドであることを示す。
【0019】
本教示のこれらのおよび他の特徴、態様および利点は、以下の記載、実施例および添付の特許請求の範囲を参照してより良く理解されるようになるであろう。
【0020】
当該技術者は、以下に記載の図が例証目的のみのためであることを理解するであろう。これらの図は、決して、本教示の範囲を限定するようには意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】595nmにおける吸光度測定によって評価し、Mac−1に対する市販のブロッキング抗体(M1/70)と比較した時のモノクローナル抗体結合を示すグラフである。
【図2】フィブリノゲンへのモノクローナル抗体結合を測定するELISAの結果を示すグラフである。
【図3】改変したフィブリンγ377−395エピトープに対するモノクローナル抗体5B8が食作用を阻害することにおいて有効性が増加したことを示すグラフである。
【図4A】抗体(A)4E11および(B)5B8に関連する臨床症状の最初の出現後のPLP EAEにおける抗フィブリン抗体の投与のインビボ実験を示すグラフである。モノクローナル抗体5B8は、再発時に抑制を示す。
【図4B】抗体(A)4E11および(B)5B8に関連する臨床症状の最初の出現後のPLP EAEにおける抗フィブリン抗体の投与のインビボ実験を示すグラフである。モノクローナル抗体5B8は、再発時に抑制を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
略語および定義
特に定義しない限り、本発明に関連して使用する科学用語および専門用語は、一般に当該技術者が理解する意味を有するものとする。さらに、特に文脈が必要としない限り、単数用語は複数を含み、複数用語は単数を含むものとする。通常、本明細書に記載の細胞培養および組織培養、分子生物学、タンパク質化学およびオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド化学、ならびにオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法およびそれらの技術は、当該技術分野で周知のものであり、一般に用いられているものである。標準的な技術を、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養および細胞形質転換に用いる。酵素反応および精製技術を、製造者の仕様書に従って市販のキットを用いて行うか、または当該技術分野で一般に成し遂げられるように、もしくは本明細書に記載の通りに行う。
【0023】
本発明の実行は、特に示さない限り、当該技術分野の範囲にある(組換え技術を含む)分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を使用する。かかる技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(MJ.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993−1998)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and CC.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(CA.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:apractical approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988−1989);Monoclonal antibodies:apractical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVita et al.,eds.,J.B.Lippincott Company,1993)などの文献で十分に説明されている。
【0024】
本明細書に記載の抗体産生、ハイブリドーマ産生、分析化学、有機合成化学、医薬品化学、および薬化学に関連して利用される命名法、ならびにそれらの実験手順および技術は、当該技術分野で周知のものであり、一般に用いられているものである。標準的な技術が、化学合成、化学分析、医薬品、製剤、および送達、ならびに患者の治療に用いられている。
【0025】
本開示に従って利用するとおり、特に示さない限り、以下の用語は以下の意味を有するものと理解されるべきである。
【0026】
抗体:本明細書で使用する「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性のある部分、すなわち、抗原に免疫学的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、dAb(ドメイン抗体)、一本鎖抗体、Fab断片、Fab’断片およびF(ab’)2断片、一本鎖Fv断片(scFv)、ならびにFab発現ライブラリーが含まれるが、これらに限定されない。基本的な抗体構造単位は4量体を含むことが知られている。それぞれの4量体は2つの同一のポリペプチド鎖の対で構成され、それぞれの対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。それぞれの鎖のアミノ末端部には、主に抗原認識に関わる約100〜110個以上のアミノ酸の可変領域が含まれる。それぞれの鎖のカルボキシ末端部は、主にエフェクター機能に関わる定常領域を規定する。一般に、ヒトから得られる抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDのいずれかに関係し、これらは、分子中に存在する重鎖の性質によって互いに異なる。いくつかのクラスは、その上、IgGおよびIgGなどのサブクラスを有する。さらに、ヒトにおいて、軽鎖はκ鎖またはλ鎖であり得る。
【0027】
モノクローナル抗体:本明細書で使用する「モノクローナル抗体」(Mab)または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、特有の軽鎖遺伝子産物および特有の重鎖遺伝子産物からなる1種のみを含む抗体の集団を指す。特に、この集団の全分子中のモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は同一である。MAbは、抗原に対する特有の結合親和性によって特徴づけられる抗原の特定のエピトープに免疫学的に結合することができる抗原結合部位を含む。
【0028】
抗原結合部位/結合部分:「抗原結合部位」または「結合部分」という用語は、抗原結合に関与する抗体分子の部分を指す。抗原結合部位は、重鎖(「H」)および軽鎖(「L」)のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。「超可変領域」と呼ばれる重鎖および軽鎖のV領域内の3つの高度に相違するストレッチは、「フレームワーク領域」または「FR」として知られるより保存された隣接ストレッチの間に挿入されている。したがって、「FR」という用語は、自然界には、免疫グロブリンの超可変領域の間、およびそれらに隣接して見られるアミノ酸配列を指す。抗体分子において、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域は、3次元空間に互いに対して配置され、抗原結合表面を形成する。この抗原結合表面は結合抗原の3次元表面と相補的であり、重鎖および軽鎖のそれぞれの3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。各ドメインへのアミノ酸の割当は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(米国国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州(1987および1991))、またはChothia&Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987),Chothia et al.Nature 342:878−883(1989)の定義に従う。CDRの同定のための指針は、http://www.bioinf.org.uk/abs/#cdridで利用できる。
【0029】
エピトープ:本明細書で使用する「エピトープ」という用語には、抗体またはT細胞受容体に特異的に結合することができる抗原の任意のタンパク質決定基が含まれる。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸または糖の側鎖などの分子の化学的に活性のある表面集団からなり、通常、特定の3次元構造特性および特定の電荷特性を有する。例えば、抗体を、ポリペプチドのN末端またはC末端のペプチドに対して作ることができる。解離定数が1μM以下、好ましくは、100nM以下、最も好ましくは、10nM以下である時に、抗体は抗原に特異的に結合すると言われている。γ377−395エピトープCKKTTM KIIPFNRLTIG(配列番号18)の生物活性のある誘導体は、当該技術者が規定するとおりに特定することができる。例えば、Ugarova et al.Identification of a novel recognition sequence for integrin αβ within the γ−chain of fibrinogen.J Biol Chem.1998;273:22519−22527;Ugarova et al.Recognition of fibrinogen by leukocyte integrins.Ann N Y Acad Sci.2001;936:368−385を参照されたい。
【0030】
免疫学的結合:本明細書で使用する「免疫学的結合」および「免疫学的結合特性」という用語は、免疫グロブリン分子とこの免疫グロブリン分子に特異的な抗原との間で生じる種類の非共有結合相互作用を指す。免疫学的結合相互作用の強さまたは親和性は、相互作用の解離定数(K)を単位として表すことができ、その際、より低いKはより高い親和性を指す。選択したポリペプチドの免疫学的結合特性は、当該技術分野で周知の方法を用いて定量化することができる。1つのかかる方法は、抗原結合部位/抗原複合体形成速度および解離速度を測定することを伴い、その際、それらの速度は、両方向の速度に等しく影響を及ぼす複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、幾何学的パラメータによって決まる。したがって、「オン速度定数」(Kon)および「オフ速度定数」(Koff)の両方は、濃度ならびに結合および解離の実際の速度の計算によって決定することができる(Nature 361:186−87(1993)参照)。Koff/Konの比は、親和性に関係しない全てのパラメータの消去を可能にし、解離定数Kに等しい(一般に、Davies et al.(1990)Annual Rev Biochem 59:439−473参照)。本発明の抗体は、放射性リガンド結合アッセイまたは当該技術者に知られる同様のアッセイなどのアッセイによって測定した時、平衡結合定数(K)が1μM以下、好ましくは、100nM以下、より好ましくは、10nM以下、最も好ましくは、100pM〜約1pM以下である時に、フィブリノゲンγ377−395エピトープに特異的に結合すると言われている。
【0031】
フィブリンおよびフィブリノゲン:本明細書で使用する「フィブリン」および「フィブリノゲン」という用語は互換的に用いられ、Mac−1結合能を保有するポリペプチド、断片、または類似体を指す。フィブリノゲンはフィブリンの可溶性前駆体であり、共にγCドメインおよび本発明のエピトープを保有する。
【0032】
単離ポリヌクレオチド:本明細書で使用する「単離ポリヌクレオチド」という用語は、その起源により、「単離ポリヌクレオチド」が、(1)「単離ポリヌクレオチド」が自然界で見られるポリヌクレオチドの全てまたは一部に結合していないか、(2)単離ポリヌクレオチドが自然界で連結されていないポリヌクレオチドに作動可能に連結されるか、または(3)より大きな配列の一部として自然界で生じないゲノム、cDNA、もしくは合成起源またはそれらのある組み合わせのポリヌクレオチドを意味するものとする。
【0033】
単離タンパク質:本明細書で言及する「単離タンパク質」という用語は、その起源、または誘導体の供給源により、「単離タンパク質」が、(1)自然界に見られるタンパク質に結合していないか、(2)同じ供給源の他のタンパク質を含まないか、(3)異なる種の細胞によって発現されるか、または(4)自然界に生じないcDNA、組換えRNA、もしくは合成起源またはそれらのある組み合わせのタンパク質を意味する。
【0034】
ポリペプチド:「ポリペプチド」という用語を、天然タンパク質、タンパク質断片、ポリペプチド配列の断片または類似体を表すのに本明細書で使用する。天然タンパク質断片および類似体は、ポリペチド属の種と考えられる。本発明によるポリペプチドの例として、配列番号1として表される軽鎖免疫グロブリン分子および配列番号5として表される重鎖免疫グロブリン分子、配列番号2、3、4、6、7および8として表されるCDR、重鎖免疫グロブリン分子とκ軽鎖免疫グロブリン分子などの軽鎖免疫グロブリン分子との組み合わせによって形成される抗体分子、逆もまた同じ、ならびにそれらの断片および類似体が挙げられる。
【0035】
自然界に存在する:本明細書で使用し、対象に適用される「自然界に存在する」という用語は、対象を自然界に見出すことができるという事実を指す。例えば、(ウイルスを含む)生物に存在し、自然界の供給源から単離することができ、実験室で人間によりまたは別の方法で意図的に改変されていないポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列が自然界に存在する。
【0036】
作動可能に連結される:本明細書で使用する「作動可能に連結される」という用語は、そのように記載される成分の位置が、それらの意図された方法で成分を機能させることができる関係にあることを指す。コード配列に「作動可能に連結される」制御配列を、コード配列の発現がこの制御配列に適合する条件下で達成されるように結合させる。
【0037】
制御配列:本明細書で使用する「制御配列」という用語は、それらが結合されるコード配列の発現およびプロセシングをもたらすのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。かかる制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。原核生物では、かかる制御配列には、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列が含まれる。真核生物では、一般に、かかる制御配列には、プロモーターおよび転写終結配列が含まれる。「制御配列」という用語は、最低でも、その存在が発現およびプロセシングに重要である全成分を含むことを意図し、かつその存在が、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列に都合がよい追加の成分も含むことができる。
【0038】
ポリヌクレオチド:本明細書で使用する「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれか一方の少なくとも10塩基長のヌクレオチドの高分子化合物、いずれかの種類のヌクレオチドの修飾型を意味する。この用語には、DNAの1本鎖型および2本鎖型が含まれる。
【0039】
オリゴヌクレオチド:本明細書で使用するオリゴヌクレオチドという用語には、自然界に存在するオリゴヌクレオチド結合および自然界に存在しないオリゴヌクレオチド結合によって共に連結される自然界に存在するヌクレオチド、および修飾されたヌクレオチドが含まれる。オリゴヌクレオチドは、一般に、200塩基以下の長さを含むポリヌクレオチドサブセットである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは10〜60塩基長であり、最も好ましくは、12、13、14、15、16、17、18、19、または20〜40塩基長である。オリゴヌクレオチドは、例えば、遺伝子変異体の構築における使用については2本鎖であり得るが、オリゴヌクレオチドは、通常、例えば、プローブについては1本鎖である。本発明のオリゴヌクレオチドは、センスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれか一方である。
【0040】
自然界に存在するヌクレオチド:本明細書で使用する「自然界に存在するヌクレオチド」という用語には、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドが含まれる。本明細書で言及する「修飾ヌクレオチド」という用語には、修飾または置換された糖基などを有するヌクレオチドが含まれる。本明細書で言及する「オリゴヌクレオチド結合」という用語には、ホスホロチオエート、ホスホロセレノエート(phosphoroselerloate)、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、およびホスホロアニラデート(phoshoraniladate)などが含まれる。例えば、LaPlanche et al.Nucl.Acids Res.14:9081(1986);Stec et al.J.Am.Chem.Soc.106:6077(1984),Stein et al.Nucl.Acids Res.16:3209(1988),Zon et al.Anti Cancer Drug Design 6:539(1991);Zon et al.Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,pp.87−108(F.Eckstein,Ed.,Oxford University Press,Oxford England(1991));Stecらの米国特許第5,151,510号;Uhlmann and Peyman Chemical Reviews 90:543(1990)を参照されたい。オリゴヌクレオチドは、必要であれば、検出のための標識を含むことができる。
【0041】
選択的にハイブリダイズする:本明細書で使用する「選択的にハイブリダイズする」という用語は、検出可能な程度に、および特異的に結合することを意味する。本発明によるポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびそれらの断片は、非特異的核酸へのかなりの量の検出可能な結合を最小限にするハイブリダイゼーション条件および洗浄条件下で核酸鎖に選択的にハイブリダイズする。高ストリンジェンシー条件を用いて、当該技術分野で知られ、本明細書で論じられるとおりの選択的ハイブリダイゼーション条件を達成することができる。一般に、本発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、および断片と所望の核酸配列の間の核酸配列相同性は少なくとも80%であり、より典型的には、相同性が増加し、好ましくは、少なくとも85%、90%、95%、99%、および100%である。2つのアミノ酸配列は、それらの配列間で部分的または完全な同一性がある場合、相同である。例えば、85%の相同性は、2つの配列を最大整合で整列させた時、アミノ酸の85%が同一であることを意味する。(整合させる2つの配列のいずれか一方における)ギャップは最大整合の際に許され、5以下のギャップ長が好ましく、2以下がより好ましい。あるいは、好ましくは、変異データマトリックスを有し、ギャップペナルティが6以上であるALIGNプログラムを用いて、2つのタンパク質配列(または少なくとも30個のアミノ酸長の配列に由来するポリペプチド配列)が(標準偏差単位において)5を超えるアラインメントスコアを有する場合、この用語が本明細書で使用されるとおり、それらのタンパク質配列は相同である。Dayhoff,M.O.,in Atlas of Protein Sequence and Structure,pp.101−110(Volume 5,National Biomedical Research Foundation(1972))およびこの巻の捕捉2,pp.1−10を参照されたい。ALIGNプログラムを用いて最適に整列させた時、2つの配列またはそれらの一部は、より好ましくは、それらのアミノ酸が50%以上同一である場合、相同である。本明細書で使用する「一致する」という用語は、ポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部と相同である(すなわち、同一であるが、厳密に、進化的に関連しない)ことを意味するか、またはポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列と同一であることを意味する。逆に、本明細書で使用する「相補的」という用語は、相補配列が参照ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部と相同であることを意味する。例として、ヌクレオチド配列「TATAC」は参照配列「TATAC」と一致し、参照配列「GTATA」に相補的である。
【0042】
以下の用語:「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の割合(%)」、および「実質的同一性」を用いて、2つ以上のポリヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間の配列関係を記載する。
【0043】
参照配列:「参照配列」は、配列比較の基準として用いられる規定配列である。参照配列は、例えば、配列表にのっている全長のcDNA配列または遺伝子配列の断片としてより大きな配列の一部であってもよく、または完全なcDNA配列または遺伝子配列を含んでもよい。一般に、参照配列は、少なくとも18個のヌクレオチドすなわち6個のアミノ酸長であり、高頻度に、少なくとも24個のヌクレオチドすなわち8個のアミノ酸長であり、少なくとも48個のヌクレオチドすなわち16個のアミノ酸長である場合が多い。2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、それぞれ、(1)2つの分子間で似ている配列(すなわち、完全なポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の一部)を含み得、(2)2つのポリヌクレオチド間またはアミノ酸配列間で相違する配列をさらに含み得るので、2つ(以上)の分子間の配列比較は、典型的には、「比較ウィンドウ」上で2つの分子の配列を比較し、配列類似性の局所的な領域を同定し、比較することによって行われる。
【0044】
比較ウィンドウ:本明細書で使用する「比較ウィンドウ」は、少なくとも18個の隣接ヌクレオチド位置すなわち6個のアミノ酸の概念的なセグメントを表し、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、少なくとも18個の隣接ヌクレオチドすなわち6個のアミノ酸配列の参照配列と比較することができ、この比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列の一部は、2つの配列を最適にアラインメントし、(付加または欠失を含まない)参照配列と比較した時に、20%以下の付加、欠失、および置換など(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。比較ウィンドウを整列させるのに最適な配列のアラインメントは、Smith and Waterman Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズム(local homology algorithm)によって、Needleman and Wunsch J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム(homology alignment algorithm)によって、Pearson and Lipman Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)85:2444(1988)の類似法の検索によって、これらのアルゴリズム(Wisconsin GeneticsソフトウェアパッケージRelease 7.0(Genetics Computer Group,575 Science Dr.,マジソン、ウィスコンシン州)、Geneworks、またはMacVectorソフトウェアパッケージのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピューターによる実行によって、または、点検によって行うことができ、様々な方法によって作成された最高の(すなわち、比較ウィンドウ上で最高の割合(%)の相同性をもたらす)アラインメントを選択する。
【0045】
配列同一性:「配列同一性」という用語は、比較ウィンドウ上で2つのポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が(すなわち、ヌクレオチド対ヌクレオチドまたは残基対残基に基づいて)同一であることを意味する。「配列同一性の割合(%)」という用語は、比較ウィンドウ上で2つの最適に整列させた配列を比較し、両方の配列において同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、UもしくはI)または残基が現れる位置の数を決定し、整合した位置の数を得、整合した位置の数を比較ウィンドウ(すなわち、ウィンドウサイズ)内の位置の合計数で割り算し、その結果に100を掛けることによって計算され、配列同一性の割合(%)を得る。本明細書で使用する「実質的同一性」という用語は、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸が、少なくとも18個のヌクレオチド(6個のアミノ酸)の位置の比較ウィンドウ上、高頻度に、少なくとも24〜48個のヌクレオチド(8〜16個のアミノ酸)の位置のウィンドウ上で参照配列と比較すると、少なくとも85%の配列同一性、好ましくは、少なくとも90〜95%の配列同一性、より通常では、少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の特徴を意味し、配列同一性の割合(%)は、欠失または付加を含み得る配列と参照配列を比較することによって計算され、比較ウィンドウ上の参照配列の合計で20%以下になる。この参照配列は、より大きな配列の一部であってもよい。
【0046】
アミノ酸;本明細書で使用する20個の従来のアミノ酸およびそれらの略語は、従来の使用に従う。Immunology−A Synthesis(2nd Edition,E.S.Golub and D.R.Gren,Eds.,Sinauer Associates,Sunderland Mass.(1991))を参照されたい。この20個の従来のアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)、α−,α−二置換アミノ酸などの不自然なアミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、および他の特殊なアミノ酸も、本発明のポリペプチドの適切な成分であり得る。特殊なアミノ酸の例として、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、α−N−メチルアルギニン、ならびに他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)が挙げられる。本明細書で使用するポリペプチド記号において、標準的な使用および慣習にしたがって、左手方向はアミノ末端方向であり、右手方向はカルボキシ末端方向である。同様に、特に特定しない限り、1本鎖ポリヌクレオチド配列の左手末端は5’末端であり、2本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向は5’方向と呼ばれる。新生RNA転写物の5’から3’方向の付加は転写方向と呼ばれ、このRNAと同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域およびこのRNA転写物の5’末端に対して5’側にある配列領域は「上流配列」と呼ばれ、このRNAと同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域およびこのRNA転写物の3’末端に対して3’側にある配列領域は「下流配列」と呼ばれる。
【0047】
実質的同一性:ポリペプチドに適用する「実質的同一性」という用語は、デフォルトギャップウェイト(gap weight)を用いるGAPまたはBESTFITプログラムなどによって最適に整列させた時に、2つのペプチド配列が、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは、少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも95%の配列同一性、最も好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基の位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリンおよびスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換のグループは、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0048】
本明細書で論じたように、本発明に包含される抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列の変化は、アミノ酸配列の変化が少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも80%、90%、95%、最も好ましくは、99%を維持するという条件で企図される。75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、および99%などの特定の中間の割合の配列同一性が含まれる。特に、保存的アミノ酸置換が企図される。保存的置換は、それらの側鎖に関連するアミノ酸のファミリーの中で起こる置換である。一般に、遺伝的にコードされるアミノ酸は以下のファミリーに分けられる:(1)酸性アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸であり、(2)塩基性アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジンであり、(3)非極性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、(4)非電荷極性アミノ酸は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシンである。親水性アミノ酸には、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、セリン、およびスレオニンが含まれる。疎水性アミノ酸には、アラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシンおよびバリンが含まれています。他のファミリーのアミノ酸には、(i)脂肪族ヒドロキシファミリーであるセリンおよびスレオニン;(ii)アミド含有ファミリーであるアスパラギンおよびグルタミン;(iii)脂肪族ファミリーであるアラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;(iv)芳香族ファミリーであるフェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが含まれる。例えば、特に、置換がフレームワーク部位内のアミノ酸に関与しない場合、ロイシンのイソロイシンまたはバリンとの単離置換(isolated replacement)、アスパラギン酸のグルタミン酸との単離置換、スレオニンのセリンとの単離置換、またはアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸との類似置換が、得られた分子の結合または特性に大きな影響を及ぼさないであろうと予想することは合理的である。アミノ酸変化が機能的ペプチドをもたらすか否かは、ポリペプチド誘導体の比活性を評価することによって容易に決定することができる。アッセイについて、本明細書に詳細に記載する。抗体の断片もしくは類似体または免疫グロブリン分子の断片もしくは類似体は、当該技術者が容易に調製することができる。断片または類似体の好ましいアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界の近くに生じる。構造ドメインおよび機能ドメインは、ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列のデータと、公共の配列データベースもしくは所有権のある配列データベースとを比較することによって同定することができる。好ましくは、コンピューターによる比較法を用いて、既知の構造および/または機能を有する他のタンパク質に存在する配列モチーフまたは予測タンパク質構造ドメインを同定する。既知の3次元構造に折り畳まれるタンパク質配列を同定する方法が知られている(Bowie et al.Science 253:164(1991))。したがって、前述の例は、当該技術者が、本発明による構造ドメインおよび機能ドメインを定義するのに用いることができる配列モチーフおよび高次構造を認識することができることを示す。
【0049】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させる、(2)酸化に対する感受性を低下させる、(3)タンパク質複合体を形成するために結合親和性を変える、(4)結合親和性を変える、(4)かかる類似体の他の物理化学的特性または機能的特性を与えるか、変更する置換である。類似体には、自然界に存在するペプチド配列以外の配列の様々な変異タンパク質が含まれ得る。例えば、1つのまたは複数のアミノ酸置換(好ましくは、保存的アミノ酸置換)が、自然界に存在する配列の中で(好ましくは、ドメイン(複数可)を形成する分子間接触の外側のポリペプチドの部分において)行われ得る。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的特徴を実質的に変化させるべきではない(例えば、置換アミノ酸は、親配列に存在するヘリックスを破損させるか、または親配列を特徴づける他の種類の2次構造を破壊する傾向にあるべきではない)。当該技術分野で認められるポリペプチドの2次構造および3次構造の例については、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.Branden and J.Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991));およびThornton et at.Nature 354:105(1991)に記載されている。
【0050】
ポリペプチド断片:本明細書で使用する「ポリペプチド断片」という用語は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端の欠失を有するが、残りのアミノ酸配列は、例えば、全長cDNA配列から推定される自然界に存在する配列中の対応する位置と同一であるポリペプチドを指す。典型的には、断片は、少なくとも5、6、8または10個のアミノ酸長、好ましくは、少なくとも14個のアミノ酸長、より好ましくは少なくとも20個のアミノ酸長、通常、少なくとも50個のアミノ酸長、さらに好ましくは、少なくとも70個のアミノ酸長である。本明細書で使用する「類似体」という用語は、推定アミノ酸配列の一部と実質的同一性を有する少なくとも5個のアミノ酸のセグメントで構成され、かつ適切な結合条件下で、フィブリンγ377−395エピトープ、CKKTTMKIIPFNRLTIG(配列番号18)、またはその生物学的に活性のある誘導体への特異的結合を有するポリペプチドを指す。典型的には、ポリペプチド類似体は、自然界に存在する配列に関して保存的アミノ酸置換(または付加もしくは欠失)を含む。典型的には、類似体は、少なくとも5個のアミノ酸長、好ましくは少なくとも10個以上のアミノ酸長であり、多くの場合、自然界に存在する全長ポリペプチドと同じくらい長いことがあり得る。
【0051】
ペプチド類似体は、一般に、鋳型ペプチドの特性に類似している特性を有する非ペプチド薬として医薬産業において使用されている。これらの種類の非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣薬(peptide mimetic)」または「ペプチド模倣薬(peptidomimetic)」と呼ばれている(Fauchere,J.Adv.Drug Res.15:29(1986),Veber and Freidinger TINS p.392(1985);およびEvans et al.J.Med.Chem.30:1229(1987))。このような化合物は、コンピューター処理された分子モデリングを活用して開発される場合が多い。治療に有用なペプチドと構造的に似ているペプチド模倣薬を用いて、同等の治療効果または予防効果をもたらすことができる。一般に、ペプチド模倣薬は、ヒト抗体などのパラダイムポリペプチド(すなわち、生化学的特性または薬理活性を有するポリペプチド)に構造的に似ているが、当該技術分野で周知の方法によって、−CHNH−、−CHS−、−CH−CH−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH−、CH(OH)CH−、および−CHSO−からなる群から選択される結合によって任意に置換される1つまたは複数のペプチド結合を有する。コンセンサス配列の1つまたは複数のアミノ酸と、同じ種類のD−アミノ酸との系統的置換(例えば、L−リジンのかわりにD−リジン)を用いて、より安定なペプチドを作製することができる。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一であるコンセンサス配列の変異を含む限定されたペプチドを、当該技術分野で周知の方法によって(Rizo and Gierasch Ann.Rev.Biochem.61:387(1992));例えば、ペプチドを環化する分子内ジスルフィド架橋を形成することができる内部システイン残基を付加することによって)作製することができる。
【0052】
薬剤:本明細書で使用する「薬剤」という用語は、化合物、化合物の混合物、生体高分子、または生物材料で作られた抽出物を示す。
【0053】
標識:本明細書で使用する「標識」または「標識された」という用語は、検出可能なマーカーの組込みを表し、例えば、標識されたアビジン(例えば、光学法または熱量測定法によって検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出することができるビオチニル部分のポリペプチドへの放射標識アミノ酸の組込み、またはそのポリペプチドへの付着を指す。特定の状況において、標識またはマーカーも治療的であり得る。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法が当該技術分野で周知であり、使用され得る。ポリペプチドの標識の例として、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:放射性同位体または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、11lIn、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、リン酸ランタニド)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、p−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光、ビオチニル基、2次レポーター(例えば、ロイシンジッパーペア配列、2次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)によって認識される規定のポリペプチドエピトープ。いくつかの実施形態において、標識を、潜在的な立体障害を低下させる様々な長さのスペーサーアームによって結合する。
【0054】
医薬品または薬物:本明細書で使用する「医薬品」または「薬物」という用語は、患者に適切に投与した時に、所望の治療効果を引き起こすことができる化合物または組成物を指す。
【0055】
The McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(Parker,S.,Ed.,McGraw−Hill,San Francisco(1985))によって例証されるとおり、他の化学用語を、当該技術分野における従来の使用に従って本明細書で使用する。
【0056】
実質的に純粋:本明細書で使用する「実質的に純粋」という用語は、対象種が存在する優勢種である(すなわち、モル基準で、対象の種が、組成物中の任意の他の個々の種よりも豊富である)ことを意味し、好ましくは、実質的精製画分は、対象種が、存在する全高分子種の(モル基準で)少なくとも約50%を構成する組成物である。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全高分子種の約80%を超えて、より好ましくは、約85%、90%、95%、および99%を超えて構成する。最も好ましくは、対象種が基本的に均一になるまで精製され(従来の検出法により、混入物種を組成物中に検出することができず)、その中の組成物は、基本的に単一高分子種からなる。
【0057】
患者:本明細書で使用する患者という用語には、ヒトおよび動物の対象が含まれる。
【0058】
モノクローナル抗体
本発明は、フィブリノゲン−Mac−1結合を阻害するモノクローナル抗体を提供する。特に、本発明は、フィブリンおよびフィブリノゲンのγCドメインのγ377−395エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。本発明は、フィブリンおよびフィブリノゲンのγCドメインのγ190−202エピトープに結合する抗体も提供する。かかる抗体は、血液凝固におけるその有益な効果に影響を与えることなく、神経系におけるフィブリンの損傷作用を阻止する。これらのモノクローナル抗体は、MS斑および特定の癌の形成を阻止することができる。本発明の例示的な抗体には、例えば、(γ377−395エピトープを標的にする)5B8抗体が含まれる。さらに、本発明の抗体には、例えば、(γ190−202エピトープを標的にする)1E3抗体が含まれる。5B8抗体に関連する様々なポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列、およびかかる配列の使用を本明細書に提供する。これらの配列には、5B8軽鎖アミノ酸配列(配列番号1)、3つの軽鎖CDRアミノ酸配列(CDR−L1、配列番号2;CDR−L2、配列番号3;およびCDR−L3、配列番号4)、重鎖アミノ酸配列(配列番号5)、3つの重鎖CDRアミノ酸配列(CDR−H1、配列番号6;CDR−H2、配列番号7;およびCDR−H3、配列番号8)、軽鎖ヌクレオチド配列(配列番号9)、重鎖ヌクレオチド配列(配列番号10)、3つの軽鎖CDRのヌクレオチド配列(CDR−L1、配列番号11;CDR−L2、配列番号12;およびCDR−L3、配列番号13)、ならびに3つの重鎖CDRのヌクレオチド配列(CDR−H1、配列番号14;CDR−H2、配列番号15;およびCDR−H3、配列番号16)が含まれる。
【0059】
本発明のモノクローナル抗体は、インビトロおよびインビボで食作用を阻害し、インビトロおよびインビボでサイトカイン放出およびマクロファージ活性化を阻止し、インビトロおよびインビボでミクログリア活性化を阻止し、インビトロおよびインビボで炎症性脱髄を阻止し、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、多発性硬化症の動物モデルにおける臨床症状を阻止する能力を有する。例えば、PCT公開WO2007/038407を参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組込まれる。当該技術者は、本発明のモノクローナル抗体が癌にも影響を与えることができることも認識するであろう。例えば、PCT公開WO2007/024817を参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組込まれる。さらに、かかるモノクローナル抗体は、関節リウマチ、脊髄損傷、アルツハイマー病、および脳卒中を含む損傷組織からのフィブリノゲン漏出に関わる疾患の治療に使用できる。例えば、Flick et al.,J.Clin.Investigation,2007,117,11:3224−3235;Akassoglou et al.,2002,Neuron,33:861−875;Akassoglou et al.,2004,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,101:6698−6703;Adams et al.,2007,J.Exp.Med.,35:2428−34を参照されたい。本発明のモノクローナル抗体は、血液凝固に影響を及ぼす化合物とは異なり、血液凝固においてフィブリノゲンの有益な効果を維持するのと同時に、対象の脳および他の場所でフィブリノゲンの炎症促進性作用を低下させることに留意すべきである。
【0060】
本明細書に記載の抗体と同じエピトープに結合する抗体も本発明に含まれる。当該技術者は、過度な実験を行うことなく、モノクローナル抗体は、フィブリンγCドメインのγ377−395エピトープまたはγ190−202エピトープへ本発明のモノクローナル抗体が結合するのを阻止するか否かを確認することによって、モノクローナル抗体が本発明のモノクローナル抗体と同じ特異性を有するか否かを決定することが可能であると認識するであろう。本発明のモノクローナル抗体による結合の減少によって示されるように、試験されているモノクローナル抗体が本発明のモノクローナル抗体と競合する場合、これら2つのモノクローナル抗体は同じエピトープに結合するか、または密接に関連するエピトープに結合する可能性がある。本発明のモノクローナル抗体のスクリーニングを、全長フィブリノゲンポリペプチドにおけるMac−1受容体によるミクログリア接着を阻止する能力を測定することによって実行することができる。かかるスクリーニングの例を本明細書に提供する。
【0061】
当該技術分野で周知の様々な手順を、フィブリノゲン−Mac−1結合に対する、またはそれらの誘導体、断片、類似体、相同体もしくはオルソログに対して作られるポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の産生のために使用することができる(例えば、上記の抗体:実験マニュアル参照)。
【0062】
抗体を、主に、免疫血清のIgG画分をもたらすプロテインAまたはプロテインGを用いる親和性クロマトグラフィーなどの周知の技術により精製する。その後、または別の方法として、探究されている免疫グロブリンの標的である特異的抗原、またはそのエピトープをカラムに固定化し、免疫親和性クロマトグラフィーによって免疫特異的抗体を精製することができる。
【0063】
本発明の抗体(例えば、5B8および1E3)はモノクローナル抗体である。フィブリノゲン/Mac−1結合を阻害するモノクローナル抗体を、例えば、ペプチド抗原で免疫した動物から得たクローンによって作製する。細胞株を、この免疫動物のB細胞と骨髄腫細胞を融合させることによって産生する。抗体を、インビトロで培地からまたはマウスの腹水産生からのいずれかにより精製する。抗体産生法も、以下の実施例の欄に提供する。
【0064】
モノクローナル抗体を、例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)に記載される方法などのハイブリドーマ法を用いて調製する。ハイブリドーマ法において、典型的には、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物を免疫剤で免疫し、この免疫剤に特異的に結合する抗体を産生させるか、または産生させることができるリンパ球を誘発する。あるいは、これらのリンパ球をインビトロで免疫することができる。
【0065】
この免疫剤には、典型的には、タンパク質抗原、その断片、またはその融合タンパク質が含まれる。一般に、ヒト由来の細胞が望まれる場合は、末梢血リンパ球が用いられるか、またはヒトではない哺乳類源が望まれる場合は、脾臓細胞またはリンパ節細胞が用いられる。その後、これらのリンパ球を、ポリエチレングリコールなどの適切な融剤を用いて、不死化細胞株と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−103)。不死化細胞株は、通常、形質転換した哺乳類細胞、特に、げっ歯類、牛およびヒト由来のミエローマ細胞である。通常、ラットまたはマウスのミエローマ細胞が用いられる。これらのハイブリドーマ細胞を、好ましくは、融合していない不死化細胞の増殖または生存を阻害する1種類または複数の物質を含む適切な培地で培養することができる。例えば、親細胞が、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマの培地には、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンが含まれ(「HAT培地」)、これらの物質はHGPRT欠損細胞の増殖を阻止する。
【0066】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択される抗体産生細胞によって抗体の安定な高レベル発現を支持し、HAT培地などの培地に感受性のある細胞株である。より好ましい不死化細胞株は、例えば、ソーク研究所細胞分配センター(Salk Institute Cell Distribution Center)、サンディエゴ、カリフォルニア州およびアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州から入手することができるマウスの骨髄腫株である。モノクローナル抗体産生のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株についても記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987)pp.51−63)参照)。
【0067】
その後、ハイブリドーマ細胞を培養する培地を、抗原に対して作られたモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特性を、免疫沈降法によって、または放射免疫測定法(RIA)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって決定する。かかる技術およびアッセイは当該技術分野で周知である。このモノクローナル抗体の結合親和性を、例えば、Munson and Pollard,Anal.Biochem.,107:220(1980);Patrono,C.and Peskar,B.A.(eds)Radioimmunoassay in Basic and Clinical Pharmacology.Heidelberg,Springer−Verlag、1987;Dwenger,A.Radioimmunoassay:An Overview.J Clin Biochem 22:883、1984のスキャッチャード分析によって決定することができる。さらに、モノクローナル抗体の治療への応用では、標的抗原に対する高度の特異性および高い結合親和性を有する抗体を同定することが重要である。
【0068】
所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、これらのクローンを、限外希釈法によってサブクローニングし、標準法によって増殖させることができる(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−103参照)。この目的のための適切な培地には、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地およびRPMI−1640培地が含まれる。もう一つの方法として、これらのハイブリドーマ細胞を、哺乳類の腹水としてインビボで増殖させることができる。
【0069】
サブクローンが分泌するモノクローナル抗体を、例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製法により、培地もしくは腹水の液体から単離するか、または精製することができる。
【0070】
モノクローナル抗体を、米国特許第4,816,567号に記載の方法などの組換えDNA法によって作製することもできる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAを、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離し、配列決定することができる。例えば、配列番号9および10は、本発明の5B8モノクローナル抗体のヌクレオチド配列を提供する。本発明のハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの好ましい供給源として役立つ。単離した時点で、このDNAを発現ベクターに入れ、その後、これを、別の方法で免疫グロブリンタンパク質を産生しないサルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトし、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体を合成することができる。このDNAを、例えば、マウスの相同配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖の定常ドメインのコード配列を置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrison,Nature 368,812−13(1994)参照)、または免疫グロブリンコード配列もしくは非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部と共有結合させることによって改変することもできる。かかる非免疫グロブリンポリペプチドを、本発明の抗体の定常ドメインと置換するか、または本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインと置換して、キメラ二価抗体を作ることができる。
【0071】
完全ヒト抗体は、CDRを含む軽鎖および重鎖の両方の全配列がヒト遺伝子に由来する抗体分子である。かかる抗体を、本明細書で「ヒト抗体」、または「完全ヒト抗体」と呼ぶ。モノクローナル抗体を、トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor,et al.,1983 Immunol Today 4:72参照);EBVハイブリドーマ技術を用いることによって調製し、モノクローナル抗体を産生することができる(Cole,et al.,1985 In:Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96参照)。モノクローナル抗体を利用してもよく、ヒトハイブリドーマ(Cote,et al.,1983.Proc Natl Acad Sci USA 80:2026−2030参照)を用いることによって、またはインビトロでエプスタイン・バーウイルスによりヒトB細胞を形質転換することによって(Cole,et al.,1985 In:Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96参照)産生してもよい。
【0072】
さらに、ヒト抗体を、ファージディスプレイライブラリーを含む追加の技術を用いて産生することもできる(Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)参照)。同様に、ヒト抗体を、トランスジェニック動物、例えば、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活性化されたマウスにヒト免疫グロブリン座位を導入することによって作製することができる。負荷の際、遺伝子再配列、構築、および抗体レパートリーを含む全ての点で、ヒトで見られる抗体によく似ているヒト抗体産生を観察する。この方法については、例えば、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、およびMarks et al.,Bio/Technology 10,779−783(1992);Lonberg et al.,Nature 368 856−859(1994);Morrison,Nature 368,812−13(1994);Fishwild et al,Nature Biotechnology 14,845−51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology 14,826(1996);ならびにLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13 65−93(1995)に記載されている。
【0073】
ヒト抗体を、さらに、抗原による負荷に反応して、動物の内在性抗体以外の完全ヒト抗体を産生するために改変したヒトではないトランスジェニック動物を用いて産生してもよい。かかる動物において、ヒトではない宿主の重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする内在性遺伝子を無能力化し、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする活性遺伝子座をこの宿主のゲノムに挿入する。例えば、配列番号11〜16は、モノクローナル抗体5B8の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDRをコードするヌクレオチド配列を提供する。これらのヒト遺伝子を、例えば、必要なヒトDNAセグメントを含む酵母人工染色体を用いて組込む。その後、改変を全て含まない中間のトランスジェニック動物を交雑することによって、全ての所望の改変をもたらす動物を子孫として得る。ヒトではないかかる動物の例として、Amgen社(Thousand Oaks,CA)によって提供されるXenomouse(登録商標)と名付けられたマウスが挙げられる。この動物は、十分にヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生する。これらの抗体は、所望の免疫原で免疫した後に、例えば、ポリクローナル抗体の調製物として動物から直接取得するか、またはもう1つの方法として、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマなどの動物由来の不死化B細胞から取得することができる。さらに、ヒト可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子を回収し、発現させて、直接抗体を取得するか、またはさらに改変して、例えば、1本鎖Fv(scFv)分子などの抗体の類似体を取得することができる。
【0074】
内在性免疫グロブリン重鎖の発現を欠く、マウスが例となるヒトではない宿主を作製する方法の例は、米国特許第5,939,598号に開示されている。この宿主は、胚性幹細胞内で少なくとも1つの内在性重鎖遺伝子座からJセグメント遺伝子を欠失させ、この遺伝子座の再配列を阻止し、再配列された免疫グロブリン重鎖遺伝子座の転写物の形成を阻止すること(この欠失は、選択マーカーをコードする遺伝子を含む標的ベクターによってもたらされる)、ならびに、その体細胞および生殖細胞が選択マーカーをコードする遺伝子を含むトランスジェニックマウスの胚性幹細胞から産生させることを含む方法によって取得することができる。
【0075】
ヒト抗体などの所望の抗体を産生させる1つの方法は、米国特許第5,916,771号に開示されている。この方法には、重鎖をコードするヌクレオチド配列(例えば、配列番号10)を含む発現ベクターを、培養中の1つの哺乳類宿主細胞に導入すること、軽鎖をコードするヌクレオチド配列(例えば、配列番号9)を含む発現ベクターを、別の哺乳類宿主細胞に導入すること、かつこれらの2つの細胞を融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させることが含まれる。このハイブリドーマ細胞は、重鎖および軽鎖を含む抗体を発現する。
【0076】
この抗体を、上記に記載の1本鎖抗体をコードするDNAセグメントを含むベクターによって発現させることができる。
【0077】
これらには、ベクター、リポソーム、裸のDNA、アジュバントに補助されるDNA、遺伝子銃、およびカテーテルが含まれ得る。好ましいベクターには、ウイルスベクター、融合タンパク質および化学複合体が含まれる。レトロウイルスベクターには、モロニーマウス白血病ウイルスが含まれる。DNAウイルスベクターが好ましい。これらのベクターには、オルソポックスまたはトリポックス(avipox)ベクターなどのポックスベクター、単純ヘルペスウイルスI型(HSV)ベクターなどのヘルペスウイルスベクター(Geller,A.I.et al.,J.Neurochem,64:487(1995);Lim,F.,et al.,in DNA Cloning:Mammalian Systems,D.Glover,Ed.(Oxford Univ.Press,Oxford England)(1995);Geller,A.I.et al.,Proc Natl.Acad.Sci.:U.S.A.90:7603(1993);Geller,A.I.,et al.,Proc Natl.Acad.Sci USA 87:1149(1990)参照)、アデノウイルスベクター(LeGal LaSalleet al.,Science,259:988(1993);Davidson,et al.,Nat.Genet 3:219(1993);Yang,et al.,J.Virol.69:2004(1995)参照)、ならびにアデノ随伴ウイルスベクター(Kaplitt,M.G.et al.,Nat.Genet.8:148(1994)参照)が含まれる。
【0078】
ポックスウイルスベクターは、細胞質に遺伝子を導入する。トリポックスウイルスベクターは、核酸の短期的発現のみをもたらす。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよび単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは、神経系細胞へ核酸を導入することに対して好ましい。アデノウイルスベクター(約2カ月)は、アデノ随伴ウイルス(約4カ月)よりも短い期間の発現をもたらし、このことは、同じく、HSVベクターよりも短い。選択される特定のベクターは、標的細胞および治療を受けている条件によって決まる。導入は、標準的技術、例えば、感染、トランスフェクション、形質導入または形質転換によって行われ得る。遺伝子輸送の様式の例として、例えば、裸のDNA、CaPO沈殿、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞マイクロインジェクション、およびウイルスベクターが挙げられる。
【0079】
このベクターを使用して、本質的に任意の所望の標的細胞を標的にすることができる。例えば、定位注入を用いて、これらのベクター(例えば、アデノウイルス、HSV)を所望の位置に向かわせることができる。さらに、これらの粒子を、SynchroMed注入システム(メドトロニック、ミネアポリス、ミネソタ州)などのミニポンプ注入システムを用いる脳室内(icv)注入により送達することができる。使用できる他の方法には、カテーテル、静脈注入、非経口注入、腹腔内注入および皮下注入、ならびに経口または他の既知の投与経路が含まれる。
【0080】
これらのベクターを用いて、様々な方法で使用することができる大量の抗体を発現させることができる。例えば、これらの抗体を用いて、フィブリノゲンおよびフィブリノゲン/Mac−1結合の存在を検出することができる。
【0081】
本発明の抗原タンパク質に特異的な1本鎖抗体の産生のために、技術を適用させることができる(例えば、米国特許第4,946,778号参照)。さらに、Fab発現ライブラリーの構築(例えば、Huse,et al.,1989 Science 246:1275−1281参照)のために方法を適合させ、タンパク質またはそれらの誘導体、断片、類似体もしくは相同体に所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速で、効率的な同定を可能にすることができる。(i)抗体分子のペプシン消化によって産生されるF(ab)2断片、(ii)F(ab)2断片のジスルフィド架橋を減少させることによって作製されるFab断片、(iii)パパインおよび還元剤での抗体分子の処理によって作製されるFab断片、ならびに(iv)F断片を含むが、これらに限定されない、タンパク質抗原に対するイディオタイプを含む抗体断片を、当該技術分野で周知の技術によって産生することができる。本発明には、F、Fab、Fab’、およびF(ab’)2の抗フィブリンγ190−202断片、F、Fab、Fab’、およびF(ab’)2の抗フィブリンγ377−395断片、1本鎖抗γ190−202フィブリン抗体および1本鎖抗γ377−395フィブリン抗体、二重特異性の抗γ190−202フィブリン抗体および抗γ377−395フィブリン抗体、ならびにヘテロコンジュゲート抗γ190−202フィブリン抗体および抗γ377−395フィブリン抗体も含まれる。
【0082】
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有する抗体である。本発明の場合において、結合特異性の1つは、γ190−202フィブリンエピトープおよびγ377−395フィブリンエピトープに対するものである。第2の結合標的は任意の他の抗原であり、細胞表面タンパク質、受容体または受容体サブユニットが都合がよい。
【0083】
二重特異性抗体を作製する方法は、当該技術分野で周知である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現に基づき、これらの2つの重鎖は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello,Nature,305:537−539(1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな組み合わせにより、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の有望な混合物を産生し、それらの抗体分子のうちの1つのみが正確な二重特異性構造を有する。この正確な分子の精製は、通常、親和性クロマトグラフィーステップによって達成される。
【0084】
所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)を、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させることができる。この融合は、好ましくは、少なくともヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域の部分を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインを用いる。これらの融合物の少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物をコードするDNA、必要であれば、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物にコトランスフェクトする。二重特異性抗体を作製するさらなる詳細については、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照されたい。
【0085】
二重特異性抗体を、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製することができる。抗体断片から二重特異性抗体を作製する技術は、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体を、化学結合を用いて調製することができる。Brennan et al.,Science 229:81(1985)は、無傷の抗体をタンパク質分解により切断して、F(ab’)2断片を作製する手順について記載している。これらの断片をジチオール錯化剤のヒ化ナトリウムの存在下で還元して、隣接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を阻止する。その後、Fab’断片をチオニトロ安息香酸(TNB)誘導体に変換する。その後、Fab’−TNB誘導体の1つを、メルカプトエチルアミンでの還元によりFab’−チオールに再変換し、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合して、二重特異性抗体を形成させる。作製された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化剤として用いることができる。
【0086】
さらに、Fab’断片を大腸菌から直接回収し、化学的に結合させ、二重特異性抗体を形成させることができる。Shalaby et al.,J.Exp.Med.175:217−225(1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の産生について記載している。
【0087】
組換え細胞培養から二重特異性抗体断片を直接作製し、単離する様々な技術についても記載されている。例えば、ロイシンジッパーを用いて、二重特異性抗体が産生されている(Kostelny et al.,J.Immunol.148(5):1547−1553(1992))。この方法は、抗体ホモ二量体の産生にも利用することができる。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)に記載されている「ダイアボディ(diabody)」技術は、二重特異性抗体断片を作製する代替機構を提供している。これらの断片は、リンカーによって軽鎖可変ドメイン(V)に結合した重鎖可変ドメイン(V)を含み、このリンカーは短すぎるために、同一鎖上の2つドメイン間で対を形成させることができない。したがって、1つの断片のVおよびVドメインは、別の断片の相補的なVおよびVドメインと対を形成せざるを得なく、それによって2つの抗原結合部位を形成させる。1本鎖Fv(sFv)二量体を用いる二重特異性抗体断片を作製する別の方法も報告されている。Gruber et al.,J.Immunol.152:5368(1994)を参照されたい。
【0088】
2以上の結合価を有する抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる(Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991))。
【0089】
本発明は、毒素などの細胞毒(例えば、癌性細胞を標的にする化学療法剤、細菌、真菌、植物、もしくは動物に由来する酵素活性毒素、またはそれらの断片)とコンジュゲートした抗体、または放射性同位元素とコンジュゲートした抗体(すなわち、放射性コンジュゲート)を含む免疫複合体にも関連する。化学療法剤の例として、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗薬、アントラサイクリンおよび関連薬、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、ステロイドホルモンおよび他の化学療法薬が挙げられる。
【0090】
使用できる酵素活性毒素およびそれらの断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌由来の)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、アレウリテス・フォルディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリア・アフィシナリス(sapaonaria officials)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクシオン(restriction)、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンが含まれる。様々な放射性核種が、放射性コンジュゲート抗体の産生に利用できる。例として、212Bi、131I、131In、90Y、および186Reが挙げられる。
【0091】
抗体および細胞毒のコンジュゲートは、N−サクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHCLなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トリエン2,6−ジイソシアネートなど)、およびビス−活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)などの様々な二機能性タンパク質−結合剤を用いて作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されているとおりに調製することができる。炭素14で標識した1−イソチオシアネートベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。
【0092】
当該技術者は、多種多様な可能な部分を、結果として得られた本発明の抗体に結合させることができることを認識するであろう(例えば、“Conjugate Vaccines”,Contributions to Microbiology and Immunology,J.M.Cruse and R.E.Lewis,Jr(編),Carger Press,New York,(1989)参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組込まれる)。
【0093】
抗体および他の部分がそれらのそれぞれの活性を保有する限り、2つの分子を結合する任意の化学反応によってカップリングを行うことができる。この結合には、多くの化学的機構、例えば、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合および錯体形成が含まれ得る。好ましい結合は、例えば、共有結合である。共有結合は、既存の側鎖の直接縮合か、または外側の架橋分子の組込みのいずれかによって達成され得る。多くの二価または多価の連結剤は、本発明の抗体などのタンパク質分子を、他の分子にカップリングするのに有用である。例えば、代表的なカップリング剤には、チオエステル類、カルボジイミド類、スクシンイミドエステル類、ジイソシアネート類、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼンおよびヘキサメチレンジアミン類など有機化合物が含まれ得る。このリストは、当該技術分野で周知の様々なクラスのカップリング剤を網羅するものではなく、むしろ、より一般的なカップリング剤の例示的なものであると意図される(Killen and Lindstrom,Jour.Immun.133:1335−2549(1984);Jansen et al.,Immunological Reviews 62:185−216(1982);およびVitetta et al.,Science 238:1098(1987)参照)。
【0094】
リンカーについては、文献に記載されている(例えば、MBS(M−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの使用について記載しているRamakrishnan,S.et al.,Cancer Res.44:201−208(1984)参照)。オリゴペプチドリンカーにより抗体とカップリングしたハロゲン化アセチルヒドラジド誘導体の使用について記載している米国特許第5,030,719号も参照されたい。例示的なリンカーには、EDCとコンジュゲートさせた(i)EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩;(ii)SMPT(4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル−ジチオ)−トルエン(Pierce Chem.Co.、カタログ番号21558G);(iii)SPDP(スクシンイミジル−6[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]へキサノエート(Pierce Chem.Co.、カタログ番号21651G);(iv)スルホ−LC−SPDP(スルホスクシンイミジル6[3−(2−ピリジルジチオ)−プロピアナミド(propianamide)]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.、カタログ番号2165−G);および(v)スルホ−NHS(N−ヒドロキシスルホ−スクシンイミド(Pierce Chem.Co.、カタログ番号24510)が含まれる。
【0095】
上記に記載のリンカーは、異なる特質を有する成分を含み、したがって、生理化学的性質が異なるコンジュゲートをもたらす。例えば、アルキルカルボン酸のスルホ−NHSエステルは、芳香族カルボン酸のスルホ−NHSエステルよりも安定している。リンカーを含むNHS−エステルは、スルホ−NHSエステルよりも可溶性が低い。さらに、リンカーSMPTは立体障害ジスルフィド結合を含み、安定性が向上したコンジュゲートを形成することができる。ジスルフィド結合は、一般に、インビトロで切断されるので、他の結合よりも安定性が低く、利用できるコンジュゲートをもたらさない。スルホ−NHSは、特に、カルボジイミドカップリングの安定性を増強させることができる。(EDCなどの)カルボジイミドカップリングは、スルホ−NHSと共に用いられる時に、単独のカルボジイミドカップリング反応よりも加水分解に対してより抵抗性のあるエステルを形成する。
【0096】
本明細書で開示する抗体は、免疫リポソームとして製剤化することもできる。この抗体を含むリポソームは、Epstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688(1985);Hwang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030(1980)、米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号などに記載の当該技術分野で周知の方法によって調製される。循環時間が高まったリポソームについては、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0097】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法によって作製することができる。リポソームを規定の細孔径のフィルターに通して押し出すと、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体のFab’断片は、ジスルフィド交換反応によって、Martin et al.,J.Biol.Chem.,257:286−288(1982)に記載されるリポソームにコンジュゲートさせることができる。
【0098】
フィブリンエピトープγ190−202およびγ377−395に対する抗体の使用
本発明のモノクローナル抗体を含む本発明の治療製剤を用いて、フィブリン関連疾患(例えば、多発性硬化症、創傷治癒、肺虚血、脊髄損傷、アルツハイマー病疾患、脳卒中、関節リウマチおよび癌)に伴う症状を、好ましくは、血液凝固に影響を与えずに治療するか、または緩和させる。本発明は、フィブリン関連疾患(例えば、多発性硬化症、創傷治癒、肺虚血、脊髄損傷、アルツハイマー病疾患、脳卒中、関節リウマチおよび癌)に伴う症状を、好ましくは、血液凝固に影響を与えずに治療するか、または緩和させる方法も提供する。治療法は、標準的な方法を用いて、フィブリン関連疾患(例えば、多発性硬化症、創傷治癒、肺虚血、脊髄損傷、アルツハイマー病、脳卒中、関節リウマチおよび癌)を患っている(または発症する危険性がある)対象、例えば、ヒト患者を特定することによって行われる。これらのフィブリン関連疾患に伴う症状には、例えば、炎症、痛みおよび知覚の喪失が含まれる。治療の有効性は、特定のフィブリン関連疾患を診断または治療をするための任意の周知の方法に関連して決定される。フィブリン関連疾患の1つまたは複数の症状の緩和は、この抗体が臨床的利点を与えることを示す。抗体調製物、好ましくは、その標的抗原に対する高い特異性と高い親和性を有するものが対象に投与され、一般に、その標的との結合により効果を有する。抗体の投与により、標的(例えば、γ190−202およびγ377−395フィブリンエピトープ)のシグナル伝達機能を無くすか、阻害するか、または妨げることができる。抗体の投与により、それが自然に結合する内在性リガンド(例えば、Mac−1)との標的(例えば、フィブリン)の結合を無くすか、阻害するか、または妨げることができる。例えば、この抗体が標的に結合すると、フィブリン/Mac−1結合を阻害する。
【0099】
本発明による治療の実体の投与は、改善された伝達、送達、および耐性などをもたらすために製剤に組込まれる適切な担体、賦形剤、および他の薬剤を用いて投与されることが理解されるであろう。多数の適切な製剤は、formulary Remington’s Pharmaceutical Sciences (第19版、Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1995))、特に、その中のBlaug,Seymourによる第87章で見つけることができる。これらの製剤には、例えば、粉末類、ペースト類、軟膏類、ゼリー類、ワックス類、油類、脂質、(カチオンまたはアニオン性)脂質含有小胞(Lipofectin(商標)など)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルション、エマルションカーボワックス(carbowax)(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含む半固体混合物が含まれる。製剤中の有効成分がこの製剤により不活性化されず、この製剤が投与経路に生理学的に適合し、許容されるという条件で、上記混合物のいずれも、本発明による治療およびセラピーに適切であり得る。Baldrick P.“Pharmaceutical excipient development:the need for preclinical guidance.”Regul.Toxicol Pharmacol.32(2):210−8(2000),Wang W.“Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.”Int.3.Pharm.203(1−2):1−60(2000),Charman W N “Lipids,lipophilic drugs,and oral drug delivery−some emerging concepts.”J Pharm Sci.89(8):967−78(2000),Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA J Pharm Sci Technol.52:238−311(1998)、およびそれらの中の、製薬化学者に周知の製剤、賦形剤および担体に関連する追加情報についての引用も参照されたい。
【0100】
(本明細書で「活性化合物」とも呼ばれる)本発明の抗体、それらの誘導体、断片、類似体および相同体を、薬学的に許容される担体を含み得る医薬組成物に組込むことができる。本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」という用語は、薬剤投与に適合する任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤などを含むことが意図される。適切な担体については、当該技術分野の標準的参考テキストであるレミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)の最新版に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。かかる担体または希釈剤の好ましい例として、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。リポソームおよび固定油などの非水性ビヒクルも用いることができる。薬学的活性物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は当該技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤がこの活性化合物と互換性がない場合を除いて、組成物におけるその使用が企図される。補助的な活性化合物を、組成物中に組み込むこともできる。
【0101】
本発明の医薬組成物を、その意図した投与経路に適合するように製剤化する。投与経路の例として、非経口投与、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与(例えば、吸入)、経皮(すなわち、局所)投与、経粘膜投与、および直腸投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下の適用に用いられる溶液または懸濁液には、以下の成分が含まれ得る:注射用の水などの滅菌希釈液を、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;ベンジルアルコールなどの抗菌剤またはメチルパラベン;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤;酢酸、クエン酸またはリン酸などの緩衝液;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧調整剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器またはガラスもしくはプラスチック製の複数回投与バイアルに封入することができる。
【0102】
注射使用に適する医薬組成物には、無菌の注射可能な溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液(水溶性)または分散液および滅菌粉末が含まれる。静脈内投与のための適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、パーシッパニー、ニュージャージー州)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。いかなる場合にも、組成物は無菌であり得、容易な注射針通過性(syringeability)が存在する限りにおいて流体でなければならない。組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定であり得、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には、必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールなどによって達成することができる。多くの場合において、組成物中に等張剤、例えば、糖類、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の吸収の延長は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0103】
無菌注射用溶液は、上記に列挙した1成分または成分の組み合わせを含む適切な溶媒に必要量の活性化合物を組み込むことによって調製することができ、必要に応じて、その後に濾過滅菌が続く。一般に、分散液は、塩基性分散媒体および上記に列挙した成分の中の必要な他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合には、調製の方法は、前もって滅菌濾過したその溶液から活性成分の粉末および任意のさらなる所望の成分をもたらす真空乾燥および凍結乾燥である。
【0104】
経口組成物には、一般に、不活性な希釈剤または食用担体が含まれる。それらはゼラチンカプセルに封入するか、または錠剤に圧縮することができる。経口治療投与の目的のためには、活性化合物を賦形剤と共に組み入れ、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用することができる。経口組成物は、口内洗浄液として使用するために液体担体を用いて調製することもでき、その際、この液体担体中の化合物は経口で適用され、シュッと吹きかけたり、吐き出したり、または飲み込まれたりする。薬学的に相性のよい結合剤、および/またはアジュバント材料は組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、およびトローチなどは以下の成分、または類似の性質の化合物のいずれかを含むことができる:微結晶性セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンなどの結合剤、デンプンまたは乳糖などの賦形剤;アルギン酸、プリモゲル、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(Sterote)などの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤;ショ糖もしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香味料などの香味剤。
【0105】
吸入による投与には、これらの化合物を、適切な噴射剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含む圧力容器もしくはディスペンサー、または噴霧器からエアロゾルスプレーの形態で送達する。
【0106】
全身投与は、経粘膜手段または経皮手段によっても行うことができる。経粘膜投与または経皮投与には、浸透させる障壁に適する浸透剤を製剤に用いる。かかる浸透剤は、一般に、当該技術分野で周知であり、例えば、粘膜投与、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、点鼻薬または坐剤の使用により達成することができる。経皮投与には、活性化合物を、一般に、当該技術分野で周知の軟膏、膏薬、ゲルまたはクリームの中に製剤化する。
【0107】
これらの化合物を、(例えば、カカオバターおよび他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を用いた)坐剤または直腸送達のための停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0108】
一実施形態において、活性化合物を、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤などの、体内からの迅速排除に対して化合物を保護する担体で調製する。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性重合体を用いることができる。かかる製剤の調製方法は当該技術者には明らかであろう。これらの材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから購入することもできる。(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いた感染細胞を標的にするリポソームを含む)リポソーム懸濁液を、薬学的に許容される担体として用いることもできる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるとおり、当該技術者に周知の方法に従って調製することができる。
【0109】
投与の簡便性および投薬量の均一性のために、経口または非経口組成物を投与単位形態で製剤化することは、特に都合がよい。本明細書で使用する投与単位形態は治療される対象用の単位投薬量として適した物理的に別々になっている単位を指し、それぞれの単位は、必要とされる医薬担体と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の投与単位形態の仕様は、活性化合物の特有の特徴および達成すべき特定の治療効果、ならびに個人の治療のためのかかる活性化合物の配合における当該技術分野に固有の制限に影響され、それらによって直接決まる。
【0110】
これらの医薬組成物を、投与のための指示書と共に、容器、パック、またはディスペンサーに含めることができる。
【0111】
抗体断片を用いる場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の阻害断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保有するペプチド分子を設計することができる。かかるペプチドは、化学的に合成するか、かつ/または組換えDNA技術により産生させることができる(例えば、Marasco et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7889−7893(1993)参照)。この製剤は、必要に応じて、治療される特定の指示のための2つ以上の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する化合物も含むことができる。あるいは、またはそれに加えて、この組成物は、例えば、細胞毒、サイトカイン、化学療法剤、または増殖阻害剤などのその機能を強化する薬剤を含むことができる。かかる分子は、適切には、意図する目的のために有効な量で組み合わせて存在する。
【0112】
これらの活性成分は、例えば、コアセルベーション技術または界面重合により調製したマイクロカプセル、例えば、それぞれ、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)中のヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、またはマクロエマルションに捕捉することもできる。
【0113】
インビボ投与に用いられる製剤は無菌であり得る。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
【0114】
徐放性製剤を調製することができる。徐放性製剤の好適な例として、抗体を含む固体疎水性重合体の半透過性基質が挙げられ、この基質は、造形品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。徐放性基質の例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUP ON DEPOT(商標)などの分解性乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドで構成される注射用ミクロスフェア)、ならびにポリD−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などの重合体は、100日を超える期間、分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルはより短い期間、タンパク質を放出する。
【0115】
本発明の抗体の治療有効量は、一般的に、治療目的を達成するのに必要な量に関する。上述したとおり、これは、特定の場合において、標的の機能を妨げる抗体とその標的抗原との間の結合相互作用であり得る。投与に必要な量は、さらに、その特定の抗原に対する抗体の結合親和性によって決まり、投与抗体が、投与されるあらゆる体積の対象から枯渇する速度にもよる。本発明の抗体または抗体断片の治療有効投与のための一般的な範囲は、限定されない例として、約0.1mg/体重kg〜約50mg/体重kgであり得る。一般的な投与頻度は、例えば、毎日2回〜週に一回の範囲であり得る。
【0116】
抗体スクリーニング法
所望の特異性を有する抗体のスクリーニング法には、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)および当該技術分野で周知の他の免疫を介する技術が含まれるが、これらに限定されない。
【0117】
γ190−202およびγ377−395フィブリンエピトープに対して作られた抗体は、フィブリンの局在および/または定量化に関連する当該技術分野で周知の方法に用いられ得る。特定の実施形態において、抗体由来の抗原結合ドメインを含むγ190−202フィブリンエピトープおよびγ377−395フィブリンエピトープに特異的な抗体、またはそれらの誘導体、断片、類似体または相同体を、薬理活性化合物として利用する(本明細書の下記で「治療」と呼ばれる)。
【0118】
γ190−202フィブリンエピトープおよびγ377−395フィブリンエピトープに特異的な抗体を用いて、免疫親和性クロマトグラフィーまたは免疫沈降などの標準的技術によりフィブリンポリペプチドを単離することができる。抗体を検出可能な物質にカップリング(すなわち、物理的に結合)させることによって、検出を促進することができる。検出可能な物質の例として、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、および放射性材料が挙げられる。適切な酵素の例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。適切な補欠分子族複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる。適切な蛍光材料の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられる。発光材料の例としてルミノールが挙げられる。生物発光材料の例として、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ、適切な放射性材料の例として、125I、131I、35SまたはHが挙げられる。
【0119】
本発明による抗体を、試料中のγ190−202フィブリンエピトープおよび/またはγ377−395フィブリンエピトープの存在を検出するための薬剤として用いることができる。いくつかの実施形態において、抗体は検出可能な標識を含む。抗体はポリクローナル、またはより好ましくは、モノクローナルである。無傷の抗体、またはその断片(例えば、Fab、scFv、F(ab))を用いる。プローブまたは抗体に関する「標識」という用語は、プローブまたは抗体に検出可能な物質をカップリング(すなわち、物理的に結合)させることによるプローブまたは抗体の直接標識、ならびに直接標識された別の試薬との反応によるプローブまたは抗体の間接標識を包含することが意図される。間接標識の例として、蛍光標識2次抗体を用いる1次抗体の検出、およびプローブを蛍光標識ストレプトアビジンで検出することができるようにビオチンを用いたDNAプローブの末端標識が挙げられる。「生体試料」という用語は、対象から単離される組織、細胞および生体液、ならびに対象内に存在する組織、細胞および体液を含むことが意図される。したがって、血清、血漿、またはリンパを含む血液、ならびに血液の画分もしくは成分は、「生体試料」という用語の使用に含まれる。すなわち、本発明の検出法を用いて、生体試料中の検体mRNA、蛋白質、またはゲノムDNAをインビトロおよびインビボで検出することができる。例えば、検体mRNAの検出のためのインビトロ技術には、ノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイツ(in situ)ハイブリダイゼーションが含まれる。検体タンパク質の検出のためのインビトロ技術には、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降、および免疫蛍光が含まれる。検体ゲノムDNAの検出のためのインビトロ技術には、サザンハイブリダイゼーションが含まれる。イムノアッセイを行う手順は、例えば、「ELISA:Theory and Practice:Methods in Molecular Biology」,Vol.42,J.R.Crowther(編)Human Press,Totowa,N.J.,1995;「Immunoassay」,E.Diamandis and T.Christopoulus,Academic Press,Inc.,サンディエゴ、カリフォルニア州、1996;および「Practice and Theory of Enzyme Immunoassays」,P.Tijssen,Elsevier Science Publishers,アムステルダム、1985に記載されている。さらに、検体タンパク質の検出のためのインビボ技術には、標識した抗検体タンパク質抗体を対象に導入することが含まれる。例えば、抗体を放射性マーカーで標識することができ、対象におけるその存在および位置を、標準的な画像処理技術により検出することができる。
【0120】
阻害剤のスクリーニング法
本発明は、フィブリンとMac−1の結合を調節するか、または別の方法で干渉する調節因子、すなわち候補化合物もしくは試験化合物、または候補薬剤もしくは試験薬剤(例えば、ペプチド、ペプチド模倣薬、小分子もしくは他の薬物)、またはフィブリン、Mac-1および/もしくはフィブリン/Mac-1複合体のシグナル伝達機能を調節するか、または別の方法で干渉する候補化合物もしくは試験化合物、または候補薬剤もしくは試験薬剤を同定する(本明細書で、「スクリーニングアッセイ」とも呼ばれる)方法を提供する。本発明には、本明細書に記載のスクリーニングアッセイにおいて同定された化合物も含まれる。
【0121】
一実施形態において、本発明は、フィブリン/Mac-1複合体のシグナル伝達機能および/またはフィブリンとMac-1の間の相互作用を調節する候補化合物もしくは試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。本発明の試験化合物は、生物ライブラリー法、空間的にアドレス可能な並行固相(spatially addressable parallel solid phase)または液相のライブラリー法、逆重畳を必要とする合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー法、ならびに親和性クロマトグラフィー選別を用いる合成ライブラリー法を含む、当該技術分野で周知のコンビナトリアルライブラリー法の中の多数の方法のいずれかを用いて取得することができる。生物ライブラリー法はペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つの方法は、化合物のペプチドライブラリー、非ペプチドオリゴマーライブラリーまたは小分子ライブラリーに適用できる(例えば、Lam,1997.Anticancer Drug Design 12:145参照)。
【0122】
本明細書中で使用する「小分子」は、約5kD未満、最も好ましくは、約4kD未満の分子量を有する組成物を指すことを意味する。小分子は、例えば、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣薬、炭水化物、脂質または他の有機分子もしくは無機分子であり得る。真菌、細菌、または藻類の抽出物などの化学的および/または生物学的混合物のライブラリーは、当該技術分野で周知であり、本発明のアッセイのいずれかを用いてスクリーニングすることができる。
【0123】
分子ライブラリーの合成法の例は、当該技術分野の中で、例えば、DeWitt,et al.,1993.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6909;Erb,et al.,1994.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:11422;Zuckermann,et al.,1994.J.Med.Chem.37:2678;Cho,et al.,1993.Science 261:1303;Carrell,et al.,1994.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carell,et al.,1994.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallop,et al.,1994.J.Med.Chem.37:1233の中で見つけることができる。
【0124】
化合物のライブラリーは、溶液中に(例えば、Houghten,1992.Biotechniques 13:412−421参照)、またはビーズ上に(Lam,1991.Nature 354:82−84参照)、チップ上(Fodor,1993.Nature 364:555−556参照)、細菌(米国特許第5,223,409号参照)、胞子(米国特許第5,233,409号参照)、プラスミド(Cull,et al.,1992.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865−1869)またはファージ上に(Scott and Smith,1990.Science 249:386−390;Devlin,1990.Science 249:404−406;Cwirla,et al.,1990.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:6378−6382;Felici,1991.J.Mol.Biol.222:301−310;および米国特許第5,233,409号参照)に存在し得る。
【0125】
一実施形態において、候補化合物を抗体−抗原複合体に導入し、この候補化合物がこの抗体−抗原複合体を破壊するか否かを決定する。その際、この複合体の破壊は、この候補化合物が、フィブリン/Mac−1複合体のシグナル伝達機能および/またはフィブリンとMac-1の間の相互作用を調節することを示す。例えば、モノクローナル抗体は5B8および抗原はフィブリノゲン複合体である。あるいは、このモノクローナル抗体は1E3であり、抗原はフィブリノゲンである。
【0126】
別の実施形態において、フィブリン/Mac−1複合体を提供し、少なくとも1つの中和モノクローナル抗体に暴露する。抗体−抗原複合体の形成を検出し、1つまたは複数の候補化合物をこの複合体に導入する。この抗体−抗原複合体が、1つまたは複数の候補化合物の導入後に破壊される場合、この候補化合物は、フィブリン/Mac−1結合に関連する疾患を治療するのに有用である。
【0127】
別の実施形態において、本発明の可溶性キメラタンパク質を提供し、少なくとも1つの中和モノクローナル抗体に暴露する。抗体−抗原複合体の形成を検出し、1つまたは複数の候補化合物をこの複合体に導入する。この抗体−抗原複合体が、1つまたは複数の候補化合物の導入後に破壊される場合、この候補化合物は、フィブリン/Mac−1結合に関連する疾患を治療するのに有用である。
【0128】
この試験化合物が抗体−抗原複合体に干渉するか、またはそれを破壊する能力を測定することは、例えば、この試験化合物のその抗原またはその生物活性のある部分への結合を、複合体中の標識化合物を検出することによって決定することができるように、この試験化合物を放射性同位元素または酵素標識でカップリングさせることによって達成することができる。例えば、試験化合物を、直接または間接的に、125I、35S、14C、もしくはHで標識し、この放射性同位元素を、放射線放出の直接計数、またはシンチレーション計数により検出することができる。あるいは、試験化合物を、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼで酵素標識し、この酵素標識を、適切な基質の生成物への変換を測定することにより検出することができる。
【0129】
一実施形態において、このアッセイは、試験化合物と抗体−抗原複合体を接触させること、かつこの試験化合物が抗原と相互作用する能力、または別の方法で既存の抗体−抗原複合体を破壊する能力を測定することを含む。この実施形態において、試験化合物が抗原と相互作用する能力および/または抗体−抗原複合体を破壊する能力を測定することは、抗体と比較して、この試験化合物が、優先的に抗原またはその生物活性のある部分に結合する能力を測定することを含む。
【0130】
別の実施形態において、このアッセイは、試験化合物と抗体−抗原複合体を接触させること、かつ試験化合物の抗体−抗原複合体を調節する能力を測定することを含む。この試験化合物の抗体−抗原複合体を調節する能力を測定することは、例えば、この試験化合物の存在下で、抗原が抗体に結合するか、または抗体と相互作用する能力を測定することによって達成することができる。
【0131】
当該技術者は、本明細書に開示されるスクリーニング法のいずれかにおいて、この抗体がモノクローナル抗体5B8および/または1E3などの中和抗体であり得、これらのそれぞれは、フィブリン/MAC−1結合を調節するか、または別の方法で干渉することを認識するであろう。
【0132】
一実施形態において、抗体または抗原のいずれか一方を固定化し、候補化合物の1方または両方の導入後の複合体型と非複合体型の分離を促進し、このアッセイの自動化に適合させることが望ましいこともある。候補化合物の存在下および非存在下における抗体−抗原複合体の観察は、反応物を含むのに適した任意の容器内で行うことができる。かかる容器の例として、マイクロタイタープレート、試験管、およびマイクロ遠心管が挙げられる。一実施形態において、タンパク質の1方または両方を結合させることができるドメインを基質に付加する融合タンパク質を提供することができる。例えば、GST−抗体融合タンパク質またはGST−抗原融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical、セントルイス、ミズーリ州)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着させることができ、その後、試験化合物と組み合わせ、この混合物を、複合体形成を促す条件下で(例えば、塩およびpHの生理的条件で)インキュベートする。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートのウェルを洗浄し、全ての非結合成分(ビーズの場合は固定化する基質)を除去し、複合体を直接または間接的に測定する。あるいは、これらの複合体をこの基質から解離させ、抗体−抗原複合体形成のレベルを、標準的な技術を用いて決定することができる。
【0133】
基質にタンパク質を固定化するための他の技術を、本発明のスクリーニングアッセイで用いることもできる。例えば、抗体(例えば、5B8および/もしくは1E3)または抗原(例えば、フィブリン)のいずれか一方を、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合を利用して固定化することができる。ビオチン化抗体または抗原分子を、当該技術分野で周知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals,Rockford,III)を用いて、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製し、ストレプトアビジンでコーティングした96ウェルプレートのウェルに固定化することができる。あるいは、所望の抗体または抗原と反応するが、所望の抗体−抗原複合体の形成に干渉しない他の抗体をプレートのウェルに誘導体化し、結合していない抗体または抗原を抗体結合によりウェルに捕捉することができる。GST固定化複合体に関して上記に記載した方法に加えて、かかる複合体を検出するための方法には、抗体または抗原と反応するかかる他の抗体を用いた複合体の免疫検出が含まれる。
【0134】
本発明は、さらに、本明細書に記載の治療のための、前述のスクリーニングアッセイのいずれかによって同定される新規薬剤およびそれらの使用に関する。
【0135】
診断アッセイ
本発明の抗体を、適切なアッセイ、例えば、従来の免疫アッセイの種類によって検出することができる。例えば、全長のフィブリノゲン、フィブリンまたはその断片を固相に固定するサンドイッチアッセイを行うことができる。試料中の抗体がこの固相上の固定化ポリペプチドに結合することが可能なほど十分な時間インキュベーションを維持する。この最初のインキュベーション後、この固相を試料から分離する。この固相は洗浄し、試料にも存在し得る非特異的なタンパク質などの非結合材料および干渉物質を除去する。次いで、固定化ポリペプチドに結合させた所望の抗体(例えば、モノクローナル抗体5B8および/または1E3)を含む固相を、第2の標識抗体またはビオチンもしくはアビジンなどのカップリング剤に結合させた抗体とインキュベートする。この2次抗体は、別の抗フィブリン抗体であってもよい。抗体の標識は当該技術分野で周知であり、放射性核種、酵素(例えば、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ)、蛍光(フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコシアニン、フルオレサミン)、およびビオチンなどを含む。これらの標識抗体を固体とインキュベートし、固相に結合した標識を測定する。当該技術者は、これらおよび他のイムノアッセイを容易に行うことができる。
【0136】
生体試料中のフィブリンタンパク質の有無を検出するための例示的な方法は、被験者から生体試料を取得すること、かつこの生体試料中のフィブリンの存在を検出するように、生体試料を本発明の標識モノクローナル抗体と接触させることを含む。
【0137】
本明細書で使用する、プローブまたは抗体に関する「標識」という用語は、プローブまたは抗体に検出可能な物質をカップリング(すなわち、物理的に結合)させることによるプローブまたは抗体の直接標識、ならびに直接標識された別の試薬との反応によるプローブまたは抗体の間接標識を包含することが意図される。間接標識の例として、蛍光標識2次抗体を用いる1次抗体の検出、およびプローブを蛍光標識ストレプトアビジンで検出することができるようにビオチンを用いたDNAプローブの末端標識が挙げられる。「生体試料」という用語は、対象から単離される組織、細胞および生体液、ならびに対象内に存在する組織、細胞および体液を含むことが意図される。すなわち、本発明の検出法を用いて、生体試料中のフィブリンをインビトロおよびインビボで検出することができる。例えば、フィブリンの検出のためのインビトロ技術には、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降、および免疫蛍光が含まれる。さらに、フィブリンの検出のためのインビボ技術には、標識抗フィブリン抗体を対象に導入することが含まれる。例えば、抗体を放射性マーカーで標識することができ、対象におけるその存在および位置を、標準的な画像処理技術により検出することができる。
【0138】
一実施形態において、この生体試料は、被験者由来のタンパク質分子を含む。一つの好ましい生体試料は、従来の手段によって対象から単離した末梢血白血球試料である。
【0139】
キット
本発明は、また生体試料中のフィブリンの存在を検出するためのキットも包含する。例えば、このキットには、生体試料中のフィブリンを検出することができる標識化合物または標識剤;試料中のフィブリンの量を測定するための手段;試料中のフィブリンの量を標準物質と比較するための手段が含まれ得る。化合物または薬剤は適切な容器に詰めることができる。このキットは、さらに、試料中のフィブリンを検出するためのキットの使用説明書を含み得る。
【0140】
本発明をさらに以下の実施例に記載するが、これは、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0141】
本教示の態様を以下の実施例を踏まえてさらに理解することができるが、これは、決して本教示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0142】
実施例1−モノクローナル抗体の作製
フィブリノゲンとMac−1の相互作用に重要であることが示されたフィブリノゲンのγ鎖の正確なアミノ酸に相当するペプチド配列を合成した(ペプチド番号1:CGWTVLQKRIDGSL(配列番号17)およびペプチド番号2:CKKTTM KIIPFN RLTIG(配列番号18))。インビボでの強い抗体反応を促進する担体タンパク質のキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)との結合を可能にする、対応するN−末端のシステイン残基を有するこれらの2種類のペプチドを合成した。両方のペプチドを用いて、3匹のマウスを免疫し、これらのマウスにおいて抗体反応を生じさせた。予備的な血清スクリーニングは、これらのペプチドに対する強い抗体価を明らかにし、その後、これら2つのペプチド配列に対してクローン抗体を産生するハイブリドーマを作製した。480個のハイブリドーマクローンの最初のスクリーニングを、ペプチドおよび担体タンパク質の両方に対するELISAにより行った。陽性クローンを増やして再試験し、ELISAにより、ペプチドエピトープ反応性を確認した。この最初のスクリーニングの最終的な結果は、ペプチド番号1または番号2のいずれか一方に特異的であった46個のクローンをもたらした。これらのELISAの結果の綿密な分析により、さらなる検査のための16個の目的候補を同定した。これらの16個のクローンを、全長フィブリノゲン上のMac−1受容体によるミクログリア接着を阻止するそれらの能力についてスクリーニングした。組織培養ウェルを50μg/mLのフィブリノゲンでコーティングし、その上に、これらの抗体クローンの存在下でミクログリア細胞(200,000細胞/mL)を播種した。30分後にウェルを洗浄し、残りの接着細胞を、0.1%クリスタルバイオレットで染色した。染色した細胞を1%PFAで固定し、0.5%Triton X−100で可溶化した。これらのクローンのうちの5個は、Mac−1に対する市販のブロッキング抗体(Ml/70)の能力と同様であり、595nmにおける吸光測定によって評価した時、フィブリノゲンへのミクログリア接着を阻止する重要な能力を示した(図1;吸光度のシフトによって測定した時、20%を超える割合の阻害を有する)。本発明の抗体は、30%、40%、または50%を超える割合で、フィブリノゲンへのミクログリア接着を防ぐことができることが企図される。クローン1A5、1D6および1E3はペプチド番号1のエピトープを認識するが、クローン4E11および5B8はペプチド番号2のエピトープを認識する。これらの5つのクローンを、さらにウェスタンブロットによりフィブリノゲンを認識するそれらの能力について分析した。全ての5つ抗体は、同程度にフィブリノゲンのγ鎖を認識した。これらの抗体が用量依存的にフィブリノゲンを認識するかどうかを調べるために、ELISAを、コーティングした全長フィブリノゲンにおいて行った(図2)。全ての5つ抗体は、漸増濃度の全長フィブリノゲンに特異的に結合することが判明した。単離および大規模な精製のために、これらの5つの抗体から3つを選択した(1E3、4E11および5B8は、吸光度のシフトにより測定した時に、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインへのMac−1結合を、50%を超える割合で阻害する)。本発明の抗体は、フィブリンへのMac−1結合を50%、60%または70%を超える割合で阻害することができることが企図される。最初に、20mgの全ての3つの抗体を、インビトロ食作用アッセイおよびEAE実験における使用のために精製した。
【0143】
実施例2−フィブリノゲンのγ鎖に対するモノクローナル抗体は、ミクログリアによる食作用を阻害する
食作用は、Mac−1によって媒介される活性化ミクログリアおよびマクロファージの主要な機能である。食作用アッセイを、以前に記載されたとおりにミクログリアにおいて行った。Adams et al.,2007,J.Exp.Med.204:571−582を参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組込まれる。フィブリン由来のγ377−395ペプチドはミクログリア活性化を阻害し、中枢神経系自己免疫疾患の再発麻痺を抑制する。改変したフィブリンγ377−395エピトープに対するモノクローナル抗体5B8は、インビトロで食作用を阻害することに優れた有効性を示した。インビボ試験におけるこの抗体は、γ377−395ペプチドについて以前に記載されたとおり、MSの動物モデルにおける予防的および治療的投与を示す。
【0144】
実施例3−モノクローナル抗体5B8は、実験的自己免疫性脳脊髄炎の寛解−再発動物モデルにおける再発発生率を抑制する。
インビボのミクログリア活性化および脱髄の調節に対するフィブリン抗体の効果を評価するために、食作用アッセイで同定したクローンのうちの2個を、PLP EAEの発生後のマウスに投与した。抗体5B8および4E11を、1匹のマウスあたり250μgで、週に3回投与した。図4に示すとおり、抗体4E11は、EAEの発生において実質的効果がなかった。逆に、抗体5B8は、再発時に臨床症状の抑制を示した。
【0145】
他の実施形態
上記で説明した詳細の記載は、本発明を行う際に当業者を助けるために提供される。しかし、本明細書に記載し、請求される本発明は、これらの実施形態が本発明のいくつかの態様の説明として意図されるので、本明細書に開示された特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。任意の同等の実施形態は、本発明の範囲内にあることが意図される。実際、本明細書に示され、記載される変更に加えて、本発明の様々な変更は、本発明の発見の趣旨または範囲から逸脱しない前述の記載から当該技術者に明らかになるであろう。かかる変更は、添付の特許請求の範囲の範囲に入ることも意図される。
【0146】
引用される参考文献
本明細書の参考文献の引用は、それが本発明の先行技術であると認めるものと解釈されてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィブリンまたはフィブリノゲンのγCドメインに結合する単離抗体であって、前記フィブリンまたはフィブリノゲンのγCドメインへのミクログリア接着の20%を超える割合での阻害を示す抗体。
【請求項2】
フィブリンまたはフィブリノゲンのγCドメインに結合する単離抗体であって、前記フィブリンまたはフィブリノゲンのγCドメインへのMac−1結合の50%を超える割合での阻害を示す抗体。
【請求項3】
フィブリンまたはフィブリノゲンのγCドメインに結合する単離抗体であって、再発時に実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の臨床症状を抑制する抗体。
【請求項4】
前記抗体が、前記フィブリンまたはフィブリノゲンのγCドメインのγ377−395エピトープに結合する、請求項1〜3のいずれかに記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、前記フィブリンまたはフィブリノゲンのγCドメインのγ190−202エピトープに結合する、請求項1〜3のいずれかに記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜5のいずれかに記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項1〜6のいずれかに記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体がヒト抗体である、請求項1〜6のいずれかに記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、RSSKSLLHSSGITYLS(配列番号2)、QMSNLAS(配列番号3)、およびAQNLELPLT(配列番号4)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する軽鎖を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体が、GYTFTSYWIH(配列番号6)、LIDPSDSYTNYNQKFRG(配列番号7)、およびSDPTGC(配列番号8)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する重鎖を含む、請求項1〜8に記載の抗体。
【請求項11】
前記抗体が、RSSKSLLHSSGITYLS(配列番号2)、QMSNLAS(配列番号3)、およびAQNLELPLT(配列番号4)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する軽鎖、ならびにGYTFTSYWIH(配列番号6)、LIDPSDSYTNYNQKFRG(配列番号7)、およびSDPTGC(配列番号8)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する重鎖を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の抗体。
【請求項12】
前記抗体が、配列番号1の軽鎖可変アミノ酸配列を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項13】
前記抗体が、配列番号5の重鎖可変アミノ酸配列を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項14】
前記抗体が、配列番号1の軽鎖可変アミノ酸配列および配列番号5の重鎖可変アミノ酸配列を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項15】
前記抗体が、それぞれ、RSSKSLLHSSGITYLS(配列番号2)、QMSNLAS(配列番号3)、およびAQNLELPLT(配列番号4)から成る群から選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する軽鎖、ならびにGYTFTSYWIH(配列番号6)、LIDPSDSYTNYNQKFRG(配列番号7)、およびSDPTGC(配列番号8)から成る群から選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する重鎖を含み、かつ前記軽鎖相補性ドメインおよび重鎖相補性ドメインがMac−1結合能を保有する、請求項1〜8のいずれかに記載の抗体。
【請求項16】
前記抗体が、それぞれ、RSSKSLLHSSGITYLS(配列番号2)、QMSNLAS(配列番号3)、およびAQNLELPLT(配列番号4)から成る群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する軽鎖、ならびにGYTFTSYWIH(配列番号6)、LIDPSDSYTNYNQKFRG(配列番号7)、およびSDPTGC(配列番号8)から成る群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する重鎖を含み、かつ前記軽鎖相補性ドメインおよび重鎖相補性ドメインがMac−1結合能を保有する、請求項1〜8のいずれかに記載の抗体。
【請求項17】
前記抗体が、それぞれ、RSSKSLLHSSGITYLS(配列番号2)、QMSNLAS(配列番号3)、およびAQNLELPLT(配列番号4)から成る群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する軽鎖、ならびにGYTFTSYWIH(配列番号6)、LIDPSDSYTNYNQKFRG(配列番号7)、およびSDPTGC(配列番号8)から成る群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する重鎖を含み、かつ前記軽鎖相補性ドメインおよび重鎖相補性ドメインがMac−1結合能を保有する、請求項1〜8のいずれかに記載の抗体。
【請求項18】
前記抗体が、それぞれ、RSSKSLLHSSGITYLS(配列番号2)、QMSNLAS(配列番号3)、およびAQNLELPLT(配列番号4)から成る群から選択される配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する軽鎖、ならびにGYTFTSYWIH(配列番号6)、LIDPSDSYTNYNQKFRG(配列番号7)、およびSDPTGC(配列番号8)から成る群から選択される配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域を有する重鎖を含み、かつ前記軽鎖相補性ドメインおよび重鎖相補性ドメインがMac−1結合能を保有する、請求項1〜8のいずれかに記載の抗体。
【請求項19】
フィブリンへのMac−1結合またはフィブリノゲンとのMac−1結合と関連する病態の症状を緩和するための方法であって、請求項1〜18のいずれかに記載の抗体をかかる緩和が望まれる対象に、該対象における病態の症状を緩和するのに十分な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項20】
前記対象がヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記病態が、多発性硬化症、脊髄損傷、アルツハイマー病、脳卒中、関節リウマチおよび癌からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜18のいずれかに記載の抗体および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項23】
請求項1〜18のいずれかに記載の抗体を含むキット。
【請求項24】
フィブリンγ377−395エピトープ、CKKTTMKIIPFNRLTIG(配列番号18)、またはその生物活性のある誘導体をコードする核酸配列を含むベクター。
【請求項25】
請求項24に記載のベクターを含む細胞。
【請求項26】
フィブリンγ377−395エピトープ、またはその生物活性のある誘導体に免疫特異的に結合する抗体を作製する方法であって、請求項23に記載の細胞の第1の投与量を対象に投与することを含み、その際、前記第1の投与量は、前記対象において免疫反応を起こすのに十分である、前記方法。
【請求項27】
前記対象に前記細胞の第2の投与量を投与するステップをさらに含み、その際、前記第2の投与量は、前記対象において免疫反応を起こすのに十分である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
産生される抗体が、前記対象においてフィブリン/Mac−1結合を阻害する、請求項26〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
Mac−1受容体に結合し、Mac−1受容体活性を調節するリガンドのスクリーニング法であって、前記方法が、(a)請求項1に記載の抗体を提供すること;(b)フィブリンγ377−395エピトープ、CKKTTMKIIPFNRLTIG(配列番号18)、またはその生物活性のある誘導体を接触させ、抗体/ポリペプチド複合体を形成させること;(c)前記抗体/ポリペプチド複合体と候補化合物を含む組成物を接触させること;ならびに(d)前記候補化合物が前記モノクローナル抗体に結合するか否かを決定することを含み、それによって、前記候補化合物がMac−1受容体活性を調節するリガンドであることを前記候補化合物の結合が示す方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2013−506425(P2013−506425A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532307(P2012−532307)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/050873
【国際公開番号】WO2011/041518
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(508228061)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (10)
【Fターム(参考)】