説明

モリブデン含有物の焼成方法及び(メタ)アクリル酸の製造方法

【課題】(メタ)アクリル酸製造用触媒の原料であるモリブデン酸化物を調製できるモリブデン含有物の焼成方法であって、該触媒の寿命を改善できる方法を提供する。
【解決手段】一端にモリブデン含有物供給口を、他端に焼成後のモリブデン含有物の排出口を備えるキルンであり、該キルンの長手方向に加熱手段が複数配置され、前記キルン内部の前記排出口側及び供給口側各々においてモリブデン含有物に酸素含有ガスを直接吹き付けながらモリブデン含有物を焼成する方法であって、前記排出口側における前記酸素含有ガスの供給速度が、前記供給口側における前記酸素含有ガスの供給速度以上であり、前記複数の加熱手段の出力が、前記供給口側から前記排出口側に向けて大きく設定されているモリブデン含有物の焼成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデン含有物を酸素含有ガスで酸化して焼成する方法、該方法により得られたモリブデン酸化物を原料とする(メタ)アクリル酸製造用触媒、及び該触媒を用いた(メタ)アクロレインの気相酸化により(メタ)アクリル酸を製造する(メタ)アクリル酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モリブデンを含む固体触媒として、例えば、プロピレン、イソブチレン、及び/又はtert−ブチルアルコールを分子状酸素で気相接触酸化して(メタ)アクロレイン及び(メタ)アクリル酸を製造するために用いられるモリブデン、ビスマス、及び鉄を主成分とする複合酸化物触媒が知られている。また、アクロレインを分子状酸素で気相接触酸化してアクリル酸を製造するために用いられるモリブデン及びバナジウムを主成分とする複合酸化物触媒、メタクロレインを分子状酸素で気相接触酸化してメタクリル酸を製造するために用いられるモリブデン、リンを主成分とするヘテロポリ酸系触媒などが知られている。
【0003】
モリブデンを含む固体触媒の製造原料としてモリブデン酸化物を用いた場合、このモリブデン酸化物の構造上の僅かな差により触媒性能が変わりうることが知られている。例えば特許文献1では、X線としてCuKα線を用いたX線回折図における回折ピーク位置と回折強度が規定されたモリブデン酸化物を原料とする触媒を用いた場合、メタクロレインを気相酸化にてメタクリル酸に転化する際の反応成績が向上することが開示されている。また、特許文献2では、更に反応成績面で好ましいモリブデン酸化物の圧縮度について開示されている。前記好ましい圧縮度を有するモリブデン酸化物は、パラモリブデン酸アンモニウムなどを酸素含有ガス雰囲気下、300℃以上、600℃以下で30分以上焼成することで得られる。
【0004】
ところで、触媒活性や選択率は触媒性能の中で重要であるが、一方で同様に触媒の使用できる期間、即ち触媒寿命も重要である。触媒寿命が相対的に短い場合は、想定運転期間内にプラントを停止せざるを得なくなったり、反応負荷を落とさざるを得なくなり、プラントの稼働率が低下し製品のコストアップにつながる。また、多量の触媒量を必要とするために、製品コストに対して触媒コストが大きく加算され、製品のコストアップにつながる。しかし、触媒寿命に対する原料とするモリブデン酸化物の影響については現状全く知られていない。例えば触媒寿命が相対的に長い触媒の原料であるモリブデン酸化物と、触媒寿命が相対的に短い触媒の原料であるモリブデン酸化物のXRD(X−ray diffraction)測定を行っても、有意な差は観測できない。
【0005】
原料とするモリブデン酸化物は、通常モリブデン含有物の焼成により得る。モリブデン含有物の焼成には、一般的には連続式焼成炉であるロータリーキルン等のキルンが用いられることが多い。モリブデン含有物を焼成する方法としては、例えば特許文献3では、モリブデンを含む使用済触媒を、間接向流式で酸素含有気体と接触させ、ロータリーキルン内を効率的に利用して焼成する方法が開示されている。また、特許文献4では、同じく間接向流式で焼成を行う際に、内部の材料に対して化学反応に要する気体を直接吹き付ける方法が開示されている。また、特許文献5では、キルン内部に設置された多数の送気孔から一様に空気を送気する、直接併流式の廃触媒焼成方法が開示されている。
【0006】
しかし、これらの方法でモリブデン含有物を焼成した場合、キルン内雰囲気や温度分布を適正に維持することができないためか、得られたモリブデン酸化物を原料として製造した触媒の寿命は、相対的に短いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−8834号公報
【特許文献2】特開2007−229561号公報
【特許文献3】特開2003−284955号公報
【特許文献4】特開平11−83333号公報
【特許文献5】特開昭54−107495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、(メタ)アクリル酸製造用触媒の原料であるモリブデン酸化物を調製できるモリブデン含有物の焼成方法であって、該触媒の寿命を改善できる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、モリブデン含有物の焼成において、キルン内の気体、熱の流れを特定方向に配向させることで、焼成により得られるモリブデン酸化物を原料とする(メタ)アクリル酸製造用触媒の触媒寿命が改善されることを見出し、本発明に至った。
【0010】
即ち本発明に係るモリブデン含有物の焼成方法は、
一方の端にモリブデン含有物の供給口を、他方の端に焼成後のモリブデン含有物の排出口を備えるキルンであり、
前記キルンの外周面から間接的に加熱する加熱手段が該キルンの長手方向に複数配置され、
前記キルン内部の前記モリブデン含有物の排出口側及び供給口側各々においてモリブデン含有物に酸素含有ガスを直接吹き付けながらモリブデン含有物を連続的に焼成する方法であって、
前記モリブデン含有物の排出口側における前記酸素含有ガスの供給速度が、前記モリブデン含有物の供給口側における前記酸素含有ガスの供給速度以上であり、
前記複数の加熱手段の出力が、前記モリブデン含有物の供給口側から前記モリブデン含有物の排出口側に向けて大きく設定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る(メタ)アクリル酸製造用触媒は、前記方法により得られたモリブデン酸化物を原料とすることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る(メタ)アクリル酸の製造方法は、前記触媒を用いて、(メタ)アクロレインの気相接触酸化により(メタ)アクリル酸を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る方法を用いて調製したモリブデン酸化物は、(メタ)アクリル酸製造用触媒の原料に用いた場合、該触媒の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る方法に用いるキルンの一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るモリブデン含有物の焼成方法は、
一方の端にモリブデン含有物の供給口を、他方の端に焼成後のモリブデン含有物の排出口を備えるキルンであり、
前記キルンの外周面から間接的に加熱する加熱手段が該キルンの長手方向に複数配置され、
前記キルン内部の前記モリブデン含有物の排出口側及び供給口側各々においてモリブデン含有物に酸素含有ガスを直接吹き付けながらモリブデン含有物を連続的に焼成する方法であって、
前記モリブデン含有物の排出口側における前記酸素含有ガスの供給速度が、前記モリブデン含有物の供給口側における前記酸素含有ガスの供給速度以上であり、
前記複数の加熱手段の出力が、前記モリブデン含有物の供給口側から前記モリブデン含有物の排出口側に向けて大きく設定されていることを特徴とする。
【0016】
以下、図面を用いて本発明に係る方法の詳細を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0017】
(キルン)
本発明に係る方法においては、モリブデン含有物をキルン内で焼成する。
【0018】
本発明に係る方法において用いることのできるキルンの一例を図1に示す。キルン内筒1は、一方の端にモリブデン含有物を導入するモリブデン含有物供給口7を、他方の端に焼成後のモリブデン含有物(モリブデン酸化物)を排出するモリブデン酸化物排出口14を備える。
【0019】
キルン内筒1の内部形状は、その断面が円形の円筒式、多角形の多角形式等あるが、内部のモリブデン含有物の上層部と、下層部がよりよく混合される多角形式が好ましい。ただし、例えば円筒式でも邪魔板や攪拌羽根の設置により目的は達成されうるし、また後述する気体の吹き付けによりモリブデン含有物が攪拌・分散される効果もあるため、運転上支障がなければ形状は特に限定されない。キルン内筒1の大きさも、導入するモリブデン含有物の量等に応じて適宜選択することができる。また、キルン内筒1の傾斜は、キルン内筒1に導入したモリブデン含有物が所定時間滞留するように適宜設定することができる。また、キルン内筒1は回転機構により回転可能であってもよく、その回転数は導入したモリブデン含有物が所定時間滞留するように適宜設定することができる。
【0020】
キルン内筒1へのモリブデン含有物の供給方法は、スクリューフィーダー、振動フィーダー、空気圧送などの連続的粉体供給手段のいずれを用いてもよいし、間欠的な供給でも構わない。また、モリブデン含有物供給口7とキルン内筒1の内壁との間にはクリアランスを設け、そこから排気や集塵を行ってもよいし、粉塵飛散を防止するためにクリアランスを無くしてもよい。
【0021】
キルンを加熱する手段は、バーナー、電気ヒーターによりキルン内筒1の外周から加熱する形態や、バーナーなどにより発生した熱風や加熱オイルによりキルン外壁を加熱する方法が挙げられるが、設備の簡略化の面ではバーナーによりキルン外壁を加熱する方法が好ましい。
【0022】
キルン内筒1の外周には、該キルン内筒1の外周面から間接的にキルン内筒1内部を加熱する入口側バーナー2、出口側バーナー3が、該キルン内筒1の長手方向に配置されている。
【0023】
図1では、バーナーは2つ設置されているが、バーナーの個数はキルン内筒1内部を加熱できる能力があれば特に限定されない。しかし、キルン内筒1内全域の温度を所定温度にする際に、キルン内筒1内壁温度が800℃以下となる個数を選定することが好ましい。また、複数のバーナーの配置は、該キルン内筒1の長手方向に1列に配置してもよく、複数列配置してもよい。
【0024】
また、キルン内筒1、入口側バーナー2及び出口側バーナー3は、排気管を備えたキルンジャケット13に覆われている。キルンジャケット13には、バーナー燃焼排ガスを排出するためのキルン入口側ジャケット排気管11と、キルン出口側ジャケット排気管12が備えられている。キルンジャケット13の排気管の数は、図1の例では2つであるが、キルン内筒1内を所定温度とすることができるのであれば、その数や位置はとくに限定されない。また、バーナー燃焼排ガスの排出方法についても特に限定されず、キルンを設置する場所の制約により適切に選択すればよい。排出するバーナー燃焼排ガスの圧力で系外に放出してもよく、また吸引ブロアで吸引してもよい。また、排気管にダンパーを設け、各排気管からのバーナー燃焼排ガスの排気量を調節してキルンジャケット13内部の温度分布を制御できるようにしてもよい。
【0025】
キルン内筒1内部には、モリブデン含有物排出口14側から複数の主送気口6を設けた主送気管5が、主送気口6から供給される酸素含有ガスがモリブデン含有物に直接吹き付けられるように挿入されている。また、モリブデン含有物供給口7側から複数の補助送気口9を設けた補助送気管8が、補助送気口9から供給される酸素含有ガスがモリブデン含有物に直接吹き付けられるように挿入されている。
【0026】
主送気口6は、キルン内筒1内部のモリブデン含有物に酸素含有ガスを直接吹き付ける形態であれば特に限定されず、図1に示すように主送気管5の側面に複数の主送気口6を設ける形であってもよく、また、それぞれ独立したノズルであってもよい。しかし、キルン内筒1内の気体の流れの観点から、図1に示すように、複数の主送気口6を設けた主送気管5を挿入することが好ましい。
【0027】
キルン内筒1内部において、主送気口6からモリブデン含有物に酸素含有ガスを吹き付ける位置は、キルン内筒1内部の温度、雰囲気及びキルン内筒1内でのモリブデン含有物の変化を適正化するため、キルン内筒1中央部よりモリブデン含有物排出口14側とすることが好ましい。特に、キルン内筒1の外周に設置されたバーナーのうち、モリブデン含有物供給口7よりも後方にあり尚且つモリブデン含有物供給口7に最も近いバーナーよりも後方が好ましい。
【0028】
補助送気口9の形態についても、キルン内筒1内部のモリブデン含有物に酸素含有ガスを直接吹き付ける形態であれば特に限定されず、図1に示すように補助送気管8の側面に複数の補助送気口9を設ける形であってもよく、また、それぞれ独立したノズルであってもよい。
【0029】
キルン内筒1内部において、補助送気口9からモリブデン含有物に酸素含有ガスを吹き付ける位置は、キルン内筒1内部の温度、雰囲気を適正化する観点から、キルン内筒1中央部よりモリブデン含有物供給口7側とすることが好ましい。特に、図1に示すように、キルン内筒1の外周に設置されたバーナーのうち、モリブデン含有物供給口7に最も近いバーナーの対面に補助送気口9が位置すること好ましい。
【0030】
なお、キルン内筒1内に導入された酸素含有ガスは、主にモリブデン含有物排出口14から排出されるが、モリブデン含有物供給口7及びモリブデン含有物排出口14のいずれか一方又は双方に設けられたクリアランスから排気することもできる。
【0031】
また、図1に示すキルンにおいては、キルンジャケット13からのバーナー燃焼排ガスの排気温度は、キルン入口側ジャケット排気管11及びキルン出口側ジャケット排気管12とキルンジャケット13との接続部分に設置した熱電対15、16により測定することができる。
【0032】
さらに、キルン内筒1内のモリブデン含有物の温度は、キルン内筒1内に設置された熱電対(不図示)により測定することができる。熱電対の設置位置は、キルン内筒1内壁に接していなければ特に限定されず、またその個数も特に限定されないが、キルン内筒1内のモリブデン含有物の温度分布を把握するためには複数個設置することが好ましい。熱電対の固定方法は、キルン内筒1内に張ったワイヤーに熱電対を吊り下げたり、キルン内筒1内にシャフトを通してそのシャフトに熱電対固定用サポートを設置し、熱電対固定用サポートに沿わせて熱電対を取り付けるなど様々な手法がある。しかし、キルン内筒1内のモリブデン含有物の温度が測定できれば特にその設置方法についても限定されない。
【0033】
(モリブデン含有物の焼成方法)
キルン内筒1に供給されるモリブデン含有物としては、焼成後にモリブデン酸化物となり、触媒原料として用いることができるものであれば、その種類やモリブデン含有量は限定されない。例えばモリブデンを含む鉱石を焙焼して得られた粗三酸化モリブデンを純水に分散させた後アンモニア水に溶解し、濾過後の溶液に塩酸水溶液を添加してpH調整を行って得られた沈殿物を純水、硝酸アンモニウム又は塩化アンモニウム低濃度水溶液に分散・洗浄し、遠心濾過等により含水量を低減して得た前駆体沈殿物を乾燥したものが挙げられる。また、該前駆体沈殿物にアンモニア水を添加して溶解・晶析して得られたパラモリブデン酸アンモニウムやそれを乾燥したものが挙げられる。さらには、(メタ)アクロレインの気相酸化による(メタ)アクリル酸の製造に用いられたモリブデン含有廃触媒を、溶解、沈殿、乾燥などの処理を加えたものを用いてもよい。本発明に係る方法においては、原料であるモリブデン含有物に水分やアンモニアがそれぞれ1%以上含まれる場合、キルン内筒1内部でモリブデン含有物の構造変化や揮発性ガスが発生し、キルン内筒1内の不均一性が増大するため、本発明が特に有効となる。
【0034】
主送気口6及び補助送気口9からキルン内筒1に導入する酸素含有ガスは、供給するモリブデン含有物の酸化に必要な等量以上が供給されていれば、特にその種類、濃度は限定されないが、運転の容易さやコストの面から空気を用いることが好ましい。
【0035】
また、キルン内筒1に導入する酸素含有ガス全体の供給速度は、酸素含有ガスのキルン内筒1内の滞在時間として0.01分から1000分が好ましく、1分から200分がより好ましい。
【0036】
また、導入する酸素含有ガスの温度としては特に限定されないが、空気を酸素含有ガスとして用いる場合は外気を取り込むことが経済的に有利であるため、−10〜40℃程度となることが一般的である。さらに省エネルギーの観点から、排熱を利用して酸素含有ガスの温度を高めても構わない。
【0037】
本発明においては、主送気口6からキルン内筒1に導入する酸素含有ガスの供給速度は、補助送気口9からキルン内筒1に導入する酸素含有ガスの供給速度以上である。主送気口6からキルン内筒1に導入する酸素含有ガスのキルン内筒1内の滞在時間(主送気滞在時間)に対する、補助送気口9からキルン内筒1に導入する酸素含有ガスのキルン内筒1内の滞在時間(補助送気滞在時間)の比は1から10の間であることが好ましい。これにより、キルン内筒1内に好ましい気体の流れが形成される。
【0038】
キルン内筒1内の酸素含有ガスの流れは図1の黒色の矢印で示される。キルン内筒1下部の酸素含有ガスがキルン内筒1上部に移動し、キルン内筒1上部の酸素含有ガスがモリブデン含有物排出口14に向けて流れる。補助送気によりキルン内筒1前方下部の雰囲気が更新され、かつキルン内筒1内全域でガス置換が促進されるとともに、補助送気<主送気によりキルン内筒1後方からの酸素含有ガスがキルン内筒1前方に移動し、キルン内筒1後方ほど新鮮な酸素含有ガスが供給されやすくなる。なお、滞在時間は、キルン内筒の容量をガス供給速度で除することにより算出する。
【0039】
キルン内筒1の外周に設置された入口側バーナー2、出口側バーナー3の各々の出力バランスは、出口側バーナー3の出力が入口側バーナー2の出力よりも大きければ、キルン内筒1内温度を所定範囲にするために適正に選ぶことができる。モリブデン含有物をキルン内筒1に投入した直後は構造変化や揮発性ガスの発生を伴うことから、モリブデン含有物供給口7側に設置された入口側バーナー2よりも、モリブデン含有物排出口14側に設置された出口側バーナー3のバーナー出力を高めることが肝要である。これにより、キルン内筒1内の熱及び気体の流れを適正にすることが可能となる。このように、本発明においては、キルン内筒1内におけるガス供給速度と温度、即ちキルン内雰囲気を調整することにより、構造変化や揮発性ガスの発生を伴うキルン内筒1前方での急速なモリブデン含有物の変化を抑え、モリブデン含有物をキルン内筒1後方で充分に酸化させることができる。なお、図1ではバーナーが2つ設置された例を示しているが、バーナーが3つ以上設置されている場合には、バーナーの出力がモリブデン含有物供給口7側からモリブデン含有物排出口14側に向けて大きく設定されているものとする。
【0040】
キルン内筒1内におけるモリブデン含有物の温度は、500℃以上、600℃以下であることが好ましい。500℃未満では、モリブデン含有物は充分に酸化されないため、この焼成品を(メタ)アクリル酸製造用触媒原料として用いた場合、活性や選択率が低い場合がある。一方、600℃をこえると、該焼成品を(メタ)アクリル酸製造用触媒原料として用いた場合、活性や選択率が低くなる場合がある。また、モリブデン含有物が飛散し歩留まりが低下する場合がある。なお、本発明においては、キルン内筒1内におけるモリブデン含有物の温度とは、前述したキルン内筒1内に設置された熱電対により、少なくともキルン内筒1内のモリブデン含有物供給口7側(入側)、キルン内筒1中央部(中央)、モリブデン含有物排出口14側(出側)の3箇所について測定した温度とする。該3箇所におけるモリブデン含有物の温度が全て前記範囲内の温度であることが好ましい。
【0041】
また、500℃以上、600℃以下に調節されたキルン内筒1内のモリブデン含有物の滞在時間が30分以上、300分以下であることが好ましい。前記温度範囲におけるモリブデン含有物のキルン内筒1内での滞在時間が30分未満であると、モリブデン含有物は充分に酸化されないため、この焼成品を(メタ)アクリル酸製造用触媒原料として用いた場合、活性や選択率が低い場合がある。また、滞在時間が300分より大きいと、装置生産効率が悪化する他に、モリブデン含有物のシンタリングが進行しこの焼成品を(メタ)アクリル酸製造用触媒原料として用いた場合、活性や選択率が低い場合がある。
【0042】
キルンジャケット13と、キルン入口側ジャケット排気管11及びキルン出口側ジャケット排気管12の接続部分におけるバーナー燃焼排ガスの排気温度は、300℃以上、700℃以下であることが好ましい。これらの温度が300℃未満ではキルン内筒1内のモリブデン含有物が酸化するために必要な熱量を十分供給することができない場合がある。また700℃をこえるとキルン内筒1内壁でのスケーリング、塊鉱発生など様々な運転上の問題が発生する場合がある。なお、前記排気温度は、熱電対15、16により測定することができる。
【0043】
((メタ)アクリル酸製造用触媒)
本発明の方法で得られたモリブデン酸化物を原料とする(メタ)アクリル酸製造用触媒は、共沈法、蒸発乾固法、及び酸化物混合法等の、種々の公知の方法を用いて製造することができる。
【0044】
前記触媒の組成は、例えば下記式(1)、(2)のようにモリブデンを含む公知の組成を採用することができる。
【0045】
Moabcde・・・・・(1)
(式中、Mo、P、及びOはそれぞれモリブデン、リン、及び酸素を表す。Xはカリウム、ルビジウム、セシウム、及びタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。Yは鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、バナジウム、クロム、タングステン、マンガン、銀、ホウ素、ケイ素、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、インジウム、イオウ、セレン、テルル、ランタン、及びセリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。a、b、c、d及びeは各元素の原子比を表し、a=12のとき、b=0.1〜3、c=0.01〜3、d=0〜3であり、eは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比である。)。
【0046】
Mopqr2s2tu・・・・・(2)
(式中、Mo、V、及びOはそれぞれモリブデン、バナジウム、及び酸素を示す。Aは鉄、コバルト、クロム、アルミニウム、及びストロンチウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示す。X2はゲルマニウム、ホウ素、ヒ素、セレン、銀、ケイ素、ナトリウム、テルル、リチウム、アンチモン、リン、カリウム、及びバリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示す。Y2は、マグネシウム、チタン、マンガン、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、タングステン、タンタル、カルシウム、スズ、及びビスマスからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示す。また、p、q、r、s、t及びuは各元素の原子比を表し、p=12のときq=0.01〜6、r=0〜5、s=0〜10、t=0〜5であり、uは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比である。)。
【0047】
前記式(1)で表される組成を有する触媒を製造するには、前記モリブデン酸化物と前記モリブデン酸化物以外の製造原料を用いて、モリブデン、リン及びX元素を少なくとも含むスラリーを乾燥したものを焼成する方法を用いることができる。また、前記式(2)で表される組成を有する触媒を製造するには、前記モリブデン酸化物と前記モリブデン酸化物以外の製造原料用いて、モリブデン及びバナジウム元素を少なくとも含むスラリーを乾燥したものを焼成する方法を用いることができる。
【0048】
前記モリブデン酸化物以外の原料としては、各元素の硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、酸化物、酸素酸、及びハロゲン化物等を単独又は組み合わせて使用することができる。例えば、リンの原料としてはリン酸、五酸化二リン及びリン酸アンモニウム等が、バナジウムの原料としてはメタバナジン酸アンモニウム、五酸化バナジウム及び塩化バナジウム等が使用できる。
【0049】
本発明において、スラリーの乾燥方法としては、箱型乾燥機、噴霧乾燥機、ドラムドライヤー及びスラリードライヤー等を用いる乾燥方法が挙げられる。その際に得られた乾燥物(触媒前駆体)は粉体状であるほうが後に触媒を成形する上で好ましい。乾燥物はそのまま成形してもよいし、焼成した後に成形してもよい。成形方法としては、例えば、打錠成型、押出成形、造粒、及び担持等が挙げられる。担持触媒の担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、及びシリコンカーバイド等の不活性担体が挙げられる。成形に際しては、成形物の比表面積、細孔容積、及び細孔分布を制御したり、機械的強度を高めたりする目的で、例えば、硫酸バリウム及び硝酸アンモニウム等の無機塩類、グラファイト等の滑剤、セルロース類、でんぷん、ポリビニルアルコール、及びステアリン酸等の有機物、シリカゾル及びアルミナゾル等の水酸化物ゾル、ウィスカー、ガラス繊維及び炭素繊維等の無機質繊維等の添加物を適宜添加してもよい。
【0050】
成形体を焼成する場合、焼成は後述する気相接触酸化反応により(メタ)アクリル酸を製造するための反応器に充填する前に別途行ってもよく、該反応器の中で行ってもよい。焼成条件は、用いる触媒の原料、触媒組成、及び調製条件等によって異なるが、空気等の酸素含有ガス及び/又は不活性ガス流通下で、300〜500℃で焼成するのが好ましく、300〜450℃で焼成するのがより好ましい。焼成時間としては、0.5時間以上が好ましく、1〜40時間がより好ましい。
【0051】
((メタ)アクリル酸の製造方法)
以下に、前記(メタ)アクリル酸製造用触媒を用い、(メタ)アクロレインの気相接触酸化により(メタ)アクリル酸を製造する方法について説明する。
【0052】
反応器の形式は特に限定されず、例えば、固定床反応器及び流動床反応器などが利用できるが、固定床反応器が好ましく、固定床多管式反応器がより好ましい。反応は(メタ)アクロレインと分子状酸素とを含む混合ガス(以下、原料ガスという。)を反応器中の触媒に接触させることにより行う。
【0053】
前記式(1)又は(2)の触媒を用いて(メタ)アクロレインの気相接触酸化により(メタ)アクリル酸を製造する場合、原料ガス中の(メタ)アクロレインの濃度は広い範囲で変えることができるが、1〜20容量%が好ましく、3〜10容量%がより好ましい。原料の(メタ)アクロレイン中には、水及び低級飽和アルデヒド等の実質的に反応に影響を与えない不純物が少量含まれていてもよい。
【0054】
原料ガス中の分子状酸素の量は(メタ)アクロレインの0.4〜4モル倍が好ましく、0.5〜3モル倍がより好ましい。原料ガスの分子状酸素源には空気を用いるのが工業的に有利であるが、必要に応じて純酸素で酸素を富化した空気も使用できる。また原料ガスは、窒素及び炭酸ガス等の不活性ガス、並びに水蒸気等で希釈されていることが好ましい。
【0055】
気相接触酸化反応における反応圧力は大気圧〜数気圧程度が好ましい。反応は固定床で行うことが好ましい。反応温度は、200〜450℃が好ましく、250〜400℃がより好ましい。原料ガスと触媒の接触時間は1.5〜15秒が好ましく、2〜7秒がより好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例、比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において「部」は質量部を意味する。
【0057】
〔実施例1〕
(モリブデン含有物の調製)
メタクリル酸の製造に使用された使用済み触媒100部(使用済み触媒は、モリブデン55.8部、リン1.5部、バナジウム1.2部、銅0.6部、鉄0.1部、ヒ素0.7部及びセシウム7.7部を含む)を純水400部に分散させた。これに45質量%水酸化ナトリウム水溶液130部を加え、60℃で3時間攪拌後に残渣をろ別した。この溶液を36質量%塩酸で中和した。その後、塩化マグネシウム6水和物20.5部を純水50部に溶解させた溶液と29質量%アンモニア水4.5部を加え、さらに29質量%アンモニア水を加えてpHを9に調整した。その後、攪拌しながら30℃で3時間保持し、生成した沈殿物と溶液とをろ別した。このようにして得られた溶液に36質量%塩酸を加えてpHを1.0に調整した後、攪拌しながら30℃で3時間保持した。このようにして得られた沈殿物をろ別、純水で洗浄を行い、モリブデン含有物を得た。このモリブデン含有物には、モリブデン54.3部、バナジウム1.0部、セシウム2.9部、水4部、アンモニア2部が含まれていた。なお、該モリブデン含有物はモリブデン酸水和物、モリブデン酸アンモニウム塩等の混合物であり、水は水和水、付着水の両方を含む。
【0058】
(モリブデン含有物の焼成)
内径:長さ=1:6であり、均等に2基のバーナー2、3が配置された、図1に示す円筒形の外熱式ロータリーキルンを使用した。
【0059】
キルン内部のモリブデン含有物排出口14側には、主送気口6を設けた主送気管5が、主送気口6から排出される空気がモリブデン含有物に直接吹き付けられるように設置されている。また、主送気口6の対面には、キルン内筒1を介してキルン出口側バーナー3が設置されている。
【0060】
同様に、キルン内部のモリブデン含有物供給口7側には、補助送気口9を設けた補助送気管8が、補助送気口9から排出される空気がモリブデン含有物に直接吹き付けられるように設置されている。また、補助送気口9の対面には、キルン内筒1を介して入口側バーナー2が設置されている。
【0061】
また、キルン内筒1、入口側バーナー2及び出口側バーナー3は、キルンジャケット13で覆われている。キルンジャケット13には、キルン入口側ジャケット排気管11及びキルン出口側ジャケット排気管12が備えられ、各排気管内には排気バランスを調節できるダンパーが設けられている。
【0062】
主送気管5への送気は、主送気ライン閉止弁17にて有効、無効を切り替えた。また、補助送気管8への送気は、補助送気ライン閉止弁10にて有効、無効を切り替えた。主送気管5及び補助送気管8に対し、ブロア4を用いて所定量の空気を供給し、キルン内筒1内に導入した。キルンジャケット13内の気体の排気バランスは、キルン入口側ジャケット排気管11及びキルン出口側ジャケット排気管12内に設けられたダンパーにより調整した。キルンジャケット13からの排気温度は、キルン入口側ジャケット排気管11及びキルン出口側ジャケット排気管12とキルンジャケット13との接続部に設置した熱電対15、16により測定した。キルン内のモリブデン含有物の温度は、キルン内筒1内のモリブデン含有物供給口7側(入側)、キルン内筒1中央部(中央)、モリブデン含有物排出口14側(出側)に3箇所設置した熱電対(不図示)により計測した。
【0063】
キルン内筒1に、前記モリブデン含有物を供給して焼成を行った。キルン内筒1内の主送気滞在時間を43分、補助送気滞在時間を142分とした。また、キルンジャケット13の排気温度をキルン入側(熱電対15で測定)で590℃、キルン出側(熱電対16で測定)で640℃となるように入口側バーナー2、出口側バーナー3の出力を調整した。この状態のキルン内筒1に、モリブデン含有物をキルン内筒1内滞在時間が1時間となるように供給して連続的に焼成を行い、モリブデン酸化物1を得た。この時キルン内筒1内のモリブデン含有物の温度は、入側:中央:出側で530℃、550℃、530℃であった。
【0064】
(触媒の製造)
純水400部に、前記モリブデン酸化物1を100部、85質量%リン酸7.3部、五酸化バナジウム4.7部、酸化銅0.9部及び酸化鉄0.2部を加え、還流下で5時間攪拌した。得られた混合液を50℃まで冷却した後、29質量%アンモニア水37.4部を滴下し、15分間攪拌した。次いで、硝酸セシウム9.0部を純水30部に溶解した溶液を滴下し、15分間攪拌した後に加熱攪拌しながら蒸発乾固し、固形物を得た。得られた固形物を130℃で16時間乾燥したものを加圧成型し、空気流通下に380℃で5時間熱処理して触媒1(酸素原子を除く組成:Mo121.1Fe0.05Cu0.20.9Cs0.8)を得た。なお、触媒1の組成は、XRF(X−ray Fluorescence)により測定した。
【0065】
(メタクリル酸の製造)
前記触媒1を反応管に充填し、メタクロレイン5容量%、酸素10容量%、水蒸気30容量%及び窒素55容量%の混合ガスを接触時間3.6秒で通じて反応を行い、ガスクロマトグラフにより反応物を分析した。メタクロレインの転化率は以下のように定義した。
転化率(%)=(B/A)×100。
【0066】
ここで、Aは供給したメタクロレインのモル数、Bは反応したメタクロレインのモル数である。反応温度は、触媒の劣化により転化率が低下するに伴い上昇させ、転化率を維持するようにした。このような運転方法での反応温度の上昇速度の逆数を、触媒寿命(日/℃)と定義した。
【0067】
上記方法により、触媒1を用いてメタクリル酸の製造を行ったところ、触媒1の寿命は9.5日/℃であった。
【0068】
〔実施例2〕
実施例1に対し、キルン内筒1内の主送気滞在時間を71分、補助送気滞在時間を71分とし、キルンジャケット13の排気温度をキルン入側で560℃、キルン出側で640℃となるように入口側バーナー2、出口側バーナー3の出力を調整した。それ以外は同様の運転を行い、モリブデン酸化物2を得た。この時キルン内筒1内のモリブデン含有物の温度は入側:中央:出側で510℃、540℃、520℃であった。得られたモリブデン酸化物2を用いて実施例1と同様に触媒2を製造し、触媒2を用いてメタクリル酸の製造を行ったところ、触媒2の寿命は9.75日/℃であった。
【0069】
〔比較例1〕
実施例1に対し、補助送気ライン閉止弁10を閉止して補助送気をカットし、内筒1内の主送気滞在時間は37分とした。そしてキルンジャケット13の排気温度を520℃〜530℃でキルン入側、出側でほぼ同等になるように入口側バーナー2、出口側バーナー3の出力を調整した。それ以外は実施例1と同様の運転を行い、モリブデン酸化物3を得た。この時キルン内筒1内のモリブデン含有物の温度は入側:出側で380℃、520℃となった。得られたモリブデン酸化物3を用いて実施例1と同様に触媒3を製造し、触媒3を用いてメタクリル酸の製造を行ったところ、触媒3の寿命は6.75日/℃であった。
【0070】
〔比較例2〕
実施例1に対し、主送気ライン閉止弁17を閉止して主送気をカットし、内筒1内の補助送気滞在時間は37分とした。そしてキルンジャケット13の排気温度を610℃〜620℃でキルン入側、出側でほぼ同等になるように入口側バーナー2、出口側バーナー3の出力を調整した。それ以外は実施例1と同様の運転を行い、モリブデン酸化物4を得た。この時キルン内筒1内のモリブデン含有物の温度は入側:中央:出側で500℃、520℃、490℃となった。得られたモリブデン酸化物4を用いて実施例1と同様に触媒4を製造し、触媒4を用いてメタクリル酸の製造を行ったところ、触媒4の寿命は7.5日/℃であった。
【0071】
【表1】

【符号の説明】
【0072】
1 キルン内筒
2 入口側バーナー
3 出口側バーナー
4 ブロア
5 主送気管
6 主送気口
7 モリブデン含有物供給口
8 補助送気管
9 補助送気口
10 補助送気ライン閉止弁
11 キルン入口側ジャケット排気管
12 キルン出口側ジャケット排気管
13 キルンジャケット
14 モリブデン含有物排出口
15、16 熱電対
17 主送気ライン閉止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端にモリブデン含有物の供給口を、他方の端に焼成後のモリブデン含有物の排出口を備えるキルンであり、
前記キルンの外周面から間接的に加熱する加熱手段が該キルンの長手方向に複数配置され、
前記キルン内部の前記モリブデン含有物の排出口側及び供給口側各々においてモリブデン含有物に酸素含有ガスを直接吹き付けながらモリブデン含有物を連続的に焼成する方法であって、
前記モリブデン含有物の排出口側における前記酸素含有ガスの供給速度が、前記モリブデン含有物の供給口側における前記酸素含有ガスの供給速度以上であり、
前記複数の加熱手段の出力が、前記モリブデン含有物の供給口側から前記モリブデン含有物の排出口側に向けて大きく設定されているモリブデン含有物の焼成方法。
【請求項2】
前記キルン内部において、
前記モリブデン含有物の排出口側に主送気管と、
前記モリブデン含有物の供給口側に補助送気管と、が挿入されており、
前記主送気管に設けられた複数の主送気口、及び前記補助送気管に設けられた複数の補助送気口より、モリブデン含有物に酸素含有ガスを直接吹き付けながらモリブデン含有物を焼成する請求項1に記載のモリブデン含有物の焼成方法。
【請求項3】
前記加熱手段がバーナーであり、キルン及びバーナーが排気管を備えたキルンジャケットに覆われており、前記キルンジャケットと前記排気管の接続部分におけるバーナー燃焼排ガスの排気温度が、300℃以上、700℃以下である請求項1又は2に記載のモリブデン含有物の焼成方法。
【請求項4】
前記モリブデン含有物のキルン内における温度500℃以上、600℃以下での滞在時間が30分以上である請求項1から3のいずれか1項に記載のモリブデン含有物の焼成方法。
【請求項5】
前記キルン内に供給されるモリブデン含有物が、水分とアンモニアをそれぞれ1%以上含む請求項1から4のいずれか1項に記載のモリブデン含有物の焼成方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の焼成方法により得られたモリブデン酸化物を原料とする(メタ)アクリル酸製造用触媒。
【請求項7】
請求項6に記載の触媒を用いて、(メタ)アクロレインの気相接触酸化により(メタ)アクリル酸を製造する(メタ)アクリル酸の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−230983(P2011−230983A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105498(P2010−105498)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】