説明

モルフィン−6−グルクロニドまたはこの誘導体の1つの合成

本発明は、モルフィン−6−グルクロニドまたはこの誘導体の1つを調製するための方法に関し、この方法は、次の段階:(i)式(I)


(この式中のRは、カルボニル基、CORCOまたはSOSOを表す。)を有する化合物と、式(II)


(この式中のPGは、アセチル、イソブチリル、ベンゾイルまたはピバロイル基を表し、Xは、トリハロゲノアセトアミダート基を表し、およびRは、(C−C)アルキルカルボキシラート基を表す。)とを、芳香族溶媒およびトリメチルシランのトリフルオロメタンスルホニルの存在下で反応させる段階;(ii)段階(i)において得た生成物を強塩基性物質と反応させる段階;およびその後、(iii)段階(ii)において得た生成物を回収する段階、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルフィン−6−グルクロニド(M6G)またはこの誘導体を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モルフィンは、現在、中度から強度の疼痛の治療において最も広く用いられている鎮痛薬である。このオピオイドは、手術後急性疼痛の症例の約80%において用いられている。この高い効力にもかかわらず、モルフィンの使用は、オピオイドに特有の多くの望ましくない副作用、例えば呼吸抑制、悪心、嘔吐、腸通過の阻害、依存症および耐性、を伴う(Minoru Nariata et al.,Pharmacol.Et Ther.2001,89,1−15)。
【0003】
モルフィンが、具体的にはモルフィン−6−グルクロニド(M6G)の形成につながる実質的な代謝を受けることは公知である。この代謝産物は、この親水性のため脳にはあまり浸透しない。これは、中枢性投与によりモルフィンによって提示されるものより強い鎮痛活性と共に、呼吸抑制、悪心および嘔吐の低減を有する(Paul et al.,J.Pharmacol.Exp.The 1989,251,477−483;Frances et al.,J.Pharmacol.Exp.The 1992,262,25−31)。WO 95/05831には、疼痛を治療するための経口形態でのM6Gの使用が記載されている。
【0004】
M6Gは、1968年のYoshimuraiらによって合成された(Yoshimura,H;Oguri,K.;Tsukamoto,H.Chem.Pharma Bull.1968,16,2114−2119)。工業規模での、Koenings−Knorr原理に基づくこの方法は、収率不良方法である。さらに、最終製品中に極微量に存在する重金属の除去が難しい。最終的に、銀塩を再循環させなければならない。さらに、過塩素酸ルチジニウムの存在下でのオルトエステル形態でのグリコシルドナーの合成によるM6Gの合成方法がWO 99/64430に提案されている。しかし、この方法は、約30%という不良なグリコシル化収率しか与えない。さらに、攪拌しながらの不均質媒体中でのグリコシル化を伴うこれらの方法は、工業規模での実施が難しい。
【0005】
O−グリコシル化を行うための他の方法、とりわけ、イミダートまたはチオアリールの形態での活性化による方法が、構想された。特別な条件、即ち、厳密な無水条件、即ち100ppm未満の含水量、および低温、のもとでの実施を必要とするこれらの手順は、工業レベルで大きな制約を課す。さらに、チオアリール中間体経由での活性化は、一般にチオフェノールを使用し、このチオフェノールは、工業規模での実施という状況では問題である吐き気を催す臭気を発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第95/05831号
【特許文献2】国際公開第99/64430号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Minoru Nariata et al.,Pharmacol.Et Ther.2001,89,1−15
【非特許文献2】Paul et al.,J.Pharmacol.Exp.The 1989,251,477−483
【非特許文献3】Frances et al.,J.Pharmacol.Exp.The 1992,262,25−31
【非特許文献4】Yoshimura,H.;Oguri,K.;Tsukamoto,H.Chem.Pharma Bull.1968,16,2114−2119
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、収率が高いばかりでなく技術的制約が最小限でもある、工業規模でこのような誘導体を生産するための方法が、依然として必要とされている。
【0009】
本発明の目的は、少なくとも60%の収率でM6Gまたはこの誘導体を調製するための方法であって、このグリコシル化段階が、均質媒体中で行われ、湿分に対して耐性であり、即ち3000ppmまでの含水量に耐える、および約20℃の温度で行うことができる方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、非常に良好な立体選択性の獲得を可能にする、グリコシル化誘導体のドナーとしてのトリハロアセチルイミダートを有するグリコシル誘導体と、グリコシル化誘導体のアクセプターとしてのジモルフィン誘導体との併用を含む、本発明の方法によって達成される。
【0011】
最小限の工業的制約しか有さない、満足のいく収率を有する方法を、今般、発見した。
【0012】
従って、第一の態様によると、本発明は、M6Gまたはこの誘導体を調製するための方法に関し、この方法は、
下記式(I):
【0013】
【化1】

(この式中、
は、カルボニル基、CORCO(この場合のRは、基(C−C)アルカン−ジイル、(C−C)アルケン−ジイル、(C−C)アルキン−ジイル、ヘテロ(C−C)アルカン−ジイル、ヘテロシクロ(C−C)アルカン−ジイル、(C−C14)アレーン−ジイル、ヘテロ(C−C10)アレーン−ジイル、ビ(C10−C16)アレーン−オキシド−ジイル、またはビ(C10−C16)アレーン−ジイルを表す。)、SOSO(この場合のRは、基(C−C)アルカン−ジイル、(C−C)アルケン−ジイル、(C−C)アルキン−ジイル、ヘテロ(C−C)アルカン−ジイル、ヘテロシクロ(C−C)アルカン−ジイル、(C−C14)アレーン−ジイル、ヘテロ(C−C10)アレーン−ジイル、ビ(C10−C16)アレーン−オキシド−ジイルまたはビ(C10−C16)アレーン−ジイルを表す。)を表す。)
に対応する化合物と、下記式(II):
【0014】
【化2】

(この式中、
PGは、アセチル、イソブチリル、ベンゾイルまたはピバロイル基を表し、
Xは、トリハロアセトイミダート基を表し、および
は、基(C−C)アルキルカルボキシラートを表す。)
に対応するグルクロン酸誘導体を、
− −20℃未満のまたは−20℃に等しい融点を有する溶媒であって、非置換である、またはハロゲン原子、基(C−C)アルキルおよび基(C−C)アルキルオキシによって構成される群から選択される1つ以上の置換基で置換されている芳香族溶媒の、および
− トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルの
存在下で反応させる段階と、
(ii)段階(i)において得た生成物と強塩基性物質とを反応させる段階と、その後、
(iii)段階(ii)において得た生成物を回収する段階と
を含む。
【0015】
本発明の主題は、下記式(III)に対応する化合物でもある:
【0016】
【化3】

(式中、
は、前に定義したとおりであり、
およびRは、独立して、前に定義したとおりの基PG、または下記式(IV):
【0017】
【化4】

(この式中のRおよびPGは、前に定義したとおりである。)
の基を表すが、但し、
およびRのうちの少なくとも一方は、式(IV)の基を表すことを条件とする。)
本発明の主題は、下記式(I)に対応する化合物でもある:
【0018】
【化5】

(式中のRは、前に定義したとおりである。)。
【0019】
定義
本発明の文脈では、以下の定義が適用される:
− 基PG:第一に、合成中にヒドロキシルまたはアミンなどの反応性官能基を保護すること、および第二に、合成終了時に損なわれていない反応性官能基を再生させることを可能にする保護基;保護基のならびに保護および脱保護法の例は、“Protective Groups in Organic Synthesis”,Greene et al.,2nd Edition(John Wiley & Sons,Inc.,New York),1991に与えられている;特に、アセチル、イソブチリル、ベンゾイルおよびピバロイル基に言及されるだろう;
− ハロゲン原子:フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子;
− 基(C−C)アルキル:1から4個の炭素原子を含有する非置換または置換、線状または分岐飽和脂肪族基;言及することができる例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチルなどの基が挙げられる;
− ヒドロキシル基:基−OH;
− 基(C−C)アルキルオキシ:基−O−(C−C)アルキル(この場合の基(C−C)アルキルは、前に定義したとおりである。);
− カルボニル基、基C=O;
− 基(C−C)アルカン−ジイル、1から4個の炭素原子を含有する飽和または不飽和、線状または分岐または環状二価飽和脂肪族基;言及することができる例としては、メタン−ジイル(−CH−)、エタン−ジイル(−CH−CH−)、プロパン−2,3−ジイル(−CH(CH)CH−)、プロパン−1,3−ジイル(−CH−CH−CH−);などの基が挙げられる;
− 基(C−C)アルケン−ジイル、例えば1つまたは2つのエチレン性不飽和を含む、2から4個の炭素原子を含有する、線状または分岐、一不飽和または多不飽和二価脂肪族基;言及することができる例としては、エチレン−ジイル(−CH=CH−)、1−プロペン−1,3−ジイル(−CH−CH=CH−)などの基が挙げられる;
− 基(C−C)アルキン−ジイル、例えば1つまたは2つのアセチレン性不飽和を含む、2から4個の炭素原子を含有する、線状または分岐、一不飽和または多不飽和二価脂肪族基;言及することができる例としては、エチン−ジイル(−CH≡CH−)および1−プロピン−1,3−ジイル(−C≡C−CH2−)などの基が挙げられる;
− 基(C−C14)アレーン−ジイル、5個と14個の間の炭素原子を好ましくは含有する置換または非置換二価環状芳香族基;言及することができる例としては、基
【0020】
【化6】

が挙げられる;
− 基ヘテロ(C−C)アルカン−ジイル、1個以上のヘテロ原子、例えば窒素、酸素または硫黄、を含む、好ましくは1個と4個の間の炭素原子を含有する、上で定義したとおりの置換または非置換アルカン−ジイル基;言及することができる例は、エーテルオキシド−ジイル基である;
− 基ヘテロシクロ(C−C)アルカン−ジイル、1個以上のヘテロ原子、例えば窒素、酸素または硫黄、を含む、好ましくは3個と6個の間の炭素原子を含有する、上で定義したとおりの置換または非置換基シクロ(C−C)アルカン−ジイル;言及することができる例としては、オキシラン−ジイル、アジリジン−ジイル、チラン−ジイルおよびピラン−ジイル基が挙げられる;
− 基ヘテロ(C−C10)アレーン−ジイル、好ましくは4個と10個の間の炭素原子を含有する、および1個以上のヘテロ原子、例えば窒素、酸素または硫黄、を含む、二価環状芳香族基;言及することができる例としては、基
【0021】
【化7】

が挙げられる;
− 基ビ(C10−C16)アレーン−ジイル、10から16個の炭素原子を好ましくは含有する、ことによるとそれぞれが独立して置換されているまたは非置換である2個の芳香族環を含む、二価の基;基
【0022】
【化8】

に言及することができる、
基ビ(C10−C16)アレーン−オキシド−ジイル、10から16個の炭素原子を含有する、それぞれが独立して置換されているまたは非置換である2個の芳香族環を含む、二価の基;言及することができる例は、基
【0023】
【化9】

である;および
− 基−(C−C)アルキルカルボキシラート、基−CO−O−(C−C)アルキル、この基(C−C)アルキルは上で定義したとおりである。
【0024】
「強塩基性物質」という表現は、中性水溶液に完全に溶解するまたは中性水溶液中での高い解離度を少なくとも有する任意の塩基性物質を、当業者に公知の要領で、示す。「強塩基性物質」という表現は、詳細には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムおよび水酸化アンモニウムを示す。
【0025】
− 用語「室温」は、20から25℃にわたる温度を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
式(I)の化合物
【0027】
【化10】

(式中、
は、カルボニル基、CORCO(この場合のRは、基(C−C)アルカン−ジイル、(C−C)アルケン−ジイル、(C−C)アルキン−ジイル、ヘテロ(Cx1−Cy1)アルカン−ジイル、ヘテロシクロ(C−C)アルカン−ジイル、(C−C14)アレーン−ジイル、ヘテロ(C−C10)アレーン−ジイル、ビ(C10−C16)アレーン−オキシド−ジイルまたはビ(C10−C16)アレーン−ジイルを表す。)、SOSO(この場合のRは、基(C−C)アルカン−ジイル、(C−C)アルケン−ジイル、(C−C)アルキン−ジイル、ヘテロ(C−C)アルカン−ジイル、ヘテロシクロ(C−C)アルカン−ジイル、(C−C14)アレーン−ジイル、ヘテロ(C−C10)アレーン−ジイル、ビ(C10−C16)アレーン−オキシド−ジイルまたはビ(C10−C16)アレーン−ジイルを表す。)を表す。)。
【0028】
式(I)の化合物の中では、特に、
− テレフタル酸ジモルフィン−3−イル、
− イソフタル酸ジモルフィン−3−イル、
− フタル酸ジモルフィン−3−イル、
− フマル酸ジモルフィン−3−イル、
− ベンゼン−1,2−ジスルホン酸ジモルフィン−3−イル、
− ベンゼン−1,3−ジスルホン酸ジモルフィン−3−イル、
− チオフェン−2,5−ジカルボン酸ジモルフィン−3−イル、
− ナフタレン−2,7−ジカルボン酸ジモルフィン−3−イル、
− 4,4’−オキシ安息香酸ジモルフィン−3−イル、
− ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ジモルフィン−3−イル、および
− 炭酸ジモルフィン−3−イル
に言及することができる。
【0029】
前に定義したとおりの式(I)の化合物は、様々な方法に従って、とりわけ、モルフィンのフェノール基のカルボン酸でのエステル化、および共沸蒸留による水の除去によって、調製することができる。
【0030】
下で説明する方法に従ってこれを調製することもできる。
【0031】
本発明の方法の1つの特定の実施形態によると、これは、段階(i)の前に、水と、強塩基性物質と、−20℃未満のまたは−20℃に等しい融点を有する溶媒であって、非置換である、またはハロゲン原子、基(C−C)アルキルおよび基(C−C)アルキルオキシによって構成される群から選択される1つ以上の置換基で置換されている芳香族溶媒とを少なくとも含む二相媒体中で、式RClの化合物(この式中のRは、前に定義したとおりである。)とモルフィンを反応させる段階を含む。
【0032】
式(I)の化合物を調製するためのこの手順において、前記モルフィンは、好ましくは、式RClの化合物に対して過剰に、例えば化合物RClの1molにつき2.2molのモル比で、導入される。
【0033】
使用する強塩基性物質は、水酸化ナトリウムであり得る。
【0034】
上で定義した方法において使用することができる溶媒の中では、特に、クロロベンゼン、トルエン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリフルオロベンゼンおよびメシチレンに言及することができる。有利にはクロロベンゼンを使用する。これが試薬の最高の可溶化をもたらすからである。
【0035】
有利には、モルフィンと水の混合物を先ず調製し、これに強塩基性物質を、10以上のpHを得ることができるようにする量で添加する。この混合物を、均質溶液が得られるまで、攪拌する。溶媒および式RClの化合物をこの均一溶液に、好ましくは、ゆっくりと、および相間移動を可能にするために激しく攪拌しながら、添加する。
【0036】
本発明の主題は、式(I)に対応する化合物でもある。
【0037】
これらの化合物は、M6Gまたはこの誘導体を合成するための中間体として有用である。
【0038】
式(II)の化合物
下記式(II)に対応するグルクロン酸誘導体:
【0039】
【化11】

(式中、
PGは、アセチル、イソブチリル、ベンゾイルまたはピバロイル基を表し、
Xは、トリハロアセトイミダート基を表し、および
は、基(Cx1−Cy1)アルキルカルボキシラートを表す。)。
【0040】
式(II)のグルクロン酸誘導体の中では、特に、以下の特徴:
− PGが、アセチル基を表す、
− Xが、基−OCNHClまたは基−OCNPhCFを表す、および
− Rが、メチルカルボキシラート基を表す、
の1つ以上を有する誘導体に言及することができる。
【0041】
本発明の方法の1つの特定の実施形態によると、式(II)のグルクロン酸誘導体は、メチル2,3,4−トリ−O−アセチル−α−D−グルコピラノシルウロナートトリクロロアセトイミダートである。
【0042】
式(II)の化合物は、当業者に周知である様々な方法に従って調製することができる。
【0043】
例えば、下記スキーム1において説明する方法に従って、メチル2,3,4−トリ−O−アセチル−α−D−グルコピラノシルウロナートトリクロロアセトイミダートを合成することができる:
スキーム1
【0044】
【化12】

【0045】
このような合成方法は、とりわけ、2,3,4−トリ−O−アセチル−α−D−グルコピラノシルウロナートトリクロロアセトイミダートについては、Chem.Pharm.Bull.53(6)684−687(2005)に、トリ−O−ピバロイル誘導体についてはJ.Chem.Soc.Perkin Trans.1 1995に、およびトリ−O−ベンゾアート誘導体についてはLiebigs Ann.Chem.1983,570−574に記載されている。
【0046】
段階(i)のパラメータ
前に示したように、本発明の方法において、段階(i)では、芳香族溶媒とトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルの存在下で式(I)の化合物を式(II)のグルクロン酸誘導体と反応させる。
【0047】
使用することができる、前に定義したとおりの芳香族溶媒の中では、特に、クロロベンゼン、トルエン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリフルオロベンゼンおよびメシチレンに言及することができる。前に示したように、特に有利にはクロロベンゼンを段階(i)中および式(I)の化合物の調製中に使用する。
【0048】
1つの特定の実施形態によると、前記式(II)の誘導体の前記式(I)の化合物に対するモル比は、2と5の間であり、および特に4である。
【0049】
弱ルイス酸、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)の存在下で、前記反応を行う。
【0050】
TMSOTfの式(I)の化合物に対するモル比は、2.2と20の間であり、特に3.1である。
【0051】
1つの特定の実施形態によると、TMSOTfを二段階で導入する:グルクロン酸誘導体の添加前に、第一の部分を芳香族溶媒中の式(I)の生成物の溶液に導入して式(I)の化合物の二個の窒素を塩化し、その後、グルクロン酸誘導体の添加後に、残りの部分を導入してO−グリコシル化を果たす。
【0052】
段階(i)の実施は、下記式(III)に対応する化合物の形成をもたらす:
【0053】
【化13】

(式中、
は、前に定義したとおりであり、
およびRは、独立して、前に定義したとおりの基PG、または下記式(IV):
【0054】
【化14】

(この式中のRおよびPGは、前に定義したとおりである。)
に対応する基を表すが、但し、
およびRのうちの少なくとも一方が式(IV)の基を表すことを条件とする。)。
【0055】
本発明の主題は、式(III)に対応する化合物でもある。これらの化合物は、M6Gまたはこの誘導体の合成のための中間体として有用である。
【0056】
好ましくは、RおよびRは、両方とも、式(IV)の基を表す。
【0057】
本発明の主題である式(III)の化合物の中で、化合物の第一の群は、以下の特徴:
− Rが、テレフタロイル基を表す、
− RおよびRのうちの少なくとも一方が、式中のR4がメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルウロナート基でありおよびPGがアセチル基である、式(IV)の基を表す、
の1つ以上を有する。
【0058】
これらの化合物の中では、特に、
− テレフタル酸6−O−アセチルモルフィン−3−イル6−O−(メチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルウロナート)モルフィン−3−イル、および
− テレフタル酸ビス[6−O−(メチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルウロナート)モルフィン−3−イル]
に言及することができる。
【0059】
段階(ii)のパラメータ
前に示したように、段階(i)において得た生成物、即ち、式(III)の化合物、を強塩基性物質と反応させる。
【0060】
1つの特定の実施形態によると、強塩基性物質の添加前に、当業者に公知に方法に従って、例えば、場合により減圧下での蒸発で終わる、有機相の抽出によって、芳香族溶媒を除去する。
【0061】
一般に、その後、式(III)の化合物を水性アルコール混合物に、例えばメタノール/水混合物に、20/80から80/20にわたる比率で、攪拌しながら、均一混合物が得られるまで溶解する。
【0062】
一般に、この混合物を5℃未満のまたは5℃に等しい温度に冷却する。
【0063】
その後、強塩基性物質を、10より大きいまたは10に等しいおよび特に12.5より大きいまたは12.5に等しいpHを得ることができる量で、好ましくは5℃以下に温度を維持しながら、前記混合物に通常導入する。
【0064】
1つの特定の実施形態によると、前記強塩基性物質は、水酸化ナトリウムである。
【0065】
その後、この得られた混合物を、反応を完了させるために十分である時間、例えば1時間、例えば20℃に加熱することがある。
【0066】
M6Gまたはこの誘導体を塩基形態で得ることが望ましいときには、例えば5℃未満のまたは5℃に等しい温度に、予め冷却しておいた前記混合物を、合成すべき生成物のpK未満のpHを有するように、例えばpH5.6に、酸性化する。この酸性化は、詳細には、塩酸の添加によって行うことができる。
【0067】
その後、この得られた混合物を、反応を完了させるために十分である時間、例えば30分間、例えば20℃に加熱することがある。
【0068】
段階(iii)のパラメータ
段階(ii)の後に得た生成物は、得たままの形態で、即ち粗製形態で、例えば濾過およびその後のこの濾液の真空下での濃縮によって、回収することができる。
【0069】
有利には、これを精製された形態で回収することができ、この回収は、当業者に公知の任意の精製に従って、特に、脱塩、適切な場合には、続いてイオン交換樹脂による吸着および脱着の1つ以上の段階、およびその後、場合により、1回以上の溶解/蒸発/再結晶サイクルによって、行うことができる。
【0070】
とりわけ残留酢酸ナトリウムおよびテレフタル酸ナトリウムの回収を目的として、塩含有率を低下させるために、前記濾液を、例えば、M6Gまたはこの誘導体の溶解を可能にする条件下で、例えば50℃で3時間、アルコール、特にメタノールに、再懸濁させることがあり、その後、この得られた混合物を濾過して固形粒子を取り除き、その残留物を例えば減圧下での蒸発によって、乾燥させることがある。
【0071】
イオン交換樹脂を使用して前記精製を続けることもある。1つの特定の実施形態によると、前に得た残留物を脱塩水に再懸濁させ、その後、この懸濁液を、例えば硫酸の添加により、2と4の間の、および特に、3より大きいまたは3に等しいpHに酸性化し、濾過し、この濾液を、M6Gまたはこの誘導体の吸着を可能にする条件下で、例えば20℃で30分間攪拌しながら、カチオン性樹脂と接触させ、その後、濾過する。これらの操作を、この濾液からM6Gまたはこの誘導体が使い果たされるまで繰り返す。その後、塩基性溶液で、例えばアンモニア水で、樹脂を脱着する。得られた塩基性溶液を5と7の間のおよび特に6のpHに酸性化し、その後、例えば減圧下での蒸発によって、乾燥させる。
【0072】
最後に、この残留物を水性−アルコール性混合物に、例えばメタノール/水混合物に、20/80から80/20にわたる比率で再懸濁させ、この完全溶解を可能にする条件下で、例えば30分間還流させ、その後、この均質混合物をゆっくりと、例えば、2時間かけて0℃に冷却する。35℃で最初の結晶が出現する。
【0073】
これらの結晶を、例えば焼結漏斗で単離し、例えばメタノールで洗浄し、最後に、例えば加熱および真空下での蒸発によって乾燥させる。
【0074】
下記実施例によって本発明を非限定的に例証する。
【0075】
実施例
合成
スキーム2は、式(I)および(III)の中間化合物ならびにまたM6Gおよびこの誘導体の合成を説明するものである。
【0076】
スキーム2において、出発化合物および試薬は、これらの調製方式が説明されていないとき、市販されているか、文献に記載されており、そうでなければ、そこに記載されているまたは当業者に公知である方法に従って調製することができる。
【0077】
【化15】

【0078】
後続の実施例は、本発明の一定の化合物の調製を説明するものである。これらの実施例は、限定的でなく、単に本発明の例証に役立つ。
【0079】
式(I)の化合物の調製
【実施例1】
【0080】
テレフタル酸ジモルフィン−3−イル
【0081】
【化16】

【0082】
塩化テレフタロイル(12.0g、0.0594mol)を、室温で、0.66N水酸化ナトリウム(300mL、0.198mol)およびクロロベンゼン(300mL)中のモルフィン・1水和物(40.0g、0.132mol)の溶液に、2.5時間かけて少しずつ添加する。添加終了後、この反応媒体を15分間攪拌する。
【0083】
形成された沈殿を濾過し、クロロベンゼン/0.66N水酸化ナトリウム混合物(300mL/300mL)中で再びスラリー化し、その後、水(3×250mL)で洗浄して、テレフタル酸ジモルフィン−3−イルを白色結晶の形態で得る(38.2g、92%)。
【0084】
H NMR(300MHz,CDCl)δ8.30(s,4H,CH−テレフタラート)、6.87(d,2H,J8.0Hz,H−1)、6.67(d,2H,J8.0Hz,H−2)、5.83(m,2H,H−8)、5.32(m,2H,H−7)、4.95(d,2H,J6.0Hz,H−5)、4.20(m,2H,H−6)、3.40(m,2H,H−9)、3.10(m,2H,H−10a)、2.74(m,2H,H−14)、2.67−2.61(m,2H,H−16a)、2.47(s,6H,NCH)、2.42−2.31(m,4H,H−10b,H−16b)、2.13−2.05(m,2H,H−15a)、1.96−1.92(m,2H,H−15b)。
【0085】
13C NMR(75MHz,CDCl)δ163.3(C=O)、148.8(C−ipso)、134.3(C−8)、130.5(CH−テレフタラート)、129.7、128.6(C−ipso)、127.8(C−7)、126.4(C−ipso)、121.1(C−1)、120.0(C−2)、92.5(C−5)、65.9(C−6)、58.9(C−9)、46.4(C−16)、43.1(NCH)、42.7(C−13)、40.5(C−14)35.3(C−15)、20.9(C−10)。
【0086】
高分解能質量(ES)
− C4242についての計算値[M+H2+:m/z=351.1471
− 実測値:m/z=351.1467
下の実施例2から11の化合物を同じ手法で調製した。
【実施例2】
【0087】
イソフタル酸ジモルフィン−3−イル
【0088】
【化17】

H NMR(300MHz,CDCl)δ9.00(t,1H,J1.5Hz,H−2’)、8.44(dd,J1.5Hz,J8.0Hz,H−4’,H−6’)、7.66(t,1H,J8.0Hz,H−5’)、6.87(d,2H,J8.0Hz,H−1)、6.67(d,2H,J8.0Hz,H−2)、5.83(m,2H,H−8)、5.32(m,2H,H−7)、4.95(d,2H,J6.0Hz,H−5)、4.20(m,2H,H−6)、3.40(m,2H,H−9)、3.09(m,2H,H−10a)、2.72(m,2H,H−14)、2.66−2.60(m,2H,H−16a)、2.47(s,6H,NCH)、2.43−2.30(m,4H,H−10b,H−16b)、2.15−2.04(m,2H,H−15a)、1.95−1.91(m,2H,H−15b)。
【0089】
質量(化学イオン化):[M+H]=701.6
【実施例3】
【0090】
フタル酸ジモルフィン−3−イル
【0091】
【化18】

H NMR(300MHz,CDCl)δ7.97(dd,2H,J3.5Hz,J6.0Hz,H−3’,H−6’)、7.67(dd,J3.5Hz,J6.0Hz,H−4’,H−5’)、6.87(d,2H,J8.0Hz,H−1)、6.59(d,2H,J8.0Hz,H−2)、5.74(m,2H,H−8)、5.29(m,2H,H−7)、4.81(d,2H,J6.5Hz,H−5)、4.15(m,2H,H−6)、3.37(m,2H,H−9)、3.06(m,2H,H−10a)、2.70(m,2H,H−14)、2.61−2.56(m,2H,H−16a)、2.44(s,6H,NCH)、2.42−2.27(m,4H,H−10b,H−16b)、2.08−2.05(m,2H,H−15a)、1.80(m,2H,H−15b)。
【0092】
質量(化学イオン化):[M+H]=701.6
【実施例4】
【0093】
フマル酸ジモルフィン−3−イル
【0094】
【化19】

H NMR(300MHz,CDCl)δ7.23(s,2H,CHCOO)、6.81(d,2H,J8.0Hz,H−1)、6.64(d,2H,J8.0Hz,H−2)、5.78(m,2H,H−8)、5.30(m,2H,H−7)、4.95(d,2H,J6.0Hz,H−5)、4.19(m,2H,H−6)、3.42(m,2H,H−9)、3.08(m,2H,H−10a)、2.74(m,2H,H−14)、2.69−2.63(m,2H,H−16a)、2.47(s,6H,NCH)、2.42−2.30(m,4H,H−10b,H−16b)、2.16−2.06(m,2H,H−15a)、1.92(m,2H,H−15b)。
【0095】
質量(化学イオン化):[M+H]=651.6
【実施例5】
【0096】
ベンゼン−1,2−ジスルホン酸ジモルフィン−3−イル
【0097】
【化20】

H NMR(300MHz,CDCl)δ8.24(dd,2H,J3.5Hz,J6.0Hz,H−3’,H−6’)、7.77(dd,J3.5Hz,J6.0Hz,H−4’,H−5’)、6.79(d,2H,J8.5Hz,H−1)、6.51(d,2H,J8.5Hz,H−2)、5.69(m,2H,H−8)、5.22(m,2H,H−7)、4.81(d,2H,J6.5Hz,H−5)、4.15(m,2H,H−6)、3.35(m,2H,H−9)、3.02(m,2H,H−10a)、2.65(m,2H,H−14)、2.60−2.54(m,2H,H−16a)、2.41(s,6H,NCH)、2.40−2.22(m,4H,H−10b,H−16b)、2.05−2.00(m,2H,H−15a)、1.77−1.72(m,2H,H−15b)。
【0098】
質量(化学イオン化):[M+H]=773.6
【実施例6】
【0099】
ベンゼン−1,3−ジスルホン酸ジモルフィン−3−イル
【0100】
【化21】

H NMR(300MHz,CDCl)δ8.24(m,3H,H−2’,H−4’,H−6’)、7.78(t,1H,J8.5Hz,H−5’)、6.51(m,4H,H−1,H−2)、5.66(m,2H,H−8)、5.27(m,2H,H−7)、4.85(d,2H,J6.5Hz,H−5)、4.15(m,2H,H−6)、3.34(m,2H,H−9)、3.03(m,2H,H−10a)、2.65(m,2H,H−14)、2.61−2.55(m,2H,H−16a)、2.42(s,6H,NCH)、2.35−2.24(m,4H,H−10b,H−16b)、2.09−1.99(m,2H,H−15a)、1.79−1.75(m,2H,H−15b)。
【0101】
質量(化学イオン化):[M+H]=773.6
【実施例7】
【0102】
チオフェン−2,5−ジカルボン酸ジモルフィン−3−イル
【0103】
【化22】

H NMR(300MHz,CDCl)δ7.95(s,2H,CH−チオフェン)、6.86(d,1H,J8.0Hz,H−1)、6.66(d,2H,J8.0Hz,H−2)、5.79(m,2H,H−8)、5.30(m,2H,H−7)、4.95(d,2H,J6.5Hz,H−5)、4.18(m,2H,H−6)、3.40(m,2H,H−9)、3.09(m,2H,H−10a)、2.75(m,2H,H−14)、2.68−2.62(m,2H,H−16a)、2.41(s,6H,NCH)、2.40−2.30(m,4H,H−10b,H−16b)、2.14−2.05(m,2H,H−15a)、1.95−1.90(m,2H,H−15b)。
【0104】
質量(化学イオン化):[M+H]=708.6
【実施例8】
【0105】
ナフタレン−2,7−ジカルボン酸ジモルフィン−3−イル
【0106】
【化23】

H NMR(300MHz,CDCl)δ8.83(s,2H,H−1,H−8’)、8.27(dd,J1.5Hz,J8.5Hz,2H,H−3,H−6’)、8.08(d,2H,J8.5Hz,H−4’,H−5’)、6.92(d,1H,J8.0Hz,H−1)、6.69(d,2H,J8.0Hz,H−2)、5.84(m,2H,H−8)、5.34(m,2H,H−7)、4.95(d,2H,J6.5Hz,H−5)、4.20(m,2H,H−6)、3.40(m,2H,H−9)、3.11(m,2H,H−10a)、2.74(m,2H,H−14)、2.68−2.61(m,2H,H−16a)、2.47(s,6H,NCH)、2.44−2.32(m,4H,H−10b,H−16b)、2.14−2.05(m,2H,H−15a)、1.96−1.90(m,2H,H−15b)。
【0107】
質量(化学イオン化):[M+H]=751.6
【実施例9】
【0108】
4,4’−オキシ安息香酸ジモルフィン−3−イル
【0109】
【化24】

H NMR(300MHz,CDCl)δ8.16(d,4H,J8.5Hz,H−2’,H−6’)、7.14(d,4H,J8.5Hz,H−3’,H−5’)、6.87(d,2H,J8.5Hz,H−1)、6.67(d,2H,J8.5Hz,H−2)、5.82(m,2H,H−8)、5.31(m,2H,H−7)、4.95(d,2H,J6.5Hz,H−5)、4.20(m,2H,H−6)、3.40(m,2H,H−9)、3.10(m,2H,H−10a)、2.73(m,2H,H−14)、2.66−2.61(m,2H,H−16a)、2.42(s,6H,NCH)、2.40−2.30(m,4H,H−10b,H−16b)、2.18−2.10(m,2H,H−15a)、1.95−1.90(m,2H,H−15b)。
【0110】
質量(化学イオン化):[M+H]=793.5
【実施例10】
【0111】
ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ジモルフィン−3−イル
【0112】
【化25】

H NMR(300MHz,CDCl)δ8.25(d,4H,J8.0Hz,H−2’,H−6’)、7.79(d,4H,J8.0Hz,H−3’,H−5’)、6.90(d,2H,J8.0Hz,H−1)、6.68(d,2H,J8.0Hz,H−2)、5.84(m,2H,H−8)、5.32(m,2H,H−7)、4.95(d,2H,J6.5Hz,H−5)、4.22(m,2H,H−6)、3.41(m,2H,H−9)、3.11(m,2H,H−10a)、2.74(m,2H,H−14)、2.68−2.63(m,2H,H−16a)、2.43(s,6H,NCH)、2.42−2.32(m,4H,H−10b,H−16b)、2.17−2.11(m,2H,H−15a)、1.95−1.90(m,2H,H−15b)。
【0113】
質量(化学イオン化):[M+H]=777.5
【実施例11】
【0114】
炭酸ジモルフィン−3−イル
【0115】
【化26】

H NMR(300MHz,CDCl)δ6.88(d,2H,J8.0Hz,H−1)、6.59(d,2H,J8.0Hz,H−2)、5.70(m,2H,H−8)、5.23(m,2H,H−7)、4.97(d,2H,J6.5Hz,H−5)、4.15(m,2H,H−6)、3.36(m,2H,H−9)、3.11(m,2H,H−10a)、2.69(m,2H,H−14)、2.68−2.60(m,2H,H−16a)、2.43(s,6H,NCH)、2.40−2.27(m,4H,H−10b,H−16b)、2.10−2.04(m,2H,H−15a)、1.94−1.90(m,2H,H−15b)。
【0116】
質量(化学イオン化):[M+H]=597.5
【0117】
グリコシル化
TMSOTf(27μL、0.15mmol)を、室温で、クロロベンゼン(4mL)中のテレフタル酸ジモルフィン−3−イル(50mg、0.071mmol)の溶液に添加する。この反応混合物を3分間攪拌し、その後、メチル2,3,4−トリ−O−アセチル−α−D−グルコピラノシルウロナートトリクロロアセトイミダート(171mg、0.36mmol)、を添加し、その後、TMSOTf(13μL、0.071mmol)を添加する。
【0118】
この反応媒体を30分間、室温で攪拌する。
【0119】
NaHCO(100mg)を添加し、その後、CHCl(5mL)および水(5mL)を添加する。有機相を分離し、NaSOで乾燥させる。
【0120】
減圧下で溶媒を除去する。3つの生成物:テレフタル酸ビス[6−O−アセチルモルフィン−3−イル]、テレフタル酸6−O−アセチルモルフィン−3−イル6−O−(メチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルウロナート)モルフィン−3−イル、およびテレフタル酸ビス[6−O−(メチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルウロナート)モルフィン−3−イル]、の混合物を7/30/63の割合で得る。
【0121】
逆相分取クロマトグラフィー(95/5から20/80(HO+0.1%TFA)/CHCNの勾配)による精製によって、前記3つの化学種を単離することができる。
【実施例12】
【0122】
テレフタル酸ビス[6−O−アセチルモルフィン−3−イル]
【0123】
【化27】

H NMR(300MHz,CDCl)δ8.30(s,4H,CH−テレフタラート)、6.91(d,2H,J8.0Hz,H−1)、6.66(d,2H,J8.0Hz,H−2)、5.67(m,2H,H−8)、5.46(m,2H,H−7)、5.15(m,4H,H−5,H−6)、3.43(m,2H,H−9)、3.10(m,2H,H−10a)、2.81(m,2H,H−14)、2.67(m,2H,H−16a)、2.47(s,6H,NCH)、2.43−2.34(m,4H,H−10b,H−16b)、2.14−1.91(m,10H,CHCO,H−15)。
【0124】
13C NMR(75MHz,CDCl)δ170.4、163.2(C=O)、149.5、133.6、132.5、131.8、131.6(C−ipso)、130.3(CH−テレフタラート)、129.2(C−7)、128.7(C−8)、121.9(C−1)、119.5(C−2)、88.7(C−5)、68.0(C−6)、58.9(C−9)、46.5(C−16)、42.8(NCH)、42.7(C−13)、40.3(C−14)35.0(C−15)、20.8(C−10)、20.6(CHCO)。
【0125】
高分解能質量(ES)
− C464610についての計算値[M+H2+:m/z=393.1576
− 実測値:m/z=393.1560
【実施例13】
【0126】
テレフタル酸6−O−アセチルモルフィン−3−イル6−O−(メチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルウロナート)モルフィン−3−イル
【0127】
【化28】

H NMR(300MHz,CDCl)δ8.31(m,4H,CH−テレフタラート)、6.89(m,2H,H−1,H−1’)、6.65(m,2H,H−2,H−2’)、5.77(m,1H,H−8’)、5.68(m,1H,H−8)、5.46(m,1H,H−7)、5.33(m,1H,H−7’)、5.19(m,2H,H−3’’,H−4’’)、5.15(m,1H,H−6)、4.96(m,3H,H−2’’,H−5,H−5’)、4.86(d,1H,J7.5Hz,H−1’’)、4.31(m,1H,H−6’)、4.05(m,1H,H−5’’)、3.72(s,3H,OCH)、3.48(m,2H,H−9,H−9’)、3.11(m,2H,H−10a,H−10a’)、2.85−2.65(m,4H,H−14,H−14’,H−16a,H−16a’)、2.52−2.37(m,10H,NCH,H−10b,H−10b’,H−16b,H−16b’)、2.15−1.85(m,13H,H−15,H−15’,CHCO)、1.73(s,3H,CHCO)。
【0128】
13C NMR(75MHz,CDCl)δ170.4、170.1、169.4、169.0、167.3、163.6、163.3(C=O)、150.4、149.5、133.7、133.6(C−ipso)、132.0、131.6、130.8、130.6、130.3、129.0、128.9(CH−テレフタラート,C−8,C−8’,C−7,C−7’,C−ipso)、122.2、122.0(C−1,C−1’)、119.6、119.3(C−2,C−2’)、99.3(C−1’’)、89.8、88.7(C−5,C−5’)、73.7(C−6’)、72.7(C−5’’)、71.8(C−3’’またはC−4’’)、71.0(C−2’’)、69.4(C−3’’またはC−4’’)、67.9(C−6)、59.0、58.8(C−9,C−9’)、46.6、46.3(C−16,C−16’)、42.8(NCH)、40.6、40.2(C−14,C−14’)35.2、34.9(C−15,C−15’)、21.2、21.0、20.7、20.6、20.5、20.4(C−10,C−10’CHCO)。
【0129】
高分解能質量(ES)
− C576018についての計算値[M+H2+:m/z=530.1921
− 実測値:m/z=530.1918
【実施例14】
【0130】
テレフタル酸ビス[6−O−(メチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルウロナート)モルフィン−3−イル]
【0131】
【化29】

H NMR(300MHz,CDCl)δ8.34(s,4H,CH−テレフタラート)、6.90(d,2H,J8.0Hz,H−1)、6.63(d,2H,J8.0Hz,H−2)、5.77(m,2H,H−8)、5.34(m,2H,H−7)、5.23(m,4H,H−3’,H−4’)、5.02−4.94(m,4H,H−2’,H−5)、4.86(d,2H,J7.5Hz,H−1’)、4.32(m,2H,H−6)、4.06(d,2H,J9.5Hz,H−5’)、3.72(s,6H,OCH)、3.48(m,2H,H−9)、3.11(m,2H,H−10a)、2.75−2.60(m,4H,H−14,H−16a)、2.51−2.25(m,10H,NCH3,H−10b,H−16b)、2.16−1.90(m,16H,H−15,CHCO)、1.75(s,6H,CHCO)。
【0132】
13C NMR(75MHz,CDCl)δ170.0、169.4、169.3、167.4、163.9(C=O)、150.4、133.7、132.5、131.7、131.4(C−ipso)、130.6(CH−テレフタラート、C−8)、128.9(C−7)、122.0(C−1)、119.3(C−2)、99.2(C−T)、88.7(C−5)、73.6(C−6)、72.9(C−5’)、71.7(C−3’またはC−4’)、70.9(C−2’)、69.4(C−3’またはC−4’)、58.8(C−9)、52.9(OCH)、46.2(C−16)、43.1(NCH)、41.1(C−14)、35.7(C−15)、21.0(C−10)、20.6、20.5、20.4(CHCO)。
【0133】
高分解能質量(ES)
− C687426についての計算値[M+H2+:m/z=667.2265
− 実測値:m/z=667.2253
【0134】
O−グリコシドカップリングから得た中間体の鹸化
カップリングから得た有機相(クロロベンゼン)の処理および抽出後、クロロベンゼンを減圧(15mbar)下で蒸発させて、茶色がかった油(m=47.4g)を得る。この油に30℃のメタノール(140mL)と脱塩水(35mL)の混合物を、攪拌しながら、均質混合物が得られるまで添加する。その後、この混合物を−5℃に冷却する。
【0135】
反応器内の温度が5℃を超えないように注意しながら、62.5mLの濃水酸化ナトリウム溶液(30% m/m)をこの混合物に添加する。その後、この混合物(pH=12.72)を20℃で1時間、窒素下で加熱し、その後、−3℃に冷却する。
【0136】
37mLの塩酸溶液(37%HCl)をこの混合物に添加し、このようにして(pH=5.6)を得る。この混合物を20℃で加熱し、この温度を30分間維持する(5.6で安定したpH)。その後、この混合物を濾過し、得られた濾液を真空(15mbar)下で濃縮して、67.0gの乾燥した抽出物を得る。
【0137】
鹸化および酸性化から得た残留物の精製
この残留物を50℃のメタノール500mLに3時間懸濁させて(脱塩)、濾過および減圧(15mbar)下での蒸発後、HPLCによって分析して(約30%)のモルフィンと(約70%)のM6Gの混合物を含む30.8gの残留物を得る。
【0138】
前で得た残留物を100mLの脱塩水に懸濁させ、得られた懸濁液を98%HSO(2mL)でpH3.58に酸性化し、その後、濾過する。
【0139】
Rohm & Haas社により「IRP 69」という名で販売されている樹脂固体6gをこの濾液に(HPLCによって得られる推定に従って含まれるM6Gの重量に対して3の重量比で)添加する。このようにして得た不均質混合物を20℃で30分間攪拌し、その後、濾過する。
【0140】
この操作を、含まれているM6Gが使い果たされてしまうまで繰り返す。
【0141】
得られた樹脂を希アンモニア水(3%NHOH)で脱着し、得られた塩基性溶液(pH=10.9)を希HClで約5から6のpHに中和する。
【0142】
得られた酸性水溶液を減圧(15mbar)下で蒸発させて、5.6gの乾燥した残留物を得る。
【0143】
これをHPLCによって同定する(約80%のM6G含有率)。
【0144】
M6Gの再結晶
上述の乾燥した残留物(5.55g)を、水(166.5mL)とメタノール(277.5mL)の混合物に懸濁させる。この混合物を30分間、還流させ(90℃)、その後、2時間にわたって0℃に冷却する。35℃で最初の結晶が形成する。
【0145】
これらの結晶を焼結漏斗で単離し、その後、5mLのメタノールで洗浄する。80℃、15mbar下で乾燥させた後、2.6gの純粋なM6G(有機純度>99%)を単離する。
【0146】
【化30】

HPLC(M6G含有率)=98.6%
質量(化学イオン化)=[M+H]=462.2
【0147】
13C NMR(75MHz,CDCl)(DO/交換 NaOD)δ(ppm±0.01ppm):129.71、127.42(C1、C2);155.73、149.25(C3、C4);98.19(C5);111.12(C1’);85.82、85.17、82.94、82.77、81.40(C6、C2’、C3’、C4’、C5’);68.66(C9);55.76(C16);52.07(C13);50.79(C17);48.34(C14);42.80(C15);30.70(C10);185.30(COH)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルフィン−6−グルクロニドまたはこの誘導体を調製するための方法であって、
(i)下記式(I):
【化1】

(この式中、
は、カルボニル基、CORCO(この場合のRは、基(C−C)アルカン−ジイル、(C−C)アルケン−ジイル、(C−C)アルキン−ジイル、ヘテロ(C−C)アルカン−ジイル、ヘテロシクロ(C−C)アルカン−ジイル、(C−C14)アレーン−ジイル、ビ(C10−C16)アレーン−オキシド−ジイル、ビ(C10−C16)アレーン−ジイル、またはヘテロ(C−C10)アレーン−ジイルを表す。)、SOSO(この場合のRは、基(C−C)アルカン−ジイル、(C−C)アルケン−ジイル、(C−C)アルキン−ジイル、ヘテロ(C−C)アルカン−ジイル、ヘテロシクロ(C−C)アルカン−ジイル、(C−C14)アレーン−ジイル、ヘテロ(C−C10)アレーン−ジイル、ビ(C10−C16)アレーン−オキシド−ジイルまたはビ(C10−C16)アレーン−ジイルを表す。)を表す。)
に対応する化合物と、下記式(II):
【化2】

(この式中、
PGは、アセチル、イソブチリル、ベンゾイルまたはピバロイル基を表し、
Xは、トリハロアセトイミダート基を表し、および
は、基(C−C)アルキルカルボキシラートを表す。)
に対応するグルクロン酸誘導体を、
− −20℃未満のまたは−20℃に等しい融点を有する溶媒であって、非置換である、またはハロゲン原子、基(C−C)アルキルおよび基(C−C)アルキルオキシによって構成される群から選択される1つ以上の置換基で置換されている芳香族溶媒の、および
− トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルの
存在下で反応させる段階と、
(ii)段階(i)において得た生成物と強塩基性物質とを反応させる段階と、その後、
(iii)段階(ii)において得た生成物を回収する段階と
を含む方法。
【請求項2】
段階(i)の前に、水と、強塩基性物質と、−20℃未満のまたは−20℃に等しい融点を有する溶媒であって、非置換である、またはハロゲン原子、基(C−C)アルキルおよび基(C−C)アルキルオキシによって構成される群から選択される1つ以上の溶媒で置換されている芳香族溶媒とを少なくとも含む二相媒体中で、式RCl(この式中のRは、請求項1において定義したとおりである。)の化合物をモルフィンと反応させる、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が、
− テレフタル酸ジモルフィン−3−イル、
− イソフタル酸ジモルフィン−3−イル、
− フタル酸ジモルフィン−3−イル、
− フマル酸ジモルフィン−3−イル、
− ベンゼン−1,2−ジスルホン酸ジモルフィン−3−イル、
− ベンゼン−1,3−ジスルホン酸ジモルフィン−3−イル、
− チオフェン−2,5−ジカルボン酸ジモルフィン−3−イル、
− ナフタレン−2,7−ジカルボン酸ジモルフィン−3−イル、
− 4,4’−オキシ安息香酸ジモルフィン−3−イル、
− ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ジモルフィン−3−イル、および
− 炭酸ジモルフィン−3−イル
によって構成される群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記式(II)の化合物が、以下の特徴:
− PGが、アセチル基を表す、
− Xが、基−OCNHClまたは基−OCNPhCFを表す、および
− Rが、メチルカルボキシラート基を表す、
の1つ以上を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記式(II)の化合物が、メチル2,3,4−トリ−O−アセチル−α−D−グルコピラノシルウロナートトリクロロアセトイミダートであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記芳香族溶媒が、クロロベンゼン、トルエン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリフルオロベンゼンおよびメシチレンから選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記強塩基性物質が、水酸化ナトリウムであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記式(II)のグルクロン酸誘導体の前記式(I)の化合物に対するモル比が、2と5の間であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルの前記式(I)の化合物に対するモル比が、2.2と20の間であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式:
【化3】

(式中、
は、請求項1において定義したとおりであり、
およびRは、独立して、請求項1において定義したとおりの基PGを表す、または下記式(IV):
【化4】

(この式中のRおよびPGは、請求項1において定義したとおりである。)
の基を表すが、但し、
およびRのうちの少なくとも一方は、式(IV)の基を表すことを条件とする。)
の化合物。
【請求項11】
以下の特徴:
− Rが、テレフタロイル基を表す、
− RおよびRのうちの少なくとも一方が、式中のR4がメチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルウロナート基でありおよびPGがアセチル基である、式(IV)の基を表す、
の1つ以上を有することを特徴とする、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
− テレフタル酸6−O−アセチルモルフィン−3−イル6−O−(メチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルウロナート)モルフィン−3−イル、および
− テレフタル酸ビス[6−O−(メチル2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルウロナート)モルフィン−3−イル]
によって構成される群から選択されることを特徴とする、請求項10または11に記載の化合物。
【請求項13】
式:
【化5】

(式中のRは、請求項1において定義したとおりである。)
の化合物。
【請求項14】
− テレフタル酸ジモルフィン−3−イル、
− イソフタル酸ジモルフィン−3−イル、
− フタル酸ジモルフィン−3−イル、
− フマル酸ジモルフィン−3−イル、
− ベンゼン−1,2−ジスルホン酸ジモルフィン−3−イル、
− ベンゼン−1,3−ジスルホン酸ジモルフィン−3−イル、
− チオフェン−2,5−ジカルボン酸ジモルフィン−3−イル、
− ナフタレン−2,7−ジカルボン酸ジモルフィン−3−イル、
− 4,4’−オキシ安息香酸ジモルフィン−3−イル、
− ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ジモルフィン−3−イル、および
− 炭酸ジモルフィン−3−イル
によって構成される群から選択される、請求項13に記載の化合物。

【公表番号】特表2012−511551(P2012−511551A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540161(P2011−540161)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052445
【国際公開番号】WO2010/067007
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】