説明

モーションセンサからの情報に反応する玩具

【課題】玩具の動きを光学的に検出して出力信号を生成する。
【解決手段】玩具10はモーションセンサ16、21、22、24と出力装置25とを含む。モーションセンサは下の面に対する玩具の動きを光学的に検出する。出力装置はモーションセンサからの情報を受け取り、モーションセンサからの情報に基づいて出力信号27、28、29を生成する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
周囲の環境に反応する玩具には子供を楽しませるものである。例えば、おもちゃの車は、障害物に衝突すると走行方向を変えられるようにフロント又はリヤにスイッチを備えてもよい。
【0002】
モーションセンサはコンピュータ・システムに情報を入力するために用いられる光学式マウス等の装置に使われている。光センサはロボットにおいて動きを検出するために、そしてその推進機構を調節する為に使用されてきた。
【0003】
ある種の光学式マウスは、光学式マウスの下にある一般になんらかの微小なざらつきのある又はきめ細かい作業面を撮像する、画素のイメージアレイとして配置された光検知器を使用する。光検知器の応答はディジタル化され、フレームとしてメモリに格納される。動きがある場合、画素情報パターンが平行移動していく連続フレームが撮像されることになる。連続フレームは相互相関により比較され、その動きの方向と量が確定される。このタイプの光学式マウスの更なる詳細については、従来例(特許文献1参照)を参照されたい。
【特許文献1】米国特許第6,281,882号明細書
【発明の開示】
【0004】
本発明の一実施例によれば、玩具はモーションセンサ及び出力装置を含んでいる。モーションセンサは光学的に下にある面に対する玩具の動きを検出する。出力装置はモーションセンサからの情報を受け、モーションセンサからの情報に基づいて出力信号を生成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
図1は玩具10の底面の概略図である。例えば、玩具10はおもちゃの車、又は動きを利用した何らかのタイプの玩具である。玩具10の車輪11、12、13及び14は、下にある面に沿って玩具を走らせるものである。車輪11〜14は単なる例であり、より少数又は多数の車輪が使用されていても良い。車輪の代わりに、玩具10の底面に、下にある面と接触させる1つ以上の低摩擦面を作っても良い。
【0006】
開口15の中には照明器17とイメージアレイ16が描かれている。必要とされる又は好ましい様々な光学素子が照明器17及び/又はイメージアレイ16の中には含まれる。例えば、照明器17は発光ダイオード(LED)、赤外線(IR)LED、又はレーザーを使って実現することが出来る。通常使用時に、イメージアレイが下にある面のナビゲーションに使用できる特徴を検出するのに、更なる照明を使用せずとも周辺光だけで十分であると予想される場合、照明器17は省くことも出来る。
【0007】
図2は光学式モーションセンサ・システムの概略ブロック図である。イメージアレイ16は、例えば32x32光検知器アレイとして実現されている。イメージアレイ16には代わりに他の技術及び/又は他のアレイサイズを採用することも可能である。
【0008】
アナログ―ディジタル変換機(ADC)21はイメージアレイ16からアナログ信号を受け、これをディジタルデータへと変換する。例えば、イメージアレイ16とADC21の間のインターフェースはシリアルインターフェースである。代わりにイメージアレイ16とADC21の間のインターフェースはパラレルインターフェースであっても良い。
【0009】
自動利得制御器(AGC)22は、ADC21から受けたディジタルデータを評価し、イメージアレイ16におけるシャッター速度と利得調整を制御する。これは、例えばイメージアレイ16が取得した画像の飽和又は露光不足を防ぐ為に行われる。
【0010】
ナビゲーション・エンジン24は、ADC21からのディジタルデータを評価し、一連の相関関係を明らかにし、異なる時点で撮像された画像間の差異を考慮することにより、最も可能性の高い動きの方向と大きさを予測する。次にナビゲーション・エンジン24は、出力28に出力すべきデルタx(ΔX)値と、出力29に出力すべきデルタy(ΔY)値を決定する。例えば、ΔYを玩具の前方向又は逆方向への動きを表すもの、そしてΔXを玩具の左右への動きを表すものとすることが出来る。推奨される実施例においては、ΔX及びΔYは動きの量のみを示す絶対値である。他の実施例においては、ΔX及びΔYは正又は負のいずれかとすることが出来る。この場合、正のΔYは前方向の動きを表し、負のΔYは後ろ方向の動きを表し、正のΔXは一方の横方向への動きを表し、そして負のΔXは反対の横方向への動きを表すことになる。
【0011】
ナビゲーション・エンジン24は更に、イメージアレイ16が検出した画像の品質を示す品質信号27も生成する。例えば、品質信号27はΔX及びΔY値が下の面に対するその玩具の実際の動きを表しているかどうかの見込みを予測するものである。例えばこの見込み予測とは、イメージアレイ16が検出したナビゲーション用の特徴の数に基づくものとすることが出来る。代わりに、イメージアレイ16により検出された画像の品質を判定するために他の方法を使用しても良い。例えば、米国特許第6,433,780号に記載の品質判定方法を参照されたい。
【0012】
ΔX及びΔYが玩具の下の面に対する実際の動きを表していない可能性が高いことを品質信号27が示した場合、これはイメージアレイ16の下にある面に焦点が合っていないということを意味する。例えば、下の面がイメージアレイ16に非常に近い場合にイメージアレイ16用の1つ又は複数のレンズの焦点が合うように選択されている場合、「リフトオフ」(持ち上げられた)状態では、品質信号27は許容範囲外の品質を表示する。リフトオフとは、イメージアレイ16が下の面から離されている、又は現在下にある面が動きを検出するに十分な検出可能な特徴を持っていないことを示す。これは、例えば「リフトオフ」があった場合に衝突音を引き起こすおもちゃの車などに有用である。
【0013】
一方、下にある表面がイメージアレイ16から離れている場合(例えば1又は2メートル)にイメージアレイ16用の1つ又は複数のレンズの焦点が合うように選択されている場合、品質信号27は「セットダウン」(下に置いた)状態になると許容範囲外の品質を表示する。これは例えば、「セットダウン」により衝突音を引き起こすおもちゃの飛行機等、飛ばすことが出来る玩具に有用である。1つ又は複数のレンズの代わりに、イメージアレイ16は、イメージアレイ中の光検知器の所望の焦点を得る為にピンホールやその他の手段を用いることも可能である。また、下にある表面がイメージアレイ16から離れている場合(例えば1又は2メートル)に焦点が合うようになっている場合、照明器17等の照明機器は有効では無い場合がある。この場合、イメージアレイ16は照明器を使わずに、周辺光を使用する。
【0014】
品質信号27は、例えば品質が許容範囲内か許容範囲外かを示すバイナリ信号である。代わりに、品質信号27は品質レベルを表す数値であっても良い。
【0015】
既存の光学式マウスは、イメージアレイ16、ADC21、AGC22及びナビゲーション・エンジン24と同一又は同様の機能性を含んでいる。光学式マウスのこれらの標準的機能性、又は同様の機能性に関するより詳細な情報は、米国特許第5,644,139号、第5,578,813号、第5,786,804号及び/又は第6,281,882 B1号に記載されている。リフトオフの検出例に関しては、米国特許第6,433,780 B1号を参照されたい。
【0016】
出力装置25は、出力28にあるΔX及び出力29にあるΔYを受信し、ΔX及びΔYの値に基づいてその玩具に適切な出力を生成する。例えば、玩具が車、飛行機又は他の輸送用の乗り物である場合、その出力とは、その乗り物に適した様々な音響効果を生成することである。また、代わりにその玩具がおもちゃの動物である場合、ΔX及びΔYの値は、その動物のなんらかの動きの頻度や、発する音を決定するものとすることが出来る。おもちゃの鳥である場合、ΔX及びΔYの値は、例えば羽を羽ばたかせる速度等を決定する値等とすることが出来る。
【0017】
例えば、図3はおもちゃの車で生成される音を説明する簡単なフローチャートである。ブロック30においては、玩具にスイッチが入れられる、或いは出力信号生成処理の開始を引き起こす他のなんらかの事象が発生する。
【0018】
ブロック31においては、出力装置25がΔX及びΔY値を取得する。この実施例においては、ΔX及びΔYはそれぞれ絶対値である。これは前方及び後方への同等の動きが同じ音を生じ、左右への同等の動きが同じ音を生じるということを意味する。
【0019】
多くの場合、ナビゲーション・エンジン24は1秒間に数百のΔX及びΔY値を生成することが出来る。この例においては、出力装置25が受けるΔX値及びΔY値は所定時間内で平均化することが出来る。この所定時間とは、例えば二分の一秒、又はこの玩具で遊んでいる子供に最適な音響フィードバックを作ることになる他の時間長とすることが出来る。
【0020】
ブロック32においては、品質信号27が許容レベルにあるか否かが確認される。ブロック32において品質信号27が許容されないレベルにあることが分かった場合、「リフトオフ」が検出されたことを示し、そしてブロック33において車が衝突した場合に生じるような衝突音が作られる。この音が発された後は、ブロック31においてΔXの新たな値及びΔYが取得される。
【0021】
ブロック34においては、ΔXが第一の値よりも大きいかどうかが判定される。第一の値とは、玩具の設計者がその玩具で遊ぶ子供に最適な音響フィードバックを提供することが出来るように設定した所定値である。ブロック34においてΔXが第一の値よりも大きかった場合、ブロック35においてタイヤがキーと鳴るときに発されるようなキーキー音が作られる。ΔXは横方向の動きを表すものであることから、このキーキー音は高速でハンドルをきった場合の車の音を模したものである。音が発された後は、ブロック31においてΔXの新たな値及びΔYが取得される。
【0022】
ブロック36においては、ΔYが第二の値よりも大きいかどうかが判定される。この第二の値とは、玩具の設計者がその玩具で遊ぶ子供に最適な音響フィードバックを提供することが出来るように設定した所定値である。ブロック36においてΔYが第二の値よりも大きかった場合、ブロック37においてエンジンが高速で回転しているかのような高い回転音が作られる。ΔYは前方及び後方への動きを表すものであることから、この高い回転音は高速で走行する車の音を模したものである。音が発された後は、ブロック31においてΔXの新たな値及びΔYが取得される。
【0023】
ブロック38においては、ΔYが第二の値以下であるかどうかと同時に第三の値よりも大きいかどうかが判定される。第三の値とは、玩具の設計者がその玩具で遊ぶ子供に適切な音響フィードバックを提供することが出来るように設定した所定値である。ブロック38においてΔYが第二の値以下であると同時に第三の値よりも大きかった場合、ブロック39においてエンジンが普通の速度で回転しているかのような低い回転音が作られる。ΔYは前方及び後方への動きを表すものであることから、この低い回転音は普通の速度で走行する車の音を模したものである。音が発された後は、ブロック31においてΔXの新たな値及びΔYが取得される。
【0024】
ブロック40においては、アイドリング中の、又は非常にゆっくりと走行する車のようなアイドリング音が生成される。音が発された後は、ブロック31においてΔXの新たな値及びΔYが取得される。
【0025】
当該分野における当業者には明らかなように、上述した音及び音響トリガは一例である。他のタイプの玩具は他の音を生じる。例えば、玩具が恐竜や他の動物であった場合、その動物に適切な音がΔX、ΔY、リフトオフ及び/又はセットダウンの値に基づいて生成されることになる。また、音を生成する代わりに、動きに呼応した他の出力信号を生成することも可能である。例えばこのような出力信号としては、生成する光の強度又は色を変化させるものや、光パルスの頻度を変化させるもの、その玩具の様々な付属物の動きの種類又は頻度を変化させるもの等が含まれる。
【0026】
上記は本発明の単に方法例及び実施例を説明したものである。当業者には明らかなように、本発明はその精神及び本質的特性から離れることなく他の特定の形態にも適用することが出来る。よって本発明の開示は、説明目的のものであり、請求項に定義される本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例に基づく玩具の底面を描いた概略図である。
【図2】出力信号の生成制御に用いられる本発明の一実施例に基づく光学式モーションセンサ回路の概略ブロック図である。
【図3】玩具に音を生じさせる為の本発明の一実施例に基づく方法を説明する概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
10:玩具
16、21、22、24:モーションセンサ
25:出力装置
27、28、29:出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下にある面に対する玩具の動きを光学的に検出するモーションセンサと、
前記モーションセンサから情報を受け、前記モーションセンサからの前記情報に基づいた出力信号を生成する出力装置と、
を備えることを特徴とする玩具。
【請求項2】
前記出力信号は、前記玩具の動きに関連した音、前記玩具の動きに基づく発光、及び前記玩具の動きに基づく前記玩具の少なくとも一部分の動作、のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の玩具。
【請求項3】
前記玩具は車であり、前記出力信号は、高速で進路変更する車から発せられる音を模したタイヤのスリップ音、高速で走行する車から発せられる音を模したエンジンの高速回転音、普通の速度で走行する車から発せられる音を模したエンジンの低回転音、及びアイドリング中の車から発せられる音を模したアイドリング音、を含むことを特徴とする請求項1に記載の玩具。
【請求項4】
前記モーションセンサは、正確に動作を検出するのに十分なナビゲーション用の特徴を検出することが出来ない場合、それを知らせることを特徴とする請求項1に記載の玩具。
【請求項5】
前記モーションセンサは、正確に動作を検出するのに十分なナビゲーション用の特徴を検出することが出来ない場合、それを知らせ、
前記玩具は車であり、
前記複数の異なる音は、前記モーションセンサが正確に動きを検出するのに十分なナビゲーション用の特徴を検出することが出来ない場合に発せられる車の衝突音を模したものを含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の玩具。
【請求項6】
前記モーションセンサは、正確に動作を検出するのに十分なナビゲーション用の特徴を検出することが出来ない場合、それは前記モーションセンサの下にある面が前記モーションセンサから離れ過ぎている為に焦点が合っていない場合、前記モーションセンサの下にある面が前記モーションセンサから近過ぎる為に焦点が合っていない場合のいずれか一方を表していることを特徴とする請求項1に記載の玩具。
【請求項7】
下にある面に対する玩具の動きを光学的に検出することと、
前記下にある面に対する前記玩具の検出された動きに基づく出力信号を生成することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記玩具は車であり、前記出力信号は、高速で進路変更する車から発せられる音を模したタイヤのスリップ音、高速で走行する車から発せられる音を模したエンジンの高速回転音、普通の速度で走行する車から発せられる音を模したエンジンの低回転音、及びアイドリング中の車から発せられる音を模したアイドリング音、を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記玩具は車であり、前記複数の異なる音が、前記玩具が正確に動きを検出するのに十分なナビゲーション用の特徴を検出することが出来ない場合に発せられる車の衝突音を模したものを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記出力信号は、前記玩具の動きに関連した音、前記玩具の動きに基づく発光、前記玩具の動きに基づく前記玩具の少なくとも一部分の動作、のうち少なくとも1つを含むものであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記下にある面に対する玩具の動きを光学的に検出することは複数の値を取得することを含み、各々の値は第一の所定時間長における前記下にある面に対する玩具の移動量を表すものであり、
前記出力信号を生成することは、第二の所定時間長における前記複数の値の平均を取ることを含み、
前記第二の所定時間長は前記第一の所定時間長よりも長い、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−122676(P2006−122676A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308574(P2005−308574)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】