説明

モータ駆動回路

【課題】アクチュエータの共振周波数によらず、振動の収束時間を短縮する。
【解決手段】アクチュエータを駆動するボイスコイルモータに供給される駆動電流の目標値を示すデジタル信号である目標電流信号のうち、アクチュエータの共振周波数を含む周波数帯域を減衰させるフィルタ回路と、フィルタ回路の出力信号をアナログ信号に変換して電流制御信号として出力するデジタル・アナログ変換器と、電流制御信号に応じてボイスコイルモータに駆動電流を供給する駆動回路と、を有し、フィルタ回路は、目標電流信号のうち、共振周波数を中心とする周波数帯域を減衰させるデジタルノッチフィルタと、デジタルノッチフィルタの出力信号のうち、所定の周波数以上の周波数帯域を減衰させるデジタルローパスフィルタと、を含み、デジタルローパスフィルタのサンプリング周波数は、デジタルノッチフィルタのサンプリング周波数より高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブの磁気ヘッドの位置決めを行うアクチュエータを駆動するリニアモータとして、永久磁石の磁界中のコイルに電流を流すことによって推力を発生させるボイスコイルモータが一般に知られている。また、近年、携帯電話機やノート型パーソナルコンピュータなどの携帯端末にカメラモジュールが搭載され、モジュールの小型化のため、ボイスコイルモータを用いてオートフォーカス制御や光学ズーム制御などを行うものもある。
例えば、特許文献1では、可動部の固有振動周期の略自然数倍の期間にボイスコイルモータの駆動電流を一定の勾配で変化させることによって、可動部の振動を少なくすることができるアクチュエータ駆動装置が開示されている。
このようにして、ボイスコイルモータに一定の傾きで変化するランプ波形の駆動電流を供給することによって、アクチュエータの可動部の位置を速やかに安定させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−178206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アクチュエータの構成によって可動部の固有振動周期は異なり、特許文献1のアクチュエータ駆動装置では、固有振動数(共振周波数)が低いほど、駆動電流を傾斜させる期間を長くする必要がある。
そのため、アクチュエータの振動が収束し、可動部の位置が安定するまでの収束時間が長くなり、用いられるモジュールに要求される応答速度を満たすことができない場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した課題を解決する主たる本発明は、アクチュエータを駆動するボイスコイルモータに供給される駆動電流の目標値を示すデジタル信号である目標電流信号のうち、前記アクチュエータの共振周波数を含む周波数帯域を減衰させるフィルタ回路と、前記フィルタ回路の出力信号をアナログ信号に変換して電流制御信号として出力するデジタル・アナログ変換器と、前記電流制御信号に応じて前記ボイスコイルモータに前記駆動電流を供給する駆動回路と、を有し、前記フィルタ回路は、前記目標電流信号のうち、前記共振周波数を中心とする周波数帯域を減衰させるデジタルノッチフィルタと、前記デジタルノッチフィルタの出力信号のうち、所定の周波数以上の周波数帯域を減衰させるデジタルローパスフィルタと、を含み、前記デジタルローパスフィルタのサンプリング周波数は、前記デジタルノッチフィルタのサンプリング周波数より高いことを特徴とするモータ駆動回路である。
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アクチュエータの共振周波数によらず、振動が収束するまでの収束時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態におけるモータ駆動回路の構成を示す回路ブロック図である。
【図2】フィルタ回路の具体的な構成の一例を示す回路ブロック図である。
【図3】測定モードにおける電流制御信号CNiおよび電圧Vvcmの関係の一例を示す模式図である。
【図4】制御モードにおいてデジタルフィルタ131に用いられるノッチフィルタの一例を示す模式図である。
【図5】制御モードにおいてデジタルフィルタ132に用いられるローパスフィルタの一例を示す模式図である。
【図6】図4に示したノッチフィルタのみを用いた場合における電圧Vvcmの一例を示す模式図である。
【図7】図5に示したローパスフィルタをさらに用いた場合における電圧Vvcmの一例を示す模式図である。
【図8】モータ駆動回路の他の構成例を示す回路ブロック図である。
【図9】図8に示したモータ駆動回路の動作を説明する図である。
【図10】モータ駆動回路のさらに他の構成例を示す回路ブロック図である。
【図11】フィルタ回路の他の構成例を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0009】
===モータ駆動回路の構成===
以下、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態におけるモータ駆動回路の構成について説明する。
【0010】
図1に示されているモータ駆動回路1aは、マイクロコンピュータ5の制御に従って、アクチュエータを駆動するボイスコイルモータ3に駆動電流Ivcmを供給する回路であり、端子21ないし23を備えた集積回路として構成されている。また、モータ駆動回路1aは、制御回路11、選択回路12、フィルタ回路13a、DAC(Digital-Analog Converter:デジタル・アナログ変換器)14、駆動回路15a、および抵抗16を含んで構成されている。なお、抵抗16は、端子23に外部接続されていてもよい。好ましくは、モータ駆動回路1aは、一つの半導体基板上に集積化して形成される。
【0011】
制御回路11には、端子21を介して、マイクロコンピュータ5から制御情報INFcnが入力されている。また、制御回路11からは、目標電流信号TGi、モード選択信号SLm、およびフィルタ設定情報STf1、STf2が出力されている。
【0012】
選択回路12は、1入力2出力のマルチプレクサとして構成されており、選択制御入力には、モード選択信号SLmが入力されている。また、データ入力には、目標電流信号TGiが入力されている。そして、当該目標電流信号TGiは、SLm=0および1に対応する出力から、それぞれDAC14およびフィルタ回路13aに入力されている。
【0013】
図2に示すように、フィルタ回路13aは、デジタルフィルタ131および132を含んで構成されている。なお、図2においては、一例として、公知の2次IIR(Infinite Impulse Response:無限インパルス応答)フィルタとして構成されたデジタルフィルタ131および132を示している。
【0014】
デジタルフィルタ131には、目標電流信号TGiおよびフィルタ設定情報STf1が入力されている。また、デジタルフィルタ132には、デジタルフィルタ131の出力信号およびフィルタ設定情報STf2が入力され、デジタルフィルタ132からは、(フィルタリングされた)目標電流信号TGfが出力されている。そして、DAC14には、目標電流信号TGiおよびTGfが入力され、DAC14からは、電流制御信号CNiが出力されている。
【0015】
駆動回路15aは、例えばオペアンプ(演算増幅器)151およびNMOS(N-channel Metal-Oxide Semiconductor:Nチャネル金属酸化膜半導体)トランジスタ152を含んで構成されている。また、オペアンプ151の非反転入力には、電流制御信号CNiが入力され、反転入力は、NMOSトランジスタ152のソースに接続されている。さらに、NMOSトランジスタ152のドレインは、端子22に接続され、ソースは、抵抗16を介して端子23に接続され、ゲートには、オペアンプ151の出力信号が入力されている。そして、端子22には、一端が電源電位VCCに接続されたボイスコイルモータ3が接続され、端子23は、グランド電位に接続されている。
【0016】
===モータ駆動回路の動作===
次に、本実施形態におけるモータ駆動回路の動作について説明する。
制御回路11は、マイクロコンピュータ5から入力される制御情報INFcnに基づいて、目標電流信号TGi、モード選択信号SLm、およびフィルタ設定情報STf1、STf2を出力する。
【0017】
ここで、目標電流信号TGiは、ボイスコイルモータ3に供給される駆動電流Ivcmの目標値を示すデジタル信号である。また、モード選択信号SLmは、後述する測定モード(第1のモード)または制御モード(第2のモード)を選択する信号である。なお、モード選択信号SLmは、SLm=0の場合に測定モードを示し、SLm=1の場合に制御モードを示すこととする。
【0018】
さらに、フィルタ設定情報STf1およびSTf2は、それぞれデジタルフィルタ131および132の特性を設定するための情報である。具体的には、フィルタ設定情報STf1は、デジタルフィルタ131をノッチフィルタとして機能させるための係数やサンプリング周波数を設定するための情報である。一方、フィルタ設定情報STf2は、デジタルフィルタ132をローパスフィルタとして機能させるための係数やサンプリング周波数を設定するための情報である。
【0019】
選択回路12は、制御回路11から入力された目標電流信号TGiを、SLm=0(測定モード)の場合には、DAC14に供給し、SLm=1(制御モード)の場合には、フィルタ回路13aに供給する。
【0020】
フィルタ回路13aのデジタルフィルタ131は、目標電流信号TGiのうち、フィルタ設定情報STf1によって設定された係数に応じて定まる周波数帯域を減衰させる。より具体的には、デジタルフィルタ131は、ノッチフィルタとして機能し、周波数fc1を中心とする周波数帯域を減衰させる。また、デジタルフィルタ132は、デジタルフィルタ131の出力信号のうち、フィルタ設定情報STf2によって設定された係数に応じて定まる周波数帯域を減衰させる。より具体的には、デジタルフィルタ132は、ローパスフィルタとして機能し、周波数fc2以上の周波数帯域を減衰させ、(フィルタリングされた)目標電流信号TGfを出力する。
【0021】
DAC14は、目標電流信号TGi(SLm=0の場合)またはTGf(SLm=1の場合)をアナログ信号に変換して、電流制御信号CNiを生成する。また、オペアンプ151は、電流制御信号CNiの電圧と、NMOSトランジスタ152および抵抗16の接続点の電圧Vvcmとを比較し、さらに、NMOSトランジスタ152のゲート電圧は、当該比較結果に応じて変化する。
【0022】
ここで、抵抗16の抵抗値をRとすると、駆動電流Ivcmは、電圧Vvcm=Ivcm×Rとして検出される。したがって、駆動回路15aは、電圧Vvcmを電流制御信号CNiの電圧と等しくなるように制御し、駆動電流Ivcmの電流値は、電流制御信号CNiによって示される電流値となるように制御される。
【0023】
このようにして、モータ駆動回路1aは、測定モードにおいては目標電流信号TGiを、制御モードにおいては目標電流信号TGfを、それぞれアナログ信号に変換して電流制御信号CNiを生成する。そして、当該電流制御信号CNiに応じてボイスコイルモータ3に駆動電流Ivcmを供給する。
【0024】
===モータ駆動回路およびアクチュエータの動作の具体例===
ここで、測定モードおよび制御モードにおけるモータ駆動回路およびアクチュエータの動作の具体例について説明する。
【0025】
まず、図3を参照して、測定モードにおける動作について説明する。なお、測定モードは、ボイスコイルモータ3が駆動するアクチュエータの共振周波数frを測定するためのモードである。
【0026】
測定モードにおいて、制御回路11は、制御情報INFcnに基づいて、目標電流信号TGiとしてステップ信号を出力する。また、当該目標電流信号TGiは、選択回路12を介してDAC14に供給され、アナログ信号に変換される。したがって、図3において短破線で示すように、電流制御信号CNiの電圧は、ステップ状に変化する。
【0027】
この場合、駆動回路15aは、電圧Vvcmを電流制御信号CNiのステップ電圧と等しくなるように制御するが、アクチュエータの可動部の慣性力とばねの復元力とによって、図3において実線で示すように、電圧Vvcmは振動し、次第に収束する。また、アクチュエータも同様に振動し、可動部の変位xは、目標電流信号TGiに対応する目標位置に次第に収束する。そして、変位xを測定し、当該測定データをスペクトル解析することによって、共振周波数frを求めることができる。なお、駆動電流Ivcmまたは電圧Vvcmを測定し、当該測定データから共振周波数frを求めてもよい。
【0028】
次に、図4ないし図7を適宜参照して、制御モードにおける動作について説明する。なお、制御モードは、マイクロコンピュータ5の制御に従ってアクチュエータを駆動するためのモードである。
【0029】
制御モードにおいて、制御回路11は、制御情報INFcnに基づいて、アクチュエータの可動部の目標位置に応じてステップ状に変化する目標電流信号TGiを出力する。なお、以下においては、測定モードにおける動作との比較のため、目標電流信号TGiとして、測定モードと同一のステップ信号を出力した場合について説明する。
【0030】
また、当該目標電流信号TGiは、選択回路12およびフィルタ回路13aを介して、目標電流信号TGfとしてDAC14に供給され、アナログ信号に変換される。したがって、制御モードにおいては、駆動回路15aは、フィルタ回路13aによってフィルタリングされた電流制御信号CNiに応じて、ボイスコイルモータ3に駆動電流Ivcmを供給することとなる。
【0031】
前述したように、フィルタ回路13aのデジタルフィルタ131および132が減衰させる周波数帯域は、それぞれフィルタ設定情報STf1およびSTf2によって設定される係数に応じて定まる。
【0032】
図4は、ノッチフィルタとして機能するように係数やサンプリング周波数fs1が設定されたデジタルフィルタ131の周波数特性の一例を示している。当該ノッチフィルタは、測定モードにおいて予め測定された共振周波数frに等しい周波数fc1を中心とする周波数帯域を減衰させる。
【0033】
ここで、サンプリング周波数fs1は、ナイキスト周波数fn1(=fs1/2)が周波数fc1より高くなるように設定する必要がある。一方、周波数fc1を中心とする周波数特性(利得の対称性など)の観点からは、サンプリング周波数fs1が高くなり過ぎることは望ましくない。また、図3に示したようなステップ応答における振動には、共振周波数frの奇数倍の周波数成分も含まれるため、本実施形態では、サンプリング周波数fs1は、ナイキスト周波数fn1が周波数fc1の2倍程度となるように設定されている。
【0034】
図5は、ローパスフィルタとして機能するように係数やサンプリング周波数fs2が設定されたデジタルフィルタ132の周波数特性の一例を示している。当該ローパスフィルタは、所定の周波数fc2以上の周波数帯域を減衰させる。なお、本実施形態では、周波数fc2は、一例として、周波数fc1と等しくなるように設定されている。
【0035】
ここで、サンプリング周波数fs2は、ナイキスト周波数fn2(=fs2/2)が周波数fc2より高くなるように設定する必要がある。さらに、サンプリング周波数fs2は、デジタルフィルタ131のサンプリング周波数fs1より高くなるように設定する必要があり、好ましくは、サンプリング周波数fs1のn倍(nは2より大きい整数)となるように設定する。本実施形態では、サンプリング周波数fs2は、一例として、サンプリング周波数fs1の4倍となるように設定されている。
【0036】
図6は、図4に示したノッチフィルタのみを用いた場合における電圧Vvcmの一例を示している。また、図6においては、比較のため、測定モードにおける電圧Vvcm(図3の実線)を短破線で示している。
【0037】
前述したように、周波数特性の観点からサンプリング周波数fs1を十分に高くすることができないため、図6に示されているように、駆動回路15aの駆動波形はステップ状になってしまう。本実施形態では、より高いサンプリング周波数のローパスフィルタを併用することによって当該ステップ状の変化を平滑化している。
【0038】
図7は、図5に示したローパスフィルタをさらに用いた場合における電圧Vvcmの一例を示している。また、図7においては、比較のため、ノッチフィルタのみの場合における電圧Vvcm(図6の実線)を短破線で示している。
【0039】
前述したように、サンプリング周波数fs2は、サンプリング周波数fs1の4倍となっているため、図7に示されているように、駆動回路15aの駆動波形は、ローパスフィルタによって平滑化され、変化が滑らかになっている。さらに、ローパスフィルタへの入力信号は、既にノッチフィルタによって共振周波数frを中心とする周波数帯域が減衰されているため、振動が収束するまでの収束時間Tcon1は、測定モード(図3)における収束時間Tcon0より短縮されている。
【0040】
このようにして、目標電流信号TGiをデジタルフィルタ131および132によってフィルタリングすることによって、アクチュエータの振動が抑制され、振動が収束するまでの収束時間を短縮することができる。
【0041】
===モータ駆動回路の他の構成例===
上記実施形態では、モータ駆動回路1aは、制御モードにおいては、目標電流信号TGiをフィルタ回路13aによって常にフィルタリングしているが、これに限定されるものではない。例えば図8に示すように、制御回路11からさらにタイミング信号Timを出力し、モード選択信号SLmおよびタイミング信号Timが入力されるAND回路(論理積回路)17の出力信号を選択回路12の選択制御入力に入力してもよい。
【0042】
この場合、例えば図9に示すように、目標電流信号TGiがステップ状に変化する度に所定の期間だけ、タイミング信号Timがハイ・レベルとなり、目標電流信号TGiがフィルタリングされる。また、当該所定の期間の長さは、収束時間Tcon1とすることができる。したがって、収束時間Tcon1の経過後は、デジタルフィルタの丸め誤差などによる駆動回路15aの駆動波形の揺らぎを防止することができる。
【0043】
上記実施形態では、モータ駆動回路1aの駆動回路15aは、NMOSトランジスタ152によって駆動電流Ivcmを制御しているが、これに限定されるものではない。例えば図10に示すように、PMOS(P-channel MOS:Pチャネル金属酸化膜半導体)トランジスタ153を用い、電源電位VCCおよびグランド電位の極性を反転させた構成とすることもできる。
【0044】
モータ駆動回路1aでは、ボイスコイルモータ3がグランド電位に短絡されると大電流が流れることとなるが、図10に示したモータ駆動回路1cでは、当該グランド電位への短絡時に大電流が流れない構成となっている。また、モータ駆動回路1cにおいて、ボイスコイルモータ3が電源電位VCCに短絡されると大電流が流れるものの、電源電位VCCの端子や配線などは、通常ボイスコイルモータ3の周囲に配置されないため、当該電源電位VCCへの短絡は起こりにくい。さらに、モータ駆動回路1cの端子23とボイスコイルモータ3の一端とを共通のグランド電位とすることによって、配線を簡略化することもできる。
【0045】
一方、モータ駆動回路1aでは、NMOSトランジスタ152を用いることによって、PMOSトランジスタ153よりトランジスタのサイズを小さくすることができる。
【0046】
===フィルタ回路の他の構成例===
上記実施形態では、フィルタ回路13aは、カスケード接続された2つのデジタルフィルタ131および132を用いて構成されているが、これに限定されるものではない。例えば図10に示すように、時分割制御される1つのデジタルフィルタ133を用いて構成することもできる。
【0047】
図10に示されているフィルタ回路13bは、デジタルフィルタ133、フィルタ制御回路134、メモリ135、およびマルチプレクサ(選択回路)136、137を含んで構成されている。また、マルチプレクサ136は、フィルタ制御回路134から出力されるフィルタ選択信号SLfに応じて、フィルタ設定情報STf1またはSTf2を時分割で選択する。さらに、マルチプレクサ137は、フィルタ選択信号SLfに応じて、目標電流信号TGi、またはメモリ135に記憶されたデジタルフィルタ133の出力信号を時分割で選択する。
【0048】
このようにして、SLf=0となる第1の期間には、デジタルフィルタ133を、目標電流信号TGiが入力されるデジタルフィルタ131と同様のノッチフィルタとして機能させることができる。一方、SLf=1となる第2の期間には、デジタルフィルタ133を、ノッチフィルタの出力信号が入力されるデジタルフィルタ132と同様のローパスフィルタとして機能させることができる。
【0049】
前述したように、モータ駆動回路1aにおいて、サンプリング周波数fs1のデジタル(ノッチ)フィルタ131によって目標電流信号TGiのうちアクチュエータの共振周波数frを中心とする周波数帯域を減衰させ、さらにサンプリング周波数fs2(>fs1)のデジタル(ローパス)フィルタ132によって所定の周波数以上の周波数帯域を減衰させて平滑化し、フィルタリングされた電流制御信号CNiに応じて、ボイスコイルモータ3に駆動電流Ivcmを供給することによって、アクチュエータの共振周波数によらず、振動が収束するまでの収束時間を短縮することができる。
【0050】
また、サンプリング周波数fs2をサンプリング周波数fs1のn倍(nは2より大きい整数)とすることによって、駆動回路15aの駆動波形のステップ状の変化を平滑化することができる。さらに、サンプリング周波数fs1およびfs2は、分周回路または逓倍回路を用いて、一方から他方を生成することができる。
【0051】
また、測定モードにおいて、目標電流信号TGiとしてステップ信号をDAC14に供給して、当該ステップ応答における振動の共振周波数frを予め測定しておくことによって、制御モードにおいて、当該測定された共振周波数frに応じて、フィルタ回路13aが減衰させる周波数帯域を設定することができる。
【0052】
また、目標電流信号TGiがステップ状に変化する度に、収束時間Tcon1だけ目標電流信号TGiをフィルタリングすることによって、収束時間Tcon1の経過後は、デジタルフィルタの丸め誤差などによる駆動回路15aの駆動波形の揺らぎを防止することができる。
【0053】
また、デジタルフィルタ133を時分割制御して用いることによって、カスケード接続されたノッチフィルタおよびローパスフィルタの機能を1つのデジタルフィルタで実現することができ、回路規模を抑えることができる。
【0054】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0055】
上記実施形態では、測定モードによってボイスコイルモータ3が駆動するアクチュエータの共振周波数Frを測定していたが、本発明はこれに限定されず、測定モードを有さなくてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1a〜1c モータ駆動回路
3 ボイスコイルモータ
5 マイクロコンピュータ
11 制御回路
12 選択回路
13a、13b フィルタ回路
14 DAC(デジタル・アナログ変換器)
15a、15b 駆動回路
16 抵抗
17 AND回路(論理積回路)
21〜24 端子
131〜133 デジタルフィルタ
134 フィルタ制御回路
135 メモリ
136、137 マルチプレクサ(選択回路)
151 オペアンプ(演算増幅器)
152 NMOS(Nチャネル金属酸化膜半導体)トランジスタ
153 PMOS(Pチャネル金属酸化膜半導体)トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータを駆動するボイスコイルモータに供給される駆動電流の目標値を示すデジタル信号である目標電流信号のうち、前記アクチュエータの共振周波数を含む周波数帯域を減衰させるフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力信号をアナログ信号に変換して電流制御信号として出力するデジタル・アナログ変換器と、
前記電流制御信号に応じて前記ボイスコイルモータに前記駆動電流を供給する駆動回路と、
を有し、
前記フィルタ回路は、
前記目標電流信号のうち、前記共振周波数を中心とする周波数帯域を減衰させるデジタルノッチフィルタと、
前記デジタルノッチフィルタの出力信号のうち、所定の周波数以上の周波数帯域を減衰させるデジタルローパスフィルタと、
を含み、
前記デジタルローパスフィルタのサンプリング周波数は、前記デジタルノッチフィルタのサンプリング周波数より高いことを特徴とするモータ駆動回路。
【請求項2】
前記デジタルローパスフィルタのサンプリング周波数は、前記デジタルノッチフィルタのサンプリング周波数のn倍(nは2より大きい整数)であることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動回路。
【請求項3】
モード選択信号に応じて、前記目標電流信号としてステップ信号が入力され、当該ステップ信号を前記デジタル・アナログ変換器に供給する第1のモード、または入力された前記目標電流信号を前記フィルタ回路に供給する第2のモードを選択する選択回路をさらに有し、
前記デジタル・アナログ変換器は、前記第1のモードにおいては、前記ステップ信号をアナログ信号に変換して前記電流制御信号として出力し、
前記フィルタ回路は、前記第2のモードにおいては、前記第1のモードにおいて予め測定された前記共振周波数に応じて前記減衰させる周波数帯域が設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータ駆動回路。
【請求項4】
前記選択回路は、前記第2のモードにおいては、前記目標電流信号がステップ状に変化する度に当該目標電流信号を所定の期間だけ前記フィルタ回路に供給することを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動回路。
【請求項5】
前記フィルタ回路は、
前記デジタルノッチフィルタまたは前記デジタルローパスフィルタとして機能するデジタルフィルタと、
前記デジタルフィルタの係数、サンプリング周波数、および入力信号を時分割で選択する選択回路と、
前記デジタルフィルタの出力信号を記憶するメモリと、
を含み、
前記選択回路は、
第1の期間には、前記デジタルフィルタを前記デジタルノッチフィルタとして機能させるための係数およびサンプリング周波数を選択するとともに、前記目標電流信号を前記デジタルフィルタに供給し、
第2の期間には、前記デジタルフィルタを前記デジタルローパスフィルタとして機能させるための係数およびサンプリング周波数を選択するとともに、前記第1の期間に前記メモリに記憶された信号を前記デジタルフィルタに供給することを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載のモータ駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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