説明

モータ駆動装置

【課題】 モータの正逆駆動の通電のみで、上昇駆動される被駆動体の負荷に抗して駆動でき、下降駆動するときに被駆動体の自重による落下作用に対して制動力を与えることができ、かつ安価に構成できるモータ駆動装置の提供。
【解決手段】 通電により正逆方向に回転駆動される出力軸7を有するモータ2と、出力軸の一端に配置されるとともに、出力軸が正方向に駆動されるときには摩擦負荷を発生せず、出力軸が逆方向に駆動されるときに被駆動体の自重落下作用に制動力を与える摩擦負荷を発生する摩擦負荷発生装置4と、出力側となる出力軸7の他端に接続されるとともに、大きなディテント・トルクを有する減速装置3を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動装置に係り、特にモータの駆動負荷に応じて駆動制御を行う制御回路を使用せずにモータの正逆駆動の通電のみで所定の駆動を行うように構成されたモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、被駆動体である食器収納棚を、ベルトおよび滑車を用いて懸吊した状態に保持しておき、ベルトの巻き取りおよび巻き解き動作をベルトプーリを備えたベルト巻き取り機構を使用することにより、食器収納棚を下方の食器出し入れ位置と上方の食器保管及び乾燥位置との間で昇降駆動する昇降装置を提案している。具体的には、ベルト巻き取り機構を正逆駆動するようにモータへの通電を行うことでベルトプーリを正逆方向に回転駆動して、上方位置と下方位置との間で食器収納棚を昇降駆動するように構成されている。特にベルトを用いることで駆動時の騒音を低減した消音効果に優れる昇降装置を実現している。(特許文献1)
このように、被駆動体である食器収納棚を上方に駆動するためには負荷に抗してモータ駆動すればよい。一方、下降駆動するときには食器収納棚の自重落下作用が加わるので、単純にモータを逆方向に駆動すると急速度で落下してしまうことになる。
【0003】
そこで、従来は電磁ブレーキを用いてモータ停止時に食器棚の位置を保持するための降下の制動力の制御を、電子回路を用いて電気的に行うことで、食器収納棚が急速に降下しないようにしている。
【特許文献1】特開2001−199692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように被駆動体である食器収納棚を急速に降下させない駆動制御を行うためには、モータの回転検出に応じた電気的なブレーキの駆動制御が必要となる。このため、モータに付随する駆動回路構成が煩雑化し、高価にならざるを得なくなる問題がある。
【0005】
したがって、本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであり、モータの駆動負荷に応じて駆動制御を行う制御回路を使用せずに、モータの正逆駆動のための通電のみで、上昇駆動される被駆動体の負荷に抗して駆動することができ、また下降駆動するときに被駆動体の自重による落下作用に対して制動力を与えることができるモータ駆動装置の提供を目的としている。
【0006】
加えて、モータへの通電を停止すると、被駆動体を停止位置に保持することのできるモータ駆動装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、通電により正逆方向に回転駆動される出力軸を有するモータと、前記出力軸の一端に配置されるとともに、前記出力軸が正方向に駆動されるときには摩擦負荷を発生せず、前記出力軸が逆方向に駆動されるときに被駆動体に制動力を与える摩擦負荷を発生する摩擦負荷発生手段と、出力側となる前記出力軸の他端に接続されるとともに、大きなディテント・トルクを有する減速装置とを備えることを特徴としている。
【0008】
また、前記モータへの非通電時において、前記減速装置の前記ディテント・トルクを加えることで、前記被駆動体の自重落下作用に抗して停止位置に保持する摩擦値に前記摩擦負荷が設定されることを特徴としている。
【0009】
また、前記モータと、前記摩擦負荷発生手段と、前記減速装置とを一体的に構成した一体化装置としたことを特徴としている。
【0010】
また、前記被駆動体は、ベルトおよび滑車を用いて懸吊され、前記ベルトの巻き取りおよび巻き解きを行うベルトプーリを備えたベルト巻き取り手段により上方位置と下方位置との間で昇降駆動されるとともに、前記一体化装置を用いて、前記ベルトプーリの駆動を行うことを特徴としている。
【0011】
また、前記被駆動体は、送りネジと送りナットとから構成されるネジナット手段により上方位置と下方位置との間で昇降駆動されるとともに、前記一体化装置を用いて、前記送りナットの駆動を行うことを特徴としている。
【0012】
また、前記減速装置は、前記出力軸の前記他端に形成されるウォームと、前記ウォームに噛合するように軸支されるウォームホイールとから構成され、前記摩擦負荷発生手段は、前記出力軸の前記一端の外周面に作用する複数の楔形ローラを内蔵した一方向クラッチと、前記一方向クラッチのアウターレース側に固定される回転ディスクと、前記回転ディスクのディスク表裏面に摺接する1対のブレーキパッドと、前記1対のブレーキパッドを前記ディスク表裏面に対して常時押圧する押圧部材とから構成されることを特徴としている。
【0013】
また、前記摩擦負荷発生手段は、前記出力軸の前記一端に対して弾性部材を介して固定されることを特徴としている。
【0014】
そして、前記摩擦負荷発生手段は、前記出力軸の前記一端に対して調芯部材を介して固定されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、モータの正逆駆動の通電のみで、上昇駆動される被駆動体の負荷に抗して駆動でき、下降駆動するときに被駆動体の自重による落下作用に対して制動力を与えることができ、かつ安価に製造することのできるモータ駆動装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の好適な一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0017】
ここで、以下の実施形態では例えば昇降駆動される食器収納棚を備えた昇降装置に対して専用設計されたモータ駆動装置について主に述べるが、このように構成される装置以外にも種々の装置用として適用可能であることは言うまでもない。
【0018】
先ず、図1は、本発明の一実施形態であるモータ駆動装置1の要部を破断して示した正面図である。本図によれば、モータ駆動装置1は、モータ2と減速装置3と摩擦負荷発生装置4とが共通の出力軸7に対して直線的に一体構成されることで、小型化及び低コスト化を図っている。しかし、このように一体構成する構成に限定されず、これ以外にもモータ1と減速装置3と摩擦負荷発生装置4とを夫々個別に構成しておき、不図示の継ぎ手を介して接続するように構成して、よりコンパクトに構成しても良い。
【0019】
さて図1において、モータ1は通電により正逆方向に回転駆動される所定定格の直流モータまたは交流リバーシブルモータが使用可能であるが、これ以外の種類の正逆回転可能なモータも使用できる。このモータ1は、図示のように商用電源から電力を得るとともに二接点スイッチ63を接続したモータドライバ回路5に接続される。この二接点スイッチ63の操作部は、モータへの非通電時には中立位置に待機しており、使用時に操作部を上方向に倒すと正方向にモータ駆動し、下方向に倒すと逆方向にモータ駆動するようにモータドライバ回路5に接続されている。直流モータが使用されるときは、モータドライバ回路5は直流電源回路を内蔵しており、上記の二接点スイッチ63の操作に伴い直流電源回路からの通電極性を変えるように構成される。また、交流リバーシブルモータが使用されるときには、二接点スイッチ63の操作に伴い位相を変化させることで正逆方向の駆動を行うように構成することができる。
【0020】
モータ2が直流モータである場合について以下に述べると、モータ2は非磁性体材料である例えばアルミダイキャスト製の筒状の部品を基部6としており、この基部6に内蔵された左右一対のラジアル玉軸受8、8により出力軸7が回転自在に軸支されている。この出力軸7にはロータとなるコイル10が固定されており、不図示の通電ブラシを介してモータドライバ回路5からの通電をコイル10に対して行うことで、コイル10に回転磁界が発生される。このコイル10の外周面を取り囲むようにしてステータとなる極性の異なる永久磁石9が基部6の内周面に沿うように固定されているので、この永久磁石とコイル間での磁気吸引作用により所定方向に出力軸7が回転駆動される。
【0021】
この出力軸7の右端は、ラジアル玉軸受8からさらに基部6の外部に向けて突出形成されており、摩擦負荷発生手段となる摩擦負荷発生装置4に対して固定されている。この摩擦負荷発生装置4は、ラバーブッシュ29を介して基部6に固定されるとともに基部6と概略同じ外形寸法を有するヨーク18と固定ディスク16を備えているが、その具体的な構成については後述する。
【0022】
一方、モータ出力側となる出力軸7の他端には、大きなディテント・トルクを有する減速装置3が図示のように固定されている。この減速装置3は、ウォーム11と、このウォーム11に噛合するように軸支されるウォームホイール12とから構成されるウォームギア減速装置として構成することで、モータへの非通電時において大きなディテント・トルクを発生できる。このようなウォームギア減速装置以外にも、例えばギア減速比が30:1以上の平歯車の減速装置、ハイポイドギア減速装置、遊星ギア式減速装置などでも良いことは言うまでもなく、適宜減速装置が選ばれる。
【0023】
出力軸7の他端には、ウォーム11が結合されており、低コスト化を図っている。このウォーム11に対して直交するように噛合するウォームホイール12は、基部14に保持された一対の軸受13により回転自在に軸支される中空体30と一体構成されており、この中空体30の内周面の一部にキー31を形成している。また、基部14はモータの基部6と同様にアルミダイキャスト製であって、モータの基部6に対してネジ止め固定されるとともに、取り付け用の複数のネジ穴14aを形成している。
【0024】
上記のようにモータ駆動装置1は、モータ2と減速装置3と摩擦負荷発生装置4とが共通の出力軸7に対して直線的に一体構成されるので、この基部14の複数のネジ穴14aに対してネジを螺合することで全体を固定できることとなる。また、全体を固定したときに、上記のキー31に合致する溝部を備えた被駆動軸体を中空体30の内周面に潜入することで駆動力を伝達できるようになる。
【0025】
次に、図2は、図1の摩擦負荷発生装置4の立体分解図である。特に、この摩擦負荷発生装置4は、非通電時に減速装置3の有する大きなディテント・トルクを加えることで、後述する被駆動体を停止位置に保持する摩擦値となるように摩擦負荷が設定される。後述のように各部品間の相互寸法関係から決定されるか、または調節可能にされる。本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、この摩擦負荷発生装置4は、モータ2の出力軸7が正方向に駆動されるときには摩擦負荷をまったく発生しないが、出力軸7が逆方向に駆動されるときに制動(ブレーキ)力を与える摩擦負荷を発生するように構成される。
【0026】
上記のヨーク18は、例えば出力軸7が貫通する貫通孔部18bを中央に形成している。ヨーク18は、さらに上記のラバーブッシュ29を介して基部6側の取り付け穴部6aに螺合固定するための短ボルト28(図面では2本のみ図示)が挿入される取り付け孔部18cを90度の角度間隔で穿設している。さらにヨーク18には3本の圧縮コイルバネ25の座面となる穴部18dが120度の角度間隔で形成されている。
【0027】
またヨーク18には、上記の固定ディスク16を3本のスペーサ17(図では2本のみ図示)を介して長ボルト15で螺合して固定するためのネジ穴部18aが120度の角度間隔で穴部18dの外側に形成されている。このヨーク18の上の3本の圧縮コイルバネ25の上には、中央に出力軸7を通すための大きめの直径を有した貫通孔24aを穿設したブレーキアクチエータディスク24が挿入される。
【0028】
このブレーキアクチエータディスク24の上には中央に図示のような大きめの直径を有した貫通孔を有した第2ブレーキバッド23が回転ディスク21に接着などの方法で固定される。この回転ディスク21は、第2ブレーキバッド23に当接する底面を有したフランジ部21fを一体形成している。また、この回転ディスク21のフランジ部21fの上面には、上記の第2ブレーキバッド23と同様のブレーキ材料から準備される第1ブレーキパッド19が同様に接着などにより固定される。また、回転ディスク21の貫通孔21aには一方向クラッチ20が圧入またはセットネジ22により内蔵されるとともに、出力軸7に挿入される。
【0029】
そして、最後に上記の固定ディスク16をヨーク18に対して長ボルト15を用いてモータの基部6に固定することで、図1に図示した状態になる。
【0030】
このように組み付けることで、図3(a)に図示した摩擦負荷発生装置4の中心断面図のようになる。また、図3(b)に図示したように一方向クラッチ20が出力軸7に挿入される。本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、出力軸7の外周面に作用する複数の楔形ローラ20aをインナーレースに内蔵するとともにアウターレース20bが上記の回転ディスク21の貫通孔21aに対して圧入またはネジ止めされる。以上により、一方向クラッチ20の複数の楔形ローラ20aは、出力軸7が図中の実線矢印方向に回転するときにはそのまま滑ることになる。
【0031】
しかし出力軸7が図中の破線矢印方向に回転すると楔形ローラ20aの有する楔効果により出力軸7の外周面とアウターレース20bとの間において係止状態に保持される。この結果、出力軸7と回転ディスク21は一体的に回動する。
【0032】
このとき、回転ディスク21のフランジ部21f上に固定された第2ブレーキパッド23は、3本の圧縮コイルバネ25により図中の上方に向けて付勢されることでブレーキアクチエータディスク24上で動摩擦力を得て摺接することとなる。また、第1ブレーキパッド19は上記の固定ディスク16の底面上で同様に摺接することとなる。すなわち、回転ディスク21のフランジ部21f上に夫々固定された第1ブレーキパッド19と、第2ブレーキパッド23の動摩擦力によって、回転ディスク21が逆回転されるとブレーキ力が作用することとなる。
【0033】
なお、スペーサ17の長さを可変にし、長ボルト15のネジ孔部への螺合度合いを調整するか、またはコイルバネ25の長さを調整すれば、摺接の度合いが調整できるのでブレーキ力の調整が可能になる。さらに、上記の3本の圧縮コイルバネ25に代えて直径寸法が回転ディスク21のフランジ部21fの取り付け基部に略相当する1本の圧縮コイルバネを用いても良い。
【0034】
次に、図4は、本発明の別の実施形態であるモータ駆動装置1をベルト昇降装置に設ける様子を示した立体分解図である。本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛する。先ず、相違する構成は、図1〜図3の摩擦負荷発生装置4は、出力軸7の一端に対して弾性部材であるラバーブッシュを介して固定されていたが、図示の構成では摩擦負荷発生装置4は出力軸7の一端に対して調芯部材71を介して固定されている。このために出力軸7には溝部7kが形成されており、この溝部7kに調芯部材71の一部が挿入される。また、上記の一方向クラッチ20を内蔵した回転ディスク21には溝部70kを形成した軸体70がセットされる。または、図面の手前側に図示したように軸体70において、出力軸7の溝部7kに潜入する形状部を形成しておき、潜入後にゴム輪状の止め具である調芯部材71を被せるように構成してもよい。
【0035】
一方、モータの基部6には、取り付け用の複数のネジ穴14aが穿設されており、この基部14が昇降装置の基部40に対してネジ42を用いて固定されることで、キー31に合致する溝部45を備えた被駆動軸体43を中空体30の内周面に潜入する状態にできるようにしている。この結果、モータへの通電にともない駆動力を被駆動軸体43に伝達できるようになる。
【0036】
この被駆動軸体43は一対の基部40間で軸受により回転軸支されるとともにベルト44の途中を貫通することで巻きつけるように構成されている。この被駆動軸体43は滑車を用いて懸吊され、ベルト44の巻き取りおよび巻き解きを行うベルトプーリとして構成されることで上方位置と下方位置との間で昇降駆動される食器収納棚を駆動する。このようにベルトプーリの駆動を行うための詳細な構成は、特開2001−199692号公報に詳細に記載されている。そこで、ここでは以下のように簡単に述べる。
【0037】
図5は、図4のベルト昇降装置を食器乾燥装置に取り付けた要部を示した外観斜視図である。本図において、被駆動体である食器収納棚51は、図示のように矢印D1、D2方向に昇降されることで、食器収納棚51を最下方位置の食器出し入れ位置と、最上方位置の食器保管及び乾燥位置との間で昇降駆動されるように構成されている。破線で示す昇降棚及び食器乾燥装置本体50は、例えばキッチンのダイニングセットの流し台の上方に配置された食器棚スペースに設けられる。
【0038】
この本体50の底面は開口しており、食器収納棚51を上記のように上下方向に昇降したときに、食器収納棚51の底部を残して全体を覆う寸法を有する箱形状を備えている。一方、この本体50の左右内壁面にはガイド板54が夫々固定されており、これらのガイド板54により案内されるスライダー部材55を食器収納棚51の左右外壁部の上方に固定することで、昇降駆動するときに食器収納棚51を前後左右方向にガタ付きなく案内できるようにしている。
【0039】
食器収納棚51の天板の左右部位には動滑車47がブラケットを用いて夫々回転自在に設けられており、この動滑車47にはベルト44が巻きつけられており、ベルト端部48を図中のハッチングで図示した基部40に固定している。また、本体50内の基部40において、動滑車47の上方に相当する部位にはベルト44を図示のように案内するアイドルプーリ46が夫々回転自在に設けられている。
【0040】
また、昇降装置の基部40に対して回転自在かつモータ駆動装置1により上記のように駆動されることで、ベルト44の巻き取りおよび巻き解きを行うベルトプーリとして構成される被駆動軸体43が、図4を参照して述べたように略中央に配置されている。
【0041】
次に、図6は、図5の食器乾燥装置の配線図である。本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、本体50の内部には食器収納棚51の側面に固定されたアクチエータ51aによってオン・オフされる上下リミットスイッチ61、62が固定されている。これらのスイッチは上記のモータドライバ回路5に接続されている。以上の配線により、二接点スイッチ63の操作部を上方に倒すと、モータ駆動装置1への正方向の駆動が行われて、ベルト44の巻き取りが行われる。この結果、上リミットスイッチ61がオンされるまで食器収納棚51は矢印D1方向に上昇駆動される。
【0042】
一方、二接点スイッチ63の操作部を下方に倒すと、モータ駆動装置1への逆方向の駆動が行われて、ベルト44の巻き戻しが行われる結果、下リミットスイッチ61がオンされるまで食器収納棚51は矢印D2方向に降下駆動される。この操作途中で、二接点スイッチ63の操作部を指先から離すと、操作部が中立位置に戻ることでモータへの通電が停止される。このようなモータへの非通電時において、減速装置3の有する大きなディテント・トルクに摩擦発生装置4の有する摩擦力を加えることで被駆動体である食器収納棚51の自重落下作用に抗する停止位置に保持することができる。図面を参照して説明すると、図7(a)は摩擦負荷発生装置4の中心断面図、(b)は食器乾燥装置の正面図とともに示した上昇駆動の動作説明図である。
【0043】
本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、モータの正方向駆動時には図7(a)に図示の出力軸7は矢印方向に駆動される。このとき一方向クラッチ20は空回りする。また、ベルト44の巻き取りが被駆動軸体43で行われる結果、食器収納棚51は矢印D1方向に上昇駆動される。
【0044】
また、図8(a)は摩擦負荷発生装置4の中心断面図、(b)は食器乾燥装置の正面図とともに示した降下駆動の動作説明図である。本図において、モータの逆方向駆動時には図8(a)に図示の出力軸7は矢印方向に駆動される。このとき一方向クラッチ20は、回転ディスク20と出力軸7とが一体的に回動するように内蔵の楔ローラが図3(b)で説明したようにかみ合う状態となる。
【0045】
この状態から、ベルト44の巻き戻しが被駆動軸体43で行われる結果、最上方位置に位置した食器収納棚51は矢印D2方向に降下される。このとき、上記の第1、第2ブレーキパッド19、23により摩擦力を発生するように挟持された回転ディスク21の有する制動力とウォームギア機構による減速装置3の有するデイテント力の和によって、食器収納棚51の自重落下荷重とのバランスが保たれつつ降下駆動される。
【0046】
また、非通電時には減速装置3の有する大きなディテント・トルクに摩擦発生装置4の有する摩擦力を加えることで食器収納棚51の自重落下作用に抗する停止位置に保持できる。
【0047】
最後に、図9は、本発明の別実施形態であるモータ駆動装置1について、送りネジと送りナットとから構成される送りネジナット装置と一体的に設けた様子を示した外観斜視図である。図示のように被駆動体Wは、送りネジ350と送りナット330とから構成される送りネジナット装置300により上方位置と下方位置との間で矢印D1、D2方向に昇降駆動される。また、モータ駆動装置1は送りナット330を回転自在に内蔵した基部とともに一体化構成されている。
【0048】
このように、送りナットの駆動を行うことで被駆動体Wを昇降駆動できるとともに、モータへの非通電時には大きなディテントトルクを発生でき、停止位置を保持できるので、例えば椅子の昇降機構、電動ベッドの傾斜機構などに最適となる。
【0049】
尚、以上説明した摩擦負荷発生装置4によれば、第1と第2のブレーキパッドを使用したが、これに限定されず、1枚のみまたは2枚以上を設けるように構成しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態であるモータ駆動装置1の要部を破断して示した正面図である。
【図2】図1の摩擦負荷発生装置4の立体分解図である。
【図3】(a)は図1の摩擦負荷発生装置4の中心断面図である。(b)は一方向クラッチ20が出力軸7に挿入された様子を示した断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態であるモータ駆動装置1をベルト昇降装置に設ける様子を示した立体分解図である。
【図5】図4のベルト昇降装置を設けた食器乾燥装置の要部を示した外観斜視図である。
【図6】図5の食器乾燥装置の配線図である。
【図7】(a)は摩擦負荷発生装置4の中心断面図、(b)は食器乾燥装置の正面図とともに示した上昇駆動の動作説明図である。
【図8】(a)は摩擦負荷発生装置4の中心断面図、(b)は食器乾燥装置の正面図とともに示した降下駆動の動作説明図である。
【図9】本発明の別実施形態であるモータ駆動装置1について、送りネジと送りナットとから構成される送りネジナット装置と一体的に設けた様子を示した外観斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 モータ駆動装置
2 モータ
3 減速装置
4 摩擦負荷発生装置
5 モータドライバ回路
6 基部
7 出力軸
11 ウォーム
12 ウォームホイール
14 基部
16 固定ディスク
18 ヨーク
19 第1ブレーキパッド
20 一方向クラッチ
21 回転ディスク
23 第2ブレーキパッド
24 ブレーキアクチエータディスク
29 ラバーブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により正逆方向に回転駆動される出力軸を有するモータと、
前記出力軸の一端に配置されるとともに、前記出力軸が正方向に駆動されるときには摩擦負荷を発生せず、前記出力軸が逆方向に駆動されるときに制動力を与える摩擦負荷を発生する摩擦負荷発生手段と、
出力側となる前記出力軸の他端に接続されるとともに、大きなディテント・トルクを有する減速装置と、を備えることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記モータへの非通電時において、前記減速装置の前記ディテント・トルクを加えることで、前記被駆動体の自重落下作用に抗して停止位置に保持する摩擦値に前記摩擦負荷が設定されることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記モータと、前記摩擦負荷発生手段と、前記減速装置とを一体的に構成した一体化装置としたことを特徴とする請求項1または2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記被駆動体は、ベルトおよび滑車を用いて懸吊され、前記ベルトの巻き取りおよび巻き解きを行うベルトプーリを備えたベルト巻き取り手段により上方位置と下方位置との間で昇降駆動されるとともに、前記一体化装置を用いて、前記ベルトプーリの駆動を行うことを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記被駆動体は、送りネジと送りナットとから構成されるネジナット手段により上方位置と下方位置との間で昇降駆動されるとともに、前記一体化装置を用いて、前記送りナットの駆動を行うことを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記減速装置は、前記出力軸の前記他端に形成されるウォームと、前記ウォームに噛合するように軸支されるウォームホイールとから構成され、
前記摩擦負荷発生手段は、前記出力軸の前記一端の外周面に作用する複数の楔形ローラを内蔵した一方向クラッチと、
前記一方向クラッチのアウターレース側に固定される回転ディスクと、
前記回転ディスクのディスク表裏面に摺接する1対のブレーキパッドと、
前記1対のブレーキパッドを前記ディスク表裏面に対して常時押圧する押圧部材と、
から構成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記摩擦負荷発生手段は、前記出力軸の前記一端に対して弾性部材を介して固定されることを特徴とする請求項6に記載のモータ駆動装置。
【請求項8】
前記摩擦負荷発生手段は、前記出力軸の前記一端に対して調芯部材を介して固定されることを特徴とする請求項6に記載のモータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−74767(P2007−74767A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255524(P2005−255524)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(391016989)株式会社的場電機製作所 (8)
【出願人】(591015511)高千穂交易株式会社 (11)
【Fターム(参考)】