説明

モータ

【課題】モータの与圧ばね構造において、与圧ばねの端部がワッシャーの挿通孔等に嵌り込むことを防ぐことの出来る、与圧ばねの提供。
【解決手段】回転軸11が突出しているモータ本体10と、回転軸11のモータ本体10とは反対側の端部に回転軸11に挿通され固定されているギア12と、回転軸11に挿通され、モータ本体10とギア12との間に介在して少なくとも一方が回転軸11の外径よりわずかに大きい内径の小径部13aを持っているギア12に与圧を加える与圧ばね13において、少なくとも1つの与圧ばね13の小径部13a側の端部13bの外径が、小径部13aの外径よりも大きい径を持つことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータの与圧ばねに関し、特に、与圧ばねの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2007−14166に示すようなステッピングモータには、スクリュー部の与圧手段として、モータ本体とスクリュー部の間にコイルばねが回転軸に挿通されて配置されている。このコイルバネによる予圧手段により、スクリュー部のガタツキが防止され、スクリュー部と外部への動力伝達部分との噛合せが確実に行われる。またコイルバネには、従来の円筒コイルバネに比べ、回転軸との擦れ合う面積を小さくし、スクリュー部の予圧力やモータの出力トルクに影響を与えにくくする為、一方が先細りしている円錐状のコイルバネを採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−14166
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこのようなモータの与圧ばね構造では、図5に示すように、円錐状コイルばね1の小径部3が回転軸5の直径より僅かに大きな内径となっているので、小径部3が、当接するワッシャー7の軸挿通孔7aと回転軸5との隙間Sに嵌り込んでしまい、コイルバネ1が回転軸5と一緒に回転してしまうことで、異音発生やコイルバネの予圧力やモータ出力トルクへの影響等の不具合が発生する恐れがある。小径部3の最端部においては特にその恐れが強い。
【0005】
そこで、上記問題点に鑑み、本発明の課題は、モータの与圧ばね構造において、与圧ばねの端部がワッシャーの挿通孔等に嵌り込むことを防ぐことの出来る、与圧ばねを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為、本発明に係るモータの与圧ばね構造は、回転軸が突出しているモータと、回転軸のモータとは反対側の端部に回転軸に挿通され固定されている外部動力伝達手段と、回転軸に挿通され、モータと外部動力伝達手段との間に介在して少なくとも一方が回転軸の外径よりわずかに大きい内径の小径部を持っている外部動力伝達手段に与圧を加える与圧ばね構造において、少なくとも1つの与圧ばねの小径部側の端部の外径が、小径部の外径よりも大きい径を持つことを特徴とする。また、例えばワッシャーを介して外部動力伝達手段に与圧を加える与圧ばね構造を採用してもよい。ワッシャーを介する与圧ばね構造では、その与圧ばねの端部の外径は、少なくとも回転軸の外径に、ワッシャーの回転軸挿通孔と回転軸との隙間の距離の2倍の距離と、与圧ばねの小径部と回転軸との隙間の距離の2倍の距離とを加えた径より大きいことが好ましい。
【0007】
この与圧ばね構造においては、与圧ばねの小径部側の端部を与圧ばねやワッシャー等の変動も考慮してその外径を大きくしているので、従来通りの径を維持している小径部により回転軸との擦れ合う面積を小さくし、スクリュー部の予圧力やモータの出力トルクに影響を与えにくくなっているとともに、与圧ばねの小径部側の端部がワッシャーの挿通孔等に嵌り込むことを防ぐことができ、嵌り込みによるコイルバネが回転軸と一緒に回転してしまうことで発生する、異音発生やコイルバネの予圧力やモータ出力トルクへの影響等の不具合を防ぐことができる。
【0008】
さらに、本発明に係るモータの与圧ばね構造は、少なくとも1つの与圧ばねの小径部側の最端部が、小径部の外径よりも外方に突出していることを特徴とする構造を採用することもできる。この構造でも例えばワッシャーを介して外部動力伝達手段に与圧を加える与圧ばね構造を採用しても良い。この場合でも与圧ばねの最端部は、少なくとも回転軸の外径に、ワッシャーの回転軸挿通孔と回転軸との隙間の距離の2倍の距離と、小径部と回転軸との隙間の距離の2倍の距離とを加えた径よりも外方に突出していることが好ましい。
【0009】
この与圧ばね構造においても、与圧ばねの小径部側の最端部が与圧ばねやワッシャー等の変動も考慮した寸法だけ外方に突出しているので、従来通りの径を維持している小径部により回転軸との擦れ合う面積を小さくし、スクリュー部の予圧力やモータの出力トルクに影響を与えにくくなっているとともに、その最端部により与圧ばねの小径部がワッシャーの挿通孔等に嵌り込むことを防ぐことができ、嵌り込みによるコイルバネが回転軸と一緒に回転してしまうことで発生する、異音発生やコイルバネの予圧力やモータ出力トルクへの影響等の不具合を防ぐことができる。
【0010】
与圧ばねの小径部側の端部の外径や最端部の突出寸法を保護材(ワッシャー)の回転軸の挿通孔の内径よりも大きくすれば、本発明の効果をある程度得ることが可能であるが、回転軸の外径に、保護材の挿通孔と回転軸との隙間の距離の2倍の距離と、与圧ばねの小径部と回転軸との隙間の距離の2倍の距離とを加えた径よりも大きくすれば、確実に本発明の効果を奏することができる。
【0011】
なお、保護材を採用しない構造においては、コイルバネがモータ若しくは外部動力伝達手段の回転軸の挿入部に嵌り込むことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、与圧ばねの小径部により回転軸との擦れ合う面積を小さくし、スクリュー部の予圧力やモータの出力トルクに影響を与えにくくなっているとともに、小径部がワッシャーの挿通孔等に嵌り込むことを防ぐことができ、嵌り込みによりコイルバネが回転軸と一緒に回転してしまうことで発生する、異音発生やコイルバネの予圧力やモータ出力トルクへの影響等の不具合を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るステッピングモータの断面図である。
【図2】同ステッピングモータの要部拡大断面図である。
【図3】同ステッピングモータに使用される与圧ばねの斜視図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係るステッピングモータに使用される与圧ばねの斜視図である。
【図5】従来のステッピングモータの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基いて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の実施の形態に係るステッピングモータの断面図、図2は同ステッピングモータの要部拡大断面図、図3は同ステッピングモータに使用される与圧ばねの斜視図である。
【0016】
本発明のステッピングモータは、回転軸11が突出しているモータ本体10と、回転軸11のモータ本体10とは反対側の端部に外部動力伝達手段としてのギア12が固定されており、回転軸11に挿通され、モータ本体10とギア12との間に介在して、ギア12に与圧を加える与圧ばね13を有する。14は保護材としてのワッシャーである。
【0017】
ステッピングモータはPM型ステッピングモータであり、ロータとして回転軸11に円環状ロータ磁石25が固定されており、ステータとしてA相インナーヨーク15とA相アウターヨーク16の間に収納されるA相コイル巻線17と、B相インナーヨーク18とB相アウターヨーク19の間に収納されるB相コイル巻線20を有し、軸受21、22により、回転軸11を回転可能に支持し、モータ本体10を構成している。23はモータ本体を外部機器に接続する為の取付板であり、24は端子部である。
【0018】
図2及び図3に示すように、与圧ばね13はギア12側に回転軸11の外径よりわずかに大きい内径の小径部13aが成形されており、この小径部13aの部分のみが回転軸11と擦れ合うので、従来の円筒コイルバネに比べ、回転軸11との擦れ合う面積が小さくなり、ギア12の予圧力やモータの出力トルクに影響を与えにくくなっている。
【0019】
そして、与圧ばね13の小径部13a側の端部13bにおいて、その外径が小径部13aの外径よりも大きくなっているので、ワッシャー14の回転軸11の挿通孔14aにおける、回転軸11との隙間Tに与圧ばね13の小径部13a側の端部13bが嵌り込むことを防ぐことができ、嵌り込みによるコイルバネが回転軸と一緒に回転してしまうことで発生する、異音発生やコイルバネの予圧力やモータ出力トルクへの影響等の不具合を防ぐことができる。
【0020】
端部13bの外径を挿通孔14aの内径よりも大きくすれば、端部13bが隙間Tに嵌り込むことを防ぐことが可能であるが、ワッシャー14は隙間T、与圧ばね13は小径部13aにおける回転軸11との隙間tの距離の分動くことがあるため、特にワッシャー14と与圧ばね13が正反対方向に動いた場合、ワッシャー14の隙間Tの一方の距離が大きくなり、また隙間Tの距離が大きくなった側において、回転軸11に与圧ばねの端部13bが近接する為、端部13bが隙間Tに嵌り込む可能性がある。その為、与圧ばねの端部13bの外径を、回転軸11の外径に、ワッシャー14の挿通孔14aと回転軸11との隙間Tの距離の2倍の距離と、与圧ばね13の小径部13aと回転軸11との隙間tの距離の2倍の距離とを加えた径より大きくすれば、ワッシャー14と与圧ばね13が最大に偏った場合でも、端部13bが隙間Tに嵌り込むことを防ぐことができる。
【0021】
具体的には、ワッシャー14の回転軸11との隙間Tの距離をT、与圧ばね13の小径部13aにおける回転軸11との隙間tの距離をt、回転軸11の外径をA、与圧ばね13の端部13bの外径をBとすると、ワッシャー14と与圧ばね13が正反対方向に動いた場合の、隙間T側に張出す端部13bの外径部の回転軸11からの距離をB’とすると、B’は、B’=B/2−A/2−tとなる。ここで、端部13bが隙間Tに嵌り込むことを防ぐ為には、B’>Tの関係を満足すれば良いことから、これにより端部13bの外径Bは、B>A+2T+2tの関係を満足すれば良いことになり、端部13bの外径は、回転軸11の外径に、ワッシャー14の挿通孔14aと回転軸11との隙間Tの距離の2倍の距離と、与圧ばね13の小径部13aと回転軸11との隙間tの距離の2倍の距離とを加えた径より大きくすれば良いことがわかる。
【実施例2】
【0022】
図4は本発明の他の実施の形態に係るステッピングモータに使用される与圧ばねの斜視図であり、この与圧ばね以外の構造は実施例1と同様である。
【0023】
本実施例の与圧ばね33にもギア12側に回転軸11の外径よりわずかに大きい内径の小径部33aが成形されており、この小径部33aの部分のみが回転軸11と擦れ合うので、従来の円筒コイルバネに比べ、回転軸11との擦れ合う面積が小さくなり、ギア12の予圧力やモータの出力トルクに影響を与えにくくなっていることは実施例1と同様である。
【0024】
与圧ばね33の小径部33a側の最端部33bは外方に直線的に突出しており、その突出距離が小径部33aの外径よりも外方に突出しているので、ワッシャー14の回転軸11の挿通孔14aにおける、回転軸11との隙間Tに与圧ばね33の小径部33a側の最端部33bが嵌り込むことを防ぐことができ、嵌り込みによるコイルバネが回転軸と一緒に回転してしまうことで発生する、異音発生やコイルバネの予圧力やモータ出力トルクへの影響等の不具合を防ぐことができる。
【0025】
本実施例の与圧ばね33においても、ワッシャー14は隙間T、与圧ばね33は小径部33aにおける回転軸11との隙間tの距離の分動くことがあるため、特にワッシャー14と与圧ばね33が正反対方向に動いた場合、ワッシャー14の隙間Tの一方の距離が大きくなり、また隙間Tの距離が大きくなった側において、回転軸11に与圧ばねの最端部33bが近接する為、最端部33bが隙間Tに嵌り込む可能性がある。その為、与圧ばねの最端部33bの突出距離を、回転軸11の外径に、ワッシャー14の挿通孔14aと回転軸11との隙間Tの距離の2倍の距離と、与圧ばね33の小径部33aと回転軸11との隙間tの距離の2倍の距離とを加えた径より大きくすれば、ワッシャー14と与圧ばね33が最大に偏った場合でも、最端部33bが隙間Tに嵌り込むことを防ぐことができる。
【0026】
本実施例はワッシャー14を介した構造について説明を行ったが、本発明はこれに限定されず、ワッシャー14を使用しない構造においても適用可能である。その場合、ワッシャー14の挿通孔をギア12若しくはモータ本体10(軸受21)の回転軸11の挿通部に置き換えて考える。
【符号の説明】
【0027】
1…円錐状コイルばね
3,13a,33a…小径部
5,11…回転軸
7,14…ワッシャー(保護材)
7a,14a…挿通孔
10…モータ本体
12…ギア(外部動力伝達手段)
13,33…与圧ばね
13b…端部
15…A相インナーヨーク
16…A相アウターヨーク
17…A相コイル巻線
18…B相インナーヨーク
19…B相アウターヨーク
20…B相コイル巻線
21,22…軸受
23…取付板
24…端子部
25…円環状ロータ磁石
33b…最端部
S,T,t…隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が突出しているモータと、
前記回転軸の前記モータとは反対側の端部に、前記回転軸に挿通され固定されている外部動力伝達手段と、
前記回転軸に挿通され、前記モータと前記外部動力伝達手段との間に介在して少なくとも一方が前記回転軸の外径よりわずかに大きい内径の小径部を持っている前記外部動力伝達手段に与圧を加える与圧ばね構造において、
少なくとも1つの前記与圧ばねの前記小径部側の端部の外径が、前記小径部の外径よりも大きい径を持つことを特徴とする、モータの与圧ばね構造。
【請求項2】
請求項1に記載のモータの与圧ばね構造において、前記モータと前記外部動力伝達手段との間に、挿通孔を有する保護材が前記外部動力伝達手段に隣接して前記回転軸に挿通配置され、前記保護材を介して前記外部動力伝達手段に与圧を加えることを特徴とする与圧ばね構造。
【請求項3】
請求項2に記載のモータの与圧ばね構造において、前記端部の外径は、少なくとも前記回転軸の外径に、前記保護材の挿通孔と前記回転軸との隙間の距離の2倍と、前記小径部と前記回転軸との隙間の距離の2倍の距離とを加えた径より大きいことを特徴とする、モータの与圧ばね構造。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のモータの与圧ばね構造において、少なくとも1つの前記与圧ばねの前記小径部側の最端部が、前記小径部の外径よりも外方に突出していることを特徴とする、モータの与圧ばね構造。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れかに記載のモータの与圧ばね構造において、前記小径部側の最端部は、少なくとも前記回転軸の外径に、前記保護材の挿通孔と前記回転軸との隙間の距離の2倍と、前記小径部と前記回転軸との隙間の距離の2倍の距離とを加えた径よりも外方に突出していることを特徴とする、モータの与圧ばね構造。
【請求項6】
前記保護材はワッシャーであることを特徴とする、請求項2乃至5の何れかに記載のモータの与圧ばね構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−244595(P2011−244595A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114613(P2010−114613)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000177151)日本電産セイミツ株式会社 (143)
【Fターム(参考)】