説明

モードS二次監視レーダ

【課題】正確な航空機IDを取得するとともに、信頼性の高いターゲットレポートを出力して、航空管制の安全性の向上に寄与するモードS二次監視レーダを提供する。
【解決手段】本発明の特徴に係るモードS二次監視レーダ1は、初期捕捉がされた直後または航空機IDの変更が検知された直後のスキャン内において、航空機IDの送信を要求する質問信号を同一の航空機に対して複数回送信する送信器13と、航空機IDを含む応答信号を取得すると、航空機に予め定められるモードSアドレスと、航空機IDとを関連付けてメモリに記憶する記憶処理部16と、同一のモードSアドレスに関連付けられる複数の航空機IDがメモリに記憶されると、複数の航空機IDが一致するか否かに応じて、取得した航空機IDが正確か否かを判定する判定部17と、航空機IDが正確であると判定されると、航空機IDを利用してターゲットレポートを生成する生成部18とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モードSトランスポンダを搭載した航空機を監視するモードS二次監視レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制では、地上局のモードS二次監視レーダ(SSRモードS)が航空機を監視して生成したターゲットレポートを利用している。モードS二次監視レーダは、監視覆域に存在するモードSトランスポンダを搭載した航空機(モードS機)から、位置データ(スラントレンジおよび方位)、高度データ、航空機ID等を取得してターゲットレポートを生成し、航空管制を実行する管制システムに提供している。このようなプロトコルについては、国際的に統一されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
たとえば、図7に示すように、従来のモードS二次監視レーダ2では、チャネル管理部21からの要求で質問生成部22が生成した質問信号を送信器23からアンテナ24を介してモードS機のトランスポンダに送信する。その後、送信した質問信号に対してトランスポンダから応答信号が送信されると、解読部26は、アンテナ24を介して受信器25が受信した応答信号をチャネル管理部21から要求された期間に対応したリスニングウィンドウを開いて入力する。また、解読部26は、入力した応答信号を解読して得られた高度データや航空機IDをレポート生成部27に出力する。高度データや航空機IDを入力したレポート生成部27は、入力した高度データや航空機IDを含むターゲットレポートを生成して管制システムに提供している。
【0004】
モードS二次監視レーダ2がこれらの情報を取得する手順は、「(1)一括質問/応答による初期捕捉」と、「(2)個別質問/応答(トランザクション)による捕捉」とから構成されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
図8に示すように、地上局のモードS二次監視レーダ2は、まず、モードS機のトランスポンダから一括質問/応答による初期捕捉において対象の航空機のモードSアドレスや位置情報等のデータを得る(第1および第2スキャン)。モードS二次監視レーダ2はその後、対象の航空機の追尾を開始すると個別質問/応答による捕捉に移行して対象の航空機の高度情報および航空機IDを取得し(第3スキャン)、以降、対象の航空機の追尾が継続する限り高度情報取得の個別質問/応答による捕捉を継続する(第4および第5スキャンならびにそれ以降のスキャン(図示せず))。
【0006】
ここで、高度取得トランザクション(UF=4/DF=4)で取得する高度データは、航空機の飛行に伴って時々刻々と変化する。したがって、モードS二次監視レーダ2は、初期捕捉後の全てのスキャン(第3ないし第5スキャンならびにそれ以降のスキャン)において高度データを取得し、各スキャンで取得した高度データをそれぞれターゲットレポートの生成に使用する。
【0007】
一方、航空機IDは飛行のルートや時刻を示す飛行計画(フライトプラン)に対してユニークに設定される値であり(別称は「ビーコンコード」、「モードAコード」)、原則として一度設定された航空機IDがフライト中に変更されることはない。したがって、モードS二次監視レーダ2は、初期捕捉直後の第3スキャンにおいてID取得トランザクション(UF=5/DF=5)を実行して航空機IDを取得するが、その後の第4および第5スキャンならびにそれ以降のスキャンでは航空機IDを取得せずに第3スキャンで取得した航空機IDを繰り返して使用してターゲットレポートを生成している。
【0008】
稀に管制官指示または緊急事象の発生によって、飛行中の航空機IDが変更されることもあるが、この場合には、毎スキャン取得しているDF=4応答の中のフライトステータス(FS)が変化するので、これを検出した場合には、直後のスイープにおいて改めてID取得トランザクション(UF=5/DF=5)を実行することにより新しい航空機IDを取得し、それ以降のスキャンでは高度取得トランザクション(UF=4/DF=4)のみの実行となる。
【0009】
各スキャン時間は有限であるため、モードS二次監視レーダ2が一度取得した航空機IDを繰り返して使用することで、限られたスキャン時間を有効に利用することができる。すなわち、モードS二次監視レーダ2では、残りのスキャン時間を他の航空機との質問/応答及びデータ通信に当てることができる。
【0010】
このように一度取得した航空機IDを繰り返して利用するのは、モードS応答にあるCRC機能によって信頼性の高いデータ取得を実現することができるためである。すなわち、モードS二次監視レーダ2では、一度取得した航空機IDを信頼して繰り返して利用している。
【非特許文献1】ICAO、Doc.9684、“Manual of the Secondary Surveillance Radar (SSR) System”、“6.3 Surveillance Protocol”
【非特許文献2】橋田芳男、大友恒、久慈義則、「航空管制用二次監視レーダSSRモードS」、東芝レビュー、Vol.59、No.2、2004年、p.58−61
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、モードS応答のCRC機能については、公称の誤り率が10-7であり、10-7の確率で発生した誤りを検出できないおそれがある。仮に初期捕捉直後のスキャンに行われるトランザクション(UF=5/DF=5)において誤りが発生した場合、その後のスキャンでは誤った航空機IDを含むターゲットレポートが生成されて航空管制に利用されると、航空管制の安全性上の問題となる。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、正確な航空機IDを取得するとともに、信頼性の高いターゲットレポートを出力して、航空管制の安全性の向上に寄与するモードS二次監視レーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特徴に係るモードS二次監視レーダは、初期捕捉がされた直後のスキャン内、またはフライトステータスの変化により航空機IDの変更が検知された直後のスキャン内において、飛行に対して割り当てられた航空機IDの送信を要求する質問信号を同一の航空機に対して複数回送信する送信器と、航空機IDを含む応答信号を取得すると、航空機に予め定められるモードSアドレスと、航空機IDとを関連付けてメモリに記憶させるとともに、同一のモードSアドレスに関連付けられる複数の航空機IDがメモリに記憶されているとき、複数の航空機IDが一致するか否かに応じて、取得した航空機IDが正確か否かを判定する判定部と、航空機IDが正確であると判定されると、航空機IDを利用してターゲットレポートを生成する生成部とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、正確な航空機IDを取得できるとともに、信頼性の高いターゲットレポートを出力して、航空管制の安全性の向上に寄与できるモードS二次監視レーダを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダは、モードSトランスポンダを備える航空機(モードS機)を監視し、このモードS機の監視の結果をターゲットレポートとして航空管制を行う管制システムに出力する。
【0016】
図1に示すように、本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1は、追尾処理部10から入力した予測トラック情報に従って、質問信号の送信を要求する要求信号を生成するチャネル管理部11と、チャネル管理部11から入力した要求信号に従って、質問信号を生成する質問生成部12と、質問生成部12から入力した質問信号をアンテナ14を介してモードS機のトランスポンダに送信する送信器13と、トランスポンダから送信された応答信号をアンテナ14を介して受信する受信器15と、受信器15から入力した応答信号をチャネル管理部11からの要求に対応した期間リスニングウィンドウを開き解読する解読部16と、解読部16から入力した同一スキャン内に取得した複数の航空機IDに基づいて、取得した航空機IDが正確か否かを判定する判定部17と、解読部16から入力した高度データおよび判定部17から入力した正確な航空機IDに基づいて、ターゲットレポートを生成するレポート生成部18とを有している。
【0017】
追尾処理部10は、スキャン単位での航空機に関するデータ(高度データ、位置データ(レンジとアジマス)等)を解読部16から入力し、入力したデータやアンテナ14の回転情報である方位信号等から航空機の航跡や飛行速度を求めるとともに、次のスキャンにおける航空機の位置および速度を予測(予測トラック)し、各航空機にユニークに設定されている航空機(機体)を識別するモードSアドレス(別称、「航空機アドレス」)と、予測した航空機に関するデータ(位置データや速度データ等)とを含む「予測トラック情報」をチャネル管理部11に出力する。
【0018】
チャネル管理部11は、所定のスケジューリングに従って、要求信号を生成して質問生成部12に出力する。具体的には、チャネル管理部11は、オールコール期間には一括質問/応答が行われるように要求信号を生成する。また、チャネル管理部11は、ロールコール期間には個別質問/応答が行われるように追尾処理部10から入力した予測トラック情報に基づいて要求信号を生成する。例えばロールコール期間においてチャネル管理部11は、追尾処理部10から入力した予測トラック情報に基づいて、次のスキャンに対象の航空機に質問信号を送信する送信タイミングをビームドウェルタイム内でスケジューリングし、送信タイミングや送信する位置等を含む要求信号を生成し、質問生成部12に出力する。更にチャネル管理部11は予測した応答が解読部16に正しく入るよう、解読部16に対してリスニングウィンドウを開く要求を出力する。
【0019】
質問生成部12は、チャネル管理部11から入力した要求信号に従って、質問信号を生成し、要求信号に含まれるタイミングで送信器13に出力する。例えば、質問生成部12は、一括質問の送信を要求する要求信号を入力したとき、質問信号として、一括質問を生成する。また、質問生成部12は、個別質問の送信を要求する要求信号を入力したとき、質問信号として、予測トラック情報に含まれるモードSアドレスで識別される航空機のトランスポンダに対する個別質問を生成する。
【0020】
送信器13は、質問生成部12から入力した質問信号(一括質問または個別質問)をアンテナ14を介してモードS機のトランスポンダに対して送信する。また、受信器15は、質問信号に対してトランスポンダから送信された応答信号をアンテナ14を介して受信し、解読部16に出力する。このとき、アンテナ14は、アンテナ14の回転に関する方位信号を解読部16に逐次出力する。
【0021】
解読部16は、受信器15から入力した応答信号をチャネル管理部11からの要求に対応した期間リスニングウィンドウを開き解読し、得られたデータを追尾処理部10、判定部17またはレポート生成部18に出力する。ここで、解読部16は、応答信号であるDF=4を解読したとき、得られた高度データ、位置データ、モードSアドレス等を方位信号とともに追尾処理部10およびレポート生成部18に出力する。また、解読部16は、質問信号であるDF=5を解読したとき、得られた航空機IDを判定部17に出力する。なお、DF=4,DF=5には航空機を識別するモードSアドレスが含まれており、解読部16は高度データや航空機IDとともに、このモードSアドレスを出力する。
【0022】
判定部17は、解読部16から入力した航空機IDをモードSアドレスとともにメモリ(図示せず)に記憶し、メモリに記憶される航空機IDに基づいてメモリに記憶されている航空機IDが正確であるか否かを判定し、正確であると判定した航空機IDをモードSアドレスとともにレポート生成部18に出力する。また、判定部17は、チャネル管理部11に判定結果を出力する。
【0023】
具体的には、判定部17は、解読部16から新たに航空機IDとモードSアドレスとを入力したとき、既にメモリに記憶されている同一のモードSアドレスに関連付けられる航空機IDと一致すれば、この航空機IDは正確であると判定する。すなわち、対象となる航空機から前回取得した航空機IDと今回取得した航空機IDとが一致するとき、判定部17は、モードS二次監視レーダ1が取得した航空機IDが正確であると判断する。また、前回取得した航空機IDが今回取得した航空機IDと一致しないとき、判定部17は、モードS二次監視レーダ1が取得したいずれかの航空機IDは誤りであると判断する。
【0024】
チャネル管理部11では、判定部17から入力する判定結果に基づいて、要求信号を出力する。すなわち、チャネル管理部11は、正確でない判定結果を入力したときには同一の航空機から再び航空機IDを取得するようにスケジューリングし、正確である判定結果を入力したときには同一の航空機からの航空機IDの取得を終了するようにスケジューリングする。
【0025】
レポート生成部18は、解読部16から入力したデータ(高度データ、位置データ、モードSアドレス等)と、判定部17から入力した航空機IDを含むターゲットレポートを生成し、管制システム(図示せず)に出力する。具体的には、レポート生成部18は、判定部17から入力した航空機IDおよびモードSアドレスをメモリ(図示せず)に記憶し、解読部16から入力したデータおよびモードSアドレスをメモリに記憶し、同一のモードSアドレスに関連付けられる航空機IDおよび高度データを利用してターゲットレポートを生成し、航空管制を行う管制システムに出力する。
【0026】
図2に示すフローチャートを用いて、モードS二次監視レーダ1における処理について具体的に説明する。モードS二次監視レーダ1において、第1スキャンおよび第2スキャンで行われる初期捕捉(S1)については、従来と同一の処理であるため、説明を省略する。
【0027】
モードS二次監視レーダ1では、ステップS1の初期捕捉の直後の第3スキャンにおいて、まず、高度取得トランザクションとして、送信器13は、初期捕捉で捕捉された対象の航空機のトランスポンダに対し、チャネル管理部11による要求に従って、質問生成部12で生成された質問信号(UF=4)を送信する(S2)。
【0028】
受信器15は、トランスポンダから送信された応答信号(DF=4)を受信する(S3)。その後、レポート生成部18は、解読部16で解読して得られたデータをメモリに登録する(S4)。
【0029】
続いて、送信器13は、対象の航空機のトランスポンダに対し、チャネル管理部11による要求に従って、質問生成部12で生成された質問信号(UF=5)を送信する(S5)。
【0030】
その後、受信器15は、トランスポンダから送信された応答信号(DF=5)を受信する(S6)。その後、判定部17は、解読部16で解読して得られた航空機IDおよびモードSアドレスをメモリに記憶する(S7)。
【0031】
メモリに記憶された航空機IDによって航空機IDの判定ができる場合(S8でYES)、すなわち判定に必要な数の航空機IDがメモリに記憶されている場合、判定部17は、同一のモードSアドレスに関連付けられる航空機IDが一致するか否かに応じて航空機IDが正確であるか否かを判定する(S9)。
【0032】
一方、航空機IDの判定ができない場合(S8でNO)、すなわち判定に必要な数の航空機IDがメモリに記憶されていない場合、ステップS5〜S7を繰り返して対象の航空機から航空機IDを取得した後、判定部17は、取得した航空機IDが正確であるか否かを判定する(S9)。
【0033】
また、判定部17が取得した航空機IDが正確でないと判定した場合(S9でNO)、すなわち同一のモードSアドレスに関連付けられる航空機IDが一致しない場合にも、ステップS5〜S7を繰り返して対象の航空機から航空機IDを取得した後に、判定部17が正確であるか否かを再度判定する(S9)。
【0034】
取得した航空機IDが正確であると判定された場合(S9でYES)、すなわちメモリにおいて同一のモードSアドレスに関連付けられる航空機IDが一致した場合、判定部17はこの航空機IDをレポート生成部18に出力し、レポート生成部18は、この航空機IDをメモリに登録する(S10)。
【0035】
その後、レポート生成部18は、ステップS4でメモリに登録されたデータと、ステップS10でメモリに登録された航空機IDを用いてターゲットレポートを生成し、管制システムに出力する(S11)。
【0036】
ステップS10において正確な航空機IDがレポート生成部18のメモリに登録された後に続いて行われる第4スキャンでは、チャネル管理部11による要求にしたがって高度取得トランザクション(UF=4/DF=4)が行われ(S12,S13)、ステップS9において正確であると判定された航空機IDと、ステップS13で受信されて解読されたデータを用いてターゲットレポートを生成し、管制システムに出力する(S14)。
【0037】
第4スキャンの後に続くスキャンでも第4スキャンと同様に対象の航空機に対して追尾が継続する限り(S15でYES)、ステップS12〜S14の処理が繰り返して行われる。具体的には、ステップS13で受信した応答信号(DF=4)が連続する複数のスキャン(例えば、連続する2回のスキャン)で欠落したとき、追尾の継続を終了する。なお、連続する欠落の数はモードS二次監視レーダ1によって設定することが可能であり、限定されない。
【0038】
以上は初期捕捉直後のスキャン内での航空機ID取得について説明したが、フライトステータス(FS)の変化により航空機IDの変更が検知された場合には、そのスキャン内において、図2の第3スキャンからと同様な手順で新しい航空機IDの取得が実行される。
【0039】
なお、図2に示す例では、モードS二次監視レーダ1は、ステップS2およびS3において高度データを取得した後にステップS5およびS6で航空機IDの取得を実行しているが、先に航空機IDを取得した後に高度データを取得する方法でもよい。
【0040】
たとえば、図3に示すように、モードS二次監視レーダ1は、第3スキャンにおいて対象の航空機との間でステップS5〜S7の処理を2回繰り返す。レポート生成部18は、1回目のID取得トランザクション1で取得した第1航空機IDと2回目のID取得トランザクション2で取得した第2航空機IDが一致すれば、この航空機IDをレポート生成部18のメモリに登録する。また、レポート生成部18のメモリに航空機IDが登録されたモードS二次監視レーダ1においては、その後、対象の航空機との間ではID取得トランザクションを行わず、第4スキャン以降には登録された航空機IDを使用する。なお、モードS二次監視レーダ1では、航空機の追尾が継続する限り第4スキャンと同様の処理が継続するが、図3においては第5スキャン以降については図示を省略している。
【0041】
一方、図4に示すように、第1航空機IDと第2航空機IDが一致しない場合、モードS二次監視レーダ1は、第3スキャン内で3回目のID取得トランザクション3を実行して対象の航空機から第3航空機IDを取得する。レポート生成部18は、第2航空機IDと第3航空機IDが一致すると、この航空機IDをメモリに登録する。また、レポート生成部18のメモリに航空機IDが登録されたモードS二次監視レーダ1においては、その後の第4スキャン以降には、登録された航空機IDを使用する。図4のように第1および第2航空機IDが一致せず、第2および第3航空機IDが一致するのは、第1航空機IDに誤りが発生していた場合である。
【0042】
一方、第2航空機IDに誤りが発生していた場合、第1および第2航空機IDは一致せず、第2および第3航空機IDも一致しない。このように第2航空機IDに誤りが発生していた場合、モードS二次監視レーダ1は、同一の第3スキャン内で4回目のID取得トランザクションを実行して第4航空機IDを取得し、第3および第4航空機IDが一致すれば、レポート生成部18はこの航空機IDをメモリに登録して使用する。
【0043】
また、第3および第4航空機IDが一致しない場合には、モードS二次監視レーダ1は、第3スキャン内で5回目のID取得トランザクションを実行する。また、これによっても正確な航空機IDが判断できないときには、モードS二次監視レーダ1は、同一の第3スキャン内で正確な航空機IDが判定できるまでID取得トランザクションを繰り返す。ここでも、モードS二次監視レーダ1では、航空機の追尾が継続する限り第4スキャンと同様の処理が継続するが、図4においては第5スキャン以降については図示を省略している。
【0044】
なお、上述したモードS二次監視レーダ1では、連続して取得した2つの航空機IDが一致する場合に正確な航空機IDを判定していたが、連続して取得した3つの航空機IDが全て一致する場合に正確な航空機IDであると判定してもよく、連続して一致する航空機IDの数は限定しない。
【0045】
上述したように、本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1においては、初期捕捉直後のスキャン内、またはフライトステータス(FS)の変化により航空機IDの変更が検知された直後のスキャン内において、ID取得トランザクションを複数回実行し、連続して取得した複数の航空機IDが全て一致する場合、その航空機IDを正確と判定して登録し、後の処理に利用している。したがって、モードS二次監視レーダは、正確と判定された航空機IDのみをターゲットレポートの生成に利用しているため、正確な情報を管制システムに提供することができる。
【0046】
〈変形例1〉
次に、本発明の変形例1に係るモードS二次監視レーダについて説明する。変形例1に係るモードS二次監視レーダの構成は、図1を用いて上述したモードS二次監視レーダ1と同一の構成であるため、同一の符号を用いて各構成についての説明は省略する。上述した本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1の判定部17は、同一のスキャン(第3スキャン)内に連続して取得した複数の航空機IDが連続して一致するか否かで正確な航空機IDを判定していた。一方、変形例1に係るモードS二次監視レーダ1では、判定部17が第3スキャン内で取得した複数の航空機IDのうちの過半数が一致しているか否かで正確な航空機IDを判定する点で異なる。ここで、仮に過半数が一致する航空機IDが取得できないときには、再度航空機IDの取得を判定する。
【0047】
変形例1に係るモードS二次監視レーダ1では、たとえば、図5に示すように、第3スキャン内でID取得トランザクションを4回繰り返して4つの航空機IDを取得したとき、3つ以上の航空機IDが一致すれば、一致する航空機IDを正確な航空機IDとしてレポート生成部18に登録する。
【0048】
たとえば、モードS二次監視レーダ1で繰り返すID取得トランザクションの数(取得する航空機IDの数)はチャネル管理部11において定められている。なお、ここで繰り返すID取得トランザクションの数が2回であると正確な航空機IDであるか否かの判定ができないため、ID取得トランザクションは少なくとも3回以上繰り返すことが要件となる。なお、変形例1に係るモードS二次監視レーダ1では、航空機の追尾が継続する限り第4スキャンと同様の処理が継続するが、図5においては第5スキャン以降については図示を省略している。
【0049】
上述したように、複数取得した航空機IDの過半数が一致するか否かを判定する変形例1に係るモードS二次監視レーダ1によっても、正確な航空機IDを使用して信頼性の高いターゲットレポートを生成することができる。
【0050】
〈変形例2〉
続いて、本発明の変形例2に係るモードS二次監視レーダについて説明する。変形例2に係るモードS二次監視レーダの構成も図1を用いて上述したモードS二次監視レーダ1と同一の構成であるため、同一の符号を用いて各構成についての説明は省略する。上述した本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1の判定部17は、同一のスキャン(第3スキャン)内に取得した複数の航空機IDが一致するか否かで正確な航空機IDを判定していた。一方、変形例2に係るモードS二次監視レーダ1では、第3スキャン内に連続して一致した複数の航空機IDを取得することができなかった場合、続く第4スキャンでも継続して航空機IDを取得し、判定部17は異なるスキャンで取得した複数の航空機IDから、正確な航空機IDを判定する。
【0051】
変形例2に係るモードS二次監視レーダ1で、たとえば2つの一致する航空機IDを取得したときにこれをレポート生成部18に登録するようにしている場合、図6に示すように、第1および第2航空機IDが不一致であって、第3スキャンにおいて対象の航空機との間で3回目のID取得トランザクションが実行できなかったとする。この場合、チャネル管理部11は、続く第4スキャンにおいて3回目のID取得トランザクションで第3航空機IDを取得するように要求信号を生成する。その後、モードS二次監視レーダ1では、図6に示すように、第3スキャンで取得した第2航空機IDと第4スキャンで取得した第3航空機IDが一致すれば、レポート生成部18にはこの航空機IDを登録して使用する。
【0052】
なお、図6では、2つの航空機IDが一致する場合に、この航空機IDを正確な航空機IDであるとしているが、判定部17が正確な航空機IDの判断に用いるために取得する航空機IDの数は限定しない。このとき、変形例2に係るモードS二次監視レーダ1では、正確な航空機IDが登録された後は、航空機の追尾が継続する限り図6の第5スキャンと同様の処理が継続するが、図6では第5スキャン以降については図示を省略している。
【0053】
上述したように、同一のスキャン内で取得した航空機IDによって正確な航空機IDを判定できないときには、次のスキャンで取得した航空機IDも利用する変形例2に係るモードS二次監視レーダ1によっても、正確な航空機IDを使用して信頼性の高いターゲットレポートを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダを説明する機能ブロック図である。
【図2】図1のモードS二次監視レーダにおける処理を説明するフローチャートである。
【図3】図1のモードS二次監視レーダにおける各スキャンのトランザクションの一例を説明する図である。
【図4】図1のモードS二次監視レーダにおける各スキャンのトランザクションの他の例を説明する図である。
【図5】変形例1のモードS二次監視レーダにおける各スキャンのトランザクションの一例を説明する図である。
【図6】変形例2のモードS二次監視レーダにおける各スキャンのトランザクションの一例を説明する図である。
【図7】従来のモードS二次監視レーダを説明する機能ブロック図である。
【図8】従来のモードS二次監視レーダにおける各スキャンのトランザクションの一例を説明する図である。
【符号の説明】
【0055】
1…モードS二次監視レーダ
10…追尾処理部
11…チャネル管理部
12…質問生成部
13…送信器
14…アンテナ
15…受信器
16…解読部
17…判定部
18…レポート生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視空域内を飛行する航空機を監視するモードS二次監視レーダであって、
初期捕捉がされた直後のスキャン内、またはフライトステータスの変化により航空機IDの変更が検知された直後のスキャン内において、航空機IDの送信を要求する質問信号を同一の航空機に対して複数回送信する送信器と、
前記航空機に備えられるトランスポンダから送信された前記航空機IDを含む応答信号を取得すると、前記航空機に予め定められるモードSアドレスと、前記航空機IDとを関連付けてメモリに記憶させるとともに、前記モードSアドレスに関連付けられる航空機IDが前記メモリに複数記憶されているとき、複数の前記航空機IDが一致するか否かに応じて、取得した前記航空機IDが正確か否かを判定する判定部と、
前記航空機IDが正確であると判定されると、前記航空機IDを利用してターゲットレポートを生成する生成部と、
を備えることを特徴とするモードS二次監視レーダ。
【請求項2】
前記判定部は、前記メモリにおいて前記モードSアドレスと関連付けられるとともに、前記同一の航空機から連続して取得した複数の前記航空機IDが全て一致するとき、前記航空機IDが正確であると判定することを特徴とする請求項1記載のモードS二次監視レーダ。
【請求項3】
前記判定部は、前記メモリにおいて前記モードSアドレスと関連付けられる3個以上の航空機IDのうち、半数以上の航空機IDが一致するとき、前記航空機IDが正確であると判定することを特徴とする請求項1記載のモードS二次監視レーダ。
【請求項4】
前記判定部において同一のスキャン内に取得した複数の前記航空機IDによって正確な航空機IDを判定できないとき、前記送信器に対し、前記航空機から再度航空機IDを取得するための質問信号を前記同一のスキャン内に送信させるスケジューリング部を更に有し、
前記判定部は、以前に取得した前記航空機IDと新たに取得した前記航空機IDとで正確な航空機IDを判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のモードS二次監視レーダ。
【請求項5】
前記判定部において同一のスキャン内に取得した複数の前記航空機IDによって正確な航空機IDを判定できないとき、前記送信器に対し、前記航空機から再度航空機IDを取得するための質問信号を次のスキャンで送信させるスケジューリング部を更に有し、
前記判定部は、前のスキャンで取得した前記航空機IDと、次のスキャンにおいて取得した前記航空機IDとによって正確な航空機IDを判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のモードS二次監視レーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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