説明

ヤシ由来バイオディーゼル組成物

【課題】ヤシ由来バイオディーゼル組成物において、コールドフロー特性を向上させうる手段を提供する。
【解決手段】(I)40体積%以下のヤシ由来バイオディーゼル、および60体積%以上の石油由来燃料油を含む、バイオディーゼル組成物、(II)20重量%以下のヤシ由来バイオディーゼル、および、80重量%以上のC−C18の飽和もしくは不飽和の脂肪酸のアルキルエステルまたはこれらの混合物を含み、前記アルキルエステルがメチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、2−ブチルエステルもしくはイソブチルエステルまたはこれらの混合物である、バイオディーゼル組成物、(III)0.1〜1.0%(w/v)のポリアルキルメタクリレート添加剤と、i)40体積%以下のヤシ由来バイオディーゼル;およびii)60体積%以上の石油由来燃料油;を含有するヤシ由来バイオディーゼル混合物と、を含む、バイオディーゼル組成物、あるいは、(IV)0.1〜5.0%(w/v)のポリアルキルメタクリレート添加剤と、60%以上の不飽和レベルを有するヤシ由来バイオディーゼルと、を含む、バイオディーゼル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤシ由来バイオディーゼルのコールドフロー特性を向上させる方法、およびコールドフロー特性が向上したヤシ由来バイオディーゼル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
石油由来燃料油の価格が高騰するにつれて、バイオディーゼルが急速に石油由来燃料油に取って代わりつつある。バイオディーゼルの使用に関連した主要な問題の1つは、寒冷条件下における飽和脂肪化合物の結晶化に起因する低いコールドフロー特性である。
【0003】
温暖な地域においては、燃料油はそのコールドフロー特性に従って等級分けされる。夏グレードの燃料油は0℃以下の流動点を示さなければならず、春グレードまたは秋グレードの燃料油は−10℃以下の流動点を示さなければならず、冬グレードの燃料油は−20℃以下の流動点を示さなければならない。
【0004】
ヤシ由来バイオディーゼルは、未精製のまたは精製された、ヤシ油、ヤシオレイン、ヤシステアリン、ヤシ核油、ヤシ核オレインおよびヤシ核ステアリンのようなヤシ生成物、並びにヤシ生成物のアルキルエステル(特にメチルエステル)を含む。ヤシ由来バイオディーゼルは、飽和脂肪化合物の含量が多いため、比較的高い流動点(約15℃)を示す。従って、ヤシ由来バイオディーゼルの使用は熱帯の地域のみにおいてふさわしく、使用温度がヤシ由来バイオディーゼルの流動点よりも低い、温暖または寒冷気候の地域での使用はふさわしくない。
【0005】
ヤシ由来バイオディーゼルにディーゼル、ケロセンおよびナフサのような石油由来燃料油を混合すると、流動点をある程度低下させる助けとなるが、得られたヤシ由来バイオディーゼルは依然として、極度に低い温度条件下で用いるための冬グレードの燃料油とはならない。
【0006】
石油由来燃料油のコールドフロー特性を改善させるために、流動点降下剤やコールドフロー添加剤が石油由来燃料油に添加されている。石油由来燃料油とともに用いられうる流動点降下剤としては多くのものがあるが、これらのバイオディーゼルに対する効果は限定的である。
【0007】
特許文献1には、石油留分を一定量のイソプロピルエステル、2−ブチルエステル、tert−ブチルエステルおよびこれらの混合物からなる群から選択される動物または植物の脂肪または油の脂肪酸エステルと混合することを含む、液状脂肪酸エステル−石油留分燃料混合物の結晶化温度を低下させる方法であって、前記一定量が、前記混合物の結晶化開始温度を、同量のメチルエステルを含む混合物の結晶化開始温度よりも約8〜20℃低くするのに有効な量である方法が開示されている。要するに、メタノールの脂肪酸エステルを石油留分に混合することに代えて、イソプロパノール、2−ブタノール、t−ブタノールの脂肪酸エステルまたはこれらの混合物を石油留分に混合することによって、低い結晶化開始温度を有する燃料混合物が得られる。脂肪酸の好ましい源が大豆油であることから考えると、好ましい脂肪酸エステルは、オレイン酸エステルやリノール酸エステルのような不飽和脂肪酸エステルである。大豆油とヤシ生成物とは異なる脂肪酸組成を有していることから、上述した技術において大豆油をヤシ生成物に置換したとしても、同様の結果は達成されえない。
【0008】
特許文献2には、(I)組成物の約95〜99質量%の、約14〜24個の炭素原子を有する脂肪酸のメチルエステルまたはこれらの混合物(ここで、前記メチルエステルは約75〜125のヨウ素価を有する)、並びに(II)組成物の約1〜5質量%の、(A)共重合体添加剤の約25〜75質量%の、(i)重合体の約70〜99.5質量%の、C〜C15のアルキルメタクリレート単量体由来の第1の繰り返し単位と(ii)重合体の約0.5〜30質量%の、C16〜C24のアルキルメタクリレート単量体由来の第2の繰り返し単位とを含む重合体、および(B)共重合体添加剤の約25〜75質量%の、鉱油、植物油、ポリオールエステルまたはこれらの混合物でありうる希釈剤を含む共重合体添加剤を含む、流動点が低下したバイオディーゼル燃料組成物が開示されている。
【0009】
特許文献2に記載の共重合体添加剤は、ヤシ生成物のメチルエステルと同様の流動点低下効果を有してはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,520,708号明細書
【特許文献2】米国特許第6,203,585号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した現状に鑑み、本発明は、ヤシ由来バイオディーゼル組成物において、コールドフロー特性を向上させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
コールドフロー特性が向上したヤシ由来バイオディーゼル組成物は、以下の(I)〜(IV)によって提供される。
【0013】
(I)40体積%以下のヤシ由来バイオディーゼル、および60体積%以上の石油由来燃料油を含む、バイオディーゼル組成物。
【0014】
(II)20重量%以下のヤシ由来バイオディーゼル、および、80重量%以上のC−C18の飽和もしくは不飽和の脂肪酸のアルキルエステルまたはこれらの混合物を含み、前記アルキルエステルがメチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、2−ブチルエステルもしくはイソブチルエステルまたはこれらの混合物である、バイオディーゼル組成物。
【0015】
(III)0.1〜1.0%(w/v)のポリアルキルメタクリレート添加剤と、i)40体積%以下のヤシ由来バイオディーゼル;およびii)60体積%以上の石油由来燃料油;を含有するヤシ由来バイオディーゼル混合物と、を含む、バイオディーゼル組成物。
【0016】
(IV)0.1〜5.0%(w/v)のポリアルキルメタクリレート添加剤と、60%以上の不飽和レベルを有するヤシ由来バイオディーゼルと、を含む、バイオディーゼル組成物。
【0017】
ヤシ由来バイオディーゼルは、未精製のまたは精製された、ヤシ油、ヤシオレイン、ヤシステアリン、ヤシ核油、ヤシ核オレイン、ヤシ核ステアリン、またはこれらの混合物であってもよいし;ヤシ生成物のアルキルエステル(特にメチルエステル)であってもよいし;ヤシ生成物とヤシ生成物のアルキルエステルとの混合物であってもよい。(III)のヤシ由来バイオディーゼル組成物は、好ましくはヤシ生成物のアルキルエステルである。
【0018】
石油由来燃料油は、ケロセンおよびディーゼルを含有するナフサまたは中間留分でありうる。石油由来燃料油は、好ましくはディーゼルナンバー1である。
【0019】
(II)のバイオディーゼル組成物のアルキルエステルは、好ましくはカプリル酸(C)、カプリン酸(C10)、ラウリル酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、もしくはオレイン酸(C18:1)のアルキルエステル、またはこれらの混合物であり、より好ましくはカプリル酸(C)、カプリン酸(C10)、もしくはオレイン酸(C18:1)のアルキルエステル、またはこれらの混合物である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コールドフロー特性が向上したヤシ由来バイオディーゼル組成物が提供され、温暖または寒冷気候の地域において好適に用いられうる燃料油が提供されうる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、ヤシ由来バイオディーゼルのコールドフロー特性を向上させる方法、および向上したコールドフロー特性を有するヤシ由来バイオディーゼルの組成物に関する。
【0022】
ヤシ由来バイオディーゼルのコールドフロー特性を向上させる方法は、以下の(A)〜(D)の通りである。
【0023】
(A)石油由来燃料油をヤシ由来バイオディーゼルに混合して、ヤシ由来バイオディーゼル混合物を形成する;
(B)C−C18の飽和または不飽和の脂肪酸のアルキルエステル(前記アルキルエステルはメチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、2−ブチルエステルもしくはイソブチルエステルまたはこれらの混合物である)またはこれらの混合物をヤシ由来バイオディーゼルまたはヤシ由来バイオディーゼル混合物に混合する;
(C)ポリアルキルメタクリレート(PAMA)添加剤をヤシ由来バイオディーゼル混合物に混合する;
(D)ヤシ由来バイオディーゼルとポリアルキルメタクリレート(PAMA)添加剤との混合前に、当該ヤシ由来バイオディーゼルの不飽和レベルを上昇させる。
【0024】
上述した方法により得られるヤシ由来バイオディーゼルの組成物は、以下の(a)〜(d)の通りである。
【0025】
(a)40体積%以下のヤシ由来バイオディーゼル、および60体積%以上の石油由来燃料油を含む、バイオディーゼル組成物。
【0026】
(b)20重量%以下のヤシ由来バイオディーゼル、および、80重量%以上のC−C18の飽和もしくは不飽和の脂肪酸のアルキルエステルまたはこれらの混合物を含み、前記アルキルエステルがメチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、2−ブチルエステルもしくはイソブチルエステルまたはこれらの混合物である、バイオディーゼル組成物。
【0027】
(c)0.1〜1.0%(w/v)のポリアルキルメタクリレート添加剤と、i)40体積%以下のヤシ由来バイオディーゼル;およびii)60体積%以上の石油由来燃料油;を含有するヤシ由来バイオディーゼル混合物と、を含む、バイオディーゼル組成物。
【0028】
(d)0.1〜5.0%(w/v)のポリアルキルメタクリレート添加剤と、60%以上の不飽和レベルを有するヤシ由来バイオディーゼルと、を含む、バイオディーゼル組成物。
【0029】
「ヤシ由来バイオディーゼル」とは、ヤシ生成物もしくはヤシ生成物のアルキルエステル、またはこれらの混合物を意味する。ヤシ生成物は、未精製のまたは精製された、ヤシ油、ヤシオレイン、ヤシステアリン、ヤシ核油、ヤシ核オレイン、ヤシ核ステアリン、またはこれらの混合物を含む。ヤシ生成物のアルキルエステルは、好ましくはヤシ生成物のメチルエステルである。(c)のヤシ由来バイオディーゼルは、好ましくはヤシ生成物のアルキルエステルである。
【0030】
「ヤシ由来バイオディーゼル混合物」とは、ヤシ由来バイオディーゼルと石油由来燃料油との混合物を意味し、この際、石油由来燃料油は、ケロセンおよびディーゼルを含有するナフサまたは中間留分である。石油由来燃料油は、好ましくはディーゼルナンバー1(diesel no.1)である。
【0031】
ヤシ生成物のアルキルエステルは、ヤシ生成物を、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノールおよびこれらの混合物からなる群から選択されるアルコールと、酸触媒またはアルカリ触媒の存在下でエステル交換することにより、調製されうる。C〜C18の飽和または不飽和の脂肪酸のアルキルエステルは、上記の脂肪酸を、上記の群から選択されるアルコールで、酸触媒またはアルカリ触媒の存在下でエステル化し、あるいは、油または脂肪を、上記の群から選択されるアルコールで、酸触媒またはアルカリ触媒の存在下でエステル交換し、アルキルエステルの混合物を得て、次いでアルキルエステルの混合物を分画して上記脂肪酸のアルキルエステルを得ることによって、調製されうる。(b)の組成物のアルキルエステルは、好ましくはカプリル酸(C)、カプリン酸(C10)、ラウリル酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、もしくはオレイン酸(C18:1)のアルキルエステル、またはこれらの混合物であり、より好ましくはカプリル酸(C)、カプリン酸(C10)、もしくはオレイン酸(C18:1)のアルキルエステル、またはこれらの混合物である。
【0032】
「油または脂肪」とは、飽和または不飽和のアシル基を有するトリグリセリドを含有し、当該アシル基がC〜C18の炭素鎖長のものを含む、植物または動物由来の任意の油または脂肪を意味する。
【0033】
60%以上の不飽和レベルを有する組成物(d)のヤシ由来バイオディーゼルは、以下のいずれかの方法によって調製されうる。
【0034】
a)ヤシ生成物を分画して60%以上の不飽和レベルを有するヤシ画分を得る;
b)上記ヤシ画分をアルキルアルコールでエステル交換して、当該ヤシ画分のアルキルエステルを得る;
c)ヤシ生成物のアルキルエステルを分画して、60%以上の不飽和レベルを有するアルキルエステルの画分を得る;
d)60%以上の不飽和レベルを有する不飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸の混合物をアルキルアルコールでエステル化する。
【0035】
ポリアルキルメタクリレート(PAMA)添加剤は、適当な担体または希釈剤中でのコールドフロー添加剤である。PAMA添加剤は商業的に入手可能であり、例えば、ビスコプレックス(Viscoplex)(登録商標)10−315の商品名でローマックス ゲーエムベーハー(RohMax GmbH)から市販されているPAMA添加剤が挙げられる。PAMA添加剤は通常、菜種油または大豆油由来のバイオディーゼルに対するコールドフロー添加剤としてよく機能するが、ヤシ由来バイオディーゼルに対してはそうではない。本発明の(C)および(D)の方法によれば、PAMA添加剤をヤシ由来バイオディーゼルに対するコールドフロー添加剤として機能させる手段が提供される。
【実施例】
【0036】
以下の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるべきではない。
【0037】
実施例1:アルキルエステルの調製
a)メチルエステル
種々の炭素鎖長(C〜C18)のメチルエステルを、酸触媒を用いた直接エステル化により合成する。この合成プロセスは以下の工程を有する:
i)各脂肪酸およびメタノールの化学量論量を、二口丸底フラスコに仕込む;
ii)5モル過剰のメタノールをフラスコに添加する;
iii)マグネティックスターラー、モレキュラーシーブが充填されたシンブルを含有するソックスレー、コンデンサおよび加熱板をフラスコに取り付ける;
iv)反応混合物を加熱し、反応混合物が所望の温度に到達したら、触媒として、0.5〜1%濃硫酸またはp−トルエンスルホン酸を反応混合物に添加する;
v)5時間または反応が終了するまで、約120℃の高温で反応を進行させる;
vi)薄膜クロマトグラフィ(TLC)を用いて反応の進行をモニターする(この際、クロロホルムの50%(v/v)ヘキサン溶液の溶媒系を用いてクロマトグラムを展開し、染色剤としてはヨウ素蒸気を用いる);
vii)反応終了後速やかに、温水を用いて、水が中性になるまで粗生成物を洗浄する;
viii)無水硫酸ナトリウムを用いて生成物を乾燥させ、含水した硫酸ナトリウムを濾別する;
ix)シリカゲルを充填したカラムに、乾燥した生成物を通し、反応中に生成した着色物または分解物を除去する;
x)真空ポンプを用いて生成物から微量の溶媒をさらに除去し、精製されたメチルエステルを得る。
【0038】
b)イソプロピルエステル
メタノールに代えてイソプロパノールが用いられること以外は、メチルエステルの合成プロセスが同様に用いられる。
【0039】
c)n−ブチルエステル
メタノールに代えてn−ブタノールが用いられ、反応中に生成する水を連続的に除去するための改良ディーンアンドスターク(Dean & Stark)蒸留装置および滴下ロートがシンブルに代えて用いられること以外は、メチルエステルの合成プロセスが同様に用いられる。
【0040】
d)2−ブチルエステル
n−ブタノールに代えて2−ブタノールが用いられること以外は、メチルエステルの合成プロセスが同様に用いられる。
【0041】
合成されたアルキルエステルの流動点(後述する実施例についても同様である)を、標準法であるASTM D97に準拠して決定する。表1に、合成されたアルキルエステルの流動点を示す。より短いアシル鎖長を有するアルキルエステル、および不飽和アシル鎖を有するアルキルエステルが、より低い流動点を示す。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例2
ヤシ油メチルエステルに種々の体積比でディーゼルナンバー1を混合し、得られた混合物の流動点を表2に示す。40体積%以下のヤシ由来バイオディーゼルおよび60体積%以上の石油由来燃料油を含むヤシ由来バイオディーゼル混合物が、温暖または寒冷気候の地域での燃料油として好適に用いられる。
【0044】
【表2】

【0045】
実施例3
精製、脱色および脱イオン化された(RBD)ヤシ油およびRBDヤシオレインに、5:95、10:90および20:80の体積比でディーゼルナンバー1を混合した。得られた混合物の流動点を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
実施例4
ヤシ油メチルエステルに、種々の質量比でオレイン酸イソプロピルを混合し、得られた混合物の流動点を表4に示す。20質量%以下のヤシ油メチルエステルおよび80質量%以上のオレイン酸イソプロピルを含むヤシ由来バイオディーゼルが、温暖または寒冷気候の地域での燃料油として好適に用いられる。
【0048】
【表4】

【0049】
実施例5
主にカプリル酸(C)およびカプリン酸(C10)のメチルエステルを含有する混合物(以下、「混合物I」と称する)に、ヤシ油メチルエステルおよび精製、脱色および脱イオン化された(RBD)ヤシオレインを、それぞれ種々の質量比で混合した。得られた混合物の流動点を表5および表6に示す。20質量%以下のヤシ油メチルエステルまたはRBDヤシオレイン、および80質量%以上の混合物Iを含有するヤシ由来バイオディーゼルが、温暖または寒冷気候の地域での燃料油として好適に用いられる。
【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
実施例6
精製、脱色および脱イオン化された(RBD)ヤシステアリンのメチルエステルおよびRBDヤシ核オレインに、20:80の体積比でディーゼルナンバー1を混合し、ヤシ由来バイオディーゼル混合物Iおよびヤシ由来バイオディーゼル混合物IIをそれぞれ形成した。ヤシ由来バイオディーゼルIの一部を、0.5%(w/v)の量のPAMA添加剤(ビスコプレックス(登録商標)10−305)を用いて処理し、他の一部を、1.0%(w/v)の量で処理した。得られた混合物の流動点を表7に示す。
【0053】
【表7】

【0054】
実施例7
約49.6%の不飽和レベルを有する従来のヤシ油メチルエステルに、30:70の体積比でディーゼルナンバー1を混合し、ヤシ由来バイオディーゼル混合物IIIを形成し、40:60の体積比でディーゼルナンバー1を混合し、ヤシ由来バイオディーゼル混合物IVを形成した。次いで、ヤシ由来バイオディーゼル混合物を、0.75%(w/v)の量のビスコプレックス(登録商標)10−305を用いて処理した。得られた混合物の流動点を表8に示す。
【0055】
【表8】

【0056】
実施例8
20体積%の従来のヤシ油メチルエステルおよび80体積%のディーゼルナンバー1を含有するヤシ由来バイオディーゼル混合物を、種々の量のビスコプレックス(登録商標)10−305を用いて処理した。得られた混合物の流動点を表9に示す。60%以上の不飽和レベルを有するヤシ油メチルエステルを従来のヤシ油メチルエステルに代えて用いると、得られる混合物の流動点がさらに低下する。
【0057】
【表9】

【0058】
実施例9
種々の不飽和レベルのヤシ油メチルエステルを、種々の量のビスコプレックス(登録商標)10−305を用いて処理した。処理したヤシ油メチルエステルの流動点を表10に示す。ビスコプレックス(登録商標)10−305は、約49.6%の不飽和レベルを有する従来のヤシ油メチルエステルに対する流動点低下効果は有していない。
【0059】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
40体積%以下のヤシ由来バイオディーゼル、および60体積%以上の石油由来燃料油を含む、バイオディーゼル組成物。
【請求項2】
20重量%以下のヤシ由来バイオディーゼル、および、80重量%以上のC−C18の飽和もしくは不飽和の脂肪酸のアルキルエステルまたはこれらの混合物を含み、前記アルキルエステルがメチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、2−ブチルエステルもしくはイソブチルエステルまたはこれらの混合物である、バイオディーゼル組成物。
【請求項3】
0.1〜1.0%(w/v)のポリアルキルメタクリレート添加剤と、
i)40体積%以下のヤシ由来バイオディーゼル;および
ii)60体積%以上の石油由来燃料油;
を含有するヤシ由来バイオディーゼル混合物と、
を含む、バイオディーゼル組成物。
【請求項4】
0.1〜5.0%(w/v)のポリアルキルメタクリレート添加剤と、
60%以上の不飽和レベルを有するヤシ由来バイオディーゼルと、
を含む、バイオディーゼル組成物。
【請求項5】
前記ヤシ由来バイオディーゼルが、ヤシ生成物もしくはヤシ生成物のアルキルエステル、またはこれらの混合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイオディーゼル組成物。
【請求項6】
前記ヤシ生成物が、未精製のまたは精製された、ヤシ油、ヤシオレイン、ヤシステアリン、ヤシ核油、ヤシ核オレイン、ヤシ核ステアリン、またはこれらの混合物を含む、請求項5に記載のバイオディーゼル組成物。
【請求項7】
前記ヤシ生成物のアルキルエステルがヤシ生成物のメチルエステルである、請求項5または6に記載のバイオディーゼル組成物。
【請求項8】
前記石油由来燃料油が、ケロセンおよびディーゼルを含有するナフサまたは中間留分である、請求項1または3に記載のバイオディーゼル組成物。
【請求項9】
前記石油由来燃料油がディーゼルナンバー1である、請求項1または3に記載のバイオディーゼル組成物。
【請求項10】
前記アルキルエステルが、カプリル酸(C)、カプリン酸(C10)、ラウリル酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、もしくはオレイン酸(C18:1)のアルキルエステル、またはこれらの混合物を含む、請求項2に記載のバイオディーゼル組成物。
【請求項11】
前記アルキルエステルが、カプリル酸(C)、カプリン酸(C10)、もしくはオレイン酸(C18:1)のアルキルエステル、またはこれらの混合物を含む、請求項2に記載のバイオディーゼル組成物。
【請求項12】
前記ヤシ由来バイオディーゼルが、ヤシ生成物もしくはヤシ生成物のアルキルエステルの画分、またはこれらの混合物である、請求項4に記載のバイオディーゼル組成物。
【請求項13】
前記ヤシ生成物が、未精製のまたは精製された、ヤシ油、ヤシオレイン、ヤシステアリン、ヤシ核油、ヤシ核オレイン、ヤシ核ステアリン、またはこれらの混合物を含む、請求項12に記載のバイオディーゼル組成物。
【請求項14】
前記ヤシ生成物のアルキルエステルがヤシ生成物のメチルエステルである、請求項12または13に記載のバイオディーゼル組成物。

【公開番号】特開2013−82950(P2013−82950A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−28042(P2013−28042)
【出願日】平成25年2月15日(2013.2.15)
【分割の表示】特願2006−162749(P2006−162749)の分割
【原出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(506200706)
【氏名又は名称原語表記】Malaysian Palm Oil Board
【住所又は居所原語表記】6,Persiaran Institusi,Bandar Baru Bangi,43000 Kajang,Selangor Darul Ehsan,Malaysia
【Fターム(参考)】