説明

ユビデカレノン含有粉体の製造方法

【課題】
本発明は、ユビデカレノン高含有粉体の製造方法及びそれにより得られる粉体に関する。さらに詳しくは、ユビデカレノンを高濃度含有し、圧縮成形性、充填性、流動性に優れた粉体を、生産効率よく製造できる方法に関する。
【解決手段】
流動層装置にて流動化した嵩密度0.1〜0.5g/cmのプロラミン蛋白粉体に、下記の(A)〜(C)からなるユビデカレノン分散液を、噴霧することを特徴とするユビデカレノン含有粉体の製造方法。
(A)ユビデカレノン:100質量部、
(B)プロラミン蛋白:5〜70質量部、
(C)含水率10〜60質量%の含水エタノール:250〜1000質量部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユビデカレノン含有粉体の製造方法に関する。さらに詳しくは、ユビデカレノンを高濃度に含有し、圧縮成形性、充填性、流動性に優れたユビデカレノン含有粉体を生産効率よく製造できる製造方法、この製造方法で製造されたユビデカレノン含有粉体、及びこれを成型してなる打錠品に関する。
【0002】
ユビデカレノンは、補酵素の一種であり、ユビキノン10、コエンザイムQ10等とも称され、ミトコンドリア中のアデノシン三リン酸の生産に必須とされており、免疫機能を向上させることにより心臓病、高血圧、リウマチ性弁疾患に対する有効性等が確認されている。また歯槽の炎症に対する有効性についても研究されている。うっ血性心不全(例えば、特許文献1参照)、脳血管障害(例えば、特許文献2参照)、抗ガン剤の副作用防止(アドリアマイシンによる心臓障害の防止)、疲労回復、エネルギー賦活、生体内活性酸素に対する抗酸化などに使用されている。このようにユビデカレノンは、高い生理活性を持ち、かつ生体内に存在することから安全性の高い物質と考えられている。このような状況から近年、ユビデカレノンは製薬、食品等の分野で注目されている。
しかし、ユビデカレノンは室温で粉体状であるが、しっとりしており、安息角が43°〜70°の範囲にあり、流動性が悪い。さらに、凝集を起こしやすくハンドリングが非常に困難であるので、このままでは、食品、医薬品の原料として使用に適さなかった。
【0003】
例えば、ユビデカレノン粉体の製剤化にあたり、ユビデカレノンを錠剤に配合すると杵付き等の打錠障害を生じやすい。したがって、錠剤化の際、多量の賦形剤を必要とし、通常20質量%程度のユビデカレノンを含有する錠剤を製造するにすぎなかった(例えば、特許文献3〜5参照)。
そのため、高濃度にユビデカレノンを含有する錠剤を製造するための開発が進められ、特許文献6には、ユビデカレノンを含む造粒物をヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール等で被覆したユビデカレノン含有組成物の使用が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭56−12309号公報
【特許文献2】特開昭52−130922号公報
【特許文献3】特開昭55−147219号公報
【特許文献4】特開昭56−103109号公報
【特許文献5】特開昭56−145214号公報
【特許文献6】特開昭60−32712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献6に開示されたユビデカレノン含有組成物を製造するには、造粒工程、分級工程及び被覆工程を経る都合上、生産効率上の問題があった。
本発明の目的は、流動層装置を用いて、ユビデカレノンを高濃度含有し、打錠成形性、流動性、充填性に優れた粉体を、簡便かつ生産効率よく製造できる方法を提供することにある。そして、ユビデカレノンを高濃度含有し、打錠成形性、流動性、充填性に優れたユビデカレノン含有粉体、及びこれを成型してなる打錠品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明において、第1の発明は、流動層装置にて流動化した嵩密度0.1〜0.5g/cmのプロラミン蛋白粉体に、下記の(A)〜(C)からなるユビデカレノン分散液を、噴霧することを特徴とするユビデカレノン含有粉体の製造方法である。
(A)ユビデカレノン:100質量部、
(B)プロラミン蛋白:5〜70質量部、
(C)含水率10〜60質量%の含水エタノール:250〜1000質量部。
【0007】
第2の発明は、流動層装置にて流動化した嵩密度0.1〜0.5g/cmのプロラミン蛋白粉体に、下記の(A)〜(D)からなるユビデカレノン分散液を、噴霧することを特徴とするユビデカレノン含有粉体の製造方法である。
(A)ユビデカレノン:100質量部、
(B)プロラミン蛋白:5〜70質量部、
(C)含水率10〜60質量%の含水エタノール:250〜1000質量部、
(D)グリセリン:0.1〜7質量部。
【0008】
第3の発明は、第1又は第2の発明の製造法で得られるユビデカレノン含有粉体である。
【0009】
第4の発明は、第3の発明の製造法で得られるユビデカレノン含有粉体を成型してなる打錠品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1又は第2の発明によれば、ユビデカレノンを高濃度で含有でき、粒度が均一で、流動性、打錠成形性、充填性に優れたユビデカレノン含有粉体を簡便かつ生産効率よく製造できる。本発明のユビデカレノン含有粉体を用いると、打錠障害が生じることなくそのままで錠剤化することができる。さらに、本発明のユビデカレノン含有粉体は、食品素材と均一に分散することができる。
本発明の第3の発明によれば、ユビデカレノンを高濃度で含有でき、粒度が均一で、流動性、打錠成形性、充填性に優れたユビデカレノン含有粉体を提供できる。
本発明の第4の発明によれば、ユビデカレノンを高濃度含む打錠品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のユビデカレノン含有粉体の製造法は、特定の組成比で(A)ユビデカレノン、(B)プロラミン蛋白、(C)含水エタノール、場合によっては(D)グリセリンを混合して作製したユビデカレノン分散液を、流動層にて流動化したプロラミン蛋白粉体に噴霧することを特徴とする。
【0012】
(ユビデカレノン分散液)
本発明で使用する(A)成分のユビデカレノンは、牛などの動物の心臓などから抽出された天然由来のユビデカレノン、あるいは合成法、発酵法で得たユビデカレノンのいずれも使用できる。
例えば、コエンザイムQ10(商品名、日清ファルマ(株)製)、カネカ・コエンザイムQ10(商品名、鐘淵化学工業(株)製)、CoenzymeQ10(商品名、旭化成ケミカル(株)製)などが市販されている。
【0013】
本発明で用いるユビデカレノンは粉体状であることが、作業性の面で好ましい。粉体の平均粒径は、0.1〜200μm、好ましくは、1〜100μmである。粒径が0.1μm未満の粉体はユビデカレノン粒子表面積が高いので、これを使用すると目的の打錠成形性を有するために膜材とするプロラミン蛋白を多量に使用することになる。この場合、相対的にユビデカレノン含量が低下するので好ましくない。一方、200μmより大きい場合、噴霧スプレーノズルが詰まりやすいので好ましくない。
【0014】
本発明においてユビデカレノン分散液に含まれる(B)成分のプロラミン蛋白は、分散液には溶解しているが、乾燥後においてユビデカレノン含有粉体の膜材として機能する。使用に適したプロラミン蛋白としては、トウモロコシ、米、ヒエ、アワ、キビ、麦、小麦、大麦、ライ麦、オート麦などのイネ科植物の種子貯蔵タンパク質等が挙げられる。プロラミン蛋白は、上記の穀類からアセトンにより抽出され精製された後に粉体化し製造される。トウモロコシ蛋白であるゼインはツエインDP、ツエインC(以上、昭和産業(株)製)などの商品として市販されている。ゼインは、食品添加物として認可されているように安全性が高く、原料として入手しやすいので、本発明に好適である。
【0015】
ユビデカレノン分散液に含まれるプロラミン蛋白は、(C)成分の含水エタノールに溶解すれば物性は特に規定されることはないが、平均粒径が10〜200μmの粉体または顆粒の使用が好ましい。200μmより大きい場合、粒子が大きいため溶解に時間がかかり、10μmより小さい場合も、溶解するときに凝集し、溶解に時間を要する。
ユビデカレノン分散液に含まれるプロラミン蛋白は、ユビデカレノン100質量部に対して、5〜20質量部が好ましい。5質量部より小さい場合、十分な皮膜が形成されず、目的の打錠適性を得られない。20質量部より大きい場合は、相対的にユビデカレノンの比率が低くなり、好ましくない。
【0016】
ユビデカレノン分散液において、(C)成分として含水率10〜60質量%の含水エタノール溶液を用いる。含水率10〜60質量%の含水エタノール溶液には(B)成分のプロラミン蛋白が溶解し、(A)成分のユビデカレノンは溶解せず分散した状態となる。
本発明において、プロラミン蛋白が溶解し、ユビデカレノン粉体が分散した状態でユビデカレノン分散液を噴霧すると、乾燥後にはプロラミン蛋白はユビデカレノン粉体の表面で皮膜化する。皮膜化した膜材プロラミン蛋白はユビデカレノン粉体に流動性を付与するため、流動層内壁への付着や、凝集を抑えることができる。また、プロラミン蛋白は結合剤としても作用し造粒化するため、均一のユビデカレノン含有粉体を製造することができる。含水エタノール溶液の含水率が10質量%より低い場合、ユビデカレノンが溶解し、プロラミン蛋白は分散した状態となり、これを噴霧すると、プロラミン蛋白粉体の表面にユビデカレノン層が形成され、流動層内壁へ付着による歩留りの低下及び打錠適性の低下が生じる。また、均一なユビデカレノン含有粉体を製造し難くなる。含水エタノール溶液の含水率が60質量%より大きい場合、プロラミン蛋白の溶解性が低下するおそれがあるので、これを噴霧した場合は歩留りの低下及び打錠適性の低下が生じる。
【0017】
本発明のユビデカレノン分散液に用いる含水エタノールは、ユビデカレノン100質量部に対して、250〜1000質量部であることが好ましい。250質量部より少ない場合、ユビデカレノン分散液の粘度が高くなり、良好な噴霧状態が得られず、製造中に粉体が固化し易くなる。また、1000質量部より大きい場合は、目的とするユビデカレノン高含有粉体を得るために、多量のユビデカレノン分散液を噴霧する必要があり、生産効率が悪くなる。
【0018】
本発明のユビデカレノン分散液には、さらに(D)成分としてグリセリンを添加することが好ましい。グリセリンを添加することにより、良好な皮膜が形成され、打錠適性がさらに向上する。グリセリンの使用量は、ユビデカレノン100質量部に対して0.1〜7質量部が好ましい。
【0019】
本発明のユビデカレノン分散液は、(A)〜(C)成分、場合によってはさらに(D)成分を混合しプロペラなど一般的な撹拌装置により攪拌することにより製造できるが、ホモミクサー、ブレンダーなどせん断力のある撹拌装置の使用が好ましい。これにより得られた分散液は、噴霧器に供する前に、目開き10〜1000μmの篩いを通過することにより、ユビデカレノン粒子が微細化され、噴霧器の詰まりを防止するだけでなく、ユビデカレノン含有粉末の粒度が均一になるので好ましい。
【0020】
本発明のユビデカレノン分散液の粘度は、20℃において10〜400mPa・sが好ましい。粘度が400mPa・sより高い場合、良好な噴霧状態が得られず、流動層装置に供した際に賦形剤が固結しやすい。10mPa・sより低い場合は、ユビデカレノン分散状態が不安定となり、沈降速度が高く、安定して流動層装置に供することができないおそれがある。
【0021】
(プロラミン蛋白粉体)
本発明において、賦形剤としてプロラミン蛋白粉体を使用する。本発明の使用するプロラミン蛋白粉体は、嵩密度が0.1〜0.5g/cmであることが好ましい。プロラミン蛋白粉体の嵩密度が0.1g/cm3未満の場合、0.5g/cm3より高い場合は、十分な流動化状態を得られず、均一な粒度のユビデカレノン含有粉体を製造できないおそれがある。
プロラミン蛋白粉体の粒径は、10〜1000μmが好ましい。10μmより小さい場合、流動層装置のバグフィルターを通過しやすく、歩留りの低下などの問題を生じる。一方、1000μmより大きい場合、良好な流動化状態を得られないおそれがある。
本発明において、プロラミン蛋白粉体を賦形剤として使用すると均一な粒度のユビデカレノン含有粉体を製造できるが、例えば賦形剤として一般に使用されるデキストリン粉体を使用しても、粉体が固化し、ユビデカレノン含有粉体を製造できないことがある。
【0022】
本発明で賦形剤として使用するプロラミン蛋白粉体は、トウモロコシ、米、ヒエ、アワ、キビ、麦、小麦、大麦、ライ麦、オート麦などのイネ科植物の種子貯蔵タンパク質等の粉体である。
プロラミン蛋白は、上記の穀類からアセトンにより抽出され精製された後に粉体化する。なかでも、ゼインはツエインDP、ツエインC(以上、昭和産業(株)製)などの商品として市販されている。ゼインは、食品添加物として認可されているように安全性が高く、原料として入手しやすいので、本発明に好適である。また、流動性にも優れ、本発明の賦形剤として最適である。
【0023】
プロラミン蛋白粉体の使用量は、噴霧されるユビデカレノン分散液中の固形分100質量部に対し、10〜100質量部が好ましい。10質量部より小さい場合、賦形剤として十分に機能せず、粒径にバラツキが生じやすい。また、100質量部より大きい場合、相対的にユビデカレノンの含量が低下し、本発明の目的とする粒子を得られない。この場合の固形分は、ユビデカレノン分散液中のユビデカレノン、プロラミン蛋白、及びグリセリンの合計量である。
【0024】
(ユビデカレノン含有粉体の製造)
本発明において、流動層装置にてプロラミン蛋白粉体を流動させながら、ユビデカレノン分散液を噴霧してユビデカレノン含有粉体を製造する。この際に使用する流動層装置は、空気を給気しながら賦形剤のプロラミン蛋白を流動状態に保つ装置であり、例えば、流動層造粒機、転動流動層造粒機、ワースター型転動流動層造粒機などの一般的な流動層装置を使用することができる。特に、転動流動層造粒機、ワースター型転動流動層造粒機のように、転動盤による破砕力のあるものが、流動状態にあるプロラミン蛋白粉体の凝集をより抑えることができるので好ましい。
【0025】
ユビデカレノン分散液は、スプレーエアガン、アトマイザーなど公知の噴霧器で噴霧する。流動層装置において、ユビデカレノン分散液を流動状態にあるプロラミン蛋白粉体に噴霧し続けるとユビデカレノン高含有粉体が得られ、含水エタノールが気化して乾燥し、ユビデカレノン含有粉体が製造される。
【0026】
噴霧する際のユビデカレノン分散液の温度は、10〜40℃が好ましい。40℃より加温すると、ユビデカレノンが融解するため、膜材プロラミン蛋白がユビデカレノン表面に皮膜化されず、目的の歩留り、打錠適性が得られない。
ユビデカレノン分散液は、プロペラで撹拌しながら均一とし、これを送液することが好ましい。
造粒あるいは乾燥時の給気温度は、30〜70℃が好ましい。30℃未満の場合、噴霧液の乾燥速度が低いため、作業性が悪くなる。70℃より高い場合は、噴霧されたユビデカレノンが融解するため好ましくない。
【0027】
本発明により得られるユビデカレノン含有粉体の粒径は、使用する賦形剤の種類、流動層装置の構造、流動状態、混合時の温度設定、噴霧液の噴霧条件等により適宜調整することができる。本発明において、ユビデカレノン含有粉体の平均粒径は、1〜300μmが好ましく、より好ましくは50〜200μmである。ユビデカレノン含有粉体の平均粒径が300μmより大きい場合、例えばこれを打錠する際、臼またはスティックへの充填量が均一になり難くなる。ユビデカレノン含有粉体の平均粒径が1μmより小さい場合、ユビデカレノン含有粉体が臼と下杵の間隙に多量が入り、打錠障害の原因となる。
【0028】
さらに、本発明により得られるユビデカレノン含有粉体は、安息角が20〜40°あることが好ましい。安息角が40°より大きい場合、流動性が悪くなり、例えば、打錠時に臼への充填量にバラツキを生じやすくなる。
【0029】
(打錠品)
本発明に係るユビデカレノン含有粉体は、圧縮成形性に優れるため、そのまま錠剤化することが可能である。圧縮成型する場合、必要に応じて、乳糖、でんぷん、結晶セルロース、デキストリン、糖アルコールなどの賦形剤;ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、硬化油脂などの滑沢剤;二酸化ケイ素などの流動性向上剤と混合し、錠剤化してもよい。
また、その他の成分として、例えば、ぶどう糖、ショ糖、アスパルテーム、ステビアなどの甘味剤;クエン酸、リンゴ酸などの酸味剤;苦味剤、うまみ調味料などの調味剤;ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB1等のビタミン類;オクタコサノール、ポリコサノール、L−カルニチン、L−カルニチン酒石酸塩、カテキンなどのその他の機能性成分と混合し、打錠することも可能である。
本発明に係るユビデカレノン含有粉体を用いて打錠する場合は、通常使用される打錠条件にて打錠機等が使用できる。打錠機は、単打式、連続式のどちらでもかまわない。杵、臼の形状、大きさは問わず、目的、用途に合わせて適時選択できる。打圧は、通常使用される条件で行われ、0.098〜9.8Paの範囲で行うことが好ましい。
本発明で得られるユビデカレノン含有粉体は、さらに油脂、多糖類、高分子コーティング材などで多重にコーティングし、打錠適性を向上することもできる。
【0030】
(健康食品)
さらに、本発明により製造されるユビデカレノン含有粉体は、流動性に優れるため、スティックやハードカプセルに直接充填し、健康食品として使用することができる。この場合、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、乳糖、でんぷん、結晶セルロース、デキストリン、糖アルコールなどの賦形剤による希釈、二酸化ケイ素などの流動性向上剤、また、ぶどう糖、ショ糖、アスパルテーム、ステビアなどの甘味剤、クエン酸、リンゴ酸などの酸味剤、その他、苦味剤、うまみ調味料などによる呈味剤、さらに、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB1、オクタコサノール、ポリコサノール、L-カルニチン、L-カルニチン酒石酸塩、カテキンなどの生体機能性素材と混合することができる。
【0031】
さらに、本発明で得られるユビデカレノン含有粉体は通常の方法でスティックやゼラチンなどハードカプセルに充填でき、食品などの用途に使用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、具体例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
次に用いた測定方法および評価方法を示す。
1.粉体の嵩密度:
20メッシュで篩いかけした粉末を、容積100mLの円柱状のカップに振動をあたえないように上から静かに充填し、カップ上に余分に充填される部分をスパチラで擦切った。充填前後のカップの質量を測定し、粉末の質量及び容積より嵩密度を求めた。
2.粉体の平均粒径、粒度の測定:
平均粒径は、レーザー乾式粒度分布測定機(SALD−2100、(株)島津製作所製)を用いて測定した。内蔵するプログラム「Wing−1」により、データ処理された値にて評価した。
3.安息角の測定:
安息角の測定は、角度計(筒井理化学器械(株)製)を用いて測定した。
4.打錠性の評価:
ロータリー打錠機コレクト12HU(菊水製作所(株)製)、圧縮圧は0.98Pa、打錠の杵の大きさ:10mmφ、1粒当たりの質量250mgとあるようにし、500錠を打錠した。
打錠適性の評価基準を以下に示す。
◎:打錠障害なし。
○:500錠のうち、杵付きによる1mm以下のキズのある錠剤が1個以上ある。
△:500錠のうち、杵付きによる1mmより大きいキズのある錠剤が1個以上ある。
×:打錠不可能である。
5.分散液の粘度の測定:
ユビデカレノン分散液の粘度は、液温を20℃とし、B型粘度計(東機産業(株)製)を用いて測定した。
【0033】
実施例及び比較例において、下記の装置および原料を用いた。
(1)流動層造粒機
フローコーターFLO−1、フロイント株式(株)製
(2)原料
(賦形剤)
ゼイン:(商品名:ツエインDP、昭和産業(株)製、嵩密度0.21g/cm3、平均粒径100μm)
デキストリン:(商品名:パインフロー、松谷化学(株)製、嵩密度0.12g/cm3、平均粒径150μm)
(ユビデカレノン分散液)
ユビデカレノン:(商品名:コエンザイムQ10、日清ファルマ(株)製、純度100%、嵩密度0.23g/cm3、平均粒径12μm、安息角48°)
ゼイン:(商品名:ツエインDP、昭和産業(株)製、嵩密度0.21g/cm3、平均粒径100μm)
グリセリン(商品名:食添グリセリンS、日本油脂(株)製)
【0034】
実施例1
ゼイン粉体200g(80質量部)を流動層造粒機(フローコーターFLO−1、フロイント(株)製)に仕込み、給気温度60℃、給気量1m3/分の空気を給気しこれを流動させた。
ユビデカレノン250g(100質量部)、ゼイン50g(20質量部)、含水率30質量%のエアタノール水2100g(600質量部)に混合・攪拌しユビデカレノン分散液を作製した。分散液の粘度は、52mPa・sであった。これを噴霧スプレーにより噴霧空気圧1kgf/cm2、流速25mL/分でゼイン粉体に噴霧した。
乾燥後、ユビデカレノン含有粉体を480g得た。さらに、同条件により2バッチ連続してユビデカレノン含有粉体を得た。結果を表1に示す。
【0035】
比較例1
ユビデカレノン粉体250g(100質量部)、ゼイン200g(80質量部)を流動層造粒機(フローコーターFLO−1、フロイント(株)製)に仕込み、給気温度50℃、給気量1m3/分の空気を給気しこれを流動させた。
ゼイン50g(20質量部)、含水率30質量%のエタノール水450g(180質量部)に溶解し、これを噴霧スプレーにより噴霧空気圧1kgf/cm2、流速25mL/分で噴霧した。
乾燥後、ユビデカレノン含有粉体415gを得た。さらに、同条件により2バッチ連続してユビデカレノン含有粉体を得た。結果を表1に示す。
【0036】
実施例2
ゼイン粉体200g(80質量部)を流動層造粒機(フローコーターFLO−1、フロイント(株)製)に仕込み、給気温度60℃、給気量1m3/分の空気を給気しこれを流動させた。
ユビデカレノン250g(100質量部)、ゼイン50g(20質量部)、含水率30質量%のエタノール水2100g(600質量部)に混合・攪拌しユビデカレノン分散液を作製した。これを噴霧スプレーにより噴霧空気圧1kgf/cm2、流速25mL/分でゼイン粉体に噴霧し、平均粒径120μm、標準偏差0.091、安息角36°のユビデカレノン含有粉体を得た。これを、ロータリー打錠機を用い、上記の打錠条件で、500錠を打錠し、打錠性能を評価した。結果を表2に示す。
【0037】
実施例2〜12及び比較例2〜7
表2及び表3に示す配合組成で、他は実施例2と同じ条件でユビデカレノン含有粉体を製造した。結果を表2及び表3に示す。比較例4及び7は、噴霧工程中に層内のプロラミン蛋白粉体等が固化してしまった。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
表1に示したように、本発明では、高い歩留りで生産効率よくユビデカレノン含有粉体を製造できることがわかる。
表2の実施例から、本発明に係る製造方法では、粒度が均一で、流動性、打錠性に優れるユビデカレノン高含有粉体を生産できることわかる。本発明において、特定の組成比でユビデカレノン、プロラミン蛋白、含水エタノールを混合し作製したユビデカレノン分散液を、流動層にて流動化したプロラミン蛋白に噴霧することにより、目的とするユビデカレノン含有粉体を製造できた。表3の比較例2〜3では、プロラミン蛋白のユビデカレノン分散液中の含有量が低く、打錠適性が低い。また、比較例5〜7ではユビデカレノン分散液に用いる含水アルコールの含水率、含有量が適正でないため、目的とするユビデカレノン高含有粉体が得られない。また、比較例4に挙げるように、賦形剤としてデキストリン粉体を使用した場合に固化することがあった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層装置にて流動化した嵩密度0.1〜0.5g/cmのプロラミン蛋白粉体に、下記の(A)〜(C)からなるユビデカレノン分散液を、噴霧することを特徴とするユビデカレノン含有粉体の製造方法。
(A)ユビデカレノン:100質量部、
(B)プロラミン蛋白:5〜70質量部、
(C)含水率10〜60質量%の含水エタノール:250〜1000質量部。
【請求項2】
流動層装置にて流動化した嵩密度0.1〜0.5g/cmのプロラミン蛋白粉体に、下記の(A)〜(D)からなるユビデカレノン分散液を、噴霧することを特徴とするユビデカレノン含有粉体の製造方法。
(A)ユビデカレノン:100質量部、
(B)プロラミン蛋白:5〜70質量部、
(C)含水率10〜60質量%の含水エタノール:250〜1000質量部、
(D)グリセリン:0.1〜7質量部。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された製造法で得られるユビデカレノン含有粉体。
【請求項4】
請求項3に記載されたユビデカレノン含有粉体を成型してなる打錠品。

【公開番号】特開2007−191425(P2007−191425A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10933(P2006−10933)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】