ライザー管の懸吊装置および係留管の連結装置
【課題】 流体資源等の海底等からの輸送等に使用されるライザー管と海洋構造物との間に発生するすべての方向の曲げモーメントをほぼ完全に逃がすとともにせん断荷重も逃がし、瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を吸収することができ、なおかつ懸吊部材が管の外部に設けられているライザー管の懸吊装置および係留管の連結装置を提供すること。
【解決手段】 海洋構造物の固定管3へ流体を輸送するライザー管1と、固定管3とライザー管1との間に設けられており両者を連結する可撓管継手8と、ライザー管1の洋上浮体底板7に対する相対的な変位の自由度を有するようにライザー管1を洋上浮体底板アーム11に懸吊する可撓管継手8の周囲に複数設けられている回転吊り要素12および15、可撓吊り要素13および16、ならびに中間リング10により、ライザー管1の洋上浮体底板7に対する相対的な角変位や水平方向への相対移動を可能にする。
【解決手段】 海洋構造物の固定管3へ流体を輸送するライザー管1と、固定管3とライザー管1との間に設けられており両者を連結する可撓管継手8と、ライザー管1の洋上浮体底板7に対する相対的な変位の自由度を有するようにライザー管1を洋上浮体底板アーム11に懸吊する可撓管継手8の周囲に複数設けられている回転吊り要素12および15、可撓吊り要素13および16、ならびに中間リング10により、ライザー管1の洋上浮体底板7に対する相対的な角変位や水平方向への相対移動を可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、油、ガスなどの流体資源などの流体を、海底または海中から海洋構造物まで輸送、あるいは液化二酸化炭素などの流体を海洋構造物から海底または海中まで輸送するために使用されるライザー管の懸吊装置ならびに海洋浮体構造物を係留する係留管の連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水、油、ガスなど、様々な流体を海底または海中から洋上浮体などの海洋構造物まで輸送する作業においては、ライザー管と呼ばれる主に金属製の円管が用いられることが多い。これらのライザー管は、使用される水深にもよるが、その外径に比して軸方向の長さが著しく大きな線状構造物となる場合が多く、潮流、波浪、洋上浮体の動揺の影響を受けて水中で様々な弾性挙動をするため、接合部において過大な応力が発生して疲労や破断、座屈などの損傷が生じる恐れがある。また、海洋構造物とライザー管は互いに影響を及ぼしながら連成した運動をするため、接合部の構造を適切に設計しておかないと共振などの危険な現象が起こる恐れがある。
【0003】
このような海洋構造物とライザー管の接合部における過大応力の発生を防止したり、海洋構造物とライザー管の強い連成運動による悪影響を回避するために重要なことは、前記接合部に発生する様々な方向の曲げモーメントやせん断荷重をうまく逃がすことと、前記接合部に管軸方向の圧縮荷重が作用しないようにすることであるが、その具体的方法の一つとしてチェーンおよび可撓管継手を用いた懸吊方法がある(非特許文献1、特許文献1〜5)。
【0004】
非特許文献1に記載の海洋肥沃化装置においては、水深約200mの海洋深層水を海面近くまで引き揚げるための取水用ライザー管を図10に模式的に示すごとく2本のチェーンにより洋上浮体底から懸吊し、ライザー管の上端部近傍に可撓管継手を設けることにより、ライザー管と浮体の間に発生する曲げモーメントを軽減すると同時に、瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位が生じてもチェーンおよび可撓管継手で吸収できるような懸吊機構を採用している。
しかしながら、この方法による懸吊機構では、洋上浮体やライザー管が2本のチェーンを含む平面内で異なる回転運動をした場合、洋上浮体とライザー管の間に生じる前記平面内の曲げモーメントを完全に逃がすことはできず、場合によっては瞬間的な片方のチェーンの弛緩とそれに続く衝撃的な引張荷重(スナップ荷重)の発生により、懸吊機構に過大な応力が生じる恐れがある。
また、上記平面内の曲げモーメントが一定程度チェーンを通じて伝達されることにより、洋上浮体の上記平面内における回転運動の振動数とライザー管の固有振動数が近くなると共振現象が起こる恐れがある。このため、それを回避するための特別な配慮、すなわち、振動解析によるライザー管の諸元設定などが必要となり、ライザー管の板厚や外径、長さなどの選択範囲が狭められることになる。
【0005】
特許文献1には、取水用ライザー管の上端部に2個の分離した管要素を設け、両者を可撓管継手で繋ぐと同時に管の内部に設けた1本の可撓連結要素(例えばチェーン)および2個の連結部材によって連結してライザー管を懸吊する方法が記載されている。この方法を用いれば、洋上浮体とライザー管の間に発生するすべての方向の曲げモーメントを逃がすことが可能であるが、管の内部に懸吊用の可撓連結要素および連結部材を設ける必要がある。このため、これら要素や部材によって管内の水の滑らかな流れが阻害されてしまうという欠点がある。また、ライザー管を懸吊する主要な強度部材である懸吊部材が管の内部に隠れてしまうため、懸吊部材の健全性の検査やメンテナンスがしにくいという欠点もある。加えて、特に長期に亘り使用する場合などには、懸吊部材を構成する金属などの材料が腐食や摩耗により部材表面から遊離して管内の流体を汚染する恐れがある。
【0006】
特許文献2には、洋上浮体とライザー管とをケーブルで接続した構造体が記載されている。しかし、同文献に記載されている構造体は、洋上浮体とライザー管とがシールされており管軸方向に自由度を持たないものであることから、洋上浮体とライザー管とを接続するケーブルにより、ライザー管の瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を吸収することはできない。
【0007】
特許文献3には、引張脚プラットフォームとライザー管との間に弾性組立体を備えたライザー管支持装置が開示されている。同文献に記載されているライザー管支持装置は、ライザー管の瞬間的な管軸方向の相対変位を弾性体の変形によって吸収することを目的としている。しかし、弾性体が変形するためには両側からの外力変化が必要であることから、場合によってはライザー管に圧縮方向の荷重が作用するおそれがある。また、ライザー管の瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を弾性体のみによって完全に吸収することはできない。
【0008】
特許文献4には、ライザー構造物とフロートとを連結する連結装置に、フロートに関してライザー構造物が僅かに旋回することを可能とする旋回軸を設け、フロートと海洋構造物とを伸縮式接続装置によって接続した構造が開示されている。しかし、伸縮式接続装置は、フロートと海洋構造物との間の相対的な変位を逃がすものであって、フロートとライザー管との間の相対変位(管軸方向の圧縮荷重)を逃がすものではない。また、ライザー構造物とフロートとは、連結装置によってライザー構造物の軸方向に固定されていることから、ライザー構造物はフロートに対してその軸方向に相対的に変位することができない。このため、フロートを小型の洋上浮体と考えると、ライザー管に圧縮方向の荷重が作用するおそれがある。
【0009】
特許文献5には、非特許文献1に記載の海洋肥沃化装置と同様の装置が記載されているが、上述したとおり当該海洋肥沃化装置には、スナップ荷重の発生により、懸吊機構に過大な応力が生じる恐れがあり、また、共振現象を回避するための特別な配慮も必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許US7,318,387 B2
【特許文献2】米国特許4,273,068
【特許文献3】特開平8−319789号公報
【特許文献4】特表2002−537171号公報
【特許文献5】特開2005−291464号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】宮部宏彰他、「海洋肥沃化装置『拓海』の開発」、石川島播磨技報Vol.44, No.3 (2004-5),209p-214p
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、水、油、ガスなどの流体を海底または海中から洋上浮体まで輸送するために使用されるライザー管を懸吊する方法や装置は、これまでにもいくつか提案されている。しかし、洋上浮体とライザー管の間に発生するすべての方向の曲げモーメントをほぼ完全に逃がすとともにせん断荷重も逃がし、瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を吸収することができ、懸吊部材が管の外部にあって検査やメンテナンスが容易であり、管内流体の滑らかな流れが損なわれたり管内流体が汚染されたりすることがないライザー管の懸吊装置は未だ確立されていない。
【0013】
そこで、本発明は、流体資源などの流体を海底または海中から洋上浮体まで輸送するために使用されるライザー管について、洋上浮体とライザー管の間に発生するすべての方向の曲げモーメントをほぼ完全に逃がすとともにせん断荷重も逃がし、瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を吸収することができ、なおかつライザー管を懸吊する強度部材が管の外部に設けられており検査やメンテナンスが容易なライザー管の懸吊装置、ならびにこのライザー管の懸吊装置と同様な技術を用いた係留管の連結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の本発明のライザー管の懸吊装置は、海洋構造物へ流体を輸送または海洋構造物から流体を輸送するライザー管と、前記海洋構造物と前記ライザー管との間に設けられており、前記海洋構造物と前記ライザー管とを連結する可撓管と、少なくとも前記ライザー管の軸方向に前記海洋構造物に対する相対的な自由度を有するように前記ライザー管を前記海洋構造物に懸吊する前記可撓管の周囲に複数設けられている懸吊手段と、前記懸吊手段に係合され前記ライザー管の前記海洋構造物に対する相対的な角変位および水平方向の相対移動を可能にする自由度付与手段を備えていることを特徴とする。
ここで、「海洋構造物」には、浮体、船、海洋建築物、水中構造物等が含まれ、例えばカスピ海のような広大な湖において用いられる浮体、船、海洋建築物、水中構造物等も含まれる。
また、「ライザー管の軸方向に前記海洋構造物に対する相対的な自由度を有する」とは、前記ライザー管の前記海洋構造物に対する相対的な位置が、ライザー管の軸方向に沿って変位可能であることをいう。
また、「前記ライザー管の前記海洋構造物に対する相対的な角変位」とは、前記ライザー管の管軸と前記海洋構造物の成す相対的な角度が変化することをいう。なお、ここで、ライザー管の管軸と海洋構造物の成す相対的な角度とは、ライザー管の管軸と、海洋構造物に固定された軸(例えば海洋構造物の底板に立てた垂直軸)の成す角度のことをいう。
また、「前記ライザー管の前記海洋構造物に対する水平方向の相対移動」とは、懸吊手段の移動により前記ライザー管の前記海洋構造物に対する相対的な位置が、水平方向に変位することをいう。なお、ここで、水平方向に変位するとは、ライザー管と海洋構造物との相対運動に水平面的に自由度を与えることをいい、変位前後において、水平面上に投影される相対位置が変化することをいう。
この構成により、懸吊手段がライザー管の軸方向へ移動することでライザー管の管軸圧縮方向の相対変位を吸収するとともに、相対的な角変位により海洋構造物とライザー管との間の曲げモーメントを逃がすことができる。また、可撓管の周囲に設けられていることから、懸吊手段を容易にメンテナンスすることができる。
【0015】
請求項2の本発明は、請求項1に記載のライザー管の懸吊装置において、複数の前記懸吊手段が、前記ライザー管の軸方向の圧縮荷重を伝えない構造とされていることを特徴とする。
ここで、「前記ライザー管の軸方向の圧縮荷重を伝えない構造」とは、「ライザー管の軸方向に前記海洋構造物に対する相対的な自由度を有する」もののうち、弾性体のように軸方向の圧縮荷重を弱めた上で圧縮荷重を伝達するものが除かれたものをいう。
この構成により、懸吊手段により瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を吸収することができる。
【0016】
請求項3の本発明は、請求項1または2に記載のライザー管の懸吊装置において、前記自由度付与手段として中間リングを有し、前記懸吊手段が、上部懸吊手段および下部懸吊手段から構成されており、前記上部懸吊手段が、前記海洋構造物と前記中間リングに係止されており、前記下部懸吊手段が、前記中間リングと前記ライザー管に係止されていることを特徴とする。
この構成により、上部懸吊手段、中間リングおよび下部懸吊手段で、管軸圧縮方向の相対変位を吸収するとともに、曲げモーメントやせん断荷重を逃がすことができる。
【0017】
請求項4の本発明は、請求項3に記載のライザー管の懸吊装置において、前記上部懸吊手段および前記下部懸吊手段をそれぞれ2つずつ備えており、前記上部懸吊手段の2つの上部懸吊手段係止部は前記中間リングの中心点を介して対向するように配置されており、前記下部懸吊手段の2つの下部懸吊手段係止部は前記中間リングの中心点を介して対向するように配置されており、2つの上部懸吊手段係止部を結んだ直線を含む前記ライザー管の管軸に平行な面と、2つの前記下部懸吊手段係止部を結んだ直線を含む前記ライザー管の管軸に平行な面とが、略90度の角度で交わることを特徴とする。
この構成により、上部懸吊手段と下部懸吊手段と中間リングの作用で、異なる方向の曲げモーメントやせん断荷重をスムーズに逃がすことができる。
【0018】
請求項5の本発明は、請求項4に記載のライザー管の懸吊装置において、前記上部懸吊手段係止部および/または前記下部懸吊手段係止部が、回転要素により構成されていることを特徴とする。
ここで、「回転要素」とは、回転軸を中心として回転可能な要素をいい、例えば、円孔とシャックル、球面みぞ付軸受け、自在関節機構などにより構成される。
この構成により、回転要素の回転によって、曲げモーメントの逃がしをよりスムーズなものとすることができる。
【0019】
請求項6の本発明は、請求項5に記載のライザー管の懸吊装置において、前記回転要素が同一平面内に位置しており、前記上部懸吊手段係止部の回転要素の回転軸が同一直線上にあり、前記下部懸吊手段係止部の回転要素の回転軸が同一直線上にあることを特徴とする。
この構成により、曲げモーメントのすべての方向への逃がしをさらにスムーズなものとすることができる。
【0020】
請求項7の本発明は、請求項5または6に記載のライザー管の懸吊装置において、前記上部懸吊手段および前記下部懸吊手段のそれぞれが回転吊り要素をその両端に有しており、前記上部懸吊手段の有する回転吊り要素の一方が前記海洋構造物の底板アームに他方が前記中間リングにそれぞれ係止されており、前記下部懸吊手段の有する回転吊り要素の一方が前記中間リングに他方がライザー管の一部を構成する端部に設けられている可動管の管アームにそれぞれ係止されていることを特徴とする。
この構成により、懸吊手段のライザー管の軸方向への移動による管軸圧縮方向の相対変位の吸収ならびに曲げモーメントおよびせん断荷重の逃がしをよりスムーズなものとすることができる。
【0021】
請求項8の本発明は、請求項1乃至7の何れかに記載のライザー管の懸吊装置において、前記懸吊手段が、2連以上のチェーンであることを特徴とする。
この構成により、2連以上のチェーンの弛緩によって、瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を効果的に吸収することができる。
【0022】
請求項9に記載の本発明の係留管の連結装置は、海洋浮体構造物を係留する係留管と、少なくとも前記係留管の軸方向に前記海洋浮体構造物に対する相対的な自由度を有するように前記係留管を前記海洋浮体構造物に懸吊する複数の懸吊手段と、前記懸吊手段に係合され前記係留管の前記海洋浮体構造物に対する相対的な角変位や水平方向の相対移動を可能にする自由度付与手段を備えていることを特徴とする。
この構成により、懸吊手段が係留管の軸方向へ移動することで係留管の管軸圧縮方向の相対変位を吸収するとともに、自由度付与手段が相対的な角変位および水平移動を可能とすることで海洋浮体構造物と係留管の間の曲げモーメントおよびせん断荷重を逃がすことができる。
【0023】
請求項10の係留管の連結装置は、請求項9に記載の係留管の連結装置において、前記海洋浮体構造物が前記係留管によりテンションレグ方式で係留されており、前記海洋浮体構造物と前記係留管との間に設けられており、前記海洋浮体構造物と前記係留管とを連結する可撓管を備えていることを特徴とする。
この構成により、海洋浮体構造物を、例えば、緊急時の海底部レグ切り離し機構を備えたテンションレグ方式により係留する場合、係留管と海底基礎(テンプレート)を連結するアクティヴ・コネクタを遠隔操作するための作動流体の通路として係留管を用いることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のライザー管の懸吊装置によれば、洋上浮体などの海洋構造物とライザー管の間に生じるすべての方向の曲げモーメントをほぼ完全に逃がすと同時に、せん断荷重を効果的に逃がすことができ、接合部における過大な応力の発生を防止することができる。また、海洋構造物のロールもしくはピッチ方向の回転運動とライザー管の強い連成運動による共振などの悪影響を回避することができ、万一海洋構造物とライザー管の接合部などに圧縮方向の相対変位が生じてもそれを吸収し、接合部やライザー管が座屈しないようにすることができる。さらに、懸吊部材が可撓管の外部にあるため、懸吊部材の健全性の検査やメンテナンスを比較的容易に行うことができ、懸吊部材の腐食や摩耗による管内流体の汚染なども回避することができる。
また、懸吊手段が前記ライザー管の軸方向の圧縮荷重を伝えない構成とすれば、懸吊手段により瞬間的な管軸圧縮方向の圧縮荷重を伝えることなく相対変位を吸収することができる。
また、自由度付与手段として中間リングを有し、前記懸吊手段が、上部懸吊手段および下部懸吊手段を備えた構成とすれば、これらにより、ライザー管の管軸圧縮方向の相対変位を吸収するとともに、海洋構造物とライザー管の間に生じる複数の方向の曲げモーメントおよびせん断荷重を逃がすことが可能となる。この場合、2つの上部懸吊手段係止部を中間リングの中心点を介して対向するように配置し、2つの下部懸吊手段係止部を中間リングの中心点を介して対向するように配置し、上部懸吊手段係止部を結んだ直線を含むライザー管の管軸に平行な面と、下部懸吊手段係止部を結んだ直線を含むライザー管の管軸に平行な面とが、中間リングの中心付近において略90度の角度で交わる構成とすれば、異なる方向の曲げモーメントやせん断荷重の逃がしをよりスムーズなものとすることができる。
また、前記上部懸吊手段係止部および/または前記下部懸吊手段係止部を回転要素により構成すれば、回転要素の回転によって曲げモーメントをよりスムーズに逃がすことができる。この場合、回転要素が同一平面上に位置しており、上部懸吊手段係止部の回転要素の回転軸が同一直線上にあり、下部止部の回転要素の回転軸が同一直線上にある構成とすれば、すべての方向への曲げモーメントの逃がしをさらにスムーズなものとすることができる。
また、懸吊手段を、2連以上のチェーンで構成することにより、ライザー管を懸吊するとともに瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を効果的に吸収することができ、相対的な角変位および水平方向の相対移動をより円滑にすることにも寄与することが可能となる。
【0025】
本発明の係留管の懸吊装置によれば、懸吊手段が係留管の軸方向へ移動することで係留管の管軸圧縮方向の相対変位を吸収するとともに、自由度付与手段が相対的な角変位や水平移動を可能にすることで海洋浮体構造物と係留管の間の曲げモーメントおよびせん断荷重を逃がすことができ、海洋浮体構造物や係留管などに過大な応力がかかることを防止できる。
また、海洋浮体構造物が係留管により、例えばテンションレグ方式で係留されており、緊急時の海底部レグ切り離し機構を有する場合、可撓管を備えた構成とすれば、係留管と海底基礎(テンプレート)を連結するアクティヴ・コネクタを遠隔操作するための作動流体の通路として係留管を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態によるライザー管の懸吊装置の(a)正面図および(b)側面図
【図2】第1の実施形態によるライザー管の懸吊装置の要部を示す(a)正面側斜視図および(b)側面側斜視図
【図3】洋上浮体底板に中間リングを懸吊する懸吊手段の他の例を示す要部正面図
【図4】中間リングを洋上浮体底板側から見た正面図
【図5】中間リングの斜視図
【図6】懸吊手段および自由度付与手段の他の例を模式的に示す正面図
【図7】懸吊手段および自由度付与手段のさらなる他の例を模式的に示す正面図
【図8】第2の実施形態による海洋浮体構造物をテンションレグ方式で係留する係留管の連結装置の概略構成を示す正面図
【図9】第2の実施形態による海洋浮体構造物を係留する係留管の連結装置の概略構成を示す要部正面図
【図10】2本のチェーンによる従来のライザー管懸吊機構の正面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明をライザー管の懸吊装置として実施する形態につき図1〜7を参酌しつつ説明する。
図1は本発明の第1の実施形態によるライザー管の懸吊装置2の(a)正面図および(b)側面図である。また、図2は図1に示したライザー管の懸吊装置2の要部を示す(a)正面側斜視図および(b)側面側斜視図である。図1、2に示すように、ライザー管の懸吊装置2は、ライザー管1を洋上浮体底板(海洋構造物)7に懸吊するものである。ライザー管1、ライザー管の懸吊装置2および洋上浮体底板7の構成について、以下に説明する。
【0028】
ライザー管1は、洋上浮体などの海洋構造物への流体の輸送、または海洋構造物からの流体の輸送に用いられるものである。海洋構造物へ輸送される流体としては、石油などの流体資源や海水などが挙げられる。また、海洋構造物から海底などに輸送される流体としては、液化された二酸化炭素などが挙げられる。これらの流体は、液体の状態で輸送されることも、固体と液体とが混ざった固相と液相の固液2相の混合物として輸送されることもある。
第1の実施形態においては、ライザー管1は、別体のものとして構成されている可動管4と延伸管5の接合によって構成されている。また、これらは、可動管4の可動管接合部17と延伸管5の延伸管接合部18において接合している。しかし、ライザー管1は、別体の管を接合することにより構成されることは必要なく、一体のものとして構成されたものとしても良い。この場合、可動管4と延伸管5を接続するために用いられる可動管接合部17と延伸管接合部18は不要となる。
【0029】
ライザー管1は、洋上浮体内固定管(海洋構造物)6に接続されている固定管(海洋構造物)3に、可撓管継手(可撓管)8を介して接続されている。しかし、固定管3を備えない構成とすることも可能であり、この場合、ライザー管1は、可撓管継手8を介して洋上浮体底板7に接続されることとなる。
また、洋上浮体内固定管6は、固定管3から輸送された液体の洋上浮体内のタンクなどの設備(図示しない)への輸送に用いられるものであるから、固定管3から洋上浮体内のタンクなどの設備に直接放出する構成とした場合、洋上浮体内固定管6を省略することも可能である。
【0030】
ライザー管1(可動管4、延伸管5)、固定管3および洋上浮体内固定管6の材料としては、例えば、金属やプラスチックを用いることができる。また、単一の材料により構成された単層管を用いても、異種材料を複数重ねた積層管を用いてもよい。また、ライザー管1、固定管3および洋上浮体内固定管6をすべて同じ材料により構成することも、それぞれに異なった材料により構成してもよい。
上述した各管の外径および厚みは、特に限定されるものではなく、目的や輸送対象に応じて適宜設定することができる。
【0031】
ライザー管の懸吊装置2は、可撓管継手8、中間リング(自由度付与手段)10、洋上浮体底板アーム(底板アーム)11、回転吊り要素(懸吊手段)12、可撓吊り要素(上部懸吊手段、チェーン)13、可動管アーム(管アーム)14、回転吊り要素(懸吊手段)15、可撓吊り要素(下部懸吊手段、チェーン)16、円孔(上部懸吊手段係止部、回転要素)19、円孔(上部懸吊手段係止部、回転要素)20、円孔(下部懸吊手段係止部、回転要素)21および円孔(下部懸吊手段係止部、回転要素)22を備えて構成されている。以下、これらライザー管の懸吊装置2の構成要素について説明する。
【0032】
可撓管継手8は、洋上浮体底板7とライザー管1との間に設けられており、洋上浮体内のタンクなどの設備への経路となる固定管3と可撓管継手8とを連結し、ライザー管1と固定管3との間の流体の輸送を可能とするものである。
可撓管継手8の材料としては、例えば、金属、プラスチック、布(ジュート)などを挙げることができる。また、単一の材料により構成された単層管を用いることも、異種材料を複数重ねた積層管を用いることとしてもよい。
可撓管継手8の形状は、蛇腹管(ベローズ)として、構造的に十分な可撓性を持たせている。他の十分な可撓性を持った構造としては、インターロック管が挙げられる。なお、金属など硬質材料を用いた場合には、構造的に十分な可撓性を持たせることが必要となるが、材質が十分に柔軟な材料を用いる場合、単純な円管形状とすることも可能である。
可撓管継手8の変形性能は、曲げに対する十分な可撓性を有すると同時に、管軸方向の変位を一定程度吸収し、多少の管軸圧縮方向変位では座屈しないものである。さらに、管せん断方向(管軸に対して直角方向)の変位に対しても十分な変形性能を有するものである。
可撓管継手8の外径は、ライザー管1の可動管4の外径および固定管3の外径や、中間リング10の内径などとの関係で適宜設定することができる。第1の実施形態では、可撓管継手8の外径の増減が一定幅内で周期的に繰り返す蛇腹管としているが、これに限られず、外径一定の円筒形や、円錐台の側面のような形状とすることもできる。
【0033】
中間リング10は、回転吊り要素12および可撓吊り要素13を介して洋上浮体底板アーム11に接続され、回転吊り要素15および可撓吊り要素16を介してライザー管1に接続されており、可撓吊り要素13および可撓吊り要素16が伸長した状態において、可撓管継手8を取り囲む位置に設けられている。
中間リング10の材料としては、例えば、金属やプラチック等が挙げられる。ただし、回転吊り要素12と係合する円孔20および回転吊り要素15と係合する円孔21には大きな集中荷重が加わるので、円孔20および円孔21は高強度の金属により構成することが好ましい。
中間リング10の内径は、可撓管継手8の外面と中間リング10の内面との距離が十分なものとなるように、十分な余裕を持った大きさのものとされている。これにより、可撓管継手8が最も大きく撓んだ場合でも、可撓管継手8の外面が、中間リング10の内面、回転吊り要素12、可撓吊り要素13、回転吊り要素15および可撓吊り要素16に接触しないようにすることができる。
中間リング10の形状は、図1、図2に示すように円管状としている。しかし、この形状に限られるものではなく、可撓管継手8との間隔、強度、回転吊り要素12および回転吊り要素15の自由な回転を確保することができる他の形状とすることも可能である。このような形状としては、例えば、円断面もしくは楕円断面のフープ(輪)形状、複数枚の板をn角形に組んだ板構造(ただし、nは4以上の偶数)が挙げられる。
中間リング10の厚みは、特に限定されるものではなく、中間リング10全体としての強度を確保でき、かつ回転吊り要素12および回転吊り要素15が自由に回転することが可能なものとすればよい。
【0034】
洋上浮体底板アーム11は、洋上浮体底板7にライザー管1を懸吊するための、洋上浮体底板7側の係合部として用いられるものである。
洋上浮体底板アーム11の材質としては、例えば、金属、プラスチックなどが挙げられる。円孔19には大きな集中荷重が加わるので、高強度の金属を用いることが好ましい。
洋上浮体底板アーム11は、図1に示すように、洋上浮体底板7からライザー管1側に突出した板状体として構成されているが、その構造としてはこれに限らず、洋上浮体底板7と適切な方法により接続されているものであれば良い。
【0035】
可動管アーム14は、洋上浮体底板7にライザー管1を懸吊するための、ライザー管1側の係合部として用いられるものである。
可動管アーム14の材質としては、例えば、金属、プラスチックなどが挙げられる。円孔22には大きな集中荷重が加わるので、高強度の金属を用いることが好ましい。
これら円孔19、円孔20、円孔21、円孔22は、高強度の金属を部分的に嵌め込んだり、部分的に補強して構成してもよい。
可動管アーム14は、図1、2に示すように、可動管4の外側面から突出した板状体として構成されているが、その構造としてはこれに限らず、可動管4と適切な方法により接続されているものであれば良い。
【0036】
回転吊り要素12は、可撓吊り要素13の両端に設けられているものであり、洋上浮体底板アーム11の円孔19および中間リング10の円孔20において、その軸部が自由に回転できる状態で係止されている。回転吊り要素12と円孔19との組み合わせ、および回転吊り要素12と円孔20との組み合わせにより回転機能が発揮される。
回転吊り要素15は、可撓吊り要素16の両端に設けられているものであり、中間リング10の円孔21および可動管アーム14の円孔22において、その軸部が自由に回転できる状態で係止されている。回転吊り要素15と円孔21との組み合わせ、および回転吊り要素15と円孔22との組み合わせにより回転機能が発揮される。
回転吊り要素12および回転吊り要素15の材料としては、例えば、金属やプラスチック等が挙げられる。
【0037】
可撓吊り要素13および可撓吊り要素16は、ライザー管1に、洋上浮体底板7に対して、その軸方向への相対移動を可能にするとともに、この場合は、その可撓性により相対的な角変位に対応し、水平方向への相対移動も一部可能にするものである。
水平方向の相対移動のみに注目すれば、可撓性を有していなくても水平移動は可能であるが、可撓吊り要素13および可撓吊り要素16をチェーン構造とすることにより、ライザー管1の懸吊、瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位の効果的な吸収に加え、相対的な角変位、水平方向の相対移動をより円滑に行うことができる。
すなわち、可撓吊り要素13および可撓吊り要素16として、図1、2に示す2連以上のチェーンのように、圧縮方向変位が生じると直ちに弛緩し、ライザー管1の管軸方向の圧縮荷重を伝えない構造のものを用いることにより、ライザー管1の軸方向に洋上浮体底板7に対する相対的な自由度を与えることができる。
また、可撓吊り要素13の両端に設けられている回転吊り要素12の軸部が円孔19、円孔20内で回転すること、可撓吊り要素16の両端に接続されている回転吊り要素15の軸部が円孔21、円孔22内で回転すること、および可撓吊り要素13、可撓吊り要素16自身が撓むことにより、角変位方向および水平方向にライザー管1の洋上浮体底板7に対する相対的な自由度を与えることができる。
上述した可撓吊り要素13および/または回転吊り要素12と、可撓吊り要素16および/または回転吊り要素15により、ライザー管1の管軸圧縮方向の相対変位を吸収するとともに、中間リング10を介して可撓吊り要素13および可撓吊り要素16が90度ずらして配置されることにより、すべての方向の曲げモーメントおよびせん断荷重を逃がすことができる。
可撓吊り要素13および可撓吊り要素16の材料としては、例えば、金属やプラスチックなどが挙げられる。
可撓吊り要素13および可撓吊り要素16の形態としては、チェーン、ワイヤー、高強度ロープ、ばねなどのような引張り荷重に強く、可撓性があり、圧縮方向の変位をある程度吸収できるものが挙げられる。また、これらを組み合わせたものを用いることもできる。
【0038】
図3は洋上浮体底板に中間リングを懸吊する懸吊手段の他の例を示す要部正面図である。同図に示すように、洋上浮体底板7の洋上浮体底板アーム11に中間リング10を懸吊する手段として高強度ロープ(上部懸吊手段)33を用いることもできる。ここでは、その強度を十分なものとするために2本の高強度ロープ33を用いた例を示しているが、高強度ロープ33の強度に応じて、高強度ロープ33を3本以上用いることや1本のみ用いることとしても良い。
また、高強度ロープ33を洋上浮体底板アーム11の円孔19および中間リング10の円孔20(図1、2参照)に係止するための手段として、高強度ロープ33はその両端に回転吊りリング(懸吊手段)32を備えている。中間リング10に係止される下側においては、回転吊りリング32は2つ設けられていて、この2つの回転吊りリング32により、管軸圧縮方向の相対変位の吸収と、相対的な角変位、水平方向の相対移動のさらなる円滑化も行っている。
なお、図3においては、洋上浮体底板アーム11と中間リング10の円孔20とを接続するために高強度ロープ33を用いた例を示したが、高強度ロープ33を中間リング10の円孔21と可動管アーム14(図1、2参照)との接続に用いることも可能である。
【0039】
図1に示すように、洋上浮体底板接合部9、可動管接合部17および延伸管接合部18は、いずれもボルトとナット(図示しない)を用いたフランジ接合により構成している。なお、これらの材料として金属を用いる場合には管ねじ継手や溶接を用いることも可能であり、プラスチックを用いる場合には管ねじ継手や接着を用いることも可能である。
【0040】
図4および図5に基づいて、中間リング10の構成についてより詳しく説明する。
図4は中間リングを洋上浮体底板側から見た正面図である。同図に示すように、可撓吊り要素13の端部に設けられている回転吊り要素12を係止する円孔20は、中間リング10の中心点Cを介して対向するように配置されており、2つの円孔20の中心を結んだ直線A20上に、回転吊り要素12の軸部の回転軸が位置する。また、可撓吊り要素16の端部に設けられている回転吊り要素15を係止する円孔21は、中間リング10の中心点Cを介して対向するように配置されており、2つの円孔21の中心を結んだ直線A21上に、回転吊り要素15の軸部の回転軸が位置する。そして、直線A20と直線A21とは、中間リング10の中心Cにおいて直交している。
【0041】
図5は、中間リングの斜視図である。同図では、中間リング10の軸方向(ライザー管1の管軸方向と一致、図1、2参照)を直線Lで示している。この直線Lと直線A20により形成されるライザー管1の管軸に平行な面S20と、直線Lと直線A21により形成されるライザー管1の管軸に平行な面S21とは、中間リング10の中心Cにおいて直角に交差しており、図中にXで示した面S20と面S21とにより形成される角度は90度である。
また、円孔20と円孔21は、その中心の高さが略等しい高さとなるように構成されている。このため、直線A20と直線A21とは中間リング10の中心Cにおいて直交し、2つの円孔20と2つの円孔21は、同一平面S内に位置している。
上述した構成により、ライザー管1の曲げモーメントをすべての方向にスムーズに逃がすことができる。
なお、円孔20と円孔21の中心は、回転吊り要素12および回転吊り要素15の軸部の回転中心に略対応するものであるが、円孔20、21と回転吊り要素12、15の回転軸との間には、スムーズな回転を実現する為の隙間がある。このため、円孔20、21の中心の高さを同じにすると、厳密には、当該隙間に対応して回転吊り要素15の軸部の回転中心の高さは異なることとなる。また、回転吊り要素12、15の回転軸の高さを揃えた場合、円孔20、21の中心の高さが、上記隙間に対応する分だけ異なることとなる。
しかし、本発明においては、回転吊り要素12の軸部の回転中心のライザー管1軸方向の高さの差が、円孔20のライザー管1軸方向の幅以内である場合、回転吊り要素12の軸部の回転中心が略同一直線上にあるという。同様に、回転吊り要素15の軸部の回転中心のライザー管1軸方向の高さの差が、円孔21のライザー管1軸方向の幅以内である場合、回転吊り要素15の軸部の回転中心が略同一直線上にあるという。
そして、回転吊り要素12および回転吊り要素15の軸部の回転中心が、円孔20および円孔21のライザー管1軸方向の一方端を結んで形成される平面と、円孔20および円孔21のライザー管1軸方向の他方端を結んで形成される平面との間に存在する場合、これらが略同一平面内に位置しているという。
【0042】
上述した説明では、ライザー管1と洋上浮体底板7との間に中間リング10を介在させ、ライザー管1を洋上浮体底板7に間接的に懸吊する構成を示した。しかし、ライザー管1を洋上浮体底板7に懸吊する構成はこれに限られず、ライザー管1を洋上浮体底板7に直接懸吊することとしても良い。
図6は、懸吊手段および自由度付与手段の他の例を模式的に示す正面図である。同図に示した例においては、洋上浮体底板7と可動管アーム14とが、中間リング10を介在させることなくワイヤー(懸吊手段)43により直接に結びつけられており、ライザー管1が洋上浮体底板7に直接懸吊されている。
【0043】
また、洋上浮体底板7とワイヤー43、および可動管アーム14とワイヤー43とは、球面溝つき軸受け構造より、ライザー管1が洋上浮体底板7に対して水平方向に相対移動することを可能としている。すなわち、ワイヤー43の両端は、洋上浮体底板7および可動管アーム14に設けられている球面溝(自由度付与手段、回転要素)41内側の溝形状に沿った表面形状を有する球体42に接続されているから、球体(自由度付与手段、回転要素)42が球面溝41内面を摺動することにより、ライザー管1に洋上浮体底板7に対する水平方向の変位および角変位についての自由度を付与することができる。なお、両者の間にベアリング(図示しない)を設けることにより、球体42が球面溝41内面をよりスムーズに摺動させることができる。
【0044】
また、球面溝41は、ライザー管1の軸方向に空間を備えていることから、ライザー管1の軸方向の急激な圧縮力が加えられたときには、球体42がライザー管1の軸方向に移動することにより、その力を吸収することも可能である。このため、ワイヤー43として可撓性の無いものを用いても、球面溝41の軸方向の空間分に対応する軸方向の自由度をライザー管1に付与することができる。
なお、係止部の形状により軸方向の自由度をライザー管1に付与するには、たとえば、円孔19〜22の上半分または下半分を半円形とし、回転吊り要素12および回転吊り要素15の回転軸を所定の回転軸で回転させるとともに、下半分または上半分をライザー管1の軸方向に長い溝形状とすることにより、当該溝形状の長さに対応した軸方向の自由度をライザー管1に付与することができる。
【0045】
図7は懸吊手段および自由度付与手段のさらなる他の例を模式的に示す正面図である。同図に示すように、可撓吊り要素13の洋上浮体底板7側に自在関節機構(自由度付与手段、回転要素)51を備えた構成により、ライザー管1と洋上浮体底板7との相対的な角変位および水平方向変位を可能にしている。
この場合、懸吊手段の一部を成す回転吊り要素12と、回転要素としての自在関節機構51は別体に設けた構成であり、主として回転機能は自在関節機構51により発揮される。
【0046】
なお、回転吊り要素12、15は条件が満たされるのであれば、自由度付与手段、上部係止部、回転要素の一部を構成しているともいえる。
また、可撓吊り要素13、16は、前述のように剛性条件が見たされるならば、自由度付与手段の一部とみなしてもよい。
他の例や、以下の第2の実施形態においても、構成は複数の機能を兼ねることができる。
【0047】
〔第2の実施形態〕
本発明の第1の実施形態として説明したライザー管の懸吊装置2(図1、2参照)は、海洋浮体構造物を係留する係留管の連結装置としても用いることができる。そこで、ライザー管の懸吊装置2を係留管の連結装置として用いた本発明の第2の実施形態について、以下に説明する。なお、第2の実施形態においては、第1の実施形態の説明において説明した部材については、同じ番号を付して説明を省略する。
【0048】
図8は第2の実施形態による海洋浮体構造物をテンションレグ方式で係留する係留管の連結装置の概略構成を示す正面図である。同図に示すように、テンションレグ方式による係留は、海洋浮体構造物101を、海底Gに打設した海底基礎102に接続されたテンドンと呼ばれる係留管103により釣り合い位置よりもさらに海面Lの下方まで強制的に半没水させることにより、海洋浮体構造物101に対して下向きの強い力を加えて、安定した状態を確保するものである。
海洋浮体構造物101と係留管103との接続にライザー管の懸吊装置2を用いることにより、海洋浮体構造物101と係留管103との間に発生するすべての方向の曲げモーメントをほぼ完全に逃がすとともにせん断荷重も逃がし、瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を吸収することができる。なおかつライザー管を懸吊する強度部材が管の外部に設けられていることから、その検査やメンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【0049】
図8に示したテンションレグ方式による係留で、緊急時の海底部レグ切り離し機構を有する場合には、可撓管継手8を備えたライザー管の懸吊装置(係留管の連結装置)を用いることにより、係留管103内の流体を海底基礎102と係留管103とを接続するアクティヴ・コネクタ(図示せず)を遠隔操作するための作動流体として用いることができる。
ただし、テンションレグ方式による係留で係留管内の作動流体を必要としない場合や、より一般的な係留管(単に係留するだけ)の場合、係留管103を管外の海水に対して水密な状態に保つことは必要ない。このため、図9に示したように、ライザー管の懸吊装置2を可撓管継手8がないものとして構成することも可能である。すなわち、固定管3と可動管4が分離していて、係留管103内部が海水成り行きであるいわゆる間節構造のものとしてライザー管懸吊装置2を構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、水、油、ガスなどの流体資源を海底または海中から海洋構造物まで輸送するために使用されるライザー管の懸吊装置に利用でき、特に海洋深層水などの海水を洋上の各種浮体に取り込む取水用ライザー管や、海底油田や海底ガス田などの海底資源掘削抗口と洋上の備蓄生産設備などとを繋ぐ生産用ライザー管に適している。
また、二酸化炭素などの流体を海洋構造物から海底または海中まで輸送するために使用されるライザー管の懸吊装置としても利用が可能である。
また、ライザー管以外でも、例えば緊張係留型浮体(Tension Leg Platform:TLP)の洋上浮体と管状のテンドン(垂直緊張係留ライン)の接合部、あるいは前記テンドンと海底の前記テンドン固定用海底基礎(テンプレート)の接合部のように、各種構造体とそれに連結して引張荷重を及ぼす管体との間に生じる曲げモーメントを逃がしたい場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ライザー管
2 ライザー管の懸吊装置(係留管の連結装置)
3 固定管(海洋構造物)
4 可動管(ライザー管)
5 延伸管(ライザー管)
6 洋上浮体内固定管(海洋構造物)
7 洋上浮体底板(海洋構造物)
8 可撓管継手(可撓管)
10 中間リング(自由度付与手段)
11 洋上浮体底板アーム(底板アーム)
12 回転吊り要素(懸吊手段)
13 可撓吊り要素(上部懸吊手段、チェーン)
14 可動管アーム(管アーム)
15 回転吊り要素(懸吊手段)
16 可撓吊り要素(下部懸吊手段、チェーン)
19 円孔(上部懸吊手段係止部、回転要素)
20 円孔(上部懸吊手段係止部、回転要素)
21 円孔(下部懸吊手段係止部、回転要素)
22 円孔(下部懸吊手段係止部、回転要素)
32 回転吊りリング(懸吊手段)
33 高強度ロープ(上部懸吊手段)
41 球面溝(自由度付与手段、回転要素)
42 球体(自由度付与手段、回転要素)
43 ワイヤー(懸吊手段)
51 自在関節機構(自由度付与手段、回転要素)
101 海洋浮体構造物
103 係留管
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、油、ガスなどの流体資源などの流体を、海底または海中から海洋構造物まで輸送、あるいは液化二酸化炭素などの流体を海洋構造物から海底または海中まで輸送するために使用されるライザー管の懸吊装置ならびに海洋浮体構造物を係留する係留管の連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水、油、ガスなど、様々な流体を海底または海中から洋上浮体などの海洋構造物まで輸送する作業においては、ライザー管と呼ばれる主に金属製の円管が用いられることが多い。これらのライザー管は、使用される水深にもよるが、その外径に比して軸方向の長さが著しく大きな線状構造物となる場合が多く、潮流、波浪、洋上浮体の動揺の影響を受けて水中で様々な弾性挙動をするため、接合部において過大な応力が発生して疲労や破断、座屈などの損傷が生じる恐れがある。また、海洋構造物とライザー管は互いに影響を及ぼしながら連成した運動をするため、接合部の構造を適切に設計しておかないと共振などの危険な現象が起こる恐れがある。
【0003】
このような海洋構造物とライザー管の接合部における過大応力の発生を防止したり、海洋構造物とライザー管の強い連成運動による悪影響を回避するために重要なことは、前記接合部に発生する様々な方向の曲げモーメントやせん断荷重をうまく逃がすことと、前記接合部に管軸方向の圧縮荷重が作用しないようにすることであるが、その具体的方法の一つとしてチェーンおよび可撓管継手を用いた懸吊方法がある(非特許文献1、特許文献1〜5)。
【0004】
非特許文献1に記載の海洋肥沃化装置においては、水深約200mの海洋深層水を海面近くまで引き揚げるための取水用ライザー管を図10に模式的に示すごとく2本のチェーンにより洋上浮体底から懸吊し、ライザー管の上端部近傍に可撓管継手を設けることにより、ライザー管と浮体の間に発生する曲げモーメントを軽減すると同時に、瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位が生じてもチェーンおよび可撓管継手で吸収できるような懸吊機構を採用している。
しかしながら、この方法による懸吊機構では、洋上浮体やライザー管が2本のチェーンを含む平面内で異なる回転運動をした場合、洋上浮体とライザー管の間に生じる前記平面内の曲げモーメントを完全に逃がすことはできず、場合によっては瞬間的な片方のチェーンの弛緩とそれに続く衝撃的な引張荷重(スナップ荷重)の発生により、懸吊機構に過大な応力が生じる恐れがある。
また、上記平面内の曲げモーメントが一定程度チェーンを通じて伝達されることにより、洋上浮体の上記平面内における回転運動の振動数とライザー管の固有振動数が近くなると共振現象が起こる恐れがある。このため、それを回避するための特別な配慮、すなわち、振動解析によるライザー管の諸元設定などが必要となり、ライザー管の板厚や外径、長さなどの選択範囲が狭められることになる。
【0005】
特許文献1には、取水用ライザー管の上端部に2個の分離した管要素を設け、両者を可撓管継手で繋ぐと同時に管の内部に設けた1本の可撓連結要素(例えばチェーン)および2個の連結部材によって連結してライザー管を懸吊する方法が記載されている。この方法を用いれば、洋上浮体とライザー管の間に発生するすべての方向の曲げモーメントを逃がすことが可能であるが、管の内部に懸吊用の可撓連結要素および連結部材を設ける必要がある。このため、これら要素や部材によって管内の水の滑らかな流れが阻害されてしまうという欠点がある。また、ライザー管を懸吊する主要な強度部材である懸吊部材が管の内部に隠れてしまうため、懸吊部材の健全性の検査やメンテナンスがしにくいという欠点もある。加えて、特に長期に亘り使用する場合などには、懸吊部材を構成する金属などの材料が腐食や摩耗により部材表面から遊離して管内の流体を汚染する恐れがある。
【0006】
特許文献2には、洋上浮体とライザー管とをケーブルで接続した構造体が記載されている。しかし、同文献に記載されている構造体は、洋上浮体とライザー管とがシールされており管軸方向に自由度を持たないものであることから、洋上浮体とライザー管とを接続するケーブルにより、ライザー管の瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を吸収することはできない。
【0007】
特許文献3には、引張脚プラットフォームとライザー管との間に弾性組立体を備えたライザー管支持装置が開示されている。同文献に記載されているライザー管支持装置は、ライザー管の瞬間的な管軸方向の相対変位を弾性体の変形によって吸収することを目的としている。しかし、弾性体が変形するためには両側からの外力変化が必要であることから、場合によってはライザー管に圧縮方向の荷重が作用するおそれがある。また、ライザー管の瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を弾性体のみによって完全に吸収することはできない。
【0008】
特許文献4には、ライザー構造物とフロートとを連結する連結装置に、フロートに関してライザー構造物が僅かに旋回することを可能とする旋回軸を設け、フロートと海洋構造物とを伸縮式接続装置によって接続した構造が開示されている。しかし、伸縮式接続装置は、フロートと海洋構造物との間の相対的な変位を逃がすものであって、フロートとライザー管との間の相対変位(管軸方向の圧縮荷重)を逃がすものではない。また、ライザー構造物とフロートとは、連結装置によってライザー構造物の軸方向に固定されていることから、ライザー構造物はフロートに対してその軸方向に相対的に変位することができない。このため、フロートを小型の洋上浮体と考えると、ライザー管に圧縮方向の荷重が作用するおそれがある。
【0009】
特許文献5には、非特許文献1に記載の海洋肥沃化装置と同様の装置が記載されているが、上述したとおり当該海洋肥沃化装置には、スナップ荷重の発生により、懸吊機構に過大な応力が生じる恐れがあり、また、共振現象を回避するための特別な配慮も必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許US7,318,387 B2
【特許文献2】米国特許4,273,068
【特許文献3】特開平8−319789号公報
【特許文献4】特表2002−537171号公報
【特許文献5】特開2005−291464号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】宮部宏彰他、「海洋肥沃化装置『拓海』の開発」、石川島播磨技報Vol.44, No.3 (2004-5),209p-214p
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、水、油、ガスなどの流体を海底または海中から洋上浮体まで輸送するために使用されるライザー管を懸吊する方法や装置は、これまでにもいくつか提案されている。しかし、洋上浮体とライザー管の間に発生するすべての方向の曲げモーメントをほぼ完全に逃がすとともにせん断荷重も逃がし、瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を吸収することができ、懸吊部材が管の外部にあって検査やメンテナンスが容易であり、管内流体の滑らかな流れが損なわれたり管内流体が汚染されたりすることがないライザー管の懸吊装置は未だ確立されていない。
【0013】
そこで、本発明は、流体資源などの流体を海底または海中から洋上浮体まで輸送するために使用されるライザー管について、洋上浮体とライザー管の間に発生するすべての方向の曲げモーメントをほぼ完全に逃がすとともにせん断荷重も逃がし、瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を吸収することができ、なおかつライザー管を懸吊する強度部材が管の外部に設けられており検査やメンテナンスが容易なライザー管の懸吊装置、ならびにこのライザー管の懸吊装置と同様な技術を用いた係留管の連結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の本発明のライザー管の懸吊装置は、海洋構造物へ流体を輸送または海洋構造物から流体を輸送するライザー管と、前記海洋構造物と前記ライザー管との間に設けられており、前記海洋構造物と前記ライザー管とを連結する可撓管と、少なくとも前記ライザー管の軸方向に前記海洋構造物に対する相対的な自由度を有するように前記ライザー管を前記海洋構造物に懸吊する前記可撓管の周囲に複数設けられている懸吊手段と、前記懸吊手段に係合され前記ライザー管の前記海洋構造物に対する相対的な角変位および水平方向の相対移動を可能にする自由度付与手段を備えていることを特徴とする。
ここで、「海洋構造物」には、浮体、船、海洋建築物、水中構造物等が含まれ、例えばカスピ海のような広大な湖において用いられる浮体、船、海洋建築物、水中構造物等も含まれる。
また、「ライザー管の軸方向に前記海洋構造物に対する相対的な自由度を有する」とは、前記ライザー管の前記海洋構造物に対する相対的な位置が、ライザー管の軸方向に沿って変位可能であることをいう。
また、「前記ライザー管の前記海洋構造物に対する相対的な角変位」とは、前記ライザー管の管軸と前記海洋構造物の成す相対的な角度が変化することをいう。なお、ここで、ライザー管の管軸と海洋構造物の成す相対的な角度とは、ライザー管の管軸と、海洋構造物に固定された軸(例えば海洋構造物の底板に立てた垂直軸)の成す角度のことをいう。
また、「前記ライザー管の前記海洋構造物に対する水平方向の相対移動」とは、懸吊手段の移動により前記ライザー管の前記海洋構造物に対する相対的な位置が、水平方向に変位することをいう。なお、ここで、水平方向に変位するとは、ライザー管と海洋構造物との相対運動に水平面的に自由度を与えることをいい、変位前後において、水平面上に投影される相対位置が変化することをいう。
この構成により、懸吊手段がライザー管の軸方向へ移動することでライザー管の管軸圧縮方向の相対変位を吸収するとともに、相対的な角変位により海洋構造物とライザー管との間の曲げモーメントを逃がすことができる。また、可撓管の周囲に設けられていることから、懸吊手段を容易にメンテナンスすることができる。
【0015】
請求項2の本発明は、請求項1に記載のライザー管の懸吊装置において、複数の前記懸吊手段が、前記ライザー管の軸方向の圧縮荷重を伝えない構造とされていることを特徴とする。
ここで、「前記ライザー管の軸方向の圧縮荷重を伝えない構造」とは、「ライザー管の軸方向に前記海洋構造物に対する相対的な自由度を有する」もののうち、弾性体のように軸方向の圧縮荷重を弱めた上で圧縮荷重を伝達するものが除かれたものをいう。
この構成により、懸吊手段により瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を吸収することができる。
【0016】
請求項3の本発明は、請求項1または2に記載のライザー管の懸吊装置において、前記自由度付与手段として中間リングを有し、前記懸吊手段が、上部懸吊手段および下部懸吊手段から構成されており、前記上部懸吊手段が、前記海洋構造物と前記中間リングに係止されており、前記下部懸吊手段が、前記中間リングと前記ライザー管に係止されていることを特徴とする。
この構成により、上部懸吊手段、中間リングおよび下部懸吊手段で、管軸圧縮方向の相対変位を吸収するとともに、曲げモーメントやせん断荷重を逃がすことができる。
【0017】
請求項4の本発明は、請求項3に記載のライザー管の懸吊装置において、前記上部懸吊手段および前記下部懸吊手段をそれぞれ2つずつ備えており、前記上部懸吊手段の2つの上部懸吊手段係止部は前記中間リングの中心点を介して対向するように配置されており、前記下部懸吊手段の2つの下部懸吊手段係止部は前記中間リングの中心点を介して対向するように配置されており、2つの上部懸吊手段係止部を結んだ直線を含む前記ライザー管の管軸に平行な面と、2つの前記下部懸吊手段係止部を結んだ直線を含む前記ライザー管の管軸に平行な面とが、略90度の角度で交わることを特徴とする。
この構成により、上部懸吊手段と下部懸吊手段と中間リングの作用で、異なる方向の曲げモーメントやせん断荷重をスムーズに逃がすことができる。
【0018】
請求項5の本発明は、請求項4に記載のライザー管の懸吊装置において、前記上部懸吊手段係止部および/または前記下部懸吊手段係止部が、回転要素により構成されていることを特徴とする。
ここで、「回転要素」とは、回転軸を中心として回転可能な要素をいい、例えば、円孔とシャックル、球面みぞ付軸受け、自在関節機構などにより構成される。
この構成により、回転要素の回転によって、曲げモーメントの逃がしをよりスムーズなものとすることができる。
【0019】
請求項6の本発明は、請求項5に記載のライザー管の懸吊装置において、前記回転要素が同一平面内に位置しており、前記上部懸吊手段係止部の回転要素の回転軸が同一直線上にあり、前記下部懸吊手段係止部の回転要素の回転軸が同一直線上にあることを特徴とする。
この構成により、曲げモーメントのすべての方向への逃がしをさらにスムーズなものとすることができる。
【0020】
請求項7の本発明は、請求項5または6に記載のライザー管の懸吊装置において、前記上部懸吊手段および前記下部懸吊手段のそれぞれが回転吊り要素をその両端に有しており、前記上部懸吊手段の有する回転吊り要素の一方が前記海洋構造物の底板アームに他方が前記中間リングにそれぞれ係止されており、前記下部懸吊手段の有する回転吊り要素の一方が前記中間リングに他方がライザー管の一部を構成する端部に設けられている可動管の管アームにそれぞれ係止されていることを特徴とする。
この構成により、懸吊手段のライザー管の軸方向への移動による管軸圧縮方向の相対変位の吸収ならびに曲げモーメントおよびせん断荷重の逃がしをよりスムーズなものとすることができる。
【0021】
請求項8の本発明は、請求項1乃至7の何れかに記載のライザー管の懸吊装置において、前記懸吊手段が、2連以上のチェーンであることを特徴とする。
この構成により、2連以上のチェーンの弛緩によって、瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を効果的に吸収することができる。
【0022】
請求項9に記載の本発明の係留管の連結装置は、海洋浮体構造物を係留する係留管と、少なくとも前記係留管の軸方向に前記海洋浮体構造物に対する相対的な自由度を有するように前記係留管を前記海洋浮体構造物に懸吊する複数の懸吊手段と、前記懸吊手段に係合され前記係留管の前記海洋浮体構造物に対する相対的な角変位や水平方向の相対移動を可能にする自由度付与手段を備えていることを特徴とする。
この構成により、懸吊手段が係留管の軸方向へ移動することで係留管の管軸圧縮方向の相対変位を吸収するとともに、自由度付与手段が相対的な角変位および水平移動を可能とすることで海洋浮体構造物と係留管の間の曲げモーメントおよびせん断荷重を逃がすことができる。
【0023】
請求項10の係留管の連結装置は、請求項9に記載の係留管の連結装置において、前記海洋浮体構造物が前記係留管によりテンションレグ方式で係留されており、前記海洋浮体構造物と前記係留管との間に設けられており、前記海洋浮体構造物と前記係留管とを連結する可撓管を備えていることを特徴とする。
この構成により、海洋浮体構造物を、例えば、緊急時の海底部レグ切り離し機構を備えたテンションレグ方式により係留する場合、係留管と海底基礎(テンプレート)を連結するアクティヴ・コネクタを遠隔操作するための作動流体の通路として係留管を用いることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のライザー管の懸吊装置によれば、洋上浮体などの海洋構造物とライザー管の間に生じるすべての方向の曲げモーメントをほぼ完全に逃がすと同時に、せん断荷重を効果的に逃がすことができ、接合部における過大な応力の発生を防止することができる。また、海洋構造物のロールもしくはピッチ方向の回転運動とライザー管の強い連成運動による共振などの悪影響を回避することができ、万一海洋構造物とライザー管の接合部などに圧縮方向の相対変位が生じてもそれを吸収し、接合部やライザー管が座屈しないようにすることができる。さらに、懸吊部材が可撓管の外部にあるため、懸吊部材の健全性の検査やメンテナンスを比較的容易に行うことができ、懸吊部材の腐食や摩耗による管内流体の汚染なども回避することができる。
また、懸吊手段が前記ライザー管の軸方向の圧縮荷重を伝えない構成とすれば、懸吊手段により瞬間的な管軸圧縮方向の圧縮荷重を伝えることなく相対変位を吸収することができる。
また、自由度付与手段として中間リングを有し、前記懸吊手段が、上部懸吊手段および下部懸吊手段を備えた構成とすれば、これらにより、ライザー管の管軸圧縮方向の相対変位を吸収するとともに、海洋構造物とライザー管の間に生じる複数の方向の曲げモーメントおよびせん断荷重を逃がすことが可能となる。この場合、2つの上部懸吊手段係止部を中間リングの中心点を介して対向するように配置し、2つの下部懸吊手段係止部を中間リングの中心点を介して対向するように配置し、上部懸吊手段係止部を結んだ直線を含むライザー管の管軸に平行な面と、下部懸吊手段係止部を結んだ直線を含むライザー管の管軸に平行な面とが、中間リングの中心付近において略90度の角度で交わる構成とすれば、異なる方向の曲げモーメントやせん断荷重の逃がしをよりスムーズなものとすることができる。
また、前記上部懸吊手段係止部および/または前記下部懸吊手段係止部を回転要素により構成すれば、回転要素の回転によって曲げモーメントをよりスムーズに逃がすことができる。この場合、回転要素が同一平面上に位置しており、上部懸吊手段係止部の回転要素の回転軸が同一直線上にあり、下部止部の回転要素の回転軸が同一直線上にある構成とすれば、すべての方向への曲げモーメントの逃がしをさらにスムーズなものとすることができる。
また、懸吊手段を、2連以上のチェーンで構成することにより、ライザー管を懸吊するとともに瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を効果的に吸収することができ、相対的な角変位および水平方向の相対移動をより円滑にすることにも寄与することが可能となる。
【0025】
本発明の係留管の懸吊装置によれば、懸吊手段が係留管の軸方向へ移動することで係留管の管軸圧縮方向の相対変位を吸収するとともに、自由度付与手段が相対的な角変位や水平移動を可能にすることで海洋浮体構造物と係留管の間の曲げモーメントおよびせん断荷重を逃がすことができ、海洋浮体構造物や係留管などに過大な応力がかかることを防止できる。
また、海洋浮体構造物が係留管により、例えばテンションレグ方式で係留されており、緊急時の海底部レグ切り離し機構を有する場合、可撓管を備えた構成とすれば、係留管と海底基礎(テンプレート)を連結するアクティヴ・コネクタを遠隔操作するための作動流体の通路として係留管を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態によるライザー管の懸吊装置の(a)正面図および(b)側面図
【図2】第1の実施形態によるライザー管の懸吊装置の要部を示す(a)正面側斜視図および(b)側面側斜視図
【図3】洋上浮体底板に中間リングを懸吊する懸吊手段の他の例を示す要部正面図
【図4】中間リングを洋上浮体底板側から見た正面図
【図5】中間リングの斜視図
【図6】懸吊手段および自由度付与手段の他の例を模式的に示す正面図
【図7】懸吊手段および自由度付与手段のさらなる他の例を模式的に示す正面図
【図8】第2の実施形態による海洋浮体構造物をテンションレグ方式で係留する係留管の連結装置の概略構成を示す正面図
【図9】第2の実施形態による海洋浮体構造物を係留する係留管の連結装置の概略構成を示す要部正面図
【図10】2本のチェーンによる従来のライザー管懸吊機構の正面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明をライザー管の懸吊装置として実施する形態につき図1〜7を参酌しつつ説明する。
図1は本発明の第1の実施形態によるライザー管の懸吊装置2の(a)正面図および(b)側面図である。また、図2は図1に示したライザー管の懸吊装置2の要部を示す(a)正面側斜視図および(b)側面側斜視図である。図1、2に示すように、ライザー管の懸吊装置2は、ライザー管1を洋上浮体底板(海洋構造物)7に懸吊するものである。ライザー管1、ライザー管の懸吊装置2および洋上浮体底板7の構成について、以下に説明する。
【0028】
ライザー管1は、洋上浮体などの海洋構造物への流体の輸送、または海洋構造物からの流体の輸送に用いられるものである。海洋構造物へ輸送される流体としては、石油などの流体資源や海水などが挙げられる。また、海洋構造物から海底などに輸送される流体としては、液化された二酸化炭素などが挙げられる。これらの流体は、液体の状態で輸送されることも、固体と液体とが混ざった固相と液相の固液2相の混合物として輸送されることもある。
第1の実施形態においては、ライザー管1は、別体のものとして構成されている可動管4と延伸管5の接合によって構成されている。また、これらは、可動管4の可動管接合部17と延伸管5の延伸管接合部18において接合している。しかし、ライザー管1は、別体の管を接合することにより構成されることは必要なく、一体のものとして構成されたものとしても良い。この場合、可動管4と延伸管5を接続するために用いられる可動管接合部17と延伸管接合部18は不要となる。
【0029】
ライザー管1は、洋上浮体内固定管(海洋構造物)6に接続されている固定管(海洋構造物)3に、可撓管継手(可撓管)8を介して接続されている。しかし、固定管3を備えない構成とすることも可能であり、この場合、ライザー管1は、可撓管継手8を介して洋上浮体底板7に接続されることとなる。
また、洋上浮体内固定管6は、固定管3から輸送された液体の洋上浮体内のタンクなどの設備(図示しない)への輸送に用いられるものであるから、固定管3から洋上浮体内のタンクなどの設備に直接放出する構成とした場合、洋上浮体内固定管6を省略することも可能である。
【0030】
ライザー管1(可動管4、延伸管5)、固定管3および洋上浮体内固定管6の材料としては、例えば、金属やプラスチックを用いることができる。また、単一の材料により構成された単層管を用いても、異種材料を複数重ねた積層管を用いてもよい。また、ライザー管1、固定管3および洋上浮体内固定管6をすべて同じ材料により構成することも、それぞれに異なった材料により構成してもよい。
上述した各管の外径および厚みは、特に限定されるものではなく、目的や輸送対象に応じて適宜設定することができる。
【0031】
ライザー管の懸吊装置2は、可撓管継手8、中間リング(自由度付与手段)10、洋上浮体底板アーム(底板アーム)11、回転吊り要素(懸吊手段)12、可撓吊り要素(上部懸吊手段、チェーン)13、可動管アーム(管アーム)14、回転吊り要素(懸吊手段)15、可撓吊り要素(下部懸吊手段、チェーン)16、円孔(上部懸吊手段係止部、回転要素)19、円孔(上部懸吊手段係止部、回転要素)20、円孔(下部懸吊手段係止部、回転要素)21および円孔(下部懸吊手段係止部、回転要素)22を備えて構成されている。以下、これらライザー管の懸吊装置2の構成要素について説明する。
【0032】
可撓管継手8は、洋上浮体底板7とライザー管1との間に設けられており、洋上浮体内のタンクなどの設備への経路となる固定管3と可撓管継手8とを連結し、ライザー管1と固定管3との間の流体の輸送を可能とするものである。
可撓管継手8の材料としては、例えば、金属、プラスチック、布(ジュート)などを挙げることができる。また、単一の材料により構成された単層管を用いることも、異種材料を複数重ねた積層管を用いることとしてもよい。
可撓管継手8の形状は、蛇腹管(ベローズ)として、構造的に十分な可撓性を持たせている。他の十分な可撓性を持った構造としては、インターロック管が挙げられる。なお、金属など硬質材料を用いた場合には、構造的に十分な可撓性を持たせることが必要となるが、材質が十分に柔軟な材料を用いる場合、単純な円管形状とすることも可能である。
可撓管継手8の変形性能は、曲げに対する十分な可撓性を有すると同時に、管軸方向の変位を一定程度吸収し、多少の管軸圧縮方向変位では座屈しないものである。さらに、管せん断方向(管軸に対して直角方向)の変位に対しても十分な変形性能を有するものである。
可撓管継手8の外径は、ライザー管1の可動管4の外径および固定管3の外径や、中間リング10の内径などとの関係で適宜設定することができる。第1の実施形態では、可撓管継手8の外径の増減が一定幅内で周期的に繰り返す蛇腹管としているが、これに限られず、外径一定の円筒形や、円錐台の側面のような形状とすることもできる。
【0033】
中間リング10は、回転吊り要素12および可撓吊り要素13を介して洋上浮体底板アーム11に接続され、回転吊り要素15および可撓吊り要素16を介してライザー管1に接続されており、可撓吊り要素13および可撓吊り要素16が伸長した状態において、可撓管継手8を取り囲む位置に設けられている。
中間リング10の材料としては、例えば、金属やプラチック等が挙げられる。ただし、回転吊り要素12と係合する円孔20および回転吊り要素15と係合する円孔21には大きな集中荷重が加わるので、円孔20および円孔21は高強度の金属により構成することが好ましい。
中間リング10の内径は、可撓管継手8の外面と中間リング10の内面との距離が十分なものとなるように、十分な余裕を持った大きさのものとされている。これにより、可撓管継手8が最も大きく撓んだ場合でも、可撓管継手8の外面が、中間リング10の内面、回転吊り要素12、可撓吊り要素13、回転吊り要素15および可撓吊り要素16に接触しないようにすることができる。
中間リング10の形状は、図1、図2に示すように円管状としている。しかし、この形状に限られるものではなく、可撓管継手8との間隔、強度、回転吊り要素12および回転吊り要素15の自由な回転を確保することができる他の形状とすることも可能である。このような形状としては、例えば、円断面もしくは楕円断面のフープ(輪)形状、複数枚の板をn角形に組んだ板構造(ただし、nは4以上の偶数)が挙げられる。
中間リング10の厚みは、特に限定されるものではなく、中間リング10全体としての強度を確保でき、かつ回転吊り要素12および回転吊り要素15が自由に回転することが可能なものとすればよい。
【0034】
洋上浮体底板アーム11は、洋上浮体底板7にライザー管1を懸吊するための、洋上浮体底板7側の係合部として用いられるものである。
洋上浮体底板アーム11の材質としては、例えば、金属、プラスチックなどが挙げられる。円孔19には大きな集中荷重が加わるので、高強度の金属を用いることが好ましい。
洋上浮体底板アーム11は、図1に示すように、洋上浮体底板7からライザー管1側に突出した板状体として構成されているが、その構造としてはこれに限らず、洋上浮体底板7と適切な方法により接続されているものであれば良い。
【0035】
可動管アーム14は、洋上浮体底板7にライザー管1を懸吊するための、ライザー管1側の係合部として用いられるものである。
可動管アーム14の材質としては、例えば、金属、プラスチックなどが挙げられる。円孔22には大きな集中荷重が加わるので、高強度の金属を用いることが好ましい。
これら円孔19、円孔20、円孔21、円孔22は、高強度の金属を部分的に嵌め込んだり、部分的に補強して構成してもよい。
可動管アーム14は、図1、2に示すように、可動管4の外側面から突出した板状体として構成されているが、その構造としてはこれに限らず、可動管4と適切な方法により接続されているものであれば良い。
【0036】
回転吊り要素12は、可撓吊り要素13の両端に設けられているものであり、洋上浮体底板アーム11の円孔19および中間リング10の円孔20において、その軸部が自由に回転できる状態で係止されている。回転吊り要素12と円孔19との組み合わせ、および回転吊り要素12と円孔20との組み合わせにより回転機能が発揮される。
回転吊り要素15は、可撓吊り要素16の両端に設けられているものであり、中間リング10の円孔21および可動管アーム14の円孔22において、その軸部が自由に回転できる状態で係止されている。回転吊り要素15と円孔21との組み合わせ、および回転吊り要素15と円孔22との組み合わせにより回転機能が発揮される。
回転吊り要素12および回転吊り要素15の材料としては、例えば、金属やプラスチック等が挙げられる。
【0037】
可撓吊り要素13および可撓吊り要素16は、ライザー管1に、洋上浮体底板7に対して、その軸方向への相対移動を可能にするとともに、この場合は、その可撓性により相対的な角変位に対応し、水平方向への相対移動も一部可能にするものである。
水平方向の相対移動のみに注目すれば、可撓性を有していなくても水平移動は可能であるが、可撓吊り要素13および可撓吊り要素16をチェーン構造とすることにより、ライザー管1の懸吊、瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位の効果的な吸収に加え、相対的な角変位、水平方向の相対移動をより円滑に行うことができる。
すなわち、可撓吊り要素13および可撓吊り要素16として、図1、2に示す2連以上のチェーンのように、圧縮方向変位が生じると直ちに弛緩し、ライザー管1の管軸方向の圧縮荷重を伝えない構造のものを用いることにより、ライザー管1の軸方向に洋上浮体底板7に対する相対的な自由度を与えることができる。
また、可撓吊り要素13の両端に設けられている回転吊り要素12の軸部が円孔19、円孔20内で回転すること、可撓吊り要素16の両端に接続されている回転吊り要素15の軸部が円孔21、円孔22内で回転すること、および可撓吊り要素13、可撓吊り要素16自身が撓むことにより、角変位方向および水平方向にライザー管1の洋上浮体底板7に対する相対的な自由度を与えることができる。
上述した可撓吊り要素13および/または回転吊り要素12と、可撓吊り要素16および/または回転吊り要素15により、ライザー管1の管軸圧縮方向の相対変位を吸収するとともに、中間リング10を介して可撓吊り要素13および可撓吊り要素16が90度ずらして配置されることにより、すべての方向の曲げモーメントおよびせん断荷重を逃がすことができる。
可撓吊り要素13および可撓吊り要素16の材料としては、例えば、金属やプラスチックなどが挙げられる。
可撓吊り要素13および可撓吊り要素16の形態としては、チェーン、ワイヤー、高強度ロープ、ばねなどのような引張り荷重に強く、可撓性があり、圧縮方向の変位をある程度吸収できるものが挙げられる。また、これらを組み合わせたものを用いることもできる。
【0038】
図3は洋上浮体底板に中間リングを懸吊する懸吊手段の他の例を示す要部正面図である。同図に示すように、洋上浮体底板7の洋上浮体底板アーム11に中間リング10を懸吊する手段として高強度ロープ(上部懸吊手段)33を用いることもできる。ここでは、その強度を十分なものとするために2本の高強度ロープ33を用いた例を示しているが、高強度ロープ33の強度に応じて、高強度ロープ33を3本以上用いることや1本のみ用いることとしても良い。
また、高強度ロープ33を洋上浮体底板アーム11の円孔19および中間リング10の円孔20(図1、2参照)に係止するための手段として、高強度ロープ33はその両端に回転吊りリング(懸吊手段)32を備えている。中間リング10に係止される下側においては、回転吊りリング32は2つ設けられていて、この2つの回転吊りリング32により、管軸圧縮方向の相対変位の吸収と、相対的な角変位、水平方向の相対移動のさらなる円滑化も行っている。
なお、図3においては、洋上浮体底板アーム11と中間リング10の円孔20とを接続するために高強度ロープ33を用いた例を示したが、高強度ロープ33を中間リング10の円孔21と可動管アーム14(図1、2参照)との接続に用いることも可能である。
【0039】
図1に示すように、洋上浮体底板接合部9、可動管接合部17および延伸管接合部18は、いずれもボルトとナット(図示しない)を用いたフランジ接合により構成している。なお、これらの材料として金属を用いる場合には管ねじ継手や溶接を用いることも可能であり、プラスチックを用いる場合には管ねじ継手や接着を用いることも可能である。
【0040】
図4および図5に基づいて、中間リング10の構成についてより詳しく説明する。
図4は中間リングを洋上浮体底板側から見た正面図である。同図に示すように、可撓吊り要素13の端部に設けられている回転吊り要素12を係止する円孔20は、中間リング10の中心点Cを介して対向するように配置されており、2つの円孔20の中心を結んだ直線A20上に、回転吊り要素12の軸部の回転軸が位置する。また、可撓吊り要素16の端部に設けられている回転吊り要素15を係止する円孔21は、中間リング10の中心点Cを介して対向するように配置されており、2つの円孔21の中心を結んだ直線A21上に、回転吊り要素15の軸部の回転軸が位置する。そして、直線A20と直線A21とは、中間リング10の中心Cにおいて直交している。
【0041】
図5は、中間リングの斜視図である。同図では、中間リング10の軸方向(ライザー管1の管軸方向と一致、図1、2参照)を直線Lで示している。この直線Lと直線A20により形成されるライザー管1の管軸に平行な面S20と、直線Lと直線A21により形成されるライザー管1の管軸に平行な面S21とは、中間リング10の中心Cにおいて直角に交差しており、図中にXで示した面S20と面S21とにより形成される角度は90度である。
また、円孔20と円孔21は、その中心の高さが略等しい高さとなるように構成されている。このため、直線A20と直線A21とは中間リング10の中心Cにおいて直交し、2つの円孔20と2つの円孔21は、同一平面S内に位置している。
上述した構成により、ライザー管1の曲げモーメントをすべての方向にスムーズに逃がすことができる。
なお、円孔20と円孔21の中心は、回転吊り要素12および回転吊り要素15の軸部の回転中心に略対応するものであるが、円孔20、21と回転吊り要素12、15の回転軸との間には、スムーズな回転を実現する為の隙間がある。このため、円孔20、21の中心の高さを同じにすると、厳密には、当該隙間に対応して回転吊り要素15の軸部の回転中心の高さは異なることとなる。また、回転吊り要素12、15の回転軸の高さを揃えた場合、円孔20、21の中心の高さが、上記隙間に対応する分だけ異なることとなる。
しかし、本発明においては、回転吊り要素12の軸部の回転中心のライザー管1軸方向の高さの差が、円孔20のライザー管1軸方向の幅以内である場合、回転吊り要素12の軸部の回転中心が略同一直線上にあるという。同様に、回転吊り要素15の軸部の回転中心のライザー管1軸方向の高さの差が、円孔21のライザー管1軸方向の幅以内である場合、回転吊り要素15の軸部の回転中心が略同一直線上にあるという。
そして、回転吊り要素12および回転吊り要素15の軸部の回転中心が、円孔20および円孔21のライザー管1軸方向の一方端を結んで形成される平面と、円孔20および円孔21のライザー管1軸方向の他方端を結んで形成される平面との間に存在する場合、これらが略同一平面内に位置しているという。
【0042】
上述した説明では、ライザー管1と洋上浮体底板7との間に中間リング10を介在させ、ライザー管1を洋上浮体底板7に間接的に懸吊する構成を示した。しかし、ライザー管1を洋上浮体底板7に懸吊する構成はこれに限られず、ライザー管1を洋上浮体底板7に直接懸吊することとしても良い。
図6は、懸吊手段および自由度付与手段の他の例を模式的に示す正面図である。同図に示した例においては、洋上浮体底板7と可動管アーム14とが、中間リング10を介在させることなくワイヤー(懸吊手段)43により直接に結びつけられており、ライザー管1が洋上浮体底板7に直接懸吊されている。
【0043】
また、洋上浮体底板7とワイヤー43、および可動管アーム14とワイヤー43とは、球面溝つき軸受け構造より、ライザー管1が洋上浮体底板7に対して水平方向に相対移動することを可能としている。すなわち、ワイヤー43の両端は、洋上浮体底板7および可動管アーム14に設けられている球面溝(自由度付与手段、回転要素)41内側の溝形状に沿った表面形状を有する球体42に接続されているから、球体(自由度付与手段、回転要素)42が球面溝41内面を摺動することにより、ライザー管1に洋上浮体底板7に対する水平方向の変位および角変位についての自由度を付与することができる。なお、両者の間にベアリング(図示しない)を設けることにより、球体42が球面溝41内面をよりスムーズに摺動させることができる。
【0044】
また、球面溝41は、ライザー管1の軸方向に空間を備えていることから、ライザー管1の軸方向の急激な圧縮力が加えられたときには、球体42がライザー管1の軸方向に移動することにより、その力を吸収することも可能である。このため、ワイヤー43として可撓性の無いものを用いても、球面溝41の軸方向の空間分に対応する軸方向の自由度をライザー管1に付与することができる。
なお、係止部の形状により軸方向の自由度をライザー管1に付与するには、たとえば、円孔19〜22の上半分または下半分を半円形とし、回転吊り要素12および回転吊り要素15の回転軸を所定の回転軸で回転させるとともに、下半分または上半分をライザー管1の軸方向に長い溝形状とすることにより、当該溝形状の長さに対応した軸方向の自由度をライザー管1に付与することができる。
【0045】
図7は懸吊手段および自由度付与手段のさらなる他の例を模式的に示す正面図である。同図に示すように、可撓吊り要素13の洋上浮体底板7側に自在関節機構(自由度付与手段、回転要素)51を備えた構成により、ライザー管1と洋上浮体底板7との相対的な角変位および水平方向変位を可能にしている。
この場合、懸吊手段の一部を成す回転吊り要素12と、回転要素としての自在関節機構51は別体に設けた構成であり、主として回転機能は自在関節機構51により発揮される。
【0046】
なお、回転吊り要素12、15は条件が満たされるのであれば、自由度付与手段、上部係止部、回転要素の一部を構成しているともいえる。
また、可撓吊り要素13、16は、前述のように剛性条件が見たされるならば、自由度付与手段の一部とみなしてもよい。
他の例や、以下の第2の実施形態においても、構成は複数の機能を兼ねることができる。
【0047】
〔第2の実施形態〕
本発明の第1の実施形態として説明したライザー管の懸吊装置2(図1、2参照)は、海洋浮体構造物を係留する係留管の連結装置としても用いることができる。そこで、ライザー管の懸吊装置2を係留管の連結装置として用いた本発明の第2の実施形態について、以下に説明する。なお、第2の実施形態においては、第1の実施形態の説明において説明した部材については、同じ番号を付して説明を省略する。
【0048】
図8は第2の実施形態による海洋浮体構造物をテンションレグ方式で係留する係留管の連結装置の概略構成を示す正面図である。同図に示すように、テンションレグ方式による係留は、海洋浮体構造物101を、海底Gに打設した海底基礎102に接続されたテンドンと呼ばれる係留管103により釣り合い位置よりもさらに海面Lの下方まで強制的に半没水させることにより、海洋浮体構造物101に対して下向きの強い力を加えて、安定した状態を確保するものである。
海洋浮体構造物101と係留管103との接続にライザー管の懸吊装置2を用いることにより、海洋浮体構造物101と係留管103との間に発生するすべての方向の曲げモーメントをほぼ完全に逃がすとともにせん断荷重も逃がし、瞬間的な管軸圧縮方向の相対変位を吸収することができる。なおかつライザー管を懸吊する強度部材が管の外部に設けられていることから、その検査やメンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【0049】
図8に示したテンションレグ方式による係留で、緊急時の海底部レグ切り離し機構を有する場合には、可撓管継手8を備えたライザー管の懸吊装置(係留管の連結装置)を用いることにより、係留管103内の流体を海底基礎102と係留管103とを接続するアクティヴ・コネクタ(図示せず)を遠隔操作するための作動流体として用いることができる。
ただし、テンションレグ方式による係留で係留管内の作動流体を必要としない場合や、より一般的な係留管(単に係留するだけ)の場合、係留管103を管外の海水に対して水密な状態に保つことは必要ない。このため、図9に示したように、ライザー管の懸吊装置2を可撓管継手8がないものとして構成することも可能である。すなわち、固定管3と可動管4が分離していて、係留管103内部が海水成り行きであるいわゆる間節構造のものとしてライザー管懸吊装置2を構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、水、油、ガスなどの流体資源を海底または海中から海洋構造物まで輸送するために使用されるライザー管の懸吊装置に利用でき、特に海洋深層水などの海水を洋上の各種浮体に取り込む取水用ライザー管や、海底油田や海底ガス田などの海底資源掘削抗口と洋上の備蓄生産設備などとを繋ぐ生産用ライザー管に適している。
また、二酸化炭素などの流体を海洋構造物から海底または海中まで輸送するために使用されるライザー管の懸吊装置としても利用が可能である。
また、ライザー管以外でも、例えば緊張係留型浮体(Tension Leg Platform:TLP)の洋上浮体と管状のテンドン(垂直緊張係留ライン)の接合部、あるいは前記テンドンと海底の前記テンドン固定用海底基礎(テンプレート)の接合部のように、各種構造体とそれに連結して引張荷重を及ぼす管体との間に生じる曲げモーメントを逃がしたい場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ライザー管
2 ライザー管の懸吊装置(係留管の連結装置)
3 固定管(海洋構造物)
4 可動管(ライザー管)
5 延伸管(ライザー管)
6 洋上浮体内固定管(海洋構造物)
7 洋上浮体底板(海洋構造物)
8 可撓管継手(可撓管)
10 中間リング(自由度付与手段)
11 洋上浮体底板アーム(底板アーム)
12 回転吊り要素(懸吊手段)
13 可撓吊り要素(上部懸吊手段、チェーン)
14 可動管アーム(管アーム)
15 回転吊り要素(懸吊手段)
16 可撓吊り要素(下部懸吊手段、チェーン)
19 円孔(上部懸吊手段係止部、回転要素)
20 円孔(上部懸吊手段係止部、回転要素)
21 円孔(下部懸吊手段係止部、回転要素)
22 円孔(下部懸吊手段係止部、回転要素)
32 回転吊りリング(懸吊手段)
33 高強度ロープ(上部懸吊手段)
41 球面溝(自由度付与手段、回転要素)
42 球体(自由度付与手段、回転要素)
43 ワイヤー(懸吊手段)
51 自在関節機構(自由度付与手段、回転要素)
101 海洋浮体構造物
103 係留管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋構造物へ流体を輸送または海洋構造物から流体を輸送するライザー管と、
前記海洋構造物と前記ライザー管との間に設けられており、前記海洋構造物と前記ライザー管とを連結する可撓管と、
少なくとも前記ライザー管の軸方向に前記海洋構造物に対する相対的な自由度を有するように前記ライザー管を前記海洋構造物に懸吊する前記可撓管の周囲に複数設けられている懸吊手段と、
前記懸吊手段に係合され前記ライザー管の前記海洋構造物に対する相対的な角変位と水平方向の相対移動を可能にする自由度付与手段を備えていることを特徴とするライザー管の懸吊装置。
【請求項2】
複数の前記懸吊手段が、前記ライザー管の軸方向の圧縮荷重を伝えない構造とされていることを特徴とする請求項1に記載のライザー管の懸吊装置
【請求項3】
前記自由度付与手段として中間リングを有し、前記懸吊手段が、上部懸吊手段および下部懸吊手段から構成されており、
前記上部懸吊手段が、前記海洋構造物と前記中間リングに係止されており、
前記下部懸吊手段が、前記中間リングと前記ライザー管に係止されていることを特徴とする請求項1または2に記載のライザー管の懸吊装置。
【請求項4】
前記上部懸吊手段および前記下部懸吊手段をそれぞれ2つずつ備えており、
前記上部懸吊手段の2つの上部懸吊手段係止部は前記中間リングの中心点を介して対向するように配置されており、
前記下部懸吊手段の2つの下部懸吊手段係止部は前記中間リングの中心点を介して対向するように配置されており、
2つの上部懸吊手段係止部を結んだ直線を含む前記ライザー管の管軸に平行な面と、2つの前記下部懸吊手段係止部を結んだ直線を含む前記ライザー管の管軸に平行な面とが、略90度の角度で交わることを特徴とする請求項3に記載のライザー管の懸吊装置。
【請求項5】
前記上部懸吊手段係止部および/または前記下部懸吊手段係止部が、回転要素により構成されていることを特徴とする請求項4に記載のライザー管の懸吊装置。
【請求項6】
前記回転要素が略同一平面内に位置しており、
前記上部懸吊手段係止部の回転要素の回転軸が略同一直線上にあり、
前記下部懸吊手段係止部の回転要素の回転軸が略同一直線上にあることを特徴とする請求項5に記載のライザー管の懸吊装置。
【請求項7】
前記上部懸吊手段および前記下部懸吊手段のそれぞれが回転吊り要素をその両端に有しており、
前記上部懸吊手段の有する回転吊り要素の一方が前記海洋構造物の底板アームに他方が前記中間リングにそれぞれ係止されており、
前記下部懸吊手段の有する回転吊り要素の一方が前記中間リングに他方がライザー管の一部を構成する端部に設けられている可動管の管アームにそれぞれ係止されていることを特徴とする請求項5または6に記載のライザー管の懸吊装置。
【請求項8】
前記懸吊手段が、2連以上のチェーンであることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のライザー管の懸吊装置
【請求項9】
海洋浮体構造物を係留する係留管と、
少なくとも前記係留管の軸方向に前記海洋浮体構造物に対する相対的な自由度を有するように前記係留管を前記海洋浮体構造物に懸吊する複数の懸吊手段と、
前記懸吊手段に係合され前記係留管の前記海洋浮体構造物に対する相対的な角変位と水平方向の相対移動を可能にする自由度付与手段を備えていることを特徴とする係留管の連結装置。
【請求項10】
前記海洋浮体構造物が前記係留管によりテンションレグ方式で係留されており、
前記海洋浮体構造物と前記係留管との間に設けられており、前記海洋浮体構造物と前記係留管とを連結する可撓管を備えていることを特徴とする請求項9に記載の係留管の連結装置
【請求項1】
海洋構造物へ流体を輸送または海洋構造物から流体を輸送するライザー管と、
前記海洋構造物と前記ライザー管との間に設けられており、前記海洋構造物と前記ライザー管とを連結する可撓管と、
少なくとも前記ライザー管の軸方向に前記海洋構造物に対する相対的な自由度を有するように前記ライザー管を前記海洋構造物に懸吊する前記可撓管の周囲に複数設けられている懸吊手段と、
前記懸吊手段に係合され前記ライザー管の前記海洋構造物に対する相対的な角変位と水平方向の相対移動を可能にする自由度付与手段を備えていることを特徴とするライザー管の懸吊装置。
【請求項2】
複数の前記懸吊手段が、前記ライザー管の軸方向の圧縮荷重を伝えない構造とされていることを特徴とする請求項1に記載のライザー管の懸吊装置
【請求項3】
前記自由度付与手段として中間リングを有し、前記懸吊手段が、上部懸吊手段および下部懸吊手段から構成されており、
前記上部懸吊手段が、前記海洋構造物と前記中間リングに係止されており、
前記下部懸吊手段が、前記中間リングと前記ライザー管に係止されていることを特徴とする請求項1または2に記載のライザー管の懸吊装置。
【請求項4】
前記上部懸吊手段および前記下部懸吊手段をそれぞれ2つずつ備えており、
前記上部懸吊手段の2つの上部懸吊手段係止部は前記中間リングの中心点を介して対向するように配置されており、
前記下部懸吊手段の2つの下部懸吊手段係止部は前記中間リングの中心点を介して対向するように配置されており、
2つの上部懸吊手段係止部を結んだ直線を含む前記ライザー管の管軸に平行な面と、2つの前記下部懸吊手段係止部を結んだ直線を含む前記ライザー管の管軸に平行な面とが、略90度の角度で交わることを特徴とする請求項3に記載のライザー管の懸吊装置。
【請求項5】
前記上部懸吊手段係止部および/または前記下部懸吊手段係止部が、回転要素により構成されていることを特徴とする請求項4に記載のライザー管の懸吊装置。
【請求項6】
前記回転要素が略同一平面内に位置しており、
前記上部懸吊手段係止部の回転要素の回転軸が略同一直線上にあり、
前記下部懸吊手段係止部の回転要素の回転軸が略同一直線上にあることを特徴とする請求項5に記載のライザー管の懸吊装置。
【請求項7】
前記上部懸吊手段および前記下部懸吊手段のそれぞれが回転吊り要素をその両端に有しており、
前記上部懸吊手段の有する回転吊り要素の一方が前記海洋構造物の底板アームに他方が前記中間リングにそれぞれ係止されており、
前記下部懸吊手段の有する回転吊り要素の一方が前記中間リングに他方がライザー管の一部を構成する端部に設けられている可動管の管アームにそれぞれ係止されていることを特徴とする請求項5または6に記載のライザー管の懸吊装置。
【請求項8】
前記懸吊手段が、2連以上のチェーンであることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のライザー管の懸吊装置
【請求項9】
海洋浮体構造物を係留する係留管と、
少なくとも前記係留管の軸方向に前記海洋浮体構造物に対する相対的な自由度を有するように前記係留管を前記海洋浮体構造物に懸吊する複数の懸吊手段と、
前記懸吊手段に係合され前記係留管の前記海洋浮体構造物に対する相対的な角変位と水平方向の相対移動を可能にする自由度付与手段を備えていることを特徴とする係留管の連結装置。
【請求項10】
前記海洋浮体構造物が前記係留管によりテンションレグ方式で係留されており、
前記海洋浮体構造物と前記係留管との間に設けられており、前記海洋浮体構造物と前記係留管とを連結する可撓管を備えていることを特徴とする請求項9に記載の係留管の連結装置
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−13191(P2012−13191A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152252(P2010−152252)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【Fターム(参考)】
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